JP2004341469A - プリズムの製造方法及び光学システムの製造方法 - Google Patents

プリズムの製造方法及び光学システムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】青色光を使用するプリズム及びそれを用いた光学システムの歩留り向上を図ることのできるプリズム及び光学システムの製造方法を提供する。
【解決手段】波長が420nm以下の光ビームを出射する光源2と、透光性の第1、第2基板8a、8bに設けられる傾斜面を光学薄膜8dを介して貼り合わせるとともに光源2の出射光を透過するプリズム8とを備えた光学システム1の製造方法において、プリズム8の厚さをt(mm)、入射光の開口数をNAとした時に、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN1が、
ΔN1≦|1/(0.3×10×NA×t)|
を満たす第1、第2基板8a、8bを組み合わせて貼り合わせる工程を設けた。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプリズムの製造方法及びプリズムを用いた光学システムの製造方法に関し、特に波長が420nm以下(405nm帯)の青色光を透過して使用するプリズム及び光学システムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DVD等の光ディスクを再生または記録する光ディスク装置は、媒体に応じて異なる波長の光を用いて信号の読み取りや書き込みが行われる。特許文献1等には同じ光ピックアップを用いて種類の異なる光ディスクの読み取りを行う構成が開示されている。図1はこの光ピックアップを示す構成図である。
【0003】
光ピックアップ1は第1の波長の光を出射する第1光源2と、第2の波長の光を出射する第2光源3とを有している。第1の波長には例えば650nm帯(赤色光)が使用され、DVD−ROMから成るディスクDの読み取りを行うことができる。第2の波長には例えば780nm帯(赤外線)が使用され、CD−ROMから成るディスクDの読み取りを行うことができる。
【0004】
第1、第2光源2、3の出射光の光路上には第1の波長の光を反射して第2の波長の光を透過するダイクロイックミラー5が配される。これにより、第1光源2の出射光はダイクロイックミラー5で反射してディスクDに導かれる。第2光源3の出射光はダイクロイックミラー5を透過してディスクDに導かれる。
【0005】
ダイクロイックミラー5とディスクDとの間には、プリズム8、コリメータレンズ4、λ/4板10、回折素子7、集光レンズ11が配されている。プリズム8は光路に対して傾斜した傾斜面を有する透光性の基板8a、8b、8cを貼り合わせて形成されている。
【0006】
基板8a、8bの界面には、P偏光を透過してS偏光を反射するPBS(偏光ビームスプリッタ)膜8dが設けられている。基板8b、8cの界面には、入射光の一部を反射して残りを透過するBS(ビームスプリッタ)膜8eが設けられている。
【0007】
コリメータレンズ4は第1、第2光源2、3から出た発散光を平行光に整形する。λ/4板10は光の位相をλ/4ずらし、第1、第2光源2、3の出射光がディスクDの入射時及び反射時に通過することにより位相がλ/2ずれてP偏光がS偏光に変換される。
【0008】
回折素子7はホログラム等から成り、波長に応じて集光レンズ11の集光位置を可変する。集光レンズ11は第1、第2の波長の光をディスクD上に集光する。また、プリズム8のBS膜8eの反射方向及び透過方向にはフォトダイオード等から成る受光素子12、13が設けられる。
【0009】
上記構成の光ピックアップ1において、第1光源2から出射される第1の波長のP偏光はダイクロイックミラー5で反射してプリズム8に導かれる。第2光源3から出射される第2の波長のP偏光はダイクロイックミラー5を透過してプリズム8に導かれる。
【0010】
第1、第2の波長の光はプリズム8のPBS膜8dを透過してコリメータレンズ4により平行光に整形される。そして、λ/4板10、回折素子7を介して集光レンズ11によりディスクDの記録面に集光される。この時、ディスクDの種類に応じて第1、第2の波長の光の集光位置が回折素子7によって可変される。
【0011】
ディスクDで反射した第1、第2の波長の光は回折素子7、λ/4板10、コリメータレンズ4を透過してプリズム8に入射する。この時、第1、第2の波長の光はλ/4板10を2回透過するためS偏光に変換される。プリズム8ではPBS膜8dによってS偏光が反射され、BS膜8eで一部の光が反射するとともに残りの光が透過する。
【0012】
そして、プリズム8を出射した第1、第2の波長の光は受光素子12、13によりそれぞれ受光される。これにより、ディスクDの種類が異なっても使用波長に応じた信号を受光素子12、13で捉えて読み取り可能になっている。
【0013】
【特許文献1】
特開平10−143901号公報(第2頁−第12頁、第1図)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の光ピックアップによると、プリズム8のPBS膜8dやBS膜8eから成る光学薄膜を透過する光の波面収差が大きいと信号の誤認識が発生する。このため、ディスクDとしてCD−ROMやDVD−ROMを用いる光ピックアップでは波面収差が例えば50mλrms以下に決められている。
【0015】
しかしながら、次世代DVDやブルーレイディスク等の波長が420nm以下(405nm帯)の青色レーザ光により信号の書き込みや読み取りを行う光学システムでは、50mλrms程度の波面収差でも誤認識の発生率が高くなる。従って、PBS膜8dやBS膜8eから成る光学薄膜を透過する光の波面収差が例えば25mλrms以下に要求されている。
【0016】
このため、プリズム8を製造する最終工程で波面収差を測定する検査工程が設けられている。検査工程では波面収差が25mλrmsを超えるプリズムは不良となるため、プリズム8及び光ピックアップ1の歩留りが低くなっている問題があった。
【0017】
本発明は、青色光を使用するプリズム及びそれを用いた光学システムの歩留り向上を図ることのできるプリズム及びそれを用いた光学システムの製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムの製造方法において、貼り合わせられる第1、第2基板の入射光軸方向の厚さをt(mm)、入射光の開口数をNAとした時に、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN1が、
ΔN1≦|1/(0.3×10×NA×t)| ・・・(1)
の関係を満たすような第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0019】
この構成によると、波長が420nm以下のレーザ光に対する第1、第2基板の屈折率が例えば全数測定される。次に、第1基板の屈折率と第2基板の屈折率を比較して屈折率の差ΔN1が上記式(1)の関係を満たす第1、第2基板が組み合される。組み合わされた第1、第2基板は接着剤等により接着される。屈折率は全ての第1、第2基板について測定する必要はなく、ロット管理による抜取り測定を行ってもよい。また、第1、第2基板の屈折率の製造ばらつきが小さくなれば屈折率の測定を省いてもよい。
【0020】
また本発明は、上記構成のプリズムの製造方法において、前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN2が、
ΔN2≦|1/(0.3×10×NA×t)| ・・・(2)
の関係を満たすような第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0021】
この構成によると、波長が420nm以下のレーザ光に対する第2、第3基板の屈折率が例えば全数測定される。次に、第2基板の屈折率と第3基板の屈折率を比較して屈折率の差ΔN2が上記式(2)の関係を満たす第2、第3基板が組み合される。組み合わされた第2、第3基板は接着剤等により接着される。
【0022】
また本発明は、透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0023】
この構成によると、波長が420nm以下のレーザ光に対する第1、第2基板の屈折率が例えば全数測定される。次に、第1基板の屈折率と第2基板の屈折率を比較して屈折率の差が1/300以下の第1、第2基板が組み合される。組み合わされた第1、第2基板は接着剤等により接着される。
【0024】
また本発明は、上記構成のプリズムの製造方法において、前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0025】
この構成によると、波長が420nm以下のレーザ光に対する第2、第3基板の屈折率が例えば全数測定される。次に、第2基板の屈折率と第3基板の屈折率を比較して屈折率の差が1/300以下の第2、第3基板が組み合される。組み合わされた第2、第3基板は接着剤等により接着される。
【0026】
また本発明は、透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0027】
この構成によると、波長が420nm以下のレーザ光に対する第1、第2基板の屈折率が例えば全数測定される。次に、第1基板の屈折率と第2基板の屈折率を比較して屈折率の差が1/1500以下の第1、第2基板が組み合される。組み合わされた第1、第2基板は接着剤等により接着される。
【0028】
また本発明は、上記構成のプリズムの製造方法において、前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0029】
この構成によると、波長が420nm以下のレーザ光に対する第2、第3基板の屈折率が例えば全数測定される。次に、第2基板の屈折率と第3基板の屈折率を比較して屈折率の差が1/1500以下の第2、第3基板が組み合される。組み合わされた第2、第3基板は接着剤等により接着される。
【0030】
また本発明は、波長が420nm以下であるレーザ光を出射する光源と、
透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムと、
を備えた光学システムの製造方法において、貼り合わせられる第1、第2基板の入射光軸方向の厚さをt(mm)、入射光の開口数をNAとした時に、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN1が、
ΔN1≦|1/(0.3×10×NA×t)|
の関係を満たすような第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0031】
また本発明は、上記構成の光学システムの製造方法において、前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN2が、
ΔN2≦|1/(0.3×10×NA×t)|
の関係を満たすような第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0032】
また本発明は、波長が420nm以下であるレーザ光を出射する光源と、透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムとを備えた光学システムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0033】
また本発明は、上記構成の光学システムの製造方法において、前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0034】
また本発明は、波長が420nm以下であるレーザ光を出射する光源と、透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムとを備えた光学システムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0035】
また本発明は、上記構成の光学システムの製造方法において、前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴としている。
【0036】
また本発明は、上記各構成のプリズムの製造方法及び光学システムの製造方法において、前記光学薄膜はPBS膜、BS膜、ダイクロイック膜、反射防止膜または全反射膜から成ることを特徴としている。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態の光ピックアップは前述の図1に示すように構成されている。第1光源2から出射される光の波長(第1の波長)は405nm帯であり、第2光源3から出射される光の波長(第2の波長)は650nm帯になっている。
【0038】
これにより、ディスクDが次世代DVDやブルーレイディスク等の場合は第1光源2の出射光により信号の読み取り及び書き込みが行われ、ディスクDがDVD−ROMの場合は第2光源3の出射光により信号の読み取りが行われる。また、CD−ROM等の読み取りや書き込みを行うための第3光源を設けても良い。
【0039】
図2は光ピックアップ1のプリズム8の製造工程を示す工程図である。前述したようにプリズム8は基板8a、8b、8c(図2において基板A、B、Cと記す)を貼り合わせて形成される。基板8a、8b、8cは透光性の材料から成っており、SK10等のガラスや樹脂等を用いることができる。
【0040】
基板8a、8cは同様の工程により形成される。傾斜面研磨工程では傾斜面となる板状部材の一面がラッピングやポリッシングにより所定の面粗さ及び平面度に研磨される。切断工程では板状部材をスライサー等により切断してそれぞれ図1に示すような断面形状が台形に形成される。屈折率測定工程では基板8a、8cに波長が405nmの青色光を照射して屈折率が測定される。
【0041】
基板8bは傾斜面研磨工程で傾斜面となる板状部材の両面がラッピングやポリッシングにより所定の面粗さ及び平面度に研磨される。成膜工程では板状部材の一面にPBS膜8dが成膜され、他面にBS膜8eが成膜される。切断工程では板状部材をスライサー等により切断し、図1に示すような断面形状が平行四辺形に形成される。屈折率測定工程では基板8bに波長が405nmの青色光を照射して屈折率が測定される。
【0042】
屈折率を測定した基板8a、8b、8cは屈折率組合わせ工程において、基板8bに対して屈折率の差が1/1500以下の基板8a、8cが選別して組み合わされる。ペアリングされた基板8a、8b、8cは接着工程で紫外線硬化型樹脂等により互いの傾斜面が接着される。
【0043】
接着された基板8a、8b、8cは外形研磨工程で、ディスクDに平行に配される二面と受光素子13に対向する面がラッピングやポリッシングにより所定の面粗さ及び平面度に研磨される。そして、反射防止膜成膜工程でディスクDに平行な二面に反射防止膜が成膜され、プリズム8が得られる。
【0044】
図3は上記製造工程によって形成されたプリズム8の波面収差を測定した結果を示す図である。縦軸は波面収差(単位:mλrms)を示しており、横軸は基板8a、8c、8cの屈折率の差を示している。プリズム8の厚みt(図1参照)は2.67mm、基板8a、8c、8cの材質はSK10であり、プリズム8に入射する光の開口数NAは0.15である。
【0045】
図中、白点はPBS膜8dを介して基板8a、8bを厚みt(図1参照)の方向に透過する光の波面収差を示しており、黒点はBS膜8eを介して基板8b、8cを厚みtの方向に透過する光の波面収差を示している。比較のため、屈折率差が1/500、1/830の場合も併記し、これらの近似値を直線B(破線)で示している。また、図中、曲線Aは波面収差のシミュレーションによる理論値を示している。
【0046】
同図によると、屈折率の差が1/1500以下の基板8a、8b、8cを組み合わせて貼り合わることにより、理論値上波面収差を22mλrmsにすることができ、実測値(近似値)においても25mλrms以下にすることができる。従って、波面収差が25mλrmsを超える不良を低減してプリズム8の歩留りを向上させることができる。
【0047】
また、基板8a、8b、8cの屈折率の差を1/3000以下にすると、波面収差を理論値上12mλrms以下にすることができ、実測値でも15mλrms以下にすることができる。従って、屈折率組合わせ工程において、基板8bに対して屈折率の差が1/3000以下の基板8a、8cが選別して組み合わせることにより、波面収差が25mλrmsを超える不良をより低減することができる。その結果、プリズム8及び光ピックアップ1の歩留りを更に向上させることができる。
【0048】
更に、基板8a、8b、8cの屈折率の差を1/10000以下にすると、波面収差を理論値及び実測値で10mλrms以下にすることができる。このため、屈折率組合わせ工程において、基板8bに対して屈折率の差が1/10000以下の基板8a、8cが選別して組み合わせるとより望ましい。
【0049】
本実施形態において、屈折率測定工程で基板8a、8b、8cの屈折率を全数測定しているが必ずしも全数行う必要はなく、接着工程において屈折率の差が1/1500の基板8a、8b及び基板8b、8cが組み合わされていればよい。例えば、板状部材内の屈折率のばらつきが小さい場合は、同一板状部材から得られる基板をロット管理して1ロットにつき決められた数量の基板の屈折率を抜取り測定してもよい。屈折率のばらつきが小さい同一板状部材から得られる基板を組み合わせる場合や、全ての板状部材について屈折率のばらつきが小さい場合は、基板の屈折率の測定を省いてもよい。
【0050】
上記図3において、シミュレーションによる理論値はプリズム8に光線が入射する際に発生する球面収差を含んでいる。これにより、実測値と一致した理論値が得られている。同図に示すように、球面収差が発生するため基板8a、8b、8cの屈折率差を0にしても波面収差が0にはならない。
【0051】
しかしながら、球面収差を排除した光学系になると基板8a、8b、8cの屈折率の差によってより波面収差を低減することができる。図4は球面収差を排除した場合の基板8a、8bを透過する光の波面収差のシミュレーションによる理論値を示している。縦軸は波面収差(単位:mλrms)を示しており、横軸は基板の屈折率の差を示している。
【0052】
基板8a、8bの入射光軸方向の厚みt及び基板8a、8bの入射光の開口数NAは、C1がt=1mm、NA=0.1、C2がt=1mm、NA=0.3、C3がt=4mm、NA=0.1である。比較のため前述の図3のシミュレーション値(A)を併記している。
【0053】
波面収差AS(mλrms)は基板8a、8bの屈折率差ΔN1、入射光の開口率NA、基板8a、8bの入射光軸方向の厚みt(mm)に比例し、式(3)の関係になっている。これにより、波面収差ASが25mλrms以下となるには、式(4)の関係を満たせばよい。従って、屈折率組合わせ工程(図2参照)において、式(4)の関係を満たす基板8a、8bを組み合わせることにより波面収差ASを25mλrms以下にできる。尚、プリズム8に入射する光はNA変換レンズ等で開口数NAが変換されていてもよい。
【0054】
AS=7.5×10×ΔN1×NA×t ・・・(3)
ΔN1≦|1/(0.3×10×NA×t)| ・・・(4)
【0055】
基板8b、8cの屈折率差ΔN2についても同様に規定することができる。ここで、基板8b、8cを透過する光はプリズム8に入射する光の光軸方向に対して直交する(図1参照)。波面収差は透過光の有効径が小さいほど小さくなるため、基板8a、8bを透過する光の波面収差よりも基板8b、8cを透過する光の波面収差の方が小さくなる。また、基板8aと基板8cとを共通にした方が製造工数を削減することができる。
【0056】
このため、式(4)の基板8a、8bの入射光軸方向の厚みtを用いて基板8b、8cの屈折率差ΔN2を規定するとより厳しい条件で規定できるとともに基板8a、8cの共通化を図ることができる。従って、屈折率組合わせ工程(図2参照)において、式(5)の関係を満たす基板8b、8cを組み合わせることにより、基板8b、8cを透過する光の波面収差ASを25mλrms以下にできる。
【0057】
ΔN2≦|1/(0.3×10×NA×t)| ・・・(5)
【0058】
また、現在想定されている使用波長が405nm帯のピックアップ光学系の光学システムではプリズム8に入射する光の開口数NAが0.1〜0.4程度、プリズム8の厚みtが1.0〜4.0mm程度になっている。要求される波面収差は検出系の構成や対象となるシステム設計等により異なるが、上限値が5〜25mλrmsの範囲である。
【0059】
例えば、基板8a、8bの屈折率の差ΔN1や基板8b、8cの屈折率の差ΔN2が1/300以下となるように組合わせてプリズム8を得る。このプリズム8をNA=0.3、t=1mmの光学システムに搭載すると、理論値上波面収差の発生量の最大値が75mλrmsになり使用できない。
【0060】
これに対してNA=0.1、t=1mmの光学システムでは理論値上波面収差の発生量は25mλrms以下になり同じプリズム8を使用することができる。従って、基板8a、8bの屈折率の差ΔN1及び基板8b、8cの屈折率の差ΔN2を1/300以下とすることによって波面収差が25mλrms以下のピックアップ光学系の光学システムを得ることができる。屈折率の差ΔN1、ΔN2が1/300を超える場合は現在想定されるプリズムの入射光の開口数NA及びプリズムの厚みtの範囲では波面収差が25mλrmsを超えるため使用することができない。
【0061】
基板8a、8bの屈折率の差ΔN1及び基板8b、8cの屈折率の差ΔN2が1/400以下となるように組合わせたプリズム8を用いると、NA=0.1、t=1mmの光学システムでは理論値上波面収差の発生量を20mλrms以下にすることができる。従って、波面収差が20mλrms以下のピックアップ光学系の光学システムを得ることができる。尚、NA=0.13、t=1mmの光学システムやNA=0.1、t=1.3mmの光学システムでは理論値上波面収差の発生量を25mλrms以下にすることができる。
【0062】
基板8a、8bの屈折率の差ΔN1及び基板8b、8cの屈折率の差ΔN2が1/500以下となるように組合わせたプリズム8を用いると、NA=0.1、t=1mmの光学システムでは理論値上波面収差の発生量を15mλrms以下にすることができる。従って、波面収差が15mλrms以下のピックアップ光学系の光学システムを得ることができる。尚、NA=0.17、t=1mmのシステムやNA=0.1、t=1.7mmの光学システムでは理論値上波面収差の発生量を25mλrms以下にすることができる。
【0063】
基板8a、8bの屈折率の差ΔN1及び基板8b、8cの屈折率の差ΔN2が1/1500以下となるように組合わせたプリズム8を用いると、NA=0.1、t=1mmの光学システムでは理論値上波面収差の発生量を5mλrms以下にすることができる。従って、波面収差が5mλrms以下のピックアップ光学系の光学システムを得ることができる。尚、NA=0.25、t=2mmのシステムやNA=0.2、t=2.5mmの光学システムでは理論値上波面収差の発生量を25mλrms以下にすることができる。
【0064】
以上のように、基板の屈折率差は、使用されるシステム構成と要求精度に基づく波面収差の許容量に応じてシミュレーション結果から適時選択すればよい。
【0065】
尚、プリズム8の形状は図1に示す形状に限られない。例えば、図5に示すように、基板8a、8bを貼り合わせ、基板8c(図1参照)を省いた構成でもよい。また、図6に示すように、ディスクDに垂直な方向の基板8a、8bの厚みを大きくし、第1波長の光と第2波長の光を同じ方向に出射させて受光素子12、13(図1参照)により捉える構成でもよい。
【0066】
加えて、本実施形態では使用波長が405nm帯のプリズムを用いた光ピックアップについて説明しているが、光源の波長のばらつきを含めて波長が420nm以下の光ビームを使用するプリズムを用いた光ピックアップを含む光学システムにおいて同様の効果を得ることができる。
【0067】
更に、PBS膜8d及びBS膜8eから成る光学薄膜を有するプリズム8について説明しているが、他の光学薄膜を有するプリズムであっても同様の効果を得ることができる。例えば、光学薄膜として反射防止膜、全反射膜、ハーフミラー膜、ダイクロイック膜等を用いてもよい。
【0068】
【発明の効果】
本発明によると、第1、第2基板の屈折率の差ΔN1や第2、第3基板の屈折率の差ΔN2が
ΔN1≦|1/(0.3×10×NA×t)|
ΔN2≦|1/(0.3×10×NA×t)|
の関係を満たすように組み合わせて、光学薄膜を介して貼り合わせているので、プリズムの波面収差を25mλrms以内にすることができる。従って、波面収差が許容値を超える不良を低減してプリズム及び光学システムの歩留りを向上させることができる。
【0069】
また本発明によると、第1、第2基板の屈折率の差や第2、第3基板の屈折率の差が1/300以下になるように組み合わせ、光学薄膜を介して貼り合わせているので理論値上、プリズムの波面収差が25mλrms以下の光学システムを得ることができる。従って、波面収差が許容値を超える不良を低減してプリズム及び光学システムの歩留りを向上させることができる。
【0070】
また本発明によると、第1、第2基板の屈折率の差や第2、第3基板の屈折率の差が1/1500以下になるように組み合わせ、光学薄膜を介して貼り合わせているので理論値上、プリズムの波面収差が5mλrms以下の光学システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、光ピックアップの構成図である。
【図2】は、本発明の実施形態のプリズムの製造工程を示す工程図である。
【図3】は、本発明の実施形態のプリズムの製造工程により製造されたプリズムの特性を示す図である。
【図4】は、本発明の実施形態のプリズムの製造工程の基板を選別する条件を説明する図である。
【図5】は、光ピックアップに用いられる他のプリズムを示す図である。
【図6】は、光ピックアップに用いられる更に他のプリズムを示す図である。
【符号の説明】
1 光ピックアップ
2 第1光源
3 第2光源
4 コリメータレンズ
5 ダイクロイックミラー
7 回折素子
8 プリズム
8a、8b、8c 基板
8d PBS膜
8e BS膜
10 λ/4板
11 集光レンズ
12、13 受光素子
D ディスク

Claims (14)

  1. 透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムの製造方法において、貼り合わせられる第1、第2基板の入射光軸方向の厚さをt(mm)、入射光の開口数をNAとした時に、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN1が、
    ΔN1≦|1/(0.3×10×NA×t)|
    の関係を満たすような第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とするプリズムの製造方法。
  2. 前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN2が、
    ΔN2≦|1/(0.3×10×NA×t)|
    の関係を満たすような第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項1に記載のプリズムの製造方法。
  3. 透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とするプリズムの製造方法。
  4. 前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項3に記載のプリズムの製造方法。
  5. 透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とするプリズムの製造方法。
  6. 前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項5に記載のプリズムの製造方法。
  7. 前記光学薄膜はPBS膜、BS膜、ダイクロイック膜、反射防止膜、全反射膜のいずれかから成ることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のプリズムの製造方法。
  8. 波長が420nm以下であるレーザ光を出射する光源と、
    透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムと、
    を備えた光学システムの製造方法において、貼り合わせられる第1、第2基板の入射光軸方向の厚さをt(mm)、入射光の開口数をNAとした時に、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN1が、
    ΔN1≦|1/(0.3×10×NA×t)|
    の関係を満たすような第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする光学システムの製造方法。
  9. 前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差ΔN2が、
    ΔN2≦|1/(0.3×10×NA×t)|
    の関係を満たすような第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項8に記載の光学システムの製造方法。
  10. 波長が420nm以下であるレーザ光を出射する光源と、透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムとを備えた光学システムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする光学システムの製造方法。
  11. 前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/300以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項10に記載の光学システムの製造方法。
  12. 波長が420nm以下であるレーザ光を出射する光源と、透光性の第1、第2基板を光学膜膜を介して貼り合わせ、この貼り合わせ面を波長が420nm以下であるレーザ光の入射光軸に対して斜めに傾けて使用するプリズムとを備えた光学システムの製造方法において、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第1、第2基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする光学システムの製造方法。
  13. 前記プリズムは第2基板に光学薄膜を介して貼り合わせられる第3基板を備え、使用レーザ光の波長における屈折率の差が1/1500以下の第2、第3基板を組み合わせて貼り合わせる工程を有することを特徴とする請求項12に記載の光学システムの製造方法。
  14. 前記光学薄膜はPBS膜、BS膜、ダイクロイック膜、反射防止膜または全反射膜から成ることを特徴とする請求項8〜請求項13のいずれかに記載の光学システムの製造方法。
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