JP2004340285A - 高弾性パッキン - Google Patents
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Abstract
【課題】複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組して形成するパッキンにおいて、前記編組構造体の内部に弾性芯材をパッキンの長手方向へ挿通配置することなく、パッキン全体の復元力(弾性力)不足を補い、柔軟性に優れた高弾性パッキンを得る。
【解決手段】複数本の編み糸Sa・・・,Sb・・・を断面角形の編組構造体1A,10Aに編組して形成するパッキンにおいて、角部を通過する編み糸Sa・・・をマルチフィラメントなど、曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sb・・・を紡績糸など、曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成した。
【選択図】 図2
【解決手段】複数本の編み糸Sa・・・,Sb・・・を断面角形の編組構造体1A,10Aに編組して形成するパッキンにおいて、角部を通過する編み糸Sa・・・をマルチフィラメントなど、曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sb・・・を紡績糸など、曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組して形成するパッキンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数本の編み糸を編組して形成する断面角形の編組構造体の内部に、炭素繊維やガラス繊維よりなる弾性芯材をパッキンの長手方向へ挿通配置し、パッキン全体の復元力(弾性力)不足を補う技術があった。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特公昭6−21662号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の芯有りパッキンは、弾性芯材が編組構造体長手方向に挿通配置されていることで、パッキン全体の復元力は高くなるが、柔軟に曲げることができなくなる問題があった。
【0005】
したがって本発明は、芯無しパッキンでありながら、パッキン全体に高い復元力(弾性力)が付与され、柔軟性に優れた高弾性パッキンを提供することを主たる目的としている。
【0006】
ところで、当該出願人は、複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組して形成したパッキンの圧縮・復元試験を行い、編組構造体の圧縮は、角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸において発生する配向角の変化と、角部を通過する編み糸の直線部分がジグザグ状にうねることで発生し、編組構造体の復元は、角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸において発生した圧縮による配向角の変化と、角部を通過する編み糸の直線部分において発生した圧縮によるうねりの変化が元に戻ろうとすることで発生することを見出した。その結果、編組構造体の角部を通過する編み糸の復元力にパッキン全体の復元力、即ち弾性力が影響されると考え、本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そして本発明は、複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組したパッキンにおいて、角部を通過する編み糸を曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸を曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成したことを特徴とする。
【0008】
【発明の作用・効果】
本発明は、編組構造体の角部を通過する編み糸が、角部を通過しない編み糸に比べて曲げ弾性率が大きいため、角部を通過する編み糸の復元力が高く、パッキン全体に高い復元力(弾性力)を付与でき、しかも前記の従来技術と異なって長手方向に弾性芯材を設ける必要がないので柔軟性にも優れる。この結果、圧縮時に均一に変形し、かつ均一な接触状態(密着状態)を維持できる高弾性パッキンを得ることができると共に、この高弾性パッキンは弾性芯材を必要としない分前記の従来技術に比べて廉価に得ることができる。
【0009】
また、角部を通過する編み糸の曲げ弾性率が小さいと、圧縮時に角部を通過する編み糸の直線部分に発生するうねりが大きくなリ過ぎ、パッキンの角部が引き込まれ、中央部分が大きく突出して不均一な接触状態となり、シール性能を低下させる引き込み現象を発生させるが、本発明では角部を通過する編み糸の曲げ弾性率が大きいため、前記引き込み現象も防止することができる。
【0010】
さらに、角部を通過する編み糸をマルチフィラメントなど、曲げ弾性率の大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸を紡績糸など、曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成することで、角部を通過くる編み糸と角部を通過しない編み糸との曲げ弾性率の差を大きくできると共に、初期締めで角部を通過しない編み糸を塑性変形させて、角部を通過する編み糸になじませることができ、パッキン全体により高い復元力(弾性力)を付与できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1乃至図4に基づいて説明する。図1に示す高弾性パッキン1は、所定の組成点に導いた編み糸Sを、図2に示す3つの編み糸経路P上を、各々の編み糸経路P上の複数本の編み糸Sを他の編み糸経路P上の各編み糸Sと交互に重合交差するように矢印方向に順次周回移動させながら格子状に編組させていくことによって得られた、断面正方形の紐状の格子編み構造体である編組構造体1Aからなる。
【0012】
なお、図2では各編み糸経路Pの各々に1本の編み糸Sを図示しているが、編み糸Sの本数nと編み糸経路Pの数Nとの関係は、次の数式1によって表される。
n=2N2+2N−4 ・・・・・(1)
したがって、編み糸経路Pの数が3の場合には、2・32+2・3−4=20であるから、編み糸Sの本数は20本となり、各編み糸経路Pのうち、編組構造体1Aの角部を通過する長円形の2つの編み糸経路P(以下、編組構造体1Aの対向する一組の角部を通過する一方の編み糸経路Pを第1経路P1,編組構造体1Aの対向する他の一組の角部を通過する他方の編み糸経路Pを第3経路P3という。)上では、各々6本の編み糸Sが移動し、編組構造体1Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない正方形状の1つの編み糸経路P(以下、編組構造体1Aの角部を通過しない編み糸経路Pを第2経路P2という。)上では、8本の編み糸Sが移動する。
【0013】
上記から明らかなように、図1に示す高弾性パッキン1は、3つの編み糸経路P1,P2,P3で複数本(20本)の編み糸Sを編組して形成する断面四角形状の編組構造体1Aからなる。
【0014】
また、上記編組構造体1Aを構成する編み糸Sは曲げ弾性率の異なる2種類を使用するもので、第1及び第3経路P1,P3上を移動して編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Sに曲げ弾性率の大きい側の編み糸Saを使用し、第2経路P2上を移動して編組構造体1Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない編み糸Sに曲げ弾性率の小さい側の編み糸Sbを使用し、編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを、編組構造体1Aの角部を通過しない編み糸Sbの曲げ弾性率に比べて大きくしている。
【0015】
ところで、編み糸Sの曲げ弾性率の差は、編み糸Sがマルチフィラメントなどの連続体か紡績糸などの断続体かの構造が異なることで発生する。さらに材料の種類を異ならせてもよい。特に、紡績糸は曲げ弾性が無いか無いに等しいため、構造の異なりが曲げ弾性率に大きい差を与えることができる。
【0016】
そして、編み糸Sの材料の種類としては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、PTFE繊維、膨張黒鉛など従来周知のものを使用することができる。本実施例1では、編み糸Saとして曲げ弾性率が0.1MPaのアラミド繊維のマルチフィラメントを使用し、編み糸Sbとして曲げ弾性率が0.001MPaのアラミド繊維の紡績糸を使用(材料の種類が同じマルチフィラメントと紡績糸を使用)することで、即ち編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくしている。
【0017】
また、実施例2として、編み糸Saとして曲げ弾性率が0.2MPaのガラス繊維のマルチフィラメントを使用し、編み糸Sbとして曲げ弾性率が0.001MPaのアラミド繊維の紡績糸を使用(材料の種類が異なるマルチフィラメントと紡績糸を使用)することで、即ち編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを曲げ弾性率の大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくしている。なお、上記の曲げ弾性率の測定にはJIS−K7055などが考えられる。
【0018】
上記実施例1及び2の編組構造体1A(高弾性パッキン1)をインストロン型万能試験機により荷重0〜2N/mm2までの圧縮と荷重2〜0N/mm2までの除圧を、5回繰り返し行い、その圧縮率と復元率及び中央部の突出量を調べたところ、表1のような結果が得られた。その試料サイズは、10mm角で、長さ150mmであった。なお、周知のように編組構造体1Aに繰り返し圧縮負荷を与えた場合の圧縮率及び復元率は、初回圧縮(初期締め)と2回目以降の圧縮では著しく異なるのに対して、2回目以降の圧縮ではある値に収斂して安定するため、表1は2回目以降の圧縮での圧縮率と復元率及び中央部の突出量を示す。
【0019】
ここで、圧縮率は次の数式2によって表され、
(h0−h1)/h0×100(%) ・・・・・(2)
また、復元率は下記の数式3によって表される。
(h’1−h1)/(h0−h1)×100(%) ・・・・・(3)
なお、h0は圧縮前の編組構造体1Aの高さ、h1は圧縮後の編組構造体1Aの高さ、h’1は除圧後の編組構造体1Aの高さである。
【0020】
【表1】
【0021】
上記表1から明らかなように、実施例1の高弾性パッキン1(編組構造体1A)の圧縮率は17%、復元率は83%である。これに対して、編組構造体の角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸とが同一であるパッキンの場合には、圧縮率は20%前後、復元率は30〜40%であるから、芯無しパッキンでありながら、パッキン全体に高い復元力(弾性力)を付与できたと認められる。また中央突出量も2.3mmと僅かで、引き込み現象も防止できた。
【0022】
また、実施例2の高弾性パッキン1(編組構造体1A)の圧縮率は23%、復元率は88%である。これに対して、編組構造体の角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸とが同一であるパッキンの場合には、圧縮率は20%前後、復元率は30〜40%であるから、芯無しパッキンでありながら、パッキン全体に高い復元力(弾性力)を付与できたと認められる。また中央突出量も3.2mmと僅かで、引き込み現象も防止できた。
【0023】
図3は編み糸経路Pの数を4として格子状に編組された編組構造体10Aからなる高弾性パッキン10を示しており、編み糸経路Pの数が4の場合、その編み糸Sの本数は上記数式1から、36本となり、各編み糸経路Pのうち、編組構造体10Aの角部を通過する長円形の2つの編み糸経路P(編組構造体10Aの対向する一組の角部を通過する一方の編み糸経路Pを第1経路P1,編組構造体10Aの対向する他の一組の角部を通過する他方の編み糸経路Pを第4経路P4とする。)上では、各々8本の編み糸Sが移動し、編組構造体10Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない正方形状の2つの編み糸経路P(編組構造体10Aの角部を通過しない一方の編み糸経路Pを第2経路P2、他方の編み糸経路Pを第3経路P3とする。)上では、各々10本の編み糸Sが移動する。
【0024】
上記から明らかなように、図3に示す高弾性パッキン10は、4つの編み糸経路P1,P2,P3,P4で複数本(36本)の編み糸Sを編組して形成する断面四角形状の編組構造体10Aからなる。
【0025】
そして、第1及び第4経路P1,P4上を移動して編組構造体10Aの角部を通過する編み糸Saとして曲げ弾性率が0.1MPaのアラミド繊維のマルチフィラメント又は曲げ弾性率が0.2MPaのガラス繊維のマルチフィラメントを使用し、第2及び第3経路P2,P3上を移動して編組構造体10Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない編み糸Sbとして曲げ弾性率が0.001MPaのアラミド繊維の紡績糸を使用し、編組構造体10Aの角部を通過する編み糸Saを曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体10Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくしている。
【0026】
なお、編み糸経路Pの数は3以上であればよく、また、編組構造体1A,10Aの角部を通過する編み糸Saをマルチフィラメントなど、曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを紡績糸など曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体1A,10Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくする、両編み糸Sa,Sbの材料の種類は、上記実施例の如きアラミド繊維やガラス繊維に限定されるものではなく、使用環境などに応じて適宜選択される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高弾性パッキンの実施例を示す外観図
【図2】図1の高弾性パッキンの編み糸経路の模式図
【図3】高弾性パッキンの変形例を示す外観図
【図4】図3の高弾性パッキンの編み糸経路の模式図
【符号の説明】
1,10 高弾性パッキン
1A,10a 編組構造体
Sa 編組構造体の角部を通過する編み糸
Sb 編組構造体の角部を通過しない編み糸
P1,P2,P3,P4 編み糸経路
【発明が属する技術分野】
本発明は、複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組して形成するパッキンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数本の編み糸を編組して形成する断面角形の編組構造体の内部に、炭素繊維やガラス繊維よりなる弾性芯材をパッキンの長手方向へ挿通配置し、パッキン全体の復元力(弾性力)不足を補う技術があった。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特公昭6−21662号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の芯有りパッキンは、弾性芯材が編組構造体長手方向に挿通配置されていることで、パッキン全体の復元力は高くなるが、柔軟に曲げることができなくなる問題があった。
【0005】
したがって本発明は、芯無しパッキンでありながら、パッキン全体に高い復元力(弾性力)が付与され、柔軟性に優れた高弾性パッキンを提供することを主たる目的としている。
【0006】
ところで、当該出願人は、複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組して形成したパッキンの圧縮・復元試験を行い、編組構造体の圧縮は、角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸において発生する配向角の変化と、角部を通過する編み糸の直線部分がジグザグ状にうねることで発生し、編組構造体の復元は、角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸において発生した圧縮による配向角の変化と、角部を通過する編み糸の直線部分において発生した圧縮によるうねりの変化が元に戻ろうとすることで発生することを見出した。その結果、編組構造体の角部を通過する編み糸の復元力にパッキン全体の復元力、即ち弾性力が影響されると考え、本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そして本発明は、複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組したパッキンにおいて、角部を通過する編み糸を曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸を曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成したことを特徴とする。
【0008】
【発明の作用・効果】
本発明は、編組構造体の角部を通過する編み糸が、角部を通過しない編み糸に比べて曲げ弾性率が大きいため、角部を通過する編み糸の復元力が高く、パッキン全体に高い復元力(弾性力)を付与でき、しかも前記の従来技術と異なって長手方向に弾性芯材を設ける必要がないので柔軟性にも優れる。この結果、圧縮時に均一に変形し、かつ均一な接触状態(密着状態)を維持できる高弾性パッキンを得ることができると共に、この高弾性パッキンは弾性芯材を必要としない分前記の従来技術に比べて廉価に得ることができる。
【0009】
また、角部を通過する編み糸の曲げ弾性率が小さいと、圧縮時に角部を通過する編み糸の直線部分に発生するうねりが大きくなリ過ぎ、パッキンの角部が引き込まれ、中央部分が大きく突出して不均一な接触状態となり、シール性能を低下させる引き込み現象を発生させるが、本発明では角部を通過する編み糸の曲げ弾性率が大きいため、前記引き込み現象も防止することができる。
【0010】
さらに、角部を通過する編み糸をマルチフィラメントなど、曲げ弾性率の大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸を紡績糸など、曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成することで、角部を通過くる編み糸と角部を通過しない編み糸との曲げ弾性率の差を大きくできると共に、初期締めで角部を通過しない編み糸を塑性変形させて、角部を通過する編み糸になじませることができ、パッキン全体により高い復元力(弾性力)を付与できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1乃至図4に基づいて説明する。図1に示す高弾性パッキン1は、所定の組成点に導いた編み糸Sを、図2に示す3つの編み糸経路P上を、各々の編み糸経路P上の複数本の編み糸Sを他の編み糸経路P上の各編み糸Sと交互に重合交差するように矢印方向に順次周回移動させながら格子状に編組させていくことによって得られた、断面正方形の紐状の格子編み構造体である編組構造体1Aからなる。
【0012】
なお、図2では各編み糸経路Pの各々に1本の編み糸Sを図示しているが、編み糸Sの本数nと編み糸経路Pの数Nとの関係は、次の数式1によって表される。
n=2N2+2N−4 ・・・・・(1)
したがって、編み糸経路Pの数が3の場合には、2・32+2・3−4=20であるから、編み糸Sの本数は20本となり、各編み糸経路Pのうち、編組構造体1Aの角部を通過する長円形の2つの編み糸経路P(以下、編組構造体1Aの対向する一組の角部を通過する一方の編み糸経路Pを第1経路P1,編組構造体1Aの対向する他の一組の角部を通過する他方の編み糸経路Pを第3経路P3という。)上では、各々6本の編み糸Sが移動し、編組構造体1Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない正方形状の1つの編み糸経路P(以下、編組構造体1Aの角部を通過しない編み糸経路Pを第2経路P2という。)上では、8本の編み糸Sが移動する。
【0013】
上記から明らかなように、図1に示す高弾性パッキン1は、3つの編み糸経路P1,P2,P3で複数本(20本)の編み糸Sを編組して形成する断面四角形状の編組構造体1Aからなる。
【0014】
また、上記編組構造体1Aを構成する編み糸Sは曲げ弾性率の異なる2種類を使用するもので、第1及び第3経路P1,P3上を移動して編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Sに曲げ弾性率の大きい側の編み糸Saを使用し、第2経路P2上を移動して編組構造体1Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない編み糸Sに曲げ弾性率の小さい側の編み糸Sbを使用し、編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを、編組構造体1Aの角部を通過しない編み糸Sbの曲げ弾性率に比べて大きくしている。
【0015】
ところで、編み糸Sの曲げ弾性率の差は、編み糸Sがマルチフィラメントなどの連続体か紡績糸などの断続体かの構造が異なることで発生する。さらに材料の種類を異ならせてもよい。特に、紡績糸は曲げ弾性が無いか無いに等しいため、構造の異なりが曲げ弾性率に大きい差を与えることができる。
【0016】
そして、編み糸Sの材料の種類としては、例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、PTFE繊維、膨張黒鉛など従来周知のものを使用することができる。本実施例1では、編み糸Saとして曲げ弾性率が0.1MPaのアラミド繊維のマルチフィラメントを使用し、編み糸Sbとして曲げ弾性率が0.001MPaのアラミド繊維の紡績糸を使用(材料の種類が同じマルチフィラメントと紡績糸を使用)することで、即ち編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくしている。
【0017】
また、実施例2として、編み糸Saとして曲げ弾性率が0.2MPaのガラス繊維のマルチフィラメントを使用し、編み糸Sbとして曲げ弾性率が0.001MPaのアラミド繊維の紡績糸を使用(材料の種類が異なるマルチフィラメントと紡績糸を使用)することで、即ち編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを曲げ弾性率の大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体1Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくしている。なお、上記の曲げ弾性率の測定にはJIS−K7055などが考えられる。
【0018】
上記実施例1及び2の編組構造体1A(高弾性パッキン1)をインストロン型万能試験機により荷重0〜2N/mm2までの圧縮と荷重2〜0N/mm2までの除圧を、5回繰り返し行い、その圧縮率と復元率及び中央部の突出量を調べたところ、表1のような結果が得られた。その試料サイズは、10mm角で、長さ150mmであった。なお、周知のように編組構造体1Aに繰り返し圧縮負荷を与えた場合の圧縮率及び復元率は、初回圧縮(初期締め)と2回目以降の圧縮では著しく異なるのに対して、2回目以降の圧縮ではある値に収斂して安定するため、表1は2回目以降の圧縮での圧縮率と復元率及び中央部の突出量を示す。
【0019】
ここで、圧縮率は次の数式2によって表され、
(h0−h1)/h0×100(%) ・・・・・(2)
また、復元率は下記の数式3によって表される。
(h’1−h1)/(h0−h1)×100(%) ・・・・・(3)
なお、h0は圧縮前の編組構造体1Aの高さ、h1は圧縮後の編組構造体1Aの高さ、h’1は除圧後の編組構造体1Aの高さである。
【0020】
【表1】
【0021】
上記表1から明らかなように、実施例1の高弾性パッキン1(編組構造体1A)の圧縮率は17%、復元率は83%である。これに対して、編組構造体の角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸とが同一であるパッキンの場合には、圧縮率は20%前後、復元率は30〜40%であるから、芯無しパッキンでありながら、パッキン全体に高い復元力(弾性力)を付与できたと認められる。また中央突出量も2.3mmと僅かで、引き込み現象も防止できた。
【0022】
また、実施例2の高弾性パッキン1(編組構造体1A)の圧縮率は23%、復元率は88%である。これに対して、編組構造体の角部を通過する編み糸と角部を通過しない編み糸とが同一であるパッキンの場合には、圧縮率は20%前後、復元率は30〜40%であるから、芯無しパッキンでありながら、パッキン全体に高い復元力(弾性力)を付与できたと認められる。また中央突出量も3.2mmと僅かで、引き込み現象も防止できた。
【0023】
図3は編み糸経路Pの数を4として格子状に編組された編組構造体10Aからなる高弾性パッキン10を示しており、編み糸経路Pの数が4の場合、その編み糸Sの本数は上記数式1から、36本となり、各編み糸経路Pのうち、編組構造体10Aの角部を通過する長円形の2つの編み糸経路P(編組構造体10Aの対向する一組の角部を通過する一方の編み糸経路Pを第1経路P1,編組構造体10Aの対向する他の一組の角部を通過する他方の編み糸経路Pを第4経路P4とする。)上では、各々8本の編み糸Sが移動し、編組構造体10Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない正方形状の2つの編み糸経路P(編組構造体10Aの角部を通過しない一方の編み糸経路Pを第2経路P2、他方の編み糸経路Pを第3経路P3とする。)上では、各々10本の編み糸Sが移動する。
【0024】
上記から明らかなように、図3に示す高弾性パッキン10は、4つの編み糸経路P1,P2,P3,P4で複数本(36本)の編み糸Sを編組して形成する断面四角形状の編組構造体10Aからなる。
【0025】
そして、第1及び第4経路P1,P4上を移動して編組構造体10Aの角部を通過する編み糸Saとして曲げ弾性率が0.1MPaのアラミド繊維のマルチフィラメント又は曲げ弾性率が0.2MPaのガラス繊維のマルチフィラメントを使用し、第2及び第3経路P2,P3上を移動して編組構造体10Aの角部以外の中央部を通過し角部を通過しない編み糸Sbとして曲げ弾性率が0.001MPaのアラミド繊維の紡績糸を使用し、編組構造体10Aの角部を通過する編み糸Saを曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体10Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくしている。
【0026】
なお、編み糸経路Pの数は3以上であればよく、また、編組構造体1A,10Aの角部を通過する編み糸Saをマルチフィラメントなど、曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸Sbを紡績糸など曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成し、編組構造体1A,10Aの角部を通過する編み糸Saを、角部を通過しない編み糸Sbに比べて曲げ弾性率を大きくする、両編み糸Sa,Sbの材料の種類は、上記実施例の如きアラミド繊維やガラス繊維に限定されるものではなく、使用環境などに応じて適宜選択される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高弾性パッキンの実施例を示す外観図
【図2】図1の高弾性パッキンの編み糸経路の模式図
【図3】高弾性パッキンの変形例を示す外観図
【図4】図3の高弾性パッキンの編み糸経路の模式図
【符号の説明】
1,10 高弾性パッキン
1A,10a 編組構造体
Sa 編組構造体の角部を通過する編み糸
Sb 編組構造体の角部を通過しない編み糸
P1,P2,P3,P4 編み糸経路
Claims (1)
- 複数本の編み糸を断面角形の編組構造体に編組したパッキンにおいて、角部を通過する編み糸を曲げ弾性率が大きい材料で構成し、角部を通過しない編み糸を曲げ応力に対し塑性変形する糸で構成したことを特徴とする高弾性パッキン。
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-
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- 2003-05-16 JP JP2003138365A patent/JP2004340285A/ja active Pending
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