JP2004340213A - クラッチ機構およびねじ締め機 - Google Patents
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Abstract
【課題】ねじ締め機等のクラッチ機構であって、ねじ締め方向に押し付けるとスピンドル側のクラッチ板が後退して駆動側クラッチ板と噛み合い、これにより動力が伝達されるクラッチ機構において、従来停止しているスピンドル側のクラッチ板に高速回転する駆動側のクラッチ板が噛み合う段階でクラッチ歯同士が衝突して大きな衝撃を受け、これにより当該クラッチ機構の耐久性が損なわれる問題があった。本発明では、この種のクラッチ機構の耐久性を高めることを目的とする。
【解決手段】クラッチ歯の先端に、噛み合い面よりも噛み合い角度が小さい補助噛み合い面を設け、先ずこの補助噛み合い面同士を当接させることによりスピンドル側のクラッチ板を回転させ、この回転状態で噛み合い面を当接させてクラッチ歯を噛み合わせる構成とする。
【選択図】 図1
【解決手段】クラッチ歯の先端に、噛み合い面よりも噛み合い角度が小さい補助噛み合い面を設け、先ずこの補助噛み合い面同士を当接させることによりスピンドル側のクラッチ板を回転させ、この回転状態で噛み合い面を当接させてクラッチ歯を噛み合わせる構成とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばねじ締め機のクラッチ機構であって、駆動側の回転動力を出力軸に対して伝達し、遮断するクラッチ機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のクラッチ機構には、例えば特公平3−5952号公報に開示されたものがあった。この従来のクラッチ機構を備えたねじ締め機の要部を、同公報の図2aを援用した図9に示した。
このねじ締め機50は、図示されていないモータにより回転する駆動軸54(駆動ギヤ54a)と、同じく図示されていないハウジングの先端部にストッパスリーブ51を介して軸回りに回転可能かつ軸方向に一定の範囲で移動可能に支持されたスピンドル52を備えている。駆動軸54とスピンドル52との間にクラッチ機構60が介装されている。スピンドル52の先端にドライバビット53が装着されている。ドライバビット53は、スピンドル52と一体で回転し、かつ軸方向に移動する。スピンドル52がねじ締め方向に回転することによりドライバビット53を介してねじSが回転し、従って材料WにねじSが締め込まれていく。
【0003】
クラッチ機構60は、駆動軸54に固定された駆動側クラッチ板61と、スピンドル52に固定された出力側クラッチ板62と、両クラッチ板61,62間において軸方向変位可能に配置された中間クラッチ板63を備えている。駆動軸54および駆動側クラッチ板61は、軸方向へは変位しない。また、図では示されていないが、駆動側クラッチ板61と中間クラッチ板63との間には、圧縮ばねが介装されている。このため、中間クラッチ板63は、駆動側クラッチ板61から離れる方向(出力側クラッチ板62に接近する方向)に付勢されている。
駆動側クラッチ板61の前面には、クラッチ歯61a〜61aが形成されている。このクラッチ歯61a〜61aに対向して、中間クラッチ板63の後面には、クラッチ歯63a〜63aが形成されている。
中間クラッチ板63の前面には係合凸部63b,63bが設けられ、これに対向して出力側クラッチ板62の後面には係合凸部62b,62bが設けられている。各係合凸部62b,63bの回転方向前部および後部には、それぞれ回転方向に対して直交する係合面62c,63cと、回転方向に対して傾斜する案内面62d,63dと、回転方向に沿った当接面62e,63eが形成されている。
【0004】
このように構成されたクラッチ機構60によれば、当該ねじ締め機の非使用時(電動モータの停止状態)には、中間クラッチ板63が圧縮ばねにより駆動側クラッチ板61から離間して、出力側クラッチ板62に接近した状態となっている。この状態では、駆動側クラッチ板61のクラッチ歯61aと中間クラッチ板63のクラッチ歯63aは噛み合っていない。また、中間クラッチ板63の係合凸部63bは出力側クラッチ板62の当接面62eに当接され、従って出力側クラッチ板62の係合凸部62bは中間クラッチ板63の当接面63eに当接している。この非使用状態から電動モータを起動して当該ねじ締め機をねじ締め方向に押し付けると、中間クラッチ板63のクラッチ歯63aが、回転する駆動側クラッチ板62のクラッチ歯62aに噛み合い始める。クラッチ歯63aがクラッチ歯62aに噛み合い始めると、その直後に中間クラッチ板63が未だ停止状態の出力側クラッチ板62に対して相対回転し、これにより中間クラッチ板63の係合凸部63bが出力側クラッチ板62の係合凸部62bの傾斜面62dに沿って移動し、最終的に両者62,63の係合凸部62b,63bがその係合面62c,63cを相互に当接させた状態で噛み合う。中間クラッチ板63は、その係合凸部63bが出力側クラッチ板62の係合凸部62bの傾斜面62cに沿って移動することにより圧縮ばねに抗して駆動側クラッチ板61に接近する方向に移動し、これにより中間クラッチ板63のクラッチ歯63aが駆動側クラッチ板61のクラッチ歯61aに瞬時に噛み合う。
こうしてクラッチ歯61aとクラッチ歯63aが噛み合い、かつ係合凸部62b,63bの係合面62c,63cが相互に当接することにより、当該クラッチ機構60が繋がれて電動モータの回転出力がスピンドル52に伝達され、これによりネジsが締め込まれていく。
【0005】
ねじ締めが進行してストッパスリーブ51がねじ締め材Wに当接し、その後さらにネジsが締め込まれていくことにより中間クラッチ板63が駆動側クラッチ板61から徐々に離れていき、これによりクラッチ歯61aとクラッチ歯63aとの噛み合いは徐々に浅くなっていく。ネジsが完全に締め込まれた段階で、クラッチ歯63aがクラッチ歯61aから外れ、これにより中間クラッチ板63への回転動力の伝達が遮断される。回転動力が伝達されなくなると中間クラッチ板63は、圧縮ばねにより出力側クラッチ板62に接近する方向へ移動して駆動側クラッチ板61から離間し、これによりクラッチ歯61aとクラッチ歯63aとの間に瞬時に適正なすき間が発生して駆動側クラッチ板61が静かに空転する状態となる。
【0006】
【特許文献1】
特公平3−5952号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように上記従来のクラッチ機構60は、回転動力を繋ぐ段階で、未だ停止している状態の中間クラッチ板63のクラッチ歯63aをすでに回転している状態の駆動側クラッチ板61のクラッチ歯61aに噛み合わせる構成であるので、クラッチ歯63aに対してクラッチ歯61aが衝撃的に当接し、その結果これらクラッチ歯61a,63aの耐久性および耐摩耗性に問題があった。
クラッチ歯61a,63a同士の衝撃的な噛み合いによりこれらの摩耗が進行すると、クラッチ歯61aからクラッチ歯63aが外れるタイミングが早くなり、その結果ねじSが完全に締め込まれていない段階で回転動力の伝達が遮断されてしまい、従ってねじSの締め込み不足が発生する。
また、クラッチ歯61a,63aが摩耗すると噛み合い時に騒音が発生し始め、これをもって当該クラッチ機構60の寿命とされ、ひいてはねじ締め作業は可能であってもねじ締め機自体の寿命とされてきた。
特に、近年、例えばボード用スクリュドライバに要求される回転数は高速化しており、このために組み込まれているクラッチ機構におけるクラッチ歯の噛み合い始めの衝撃がさらに大きくなる傾向にあることから、当該クラッチ機構におけるクラッチ歯の耐久性および耐摩耗性の向上が一層求められている。
そこで、本発明は、この種のクラッチ機構におけるクラッチ歯の噛み合い時における衝撃を低減してその耐久性を向上させることができるクラッチ機構を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明は、前記請求項に記載した構成のクラッチ機構とした。
請求項1記載のクラッチ機構によれば、出力軸を後退させると、先ず駆動側クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面と出力側クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面が当接する。ここで、両補助噛み合い面は、噛み合い角度が前後の噛み合い面よりも小さいので、当接方向(軸方向)に直交する方向について噛み合い面よりも広い面積で当接することとなり、その結果単位面積当たりではより小さな衝撃で噛み合う。
両補助噛み合い面が噛み合うことにより出力側クラッチ板が駆動側クラッチ板と一体で回転し始める。駆動側クラッチ板と出力側クラッチ板が一体で回転して、伝達される回転トルクが徐々に増大すると、補助噛み合い面同士の噛み合い角度は小さいので両補助噛み合い面の噛み合いは外れる。両補助噛み合い面が外れると、その直後に両クラッチ歯が噛み合い面を当接させて噛み合う。
従って、駆動側クラッチ板のクラッチ歯と出力側クラッチ板のクラッチ歯は、両クラッチ板が一体で回転する状態で噛み合わされる。このことから、停止している出力側クラッチ板のクラッチ歯に噛み合わせる場合に比して噛み合わせ時の衝撃を大幅に低減させることができ、これによりクラッチ歯の摩耗を低減し、その損傷を防止して当該クラッチ機構の耐久性を高めることができ、ひいては両クラッチ歯が外れるタイミングを長期間にわたって良好に維持することができる。
この明細書において、クラッチ歯の噛み合い面または補助噛み合い面の「噛み合い角度」とは、駆動側クラッチ板(または出力側クラッチ板)の回転方向に対する噛み合い面または補助噛み合い面の傾斜角度をいうものとする。
補助噛み合い面同士の噛み合い角度が小さいことから相互に当接する噛み合い面積の回転方向成分(駆動軸に直交する方向の投影面積)は、噛み合い面に比して大きくなる。従って補助噛み合い面の噛み合いにより付加される単位面積当たりの衝撃は、噛み合い面が直接噛み合う構成よりも小さくなる。しかも、上記したように、出力側クラッチ板を回転させながら駆動側クラッチ板が出力側クラッチ板に噛み合わされるので、この段階で発生する衝撃そのものが従来に比して大幅に低減される。
【0009】
請求項2記載のクラッチ機構は、駆動側クラッチ板と出力側クラッチ板との間に中間クラッチ板を備えた、いわゆるサイレントクラッチ機構であり、係るサイレントクラッチ機構によれば、クラッチ遮断時における駆動側クラッチ板の静かな空転状態を得ることができる。
このサイレントクラッチ機構によれば、出力軸を後退させて中間クラッチ板を駆動側クラッチ板に接近させると、先ず駆動側クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面と中間クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面が当接し、これにより中間クラッチ板ひいては出力側クラッチ板および出力軸が駆動側クラッチ板と一体で回転し始める。伝達される回転トルクの増大により補助噛み合い面同士の噛み合いが外れ、その直後に出力軸が回転しつつさらに後退することにより、駆動側クラッチ板のクラッチ歯と中間クラッチ板のクラッチ歯が噛み合う。
このように、請求項2記載のサイレントクラッチ機構によっても、単位面積当たりでより小さな衝撃で補助噛み合い面を噛み合わせることにより、中間クラッチ板を回転させながら、駆動側クラッチ板のクラッチ歯を中間クラッチ板のクラッチ歯に噛み合わせることができるので、両クラッチ歯の噛み合い時点の衝撃を従来よりも大幅に低減することができ、これにより当該クラッチ機構の耐久性を高めることができる。
請求項3記載のねじ締め機によれば、内蔵したクラッチ機構の耐久性が高められるので、当該ねじ締め機の製品寿命を長くすることができる。
【0010】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るクラッチ機構30を備えたねじ締め機1を示している。図1中、符号3は、当該ねじ締め機1の駆動源としての電動モータの出力軸を示している。この出力軸3にはギヤ部3aが形成されており、このギヤ部3aは駆動ギヤ4に噛み合わされている。この駆動ギヤ4は、駆動軸5に固定されている。駆動軸5の後端部(図1において上端部)は、軸受け6を介してハウジング2に回転可能に支持されている。また、駆動ギヤ4の後面側(図1において上面側)には、スラスト軸受け7が介装されている。このため、駆動ギヤ4は、図中上方への荷重(付勢力)を受けつつスムーズに回転するようになっている。
駆動ギヤ4の回転トルクは、クラッチ機構30を経てスピンドル(出力軸)11に伝達される。スピンドル11は、ハウジング2に対して軸受け12,13により回転可能かつその軸方向へ移動可能に支持されている。このスピンドル11は、駆動軸5と同軸に配置されている。
このスピンドル11の先端には、ねじ締め用のドライバビット20が同軸に装着されている。ハウジング2の先端には、ねじ締め深さを規制するためのストッパスリーブ18が装着されている。このストッパスリーブ18は、軸回りに回転させることによりハウジング2に対する軸方向の位置を調整することができる。ストッパスリーブ18の位置調整は、締め込むねじSの長さ(締め込み深さ)に合わせて適切に行われる。
ドライバビット20の先端にセットしたねじSをねじ締め材Wに当接させ、この当接状態で当該ねじ締め機1をねじ締め方向に押し付け、この押し付け状態でスピンドル11を回転させることによりねじSをねじ締め材Wに締め込んでいくことができる。ねじ締めが進行してストッパスリーブ18の先端面18aがねじ締め材Wに当接し、この当接状態でさらにスピンドル11を回転させることによりねじSを完全に締め込むことができる。
【0011】
クラッチ機構30は、駆動ギヤ4の前面(図1において下面)に一体に設けた駆動側クラッチ板31と、スピンドル11の後端に一体に設けた出力側クラッチ板32と、両クラッチ板31,32間に位置する中間クラッチ板33を備えている。これら三つのクラッチ板31〜33の詳細が図2に示されている。図2において、当該ねじ締め機1をねじ締め方向に作動させた時における駆動ギヤ4および駆動側クラッチ板31の回転方向(移動方向)は、図示左方への移動となって表される。図2では、駆動側クラッチ31、出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33のねじ締め時の回転方向が白抜きの矢印で示されている。
駆動側クラッチ板31の前面には、三つのクラッチ歯31a〜31aが周方向三等分位置に設けられている。この三つのクラッチ歯31a〜31aのそれぞれの回転方向前後(図2において左右側部)には、噛み合い面31b,31bが形成されている。両噛み合い面31b,31b間であって、当該クラッチ歯31a,31aの先端面は、それぞれ当該駆動側クラッチ板31の回転方向に対して傾斜している。以下、この傾斜面を駆動側の補助噛み合い面31cという。すなわち、この補助噛み合い面31cは、当該駆動軸5の回転軸線に対して直交する位置(当該駆動側クラッチ板31の回転方向に沿った位置)から僅かな角度θ1で傾斜している。また、この補助噛み合い面31cは、回転方向前側(図2において左側)ほど低くなる方向(図示下方への突き出し寸法が小さくなる方向)に傾斜しており、回転方向後ろ側に対して寸法bだけ低くなっている。
【0012】
中間クラッチ板33は、駆動軸5上に回転可能かつ軸方向へ移動可能に支持され、かつ駆動側クラッチ板31および出力側クラッチ板32に対して相対回転可能に支持されている。また、中間クラッチ板33と駆動側クラッチ板31との間には圧縮ばね34が介装されている。このため、中間クラッチ板33は、出力側クラッチ板32に接近する方向すなわち駆動側クラッチ板31から離間する方向(図示下方)に付勢されている。
中間クラッチ板33の後面であって駆動側クラッチ板31に対向する側には、上記駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31a,31aに噛み合う三つのクラッチ歯33a〜33aが周方向三等分位置に形成されている。このクラッチ歯33a〜33aの回転方向前後面には噛み合い面33b,33bが形成されている。この両噛み合い面33b,33b間であって、当該クラッチ歯33a,33aの先端面は、当該中間クラッチ板33のねじ締め時の回転方向に対して傾斜している。以下、この傾斜した面を出力側の補助噛み合い面33cという。すなわち、この補助噛み合い面33cは、当該駆動軸5の回転軸線に対して直交する位置から僅かな角度θ2で傾斜している。また、この補助噛み合い面33cは、回転方向前側(図2において左側)ほど高くなる方向(図示上方への突き出し寸法が大きくなる方向)に傾斜しており、回転方向後ろ側に対して寸法cだけ低くなっている。
本実施形態の場合補助噛み合い面31cの傾斜角度θ1と補助噛み合い面33cの傾斜角度θ2は同じ角度に設定されており、従って寸法bと寸法cは一致している。このため、両噛み合い面31c,33cは相互に平行な面であり、これにより相互に面一に当接し得る状態に設けられている。
また、図2では、駆動側クラッチ板31等の回転方向に沿った軸線が符号Jを付して示されている。この軸線Jに対して補助噛み合い面31c,33cはそれぞれ角度θ1、θ2で傾斜している。これに対して、クラッチ歯31a,33aの各噛み合い面31b,33bは、軸線Jに対して角度θ3で傾斜している。角度θ1(=θ2)は、角度θ3よりも充分小さく設定されている。
この明細書において、クラッチ歯31a,33aの噛み合いおよび補助噛み合い面31c,33cの噛み合いに関して、「噛み合い角度」とは、上記軸線Jに対する傾斜角度を指すものとする。補助噛み合い面31c,33c同士の噛み合い角度θ1(=θ2)が噛み合い面31b,33bの噛み合い角度θ3よりも充分に小さいことから、噛み合いによる接触面積の回転方向成分(投影面積)は補助噛み合い面31c,31c同士の方が充分大きくなり、従って単位面積当たりで受ける衝撃は補助噛み合い面31c,31c同士の方が小さくなる。
【0013】
次に、中間クラッチ板33の前面33g(図2おいて下面)には、三つの係合凸部33d〜33dが周方向三等分位置に設けられている。各係合凸部33dは、出力側クラッチ板32に向けて突き出されている。各係合凸部33dの回転方向前後部には、それぞれその先端側から当該中間クラッチ板33の回転方向(軸線Jに沿った方向)に対して直交する係合面33eと傾斜する案内面33fが連続して形成されている。案内面33fは、軸方向に寸法dの段差を有している。
これに対して出力側クラッチ板32の後面32g(図2において上面)にも、三つの係合凸部32d〜32dが周方向三等分位置に設けられている。各係合凸部32dは、上記中間クラッチ板33に向けて突き出されている。各係合凸部32dの回転方向前後部には、上記係合凸部33dと同様、その先端側から当該出力側クラッチ板32の回転方向(軸線Jに沿った方向)に対して直交する係合面32eと傾斜する案内面32fが連続して形成されている。この案内面32fも、軸方向に寸法dの段差を有している。
中間クラッチ板33の係合凸部33dと出力側クラッチ板32の係合凸部32dは、相互に同じ形状を有している。係合面32eと係合面33eが当接して係合凸部33dと係合凸部32dが相互に噛み合うことにより、中間クラッチ板33を経て駆動側クラッチ板31の回転トルクが出力側クラッチ板32に伝達される。
【0014】
以上のように構成されたねじ締め機1によりねじ締めを行った場合における当該クラッチ機構30の作動状態が図3〜図8に順を追って示されている。
先ず、図3はドライバビット20の先端にねじSをセットして、これを単にねじ締め材Wに当接(接触)させた状態が示されている。この状態では、中間クラッチ板33は圧縮ばね34により駆動側クラッチ板31から離間した位置に保持され、従って当該クラッチ機構30が繋がっていない状態(非連結状態)となっている。この非連結状態では、駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31a,31aと、中間クラッチ板33のクラッチ歯33a,33aとの間には適正はすき間aが発生しており、相互に噛み合っていない。
このため、この非連結状態で、電動モータを起動しても、駆動軸5と駆動ギヤ4と駆動側クラッチ板31が空転するのみであり、中間クラッチ板33および出力側クラッチ板32は回転せず、従ってスピンドル11およびビット20は回転しない(サイレントクラッチ機構30)。
また、この非連結状態では、圧縮ばね34によって中間クラッチ板33が出力側クラッチ板32に向けて押されることにより、中間クラッチ板33の各係合凸部33dは、出力側クラッチ板32の後面32gに当接し、また出力側クラッチ板32の各係合凸部32dは、中間クラッチ板33の前面33gに当接した状態となっている。
上記非連結状態で電動モータを起動し、さらに当該ねじ締め機1をねじ締め方向に押し付けると、ハウジング2に対してねじSとビット20とスピンドル11が相対的に後退(図では上昇)し、従って出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33が圧縮ばね34に抗して後退し、これにより中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31に接近する。
【0015】
中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31に接近することにより、クラッチ歯31aの補助噛み合い面31cとクラッチ歯33aの補助噛み合い面33cが接触し始める。接触し始める直前の状態では、未だ中間クラッチ板33は回転していないが、両補助噛み合い面31c,33cが相互に接触し始めることにより駆動側クラッチ板31の回転トルクが中間クラッチ板33に伝達され、従って出力側クラッチ板32、スピンドル11、ドライバビット20が回転し、これによりねじSが回転し始めてねじ締め材Wにねじ込まれていく。この状態が図4に示されている。ねじ締め初期であって必要なねじ締めトルクが小さい段階では、図示するように中間クラッチ板33の各係合凸部33dは出力側クラッチ板32の後面32gに当接し、出力側クラッチ板32の各係合凸部32dは中間クラッチ板33の前面33gに当接した状態のままとなっており、この状態で出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31と一体で回転する。
ねじ締めの進行に伴って必要なねじ締めトルクが増大してくると、両補助噛み合い面31c,33cの回転方向に対する傾斜角度θ1,θ2が小さいために大きな回転トルク(必要なねじ締めトルク)を伝えることができず、このため両補助噛み合い面31c,33cが相互に滑り始めて、駆動側クラッチ板31と中間クラッチ板33が相対的に回転方向に変位し始める。
【0016】
こうして駆動側クラッチ板31の補助噛み合い面31cと、中間クラッチ板33の補助噛み合い面33cが当接する(噛み合う)ことにより、中間クラッチ板33が小さなトルクで回転し始め、この回転状態におけるねじ締め抵抗の増大に伴って両補助噛み合い面31c,33cが滑って相互に外れる。この状態が図5に示されている。駆動側クラッチ板31から伝達される回転トルクが大きくなると、出力側クラッチ板32に対して中間クラッチ板33が相対的に回転し、これにより図5に示すように中間クラッチ板33の係合凸部33dが出力側クラッチ板32の係合凸部32dに接近する。
両補助噛み合い面31c,33cの噛み合い状態が外れると、ねじ締め機1の押し付けによりスピンドル11がさらに後退し、これにより中間クラッチ板33が回転しながら駆動側クラッチ板31にさらに接近して、駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aにおける噛み合い面31bと中間クラッチ板33のクラッチ歯33aにおける噛み合い面33bが噛み合い始める。この段階では、中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31とほぼ一体でねじ締め方向に回転している。このため、駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aは同じ方向に移動するクラッチ歯33aに対して噛み合うこととなり、従って両クラッチ歯31a,33aの噛み合い時の衝撃は、停止しているクラッチ歯に対して噛み合う場合に比して大幅に小さくなる。
両クラッチ歯31a,33aが噛み合い始めるとさらに大きな回転トルクが駆動側クラッチ板31から中間クラッチ板33に伝達されることにより、中間クラッチ板33が出力側クラッチ板32に対して相対回転する。両クラッチ板32,33が相対回転することにより、中間クラッチ板33の係合凸部33dが出力側クラッチ板32の係合凸部32dの案内面32fに沿って移動し、また出力側クラッチ板32の係合凸部32dが中間クラッチ板33の係合凸部33dの案内面33fに沿って移動し、これにより中間クラッチ板33が圧縮ばね34に抗して寸法dだけ駆動側クラッチ板33に接近する方向に移動して、両クラッチ歯31a,33aが瞬時に完全に噛み合った状態となる。この状態が図6に示されている。
【0017】
また、両クラッチ歯31a,33aが完全に噛み合った状態では、中間クラッチ板33の係合凸部33dの係合面33eと出力側クラッチ板32の係合凸部32dの係合面32eが当接した状態すなわち係合凸部33dと係合凸部32dが噛み合った状態となり、この当接状態により大きな回転トルクが中間クラッチ板33から出力側クラッチ板32に伝達される。この段階で、当該クラッチ機構30が完全に連結された状態となる(完全連結状態)。
ねじ締めが進行してストッパスリーブ18がねじ締め材Wに当接し、以後この当接状態でさらにねじ締めが進行すると、スピンドル11が図示下方に前進することにより出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31から離間し始める。ねじSが完全に締め込まれた状態となると、中間クラッチ板33のクラッチ歯33aが駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aから外れる。クラッチ歯33aがクラッチ歯31aから外れる際には、中間クラッチ板33が移動することにより、先ず噛み合い面31b,33bの噛み合い状態が外れ、その直後に中間クラッチ板33が寸法(b+c)だけさらに軸方向に移動することにより補助噛み合い面31c,33cの噛み合いが外れる。
このようなタイミングで、クラッチ歯33aがクラッチ歯31aから外れるようにストッパスリーブ18のハウジング2に対する軸方向の位置が調整されている。クラッチ歯33aがクラッチ歯31aから外れる瞬間の様子が図7に示されている。
【0018】
中間クラッチ板33のクラッチ歯33aが駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aから外れると、中間クラッチ板33に回転トルクが伝達されなくなるので、中間クラッチ板33は圧縮ばね34により駆動側クラッチ板31から離間する方向に移動し、これにより両クラッチ歯31a,33a間に適正なすき間aが瞬時に発生する。この状態が図8に示されている。中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31から離間して出力側クラッチ板32に接近する際には、係合凸部33dが出力側クラッチ板32の案内面32fに沿って移動し、また係合凸部32dが中間クラッチ板33の案内面33fに沿って移動することにより、中間クラッチ板33は出力側クラッチ板32に対して相対的に回転しながら、出力側クラッチ板32に接近する。
このことから、案内面32f,33fの軸方向の寸法dは、補助噛み合い面31c,33cの傾斜による軸方向の段差寸法b,cの合計寸法(b+c)よりも大きな寸法に設定されている必要があり、寸法dと寸法(b+c)との差がすき間aとなる。従って、d=a+b+cの関係が成立する。すき間aが適切な寸法となるようにその他の寸法b,c,dが設定されている。
こうして両クラッチ歯31a,33a間に適正なすき間aが発生することにより、駆動側クラッチ板31ひいては駆動軸5が静かに空転する(サイレントクラッチ機構)。
【0019】
以上のように構成した本実施形態のクラッチ機構30によれば、電動モータを起動して駆動軸5を空転させ、その後クラッチ機構30を繋ぐ段階で、先ず駆動側クラッチ板31の補助噛み合い面31cと中間クラッチ板33の補助噛み合い面33cが当接することにより、駆動側クラッチ板31の回転トルクが中間クラッチ板33ひいてはスピンドル11に伝達される。両補助噛み合い面31c,33cは、噛み合い面31b,33bよりも回転方向(軸線Jに沿った方向)に対して小さな角度θ1(=θ2)で設けられている。
このため、両補助噛み合い面31c,33cの噛み合い面積(相互の接触面積)の回転方向の成分(投影面積)は噛み合い面31b,33bのそれよりも大きくなることから、単位面積当たりで受ける衝撃は従来よりも小さくなり、この点で両クラッチ歯31a,33aの耐久性を高めることができる。
しかも、両補助噛み合い面31c,33cの当接により、中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31と一体で回転し、この回転状態の中間クラッチ板33のクラッチ歯33aに駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aが噛み合うので、従来のように噛み合い時に大きな衝撃は発生しない。このことから、クラッチ歯31a,33aの摩耗を低減し、また損傷を防止して当該クラッチ機構30の耐久性を向上させることができる。
クラッチ機構30の耐久性を向上させることができるので、これを内蔵したねじ締め機1の製品寿命を長くすることができる。
【0020】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、中間クラッチ板33を軸方向に変位させることにより、クラッチ歯31aとクラッチ歯33aとの間に瞬時に適正なすき間aを発生させて静かな空転状態を得るサイレント式のクラッチ機構30を例示したが、この種の中間クラッチ板を備えず、駆動側クラッチ板のクラッチ歯と出力側クラッチ板のクラッチ歯を直接噛み合わせることにより回転トルクを伝達する形式のクラッチ機構に適用できることは言うまでもない。この実施形態が請求項1に記載した発明の実施形態に相当する。
サイレント式のクラッチ機構30に適用することにより、駆動側のクラッチ歯31aを、スピンドル11が一体に形成された出力側のクラッチ歯に直接噛み合わせるのではなく、これよりも軽量の中間クラッチ板33のクラッチ歯33aに噛み合わせる構成であるので、より小さな衝撃で滑らかに駆動側の回転動力を出力側に伝達することができ、この点で特にサイレント式クラッチ機構30に適用することにより耐久性向上の点で特に大きな効果を得ることができる。
また、例示したクラッチ機構は、ねじ締め機に限らず、例えば孔あけ用の電気ドリルにも同様に適用することができ、さらには電動工具に限らず各種機器、装置等の動力伝達経路に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るクラッチ機構を備えたねじ締め機の内部構造を示す側面図である。
【図2】本実施形態のクラッチ機構の要部を示す側面図であって、駆動側クラッチ板と中間クラッチ板と出力側クラッチ板の関係を示す図である。
【図3】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、非連結状態のクラッチ機構を示している。
【図4】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、スピンドルが後退して駆動側クラッチ板の補助噛み合い面と中間クラッチ板の補助噛み合い面が当接した状態を示している。
【図5】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、ねじ締めトルクが増大して補助噛み合い面が外れた状態を示している。
【図6】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、スピンドルがさらに後退してクラッチ歯が噛み合った状態を示している。
【図7】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、ストッパスリーブが当接してねじ締めの進行に伴ってスピンドルが前進し、これによりクラッチ歯が外れる直前の様子を示している。
【図8】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、ねじ締めが完了してクラッチ歯間にすき間が発生した状態すなわちクラッチの遮断状態を示している。
【図9】特公平3−5952号公報の図2aを援用した図であって、従来のサイレント型クラッチ機構を示す図である。
【符号の説明】
S…ねじ
W…ねじ締め材
1…ねじ締め機
2…ハウジング
4…駆動ギヤ
5…駆動軸
11…スピンドル
18…ストッパスリーブ
20…ドライバビット
30…クラッチ機構(サイレント型)
31…駆動側クラッチ板
31a…クラッチ歯、31b…噛み合い面、31c…補助噛み合い面
32…出力側クラッチ板
32d…係合凸部、32e…係合面、32f…案内面、32g…底面
33…中間クラッチ板
33a…クラッチ歯、33b…噛み合い面、33c…補助噛み合い面
33d…係合凸部、33e…係合面、33f…案内面、33g…底面
34…圧縮ばね
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばねじ締め機のクラッチ機構であって、駆動側の回転動力を出力軸に対して伝達し、遮断するクラッチ機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のクラッチ機構には、例えば特公平3−5952号公報に開示されたものがあった。この従来のクラッチ機構を備えたねじ締め機の要部を、同公報の図2aを援用した図9に示した。
このねじ締め機50は、図示されていないモータにより回転する駆動軸54(駆動ギヤ54a)と、同じく図示されていないハウジングの先端部にストッパスリーブ51を介して軸回りに回転可能かつ軸方向に一定の範囲で移動可能に支持されたスピンドル52を備えている。駆動軸54とスピンドル52との間にクラッチ機構60が介装されている。スピンドル52の先端にドライバビット53が装着されている。ドライバビット53は、スピンドル52と一体で回転し、かつ軸方向に移動する。スピンドル52がねじ締め方向に回転することによりドライバビット53を介してねじSが回転し、従って材料WにねじSが締め込まれていく。
【0003】
クラッチ機構60は、駆動軸54に固定された駆動側クラッチ板61と、スピンドル52に固定された出力側クラッチ板62と、両クラッチ板61,62間において軸方向変位可能に配置された中間クラッチ板63を備えている。駆動軸54および駆動側クラッチ板61は、軸方向へは変位しない。また、図では示されていないが、駆動側クラッチ板61と中間クラッチ板63との間には、圧縮ばねが介装されている。このため、中間クラッチ板63は、駆動側クラッチ板61から離れる方向(出力側クラッチ板62に接近する方向)に付勢されている。
駆動側クラッチ板61の前面には、クラッチ歯61a〜61aが形成されている。このクラッチ歯61a〜61aに対向して、中間クラッチ板63の後面には、クラッチ歯63a〜63aが形成されている。
中間クラッチ板63の前面には係合凸部63b,63bが設けられ、これに対向して出力側クラッチ板62の後面には係合凸部62b,62bが設けられている。各係合凸部62b,63bの回転方向前部および後部には、それぞれ回転方向に対して直交する係合面62c,63cと、回転方向に対して傾斜する案内面62d,63dと、回転方向に沿った当接面62e,63eが形成されている。
【0004】
このように構成されたクラッチ機構60によれば、当該ねじ締め機の非使用時(電動モータの停止状態)には、中間クラッチ板63が圧縮ばねにより駆動側クラッチ板61から離間して、出力側クラッチ板62に接近した状態となっている。この状態では、駆動側クラッチ板61のクラッチ歯61aと中間クラッチ板63のクラッチ歯63aは噛み合っていない。また、中間クラッチ板63の係合凸部63bは出力側クラッチ板62の当接面62eに当接され、従って出力側クラッチ板62の係合凸部62bは中間クラッチ板63の当接面63eに当接している。この非使用状態から電動モータを起動して当該ねじ締め機をねじ締め方向に押し付けると、中間クラッチ板63のクラッチ歯63aが、回転する駆動側クラッチ板62のクラッチ歯62aに噛み合い始める。クラッチ歯63aがクラッチ歯62aに噛み合い始めると、その直後に中間クラッチ板63が未だ停止状態の出力側クラッチ板62に対して相対回転し、これにより中間クラッチ板63の係合凸部63bが出力側クラッチ板62の係合凸部62bの傾斜面62dに沿って移動し、最終的に両者62,63の係合凸部62b,63bがその係合面62c,63cを相互に当接させた状態で噛み合う。中間クラッチ板63は、その係合凸部63bが出力側クラッチ板62の係合凸部62bの傾斜面62cに沿って移動することにより圧縮ばねに抗して駆動側クラッチ板61に接近する方向に移動し、これにより中間クラッチ板63のクラッチ歯63aが駆動側クラッチ板61のクラッチ歯61aに瞬時に噛み合う。
こうしてクラッチ歯61aとクラッチ歯63aが噛み合い、かつ係合凸部62b,63bの係合面62c,63cが相互に当接することにより、当該クラッチ機構60が繋がれて電動モータの回転出力がスピンドル52に伝達され、これによりネジsが締め込まれていく。
【0005】
ねじ締めが進行してストッパスリーブ51がねじ締め材Wに当接し、その後さらにネジsが締め込まれていくことにより中間クラッチ板63が駆動側クラッチ板61から徐々に離れていき、これによりクラッチ歯61aとクラッチ歯63aとの噛み合いは徐々に浅くなっていく。ネジsが完全に締め込まれた段階で、クラッチ歯63aがクラッチ歯61aから外れ、これにより中間クラッチ板63への回転動力の伝達が遮断される。回転動力が伝達されなくなると中間クラッチ板63は、圧縮ばねにより出力側クラッチ板62に接近する方向へ移動して駆動側クラッチ板61から離間し、これによりクラッチ歯61aとクラッチ歯63aとの間に瞬時に適正なすき間が発生して駆動側クラッチ板61が静かに空転する状態となる。
【0006】
【特許文献1】
特公平3−5952号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように上記従来のクラッチ機構60は、回転動力を繋ぐ段階で、未だ停止している状態の中間クラッチ板63のクラッチ歯63aをすでに回転している状態の駆動側クラッチ板61のクラッチ歯61aに噛み合わせる構成であるので、クラッチ歯63aに対してクラッチ歯61aが衝撃的に当接し、その結果これらクラッチ歯61a,63aの耐久性および耐摩耗性に問題があった。
クラッチ歯61a,63a同士の衝撃的な噛み合いによりこれらの摩耗が進行すると、クラッチ歯61aからクラッチ歯63aが外れるタイミングが早くなり、その結果ねじSが完全に締め込まれていない段階で回転動力の伝達が遮断されてしまい、従ってねじSの締め込み不足が発生する。
また、クラッチ歯61a,63aが摩耗すると噛み合い時に騒音が発生し始め、これをもって当該クラッチ機構60の寿命とされ、ひいてはねじ締め作業は可能であってもねじ締め機自体の寿命とされてきた。
特に、近年、例えばボード用スクリュドライバに要求される回転数は高速化しており、このために組み込まれているクラッチ機構におけるクラッチ歯の噛み合い始めの衝撃がさらに大きくなる傾向にあることから、当該クラッチ機構におけるクラッチ歯の耐久性および耐摩耗性の向上が一層求められている。
そこで、本発明は、この種のクラッチ機構におけるクラッチ歯の噛み合い時における衝撃を低減してその耐久性を向上させることができるクラッチ機構を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明は、前記請求項に記載した構成のクラッチ機構とした。
請求項1記載のクラッチ機構によれば、出力軸を後退させると、先ず駆動側クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面と出力側クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面が当接する。ここで、両補助噛み合い面は、噛み合い角度が前後の噛み合い面よりも小さいので、当接方向(軸方向)に直交する方向について噛み合い面よりも広い面積で当接することとなり、その結果単位面積当たりではより小さな衝撃で噛み合う。
両補助噛み合い面が噛み合うことにより出力側クラッチ板が駆動側クラッチ板と一体で回転し始める。駆動側クラッチ板と出力側クラッチ板が一体で回転して、伝達される回転トルクが徐々に増大すると、補助噛み合い面同士の噛み合い角度は小さいので両補助噛み合い面の噛み合いは外れる。両補助噛み合い面が外れると、その直後に両クラッチ歯が噛み合い面を当接させて噛み合う。
従って、駆動側クラッチ板のクラッチ歯と出力側クラッチ板のクラッチ歯は、両クラッチ板が一体で回転する状態で噛み合わされる。このことから、停止している出力側クラッチ板のクラッチ歯に噛み合わせる場合に比して噛み合わせ時の衝撃を大幅に低減させることができ、これによりクラッチ歯の摩耗を低減し、その損傷を防止して当該クラッチ機構の耐久性を高めることができ、ひいては両クラッチ歯が外れるタイミングを長期間にわたって良好に維持することができる。
この明細書において、クラッチ歯の噛み合い面または補助噛み合い面の「噛み合い角度」とは、駆動側クラッチ板(または出力側クラッチ板)の回転方向に対する噛み合い面または補助噛み合い面の傾斜角度をいうものとする。
補助噛み合い面同士の噛み合い角度が小さいことから相互に当接する噛み合い面積の回転方向成分(駆動軸に直交する方向の投影面積)は、噛み合い面に比して大きくなる。従って補助噛み合い面の噛み合いにより付加される単位面積当たりの衝撃は、噛み合い面が直接噛み合う構成よりも小さくなる。しかも、上記したように、出力側クラッチ板を回転させながら駆動側クラッチ板が出力側クラッチ板に噛み合わされるので、この段階で発生する衝撃そのものが従来に比して大幅に低減される。
【0009】
請求項2記載のクラッチ機構は、駆動側クラッチ板と出力側クラッチ板との間に中間クラッチ板を備えた、いわゆるサイレントクラッチ機構であり、係るサイレントクラッチ機構によれば、クラッチ遮断時における駆動側クラッチ板の静かな空転状態を得ることができる。
このサイレントクラッチ機構によれば、出力軸を後退させて中間クラッチ板を駆動側クラッチ板に接近させると、先ず駆動側クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面と中間クラッチ板のクラッチ歯の補助噛み合い面が当接し、これにより中間クラッチ板ひいては出力側クラッチ板および出力軸が駆動側クラッチ板と一体で回転し始める。伝達される回転トルクの増大により補助噛み合い面同士の噛み合いが外れ、その直後に出力軸が回転しつつさらに後退することにより、駆動側クラッチ板のクラッチ歯と中間クラッチ板のクラッチ歯が噛み合う。
このように、請求項2記載のサイレントクラッチ機構によっても、単位面積当たりでより小さな衝撃で補助噛み合い面を噛み合わせることにより、中間クラッチ板を回転させながら、駆動側クラッチ板のクラッチ歯を中間クラッチ板のクラッチ歯に噛み合わせることができるので、両クラッチ歯の噛み合い時点の衝撃を従来よりも大幅に低減することができ、これにより当該クラッチ機構の耐久性を高めることができる。
請求項3記載のねじ締め機によれば、内蔵したクラッチ機構の耐久性が高められるので、当該ねじ締め機の製品寿命を長くすることができる。
【0010】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るクラッチ機構30を備えたねじ締め機1を示している。図1中、符号3は、当該ねじ締め機1の駆動源としての電動モータの出力軸を示している。この出力軸3にはギヤ部3aが形成されており、このギヤ部3aは駆動ギヤ4に噛み合わされている。この駆動ギヤ4は、駆動軸5に固定されている。駆動軸5の後端部(図1において上端部)は、軸受け6を介してハウジング2に回転可能に支持されている。また、駆動ギヤ4の後面側(図1において上面側)には、スラスト軸受け7が介装されている。このため、駆動ギヤ4は、図中上方への荷重(付勢力)を受けつつスムーズに回転するようになっている。
駆動ギヤ4の回転トルクは、クラッチ機構30を経てスピンドル(出力軸)11に伝達される。スピンドル11は、ハウジング2に対して軸受け12,13により回転可能かつその軸方向へ移動可能に支持されている。このスピンドル11は、駆動軸5と同軸に配置されている。
このスピンドル11の先端には、ねじ締め用のドライバビット20が同軸に装着されている。ハウジング2の先端には、ねじ締め深さを規制するためのストッパスリーブ18が装着されている。このストッパスリーブ18は、軸回りに回転させることによりハウジング2に対する軸方向の位置を調整することができる。ストッパスリーブ18の位置調整は、締め込むねじSの長さ(締め込み深さ)に合わせて適切に行われる。
ドライバビット20の先端にセットしたねじSをねじ締め材Wに当接させ、この当接状態で当該ねじ締め機1をねじ締め方向に押し付け、この押し付け状態でスピンドル11を回転させることによりねじSをねじ締め材Wに締め込んでいくことができる。ねじ締めが進行してストッパスリーブ18の先端面18aがねじ締め材Wに当接し、この当接状態でさらにスピンドル11を回転させることによりねじSを完全に締め込むことができる。
【0011】
クラッチ機構30は、駆動ギヤ4の前面(図1において下面)に一体に設けた駆動側クラッチ板31と、スピンドル11の後端に一体に設けた出力側クラッチ板32と、両クラッチ板31,32間に位置する中間クラッチ板33を備えている。これら三つのクラッチ板31〜33の詳細が図2に示されている。図2において、当該ねじ締め機1をねじ締め方向に作動させた時における駆動ギヤ4および駆動側クラッチ板31の回転方向(移動方向)は、図示左方への移動となって表される。図2では、駆動側クラッチ31、出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33のねじ締め時の回転方向が白抜きの矢印で示されている。
駆動側クラッチ板31の前面には、三つのクラッチ歯31a〜31aが周方向三等分位置に設けられている。この三つのクラッチ歯31a〜31aのそれぞれの回転方向前後(図2において左右側部)には、噛み合い面31b,31bが形成されている。両噛み合い面31b,31b間であって、当該クラッチ歯31a,31aの先端面は、それぞれ当該駆動側クラッチ板31の回転方向に対して傾斜している。以下、この傾斜面を駆動側の補助噛み合い面31cという。すなわち、この補助噛み合い面31cは、当該駆動軸5の回転軸線に対して直交する位置(当該駆動側クラッチ板31の回転方向に沿った位置)から僅かな角度θ1で傾斜している。また、この補助噛み合い面31cは、回転方向前側(図2において左側)ほど低くなる方向(図示下方への突き出し寸法が小さくなる方向)に傾斜しており、回転方向後ろ側に対して寸法bだけ低くなっている。
【0012】
中間クラッチ板33は、駆動軸5上に回転可能かつ軸方向へ移動可能に支持され、かつ駆動側クラッチ板31および出力側クラッチ板32に対して相対回転可能に支持されている。また、中間クラッチ板33と駆動側クラッチ板31との間には圧縮ばね34が介装されている。このため、中間クラッチ板33は、出力側クラッチ板32に接近する方向すなわち駆動側クラッチ板31から離間する方向(図示下方)に付勢されている。
中間クラッチ板33の後面であって駆動側クラッチ板31に対向する側には、上記駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31a,31aに噛み合う三つのクラッチ歯33a〜33aが周方向三等分位置に形成されている。このクラッチ歯33a〜33aの回転方向前後面には噛み合い面33b,33bが形成されている。この両噛み合い面33b,33b間であって、当該クラッチ歯33a,33aの先端面は、当該中間クラッチ板33のねじ締め時の回転方向に対して傾斜している。以下、この傾斜した面を出力側の補助噛み合い面33cという。すなわち、この補助噛み合い面33cは、当該駆動軸5の回転軸線に対して直交する位置から僅かな角度θ2で傾斜している。また、この補助噛み合い面33cは、回転方向前側(図2において左側)ほど高くなる方向(図示上方への突き出し寸法が大きくなる方向)に傾斜しており、回転方向後ろ側に対して寸法cだけ低くなっている。
本実施形態の場合補助噛み合い面31cの傾斜角度θ1と補助噛み合い面33cの傾斜角度θ2は同じ角度に設定されており、従って寸法bと寸法cは一致している。このため、両噛み合い面31c,33cは相互に平行な面であり、これにより相互に面一に当接し得る状態に設けられている。
また、図2では、駆動側クラッチ板31等の回転方向に沿った軸線が符号Jを付して示されている。この軸線Jに対して補助噛み合い面31c,33cはそれぞれ角度θ1、θ2で傾斜している。これに対して、クラッチ歯31a,33aの各噛み合い面31b,33bは、軸線Jに対して角度θ3で傾斜している。角度θ1(=θ2)は、角度θ3よりも充分小さく設定されている。
この明細書において、クラッチ歯31a,33aの噛み合いおよび補助噛み合い面31c,33cの噛み合いに関して、「噛み合い角度」とは、上記軸線Jに対する傾斜角度を指すものとする。補助噛み合い面31c,33c同士の噛み合い角度θ1(=θ2)が噛み合い面31b,33bの噛み合い角度θ3よりも充分に小さいことから、噛み合いによる接触面積の回転方向成分(投影面積)は補助噛み合い面31c,31c同士の方が充分大きくなり、従って単位面積当たりで受ける衝撃は補助噛み合い面31c,31c同士の方が小さくなる。
【0013】
次に、中間クラッチ板33の前面33g(図2おいて下面)には、三つの係合凸部33d〜33dが周方向三等分位置に設けられている。各係合凸部33dは、出力側クラッチ板32に向けて突き出されている。各係合凸部33dの回転方向前後部には、それぞれその先端側から当該中間クラッチ板33の回転方向(軸線Jに沿った方向)に対して直交する係合面33eと傾斜する案内面33fが連続して形成されている。案内面33fは、軸方向に寸法dの段差を有している。
これに対して出力側クラッチ板32の後面32g(図2において上面)にも、三つの係合凸部32d〜32dが周方向三等分位置に設けられている。各係合凸部32dは、上記中間クラッチ板33に向けて突き出されている。各係合凸部32dの回転方向前後部には、上記係合凸部33dと同様、その先端側から当該出力側クラッチ板32の回転方向(軸線Jに沿った方向)に対して直交する係合面32eと傾斜する案内面32fが連続して形成されている。この案内面32fも、軸方向に寸法dの段差を有している。
中間クラッチ板33の係合凸部33dと出力側クラッチ板32の係合凸部32dは、相互に同じ形状を有している。係合面32eと係合面33eが当接して係合凸部33dと係合凸部32dが相互に噛み合うことにより、中間クラッチ板33を経て駆動側クラッチ板31の回転トルクが出力側クラッチ板32に伝達される。
【0014】
以上のように構成されたねじ締め機1によりねじ締めを行った場合における当該クラッチ機構30の作動状態が図3〜図8に順を追って示されている。
先ず、図3はドライバビット20の先端にねじSをセットして、これを単にねじ締め材Wに当接(接触)させた状態が示されている。この状態では、中間クラッチ板33は圧縮ばね34により駆動側クラッチ板31から離間した位置に保持され、従って当該クラッチ機構30が繋がっていない状態(非連結状態)となっている。この非連結状態では、駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31a,31aと、中間クラッチ板33のクラッチ歯33a,33aとの間には適正はすき間aが発生しており、相互に噛み合っていない。
このため、この非連結状態で、電動モータを起動しても、駆動軸5と駆動ギヤ4と駆動側クラッチ板31が空転するのみであり、中間クラッチ板33および出力側クラッチ板32は回転せず、従ってスピンドル11およびビット20は回転しない(サイレントクラッチ機構30)。
また、この非連結状態では、圧縮ばね34によって中間クラッチ板33が出力側クラッチ板32に向けて押されることにより、中間クラッチ板33の各係合凸部33dは、出力側クラッチ板32の後面32gに当接し、また出力側クラッチ板32の各係合凸部32dは、中間クラッチ板33の前面33gに当接した状態となっている。
上記非連結状態で電動モータを起動し、さらに当該ねじ締め機1をねじ締め方向に押し付けると、ハウジング2に対してねじSとビット20とスピンドル11が相対的に後退(図では上昇)し、従って出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33が圧縮ばね34に抗して後退し、これにより中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31に接近する。
【0015】
中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31に接近することにより、クラッチ歯31aの補助噛み合い面31cとクラッチ歯33aの補助噛み合い面33cが接触し始める。接触し始める直前の状態では、未だ中間クラッチ板33は回転していないが、両補助噛み合い面31c,33cが相互に接触し始めることにより駆動側クラッチ板31の回転トルクが中間クラッチ板33に伝達され、従って出力側クラッチ板32、スピンドル11、ドライバビット20が回転し、これによりねじSが回転し始めてねじ締め材Wにねじ込まれていく。この状態が図4に示されている。ねじ締め初期であって必要なねじ締めトルクが小さい段階では、図示するように中間クラッチ板33の各係合凸部33dは出力側クラッチ板32の後面32gに当接し、出力側クラッチ板32の各係合凸部32dは中間クラッチ板33の前面33gに当接した状態のままとなっており、この状態で出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31と一体で回転する。
ねじ締めの進行に伴って必要なねじ締めトルクが増大してくると、両補助噛み合い面31c,33cの回転方向に対する傾斜角度θ1,θ2が小さいために大きな回転トルク(必要なねじ締めトルク)を伝えることができず、このため両補助噛み合い面31c,33cが相互に滑り始めて、駆動側クラッチ板31と中間クラッチ板33が相対的に回転方向に変位し始める。
【0016】
こうして駆動側クラッチ板31の補助噛み合い面31cと、中間クラッチ板33の補助噛み合い面33cが当接する(噛み合う)ことにより、中間クラッチ板33が小さなトルクで回転し始め、この回転状態におけるねじ締め抵抗の増大に伴って両補助噛み合い面31c,33cが滑って相互に外れる。この状態が図5に示されている。駆動側クラッチ板31から伝達される回転トルクが大きくなると、出力側クラッチ板32に対して中間クラッチ板33が相対的に回転し、これにより図5に示すように中間クラッチ板33の係合凸部33dが出力側クラッチ板32の係合凸部32dに接近する。
両補助噛み合い面31c,33cの噛み合い状態が外れると、ねじ締め機1の押し付けによりスピンドル11がさらに後退し、これにより中間クラッチ板33が回転しながら駆動側クラッチ板31にさらに接近して、駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aにおける噛み合い面31bと中間クラッチ板33のクラッチ歯33aにおける噛み合い面33bが噛み合い始める。この段階では、中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31とほぼ一体でねじ締め方向に回転している。このため、駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aは同じ方向に移動するクラッチ歯33aに対して噛み合うこととなり、従って両クラッチ歯31a,33aの噛み合い時の衝撃は、停止しているクラッチ歯に対して噛み合う場合に比して大幅に小さくなる。
両クラッチ歯31a,33aが噛み合い始めるとさらに大きな回転トルクが駆動側クラッチ板31から中間クラッチ板33に伝達されることにより、中間クラッチ板33が出力側クラッチ板32に対して相対回転する。両クラッチ板32,33が相対回転することにより、中間クラッチ板33の係合凸部33dが出力側クラッチ板32の係合凸部32dの案内面32fに沿って移動し、また出力側クラッチ板32の係合凸部32dが中間クラッチ板33の係合凸部33dの案内面33fに沿って移動し、これにより中間クラッチ板33が圧縮ばね34に抗して寸法dだけ駆動側クラッチ板33に接近する方向に移動して、両クラッチ歯31a,33aが瞬時に完全に噛み合った状態となる。この状態が図6に示されている。
【0017】
また、両クラッチ歯31a,33aが完全に噛み合った状態では、中間クラッチ板33の係合凸部33dの係合面33eと出力側クラッチ板32の係合凸部32dの係合面32eが当接した状態すなわち係合凸部33dと係合凸部32dが噛み合った状態となり、この当接状態により大きな回転トルクが中間クラッチ板33から出力側クラッチ板32に伝達される。この段階で、当該クラッチ機構30が完全に連結された状態となる(完全連結状態)。
ねじ締めが進行してストッパスリーブ18がねじ締め材Wに当接し、以後この当接状態でさらにねじ締めが進行すると、スピンドル11が図示下方に前進することにより出力側クラッチ板32および中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31から離間し始める。ねじSが完全に締め込まれた状態となると、中間クラッチ板33のクラッチ歯33aが駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aから外れる。クラッチ歯33aがクラッチ歯31aから外れる際には、中間クラッチ板33が移動することにより、先ず噛み合い面31b,33bの噛み合い状態が外れ、その直後に中間クラッチ板33が寸法(b+c)だけさらに軸方向に移動することにより補助噛み合い面31c,33cの噛み合いが外れる。
このようなタイミングで、クラッチ歯33aがクラッチ歯31aから外れるようにストッパスリーブ18のハウジング2に対する軸方向の位置が調整されている。クラッチ歯33aがクラッチ歯31aから外れる瞬間の様子が図7に示されている。
【0018】
中間クラッチ板33のクラッチ歯33aが駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aから外れると、中間クラッチ板33に回転トルクが伝達されなくなるので、中間クラッチ板33は圧縮ばね34により駆動側クラッチ板31から離間する方向に移動し、これにより両クラッチ歯31a,33a間に適正なすき間aが瞬時に発生する。この状態が図8に示されている。中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31から離間して出力側クラッチ板32に接近する際には、係合凸部33dが出力側クラッチ板32の案内面32fに沿って移動し、また係合凸部32dが中間クラッチ板33の案内面33fに沿って移動することにより、中間クラッチ板33は出力側クラッチ板32に対して相対的に回転しながら、出力側クラッチ板32に接近する。
このことから、案内面32f,33fの軸方向の寸法dは、補助噛み合い面31c,33cの傾斜による軸方向の段差寸法b,cの合計寸法(b+c)よりも大きな寸法に設定されている必要があり、寸法dと寸法(b+c)との差がすき間aとなる。従って、d=a+b+cの関係が成立する。すき間aが適切な寸法となるようにその他の寸法b,c,dが設定されている。
こうして両クラッチ歯31a,33a間に適正なすき間aが発生することにより、駆動側クラッチ板31ひいては駆動軸5が静かに空転する(サイレントクラッチ機構)。
【0019】
以上のように構成した本実施形態のクラッチ機構30によれば、電動モータを起動して駆動軸5を空転させ、その後クラッチ機構30を繋ぐ段階で、先ず駆動側クラッチ板31の補助噛み合い面31cと中間クラッチ板33の補助噛み合い面33cが当接することにより、駆動側クラッチ板31の回転トルクが中間クラッチ板33ひいてはスピンドル11に伝達される。両補助噛み合い面31c,33cは、噛み合い面31b,33bよりも回転方向(軸線Jに沿った方向)に対して小さな角度θ1(=θ2)で設けられている。
このため、両補助噛み合い面31c,33cの噛み合い面積(相互の接触面積)の回転方向の成分(投影面積)は噛み合い面31b,33bのそれよりも大きくなることから、単位面積当たりで受ける衝撃は従来よりも小さくなり、この点で両クラッチ歯31a,33aの耐久性を高めることができる。
しかも、両補助噛み合い面31c,33cの当接により、中間クラッチ板33が駆動側クラッチ板31と一体で回転し、この回転状態の中間クラッチ板33のクラッチ歯33aに駆動側クラッチ板31のクラッチ歯31aが噛み合うので、従来のように噛み合い時に大きな衝撃は発生しない。このことから、クラッチ歯31a,33aの摩耗を低減し、また損傷を防止して当該クラッチ機構30の耐久性を向上させることができる。
クラッチ機構30の耐久性を向上させることができるので、これを内蔵したねじ締め機1の製品寿命を長くすることができる。
【0020】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、中間クラッチ板33を軸方向に変位させることにより、クラッチ歯31aとクラッチ歯33aとの間に瞬時に適正なすき間aを発生させて静かな空転状態を得るサイレント式のクラッチ機構30を例示したが、この種の中間クラッチ板を備えず、駆動側クラッチ板のクラッチ歯と出力側クラッチ板のクラッチ歯を直接噛み合わせることにより回転トルクを伝達する形式のクラッチ機構に適用できることは言うまでもない。この実施形態が請求項1に記載した発明の実施形態に相当する。
サイレント式のクラッチ機構30に適用することにより、駆動側のクラッチ歯31aを、スピンドル11が一体に形成された出力側のクラッチ歯に直接噛み合わせるのではなく、これよりも軽量の中間クラッチ板33のクラッチ歯33aに噛み合わせる構成であるので、より小さな衝撃で滑らかに駆動側の回転動力を出力側に伝達することができ、この点で特にサイレント式クラッチ機構30に適用することにより耐久性向上の点で特に大きな効果を得ることができる。
また、例示したクラッチ機構は、ねじ締め機に限らず、例えば孔あけ用の電気ドリルにも同様に適用することができ、さらには電動工具に限らず各種機器、装置等の動力伝達経路に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るクラッチ機構を備えたねじ締め機の内部構造を示す側面図である。
【図2】本実施形態のクラッチ機構の要部を示す側面図であって、駆動側クラッチ板と中間クラッチ板と出力側クラッチ板の関係を示す図である。
【図3】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、非連結状態のクラッチ機構を示している。
【図4】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、スピンドルが後退して駆動側クラッチ板の補助噛み合い面と中間クラッチ板の補助噛み合い面が当接した状態を示している。
【図5】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、ねじ締めトルクが増大して補助噛み合い面が外れた状態を示している。
【図6】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、スピンドルがさらに後退してクラッチ歯が噛み合った状態を示している。
【図7】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、ストッパスリーブが当接してねじ締めの進行に伴ってスピンドルが前進し、これによりクラッチ歯が外れる直前の様子を示している。
【図8】ねじ締め機の使用に伴うクラッチ機構の動作示す側面図である。本図は、ねじ締めが完了してクラッチ歯間にすき間が発生した状態すなわちクラッチの遮断状態を示している。
【図9】特公平3−5952号公報の図2aを援用した図であって、従来のサイレント型クラッチ機構を示す図である。
【符号の説明】
S…ねじ
W…ねじ締め材
1…ねじ締め機
2…ハウジング
4…駆動ギヤ
5…駆動軸
11…スピンドル
18…ストッパスリーブ
20…ドライバビット
30…クラッチ機構(サイレント型)
31…駆動側クラッチ板
31a…クラッチ歯、31b…噛み合い面、31c…補助噛み合い面
32…出力側クラッチ板
32d…係合凸部、32e…係合面、32f…案内面、32g…底面
33…中間クラッチ板
33a…クラッチ歯、33b…噛み合い面、33c…補助噛み合い面
33d…係合凸部、33e…係合面、33f…案内面、33g…底面
34…圧縮ばね
Claims (3)
- モータにより回転する駆動側クラッチ板と、軸回りに回転可能かつ軸方向に進退可能な出力軸に、前記駆動側クラッチ板に対向して設けた出力側クラッチ板を備え、前記出力軸を後退させて前記出力側クラッチ板のクラッチ歯を前記駆動側クラッチ板のクラッチ歯に噛み合わせて、前記モータの回転トルクを前記出力軸に伝達するクラッチ機構において、
前記駆動側クラッチ板と前記出力側クラッチ板の各クラッチ歯が、回転方向前後の噛み合い面間に、噛み合い角度が前記噛み合い面よりも小さな補助噛み合い面を備え、前記出力軸の後退により該補助噛み合い面を相互に当接させて前記出力側クラッチ板を回転させ、該出力側クラッチ板を回転させつつ前記噛み合い面を当接させてクラッチ歯を噛み合わせる構成としたクラッチ機構。 - モータにより回転する駆動側クラッチ板と、軸回りに回転可能かつ軸方向に進退可能な出力軸に一体に設けられた出力側クラッチ板と、該出力側クラッチ板と前記駆動側クラッチ板との間に設けられ、前記出力軸と一体で後退して前記駆動側クラッチ板に接近し、かつ前記駆動側クラッチ板から離間する方向に付勢されるとともに、前記出力側クラッチ板に対して一定の範囲でのみ相対回転可能で、相対回転すると前記出力側クラッチ板に対して軸方向に進退する中間クラッチ板を備え、
前記中間クラッチ板と前記駆動側クラッチ板の各クラッチ歯が、回転方向前後の噛み合い面間に、噛み合い角度が前記噛み合い面よりも小さな補助噛み合い面を備え、前記中間クラッチ板の後退により該補助噛み合い面を相互に当接させて該中間クラッチ板を回転させ、該中間クラッチ板を回転させつつ前記噛み合い面を当接させてクラッチ歯を噛み合わせる構成としたクラッチ機構。 - 請求項2記載のクラッチ機構を備え、ねじ締め方向に押し付けると出力軸がハウジングに対して後退して中間クラッチ板を回転させつつ駆動側クラッチ板のクラッチ歯と中間クラッチ板のクラッチ歯が噛み合う構成としたねじ締め機。
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JP2012187695A (ja) * | 2011-03-14 | 2012-10-04 | Hitachi Koki Co Ltd | 締付工具 |
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-
2003
- 2003-05-14 JP JP2003136019A patent/JP2004340213A/ja active Pending
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