JP2004339184A - クロメン化合物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い発色濃度を示し、退色速度が早く、耐久性が高く、さらにモノマー等への溶解性が高いフォトクロミック化合物を提供する。
【解決手段】例えば12−クラウン−4−エーテルのような酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基が置換したクロメン骨格を有する化合物であって、該クロメン骨格にはクロメン環のf辺および/またはh辺に、置換または非置換の芳香族炭化水素環、芳香環が縮環していても良い置換または非置換の脂環式炭化水素環及び置換または非置換の複素環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環が縮合していることを特徴とするクロメン化合物。
【選択図】 なし
【解決手段】例えば12−クラウン−4−エーテルのような酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基が置換したクロメン骨格を有する化合物であって、該クロメン骨格にはクロメン環のf辺および/またはh辺に、置換または非置換の芳香族炭化水素環、芳香環が縮環していても良い置換または非置換の脂環式炭化水素環及び置換または非置換の複素環からなる群より選ばれる少なくとも1種の環が縮合していることを特徴とするクロメン化合物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフォトクロミック性クロメン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック化合物と複合化することによりフォトクロミック性を付与したフォトクロミックプラスチックレンズを用いた眼鏡は、紫外線が照射される屋外ではサングラスとして機能し、紫外線照射のない屋内では通常の透明な眼鏡として機能するというユニークな特徴を有し、近年その需要は増大している。
【0003】
このような用途に用いられるフォトクロミック化合物としてはフルギド化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物等が知られており、中でもクロメン骨格を有するクロメン化合物は、耐久性、退色速度等において特に優れた物性を示すことが確認されている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
一方、プラスチックレンズにフォトクロミック性を付与する方法としては、幾つかの方法が知られているが、原理的にどのようなプラスチックレンズにもフォトクロミック性を付与することが可能であることからコーティング法が注目されている。コーティング法とはレンズ基材の上にフォトクロミック化合物が分散した樹脂層からなるフォトクロミックコート層を形成する方法であり、該コート層の形成はフォトクロミック化合物を含有する硬化性組成物からなるコーティング剤をスピンコート法等によりレンズ表面に塗布した後にこれを硬化させることにより行われる。通常、フォトクロミックコート層の厚さは1μm〜数100μmと非常に薄いため、コーティング法により十分なフォトクロミック性を有するレンズを得るためには、フォトクロミック化合物を1%以上の高濃度で溶解したコーティング剤を用いる必要がある。なお、コーティング剤中にフォトクロミック化合物が溶解していない場合には得られるフォトクロミック化合物が均一に分散したフォトクロミックコート層を得ることができず、高品位のフォトクロミックレンズを得ることができない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−192378号公報
【特許文献2】
特開2000−347346号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、フォトクロミック眼鏡レンズとして望ましいフォトクロミック特性を有するフォトクロミック化合物として現在知られているものは、コーティング剤のモノマー成分に対する溶解性が低いという問題があった。このため、これらフォトクロミック化合物を高濃度で溶解したコーティング剤を調製するのは困難であり、例えば溶解速度が遅いことから調製時間を短縮するために加熱処理、超音波処理等の特別な操作が必要がった。また、このような操作を行なっても溶解量には限界があり、十分なフォトクロミック特性を得るためにはフォトクロミックコート層の厚さを厚くせざるを得ず、膜厚が厚く且つ光学特性が良好で均質なフォトクロミックコート層を得るためには様々なプロセス上の問題を解決しなければならないというのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するために、フォトクロミック眼鏡レンズとして望ましいフォトクロミック特性、即ち発色濃度が高く、退色速度が早く、耐久性が高いという特徴を有するフォトクロミック化合物であって、更にコーティング剤のモノマー成分に対する溶解性が高い新規なフォトクロミック化合物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を続けてきた。その結果、フォトクロミック性を示すクロメン化合物に置換基としてクラウンエーテル等から誘導される“酸素原子等のヘテロ原子を3個以上含むヘテロ環骨格を有する1価の有機基”を導入することによりモノマーに対する溶解性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、第一の本発明は、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環、置換若しくは非置換の芳香環が縮環していてもよい置換若しくは非置換の脂環式炭化水素環及び置換若しくは非置換の複素環からなる群より選ばれる1種の環がクロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環したクロメン化合物であって、周辺fと周辺hの両方にこれら環が縮環する場合、両周辺に縮環する環は互いに異なっていてもよく、更に酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基を置換基として有することを特徴とするクロメン化合物である。
【0010】
また、第二の本発明は、前記本発明のクロメン化合物からなることを特徴とするフォトクロミック材であり、第三の本発明は、該本発明のフォトクロミック材を含有してなることを特徴とするフォトクロミック光学物品である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のクロメン化合物は、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに特定の環が縮環した基本構造を有する。ここで、クロメンの周辺fおよび周辺hとは下記式に示されるように、それぞれクロメンの5位と6位の炭素間の周辺及び7位と8位の炭素間の周辺を意味する。
【0012】
【化7】
【0013】
(式中、1〜8は炭素の番号を表し、a〜iは周辺を表す。)
本発明のクロメン化合物は、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する環は、▲1▼置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環、▲2▼置換若しくは非置換の芳香環が縮環していてもよい置換若しくは非置換の脂環式炭化水素環又は▲3▼置換若しくは非置換の複素環であり、周辺fと周辺hの両方にこれら環が縮環する場合、両周辺に縮環する環は互いに異なっていてもよい。周辺f及び周辺hに異なる環がクロメン骨格に2つ縮環している好適な例としては、ベンゼン環およびインデン環が縮環したインデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン等が挙げられる。
【0014】
上記▲1▼の置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環は特に限定されないが、そのうちの非置換のものとしては、炭素数6〜25、特に炭素数6〜12の芳香族炭化水素環が好ましい。好適な非置換芳香族炭化水素環を例示すると、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ジヒドロフェナンスレン環等のベンゼン環が1〜4個縮環した芳香族炭化水素環が挙げられ、中でもベンゼン環またはナフタレン環が特に好適である。
【0015】
上記▲1▼の置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環の内、置換基を有する芳香族炭化水素環としては、上記非置換の芳香族炭化水素環における水素原子が、(s1)ヒドロキシル基、(s2)シアノ基、(s3)ニトロ基、(s4)アルキル基、(s5)アルコキシ基、(s6)アルコキシカルボニル基、(s7)置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル基、(s8)置換もしくは非置換の1価の脂環式炭化水素基、(s9)置換もしくは非置換の1価の複素環基、(s10)置換アミノ基、(s11)アミド基、(s12)置換もしくは非置換の1価のアリール基、(s13)置換もしくは非置換のアリールオキシ基、(s14)置換もしくは非置換のアリールオキシアルキル基、(s15)置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、(s16)置換もしくは非置換のアラルキル基、(s17)置換もしくは非置換のアラルコキシ基、(s18)アシル基、(s19)アシルオキシアルキル基、(s20)ヒドロキシアルキル基、(s21)アルコキシアルキル基、(s22)ハロゲン原子、(s23)ハロゲノアルキル基、(s24)ハロゲノアルコキシ基、(s25)アルキルチオアルキル基、(s26)ポリオキシエチレングリコール基、(s27)ポリオキシプロピレングリコール基、(s28)アルコキシポリオキシエチレングリコール基、(s29)アルコキシポリオキシプロピレングリコール基及び(s30)重合性置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されたものを挙げることができる。
【0016】
以下、これら置換基のうち、構造が一義的に定まる(s1)ヒドロキシル基、(s2)シアノ基および(s3)ニトロ基以外の置換基s4〜s30について説明する。
【0017】
上記s4のアルキル基は、特に限定はされないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等を挙げることができる。また、前記s5のアルコキシ基は、特に限定されないが、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を具体的に例示すると、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。また、前記s6のアルコキシカルボニル基は、特に限定されないが、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が好ましい。好適なアルコキシカルボニル基を具体的に例示すると、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0018】
前記s7のシクロアルコキシカルボニル基は、特に限定されないが、炭素数1〜13のシクロアルコキシカルボニル基が好ましい。好適なシクロアルコキシカルボニル基を具体的に例示すると、シクロブトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、シクロデシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。また、シクロアルコキシカルボニル基が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0019】
前記s8の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロペンタドデシレン基等の炭素数3〜20の単環基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.0]へプチル基、ビシクロ[3.1.1]へプチル基、ビシクロ[3.2.2]オクチル基、アダマンチル基等の炭素数6〜20の環集合基等が挙げられる。なお、環集合基において、その結合手の位置に制限はされない。
【0020】
前記s9の1価の複素環基としては、ヘテロ原子として酸素、硫黄、または窒素原子を合計2個まで含む基であれば特に限定されないが、これらへテロ原子を含む環員数が5又は6員の単環の複素環基、またはこれらにベンゾ環が縮環した複素環基であるのが好ましい。好適な複素環基を例示すると、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素芳香族複素環基より誘導される1価の含窒素芳香族複素環基;フラン、ピラン、ベンゾフラン等の含酸素芳香族複素環化合物より誘導される1価の含酸素芳香族複素環基;チオフェン、ベンゾチオフェン等の含硫黄芳香族複素環化合物より誘導される1価の含硫黄芳香族複素環基;テトラヒドロフラン、ピラン等の含酸素環状化合物より誘導される1価の複素環基;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン等の含窒素環状化合物より誘導される1価の複素環基;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の含カルボニル環状化合物より誘導される1価の複素環基;ブチロラクトン、テトラヒドロフラノン、テトラヒドロピラノン等の含エステル環状化合物もしくは含酸素環状ケトン化合物より誘導される1価の複素環基;ピロリジノン、ピペリジノン、オキソヘキサメチレンイミン等の含アミド環状化合物もしくは含窒素環状ケトン化合物より誘導される1価の複素環基;アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、デカヒドロ−シクロペンタアゼピン、アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン、オクタヒドロ−キノリジン、デカヒドロ−ピリジノキノリン、アザ−トリシクロウンデカン等の環集合化合物より誘導される1価の複素環基などの基を挙げることができる。
【0021】
また、s8およびs9におけるこれら1価の基が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0022】
前記s10の置換アミノ基としては、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基が置換したアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基またはジアリールアミノ基が好適であり、好適な置換アミノ基を具体的に例示すると、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。また、前記s11のアミド基としては、特に限定されないが、アセチルアミノ基、N−メチルアセチルアミノ基、ブチリルアミド基等の炭素数3〜12のアミド基を挙げることできる。
【0023】
前記s12の1価のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオリル基、フェナンスリル基などを挙げることができる。また、前記s13のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、フルオロキシ基、フェナンスロキシ基などを挙げることができる。また、前記s14のアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基、ナフトキシメチル基、フルオロキシブチル基、フェナンスロキシデシル基などを挙げることができる。また、前記s15のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、フルオロキシカルボニル基、フェナンスロキシカルボニル基などを挙げることができる。また、前記s16のアラルキル基は、特に制限されないが、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。また、前記s17のアラルコキシ基は、特に限定されないが炭素数6〜10のアラルコシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を具体的に例示すると、フェノキシメチル基、ナフトキシエチル基等を挙げることができる。更に、s12〜s17におけるこれらの基が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0024】
前記s18のアシル基は、特に限定されないが炭素数2〜10のアシル基が好ましい。好適なアシル基を具体的に例示すると、アセチル基、プロピオニル基等を挙げることができる。また、前記s19のアシルオキシアルキル基は、特に限定されないが炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基が好ましい。好適なアシルオキシアルキル基を具体的に例示すると、アセチルオキシメチル基、プロピオニルオキシプロピル基等を挙げることができる。また、前記s20のヒドロキシアルキル基は、特に限定されないが炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基が好ましい。好適なヒドロキシアルキル基を具体的に例示すると、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシデシル基等を挙げることができる。更に、前記s21のアルコキシアルキル基は、特に限定されないが炭素数1〜10のアルコキシアルキル基が好ましい。好適なアルコキシアルキル基を具体的に例示すると、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシプロピル基、メトキシデシル基等を挙げることができる。
【0025】
前記s22のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を挙げることができる。また、前記s23のハロゲノアルキル基は、上述のアルキル基の1または2以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子あるいは臭素原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲノアルキル基として好適なものを例示すると、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、前記s24のハロゲノアルコキシ基としては、上述のアルコキシ基の1または2以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、あるいは臭素原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲノアルコキシ基として特に好適なものを例示すると、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等を挙げることができる。更に、前記s25のアルキルチオアルキル基としては、特に限定されないが炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基が好ましい。好適なアルキルチオアルキル基を具体的に例示すると、メチルチオメチル基、エチルチオエチル基、ブチルチオプロピル基、メチルチオデシル基等を挙げることができる。
【0026】
前記s26のポリオキシエチレングリコール基としては、特に限定されないが平均分子量100〜10000のポリオキシエチレングリコール基が好ましい。また、前記s27のポリオキシプロピレングリコール基としては、特に限定されないが平均分子量100〜10000のポリオキシプロピレングリコール基が好ましい。また、前記s28のアルコキシポリオキシエチレングリコール基としては、特に限定されないがポリオキシエチレングリコール基の末端を炭素数1〜4のアルキル基でエーテル化した平均分子量100〜10000のポリオキシエチレングリコール基が好ましい。更に、前記s29のアルコキシポリオキシプロピレングリコール基としては、特に限定されないがポリオキシプロピレングリコール基の末端を炭素数1〜4のアルキル基でエーテル化された平均分子量100〜10000のポリオキシプロピレングリコール基が好ましい。
【0027】
前記s30の重合性置換基としては、少なくとも1つの重合性官能基を末端基および/または分岐基として有する有機残基であって前記した置換基以外の基を用いることが出来る。ここで、上記重合性官能基は、付加重合性官能基および/または重付加性官能基であるのが好適である。付加重合性官能基は、炭素−炭素二重結合を有し、それ自体で他の2個の官能基と付加反応を生じ得る重合性官能基であれば特に限定されず、好適なものとしてはアクリロイル基およびメタアクリロイル基{以下まとめて、(メタ)アクリロイル基と記す}、およびチオアクリロイル基およびチオメタアクリロイル基{以下まとめて、チオ(メタ)アクリロイル基と記す}、ビニル基、アリル基等が挙げられる。また、重付加性官能基は、炭素−炭素二重結合以外からなり、それ自体で他の1個の官能基との付加反応を生じ得る重合性官能基であり、好適なものとしてはメルカプト基、フェノール性水酸基、イソシアナト基、チオイソシアナト基(イソチオシアナト基)、エピチオ基、カルボキシル基、スルホキシル基、エポキシ基、オキソラン基、2−(メタクロキシ)エチルカルバミル基、オキシラニルメチル基等が挙げられる。
【0028】
クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する環である前記▲2▼の置換若しくは非置換の芳香環が縮環していてもよい置換若しくは非置換の脂環式炭化水素環のうち、置換若しくは非置換の芳香環が縮環しない非置換の脂環式炭化水素環としては、特に限定はされないが、炭素数6〜20の脂環式炭化水素環が好ましい。このような脂環式炭化水素環のうち好適なものを例示すると、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカン等の単環、インデン、テトラリン、ベンゾシクロデカリン等の芳香環が縮環している脂環式炭化水素環、またはジシクロペンタン、ジシクロヘキサン、ジシクロオクタン、ベンゾジシクロヘキサン、ノルカンファー等の2環式の脂環式炭化水素環、アダマンタン、ホモアダマンタン等の3環式の脂環式炭化水素環基が挙げられる。また、これら脂環式炭化水素環が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。さらに、これら脂環式炭化水素環基に置換若しくは非置換の芳香環が縮環する場合における当該置換若しくは非置換の芳香環としては前記▲1▼と同じ環を挙げることができる。なお、この場合において、縮環する芳香族環の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0029】
クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する環である前記▲3▼の置換若しくは非置換の複素環の複素環の内、非置換のものとしては、ヘテロ原子として酸素、硫黄または窒素原子を含む複素環であれば特に限定されないが、これらへテロ原子を含む環員数が5又は6の単環の複素環またはこれらにベンゾ環が縮環した複素環であるのが好ましい。好適な複素環を例示すると、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素芳香族性複素環;フラン、ピラン、ベンゾフラン等の含酸素芳香族性複素環;チオフェン、ベンゾチオフェン等の含硫黄芳香族性複素環;テトラヒドロフラン、ピラン等の含酸素非芳香族性複素環;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン等の含窒素非芳香族性複素環;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ブチロラクトン、テトラヒドロフラノン、テトラヒドロピラノン、ピロリジノン、ピペリジノン、オキソヘキサメチレンイミン等の複素環に直接結合したオキソ基を有する非芳香族性複素環;アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、デカヒドロ−シクロペンタアゼピン、アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン、オクタヒドロ−キノリジン、デカヒドロ−ピリジノキノリン、アザ−トリシクロウンデカン等の環集合複素環を挙げることができる。これらの複素環はクロメン化合物と結合する場合には、複素環部位の2個の炭素原子または他部位の2個の炭素原子のいずれの部位で結合していてもよい。これらの複素環基のなかで、フォトクロ物性の点から酸素、硫黄または窒素原子を含む5〜8員環の環基、またはこれら酸素、硫黄または窒素原子を含む5〜8員環の環基にベンゼン環が縮環した複素環基が好ましい。このような環基を具体的に例示すると、ピリジン、キノリン、ピロリン、インドリン等の含窒素複素環、フラン、ベンゾフラン等の含酸素複素環、チオフェン、ベンゾチオフェン等の含硫黄複素環が挙げられる。また、これら複素環が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0030】
本発明のクロメン化合物においては、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに前記▲1▼〜▲3▼の環が縮環している共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基を置換基として有する必要がある。このような1価の有機基を有することによりモノマーへの溶解性が著しく向上する。本発明のクロメン化合物が有する当該1価の有機基の数に特に制限されないが、発色濃度、退色速度、モノマーに対する溶解性等の点から1〜4個、特に1〜2個であるのが好適である。なお、当該有機基が結合する位置は、クロメン化合物のフォトクロミック特性を低下させない位置であれば特に限定されない。
【0031】
上記1価の有機基は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む基であれば特に制限されないが、モノマーに対する溶解性向上効果及び合成が容易である観点から、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、チアクラウンエーテル、クリプタンド及び環状ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ環化合物から誘導される1価の有機基であるのが好適である。なお、これら有機基のへテロ環部分には、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環環またはシクロヘキサン、ビシクロノナン等の脂環式炭化水素環が更に縮環していてもよい。これらへテロ環化合物としては、例えば成書[クラウンエーテルとクリプタンドの化学、Synthetic Multidentate Macrocyclic Compounds, R.M.Izattら編、庄野利之ら訳、化学同人刊]、[Synthesis of Macrocycles, Progress in Macrocyclic Chemistry Vol.3, Edited by R. M. Izatt, JOHN WILEY & SONS]に記載されているヘテロ環化合物を挙げることができる。以下、これらへテロ環化合物について詳しく説明する。
【0032】
前記クラウンエーテルとは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等の2価のアルキレンオキシ基が3個以上含まれる環状ポリエーテルを意味する。このようなクラウンエーテルの例としては、12−クラウン−4−エーテル、14−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、ナフチル−12−クラウン−4、ジベンゾ−14−クラウン−4−エーテル、ベンゾ−12−クラウン−4−エーテル、ベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−12−クラウン−4−エーテル、ジベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6−エーテル等のを挙げることができる。
【0033】
また、アザクラウンエーテルとは、前記クラウンエーテルの酸素原子の一部を窒素原子で置き換えた化合物、即ち含窒素環状ポリエーテルのことであり、環形成に加わらない窒素原子には水素原子又はアルキル基等の置換基が結合していてもよい。アザクラウンエーテルの例としては、1−アザ−15−クラウン−5−エーテル、1−アザ−18−クラウン−6−エーテル、ベンゾ−1−アザ−18−クラウン−6−エーテル、4,10−ジアザ−12−クラウン−4−エーテル、4,10−ジアザ−15−クラウン−5−エーテル、4,13−ジアザ−18−クラウン−6−エーテル、5,6,14,15−ジベンゾ−1,4−ジオキサ−8,12−ジアザシクロペンタデカ−5,14−ジエン等を挙げることが出来る。
【0034】
チアクラウンエーテルとは、前記クラウンエーテルの酸素原子の一部または全部を硫黄原子で置き換えた化合物である。チアクラウンエーテルの例としては、1−チア−15−クラウン−5−エーテル、1−チア−18−クラウン−6−エーテル、1,4,8,11−テトラチアシクロテトラデカン等が挙げられる。
【0035】
クリプタンドとは、少なくとも2個の窒素原子を有するアザクラウンエーテルの窒素原子間で、さらに架橋構造を形成させた3環式の化合物であり、環形成に加わらない窒素原子には水素原子又はアルキル基等の置換基が結合していても良い。クリプタンドの例としては、[2.2.2]クリプタンド、[2.3.3]クリプタンド等が挙げられる。
【0036】
環状ポリアミンとは、前記クラウンエーテルの酸素原子の全部を窒素原子で置き換えた化合物であり、環形成に加わらない窒素原子には水素原子又はアルキル基等の置換基が結合していても良い。環状ポリアミンの例としては、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン等を挙げることができる。
【0037】
これらのヘテロ環化合物の中でも溶解性向上効果、合成の容易さ等の点で、クラウンエーテル又はアザクラウンエーテル、特にクラウンエーテルが好適である。
【0038】
これらヘテロ環化合物がクロメン骨格と結合される方法は特に制限なく、該へテロ環化合物が直接結合されていてもよく(この場合、前記1価の有機基はヘテロ環化合物の水素原子が結合手に置き換わったものとなる)、2価の有機基を介して結合していてもよい(この場合、前記1価の有機基はヘテロ環化合物の水素原子が2価の有機基で置換されたものとなる)。
【0039】
特に溶解性向上効果が高いという理由から、前記の酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基は、下記式(4)乃至(8)で示される基及びこれら基に芳香族炭化水素環または脂環式炭化水素環が縮環した基からなる「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基であるのが好適である。
【0040】
【化8】
【0041】
以下、上記式(4)乃至(8)について説明する。
【0042】
先ず、式中のU、X、Y、Zはそれぞれ独立に、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または下記式(9)で示される基を意味する。
【0043】
【化9】
【0044】
上記式(9)中のR7は、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは非置換の1価の脂環式炭化水素基、置換もしくは非置換の1価の複素環基、置換もしく非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアラルコキシ基、アシル基、アシルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基、アルキルチオアルキル基である。これらR7の各基としては、前記s1〜s10及びs12〜s25と同じものを挙げることができる。溶解性、耐候性の点から、R7は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基が特に好ましい。
【0045】
また、前記式(4)乃至(8)中のl、m及びnは、夫々0〜6の整数であり、l+m+nは3〜10である。溶解性向上の効果、合成上の容易さなどの点から、lが4〜6の整数でかつl+m+n=4〜6であるか、lが3〜5の整数であり、mが1〜2の整数であり、nが0〜2の整数であり、かつl+m+n=4〜6であるのが好適である。中でもlが4〜6の整数であり、かつl+m+n=4〜6であるか、lが3〜5の整数であり、mが1であり、かつl+m+n=4〜6であるのが特に好ましい。
【0046】
また、前記式(4)乃至(8)中のVおよびTはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−CH2O−、−CO−、−OCO−、−CO2−、−N(R8)CO−、−CON(R8)−、−N(R8)−であり、pおよびrは、それぞれ独立に0または1であり、qは0〜12の整数である。ここで、R8は水素原子;メチル基、エチル基、t−ブチル基等のアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基のアラルキル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4―メトキシフェニル基、3、5―ジクロロフェニル基等の置換もしくは非置換のフェニル基を意味する。VおよびTとしては、酸素原子、−CH2O−、−CO−、−OCO−、−CO2−、−CON(R8)−、2価の芳香族炭化水素基から選ばれる基がこのましく、かつq=0〜4が好ましい。
【0047】
なお、前記式(4)乃至(8)で示される基に芳香族炭化水素環または脂環式炭化水素環が縮環する場合のこれら環として好適なものを例示すれば、芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜18の芳香族炭化水素環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナンスレン環等を挙げることができる。またこれら芳香族環は、置換基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の置換アミノ基;アセチルアミノ基、N−メチルアセチルアミノ基、ブチリルアミド基等のアミド基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を1個または2個以上有していてもよい。また、脂環式炭化水素環としては、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロノナン環等を挙げることができる。
【0048】
前記式(4)〜(8)で示される置換基のなかでも、特に下記式(15)〜(17)で示される置換基が好ましい。
【0049】
【化10】
【0050】
上記式中、oは1〜8の整数、好ましくは2〜5の整数であり、VおよびT、p、qおよびrはそれぞれ前記式(4)〜(8)におけるのと同義である。
【0051】
前記式(15)〜(17)で示される基のうち、特に好ましい置換基を以下に例示する。
【0052】
【化11】
【0053】
本発明のクロメン化合物には、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する前記▲1▼〜▲3▼の環および酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基を置換基の他に、化合物のフォトクロミック性を改良する目的で他の置換基が導入されていてもよい。例えば、優れたフォトクロミック性能を発揮する(特に退色速度が速くなる)という観点から、クロメン環の2位の炭素原子と結合する置換基の少なくとも一方は、下記(i)〜(iii)のいずれかの基であることが特に好ましい。
【0054】
(i)非置換芳香族炭化水素基;
(ii)置換アミノ基、アルキル基あるいはアルコキシ基を置換基として有する置換芳香族炭化水素基;
(iii)置換芳香族炭化水素基であって、該置換基が、窒素原子をヘテロ原子として有しかつ該窒素原子を介して芳香族炭化水素基に結合している複素環基;
なお、上記(ii)〜(iii)における置換芳香族炭化水素基においては、置換基の置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、置換位置は芳香族炭化水素基がフェニル基であるときは3位もしくは4位に置換されることが好ましく、その数は1または2であることが好ましい。当該置換フェニル基として、好適なものを具体的に例示すると、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル基、4−モルホリノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基等を挙げることができる。
【0055】
また、前記(ii)〜(iii)において、置換アリール基がフェニル基以外の場合には、置換基が置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、その数は1であることが好ましい。当該置換基アリール基としての、好適なものを具体的に例示すると、4−(N,N−ジメチルアミノ)チエニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フリル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)チエニル基、4−モルホリノピロリニル、基、6−ピペリジノベンゾチエニル基、6−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフラニル基等を挙げることができる。
【0056】
発色濃度、退色速度等のフォトクロミック物性の観点から、好ましい本発明のクロメン化合物としては、下記式(1)で示されるクロメン化合物を挙げることができる。
【0057】
【化12】
【0058】
上記式(1)中、下記式(2)及び(3)
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
で示される基は、それぞれ独立に、非置換の2価の芳香族炭化水素環基、非置換の芳香環が縮環していてもよい非置換の2価の脂環式炭化水素環基又は非置換の2価の複素環基である。これら2価の基は、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに前記▲1▼〜▲3▼の環のうち非置換の芳香族炭化水素環、非置換の芳香環が縮環していてもよい非置換の脂環式炭化水素環又は非置換の複素環が縮環した状態を表したものである。従って上記式(2)又は(3)で示される2価の基としては、前記▲1▼〜▲3▼の環の説明で説明した上記の環に相当する環から誘導される2価の基を採用するのが好適である。
【0062】
また、前記式(1)中のR1〜R4は前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基又は前記置換基s1〜s30から選ばれる1種の基であり、a、b、c及びdは夫々0〜2の整数で、a+b+c+dは0〜6の整数である。なお、R1〜R4が前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基である場合、当該有機基は下記式(18)〜(20)で示される基であるのが好ましい。なお式中oは、1〜8の整数、好ましくは2〜5の整数であり、T及びrはそれぞれ前記式(4)〜(8)におけるのと同義である。
【0063】
【化15】
【0064】
上記式(18)〜(20)で示される基の具体例としては次のものを挙げることができる。
【0065】
【化16】
【0066】
また、前記式(1)中のR5及びR6は、それぞれ前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基、置換もしくは非置換のアルキル基(即ち、前記s1、s19、s20、s23又はs25)、前記s8、前記s9或いは前記s12であるか、又はR5及びR6が互いに結合して環を形成する基である。なお、R5及びR6が互いに結合して形成する環としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロペンタドデシレン基等の炭素数3〜20の単環基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.0]へプチル基、ビシクロ[3.1.1]へプチル基、ビシクロ[3.2.2]オクチル基、アダマンチル基等の炭素数6〜20の環集合基;フルレニル基、フェナンスリレン基等のベンゼン環が2〜4個縮環した芳香族炭化水素環基等を挙げることができる。なお、環集合基において、その結合手の位置に制限はされない。さらに、R5及びR6の少なくとも一方は、前記(i)〜(iii)のいずれかの基であることが特に好ましい。また、R5〜R6が前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基である場合、当該記は下記式(21)〜(22)で示される基であるのが好ましい。なお式中oは、1〜8の整数、好ましくは2〜5の整数である。
【0067】
【化17】
【0068】
上記式(21)〜(22)で示される基の具体例としては次のものを挙げることができる。
【0069】
【化18】
【0070】
また、前記式(1)において、R1〜R6の少なくとも1つは前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基である必要がある。したがって、R5及びR6が共に前記有機基Aでない場合、a、b、c及びdが同時に0となることはない。
【0071】
前記式(1)で示されるクロメン化合物の中でも、発色濃度、退色速度、耐久性に特に優れるという理由から特に好適なクロメン化合物としては、下記式(10)〜(14)、特に式(10)〜(13)で示される化合物を挙げることができる。
【0072】
【化19】
【0073】
{式中、R10乃至R27は、それぞれ独立に前記式(1)におけるR1と同義であり、更にR18及びR20は互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成する基であってもよく、R22及びR23は互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成する基であってもよく、R24及びR26は互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成する基であってもよく、R8及びR9はそれぞれ前記式(1)におけるR5及びR6と同義であり、g、i、j、kはそれぞれ0〜2の整数であり、R8乃至R27の内の少なくとも一つは前記有機基群Aに属する基である。}
なお、R18及びR20、R22及びR23、又はR24及びR26が互いに結合して形成する環としては、特に制限はなく、2価の脂肪族炭化水素環、2価の芳香族炭化水素環、2価の非芳香族複素環基、2価の芳香族複素環基等が挙げられるが、これらのなかで特に2価の脂肪族炭化水素環、2価の芳香族炭化水素環が好ましい。
【0074】
例示すると、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロペンタドデシレン基等の炭素数3〜20の単環式肪族炭化水素環基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.0]へプチル基、ビシクロ[3.1.1]へプチル基、ビシクロ[3.2.2]オクチル基等の炭素数6〜20の肪族炭化水素環集合基;フルレニル基、フェナンスリレン基等のベンゼン環が2〜4個縮環した芳香族炭化水素環基を挙げることができる。
【0075】
本発明のクロメン化合物の中でも、発色濃度、退色速度、耐久性の点から、下記式で示されるピラン化合物が好適である。
【0076】
【化20】
【0077】
【化21】
【0078】
【化22】
【0079】
【化23】
【0080】
【化24】
【0081】
【化25】
【0082】
【化26】
【0083】
【化27】
【0084】
【化28】
【0085】
【化29】
【0086】
次に前記式(10)〜(13)で示されるクロメン化合物において、さらに好適な化合物について記す。
【0087】
前記式(10)においては、発色濃度が特に優れている点から、R13としてアザクラウンエーテルが環を構成する窒素原子にて直接ナフトピラン化合物と結合したクロメン化合物が特に好ましい。この際好適なアザクラウンエーテルとしては、1−アザ−15−クラウン−5−エーテル、1−アザ−18−クラウン−6−エーテル、ベンゾ−1−アザ−18−クラウン−6−エーテル等が挙げられる。
【0088】
また前記式(10)においては、R12に有機基Aが置換した場合には、立体効果により退色速度が遅くなる場合があるため、注意を要する。
【0089】
前記式(11)においては、退色速度が特に優れている点から、R14として(T)r基が−CO−である有機基Aを含むクロメン化合物が特に好ましい。この際好適な有機基Aとしては下記式で示す化合物が挙げられる。
【0090】
【化30】
【0091】
一般式(12)〜(13)においては、発色波長の長波長化、400〜500nmにおける発色濃度が濃いこと、退色速度が優れている点などからR16として(T)r基が−O−である有機基Aを1〜2個含むクロメン化合物が特に好ましい。この際好適な有機基Aとしては下記式で示す化合物が挙げられる。
【0092】
【化31】
【0093】
本発明のクロメン化合物の中でも、さらに発色濃度、退色速度、耐久性の点から、下記式で示されるピラン化合物が特に好適である。
【0094】
【化32】
【0095】
【化33】
【0096】
【化34】
【0097】
【化35】
【0098】
【化36】
【0099】
【化37】
【0100】
本発明の化合物は、一般に常温常圧で無色、あるいは淡色の固体または粘稠な液体として存在し、次の(イ)〜(ロ)のような手段で確認できる。
【0101】
(イ)プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定することにより、δ5.9〜9.0ppm付近にオレフィンプロトンおよび芳香族プロトンに基づくピーク、δ1.0〜4.5ppm付近にアルキルプロトン、アルキレンプロトン、酸素原子、窒素原子、硫黄原子に隣接した炭素原子に置換したプロトン等に基づくピークが現れる。また、それぞれのスペクトル強度を相対的に比較することにより、それぞれの結合基のプロトンの個数を知ることができる。
【0102】
(ロ)元素分析によって相対する生成物の組成を決定することができる。
【0103】
本発明のクロメン化合物の製造方法は、特に限定されずいかなる合成法によって得てもよい。好適に採用される代表的な方法を以下に説明する。
【0104】
該方法は、下記一般式(25)
【0105】
【化38】
【0106】
{ただし、R1〜R4、下記一般式(2)および(3)
【0107】
【化39】
【0108】
【化40】
【0109】
で示される基は、前記一般式(1)における定義と同義である。}
で示されるナフトール誘導体と一般式(27)
【0110】
【化41】
【0111】
{ただし、R1、およびR2は、前記一般式(1)における定義と同義である。}
で示されるプロパギルアルコール誘導体を酸触媒の存在下で反応させることにより、前記一般式(1)のクロメン化合物を得る方法である。
【0112】
なお、上記一般式(25)で示されるナフトール化合物および/または上記一般式(27)で示されるプロパギルアルコール誘導体には、少なくとも1つの有機基Aが含まれる。
【0113】
上記一般式(25)のナフトール誘導体の製造方法は、特に限定されず公知の合成法により得ることができる。また、ナフトール誘導体への有機基Aの導入方法は特に限定されず、例えば下記式に示されるように、必要に応じてアルコキシ基の脱アルキル化を行った後、フェノール性水酸基を有するクロメン化合物とCl、Br、トシル基等の脱離基が置換クラウンエーテルとを塩基性条件下ウイリアムソン合成反応によって得る方法(式I〜III)、カルボキシル基を有するクロメン化合物と水酸基を有する有機基Aを有する化合物とを酸触媒で脱水反応により得る方法などが採用できる。
【0114】
【化42】
【0115】
なお、上記式中R20、R21、は一般式(1)のR1と同義である。また、tおよびuは0〜2の整数であり、vは1〜2の整数である。また、XはCl、Br、トシル基等の脱離基であり、B−Xは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基(例えば前記「有機基群A」に属する1価の有機基)に脱離基Xが結合した化合物である。
【0116】
【化43】
【0117】
なお、上記式中R14〜R17は一般式(12)のR14〜R17と同義であり、R20、R21は一般式(1)のR1と同義である。また、tおよびuは0〜2の整数であり、wは0〜2の整数である。また、XはCl、Br、トシル基等の脱離基であり、B−Xは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基(例えば前記「有機基群A」に属する1価の有機基)に脱離基Xが結合した化合物である。
【0118】
【化44】
【0119】
なお、上記式中R18〜R19は一般式(13)のR18〜R19と同義であり、R20およびR21は一般式(1)のR1と同義である。また、tおよびuは0〜2の整数であり、wは0〜2の整数である。また、XはCl、Br、トシル基等の脱離基であり、B−Xは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基(例えば前記「有機基群A」に属する1価の有機基)に脱離基Xが結合した化合物である。
【0120】
また、有機基Aを導入する別の方法として、下記式(V)に示されるように、2−ナフトール化合物を塩素で処理した後、トリエチルアミン等の3級アミン存在下、NH基を有する有機基Aを有する化合物を処理し窒素を直接芳香環に置換した化合物を得、ラネーニッケル等の還元剤を用いてCl原子をH原子で置換する方法が挙げられる。
【0121】
【化45】
【0122】
なお、上記式中R10〜R11は一般式(10)のR10〜R11と同義であり、R20およびR21は一般式(1)のR1と同義である。また、hおよびjはそれぞれ0〜2の整数である。また、“NH基およびC環を有する化合物”{式V中でii)Et3Nの右隣に示される化合物}は、アザクラウンエーテルまたはポリアミンから選ばれる化合物である。
【0123】
また、前記一般式(27)で示されるプロパギルアルコール誘導体は、例えば、前記一般式(27)に対応するケトン誘導体とリチウムアセチリド等の金属アセチレン化合物と反応させることにより合成できる。ここで該ケトン誘導体にクラウンエーテル、アザクラウンエーテルの導入方法としては、例えば下記式VIおよびVIIに示す方法を用いることができる。
【0124】
【化46】
【0125】
上記一般式(25)で示される化合物と一般式(27)で示される化合物との酸触媒存在下での反応は次のようにして行われる。すなわち、これら2種の化合物の反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。
【0126】
また、酸触媒としては硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンベンゼンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられ、上記一般式(25)で示される化合物と(27)で示される化合物(反応基質)の総和に対して0.1〜10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常0〜200℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン等が使用される。溶媒の使用量は反応基質が溶解する程度でよい。
【0127】
本発明のクロメン化合物は、優れたフォトクロミック特性を有するばかりでなく、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の一般の有機溶媒に対する溶解度が高いばかりでなく、フォトクロミックコーティング剤のモノマー成分(ラジカル重合性単量体)に対する溶解性が高く、モノマー成分に高濃度に溶解するという特徴を有する。このため、フォトクロミックプラスチックレンズをコーティング法で製造する際のフォトクロミック化合物として使用した場合、厚さの制限されたフォトクロミックコート層を形成することによっても十分なフォトクロミック特性を付与することが可能となる。また、フォトクロミックプラスチックレンズを製造する別の方法として、レンズ基材の原料モノマー組成物にフォトクロミック化合物を溶解させ、これを重合硬化することにより製造する方法(練り込み法)もあるが、本発明のフォトクロミック化合物は該練り込み法用のフォトクロミック化合物としても有用である。即ち、本発明のクロメン化合物を用いることにより厚さ1μm〜5mm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜100μm、最も好ましくは10〜50μmという薄さで優れたフォトクロミック特性を有する光学物品あるいはフォトクロミックコート層を得ることが可能となる。
【0128】
コーティング法又は練り込み法において、本発明のクロメン化合物を溶解するモノマー組成物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、シリル基、イソシアネート等のラジカル重合性基を有す公知の化合物を含む組成物がなんら制限なく使用できる。本発明において、好適に使用できるラジカル重合性単量体を例示すれば、次のようなものを挙げることができる。
【0129】
即ち、(メタ)アクリロイル基を有する単量体の例としては、平均分子量300〜2000のポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量300〜2000のメチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量300〜2000のポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量620のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量300〜2000のポリテトラメチレングリコールメタアクリレート、平均分子量400〜2000のオクチルフェニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量400〜2000のノニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量300〜2000のメチルエーテルポリエチレンチオグリコールメタクリレート、平均分子量400〜2000のパーフルオロヘプチルエチレングリコールメタクリレート等のポリアルキレングリコール系単官能メタクリレート;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N−ジメチル等のその他の単官能メタクリレート;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、オクタエチレングリコールジメタクリレート、ドデカエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、等の2官能アルキレングリコール系(メタ)アクリル酸エステル化合物;ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシデカエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシオクタデカエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4ーメタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を有する2官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、等のアルキレングリコール系多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、等のポリウレタン/ポリエステル系多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等のその他多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオ(メタ)アクリル酸化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシ(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のその他の(メタ)アクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物を挙げることができる。
【0130】
アリル基を有する単量体の例としては、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物を挙げることができる。
【0131】
ビニル基を有する単量体の例としては、ジビニルベンゼン、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン等のビニル化合物を挙げることができる。
【0132】
シリル基を有する単量体の例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、4−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、3−(3−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、ジエトキシビニルシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、ドコセニルトリエトキシシラン、O−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、1,3―ビス(メタクリロキシ)−2−トリメチルシロキシプロパン、テトラキス(2−メタクリロキシエトキシ)シラン、トリビニルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニロキシトリメチルシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシランビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0133】
イソシアネート基を有する単量体の例としては、2−イソシアナトエトキシメタアクリレート、4−(2−イソシアナトイソプロピル)スチレン等が挙げられる。
【0134】
その他、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;等のラジカル重合性多官能単量体を挙げることができる。
【0135】
これらラジカル重合性化合物(モノマー)は単独でも、異なる種類のものを混合して用いることもできる。これらのなかでも、良好なフォトクロミック性能を得るためには(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体が最も好ましい。具体的には、上記のラジカル重合性多官能単量体からなる重合体において例示された(メタ)アクリロイル基を有する化合物と同じものを挙げることができる。
【0136】
コーティング法或いは練り込み法において上記ラジカル重合性単量体に本発明のクロメン化合物を溶解して使用する場合の組成物の量比は特に限定されず、使用形態に応じて適宜決定すればよいが、硬化後の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性、フォトクロミック材の透明性、あるいは発色濃度や退色速度、耐久性等のフォトクロミック特性の点から、重合性単量体100重量部に対して、本発明のクロメン化合物を一般的には0.001〜1000重量部(S30の重合性官能基を有している場合には、ほとんど化合物だけという場合があり得る)、特に0.01〜100重量部、さらには2〜30重量部とすることが好ましい。
【0137】
また、コーティング法或いは練り込み法において、本発明のクロメン化合物を溶解したモノマー組成物は、一般にラジカル重合開始剤を用いて重合硬化されるが、当該ラジカル重合開始剤としては公知のものが特に限定されず使用できる。特に好ましい重合方法は、光重合開始剤及び熱重合開始剤を配合した本発明の硬化性組成物に対し紫外線を照射し硬化させた後、さらに加熱して重合を完結させる方法である。
【0138】
本発明において好適に使用できるラジカル重合開始剤を例示すれば、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0139】
また紫外線等の光照射により重合させる場合の光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アエトフェノン4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等を挙げることができる。
【0140】
これらラジカル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、一般には、全重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。また、上記ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0141】
また、コーティング法或いは練り込み法において、本発明のクロメン化合物を使用するに際しては、発色色調を調製するために(例えば眼鏡レンズにおいてはグレー又はブラウン等の中間色が好まれているためこのような発色色調に調整する必要がある。)、本発明のクロメン化合物の組合せのみでこのような色調が得られにくい場合には、本発明のクロメン化合物以外のフォトクロミック化合物を併用することもできる。このようなフォトクロミック化合物としてはスピロオキサジン、スピロピラン、クロメン、フルギド、またはフルギミド化合物等を挙げることができる。さらにフォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤、密着性向上剤等の添加剤を添加してもよい。
【0142】
本発明のクロメン化合物を用いてコーティング法によりフォトクロミックレンズを製造する場合、本発明のクロメン化合物、モノマー(ラジカル重合性単量体)および必要に応じて上記したような各成分を含むフォトクロミックコーティング剤を調製し、従来のコーティング法と同様に、これをプラスチックレンズ基材の表面にスピンコート法等に塗布してこれを硬化させればよい。このとき、プラスチックレンズ基材としては、(メタ)アクリル樹脂系、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂およびチオエポキシ系樹脂等のプラスチック系の眼鏡レンズ、ガラス系の眼鏡レンズが使用できる。また、コーティングに際してはプライマーを用いてもよく、さらにフォトクロミックコート層形成後の表面上にハードコート層、反射防止コート層、防汚コート層等の他の層を設けることも可能である。
【0143】
以上、本発明のクロメン化合物について、コーティング法或いは練り込み法によりフォトクロミックレンズ使用する場合を例にその有用性を説明したが、本発明のクロメン化合物は、フォトクロミック材として広範囲に利用でき、フォトクロミックレンズを製造するための上記以外の方法に使用できることは勿論、例えば銀塩感光材に代わる各種の記憶材料、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記憶材料、レーザー用感光材料、ホログラフィー用感光材料など種々の記憶材料として利用できる。その他、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミック材は、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレー材料、光量計、フォトクロミック性フィルム、家屋や自動車の窓ガラス、装飾品、ファンシーグッズなどの材料としても利用できる。
【0144】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」の意である。
【0145】
実施例1
下記式
【0146】
【化47】
【0147】
で示されるナフトール誘導体9.5g(0.051mol)、ヒドロキシメチル−15−クラウン−5を15.3g(0.061mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物3g(0.016mol)、トルエン200mlを三つ口フラスコに入れ,デーンスターク水分留去装置を用いて水を留去しながら加熱還流を10時間行なった。放冷後、溶媒除去し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式クラウンエーテル化ナフトール誘導体を12.5g得た。
【0148】
【化48】
【0149】
このクラウンエーテル化ナフトール誘導体8.4g(0.020mol)と、下記のプロパギルアルコール誘導体
【0150】
【化49】
【0151】
4.6g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を8.7g得た。収率は71%であった。
【0152】
この生成物の元素分析値はC72.98%、H6.15%であって、C37H38O8の計算値であるC72.77%、H6.27%に極めて良く一致した。
【0153】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ3.5〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく21Hのピーク、δ6.0〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく17Hのピークを示した。1H−NMRの結果を図1に示した。
【0154】
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることが確認した。この化合物No.を1とする。
【0155】
【化50】
【0156】
実施例2〜3
実施例1と同様にして、表1に示したクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、実施例1と同様な構造確認の手段を用いて構造解析した結果、表1に示す構造式で示される化合物であることを確認した。表1にあわせて化合物Noと合成収率を示した。表2にこれらの化合物の元素分析値と各化合物の構造式から求めた計算値、及び1H−NMRの結果を示した。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
実施例4
2,6−ナフタレンジオール8.0g(0.05mol)、ヒドロキシメチル12−クラウン−4を11.3g(0.055mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物2.5g(0.013mol)、トルエン200mlを三つ口フラスコに入れ,デーンスターク水分留去装置を用いて水を留去しながら加熱還流を10時間行なった。放冷後、溶媒除去し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式クラウンエーテル化ナフトール誘導体を11.6g得た。
【0160】
【化51】
【0161】
このクラウンエーテル化ナフトール誘導体7.0g(0.020mol)と、下記のプロパギルアルコール誘導体
【0162】
【化52】
【0163】
4.6g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を8.0g得た。収率は74%であった。
【0164】
この生成物の元素分析値はC75.22%、H6.13%であって、C34H34O6の計算値であるC75.82%、H6.36%に極めて良く一致した。
【0165】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ3.5〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく17Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく17Hのピークを示した。この化合物No.を4とする。
【0166】
【化53】
【0167】
実施例5〜6
実施例4と同様にして、表1及び表2にしめしたクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、実施例1と同様な構造確認の手段を用いて構造解析した結果、表1に示す構造式で示される化合物であることを確認した。また表1にあわせて化合物Noと合成収率を示した。表2にこれらの化合物の元素分析値と各化合物の構造式から求めた計算値、及び1H−NMRの結果を示した。
【0168】
実施例7
下記式
【0169】
【化54】
【0170】
で示されるナフトール誘導体72g(0.5mol)とクロロホルム500mlとを、ガス導入管、温度計、水およびアルカリトラップを備えた1Lの四つ口フラスコに仕込み、水冷下で攪拌しながら窒素および塩素ガス(計1.2mol)を導入した。その後、溶媒留去を行い褐色オイル120gを得た。
【0171】
温度計、滴下ロートを備えた500ml三つ口フラスコに該オイル12g(0.05mol)、トルエン150mlを仕込み、攪拌しながら水冷下トリエチルアミン7.2gを仕込み、ついで1−アザ−4,7,10−オキサドデカン10.5g(0.06mol)のトルエン溶液を60mlを1時間かけて滴下し、そのまま2時間反応を行った。析出した塩をろ過後、母液を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去をおこない褐色固体を得た。褐色固体をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式アザクラウンエーテル化ナフトール誘導体を9.5g得た。
【0172】
温度計、冷却管を備えた1L三ツ口フラスコに上記固体6g、10%NaOH水溶液200mlを仕込み、40℃に加熱して溶解後、ラネーニッケル(Al含量50%)12gを加えた。そのまま2時間攪拌し、過剰のラネーニッケルをセライトろ過後、母液を塩酸でpH4〜5に調整し、エーテル抽出を行った。有機層を硫酸マグネシウム乾燥後、溶媒留去を行い、固体4.5gを得た。
【0173】
【化55】
【0174】
得られた上記クラウンエーテル化ナフトール誘導体8.4g(0.020mol)と、下記のプロパギルアルコール誘導体
【0175】
【化56】
【0176】
4.6g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を8.7g得た。収率は71%であった。
【0177】
この生成物の元素分析値はC75.65%、H6.61%、N2.83%であって、C34H55NO5の計算値であるC75.95%、H6.56%、N2.61%に極めて良く一致した。
【0178】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ2.8〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく21Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく16Hのピークを示した。
【0179】
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることが確認した。この化合物No.を7とする。
【0180】
【化57】
【0181】
実施例8
下記のナフトール化合物4.6g(0.02mol)と
【0182】
【化58】
【0183】
下記のプロパギルアルコール誘導体
【0184】
【化59】
【0185】
8.4g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を6.4g得た。収率は54%であった。
【0186】
この生成物の元素分析値はC75.11%、H6.84%、N4.82%であって、C37H40N2O5の計算値であるC74.98%、H6.80%、H4.73%に極めて良く一致した。
【0187】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ2.8〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく24Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく16Hのピークを示した。
【0188】
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることが確認した。この化合物No.を8とする。
【0189】
【化60】
【0190】
以下に比較例で使用したフォトクロミック化合物の略号及び構造を示す。
ナフトピラン化合物1(NP1)
【0191】
【化61】
【0192】
ナフトピラン化合物2(NP2)
【0193】
【化62】
【0194】
ナフトピラン化合物3(NP3)
【0195】
【化63】
【0196】
ナフトピラン化合物4(NP4)
【0197】
【化64】
【0198】
ナフトピラン化合物5(NP5)
【0199】
【化65】
【0200】
ナフトピラン化合物6(NP6)
【0201】
【化66】
【0202】
実施例9
テトラエチレングリコールジメタクリレート13重量部、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン48重量部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル2重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、グリシジルメタクリレート9重量部からなる重合性単量体10g、および実施例1で得られた化合物1を4mgをサンプル管瓶に入れ、攪拌子を用いて室温で攪拌した。その際に化合物1が溶解するのに要した時間を目視で確認した。その結果{溶解時間(hr)}を表3に示した。溶解時間が短いほど溶解速度は速い(溶解性が高い)といえる。
【0203】
【表3】
【0204】
実施例10〜16
クロメン化合物として化合物2〜8を用いた以外は上記実施例9と同様な方法で化合物の溶解速度を評価した。その結果をまとめて表3に示した。
【0205】
比較例1〜6
クロメン化合物として比較化合物NP1〜NP6を用いた以外は上記実施例9と同様にして比較化合物の溶解性を評価した。その結果をまとめて表3に示した。表3からわかるように、本発明の化合物は、重合性単量体に対して優れた溶解性を示す。さらにクラウンエーテルの溶解性が、特に高いことが判る。
【0206】
実施例17〜24
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン35重量部、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセル・ユーシービー社:EB1830)10重量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート20部、グリシジルメタアクリレート10部からなる重合性単量体10gに、実施例1〜8で得られたクロメン化合物をそれぞれ単体で加え、室温で24時間攪拌した際のクロメン化合物の溶解度を下記に示す要領で4段階で評価した。結果を表4に示した。
【0207】
◎:0.5g以上溶解
○:0.2g以上〜0.5g未満溶解
△:0.1g以上〜0.2g未満溶解
×:0.1g未満溶解
【0208】
【表4】
【0209】
比較例7〜12
クロメン化合物として比較化合物NP1〜NP6を用いた以外は上記実施例9と同様にして比較化合物の溶解性を評価した。その結果をまとめて表5に示した。表4からわかるように、本発明の化合物は、重合性単量体に対して優れた溶解性を示す。さらにクラウンエーテルの溶解性が、特に高いことが判る。
【0210】
実施例25
実施例1で得られたクロメン化合物(化合物1)0.04重量部をテトラエチレングリコールジメタクリレート13重量部、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン48重量部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル2重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、グリシジルメタクリレート9重量部に添加し、さらに重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート1重量部を加えて十分に混合した。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合を行った。重合は空気炉を用い、30℃〜90℃で18時間かけ徐々に温度を上げ、90℃で2時間保持した。重合終了後、重合体を鋳型のガラス型から取り外した。
【0211】
得られた重合体(厚さ2mm)を試料とし、これに浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を用い、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度2.4mW/cm2(365nm)、24μW/cm2(245nm)で120秒間照射して発色させ、前記試料のフォトクロミック特性を測定した。フォトクロミック特性は次のようなもので評価した。結果は表5にまとめて示した。
【0212】
▲1▼ 極大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の極大吸収波長である。該極大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0213】
▲2▼ 発色濃度{ε(120)−ε(0)}:前記極大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度ε(120)と光未照射状態の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0214】
▲3▼ 退色半減期{t1/2(min.)}:120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記極大吸収波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の半分まで低下するのに要する時間。この時間が短いほど退色速度が速く、フォトクロミック性が優れているといえる。
【0215】
▲4▼ 残存率(%):{(A200/A0×100)}:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進実験を行った。即ち、得られた重合体(試料)をスガ試験機(株)製キセノンウエザーメーターX25により、200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A200)を測定し、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0216】
実施例26〜31
クロメン化合物として実施例2〜7で得られた化合物2〜8を用いた以外は上記実施例25と同様にしてフォトクロミック重合体を得、その特性を評価した。その結果をまとめて表5に示した。
【0217】
【表5】
【0218】
比較例13
クロメン化合物として比較化合物NP1を用いた以外は上記実施例25と同様にしてフォトクロミック重合体を得、その特性を評価した。その結果をまとめて表5に示した。
【0219】
以上の結果から、本発明の前記一般式(1)で示されるクロメン化合物は、発色濃度、退色速度ともに優れたフォトクロミック化合物であることが判る。さらに一般式(11)で示される化合物のうち、5位に本発明の飽和炭化水素環が置換した化合物は、特に退色速度が速くなる効果があることがわかる。
【0220】
実施例33
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン35重量部、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセル・ユーシービー社:EB1830)10重量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート20部、グリシジルメタアクリレート10部からなる重合性単量体100重量部に、N−メチルジエタノールアミンを5重量部、光安定剤としてビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを5重量部、重合開始剤としてチバスペシャリティーケミカル社製CGI184[1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン]を0.4重量部およびチバスペシャリティーケミカル社製CGI403[ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド]を0.1重量部添加し、さらに化合物1を3重量%添加し、十分に混合した。
【0221】
続いて、上記方法で得られた混合液の約2gをMIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、厚さ2mmのプラスチックレンズ(CR39;アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)の表面に、回転数60r.p.mで40秒→500r.p.mで2秒→1000r.p.mで2秒の条件でスピンコートした。この表面がコートされたレンズを窒素ガス雰囲気中で出力120mW/cm2のメタルハライドランプを用いて、2分間照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに120℃で3時間加熱することにより、フォトクロコーティング層を有するレンズを得た。フォトクロコーティング層の厚さは約40μmであった。なお、用いたプラスチックレンズは、あらかじめその表面をキーエンス社製、大気圧プラズマ装置を用いてプラズマ処理し、表面状態を改質したものを用いた。
【0222】
得られた厚み約40μmのコーティング層を有するレンズを、実施例25と同様の方法で、極大吸収波長(λmax)、発色濃度{ε(120)−ε(0)}、退色半減期{t1/2(min.)}、およびコーティンググレンズの外観を評価した。その結果を表6に示す。
【0223】
【表6】
【0224】
実施例34〜40
実施例33とクロメン化合物の種類を変えた以外は、同じ方法でフォトクロミック性コーティング層を有するレンズを調製した。即ち、本発明のクロメン化合物をラジカル重合性単量体に対して、単一のフォトクロミック化合物を3重量%添加してレンズを調製した。いずれのレンズも膜厚は約40μmであった。
【0225】
評価結果を表6に示した。本発明の化合物はいずれもラジカル重合性単量体に対して良好な溶解性を示しており、得られたレンズはいずれも、発色濃度、退色速度とも優れていた。
【0226】
比較例14〜19
添加するフォトクロミック化合物の種類を表7に示すように変えた以外は、実施例25と全て同じ方法で、フォトクロコーティング層を有するレンズを調製した。評価も同様な方法を行った。評価結果を表6に併せて示す。
【0227】
比較例14〜19に示したように、いずれの化合物もラジカル重合性単量体に対して溶解性が低いため均一溶解しなかった。得られたレンズはいずれも多量のブツがあるため外観不良であり、膜が不均一であるため測定値が一定せず正確な測定が出来なかったが、明らかに発色濃度は低かった。
【0228】
【発明の効果】
本発明のクロメン化合物は、高い発色濃度を示し、退色速度が早く、耐久性が高く、さらにモノマー等への溶解性が高いという優れた特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本図は、実施例1で得られた化合物の1H−NMRチャートである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフォトクロミック性クロメン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトクロミック化合物と複合化することによりフォトクロミック性を付与したフォトクロミックプラスチックレンズを用いた眼鏡は、紫外線が照射される屋外ではサングラスとして機能し、紫外線照射のない屋内では通常の透明な眼鏡として機能するというユニークな特徴を有し、近年その需要は増大している。
【0003】
このような用途に用いられるフォトクロミック化合物としてはフルギド化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物およびクロメン化合物等が知られており、中でもクロメン骨格を有するクロメン化合物は、耐久性、退色速度等において特に優れた物性を示すことが確認されている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
一方、プラスチックレンズにフォトクロミック性を付与する方法としては、幾つかの方法が知られているが、原理的にどのようなプラスチックレンズにもフォトクロミック性を付与することが可能であることからコーティング法が注目されている。コーティング法とはレンズ基材の上にフォトクロミック化合物が分散した樹脂層からなるフォトクロミックコート層を形成する方法であり、該コート層の形成はフォトクロミック化合物を含有する硬化性組成物からなるコーティング剤をスピンコート法等によりレンズ表面に塗布した後にこれを硬化させることにより行われる。通常、フォトクロミックコート層の厚さは1μm〜数100μmと非常に薄いため、コーティング法により十分なフォトクロミック性を有するレンズを得るためには、フォトクロミック化合物を1%以上の高濃度で溶解したコーティング剤を用いる必要がある。なお、コーティング剤中にフォトクロミック化合物が溶解していない場合には得られるフォトクロミック化合物が均一に分散したフォトクロミックコート層を得ることができず、高品位のフォトクロミックレンズを得ることができない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−192378号公報
【特許文献2】
特開2000−347346号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、フォトクロミック眼鏡レンズとして望ましいフォトクロミック特性を有するフォトクロミック化合物として現在知られているものは、コーティング剤のモノマー成分に対する溶解性が低いという問題があった。このため、これらフォトクロミック化合物を高濃度で溶解したコーティング剤を調製するのは困難であり、例えば溶解速度が遅いことから調製時間を短縮するために加熱処理、超音波処理等の特別な操作が必要がった。また、このような操作を行なっても溶解量には限界があり、十分なフォトクロミック特性を得るためにはフォトクロミックコート層の厚さを厚くせざるを得ず、膜厚が厚く且つ光学特性が良好で均質なフォトクロミックコート層を得るためには様々なプロセス上の問題を解決しなければならないというのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決するために、フォトクロミック眼鏡レンズとして望ましいフォトクロミック特性、即ち発色濃度が高く、退色速度が早く、耐久性が高いという特徴を有するフォトクロミック化合物であって、更にコーティング剤のモノマー成分に対する溶解性が高い新規なフォトクロミック化合物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を続けてきた。その結果、フォトクロミック性を示すクロメン化合物に置換基としてクラウンエーテル等から誘導される“酸素原子等のヘテロ原子を3個以上含むヘテロ環骨格を有する1価の有機基”を導入することによりモノマーに対する溶解性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、第一の本発明は、置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環、置換若しくは非置換の芳香環が縮環していてもよい置換若しくは非置換の脂環式炭化水素環及び置換若しくは非置換の複素環からなる群より選ばれる1種の環がクロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環したクロメン化合物であって、周辺fと周辺hの両方にこれら環が縮環する場合、両周辺に縮環する環は互いに異なっていてもよく、更に酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基を置換基として有することを特徴とするクロメン化合物である。
【0010】
また、第二の本発明は、前記本発明のクロメン化合物からなることを特徴とするフォトクロミック材であり、第三の本発明は、該本発明のフォトクロミック材を含有してなることを特徴とするフォトクロミック光学物品である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のクロメン化合物は、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに特定の環が縮環した基本構造を有する。ここで、クロメンの周辺fおよび周辺hとは下記式に示されるように、それぞれクロメンの5位と6位の炭素間の周辺及び7位と8位の炭素間の周辺を意味する。
【0012】
【化7】
【0013】
(式中、1〜8は炭素の番号を表し、a〜iは周辺を表す。)
本発明のクロメン化合物は、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する環は、▲1▼置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環、▲2▼置換若しくは非置換の芳香環が縮環していてもよい置換若しくは非置換の脂環式炭化水素環又は▲3▼置換若しくは非置換の複素環であり、周辺fと周辺hの両方にこれら環が縮環する場合、両周辺に縮環する環は互いに異なっていてもよい。周辺f及び周辺hに異なる環がクロメン骨格に2つ縮環している好適な例としては、ベンゼン環およびインデン環が縮環したインデノ[2,1−f]ナフト[1,2−b]ピラン等が挙げられる。
【0014】
上記▲1▼の置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環は特に限定されないが、そのうちの非置換のものとしては、炭素数6〜25、特に炭素数6〜12の芳香族炭化水素環が好ましい。好適な非置換芳香族炭化水素環を例示すると、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ジヒドロフェナンスレン環等のベンゼン環が1〜4個縮環した芳香族炭化水素環が挙げられ、中でもベンゼン環またはナフタレン環が特に好適である。
【0015】
上記▲1▼の置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環の内、置換基を有する芳香族炭化水素環としては、上記非置換の芳香族炭化水素環における水素原子が、(s1)ヒドロキシル基、(s2)シアノ基、(s3)ニトロ基、(s4)アルキル基、(s5)アルコキシ基、(s6)アルコキシカルボニル基、(s7)置換若しくは非置換のシクロアルコキシカルボニル基、(s8)置換もしくは非置換の1価の脂環式炭化水素基、(s9)置換もしくは非置換の1価の複素環基、(s10)置換アミノ基、(s11)アミド基、(s12)置換もしくは非置換の1価のアリール基、(s13)置換もしくは非置換のアリールオキシ基、(s14)置換もしくは非置換のアリールオキシアルキル基、(s15)置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、(s16)置換もしくは非置換のアラルキル基、(s17)置換もしくは非置換のアラルコキシ基、(s18)アシル基、(s19)アシルオキシアルキル基、(s20)ヒドロキシアルキル基、(s21)アルコキシアルキル基、(s22)ハロゲン原子、(s23)ハロゲノアルキル基、(s24)ハロゲノアルコキシ基、(s25)アルキルチオアルキル基、(s26)ポリオキシエチレングリコール基、(s27)ポリオキシプロピレングリコール基、(s28)アルコキシポリオキシエチレングリコール基、(s29)アルコキシポリオキシプロピレングリコール基及び(s30)重合性置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されたものを挙げることができる。
【0016】
以下、これら置換基のうち、構造が一義的に定まる(s1)ヒドロキシル基、(s2)シアノ基および(s3)ニトロ基以外の置換基s4〜s30について説明する。
【0017】
上記s4のアルキル基は、特に限定はされないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。好適なアルキル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等を挙げることができる。また、前記s5のアルコキシ基は、特に限定されないが、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基を具体的に例示すると、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。また、前記s6のアルコキシカルボニル基は、特に限定されないが、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基が好ましい。好適なアルコキシカルボニル基を具体的に例示すると、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0018】
前記s7のシクロアルコキシカルボニル基は、特に限定されないが、炭素数1〜13のシクロアルコキシカルボニル基が好ましい。好適なシクロアルコキシカルボニル基を具体的に例示すると、シクロブトキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、シクロデシルオキシカルボニル基等を挙げることができる。また、シクロアルコキシカルボニル基が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0019】
前記s8の1価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロペンタドデシレン基等の炭素数3〜20の単環基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.0]へプチル基、ビシクロ[3.1.1]へプチル基、ビシクロ[3.2.2]オクチル基、アダマンチル基等の炭素数6〜20の環集合基等が挙げられる。なお、環集合基において、その結合手の位置に制限はされない。
【0020】
前記s9の1価の複素環基としては、ヘテロ原子として酸素、硫黄、または窒素原子を合計2個まで含む基であれば特に限定されないが、これらへテロ原子を含む環員数が5又は6員の単環の複素環基、またはこれらにベンゾ環が縮環した複素環基であるのが好ましい。好適な複素環基を例示すると、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素芳香族複素環基より誘導される1価の含窒素芳香族複素環基;フラン、ピラン、ベンゾフラン等の含酸素芳香族複素環化合物より誘導される1価の含酸素芳香族複素環基;チオフェン、ベンゾチオフェン等の含硫黄芳香族複素環化合物より誘導される1価の含硫黄芳香族複素環基;テトラヒドロフラン、ピラン等の含酸素環状化合物より誘導される1価の複素環基;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン等の含窒素環状化合物より誘導される1価の複素環基;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の含カルボニル環状化合物より誘導される1価の複素環基;ブチロラクトン、テトラヒドロフラノン、テトラヒドロピラノン等の含エステル環状化合物もしくは含酸素環状ケトン化合物より誘導される1価の複素環基;ピロリジノン、ピペリジノン、オキソヘキサメチレンイミン等の含アミド環状化合物もしくは含窒素環状ケトン化合物より誘導される1価の複素環基;アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、デカヒドロ−シクロペンタアゼピン、アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン、オクタヒドロ−キノリジン、デカヒドロ−ピリジノキノリン、アザ−トリシクロウンデカン等の環集合化合物より誘導される1価の複素環基などの基を挙げることができる。
【0021】
また、s8およびs9におけるこれら1価の基が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0022】
前記s10の置換アミノ基としては、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基が置換したアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基またはジアリールアミノ基が好適であり、好適な置換アミノ基を具体的に例示すると、メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。また、前記s11のアミド基としては、特に限定されないが、アセチルアミノ基、N−メチルアセチルアミノ基、ブチリルアミド基等の炭素数3〜12のアミド基を挙げることできる。
【0023】
前記s12の1価のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フルオリル基、フェナンスリル基などを挙げることができる。また、前記s13のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、フルオロキシ基、フェナンスロキシ基などを挙げることができる。また、前記s14のアリールオキシアルキル基としては、フェノキシメチル基、ナフトキシメチル基、フルオロキシブチル基、フェナンスロキシデシル基などを挙げることができる。また、前記s15のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、フルオロキシカルボニル基、フェナンスロキシカルボニル基などを挙げることができる。また、前記s16のアラルキル基は、特に制限されないが、炭素数7〜11のアラルキル基が好ましい。好適なアラルキル基を例示すると、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等を挙げることができる。また、前記s17のアラルコキシ基は、特に限定されないが炭素数6〜10のアラルコシ基が好ましい。好適なアラルコキシ基を具体的に例示すると、フェノキシメチル基、ナフトキシエチル基等を挙げることができる。更に、s12〜s17におけるこれらの基が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0024】
前記s18のアシル基は、特に限定されないが炭素数2〜10のアシル基が好ましい。好適なアシル基を具体的に例示すると、アセチル基、プロピオニル基等を挙げることができる。また、前記s19のアシルオキシアルキル基は、特に限定されないが炭素数2〜10のアシルオキシアルキル基が好ましい。好適なアシルオキシアルキル基を具体的に例示すると、アセチルオキシメチル基、プロピオニルオキシプロピル基等を挙げることができる。また、前記s20のヒドロキシアルキル基は、特に限定されないが炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基が好ましい。好適なヒドロキシアルキル基を具体的に例示すると、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシデシル基等を挙げることができる。更に、前記s21のアルコキシアルキル基は、特に限定されないが炭素数1〜10のアルコキシアルキル基が好ましい。好適なアルコキシアルキル基を具体的に例示すると、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシプロピル基、メトキシデシル基等を挙げることができる。
【0025】
前記s22のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を挙げることができる。また、前記s23のハロゲノアルキル基は、上述のアルキル基の1または2以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子あるいは臭素原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲノアルキル基として好適なものを例示すると、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、前記s24のハロゲノアルコキシ基としては、上述のアルコキシ基の1または2以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、あるいは臭素原子で置換されたものが挙げられる。ハロゲノアルコキシ基として特に好適なものを例示すると、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等を挙げることができる。更に、前記s25のアルキルチオアルキル基としては、特に限定されないが炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基が好ましい。好適なアルキルチオアルキル基を具体的に例示すると、メチルチオメチル基、エチルチオエチル基、ブチルチオプロピル基、メチルチオデシル基等を挙げることができる。
【0026】
前記s26のポリオキシエチレングリコール基としては、特に限定されないが平均分子量100〜10000のポリオキシエチレングリコール基が好ましい。また、前記s27のポリオキシプロピレングリコール基としては、特に限定されないが平均分子量100〜10000のポリオキシプロピレングリコール基が好ましい。また、前記s28のアルコキシポリオキシエチレングリコール基としては、特に限定されないがポリオキシエチレングリコール基の末端を炭素数1〜4のアルキル基でエーテル化した平均分子量100〜10000のポリオキシエチレングリコール基が好ましい。更に、前記s29のアルコキシポリオキシプロピレングリコール基としては、特に限定されないがポリオキシプロピレングリコール基の末端を炭素数1〜4のアルキル基でエーテル化された平均分子量100〜10000のポリオキシプロピレングリコール基が好ましい。
【0027】
前記s30の重合性置換基としては、少なくとも1つの重合性官能基を末端基および/または分岐基として有する有機残基であって前記した置換基以外の基を用いることが出来る。ここで、上記重合性官能基は、付加重合性官能基および/または重付加性官能基であるのが好適である。付加重合性官能基は、炭素−炭素二重結合を有し、それ自体で他の2個の官能基と付加反応を生じ得る重合性官能基であれば特に限定されず、好適なものとしてはアクリロイル基およびメタアクリロイル基{以下まとめて、(メタ)アクリロイル基と記す}、およびチオアクリロイル基およびチオメタアクリロイル基{以下まとめて、チオ(メタ)アクリロイル基と記す}、ビニル基、アリル基等が挙げられる。また、重付加性官能基は、炭素−炭素二重結合以外からなり、それ自体で他の1個の官能基との付加反応を生じ得る重合性官能基であり、好適なものとしてはメルカプト基、フェノール性水酸基、イソシアナト基、チオイソシアナト基(イソチオシアナト基)、エピチオ基、カルボキシル基、スルホキシル基、エポキシ基、オキソラン基、2−(メタクロキシ)エチルカルバミル基、オキシラニルメチル基等が挙げられる。
【0028】
クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する環である前記▲2▼の置換若しくは非置換の芳香環が縮環していてもよい置換若しくは非置換の脂環式炭化水素環のうち、置換若しくは非置換の芳香環が縮環しない非置換の脂環式炭化水素環としては、特に限定はされないが、炭素数6〜20の脂環式炭化水素環が好ましい。このような脂環式炭化水素環のうち好適なものを例示すると、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカン等の単環、インデン、テトラリン、ベンゾシクロデカリン等の芳香環が縮環している脂環式炭化水素環、またはジシクロペンタン、ジシクロヘキサン、ジシクロオクタン、ベンゾジシクロヘキサン、ノルカンファー等の2環式の脂環式炭化水素環、アダマンタン、ホモアダマンタン等の3環式の脂環式炭化水素環基が挙げられる。また、これら脂環式炭化水素環が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。さらに、これら脂環式炭化水素環基に置換若しくは非置換の芳香環が縮環する場合における当該置換若しくは非置換の芳香環としては前記▲1▼と同じ環を挙げることができる。なお、この場合において、縮環する芳香族環の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0029】
クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する環である前記▲3▼の置換若しくは非置換の複素環の複素環の内、非置換のものとしては、ヘテロ原子として酸素、硫黄または窒素原子を含む複素環であれば特に限定されないが、これらへテロ原子を含む環員数が5又は6の単環の複素環またはこれらにベンゾ環が縮環した複素環であるのが好ましい。好適な複素環を例示すると、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素芳香族性複素環;フラン、ピラン、ベンゾフラン等の含酸素芳香族性複素環;チオフェン、ベンゾチオフェン等の含硫黄芳香族性複素環;テトラヒドロフラン、ピラン等の含酸素非芳香族性複素環;ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン等の含窒素非芳香族性複素環;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ブチロラクトン、テトラヒドロフラノン、テトラヒドロピラノン、ピロリジノン、ピペリジノン、オキソヘキサメチレンイミン等の複素環に直接結合したオキソ基を有する非芳香族性複素環;アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン、デカヒドロ−シクロペンタアゼピン、アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタン、オクタヒドロ−キノリジン、デカヒドロ−ピリジノキノリン、アザ−トリシクロウンデカン等の環集合複素環を挙げることができる。これらの複素環はクロメン化合物と結合する場合には、複素環部位の2個の炭素原子または他部位の2個の炭素原子のいずれの部位で結合していてもよい。これらの複素環基のなかで、フォトクロ物性の点から酸素、硫黄または窒素原子を含む5〜8員環の環基、またはこれら酸素、硫黄または窒素原子を含む5〜8員環の環基にベンゼン環が縮環した複素環基が好ましい。このような環基を具体的に例示すると、ピリジン、キノリン、ピロリン、インドリン等の含窒素複素環、フラン、ベンゾフラン等の含酸素複素環、チオフェン、ベンゾチオフェン等の含硫黄複素環が挙げられる。また、これら複素環が置換基を有する場合の当該置換基としては、前記s4〜s30(但し置換基を有するものを除く)と同じものを挙げることができる。なお、この場合において、置換基の数は限定されないが、1〜4、特に1〜2であるのが好適である。
【0030】
本発明のクロメン化合物においては、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに前記▲1▼〜▲3▼の環が縮環している共に、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基を置換基として有する必要がある。このような1価の有機基を有することによりモノマーへの溶解性が著しく向上する。本発明のクロメン化合物が有する当該1価の有機基の数に特に制限されないが、発色濃度、退色速度、モノマーに対する溶解性等の点から1〜4個、特に1〜2個であるのが好適である。なお、当該有機基が結合する位置は、クロメン化合物のフォトクロミック特性を低下させない位置であれば特に限定されない。
【0031】
上記1価の有機基は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む基であれば特に制限されないが、モノマーに対する溶解性向上効果及び合成が容易である観点から、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、チアクラウンエーテル、クリプタンド及び環状ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ環化合物から誘導される1価の有機基であるのが好適である。なお、これら有機基のへテロ環部分には、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環環またはシクロヘキサン、ビシクロノナン等の脂環式炭化水素環が更に縮環していてもよい。これらへテロ環化合物としては、例えば成書[クラウンエーテルとクリプタンドの化学、Synthetic Multidentate Macrocyclic Compounds, R.M.Izattら編、庄野利之ら訳、化学同人刊]、[Synthesis of Macrocycles, Progress in Macrocyclic Chemistry Vol.3, Edited by R. M. Izatt, JOHN WILEY & SONS]に記載されているヘテロ環化合物を挙げることができる。以下、これらへテロ環化合物について詳しく説明する。
【0032】
前記クラウンエーテルとは、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等の2価のアルキレンオキシ基が3個以上含まれる環状ポリエーテルを意味する。このようなクラウンエーテルの例としては、12−クラウン−4−エーテル、14−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、ナフチル−12−クラウン−4、ジベンゾ−14−クラウン−4−エーテル、ベンゾ−12−クラウン−4−エーテル、ベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−12−クラウン−4−エーテル、ジベンゾ−15−クラウン−5−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6−エーテル等のを挙げることができる。
【0033】
また、アザクラウンエーテルとは、前記クラウンエーテルの酸素原子の一部を窒素原子で置き換えた化合物、即ち含窒素環状ポリエーテルのことであり、環形成に加わらない窒素原子には水素原子又はアルキル基等の置換基が結合していてもよい。アザクラウンエーテルの例としては、1−アザ−15−クラウン−5−エーテル、1−アザ−18−クラウン−6−エーテル、ベンゾ−1−アザ−18−クラウン−6−エーテル、4,10−ジアザ−12−クラウン−4−エーテル、4,10−ジアザ−15−クラウン−5−エーテル、4,13−ジアザ−18−クラウン−6−エーテル、5,6,14,15−ジベンゾ−1,4−ジオキサ−8,12−ジアザシクロペンタデカ−5,14−ジエン等を挙げることが出来る。
【0034】
チアクラウンエーテルとは、前記クラウンエーテルの酸素原子の一部または全部を硫黄原子で置き換えた化合物である。チアクラウンエーテルの例としては、1−チア−15−クラウン−5−エーテル、1−チア−18−クラウン−6−エーテル、1,4,8,11−テトラチアシクロテトラデカン等が挙げられる。
【0035】
クリプタンドとは、少なくとも2個の窒素原子を有するアザクラウンエーテルの窒素原子間で、さらに架橋構造を形成させた3環式の化合物であり、環形成に加わらない窒素原子には水素原子又はアルキル基等の置換基が結合していても良い。クリプタンドの例としては、[2.2.2]クリプタンド、[2.3.3]クリプタンド等が挙げられる。
【0036】
環状ポリアミンとは、前記クラウンエーテルの酸素原子の全部を窒素原子で置き換えた化合物であり、環形成に加わらない窒素原子には水素原子又はアルキル基等の置換基が結合していても良い。環状ポリアミンの例としては、1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン等を挙げることができる。
【0037】
これらのヘテロ環化合物の中でも溶解性向上効果、合成の容易さ等の点で、クラウンエーテル又はアザクラウンエーテル、特にクラウンエーテルが好適である。
【0038】
これらヘテロ環化合物がクロメン骨格と結合される方法は特に制限なく、該へテロ環化合物が直接結合されていてもよく(この場合、前記1価の有機基はヘテロ環化合物の水素原子が結合手に置き換わったものとなる)、2価の有機基を介して結合していてもよい(この場合、前記1価の有機基はヘテロ環化合物の水素原子が2価の有機基で置換されたものとなる)。
【0039】
特に溶解性向上効果が高いという理由から、前記の酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基は、下記式(4)乃至(8)で示される基及びこれら基に芳香族炭化水素環または脂環式炭化水素環が縮環した基からなる「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基であるのが好適である。
【0040】
【化8】
【0041】
以下、上記式(4)乃至(8)について説明する。
【0042】
先ず、式中のU、X、Y、Zはそれぞれ独立に、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または下記式(9)で示される基を意味する。
【0043】
【化9】
【0044】
上記式(9)中のR7は、水素原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは非置換の1価の脂環式炭化水素基、置換もしくは非置換の1価の複素環基、置換もしく非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアラルコキシ基、アシル基、アシルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基、アルキルチオアルキル基である。これらR7の各基としては、前記s1〜s10及びs12〜s25と同じものを挙げることができる。溶解性、耐候性の点から、R7は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基が特に好ましい。
【0045】
また、前記式(4)乃至(8)中のl、m及びnは、夫々0〜6の整数であり、l+m+nは3〜10である。溶解性向上の効果、合成上の容易さなどの点から、lが4〜6の整数でかつl+m+n=4〜6であるか、lが3〜5の整数であり、mが1〜2の整数であり、nが0〜2の整数であり、かつl+m+n=4〜6であるのが好適である。中でもlが4〜6の整数であり、かつl+m+n=4〜6であるか、lが3〜5の整数であり、mが1であり、かつl+m+n=4〜6であるのが特に好ましい。
【0046】
また、前記式(4)乃至(8)中のVおよびTはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−CH2O−、−CO−、−OCO−、−CO2−、−N(R8)CO−、−CON(R8)−、−N(R8)−であり、pおよびrは、それぞれ独立に0または1であり、qは0〜12の整数である。ここで、R8は水素原子;メチル基、エチル基、t−ブチル基等のアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基のアラルキル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4―メトキシフェニル基、3、5―ジクロロフェニル基等の置換もしくは非置換のフェニル基を意味する。VおよびTとしては、酸素原子、−CH2O−、−CO−、−OCO−、−CO2−、−CON(R8)−、2価の芳香族炭化水素基から選ばれる基がこのましく、かつq=0〜4が好ましい。
【0047】
なお、前記式(4)乃至(8)で示される基に芳香族炭化水素環または脂環式炭化水素環が縮環する場合のこれら環として好適なものを例示すれば、芳香族炭化水素環としては、炭素数6〜18の芳香族炭化水素環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナンスレン環等を挙げることができる。またこれら芳香族環は、置換基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の置換アミノ基;アセチルアミノ基、N−メチルアセチルアミノ基、ブチリルアミド基等のアミド基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を1個または2個以上有していてもよい。また、脂環式炭化水素環としては、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロノナン環等を挙げることができる。
【0048】
前記式(4)〜(8)で示される置換基のなかでも、特に下記式(15)〜(17)で示される置換基が好ましい。
【0049】
【化10】
【0050】
上記式中、oは1〜8の整数、好ましくは2〜5の整数であり、VおよびT、p、qおよびrはそれぞれ前記式(4)〜(8)におけるのと同義である。
【0051】
前記式(15)〜(17)で示される基のうち、特に好ましい置換基を以下に例示する。
【0052】
【化11】
【0053】
本発明のクロメン化合物には、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環する前記▲1▼〜▲3▼の環および酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基を置換基の他に、化合物のフォトクロミック性を改良する目的で他の置換基が導入されていてもよい。例えば、優れたフォトクロミック性能を発揮する(特に退色速度が速くなる)という観点から、クロメン環の2位の炭素原子と結合する置換基の少なくとも一方は、下記(i)〜(iii)のいずれかの基であることが特に好ましい。
【0054】
(i)非置換芳香族炭化水素基;
(ii)置換アミノ基、アルキル基あるいはアルコキシ基を置換基として有する置換芳香族炭化水素基;
(iii)置換芳香族炭化水素基であって、該置換基が、窒素原子をヘテロ原子として有しかつ該窒素原子を介して芳香族炭化水素基に結合している複素環基;
なお、上記(ii)〜(iii)における置換芳香族炭化水素基においては、置換基の置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、置換位置は芳香族炭化水素基がフェニル基であるときは3位もしくは4位に置換されることが好ましく、その数は1または2であることが好ましい。当該置換フェニル基として、好適なものを具体的に例示すると、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル基、4−モルホリノフェニル基、4−ピペリジノフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基等を挙げることができる。
【0055】
また、前記(ii)〜(iii)において、置換アリール基がフェニル基以外の場合には、置換基が置換する位置は特に限定されず、その総数も特に限定されないが、その数は1であることが好ましい。当該置換基アリール基としての、好適なものを具体的に例示すると、4−(N,N−ジメチルアミノ)チエニル基、4−(N,N−ジエチルアミノ)フリル基、4−(N,N−ジフェニルアミノ)チエニル基、4−モルホリノピロリニル、基、6−ピペリジノベンゾチエニル基、6−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフラニル基等を挙げることができる。
【0056】
発色濃度、退色速度等のフォトクロミック物性の観点から、好ましい本発明のクロメン化合物としては、下記式(1)で示されるクロメン化合物を挙げることができる。
【0057】
【化12】
【0058】
上記式(1)中、下記式(2)及び(3)
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
で示される基は、それぞれ独立に、非置換の2価の芳香族炭化水素環基、非置換の芳香環が縮環していてもよい非置換の2価の脂環式炭化水素環基又は非置換の2価の複素環基である。これら2価の基は、クロメンの周辺f及び/又は周辺hに前記▲1▼〜▲3▼の環のうち非置換の芳香族炭化水素環、非置換の芳香環が縮環していてもよい非置換の脂環式炭化水素環又は非置換の複素環が縮環した状態を表したものである。従って上記式(2)又は(3)で示される2価の基としては、前記▲1▼〜▲3▼の環の説明で説明した上記の環に相当する環から誘導される2価の基を採用するのが好適である。
【0062】
また、前記式(1)中のR1〜R4は前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基又は前記置換基s1〜s30から選ばれる1種の基であり、a、b、c及びdは夫々0〜2の整数で、a+b+c+dは0〜6の整数である。なお、R1〜R4が前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基である場合、当該有機基は下記式(18)〜(20)で示される基であるのが好ましい。なお式中oは、1〜8の整数、好ましくは2〜5の整数であり、T及びrはそれぞれ前記式(4)〜(8)におけるのと同義である。
【0063】
【化15】
【0064】
上記式(18)〜(20)で示される基の具体例としては次のものを挙げることができる。
【0065】
【化16】
【0066】
また、前記式(1)中のR5及びR6は、それぞれ前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基、置換もしくは非置換のアルキル基(即ち、前記s1、s19、s20、s23又はs25)、前記s8、前記s9或いは前記s12であるか、又はR5及びR6が互いに結合して環を形成する基である。なお、R5及びR6が互いに結合して形成する環としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロペンタドデシレン基等の炭素数3〜20の単環基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.0]へプチル基、ビシクロ[3.1.1]へプチル基、ビシクロ[3.2.2]オクチル基、アダマンチル基等の炭素数6〜20の環集合基;フルレニル基、フェナンスリレン基等のベンゼン環が2〜4個縮環した芳香族炭化水素環基等を挙げることができる。なお、環集合基において、その結合手の位置に制限はされない。さらに、R5及びR6の少なくとも一方は、前記(i)〜(iii)のいずれかの基であることが特に好ましい。また、R5〜R6が前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基である場合、当該記は下記式(21)〜(22)で示される基であるのが好ましい。なお式中oは、1〜8の整数、好ましくは2〜5の整数である。
【0067】
【化17】
【0068】
上記式(21)〜(22)で示される基の具体例としては次のものを挙げることができる。
【0069】
【化18】
【0070】
また、前記式(1)において、R1〜R6の少なくとも1つは前記「有機基群A」より選ばれる一種の1価の有機基である必要がある。したがって、R5及びR6が共に前記有機基Aでない場合、a、b、c及びdが同時に0となることはない。
【0071】
前記式(1)で示されるクロメン化合物の中でも、発色濃度、退色速度、耐久性に特に優れるという理由から特に好適なクロメン化合物としては、下記式(10)〜(14)、特に式(10)〜(13)で示される化合物を挙げることができる。
【0072】
【化19】
【0073】
{式中、R10乃至R27は、それぞれ独立に前記式(1)におけるR1と同義であり、更にR18及びR20は互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成する基であってもよく、R22及びR23は互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成する基であってもよく、R24及びR26は互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成する基であってもよく、R8及びR9はそれぞれ前記式(1)におけるR5及びR6と同義であり、g、i、j、kはそれぞれ0〜2の整数であり、R8乃至R27の内の少なくとも一つは前記有機基群Aに属する基である。}
なお、R18及びR20、R22及びR23、又はR24及びR26が互いに結合して形成する環としては、特に制限はなく、2価の脂肪族炭化水素環、2価の芳香族炭化水素環、2価の非芳香族複素環基、2価の芳香族複素環基等が挙げられるが、これらのなかで特に2価の脂肪族炭化水素環、2価の芳香族炭化水素環が好ましい。
【0074】
例示すると、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロペンタドデシレン基等の炭素数3〜20の単環式肪族炭化水素環基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[3.2.0]へプチル基、ビシクロ[3.1.1]へプチル基、ビシクロ[3.2.2]オクチル基等の炭素数6〜20の肪族炭化水素環集合基;フルレニル基、フェナンスリレン基等のベンゼン環が2〜4個縮環した芳香族炭化水素環基を挙げることができる。
【0075】
本発明のクロメン化合物の中でも、発色濃度、退色速度、耐久性の点から、下記式で示されるピラン化合物が好適である。
【0076】
【化20】
【0077】
【化21】
【0078】
【化22】
【0079】
【化23】
【0080】
【化24】
【0081】
【化25】
【0082】
【化26】
【0083】
【化27】
【0084】
【化28】
【0085】
【化29】
【0086】
次に前記式(10)〜(13)で示されるクロメン化合物において、さらに好適な化合物について記す。
【0087】
前記式(10)においては、発色濃度が特に優れている点から、R13としてアザクラウンエーテルが環を構成する窒素原子にて直接ナフトピラン化合物と結合したクロメン化合物が特に好ましい。この際好適なアザクラウンエーテルとしては、1−アザ−15−クラウン−5−エーテル、1−アザ−18−クラウン−6−エーテル、ベンゾ−1−アザ−18−クラウン−6−エーテル等が挙げられる。
【0088】
また前記式(10)においては、R12に有機基Aが置換した場合には、立体効果により退色速度が遅くなる場合があるため、注意を要する。
【0089】
前記式(11)においては、退色速度が特に優れている点から、R14として(T)r基が−CO−である有機基Aを含むクロメン化合物が特に好ましい。この際好適な有機基Aとしては下記式で示す化合物が挙げられる。
【0090】
【化30】
【0091】
一般式(12)〜(13)においては、発色波長の長波長化、400〜500nmにおける発色濃度が濃いこと、退色速度が優れている点などからR16として(T)r基が−O−である有機基Aを1〜2個含むクロメン化合物が特に好ましい。この際好適な有機基Aとしては下記式で示す化合物が挙げられる。
【0092】
【化31】
【0093】
本発明のクロメン化合物の中でも、さらに発色濃度、退色速度、耐久性の点から、下記式で示されるピラン化合物が特に好適である。
【0094】
【化32】
【0095】
【化33】
【0096】
【化34】
【0097】
【化35】
【0098】
【化36】
【0099】
【化37】
【0100】
本発明の化合物は、一般に常温常圧で無色、あるいは淡色の固体または粘稠な液体として存在し、次の(イ)〜(ロ)のような手段で確認できる。
【0101】
(イ)プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定することにより、δ5.9〜9.0ppm付近にオレフィンプロトンおよび芳香族プロトンに基づくピーク、δ1.0〜4.5ppm付近にアルキルプロトン、アルキレンプロトン、酸素原子、窒素原子、硫黄原子に隣接した炭素原子に置換したプロトン等に基づくピークが現れる。また、それぞれのスペクトル強度を相対的に比較することにより、それぞれの結合基のプロトンの個数を知ることができる。
【0102】
(ロ)元素分析によって相対する生成物の組成を決定することができる。
【0103】
本発明のクロメン化合物の製造方法は、特に限定されずいかなる合成法によって得てもよい。好適に採用される代表的な方法を以下に説明する。
【0104】
該方法は、下記一般式(25)
【0105】
【化38】
【0106】
{ただし、R1〜R4、下記一般式(2)および(3)
【0107】
【化39】
【0108】
【化40】
【0109】
で示される基は、前記一般式(1)における定義と同義である。}
で示されるナフトール誘導体と一般式(27)
【0110】
【化41】
【0111】
{ただし、R1、およびR2は、前記一般式(1)における定義と同義である。}
で示されるプロパギルアルコール誘導体を酸触媒の存在下で反応させることにより、前記一般式(1)のクロメン化合物を得る方法である。
【0112】
なお、上記一般式(25)で示されるナフトール化合物および/または上記一般式(27)で示されるプロパギルアルコール誘導体には、少なくとも1つの有機基Aが含まれる。
【0113】
上記一般式(25)のナフトール誘導体の製造方法は、特に限定されず公知の合成法により得ることができる。また、ナフトール誘導体への有機基Aの導入方法は特に限定されず、例えば下記式に示されるように、必要に応じてアルコキシ基の脱アルキル化を行った後、フェノール性水酸基を有するクロメン化合物とCl、Br、トシル基等の脱離基が置換クラウンエーテルとを塩基性条件下ウイリアムソン合成反応によって得る方法(式I〜III)、カルボキシル基を有するクロメン化合物と水酸基を有する有機基Aを有する化合物とを酸触媒で脱水反応により得る方法などが採用できる。
【0114】
【化42】
【0115】
なお、上記式中R20、R21、は一般式(1)のR1と同義である。また、tおよびuは0〜2の整数であり、vは1〜2の整数である。また、XはCl、Br、トシル基等の脱離基であり、B−Xは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基(例えば前記「有機基群A」に属する1価の有機基)に脱離基Xが結合した化合物である。
【0116】
【化43】
【0117】
なお、上記式中R14〜R17は一般式(12)のR14〜R17と同義であり、R20、R21は一般式(1)のR1と同義である。また、tおよびuは0〜2の整数であり、wは0〜2の整数である。また、XはCl、Br、トシル基等の脱離基であり、B−Xは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基(例えば前記「有機基群A」に属する1価の有機基)に脱離基Xが結合した化合物である。
【0118】
【化44】
【0119】
なお、上記式中R18〜R19は一般式(13)のR18〜R19と同義であり、R20およびR21は一般式(1)のR1と同義である。また、tおよびuは0〜2の整数であり、wは0〜2の整数である。また、XはCl、Br、トシル基等の脱離基であり、B−Xは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基(例えば前記「有機基群A」に属する1価の有機基)に脱離基Xが結合した化合物である。
【0120】
また、有機基Aを導入する別の方法として、下記式(V)に示されるように、2−ナフトール化合物を塩素で処理した後、トリエチルアミン等の3級アミン存在下、NH基を有する有機基Aを有する化合物を処理し窒素を直接芳香環に置換した化合物を得、ラネーニッケル等の還元剤を用いてCl原子をH原子で置換する方法が挙げられる。
【0121】
【化45】
【0122】
なお、上記式中R10〜R11は一般式(10)のR10〜R11と同義であり、R20およびR21は一般式(1)のR1と同義である。また、hおよびjはそれぞれ0〜2の整数である。また、“NH基およびC環を有する化合物”{式V中でii)Et3Nの右隣に示される化合物}は、アザクラウンエーテルまたはポリアミンから選ばれる化合物である。
【0123】
また、前記一般式(27)で示されるプロパギルアルコール誘導体は、例えば、前記一般式(27)に対応するケトン誘導体とリチウムアセチリド等の金属アセチレン化合物と反応させることにより合成できる。ここで該ケトン誘導体にクラウンエーテル、アザクラウンエーテルの導入方法としては、例えば下記式VIおよびVIIに示す方法を用いることができる。
【0124】
【化46】
【0125】
上記一般式(25)で示される化合物と一般式(27)で示される化合物との酸触媒存在下での反応は次のようにして行われる。すなわち、これら2種の化合物の反応比率は、広い範囲から採用されるが、一般には1:10〜10:1(モル比)の範囲から選択される。
【0126】
また、酸触媒としては硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンベンゼンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられ、上記一般式(25)で示される化合物と(27)で示される化合物(反応基質)の総和に対して0.1〜10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、通常0〜200℃が好ましく、溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン等が使用される。溶媒の使用量は反応基質が溶解する程度でよい。
【0127】
本発明のクロメン化合物は、優れたフォトクロミック特性を有するばかりでなく、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の一般の有機溶媒に対する溶解度が高いばかりでなく、フォトクロミックコーティング剤のモノマー成分(ラジカル重合性単量体)に対する溶解性が高く、モノマー成分に高濃度に溶解するという特徴を有する。このため、フォトクロミックプラスチックレンズをコーティング法で製造する際のフォトクロミック化合物として使用した場合、厚さの制限されたフォトクロミックコート層を形成することによっても十分なフォトクロミック特性を付与することが可能となる。また、フォトクロミックプラスチックレンズを製造する別の方法として、レンズ基材の原料モノマー組成物にフォトクロミック化合物を溶解させ、これを重合硬化することにより製造する方法(練り込み法)もあるが、本発明のフォトクロミック化合物は該練り込み法用のフォトクロミック化合物としても有用である。即ち、本発明のクロメン化合物を用いることにより厚さ1μm〜5mm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜100μm、最も好ましくは10〜50μmという薄さで優れたフォトクロミック特性を有する光学物品あるいはフォトクロミックコート層を得ることが可能となる。
【0128】
コーティング法又は練り込み法において、本発明のクロメン化合物を溶解するモノマー組成物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、シリル基、イソシアネート等のラジカル重合性基を有す公知の化合物を含む組成物がなんら制限なく使用できる。本発明において、好適に使用できるラジカル重合性単量体を例示すれば、次のようなものを挙げることができる。
【0129】
即ち、(メタ)アクリロイル基を有する単量体の例としては、平均分子量300〜2000のポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量300〜2000のメチルエーテルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量300〜2000のポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、平均分子量620のメチルエーテルポリプロピレングリコールメタアクリレート、平均分子量300〜2000のポリテトラメチレングリコールメタアクリレート、平均分子量400〜2000のオクチルフェニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量400〜2000のノニルエーテルポリエチレングリコールメタクリレート、平均分子量300〜2000のメチルエーテルポリエチレンチオグリコールメタクリレート、平均分子量400〜2000のパーフルオロヘプチルエチレングリコールメタクリレート等のポリアルキレングリコール系単官能メタクリレート;メチルアクリレート、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N−ジメチル等のその他の単官能メタクリレート;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、オクタエチレングリコールジメタクリレート、ドデカエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、等の2官能アルキレングリコール系(メタ)アクリル酸エステル化合物;ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシデカエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシオクタデカエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4ーメタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の芳香環を有する2官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、等のアルキレングリコール系多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、等のポリウレタン/ポリエステル系多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等のその他多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物;1,2−ビス(メタクリロイルチオ)エタン、ビス(2−アクリロイルチオエチル)エーテル、1,4−ビス(メタクリロイルチオメチル)ベンゼン等の多価チオ(メタ)アクリル酸化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシ(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート、ビスフェノールA−モノグリシジルエーテル−メタクリレート、3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート等のその他の(メタ)アクリル酸エステル化合物;フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;メチルチオアクリレート、ベンジルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート等のチオアクリル酸及びチオメタクリル酸エステル化合物を挙げることができる。
【0130】
アリル基を有する単量体の例としては、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシこはく酸ジアリル、ジアリルフマレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、トリメチロールプロパントリアリルカーボネート等の多価アリル化合物を挙げることができる。
【0131】
ビニル基を有する単量体の例としては、ジビニルベンゼン、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンダイマー、ブロモスチレン等のビニル化合物を挙げることができる。
【0132】
シリル基を有する単量体の例としては、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、4−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、3−(3−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、2−(クロロメチル)アリルトリメトキシシラン、ジエトキシビニルシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、ドコセニルトリエトキシシラン、O−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシエトキシトリメチルシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、1,3―ビス(メタクリロキシ)−2−トリメチルシロキシプロパン、テトラキス(2−メタクリロキシエトキシ)シラン、トリビニルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニロキシトリメチルシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシランビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0133】
イソシアネート基を有する単量体の例としては、2−イソシアナトエトキシメタアクリレート、4−(2−イソシアナトイソプロピル)スチレン等が挙げられる。
【0134】
その他、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸;等のラジカル重合性多官能単量体を挙げることができる。
【0135】
これらラジカル重合性化合物(モノマー)は単独でも、異なる種類のものを混合して用いることもできる。これらのなかでも、良好なフォトクロミック性能を得るためには(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体が最も好ましい。具体的には、上記のラジカル重合性多官能単量体からなる重合体において例示された(メタ)アクリロイル基を有する化合物と同じものを挙げることができる。
【0136】
コーティング法或いは練り込み法において上記ラジカル重合性単量体に本発明のクロメン化合物を溶解して使用する場合の組成物の量比は特に限定されず、使用形態に応じて適宜決定すればよいが、硬化後の耐溶剤性や硬度、耐熱性等の硬化体特性、フォトクロミック材の透明性、あるいは発色濃度や退色速度、耐久性等のフォトクロミック特性の点から、重合性単量体100重量部に対して、本発明のクロメン化合物を一般的には0.001〜1000重量部(S30の重合性官能基を有している場合には、ほとんど化合物だけという場合があり得る)、特に0.01〜100重量部、さらには2〜30重量部とすることが好ましい。
【0137】
また、コーティング法或いは練り込み法において、本発明のクロメン化合物を溶解したモノマー組成物は、一般にラジカル重合開始剤を用いて重合硬化されるが、当該ラジカル重合開始剤としては公知のものが特に限定されず使用できる。特に好ましい重合方法は、光重合開始剤及び熱重合開始剤を配合した本発明の硬化性組成物に対し紫外線を照射し硬化させた後、さらに加熱して重合を完結させる方法である。
【0138】
本発明において好適に使用できるラジカル重合開始剤を例示すれば、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。
【0139】
また紫外線等の光照射により重合させる場合の光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アエトフェノン4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオオキサントン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォシフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等を挙げることができる。
【0140】
これらラジカル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、重合性単量体の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、一般には、全重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。また、上記ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0141】
また、コーティング法或いは練り込み法において、本発明のクロメン化合物を使用するに際しては、発色色調を調製するために(例えば眼鏡レンズにおいてはグレー又はブラウン等の中間色が好まれているためこのような発色色調に調整する必要がある。)、本発明のクロメン化合物の組合せのみでこのような色調が得られにくい場合には、本発明のクロメン化合物以外のフォトクロミック化合物を併用することもできる。このようなフォトクロミック化合物としてはスピロオキサジン、スピロピラン、クロメン、フルギド、またはフルギミド化合物等を挙げることができる。さらにフォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や成形性の向上のために、さらに界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤、密着性向上剤等の添加剤を添加してもよい。
【0142】
本発明のクロメン化合物を用いてコーティング法によりフォトクロミックレンズを製造する場合、本発明のクロメン化合物、モノマー(ラジカル重合性単量体)および必要に応じて上記したような各成分を含むフォトクロミックコーティング剤を調製し、従来のコーティング法と同様に、これをプラスチックレンズ基材の表面にスピンコート法等に塗布してこれを硬化させればよい。このとき、プラスチックレンズ基材としては、(メタ)アクリル樹脂系、ポリカーボネート系樹脂、アリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂およびチオエポキシ系樹脂等のプラスチック系の眼鏡レンズ、ガラス系の眼鏡レンズが使用できる。また、コーティングに際してはプライマーを用いてもよく、さらにフォトクロミックコート層形成後の表面上にハードコート層、反射防止コート層、防汚コート層等の他の層を設けることも可能である。
【0143】
以上、本発明のクロメン化合物について、コーティング法或いは練り込み法によりフォトクロミックレンズ使用する場合を例にその有用性を説明したが、本発明のクロメン化合物は、フォトクロミック材として広範囲に利用でき、フォトクロミックレンズを製造するための上記以外の方法に使用できることは勿論、例えば銀塩感光材に代わる各種の記憶材料、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記憶材料、レーザー用感光材料、ホログラフィー用感光材料など種々の記憶材料として利用できる。その他、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミック材は、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレー材料、光量計、フォトクロミック性フィルム、家屋や自動車の窓ガラス、装飾品、ファンシーグッズなどの材料としても利用できる。
【0144】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」の意である。
【0145】
実施例1
下記式
【0146】
【化47】
【0147】
で示されるナフトール誘導体9.5g(0.051mol)、ヒドロキシメチル−15−クラウン−5を15.3g(0.061mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物3g(0.016mol)、トルエン200mlを三つ口フラスコに入れ,デーンスターク水分留去装置を用いて水を留去しながら加熱還流を10時間行なった。放冷後、溶媒除去し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式クラウンエーテル化ナフトール誘導体を12.5g得た。
【0148】
【化48】
【0149】
このクラウンエーテル化ナフトール誘導体8.4g(0.020mol)と、下記のプロパギルアルコール誘導体
【0150】
【化49】
【0151】
4.6g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を8.7g得た。収率は71%であった。
【0152】
この生成物の元素分析値はC72.98%、H6.15%であって、C37H38O8の計算値であるC72.77%、H6.27%に極めて良く一致した。
【0153】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ3.5〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく21Hのピーク、δ6.0〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく17Hのピークを示した。1H−NMRの結果を図1に示した。
【0154】
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることが確認した。この化合物No.を1とする。
【0155】
【化50】
【0156】
実施例2〜3
実施例1と同様にして、表1に示したクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、実施例1と同様な構造確認の手段を用いて構造解析した結果、表1に示す構造式で示される化合物であることを確認した。表1にあわせて化合物Noと合成収率を示した。表2にこれらの化合物の元素分析値と各化合物の構造式から求めた計算値、及び1H−NMRの結果を示した。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
実施例4
2,6−ナフタレンジオール8.0g(0.05mol)、ヒドロキシメチル12−クラウン−4を11.3g(0.055mol)、p−トルエンスルホン酸1水和物2.5g(0.013mol)、トルエン200mlを三つ口フラスコに入れ,デーンスターク水分留去装置を用いて水を留去しながら加熱還流を10時間行なった。放冷後、溶媒除去し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式クラウンエーテル化ナフトール誘導体を11.6g得た。
【0160】
【化51】
【0161】
このクラウンエーテル化ナフトール誘導体7.0g(0.020mol)と、下記のプロパギルアルコール誘導体
【0162】
【化52】
【0163】
4.6g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を8.0g得た。収率は74%であった。
【0164】
この生成物の元素分析値はC75.22%、H6.13%であって、C34H34O6の計算値であるC75.82%、H6.36%に極めて良く一致した。
【0165】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ3.5〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく17Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく17Hのピークを示した。この化合物No.を4とする。
【0166】
【化53】
【0167】
実施例5〜6
実施例4と同様にして、表1及び表2にしめしたクロメン化合物を合成した。得られた生成物について、実施例1と同様な構造確認の手段を用いて構造解析した結果、表1に示す構造式で示される化合物であることを確認した。また表1にあわせて化合物Noと合成収率を示した。表2にこれらの化合物の元素分析値と各化合物の構造式から求めた計算値、及び1H−NMRの結果を示した。
【0168】
実施例7
下記式
【0169】
【化54】
【0170】
で示されるナフトール誘導体72g(0.5mol)とクロロホルム500mlとを、ガス導入管、温度計、水およびアルカリトラップを備えた1Lの四つ口フラスコに仕込み、水冷下で攪拌しながら窒素および塩素ガス(計1.2mol)を導入した。その後、溶媒留去を行い褐色オイル120gを得た。
【0171】
温度計、滴下ロートを備えた500ml三つ口フラスコに該オイル12g(0.05mol)、トルエン150mlを仕込み、攪拌しながら水冷下トリエチルアミン7.2gを仕込み、ついで1−アザ−4,7,10−オキサドデカン10.5g(0.06mol)のトルエン溶液を60mlを1時間かけて滴下し、そのまま2時間反応を行った。析出した塩をろ過後、母液を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒留去をおこない褐色固体を得た。褐色固体をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式アザクラウンエーテル化ナフトール誘導体を9.5g得た。
【0172】
温度計、冷却管を備えた1L三ツ口フラスコに上記固体6g、10%NaOH水溶液200mlを仕込み、40℃に加熱して溶解後、ラネーニッケル(Al含量50%)12gを加えた。そのまま2時間攪拌し、過剰のラネーニッケルをセライトろ過後、母液を塩酸でpH4〜5に調整し、エーテル抽出を行った。有機層を硫酸マグネシウム乾燥後、溶媒留去を行い、固体4.5gを得た。
【0173】
【化55】
【0174】
得られた上記クラウンエーテル化ナフトール誘導体8.4g(0.020mol)と、下記のプロパギルアルコール誘導体
【0175】
【化56】
【0176】
4.6g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を8.7g得た。収率は71%であった。
【0177】
この生成物の元素分析値はC75.65%、H6.61%、N2.83%であって、C34H55NO5の計算値であるC75.95%、H6.56%、N2.61%に極めて良く一致した。
【0178】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ2.8〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく21Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく16Hのピークを示した。
【0179】
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることが確認した。この化合物No.を7とする。
【0180】
【化57】
【0181】
実施例8
下記のナフトール化合物4.6g(0.02mol)と
【0182】
【化58】
【0183】
下記のプロパギルアルコール誘導体
【0184】
【化59】
【0185】
8.4g(0.022mol)とをトルエン50mlに溶解し、さらにp−トルエンスルホン酸を0.05g加えて1時間加熱還流した。反応後、反応液を希NaOHにより中和したのち、得られた有機層をエバポレーターにより除去した。さらにシリカゲルクロマトグラフィーにより精製することにより、無色油状物を6.4g得た。収率は54%であった。
【0186】
この生成物の元素分析値はC75.11%、H6.84%、N4.82%であって、C37H40N2O5の計算値であるC74.98%、H6.80%、H4.73%に極めて良く一致した。
【0187】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、δ2.8〜4.5ppm付近にアルキレン基等に基づく24Hのピーク、δ5.6〜9.0ppm付近にオレフィンプロトン及び芳香族プロトンに基づく16Hのピークを示した。
【0188】
上記の結果から単離生成物は、下記構造式で示される化合物であることが確認した。この化合物No.を8とする。
【0189】
【化60】
【0190】
以下に比較例で使用したフォトクロミック化合物の略号及び構造を示す。
ナフトピラン化合物1(NP1)
【0191】
【化61】
【0192】
ナフトピラン化合物2(NP2)
【0193】
【化62】
【0194】
ナフトピラン化合物3(NP3)
【0195】
【化63】
【0196】
ナフトピラン化合物4(NP4)
【0197】
【化64】
【0198】
ナフトピラン化合物5(NP5)
【0199】
【化65】
【0200】
ナフトピラン化合物6(NP6)
【0201】
【化66】
【0202】
実施例9
テトラエチレングリコールジメタクリレート13重量部、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン48重量部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル2重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、グリシジルメタクリレート9重量部からなる重合性単量体10g、および実施例1で得られた化合物1を4mgをサンプル管瓶に入れ、攪拌子を用いて室温で攪拌した。その際に化合物1が溶解するのに要した時間を目視で確認した。その結果{溶解時間(hr)}を表3に示した。溶解時間が短いほど溶解速度は速い(溶解性が高い)といえる。
【0203】
【表3】
【0204】
実施例10〜16
クロメン化合物として化合物2〜8を用いた以外は上記実施例9と同様な方法で化合物の溶解速度を評価した。その結果をまとめて表3に示した。
【0205】
比較例1〜6
クロメン化合物として比較化合物NP1〜NP6を用いた以外は上記実施例9と同様にして比較化合物の溶解性を評価した。その結果をまとめて表3に示した。表3からわかるように、本発明の化合物は、重合性単量体に対して優れた溶解性を示す。さらにクラウンエーテルの溶解性が、特に高いことが判る。
【0206】
実施例17〜24
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン35重量部、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセル・ユーシービー社:EB1830)10重量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート20部、グリシジルメタアクリレート10部からなる重合性単量体10gに、実施例1〜8で得られたクロメン化合物をそれぞれ単体で加え、室温で24時間攪拌した際のクロメン化合物の溶解度を下記に示す要領で4段階で評価した。結果を表4に示した。
【0207】
◎:0.5g以上溶解
○:0.2g以上〜0.5g未満溶解
△:0.1g以上〜0.2g未満溶解
×:0.1g未満溶解
【0208】
【表4】
【0209】
比較例7〜12
クロメン化合物として比較化合物NP1〜NP6を用いた以外は上記実施例9と同様にして比較化合物の溶解性を評価した。その結果をまとめて表5に示した。表4からわかるように、本発明の化合物は、重合性単量体に対して優れた溶解性を示す。さらにクラウンエーテルの溶解性が、特に高いことが判る。
【0210】
実施例25
実施例1で得られたクロメン化合物(化合物1)0.04重量部をテトラエチレングリコールジメタクリレート13重量部、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン48重量部、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル2重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、グリシジルメタクリレート9重量部に添加し、さらに重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサネート1重量部を加えて十分に混合した。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合を行った。重合は空気炉を用い、30℃〜90℃で18時間かけ徐々に温度を上げ、90℃で2時間保持した。重合終了後、重合体を鋳型のガラス型から取り外した。
【0211】
得られた重合体(厚さ2mm)を試料とし、これに浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を用い、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度2.4mW/cm2(365nm)、24μW/cm2(245nm)で120秒間照射して発色させ、前記試料のフォトクロミック特性を測定した。フォトクロミック特性は次のようなもので評価した。結果は表5にまとめて示した。
【0212】
▲1▼ 極大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の極大吸収波長である。該極大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0213】
▲2▼ 発色濃度{ε(120)−ε(0)}:前記極大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度ε(120)と光未照射状態の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0214】
▲3▼ 退色半減期{t1/2(min.)}:120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記極大吸収波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の半分まで低下するのに要する時間。この時間が短いほど退色速度が速く、フォトクロミック性が優れているといえる。
【0215】
▲4▼ 残存率(%):{(A200/A0×100)}:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進実験を行った。即ち、得られた重合体(試料)をスガ試験機(株)製キセノンウエザーメーターX25により、200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A200)を測定し、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0216】
実施例26〜31
クロメン化合物として実施例2〜7で得られた化合物2〜8を用いた以外は上記実施例25と同様にしてフォトクロミック重合体を得、その特性を評価した。その結果をまとめて表5に示した。
【0217】
【表5】
【0218】
比較例13
クロメン化合物として比較化合物NP1を用いた以外は上記実施例25と同様にしてフォトクロミック重合体を得、その特性を評価した。その結果をまとめて表5に示した。
【0219】
以上の結果から、本発明の前記一般式(1)で示されるクロメン化合物は、発色濃度、退色速度ともに優れたフォトクロミック化合物であることが判る。さらに一般式(11)で示される化合物のうち、5位に本発明の飽和炭化水素環が置換した化合物は、特に退色速度が速くなる効果があることがわかる。
【0220】
実施例33
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン35重量部、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセル・ユーシービー社:EB1830)10重量部、平均分子量532のポリエチレングリコールジアクリレート20部、グリシジルメタアクリレート10部からなる重合性単量体100重量部に、N−メチルジエタノールアミンを5重量部、光安定剤としてビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを5重量部、重合開始剤としてチバスペシャリティーケミカル社製CGI184[1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン]を0.4重量部およびチバスペシャリティーケミカル社製CGI403[ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド]を0.1重量部添加し、さらに化合物1を3重量%添加し、十分に混合した。
【0221】
続いて、上記方法で得られた混合液の約2gをMIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、厚さ2mmのプラスチックレンズ(CR39;アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)の表面に、回転数60r.p.mで40秒→500r.p.mで2秒→1000r.p.mで2秒の条件でスピンコートした。この表面がコートされたレンズを窒素ガス雰囲気中で出力120mW/cm2のメタルハライドランプを用いて、2分間照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに120℃で3時間加熱することにより、フォトクロコーティング層を有するレンズを得た。フォトクロコーティング層の厚さは約40μmであった。なお、用いたプラスチックレンズは、あらかじめその表面をキーエンス社製、大気圧プラズマ装置を用いてプラズマ処理し、表面状態を改質したものを用いた。
【0222】
得られた厚み約40μmのコーティング層を有するレンズを、実施例25と同様の方法で、極大吸収波長(λmax)、発色濃度{ε(120)−ε(0)}、退色半減期{t1/2(min.)}、およびコーティンググレンズの外観を評価した。その結果を表6に示す。
【0223】
【表6】
【0224】
実施例34〜40
実施例33とクロメン化合物の種類を変えた以外は、同じ方法でフォトクロミック性コーティング層を有するレンズを調製した。即ち、本発明のクロメン化合物をラジカル重合性単量体に対して、単一のフォトクロミック化合物を3重量%添加してレンズを調製した。いずれのレンズも膜厚は約40μmであった。
【0225】
評価結果を表6に示した。本発明の化合物はいずれもラジカル重合性単量体に対して良好な溶解性を示しており、得られたレンズはいずれも、発色濃度、退色速度とも優れていた。
【0226】
比較例14〜19
添加するフォトクロミック化合物の種類を表7に示すように変えた以外は、実施例25と全て同じ方法で、フォトクロコーティング層を有するレンズを調製した。評価も同様な方法を行った。評価結果を表6に併せて示す。
【0227】
比較例14〜19に示したように、いずれの化合物もラジカル重合性単量体に対して溶解性が低いため均一溶解しなかった。得られたレンズはいずれも多量のブツがあるため外観不良であり、膜が不均一であるため測定値が一定せず正確な測定が出来なかったが、明らかに発色濃度は低かった。
【0228】
【発明の効果】
本発明のクロメン化合物は、高い発色濃度を示し、退色速度が早く、耐久性が高く、さらにモノマー等への溶解性が高いという優れた特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本図は、実施例1で得られた化合物の1H−NMRチャートである。
Claims (5)
- 置換若しくは非置換の芳香族炭化水素環、置換若しくは非置換の芳香環が縮環していてもよい置換若しくは非置換の脂環式炭化水素環及び置換若しくは非置換の複素環からなる群より選ばれる1種の環がクロメンの周辺f及び/又は周辺hに縮環したクロメン化合物であって、周辺fと周辺hの両方にこれら環が縮環する場合、両周辺に縮環する環は互いに異なっていてもよく、更に酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を3個以上含むヘテロ環を含む1価の有機基を置換基として有することを特徴とするクロメン化合物。
- 下記式(1)で示される請求項1に記載のクロメン化合物。
R1乃至R6で示される置換基の内の少なくとも1つは、下記式(4)乃至(8)で示される基及びこれら基に芳香族炭化水素環または脂環式炭化水素環が縮環した基からなる有機基群Aより選ばれる一種の1価の有機基であり、
l、m及びnは、夫々0〜6の整数であり、l+m+nは3〜10であり、
VおよびTはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、−CH2O−、−CO−、−OCO−、−CO2−、−N(R8)CO−、−CON(R8)−、−N(R8)−であり、
(式中、R8は水素原子、アルキル基、アラルキル基、置換もしくは非置換のフェニル基である。)
pおよびrは、それぞれ独立に0または1であり、qは0〜12の整数である。}
R1〜R4が前記有機基群Aに属しない基である場合における当該R1〜R4は、それぞれ独立に、アルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは非置換の1価の脂環式炭化水素基、置換もしくは非置換の1価の複素環基、置換もしく非置換のアミノ基、アミド基、置換もしくは非置換の1価のアリール基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシアルキル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアラルコキシ基、アシル基、アシルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基、アルキルチオアルキル基、ポリオキシエチレングリコール基、ポリオキシプロピレングリコール基、アルコキシポリオキシエチレングリコール基、アルコキシポリオキシプロピレングリコール基または1価の重合性置換基であり、
R5及びR6が前記有機基群Aに属しない基である場合における当該R5及びR6は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の1価の脂環式炭化水素基、置換もしくは非置換のアリール基、或いは置換もしくは非置換の1価の複素環基であるか、又はR5及びR6が互いに結合して環を形成する基であり、
a、b、c及びdは夫々0〜2の整数であり、a+b+c+dは0〜6の整数であり、R5及びR6が共に前記有機基Aでない場合、a、b、c及びdが同時に0となることはない。〕 - 下記式(10)乃至(14)の何れかで表される請求項2に記載のクロメン化合物。
- 請求項1〜3の何れかに記載のクロメン化合物からなることを特徴とするフォトクロミック材。
- 請求項4に記載のフォトクロミック材を含有してなることを特徴とするフォトクロミック光学物品。
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