JP2004339019A - 強化ガラス部材およびそれを用いたディスプレイ用真空外囲器 - Google Patents
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Abstract
【課題】肉厚が不均一なガラス部材であっても、化学強化法により適切な圧縮応力層を設けることにより安全性および信頼性を確保し、軽量化や奥行きの短縮を達成し得る強化ガラス部材およびそれを用いたディスプレイ用真空外囲器の提供。
【解決手段】有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする強化ガラス部材。
【選択図】図5
【解決手段】有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする強化ガラス部材。
【選択図】図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイ用真空外囲器、具体的には陰極線管用のガラスパネルもしくはガラスファンネル、またはフィールドエミッションディスプレイの外囲器に用いるガラス部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
まずディスプレイ用真空外囲器の一つとして、陰極線管用のガラスバルブについて説明する。なお本発明において陰極線管とは、特にことわりのない限り直視型陰極線管をいう。
【0003】
図1に示される陰極線管の外囲器は、基本的に、映像を表示する領域を有するパネル2と、該パネル2に対して密封接合される漏斗形状のファンネル5とからなるガラスバルブ101により構成される。前記ファンネル5は、電子銃3を格納するネック4を有する。
【0004】
前記のパネル2は、映像表示面を構成する略矩形のフェース部1と、該フェース部1に対しその周縁部からブレンドR部102を介して実質的に垂直方向に延在するスカート部103とから構成される。
【0005】
前記スカート部103の外周には、パネル2の強度を保持し破損時の飛散を防止するための防爆補強バンド(図示しない)が巻回される。フェース部1の内表面側には電子銃3からの電子線衝撃により蛍光を発する蛍光膜104と、該蛍光膜104から陰極線管後方(ファンネル5側)に発する蛍光を前方(フェース部1側)へ反射するためのアルミニウム膜105が積層され、さらに電子線の照射位置を規定するシャドウマスク6が設けられる。該シャドウマスク6はスタッドピン106によりスカート部103の内面に固定される。なお、図中107はネック4の中心軸とパネル2の中心を結ぶ管軸を示す。
【0006】
このようなパネル2は、スカート部103の端部にあたるシールエッジ108に設けたハンダガラス等のシール材によりファンネル5のシールエッジ部109と密封接合され、封着部が形成される。
【0007】
このような陰極線管は、前記ガラスバルブ101の内部を真空にして作動されるので外表面に大気圧が負荷されるが、球殻と異なり非対称な形状であるため、比較的高い引っ張り応力が外表面の広範囲にわたって生じるようになる。
【0008】
なお、本発明においては、外囲器(ガラスバルブ101等)の内部が真空であることに起因して生じる応力を「真空応力」といい、該真空応力のうち引っ張り性のものを「引っ張り真空応力」というものとする。
【0009】
前述のように、ガラスバルブ101の外表面に引っ張り真空応力が発生している状態では、大気中の水分の作用による遅れ破壊が生じ、安全性および信頼性の低下の原因となる可能性がある。
【0010】
陰極線管を用いたテレビは、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイと比べて重いことが短所であるため、ガラスバルブの軽量化が要望されている。さらに近年では、省スペース化のため奥行きの短い陰極線管が望まれている。しかし、単に奥行きを短縮するだけでは、ガラスバルブ形状の非対称性が増大して、各部に発生する引っ張り真空応力がより高くなる。加えて軽量化にあたって従来よりもガラスを薄肉化すると、より高い変形エネルギーがガラスバルブに蓄積され、破壊の可能性が上昇するようになる。
【0011】
したがって、軽量化のためにパネルやファンネルを薄肉化すると同時に奥行きを短縮すると、前述のように各部位に発生する引っ張り真空応力が著しく増大する。このような引っ張り真空応力の問題を解決するため、以前よりガラス表面に圧縮応力を付与して強化する方法が開発されている。
【0012】
従来、陰極線管用のガラスバルブの軽量化を図る手段としては、特許第2671766号に例示されているように、ガラスの軟化点付近の高温から急冷することにより、ガラス表面と内部に温度差を生じさせて表面に圧縮応力層を形成させる方法、いわゆる物理強化法によってパネルを強化し、軽量化(薄肉化)に伴う引っ張り真空応力の増大に耐えうるようにする方法が実用化されている。
【0013】
しかし、三次元構造で不均一な肉厚分布を有するパネルやファンネルを均一に急冷することは不可能である。その結果、不均一な温度分布に起因して大きな引っ張り性の残留応力が圧縮応力とともに発生するため、圧縮応力の大きさは最大で30MPa程度に制限され、それ以上に大きな圧縮応力を付与することは極めて困難であった。すなわち、前記の物理強化法の場合は付与可能な圧縮応力値の上限によってガラスバルブの軽量化の程度も制限される。
【0014】
一方、ガラスバルブの表面を化学強化法(イオン交換法:Ion−exchanging Method)によって強化し、軽量化を図る方法も知られている。前記化学強化法は、歪点以下の温度でガラス中の特定のアルカリイオンをそれよりも大きいイオンで置換し、その体積増加で表面に圧縮応力層を作る方法である。
【0015】
例えば、Na2Oを5〜8%、K2Oを5〜9%程度含有するストロンチウム−バリウム−アルカリ−アルミナ−シリケートガラスを、約450℃でKNO3の溶融液中に浸漬し、ガラス中のナトリウムイオンと、該ナトリウムイオンよりもイオン径の大きなKNO3溶融液中のカリウムイオンとを交換して、ガラス表面に圧縮応力層を形成する方法が例示される。化学強化法の場合、50〜300MPa程度の大きな圧縮応力が得られ、かつ不要な引張応力を形成しにくい点で物理強化法より軽量化に有利である。
【0016】
さらに、特開2001−348245号公報には、ガラス母材を物理強化し、次いで歪点未満の温度で化学強化することにより250μm以上の厚さの圧縮応力層(応力歪み層)を形成したディスプレイ用ガラスに関する発明が開示されている。その他の化学強化法に関する従来技術については、特許文献3〜7を参照。
【0017】
上述の物理強化法や化学強化法により形成された圧縮応力層はいずれもその厚さ(深さ)がほぼ均一であると考えられる。ディスプレイ用真空外囲器に用いるガラス部材の場合は通常三次元形状に成形されるため、ほぼ均一なガラス肉厚の板ガラスとは異なり、ガラス肉厚の分布(最大値/最小値の値)が大きい。
【0018】
特に前述の陰極線管用ファンネルのように複雑な形状のガラス部材では、シールエッジ部近傍のボディ部は厚くなり、偏向ヨークが取り付けられる部分、いわゆるヨーク部においては電子銃の発熱や構造上の要求から薄くなっている。その結果、形状によってはガラスの厚さの最大値/最小値の値は4以上になることもある。
【0019】
一方、ガラス部材に生じる引っ張り真空応力は、その形状にもよるが通常は、ガラス肉厚が薄い位置ほど大きく、厚い位置ほど小さくなる傾向にある。そして、等しい力でガラスを加傷した場合であっても、ガラス部材上の引っ張り真空応力の小さい位置に比べて、引っ張り真空応力の大きい位置の方が傷が深く入るという特徴がある。
【0020】
その結果、ガラス肉厚の厚い位置に形成された圧縮応力層の厚さとガラス肉厚の薄い領域に形成された圧縮応力層の厚さとがほぼ等しい場合、ガラス肉厚の厚い位置に付与された傷は圧縮応力層によって保護されて安全性を確保できるが、ガラス肉厚の薄い位置に付与された傷は圧縮応力層の深さを超えて引っ張り応力層にまで達し、ガラス部材の亀裂や破壊につながる危険性を有していた。
【0021】
【特許文献1】
特許第2671766号公報(第21段落)
【特許文献2】
特開2001−348245号公報(第74、77段落)
【特許文献3】
特開2001−294442号公報(第55段落)
【特許文献4】
特開2001−302278号公報(第88段落)
【特許文献5】
特開2001−348248号公報(第27〜29段落)
【特許文献6】
特開2002−60242号公報(第25段落)
【特許文献7】
特許第2837134号公報(第29段落)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであって、ガラス肉厚に大きな分布を有するガラス部材であっても、化学強化法により適切な圧縮応力層を設けることにより安全性および信頼性を確保し、軽量化(加えて、陰極線管用ガラスファンネルの場合は奥行きの短縮)を達成し得る強化ガラス部材およびそれを用いたディスプレイ用真空外囲器の提供を技術的課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、次の強化ガラス部材を提供する。
まず第一の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0024】
また、第二の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域の任意の位置におけるガラスの厚さをT、イオン交換層の厚さをtとするとき、tが1/Tにほぼ比例するものであって、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0025】
前記の強化ガラス部材においては、t1がt1≦200μmであって、かつt2がt2≧30μmであることが好ましい。また、前記の強化ガラス部材においては、前記Pminの位置におけるガラス肉厚をTmin、前記Pmaxの位置におけるガラス肉厚をTmaxとするとき、1<Tmax/Tmin≦4なる関係を有することが好ましい。前記Pminが有効化学強化領域の周縁上に位置している場合、1<Tmax/Tmin≦2なる関係を有するものであれば好ましい。
【0026】
さらに本発明の強化ガラス部材においては、前記強化ガラス部材の周縁と、該強化ガラス部材に形成されたイオン交換領域の周縁との間のガラス表面に沿った長さのうち、最も短い長さをLとするとき、L≧5mmであることが好ましい。
【0027】
また、本発明は前記の強化ガラス部材を用いたディスプレイ用真空外囲器を提供する。
【0028】
【発明の実施の形態】
次いで、本発明を詳細に説明する。上述のように、第一の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0029】
また、第二の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域の任意の位置におけるガラスの厚さをT、イオン交換層の厚さをtとするとき、tが1/Tにほぼ比例するものであって、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0030】
ここで、本発明においてディスプレイ用真空外囲器とは、主にガラス部材からなる陰極線管用の外囲器(以下、ガラスバルブともいう)および冷陰極を備えたフィールドエミッションディスプレイ(電界放射型ディスプレイ。以下、FEDともいう)の外囲器をいう。
【0031】
一般的に、これらのディスプレイ用真空外囲器は、二つ以上の部材、すなわち画像が映し出される前面ガラス部と、電子銃または冷陰極を備えた背面ガラス部とを有し、その両者を直接的または間接的に封着して形成される。
【0032】
前記のガラスバルブは、従来の技術として述べたとおり図1に示されるものであって、映像表示面を構成する略矩形のフェース部1を有するパネル2と、電子銃3を収納するネック4を有するファンネル5とから構成されている。前記パネル2およびファンネル5はそれぞれ別の工程で所望の形状に作られ、シャドウマスク6等の内蔵部品を取り付けた後、封着される。
【0033】
一方、FEDは陰極線管に似た自発光型のディスプレイであり、大型で高輝度高精細を達成できるフラットパネルディスプレイ(FPD)として注目されている。前記FEDは、図2に示すように、基本的には電子を放出するエミッタ11(カソード)、蛍光体を塗布したアノード12および放出電子を制御するゲート13(グリッド)、ならびにそれらを内蔵する真空外囲器14から構成される。
【0034】
FEDの真空外囲器を構成する材料として、従来はソーダライムガラス、PDP用基板ガラスなどが使用されていた。FEDは、このようなガラス基板に電極や蛍光体をパターニングし、前面パネル15と背面パネル16とを外枠17を介して低融点粉末ガラス(フリット)にて封着後、真空排気されて製造される。
【0035】
当然のことながら、前記のFED用真空外囲器は大気圧に耐えなければならず、かつ真空時にそのガラス部材(特に前面パネル15)のフラット性を確保できる構造でなければならない。しかし上記のような単純な構造では強度確保と、大気圧に起因する前面パネルの撓み補正の観点から陰極線管用ガラスよりもガラスの厚さが必要となり、その結果としてFED用の真空外囲器はかなりの重量となる。
【0036】
そこで前記の前面パネル15と背面パネル16との間にスペーサを配置して強度を確保することにより、ガラスの薄肉軽量化を計る構造が提案されているが、スペーサ表面での電子のチャージアップや複雑な構造に起因する生産性の低下などの問題がある。このような問題を解決すると同時に、軽量化を図りながら大気圧に耐えフラット性を確保できうる構造としてガラス部材の周辺部の一部を厚くすること、すなわちガラスの厚さを不均一にすることが考えられる。本発明では、FEDの真空外囲器に用いるガラス部材として、このようにガラスの厚さが不均一なものをいう。
【0037】
また、本発明の強化ガラス部材は、イオン交換法(Ion−exchanging method)によって形成されたイオン交換領域が一つ以上存在することを特徴としている。なお、本発明においては、イオン交換(Ion−exchanging)と化学強化(Chemical tempering)とは同義であるものとする。
【0038】
本発明のイオン交換領域は、ガラス部材の所望の領域において部分的に電界を印加すると同時に前記領域をイオン交換する方法によって形成される。本発明においては、前記の方法を「部分電界アシスト型イオン交換法」と称する。
【0039】
具体的には、カリウムイオン等のアルカリイオンを含む塩と粘土と有機溶剤とを混合してペースト状とし、該ペースト状物をガラス部材に塗布し、前記塩が溶融する温度までガラス部材を加熱して、前記ペースト状物中の径の大きなアルカリイオン(例えばカリウムイオン)とガラス部材中の径の小さなアルカリイオン(例えばナトリウムイオン)とをイオン交換させる方法である。この方法を用いることにより、比較的短時間にガラス部材の所望の領域を部分的に化学強化することができる。
【0040】
本発明において「イオン交換領域」とは、前記の方法によってイオン交換強化された領域をいうものであり、ガラス部材中に元から存在するアルカリイオンよりもイオン半径の大きいアルカリイオンが、ガラス部材の表面から内部に向かって置換されている領域をいう。典型的には、ガラス部材中に元から存在するナトリウムイオンが、該ナトリウムイオンよりもイオン半径の大きいカリウムイオンによってガラス部材の表面から内部に向かって置換されている領域である。
【0041】
また、本発明における「イオン交換領域の周縁」とは、ガラス部材の最表面において前記のイオン半径の大きいアルカリイオン(例えば、カリウムイオン)の元素濃度が、イオン交換されていないガラス部材表面の濃度から変化し始める境界位置を指す。具体的には、X線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro−Analyzer;以下、EPMAともいう)による前記元素のライン分析、面分析または反射電子像(組成像)によるコントラストの違いからその境界部を確認できる。
【0042】
さらに、本発明においては、イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義する。具体的には、図3において実線で示された位置を周縁21とする領域をイオン交換領域とするとき、該イオン交換領域の周縁21から1mm内側の位置をその周縁22とする領域、すなわち破線で囲まれた領域を有効化学強化領域とする。
【0043】
また、図4に示すように、イオン交換領域の周縁21と有効化学強化領域の周縁22の間の領域においてイオン交換領域の周縁21にごく近い部分はイオン交換層23(図4中の網掛けで図示された部分)の厚さが指数関数的に減少してゆく。逆に、有効化学強化領域の周縁22に近くなるに従ってイオン交換層は急激に厚くなり、前記有効化学強化領域の周縁22の位置ではほぼ安定したイオン交換層の厚さとなる。これはエッジ効果による電流集中が原因である。したがってイオン交換領域の周縁21と有効化学強化領域の周縁22間のイオン交換層の厚さは、実質的に有効であるものとは言えない。
【0044】
また、本発明において「ガラスの厚さ」とは、ガラス部材の表面上の任意の位置を点Aとするとき、前記点Aから対向する面までの最短距離を点Aの位置におけるガラスの厚さとする。すなわち、前記の最短距離とは、前記点Aを通過し対向する面に垂直となる直線上のガラスの厚さである。このような「ガラスの厚さ」は、ダイヤルゲージまたはノギスでガラスを挟み込み、その目盛りを読み取る方法によって測定できる。
【0045】
前記の「イオン交換層の厚さ」とは、ガラス部材表面から内部へのガラス部材の厚さ方向のイオン交換層の厚さである。すなわち、イオン交換によって注入されたアルカリイオンの元素濃度が、イオン交換されていないガラスの前記元素濃度と同じになる位置をイオン交換層最深部とするとき、ガラス部材最表面から前記イオン交換層最深部までの距離が「イオン交換層の厚さ」である。
【0046】
前記の「イオン交換層の厚さ」は、ガラス部材を表面に垂直な方向に切断し、その切断面を研磨した後、反射電子像(組成像)を観察し、コントラストの違いからイオン交換層を認識してその厚さを測定する。また、注入されたアルカリイオンの元素のEPMAによるライン分析または面分析を行い、前記アルカリイオンの元素濃度変化からイオン交換層の厚さを測定することもできる。
【0047】
続いて、本発明の特徴である1<t1/t2≦4という関係を説明する。前述のように、例えば陰極線管はその内部が高真空に保たれることにより、ガラスバルブには内外圧力差により外力(大気圧)が負荷されるため、ガラスバルブの外表面に引っ張り真空応力が発生する。この引っ張り真空応力はガラス部材の厚さが薄いほど増大することが知られている。また、このような状態にあるガラスバルブに傷がついた場合、内在する高い変形エネルギーを開放しようとするため前記の傷から亀裂が急激に伸展し、ガラスバルブが破壊する。しかし、ガラス部材が強化されており前記の傷がその圧縮応力層、すなわちイオン交換層を貫通しない場合は亀裂が伸展することはなく破壊には至らない。
【0048】
一方、同じ力でガラスバルブのガラス部材に傷を付けようとした場合、ガラス部材表面の引っ張り応力が高いほど傷の深さは深くなる。したがって、ガラスバルブのガラス部材の厚さが薄い位置ほど傷が深く入ることになり、ガラスバルブの破壊に対する信頼性が低下する。これを解決するためには、ガラス肉厚の薄い場所にはガラス肉厚の厚い場所よりさらに厚い強化層を設けることが効果的である。
【0049】
本発明においては、図5に示すように、有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置32をPmax、有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置31をPmin、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において1<t1/t2とすることにより、前記の傷による破壊の問題を解消し得ることを見出したものである。
【0050】
さらに、前述の「部分電界アシスト型イオン交換法」は、ガラス部材を介して電界印加する。この場合、強化(イオン交換)される領域はほぼ等しい電位となるため、電気量はガラス部材の抵抗値、すなわちガラス部材の厚さに反比例することになる。したがって、Tmax/Tmin=4の場所において、前記の厚さt1はt2の約4倍になる。なお、Tminとは前記Pminの位置31におけるガラスの厚さであり、Tmaxとは前記Pmaxの位置32におけるガラスの厚さである。
【0051】
前記のイオン交換層は、あまり厚くしすぎるとイオン交換層と下部の強化されていないガラス部材との境界部付近に発生する引っ張り応力が大きくなりすぎてガラス部材が破壊する恐れを生じる問題あるが、本発明においては、t1/t2≦4とすることにより前記の破壊の問題を解消し得ることを見出した。
【0052】
すなわち、本発明のガラス部材は、1<t1/t2≦4とすることにより、傷による破壊の問題と、イオン交換層と非イオン交換層との境界部における破壊の問題とを同時に解消し得るのである。
【0053】
さらに、第二の発明のガラス部材は、1<t1/t2≦4であるだけでなく、有効化学強化領域の任意の位置におけるガラスの厚さをT、イオン交換層の厚さをtとするとき、tが1/Tにほぼ比例することを特徴とする。すなわち、第二の発明のガラス部材は、ガラスの厚さが薄い位置ほどイオン交換層が厚いという特徴を有しているものである。このような関係を有していることにより、前述の傷による破壊と、イオン交換層と非イオン交換層との境界部における破壊に対する耐性をより向上させることができるのである。
【0054】
また、前記イオン交換層23は、厚すぎるとガラス部材に微小なクラックを発生させるようになるが、本発明によって、t1が200μm以下であれば前記のクラックの問題を解消し得る。同時に、前記t2を30μm以上とすることにより、陰極線管等のディスプレイ組み立て工程やディスプレイの使用時に形成された傷による前記のイオン交換層(圧縮応力層)の貫通を防止できるので、ディスプレイ用外囲器の信頼性を向上できる。したがって、本発明のガラス部材においては、t1が200μm以下であってt2が30μm以上であることが好ましい。
【0055】
さらに、本発明のガラス部材は前述のようにガラス部材が厚い位置ほどイオン交換層が薄く、ガラス部材が薄い位置ほどイオン交換層が厚いという特徴を有している。この関係を図5に示す。すなわち、t1の位置Pminに対応するガラス部材の厚さTminと、t2の位置Pmaxに対応するガラス部材の厚さTmaxとを1<Tmax/Tminとすることにより、イオン交換層の厚さの関係を1<t1/t2とすることができる。また、厚さの差が大きなガラス部材は成型工程の冷却時に割れやすい問題があるが、Tmax/Tmin≦4とすることにより前記の問題を解決できる。したがって、1<Tmax/Tmin≦4とすることが好ましい。
【0056】
一方、図6に示すように、前記Pminが有効化学強化領域の周縁上に位置する場合、イオン交換層の厚さが一旦急激に厚くなることがある。したがって、図6のように有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置31:Pminがイオン交換領域の周縁21上に位置する場合、ガラス部材の厚さに対するイオン交換層の厚さが過剰になり、前述のイオン交換層とイオン交換されていない部分との境界部での引っ張り応力に起因する破壊につながるおそれがある。
【0057】
前記Pminの位置におけるイオン交換層は、他の位置のイオン交換層よりも厚く、イオン交換処理の際の電流密度が高い。したがって電流密度が高い位置が有効化学強化領域の周縁上に存在する場合、上述のようなイオン交換層が急激に厚くなる部分においてはさらに厚くなり、イオン交換層とイオン交換されていない部分との境界部での引っ張り応力に起因する破壊につながるおそれがある。しかし、1<Tmax/Tmin≦2とすることにより電流密度を抑えることができ、イオン交換層の厚さの急激な増加を防ぐことができる。
【0058】
また、ディスプレイ用真空外囲器に用いるガラス部材の周縁は、通常他の部材と接合される。たとえば陰極線管の場合、図7に示すように、パネル2とファンネル5のシールエッジ41、42をハンダガラス43等によって封着する。封着工程での温度は約450℃である。
【0059】
このとき、ファンネル5、パネル2およびハンダガラス43(フリットガラス)の組成の違いに起因してそれぞれに熱膨張率の差が発生するため、これらを慎重に冷却してもハンダガラス43での封着部44に引っ張り応力が発生する。ただし、前記の引っ張り応力はわずか数MPaであり、他の要因によって高くならなければ問題とはならない。一方、前記イオン交換領域45の周辺にも引っ張り応力が発生する。この引っ張り応力も数MPaであり、同様に他の要因によって高くならなければ問題とはならない。
【0060】
しかし、封着部44に生じる引っ張り応力とイオン交換領域45の周辺に生じる引っ張り応力とが接近していると、相互に干渉し結果として破壊につながるおそれがある。したがって、封着部44とイオン交換領域45との間に一定の間隔を設ける必要がある。本発明では、強化ガラス部材(ファンネル5)の周縁(封着部44)と、該強化ガラス部材(ファンネル5)に形成されたイオン交換領域45の周縁との間のガラス表面に沿った長さのうちの最も短い長さLが所定の値より長いこと、具体的には、前記の長さLがL≧5mmであれば前記の引っ張り応力の干渉による破壊の問題を防止し得ることを見出した。
【0061】
以上が本発明の強化ガラス部材の説明である。このようなガラス部材は圧縮応力が付与された最適な厚さのイオン交換層を有しているので、これを用いて陰極線管やFEDのようなディスプレイ用真空外囲器を構成することにより、極めて安全かつ軽量なディスプレイを製造することができる。また、前記イオン交換層によって破壊の問題等が解消されて安全性が向上しているので、陰極線管の場合、その奥行きを短縮することが可能になる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。本実施例においては、下記表1に記載の特性を有するガラス(いずれも旭硝子社製)を用いてパネルおよびファンネルを製造する。
【0063】
【表1】
【0064】
前記パネルは、アスペクト比16:9、フェース部における有効画面対角径76cm、フェース部外面曲率半径10000cm、パネル高さ(シールエッジからフェース部外表面中央までの高さ)12cm、フェース部中央肉厚2.0cm、シールエッジの肉厚14.5mmのものを用いる。
【0065】
なお、前記の有効画面対角径とは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA:Japan Electronics and Information Technology Industries Association)の規格EIAJ ED−2136Bで定義される有効画面の対角軸上の有効寸法をいう。
【0066】
またファンネルは、偏向角120度、ネックの直径29.1mm、シールエッジの肉厚14.5mmのものを用いる。なお、パネルおよびファンネルとも、同様の形状のものを、例1から例5までの合計5つ製造し、例1のファンネルは浸漬法により強化し、例2から例5までの各ファンネルは前述の部分電界アシスト型イオン交換法により強化する。
【0067】
なお、前記の浸漬法は次のようにして行う。まず、ファンネルが入る十分な大きさのステンレス鋼製容器に、ファンネルが完全に浸される量の硝酸カリウムを入れ、450℃に加熱する。硝酸カリウムは完全に溶融し液状となる。そして、予熱した前記ファンネルを硝酸カリウム溶液中に24時間浸漬する。
【0068】
また、部分電界アシスト型イオン交換法は次のようにして行う。まず、前記ファンネルの外面に陽極を配置し、内面に陰極を配置する。前記の陽極および陰極は、質量比でKNO3:カオリン:プロプレングリコールが6.5:3.5:3であるペーストを作成し、該ペースト上に白金製の電極を接触させるものである。このようにして設けた電極を直流電源に接続することで電界を印加する。電界の印加条件は、下記の表2のとおりとする。なお、例2〜4はイオン交換処理を2回行い、例5についてはイオン交換処理を1回行うものとする。
【0069】
【表2】
【0070】
このようにして得られるパネルとファンネルとをハンダガラス(旭硝子社製ASF1307−R)を用いて公知の方法により封着し、密封・接合されたガラスバルブとする。例1から例5までのガラスバルブについて、ファンネルのボディ部(ネックを除く部分)の外表面における引っ張り真空応力が最大となるべき位置を#150エメリー紙で加傷した後、耐圧試験(耐水圧試験)を行う。
【0071】
前記耐圧試験とは、大きな耐水圧槽の中にそれぞれガラスバルブを入れ、該ガラスバルブ内部を大気圧に保ったまま外側から加圧していく試験方法であり、前記バルブが破壊したときの圧力を耐圧強度とするものである。耐圧強度は、0.25MPa以上であれば合格とする。
【0072】
耐圧試験の後、前記各バルブのファンネル部分における、イオン交換によって強化した部分について、有効化学強化領域(圧縮応力領域)の圧縮応力値と圧縮応力の分布を測定する。応力の測定は、各ファンネルのイオン交換された部分からガラス試料を取り出し、該試料を有効化学強化領域の表面から垂直に切断し、厚さが0.5mm以下となるように研磨した後、ガラスの屈折率に近い液体に浸漬し、断面方向から偏光顕微鏡で観察することで行う。
【0073】
前記応力測定において光弾性定数は2.40を用い、偏光顕微鏡に回転式ベレックコンペンセータを取り付け、応力層内の光の光路差を測定し光弾性定数より算出して応力値を求める。また、イオン交換層(圧縮応力層)の厚さは、偏光顕微鏡に鋭敏色板を取り付けて観察し求める。前記イオン交換層は、明るさおよび/または色が変化して見えるため、その厚さ方向の距離を測定する。
【0074】
なお、例1から例5までのファンネルに形成した有効化学強化領域の任意の位置における、ガラスの厚さT(mm)とその逆数1/T、およびイオン交換層の厚さt(μm)の関係は表3の通りである。また、表3の値を図8のグラフに示す。
【0075】
【表3】
【0076】
以下の表4に例1〜5について各値を記載する。表4においては、部分電界アシスト型イオン交換法を施すものについて「電界」と記載し、浸漬法を施すものについて「浸漬」と記載する。なお、例3および例4は実施例であり、その他は比較例である。
【0077】
【表4】
【0078】
t1/t2が1以下である例1および例2については、有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置Pminを起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを大きく下回る。また、t1/t2が4を超える例5についても前記Pminの位置を起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを大きく下回る。
【0079】
一方、t1/t2の値が1より大きくかつ4以下である例3および例4は、ファンネル(ガラス部材)を起点とする破壊を起こさず、かつ十分な耐圧強度が得られる。
【0080】
続いて、例1〜5と同じ形状のファンネルを3種類用意し、例6〜8とする。これら例6〜8のファンネルについて、電界印加の条件のみ変更してイオン交換による強化を行い、パネルと密封接合してバルブを作成した後、例1〜5の場合と同様の項目を測定する。例6〜8における電界印加条件は、下記の表2のとおりとする。
【0081】
【表5】
【0082】
また、例6〜8のファンネルに形成した有効化学強化領域の任意の位置における、ガラスの厚さT(mm)とその逆数1/T、およびイオン交換層の厚さt(μm)の関係は表6の通りである。また、表6の値を図9のグラフに示す。このように、例6〜8のファンネルに形成した有効化学強化領域においては、tと1/Tとがほぼ比例関係にある。
【0083】
【表6】
【0084】
以下の表7に例6〜8の各値を記載する。なお、例6および例7は実施例であり、例8は比較例である。
【0085】
【表7】
【0086】
t1/t2が4を超える例8はPminの位置を起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを下回るが、t1/t2の値が1より大きくかつ4以下である例6および例7は、ファンネル(ガラス部材)を起点とする破壊を起こさず、かつ十分な耐圧強度が得られる。
【0087】
加えて、部分電界アシスト型イオン交換法を一度だけ行うことによって得られる例6〜8のファンネルは、有効化学強化領域におけるtと1/Tがほぼ比例関係にある。
【0088】
一方、tと1/Tとが比例関係ではない有効化学強化領域を得るには、例1〜5のように浸漬法によるイオン交換処理や複数回の部分電界アシスト型イオン交換法による処理を行わなければならない場合がある。すなわち、tと1/Tがほぼ比例関係にある強化ガラス部材は工程数が少なく効率的に生産できる。
【0089】
続いて、例1〜5で述べた設計値と同じ条件で、ファンネルを3種類作成し例9〜11とする。これら例9〜11のファンネルについて、それぞれ位置を変えて部分電界アシスト型イオン交換法による処理を行う。なお、例9および例10は、有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の周縁上に位置するようにイオン交換の位置を設定する(これをタイプAとする)。また、例11は有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の中央付近に位置するようにイオン交換の位置を設定する(タイプBとする)。例9〜11の有効化学強化領域におけるガラスの厚さの最小値および最大値は表8に示すとおりである。なお、イオン交換層の厚さの比t1/t2の値は、例9は1.9、例10は3.0、例11は3.0である。
【0090】
【表8】
【0091】
有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の周縁上に位置する例9および例10においては、Tmax/Tminが2を上回るとクラックの発生に繋がるが、Tmax/Tminが2以下にすることにより、クラックの問題を解消できる。
【0092】
また、有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の中央付近に位置する例11においては、Tmax/Tminが4以下であればクラックの問題を解消できる。
【0093】
さらに続いて、例1〜5で述べた設計値と同じ条件で、ファンネルを3種類作成し例12〜14とする。前記ファンネルのシールエッジ部(強化ガラス部材の周縁)と、該強化ガラス部材に形成されたイオン交換領域の周縁との間のガラス表面に沿った長さのうち最も短い長さをLとし、このLの値をそれぞれ変えて部分電界アシスト型イオン交換法による処理を行う。その処理条件は例3と同一である。また、耐水圧試験の条件も全て同一とする。例12〜14についての各値を表9に示す。例12は実施例、例13および例14は比較例である。
【0094】
【表9】
【0095】
このように、Lが5mm未満である例13および例14では封着部とイオン交換領域の間のガラス部材(ファンネルのボディ部)を起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを下回るが、Lが少なくとも5mmであれば破壊起点が封着部となり、耐圧強度が向上することが分かる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の強化ガラス部材においては、ガラス肉厚が不均一な場合であっても、適切な厚さのイオン交換層が形成されているので、傷が付いた場合等の破壊を防止・低減することができる。このように強化されたことの結果として、ガラス部材を従来製品よりも薄くできるので、陰極線管やフィールドエミッションディスプレイを軽量化することが可能となる。さらに、陰極線管の場合、強度が向上されているので従来より奥行きを短縮することが可能となり、一層の省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陰極線管を示す断面図。
【図2】フィールドエミッションディスプレイ(FED)を示す一部切り欠き断面図。
【図3】イオン交換領域および有効化学強化領域を示す模式図。
【図4】イオン交換領域を有するガラス部材の断面を示す説明図。
【図5】イオン交換領域を有するガラス部材の断面を示す説明図。
【図6】イオン交換領域を有するガラス部材の断面を示す説明図。
【図7】陰極線管におけるパネルとファンネルとの封着部とその近傍を示す説明図。
【図8】例1〜5のガラス部材における、イオン交換層厚さtとガラス部材厚さTの逆数1/Tの関係を示すグラフ。
【図9】例6〜8のガラス部材における、イオン交換層厚さtとガラス部材厚さTの逆数1/Tの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1:フェース部
2:パネル
3:電子銃
4:ネック
5:ファンネル
6:シャドウマスク
11:エミッタ
12:アノード
13:ゲート
15:前面パネル
16:背面パネル
17:外枠
21:イオン交換領域の周縁
22:有効化学強化領域の周縁
23:イオン交換層
31:有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置Pmin
32:有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置Pmax
41:パネルのシールエッジ部
42:ファンネルのシールエッジ部
43:ハンダガラス
44:封着部
45:イオン交換領域
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスプレイ用真空外囲器、具体的には陰極線管用のガラスパネルもしくはガラスファンネル、またはフィールドエミッションディスプレイの外囲器に用いるガラス部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
まずディスプレイ用真空外囲器の一つとして、陰極線管用のガラスバルブについて説明する。なお本発明において陰極線管とは、特にことわりのない限り直視型陰極線管をいう。
【0003】
図1に示される陰極線管の外囲器は、基本的に、映像を表示する領域を有するパネル2と、該パネル2に対して密封接合される漏斗形状のファンネル5とからなるガラスバルブ101により構成される。前記ファンネル5は、電子銃3を格納するネック4を有する。
【0004】
前記のパネル2は、映像表示面を構成する略矩形のフェース部1と、該フェース部1に対しその周縁部からブレンドR部102を介して実質的に垂直方向に延在するスカート部103とから構成される。
【0005】
前記スカート部103の外周には、パネル2の強度を保持し破損時の飛散を防止するための防爆補強バンド(図示しない)が巻回される。フェース部1の内表面側には電子銃3からの電子線衝撃により蛍光を発する蛍光膜104と、該蛍光膜104から陰極線管後方(ファンネル5側)に発する蛍光を前方(フェース部1側)へ反射するためのアルミニウム膜105が積層され、さらに電子線の照射位置を規定するシャドウマスク6が設けられる。該シャドウマスク6はスタッドピン106によりスカート部103の内面に固定される。なお、図中107はネック4の中心軸とパネル2の中心を結ぶ管軸を示す。
【0006】
このようなパネル2は、スカート部103の端部にあたるシールエッジ108に設けたハンダガラス等のシール材によりファンネル5のシールエッジ部109と密封接合され、封着部が形成される。
【0007】
このような陰極線管は、前記ガラスバルブ101の内部を真空にして作動されるので外表面に大気圧が負荷されるが、球殻と異なり非対称な形状であるため、比較的高い引っ張り応力が外表面の広範囲にわたって生じるようになる。
【0008】
なお、本発明においては、外囲器(ガラスバルブ101等)の内部が真空であることに起因して生じる応力を「真空応力」といい、該真空応力のうち引っ張り性のものを「引っ張り真空応力」というものとする。
【0009】
前述のように、ガラスバルブ101の外表面に引っ張り真空応力が発生している状態では、大気中の水分の作用による遅れ破壊が生じ、安全性および信頼性の低下の原因となる可能性がある。
【0010】
陰極線管を用いたテレビは、プラズマディスプレイや液晶ディスプレイと比べて重いことが短所であるため、ガラスバルブの軽量化が要望されている。さらに近年では、省スペース化のため奥行きの短い陰極線管が望まれている。しかし、単に奥行きを短縮するだけでは、ガラスバルブ形状の非対称性が増大して、各部に発生する引っ張り真空応力がより高くなる。加えて軽量化にあたって従来よりもガラスを薄肉化すると、より高い変形エネルギーがガラスバルブに蓄積され、破壊の可能性が上昇するようになる。
【0011】
したがって、軽量化のためにパネルやファンネルを薄肉化すると同時に奥行きを短縮すると、前述のように各部位に発生する引っ張り真空応力が著しく増大する。このような引っ張り真空応力の問題を解決するため、以前よりガラス表面に圧縮応力を付与して強化する方法が開発されている。
【0012】
従来、陰極線管用のガラスバルブの軽量化を図る手段としては、特許第2671766号に例示されているように、ガラスの軟化点付近の高温から急冷することにより、ガラス表面と内部に温度差を生じさせて表面に圧縮応力層を形成させる方法、いわゆる物理強化法によってパネルを強化し、軽量化(薄肉化)に伴う引っ張り真空応力の増大に耐えうるようにする方法が実用化されている。
【0013】
しかし、三次元構造で不均一な肉厚分布を有するパネルやファンネルを均一に急冷することは不可能である。その結果、不均一な温度分布に起因して大きな引っ張り性の残留応力が圧縮応力とともに発生するため、圧縮応力の大きさは最大で30MPa程度に制限され、それ以上に大きな圧縮応力を付与することは極めて困難であった。すなわち、前記の物理強化法の場合は付与可能な圧縮応力値の上限によってガラスバルブの軽量化の程度も制限される。
【0014】
一方、ガラスバルブの表面を化学強化法(イオン交換法:Ion−exchanging Method)によって強化し、軽量化を図る方法も知られている。前記化学強化法は、歪点以下の温度でガラス中の特定のアルカリイオンをそれよりも大きいイオンで置換し、その体積増加で表面に圧縮応力層を作る方法である。
【0015】
例えば、Na2Oを5〜8%、K2Oを5〜9%程度含有するストロンチウム−バリウム−アルカリ−アルミナ−シリケートガラスを、約450℃でKNO3の溶融液中に浸漬し、ガラス中のナトリウムイオンと、該ナトリウムイオンよりもイオン径の大きなKNO3溶融液中のカリウムイオンとを交換して、ガラス表面に圧縮応力層を形成する方法が例示される。化学強化法の場合、50〜300MPa程度の大きな圧縮応力が得られ、かつ不要な引張応力を形成しにくい点で物理強化法より軽量化に有利である。
【0016】
さらに、特開2001−348245号公報には、ガラス母材を物理強化し、次いで歪点未満の温度で化学強化することにより250μm以上の厚さの圧縮応力層(応力歪み層)を形成したディスプレイ用ガラスに関する発明が開示されている。その他の化学強化法に関する従来技術については、特許文献3〜7を参照。
【0017】
上述の物理強化法や化学強化法により形成された圧縮応力層はいずれもその厚さ(深さ)がほぼ均一であると考えられる。ディスプレイ用真空外囲器に用いるガラス部材の場合は通常三次元形状に成形されるため、ほぼ均一なガラス肉厚の板ガラスとは異なり、ガラス肉厚の分布(最大値/最小値の値)が大きい。
【0018】
特に前述の陰極線管用ファンネルのように複雑な形状のガラス部材では、シールエッジ部近傍のボディ部は厚くなり、偏向ヨークが取り付けられる部分、いわゆるヨーク部においては電子銃の発熱や構造上の要求から薄くなっている。その結果、形状によってはガラスの厚さの最大値/最小値の値は4以上になることもある。
【0019】
一方、ガラス部材に生じる引っ張り真空応力は、その形状にもよるが通常は、ガラス肉厚が薄い位置ほど大きく、厚い位置ほど小さくなる傾向にある。そして、等しい力でガラスを加傷した場合であっても、ガラス部材上の引っ張り真空応力の小さい位置に比べて、引っ張り真空応力の大きい位置の方が傷が深く入るという特徴がある。
【0020】
その結果、ガラス肉厚の厚い位置に形成された圧縮応力層の厚さとガラス肉厚の薄い領域に形成された圧縮応力層の厚さとがほぼ等しい場合、ガラス肉厚の厚い位置に付与された傷は圧縮応力層によって保護されて安全性を確保できるが、ガラス肉厚の薄い位置に付与された傷は圧縮応力層の深さを超えて引っ張り応力層にまで達し、ガラス部材の亀裂や破壊につながる危険性を有していた。
【0021】
【特許文献1】
特許第2671766号公報(第21段落)
【特許文献2】
特開2001−348245号公報(第74、77段落)
【特許文献3】
特開2001−294442号公報(第55段落)
【特許文献4】
特開2001−302278号公報(第88段落)
【特許文献5】
特開2001−348248号公報(第27〜29段落)
【特許文献6】
特開2002−60242号公報(第25段落)
【特許文献7】
特許第2837134号公報(第29段落)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであって、ガラス肉厚に大きな分布を有するガラス部材であっても、化学強化法により適切な圧縮応力層を設けることにより安全性および信頼性を確保し、軽量化(加えて、陰極線管用ガラスファンネルの場合は奥行きの短縮)を達成し得る強化ガラス部材およびそれを用いたディスプレイ用真空外囲器の提供を技術的課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、次の強化ガラス部材を提供する。
まず第一の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0024】
また、第二の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域の任意の位置におけるガラスの厚さをT、イオン交換層の厚さをtとするとき、tが1/Tにほぼ比例するものであって、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0025】
前記の強化ガラス部材においては、t1がt1≦200μmであって、かつt2がt2≧30μmであることが好ましい。また、前記の強化ガラス部材においては、前記Pminの位置におけるガラス肉厚をTmin、前記Pmaxの位置におけるガラス肉厚をTmaxとするとき、1<Tmax/Tmin≦4なる関係を有することが好ましい。前記Pminが有効化学強化領域の周縁上に位置している場合、1<Tmax/Tmin≦2なる関係を有するものであれば好ましい。
【0026】
さらに本発明の強化ガラス部材においては、前記強化ガラス部材の周縁と、該強化ガラス部材に形成されたイオン交換領域の周縁との間のガラス表面に沿った長さのうち、最も短い長さをLとするとき、L≧5mmであることが好ましい。
【0027】
また、本発明は前記の強化ガラス部材を用いたディスプレイ用真空外囲器を提供する。
【0028】
【発明の実施の形態】
次いで、本発明を詳細に説明する。上述のように、第一の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0029】
また、第二の本発明の強化ガラス部材は、イオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域の任意の位置におけるガラスの厚さをT、イオン交換層の厚さをtとするとき、tが1/Tにほぼ比例するものであって、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする。
【0030】
ここで、本発明においてディスプレイ用真空外囲器とは、主にガラス部材からなる陰極線管用の外囲器(以下、ガラスバルブともいう)および冷陰極を備えたフィールドエミッションディスプレイ(電界放射型ディスプレイ。以下、FEDともいう)の外囲器をいう。
【0031】
一般的に、これらのディスプレイ用真空外囲器は、二つ以上の部材、すなわち画像が映し出される前面ガラス部と、電子銃または冷陰極を備えた背面ガラス部とを有し、その両者を直接的または間接的に封着して形成される。
【0032】
前記のガラスバルブは、従来の技術として述べたとおり図1に示されるものであって、映像表示面を構成する略矩形のフェース部1を有するパネル2と、電子銃3を収納するネック4を有するファンネル5とから構成されている。前記パネル2およびファンネル5はそれぞれ別の工程で所望の形状に作られ、シャドウマスク6等の内蔵部品を取り付けた後、封着される。
【0033】
一方、FEDは陰極線管に似た自発光型のディスプレイであり、大型で高輝度高精細を達成できるフラットパネルディスプレイ(FPD)として注目されている。前記FEDは、図2に示すように、基本的には電子を放出するエミッタ11(カソード)、蛍光体を塗布したアノード12および放出電子を制御するゲート13(グリッド)、ならびにそれらを内蔵する真空外囲器14から構成される。
【0034】
FEDの真空外囲器を構成する材料として、従来はソーダライムガラス、PDP用基板ガラスなどが使用されていた。FEDは、このようなガラス基板に電極や蛍光体をパターニングし、前面パネル15と背面パネル16とを外枠17を介して低融点粉末ガラス(フリット)にて封着後、真空排気されて製造される。
【0035】
当然のことながら、前記のFED用真空外囲器は大気圧に耐えなければならず、かつ真空時にそのガラス部材(特に前面パネル15)のフラット性を確保できる構造でなければならない。しかし上記のような単純な構造では強度確保と、大気圧に起因する前面パネルの撓み補正の観点から陰極線管用ガラスよりもガラスの厚さが必要となり、その結果としてFED用の真空外囲器はかなりの重量となる。
【0036】
そこで前記の前面パネル15と背面パネル16との間にスペーサを配置して強度を確保することにより、ガラスの薄肉軽量化を計る構造が提案されているが、スペーサ表面での電子のチャージアップや複雑な構造に起因する生産性の低下などの問題がある。このような問題を解決すると同時に、軽量化を図りながら大気圧に耐えフラット性を確保できうる構造としてガラス部材の周辺部の一部を厚くすること、すなわちガラスの厚さを不均一にすることが考えられる。本発明では、FEDの真空外囲器に用いるガラス部材として、このようにガラスの厚さが不均一なものをいう。
【0037】
また、本発明の強化ガラス部材は、イオン交換法(Ion−exchanging method)によって形成されたイオン交換領域が一つ以上存在することを特徴としている。なお、本発明においては、イオン交換(Ion−exchanging)と化学強化(Chemical tempering)とは同義であるものとする。
【0038】
本発明のイオン交換領域は、ガラス部材の所望の領域において部分的に電界を印加すると同時に前記領域をイオン交換する方法によって形成される。本発明においては、前記の方法を「部分電界アシスト型イオン交換法」と称する。
【0039】
具体的には、カリウムイオン等のアルカリイオンを含む塩と粘土と有機溶剤とを混合してペースト状とし、該ペースト状物をガラス部材に塗布し、前記塩が溶融する温度までガラス部材を加熱して、前記ペースト状物中の径の大きなアルカリイオン(例えばカリウムイオン)とガラス部材中の径の小さなアルカリイオン(例えばナトリウムイオン)とをイオン交換させる方法である。この方法を用いることにより、比較的短時間にガラス部材の所望の領域を部分的に化学強化することができる。
【0040】
本発明において「イオン交換領域」とは、前記の方法によってイオン交換強化された領域をいうものであり、ガラス部材中に元から存在するアルカリイオンよりもイオン半径の大きいアルカリイオンが、ガラス部材の表面から内部に向かって置換されている領域をいう。典型的には、ガラス部材中に元から存在するナトリウムイオンが、該ナトリウムイオンよりもイオン半径の大きいカリウムイオンによってガラス部材の表面から内部に向かって置換されている領域である。
【0041】
また、本発明における「イオン交換領域の周縁」とは、ガラス部材の最表面において前記のイオン半径の大きいアルカリイオン(例えば、カリウムイオン)の元素濃度が、イオン交換されていないガラス部材表面の濃度から変化し始める境界位置を指す。具体的には、X線マイクロアナライザ(Electron Probe Micro−Analyzer;以下、EPMAともいう)による前記元素のライン分析、面分析または反射電子像(組成像)によるコントラストの違いからその境界部を確認できる。
【0042】
さらに、本発明においては、イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義する。具体的には、図3において実線で示された位置を周縁21とする領域をイオン交換領域とするとき、該イオン交換領域の周縁21から1mm内側の位置をその周縁22とする領域、すなわち破線で囲まれた領域を有効化学強化領域とする。
【0043】
また、図4に示すように、イオン交換領域の周縁21と有効化学強化領域の周縁22の間の領域においてイオン交換領域の周縁21にごく近い部分はイオン交換層23(図4中の網掛けで図示された部分)の厚さが指数関数的に減少してゆく。逆に、有効化学強化領域の周縁22に近くなるに従ってイオン交換層は急激に厚くなり、前記有効化学強化領域の周縁22の位置ではほぼ安定したイオン交換層の厚さとなる。これはエッジ効果による電流集中が原因である。したがってイオン交換領域の周縁21と有効化学強化領域の周縁22間のイオン交換層の厚さは、実質的に有効であるものとは言えない。
【0044】
また、本発明において「ガラスの厚さ」とは、ガラス部材の表面上の任意の位置を点Aとするとき、前記点Aから対向する面までの最短距離を点Aの位置におけるガラスの厚さとする。すなわち、前記の最短距離とは、前記点Aを通過し対向する面に垂直となる直線上のガラスの厚さである。このような「ガラスの厚さ」は、ダイヤルゲージまたはノギスでガラスを挟み込み、その目盛りを読み取る方法によって測定できる。
【0045】
前記の「イオン交換層の厚さ」とは、ガラス部材表面から内部へのガラス部材の厚さ方向のイオン交換層の厚さである。すなわち、イオン交換によって注入されたアルカリイオンの元素濃度が、イオン交換されていないガラスの前記元素濃度と同じになる位置をイオン交換層最深部とするとき、ガラス部材最表面から前記イオン交換層最深部までの距離が「イオン交換層の厚さ」である。
【0046】
前記の「イオン交換層の厚さ」は、ガラス部材を表面に垂直な方向に切断し、その切断面を研磨した後、反射電子像(組成像)を観察し、コントラストの違いからイオン交換層を認識してその厚さを測定する。また、注入されたアルカリイオンの元素のEPMAによるライン分析または面分析を行い、前記アルカリイオンの元素濃度変化からイオン交換層の厚さを測定することもできる。
【0047】
続いて、本発明の特徴である1<t1/t2≦4という関係を説明する。前述のように、例えば陰極線管はその内部が高真空に保たれることにより、ガラスバルブには内外圧力差により外力(大気圧)が負荷されるため、ガラスバルブの外表面に引っ張り真空応力が発生する。この引っ張り真空応力はガラス部材の厚さが薄いほど増大することが知られている。また、このような状態にあるガラスバルブに傷がついた場合、内在する高い変形エネルギーを開放しようとするため前記の傷から亀裂が急激に伸展し、ガラスバルブが破壊する。しかし、ガラス部材が強化されており前記の傷がその圧縮応力層、すなわちイオン交換層を貫通しない場合は亀裂が伸展することはなく破壊には至らない。
【0048】
一方、同じ力でガラスバルブのガラス部材に傷を付けようとした場合、ガラス部材表面の引っ張り応力が高いほど傷の深さは深くなる。したがって、ガラスバルブのガラス部材の厚さが薄い位置ほど傷が深く入ることになり、ガラスバルブの破壊に対する信頼性が低下する。これを解決するためには、ガラス肉厚の薄い場所にはガラス肉厚の厚い場所よりさらに厚い強化層を設けることが効果的である。
【0049】
本発明においては、図5に示すように、有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置32をPmax、有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置31をPmin、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において1<t1/t2とすることにより、前記の傷による破壊の問題を解消し得ることを見出したものである。
【0050】
さらに、前述の「部分電界アシスト型イオン交換法」は、ガラス部材を介して電界印加する。この場合、強化(イオン交換)される領域はほぼ等しい電位となるため、電気量はガラス部材の抵抗値、すなわちガラス部材の厚さに反比例することになる。したがって、Tmax/Tmin=4の場所において、前記の厚さt1はt2の約4倍になる。なお、Tminとは前記Pminの位置31におけるガラスの厚さであり、Tmaxとは前記Pmaxの位置32におけるガラスの厚さである。
【0051】
前記のイオン交換層は、あまり厚くしすぎるとイオン交換層と下部の強化されていないガラス部材との境界部付近に発生する引っ張り応力が大きくなりすぎてガラス部材が破壊する恐れを生じる問題あるが、本発明においては、t1/t2≦4とすることにより前記の破壊の問題を解消し得ることを見出した。
【0052】
すなわち、本発明のガラス部材は、1<t1/t2≦4とすることにより、傷による破壊の問題と、イオン交換層と非イオン交換層との境界部における破壊の問題とを同時に解消し得るのである。
【0053】
さらに、第二の発明のガラス部材は、1<t1/t2≦4であるだけでなく、有効化学強化領域の任意の位置におけるガラスの厚さをT、イオン交換層の厚さをtとするとき、tが1/Tにほぼ比例することを特徴とする。すなわち、第二の発明のガラス部材は、ガラスの厚さが薄い位置ほどイオン交換層が厚いという特徴を有しているものである。このような関係を有していることにより、前述の傷による破壊と、イオン交換層と非イオン交換層との境界部における破壊に対する耐性をより向上させることができるのである。
【0054】
また、前記イオン交換層23は、厚すぎるとガラス部材に微小なクラックを発生させるようになるが、本発明によって、t1が200μm以下であれば前記のクラックの問題を解消し得る。同時に、前記t2を30μm以上とすることにより、陰極線管等のディスプレイ組み立て工程やディスプレイの使用時に形成された傷による前記のイオン交換層(圧縮応力層)の貫通を防止できるので、ディスプレイ用外囲器の信頼性を向上できる。したがって、本発明のガラス部材においては、t1が200μm以下であってt2が30μm以上であることが好ましい。
【0055】
さらに、本発明のガラス部材は前述のようにガラス部材が厚い位置ほどイオン交換層が薄く、ガラス部材が薄い位置ほどイオン交換層が厚いという特徴を有している。この関係を図5に示す。すなわち、t1の位置Pminに対応するガラス部材の厚さTminと、t2の位置Pmaxに対応するガラス部材の厚さTmaxとを1<Tmax/Tminとすることにより、イオン交換層の厚さの関係を1<t1/t2とすることができる。また、厚さの差が大きなガラス部材は成型工程の冷却時に割れやすい問題があるが、Tmax/Tmin≦4とすることにより前記の問題を解決できる。したがって、1<Tmax/Tmin≦4とすることが好ましい。
【0056】
一方、図6に示すように、前記Pminが有効化学強化領域の周縁上に位置する場合、イオン交換層の厚さが一旦急激に厚くなることがある。したがって、図6のように有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置31:Pminがイオン交換領域の周縁21上に位置する場合、ガラス部材の厚さに対するイオン交換層の厚さが過剰になり、前述のイオン交換層とイオン交換されていない部分との境界部での引っ張り応力に起因する破壊につながるおそれがある。
【0057】
前記Pminの位置におけるイオン交換層は、他の位置のイオン交換層よりも厚く、イオン交換処理の際の電流密度が高い。したがって電流密度が高い位置が有効化学強化領域の周縁上に存在する場合、上述のようなイオン交換層が急激に厚くなる部分においてはさらに厚くなり、イオン交換層とイオン交換されていない部分との境界部での引っ張り応力に起因する破壊につながるおそれがある。しかし、1<Tmax/Tmin≦2とすることにより電流密度を抑えることができ、イオン交換層の厚さの急激な増加を防ぐことができる。
【0058】
また、ディスプレイ用真空外囲器に用いるガラス部材の周縁は、通常他の部材と接合される。たとえば陰極線管の場合、図7に示すように、パネル2とファンネル5のシールエッジ41、42をハンダガラス43等によって封着する。封着工程での温度は約450℃である。
【0059】
このとき、ファンネル5、パネル2およびハンダガラス43(フリットガラス)の組成の違いに起因してそれぞれに熱膨張率の差が発生するため、これらを慎重に冷却してもハンダガラス43での封着部44に引っ張り応力が発生する。ただし、前記の引っ張り応力はわずか数MPaであり、他の要因によって高くならなければ問題とはならない。一方、前記イオン交換領域45の周辺にも引っ張り応力が発生する。この引っ張り応力も数MPaであり、同様に他の要因によって高くならなければ問題とはならない。
【0060】
しかし、封着部44に生じる引っ張り応力とイオン交換領域45の周辺に生じる引っ張り応力とが接近していると、相互に干渉し結果として破壊につながるおそれがある。したがって、封着部44とイオン交換領域45との間に一定の間隔を設ける必要がある。本発明では、強化ガラス部材(ファンネル5)の周縁(封着部44)と、該強化ガラス部材(ファンネル5)に形成されたイオン交換領域45の周縁との間のガラス表面に沿った長さのうちの最も短い長さLが所定の値より長いこと、具体的には、前記の長さLがL≧5mmであれば前記の引っ張り応力の干渉による破壊の問題を防止し得ることを見出した。
【0061】
以上が本発明の強化ガラス部材の説明である。このようなガラス部材は圧縮応力が付与された最適な厚さのイオン交換層を有しているので、これを用いて陰極線管やFEDのようなディスプレイ用真空外囲器を構成することにより、極めて安全かつ軽量なディスプレイを製造することができる。また、前記イオン交換層によって破壊の問題等が解消されて安全性が向上しているので、陰極線管の場合、その奥行きを短縮することが可能になる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。本実施例においては、下記表1に記載の特性を有するガラス(いずれも旭硝子社製)を用いてパネルおよびファンネルを製造する。
【0063】
【表1】
【0064】
前記パネルは、アスペクト比16:9、フェース部における有効画面対角径76cm、フェース部外面曲率半径10000cm、パネル高さ(シールエッジからフェース部外表面中央までの高さ)12cm、フェース部中央肉厚2.0cm、シールエッジの肉厚14.5mmのものを用いる。
【0065】
なお、前記の有効画面対角径とは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA:Japan Electronics and Information Technology Industries Association)の規格EIAJ ED−2136Bで定義される有効画面の対角軸上の有効寸法をいう。
【0066】
またファンネルは、偏向角120度、ネックの直径29.1mm、シールエッジの肉厚14.5mmのものを用いる。なお、パネルおよびファンネルとも、同様の形状のものを、例1から例5までの合計5つ製造し、例1のファンネルは浸漬法により強化し、例2から例5までの各ファンネルは前述の部分電界アシスト型イオン交換法により強化する。
【0067】
なお、前記の浸漬法は次のようにして行う。まず、ファンネルが入る十分な大きさのステンレス鋼製容器に、ファンネルが完全に浸される量の硝酸カリウムを入れ、450℃に加熱する。硝酸カリウムは完全に溶融し液状となる。そして、予熱した前記ファンネルを硝酸カリウム溶液中に24時間浸漬する。
【0068】
また、部分電界アシスト型イオン交換法は次のようにして行う。まず、前記ファンネルの外面に陽極を配置し、内面に陰極を配置する。前記の陽極および陰極は、質量比でKNO3:カオリン:プロプレングリコールが6.5:3.5:3であるペーストを作成し、該ペースト上に白金製の電極を接触させるものである。このようにして設けた電極を直流電源に接続することで電界を印加する。電界の印加条件は、下記の表2のとおりとする。なお、例2〜4はイオン交換処理を2回行い、例5についてはイオン交換処理を1回行うものとする。
【0069】
【表2】
【0070】
このようにして得られるパネルとファンネルとをハンダガラス(旭硝子社製ASF1307−R)を用いて公知の方法により封着し、密封・接合されたガラスバルブとする。例1から例5までのガラスバルブについて、ファンネルのボディ部(ネックを除く部分)の外表面における引っ張り真空応力が最大となるべき位置を#150エメリー紙で加傷した後、耐圧試験(耐水圧試験)を行う。
【0071】
前記耐圧試験とは、大きな耐水圧槽の中にそれぞれガラスバルブを入れ、該ガラスバルブ内部を大気圧に保ったまま外側から加圧していく試験方法であり、前記バルブが破壊したときの圧力を耐圧強度とするものである。耐圧強度は、0.25MPa以上であれば合格とする。
【0072】
耐圧試験の後、前記各バルブのファンネル部分における、イオン交換によって強化した部分について、有効化学強化領域(圧縮応力領域)の圧縮応力値と圧縮応力の分布を測定する。応力の測定は、各ファンネルのイオン交換された部分からガラス試料を取り出し、該試料を有効化学強化領域の表面から垂直に切断し、厚さが0.5mm以下となるように研磨した後、ガラスの屈折率に近い液体に浸漬し、断面方向から偏光顕微鏡で観察することで行う。
【0073】
前記応力測定において光弾性定数は2.40を用い、偏光顕微鏡に回転式ベレックコンペンセータを取り付け、応力層内の光の光路差を測定し光弾性定数より算出して応力値を求める。また、イオン交換層(圧縮応力層)の厚さは、偏光顕微鏡に鋭敏色板を取り付けて観察し求める。前記イオン交換層は、明るさおよび/または色が変化して見えるため、その厚さ方向の距離を測定する。
【0074】
なお、例1から例5までのファンネルに形成した有効化学強化領域の任意の位置における、ガラスの厚さT(mm)とその逆数1/T、およびイオン交換層の厚さt(μm)の関係は表3の通りである。また、表3の値を図8のグラフに示す。
【0075】
【表3】
【0076】
以下の表4に例1〜5について各値を記載する。表4においては、部分電界アシスト型イオン交換法を施すものについて「電界」と記載し、浸漬法を施すものについて「浸漬」と記載する。なお、例3および例4は実施例であり、その他は比較例である。
【0077】
【表4】
【0078】
t1/t2が1以下である例1および例2については、有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置Pminを起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを大きく下回る。また、t1/t2が4を超える例5についても前記Pminの位置を起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを大きく下回る。
【0079】
一方、t1/t2の値が1より大きくかつ4以下である例3および例4は、ファンネル(ガラス部材)を起点とする破壊を起こさず、かつ十分な耐圧強度が得られる。
【0080】
続いて、例1〜5と同じ形状のファンネルを3種類用意し、例6〜8とする。これら例6〜8のファンネルについて、電界印加の条件のみ変更してイオン交換による強化を行い、パネルと密封接合してバルブを作成した後、例1〜5の場合と同様の項目を測定する。例6〜8における電界印加条件は、下記の表2のとおりとする。
【0081】
【表5】
【0082】
また、例6〜8のファンネルに形成した有効化学強化領域の任意の位置における、ガラスの厚さT(mm)とその逆数1/T、およびイオン交換層の厚さt(μm)の関係は表6の通りである。また、表6の値を図9のグラフに示す。このように、例6〜8のファンネルに形成した有効化学強化領域においては、tと1/Tとがほぼ比例関係にある。
【0083】
【表6】
【0084】
以下の表7に例6〜8の各値を記載する。なお、例6および例7は実施例であり、例8は比較例である。
【0085】
【表7】
【0086】
t1/t2が4を超える例8はPminの位置を起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを下回るが、t1/t2の値が1より大きくかつ4以下である例6および例7は、ファンネル(ガラス部材)を起点とする破壊を起こさず、かつ十分な耐圧強度が得られる。
【0087】
加えて、部分電界アシスト型イオン交換法を一度だけ行うことによって得られる例6〜8のファンネルは、有効化学強化領域におけるtと1/Tがほぼ比例関係にある。
【0088】
一方、tと1/Tとが比例関係ではない有効化学強化領域を得るには、例1〜5のように浸漬法によるイオン交換処理や複数回の部分電界アシスト型イオン交換法による処理を行わなければならない場合がある。すなわち、tと1/Tがほぼ比例関係にある強化ガラス部材は工程数が少なく効率的に生産できる。
【0089】
続いて、例1〜5で述べた設計値と同じ条件で、ファンネルを3種類作成し例9〜11とする。これら例9〜11のファンネルについて、それぞれ位置を変えて部分電界アシスト型イオン交換法による処理を行う。なお、例9および例10は、有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の周縁上に位置するようにイオン交換の位置を設定する(これをタイプAとする)。また、例11は有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の中央付近に位置するようにイオン交換の位置を設定する(タイプBとする)。例9〜11の有効化学強化領域におけるガラスの厚さの最小値および最大値は表8に示すとおりである。なお、イオン交換層の厚さの比t1/t2の値は、例9は1.9、例10は3.0、例11は3.0である。
【0090】
【表8】
【0091】
有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の周縁上に位置する例9および例10においては、Tmax/Tminが2を上回るとクラックの発生に繋がるが、Tmax/Tminが2以下にすることにより、クラックの問題を解消できる。
【0092】
また、有効化学強化領域内のガラスの厚さが最小となる位置が、前記有効化学強化領域の中央付近に位置する例11においては、Tmax/Tminが4以下であればクラックの問題を解消できる。
【0093】
さらに続いて、例1〜5で述べた設計値と同じ条件で、ファンネルを3種類作成し例12〜14とする。前記ファンネルのシールエッジ部(強化ガラス部材の周縁)と、該強化ガラス部材に形成されたイオン交換領域の周縁との間のガラス表面に沿った長さのうち最も短い長さをLとし、このLの値をそれぞれ変えて部分電界アシスト型イオン交換法による処理を行う。その処理条件は例3と同一である。また、耐水圧試験の条件も全て同一とする。例12〜14についての各値を表9に示す。例12は実施例、例13および例14は比較例である。
【0094】
【表9】
【0095】
このように、Lが5mm未満である例13および例14では封着部とイオン交換領域の間のガラス部材(ファンネルのボディ部)を起点として破壊し、耐圧強度が0.25MPaを下回るが、Lが少なくとも5mmであれば破壊起点が封着部となり、耐圧強度が向上することが分かる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の強化ガラス部材においては、ガラス肉厚が不均一な場合であっても、適切な厚さのイオン交換層が形成されているので、傷が付いた場合等の破壊を防止・低減することができる。このように強化されたことの結果として、ガラス部材を従来製品よりも薄くできるので、陰極線管やフィールドエミッションディスプレイを軽量化することが可能となる。さらに、陰極線管の場合、強度が向上されているので従来より奥行きを短縮することが可能となり、一層の省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】陰極線管を示す断面図。
【図2】フィールドエミッションディスプレイ(FED)を示す一部切り欠き断面図。
【図3】イオン交換領域および有効化学強化領域を示す模式図。
【図4】イオン交換領域を有するガラス部材の断面を示す説明図。
【図5】イオン交換領域を有するガラス部材の断面を示す説明図。
【図6】イオン交換領域を有するガラス部材の断面を示す説明図。
【図7】陰極線管におけるパネルとファンネルとの封着部とその近傍を示す説明図。
【図8】例1〜5のガラス部材における、イオン交換層厚さtとガラス部材厚さTの逆数1/Tの関係を示すグラフ。
【図9】例6〜8のガラス部材における、イオン交換層厚さtとガラス部材厚さTの逆数1/Tの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1:フェース部
2:パネル
3:電子銃
4:ネック
5:ファンネル
6:シャドウマスク
11:エミッタ
12:アノード
13:ゲート
15:前面パネル
16:背面パネル
17:外枠
21:イオン交換領域の周縁
22:有効化学強化領域の周縁
23:イオン交換層
31:有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置Pmin
32:有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置Pmax
41:パネルのシールエッジ部
42:ファンネルのシールエッジ部
43:ハンダガラス
44:封着部
45:イオン交換領域
Claims (7)
- ディスプレイ用真空外囲器に用いる強化ガラス部材であって、
前記強化ガラス部材にはイオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、
前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、該有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、
少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする強化ガラス部材。 - ディスプレイ用真空外囲器に用いる強化ガラス部材であって、
前記強化ガラス部材にはイオン交換されたイオン交換領域が一つ以上存在し、
前記イオン交換領域の周縁から1mm内側の位置をその周縁とする領域を有効化学強化領域と定義し、
該有効化学強化領域の任意の位置におけるガラスの厚さをT、イオン交換層の厚さをtとするとき、tが1/Tにほぼ比例するものであって、
前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最小となる位置をPmin、前記有効化学強化領域においてガラスの厚さが最大となる位置をPmax、前記Pminの位置におけるイオン交換層の厚さをt1、前記Pmaxの位置におけるイオン交換層の厚さをt2と定義するとき、少なくとも一つの有効化学強化領域において、前記t1およびt2が1<t1/t2≦4なる関係を有することを特徴とする強化ガラス部材。 - 前記t1がt1≦200μmであって、かつ前記t2がt2≧30μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の強化ガラス部材。
- 前記Pminの位置におけるガラス部材の厚さをTmin、前記Pmaxの位置におけるガラス部材の厚さをTmaxとするとき、1<Tmax/Tmin≦4なる関係を有することを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の強化ガラス部材。
- 前記Pminが有効化学強化領域の周縁上に位置し、かつ前記TminおよびTmaxが、1<Tmax/Tmin≦2なる関係を有することを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の強化ガラス部材。
- 前記強化ガラス部材の周縁と、該強化ガラス部材に形成されたイオン交換領域の周縁との間のガラス表面に沿った長さのうち、最も短い長さをLとするとき、L≧5mmであることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れか一つに記載の強化ガラス部材。
- 前記請求項1〜6に記載の強化ガラス部材を用いたことを特徴とするディスプレイ用真空外囲器。
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