JP2004338412A - 液体噴射記録ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】吐出部に奥行き部分の距離を有する吐出口であるような液体噴射記録装置において、目詰まりが生じないようにする条件を提案することにある。
【解決手段】液体にその大きさがDp(μm)であるような微粒子を分散させて記録液体とし、該記録液体を微細な吐出口から噴射させ、被記録体に付着させて記録を行う。吐出口は奥行き部分の距離t(μm)を有する吐出口であるとき、Dp/t≦0.01となっている。Dpの下限は0.03μmであり、噴射速度は5〜13m/secである。
【選択図】なし

Description

本発明は、液体噴射記録ヘッド、より詳細には、使用する液体噴射記録ヘッドの吐出部分の長さと微粒子径の関係を最適化するとともに、該微粒子径の下限値、及び、記録液滴の飛翔速度を最適化することにより、Φ25μm以下、あるいは開口面積が500μm2未満であるような従来にはない非常に微細な吐出口から微粒子を含有する記録液体を吐出するような場合でも、吐出口に微粒子がたまりにくく、目詰まりがなく、信頼性の高い記録液体を提供する液体噴射記録ヘッドに関する。
ノンインパクト記録法は、記録時における騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという点において、最近関心を集めている。その中で、高速記録が可能であり、しかも所謂普通紙に特別の定着処理を必要とせずに記録の行える所謂インクジェット記録法は、極めて有力な記録法であって、これまでにも様々な方式が提案され改良が加えられて商品化されたものもあれば、現在もなお実用化への努力が続けられているものもある。
このようなインクジェット記録法は、所謂インクと称される記録液体の小滴(droplet)を飛翔させて記録部材に付着させて記録を行うものであって、この記録液体の小滴の発生法及び発生された記録液体小滴の飛翔方向を制御するための方法によって、以下のように種々の方式がある。
例えば、Tele type方式(特許文献1)のものであって、記録液体の小滴の発生を静電吸引的に行い、発生した記録液体小滴を記録信号に応じて電界制御し、記録部材上に記録液体小滴を選択的に付着させて記録を行う静電吸引型のものがある。
また、Sweet方式(特許文献2,3)のものであって、連続振動発生法によって帯電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生された帯電量の制御された小滴を一様の電界が掛けられている偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に記録を行う連続流型,荷電制御型のものがある。
また、他の方式として、Hertz方式(特許文献4)のものであって、吐出口とリング状の帯電電極間に電界を掛け、連続振動発生法によって記録液体の小滴を発生霧化させて記録する方式のものがある。即ち、この方式では、吐出口と帯電電極間に掛ける電界強度を記録信号に応じて変調することによって小滴の霧化状態を制御し、記録画像の階調性を出して記録する。
さらに、他の方式として、Stemme方式(特許文献5)がある。この方式は前記3つの方式とは根本的に原理が異なるものである。即ち、前記3つの方式は、何れも吐出口より吐出された記録液体の小滴を飛翔している途中で電気的に制御し、記録信号を担った小滴を選択的に記録部材上に付着させて記録を行うのに対して、このStemme方式は、記録信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録するものである。つまり、Stemme方式は、記録液体を吐出する吐出口を有する記録ヘッドに付設されているピエゾ振動素子に電気的な記録信号を印加し、この電気的記録信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って前記吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録部材に付着させることで記録を行うもので、いわゆる、ドロップオンデマンド型と呼ばれているものである。
さらに、他の方式として、先に本出願人が提案した方式(特許文献6)がある。この方式も記録信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録するいわゆるドロップオンデマンド型であるが、液室内のインクを加熱してインクの中で気泡を発生せしめ、その気泡の作用力により吐出口よりインク滴を吐出させる、いわゆる、バブルインクジェット型と呼ばれているものである。
上述のように、インクジェット記録法は、その原理によって様々な方式があるが、共通していえることは所謂インクと称される記録液体の小滴(droplet)を飛翔させて記録部材に付着させて記録を行う点である。そして、このインクと称される記録液体であるが、水溶性の染料を溶解した記録液体を使用するのが一般的である。ところが、近年、耐水性や耐光性が重視されるようになり、記録液体の着色剤として堅牢性の強い顔料がインクジェット記録用として使用されることが期待されている。
例えば、印字品位,吐出特性,保存安定性,定着性等の基本的な課題を満たすインクジェット用の水性顔料インクとしては、特開平2−255875号公報(特許文献7),特開平4−334870号公報(特許文献8),特開平4−57859号公報(特許文献9)及び特開平4−57860号公報(特許文献10)に記載のインクが開示されている。
しかしながら、この顔料は、染料のように液媒体中に溶解するのではなく、分散しているため、液媒体中での安定性が悪く、インク中の顔料の凝集,沈降,分離の発生やノズル部の目詰まりを生じさせるという問題がいまだ解決されていない。
一方で、近年、インクジェット記録の高画質化,高精度化がすすみ、使用され
るヘッドの吐出口(ノズル)も、従来はΦ33μm〜Φ34μm(面積でいうと900μm2程度)から、Φ50μm〜Φ51μm(面積でいうと2000μm2程度)のものが一般的であったが、より微細な吐出口が要求されてきている。その際、従来のようにインクとして水溶性の染料を溶解した記録液体を使用するのであれば、染料は液媒体中に溶解しているので対目詰まり性という問題は対処できていた。しかしながら、顔料ベースのインクについては、より微細な吐出口(例えば、Φ25μm以下、あるいは開口面積が500μm2未満)となった場合に目詰まりは深刻な問題である。
米国特許第3060429号明細書 米国特許第3596275号明細書 米国特許第3298030号明細書 米国特許第3416153号明細書 米国特許第3747120号明細書 特公昭56−9429号公報 特開平2−255875号公報 特開平4−334870号公報 特開平4−57859号公報 特開平4−57860号公報
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、吐出口が、流路の端部がそのまま吐出口となっているもしくは流路の端部に別途吐出口部を形成した吐出口であり、かつ、該吐出口はその大きさがФ25μm以下、もしくは開口面積が500μm2未満であるとともに、その奥行き部分の距離を有するような微細な吐出口から記録液体を液滴として吐出、飛翔させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドにおいて、使用する液体噴射記録ヘッドの吐出部分の長さと微粒子径の関係を最適化するとともに、該微粒子径の下限値、及び、記録液滴の飛翔速度を最適化することにより、Φ25μm以下、あるいは開口面積が500μm2未満であるような従来にはない非常に微細な吐出口から微粒子を含有する記録液体を吐出するような場合でも、吐出口に微粒子がたまりにくく、目詰まりがなく、信頼性の高い記録液体を提供することにある。
吐出口が、流路の端部がそのまま吐出口となっているもしくは流路の端部に別途吐出口部を形成した吐出口であり、かつ、該吐出口はその大きさがФ25μm以下、もしくは開口面積が500μm2未満であるとともに、その奥行き部分の距離tを有するような微細な吐出口から記録液体を液滴として吐出、飛翔させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドにおいて、前記記録液体は、大きさがDp(μm)であるような顔料微粒子を分散させてなる記録液体であり、その微粒子の大きさDpがDp/t≦0.01であるとともに、その微粒子の大きさDpの下限を0.03μmとした記録液体であり、前記液滴の飛翔速度を5〜13m/secとして噴射することを特徴としたものである。
例えば、着色材として微粒子である顔料を分散させた記録液体を噴射する液体噴射記録ヘッドにおいて、使用する液体噴射記録ヘッドの吐出部分の長さと微粒子径の関係を最適化するとともに、該微粒子径の下限値、及び、記録液滴の飛翔速度を最適化することができ、Φ25μm以下、あるいは開口面積が500μm2未満であるような従来にはない非常に微細な吐出口から微粒子を含有する記録液体を吐出するような場合でも、吐出口に微粒子がたまりにくく、目詰まりがなく、信頼性の高い記録液体を提供することができる。
最初に、本発明が適用されるインクジェットの構成および原理について説明するが、前述のように、インクジェット記録法には各種の方式がある。ここでは、代表例として、バブルインクジェット型の例で説明するが、いうまでもなく本発明はこの方式に限定されるものではなく、全てのインクジェット記録法に適用されるものである。ただし、各種のインクジェット記録法の中でも、インクを加熱して気泡を発生させるいわゆるバブルインクジェット記録法は、インクが過酷な条件にさらされる(ヒートサイクルがある)ため、それにともなう劣化,化学反応の促進,顔料の分散不安定等の面から他のインクジェット記録法よりも、よりいっそう目詰まり等のインクジェットにとって好ましくない技術課題がある。本発明は、このような過酷な条件にさらされるバブルインクジェット記録法にとって、特に好適に適用されるものである。
図1は、バブルインクジェット型記録ヘッドの一例を説明するための図で、図1(A)はヘッド斜視図、図1(B)はヘッドを構成する蓋基板の斜視図、図1(C)は該蓋基板を裏側から見た斜視図、図1(D)は発熱体基板の斜視図であり、図中、1は蓋基板、2は発熱体基板、3は記録液体流入口、4は吐出口、5は流路、6は液室を形成するための領域、7は個別(独立)の制御電極、8は共通電極、9は発熱体である。
図2は、バブルインクジェット方式のインクジェットのインク滴吐出の原理を説明するための図で、
図2(A)は吐出口面でインク10と表面張力と外圧とが平衡状態にある定常状態を示し、
図2(B)は発熱体9が加熱されて、発熱体9の表面温度が急上昇し隣接インク層に沸騰現象が起きるまで加熱され、微小気泡11が点在している状態を示す。
図2(C)は発熱体9の全面で急激に加熱された隣接インク層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、気泡11が成長した状態である。この時、吐出口内の圧力は、気泡の成長した分だけ上昇し、吐出口面での外圧とのバランスがくずれ、吐出口よりインク柱10′が成長し始める。
図2(D)は気泡11が最大に成長した状態であり、吐出口面より気泡の体積に相当する分のインクが押し出される。この時、発熱体9には電流が流れていない状態にあり、発熱体9の表面温度は降下しつつある。気泡11の体積の最大値は電気パルス印加のタイミングからやや遅れる。
図2(E)は気泡11がインクなどにより冷却されて収縮を開始し始めた状態を示す。インク柱10′の先端部では押し出された速度を保ちつつ前進し、後端部では気泡の収縮に伴って吐出口内圧の減少により吐出口面から吐出口内へインクが逆流してインク柱10′にくびれ10″が生じている。
図2(F)はさらに気泡11が収縮し、発熱体9の面にインク10が接し、発熱体面がさらに急激に冷却される状態にある。吐出口面では、外圧が吐出口内圧より高い状態になるためメニスカスが大きく吐出口内に入り込んできている。インク柱の先端部は液滴12になり、記録紙の方向へ5〜13m/secの速度で飛翔している。
図2(G)は吐出口にインクが毛細管現象により再び供給(リフィル)されて図2(A)の状態にもどる過程で、気泡は完全に消滅している。
以上が熱を利用したバブルインクジェット型記録ヘッドの一般的な構成,原理であるが、前述のように本発明は、この方式に限定されるものではなく、全てのインクジェット記録法に適用されるものである。
本発明は、上述のごときインクジェット記録法に使用する記録液体(インク)を耐水性や耐光性が優れた顔料を記録液体の着色剤として使用するものである。しかしながら、この顔料を記録液体の着色剤として使用した場合、顔料は染料のように液媒体中に溶解するのではなく、分散しているため、液媒体中での安定性が悪く、インク中の顔料の凝集,沈降,分離の発生やノズル部の目詰まりを生じさせるという問題がある。とりわけノズル部の目詰まりは、インクが噴射しなくなるため、インクジェットにとっては致命的問題である。あるいは目詰まりとはいわないまでも、上記理由により通常の染料を記録液体の着色剤として使用するインクジェット記録法に較べてインク滴噴射が難しく、安定したインク滴噴射,高精度のドット位置精度に裏付けられた高画質記録が困難であるという問題がある。
本発明は、これを解決するために、インクを構成する材料ならびにノズル部のディメンション,形状,性状および使用する顔料粒径ならびにインク中の顔料含有量などとの関係を鋭意検討したものである。本発明では顔料インクを前提に考えている。すなわち、記録液体中の着色剤は、水などの溶媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。
本発明に好適に適用される黒色顔料インクとしては、例えば、中性あるいは塩基性のpHを有する黒色顔料を、第3級アミンの塩あるいは第4級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルモノマーあるいはアクリルアミドモノマーを少なくとも構成成分とする水溶性高分子を用いて分散処理してなるものであり、他の色相のインク,例えば、イエロー,マゼンタ及びシアン等のインクについても、これらの色相の顔料を、カルボキシル基あるいはスルホン基を水溶性基として有するアニオン系高分子分散剤を用いて分散処理してなるものである。
なお、ここでいう黒色顔料のpHとは、一般に、カーボンブラックの物性測定法に用いられているのと同様に、純水中に顔料を分散させた場合の溶液のpH値をいう。
また、記録に用いる被記録材が普通紙である場合においては、該普通紙に対するインクの界面張力において、黒色顔料インクの界面張力が、カラーインクの界面張力よりも高いこと、更には、普通紙に対するインクの浸透速度において、黒色顔料インクの浸透速度が、カラーインクの浸透速度よりも遅いことが好ましい。
以上のようなインクを用いて普通紙にカラー記録を行うと、定着性よく、濃度も高く、境界滲みの少ない画像を得ることができる。また、透明性を有する被記録材に記録を行った場合でも鮮明な投影画像が得られる。そして、いうまでもないが、顔料インクであるため、従来の染料インクを用いる場合に較べて、光や水に対する抵抗性は非常に優れたものとなる。
本発明で用いられる高分子分散剤は、主としてビニルモノマーの重合によって得られるものであって、得られる重合体の少なくとも一部を構成するカチオン性モノマーとしては、下記のような第3級アミンモノマーの塩及びこれらの第4級化された化合物が挙げられる。
すなわち、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート[CH2=C(CH3)-COO-C2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート[CH2=CH-COO-C2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート[CH2=C(CH3)-COO-C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート[CH2=CH-COO-C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアクリルアミド[CH2=CH-CON(CH3)2]、N,N−ジメチルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)-CON(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド[CH2=CH-CONHC2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)-CONHC2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド[CH2=CH-CONH-C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)-CONH-C3H6N(CH3)2]等である。
第3級アミンの場合において、塩を形成する化合物としては、塩酸,硫酸,酢酸等が挙げられ、4級化に用いられる化合物としては、塩化メチル,ジメチル硫酸,ベンジルクロライド,エピクロロヒドリン等が挙げられる。この中で、塩化メチル,ジメチル硫酸等が分散剤を調製するうえで好ましい。
以上のような第3級アミンの塩、あるいは第4級アンモニウム化合物は水中ではカチオンとして振る舞い、中和された条件では酸性が安定溶解領域である。これらモノマーの共重合体中での含有率は20〜60重量%の範囲が好ましい。
上記高分子分散剤の構成に用いられるその他のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、長鎖のエチレンオキシド鎖を側鎖に有するアクリル酸エステル等のヒドロキシ基を有するアクリル酸エステル、スチレン系モノマー等の疎水性モノマー類、及びpH7近傍の水に溶解可能な水溶性モノマーとして、アクリルアミド類,ビニルエーテル類,ビニルピロリドン類,ビニルピリジン類,ビニルオキサゾリン類が挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン,スチレン誘導体,ビニルナフタレン,ビニルナフタレン誘導体,(メタ)アクリル酸のアルキルエステル,アクリロニトリル等の疎水性モノマーが用いられる。共重合によって得られる高分子分散剤中において水溶性モノマーは、共重合体を水溶液中で安定に存在させるために15〜35重量%の範囲で用い、かつ疎水性モノマーは、共重合体の顔料に対する分散効果を高めるために20〜40重量%の範囲で用いることが好ましい。
本発明のブラックインクに使用されるカーボンブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7)としては、#2600,#2300,#990,#980,#960,#950,#900,#850,#750,#650,MCF−88,MA−600,#95,#55,#52,#47,#45,#45L,#44,#40,#33,#32,#30,#25,#20,#10,#5(以上、三菱化学製)、Printex95,Printex90,Printex85,Printex80,Printex75,Printex45,Printex40,PrintexP,Printex60,Printex300,Printex30,Printex35,Printex25,Printex200,PrintexA,PrintexG,PrintexL6,PrintexL(以上、デグッサ製)、Raven850,Raven780ULTRA,Raven760ULTRA,Raven790ULTRA,Raven520,Raven500,Raven410,Raven420,Raven430,Raven450,Raven460,Raven890,Raven1020(以上、コロンビア製)、Regal 415R,Regal 330R,Regal 250R,Regal 995R,Monarch800,Monarch880,Monarch900,Monarch460,Monarch280,Monarch120(以上、キャボット製)等が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,C.I.ピグメントイエロー2,C.I.ピグメントイエロー3,C.I.ピグメントイエロー12,C.I.ピグメントイエロー13,C.I.ピグメントイエロー14,C.I.ピグメントイエロー16,,C.I.ピグメントイエロー17,C.I.ピグメントイエロー73,C.I.ピグメントイエロー74,C.I.ピグメントイエロー75,C.I.ピグメントイエロー83,C.I.ピグメントイエロー93,C.I.ピグメントイエロー95,C.I.ピグメントイエロー97,C.I.ピグメントイエロー98,C.I.ピグメントイエロー114,C.I.ピグメントイエロー128,C.I.ピグメントイエロー129,C.I.ピグメントイエロー151,C.I.ピグメントイエロー154等が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5,C.I.ピグメントレッド7,C.I.ピグメントレッド12,C.I.ピグメントレッド48(Ca),C.I.ピグメントレッド48(Mn),C.I.ピグメントレッド57(Ca),C.I.ピグメントレッド57:1,C.I.ピグメントレッド112,C.I.ピグメントレッド123,C.I.ピグメントレッド168,C.I.ピグメントレッド184,C.I.ピグメントレッド202等が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1,C.I.ピグメントブルー2,C.I.ピグメントブルー3,C.I.ピグメントブルー15:3,C.I.ピグメントブルー15:34,C.I.ピグメントブルー16,C.I.ピグメントブルー22,C.I.ピグメントブルー60,C.I.バットブルー4,C.I.バットブルー60等が挙げられる。
以上の他に、レッド,グリーン,ブルーその他の3原色以外の中間色が必要とされる場合には、以下のような顔料を単独あるいは併用して用いることが好ましい。例えば、C.I.ピグメントレッド209,C.I.ピグメントレッド122,C.I.ピグメントレッド224,C.I.ピグメントレッド177,C.I.ピグメントレッド194,C.I.ピグメントオレンジ43,C.I.バットバイオレット3,C.I.ピグメントバイオレット19,C.I.ピグメントグリーン36,C.I.ピグメントグリーン7,C.I.ピグメントバイオレット23,C.I.ピグメントバイオレット37,C.I.ピグメントブルー15:6,C.I.ピグメントブルー209等が挙げられる。
また、カラーインク中には下記に挙げるような染料を共存させてもよい。イエローインクに用いられる染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11,C.I.アシッドイエロー17,C.I.アシッドイエロー23,C.I.アシッドイエロー25,C.I.アシッドイエロー29,C.I.アシッドイエロー42,C.I.アシッドイエロー49,C.I.アシッドイエロー61,C.I.アシッドイエロー71,C.I.ダイレクトイエロー12,C.I.ダイレクトイエロー24,C.I.ダイレクトイエロー26,C.I.ダイレクトイエロー44,C.I.ダイレクトイエロー86,C.I.ダイレクトイエロー87,C.I.ダイレクトイエロー98,C.I.ダイレクトイエロー100,C.I.ダイレクトイエロー130,C.I.ダイレクトイエロー142等が挙げられる。
マゼンタインクに用いられる染料としては、C.I.アシッドレッド1,C.I.アシッドレッド6,C.I.アシッドレッド8,C.I.アシッドレッド32,C.I.アシッドレッド35,C.I.アシッドレッド37,C.I.アシッドレッド51,C.I.アシッドレッド52,C.I.アシッドレッド80,C.I.アシッドレッド85,C.I.アシッドレッド87,C.I.アシッドレッド92,C.I.アシッドレッド94,C.I.アシッドレッド115,C.I.アシッドレッド180,C.I.アシッドレッド254,C.I.アシッドレッド256,C.I.アシッドレッド289,C.I.アシッドレッド315,C.I.アシッドレッド317,C.I.ダイレクトレッド1,C.I.ダイレクトレッド4,C.I.ダイレクトレッド13,C.I.ダイレクトレッド17,C.I.ダイレクトレッド23,C.I.ダイレクトレッド28,C.I.ダイレクトレッド31,C.I.ダイレクトレッド62,C.I.ダイレクトレッド79,C.I.ダイレクトレッド81,C.I.ダイレクトレッド83,C.I.ダイレクトレッド89,C.I.ダイレクトレッド227,C.I.ダイレクトレッド240,C.I.ダイレクトレッド242,C.I.ダイレクトレッド243等が挙げられる。
シアンインクに用いられる染料としては、C.I.アシッドブルー9,C.I.アシッドブルー22,C.I.アシッドブルー40,C.I.アシッドブルー59,C.I.アシッドブルー93,C.I.アシッドブルー102,C.I.アシッドブルー104,C.I.アシッドブルー113,C.I.アシッドブルー117,C.I.アシッドブルー120,C.I.アシッドブルー167,C.I.アシッドブルー229,C.I.アシッドブルー234,C.I.アシッドブルー254,C.I.ダイレクトブルー6,C.I.ダイレクトブルー22,C.I.ダイレクトブルー25,C.I.ダイレクトブルー71,C.I.ダイレクトブルー78,C.I.ダイレクトブルー86,C.I.ダイレクトブルー90,C.I.ダイレクトブルー106,C.I.ダイレクトブルー199等が挙げられる。
ただし、これらの染料を共存させる場合も、顔料粒径ならびにインク中の顔料含有量などは後述する範囲内に入っている必要がある。
本発明において、前記したカチオン系水溶性高分子を分散剤として使用して顔料を分散する際に、物性面から好ましい顔料としては、等電点が6以上に調節された顔料、あるいは顔料を特徴づける単純水分散体のpHが中性あるいは塩基性のpHを有するもの、例えば、7以上〜10であるような顔料が分散性の点で好ましい。これは顔料とカチオン系水溶性高分子とのイオン的な相互作用力が強いためと理解されている。
以上のような材料を用いて顔料の微粒子水性分散体を得るには、以下のような方法を採用することが好ましい。
(1)カーボンブラックの場合:カーボンブラックをカチオン分散剤溶液中にてプレミキシング処理を行い、引き続き高ずり速度の分散装置でミリングし、希釈後、粗大粒子を除去するために遠心分離処理を行う。その後、所望のインク処方のための材料を添加し、場合によっては、エイジング処理を施す。しかる後、最終的に所望の平均粒径を有する顔料分散体を得るために遠心分離処理を行う。このようにして作製されるインクのpHは3〜9の範囲とするのが好ましい。
(2)その他の色相の顔料の場合:アニオン系分散剤を用いる以外は、基本的にはカーボンブラックと同様である。但し、小粒径にするのが困難な有機顔料の場合には、顔料合成と同時、あるいは合成途中段階で界面活性剤処理を行い、顔料粒子の結晶成長を抑制し、濡れ性を高めた加工顔料を使用することが望ましい。このようにして作製したインクのpHは5〜10の範囲とするのが好ましい。カーボン黒色インク及びカラーインク何れの場合でも、その平均粒径は0.02〜1μmの範囲であることが分散体の安定性上必須であり、好ましくは、0.03〜0.4μmの範囲である。これは分散体の安定性という観点からの必須条件であるが、微細な開口からインクを吐出させるといういわゆるインクジェットに必須という観点から、この平均粒径を検討すると微細な開口すなわち吐出口での目詰まりを考慮に入れる必要があるが、これは後述する。なお、良好なインクの表面張力は10〜60dyn/cmの範囲である。
これらのインクを用いて普通紙へ記録する場合には、記録される文字の鮮明さの点から、黒色顔料インクは用紙との界面張力が高いことが好ましい。一方、カラーインクは、カラーインク間の相互拡散による滲み(カラーブリード)を少なくするために、速い浸透速度を持つことがよい結果となるので、用紙との界面張力が低いことが好ましい。このように、黒色インクが酸性で高い界面張力を持ち、カラーインクが塩基性で低い界面張力を持っていると、黒色インクが、カラーインク側に流れ込む傾向が少なくなり、黒色インクとカラーインクのカラーブリードは事実上全くなくなる。なお、上記のインクと用紙の界面張力は、例えば、動的濡れ性試験機として市販されている装置(Wilhelmy法を用いた装置で、製品名称WET-3000レスカ株式会社製)等によって測定される量である。界面張力が高いとは、普通紙に対する接触角が1秒〜数秒の短時間においても、90゜以上であることを指し、界面張力が低いとは、90゜以下であることを指している。
本発明で使用するカラーインクに使用される分散剤は、アルカリ可溶性の水溶性脂樹であり、重量平均分子量は1,000〜30,000であり、好ましくは3,000〜15,000の範囲である。具体的には、スチレン,スチレン誘導体,ビニルナフタレン,ビニルナフタレン誘導体,アクリル酸のアルキルエステル,メタクリル酸のアルキルエステル等の疎水性モノマーと、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びその脂肪族アルコールエステル,アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸及びそれらの誘導体等の親水性モノマーからなる共重合体及びそれらの塩等である。共重合体はランダム,ブロック,グラフト等の何れの構造を有していてもよく、酸価は100〜430、好ましくは、130〜360の範囲である。
本発明に使用される分散剤としては、更に、ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース等の水溶性ポリマー,ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物,ポリスチレンスルホン酸等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶性の水溶性脂樹の方が分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。これらの分散剤の使用量は、選択した顔料と分散剤とを用いて実験的に決定されるが、顔料に吸着せず溶解している樹脂の量は、インク中で4重量%以下であることが好ましい。
上記分散剤を水系にて用いるには塩基が必要である。そのために好適な塩基としては、エタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,N−メチルエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン,2−アミノ−2−メチルプロパノール,2−エチル−2−アミノ−1,3−プロパンジオール,2−(2−アミノエチル)エタノールアミン,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,アンモニア,ピペリジン,モルフォリン,β−ジヒドロキシエチル尿素等の有機塩基,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等の無機塩基が挙げられる。最適な塩基種は選択した顔料及び分散剤の種類によって異なるが不揮発性で安定、かつ保水性の高いものが好ましい。用いる塩基の量は基本的には分散剤の酸価から計算される量から、それを中和するに必要な塩基量として夫々用いられる。場合によっては、酸の当量を上回る量の塩基を用いる場合がある。それは、分散性向上,インクのpH調整,記録性能の調整,保湿性の向上等の目的で行う。
本発明においてインクに用いられる溶剤としては、水と混和性がある有機溶剤類である。有機溶剤としては下記の如く3群に分けることができる。即ち、保湿性が高く,蒸発しにくく,親水性に優れる第1群の溶剤、有機性があり疎水性の表面への濡れ性がよく、蒸発乾燥性もある第2群の溶剤、適度の濡れ性を有し低粘度の第3群の溶剤(一価アルコール類)である。
第1群に属する溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジメチルスルホキシド、ダイアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール300、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ヘンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
第2群に属する溶媒としては、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1−ブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。
第3群に属する溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。以上のような水溶性溶媒の総量は、おおむねインク全体に対して5〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。
本発明のインクを構成する各水性顔料インクには、界面活性剤,pH調整剤,防腐剤等を添加することが可能である。界面活性剤は浸透性の高いカラーインクの調製,バブルインクジェット方式における発熱ヒーター,吐出ノズル表面への濡れ性の調節等に有益である。材料としては既存の市販品から適宜選択することができる。以上のような材料から構成される各インクの物性をまとめると、黒色インクは、高い表面張力(概略30〜60dyn/cm)を有し、一方、カラーインクは低い表面張力(概略10〜40dyn/cm)を有することが好ましい。
以上のような、本発明における黒色水性顔料インクとカラーインクを使用して普通紙に対してカラー記録を行うと、黒の文字等が鮮明であり、画像やグラフと黒の文字が隣り合っていても相互滲みがなく夫々明瞭である。
本発明のカラーインクを使用する場合、被記録材としては、一般の普通紙(例えば、上質紙,中質紙あるいはボンド紙等),コート紙,OHP用のプラスチックフィルム等の何れでも使用することができる。前述のように、本発明は全てのインクジェット記録方式に適用できるが、中でも、熱エネルギーによるインクの発泡現象によってインクを吐出させるタイプのインクジェット記録方法に使用する場合に特に好適であり、インクの吐出が極めて安定し、サテライトドットの発生等が生じないという特徴がある。但し、この場合に熱的な物性、例えば、比重,熱膨張係数及び熱伝導率等を調整する必要が生ずることもある。
次に、本発明のより特徴的な点について説明する。前述のように、本発明は、微細な開口からインクを吐出させるといういわゆるインクジェット記録方式に関するものであり、インクジェット記録方式にとって、吐出口部における目詰まりは致命的なものである。これは染料インクを使用するものより、本発明のように、溶媒中に微粒子を分散させた顔料インクを使用するものでは、顔料が染料のように溶解しているわけではなく分散しているだけなので、より目詰まりが起こりやすい。さらに、本発明では、従来にはない微細な吐出口径、例えば、吐出口径がΦ25μm以下(面積でいうならば500μm2未満)であるようなインクジェット記録ヘッドを想定しているので、この目詰まりは大変深刻な問題である。
ところで目詰まりとは、微細な開口からインクが噴射するというインクジェット記録方式の原理そのものに由来するものである。つまり、開口が微細であるがゆえに生じるものである。よって、その開口すなわち吐出口の各ディメンション,形状,性状と、いわばインク中の異物とでもいうべき顔料の大きさとには密接な関係がある。
本発明は、この点に鑑み、吐出口の各ディメンション,形状,性状と顔料粒子の大きさに着目し、目詰まりの生じにくさとそれらの関係を見い出したものである。具体的には、顔料粒子径を変えたインクを調合し、各ディメンション,形状,性状がわかっているインクジェット記録ヘッドを使用し、一定時間インク噴射を行った後、一定時間放置し、インク噴射を再開し、吐出口の目詰まりの有無を調べた。その場合、吐出口の完全閉塞だけではなく、部分的な目詰まりおよびそれに至る事前の兆候(わずかな目詰まり)も目詰まりとみなしてテストした。
使用したヘッドは、図1に示したような構成の熱エネルギーを使用するインクジェット記録方式のヘッドである。ただし図1に示したヘッドは、流路の先端がそのまま吐出口になっているものを示したが、実験に使用したものは、図3に示すように、この先端に流路の配列密度と同じ配列密度で形成したノズル21を有するノズル板20を設けたものである(なお、図3において、図3(A)は、図1(A)に示したヘッドにノズル板20を取り付ける前の様子を示す斜視図、図3(B)は、ノズル板20を取り付けた後の斜視図である)。また、その吐出口(ノズル)の数も、図1,図3に示したものは、説明を簡単にするため吐出口が4個しかないものであるが、実際に使用したのは吐出口の数が128個で、その配列密度が400dpiのものである。また、発熱体の大きさは22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V,駆動パルス幅は6.5μs,駆動周波数は12kHzとした。なお、記録ヘッドは吐出口径をΦ25μmとし、吐出口部の厚さ(吐出口部の奥行き部分の距離)を変えた3種類のヘッド(H1〜H3)を用意した(それぞれ吐出口部の厚さを、t=40μm(H1),50μm(H2),60μm(H3)とした)。
使用したインクは、以下のような組成および製法によるものであるが、顔料粒径が0.005〜4μmまで変えたものを準備し、吐出口径の異なるヘッドH1〜H3と組み合わせてテストした。また、一定時間インク噴射を行った後の放置の条件は、温度40℃,湿度30%の雰囲気中で10時間放置である。
インクの製法を以下に示す。
スチレン/アクリル酸/エチルアクリレートからなる、酸価290、重量平均分子量5,000、ガラス転移温度77℃の共重合体Pをモノエタノールアミンを用いて溶解した水溶液を用い、アントラキノン系顔料ピグメントレッド−177分散体D1〜D20を作製した。
・共重合体P水溶液(固形分15重量%) 40部
・ピグメントレッド−177(クロモフタールレッドA2B,
チバガイギー製) 24部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロピルアルコール 10部
・水 130部
これらの材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の液の粘度は30cP,pH=9.8の粗分散体を得た。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、また、遠心分離の条件を種々変えることによって顔料の平均粒径を0.005〜4μmまで変えた分散体D1〜D20を得た。これらの分散体を水,ジエチレングリコール,エチレングリコールモノブチルエーテル(60:25:15重量比)にて希釈し、粘度3cP,表面張力40dyn/cm,pH=9.5の赤色塩基性インクジェット用インクR1〜R20を得た。最終調製物の固形分は約7.5重量%であった。なお、これらのインク中の最終的な顔料含有率は5重量%である。
なお、平均粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置ELS−800(大塚電子製)にて測定を行い、平均量は自己相関関数の初期勾配から得られる値で示した。
これらのインクR1〜R20と上記の吐出口部の厚さ(吐出口部の奥行き部分の距離)を変えたヘッドを組み合わせて、目詰まりの発生状況を調べた結果を表1〜表3に記す。
以上の結果より、顔料粒径Dpと吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)tとは、Dp/t≦0.01の関係を満足するようにすれば目詰まりのない安定したインク噴射が得られることがわかる。なお、ヘッドの構成によっては、流路と吐出口(ノズル)が連続的につながっているような場合もあるが、本発明でいうところの吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)tとは、実質的にノズルを構成する部分の距離,厚さを意味する。
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように、本発明の記録液体中の着色剤は、水などの解媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。前述の結果では、このようないわゆる顔料インクであっても、顔料粒径と吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)との関係をある範囲内にすれば、目詰まりが生じないことがわかったが、このような顔料インクを使って、インク滴噴射を行うには、目詰まりだけではなく、安定した噴射およびそれによって紙等の被記録体上にインク滴を狙いの位置に高精度に付着させる必要がある。
ここでは、目詰まりに多いに関係する吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)tと吐出口面から紙等の被記録体までの距離Lの関係について調べた。
使用したへッドは前述のH1〜H3のヘッドであり、吐出口径がΦ25μmであり、その数が128個で、その配列密度が400dpiのものである。また、発熱体の大きさは22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V,駆動パルス幅は6.5μs,駆動周波数は12kHzである。
使用したインクは前述の赤色塩基性インクジェットヘッド用インクR5であり、被記録体としては三菱製紙製マットコートNMを使用し、ヘッドの吐出口面から被記録体までの距離を変えて印写実験を行い、この被記録体上における画素位置精度を評価することにより、高画質記録(高ドット位置精度)が得られるかどうか評価した。なお、本発明のように吐出口が小さく、かつ顔料インクを使用し、従来に較べて噴射がしにくいヘッドでは、少しでも良好な条件を見い出すために、重力作用も影響をおよぼすと考え、鉛直方向に対してほぼ垂直方向にインク滴を噴射する場合と、ほぼ鉛直方向の2通りの噴射方向を評価した。その結果を表4に示す。
なお、表4において、○は狙いのドット位置からのズレが1/4ドット以内に入った場合、△は狙いのドット位置からのズレが1/4ドット以上,1/2ドット以内に入った場合、×は狙いのドット位置からのズレが1/2ドット以上ズレた場合である。なお、1ドットの大きさは約Φ60μmである。
以上の結果より、本発明のように吐出口が小さく、かつ顔料インクを使用し、従来に較べて噴射がしにくいヘッドであっても、吐出口から被記録面までの距離を100t以下とすることにより、安定噴射が行え、高精度なドット位置精度が得られ高画質記録が実現することがわかる。とりわけ噴射方向を鉛直方向にし、重力作用も利用することにより、その効果が増すこともわかる。
なお、本発明は、必ずしも完全に鉛直にすることに限定されるものではなく、重力作用を利用すればより効果的であるということをいわんとするものである。よって、本発明を実際に利用する場合には、プリンタの構成上の制約からその噴射方向を完全に鉛直にできなくても、少しでも重力作用が利用できるように下方を向けて噴射するようになっていればよい。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。前述のように本発明の記録液体中の着色剤は、水などの溶媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。しかしながら、この顔料は、染料のように液媒体中に溶解するのではなく、分散しているため、液媒体中での安定性が悪く、インクの顔料の凝集,沈降,分離の発生が生じやすい。とりわけ、吐出口の形状によっては凝集した顔料がたまりやすく目詰まりを加速させる場合がある。
上述のように目詰まり要因を抱える本発明のような液体噴射記録装置では、信頼性維持回復装置を必須の構成要件とする。信頼性維持回復装置としては、吐出口外側面の汚れをゴム,プラスチック,あるいは金属等のブレードで拭き取ったり、スポンジ等の吸湿部材で拭き取ったりする構造のものを用いる。いうまでもないがヘッドの吐出口部分をキャップすることも必須である。ここで、このような拭き取り構造の具体的機構の一例をあげる。たとえば、被記録体の前をヘッドが往復運動して印写を行うようなシリアルプリンタタイプの場合には、ヘッドを搭載するキャリッジのホームポジション近傍にブレードやスポンジ等の吸湿部材をヘッドの吐出口面に接触するように配置しておくことにより、キャリッジの移動による吐出口面とブレードやスポンジ等の吸湿部材との相対運動によって、拭き取り作業が行われる。
この拭き取り作業において、一番問題となるのは、吐出口の外側コーナーのだれである。図4〜図6は、吐出口の外側コーナー部の様子を示す図で、図4は外側コーナー部(4A1)の形状がr形状(円形)のものを示し、図5は外側コーナー部(4A2)の形状がc形状(面取り形状)のものを示す。理想的にはこの部分はだれることなく、図6に示すように、外側コーナー部(4A3)の形状がシャープなs形状(直角形状)になっていることが望ましい。これは信頼性維持回復機構によって吐出口外側面を拭き取る(ワイピングする)場合、シャープな形状(図6の4A3部分)になっていれば、吐出口外側面の不要インクをきれいに除去できるのに対し、外側コーナー部分にだれがあればどうしてもその部分に残ったインクが乾燥固化し、析出した顔料がたまりやすいことからも明らかである。そしてこの析出した顔料が目詰まりの原因を作っている。しかしながら、吐出口の量産加工上の面から考えると吐出口の外側コーナー部分を完全なシャープ形状にしようとするとコスト高になり、完全にシャープ形状とすることが得策であるとは限らない。
本発明は、上述のごとき実情に鑑みなされたものであり、吐出口の外側コーナー部分のだれをどの程度までに抑えれば、顔料析出/目詰まりの誘発を防止できるのかを実験的に明らかにしたものである。具体的には、吐出口の外側コーナー部分のだれの大きさの異なるヘッドを用意し、前述と同様の目詰まり試験を行った。すなわち、前述のH2のヘッドをベースに吐出口の外側コーナー部分のだれの大きさを変えたヘッドを用意し、また、インクをR5,R7,R9およびR6,R8,R10を用い、目詰まり試験を行った。吐出口の外側コーナー部分のだれの大きさは、c形状のものとr形状のものを用意したが、微小なr形状のものは準備できなかったので、c形状で代用した。なお、このようなc形状もしくはr形状の面取りは、もともと面取りのないシャープな形状のNi製ノズルを準備しておき、化学エッチング,電解エッチングによって、面取り(だれ)を形成した。
その他の条件は前述と同様であり、吐出口径はΦ25μmであり、その数が128個で、その配列密度が400dpiのものである。また発熱体の大きさは22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V,駆動パルス幅は6.5μs,駆動周波数は12kHzである。放置の条件も同じであるが、今回はゴムブレードで吐出口面を拭き取った後、放置を行った。結果を表5,表6に示す。ここで○は目詰まりが発生しなかったもの、△は128個中1個でも噴射が乱れたもの、×は128個中1個でも目詰まりが発生したもの(明らかに目詰まりと判別できるもの)である。
以上の結果より、吐出口より前記微粒子を分散させた記録液体を分散させた記録液体を吐出するヘッドの吐出口の外側部分を拭き取るようにして信頼性を確保しようとする場合、吐出口の外側コーナー部分のだれ(面取り)が、c形状の場合およびr形状の場合とも、c50Dp以下もしくはr50Dp以下にすれば、だれ部に顔料がたまらず、目詰まりが発生しないことがわかる。
次に本発明のさらに他の特徴について説明する。前述のように本発明の記録液体中の着色剤は、水などの溶媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものであるため、液媒体中での安定性が悪く、インク中の顔料の凝集,沈降,分離の発生が生じやすい。とりわけ吐出口の性状によっては、凝集した顔料がたまりやすく目詰まりを加速させる場合がある。具体的には吐出口の表面性状、つまり表面粗さである。特に記録液体が実際に流れるところ、すなわち内壁部の表面粗さである。
本発明は、上述のごとき実情に鑑みなされたものであり、吐出口内壁部の表面粗さをどの程度にすれば、顔料析出/目詰まりの誘発を防止できるのかを実験的に明らかにしたものである。具体的には、吐出口の内壁部の表面粗さの異なるヘッドを用意し、前述と同様の目詰まり試験を行った。すなわち前述のH2ヘッドをベースに吐出口の内壁部(前述の距離tで示した吐出口の奥行き部分)の表面粗さRを変えたヘッドを用意し、またインクをR5,R9,R11を用い、目詰まり試験を行った。なお、ノズルは厚さt=50μmのSUS304に放電加工で吐出口径がΦ25μmになるように加工したものであり、放電加工の条件を変えて表面粗さRが0.1s〜5sまで異なるものを準備した。また表面粗さRはSEM観察により算出したものである。
その他の条件は前述と同様であり、吐出口数は、1つのヘッドあたり128個で、その配列密度が400dpiのものである。また発熱体の大きさは22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V、駆動パルス幅は6.5μs、駆動周波数は12kHzである。放置の条件も同じである。結果を表7に示す。ここで○は目詰まりが発生しなかったもの、△は128個中1個でも噴射が乱れたもの、×は128個中1個でも目詰まりが発生したもの(明らかに目詰まりと判別できるもの)である。
以上の結果より、液体にその大きさがDp(μm)であるような微粒子を分散させた顔料インクを微細な吐出口から吐出させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録装置において、吐出口は奥行き部分の表面粗さがR(s)であるような場合、0.025<Dp/Rとなるようにその組み合わせを選べば、目詰まりのない信頼性の高いインク滴噴射が得られることがわかる。
次に本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明のようにいわゆる顔料インクを使用する液体噴射記録装置においては、従来の染料インクのものに較べて目詰まりに対して大変厳しい条件となるだけではなく、従来のような染料インクを使用し、吐出口径も大きなものに較べて安定したインク滴噴射が難しいという問題がある。そこで、ここでは本発明のような液体噴射記録装置のヘッドの駆動方法を検討した。
使用したへッドは表8に示すH4〜H6のヘッドであり、使用インクはR5である。また、参考ヘッドに使用したインクは染料インクであり、その組成は、グリセリン…18.0%、エチルアルコール…4.7%、水…75.0%、染料(アシッドレッド35)…2.3%のものである。
これらのヘッドおよびインクを使用し、ヘッドH4〜H6は、インク噴射の駆動電圧は18V〜24V、駆動パルス幅は6.5μs、駆動周波数は12kHzとして、参考ヘッドはインク噴射の駆動電圧は28V〜30V、駆動パルス幅は7μs、駆動周波数は3kHzとして、安定噴射の条件を調べた。ここでいう安定とは、良好なインク滴が形成され、ゆらぎのない飛翔が行われることをいう。結果を表9に示し、表10に参考例を示す。
以上の結果より、本発明のように従来にない微細な吐出口をもつインクジェットヘッドで、顔料インクを安定して噴射するためには、その飛翔速度が5m/sより上の速度になるように駆動条件を設定してインクに吐出作用力を加える必要があることがわかる。また、従来よりある大きな吐出口径のヘッドで、染料インクを使用するものは、多少飛翔速度が遅くても安定であることがわかる。これは、従来よりある大きな吐出口径のヘッドから吐出されるインク滴は、その質量も大きいため、外乱の影響を受けにくいのに対して、本発明のように、従来にない微細な吐出口径のヘッドから吐出されるインク滴は、その質量が非常に小さくなるため、外乱の影響を受けやすくなるので、ある程度速い速度で噴射を行うようにしないと安定してインク滴噴射ができないためと考えられる。なお、この実験はいわゆるバブルインクジェットヘッドによって行っているが、ピエゾ方式のヘッドであっても、同様にその飛翔速度が5m/sより上の速度になるように駆動条件を設定してインクに吐出作用力を加える必要があることはいうまでもない。
バブルインクジェット型記録ヘッドの一例を説明するための図である。 バブルインクジェット方式のインクジェットのインク滴吐出の原理を説明するための図である。 ノズル板を有するインクジェットヘッドの例を示す図である。 吐出口の外側コーナー部分の吐出部がr形状(円形状)の場合の例を示す図である。 吐出口の外側コーナー部分の吐出部がc形状(面取り形状)の場合の例を示す図である。 吐出口の外側コーナー部分の吐出部がシャープな形状(直角形状)の場合の例を示す図である。
符号の説明
1…蓋基板、2…発熱体基板、3…記録液体流入口、4…吐出口、5…流路溝、6…共通液室、7…個別リード電極、8…共通リード電極、9…発熱体、10…インク、10′…インク柱、11…気泡、12…液滴。

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  1. 吐出口が、流路の端部がそのまま吐出口となっているもしくは流路の端部に別途吐出口部を形成した吐出口であり、かつ、該吐出口はその大きさがФ25μm以下、もしくは開口面積が500μm2未満であるとともに、その奥行き部分の距離tを有するような微細な吐出口から記録液体を液滴として吐出、飛翔させ、被記録体に付着させて記録を行う液体噴射記録ヘッドにおいて、前記記録液体は、大きさがDp(μm)であるような顔料微粒子を分散させてなる記録液体であり、その微粒子の大きさDpがDp/t≦0.01であるとともに、その微粒子の大きさDpの下限を0.03μmとした記録液体であり、前記液滴の飛翔速度を5〜13m/secとして噴射することを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
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