最初に、本発明が適用されるインクジェットの構成および原理について説明するが、前述のように、インクジェット記録法は各種の方式がある。ここでは、代表例として、バブルインクジェット型の例で説明するが、いうまでもなく本発明はこの方式に限定されるものではなく、全てのインクジェット記録法に適用されるものである。ただし、各種のインクジェット記録法の中でも、インクを加熱して気泡を発生させるいわゆるバブルインクジェット記録法は、インクが過酷な条件にさらされる(ヒートサイクルがある)ため、それにともなう劣化,化学反応の促進,顔料の分散不安定等の面から他のインクジェット記録法よりも、よりいっそう目詰まり等のインクジェットにとって好ましくない技術課題がある。本発明は、このような過酷な条件にさらされるバブルインクジェット記録法にとって、特に好適に適用されるものである。
図1は、バブルインクジェット型記録ヘッドの一例を説明するための図で、図1(A)はヘッド斜視図、図1(B)はヘッドを構成する蓋基板の斜視図、図1(C)は該蓋基板を裏側から見た斜視図、図1(D)は発熱体基板の斜視図であり、図中、1は蓋基板、2は発熱体基板、3は記録液体流入口、4は吐出口、5は流路、6は液室を形成するための領域、7は個別(独立)の制御電極、8は共通電極、9は発熱体である。
ここで蓋基板1は、ガラス基板や金属基板にエッチング等の手法によって、流路5や液室6を形成して製作できるが、最も好適な製作方法は、プラスチックの成形によって形成する手法である。これは最初の金型製作にややコストがかかるものの、その後は大量に生産できるため、1個あたりの製作費を非常に低くできる。その際、本発明では、後述するが、使用するプラスチックの硬さを適切に選ぶことにより吐出口4の部分の損傷,摩耗をなくし、安定したインク滴吐出を得ている。
図2は、バブルインクジェット方式のインクジェットのインク滴吐出の原理を説明するための図である。
図2(A)は定常状態であり、吐出口面でインク10と表面張力と外圧とが平衡状態にある。
図2(B)は発熱体9が加熱されて、発熱体9の表面温度が急上昇し隣接インク層に沸騰現象が起きるまで加熱され、微小気泡11が点在している状態にある。
図2(C)は発熱体9の全面で急激に加熱された隣接インク層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、気泡11が成長した状態である。この時、吐出口内の圧力は、気泡の成長した分だけ上昇し、吐出口面での外圧とのバランスがくずれ、吐出口よりインク柱10′が成長し始める。
図2(D)は気泡11が最大に成長した状態であり、吐出口面より気泡の体積に相当する分のインクが押し出される。この時、発熱体9には電流が流れていない状態にあり、発熱体9の表面温度は降下しつつある。気泡11の体積の最大値は電気パルス印加のタイミングからやや遅れる。
図2(E)は気泡11がインクなどにより冷却されて収縮を開始し始めた状態を示す。インク柱10′の先端部では押し出された速度を保ちつつ前進し、後端部では気泡の収縮に伴って吐出口内圧の減少により吐出口面から吐出口内へインクが逆流してインク柱10′にくびれ10″が生じている。
図2(F)はさらに気泡11が収縮し、発熱体9の面にインク10が接し、発熱体面がさらに急激に冷却される状態にある。吐出口面では、外圧が吐出口内圧より高い状態になるためメニスカスが大きく吐出口内に入り込んできている。インク柱の先端部は液滴12になり、記録紙の方向へ8〜13m/secの速度で飛翔している。
図2(G)は吐出口にインクが毛細管現象により再び供給(リフィル)されて図2(A)の状態にもどる過程で、気泡は完全に消滅している。
図3は、図1に示したヘッドとは違い、流路の先端部分に別途ノズル板20を設けたもので、図3(A)はノズル板20を取り付ける前の状態、図3(B)は取り付けた後の状態を示している。この場合も、このノズル板は、樹脂(プラスチック)フィルムに、例えば、エキシマレーザーによってノズル21を穿孔したり、あるいは金属のエッチング,エレクトロフォーミング,打ち抜き加工等の手法で形成されるが、その材料はその硬さを後述のように適切に選ぶ必要がある。
以上が熱を利用したバブルインクジェット型記録ヘッドの一般的な構成,原理であるが、前述のように本発明は、この方式に限定されるものではなく、全てのインクジェット記録法に適用されるものである。
本発明は、このようなインクジェット記録法に使用する記録液体(インク)を耐水性や耐光性が優れた顔料を記録液体の着色剤として使用するものである。しかしながら、この顔料を記録液体の着色剤として使用した場合、顔料は染料のように液媒体中に溶解するのではなく、分散しているため、液媒体中での安定性が悪く、インク中の顔料の凝集,沈降,分離の発生やノズル部の目詰まりを生じさせるという問題がある。とりわけノズル部の目詰まりは、インクが噴射しなくなるため、インクジェットにとっては致命的問題である。
本発明は、これを解決するために、インクを構成する材料ならびにノズル部の構成および使用する顔料粒径ならびにインク中の顔料含有量などを鋭意検討したものである。本発明では顔料インクを前提に考えている。すなわち、記録液体中の着色剤は、水などの溶媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。
また、本発明は、上記のように、インクジェット記録法に使用する記録液体(インク)を耐水性や耐光性が優れた顔料を記録液体の着色剤として使用するものであるが、しかしながら、この顔料を記録液体の着色剤として使用した場合、顔料は液媒体中に分散している砥粒のような存在であり、インクを大量使用した場合など、インクジェットヘッドのインクの通り道を、損傷させたり摩耗させたりするという問題がある。とりわけ吐出口部分の傷,摩耗はインク滴吐出性能に影響を及ぼすため問題となる。
本発明は、これを解決するために、吐出口部分を構成する材料の硬さやインク流量ならびにノズル部の顔料粒径などを鋭意検討したものである。
本発明に好適に適用される黒色顔料インクとしては、例えば、中性あるいは塩基性のpHを有する黒色顔料を、第3級アミンの塩あるいは第4級アンモニウム基を有するアクリル酸エステルモノマーあるいはアクリルアミドモノマーを少なくとも構成成分とする水溶性高分子を用いて分散処理してなるものであり、他の色相のインク,例えば、イエロー,マゼンタ及びシアン等のインクについても、これらの色相の顔料を、カルボキシル基あるいはスルホン基を水溶性基として有するアニオン系高分子分散剤を用いて分散処理してなるものである。
なお、ここでいう黒色顔料のpHとは、一般に、カーボンブラックの物性測定法に用いられているのと同様に、純水中に顔料を分散させた場合の溶液のpH値をいう。
また、記録に用いる被記録材が普通紙である場合においては、該普通紙に対するインクの界面張力において、黒色顔料インクの界面張力が、カラーインクの界面張力よりも高いこと、更には、普通紙に対するインクの浸透速度において、黒色顔料インクの浸透速度が、カラーインクの浸透速度よりも遅いことが好ましい。
以上のようなインクを用いて普通紙にカラー記録を行うと、定着性よく、濃度も高く、境界滲みの少ない画像を得ることができる。また、透明性を有する被記録材に記録を行った場合でも鮮明な投影画像が得られる。そして、いうまでもないが、顔料インクであるため、従来の染料インクを用いる場合に較べて、光や水に対する抵抗性は非常に優れたものとなる。
本発明で用いられる高分子分散剤は、主としてビニルモノマーの重合によって得られるものであって、得られる重合体の少なくとも一部を構成するカチオン性モノマーとしては、下記のような第3級アミンモノマーの塩及びこれらの第4級化された化合物が挙げられる。
すなわち、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート[CH2=C(CH3)-COO-C2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート[CH2=CH-COO-C2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート[CH2=C(CH3)-COO-C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート[CH2=CH-COO-C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアクリルアミド[CH2=CH-CON(CH3)2]、N,N−ジメチルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)-CON(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド[CH2=CH-CONHC2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)-CONHC2H4N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド[CH2=CH-CONH-C3H6N(CH3)2]、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド[CH2=C(CH3)-CONH-C3H6N(CH3)2]等である。
第3級アミンの場合において、塩を形成する化合物としては、塩酸,硫酸,酢酸等が挙げられ、4級化に用いられる化合物としては、塩化メチル,ジメチル硫酸,ベンジルクロライド,エピクロロヒドリン等が挙げられる。この中で、塩化メチル,ジメチル硫酸等が分散剤を調製するうえで好ましい。
以上のような第3級アミンの塩、あるいは第4級アンモニウム化合物は水中ではカチオンとして振る舞い、中和された条件では酸性が安定溶解領域である。これらモノマーの共重合体中での含有率は20〜60重量%の範囲が好ましい。
上記高分子分散剤の構成に用いられるその他のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、長鎖のエチレンオキシド鎖を側鎖に有するアクリル酸エステル等のヒドロキシ基を有するアクリル酸エステル、スチレン系モノマー等の疎水性モノマー類、及びpH7近傍の水に溶解可能な水溶性モノマーとして、アクリルアミド類,ビニルエーテル類,ビニルピロリドン類,ビニルピリジン類,ビニルオキサゾリン類が挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン,スチレン誘導体,ビニルナフタレン,ビニルナフタレン誘導体,(メタ)アクリル酸のアルキルエステル,アクリロニトリル等の疎水性モノマーが用いられる。共重合によって得られる高分子分散剤中において水溶性モノマーは、共重合体を水溶液中で安定に存在させるために15〜35重量%の範囲で用い、かつ疎水性モノマーは、共重合体の顔料に対する分散効果を高めるために20〜40重量%の範囲で用いることが好ましい。
本発明のブラックインクに使用されるカーボンブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7)としては、#2600,#2300,#990,#980,#960,#950,#900,#850,#750,#650,MCF−88,MA−600,#95,#55,#52,#47,#45,#45L,#44,#40,#33,#32,#30,#25,#20,#10,#5(以上、三菱化学製)、Printex95,Printex90,Printex85,Printex80,Printex75,Printex45,Printex40,PrintexP,Printex60,Printex300,Printex30,Printex35,Printex25,Printex200,PrintexA,PrintexG,PrintexL6,PrintexL(以上、デグッサ製)、Raven850,Raven780ULTRA,Raven760ULTRA,Raven790ULTRA,Raven520,Raven500,Raven410,Raven420,Raven430,Raven450,Raven460,Raven890,Raven1020(以上、コロンビア製)、Regal 415R,Regal 330R,Regal 250R,Regal 995R,Monarch800,Monarch880,Monarch900,Monarch460,Monarch280,Monarch120(以上、キャボット製)等が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,C.I.ピグメントイエロー2,C.I.ピグメントイエロー3,C.I.ピグメントイエロー12,C.I.ピグメントイエロー13,C.I.ピグメントイエロー14,C.I.ピグメントイエロー16,,C.I.ピグメントイエロー17,C.I.ピグメントイエロー73,C.I.ピグメントイエロー74,C.I.ピグメントイエロー75,C.I.ピグメントイエロー83,C.I.ピグメントイエロー93,C.I.ピグメントイエロー95,C.I.ピグメントイエロー97,C.I.ピグメントイエロー98,C.I.ピグメントイエロー114,C.I.ピグメントイエロー128,C.I.ピグメントイエロー129,C.I.ピグメントイエロー151,C.I.ピグメントイエロー154等が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5,C.I.ピグメントレッド7,C.I.ピグメントレッド12,C.I.ピグメントレッド48(Ca),C.I.ピグメントレッド48(Mn),C.I.ピグメントレッド57(Ca),C.I.ピグメントレッド57:1,C.I.ピグメントレッド112,C.I.ピグメントレッド123,C.I.ピグメントレッド168,C.I.ピグメントレッド184,C.I.ピグメントレッド202等が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1,C.I.ピグメントブルー2,C.I.ピグメントブルー3,C.I.ピグメントブルー15:3,C.I.ピグメントブルー15:34,C.I.ピグメントブルー16,C.I.ピグメントブルー22,C.I.ピグメントブルー60,C.I.バットブルー4,C.I.バットブルー60等が挙げられる。
以上の他に、レッド,グリーン,ブルーその他の3原色以外の中間色が必要とされる場合には、以下のような顔料を単独あるいは併用して用いることが好ましい。例えば、C.I.ピグメントレッド209,C.I.ピグメントレッド122,C.I.ピグメントレッド224,C.I.ピグメントレッド177,C.I.ピグメントレッド194,C.I.ピグメントオレンジ43,C.I.バットバイオレット3,C.I.ピグメントバイオレット19,C.I.ピグメントグリーン36,C.I.ピグメントグリーン7,C.I.ピグメントバイオレット23,C.I.ピグメントバイオレット37,C.I.ピグメントブルー15:6,C.I.ピグメントブルー209等が挙げられる。
また、カラーインク中には下記に挙げるような染料を共存させてもよい。イエローインクに用いられる染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11,C.I.アシッドイエロー17,C.I.アシッドイエロー23,C.I.アシッドイエロー25,C.I.アシッドイエロー29,C.I.アシッドイエロー42,C.I.アシッドイエロー49,C.I.アシッドイエロー61,C.I.アシッドイエロー71,C.I.ダイレクトイエロー12,C.I.ダイレクトイエロー24,C.I.ダイレクトイエロー26,C.I.ダイレクトイエロー44,C.I.ダイレクトイエロー86,C.I.ダイレクトイエロー87,C.I.ダイレクトイエロー98,C.I.ダイレクトイエロー100,C.I.ダイレクトイエロー130,C.I.ダイレクトイエロー142等が挙げられる。
マゼンタインクに用いられる染料としては、C.I.アシッドレッド1,C.I.アシッドレッド6,C.I.アシッドレッド8,C.I.アシッドレッド32,C.I.アシッドレッド35,C.I.アシッドレッド37,C.I.アシッドレッド51,C.I.アシッドレッド52,C.I.アシッドレッド80,C.I.アシッドレッド85,C.I.アシッドレッド87,C.I.アシッドレッド92,C.I.アシッドレッド94,C.I.アシッドレッド115,C.I.アシッドレッド180,C.I.アシッドレッド254,C.I.アシッドレッド256,C.I.アシッドレッド289,C.I.アシッドレッド315,C.I.アシッドレッド317,C.I.ダイレクトレッド1,C.I.ダイレクトレッド4,C.I.ダイレクトレッド13,C.I.ダイレクトレッド17,C.I.ダイレクトレッド23,C.I.ダイレクトレッド28,C.I.ダイレクトレッド31,C.I.ダイレクトレッド62,C.I.ダイレクトレッド79,C.I.ダイレクトレッド81,C.I.ダイレクトレッド83,C.I.ダイレクトレッド89,C.I.ダイレクトレッド227,C.I.ダイレクトレッド240,C.I.ダイレクトレッド242,C.I.ダイレクトレッド243等が挙げられる。
シアンインクに用いられる染料としては、C.I.アシッドブルー9,C.I.アシッドブルー22,C.I.アシッドブルー40,C.I.アシッドブルー59,C.I.アシッドブルー93,C.I.アシッドブルー102,C.I.アシッドブルー104,C.I.アシッドブルー113,C.I.アシッドブルー117,C.I.アシッドブルー120,C.I.アシッドブルー167,C.I.アシッドブルー229,C.I.アシッドブルー234,C.I.アシッドブルー254,C.I.ダイレクトブルー6,C.I.ダイレクトブルー22,C.I.ダイレクトブルー25,C.I.ダイレクトブルー71,C.I.ダイレクトブルー78,C.I.ダイレクトブルー86,C.I.ダイレクトブルー90,C.I.ダイレクトブルー106,C.I.ダイレクトブルー199等が挙げられる。
ただし、これらの染料を共存させる場合も、顔料粒径ならびにインク中の顔料含有量などは後述する範囲内に入っている必要がある。
本発明において、前記したカチオン系水溶性高分子を分散剤として使用して顔料を分散する際に、物性面から好ましい顔料としては、等電点が6以上に調節された顔料、あるいは顔料を特徴づける単純水分散体のpHが中性あるいは塩基性のpHを有するもの、例えば、7以上〜10であるような顔料が分散性の点で好ましい。これは顔料とカチオン系水溶性高分子とのイオン的な相互作用力が強いためと理解されている。
以上のような材料を用いて顔料の微粒子水性分散体を得るには、以下のような方法を採用することが好ましい。
(1)カーボンブラックの場合:カーボンブラックをカチオン分散剤溶液中にてプレミキシング処理を行い、引き続き高ずり速度の分散装置でミリングし、希釈後、粗大粒子を除去するために遠心分離処理を行う。その後、所望のインク処方のための材料を添加し、場合によっては、エイジング処理を施す。しかる後、最終的に所望の平均粒径を有する顔料分散体を得るために遠心分離処理を行う。このようにして作製されるインクのpHは3〜9の範囲とするのが好ましい。
(2)その他の色相の顔料の場合:アニオン系分散剤を用いる以外は、基本的にはカーボンブラックと同様である。但し、小粒径にするのが困難な有機顔料の場合には、顔料合成と同時、あるいは合成途中段階で界面活性剤処理を行い、顔料粒子の結晶成長を抑制し、濡れ性を高めた加工顔料を使用することが望ましい。このようにして作製したインクのpHは5〜10の範囲とするのが好ましい。カーボン黒色インク及びカラーインク何れの場合でも、その平均粒径は0.02〜1μmの範囲であることが分散体の安定性上必須であり、好ましくは、0.03〜0.4μmの範囲である。これは分散体の安定性という観点からの必須条件であるが、微細な開口からインクを吐出させるといういわゆるインクジェットに必須という観点から、この平均粒径を検討すると微細な開口すなわち吐出口での目詰まりを考慮に入れる必要があるが、これは後述する。なお、良好なインクの表面張力は10〜60dyn/cmの範囲である。
これらのインクを用いて普通紙へ記録する場合には、記録される文字の鮮明さの点から、黒色顔料インクは用紙との界面張力が高いことが好ましい。一方、カラーインクは、カラーインク間の相互拡散による滲み(カラーブリード)を少なくするために、速い浸透速度を持つことがよい結果となるので、用紙との界面張力が低いことが好ましい。このように、黒色インクが酸性で高い界面張力を持ち、カラーインクが塩基性で低い界面張力を持っていると、黒色インクが、カラーインク側に流れ込む傾向が少なくなり、黒色インクとカラーインクのカラーブリードは事実上全くなくなる。なお、上記のインクと用紙の界面張力は、例えば、動的濡れ性試験機として市販されている装置(Wilhelmy法を用いた装置で、製品名称WET-3000レスカ株式会社製)等によって測定される量である。界面張力が高いとは、普通紙に対する接触角が1秒〜数秒の短時間においても、90゜以上であることを指し、界面張力が低いとは、90゜以下であることを指している。
本発明で使用するカラーインクに使用される分散剤は、アルカリ可溶性の水溶性脂樹であり、重量平均分子量は1,000〜30,000であり、好ましくは3,000〜15,000の範囲である。具体的には、スチレン,スチレン誘導体,ビニルナフタレン,ビニルナフタレン誘導体,アクリル酸のアルキルエステル,メタクリル酸のアルキルエステル等の疎水性モノマーと、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸及びその脂肪族アルコールエステル,アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸及びそれらの誘導体等の親水性モノマーからなる共重合体及びそれらの塩等である。共重合体はランダム,ブロック,グラフト等の何れの構造を有していてもよく、酸価は100〜430、好ましくは、130〜360の範囲である。
本発明に使用される分散剤としては、更に、ポリビニルアルコール,カルボキシメチルセルロース等の水溶性ポリマー,ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物,ポリスチレンスルホン酸等の水溶性樹脂も使用することが可能である。しかし、アルカリ可溶性の水溶性脂樹の方が分散液の低粘度化が可能で、分散も容易であるという利点がある。これらの分散剤の使用量は、選択した顔料と分散剤とを用いて実験的に決定されるが、顔料に吸着せず溶解している樹脂の量は、インク中で4重量%以下であることが好ましい。
上記分散剤を水系にて用いるには塩基が必要である。そのために好適な塩基としては、エタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミン,N−メチルエタノールアミン,N−エチルジエタノールアミン,2−アミノ−2−メチルプロパノール,2−エチル−2−アミノ−1,3−プロパンジオール,2−(2−アミノエチル)エタノールアミン,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン,アンモニア,ピペリジン,モルフォリン,β−ジヒドロキシエチル尿素等の有機塩基,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化リチウム等の無機塩基が挙げられる。最適な塩基種は選択した顔料及び分散剤の種類によって異なるが不揮発性で安定、かつ保水性の高いものが好ましい。用いる塩基の量は基本的には分散剤の酸価から計算される量から、それを中和するに必要な塩基量として夫々用いられる。場合によっては、酸の当量を上回る量の塩基を用いる場合がある。それは、分散性向上,インクのpH調整,記録性能の調整,保湿性の向上等の目的で行う。
本発明においてインクに用いられる溶剤としては、水と混和性がある有機溶剤類である。有機溶剤としては下記の如く3群に分けることができる。即ち、保湿性が高く,蒸発しにくく,親水性に優れる第1群の溶剤、有機性があり疎水性の表面への濡れ性がよく、蒸発乾燥性もある第2群の溶剤、適度の濡れ性を有し低粘度の第3群の溶剤(一価アルコール類)である。
第1群に属する溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジメチルスルホキシド、ダイアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール300、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ヘンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
第2群に属する溶媒としては、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1−ブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。
第3群に属する溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。以上のような水溶性溶媒の総量は、おおむねインク全体に対して5〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。
本発明のインクを構成する各水性顔料インクには、界面活性剤,pH調整剤,防腐剤等を添加することが可能である。界面活性剤は浸透性の高いカラーインクの調製,バブルインクジェット方式における発熱ヒーター,吐出ノズル表面への濡れ性の調節等に有益である。材料としては既存の市販品から適宜選択することができる。以上のような材料から構成される各インクの物性をまとめると、黒色インクは、高い表面張力(概略30〜60dyn/cm)を有し、一方、カラーインクは低い表面張力(概略10〜40dyn/cm)を有することが好ましい。
以上のような、本発明における黒色水性顔料インクとカラーインクを使用して普通紙に対してカラー記録を行うと、黒の文字等が鮮明であり、画像やグラフと黒の文字が隣り合っていても相互滲みがなく夫々明瞭である。
本発明のカラーインクを使用する場合、被記録材としては、一般の普通紙(例えば、上質紙,中質紙あるいはボンド紙等),コート紙,OHP用のプラスチックフィルム等の何れでも使用することができる。前述のように、本発明は全てのインクジェット記録方式に適用できるが、中でも、熱エネルギーによるインクの発泡現象によってインクを吐出させるタイプのインクジェット記録方法に使用する場合に特に好適であり、インクの吐出が極めて安定し、サテライトドットの発生等が生じないという特徴がある。但し、この場合に熱的な物性、例えば、比重,熱膨張係数及び熱伝導率等を調整する必要が生ずることもある。
次に、本発明のより特徴的な点について説明する。前述のように、本発明は、微細な開口からインクを吐出させるといういわゆるインクジェット記録方式に関するものであり、インクジェット記録方式にとって、吐出口部における目詰まりは致命的なものである。これは染料インクを使用するものより、本発明のように、溶媒中に微粒子を分散させた顔料インクを使用するものでは、顔料が染料のように溶解しているわけではなく分散しているだけなので、より目詰まりが起こりやすい。さらに、本発明では、従来にはない微細な吐出口径、例えば、吐出口径がΦ25μm以下(面積でいうならば500μm2未満)であるようなインクジェット記録ヘッドを想定しているので、この目詰まりは大変深刻な問題である。
ところで目詰まりとは、微細な開口からインクが噴射するというインクジェット記録方式の原理そのものに由来するものである。つまり、開口が微細であるがゆえに生じるものである。よって、その開口の大きさと、いわばインク中の異物とでもいうべき顔料の大きさには密接な関係がある。
本発明は、この点に鑑み、吐出口の大きさと顔料粒子の大きさに着目し、目詰まりの生じにくさとそれらの関係を見い出したものである。具体的には、顔料粒子径を変えたインクを調合し、吐出口の大きさがわかっているインクジェット記録ヘッドを使用し、一定時間インク噴射を行った後、一定時間放置し、インク噴射を再開し、吐出口の目詰まりの有無を調べた。その場合、吐出口の完全閉塞だけではなく、部分的な目詰まりおよびそれに至る事前の兆候(わずかな目詰まり)も目詰まりとみなしてテストした。
使用したヘッドは、図1に示したような構成の熱エネルギーを使用するインクジェット記録方式のヘッドである。但し、図1に示したヘッドは、流路の先端がそのまま吐出口になっているものを示したが、実験に使用したものは、図3に示すように、この先端に流路の配列密度4と同じ配列密度で形成したノズル21を有するノズル板20を設けたものである(図3(A)はノズル板20を取り付ける前の斜視図、図3(B)は取り付けた後の斜視図である)。また、その吐出口(ノズル)の数も、図1,図3に示したものは説明を簡単にするため吐出口が4個しかないもの、あるいは部分的に示したものであるが、実際に使用したのは吐出口の数が128個で、その配列密度が400dpiのものでる。また、発熱体の大きさは22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V,駆動パルス巾は6.5μs,駆動周波数は12kHzとした。なお、記録ヘッドはH1〜H4まで用意した(それぞれの吐出口径をH1=Φ25μm,H2=Φ20μm,H3=Φ15μm,H4=Φ10μmとした)。また、そのノズル板の厚さは、全て40μmとした。
使用したインクは、以下のような組成および製法によるものであるが、顔料粒径が0.005〜1μmまで変えたものを準備し、吐出口径の異なるH1〜H4と組み合わせてテストした。また、一定時間インク噴射を行った後の放置の条件は、温度40℃,湿度30%の雰囲気中で10時間放置である。
インクの製法を以下に示す。
スチレン/メタクリル酸/ブチルアクリレートからなる、酸価325、重量平均分子量11,000、ガラス転移温度84℃の共重合体Pをカリウムを用いて溶解した水溶液を用い、以下のカーボンブラック分散体D1〜D10を作製した。
・共重合体P水溶液(固形分20重量%) 40部
・カーボンブラック MCF−88(三菱化学製) 24部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロピルアルコール 10部
・水 130部
これらの材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の液の粘度は17cP,pH=9.6の粗分散体を得た。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、また、遠心分離の条件を種々変えることによって顔料の平均粒径を0.005〜1μmまで変えた分散体D1〜D17を得た。これらの分散体を水にて希釈し、粘度2.5cP,表面張力45dyn/cm,pH=9.5の黒色塩基性インクジェット用インクB1〜B17を得た。最終調製物の固形分は約7重量%であった。なお、これらのインク中の最終的な顔料含有率は5重量%である。なお、平均粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置ELS−800(大塚電子製)にて測定を行い、平均量は自己相関関数の初期勾配から得られる値で示した。
これらのインクB1〜B17と上記の吐出口径を変えたヘッドH1〜H4を組み合わせて、目詰まりの発生状況を調べた結果を表1〜表4に記す。
但し、表1はヘッドH1(吐出口径Do=Φ25μm)の場合
表2はヘッドH2(吐出口径Do=Φ20μm)の場合
表3はヘッドH3(吐出口径Do=Φ15μm)の場合
表4はヘッドH4(吐出口径Do=Φ10μm)の場合
を示す。
以上の結果より、顔料粒径Dpと吐出口径Doとは、0.001≦Dp/Do≦0.01の関係を満足するようにすれば目詰まりのない安定したインク噴射が得られることがわかる。しかし、表4に示すように、Dp/Doが0.002の場合、インクがやや不安定であるので、本願では、インクを安定して製造できる範囲とする。なお、実験では、吐出口が丸いもので行っているが、他の形状(多角形)の場合は、その面積比で換算した範囲内にすればよい。
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように本発明は、顔料インクを前提に考えている。すなわち、記録液体中の着色剤は、水などの溶媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。よって、その顔料含有量や固形分を含む顔料の分散剤のインク中の含有量は、目詰まりに対して大きな影響をおよぼす。そこで、ここでは、それらの含有量と吐出口の目詰まりの関係について調べた。
使用したヘッドは、前記ヘッドH2(吐出口径Do=Φ20μm)と同じものであり、顔料粒径Dp=0.03μmのインク(B4)において、その顔料含有量と顔料分散剤としてのスチレン/メタクリル酸/ブチルアクリレートからなる共重合体Pの量を変えて、最終的なインク中の固形分の量と目詰まりのしやすさを調べた。目詰まりテストの方法などは、前述の方法と同じである。結果を表5に示す。
以上の結果より、インク中の顔料含有量は1〜10重量%にすればよく、それより多くすると目詰まりが生ずることがわかる。また、顔料含有量だけでなく、顔料も含む最終的な固形分の量も15重量%以下にしなければならないこともわかる。なお、顔料含有量が1重量%の場合は目詰まりの心配はないが、このインクだけで使用する場合は濃度が低くて実用的ではない。ただし、複数の種類のいわゆる濃淡インクを用いる記録装置の淡いインクとして好適に使用できる。また、このインクだけで使用する場合であっても、染料を添加して濃度不足分を補うことは可能である。なお、実験では、吐出口が丸いもので行っているが、他の形状(多角形)の場合は、その面積比で換算した範囲内にすればよい。
次に、本発明のさらに他の特徴について説明する。本発明が適用されるインクジェット記録ヘッドは、一般的にはカラー記録に好適に適用されるので、ここでは、本発明が好適に適用されるカラーインクジェット記録ヘッドの構成を説明する。
図4は、本発明のインクジェットヘッドの一例を示す図で、本発明では、図示のように、1枚の共通の発熱体基板部30の上に、複数色のインク吐出エレメント31Y,31M,31Cを形成してなる。この例では、複数色のインクとして、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)の3色の例を示している。なお、この例、およびこれ以降の例で、各色のインク吐出エレメント,吐出口は、図を簡単にするため、各色4個あるいは5個で説明するが、実際には、各色64〜512個が好適に使用される。
図5は、図4の記録ヘッド部に、それぞれY,M,Cのインクが供給されるようなインクタンク部40を設けた図を示す。なお、この図は、記録ヘッド部とインクタンク部とで構成される本発明のインクジェット記録ヘッドの概念を示す図であり、実際のもの(後述する)とは異なる。
図6は、本発明によるインクジェットヘッドをキャリッジ上に搭載して記録を行う、いわゆるシリアルプリンタの構成を示す図で、図中、50は本発明によるインクジェットヘッド、51は記録紙、52はキャリッジ、53はキャリッジのガイドロッド、54はキャリッジを移動させるためのネジ棒、55は記録紙搬送ローラ、56は記録紙おさえコロで、周知のように、縦方向(記録紙51の移動方向)にY,M,Cと1列に配列された記録ヘッド50(図示例の場合、図5に示したヘッドが搭載されている)を、記録紙51の前をX方向に往復運動しながら記録を行う。本発明では、キャリッジを1回走査するごとに記録紙を図の矢印Y方向に移動していく。従って、1回の走査で記録される領域は、ヘッドの吐出エレメント、つまり、吐出口の列の長さ分だけである。また、Y,M,Cは縦方向に1列に並んでいるので、2回以上の走査によって、Y,M,Cのインクによる印写領域がオーバーラップすることにより、はじめてフルカラー記録を行うことができる。
なお、以上の説明は、Y,M,Cの3色の例を示したが、本発明では、これにブラック(B)を加えた4色の吐出口列を持つインクジェットにも適用される。図7にその例を示すが、この場合、図示のように、図4に示した例に、更にブラック用のインク吐出エレメント31Bを付加したものとなる。
図8は、4色の吐出口列を持つ他の例である。図4には、各色のインク流路を独立に製作した例を示しているが、この図は、4色分の流路を一体的にプラスチック60の成形で製作した例である。こうすることにより、そのアセンブリコストは著しく下げることができる。
通常、カラーインクジェット記録装置は、図1に示したような1つの記録ヘッドに1色のインクを充填し、これを複数色分、図9のように、キャリッジ70上に並べて構成する。71B,71C,71M,71Yはそれぞれブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各カラーインクを吐出するための記録ヘッドである。これは、一つには目詰まり対策等の信頼性確保のためである。例えば、図5のように4色のインクを充填したヘッド71B,71C,71M,71Yを独立にキャリッジ70上に並べて構成した場合、仮にどれか1色のヘッドが目詰まりを起こした場合、その1色のヘッドを交換することにより、もとの状態に回復させることができる。
一方、本発明では、図4〜図8に示した、複数色にインクを吐出させるための記録ヘッドを一体的に形成している。前述のように、目詰まりを起こした場合の回復措置を考えると、図9に示したように、複数色のインクを充填したヘッドを独立にキャリッジ上に並べて構成するほうが有利ではあるが、本発明では前述のように、その顔料粒径,含有率あるいはインク中の固形分の量を鋭意検討して最適化したため、目詰まりの不安は解消している。よって、図5に示したような複数色のインクを充填したヘッドを独立にキャリッジ上に並べて構成する必要はなく、アセンブリコストの低減,コンパクト性の実現,複数色のドット位置精度の高精度化のために、図4〜図8に示したように、複数色のインクを吐出させるための記録ヘッドを一体的に形成している。
なお、ここでいう一体的形成とは、図4〜図8に示したバブルインクジェットヘッドの例のように発熱体基板を共通の1枚の基板にした例のみならず、図10に示すように複数色のインクを充填したヘッド、例えば、71B,71C,71M,71Yを積層して一体化したものも含む。この例では、流路の先端72B,72C,72M,72Yに共通の1枚のノズル板73を設けた例を示しており(図10(A)はノズル板73を取り付ける前、図10(B)は取り付けた後の斜視図)、この場合は、高精度に穿孔,アセンブリ化,一体化された共通の1枚のノズル板73を設けているため、製造コストの低減のみならず、複数色のドット位置精度も高精度が得られる。
図11は、複数色(この例では、Y,M,Cの3色)のインクを噴射できるヘッドユニットをインク容器部と一体的に形成した例であり、図11(A)は全体斜視図、図11(B)は分解斜視図で、図中、100はヘッドユニット、101はヘッドチップ、102はプリントサーキット、103は上蓋、104はインク容器部、105(105Y,105M,105C)はステレスメッシュフィルタ、106(106Y,106M,106C)はインクを含んだフォーム材、107は底蓋、この例では、ヘッド部およびそれに連絡するインク容器部を内部で3つに分けて、Y,M,Cのインクを別々に充填したものである。このように、複数色を一体型にしたヘッドユニットは、非常にコンパクトに形成できるので、キャリッジに搭載する際、軽量小型であるため、小さなキャリッジですみ、また、キャリッジを駆動するモータも小型,省エネルギーが実現できる。
図12は、図11に示した複数色のインク容器一体型ヘッドユニットにおいて、インク容器部のみを分離可能な構成とした場合の例を説明するための図で、図12(A)はヘッドユニット110の全体斜視図、図12(B)は該ヘッドユニット110を記録ヘッド部111とインク容器部112を分離した状態の斜視図を示す。これにより、カラーイメージ印写で大量にインクを消費してもインク容器部112のみを交換すればよいので、コスト低減が実現する。しかも、図11で説明したカラーの一体型ヘッドの利点はそのまま維持される。
図13は、上記のような一体型ヘッドユニットで、インクの色ごとにインク容器部を分離できるようにした例を説明するための図で、図13(A)は全体斜視図、図13(B)はヘッドユニット110の記録ヘッド部111と各色のインク容器部112(112Y,112M,112C)を分離した状態の斜視図を示す。このようにすることのメリットは、カラーイメージ印写では、必ずしもY,M,Cのインクが同じスピードで消費されるわけではないので、もし、図11,図12の例において、どれかのインクがなくなった時に他のインクが残っていても、ヘッドユニットあるいは一体型インク容器全体を交換しなければならず、ランニングコストの面で不利であるのに対して、本発明のように各色のインク容器を別々にしておくことにより、なくなってインクの容器のみ交換することで、より一層のランニングコストの低減が実現する。
前述のように、目詰まりとは、微細な開口からインクが噴射するというインクジェット記録方式の原理そのものに由来するものである。つまり、開口が微細であるがゆえに生じるものである。よって、その開口すなわち吐出口の各ディメンション,形状,性状と、いわばインク中の異物とでもいうべき顔料の大きさとには密接な関係がある。
本発明は、この点に鑑み、吐出口の各ディメンション,形状,性状と顔料粒子の大きさに着目し、目詰まりの生じにくさとそれらの関係を見い出したものである。具体的には、顔料粒子径を変えたインクを調合し、各ディメンション,形状,性状がわかっているインクジェット記録ヘッドを使用し、一定時間インク噴射を行った後、一定時間放置し、インク噴射を再開し、吐出口の目詰まりの有無を調べた。その場合、吐出口の完全閉塞だけではなく、部分的な目詰まりおよびそれに至る事前の兆候(わずかな目詰まり)も目詰まりとみなしてテストした。
使用したヘッドは、図1に示したような構成の熱エネルギーを使用するインクジェット記録方式のヘッドである。ただし図1に示したヘッドは、流路の先端がそのまま吐出口になっているものを示したが、実験に使用したものは、図3に示すように、この先端に流路の配列密度と同じ配列密度で形成したノズル21を有するノズル板20を設けたものである。また、その吐出口(ノズル)の数も、図1,図3に示したものは、説明を簡単にするため吐出口が4個しかないものであるが、実際に使用したのは吐出口の数が128個で、その配列密度が400dpiのものである。また、発熱体の大きさは22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V,駆動パルス幅は6.5μs,駆動周波数は12kHzとした。なお、記録ヘッドは吐出口径をΦ25μmとし、吐出口部の厚さ(吐出口部の奥行き部分の距離)を変えた3種類のヘッド(H1〜H3)を用意した(それぞれ吐出口部の厚さを、t=40μm(H1),50μm(H2),60μm(H3)とした)。
使用したインクは、以下のような組成および製法によるものであるが、顔料粒径が0.005〜4μmまで変えたものを準備し、吐出口径の異なるヘッドH1〜H3と組み合わせてテストした。また、一定時間インク噴射を行った後の放置の条件は、温度40℃,湿度30%の雰囲気中で10時間放置である。
インクの製法を以下に示す。
スチレン/アクリル酸/エチルアクリレートからなる、酸価290、重量平均分子量5,000、ガラス転移温度77℃の共重合体Pをモノエタノールアミンを用いて溶解した水溶液を用い、アントラキノン系顔料ピグメントレッド−177分散体D1〜D20を作製した。
・共重合体P水溶液(固形分15重量%) 40部
・ピグメントレッド−177(クロモフタールレッドA2B,
チバガイギー製) 24部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロピルアルコール 10部
・水 130部
これらの材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の液の粘度は30cP,pH=9.8の粗分散体を得た。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、また、遠心分離の条件を種々変えることによって顔料の平均粒径を0.005〜4μmまで変えた分散体D1〜D20を得た。これらの分散体を水,ジエチレングリコール,エチレングリコールモノブチルエーテル(60:25:15重量比)にて希釈し、粘度3cP,表面張力40dyn/cm,pH=9.5の赤色塩基性インクジェット用インクR1〜R20を得た。最終調製物の固形分は約7.5重量%であった。なお、これらのインク中の最終的な顔料含有率は5重量%である。
なお、平均粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置ELS−800(大塚電子製)にて測定を行い、平均量は自己相関関数の初期勾配から得られる値で示した。
これらのインクR1〜R20と上記の吐出口部の厚さ(吐出口部の奥行き部分の距離)を変えたヘッドを組み合わせて、目詰まりの発生状況を調べた結果を表6〜表8に記す。
以上の結果より、顔料粒径Dpと吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)tとは、Dp/t≦0.01の関係を満足するようにすれば目詰まりのない安定したインク噴射が得られることがわかる。なお、ヘッドの構成によっては、流路と吐出口(ノズル)が連続的につながっているような場合もあるが、本発明でいうところの吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)tとは、実質的にノズルを構成する部分の距離,厚さを意味する。
次に本発明の他の特徴について説明する。前述のように、本発明の記録液体中の着色剤は、水などの解媒に溶解している染料ではなく、顔料である微粒子が分散しているものである。前述の結果では、このようないわゆる顔料インクであっても、顔料粒径と吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)との関係をある範囲内にすれば、目詰まりが生じないことがわかったが、このような顔料インクを使って、インク滴噴射を行うには、目詰まりだけではなく、安定した噴射およびそれによって紙等の被記録体上にインク滴を狙いの位置に高精度に付着させる必要がある。
ここでは、目詰まりに多いに関係する吐出口の奥行き部分の距離(ノズル厚さ)tと吐出口面から紙等の被記録体までの距離Lの関係について調べた。
使用したへッドは前述のH1〜H3のヘッドであり、吐出口径がΦ25μmであり、その数が128個で、その配列密度が400dpiのものである。また、発熱体の大きさは22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V,駆動パルス幅は6.5μs,駆動周波数は12kHzである。
使用したインクは前述の赤色塩基性インクジェットヘッド用インクR5であり、被記録体としては三菱製紙製マットコートNMを使用し、ヘッドの吐出口面から被記録体までの距離を変えて印写実験を行い、この被記録体上における画素位置精度を評価することにより、高画質記録(高ドット位置精度)が得られるかどうか評価した。なお、本発明のように吐出口が小さく、かつ顔料インクを使用し、従来に較べて噴射がしにくいヘッドでは、少しでも良好な条件を見い出すために、重力作用も影響をおよぼすと考え、鉛直方向に対してほぼ垂直方向にインク滴を噴射する場合と、ほぼ鉛直方向の2通りの噴射方向を評価した。その結果を表9に示す。
なお、表9において、○は狙いのドット位置からのズレが1/4ドット以内に入った場合、△は狙いのドット位置からのズレが1/4ドット以上,1/2ドット以内に入った場合、×は狙いのドット位置からのズレが1/2ドット以上ズレた場合である。なお、1ドットの大きさは約Φ60μmである。
以上の結果より、本発明のように吐出口が小さく、かつ顔料インクを使用し、従来に較べて噴射がしにくいヘッドであっても、吐出口から被記録面までの距離を100t以下とすることにより、安定噴射が行え、高精度なドット位置精度が得られ高画質記録が実現することがわかる。とりわけ噴射方向を鉛直方向にし、重力作用も利用することにより、その効果が増すこともわかる。
なお、本発明は、必ずしも完全に鉛直にすることに限定されるものではなく、重力作用を利用すればより効果的であるということをいわんとするものである。よって、本発明を実際に利用する場合には、プリンタの構成上の制約からその噴射方向を完全に鉛直にできなくても、少しでも重力作用が利用できるように下方を向けて噴射するようになっていればよい。
次に、本発明のより特徴的な点について説明する。前述のように、本発明は、微細な開口からインクを吐出させるといういわゆるインクジェットヘッド記録方式に関するものであり、インク中に含まれる顔料によって生じる吐出口部分の損傷,摩耗がインク滴吐出性能に影響を及ぼすためそれを解決するためになされたものである。
特に、近年インクジェット記録の高画質化,高精細化が進み、使用されるヘッドの吐出口(ノズル)も、従来は、Φ33μm〜Φ34μm(面積でいうと900μm2程度)からΦ50μm〜Φ51μm(面積でいうと2000μm2程度)のものが一般的であったが、より微細な吐出口(例えば、Φ25μm以下、面積でいうと500μm2未満)が要求されてきている。
その際、従来のように比較的その吐出口径が大きなものは、多少の損傷,摩耗であっても、もともとの吐出口が大きいため、その大きさに占める損傷,摩耗の比率がほとんど無視できる程度のものであり、インク滴吐出性能(噴射の安定性,インク質量均一性等)にもほとんど影響を及ぼさず、問題とならない。しかしながら、より微細な吐出口(例えば、Φ25μm以下、面積でいうと500μm2未満)となった場合には、わずかの損傷,摩耗であっても、微細な吐出口であるため、その大きさに占める損傷,摩耗の比率が無視できず、インク滴吐出性能(噴射の安定性,インク質量均一性等)に影響を及ぼすようになる。
ところで、このような吐出口部の損傷,摩耗は、吐出口部を構成する材料の硬さを適切に選ぶことにより、回避可能と考えられる。本発明は、この点に注目し、各種材料の硬さと損傷,摩耗の関係を実験的に調べたものである。具体的には、図3に示したようなヘッドで、そのノズル板を材料を変えて形成し、一定時間インク噴射を行うことにより、吐出口部に損傷,摩耗が生じるかどうか、また、インク滴吐出性能の劣化が生じるかどうかを調べたものである。使用したヘッドは、図3に示したような構成の熱エネルギーを使用するインクジェット記録方式のヘッドであるが、図3に示したものは、説明を簡単にするため吐出口を4個しか示していない。実際に使用したのは吐出口の数が128個で、その配列密度が400dpiのものである。
また、発熱体の大きさは、22μm×90μmで、その抵抗値は110Ωであり、インク噴射の駆動電圧は24V、駆動パルス幅は6.5μs、駆動周波数は12kHzとした。なお、その吐出口部分(ノズル部分)は、各種樹脂材料や金属材料で形成したノズル板を変えたヘッドを準備して実験した。また、吐出口径は、Φ25μm(H1)、Φ20μm(H2)のものを用意した。
比較参考例として、吐出口径がΦ50μmのもの(参考ヘッド)も用意した。この場合は、吐出口の数が48個で、その配列密度が180dpiのものである。そして、この発熱体の大きさは40μm×180μmで、その抵抗値は120Ωであり、インク噴射の駆動電圧は30V、駆動パルス幅は7μs、駆動周波数は1.8kHzとした。ノズル板の厚さは、すべて40μmとした。なお、各種材料の硬さはロックウェル硬さで評価したが、実際の硬さ測定は、ノズル板で行っているわけではなく、ノズル板を形成している材料と同じ材料で試験片を作って測定したものである。
ノズル板を形成した材料を硬さとともに表10に示す。硬さは主にロックウェルMスケールで示したが、一部金属材料はBスケールで示した(BスケールはMスケール表示するものより硬いものに適用)。
使用したインクは、以下のような組成および製法によるものであるが、顔料粒径が0.02〜1μmまで変えたものを準備し、吐出口径の異なるヘッドおよび吐出口部の材料の異なるヘッドと組み合わせてテストした。
インクの製法を以下に記す。スチレン/アクリル酸/ブチルアクリレートからなる、酸価265、重量平均分子量8,000、ガラス転移温度67℃の共重合体Pをエタノールアミンを用いて溶解した水溶液を用い、ピグメントレッド122分散体D1〜D10を作成した。
・共重合体P水溶液(固形分15重量%) 40部
・ピグメントレッド122(ファーストゲンスーハーマジェンタRT,
大日本インキ製) 24部
・ジエチレングリコール 20部
・イソプロピルアルコール 10部
・水 130部
これらの材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間分散処理を行った。分散後の液の粘度は18cp、pH=9.5の粗分散体を得た。この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去し、また遠心分離の条件を種々変えることによって顔料の平均粒径を0.02〜1μmまで変えた分散体D1〜D7を得た。この微分散液を、水,ジエチレングリコールおよびエチレングリコールモノブチルエーテル(60:30:10重量比)にて希釈し、粘度3.3cps、表面張力35dyne/cm、pH9.3のマゼンタ色塩基性インクジェット用インクM1〜M7を得た。最終調製物の固形分は約7.5重量%であった。なお、これらのインク中の最終的な顔料含有率は5重量%である。なお、平均粒径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置ELS−800(大塚電子製)にて測定を行い、平均量は自己相関関数の初期勾配から得られる値で示した。
これらのインクM1〜M7と上記の吐出口径の異なるヘッドおよび吐出口部の材料の異なるヘッドと組み合わせて、1つの吐出口あたり、5×108滴となるようにし、128ノズル全てインク滴吐出させた。そして、吐出開始直後と終了後で、吐出口部に損傷,摩耗が生じ、その結果、インク滴吐出性能の劣化が生じているかどうかを調べた結果を、表11,表12,表13に記す。なお、表中、○は吐出部口の損傷や摩耗は見られず、インク滴吐出性能の劣化も生じなかったもの、△は吐出口部の損傷や摩耗は見られるが、インク滴吐出性能の劣化が生じなかったもの、×は吐出口部の損傷や摩耗は見られ、インク滴吐出性能の劣化が生じたものである。
以上の結果より、比較参考例のように大きな吐出口のヘッドでは、吐出口部に多少の損傷や摩耗が生じても、吐出性能の劣化にまでは至らないことが分かる。一方、本発明が対象としている吐出口径がΦ25μm以下であるように非常に微細な場合には、吐出口部に損傷や摩耗が生じるとインク滴吐出性能が劣化するため、安定したインク滴吐出を行うためには、吐出口部に損傷や摩耗が生じないような条件を選ばなければならないことがわかる。なお、吐出口の形状が丸ではなく矩形、台形等の場合であっても、本発明は好適に適用される。その場合はΦ25μm以下は面積相当で約500μm2未満であり、本発明は丸以外の形状であってもその面積が約500μm2未満であるような吐出口のものに適用される。
具体的には、表11,表12よりわかるように、吐出口部を形成する樹脂材料を、ロックウェルMスケールで65〜120の材料(S3〜S11)を使用すればよい。また、顔料粒径が0.02μm〜0.2μmの範囲のインクを使用すればよい。なお、サンプルS1,S2のようにロックウェルMスケールで65未満であっても、顔料粒径を0.02μmのインクを使用すればインク滴吐出性能劣化は生じないが、使用できるインクが非常に限定されるため、あまり実用的とはいえない。
なお、以上の説明は全てバブルインクジェットの例で説明したが、本発明はこれに限定されることなく、微細な吐出口を有し、顔料インクを使用する全てのインクジェットに適用されるものである。また、記録ヘッド例も単色のインクの例をあげて説明しているが、カラーインクジェットにも適用できるのはいうまでもない。
1…蓋基板、2…発熱体基板、3…記録液体流入口、4…吐出口、5…流路溝、6…共通液室、7…個別リード電極、8…共通リード電極、9…発熱体、10…インク、10′…インク柱、11…気泡、12…液滴、30…発熱体基板、31Y,31M,31C,31B…インク吐出エレメント、40…インクタンク、50…記録ヘッド、51…記録紙、52…キャリッジ、53…ガイドロッド、54…ネジ棒、55…記録紙送りローラ、56…記録紙おさえコロ、70…キャリッジ、71B,71C,71M,71Y…ヘッド、72B,72C,72M,72Y…吐出口、73…ノズル板、100…ヘッドユニット、101…ヘッドチップ、102…FPC、103…上蓋、104…インク容器部、105…フィルタ、106…インク含浸用フォーム材、107…底蓋、110…ヘッドユニット、111…ヘッド部、112…インク容器部。