JP2004337968A - プレス成形品のスプリングバック量測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プレス成形品全体のスプリングバック量を正確に把握する。
【解決手段】プレスされた後のプレス成形品の形状を3次元形状測定器で測定して測定データを取得し(S1)、次にそのプレス成形品の設計データ(形状データ)をCAD装置から取得し(S2)、測定データと設計データとに対して応力に関するFEM解析を行う(S3)。測定データから得られたFEM解析結果と設計データから得られたFEM解析結果を表示部に表示し(S4)、FEM解析結果に基づき応力比が一定値以上の領域を抽出する(S5)。測定データまたは設計データの一方を移動させて抽出した領域を重ね合わせ(S6)、抽出した領域を重ね合わせた状態で、測定データから形成されるプレス成形品と設計データから形成されるプレス成形品との位置関係を一方のプレス成形品の全体に渡って測定する(S7)。
【選択図】 図2
【解決手段】プレスされた後のプレス成形品の形状を3次元形状測定器で測定して測定データを取得し(S1)、次にそのプレス成形品の設計データ(形状データ)をCAD装置から取得し(S2)、測定データと設計データとに対して応力に関するFEM解析を行う(S3)。測定データから得られたFEM解析結果と設計データから得られたFEM解析結果を表示部に表示し(S4)、FEM解析結果に基づき応力比が一定値以上の領域を抽出する(S5)。測定データまたは設計データの一方を移動させて抽出した領域を重ね合わせ(S6)、抽出した領域を重ね合わせた状態で、測定データから形成されるプレス成形品と設計データから形成されるプレス成形品との位置関係を一方のプレス成形品の全体に渡って測定する(S7)。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形後、プレス成形品のスプリングバックから生ずるプレス成形品表面と金型表面との間の隙間間隔を、プレス成形品全体について正確に把握することができる、プレス成形品のスプリングバック量測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のパネルを製造する場合、大型のプレス機によって板材をプレスし、その板材を所望の形状に成形している。板材は弾性を有しているため、プレス直後にスプリングバックを起こして金型の表面形状と成形後のパネルの表面形状とが一致しなくなる。
【0003】
スプリングバックの程度によっては車体の組立工程などの後工程において組み立て精度不良などの悪影響を及ぼす。このため、従来、下記特許文献1、特許文献2に開示されているように、スプリングバック量を計算式によって求め、金型の形状をこのスプリングバック量を相殺する形状にしたり、下記特許文献3に開示されているように、被成形品の物理的特性に応じてスプリングバック量を予測し、予測したスプリングバック量に基づいて金型の寸法を補正したりしている。
【0004】
最近では、スプリングバック量を予測することに替え、実際のスプリングバック量を測定している。スプリングバック量の測定は次のようにして行う。
【0005】
まず、成形後のパネルに小さな穴を複数開け、そのパネルを成形に用いた金型上にポンチとパネルのポンチ穴とを合わせて載置する。この状態で金型の表面とパネルの金型側の表面との隙間間隔をパネルの穴から測定器具を入れて測定する。
【0006】
また、他の方法としては、三次元形状測定装置によりパネルの全体形状を測定し、測定後の形状データと設計時の形状データ(CADデータ)とを比較する。両データの比較を行うには基準となる位置が決められていなければならないため、パネルに基準穴を設けておき、この基準穴の位置を1つ目の基準とし、そして、スプリングバックを比較的起こし難いパネルの特徴的な形状部分(塑性変形されるL字形状、コ字形状部分)を2つ目の基準とし、これらの2つの位置を基準に測定後の形状データと設計時の形状データとが比較される。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−104161号公報
【特許文献2】
特開平5−138258号公報
【特許文献3】
特開平8−243657号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、成形後のパネルに小さな穴をあけてスプリングバック量を測定する従来の方法にあっては、穴を開けることがパネル全体の剛性を低下させることになるので、正確なスプリングバック量を求めるためには、あまり多くの穴を開けることはできず、そのため測定点数が限定される。また、穴をあける際には、パネルが変形しないように慎重に開口作業を行う必要があるので、スプリングバック量の測定には時間がかかる。
【0009】
また、三次元形状測定装置により測定したパネルの形状と設計時のパネルの形状とを基準穴および特徴的な形状部分を基準に比較する従来の方法にあっては、基準穴や特徴的な形状部分とはいえども、スプリングバックが必ずしもこれらの部分を基準に生じるのではないことから、基準穴や特徴的な形状部分の位置が設計時の形状データが示す位置からずれていることがあり、このずれがスプリングバック量の測定結果に大きな影響を与える。
【0010】
本発明は、このような従来の技術の欠点を解消するために成されたものであり、プレス成形後、プレス成形品のスプリングバックから生ずるプレス成形品表面と金型表面との間の隙間間隔を、プレス成形品全体について正確に把握することができる、プレス成形品のスプリングバック量測定方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決し、目的を達成するため、発明にかかるスプリングバック量測定方法は、プレスされた後のプレス成形品の形状を3次元形状測定器で測定して測定データ(形状データ)を取得し、次にそのプレス成形品の設計データ(形状データ)をCAD装置から取得し、測定データと設計データとに対して応力に関するFEM解析を行う。FEM解析は、プレスの際、プレス成形品の各部にどの程度の応力がかかるのかを形状データに基づいて解析するための手法である。
【0012】
測定データから得られたFEM解析結果と設計データから得られたFEM解析結果を表示部に表示し、FEM解析結果に基づき応力比が一定値以上の領域を抽出する。測定データまたは設計データの一方を移動させて抽出した領域を重ね合わせ、抽出した領域を重ね合わせた状態で、測定データから形成されるプレス成形品と設計データから形成されるプレス成形品との位置関係を一方のプレス成形品の全体に渡って測定する。位置関係の測定結果は、プレス成形品のスプリングバック量を示している。
【0013】
【発明の効果】
本発明のプレス成形品のスプリングバック量測定方法によれば、測定データおよび設計データから得られたFEM解析結果に基づいて応力比が一定以上の領域をそれぞれ抽出し、それらの領域を重ね合わせた上で、測定データから形成されるプレス成形品と設計データから形成されるプレス成形品との位置関係を測定するようにしたので、プレス成形品のスプリングバック量を極めて高精度に測定することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明方法を実行するスプリングバック量測定装置の概略構成ブロック図である。本実施の形態においては、プレス成形品として車両のフードアウターのドローパネルを例示する。
【0015】
スプリングバック量測定装置10は、3次元形状測定装置12、CADデータ記憶部14、表示部16、スプリングバック量測定処理部20を備えている。
【0016】
3次元形状測定装置12は、プレス成形後のドローパネルの3次元形状を高精度に測定できる装置であり一般的な装置を使用する。測定されたドローパネルの測定データ(形状データ)は3次元形状測定装置12内の図示しない記憶装置に記憶される。
【0017】
CADデータ記憶部14は、図示していないCAD装置が備えている記憶装置でありドローパネルの設計データ(形状データ)が記憶されている。
【0018】
表示部16は、CRT、液晶ディスプレイパネル等の表示装置であり、測定データに基づく(プレス後の)ドローパネル、設計データに基づくドローパネルをカラー表示する。
【0019】
スプリングバック量測定処理部20は、本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法を実行するものであり、その方法は次のような手順で実行される。
【0020】
図2および図3は、スプリングバック量測定処理部20によって実行されるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の手順を示すフローチャートである。
【0021】
まず、スプリングバック量測定処理部20は、ドローパネルの形状を測定することによって得られた測定データを3次元形状測定装置12から取得する(S1)。次に、スプリングバック量測定処理部20は、CADデータ記憶部14からドローパネルの設計データを取得する(S2)。すなわち、スプリングバック量測定処理部20は、実際にプレスされた後のドローパネルの形状データと設計されたドローパネルの形状データとを取得する。
【0022】
スプリングバック量測定処理部20は、取得した測定データと設計データとに対して応力に関するFEM解析を行う(S3)。FEM解析は、応力解析の手法として良く用いられているので、その解析についての詳細な説明は省略するが、これらのデータに対してFEM解析を施すと、プレスでその形状を形成する際にドローパネルのどの部分にどの程度の応力がかかるのか、すなわち応力分布がわかる。
【0023】
スプリングバック量測定処理部20は、測定データから得られたFEM解析結果と設計データから得られたFEM解析結果とを表示部16に表示する(S4)。FEM解析結果は、測定データおよび設計データから形成されるドローパネル各部の応力比の大きさに応じて、各ドローパネルを濃淡化またはカラーマップ化する画像処理が施され、表示部16に表示される。カラーマップ化する画像処理においては、ドローパネルを、例えば応力比の大きな領域から小さな領域に向けて表示色をその大きさに応じて赤から緑に連続的に変化させて表示するようにしているので、表示部16に表示されているドローパネルの各領域の色の違いを見るだけで応力の分布状態を把握することができる。ここで、応力比とは最小応力に対する最大応力の比である。
【0024】
スプリングバック量測定処理部20は、FEM解析結果に基づき応力比が一定値以上の領域を抽出する(S5)。本実施の形態では、応力比が0.8以上の領域を抽出している。応力比の大きな領域を抽出するのは、その領域がプレス金型の形状を正確に転写しているからであり、この領域を基準に実際にプレスされたドローパネルと設計データから形成されるドローパネルのフィッティングを行えば、ドローパネルのスプリングバック量が正確に把握できるからである。なお、抽出される領域が極端に狭かったり広かったりした場合には正確なフィッティングを行うことが困難になるので、領域の抽出をするための応力比の大きさは、適度な面積の領域が検出されるように、ドローパネルの形状に応じて最適な値が存在する。オペレータは、表示部16に同時に表示されている2つのドローパネル(測定データと設計データから形成される)を見ながら、領域を抽出するための応力比の大きさを変え、フィッティングに適した面積の領域を抽出する。
【0025】
次に、スプリングバック量測定処理部20は、測定データまたは設計データの一方を移動させて抽出した領域を重ね合わせる(S6)。具体的には、表示部16に同時に表示されている、測定データから形成されるドローパネルまたは設計データから形成されるドローパネルのいずれか一方を、オペレータの指示に従って移動させ、応力比の大きな領域として抽出された両領域を重ね合わせる。
【0026】
そして最後に、スプリングバック量測定処理部20は、抽出した2つの領域を重ね合わせた状態で、測定データと設計データから形成されるドローパネル相互の位置関係を測定する(S7)。具体的には、設計データから形成されるドローパネルの形状に対して実際にプレスされたドローパネルの形状がどの程度のずれを生じているのかを、プレスされたドローパネルの全面に渡って測定する。以上の処理によって、ドローパネル全体の正確で詳細なスプリングバック量が容易に得られることになる。
【0027】
図3のフローチャートでは、上記S7のステップの処理の手順をさらに詳しく記載してある。このフローチャートに基づいてドローパネル相互の位置関係を測定する処理を説明する。
【0028】
スプリングバック量測定処理部20は、抽出した領域を重ね合わせた状態で、2つのドローパネルを定められた方向から一定の間隔で切断する(S71)。次に、スプリングバック量測定処理部20は、切断された部分におけるドローパネル相互のずれ量を測定する。ずれ量とは、一方のドローパネルを他方のドローパネルに重ね合わせるために要する一方のドローパネルの移動量である(S72)。2つのドローパネルをある方向から切断すると、設計データから形成されるドローパネルに対して実施にプレスされたドローパネルが切断面でどの程度ずれているのかが簡単に把握できる。なお、ドローパネルの形状にかかわらず正確なずれ量の測定を可能にするためには、設計データから形成されるドローパネル表面形状に対しその法線方向からドローパネルを切断することが望ましい。
【0029】
そして、スプリングバック量測定処理部20は、ドローパネルの表面全体の切断が完了したか否かを判断する(S73)。ドローパネルの表面全体の切断が完了していなければ(S73:NO)、S71のステップに戻って、次の切断面のずれ量を測定する。ドローパネルの表面全体の切断が完了していれば(S73:YES)、処理を終了する。なお、ドローパネルのスプリングバック量を高精度で測定するためには、ドローパネルの切断間隔を狭めたり、切断する方向も一方向からだけでなく、例えば直行する2方向から測定したりする。
【0030】
【実施例】
本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の処理手順は以上の通りである。次に、本発明の実施例を従来の技術の比較例とともに説明する。
【0031】
ドローパネルのスプリングバック量の測定精度評価をするために、量産車種の中から車種A、車種Bの2車種を選び、これらの車種におけるドローパネルのスプリングバック量を本発明の方法を用いて求めた。なお、車種Bについては、成形条件のクッション圧を変えた2種類(B1:75t、B2:220t)のドローパネルについてスプリングバック量を求めた。
【0032】
本発明の方法では、上記のように、実際にプレスされたドローパネルを3次元形状測定装置で測定し、その測定によって得られた測定データと、CAD装置で作成されたドローパネルの設計データとを、応力比の大きい領域でフィッティングし、そのフィッティングした測定データと設計データをもとにスプリングバック量(本実施例ではスキ量とした)を求める。
【0033】
本実施例では、3次元形状測定装置として3Dスキャナー社製W70を用い、FEM解析ソフトにはAuto Form Ver3を用いた。FEM解析を行うに当たっては、ドローパネルのブランクの流入量、ドローパネル表面の延び量のデータを用いて、実際にプレスされたドローパネルの形状とFEM解析の結果得られたドローパネルの形状とのマッチングをとり、実際のプレス成形の状態を完全に再現できるFEM解析結果をもとに応力比を表示した。また、本実施例では、応力比の大きい領域の選択やフィッティングが容易にできるように、FEM解析結果は応力分布のカラーマップを用いた。応力比の大きな領域を抽出するための閾値として0.8の数値を用いた。抽出した領域のフィッティングにはイメージソフトウェア社製のサーフェサーという一般的な解析ソフトウェアを使用した。
【0034】
比較例1としては、成形後のドローパネルに小さな穴をあけてスプリングバック量を測定するという従来の最も原始的な手法を用いた。この方法では、図7(a)に示したドローパネルの1番から11番の位置に直径6mmの穴をドリルで開け、これを全体的に安定した状態となるようにして同図(b)に示した成形ポンチ上に載せ、各穴に測定器を差し込んで、ドローパネルとポンチとの間の隙間間隔、すなわちスキ量を測定した。この手法は非常に高精度の測定が可能であるが、ドローパネルが変形しないように慎重に穴を開けなければならず、これを成形ポンチ上に載置して測定が終了するまでには多くの時間を要する。
【0035】
比較例2としては、三次元形状測定装置により測定したパネルの形状と設計時のパネルの形状とを基準穴および特徴的な形状部分を基準に比較するという従来の手法を用いた。この方法では、実施例と同様、3次元形状測定装置として3Dスキャナー社製W70を用い、ドローパネルのプレス成形時に同時に開けた基準穴と特徴的な形状部分とを基準として、測定の結果得られたドローパネルの測定データとドローパネルの設計データとのフィッティングを行った。フィッティングには、実施例と同様、イメージソフトウェア社製のサーフェサーという一般的な解析ソフトウェアを使用し、フィッティングはディスプレイ上で行った。フィッティング作業はドローパネルの基準穴と特徴的な形状部分をオペレータが指定することによって行われるが、どの部分を指定するのかはオペレータの判断に委ねられるので、測定時間は余りかからないものの、高精度の安定した測定結果を得ることは難しい。
【0036】
本実施例と比較例2のスキ量の測定は、フィッティング後の測定データと設計データとをスペースビジョンと称するCADソフトに取り込み、ディスプレイ上で両データの断面を作成し、その断面での測定データと設計データとの差を求めることで行った。このCADソフトはドローパネル全体の形状をデータ化することができ、ディスプレイ上でその差を測定することができるので、必要な部位のスキ量をディスプレイ上で容易に検証することができた。
【0037】
以上のような条件の下、車種A、車種Bの成形条件1(車種B1)、車種Bの成形条件2(車種B2)のそれぞれについて、比較例1、比較例2、本実施例の比較結果を図4〜図6に示した。
【0038】
まず、車種Aについては図4に示すような結果が得られた。
【0039】
図4(a)は、比較例2において基準穴と形状面で測定データと設計データとをフィッティングした結果を示したドローパネルのカラーマップであり、図4(b)は、本実施例において応力比が0.8以上の領域についてフィッティングした結果を示したドローパネルのカラーマップである。また、図4(c)は、本実施例においてFEM解析の結果得られたドローパネルのカラーマップである。
【0040】
(a)の基準穴の位置は、(b)、(c)を見るとカラーマップの色が薄い部分であり、その位置にはあまり応力がかかっていない。したがって、この位置はスプリングバックにより跳ね上がっている可能性がある。この跳ね上がりの現象は測定結果に反映されることになるから、この位置を基準とする比較例2の場合には、フィッティングの時点で大きなずれが生じている。
【0041】
すき量の測定結果を示した(d)のグラフを見れば明らかなように、本実施例の測定結果と比較例2の測定結果はかけ離れている。一方、本実施例の測定結果は、高精度の測定結果が得られるとされている比較例1と同一の傾向および数値となっている。なお、(d)のグラフにおいて、横軸の数字は図7(a)の穴の位置を示しており、比較例2と本実施例もこれらの位置と同一位置のすき量を測定した。
【0042】
比較例2の場合、その測定結果は、ドローパネルの形状を見て、経験上感じ取ることができるイメージとも異なっており、比較例2の手法は全体のスプリングバック量を把握するには不適切であることがわかる。(d)のグラフにおいてすき量がプラスになるかマイナスになるかは、スプリングバック対策として金型の形状を見直す上では非常に重要な要素であるが、比較例1、本実施例と比較例2とはプラスマイナスも全く逆の異なる結果になっている。
【0043】
したがって、このグラフの結果から言えることは、比較例1および本実施例では高精度の測結果が得られるが、比較例2では高精度の測定結果が得られないということである。
【0044】
このように、本発明方法を用いれば、ドローパネルに穴を開けたり、すき量を実測したりすることなく、応力比の大きな2つの領域を抽出しそれらをフィッティングするだけで信頼性の高いすき量のデータをディスプレイ上で得ることができる。このすき量のデータは金型の見込み量を決定する上でも十分に信頼できるデータであり、ドローパネル全体がデータ化されるので、必要な特定部位のすき量も瞬時にディスプレイ上で確認できる。
【0045】
次に、車種B1については図5に、車種B2については図6に、それぞれ示すような結果が得られた。これらの図によれば、比較例2の測定結果は、本実施例、比較例1の場合と大きく異なっており、信頼性の高い測定結果が得られないことがわかる。一方、本実施例の測定結果は、比較例1の測定結果と近似しており、高精度の測定結果が得られることがわかる。
【0046】
以上のように、本発明方法によれば、応力比の高い領域を合わせこみ領域として選択し、その領域を基準にプレス成形品全体の合わせ込みを行うため、プレス成形品のスプリングバック量を極めて高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実行するスプリングバック量測定装置の概略構成ブロック図である。
【図2】本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の手順を示すフローチャートである。
【図4】車種Aにおける本実施例と比較例1、比較例2との測定結果の説明に供する図である。
【図5】車種B1における本実施例と比較例1、比較例2との測定結果の説明に供する図である。
【図6】車種B2における本実施例と比較例1、比較例2との測定結果の説明に供する図である。
【図7】比較例1の説明に供する図である。
【符号の説明】
10…スプリングバック量測定装置、
12…3次元形状測定装置、
14…CADデータ記憶部、
16…表示部、
20…スプリングバック量測定処理部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形後、プレス成形品のスプリングバックから生ずるプレス成形品表面と金型表面との間の隙間間隔を、プレス成形品全体について正確に把握することができる、プレス成形品のスプリングバック量測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のパネルを製造する場合、大型のプレス機によって板材をプレスし、その板材を所望の形状に成形している。板材は弾性を有しているため、プレス直後にスプリングバックを起こして金型の表面形状と成形後のパネルの表面形状とが一致しなくなる。
【0003】
スプリングバックの程度によっては車体の組立工程などの後工程において組み立て精度不良などの悪影響を及ぼす。このため、従来、下記特許文献1、特許文献2に開示されているように、スプリングバック量を計算式によって求め、金型の形状をこのスプリングバック量を相殺する形状にしたり、下記特許文献3に開示されているように、被成形品の物理的特性に応じてスプリングバック量を予測し、予測したスプリングバック量に基づいて金型の寸法を補正したりしている。
【0004】
最近では、スプリングバック量を予測することに替え、実際のスプリングバック量を測定している。スプリングバック量の測定は次のようにして行う。
【0005】
まず、成形後のパネルに小さな穴を複数開け、そのパネルを成形に用いた金型上にポンチとパネルのポンチ穴とを合わせて載置する。この状態で金型の表面とパネルの金型側の表面との隙間間隔をパネルの穴から測定器具を入れて測定する。
【0006】
また、他の方法としては、三次元形状測定装置によりパネルの全体形状を測定し、測定後の形状データと設計時の形状データ(CADデータ)とを比較する。両データの比較を行うには基準となる位置が決められていなければならないため、パネルに基準穴を設けておき、この基準穴の位置を1つ目の基準とし、そして、スプリングバックを比較的起こし難いパネルの特徴的な形状部分(塑性変形されるL字形状、コ字形状部分)を2つ目の基準とし、これらの2つの位置を基準に測定後の形状データと設計時の形状データとが比較される。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−104161号公報
【特許文献2】
特開平5−138258号公報
【特許文献3】
特開平8−243657号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、成形後のパネルに小さな穴をあけてスプリングバック量を測定する従来の方法にあっては、穴を開けることがパネル全体の剛性を低下させることになるので、正確なスプリングバック量を求めるためには、あまり多くの穴を開けることはできず、そのため測定点数が限定される。また、穴をあける際には、パネルが変形しないように慎重に開口作業を行う必要があるので、スプリングバック量の測定には時間がかかる。
【0009】
また、三次元形状測定装置により測定したパネルの形状と設計時のパネルの形状とを基準穴および特徴的な形状部分を基準に比較する従来の方法にあっては、基準穴や特徴的な形状部分とはいえども、スプリングバックが必ずしもこれらの部分を基準に生じるのではないことから、基準穴や特徴的な形状部分の位置が設計時の形状データが示す位置からずれていることがあり、このずれがスプリングバック量の測定結果に大きな影響を与える。
【0010】
本発明は、このような従来の技術の欠点を解消するために成されたものであり、プレス成形後、プレス成形品のスプリングバックから生ずるプレス成形品表面と金型表面との間の隙間間隔を、プレス成形品全体について正確に把握することができる、プレス成形品のスプリングバック量測定方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決し、目的を達成するため、発明にかかるスプリングバック量測定方法は、プレスされた後のプレス成形品の形状を3次元形状測定器で測定して測定データ(形状データ)を取得し、次にそのプレス成形品の設計データ(形状データ)をCAD装置から取得し、測定データと設計データとに対して応力に関するFEM解析を行う。FEM解析は、プレスの際、プレス成形品の各部にどの程度の応力がかかるのかを形状データに基づいて解析するための手法である。
【0012】
測定データから得られたFEM解析結果と設計データから得られたFEM解析結果を表示部に表示し、FEM解析結果に基づき応力比が一定値以上の領域を抽出する。測定データまたは設計データの一方を移動させて抽出した領域を重ね合わせ、抽出した領域を重ね合わせた状態で、測定データから形成されるプレス成形品と設計データから形成されるプレス成形品との位置関係を一方のプレス成形品の全体に渡って測定する。位置関係の測定結果は、プレス成形品のスプリングバック量を示している。
【0013】
【発明の効果】
本発明のプレス成形品のスプリングバック量測定方法によれば、測定データおよび設計データから得られたFEM解析結果に基づいて応力比が一定以上の領域をそれぞれ抽出し、それらの領域を重ね合わせた上で、測定データから形成されるプレス成形品と設計データから形成されるプレス成形品との位置関係を測定するようにしたので、プレス成形品のスプリングバック量を極めて高精度に測定することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明方法を実行するスプリングバック量測定装置の概略構成ブロック図である。本実施の形態においては、プレス成形品として車両のフードアウターのドローパネルを例示する。
【0015】
スプリングバック量測定装置10は、3次元形状測定装置12、CADデータ記憶部14、表示部16、スプリングバック量測定処理部20を備えている。
【0016】
3次元形状測定装置12は、プレス成形後のドローパネルの3次元形状を高精度に測定できる装置であり一般的な装置を使用する。測定されたドローパネルの測定データ(形状データ)は3次元形状測定装置12内の図示しない記憶装置に記憶される。
【0017】
CADデータ記憶部14は、図示していないCAD装置が備えている記憶装置でありドローパネルの設計データ(形状データ)が記憶されている。
【0018】
表示部16は、CRT、液晶ディスプレイパネル等の表示装置であり、測定データに基づく(プレス後の)ドローパネル、設計データに基づくドローパネルをカラー表示する。
【0019】
スプリングバック量測定処理部20は、本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法を実行するものであり、その方法は次のような手順で実行される。
【0020】
図2および図3は、スプリングバック量測定処理部20によって実行されるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の手順を示すフローチャートである。
【0021】
まず、スプリングバック量測定処理部20は、ドローパネルの形状を測定することによって得られた測定データを3次元形状測定装置12から取得する(S1)。次に、スプリングバック量測定処理部20は、CADデータ記憶部14からドローパネルの設計データを取得する(S2)。すなわち、スプリングバック量測定処理部20は、実際にプレスされた後のドローパネルの形状データと設計されたドローパネルの形状データとを取得する。
【0022】
スプリングバック量測定処理部20は、取得した測定データと設計データとに対して応力に関するFEM解析を行う(S3)。FEM解析は、応力解析の手法として良く用いられているので、その解析についての詳細な説明は省略するが、これらのデータに対してFEM解析を施すと、プレスでその形状を形成する際にドローパネルのどの部分にどの程度の応力がかかるのか、すなわち応力分布がわかる。
【0023】
スプリングバック量測定処理部20は、測定データから得られたFEM解析結果と設計データから得られたFEM解析結果とを表示部16に表示する(S4)。FEM解析結果は、測定データおよび設計データから形成されるドローパネル各部の応力比の大きさに応じて、各ドローパネルを濃淡化またはカラーマップ化する画像処理が施され、表示部16に表示される。カラーマップ化する画像処理においては、ドローパネルを、例えば応力比の大きな領域から小さな領域に向けて表示色をその大きさに応じて赤から緑に連続的に変化させて表示するようにしているので、表示部16に表示されているドローパネルの各領域の色の違いを見るだけで応力の分布状態を把握することができる。ここで、応力比とは最小応力に対する最大応力の比である。
【0024】
スプリングバック量測定処理部20は、FEM解析結果に基づき応力比が一定値以上の領域を抽出する(S5)。本実施の形態では、応力比が0.8以上の領域を抽出している。応力比の大きな領域を抽出するのは、その領域がプレス金型の形状を正確に転写しているからであり、この領域を基準に実際にプレスされたドローパネルと設計データから形成されるドローパネルのフィッティングを行えば、ドローパネルのスプリングバック量が正確に把握できるからである。なお、抽出される領域が極端に狭かったり広かったりした場合には正確なフィッティングを行うことが困難になるので、領域の抽出をするための応力比の大きさは、適度な面積の領域が検出されるように、ドローパネルの形状に応じて最適な値が存在する。オペレータは、表示部16に同時に表示されている2つのドローパネル(測定データと設計データから形成される)を見ながら、領域を抽出するための応力比の大きさを変え、フィッティングに適した面積の領域を抽出する。
【0025】
次に、スプリングバック量測定処理部20は、測定データまたは設計データの一方を移動させて抽出した領域を重ね合わせる(S6)。具体的には、表示部16に同時に表示されている、測定データから形成されるドローパネルまたは設計データから形成されるドローパネルのいずれか一方を、オペレータの指示に従って移動させ、応力比の大きな領域として抽出された両領域を重ね合わせる。
【0026】
そして最後に、スプリングバック量測定処理部20は、抽出した2つの領域を重ね合わせた状態で、測定データと設計データから形成されるドローパネル相互の位置関係を測定する(S7)。具体的には、設計データから形成されるドローパネルの形状に対して実際にプレスされたドローパネルの形状がどの程度のずれを生じているのかを、プレスされたドローパネルの全面に渡って測定する。以上の処理によって、ドローパネル全体の正確で詳細なスプリングバック量が容易に得られることになる。
【0027】
図3のフローチャートでは、上記S7のステップの処理の手順をさらに詳しく記載してある。このフローチャートに基づいてドローパネル相互の位置関係を測定する処理を説明する。
【0028】
スプリングバック量測定処理部20は、抽出した領域を重ね合わせた状態で、2つのドローパネルを定められた方向から一定の間隔で切断する(S71)。次に、スプリングバック量測定処理部20は、切断された部分におけるドローパネル相互のずれ量を測定する。ずれ量とは、一方のドローパネルを他方のドローパネルに重ね合わせるために要する一方のドローパネルの移動量である(S72)。2つのドローパネルをある方向から切断すると、設計データから形成されるドローパネルに対して実施にプレスされたドローパネルが切断面でどの程度ずれているのかが簡単に把握できる。なお、ドローパネルの形状にかかわらず正確なずれ量の測定を可能にするためには、設計データから形成されるドローパネル表面形状に対しその法線方向からドローパネルを切断することが望ましい。
【0029】
そして、スプリングバック量測定処理部20は、ドローパネルの表面全体の切断が完了したか否かを判断する(S73)。ドローパネルの表面全体の切断が完了していなければ(S73:NO)、S71のステップに戻って、次の切断面のずれ量を測定する。ドローパネルの表面全体の切断が完了していれば(S73:YES)、処理を終了する。なお、ドローパネルのスプリングバック量を高精度で測定するためには、ドローパネルの切断間隔を狭めたり、切断する方向も一方向からだけでなく、例えば直行する2方向から測定したりする。
【0030】
【実施例】
本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の処理手順は以上の通りである。次に、本発明の実施例を従来の技術の比較例とともに説明する。
【0031】
ドローパネルのスプリングバック量の測定精度評価をするために、量産車種の中から車種A、車種Bの2車種を選び、これらの車種におけるドローパネルのスプリングバック量を本発明の方法を用いて求めた。なお、車種Bについては、成形条件のクッション圧を変えた2種類(B1:75t、B2:220t)のドローパネルについてスプリングバック量を求めた。
【0032】
本発明の方法では、上記のように、実際にプレスされたドローパネルを3次元形状測定装置で測定し、その測定によって得られた測定データと、CAD装置で作成されたドローパネルの設計データとを、応力比の大きい領域でフィッティングし、そのフィッティングした測定データと設計データをもとにスプリングバック量(本実施例ではスキ量とした)を求める。
【0033】
本実施例では、3次元形状測定装置として3Dスキャナー社製W70を用い、FEM解析ソフトにはAuto Form Ver3を用いた。FEM解析を行うに当たっては、ドローパネルのブランクの流入量、ドローパネル表面の延び量のデータを用いて、実際にプレスされたドローパネルの形状とFEM解析の結果得られたドローパネルの形状とのマッチングをとり、実際のプレス成形の状態を完全に再現できるFEM解析結果をもとに応力比を表示した。また、本実施例では、応力比の大きい領域の選択やフィッティングが容易にできるように、FEM解析結果は応力分布のカラーマップを用いた。応力比の大きな領域を抽出するための閾値として0.8の数値を用いた。抽出した領域のフィッティングにはイメージソフトウェア社製のサーフェサーという一般的な解析ソフトウェアを使用した。
【0034】
比較例1としては、成形後のドローパネルに小さな穴をあけてスプリングバック量を測定するという従来の最も原始的な手法を用いた。この方法では、図7(a)に示したドローパネルの1番から11番の位置に直径6mmの穴をドリルで開け、これを全体的に安定した状態となるようにして同図(b)に示した成形ポンチ上に載せ、各穴に測定器を差し込んで、ドローパネルとポンチとの間の隙間間隔、すなわちスキ量を測定した。この手法は非常に高精度の測定が可能であるが、ドローパネルが変形しないように慎重に穴を開けなければならず、これを成形ポンチ上に載置して測定が終了するまでには多くの時間を要する。
【0035】
比較例2としては、三次元形状測定装置により測定したパネルの形状と設計時のパネルの形状とを基準穴および特徴的な形状部分を基準に比較するという従来の手法を用いた。この方法では、実施例と同様、3次元形状測定装置として3Dスキャナー社製W70を用い、ドローパネルのプレス成形時に同時に開けた基準穴と特徴的な形状部分とを基準として、測定の結果得られたドローパネルの測定データとドローパネルの設計データとのフィッティングを行った。フィッティングには、実施例と同様、イメージソフトウェア社製のサーフェサーという一般的な解析ソフトウェアを使用し、フィッティングはディスプレイ上で行った。フィッティング作業はドローパネルの基準穴と特徴的な形状部分をオペレータが指定することによって行われるが、どの部分を指定するのかはオペレータの判断に委ねられるので、測定時間は余りかからないものの、高精度の安定した測定結果を得ることは難しい。
【0036】
本実施例と比較例2のスキ量の測定は、フィッティング後の測定データと設計データとをスペースビジョンと称するCADソフトに取り込み、ディスプレイ上で両データの断面を作成し、その断面での測定データと設計データとの差を求めることで行った。このCADソフトはドローパネル全体の形状をデータ化することができ、ディスプレイ上でその差を測定することができるので、必要な部位のスキ量をディスプレイ上で容易に検証することができた。
【0037】
以上のような条件の下、車種A、車種Bの成形条件1(車種B1)、車種Bの成形条件2(車種B2)のそれぞれについて、比較例1、比較例2、本実施例の比較結果を図4〜図6に示した。
【0038】
まず、車種Aについては図4に示すような結果が得られた。
【0039】
図4(a)は、比較例2において基準穴と形状面で測定データと設計データとをフィッティングした結果を示したドローパネルのカラーマップであり、図4(b)は、本実施例において応力比が0.8以上の領域についてフィッティングした結果を示したドローパネルのカラーマップである。また、図4(c)は、本実施例においてFEM解析の結果得られたドローパネルのカラーマップである。
【0040】
(a)の基準穴の位置は、(b)、(c)を見るとカラーマップの色が薄い部分であり、その位置にはあまり応力がかかっていない。したがって、この位置はスプリングバックにより跳ね上がっている可能性がある。この跳ね上がりの現象は測定結果に反映されることになるから、この位置を基準とする比較例2の場合には、フィッティングの時点で大きなずれが生じている。
【0041】
すき量の測定結果を示した(d)のグラフを見れば明らかなように、本実施例の測定結果と比較例2の測定結果はかけ離れている。一方、本実施例の測定結果は、高精度の測定結果が得られるとされている比較例1と同一の傾向および数値となっている。なお、(d)のグラフにおいて、横軸の数字は図7(a)の穴の位置を示しており、比較例2と本実施例もこれらの位置と同一位置のすき量を測定した。
【0042】
比較例2の場合、その測定結果は、ドローパネルの形状を見て、経験上感じ取ることができるイメージとも異なっており、比較例2の手法は全体のスプリングバック量を把握するには不適切であることがわかる。(d)のグラフにおいてすき量がプラスになるかマイナスになるかは、スプリングバック対策として金型の形状を見直す上では非常に重要な要素であるが、比較例1、本実施例と比較例2とはプラスマイナスも全く逆の異なる結果になっている。
【0043】
したがって、このグラフの結果から言えることは、比較例1および本実施例では高精度の測結果が得られるが、比較例2では高精度の測定結果が得られないということである。
【0044】
このように、本発明方法を用いれば、ドローパネルに穴を開けたり、すき量を実測したりすることなく、応力比の大きな2つの領域を抽出しそれらをフィッティングするだけで信頼性の高いすき量のデータをディスプレイ上で得ることができる。このすき量のデータは金型の見込み量を決定する上でも十分に信頼できるデータであり、ドローパネル全体がデータ化されるので、必要な特定部位のすき量も瞬時にディスプレイ上で確認できる。
【0045】
次に、車種B1については図5に、車種B2については図6に、それぞれ示すような結果が得られた。これらの図によれば、比較例2の測定結果は、本実施例、比較例1の場合と大きく異なっており、信頼性の高い測定結果が得られないことがわかる。一方、本実施例の測定結果は、比較例1の測定結果と近似しており、高精度の測定結果が得られることがわかる。
【0046】
以上のように、本発明方法によれば、応力比の高い領域を合わせこみ領域として選択し、その領域を基準にプレス成形品全体の合わせ込みを行うため、プレス成形品のスプリングバック量を極めて高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実行するスプリングバック量測定装置の概略構成ブロック図である。
【図2】本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明にかかるプレス成形品のスプリングバック量測定方法の手順を示すフローチャートである。
【図4】車種Aにおける本実施例と比較例1、比較例2との測定結果の説明に供する図である。
【図5】車種B1における本実施例と比較例1、比較例2との測定結果の説明に供する図である。
【図6】車種B2における本実施例と比較例1、比較例2との測定結果の説明に供する図である。
【図7】比較例1の説明に供する図である。
【符号の説明】
10…スプリングバック量測定装置、
12…3次元形状測定装置、
14…CADデータ記憶部、
16…表示部、
20…スプリングバック量測定処理部。
Claims (6)
- プレス成形品の形状を測定して測定データを取得するステップと、
前記プレス成形品の設計データを取得するステップと、
前記測定データと前記設計データとに対して応力に関するFEM解析を行うステップと、
前記測定データから得られたFEM解析結果と前記設計データから得られたFEM解析結果とを表示するステップと、
前記FEM解析結果に基づき応力比が一定値以上の領域を抽出するステップと、
前記測定データまたは前記設計データの一方を移動させて抽出した領域を重ね合わせるステップと、
抽出した領域を重ね合わせた状態で、前記測定データから形成されるプレス成形品と前記設計データから形成されるプレス成形品との位置関係を測定するステップと、
を含むことを特徴とするプレス成形品のスプリングバック量測定方法。 - 前記FEM解析の結果は、前記測定データから形成されるプレス成形品および前記設計データから形成されるプレス成形品の各部の応力比の大きさに応じてそれぞれのプレス成形品を濃淡表示することを特徴とする請求項1記載のプレス成形品のスプリングバック量測定方法。
- 前記抽出した領域を重ね合わせるステップは、前記測定データから形成されるプレス成形品または前記設計データから形成されるプレス成形品のいずれか一方を、オペレータの指示に従って移動させることによって行うことを特徴とする請求項1記載のプレス成形品のスプリングバック量測定方法。
- 前記位置関係を測定するステップは、
抽出した領域を重ね合わせた状態で、2つのプレス成形品を定められた方向から切断するステップと、
切断された部分におけるプレス成形品相互のずれ量を測定するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1記載のプレス成形品のスプリングバック量測定方法。 - 前記位置関係を測定するステップは、
抽出した領域を重ね合わせた状態で、2つのプレス成形品を定められた方向から一定の間隔で切断するステップと、
切断された部分におけるプレス成形品相互のずれ量を測定するステップと、
上記2つのステップを前記プレス成形品の表面全体の切断が終了するまで繰り返すステップと、
を含むことを特徴とする請求項1記載のプレス成形品のスプリングバック量測定方法。 - 前記定められた方向は、一方のプレス成形品の表面形状に対する法線方向であることを特徴とする請求項4または請求項5記載のプレス成形品のスプリングバック量測定方法。
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