JP2004337022A - 機能性分子及びその製造方法 - Google Patents

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健志 藤原
Shozo Fujita
省三 藤田
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Abstract

【課題】多種の標的を捕捉可能で、従来における抗体以上の高い親和性及び認識特異性を示し、蛋白質の解析等に好適な機能性分子等の提供。
【解決手段】一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を少なくとも有するリンカーと、第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、第一相補核酸配列が第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、第二相補核酸配列が第二核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有する機能性分子。第一及び第二標的捕捉部が、同種の標的の異なる箇所又は1つの標的の異なる箇所を捕捉可能な態様、第一及び第二標的捕捉部が、核酸を構成するヌクレオシドに置換基が導入された修飾ヌクレオシドを含む修飾ヌクレオチドn量体をランダムに重合させた修飾オリゴヌクレオチド配列である態様、等が好ましい。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多種の標的(標的物質)に対し高い親和性及び認識特異性を示し、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などに応用可能であり、特に蛋白質の解析・スクリーニング等に好適な機能性分子及びその効率的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2002年に人間の全遺伝子情報のドラフトが発表され、2003年にはその完全情報が明らかにされる予定である。その結果、研究者や科学者の興味の中心は、遺伝子からの遺伝子産物である蛋白質の解析に移行してきている。前記蛋白質の解析は、対象となる個々の蛋白質に対し親和性を有する分子が存在して初めて可能になるといっても過言ではない。解析の対象である前記蛋白質は、細胞中に非常に多種存在し、そのアミノ酸配列や構造等が全く未知であるものが多数であるので、該蛋白質を解析するための分子も多種必要になる。
【0003】
しかしながら、前記蛋白質を解析するための分子を作製乃至入手等するための効率的な方法が現在知られていないのが現状である。従来より知られており、ある特定の蛋白質に対して親和性のある分子を得る最も一般的な方法としては、動物の免疫系を用いてアフィニティー抗体を選別する方法がある。ところが、この方法の場合、動物を使っているため、多量の蛋白質が必要となり、工程数が多く、高コストである。しかも、この方法で選別し入手したアフィニティー抗体は、複製することができない。また、同一標的に対し親和性を有するアフィニティー抗体しか選別することができない、という問題がある。したがって、細胞内に存在する全種類の蛋白質に対し親和性を有する各アフィニティー抗体を選別し入手することは極めて困難である。
【0004】
また、遺伝情報を持つ蛋白質の合成に関しては、mRNAの3’末端にピューロマイシンを導入した研究がある(例えば、特許文献1参照)。これはピューロマイシンが翻訳系においてアミノ酸と間違われて蛋白質に組み込まれやすいという性質を利用したものである。しかし、現在までのところ、ピューロマイシンの組み込み効率が悪く、ランダムなアミノ酸3残基のライブラリーから機能性分子を選別できたという報告がなされている程度である。
【0005】
一方、抗体を用いた蛋白質の同定法としては、例えば、immunosensor amperometric法などが開発されている。該方法によれば2ng/l程度の微量な蛋白質でも測定可能である。しかし、上記のような低濃度の蛋白質溶液中では殆どの抗体は蛋白質と結合しておらず、共雑物を多く含む溶液(例えば、血清など)中ではnon−specificな反応が多く起こって、測定精度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、ウイルス等を被覆可能な超分子アセンブリーなども提案されているものの(例えば、特許文献2参照)、この場合、構造が複雑である上、多種の標的に対し、抗体以上の高い親和性を示すものを効率的に製造することができないという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−291491号公報
【特許文献2】
特表平10−508304号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、多種の標的(標的物質)に対し、従来における抗体以上の高い親和性及び認識特異性を示し、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などに応用可能であり、特に蛋白質の解析・スクリーニング等に好適な機能性分子、及び、該機能性分子を安価にかつ効率よく製造することができる機能性分子の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記1から22に記載した通りである。
本発明の機能性分子は、一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を少なくとも有するリンカーと、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、該第一相補核酸配列が前記第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、該第二相補核酸配列が前記第二核酸配列に結合され、かつ前記標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有してなる。
該機能性分子は、任意の長さの前記リンカーによってその間隔が所望に調節された前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部により、前記標的の異なる箇所(認識部位や抗原決定基)を同時に認識し捕捉することが可能であるので、標的に対する親和性や認識特異性が従来における抗体等に比べて大幅に向上し、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服やその遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、蛋白質のスクリーニング、反応触媒の開発、などに好適に応用可能である。
【0010】
本発明の機能性分子の製造方法は、前記機能性分子の製造方法であって、
一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を少なくとも有するリンカーと、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、該第一相補核酸配列が前記第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、該第二相補核酸配列が前記第二核酸配列に結合され、かつ前記標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有してなる機能性分子を合成する合成工程と、
該機能性分子を標的と作用させ、該機能性分子が該標的から解離する際の解離定数をモニターしながら該機能性分子を選別する選別工程と
を少なくとも含む。
該機能性分子の製造方法においては、前記合成工程において、前記機能性分子が合成される。前記選別工程において、多数合成された前記機能性分子の中から、前記標的との親和性(捕捉性)に優れたものが選別される。その結果、前記標的に対する親和性に優れ、該標的を捕捉可能な本発明の前記機能性分子が安価にかつ効率よく製造される。
【0011】
【発明の実施の形態】
(機能性分子)
本発明の機能性分子は、リンカーと、第一標的捕捉部と、第二標的捕捉部とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部などを有してなる。
【0012】
−リンカー−
前記リンカーは、前記第一標的捕捉部と前記第二標的捕捉部とを連結(結合)させる機能を有していればよく、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一端に該第一標的捕捉部と結合可能な前記第一核酸配列(第一塩基配列)を有し、他端に該第二標的捕捉部と結合可能な前記第二核酸配列(第二塩基配列)を少なくとも有するもの、などが好適に挙げられる。
前記リンカーにおける前記第一核酸配列及び前記第二核酸配列を除く部位(以下「長さ調節領域」と称する)としては、複製増幅する必要があり、核酸配列であることが好ましいが、核酸のみである必要はなく、構造安定化のためにアミノ酸配列、ポリマー鎖、核酸配列等を一部に含む複合体であってもよい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記長さ調節領域が前記核酸配列で形成されているのが、該長さ調節領域の長さの調節等を所望にかつ容易に行うことができ、また、複製乃至増幅が容易な点で好ましい。
【0013】
前記リンカーは、単一のもので形成されていてもよいし、2以上のもので形成されていてもよく、後者の場合には、同種のもので形成されていてもよいし、異種のもので形成されていてもよい。該リンカーにおける前記長さ調節領域が前記核酸配列で形成されている場合、該長さ調節領域は、一の核酸配列のみから形成されていてもよいし、二以上の核酸配列で形成されていてもよく、後者の場合には二本以上の核酸配列がリガーゼ等で脱離不能に結合されていてもよい。
前記リンカーは、分岐していてもよいし、分岐していなくてもよい。
【0014】
−−長さ調節領域−−
前記長さ調節領域の長さとしては、特に制限はなく、前記標的の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、該長さ調節領域が前記核酸配列で形成乃至合成されている場合、酸素の増幅効率や構造の多様性等の点で、20塩基以上であるのが好ましく、20〜50塩基であるのがより好ましい。前記長さ調節領域における長さが、20塩基未満であると、ポリメラーゼが効率よく働かなかったり、十分に伸びた状態でもスペースを提供できないことがある。
【0015】
前記長さ調節領域が前記核酸配列で形成されている場合、該核酸配列を構成する核酸としては、DNA及びRNAのいずれであってもよい。
前記DNAは、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)及びシトシン(C)の4種の塩基によって構成され、一本鎖、二本鎖などの構造を有する。前記二本鎖においては、前記塩基は中心軸に対して垂直な平面内で互いに内側に突出した形で存在し、ワトソン−クリック型塩基対を形成し、アデニンに対しチミンが、グアニンに対しシトシンが、それぞれ特異的に水素結合し、二本のポリヌクレオチド鎖(DAN一本鎖)が互いに相補的に結合している。前記DNAの4種のヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシド)としては、デオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシシチジン(dC)、チミジン(T)等が挙げられる。
前記RNAは、アデニン(A)、グアニン(G)、ウラシル(U)及びシトシン(C)の4種の塩基によって構成され、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)の3種に大別される。前記RNAの4種のヌクレオシド(リボヌクレオシド)としては、アデノシン(A)、グアノシン(G)、シチジン(C)、ウリジン(U)等が挙げられる。
【0016】
前記長さ調節領域の形成乃至合成は、特に制限はなく、該長さ調節領域を形成する化合物等の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、該長さ調節領域が前記核酸配列で形成される場合には、前記第一核酸配列及び前記第二核酸配列の少なくともいずれかにプライマーを結合させて、PCR法、LCR法、3SR法、SDA法、RT−PCR法、ICAN法及びLAMP法から選択されるいずれかの方法により核酸配列を伸長させて行うことができ、また、核酸シンセサイザー(核酸自動合成機、「DNAシンセサイザー」と称することがある)を用いて好適に行うことができる。
これらの方法は、1種単独で行ってもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、PCR法などが好ましく、また、前記核酸シンセサイザーにより行う場合、効率的に任意の核酸配列(塩基配列)を有する前記長さ調節領域を所望の長さに形成することができる点で好ましい。
【0017】
前記長さ調節領域を前記核酸シンセサイザーにより形成乃至合成する場合には、例えば、DNA等のランダム(任意)配列のプールを作製し、該プールの中から適当な配列のものを選択するのが好ましい。
前記プールとしては、DNAランダム配列プール、RNAランダム配列プール、これらの混合プールなどが挙げられる。該プールは、例えば、予め作製しておいたリンカーの部分核酸(塩基)配列をモノマーブロックとし、これをDNAライゲース、RNAライゲース等のライゲース(リガーゼ)を作用させて結合させて作製することができる。
なお、前記DNAライゲースは、DNAリガーゼともいい、隣接したヌクレオチドの5’リン酸基と3’水酸基の間の、共有結合の形成を触媒する酵素である。前記RNAライゲースは、RNAリガーゼともいい、5’リン酸基末端のポリヌクレオチドと3’水酸基末端のポリヌクレオチドを連結させる酵素である。RNAリガーゼの基質は、本来、RNAであるが、5’リン酸基末端のポリデオキシリボヌクレオチドと3’端のみがリボヌクレオチドであるポリデオキシリボヌクレオチドも効率的に連結する。
【0018】
前記長さ調節領域は、複製が可能であるのが好ましく、この場合、複製が容易な点で該長さ調節領域が前記核酸配列で形成されているのが好ましい。該長さ調節領域が前記核酸配列で形成されている場合、前記複製の方法としては、特に制限はなく、当該技術分野において公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、LCR(Ligase chain Reaction)法、3SR(Self−sustained Sequence Replication)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、RT−PCR法、ICAN法、LAMP法、などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。これらの中でもPCR法などが好ましい。
【0019】
ここで、前記PCR法について簡単に説明する。前記PCR法は、ポリメラーゼ連鎖反応法であり、DNA合成酵素によるDNA合成反応の試験管内での繰り返しにより、その特定のオリゴヌクレオチド領域を数10万倍に増幅可能な方法である。該PCR法においては、使用するプライマーの伸長反応は、4種のヌクレオチド三リン酸(デオキシアデノシン三リン酸、デオキシグアノシン三リン酸、デオキシシチジン三リン酸、及びチミジン三リン酸あるいはデオキシウリジン三リン酸(これらの混合物をdNTPということもある))を基質として該プライマーに取り込ませることにより行われる。
この伸長反応を行う場合、通常、核酸鎖を増幅するために上記単位核酸及び核酸伸長酵素を含む増幅反応試薬が用いられ、この場合、該核酸伸長酵素としては、E.coliDNAポリメラーゼI、E.coliDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ等の任意のDNAポリメラーゼを用いることができ、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼ等の熱安定性DNAポリメラーゼを用いることが好ましく、これによりサイクル毎に新たな酵素の添加の必要性がなくなり、自動的にサイクルを繰り返すことが可能になり、更にアニーリング温度を50〜60℃に設定することが可能なためプライマーによる標的塩基配列認識の特異性を高めることができ、迅速かつ特異的に増幅を行うことができる(特開平1−314965号、同1−252300号公報等参照)。前記プライマーを用いて伸長反応を繰り返すことにより、目的とするオリゴヌクレオチドを効率的に増幅し作製可能である。なお、この増幅を行う条件等の具体的な方法については、例えば、実験医学、羊土社、8,No.9(1990)、PCR テクノロジー ストックトン プレス(PCR Technology Stockton press(1989))等の文献に記載されている。
【0020】
前記長さ調節領域が前記核酸配列で形成されている場合、前記リンカーが、該長さ調節領域の一部にヘアピン構造部を有していてもよい。
前記長さ調節領域が一部相補的配列を有する二本鎖の核酸配列の場合には、該二本鎖形成条件(温度と濃度に依存)付近でリンカーが形成され、第一標的捕捉部位及び第二標的捕捉部位と複合体を形成することで高機能性分子とすることができ、閾値をもった協奏的(コーペラティブ)効果が期待され、利用価値が高いものの、通常法で合成すると該二本鎖は互いに解離して、他の核酸配列と相補的二本鎖を形成してしまう可能性があり、複数の候補が存在するときには混合されてしまう可能性があるため、該二本鎖を前記ヘアピン構造部で連結して一本鎖としておけば、このような問題も解決できる点で有利である。また、配列決定後に、改めてヘアピン構造部を二本鎖構造に変換することにより、協奏的(コーペラティブ)効果も期待できる点で有利である。
【0021】
前記ヘアピン構造部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第一核酸配列から伸長形成した前記長さ調節領域あるいは前記第一核酸配列に結合させた前記長さ調節領域における、該第一核酸配列が設けられた側とは反対側と、前記第二核酸配列から伸長形成した前記長さ調節領域あるいは前記第二核酸配列に結合させた前記長さ調節領域における、該第二核酸配列が設けられた側とは反対側とを、相補的結合により二本鎖とした後、該二本鎖部分を制限酵素等で切断し、該切断部に、ヘアピン構造を有する核酸配列をリガーゼ等の酵素等で結合(共有結合)させる方法、などが好適に挙げられる。
なお、前記ヘアピン構造を有する核酸配列としては、一本鎖の核酸配列の一部が折れ曲がり、互いに相補的結合を形成しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘアピン型DNA、ヘアピン型RNAなどが挙げられる。該ヘアピン構造を有する核酸配列の端部としては、ブラントエンドの形状であってもよいし、コヒーシブエンドの形状であってもよく、前記二本鎖を切断するのみ使用する制限酵素の種類等に応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記制限酵素としては、前記二本鎖を切断し、切断片を形成できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、NotI、AscI、FseI、SrfI、等が挙げられる。
前記リガーゼとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、DNAリガーゼ、RNAリガーゼ、などが挙げられる。
【0023】
−−第一核酸配列及び第二核酸配列−−
前記第一核酸配列及び第二核酸配列の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二本鎖の安定の点で、20〜30塩基であるのが好ましい。
【0024】
前記第一核酸配列及び第二核酸配列における具体的な核酸(塩基)配列としては、例えば、PCRプライマー配列の選択条件に準じている限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
前記第一核酸配列及び第二核酸配列を構成する核酸としては、上述のDNA及びRNAのいずれであってもよい。
前記第一核酸配列及び第二核酸配列の形成乃至合成は、例えば、上述のPCR法、LCR法、3SR法、SDA法、RT−PCR法、ICAN法及びLAMP法から選択されるいずれかの方法により行うことができ、また、核酸シンセサイザー(核酸自動合成機)を用いて好適に行うことができる。
これらの方法は、1種単独で行ってもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、PCR法などが好ましく、また、前記核酸シンセサイザーにより行う場合、効率的に任意の核酸配列(塩基配列)を有する前記長さ調節領域を所望の長さに形成することができる点で好ましい。
なお、前記長さ調節領域が核酸配列で形成されている場合には、該第一核酸配列及び該第二核酸配列と前記長さ調節領域とを、前記核酸シンセサイザー等を用いて一度に連続して形成乃至合成することができ、製造効率に優れ、複製乃至増幅が容易である点で有利である。
【0026】
前記第一核酸配列及び第二核酸配列は、複製産物を繰り返しリンカーとして利用可能な点で、複製可能であるのが好ましく、該複製の方法としては、上述のPCR法、LCR法、3SR法、SDA法、RT−PCR法、ICAN法、LAMP法、などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。これらの中でもPCR法などが好ましい。
【0027】
−第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部−
前記第一標的捕捉部は、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有する。なお、前記第一相補核酸配列の前記第一標的捕捉部における位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第一相補核酸配列は、前記リンカーにおける前記第一核酸配列に相補的に結合可能であればよく、前記第一核酸配列と相補的な核酸配列(塩基配列)を有し、その長さとしては、前記第一核酸配列よりも、短くてもよいし、長くてもよいし、同じ長さであってもよい。
前記第二標的捕捉部は、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有する。
前記第二相補核酸配列は、前記リンカーにおける前記第二核酸配列に相補的に結合可能であればよく、前記第二核酸配列と相補的な核酸配列(塩基配列)を有し、その長さとしては、前記第二核酸配列よりも、短くてもよいし、長くてもよいし、同じ長さであってもよい。
【0028】
前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部は、前記標的を捕捉可能であるが、その捕捉箇所(部位)としては、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、後者の方が好ましい。
また、該第一標的捕捉部及び該第二標的捕捉部が捕捉する前記標的の箇所としては、▲1▼同種の標的の異なる箇所であってもよいし(例えば、CD4の異なる部位を捕捉する場合、即ち1つ又は2つのCD4を捕捉する場合)、▲2▼同種の標的の同じ箇所であってもよいし(例えば、別のCD4の同じ部位を捕捉する場合、即ち2つのCD4を捕捉する場合)、▲3▼異種の標的の異なる箇所であってもよい(例えば、CD4とCD8とを捕捉する場合)。
これらの中でも、前記▲1▼が好ましく、ある一つの標的の異なる箇所である(例えば、ある一つのCD4の異なる部位を捕捉する場合)のがより好ましい。この場合、ある特定の一つの標的の異なる箇所(認識部位や抗原決定基)を同時に認識し捕捉することが可能であるので、該標的に対する親和性や認識特異性が大幅に向上し、抗原に対する親和性や認識特異性に顕著に優れた機能性分子が得られ、該機能性分子は、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服やその遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、蛋白質のスクリーニング、反応触媒の開発、などに好適に応用可能である点で有利である。
【0029】
前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部のそれぞれの数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
なお、本発明の機能性分子においては、前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部以外に、該標的捕捉部及び該第二標的捕捉部が捕捉する前記標的の箇所とは異なる箇所を捕捉可能な第三標的捕捉部等の他の標的捕捉部を有していてもよい。この場合、同一の標的に対する該機能性分子の親和性を大幅に向上させることができる点で好ましい。
【0030】
前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部が捕捉する前記標的の箇所としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、認識部位、抗原決定基(エピトープ)、酸素活性中心などが挙げられる。
前記認識部位とは、例えば、前記標的の表面にあって、前記機能性分子が認識可能な化学構造を意味する。
前記抗原決定基(エピトープ)とは、抗原(標的)分子の一部の化学構造中で抗原の特異性を決定している部分を意味する。
【0031】
前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部による前記標的の捕捉の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吸着、化学結合、などが挙げられる。
前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抗体、蛋白質、核酸、これらの一部、などが挙げられる。これらの中でも、複製乃至増幅が容易である等の点で、核酸がより好ましい。
前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部が、それぞれこれらを、1種単独で有していてもよいし、2種以上を有していてもよく、また、該第一標的捕捉部及び該第二標的捕捉部が、互いに同一のものであってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
前記抗体としては、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、などが挙げられる。
前記抗体の一部としては、例えば、抗体軽鎖可変部位、抗体重鎖可変部位、抗体(Fab)フラグメント、抗体F(ab’)フラグメント、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記ポリクローナル抗体とは、多クローン性抗体ともいい、通常、多数の抗原決定基(エピトープ)に対して親和性を示し、例えば、病原微生物感染によって生じた免疫抗体、抗血清、自己抗体、などが挙げられる。
前記モノクローナル抗体とは、単クローン性抗体ともいい、単一の抗原決定基(エピトープ)に対して親和性を示す。該モノクローナル抗体は、例えば、感作B細胞とミエローマ系細胞株とを細胞融合してなるモノクローナル抗体産生細胞株により産生することができる。
【0034】
前記抗体軽鎖可変部位とは、免疫グロブリンIgGにおいて、分子量約23,000の2個の軽いペプチド鎖(L鎖)の中で、N末端から110個のアミノ酸配列部分(可変部)を意味する。
前記抗体重鎖可変部位とは、免疫グロブリンIgGにおいて、分子量50,000〜70,000の2個の重いペプチド鎖(H鎖)のうちN末端から110個のアミノ酸配列部分(可変部)を意味する。
前記抗体(Fab)フラグメントとは、免疫グロブリンIgGをパパインで分解すると2つのFab部分と、補体結合部や細胞のFcレセプターと結合する1つのFc部分とに分かれ、この2つの抗原と特異的に結合するFab部分を意味する。
前記抗体F(ab’)フラグメントとは、免疫グロブリンIgGをペプシンで分解して得られる抗原と特異的に結合する部分を意味する。
【0035】
前記蛋白質としては、特に制限はなく、前記抗体又はその一部を除くものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大部分の原核生物の細胞壁を構成するPGと特異的に結合するペプチドグリカン認識タンパク質(以下、「PGRP」という)、グラム陰性菌の外膜を構成するLPSと特異的に結合するLPS結合タンパク質(Eur.J.Biochem. Vol.1248, pp.217−224, 1997.)、真菌類の細胞壁を構成するβGと特異的に結合するβG認識タンパク質(The Journal of Biological Chemistry Vol.263, No24, pp.12056−12062, 1988.)、などが挙げられる。
【0036】
前記核酸としては、例えば、アプタマー、標的を捕捉可能な核酸、などが挙げられる。
【0037】
前記アプタマー(aptamer)は、アミノ酸のような小分子から蛋白質、さらにはウイルスのような高分子を認識する核酸分子であり、大量に合成乃至複製可能であり、改良も容易であり、前記標的に特異的に結合するRNA抗体としての性質を有する。該アプタマーは、癌化作用のある因子の機能阻害(癌抑制)、癌関連因子の定量測定(癌診断)、生理活性タンパク質を擬態するRNA分子の開発(創薬)などに応用可能である。
【0038】
前記標的を捕捉可能な核酸としては、例えば、核酸を構成するヌクレオシドに置換基が導入された修飾ヌクレオシドを含む修飾ヌクレオチド重合体(「修飾オリゴヌクレオチド配列」と称することがある)、などが好適に挙げられる。
該修飾ヌクレオチド重合体は、前記標的を認識する置換基数が多く、親和性及び特異性が抗体に匹敵し、多種の標的(標的物質、検出標的)を認識可能である一方、核酸の自己複製能をそのまま保持しているため増幅乃至複製可能であり、効率良く安価に製造可能な点で有利である。
【0039】
前記修飾ヌクレオチド重合体の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10〜100塩基が好ましく、10〜50塩基がより好ましい。
【0040】
前記修飾ヌクレオチド重合体は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下のようにして製造(合成)することができる。即ち、まず、任意の核酸配列を有する前記修飾オリゴヌクレオチド配列を合成し、該修飾オリゴヌクレオチド配列を含むランダム重合体プールを作製する(修飾オリゴヌクレオチド配列製造工程)。次に、該ランダム重合体プールの中から前記標的に親和性を示すものを選別する(選別工程)。該選別の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ランダム重合体プールを、前記標的を固定配置したアフィニティーカラム中に流し込み、該標的との親和性差を利用することにより、該標的に親和性を示し該標的を捕捉可能な前記修飾オリゴヌクレオチド配列を選別することができる。なお、該選別工程は、本発明の機能性分子の製造方法における前記選別工程と同様に行うこともできる。そして、その後、該修飾オリゴヌクレオチド配列を対応表に基づいて決定し(配列決定工程)、翻訳することにより(翻訳工程)、該修飾ヌクレオチド重合体(修飾オリゴヌクレオチド配列)を複製乃至製造することができる。
【0041】
ここで、前記修飾オリゴヌクレオチド配列製造工程(修飾ヌクレオチド重合体製造工程)について詳述する。該修飾オリゴヌクレオチド配列製造工程は、核酸を構成するヌクレオシドに置換基が導入された修飾ヌクレオシドを含む修飾ヌクレオチド重合体(修飾オリゴヌクレオチド配列)を製造する工程である。この工程により、該修飾ヌクレオチド重合体(修飾オリゴヌクレオチド配列)を含むランダム重合体プールが得られる。
【0042】
前記核酸としては、DNA及びRNAのいずれであってもよく、また、DNA及びRNAは一本鎖であってもよいし二本鎖であってもよい。前記DNA及びRNAとしては、上述した通りである。
【0043】
前記置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然又は非天然のアミノ酸、金属錯体、蛍光色素、酸化還元色素、スピンラベル体、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、下記式(1)〜(10)で表される基、などが挙げられる。これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
【0044】
前記天然又は非天然のアミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリン、などが挙げられる。
前記金属錯体としては、金属イオンに配位子が配位した化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ruビピリジル錯体、フェロセン錯体、ニッケルイミダゾール錯体、などが挙げられる。
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素、などが挙げられる。
前記酸化還元色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコアニリン、ロイコアントシアニン、等のロイコ色素、などが挙げられる。
前記スピンラベル体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄N−(ジチオカルボキシ)サルコシン(sarcosine)、TEMPO(テトラメチルピペリジン)誘導体、などが挙げられる。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、などが挙げられる。
【0045】
【化1】
Figure 2004337022
【0046】
前記置換基が前記修飾ヌクレオシドにおいて導入される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ピリミジンにおける5位、プリンにおける7位、プリンにおける8位、環外アミンの置換、4−チオウリジンの置換、5−ブロモの置換、5−ヨード−ウラシルの置換、などが挙げられる。これらの中でも、増幅(複製)の際の酵素反応を阻害し難い点で、ピリミジンにおける5位が好ましい。
【0047】
前記置換基を前記修飾ヌクレオシドに導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記反応式で示されるヌクレオシドのピリミジン塩基における5位に前記置換基を導入する方法、などが好適に挙げられる。
【0048】
【化2】
Figure 2004337022
【0049】
前記修飾ヌクレオチドn量体は、前記修飾ヌクレオチドを含む。該修飾ヌクレオチドは、核酸を構成するヌクレオシドに置換基が導入されてなる。
前記修飾ヌクレオチドn量体におけるnは、整数を表し、2以上が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜3が特に好ましい。前記nが、2未満であると、前記修飾ヌクレオチドの種類が核酸を構成する4種類のヌクレオチドと差がなく、前記標的に対する認識力が十分に向上しないことがある一方、4以上であると、増幅過程に起こる可能性のある1塩基欠損や1塩基付加を塩基配列類似性から判別し難くなり、nが3であっても最大64種類もの異なる側鎖を導入することができるので、アミノ酸20種類から多種多様な蛋白質ができていることを考慮すると、nが3でも十分であり、nが4以上であってもそれに見合う効果が十分には期待できない一方、合成の負荷の増大が懸念される。
【0050】
前記修飾ヌクレオチドn量体におけるnが2である場合の修飾ヌクレオチド2量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記核酸を構成する4種のヌクレオシドと該修飾ヌクレオシドとの組合せであってもよいし、該修飾ヌクレオシド同士の組合せであってもよい。なお、置換基を導入するのがヌクレオシド(プリン又はピリミジン塩基に糖が結合したもの)でなく、ヌクレオチド(ヌクレオシドにリン酸基が付加したもの)であってもよい。
【0051】
前記修飾ヌクレオチド2量体を合成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエステル法、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホロアミダイト法、H−ホスホネート法、チオホスファイト法、などが挙げられる。これらの中でも、ホスホロアミダイト法が好適である。
【0052】
前記ホスホロアミダイト法は、一般的には、テトラゾールを促進剤としたヌクレオシドホスホロアミダイトとヌクレオシドとの縮合反応を鍵反応として用いる。この反応は、通常、糖部分の水酸基とヌクレオシド塩基部のアミノ基との両方に競合的に起こるが、所望のヌクレオチド合成のためには、糖部分の水酸基にのみ選択的に反応を起こさせる。したがって、アミノ基への副反応を防止するため、保護基で修飾する。例えば、修飾ヌクレオチド2量体(AU)は、下記反応式で示したように、デオキシアデノシンと修飾デオキシウリジンとから合成することができる。
【0053】
【化3】
Figure 2004337022
ただし、前記反応式において、DMTrは、ジメトキシトリチル基を表す。
【0054】
なお、後述する下記表1の対応表に示す、修飾ヌクレオチド2量体(AC、CA、CC、CG、CT、GC、GU、UA、UC、UG、UT)についても、同様の方法により合成することができる。
【0055】
ここで、前記合成した修飾ヌクレオチド2量体を、前記核酸を構成する4種のヌクレオシドを1対1に組合せた対応表の16個のいずれかと1対1に対応付け(関係付け)する。
前記修飾ヌクレオチド2量体の種類が、5未満であると、核酸を構成する4種のヌクレオチドと大差がなく、標的に対する認識力を十分に向上させることができないことがある。
【0056】
前記対応表としては、例えば、下記に示すものが挙げられる。この対応表は、横方向(5’側)にA、C、G、Tの順に4種のヌクレオシドの塩基を配置し、一方、縦方向(3’側)にA、C、G、Tの順に4種のヌクレオシドの塩基を配置し、これら塩基がそれぞれ1対1に対応した16個のパターン(マス)が形成されている。
【0057】
【表1】
Figure 2004337022
【0058】
また、前記修飾ヌクレオチド2量体の場合と同様に、修飾ヌクレオチド3量体を用いることもでき、この場合における前記対応表としては、例えば、下記に示すものが挙げられる。この対応表には、56個のパターン(56種の修飾ヌクレオチド3量体)が形成されている。なお、前記修飾ヌクレオチド2量体や前記修飾ヌクレオチド3量体の場合と同様に、修飾ヌクレオチドn量体(ただし、nは、整数を表す)を用いることもでき、この場合における前記対応表には、例えば、4個のパターン(4種の修飾ヌクレオチドn量体)を形成しておくことができる。
【0059】
【表2】
Figure 2004337022
【0060】
前記表1の対応表においては、下記に示すように12種の修飾ヌクレオチド2量体が条件付けられている。
具体的には、塩基配列は、5’側から3’側方向に読み取り、塩基配列ACには修飾ヌクレオチド2量体ACが対応する。配列ATには修飾ヌクレオチド2量体AUが対応する。塩基配列CAには修飾ヌクレオチド2量体CAが対応する。塩基配列CCには修飾ヌクレオチド2量体CCが対応する。塩基配列CGには修飾ヌクレオチド2量体CGが対応する。塩基配列CTには修飾ヌクレオチド2量体CAが対応する。塩基配列GCには修飾ヌクレオチド2量体GCが対応する。塩基配列GTには修飾ヌクレオチド2量体GUが対応する。塩基配列TAには修飾ヌクレオチド2量体UAが対応する。塩基配列TCには修飾ヌクレオチド2量体UCが対応する。塩基配列TGには修飾ヌクレオチド2量体UGが対応する。塩基配列TTには修飾ヌクレオチド2量体UTが対応する。
【0061】
なお、表1における、塩基配列と修飾ヌクレオチド2量体との条件付けとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、表1はあくまでもその一例である。また、修飾ヌクレオチド2量体を12種作製することが困難であれば、一部が重複してもよいが、その分、標的に対する認識力は低下することがある。
【0062】
前記表1の対応表において、プリン塩基同士の組合せであるAA、AG、GA、GGについては、プリン塩基が修飾に用いる酵素の反応が低いため、修飾ヌクレオチド2量体を作製していないが、これは、プリン塩基同士の修飾ヌクレオチド2量体が作製することができないことを意味しない。
前記表1の対応表に基づいて、12種の2量体修飾ヌクレオシドを対応付けることにより、従来の核酸では4種でしかなかったものが、一挙に12種にまで拡がり、その結果、数多くの種の標的に対して識別力を発揮し得るものである。
【0063】
前記修飾オリゴヌクレオチド配列は、前記修飾ヌクレオチドn量体をランダムに重合してなり、修飾オリゴヌクレオチドランダム配列を有するが、その一部又は端部に、一定の塩基で固定された固定ヌクレオチド配列を有していてもよい。
【0064】
前記ランダム重合体プールを作製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNAシンセサイザー(DNA自動合成機)を用いる方法、予め作製しておいたオリゴヌクレオチドランダム配列に対しモノマーブロックを並べてアニーリングし、DNAリガーゼ又はRNAリガーゼを作用させて結合させる方法、などが好適である。
前記DNAシンセサイザー(DNA自動合成機)を用いる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図5に示すようなDNAシンセサイザー(DNA自動合成機)を用い、合成した前記修飾ヌクレオチド2量体を複数種混合したもの(図5に示す例では12種)を試薬とし、この試薬をコントローラーの制御に基づくノズル15により吸い上げて重合させることにより、ランダムであらゆる配列順序の修飾オリゴヌクレオチド配列を有する前記ランダム重合体プールを作製する方法などが好ましい。この場合、前記ランダム重合体プールを効率よく作製することができる点で有利である。
【0065】
前記選別工程は、前記修飾オリゴヌクレオチド配列の中から前記標的を捕捉可能(親和性を有する)ものを選別する工程である。なお、該選別においては、後述する標識物質を用いることができる。
前記選別の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法から適宜選択することができ、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、フィルター結合、液−液分割、ろ過、ゲルシフト、密度勾配遠心分離、などの各種方法が挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。これらの中でも、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい。
【0066】
前記アフィニティークロマトグラフィーは、特定の成分同士が結合し易い生物学的親和性を利用した分離・精製手段であり、具体的には、前記標的を樹脂等のカラム充填材に固定化し、結合用緩衝液で平衡化してから、前記ランダム重合体プールを含む溶液をカラム中に流し込み、一定条件に放置すると、該標的と親和性を有する前記修飾オリゴヌクレオチド配列がカラムに吸着し、結合用緩衝液で充分洗浄することにより、残留する該修飾オリゴヌクレオチド配列以外の成分を除去することができる。前記標的を含む溶液あるいは純水をカラムに流すことにより、前記修飾オリゴヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを回収し、選別することができる。
【0067】
なお、前記標的が未知で2種以上存在する場合(例えば、臓器や血清など)には、該標的を一次元乃至三次元の空間配置を持つマトリックス上にマッピングして区画化して固定し、該標的が固定され区画化されたマトリックスに対し、前記修飾オリゴヌクレオチド配列を含むランダム重合体プールを作用させ、前記標的と結合した前記修飾オリゴヌクレオチド配列を精製してもよい。前記マトリックス上に前記標的を固定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記標的が蛋白質である場合には、該標的をポリアクリルアミド電気泳動(例えば、SDS−PAGEなど)した後で膜状の該マトリックスに転写するウエスタンブロット法、膜状の該マトリックスに前記標的又はその希釈液を直接染み込ませるドットブロット法やスロットブロット法、などが挙げられる。これらの中でも、細胞抽出液などの複雑な組成の溶液中に微量に含まれる蛋白質でも明瞭に検出可能な点で、前記ウエスタンブロット法が好ましい。該ウエスタンブロット法は、電気泳動の優れた分離能と抗原抗体反応の高い特異性を組み合わせて、蛋白質混合物から特定の蛋白質を検出する手法であり、SDS−PAGE、等電点電気泳動、二次元電気泳動等の後、ゲルから蛋白質を電気的に膜状の前記マトリックスに移動・固定化させる方法である。該膜状のマトリックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記蛋白質が結合し易い疎水性の高いニトロセルロース膜、疎水性に優れたPVDF(ポリビニリデン ジフルオライド、Polyvinylidene difluoride)膜、などが好適に挙げられる。
【0068】
前記精製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記ウエスタンブロット法により前記膜状のマトリックス(ニトロセルロース膜等のメンブランなど)上の所定の位置(領域)に固定され、前記標的と結合した前記修飾オリゴヌクレオチド配列を、該マトリックス(ニトロセルロース膜等のメンブランなど)と共に、前記所定の位置(領域)毎に一緒に切断して切断片を得た後、該切断片から前記修飾オリゴヌクレオチド配列を回収する方法、などが特に好適に挙げられる。この場合、特別な精製処理が不要であり、前記修飾オリゴヌクレオチド配列を簡便に効率よく精製することができる点で有利であり、また、前記所定の位置(領域)毎に異なる前記修飾オリゴヌクレオチド配列を効率よく精製することができる点で有利である。
なお、前記切断片から前記修飾オリゴヌクレオチド配列を回収は、イオン性溶液を用い電圧を印加してエレクトロエリューションにより行うことができ、また、熱水を用いて行うことができる。
【0069】
前記選別工程の際、前記修飾オリゴヌクレオチド配列の精製を行ってもよい。該精製は、前記標的と前記修飾オリゴヌクレオチド配列との解離定数をモニターしながら該修飾オリゴヌクレオチドを前記標的から解離させることにより、行うのが好ましい。この場合、最小一回の処理で所望の解離定数を持つ前記修飾オリゴヌクレオチドを効率よく選別することができる点で有利である。なお、前記解離定数は、前記標的に応じて適宜設定することができ、例えば、サーフェスプラズモン共鳴を用いた測定機器により測定することができる。
【0070】
なお、前記選別工程においては、例えば、解離定数の異なる2種以上の分子の相互作用を利用し、小さい解離定数に適応した洗浄操作を行って前記修飾オリゴヌクレオチド配列を選別し、大きい解離定数に適応する過激な洗浄操作を行って担体を再生させることもできる。この場合、前記標的が2種以上あっても、前記担体を再生可能とし、1つの担体で複数種の前記修飾オリゴヌクレオチド配列を一括して効率よく選別することができる点で有利である。
【0071】
前記配列決定工程は、前記選別工程により選別した前記修飾オリゴヌクレオチド配列を増幅し、その配列を決定する工程である。
前記増幅の方法としては、対象となる前記修飾オリゴヌクレオチド配列の数を増やすことができれば、特に制限はなく、当該技術分野において公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、上述のPCR法、LCR法、3SR法、SDA法、RT−PCR法、ICAN法、LAMP法、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、PCR法が好適である。なお、前記PCR法は、ポリメラーゼ連鎖反応法を意味し、その詳細については上述した通りである。なお、PCR法等を行うことにより、前記修飾オリゴヌクレオチド配列は、置換基の修飾のない天然のオリゴヌクレオチド配列に置換される。
【0072】
また、前記修飾オリゴヌクレオチド配列がDNAではなくRNAである場合、逆転写反応を行うことによりDNAを合成することができる。前記逆転写反応とは、RNAを鋳型としてDNAを合成する方法であり、対象となるRNAにより、逆転写反応の反応液や反応条件は異なる。例えば、RNA溶液にRNaseフリーの滅菌蒸留水と3’−プライマーを添加し、インキュベートした後、冷却して、Tris−HCl、KCl、MgClなどを含む逆転写緩衝液、DTT、dNTPsを加え、逆転写酵素を添加した後インキュベートすること等により行うことができる。該逆転写反応の停止は、インキュベートの条件を調整して行うことができる。なお、このような逆転写反応は、逆転写PCRによっても行うことができる。
【0073】
前記増幅されたオリゴヌクレオチドの塩基配列の決定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、遺伝子クローニングによる方法、チェーンターミネーター法、サンガー法、ジデオキシ法等によるDNAシーケンサー(DNA塩基配列自動決定装置)、などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。
前記遺伝子クローニングでは、増幅したオリゴヌクレオチド配列を組み込んだ発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、この形質転換体を培養すること等により製造することができる。なお、前記発現ベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、プラスミドとファージとのキメラベクター、などが挙げられる。また、前記宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核微生物、酵母菌等の真核微生物、動物細胞などが挙げられる。
【0074】
前記翻訳工程は、配列を決定した前記修飾オリゴヌクレオチド配列を、4種のヌクレオシドを1対1に組合せた対応表における4種のヌクレオチドn量体の少なくとも1種と、前記修飾ヌクレオチドn量体の1種とを対応させた対応表に基づき翻訳する工程である。
【0075】
前記翻訳工程では、前記配列解読工程で増幅され、塩基配列が決定されたオリゴヌクレオチドの塩基配列を、4種のヌクレオシドを1対1に組合せた対応表における4種のヌクレオチドn量体(ただし、nは、整数を表す)の少なくとも1種と修飾ヌクレオチドn量体(ただし、nは、整数を表す)の1種とを対応させた対応表に基づいて翻訳する。
【0076】
前記翻訳は、塩基配列が決定された修飾ヌクレオチドn量体からなる修飾オリゴヌクレオチド配列の5’末端側からn塩基ずつ対応表に基づいて行われることが好ましい。
例えば、修飾ヌクレオチドn量体が修飾ヌクレオチド2量体である場合、該修飾ヌクレオチド2量体からなる塩基配列が決定された修飾オリゴヌクレオチド配列の5’末端側から2塩基ずつ対応表に基づいて翻訳することができる。具体的には、上記表1の対応表に基づいて翻訳され、図5に示すように、決定された修飾オリゴヌクレオチド配列が“ATGCTCTAGCCCCT”である場合には、上記表1の対応表に基づき翻訳すると“AUGCCUAGCCCT”という配列であることが確認され、前記修飾オリゴヌクレオチド配列を決定することができる。
また、前記修飾ヌクレオチドn量体が修飾ヌクレオチド3量体である場合、該修飾ヌクレオチド3量体からなる塩基配列が決定された修飾オリゴヌクレオチド配列の5’末端側から3塩基ずつ対応表に基づいて翻訳することができる。具体的には、上記表2で表される対応表を用いて翻訳される。なお、前記修飾ヌクレオチド3量体を超える場合(n≧4)にも上記同様に、例えば、4種のヌクレオシドを1対1に組合せた対応表における4種のヌクレオチドn量体(n≧4)の少なくとも1種と修飾ヌクレオチドn量体(n≧4)の1種とを対応させた対応表に基づいて翻訳することができる。
【0077】
前記標的としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛋白、リポ蛋白、糖蛋白、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類、核酸、環境ホルモン、薬物、これらの複合体などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用することができ、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、HLA抗原、環境ホルモン、核酸などが好適に挙げられる。
【0078】
前記血漿蛋白としては、例えば、免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、補体成分(C3,C4,C5,C1q)、CRP、α−アンチトリプシン、α−マイクログロブリン、β−マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチンなどが挙げられる。
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA125、CA15−3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA−II、γ−セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)などが挙げられる。
【0079】
前記アポ蛋白としては、例えば、アポA−I、アポA−II、アポB、アポC−II、アポC−III、アポEなどが挙げられる。
前記ウイルスとしては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HBC)、HTLV−I、HIVなどが挙げられる。また、ウイルス以外の感染症としては、ASO、トキソプラズマ、マイコプラズマ、STDなどが挙げられる。
前記自己抗体としては、例えば、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体、抗核抗体、リュウマチ因子、抗ミトコンドリア抗体、ミエリン抗体などが挙げられる。
前記凝固・線溶因子としては、例えば、フィブリノゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プラスミノゲン、α−プラスミンインヒビター、アンチトロンビンIII、β−トロンボグロブリン、第VIII因子、プロテインC、プロテインSなどが挙げられる。
【0080】
前記ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T、T、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン)、その他(レニン、アンジオテンシンI,II、エンケファリン、エリスロポエチン)などが挙げられる。
前記環境ホルモンは、外界に広く存在して生物の生活活動と共に体内に取り込まれてその生殖、発生、行動などを含む生理的な内分泌の諸現象に影響を及ぼす外因性内分泌撹乱化学物質である。該環境ホルモンとしては、例えば、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸ブチルベンジル、トリブチルスズ、PCB、ポリ塩化ジベンゾジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン、ダイオキシン類、DDT、DDE、DDD、エンドスルファン、メトキシクロル、ヘプタクロル、トキサフェン、ディルドリン、リンデン、ジエチルスチベロール(DES)、エチニルエストラジオール(ピルの成分)、クメストロール、フォルモノネテイン、ゲニステイン、などが挙げられる。
前記血中薬物としては、例えば、カルバマゼピン、プリミドン、バルプロ酸等の抗てんかん薬、ジゴキシン、キニジン、ジギトキシン、テオフィリン等の循環器疾患薬、ゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質などが挙げられる。
【0081】
前記核酸としては、癌関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子及び病気のリスクファクターと呼ばれる多型性を示す遺伝子、などが挙げられる。
前記癌関連遺伝子としては、例えば、k−ras遺伝子、N−ras遺伝子、p53遺伝子、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、src遺伝子、ros遺伝子又はAPC遺伝子などが挙げられる。
前記遺伝病に関連する遺伝子としては、例えば、各種先天性代謝異常症、例えばフェニールケトン尿症、アルカプトン尿症、シスチン尿症、ハンチントン舞踏病、Down症候群、Duchenne型筋ジストロフィー、血友病などが挙げられる。
前記ウイルス及び細菌遺伝子としては、例えば、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、HIVウイルス、マイコプラズマ、リケッチア、レンサ球菌、サルモネラ菌などが挙げられる。
前記多型性を示す遺伝子とは、病気等の原因とは必ずしも直接は関係のない個体によって異なる塩基配列を持つ遺伝子、例えば、PS1(プリセリニン1)遺伝子、PS2(プリセリニン2)遺伝子、APP(ベーターアミロイドプレカーサー蛋白質)遺伝子、リポプロテイン遺伝子、HLA(Human Leukocyte Antigen)や血液型に関する遺伝子、あるいは高血圧、糖尿病等の発症に関係するとされている遺伝子などが挙げられる。
【0082】
前記標的を含む検体としては、例えば、細菌、ウイルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、あるいは糞尿等の排泄物が挙げられる。更に、出生前診断を行う場合は、羊水中に存在する胎児の細胞や、試験管内での分裂卵細胞の一部などであってもよい。また、これらの検体は、直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、例えば、酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理、これらの組合せ等による細胞破壊処理を予め施されていてもよい。
【0083】
以上により、前記修飾オリゴヌクレオチド配列で形成された前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部を複製乃至製造することができる。
ここで、本発明の前記機能性分子の具体的な態様について図面を参照しながら説明する。図1に示す機能性分子10は、リンカー3と、第一標的捕捉部7と、第二標的捕捉部8とを有してなる。リンカー3は、一端に第一核酸配列5を有し、他端に第二核酸配列6を有する。第一標的捕捉部7は、第一核酸配列5に相補的に結合可能な第一相補核酸配列20を有する。第二標的捕捉部8は、第二核酸配列6に相補的に結合可能な第二相補核酸配列21を有する。機能性分子10においては、リンカー3における第一核酸配列5と、第一標的捕捉部8における第一相補核酸配列20とが相補的に結合し、リンカー3における第二核酸配列6と、第二標標的捕捉部8における第二相補核酸配列21とが相補的に結合しており、全体として一分子の形態となっている。この機能性分子10においては、リンカー3は、核酸で形成されており、第一標的捕捉部7及び第二標的捕捉部8は、抗体で形成されている。
【0084】
図2に示す機能性分子10は、図1に示す機能性分子10におけるリンカー3が、その一部にヘアピン構造部9を有している点で、図1に示す機能性分子10と相違している。図2に示す機能性分子10におけるリンカー3は、一端に第一核酸配列5を有するリンカーの他端と、一端に第二核酸配列6を有するリンカーの他端とを相補的に結合させて、該他端を二本鎖構造とした後、該二本鎖構造部分を制限酵素を用いて切断し、該切断部にヘアピン構造部9の断片をリガーゼ等の酵素等を用いて接合し、一体化してなる。その結果、リンカー3は、全体としては一本鎖構造を有している。
【0085】
図3に示す機能性分子10は、図1に示す機能性分子10における、第一標的捕捉部7が抗体ではなく、前記修飾オリゴヌクレオチド配列で形成され、第二標的捕捉部8が抗体ではなく、前記修飾オリゴヌクレオチド配列で形成されている点で、図1に示す機能性分子10と相違している。
図4に示す機能性分子10、図2に示す機能性分子10における、第一標的捕捉部7が抗体ではなく、前記修飾オリゴヌクレオチド配列で形成され、第二標的捕捉部8が抗体ではなく、前記修飾オリゴヌクレオチド配列で形成されている点で、図2に示す機能性分子10と相違している。
【0086】
なお、図1から図4の各図における機能性分子10においては、第一標的捕捉部7と第二標的捕捉部8とが互いに同一のもので形成された例を示したが、互いに異なるもので形成されていてもよく、例えば、第一標的捕捉部が抗体で形成され、第二標的捕捉部8が核酸で形成されていてもよい。
図1から図4に示す機能性分子10は、第一標的捕捉部7と第二標的捕捉8とにより、標的の異なる2つの箇所(認識部位や抗原決定基)を同時に捕捉するので、一般の抗体等に比べて該標的に対する親和性や認識特異性に顕著に優れる。
【0087】
本発明の機能性分子は、上述した各種方法をはじめ、適宜選択した方法により製造することができるが、後述する本発明の機能性分子の製造方法により、好適に製造することができる。
本発明の機能性分子は、抗体を上回る親和性及び認識特異性を有し、各種分野に幅広く応用可能であり、例えば、特定の蛋白質に対する親和性を有するものの場合には、薬品、ドラッグデリバリー、蛋白質のスクリーニング等の分野に好適に使用可能であり、特定のDNA配列に対する親和性を有するものの場合には、遺伝子異常による疾病の克服やその遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明等に好適に使用可能であり、反応中間体をミックした分子に親和性を有する場合には、該反応を効率よく進めるための触媒の開発等に好適に使用可能である。
【0088】
(機能性分子の製造方法)
本発明の機能性分子の製造方法は、本発明の前記機能性分子の製造方法であって、合成工程と、選別工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
なお、本発明においては、前記標的に対する親和性が高く、優れた捕捉能を有する機能性分子を得る観点からは、前記合成工程及び前記選別工程の少なくともいずれか一方を繰り返して行ってもよいし、該合成工程と該選別工程とを交互に繰り返してもよい。
【0089】
前記合成工程は、一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を少なくとも有するリンカーと、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、該第一相補核酸配列が前記第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、該第二相補核酸配列が前記第二核酸配列に結合され、かつ前記標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有してなる機能性分子を合成する工程である。
なお、前記リンカー、前記第一標的捕捉部、及び前記第二標的捕捉部については、上述の通りである。
【0090】
前記リンカーが核酸で形成される場合には、該リンカーは、前記第一核酸配列、前記長さ調節領域、及び第二核酸配列まで、即ちその全長をDNAシンセサイザー等を用いて効率的にかつ連続的に合成することができる。
なお、前記リンカーが核酸で形成される場合、該リンカーにヘアピン構造部を形成して、互いに解離可能な二本鎖の構造を、一体化された一本鎖の構造としてもよい。具体的には、前記リンカーにおける第一核酸配列及び第二核酸配列を除く部位、即ち長さ調節領域を、DNAシンセサイザー等を用いて任意の核酸配列で形成し、かつ該任意の核酸配列の2つにおける少なくとも一部どうしを相補的結合により二本鎖とした後、該二本鎖部分を制限酵素で切断し、その切断末端にヘアピン構造を有する核酸配列の末端をリガーゼ等を用いて連結させることにより、一本鎖の構造とすることができる。
【0091】
前記第一標的捕捉部は、核酸で形成する場合には、DNAシンセサイザー等を用い、該第一標的捕捉部を合成した後で前記第一核酸配列を連続して合成することができ、あるいは、前記第一核酸配列を合成した後で該第一標的捕捉部を連続して合成することができる。また、前記第一標的捕捉部は、抗体等で形成する場合には、まず、該抗体等を用意又は合成した後で、DNAシンセサイザー等を用いて前記第一核酸配列を伸長させる又は伸長させた該第一核酸配列をこれに結合させることができ、あるいは、DNAシンセサイザー等を用いて前記第一核酸配列を伸長させた後で、別途に用意又は合成した抗体等をこれに結合させることができる。
前記第二標的捕捉部は、核酸で形成する場合には、DNAシンセサイザー等を用い、該第二標的捕捉部を合成した後で前記第二核酸配列を連続して合成することができ、あるいは、前記第二核酸配列を合成した後で該第二標的捕捉部を連続して合成することができる。また、前記第二標的捕捉部は、抗体等で形成する場合には、まず、該抗体等を用意又は合成した後で、DNAシンセサイザー等を用いて前記第二核酸配列を伸長させる又は伸長させた該第二核酸配列をこれに結合させることができ、あるいは、DNAシンセサイザー等を用いて前記第二核酸配列を伸長させた後で、別途に用意又は合成した抗体等をこれに結合させることができる。
【0092】
前記リンカーと、前記第一標的捕捉部と、前記第二標的捕捉部との結合の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知のハイブリダイゼーション等の技術により行うことができる。
【0093】
前記選別工程は、前記合成工程により合成した前記機能性分子を標的と作用させ、該機能性分子が該標的から解離する際の解離定数をモニターしながら該機能性分子を選別する工程である。
前記解離定数をモニターする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記機能性分子に、前記標的を含む標的含有溶液を作用させ、前記機能性分子を前記標的と結合させた後、該標的含有溶液中の標的濃度を段階的に上げて前記標的に結合した前記機能性分子を該標的から解離させることにより、行うことができる。この場合、前記標的との親和性及び認識特異性がより高い前記機能性分子を選別することができる点で好ましい。
前記選別の方法としては、特に制限はなく、上述した方法、例えば、前記標的を結合させたビーズを充填したカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどが好適に挙げられる。該アフィニティークロマトグラフィーによる場合、効率よく前記機能性分子を選別することができる点で好ましい
【0094】
前記選別においては、前記合成工程において合成した前記機能性分子か、使用する前記標的のいずれかが、標識物質により標識されているのが好ましい。この場合、該選別を効率的に行うことができる点で有利である。なお、前記標的としては、上述のものが挙げられる。
【0095】
前記標識物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、放射性同位元素、化学発光物質、蛍光物質、酵素、などが挙げられる。
【0096】
前記放射性同位元素としては、例えば、32P、33P、35S、等が挙げられる。
前記化学発光物質としては、例えば、アクリジニウムエステル、ルミノール、イソルミノール又はこれらの誘導体、等が挙げられる。
前記蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素、緑色蛍光蛋白質(GFP)、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)等の希土類キレート、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、4−メチルウンベリフェロン、7−アミノ−4−メチルクマリン、Cy3、Cy5、等が挙げられる。
前記酵素としては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、等が挙げられる。
【0097】
前記解離定数をモニターする方法において、前記選別を行うタイミングとしては、特に制限はないが、例えば、前記解離定数が10―5であるときに行うのが好ましく、10−8であるときに行うのがより好ましい。
前記解離定数が大きすぎると、洗浄中に完全に解離してしまい測定することができないことがある。
なお、前記解離定数は、例えば、サーフェスプラズモン共鳴を用いた測定機器により測定することができる。
【0098】
本発明の機能性分子の製造方法により、前記標的に対する親和性が既存の抗体よりも高く、該標的の捕捉性に極めて優れた本発明の機能性分子を効率的にかつ簡便に製造することができる。
【0099】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
前記標的としてリンパ球表面抗原クラスターナンバー4(CD4)細胞を用い、該CD4細胞を捕捉可能な機能性分子を以下のようにして製造(合成及び同定)した。
【0101】
即ち、まず、抗CD4マウスIgG(Fab)フラグメントに、常法に従って合成した下記式で表されるDNA1を結合させ、前記第一標的捕捉部(Fab−DNA1)を作製した。
【0102】
【化4】
Figure 2004337022
【0103】
次に、抗CD4マウスIgG(Fab’)フラグメントに、常法に従って合成した下記式で表されるDNA2を結合させ、前記第二標的捕捉部(Fab’−DNA2)を作製した。
【0104】
【化5】
Figure 2004337022
【0105】
次に、DNAシンセサイザー(DNA自動合成機)を用いて、下記に示すリンカーを合成し、該リンカーを含むランダム重合体プールを作製した。
なお、該リンカーにおいて、下記配列番号3で表される核酸配列(塩基配列)は、前記第一核酸配列であり、下記配列番号4で表される核酸配列(塩基配列)は、前記第二核酸配列であり、下記リンカー50量体(N50)は、ランダムな50塩基による配列で形成された前記長さ調節領域である。
<リンカー>
GTACGATGACGACCAATACTACGA(配列番号3)−リンカー50量体(N50)−ACTACGATTAGGACGATCATGAGC(配列番号4)
【0106】
前記ランダム重合体プールに、前記第一捕捉部(Fab−DNA1)及び前記第二捕捉部(Fab’−DNA2)を加え、前記リンカーと作用させると、該第一捕捉部における第一相補核酸配列(DNA1)と、前記リンカーにおける前記第一核酸配列(配列番号3)とがハイブリダイゼーションし、前記第二標的捕捉部における第二相補核酸配列(DNA2)と、前記リンカーにおける前記第二核酸配列(配列番号4)とがハイブリダイゼーションした。その結果、(Fab−DNA1)−(リンカー)−(Fab’−DNA2)の構造を有する機能性分子が得られる。以上が、本発明の前記機能性分子の製造方法における前記合成工程である。
【0107】
次に、得られた機能性分子を用い、標的である前記CD4に対する親和性を解離定数により評価し、該CD4に強く結合し、捕捉能(親和性)が高い機能性分子の選別を行った。即ち、まず、前記CD4で表面をコートしたビーズを充填したアフィニティーカラムを用意し、該アフィニティーカラムに前記機能性分子を含む溶液を流して一定条件に放置し、該CD4と親和性を示す機能性分子を前記アフィニティーカラムに吸着させた。
次に、抗CD4マウスIgG(Fab)フラグメントが溶出してくる前記CD4濃度(5nM)よりも高い濃度の前記CD4溶液(50nM)をアフィニティーカラムに流し、溶出してきた機能性分子を集めた。以上が本発明の機能性分子の製造方法における前記選別工程である。
【0108】
そして、以下、前記合成工程と前記選別工程とを繰り返し、前記CD4により親和性の高い機能性分子を得た。
即ち、まず、集めた該機能性分子におけるリンカーを、下記プライマーを用いてPCR法により複製し、増幅した。
<プライマー>
GTACGATGACGACCAATACTACGA(配列番号5)
【0109】
この複製し増幅したリンカーをランダム重合体プールに用い、該ランダム重合体プールに、前記第一捕捉部(Fab−DNA1)及び前記第二捕捉部(Fab’−DNA2)を加えて、上述のように前記合成工程における操作を行い、(Fab−DNA1)−(リンカー)−(Fab’−DNA2)の構造を有する機能性分子を得た。
次に、この機能性分子について上述の前記選別工程を以下のようにして行った。即ち、第1回目の選別工程よりも高い濃度のCD4溶液(100nM)を用い、該CD4溶液によって溶出してきた機能性分子を集めた。
【0110】
集めた該機能性分子におけるリンカーを上述のようにPCR法で複製し増幅して、第3回目のランダム重合体プールに用いた。この操作を溶出するCD4溶液の濃度を変え(0〜10μM)、第8回目まで繰り返して行った(第3回目から第8回目の合成工程と選別工程とを繰り返し行った)。
【0111】
第0回目〜第8回目までの各回のランダム重合体プールについてCD4と機能性分子との解離定数を表面プラズモン共鳴法により測定した。結果を図6に示す。なお、第0回目については、抗CD4マウスIgG(Fab)フラグメントのみが溶出してくる解離定数を意味している。
図6の結果から、前記第一捕捉部としての抗CD4マウスIgG(Fab)フラグメントと、前記第二捕捉部としての抗CD4マウスIgGF(ab’)フラグメントとを前記リンカーで繋いた機能性分子を作製し、これを用いて、前記CD4に対する解離定数をモニターしながら適切なリンカーを選別することによって、即ち、前記CD4溶液中のCD4濃度を段階的に上げ、該CD4に結合した前記機能性分子を該CD4から解離させる操作を、該機能性分子と該CD4との解離定数をモニターしながら繰り返すことにより、前記抗CD4マウスIgG(Fab)フラグメント単独の場合に比べて10倍も高い親和性を有する、(Fab−DNA1)−(リンカー)−(Fab’−DNA2)の構造を有する機能性分子(図1)が得られることが確認された。
【0112】
(実施例2)
実施例1において、前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部を、以下のようにして合成した前記修飾オリゴヌクレオチド配列に変えた以外は、実施例1と同様にして機能性分子を製造した。なお、前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部としての該修飾オリゴヌクレオチド配列は、特定の蛋白質に対し親和性を有する。
【0113】
まず、下記式に示す反応により、シトシンにおける5位から6種の官能基を持つデオキシシチジン類縁体(C1−6)、及び、ウラシルにおける5位から6種の官能基を持つデオキシウリジン類縁体(U1−6)を各々合成(作製)した。
【0114】
【化6】
Figure 2004337022
【0115】
【化7】
Figure 2004337022
【0116】
次に、合成(作製)した12種の修飾ヌクレオシド2量体を、DNAを構成する4種のヌクレオシドを1対1に組合せた下記に示す対応表の16個のパターンから選ばれるいずれかと、1対1に対応付けした。
【0117】
【表3】
Figure 2004337022
【0118】
次に、ホスホルアミダイト法により、上記対応表に示す12種の修飾オリゴヌクレオチドアミダイト(M)を化学合成した。具体的には、例えば、修飾ヌクレオチド2量体(AU)は、下記式に示すように、デオキシアデノシンと修飾デオキシウリジンとから合成することができる。
【0119】
【化8】
Figure 2004337022
但し、前記式において、DMTrは、ジメトキシトリチル基を表す。
【0120】
そして、ヌクレオチド固定配列20量体DNA(N20)}の5’−32P放射性ラベル標品(予め修飾塩基を含むヌクレオチドモノマーに放射性元素をラベルしたもの)を作製した。図5に示すようなDNAシンセサイザーを用いて、固定オリゴヌレオチド配列20量体(N20)−修飾オリゴヌクレオチドランダム配列20量体(M20)−固定オリゴヌクレオチド配列20量体(N20)からなるランダムオリゴヌクレオチドN20−M20−N20(DNA80量体)を含むランダム重合体プールを作製した。以上が、前記修飾オリゴヌクレオチド配列製造工程である。
【0121】
一方、ラット肝臓組織から常法に従って細胞質画分を精製した。この画分に含まれる蛋白質混合物を常法に従って一次元目等電点電気泳動(pH4〜7)を行った後、二次元目電気泳動としてSDS−PAGEを行った。電気泳動した後、ウエスタンブロット法によりニトロセルロース膜に、前記蛋白質混合物中の蛋白質をブロッティングした。
【0122】
そして、図6に示すフローに従って、特定の修飾オリゴヌクレオチド配列を選別し、その配列を決定し、翻訳した。
即ち、この放射性ラベルされた修飾オリゴヌクレオチド配列を含むランダム重合体プールであるN202020(DNA80量体)の希釈溶液に、蛋白質混合物を固定したニトロセルロース膜を浸して1時間震盪した。その後、このニトロセルロース膜を緩衝溶液で洗浄して非特異的な残留物を除去し、X−rayフィルムを用いて該ニトロセルロース膜上における放射能の強い位置(放射性ラベルされた修飾オリゴヌクレオチドが強く結合した位置)を同定した。以上が前記修飾オリゴヌクレオチド配列についての前記選別工程である。
【0123】
前記ニトロセルロース膜上の放射能の強い位置30箇所を切り取り、イオン溶液(3M Na Acetate pH=4.8、0.1%ブロモフェノールブルー溶液)中で電圧を印加してエレクトロエリューションにより修飾オリゴヌクレオチド配列を回収した。各々の溶液中の放射能を確認した後、固定配列の相補鎖をプライマーとするPCR法によってDNAを増幅した。各々のPCR産物をアクリルアミドゲル電気泳動により確認した結果、28種類の修飾オリゴヌクレオチド配列の明確なバンドが確認できた。得られた28種類の前記修飾オリゴヌクレオチド配列について、各々プラスミドベクターを用いてクローニングを行い、核酸配列を決定した。以上が前記配列決定工程である。そして、該核酸配列を上記対応表に基づいて翻訳した。以上が前記翻訳工程である。
【0124】
得られた修飾オリゴヌクレオチド配列は、二次元電気泳動で分離された蛋白質を特異的に認識できることが確認できた。また、入手可能な蛋白質について解離定数を表面プラズモン共鳴法により測定した結果、1.0×10−7〜1.0×10−9であり、親和性を示すことが確認された。
【0125】
−機能性分子の作製−
得られた28種類の前記修飾オリゴヌクレオチド配列の中から特定の蛋白質(Transferrin)と親和性のある2種類の修飾オリゴヌクレオチド配列(修飾オリゴヌクレオチド−1及び修飾オリゴヌクレオチド−2)を前記第一標的捕捉部及び前記第二標的捕捉部として選択した。
この2種類の修飾オリゴヌクレオチド配列における特定の蛋白質(Transferrin)との解離定数を表面プラズモン共鳴法により測定した結果、1.0×10−8であった。
【0126】
この2種類の修飾オリゴヌクレオチド配列を実施例1と同様にしてランダム重合体プールに加えて、(修飾オリゴヌクレオチド−1)−(リンカー)−(修飾オリゴヌクレオチド−2)の構造を有する機能性分子(図3)を製造した。
【0127】
5回以上選別して得られた機能性分子について、特定の蛋白質(Transferrin)との解離定数を表面プラズモン共鳴法により測定した結果、10−10〜10−12であった。
この結果から、2種類の前記修飾オリゴヌクレオチドをリンカーで繋いでなる本発明の機能性分子は、該修飾オリゴヌクレオチド単独の場合よりも高い親和性を有することが確認された。
【0128】
ここで、本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を有するリンカーと、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、該第一相補核酸配列が前記第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、該第二相補核酸配列が前記第二核酸配列に結合され、かつ前記標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有してなることを特徴とする機能性分子。
(付記2) 第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部が、同種の標的の異なる箇所を捕捉可能である付記1に記載の機能性分子。
(付記3) 第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部が、1つの標的の異なる箇所を捕捉可能である付記2に記載の機能性分子。
(付記4) 第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部が、抗体、該抗体を除く蛋白質、アプタマー及びこれらの一部から選択される少なくとも1種である付記1から3のいずれかに記載の機能性分子。
(付記5) 第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部が、核酸を構成するヌクレオシドに置換基が導入された修飾ヌクレオシドを含む修飾ヌクレオチド重合体である付記1から3のいずれかに記載の機能性分子。
(付記6) 修飾ヌクレオチド重合体の種類が、5〜4種である付記5に記載の機能性分子。
(付記7) 修飾ヌクレオチドn量体が修飾ヌクレオチド2量体であり、該修飾ヌクレオチド2量体の種類が5〜16種である付記5から6のいずれかに記載の機能性分子。
(付記8) 修飾ヌクレオチドn量体が修飾ヌクレオチド3量体であり、該修飾ヌクレオチド3量体の種類が5〜56種である付記5から6のいずれかに記載の機能性分子。
(付記9) 置換基が、ヌクレオシドにおけるピリミジン塩基の5位に導入された付記5から8のいずれかに記載の機能性分子。
(付記10) 置換基が、下記構造式(I)で表される基から選択される付記15から9のいずれかに記載の機能性分子。
【化9】
Figure 2004337022
(付記11) 標的の異なる部位が、リガンド及び抗原決定基から少なくとも選択される付記2から3のいずれかに記載の機能性分子。
(付記12) 標的が、蛋白質、リポ蛋白質、糖蛋白質、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類、核酸、環境ホルモン、薬物、及びこれらの複合体から選択される少なくとも1種である付記1から11のいずれかに記載の機能性分子。
(付記13) リンカーにおける第一核酸配列及び第二核酸配列を除く部位が、任意の核酸配列で形成された付記1から12のいずれかに記載の機能性分子。
(付記14) リンカーが、ヘアピン構造部を少なくとも一部に有する付記1から13のいずれかに記載の機能性分子。
(付記15) リンカーにおける任意の核酸配列が、20塩基以上で形成された付記1から14のいずれかに記載の機能性分子。
(付記16) リンカーにおける任意の核酸配列が、核酸シンセサイザー(核酸自動合成機)により合成される付記1から15のいずれかに記載の機能性分子。
(付記17) 付記1から16のいずれかに記載の機能性分子の製造方法であって、
一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を有するリンカーと、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、該第一相補核酸配列が前記第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、該第二相補核酸配列が前記第二核酸配列に結合され、かつ前記標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有してなる機能性分子を合成する合成工程と、
該機能性分子を標的と作用させ、該機能性分子が該標的から解離する際の解離定数をモニターしながら該機能性分子を選別する選別工程と
を少なくとも含むことを特徴とする機能性分子の製造方法。
(付記18) 選別工程において、解離定数を、機能性分子に、標的を含む標的含有溶液を作用させ、該標的含有溶液中の標的濃度を段階的に上げて前記標的に結合した前記機能性分子を該標的から解離させることによりモニターする付記17に記載の機能性分子の製造方法。
(付記19) 選別工程において、解離定数が10−8であるときに機能性分子を選別する付記17から18のいずれかに記載の機能性分子の製造方法。
(付記20) 選別工程において、選別が、標的を結合させたビーズを充填したカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより行われる付記17から19のいずれかに記載の機能性分子の製造方法。
(付記21) 合成工程において、リンカーにおける第一核酸配列及び第二核酸配列を除く部位を、任意の核酸配列で合成し、かつ該任意の核酸配列を、2つの核酸配列の少なくとも一部どうしを相補的結合により二本鎖とした後、該二本鎖部分を制限酵素で切断し、その切断末端にヘアピン構造を有する核酸配列の末端を連結させて一本鎖として合成する付記17から20のいずれかに記載の機能性分子の製造方法。
(付記22) 合成工程において、任意の核酸配列を、DNAシンセサイザーを用いて合成する付記17から21のいずれかに記載の機能性分子の製造方法。
【0129】
【発明の効果】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、多種の標的(標的物質)に対し、従来における抗体以上の高い親和性及び認識特異性を示し、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などに応用可能であり、特に蛋白質の解析・スクリーニング等に好適な機能性分子、及び、該機能性分子を安価にかつ効率よく製造することができる機能性分子の製造方法を提供することができる。
【0130】
【配列表】
Figure 2004337022
Figure 2004337022

【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部として抗体を有する本発明の機能性分子の一例を示す概略説明図である。
【図2】図2は、図1に示す機能性分子におけるリンカーがヘアピン構造部を有する態様の一例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部として修飾オリゴヌクレオチド配列を有する本発明の機能性分子の一例を示す概略説明図図である。
【図4】図4は、図3に示す機能性分子におけるリンカーがヘアピン構造部を有する態様を示す概略説明図である。
【図5】図5は、ランダム重合体プールを合成するのに用いるDNAシンセサイザーの一例を示す概略説明図である。
【図6】図6は、第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部としての修飾オリゴヌクレオチド配列を製造する工程例を説明するための概略図である。
【図7】図7は、第0回目〜第8回目までの各回のランダム重合体プールについて、CD4と機能性分子との解離定数を表面プラズモン共鳴法により測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
3 任意の核酸配列
5 第一核酸配列
6 第二核酸配列
7 第一標的捕捉部
8 第二標的捕捉部
9 ヘアピン構造部
10 リンカー
15 ノズル
20 第一相補核酸配列
21 第二相補核酸配列

Claims (5)

  1. 一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を有するリンカーと、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、該第一相補核酸配列が前記第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、該第二相補核酸配列が前記第二核酸配列に結合され、かつ前記標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有してなることを特徴とする機能性分子。
  2. 第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部が、1つの標的の異なる箇所を捕捉可能である請求項1に記載の機能性分子。
  3. 第一標的捕捉部及び第二標的捕捉部が、核酸を構成するヌクレオシドに置換基が導入された修飾ヌクレオシドを含む修飾ヌクレオチド重合体である請求項1から2のいずれかに記載の機能性分子。
  4. リンカーにおける第一核酸配列及び第二核酸配列を除く部位が、任意の核酸配列で形成された請求項1から3のいずれかに記載の機能性分子。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の機能性分子の製造方法であって、
    一端に第一核酸配列を有し、他端に第二核酸配列を有するリンカーと、前記第一核酸配列に相補的に結合可能な第一相補核酸配列を有し、該第一相補核酸配列が前記第一核酸配列に結合され、かつ標的を捕捉可能な第一標的捕捉部と、前記第二核酸配列に相補的に結合可能な第二相補核酸配列を有し、該第二相補核酸配列が前記第二核酸配列に結合され、かつ前記標的を捕捉可能な第二標的捕捉部とを有してなる機能性分子を合成する合成工程と、
    該機能性分子を標的と作用させ、該機能性分子が該標的から解離する際の解離定数をモニターしながら該機能性分子を選別する選別工程と
    を少なくとも含むことを特徴とする機能性分子の製造方法。
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