JP2004334923A - 光ピックアップ用サスペンションワイヤおよびその製造方法 - Google Patents

光ピックアップ用サスペンションワイヤおよびその製造方法 Download PDF

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Yoichi Okada
洋一 岡田
Hidenori Harada
秀則 原田
Kenji Saka
研二 坂
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Abstract

【課題】安定したフォーカシングサーボ制御・トラッキングサーボ制御を可能にしつつ光ディスク装置の高速回転化を実現すると共に、外部からの衝撃によっても変形しにくい光ピックアップ用サスペンションワイヤおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ヤング率が270GPa〜420GPaで引張り強さが1800MPa〜4800MPaである光ピックアップ用サスペンションワイヤ1により、上記課題を解決する。また、タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料とする光ピックアップ用サスペンションワイヤ1により、上記課題を解決する。タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料とするときは、その外周に半田付け可能な金属被覆層3を有する光ピックアップ用サスペンションワイヤ2とすることが望ましい。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ピックアップ用サスペンションワイヤ(以下、サスペンションワイヤともいう。)およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、光ディスク装置の高速回転化を実現し、または、外部からの衝撃によっても変形しにくいという利点を有する光ピックアップ用サスペンションワイヤおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
サスペンションワイヤは、広く一般にはリン青銅およびベリリウム銅をワイヤ材料とするものであり、光ディスク装置において、光ピックアップ対物レンズアクチュエータ可動部を懸架すると共に電線として使用されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【0003】
図6は、光ディスク装置の光ピックアップ対物レンズアクチュエータ(以下、対物レンズアクチュエータという。)の従来例を示す斜視図である(例えば、特許文献2を参照)。対物レンズアクチュエータ601は、対物レンズアクチュエータ可動部(以下、アクチュエータ可動部602という。)とサスペンションワイヤ603と支持板604とから主に構成され、そのアクチュエータ可動部602は、対物レンズ605を保持した対物レンズホルダ606と、フォーカシングコイル607およびトラッキングコイル608とを備えている。また、サスペンションワイヤ603は、その一端が対物レンズホルダ606のコイル端子板609に半田付けにより接続され、他端が支持板604の端子板610に半田付けにより接続されている。アクチュエータ可動部602の近傍には、一対のマグネット611が相対向して配置されている。
【0004】
光ディスク装置においては、対物レンズ605を透過したレーザー光の焦点が正確に記録媒体上の記録位置に一致するように制御されている。その際、記録媒体は面振れおよび偏心しながら回転しているが、対物レンズ605がフォーカシング方向(F1方向)およびトラッキング方向(F2方向)に位置調整されることにより、絶えず変動する焦点距離が調節され、また、記録媒体上の記録位置が検出されている。
【0005】
対物レンズ605の位置調整は、フォーカシングコイル607およびトラッキングコイル608に流れる電流とマグネット611による磁束との相互作用で生じる電磁力によって、アクチュエータ可動部602をF1方向およびF2方向に駆動することにより行われている。この位置調整は、アクチュエータ可動部602を懸架するサスペンションワイヤ603のばね定数に応じて行われる。
【0006】
こうした対物レンズアクチュエータの動作機構は固有振動モードを持っており、その固有周波数と等価の周波数でアクチュエータ可動部602が駆動されると、アクチュエータ可動部602が共振してしまうということがある。そのため、このような共振が発生しないように、アクチュエータ可動部602の一次共振周波数が設定されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−302817号公報(段落番号0004)
【特許文献2】
特開2000−156117号公報(図4、段落番号0002〜0004)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
光ディスク装置には、光ディスクの高速回転化の要請により迅速なサーボ制御(サーボ制御とは、フォーカシング制御およびトラッキング制御をいう。)が求められている。そのため、その光ディスク装置に装着されるサスペンションワイヤに対しても、良好な感度(入力信号に対する応答速度)が要求されている。その感度を上げる方法の一つとして、サスペンションワイヤの細径化が挙げられる。
【0009】
しかしながら、従来のリン青銅やベリリウム銅をワイヤ材料としたサスペンションワイヤを用いた場合であっても、その径を細くすると、アクチュエータ可動部の一次共振周波数を低く設定せざるをえず、対物レンズ焦点の調節および記録位置の検出精度が低下する結果となった。そのため、サスペンションワイヤの細径化には限界があった。こうしたワイヤ径の細径化の限界は、安定したサーボ制御と高速回転を可能とする光ディスク装置の実現を困難とするものであり、特にDVD(Digital Versatile Disk)等の記録媒体の読み取り・書き込み速度のより一層の高速化の要請に応えられないという問題があった。
【0010】
また、従来のサスペンションワイヤは材料強度が低いため、そのようなサスペンションワイヤが組み込まれたCD(Compact Disk)やMD(Mini Disk)等の記録媒体の再生・記録装置が製品として市場に出た後に過酷な環境下で使用されると、衝撃などによりサスペンションワイヤが曲がってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、その目的は、光ディスク装置の高速回転化に対応でき、さらに、外部からの衝撃に強い光ピックアップ用サスペンションワイヤおよびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の第1形態に係る光ピックアップ用サスペンションワイヤは、ヤング率が270GPa〜420GPaで、引張り強さが1800MPa〜4800MPaであることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、サスペンションワイヤが270GPa〜420GPaの高いヤング率を有するので、そのサスペンションワイヤを用いる光ディスク装置においては、そのサスペンションワイヤで懸架されるアクチュエータ可動部の一次共振周波数を低く設定せずともサスペンションワイヤのさらなる細径化を実現できる。その結果、安定したサーボ制御と高速回転が可能な光ディスク装置を得ることができる。また、サスペンションワイヤが1800MPa〜4800MPaの高い引張り強さを有するので、光ディスク装置に衝撃が加わっても装着されたサスペンションワイヤが曲がり難い。その結果、衝撃に強い光ディスク装置を得ることができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の第2形態に係る光ピックアップ用サスペンションワイヤは、タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料とすることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、タングステンまたはレニウム−タングステンからなるサスペンションワイヤは高いヤング率と引張り強度をもっているので、そのサスペンションワイヤを用いる光ディスク装置においては、そのサスペンションワイヤで懸架されるアクチュエータ可動部の一次共振周波数を低く設定せずともサスペンションワイヤのさらなる細径化を実現して安定したサーボ制御と高速回転が可能な光ディスク装置を得ることができると共に、光ディスク装置に衝撃が加わっても装着されたサスペンションワイヤが曲がり難く、衝撃に強い光ディスク装置を得ることができる。
【0016】
本発明の第2形態に係る光ピックアップ用サスペンションワイヤにおいては、前記レニウム−タングステン中のレニウム含有量が1〜30重量%、残部がタングステンであることが好ましい。
【0017】
また、本発明の第2形態に係る光ピックアップ用サスペンションワイヤにおいて、前記光ピックアップ用サスペンションワイヤの表面に半田付け可能な金属被覆層が形成されていること好ましい。
【0018】
上記課題を解決するための本発明の光ピックアップ用サスペンションワイヤの製造方法は、タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料とする光ピックアップ用サスペンションワイヤの製造方法であって、所定の断面形状に加工された金属細線を電流焼鈍する際に当該金属細線の軸方向に張力を加えて直線矯正する直線矯正工程を有することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、融点が高く焼鈍温度の高いタングステン線またはレニウム−タングステン線を電流焼鈍する際に当該金属細線の軸方向に張力を加えることにより直線矯正することができ、その結果、光ピックアップ用のサスペンションワイヤとして好ましい真直度を与えることができる。真直度のよいサスペンションワイヤは、光ディスク装置に好ましく使用される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基いて説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0021】
(サスペンションワイヤ)
図1は、半田付け可能な金属被膜層が形成されていないサスペンションワイヤ1の一例を示す断面図であり、図2は、図1に示すサスペンションワイヤ1に半田付け可能な金属被覆層3が形成されたサスペンションワイヤ2の一例を示す断面図である。
【0022】
本発明のサスペンションワイヤ1は、ヤング率が270GPa〜420GPaで、引張り強さが1800MPa〜4800MPaの金属細線からなるものである。この範囲の特性を有するサスペンションワイヤは、上述した作用効果を発揮することができる。なお、上記特性を有する金属細線の材質については特に限定されず、存在しうる各種の金属材料、合金材料または複合金属材料を適用することができる。
【0023】
上記特性を有するサスペンションワイヤを用いた光ディスク装置は、光ディスクの高速化やサーボ制御の高精度化且つ安定化という要求性能に合わせて、より広い範囲内でサスペンションワイヤの径を選択することができるというメリットがある。すなわち、サスペンションワイヤが上記範囲のヤング率を有するので、光ディスク装置において、サスペンションワイヤで懸架されるアクチュエータ可動部の一次共振周波数を、(i)高周波側にシフトさせつつサスペンションワイヤ1の径を細くすることや、(ii)より一層高周波側にシフトさせることができる。その結果、サーボ制御の安定性を向上させながら高速回転化が可能な光ディスク装置や、サーボ制御の極めて安定した光ディスク装置が実現できる。
【0024】
例えば、ヤング率270GPa〜420GPaのサスペンションワイヤを用いた光ディスク装置と、ベリリウム銅やりん青銅からなるサスペンションワイヤを用いた光ディスク装置とを比較してみると、両者の光ディスク装置に同一の一次共振周波数を設定する場合、ヤング率270GPa〜420GPaのサスペンションワイヤの直径を、ベリリウム銅やりん青銅からなる従来のサスペンションワイヤの約10分の7程度まで細径化することが可能となる。また、両者のサスペンションワイヤの直径を同一にした場合には、ヤング率270GPa〜420GPaのサスペンションワイヤを用いた場合における光ディスク装置の一次共振周波数を、ベリリウム銅やりん青銅からなる従来のサスペンションワイヤを用いた場合における光ディスク装置の一次共振周波数の約2倍まで高周波側に設定することができる。
【0025】
より具体的には、例えば、上記範囲のヤング率を有するサスペンションワイヤ(例えば、タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料としたサスペンションワイヤ)を用いた光ディスク装置の一次共振周波数を44Hzに設定した場合、サスペンションワイヤの直径を0.075mm〜0.085mmと細径化することができる。一方、ヤング率が130GPaのサスペンションワイヤ(例えば、ベリリウム銅をワイヤ材料としたサスペンションワイヤ)を用いた光ディスク装置の一次共振周波数を44Hzに設定した場合、そのサスペンションワイヤの直径は0.1mmとなる。
【0026】
本発明においては、上記特性を有するサスペンションワイヤとして、タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料としたサスペンションワイヤを好ましく挙げることができる。これらのワイヤ材料には、不可避不純物が存在していてもよい。
【0027】
ワイヤ材料としてレニウム−タングステンを用いた場合においては、レニウム−タングステン中のレニウム含有量が1〜30重量%であり、残部がタングステンであることが好ましい。上記範囲のレニウムを含有するタングステンは、レニウムを含有しないタングステンに比べてヤング率と引張り強さをより高めることができる。レニウム含有量を高めに設定した場合には、本発明の効果をより一層高めることができるので好ましい。例えば、レニウム含有量が30重量%で残部がタングステンであるレニウム−タングステンは、ヤング率が420GPaで、引張り強さが4800MPaとなる。なお、ヤング率および引張り強さは、引張り強度試験機によって測定されたデータをもとに算出される。
【0028】
サスペンションワイヤ1は、真直度が曲率半径でR1500mm以上であることが好ましい。このような真直度を有するサスペンションワイヤは、精度の高いサーボ制御を可能とさせる。また、サスペンションワイヤ1は、フォーカシングコイルまたはトラッキングコイルに電流を供給する電線の役割を有するため、20%IACS以上の導電率を有することが好ましいが、これに満たない導電率を有する金属細線をワイヤ材料とする場合には、その金属細線を金属心線として、その外周に高導電率金属層を被覆してもよい。なお、上述したタングステンまたはレニウム−タングステンは20%IACS以上の導電率を有している。
【0029】
サスペンションワイヤ1の線状は特に限定されず、ワイヤ材料となる金属細線の断面形状が丸形状であっても四角形状であってもよい。金属細線の断面形状を四角形状とした場合には、その断面の厚さや幅を小さくすることができる。また、サスペンションワイヤ1は、磁性を有しない材料であることが好ましい。磁性を有する材料は、コイルおよび磁石を使用した対物レンズアクチュエータでは使用に適さない。
【0030】
サスペンションワイヤ1の表面には、半田付け可能な金属被覆層を形成することができる。具体的には、半田付けが困難なワイヤ材料でサスペンションワイヤ1を作製した場合には、図2に示すように、その外周に半田付け可能な金属被覆層が形成されていることが好ましい。
【0031】
半田付け可能な金属被覆層3としては、半田付け可能な金属または合金として従来より一般に知られているニッケル、銀、金、銅、錫、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−鉛合金または錫−ビスマス合金等を上げることができる。なお、これらの各金属または合金には、精製時または成膜時等に不可避的に含まれる不可避不純物が含まれていてもよい。また、半田付け可能な金属被覆層3の被覆手段については特に限定されないが、例えば電気めっき、無電解めっき、溶融塩電解、溶融めっき等の各種の手段を適用できる。半田付け可能な金属被膜層3の膜厚は、その金属被覆層の半田ぬれ性等によっても異なるが、通常0.1μm〜10μmであることが好ましい。なお、上述したタングステンおよびレニウム−タングステンは半田付けが困難な金属であるので、タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料とするサスペンションワイヤには、上記の半田付け可能な金属被覆層3を形成させることが望ましい。なお、半田付け可能な金属被覆層3が形成されたサスペンションワイヤ2においても、真直度が曲率半径でR1500mm以上であることが好ましい。
【0032】
(サスペンションワイヤの製造方法)
図3は、本発明のサスペンションワイヤ1の製造方法の一例を示す概略図である。本発明のサスペンションワイヤ1の製造方法は、所定の断面形状に加工された金属細線4を電流焼鈍する際に当該金属細線4の軸方向に張力を加えて直線矯正する直線矯正工程を有するものである。
【0033】
金属細線4としては、予め所定の断面形状に加工されたタングステン線またはレニウム−タングステン線が使用され、供線装置101から繰り出される。供線装置101から繰り出された金属細線4は、電流焼鈍装置102に入り、一対の電極ロール103、103間に印加された電流の作用により電流焼鈍される。金属細線4が電流焼鈍される際に、その金属細線4の軸方向に所定の張力を加えることにより、金属細線4が直線矯正されて本発明の光ピックアップ用サスペンションワイヤ1となる。直線矯正されたサスペンションワイヤ1は、巻取装置105により巻き取られた後、切断や梱包等の後工程に供される。
【0034】
電流焼鈍装置102は、図3に示すように、金属細線4を焼鈍するための電流を与える一対の電極ロール103,103と、電流焼鈍装置内を水素雰囲気にするための水素導入口104とを備えている。電極ロール103,103に印加される電流は、金属細線4の軸方向に張力を加えた際に直線矯正できる程度の温度となるように調製される。その電流値は特に限定されず、金属細線4の種類、導電率、断面積等により実験により設定される。また、金属細線4をどの程度の温度になるまで加熱するかについても特に限定されず、加えられる張力や、金属細線4の線速、種類、導電率、断面積等により実験により設定される。なお、タングステン線またはレニウム−タングステン線は、3300℃を超える非常に高い融点を有するので、このような材料からなる金属細線を用いることにより、電流焼鈍時に張力を印加して直線矯正することができ、真直度の高いサスペンションワイヤを得ることができる。
【0035】
金属細線4に加える張力は、金属細線4に与える真直度に応じて、線速、種類、導電率、断面積等を考慮して実験により設定される。
【0036】
次に、半田付け可能な金属被覆層3を有するサスペンションワイヤ2の作製方法について説明する。図4は、半田付け可能な金属被覆層3をサスペンションワイヤ1の外周に形成する工程の一例を示す概略図である。
【0037】
半田付け可能な金属被覆層3を有するサスペンションワイヤ2は、供線装置201から繰り出されたサスペンションワイヤ1上に半田付け可能な金属のめっき208を行うことにより作製することができる。
【0038】
めっき208は、半田付け可能な金属被覆層3の種類に対応しためっき液が入っためっき槽内にサスペンションワイヤ1を通過させることにより行う。めっき槽の長さやめっき槽内を通過するサスペンションワイヤ1の線速は、サスペンションワイヤ1に形成させる半田付け可能な金属被覆層3の厚さによって決定される。めっき208は、図4に示すような電気めっきの他、無電解めっき、溶融塩電解、溶融めっき等の方法を適用可能である。
【0039】
めっき208の前後には、半田付け可能な金属被覆槽3が形成し易くさせる前処理と、めっき液等が半田付け可能な金属被覆層3を有するサスペンションワイヤ2に残留するのを防ぐための後処理とが行われる。前処理としては、図4に示すような水酸化ナトリウム電解研磨203、水洗204、酸洗い205、水洗206等を例示できる。後処理としては、水洗209、乾燥210等を例示できる。なお、符号202と符号207は、ぞれぞれ電解研磨用の給電ロールおよびめっき用の給電ロールである。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例に基づいてさらに詳しく説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
図3に示す直線矯正装置100を用い、先ず、外径0.1mmのタングステン丸線4’が巻かれた供線ボビンを供線装置101にセットし、次いで、そのタングステン丸線4’を供線装置101から張力200g、線速50m/minで供線して水素雰囲気に調製された電流焼鈍装置102へ導いた。タングステン丸線4’は、電極ロール103に電圧28V・電流15Aを印加することにより電流焼鈍されると共にその際に加わる張力により直線矯正される。直線矯正されたタングステン丸線は、その後連続して巻き取り装置105の巻き取りボビンに巻き取られ、ヤング率が370GPaで引張り強さが2800MPaのタングステン線からなるサスペンションワイヤ1’を得た。
【0042】
続いて、得られたサスペンションワイヤ1’を図4に示すめっき装置200の供線装置201から線速10m/minで供線し、水酸化ナトリウム電解研磨203、水洗204、酸洗い205、水洗206、錫めっき208’、水洗209、乾燥210を行って巻き取り装置211により巻き取った。こうして、真直度が曲率半径でR3000mmであって外径が0.102mm(膜厚が1μmの錫被覆層を含む)の実施例1のサスペンションワイヤを得た。
【0043】
なお、上述のヤング率は、JIS Z2241およびJIS H7405に基づき、引張り強度試験機(島津製作所社製、型番AG−I)により測定したデータから算出されたものであり、引張り強さは、JIS Z2241に基づき、引張り強度試験機(島津製作所社製、型番AG−I)により測定したデータから算出されたものである。
【0044】
(比較例1)
先ず、真直度が曲率半径でR2000mmに機械矯正された外径0.1mmのベリリウム銅丸線を所定の強度に熱処理した。その熱処理は、水素雰囲気下で350℃で行い、ヤング率が120GPaで引張り強さが1400MPaのベリリウム銅線からなるサスペンションワイヤを得た。
【0045】
得られたサスペンションワイヤを実施例1と同様のめっき装置41の供線装置42から線速10m/minで供線し、水酸化ナトリウム電解研磨、水洗、酸洗、水洗、錫めっき、水洗、乾燥を行って巻き取り装置53により巻き取った。こうして、外径0.102mm(膜厚が1μmの錫被覆層を含む)の比較例1のサスペンションワイヤを得た。
【0046】
(落下衝撃試験)
落下衝撃試験方法は、図5に示す方法により行った。先ず、実施例1のサスペンションワイヤ51の各両端を、対物レンズ52を保持した対物レンズホルダ53と支持板54とに計4本接続し、対物レンズアクチュエータ56を作製した。
その対物レンズアクチュエータ56を、100mm×100mm×20mmの鉄製落下衝撃試験治具57の内部に固定し、2mの高さからコンクリート床面へ自由落下させた。その時のサスペンションワイヤ51の変形の有無について調査した。次に、比較例のサスペンションワイヤ51’についても同様に対物レンズアクチュエータ56’を製造し、同様の試験方法でサスペンションワイヤ51’の変形の有無について調査した。
【0047】
(調査結果)
タングステンを材料とした実施例1のサスペンションワイヤは、試験数20本の総てが変形せず、外部からの衝撃に対する耐性に優れていた。一方、ベリリウム銅を材料とした比較例1のサスペンションワイヤは、試験数20本のうち14本が変形し、上記耐性に劣る結果となった。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のサスペンションワイヤによれば、サスペンションワイヤが高いヤング率を有するので、そのサスペンションワイヤを用いる光ディスク装置においては、そのサスペンションワイヤで懸架されるアクチュエータ可動部の一次共振周波数を低く設定せずともサスペンションワイヤのさらなる細径化を実現できる。その結果、安定したサーボ制御と高速回転が可能な光ディスク装置を得ることができる。また、サスペンションワイヤが高い引張り強さを有するので、光ディスク装置に衝撃が加わっても装着されたサスペンションワイヤが曲がり難い。その結果、衝撃に強い光ディスク装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ピックアップ用サスペンションワイヤの一例を示す断面図である。
【図2】半田付け可能な金属被覆層が形成された本発明の光ピックアップ用サスペンションワイヤの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の光ピックアップ用サスペンションワイヤの製造工程の一例を示す概略図である。
【図4】半田付け可能な金属被覆層が形成された本発明の光ピックアップ用サスペンションワイヤの製造工程の一例を示す概略図である。
【図5】落下衝撃試験方法を説明するための斜視図である。
【図6】光ピックアップ対物レンズアクチュエータの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 光ピックアップ用サスペンションワイヤ
1’ タングステン線からなるサスペンションワイヤ
2 半田付け可能な金属被覆層が形成されたサスペンションワイヤ
3 半田付け可能な金属被覆層
4 金属細線
4’ タングステン丸線
100 直線矯正装置
101 供線装置
102 電流焼鈍装置
103 電極ロール
104 水素ガス導入口
105 巻き取り装置
200 めっき装置
201 供線装置
202 給電ロール
203 水酸化ナトリウム電解研磨
204 水洗
205 酸洗い
206 水洗
207 給電ロール
208 めっき
208’ 錫めっき
209 水洗
210 乾燥
211 巻き取り装置

Claims (5)

  1. ヤング率が270GPa〜420GPaで、引張り強さが1800MPa〜4800MPaであることを特徴とする光ピックアップ用サスペンションワイヤ。
  2. タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料とすることを特徴とする光ピックアップ用サスペンションワイヤ。
  3. 前記レニウム−タングステン中のレニウム含有量が1〜30重量%、残部がタングステンであることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ用サスペンションワイヤ。
  4. 請求項2または請求項3に記載の光ピックアップ用サスペンションワイヤにおいて、当該光ピックアップ用サスペンションワイヤの表面に半田付け可能な金属被覆層が形成されていることを特徴とする光ピックアップ用サスペンションワイヤ。
  5. タングステンまたはレニウム−タングステンをワイヤ材料とする光ピックアップ用サスペンションワイヤの製造方法であって、所定の断面形状に加工された金属細線を電流焼鈍する際に当該金属細線の軸方向に張力を加えて直線矯正する直線矯正工程を有することを特徴とする光ピックアップ用サスペンションワイヤの製造方法。
JP2003124950A 2003-04-30 2003-04-30 光ピックアップ用サスペンションワイヤおよびその製造方法 Pending JP2004334923A (ja)

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