JP2004333229A - タンパク質の定量方法および定量キット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】組織もしくは細胞を前処理液に可溶化させて粗タンパク質溶液を調製する工程と、調製した粗タンパク質溶液を固相に接触させて粗タンパク質を固相に結合させる工程と、固相に結合した粗タンパク質中の目的タンパク質と特異的に結合する物質を用いて目的タンパク質を定量する工程と、を備えるタンパク質の定量方法を提供する。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質の定量方法および定量キット、詳しくは組織もしくは細胞の可溶化液に含有されるタンパク質の量を、簡便で同時に多項目定量する方法およびその方法に用いられるキットである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
癌組織は正常組織に比較して特定の複数のタンパク質の量が減少したり増加することが知られている。従って、疾患の種類や重篤度合いと、増減するタンパク質の種類に相関関係が見出される場合、該タンパク質の存在量を多項目測定することにより疾患の識別や悪性度の診断に用いられることが考えられる。
従来、組織から得られる可溶化液中に微量に含まれるタンパク質の定量には、サンドイッチELISA法やウエスタンブロット法を用いられることが知られている。
【0003】
サンドイッチELISA法は、目的とするタンパク質に特異的に結合する第1抗体と、第1抗体とは相違するが同様に目的タンパク質に特異的に結合する第2抗体との2種類の抗体を必要とする方法である。
より詳細には、第1抗体をマイクロタイタープレート中のウエルや多孔性膜または微粒子などの固相支持体上に固定化し、そこへタンパク質含有試料と反応させると、第1抗体と、それに対応するタンパク質とが結合する。次いで、容易にアッセイできる酵素で標識され、かつ目的タンパク質に特異性を有する第2抗体をさらに反応させると、第1抗体と結合したタンパク質に、第2抗体が結合する。その後、予め第2抗体に標識化された酵素に、その酵素の基質を反応させ、得られる生成物の量を測定することにより、目的とするタンパク質の量が測定できるという原理である。
【0004】
しかし、上記のようにサンドイッチELISA法では、1つの検出目的タンパク(抗原)に対し抗原と結合する結合部位が異なり、かつ互いに影響を及ぼさない独立した特異的抗体(第1抗体および第2抗体)が2つ必要である。また2回の抗体反応を行うため時間もかかる。
また、多項目測定を行うためには2つの特異抗体を開発する必要があり、膨大な手間と時間が必要である。
【0005】
一方、ウエスタンブロット法は、目的タンパク質を含む試料を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分画した後、ニトロセルロース膜やPVDF膜などの多孔性膜に転写し、この膜上で抗原抗体反応を行うことにより特定のタンパクを検出・同定する方法である。
より詳細には、ニトロセルロース膜上に転写されたタンパク質へ、該タンパクに特異的に結合する第1抗体を反応させると、タンパク質と第1抗体が結合する。次いで、容易にアッセイできる酵素を共有結合的に結合し、かつ第1抗体と特異的に結合する第2抗体をさらに反応させると、第1抗体と結合したタンパク質に第2抗体が結合する。ELISA法と同様、第2抗体に結合した酵素に、その基質を反応させ、得られる生成物を検出することによりタンパク質の存在が検出され、その生成物の量を測定することにより、目的とするタンパク質の量が測定できるという原理である。
【0006】
容易にアッセイできる酵素を共有結合的に結合し、かつ第1抗体に特異的に結合する第2抗体の代わりに、放射性同位体や蛍光物質で標識し、かつ第1抗体に特異的に結合する第2抗体を用いることもできる。この際、予め第2抗体に結合した酵素に、酵素反応を行わせる代わりに、放射性同位体の存在や量をオートラジオグラフィーで測定したり、蛍光物質の存在や量を蛍光検出機で測定し、得られた結果から目的とするタンパクの検出または量を算出する。
【0007】
しかし、上記のようにウエスタンブロット法は、被検体を電気泳動し、ゲル上のタンパクの分子量ごとに分画された状態を多孔性膜に転写するという手順があり、それぞれに時間を要し煩雑である。
また、電気泳動用に陰イオン性の界面活性剤(SDS)の入ったSDS−ポリアクリルアミドゲルを用いる場合、SDSの結合量が一般的なタンパクと若干異なるため、ゲル上の分画によって得られる分子量と実際の分子量とが異なる場合があり、したがって分離されたタンパク分画のどれが目的タンパク質であるかどうかを同定するには信頼性が低くなる。
【0008】
さらに、転写を行うことで分画されたタンパク質のバンドが、バンドに含まれるタンパク質の濃度に線形的に多孔性膜に転写されるかどうかが保証できないため、転写されたタンパク質のバンドは定量性に欠ける。
さらに、電気泳動後も、転写された多孔性膜上のタンパク質に、抗原抗体反応を2段階行う必要があるので、方法全体に要する時間が約十数時間と長く、簡便に多項目を同時測定する目的には適さない。
【0009】
一方、多孔性ニトロセルロース膜に目的とするタンパクと特異的に結合する抗原タンパクの精製物を直接固定化するウエスタンブロット法の変法である固相酵素免疫検定法(特許文献1)が報告されている。
この方法では、該膜上に固定化された抗原タンパク質に、目的とするタンパクを含む試料を反応させ、抗原タンパク質と目的タンパク質を結合させる。次いで、結合した目的タンパクと特異的に結合し、かつ容易にアッセイできる酵素を共有結合的に結合した抗体をさらに反応させると、抗原タンパク質と結合した目的タンパク質に抗体が結合する。
【0010】
サンドイッチELISA法と同様、予め抗体に結合した酵素に、その基質を反応させ、得られる生成物の存在を検出することにより、抗体と結合した目的タンパクが検出できるという原理である。
【0011】
しかし、この方法では、直接抗体以外のタンパク質を膜に固定化するが、そのタンパクは定量目的のタンパク質に特異的に反応する抗体以外のタンパク質であり、定量目的のタンパク質そのものではない。したがって、1つの検出目的タンパク質と特異的に対応するタンパク質が1種類と、さらに目的タンパク質と対応する別の特異的抗体を1種類必要とする。
【0012】
以上のように、検出目的のタンパク質を含む試料は、ウエスタンブロット法のように、予め電気泳動で分画されるか、サンドイッチELISA法のように固相に目的タンパク質に対応する特異的抗体を固定化させた後に第2の特異的抗体と反応させるか、特許文献1に記載の方法のように、多孔性膜に目的タンパク質と特異的に対応する抗体以外のタンパク質を固定化させた後に第2の特異的抗原反応させるように、前処理段階や、検出目的タンパクに対して2以上の特異的抗体またはタンパク質が必要であった。
【0013】
したがって、短時間で少ない工程で多項目の目的タンパクの定量を行うことができ、かつ検出目的タンパクに対して1種類のみの特異的抗体を用いるタンパクの定量方法、すなわち粗タンパク質試料中に含有される定量目的のタンパクを直接検出または定量をする方法の開発が、望まれていた。
【0014】
【特許文献1】
特開平1−223352号公報
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、組織もしくは細胞を前処理液に可溶化させて調製した粗タンパク質溶液を固相に接触させて粗タンパク質を固相に結合させ、粗タンパク質中の目的タンパク質と特異的に結合する物質を用いて、目的タンパク質を定量することからなるタンパク質の定量方法が提供される。
また本発明は、本発明のタンパク質の定量方法により得られた結果に基づいて、癌などの疾患を診断する方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の方法は、以下の工程に従い、行うことができる。
まず、試料を調製する。試料は粗タンパク質溶液を希釈液で希釈することにより調製される。粗タンパク質溶液は、例えば細胞や組織を、前処理液中で、ワーリングブレンダーや超音波を使用し、粉砕、可溶化して調製する。また、粗タンパク質溶液は、前処理液を加えた細胞や組織をシリンジに入れ、吸引排出を繰り返し行うことにより、粉砕、可溶化して調製することも可能である。前処理液としては、緩衝液が使用可能である。さらに界面活性剤、タンパク質分解酵素阻害剤等を含有しても良い。
【0017】
緩衝液は、通常使用されるものであればよく、例えばTris緩衝液、MES, Bis−Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine 及びTAPSのようなグッド緩衝液、水素二ナトリウムホスフェート、二水素ナトリウムホスフェート、二水素カリウムホスフェートなどが含まれる。
【0018】
界面活性剤は、細胞膜や核膜を破壊して細胞内物質を取り出し、可溶化された細胞を調製するために用いる。その例としては、ノニデットP−40(カルビオケム社製)、トリトンX−100(シグマ社製)、デオキシコール酸、CHAPS(3−[(3−クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)等が挙げられる。界面活性剤濃度は、1w/v%以下が好ましい。さらに、界面活性剤濃度は、1.0〜0.01w/v%が好ましく、0.5〜0.05w/v%がより好ましい。このように、界面活性剤濃度が低いために、膜タンパク質は可溶化され難く、主に水溶性の非膜タンパク質が可溶化される。目的とするタンパク質が癌関連タンパク質の場合、癌関連タンパク質の多くは水溶性の非膜タンパク質であるため、組織や細胞を可溶化した粗タンパク質溶液は膜タンパク質などの夾雑物が少ないものが得られる。そのため、効率的に目的タンパク質を含む粗タンパク質を固相に結合させることが可能である。
【0019】
タンパク質分解酵素阻害剤は、細胞膜や核膜が破壊された細胞内タンパク質分解酵素が混在するときにタンパクが破壊されるのを防ぐために用いる。その例は、EDTA、EGTAのようなメタロプロテアーゼ阻害剤、PMSF、トリプシンインヒビター、キモトリプシンのようなセリンプロテアーゼ阻害剤および/またはヨードアセトアミド、E−64のようなシステインプロテアーゼ阻害剤の混合物や、シグマ社から市販のプロテアーゼ阻害剤カクテルのようなそれらタンパク分解酵素阻害剤の予め混合された市販品が挙げられる。
【0020】
細胞を可溶化した後、粗タンパク質溶液から遠心分離やフィルターを用いたろ過などにより不溶物を除去することが好ましい。
なお、本発明の方法でタンパク質の定量を行うにあたり、処理された粗タンパク質溶液中の全タンパク量を当業者に公知の方法に従って測定しておくのが望ましい。総タンパク質量は、DCタンパクキット等を用いて、ウシIgGを標準として測定される。
総タンパク質量の測定された粗タンパク質溶液は、10〜100倍に希釈されて以下の工程に付すことが好ましい。希釈に用いられる希釈液は、後に述べる希釈液が使用可能である。このように、粗タンパク質溶液は希釈した場合には、粗タンパク質溶液中の例えば界面活性剤は希釈され、試料中の界面活性剤は濃度の低い状態にある。そのため、界面活性剤は固相との結合を阻害せず、試料中の粗タンパク質は効率的に固相と結合することができる。
【0021】
次いで、試料と固相を接触させて試料中の粗タンパク質を固相に結合させる。固相としては、多孔性膜、ビーズなどが使用可能である。ビーズは、ラテックス粒子や磁性粒子などが使用可能である。また、これらの固相に、疎水結合基、イオン交換体、基質、抗体などを導入することにより、タンパク質を効率的に結合させることが可能である。固相に導入された抗体は、目的タンパク質と特異的に結合するのではなく、目的タンパク質を含む粗タンパク質に結合する必要がある。また、固相に導入されるものは、疎水結合基が好ましい。
【0022】
次いで、固相に結合した試料中の目的タンパク質とその目的タンパク質に特異的に結合する物質を結合させる。目的タンパク質に特異的に結合する物質としては、抗体や核酸を使用することが可能である。
例えば、目的タンパク質が、アクチン、Cdk1、Cdk2、Cdk4、Cdk6、CyclineB、CyclineD、CyclineE、P16、P21、P27およびC−mycからなる群から選択される場合、これらに特異的に結合する抗体は、前記の各タンパク質の一部又は全部を、ヤギ、ウサギ、ネズミ、ブタ、ヒツジ、ニワトリなどの動物に与えることにより、通常の方法にしたがって得ることができる。
【0023】
また、目的タンパク質に特異的に結合する核酸は、アプタマーの調製技術によって得ることができる。
目的タンパク質に特異的に結合する物質として、抗体を使用した場合について以下に述べる。
【0024】
標識化されているか、または標識との反応性部位を有し、かつ測定目的のタンパク質と特異性を有する第1抗体を粗タンパク質が結合した固相と接触(混合)させて、測定目的のタンパク質と結合させる。
標識化されている抗体とは、当該分野で公知の標識化された抗体を用いることができる。詳細には、標識蛍光物質で標識化されたか、または標識酵素で標識化された抗体を意味する。
【0025】
標識蛍光物質としては、フルオレセイン、クマリン、エオシン、フェナントロリン、ピレン、ローダミンなどが挙げられる。そのうち、フルオレセインが好ましい。
標識酵素としては、α−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼが挙げられる。そのうち、ペルオキシダーゼが好ましい。
【0026】
標識との反応部位を有する抗体とは、当該分野で公知の標識との反応部位を有する抗体を挙げることができる。標識物質FITC(フルオレセインイソチオシアナート)の場合の抗体との反応部位は、FITCのイソチオシアナート部分が抗体のアミノ基と反応して結合し、フルオレセインが該抗体に標識される。
【0027】
第1抗体と粗タンパク質が結合した固相と接触(混合)させて、15〜30分間室温で反応させて第1抗体を測定目的のタンパクに結合させる。
第1抗体は溶液の形態で用いられることができ、トリス塩酸緩衝液(pH7.4)中の溶液の形態で用いられるのが好ましく、その溶液は、さらに、塩化ナトリウム、ATPおよびDTTを含むことができる。溶液に含まれる第1抗体の量は、先に測定した試料中の総タンパクの量を考慮し、測定目的タンパク量より多い量が供給できるように適宜調節する。
【0028】
次いで、洗浄処理を行い、未反応第1抗体を除去する。
洗浄液としては、TBS−T(250mMトリス、150mM塩化ナトリウム、0.05%トゥイーン20)などを用いることができる。洗浄の工程は、1回以上、複数回行う。
【0029】
標識を持たない第1抗体を用いた場合には、標識との反応性部位に標識を作用させて該抗体を標識化させる。具体的には、第1抗体として市販のビオチン化抗体を用いる場合には、検出可能な標識を持つアビジン(例えば、FITC標識アビジン、HRP標識アビジン、ローダミン標識アビジン等)をビオチン化抗体と反応させ、検出することが可能である。
【0030】
次いで、測定目的のタンパク質に結合した標識の量を測定する。標識に応じて当該分野で公知の方法に従い、標識の量を測定する。
より詳細には、第1抗体が標識蛍光物質で標識化された場合、該標識蛍光物質からの蛍光量を測定する。具体的には、標識蛍光物質をある特定の波長で励起させて、蛍光画像解析装置で検出する。照射する光の波長は標識蛍光物質によって異なるが、例えば、標識蛍光物質が、フルオレセインであるときは488nmの波長を照射して励起させる。
【0031】
第1抗体が標識酵素で標識化された場合、該標識酵素に、該標識酵素との反応によって光学的に検出可能な物質が生じるような基質を作用させて、生じた生成物の量を光学的に測定してもよい。
標識酵素との反応によって光学的に検出可能な物質とは、標識酵素と反応でき、蛍光、吸光度、散乱光強度、透過光強度等を測定することによってその存在を検出できるような物質を意味し、例えば、ECL−プラス、TMB(テトラメチルベンジン)などの色素、ルシフェリンなどが挙げられる。そのうち、ECL−プラスが好ましい。具体的には、標識酵素がペルオキシダーゼであるときには、標識酵素との反応によって光学的に検出可能な物質はECL−プラスが挙げられる。なお、標識酵素の基質は、使用する標識酵素に合わせて適宜選択することができる。
【0032】
次いで、予め作製した検量線をもとに、該標識の量を用いて目的タンパク量を算出する。
抗体が標識蛍光物質で標識化された場合、測定した蛍光量を、予め作製した既知量の純品タンパク質を同様に処理して得られた蛍光量と、そのタンパク質の量との検量線に、得られた蛍光量をあてはめることにより固相に結合した組織もしくは細胞の可溶化試料中に含まれる目的タンパク質の量を算出することができる。
抗体が標識酵素で標識化された場合、該標識酵素との反応によって生じた生成物の量を、前記と同様に予め作製した検量線に得られた測定値をあてはめることにより固相に結合した組織もしくは細胞の可溶化試料中に含まれる目的タンパク量を算出することができる。
【0033】
標識の量を測定する際、測定目的のタンパク質に応じた特異性を有する標識化抗体が、異なる場所で反応している場合、それらは同一標識のため、その蛍光を検出するための蛍光検出機は1種類の励起波長のみを用いることで複数種類の目的のタンパク質を測定することができるので、より好ましい。
固相として多孔性膜を使用する場合、試料を、1以上のウエルを有し、底部に多孔性膜を配置したプレート中のウエルに注入し、プレートの多孔性膜側から陰圧で吸引することにより試料中のタンパクを該膜に固相形成させる。
【0034】
多孔性膜としては、タンパク質と疎水結合することができる疎水性多孔性膜が好ましい。具体的には、PVDF(ポリビニリデンフロライド)疎水性メンブレン、ナイロン(荷電処理済み)メンブレン、ニトロセルロース等が挙げられる。
ウエルの底の多孔性膜の孔は、0.1〜10μm、好ましくは0.1〜0.5μmである。プレートの多孔性膜側からの吸引は、約50〜1000mmHg、好ましくは約100〜300mmHgの圧力で、約5〜120秒間行うことができる。ウエルの底の大きさとしては、ウエルの底面積の総和と、膜側からの陰圧での吸引のしやすさ等を考慮に入れて選択することができる。
【0035】
タンパク質は、疎水性多孔性膜上に疎水相互作用により固相化される。
なお、該疎水性多孔性膜としては、トランスファーバッファー(48mMトリス、39mMグリシン、20%メタノール、SDSおよび80%水)への浸漬などの初期化処理を行ったものを用いるのが好ましい。
【0036】
ウエルに分注する試料の量は、該試料中に含まれる総タンパク質の量と、定量目的のタンパク質の種類を考慮して当業者には容易に決定することができる。この際、ウエルの底の所定の面積の多孔性膜上に、固相形成可能な量より少ない量のタンパクを含む試料を各ウエルに分注するのが好ましい。試料中に含まれる定量目的タンパク質の量がウエルの底の所定の面積の多孔性膜上に、固相形成可能な量より多いと予想される場合には、例えば、試料をトリスバッファー、リン酸バッファー、水のような希釈液で希釈し、ウエルに分注する試料の中に含まれる総タンパク質の量が多孔性膜の所定面積当たりに固相形成可能な量以下になるように調整して用いることができる。
【0037】
例えば、総タンパク量が1μg/mlのHeLa細胞の可溶化された試料を試料として用い、ウエルの底面積が24mm2で、定量目的タンパクがCdk1、Cdk2、Cdk4、CyclineB、CyclineD、CyclinE、P16、P21、P27、C−mycなどであるときには、分注する試料の量は、1つのウエルあたり約100μlである。
【0038】
他方、定量目的タンパク質がアクチンの場合、総タンパク量が0.5μgのHeLa細胞の可溶化された試料を用い、ウエルの底面積が24mm2であるときには、1つのウエルあたり約100μl分注する。この際、HeLa細胞の可溶化された試料中に含まれるアクチンの量は、他の定量目的タンパクに比べて含有量が多いので、該試料は、トリスバッファー、リン酸バッファー、水のような希釈液で希釈して、総タンパク量を調節することができる。
【0039】
プレートは、ウエルを1以上有するのが好ましい。1以上設けられていると、同一試料をウエルの底の多孔性膜に固相形成させた後、異なるタンパク質に特異性を有する第1抗体を各ウエルに注入し、1種類の試料について多項目のタンパクを定量することができるからである。また、異なる試料を各ウエルの底の多孔性膜に固相形成させた後、同一タンパク質に特異性を有する第1抗体を各ウエルに注入し、多種類の試料について1項目のタンパク質を定量することもできる。
【0040】
プレートの1以上のウエルには、定量目的のタンパク質の純品を、濃度勾配をつけて分注してもよい。たとえば、図1に示すようにウエルが1列に6つあり、そこに定量目的のタンパク質を固相形成させる際には、定量目的タンパク質を0ng(バックグラウンドとして目的タンパクを含まない)、5ng、12.5ng、25.0ng、37.5ngおよび50ng含むスタンダード系列1を分注したウエルを用意する。このように、定量目的のタンパク質の純品を同一プレート中に固相形成させた場合は、同一プレート内に固相形成された定量されるべき試料2〜7と同一条件下に処理されるので、濃度勾配を有するタンパク質の純品から得られた結果を基にした検量線は非常に精度の高いものとなり、好ましい(図1参照)。
【0041】
多孔性膜上に固相形成されたタンパク質のうち、抗体との反応工程で非特異的に外部因子と結合して、測定誤差を生じるのを避けるために、任意に、ウエル中にブロッキング液を分注する。この工程は、試料中に含有されるタンパクを多孔性膜に固相形成させた後に行うのが好ましい。
ブロッキング液は、4%BSA(ウシ血清アルブミン)を用いることができる。また、その他公知のブロッキング液を使用することもできる。ウエルにブロッキング液を分注後、0〜60分間室温で静置して反応させ、その後、プレートの多孔性膜の側から前述のように膜を陰圧で吸引して除去する。
【0042】
また、タンパク質が結合した固相に対して、
(1)測定目的のタンパク質と特異性を有する第1抗体を測定目的のタンパク質と結合させ、
(2)洗浄処理を行い未反応第1抗体を除去し、
(3)標識化されているか、または標識との反応性部位を有し、かつ該第1抗体と特異性を有する第2抗体を該第1抗体と結合させ、
(4)標識化されていない第2抗体を用いた場合には、標識との反応性部位に標識を作用させて該抗体を標識化し、
(5)測定目的のタンパク質に結合した標識の量を測定し、
(6)予め作製した検量線をもとに、該標識の量を用いて、目的タンパク量を算出するようにしても良い。
【0043】
標識化されているか、または標識との反応性部位を有する第2抗体は、上記第1抗体と同様の標識化および標識との反応性部位を用いることができる。第2抗体は、第1抗体に特異性を有するものであれば、測定目的のタンパク質毎に異なるものを用いる必要はなく、したがって、多項目のタンパク質を測定する際にも、共通の第2抗体を用いてもよい。第1抗体が1種類であれば、その第1抗体に特異性を有する第2抗体は1種類でよい。
【0044】
また、本発明は、本発明の方法により測定したタンパク量の結果により、胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、食道癌、前立腺癌、肝癌、腎臓癌、膀胱癌、皮膚癌、子宮癌、脳腫瘍、骨肉種または骨髄腫瘍のような癌疾患を診断する方法を提供する。例えば、アクチン、Cdk1、Cdk2、Cdk4、Cdk6、CyclineB、CyclineD、CyclineE、P16、P21、P27、C−myc等のタンパクの量が増減すると、患者は胃癌や大腸癌に罹患している可能性がある。
具体的には、大腸癌に罹患した際、P21が減少し、CyclineBが増加する。
【0045】
また、本発明の方法は、図2に示したような、複数の貫通されたウエル21を有し、一端に液体供給路22が設けられたプレート23と、ウエルの底部に配置された疎水性多孔性膜24とからなる1ユニットを複数個備え、プレートと疎水性多孔性膜とがそれぞれ離脱可能に設けられた支持体と、
液体供給路からウエルに供給された液体をウエルの底部方向に吸引するための吸引機構25とからなる試料測定装置を用いて好適に行うことができる。
【0046】
この試料測定装置は、具体的には以下のようにして本発明の方法を行う際に用いることができる。
試料測定装置のウエル中に、試料液や標品液を注入し、吸引機構を用いてウエルの底部方向に陰圧で吸引して、ウエルから液体を除去する。具体的には、吸引機構例えば、固相廃液管26に接続する吸引溝27と、オーバーフロー廃液管28に接続する排水溝29とを経て陰圧で吸引されることにより、ウエル内の液体は除去される。その結果、疎水性多孔性膜上には、試料液や標品液中のタンパク等が固相形成される。
【0047】
ウエルの底部の疎水性多孔性膜上にタンパク質等が固相形成された、試料測定装置のウエルに、抗体を含む溶液を注入し、所定の条件下で放置することによりウエル中で抗原抗体反応等を進行させる。反応後、上記のように、該装置の吸引機構を用いてウエルから液体を除去する。
また、ウエル内を洗浄する際には、該装置の液体供給路により洗浄液等を複数のウエルに注入し、該装置の吸引機構を用いてウエルから除去する。
このように、該装置の吸引機構を用いると、プレート中の複数のウエルから一度に、短時間に液体を除去することができ、本発明の方法を短時間にかつ容易に行うことができる。
【0048】
本発明のタンパク質の定量方法に用いられる種々の構成要素は、予めパッケージされキット化されて構成される。キットは、少なくとも、組織もしくは細胞を可溶化させる前処理液と、組織もしくは細胞を可溶化させて調製した粗タンパク質溶液中の粗タンパク質を結合させる固相と、粗タンパク質中の目的タンパク質特異的に結合する物質とから構成される。キットは必要に応じて、粗タンパク質溶液を希釈する希釈液、固相を洗浄する洗浄液を含んでも良い。キットにおいて、組織もしくは細胞を可溶化させる前処理液と、組織もしくは細胞を可溶化させて調製した粗タンパク質溶液中の粗タンパク質を結合させる固相と、粗タンパク質中の目的タンパク質特異的に結合する物質は、別々にパッケージされる。
【0049】
【実施例】
本発明の方法をより詳細に説明するために、以下に実施例のプロトコルを示す。
実施例1(図3参照)
1. 0.1w/v%NP−40(カルビオケム社製)、50mMトリス−HCl、pH7.4、5mMEDTA、50mMフッ化ナトリウム、1mMオルトバナジン酸ナトリウムおよびプロテアーゼ阻害剤カクテール(シグマ社製)を含む溶解緩衝液中で、1×107細胞/5mlの溶解緩衝液(前処理液)という条件下HeLa(子宮頸部癌細胞)細胞を、氷浴中で23G針をつけた5mlのシリンジで10回吸引排出を繰り返し、細胞溶解液を調製した。
2. 不溶物を15000rpmで5分間4℃で遠心除去した。上澄み中に含まれる全タンパク質量をDCタンパク質キット(Bio−Rad社)を用いて、ウシIgGを標準として測定した。
3. 総タンパク質量が1μg/100μlになるように0.001%のNP−40を含むTBS(50mMトリス−HCl、100mMNaCl;pH7.4)に希釈し、試料溶液とした。
【0050】
4. トランスファーバッファー(48mMトリス、39mMグリシン、20%メタノール、0.1%SDSおよび80%水)中に、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)メンブレンを浸漬し、初期化した。
5. 1つのウエルの底面積が一定(24mm2)の5行3列の15のウエルから構成されるプレートを、初期化したPVDFメンブレン上に取りつけ、ウエルの底面がPVDFメンブレンで構成されるように固定した。
【0051】
6. プレートの5行1列の各ウエルに、0.001%のNP−40を含むTBS中タンパクの総量が1μg/100μlの試料溶液と、0.001%のNP−40を含むTBS中未知濃度のウサギIgG抗体の混合物を100μlずつ注入した(サンプル系列8)。
7. 同じプレートの別の5行1列の各ウエルに、0.001%のNP−40を含むTBS中タンパク質の総量が1μg/100μlの培養細胞(HeLa)試料溶液を100μlずつ注入した(ネガティブコントロール系列9)。
【0052】
8. 同じプレートの別の5行1列の各ウエルに、0.001%のNP−40および1μg/100μlのBSAを含むTBS中に、0ng/100μl、2ng/100μl、4ng/100μl、8ng/100μlおよび16ng/100μlのウサギIgG抗体を、100μlずつ注入した(スタンダード系列10)。
【0053】
9. プレート中の全てのウエルに、所定の液体の注入が完了した後、ウエルの底面すなわちメンブレンの裏面から陰圧約200mHgで約15秒間吸引した。10. 次いで、プレート中の全てのウエルに、洗浄液(TBS−T:250mMトリス、1.5M塩化ナトリウム水溶液、1.0%トゥイーン20)を注入し、その後にウエルの底面から陰圧約500mHgで約30秒間吸引した。
11. プレート中の全てのウエルに、ブロッキング液(TBS−T、4%BSA)を100μlづつ注入し、約30分間室温で静置した。その後、ウエルの底面から陰圧約500mHgで約15秒間吸引し、次いで先の工程10と同様にしてプレート中の全てのウエルを洗浄した。
【0054】
12. プレート中の全てのウエルに、ウサギIgG抗体に特異的に結合するFITC(蛍光イソチオシアネート)で標識された抗ウサギ抗体(1/4000 FITC anti rabbit IgGの1.5mg/mlのTBS−T溶液)を100μlづつ注入し、約30分間室温で静置した。その後、ウエルの底面から陰圧約500mHgで約30秒間吸引し、次いで先の工程10と同様にしてプレート中の全てのウエルを洗浄した。
13. PVDFメンブレンをプレートから取り外し、蒸留水で洗浄した後、約15分間室温で乾燥させた。その後、PVDFメンブレンを蛍光読み取り装置を用いて、各ウエルの底面に対応した大きさに吸着されたタンパクに結合した標識物質から発せられる蛍光を蛍光読み取り装置で読み取った。
【0055】
14. サンプル系列8(5ウエル)から得られた平均蛍光強度、ネガティブコントロール系列9(5ウエル)から得られた平均蛍光強度、およびスタンダート系列10(5ウエル)の各濃度のウエルから得られた蛍光強度を基に、試料のタンパク量を算出した。なお、ネガティブコントロール系列9(5ウエル)から得られた平均蛍光強度は、IgGタンパクがメンブレン上に吸着されていないのに得られた蛍光強度であるので、メンブレンの持つ自己蛍光などのバックグランド蛍光と考えられる。
【0056】
従って、以下の式:
(正味の試料の蛍光強度)=(サンプル系列から得られた平均蛍光強度)−(ネガティブコントロール系列から得られた平均蛍光強度)
に当てはめることにより、バックグランド蛍光を除いた試料の正味の蛍光強度が算出される。
【0057】
また、スタンダード系列10(5ウエル)のうち、ウサギIgG濃度0ng/100μlのときに得られた蛍光強度は、ウサギIgGタンパクがメンブレン上に固相形成されていないのに得られた蛍光であるので、メンブレンのもつ自己蛍光とウサギIgGを希釈しているBSAの相互作用によるバックグラウンド蛍光と考えられる。
したがって、以下の式:
(正味のスタンダードの蛍光強度)=(スタンダード系列から得られた蛍光強度)−(スタンダード系列0ng/100μlから得られた蛍光強度)
に当てはめることにより、バックグランド蛍光を除いたスタンダード系列の正味の蛍光強度が算出される。
【0058】
本実施例1の結果は、
サンプル系列から得られた平均蛍光強度=4061.6カウント
ネガティブコントロール系列から得られた平均蛍光強度=563.6カウントであったので、正味の試料の蛍光強度は、3498カウントである。
【0059】
一方、本実施例1の結果は、スタンダード系列から得られたウサギIgG濃度0ng/100μlから得られた蛍光強度=378カウントであったため、IgGの濃度と対応する蛍光強度から近似式を算出するウサギIgG濃度が0ng/100μl以外の濃度のスタンダード系列の正味の蛍光強度は、表1に示すとおりである。
【0060】
【表1】
【0061】
IgGの濃度と、対応する蛍光強度から直線近似式を算出する。本実施例1の結果は、
蛍光強度=283.16×(IgG濃度)であった。
したがって、試料の蛍光強度3498カウントを導入すると、試料のIgG濃度は12.4ng/100μg総タンパクと算出された。
【0062】
実施例2(図4参照)
1. 0.1w/v%NP−40(カルビオケム社製)、50mMトリス−HCl、pH7.4、5mMEDTA、50mMフッ化ナトリウム、1mMオルトバナジン酸ナトリウムおよびプロテアーゼ阻害剤カクテール(シグマ社製)を含む溶解緩衝液中で、1×107細胞/5mlの溶解緩衝液(前処理液)という条件下HeLa(子宮頸部癌細胞)細胞を、氷浴中で23G針をつけた5mlのシリンジで10回吸引排出を繰り返し、細胞溶解液を調製した。
2. 不溶物を15000rpmで5分間4℃で遠心除去した。上澄み中に含まれる全タンパク質量をDCタンパク質キット(Bio−Rad社)を用いて、ウシIgGを標準として測定した。
3. 総タンパク質量が1μg/100μlになるように0.001%のNP−40を含むTBS(50mMトリス−HCl、100mMNaCl;pH7.4)に希釈し、試料溶液とした。
【0063】
4. トランスファーバッファー(48mMトリス、39mMグリシン、20%メタノール、0.1%SDSおよび80%水)中に、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)メンブレンを浸漬し、初期化した。
5. 1つのウエルの底面積が一定(24mm2)の6行3列の18のウエルから構成されるプレートを、初期化したPVDFメンブレン上に取りつけ、ウエルの底面がPVDFメンブレンで構成されるように固定した。
【0064】
6. プレートの6行1列の各ウエルに、0.001%のNP−40を含むTBS中タンパクの総量が1μg/100μlの培養細胞(HeLa)試料溶液を100μlずつ注入した(サンプル系列11)。
7. 同じプレートの別の6行2列の各ウエルに、0.001%のNP−40および1μg/100μlのBSAを含むTBS中に、0ng/100μlを含む5種類の濃度の測定項目の純粋な標品の溶液を、100μlずつ注入した(スタンダード系列12)。このスタンダード系列12は、同一プレート内では同じ種類の標品を注入し、測定項目が異なる毎に異なるプレート内にスタンダード系列を作成する。
【0065】
8. プレート中の全てのウエルに、所定の液体の注入が完了した後、ウエルの底面すなわちメンブレンの裏面から陰圧約200mHgで約15秒間吸引した。
9. 次いで、プレート中の全てのウエルに、洗浄液(TBS−T:250mMトリス、1.5M塩化ナトリウム水溶液、1.0%トゥイーン20)を注入し、その後にウエルの底面から陰圧約500mHgで約30秒間吸引した。
【0066】
10. 全プレート中の全ウエルに、ブロッキング液(TBS−T、4%BSA)を100μlづつ注入し、約30分間室温で静置した。その後、ウエルの底面から陰圧約500mHgで約15秒間吸引し、次いで先の工程9と同様にしてプレート中の全てのウエルを洗浄した。
11. 測定項目の標品が吸着されたプレート中の全てのウエルに、対応する測定項目の標品に特異的に結合するウサギ抗体(第1抗体)の溶液を100μlづつ注入し、約30分間室温で静置した。
【0067】
【表2】
【0068】
その後、ウエルの底面から陰圧約500mHgで約15秒間吸引し、次いで先の工程9と同様の操作を2回繰り返してプレート中の全てのウエルを洗浄した。
12. ビオチン化された抗ウサギ抗体(第2抗体)(1%BSAを含むTBS−T中1/100anti−rabbit IgG biotiylated溶液)を、全てのプレートのウエルへ注入した。その後、ウエルの底面から陰圧約500mHgで約15秒間吸引し、次いで先の工程9と同様の操作を2回繰り返してプレート中の全てのウエルを洗浄した。
【0069】
13. 全プレート中の全ウエルに、FITC標識ストレプトアビジン試薬(1/100 FITC strept avidin)を100μlずつ注入し、約30分間室温で静置した。その後、ウエルの底面から陰圧約500mHgで約15秒間吸引し、次いで先の工程9と同様の操作を3回繰り返してプレート中の全てのウエルを洗浄した。
14. PVDFメンブレンをプレートから取り外し、蒸留水で洗浄した後、約15分間室温で乾燥させた。その後、PVDFメンブレンを蛍光読み取り装置を用いて、各ウエルの底面に対応した大きさに吸着されたタンパクを標識した物質から発せられる蛍光を蛍光読み取り装置で読み取った。
【0070】
15. サンプル系列11(6ウエル)から得られた平均蛍光強度およびスタンダート系列12(6ウエル×2列)の各濃度のウエルから得られた蛍光強度を基に、試料のタンパク量を算出した。なお、スタンダード系列の濃度0(2ウエル)から得られた平均蛍光強度は、測定項目のタンパクがメンブレン上に吸着されていないのに得られた蛍光強度であるので、メンブレンの持つ自己蛍光などのバックグランド蛍光と考えられる。
従って、以下の式:
(正味の試料の蛍光強度)=(サンプル系列から得られた平均蛍光強度)−(濃度0のスタンダード系列から得られた平均蛍光強度)
に当てはめることにより、バックグランド蛍光を除いた試料の正味の蛍光強度が算出される。
【0071】
濃度の異なる測定項目の標品のスタンダード系列から得られた蛍光強度、そこから得られた検量線を示すグラフ、測定した試料の蛍光強度と算出された測定項目の濃度を以下に示す。
【0072】
(i)Cdk2の測定
【表3】
【0073】
(ii)Cdk4の測定
【表4】
【0074】
(iii)CyclinEの測定
【表5】
【0075】
(iv)P16の測定
【表6】
【0076】
(v)P53の測定
【表7】
【0077】
(vi)P21の測定
【表8】
【0078】
(vii)P27の測定
【表9】
【0079】
(viii)C−mycの測定
【表10】
【0080】
【表11】
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、細胞や組織を可溶化処理した可溶化液を直接、固相に接触させ、それによって固相にタンパク質を結合させ、検出目的のタンパク質に対して特異的に結合する物質を用いて、タンパク質の定量を行うので、短時間および少ない工程でタンパク質定量が可能となる。また、本発明によれば、簡便で同時に多項目のタンパク質の定量が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で用いるプレートへのスタンダードと試料の分注の配置を示す図である。
【図2】本発明の方法を行うのに好適な試料測定装置を示す(a)縦断面図および(b)横断面図である。
【図3】本発明の実施例1で用いるプレートへのスタンダードと試料の分注の配置を示す図である。
【図4】本発明の実施例2で用いるプレートへのスタンダードと試料の分注の配置を示す図である。
【図5】本発明の方法により得られたCdk2の検量線を示す図である。
【図6】本発明の方法により得られたCdk4の検量線を示す図である。
【図7】本発明の方法により得られたCyclinEの検量線を示す図である。
【図8】本発明の方法により得られたP16の検量線を示す図である。
【図9】本発明の方法により得られたP53の検量線を示す図である。
【図10】本発明の方法により得られたP21の検量線を示す図である。
【図11】本発明の方法により得られたP27の検量線を示す図である。
【図12】本発明の方法により得られたC−mycの検量線を示す図である。
【符号の説明】
1 スタンダード系列
2 試料1
3 試料2
4 試料3
5 試料4
6 試料5
7 試料6
8 サンプル系列
9 ネガティブコントロール系列
10 スタンダート系列
11 サンプル系列
12 スタンダード系列
21 ウエル
22 液体供給路
23 プレート
24 疎水性多孔性膜
25 吸引機構
26 固相廃液管
27 吸引溝
28 オーバーフロー廃液管
29 排水溝
Claims (14)
- 組織もしくは細胞を前処理液に可溶化させて粗タンパク質溶液を調製する工程と、調製した粗タンパク質溶液を固相に接触させて粗タンパク質を固相に結合させる工程と、固相に結合した粗タンパク質中の目的タンパク質と特異的に結合する物質を用いて目的タンパク質を定量する工程と、を備えるタンパク質の定量方法。
- 前処理液が界面活性剤を含む請求項1記載のタンパク質の定量方法。
- 固相が多孔性膜またはビーズである請求項1記載のタンパク質の定量方法。
- 目的タンパク質と特異的に結合する物質が抗体または核酸である請求項1記載のタンパク質の定量方法。
- 目的タンパク質が水溶性タンパク質である請求項1記載のタンパク質の定量方法。
- 目的タンパク質がアクチン、Cdk1、Cdk2、Cdk4、Cdk6、CyclineB、CyclineD、CyclineE、P16、P21、P27、C−myc、の少なくとも1つである請求項1記載のタンパク質の定量方法。
- 前記粗タンパク質を固相に結合させる工程が、粗タンパク質溶液を1以上のウエルを有する底部に固相である多孔性膜を配置したプレート中のウエルに注入する注入工程と、プレートの多孔性膜側から吸引することにより粗タンパク質を多孔性膜に結合させる工程と、を備える請求項1のタンパク質の定量方法。
- 多孔性膜が疎水性多孔性膜である請求項7記載のタンパク質の定量方法。
- 目的タンパク質と特異的に結合する物質が抗体または核酸である請求項7記載のタンパク質の定量方法。
- 前記目的タンパク質を定量する工程が、ウエルに目的タンパクに特異的に結合する物質を供給する工程を含み、第1のウエルに第1の目的タンパク質と特異的に結合する物質を供給し、第2のウエルに第2の目的タンパク質と特異的に結合する物質を供給する、請求項9記載のタンパク質の定量方法。
- 組織もしくは細胞を前処理液に可溶化させて粗タンパク質溶液を調製する工程と、調製した粗タンパク質溶液を固相に接触させて粗タンパク質を固相に結合させる工程と、固相に結合した粗タンパク質中の目的タンパク質と特異的に結合する物質を用いて目的タンパク質を定量する工程と、定量されたタンパク質の量に基づいて疾患を診断する工程と、を備える疾患の診断方法。
- 疾患が、胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌、食道癌、前立腺癌、肝癌、腎臓癌、膀胱癌、皮膚癌、子宮癌、脳腫瘍、骨肉種または骨髄腫瘍である請求項11記載の疾患の診断方法。
- 目的タンパク質がアクチン、Cdk1、Cdk2、Cdk4、Cdk6、CyclineB、CyclineD、CyclineE、P16、P21、P27、C−myc、の少なくとも1つである請求項11記載の疾患の診断方法。
- 組織もしくは細胞を可溶化させる前処理液と、組織もしくは細胞を可溶化させて調製した粗タンパク質溶液中の粗タンパク質を結合させる固相と、粗タンパク質中の目的タンパク質特異的に結合する物質と、を備えるタンパク質の定量キット。
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