JP2004333174A - 再結晶率・アスペクト比測定装置及び再結晶率・アスペクト比測定方法 - Google Patents
再結晶率・アスペクト比測定装置及び再結晶率・アスペクト比測定方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を測定することができる再結晶率・アスペクト比測定装置を提供する。
【解決手段】ヘッド部30は、ラインフォーカスビームを測定対象物2に照射することによりその内部に圧延方向偏波横波又は幅方向偏波横波を発生させると共に、各横波が到達する測定対象物2の所定位置に第二レーザビームを導き、そこで反射した第二レーザビームを取得する。コンピュータ70は、干渉計50で検出された第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づき各横波の音速、波形振幅の二乗積分値を算出し、音速パラメータと減衰率パラメータを求める。その音速パラメータと減衰率パラメータを用い、コンピュータ70の記憶部に記憶された測定対象物2と同じ鋼種についての第一のデータ及び第二のデータに基づき測定対象物2の再結晶率と結晶率アスペクト比を得る。
【選択図】 図1
【解決手段】ヘッド部30は、ラインフォーカスビームを測定対象物2に照射することによりその内部に圧延方向偏波横波又は幅方向偏波横波を発生させると共に、各横波が到達する測定対象物2の所定位置に第二レーザビームを導き、そこで反射した第二レーザビームを取得する。コンピュータ70は、干渉計50で検出された第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づき各横波の音速、波形振幅の二乗積分値を算出し、音速パラメータと減衰率パラメータを求める。その音速パラメータと減衰率パラメータを用い、コンピュータ70の記憶部に記憶された測定対象物2と同じ鋼種についての第一のデータ及び第二のデータに基づき測定対象物2の再結晶率と結晶率アスペクト比を得る。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば鋼材の再結晶率と結晶粒アスペクト比を非接触で測定する再結晶率・アスペクト比測定装置及び再結晶率・アスペクト比測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間の鋼材製造プロセスでは、鋼材に、圧延等、さまざまな処理が施される。一般に、鋼材の結晶組織を微細化することにより、高強度・高靭性の特性を有する鋼材が得られる。例えば、鋼材が再結晶率の低い状態にあるほど、結晶内部に格子欠陥が多くあり、そこを起点として核が成長するので、結晶組織が微細化しやすくなる。また、幅方向の結晶粒サイズに対する圧延方向の結晶粒サイズの比である結晶粒アスペクト比が大きいほど、再結晶した新しい結晶粒径が小さくなり、また、結晶内に核生成サイト(すべり面)が生じ、そこを起点として核が成長するので、結晶組織が微細化しやすくなる。このように、再結晶率や結晶粒アスペクト比は、鋼材の結晶組織の状態を知るための重要な情報である。
【0003】
尚、再結晶率は、当該鋼材について横波音速の異方性を表す音速パラメータと相関があることが知られている。この相関関係は、非特許文献1に開示されている。また、結晶粒アスペクト比は、当該鋼材について音速パラメータと相関があることが知られている。この相関関係は、非特許文献2に開示されている。
【0004】
【非特許文献1】
NDT&E International, Vol.33, 2000, p.253−259, “Ultrasonic vel ocity measurements for characterizing the annealing behaviour of cold worked austenitic stainless steel”
【非特許文献2】
“SUS304のクリープ変形に伴う超音波速度変化” Proc. of Ja panese Material Society, 41st (1992), p.22−24
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、熱間の鋼材製造プロセスにおいて、再結晶率や結晶粒アスペクト比をオンラインで測定することは行われていない。上記の各非特許文献では、接触型の横波プローブを使って横波音速を測定しており、当然、この方法は、熱間オンラインでの測定に用いることはできない。もし熱間オンラインで再結晶率や結晶粒アスペクト比についての情報が得られれば、例えば、その情報を次工程の圧延条件へフィードフォワードすることにより、組織微細の鋼材を効率的・安定的に製造できるようになり、また、高精度な鋼材の製造技術による材質ばらつきの低減にも貢献できる。
【0006】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を測定することができる再結晶率・アスペクト比測定装置及び再結晶率・アスペクト比測定方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、板状の測定対象物についての再結晶率及び結晶粒アスペクト比を測定する再結晶率・アスペクト比測定装置であって、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び横波音速の異方性を表す音速パラメータの関係を示す第一のデータと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び横波音速の減衰率の異方性を表す減衰率パラメータの関係を示す第二のデータとを記憶する記憶手段と、第一レーザビームを前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に横波超音波を発生させる超音波発生手段と、前記測定対象物の内部に発生した、前記測定対象物の長手方向に偏波した第一の横波超音波、前記測定対象物の幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波が到達する前記測定対象物の所定位置に第二レーザビームを導くと共に、前記測定対象物で反射した前記第二レーザビームを取得するビーム取得手段と、前記ビーム取得手段で取得された前記第二レーザビームに基づいて、当該横波超音波の振動に起因して生じる前記第二レーザビームの周波数の変化を検出する周波数変化検出手段と、前記第一の横波超音波及び前記第二の横波超音波の各々について、前記周波数変化検出手段で検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波が前記測定対象物の内部を伝播した伝播時間を求め、その求めた伝播時間に基づいて当該横波超音波の音速を算出し、且つ、前記第一の横波超音波の音速と前記第二の横波超音波の音速とを用いて前記測定対象物についての音速パラメータを求める音速パラメータ算出手段と、前記第一の横波超音波及び前記第二の横波超音波の各々について、前記周波数変化検出手段で検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出し、且つ、前記第一の横波超音波の波形振幅の二乗積分値と前記第二の横波超音波の波形振幅の二乗積分値とを用いて前記測定対象物についての減衰率パラメータを求める減衰率パラメータ算出手段と、前記音速パラメータ算出手段で求めた音速パラメータと前記減衰率パラメータ算出手段で求めた減衰率パラメータとを用い、前記記憶手段に記憶された前記測定対象物と同じ鋼種についての前記第一のデータ及び前記第二のデータに基づいて前記測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比とを求める演算手段と、を具備することを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の再結晶率・アスペクト比測定装置において、前記第一レーザビームはライン状のものであり、且つ、前記超音波発生手段は、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の幅方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第一の横波超音波を発生させると共に、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の長手方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第二の横波超音波を発生させることを特徴とするものである。
【0009】
更に、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の再結晶率・アスペクト比測定装置において、前記ビーム取得手段は、前記第一レーザビームのラインの中心点を通りそのラインに直交する平面と前記測定対象物の表面又は底面とが交わる直線上に、前記第二レーザビームを導くことを特徴とするものである。
【0010】
上記の目的を達成するための請求項4記載の発明は、板状の測定対象物についての再結晶率及び結晶粒アスペクト比を測定する再結晶率・アスペクト比測定方法であって、第一レーザビームを前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に横波超音波を発生させる第一ステップと、前記測定対象物の内部に発生した、前記測定対象物の長手方向に偏波した第一の横波超音波、前記測定対象物の幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波が到達する前記測定対象物の所定位置に第二レーザビームを導くと共に、前記測定対象物で反射した前記第二レーザビームを取得する第二ステップと、前記第二ステップで取得された前記第二レーザビームに基づいて、当該横波超音波の振動に起因して生じる前記第二レーザビームの周波数の変化を検出する第三ステップと、前記第三ステップで検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波が前記測定対象物の内部を伝播した伝播時間を求める第四ステップと、前記第四ステップで求めた伝播時間に基づいて当該横波超音波の音速を算出する第五ステップと、前記第五ステップで得られた前記第一の横波超音波の音速と前記第二の横波超音波の音速とを用いて前記測定対象物についての横波音速の異方性を表す音速パラメータを求める第六ステップと、前記第三ステップで検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出する第七ステップと、前記第七ステップで得られた前記第一の横波超音波の波形振幅の二乗積分値と前記第二の横波超音波の波形振幅の二乗積分値とを用いて前記測定対象物についての横波音速の減衰率の異方性を表す減衰率パラメータを求める第八ステップと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び音速パラメータの関係を示す第一のデータと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び減衰率パラメータの関係を示す第二のデータとが予め求められており、前記測定対象物と同じ鋼種についての前記第一のデータ及び前記第二のデータに基づいて、前記第六ステップで求めた音速パラメータと前記第八ステップで求めた減衰率パラメータとを用いて前記測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比とを求める第九ステップと、を具備することを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の再結晶率・アスペクト比測定方法において、前記第一レーザビームはライン状のものであり、且つ、前記第一ステップでは、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の幅方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第一の横波超音波を発生させると共に、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の長手方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第二の横波超音波を発生させることを特徴とするものである。
【0012】
更に、請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の再結晶率・アスペクト比測定方法において、前記第二ステップでは、前記第一レーザビームのラインの中心点を通りそのラインに直交する平面と前記測定対象物の表面又は底面とが交わる直線上に、前記第二レーザビームを導くことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態である再結晶率・アスペクト比測定装置の概略構成図、図2はその再結晶率・アスペクト比測定装置におけるヘッド部の概略構成図である。また、図3(a)はある鋼種についての結晶粒アスペクト比と音速パラメータとの関係を示すグラフ、図3(b)はその鋼種についての結晶粒アスペクト比と減衰率パラメータとの関係を示すグラフ、図4(a)はその鋼種についての再結晶率と音速パラメータとの関係を示すグラフ、図4(b)はその鋼種についての再結晶率と減衰率パラメータとの関係を示すグラフである。
【0014】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置は、測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を非接触で測定するものである。ここで、測定対象物としては、例えば、製鉄所において、熱間プロセスにより製造される板状の鋼材(厚板)を想定している。かかる厚板の表面温度は、通常、700℃ぐらいである。また、厚板の厚さは10mm〜100mm程度である。
【0015】
結晶粒アスペクト比とは、鋼材の幅方向における結晶粒サイズに対する鋼材の長手方向(圧延方向)における結晶粒サイズの比である。例えば、鋼材が圧延されると、その鋼材の結晶粒は圧延方向に引き伸ばされることになる。結晶粒アスペクト比は、かかる結晶粒の伸び具合を表している。各種の鋼材では、再結晶率が一定であるときに、結晶粒アスペクト比と当該鋼材の内部を伝播する横波超音波の音速から得られる所定の音速パラメータαとの間に密接な関係がある。図3(a)にある鋼種についての結晶粒アスペクト比と音速パラメータαとの相関関係の一例を示す。図3(a)において、横軸は鋼材の結晶粒アスペクト比、縦軸は音速パラメータαである。また、音速パラメータαは、当該鋼材中を伝播する横波超音波の音速の異方性を表すものであり、(VS1−VS2)/{(VS1+VS2)/2}で定義される。ここで、VS1は鋼材の長手方向(圧延方向)に偏波した第一の横波超音波(圧延方向偏波横波)の音速であり、VS2は鋼材の幅方向に偏波した第二の横波超音波(幅方向偏波横波)の音速である。図3(a)のグラフの例では、鋼材の結晶粒アスペクト比が大きいほど、音速パラメータαが小さく、したがって、横波音速の異方性が小さいことが分かる。一般に、再結晶率が一定である場合、音速パラメータαと結晶粒アスペクト比との関係は、一次関数で近似することができる。
【0016】
また、各種の鋼材では、再結晶率が一定であるときに、結晶粒アスペクト比と当該鋼材の内部を伝播する横波超音波の減衰率から得られる所定の減衰率パラメータβとの間にも密接な関係がある。図3(b)にある鋼種についての結晶粒アスペクト比と減衰率パラメータβとの相関関係の一例を示す。図3(b)において、横軸は鋼材の結晶粒アスペクト比、縦軸は減衰率パラメータβである。減衰率パラメータβは、当該鋼材中を伝播する横波超音波の減衰率の異方性を表すものであり、(AtS1−AtS2)/{(AtS1+AtS2)/2}で定義される。ここで、AtS1は鋼材の圧延方向に偏波した横波超音波の減衰率であり、AtS2は鋼材の幅方向に偏波した横波超音波の減衰率である。また、横波超音波の減衰率AtSk(k=1,2)は、発生時における当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値A0,Skに対する検出時における当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値ASkの比である。したがって、検出時において、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値A0,S1と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値A0,S2とが等しいと仮定すると、減衰率パラメータβは、(AS1−AS2)/{(AS1+AS2)/2}より求めることができる。図3(b)のグラフの例では、鋼材の結晶粒アスペクト比が大きいほど、減衰率パラメータβの絶対値が大きく、したがって、横波の減衰率の異方性が大きいことが分かる。これは定性的には次のような理由による。すなわち、横波は主に粒界を伝わるときに減衰すると考えられる。このため、粒界が多いところを伝播した横波の減衰率は、粒界が少ないところを伝播した横波の減衰率よりも大きい。圧延された鋼材では、圧延方向に垂直な平面による断面における結晶粒界は、幅方向に垂直な平面による断面における結晶粒界よりも多いので、幅方向偏波横波の減衰率は圧延方向偏波横波の減衰率より大きい。したがって、結晶粒アスペクト比が大きければ大きいほど、減衰率パラメータβの絶対値は大きくなる。一般に、再結晶率が一定である場合、減衰率パラメータβと結晶粒アスペクト比との関係は、一次関数で近似することができる。
【0017】
再結晶とは、大きいひずみのある結晶粒界に新しい結晶の核が発生し、次第に成長して、もとの結晶粒がこの新しい結晶粒(再結晶粒)に置き換わる現象をいう。そして、再結晶率とは、ある領域において再結晶粒の占める割合をいう。各種の鋼材では、結晶粒アスペクト比が一定であるときに、再結晶率と音速パラメータαとの間に密接な関係がある。図4(a)にある鋼種についての再結晶率と音速パラメータαとの相関関係の一例を示す。図4(a)において、横軸は鋼材の再結晶率、縦軸は音速パラメータαである。図4(a)のグラフの例では、鋼材の再結晶率が小さいほど、音速パラメータαの絶対値は大きく、したがって、横波音速の異方性が大きいことが分かる。また、鋼材の再結晶率が大きいほど、音速パラメータαの絶対値が小さく、したがって、横波音速の異方性が小さいことが分かる。例えば、鋼材を圧延した直後には、再結晶粒はまだ発生していないので、再結晶率は0%である。そして、この圧延直後の鋼材は、その結晶方位が揃っており、横波音速の異方性が大きい。図4(a)のグラフの例では、最左下にプロットした点が圧延直後の状態に対応している。また、再結晶粒はその結晶方位がランダムになるように成長するので、再結晶率が100%に近づくにつれて、横波音速の異方性は小さくなる。図4(a)のグラフの例では、最右上にプロットした点は再結晶が進んだ状態に対応している。一般に、結晶粒アスペクト比が一定である場合、音速パラメータαと再結晶率との関係は、三次関数で近似することができる。
【0018】
また、各種の鋼材では、結晶粒アスペクト比が一定であるときに、再結晶率と減衰率パラメータβとの間にも密接な関係がある。図4(b)にある鋼種についての再結晶率と減衰率パラメータβとの相関関係の一例を示す。図4(b)において、横軸は鋼材の再結晶率、縦軸は減衰率パラメータβである。図4(b)のグラフの例では、鋼材の再結晶率が約80%のところで、減衰率パラメータβが極小値をとり、その絶対値が最も大きくなることが分かる。一般に、結晶粒アスペクト比が一定である場合、減衰率パラメータβと再結晶率との関係は、三次関数で近似することができる。
【0019】
ところで、本発明者等が実験により調べたところによれば、音速パラメータαと減衰率パラメータβは結晶粒アスペクト比にほぼ独立に寄与し、また、音速パラメータαと減衰率パラメータβは再結晶率にほぼ独立に寄与するということが判明した。したがって、ある鋼種の音速パラメータαは、再結晶率をx、結晶粒アスペクト比をyとすると、
α=(a3x3+a2x2+a1x)+(b1y+b0)・・・ (1)式
と表すことができる。ここで、a3,a2,a1,b1,b0は定数である。この(1)式において、b1y+b0は再結晶率xが0%である場合の音速パラメータαの値であり、a3x3+a2x2+a1x+b0は結晶粒アスペクト比yが0である場合の音速パラメータαの値である。
【0020】
同様に、ある鋼種の減衰率パラメータβは、再結晶率をx、結晶粒アスペクト比をyとすると、
β=(c3x3+c2x2+c1x)+(d1y+d0)・・・ (2)式
と表すことができる。ここで、c3,c2,c1,d1,d0は定数である。この(2)式において、d1y+d0は再結晶率xが0%である場合の減衰率パラメータβの値であり、c3x3+c2x2+c1x+d0は結晶粒アスペクト比yが0である場合の減衰率パラメータβの値である。
各定数を求めるには、まず、再結晶率が一定である複数のサンプルを用いて図3(b)に示すような減衰率パラメータと結晶粒アスペクト比との関係を示すデータを取得すると共に、結晶粒アスペクト比が一定である複数のサンプルを用いて図4(b)に示すような減衰率パラメータと再結晶率との関係を示すデータを取得する。そして、各データについて近似曲線を求めることにより、各定数を決定することができる。
【0021】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置では、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータ((1)式)と、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係を示す第二のデータ((2)式)とを予め取得しておく。そして、鋼材中を伝播する横波の音速VS1,VS2と、当該横波の波形振幅の二乗積分値AS1,AS2とを算出し、音速パラメータαと減衰率パラメータβとを求めた後、上記の(1)式及び(2)式を利用して、鋼材の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを求めることにする。このとき、鋼材中を伝播する横波の音速及び波形振幅の二乗積分値はレーザ超音波法を用いて算出する。
【0022】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置は、図1に示すように、超音波発生用レーザ10と、超音波検出用レーザ20と、ヘッド部30と、干渉計(周波数変化検出手段)50と、光検出器60と、コンピュータ(演算手段)70とを備える。また、この再結晶率・アスペクト比測定装置には、光学部品として、光ファイバ91a,91b,91c、集光レンズ92等が設けられている。
【0023】
超音波発生用レーザ10は、測定対象物2内に超音波を励起させるためのレーザである。超音波発生用レーザ10としては、例えばYAGレーザやCO2 レーザなどの高エネルギーパルスレーザを使用する。超音波発生用レーザ10から発せられたレーザビームは、光ファイバ91aを介してヘッド部30に導かれる。
【0024】
超音波検出用レーザ20は、超音波発生用レーザ10からのレーザビームの照射によって測定対象物2内に発生し、測定対象物2内を伝播してきた超音波を検出するためのレーザである。超音波検出用レーザ20としては、単一周波数のレーザビームを発するものを用いる。超音波検出用レーザ20から発せられたレーザビームは、光ファイバ91bを介してヘッド部30に導かれる。
【0025】
ヘッド部30は、図2に示すように、超音波発生部31と、ビーム取得部41とを備える。超音波発生部31は、測定対象物2の内部に、測定対象物2の圧延方向に偏波した第一の横波超音波(圧延方向偏波横波)を発生させると共に、測定対象物2の内部に、測定対象物2の幅方向に偏波した第二の横波超音波(幅方向偏波横波)を発生させるものである。この超音波発生部31は、シリンドリカルレンズ35と、シリンドリカルレンズ35の回転機構(図示せず)とを有する。光ファイバ91aにより超音波発生部31に導かれたレーザビームは、シリンドリカルレンズ35に入射する。シリンドリカルレンズ35は、超音波発生用レーザ10からのレーザビームをライン状に集光させ、ラインフォーカスビーム(第一レーザビーム)L1として測定対象物2の表面に照射するものである。
【0026】
本実施形態では、例えば、光ファイバ91aの出射端において、超音波発生用レーザ10からのレーザビームの直径は約5mmである。レーザビームは進行するにつれてその直径が広がってくる。シリンドリカルレンズ35の入射面においてレーザビームの直径が約10mmとなるように、光ファイバ91aの出射端とシリンドリカルレンズ35との距離を調整している。また、測定対象物2の表面において、長さ10mm、幅0.3mm〜0.5mmのラインフォーカスビームL1が照射されるように、シリンドリカルレンズ35の特性、及びシリンドリカルレンズ35と測定対象物2との距離等を設計している。
【0027】
また、シリンドリカルレンズ35の回転機構により、シリンドリカルレンズ35の長手方向の軸は、測定対象物2の表面に平行な平面内において任意の方向を向くことができる。この回転機構は、例えばコンピュータ70により制御される。
【0028】
ラインフォーカスビームL1を測定対象物2の表面に照射すると、測定対象物2の表面に対して所定の角度φで斜めに進行する超音波を発生させることができる。このとき、横波超音波と縦波超音波が同時に発生し、横波超音波と縦波超音波とでは、その進行方向角度φが異なる。本実施形態では、主として、超音波のうち横波だけ考えることにする。再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めるには、横波についての情報だけを得れば十分だからである。
【0029】
具体的に、ラインフォーカスビームL1を、そのラインの向きが測定対象物2の幅方向に平行となるようにして測定対象物2の表面に照射すると、圧延方向偏波横波が発生し、一方、ラインフォーカスビームL1を、そのラインの向きが測定対象物2の圧延方向に平行となるようにして測定対象物2の表面に照射すると、幅方向偏波横波が発生する。
【0030】
尚、点状のレーザビームを測定対象物2の表面に照射すると、測定対象物2の表面に対していろいろな方向に進行する超音波が発生する。当然、それらの超音波には、圧延方向偏波横波、幅方向偏波横波が含まれているが、その強度は小さいので、圧延方向偏波横波と幅方向偏波横波を正確に検出することは困難である。このため、本実施形態では、ラインフォーカスビームL1を用い、そのラインの向きを変えることにより、圧延方向偏波横波と幅方向偏波横波をそれぞれ独立に発生させることにしている。
【0031】
ビーム取得部41は、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各超音波について、当該超音波が測定対象物2の底面で反射して再び表面に戻ってきた位置(検出点位置)に、超音波検出用レーザ20から発せられた第二レーザビームL2を導くと共に、測定対象物2の表面で反射した第二レーザビームL2を取得するものである。このビーム取得部41は、集光レンズ45a,45bと、ハーフミラー46とを有する。また、ビーム取得部41は、一体的に構成されており、圧延方向及び幅方向に沿って移動することができる。
【0032】
光ファイバ91bによりビーム取得部41に導かれた第二レーザビームL2は、集光レンズ45aで集光され、ハーフミラー46を透過した後、測定対象物2上の検出点位置に照射される。ここで、測定対象物2の内部を伝播する横波超音波の進行方向角度φは予め分かっているので、その横波超音波の検出点位置も容易に知ることができる。ビーム取得部41は、その検出点位置に、集光レンズ45aによって集光された第二レーザビームL2を導く。
【0033】
また、本実施形態では、ビーム取得部41は、ラインフォーカスビームL1の略中心点を通りそのラインに直交する平面と測定対象物2の表面とが交わる直線上に、第二レーザビームL2を導くことにしている。すなわち、当該直線上の所定位置が検出点位置となる。例えば、ラインフォーカスビームL1の端点では、点状のレーザビームを照射した場合と同じ状況になり、超音波がいろいろな方向に発生する。このため、ラインフォーカスビームL1の端点を通りそのラインに直交する平面と測定対象物2の表面とが交わる直線上には、いろいろな方向に発生した超音波が戻ってくるので、所定方向に偏波した横波を正確に検出することができない。これに対し、ラインフォーカスビームL1の略中心点では、所定方向に偏波した横波だけが発生するので、ラインフォーカスビームL1の略中心点を通りそのラインに直交する平面と測定対象物2の表面とが交わる直線上の所定位置を検出点位置とすることにより、所定方向に偏波した横波を正確に検出することができる。
【0034】
測定対象物2の表面は粗面であるため、第二レーザビームL2は測定対象物2の表面においてほぼ等方的に散乱される。このとき、当該検出点位置に、測定対象物2の内部を伝播してきた超音波が戻ってくると、当該検出点位置が超音波振動をする。これにより、測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2は、測定対象物2の表面の超音波振動に起因するドップラーシフトを受けて周波数が変化する。
【0035】
測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2のうち、その一部は、ハーフミラー46で反射され、集光レンズ45bで集光された後、光ファイバ91cに入射する。この光ファイバ91cは、かかる第二レーザビームL2を干渉計50に導くものである。光ファイバ91cから出射した第二レーザビームL2は、集光レンズ92で集光された後、干渉計50に入射する。
【0036】
干渉計50としては、例えばファブリ・ペロー干渉計が用いられる。このファブリ・ペロー干渉計50は、超音波振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を検出するものであり、互いに対向する二つの反射ミラーを有する。この二つの反射ミラーは共振器を構成し、第二レーザビームL2を二つの反射ミラーの間で多重反射させることによりバンドパスフィルタとして機能する。二つの反射ミラー間の距離を調節することにより、この共振器を透過する光の周波数を調節することができる。
【0037】
ここで、ファブリ・ペロー干渉計50における共振曲線について説明する。図5はこの共振曲線の一例を示す図である。図5において、横軸は入射する光の周波数fを、縦軸はファブリ・ペロー干渉計50からの出力、すなわちファブリ・ペロー干渉計50を透過する光の強度Iを示している。図5から分かるように、透過光強度Iは、特定の周波数において急峻なピークを示すが、ピークの前後では速やかに低下する。このピークを示す周波数は、ファブリ・ペロー干渉計50の反射ミラー間の距離を調節することによって変えることができる。そこで、図5に示す曲線の傾きが最大となる点(共振曲線動作点)Aにおける周波数が、ちょうど第二レーザビームL2の発振周波数と一致するように反射ミラー間の距離が調節されていれば、周波数のわずかな変化±Δfを、相対的に大きな透過光強度の変化±ΔIに変換することができる。これにより、ファブリ・ペロー干渉計50は、測定対象物2の表面の超音波振動に起因するドップラーシフトを受けて周波数が変化した第二レーザビームL2が入力したときに、その周波数の変化を透過光強度の変化として出力する。
【0038】
ファブリ・ペロー干渉計50から出力された透過光強度は、光検出器60に送られる。光検出器60は、透過光強度を電気信号に変換するものである。これにより、超音波振動は、最終的に電気的な信号として捉えられる。光検出器60からの信号は、コンピュータ70に送られ、波形データとして記録される。
【0039】
コンピュータ70は、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各横波超音波について、第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、当該横波超音波が測定対象物2の内部を伝播し、その底面で反射して再び表面に戻ってくるまでの伝播時間を求める。超音波発生用レーザ10からレーザビームが発せられたタイミングと、ラインフォーカスビームL1が測定対象物2に照射するタイミングとは予め分かっている。このため、コンピュータ70は、光検出器60から送られた波形データに基づいて、周波数変化を検出したタイミングを調べることにより、横波超音波の伝播時間を求めることができる。
【0040】
また、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の伝播時間に基づいてその圧延方向偏波横波の音速VS1を算出すると共に、幅方向偏波横波の伝播時間に基づいてその幅方向偏波横波の音速VS2を算出する。そして、その算出した圧延方向偏波横波の音速VS1及び幅方向偏波横波の音速VS2を用いて、音速パラメータα=(VS1−VS2)/{(VS1+VS2)/2}を求める。すなわち、コンピュータ70は、本発明の音速パラメータ算出手段としての役割を果たす。
【0041】
コンピュータ70は、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各横波超音波について、第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出する。そして、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS1と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS2とを用いて、減衰率パラメータβ=(AS1−AS2)/{(AS1+AS2)/2}を求める。すなわち、コンピュータ70は、本発明の減衰率パラメータ算出手段としての役割を果たす。
【0042】
コンピュータ70の記憶部には、(1)式に示すような、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータと、(2)式に示すような、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβとの関係を示す第二のデータとが記憶されている。コンピュータ70は、その求めた音速パラメータαと減衰率パラメータβとを用いて、記憶部に記憶された当該測定対象物2と同じ鋼種についての第一のデータ及び第二のデータに基づいて当該測定対象物2の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yとを求める。
【0043】
具体的には、次のようにして再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを求める。音速パラメータαと減衰率パラメータβはそれぞれ、
α=(a3x3+a2x2+a1x)+(b1y+b0)・・・ (1)式
β=(c3x3+c2x2+c1x)+(d1y+d0)・・・ (2)式
で与えられる。まず、(2)式を、yについて解いて、
y=β−(c3x3+c2x2+c1)−d0≡f(x,β)・・・ (3)式
と表し、これを(1)式に代入する。これにより、
(a3x3+a2x2+a1x)+b1×f(x,β)+b0−α=0・・・ (4)式
が得られる。これをxについて解くことにより、再結晶率xを求めることができる。このとき、例えばニュートン法などの関数のゼロ値を求める一般的な手法を使用すればよい。こうして求めた再結晶率xを、(3)式のy=f(x,β)に代入することにより、結晶率アスペクト比yを求めることができる。
【0044】
ユーザは予め、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータ、すなわち(1)式の方程式に現れる各定数a3,a2,a1,b1,b0と、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係を示す第二のデータ、すなわち(2)式の方程式に現れる各定数c3,c2,c1,d1,d0とを求めておく必要がある。これらのデータを得るには、まず、各鋼種について、複数の第一サンプル(厚板)と複数の第二サンプル(厚板)とを用意する。ここで、第一サンプル及び第二サンプルとしては、厚さが約5mmであるものを用いる。そして、第一サンプルとしては、再結晶率xが略同じ、例えば0%であるような厚板を用い、第二サンプルとしては、結晶粒アスペクト比yが略同じ、例えば2〜3であるような厚板を用いる。
【0045】
ユーザは、複数の第一サンプルについては、結晶粒アスペクト比y、音速パラメータα、減衰パラメータβを個別に求める。具体的には、結晶粒アスペクト比yは、当該第一サンプルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの断面を顕微鏡で観察して、結晶粒のサイズを実測することにより、求められる。一方、音速パラメータαと減衰率パラメータβは、例えば本実施形態の装置を用いることにより求められる。こうして求めた、複数の第一サンプルについての結晶粒アスペクト比yと音速パラメータαをグラフで表すと、図3(a)に示すようなグラフが得られる。また、複数の第一サンプルについての結晶粒アスペクト比yと減衰率パラメータβをグラフで表すと、図3(b)に示すようなグラフが得られる。
【0046】
また、ユーザは、複数の第二サンプルについては、再結晶率x、音速パラメータα、減衰パラメータβを個別に求める。具体的には、再結晶率xは、当該第二サンプルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの断面を顕微鏡で観察して、ある領域において再結晶粒の占める割合を実測することにより、求められる。一方、音速パラメータαと減衰率パラメータβは、例えば本実施形態の装置を用いることにより求められる。こうして求めた、複数の第二サンプルについての再結晶率xと音速パラメータαをグラフで表すと、図4(a)に示すようなグラフが得られる。また、複数の第二サンプルについての再結晶率xと減衰率パラメータβをグラフで表すと、図4(b)に示すようなグラフが得られる。
【0047】
次に、これら四つのグラフについて、プロットした各点を繋ぐ近似曲線を求める。図3(a)に示すような結晶粒アスペクト比yと音速パラメータαとの関係を示すグラフの近似曲線(一次関数)、図4(a)に示すような再結晶率xと音速パラメータαとの関係を示すグラフの近似曲線(三次関数)、及びあるサンプルについての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y、音速パラメータαの一組の値を用いて、上記の(1)式における各定数a3,a2,a1,b1,b0を決定することができる。また、図3(b)に示すような結晶粒アスペクト比yと減衰率パラメータβとの関係を示すグラフの近似曲線(一次関数)、図4(b)に示すような再結晶率xと減衰率パラメータβとの関係を示すグラフの近似曲線(三次関数)、及びあるサンプルについての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y、減衰率パラメータβの一組の値を用いて、上記の(2)式における各定数c3,c2,c1,d1,d0を決定することができる。
【0048】
尚、一般に、再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係と、再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係はそれぞれ、鋼種毎に異なるので、かかる関係を鋼種毎に求めることにしている。
【0049】
ところで、サンプルの音速パラメータαや減衰率パラメータβを求める場合には、図1に示す装置の代わりに、図6に示すような装置を用いることが望ましい。図6は本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置の変形例を説明するための図である。図6に示す再結晶率・アスペクト比測定装置は、超音波発生用レーザ10と、超音波検出用レーザ20と、超音波発生部31aと、ビーム取得部41aと、干渉計50と、光検出器60と、コンピュータ70と、回転ステージ100とを備える。尚、図6の再結晶率・アスペクト比測定装置において、図1の装置と同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図6の再結晶率・アスペクト比測定装置が図1に示す装置と異なる点は、主に二つある。第一は、回転ステージ100に測定対象物2を載置し、回転ステージ100を回転させることによりラインフォーカスビームL1のラインの向きを変える点である。すなわち、超音波発生部31aはシリンドリカルレンズ35の回転機構を有していない。第二は、超音波発生部31aとビーム取得部41aとを別個に構成し、ビーム取得部41aを測定対象物2を介して超音波発生部31aと反対側に配置した点である。すなわち、ビーム取得部41aは、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各超音波について、当該横波超音波が到達する測定対象物2の底面の位置に、第二レーザビームL2を導くと共に、測定対象物2の底面で反射した第二レーザビームL2を取得する。その他の構成は、図1の再結晶率・アスペクト比測定装置と略同様である。
【0051】
図6の再結晶率・アスペクト比測定装置は、その構成が簡易であり、特に、サイズのそれ程大きくない測定対象物2に対する測定を行う場合に適している。したがって、上述したサンプルについてその音速パラメータαや減衰率パラメータβを求める場合に好適である。但し、この装置は、測定対象物2を回転ステージ100に載置するので、熱間オンラインでの測定を行う場合に用いることはできない。
【0052】
次に、本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置において、測定対象物2の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを測定する手順について説明する。図7はその再結晶率・アスペクト比測定装置において測定対象物2の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを測定する手順を説明するためのフローチャートである。
【0053】
まず、コンピュータ70は、シリンドリカルレンズ35の長手方向が幅方向となるように、シリンドリカルレンズ35の回転機構を制御する(S1)。その後、超音波発生用レーザ10からレーザビームを発すると共に、超音波検出用レーザ20から第二レーザビームL2を発する。超音波発生用レーザ10からのレーザビームは、シリンドリカルレンズ35でライン状に集光され、ラインフォーカスビームL1として測定対象物2の表面に照射される。このとき、ラインフォーカスビームL1のラインの向きは測定対象物2の幅方向に平行であるので、測定対象物2の内部には圧延方向偏波横波が発生する。測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2がファブリ・ペロー干渉計50に入射することにより、ファブリ・ペロー干渉計50は、圧延方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を検出する。そして、コンピュータ70は、その第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データを取得し、所定のメモリに記憶する(S2)。
【0054】
次に、コンピュータ70は、シリンドリカルレンズ35の長手方向が圧延方向となるように、シリンドリカルレンズ35の回転機構を制御する(S3)。その後、超音波発生用レーザ10からレーザビームを発すると共に、超音波検出用レーザ20から第二レーザビームL2を発する。このとき、シリンドリカルレンズ35で集光されたラインフォーカスビームL1のラインの向きは測定対象物2の圧延方向に平行であるので、測定対象物2の内部には幅方向偏波横波が発生する。測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2がファブリ・ペロー干渉計50に入射することにより、ファブリ・ペロー干渉計50は、幅方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を検出する。そして、コンピュータ70は、その第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データを取得し、所定のメモリに記憶する(S4)。
【0055】
次に、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、圧延方向変位横波の伝播時間を求めると共に、幅方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、幅方向変位横波の伝播時間を求める(S5)。その後、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の伝播時間に基づいて圧延方向偏波横波の音速VS1を算出すると共に、幅方向偏波横波の伝播時間に基づいて幅方向偏波横波の音速VS2を算出する(S6)。そして、圧延方向偏波横波の音速VS1と幅方向偏波横波の音速VS2とを用いて、音速パラメータαを求める(S7)。
【0056】
また、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS1を算出すると共に、幅方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS2を算出する(S8)。そして、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS1と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS2とを用いて、減衰率パラメータβを求める(S9)。
【0057】
次に、コンピュータ70は、記憶部に記憶された測定対象物2と同じ鋼種についての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータ、当該鋼種についての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係を示す第二のデータを利用し、当該測定対象物2の音速パラメータα及び減衰率パラメータβから当該測定対象物2の再結晶率x及び結晶粒アスペクト比yを求める(S10)。こうして得られた測定対象物2の再結晶率x及び結晶粒アスペクト比yは、例えば、コンピュータ70の画面に表示される。
【0058】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置では、レーザ超音波法を用いることにより、測定対象物の内部にその表面に対して斜めに進行する横波超音波を発生させ、圧延方向偏波横波、幅方向偏波横波の各々について、当該横波超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームの周波数変化を表す波形データを取得し、その波形データに基づいて当該横波超音波の音速、波形振幅の二乗積分値を算出する。そして、圧延方向偏波横波の音速と幅方向偏波横波の音速とを用いて測定対象物についての音速パラメータを求めると共に、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値とを用いて測定対象物についての減衰率パラメータを求める。その求めた音速パラメータと減衰率パラメータとを用い、コンピュータの記憶部に記憶された測定対象物と同じ鋼種についての第一のデータ及び第二のデータに基づいて測定対象物についての再結晶率と結晶粒アスペクト比を得る。したがって、本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置を用いると、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めることができる。このため、かかる再結晶率と結晶率アスペクト比についての情報を、例えば次工程の圧延条件へフィードフォワードすることにより、組織微細の鋼材を効率的・安定的に製造できるようになり、また、高精度な鋼材の製造技術による材質ばらつきの低減にも貢献することができる。
【0059】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、上記の実施形態では、ラインフォーカスビームを測定対象物の表面に照射することにより、測定対象物の内部に横波を発生させ、その発生させた横波を検出する場合について説明したが、横波と同時に縦波が発生するので、その縦波が測定対象物の底面で横波にモード変換する成分であるモード変換横波を検出するようにしてもよい。但し、この場合は、測定対象物の底面でモード変換しなかった反射縦波をも検出する必要がある。
【0061】
また、上記の実施形態では、測定対象物として、熱間プロセスで製造される厚板を用いた場合について説明したが、本発明の再結晶率・アスペクト比測定装置は、かかる厚板以外のどのような金属に対しても適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の再結晶率・アスペクト比測定装置では、レーザ超音波法を用いることにより、測定対象物の内部にその表面に対して斜めに進行する横波超音波を発生させ、圧延方向に偏波した第一の横波超音波、幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームの周波数変化を表す波形データを取得し、その波形データに基づいて当該横波超音波の音速、波形振幅の二乗積分値を算出する。そして、第一の横波超音波の音速と第二の横波超音波の音速とを用いて測定対象物についての音速パラメータを求めると共に、第一の横波超音波の波形振幅二乗積分値と第二の横波超音波の波形振幅二乗積分値とを用いて測定対象物についての減衰率パラメータを求める。その求めた音速パラメータと減衰率パラメータとを用い、記憶手段に記憶された第一のデータ及び第二のデータに基づいて測定対象物についての再結晶率と結晶率アスペクト比を得る。したがって、本発明の再結晶率・アスペクト比測定装置を用いると、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めることができる。
【0063】
また、本発明の再結晶率・アスペクト比測定方法によれば、上記と同様に、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である再結晶率・アスペクト比測定装置の概略構成図である。
【図2】その再結晶率・アスペクト比測定装置におけるヘッド部の概略構成図である。
【図3】(a)はある鋼種についての結晶粒アスペクト比と音速パラメータとの関係を示すグラフ、(b)はその鋼種についての結晶粒アスペクト比と減衰率パラメータとの関係を示すグラフである。
【図4】(a)はその鋼種についての再結晶率と音速パラメータとの関係を示すグラフ、(b)はその鋼種についての再結晶率と減衰率パラメータとの関係を示すグラフである。
【図5】本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置におけるファブリ・ペロー干渉計の共振曲線の一例を示す図である。
【図6】本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置の変形例を説明するための図である。
【図7】再結晶率・アスペクト比測定装置において測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を測定する手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
2…測定対象物
10…超音波発生用レーザ
20…超音波検出用レーザ
30…ヘッド部
31,31a…超音波発生部
35…シリンドリカルレンズ
41,41a…ビーム取得部
45a,45b…集光レンズ
46…ハーフミラー
50…干渉計
60…光検出器
70…コンピュータ
91a,91b,91c…光ファイバ
92…集光レンズ
100…回転ステージ
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば鋼材の再結晶率と結晶粒アスペクト比を非接触で測定する再結晶率・アスペクト比測定装置及び再結晶率・アスペクト比測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間の鋼材製造プロセスでは、鋼材に、圧延等、さまざまな処理が施される。一般に、鋼材の結晶組織を微細化することにより、高強度・高靭性の特性を有する鋼材が得られる。例えば、鋼材が再結晶率の低い状態にあるほど、結晶内部に格子欠陥が多くあり、そこを起点として核が成長するので、結晶組織が微細化しやすくなる。また、幅方向の結晶粒サイズに対する圧延方向の結晶粒サイズの比である結晶粒アスペクト比が大きいほど、再結晶した新しい結晶粒径が小さくなり、また、結晶内に核生成サイト(すべり面)が生じ、そこを起点として核が成長するので、結晶組織が微細化しやすくなる。このように、再結晶率や結晶粒アスペクト比は、鋼材の結晶組織の状態を知るための重要な情報である。
【0003】
尚、再結晶率は、当該鋼材について横波音速の異方性を表す音速パラメータと相関があることが知られている。この相関関係は、非特許文献1に開示されている。また、結晶粒アスペクト比は、当該鋼材について音速パラメータと相関があることが知られている。この相関関係は、非特許文献2に開示されている。
【0004】
【非特許文献1】
NDT&E International, Vol.33, 2000, p.253−259, “Ultrasonic vel ocity measurements for characterizing the annealing behaviour of cold worked austenitic stainless steel”
【非特許文献2】
“SUS304のクリープ変形に伴う超音波速度変化” Proc. of Ja panese Material Society, 41st (1992), p.22−24
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、熱間の鋼材製造プロセスにおいて、再結晶率や結晶粒アスペクト比をオンラインで測定することは行われていない。上記の各非特許文献では、接触型の横波プローブを使って横波音速を測定しており、当然、この方法は、熱間オンラインでの測定に用いることはできない。もし熱間オンラインで再結晶率や結晶粒アスペクト比についての情報が得られれば、例えば、その情報を次工程の圧延条件へフィードフォワードすることにより、組織微細の鋼材を効率的・安定的に製造できるようになり、また、高精度な鋼材の製造技術による材質ばらつきの低減にも貢献できる。
【0006】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を測定することができる再結晶率・アスペクト比測定装置及び再結晶率・アスペクト比測定方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、板状の測定対象物についての再結晶率及び結晶粒アスペクト比を測定する再結晶率・アスペクト比測定装置であって、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び横波音速の異方性を表す音速パラメータの関係を示す第一のデータと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び横波音速の減衰率の異方性を表す減衰率パラメータの関係を示す第二のデータとを記憶する記憶手段と、第一レーザビームを前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に横波超音波を発生させる超音波発生手段と、前記測定対象物の内部に発生した、前記測定対象物の長手方向に偏波した第一の横波超音波、前記測定対象物の幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波が到達する前記測定対象物の所定位置に第二レーザビームを導くと共に、前記測定対象物で反射した前記第二レーザビームを取得するビーム取得手段と、前記ビーム取得手段で取得された前記第二レーザビームに基づいて、当該横波超音波の振動に起因して生じる前記第二レーザビームの周波数の変化を検出する周波数変化検出手段と、前記第一の横波超音波及び前記第二の横波超音波の各々について、前記周波数変化検出手段で検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波が前記測定対象物の内部を伝播した伝播時間を求め、その求めた伝播時間に基づいて当該横波超音波の音速を算出し、且つ、前記第一の横波超音波の音速と前記第二の横波超音波の音速とを用いて前記測定対象物についての音速パラメータを求める音速パラメータ算出手段と、前記第一の横波超音波及び前記第二の横波超音波の各々について、前記周波数変化検出手段で検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出し、且つ、前記第一の横波超音波の波形振幅の二乗積分値と前記第二の横波超音波の波形振幅の二乗積分値とを用いて前記測定対象物についての減衰率パラメータを求める減衰率パラメータ算出手段と、前記音速パラメータ算出手段で求めた音速パラメータと前記減衰率パラメータ算出手段で求めた減衰率パラメータとを用い、前記記憶手段に記憶された前記測定対象物と同じ鋼種についての前記第一のデータ及び前記第二のデータに基づいて前記測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比とを求める演算手段と、を具備することを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の再結晶率・アスペクト比測定装置において、前記第一レーザビームはライン状のものであり、且つ、前記超音波発生手段は、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の幅方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第一の横波超音波を発生させると共に、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の長手方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第二の横波超音波を発生させることを特徴とするものである。
【0009】
更に、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の再結晶率・アスペクト比測定装置において、前記ビーム取得手段は、前記第一レーザビームのラインの中心点を通りそのラインに直交する平面と前記測定対象物の表面又は底面とが交わる直線上に、前記第二レーザビームを導くことを特徴とするものである。
【0010】
上記の目的を達成するための請求項4記載の発明は、板状の測定対象物についての再結晶率及び結晶粒アスペクト比を測定する再結晶率・アスペクト比測定方法であって、第一レーザビームを前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に横波超音波を発生させる第一ステップと、前記測定対象物の内部に発生した、前記測定対象物の長手方向に偏波した第一の横波超音波、前記測定対象物の幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波が到達する前記測定対象物の所定位置に第二レーザビームを導くと共に、前記測定対象物で反射した前記第二レーザビームを取得する第二ステップと、前記第二ステップで取得された前記第二レーザビームに基づいて、当該横波超音波の振動に起因して生じる前記第二レーザビームの周波数の変化を検出する第三ステップと、前記第三ステップで検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波が前記測定対象物の内部を伝播した伝播時間を求める第四ステップと、前記第四ステップで求めた伝播時間に基づいて当該横波超音波の音速を算出する第五ステップと、前記第五ステップで得られた前記第一の横波超音波の音速と前記第二の横波超音波の音速とを用いて前記測定対象物についての横波音速の異方性を表す音速パラメータを求める第六ステップと、前記第三ステップで検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出する第七ステップと、前記第七ステップで得られた前記第一の横波超音波の波形振幅の二乗積分値と前記第二の横波超音波の波形振幅の二乗積分値とを用いて前記測定対象物についての横波音速の減衰率の異方性を表す減衰率パラメータを求める第八ステップと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び音速パラメータの関係を示す第一のデータと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び減衰率パラメータの関係を示す第二のデータとが予め求められており、前記測定対象物と同じ鋼種についての前記第一のデータ及び前記第二のデータに基づいて、前記第六ステップで求めた音速パラメータと前記第八ステップで求めた減衰率パラメータとを用いて前記測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比とを求める第九ステップと、を具備することを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の再結晶率・アスペクト比測定方法において、前記第一レーザビームはライン状のものであり、且つ、前記第一ステップでは、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の幅方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第一の横波超音波を発生させると共に、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の長手方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第二の横波超音波を発生させることを特徴とするものである。
【0012】
更に、請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載の再結晶率・アスペクト比測定方法において、前記第二ステップでは、前記第一レーザビームのラインの中心点を通りそのラインに直交する平面と前記測定対象物の表面又は底面とが交わる直線上に、前記第二レーザビームを導くことを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態である再結晶率・アスペクト比測定装置の概略構成図、図2はその再結晶率・アスペクト比測定装置におけるヘッド部の概略構成図である。また、図3(a)はある鋼種についての結晶粒アスペクト比と音速パラメータとの関係を示すグラフ、図3(b)はその鋼種についての結晶粒アスペクト比と減衰率パラメータとの関係を示すグラフ、図4(a)はその鋼種についての再結晶率と音速パラメータとの関係を示すグラフ、図4(b)はその鋼種についての再結晶率と減衰率パラメータとの関係を示すグラフである。
【0014】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置は、測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を非接触で測定するものである。ここで、測定対象物としては、例えば、製鉄所において、熱間プロセスにより製造される板状の鋼材(厚板)を想定している。かかる厚板の表面温度は、通常、700℃ぐらいである。また、厚板の厚さは10mm〜100mm程度である。
【0015】
結晶粒アスペクト比とは、鋼材の幅方向における結晶粒サイズに対する鋼材の長手方向(圧延方向)における結晶粒サイズの比である。例えば、鋼材が圧延されると、その鋼材の結晶粒は圧延方向に引き伸ばされることになる。結晶粒アスペクト比は、かかる結晶粒の伸び具合を表している。各種の鋼材では、再結晶率が一定であるときに、結晶粒アスペクト比と当該鋼材の内部を伝播する横波超音波の音速から得られる所定の音速パラメータαとの間に密接な関係がある。図3(a)にある鋼種についての結晶粒アスペクト比と音速パラメータαとの相関関係の一例を示す。図3(a)において、横軸は鋼材の結晶粒アスペクト比、縦軸は音速パラメータαである。また、音速パラメータαは、当該鋼材中を伝播する横波超音波の音速の異方性を表すものであり、(VS1−VS2)/{(VS1+VS2)/2}で定義される。ここで、VS1は鋼材の長手方向(圧延方向)に偏波した第一の横波超音波(圧延方向偏波横波)の音速であり、VS2は鋼材の幅方向に偏波した第二の横波超音波(幅方向偏波横波)の音速である。図3(a)のグラフの例では、鋼材の結晶粒アスペクト比が大きいほど、音速パラメータαが小さく、したがって、横波音速の異方性が小さいことが分かる。一般に、再結晶率が一定である場合、音速パラメータαと結晶粒アスペクト比との関係は、一次関数で近似することができる。
【0016】
また、各種の鋼材では、再結晶率が一定であるときに、結晶粒アスペクト比と当該鋼材の内部を伝播する横波超音波の減衰率から得られる所定の減衰率パラメータβとの間にも密接な関係がある。図3(b)にある鋼種についての結晶粒アスペクト比と減衰率パラメータβとの相関関係の一例を示す。図3(b)において、横軸は鋼材の結晶粒アスペクト比、縦軸は減衰率パラメータβである。減衰率パラメータβは、当該鋼材中を伝播する横波超音波の減衰率の異方性を表すものであり、(AtS1−AtS2)/{(AtS1+AtS2)/2}で定義される。ここで、AtS1は鋼材の圧延方向に偏波した横波超音波の減衰率であり、AtS2は鋼材の幅方向に偏波した横波超音波の減衰率である。また、横波超音波の減衰率AtSk(k=1,2)は、発生時における当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値A0,Skに対する検出時における当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値ASkの比である。したがって、検出時において、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値A0,S1と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値A0,S2とが等しいと仮定すると、減衰率パラメータβは、(AS1−AS2)/{(AS1+AS2)/2}より求めることができる。図3(b)のグラフの例では、鋼材の結晶粒アスペクト比が大きいほど、減衰率パラメータβの絶対値が大きく、したがって、横波の減衰率の異方性が大きいことが分かる。これは定性的には次のような理由による。すなわち、横波は主に粒界を伝わるときに減衰すると考えられる。このため、粒界が多いところを伝播した横波の減衰率は、粒界が少ないところを伝播した横波の減衰率よりも大きい。圧延された鋼材では、圧延方向に垂直な平面による断面における結晶粒界は、幅方向に垂直な平面による断面における結晶粒界よりも多いので、幅方向偏波横波の減衰率は圧延方向偏波横波の減衰率より大きい。したがって、結晶粒アスペクト比が大きければ大きいほど、減衰率パラメータβの絶対値は大きくなる。一般に、再結晶率が一定である場合、減衰率パラメータβと結晶粒アスペクト比との関係は、一次関数で近似することができる。
【0017】
再結晶とは、大きいひずみのある結晶粒界に新しい結晶の核が発生し、次第に成長して、もとの結晶粒がこの新しい結晶粒(再結晶粒)に置き換わる現象をいう。そして、再結晶率とは、ある領域において再結晶粒の占める割合をいう。各種の鋼材では、結晶粒アスペクト比が一定であるときに、再結晶率と音速パラメータαとの間に密接な関係がある。図4(a)にある鋼種についての再結晶率と音速パラメータαとの相関関係の一例を示す。図4(a)において、横軸は鋼材の再結晶率、縦軸は音速パラメータαである。図4(a)のグラフの例では、鋼材の再結晶率が小さいほど、音速パラメータαの絶対値は大きく、したがって、横波音速の異方性が大きいことが分かる。また、鋼材の再結晶率が大きいほど、音速パラメータαの絶対値が小さく、したがって、横波音速の異方性が小さいことが分かる。例えば、鋼材を圧延した直後には、再結晶粒はまだ発生していないので、再結晶率は0%である。そして、この圧延直後の鋼材は、その結晶方位が揃っており、横波音速の異方性が大きい。図4(a)のグラフの例では、最左下にプロットした点が圧延直後の状態に対応している。また、再結晶粒はその結晶方位がランダムになるように成長するので、再結晶率が100%に近づくにつれて、横波音速の異方性は小さくなる。図4(a)のグラフの例では、最右上にプロットした点は再結晶が進んだ状態に対応している。一般に、結晶粒アスペクト比が一定である場合、音速パラメータαと再結晶率との関係は、三次関数で近似することができる。
【0018】
また、各種の鋼材では、結晶粒アスペクト比が一定であるときに、再結晶率と減衰率パラメータβとの間にも密接な関係がある。図4(b)にある鋼種についての再結晶率と減衰率パラメータβとの相関関係の一例を示す。図4(b)において、横軸は鋼材の再結晶率、縦軸は減衰率パラメータβである。図4(b)のグラフの例では、鋼材の再結晶率が約80%のところで、減衰率パラメータβが極小値をとり、その絶対値が最も大きくなることが分かる。一般に、結晶粒アスペクト比が一定である場合、減衰率パラメータβと再結晶率との関係は、三次関数で近似することができる。
【0019】
ところで、本発明者等が実験により調べたところによれば、音速パラメータαと減衰率パラメータβは結晶粒アスペクト比にほぼ独立に寄与し、また、音速パラメータαと減衰率パラメータβは再結晶率にほぼ独立に寄与するということが判明した。したがって、ある鋼種の音速パラメータαは、再結晶率をx、結晶粒アスペクト比をyとすると、
α=(a3x3+a2x2+a1x)+(b1y+b0)・・・ (1)式
と表すことができる。ここで、a3,a2,a1,b1,b0は定数である。この(1)式において、b1y+b0は再結晶率xが0%である場合の音速パラメータαの値であり、a3x3+a2x2+a1x+b0は結晶粒アスペクト比yが0である場合の音速パラメータαの値である。
【0020】
同様に、ある鋼種の減衰率パラメータβは、再結晶率をx、結晶粒アスペクト比をyとすると、
β=(c3x3+c2x2+c1x)+(d1y+d0)・・・ (2)式
と表すことができる。ここで、c3,c2,c1,d1,d0は定数である。この(2)式において、d1y+d0は再結晶率xが0%である場合の減衰率パラメータβの値であり、c3x3+c2x2+c1x+d0は結晶粒アスペクト比yが0である場合の減衰率パラメータβの値である。
各定数を求めるには、まず、再結晶率が一定である複数のサンプルを用いて図3(b)に示すような減衰率パラメータと結晶粒アスペクト比との関係を示すデータを取得すると共に、結晶粒アスペクト比が一定である複数のサンプルを用いて図4(b)に示すような減衰率パラメータと再結晶率との関係を示すデータを取得する。そして、各データについて近似曲線を求めることにより、各定数を決定することができる。
【0021】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置では、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータ((1)式)と、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係を示す第二のデータ((2)式)とを予め取得しておく。そして、鋼材中を伝播する横波の音速VS1,VS2と、当該横波の波形振幅の二乗積分値AS1,AS2とを算出し、音速パラメータαと減衰率パラメータβとを求めた後、上記の(1)式及び(2)式を利用して、鋼材の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを求めることにする。このとき、鋼材中を伝播する横波の音速及び波形振幅の二乗積分値はレーザ超音波法を用いて算出する。
【0022】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置は、図1に示すように、超音波発生用レーザ10と、超音波検出用レーザ20と、ヘッド部30と、干渉計(周波数変化検出手段)50と、光検出器60と、コンピュータ(演算手段)70とを備える。また、この再結晶率・アスペクト比測定装置には、光学部品として、光ファイバ91a,91b,91c、集光レンズ92等が設けられている。
【0023】
超音波発生用レーザ10は、測定対象物2内に超音波を励起させるためのレーザである。超音波発生用レーザ10としては、例えばYAGレーザやCO2 レーザなどの高エネルギーパルスレーザを使用する。超音波発生用レーザ10から発せられたレーザビームは、光ファイバ91aを介してヘッド部30に導かれる。
【0024】
超音波検出用レーザ20は、超音波発生用レーザ10からのレーザビームの照射によって測定対象物2内に発生し、測定対象物2内を伝播してきた超音波を検出するためのレーザである。超音波検出用レーザ20としては、単一周波数のレーザビームを発するものを用いる。超音波検出用レーザ20から発せられたレーザビームは、光ファイバ91bを介してヘッド部30に導かれる。
【0025】
ヘッド部30は、図2に示すように、超音波発生部31と、ビーム取得部41とを備える。超音波発生部31は、測定対象物2の内部に、測定対象物2の圧延方向に偏波した第一の横波超音波(圧延方向偏波横波)を発生させると共に、測定対象物2の内部に、測定対象物2の幅方向に偏波した第二の横波超音波(幅方向偏波横波)を発生させるものである。この超音波発生部31は、シリンドリカルレンズ35と、シリンドリカルレンズ35の回転機構(図示せず)とを有する。光ファイバ91aにより超音波発生部31に導かれたレーザビームは、シリンドリカルレンズ35に入射する。シリンドリカルレンズ35は、超音波発生用レーザ10からのレーザビームをライン状に集光させ、ラインフォーカスビーム(第一レーザビーム)L1として測定対象物2の表面に照射するものである。
【0026】
本実施形態では、例えば、光ファイバ91aの出射端において、超音波発生用レーザ10からのレーザビームの直径は約5mmである。レーザビームは進行するにつれてその直径が広がってくる。シリンドリカルレンズ35の入射面においてレーザビームの直径が約10mmとなるように、光ファイバ91aの出射端とシリンドリカルレンズ35との距離を調整している。また、測定対象物2の表面において、長さ10mm、幅0.3mm〜0.5mmのラインフォーカスビームL1が照射されるように、シリンドリカルレンズ35の特性、及びシリンドリカルレンズ35と測定対象物2との距離等を設計している。
【0027】
また、シリンドリカルレンズ35の回転機構により、シリンドリカルレンズ35の長手方向の軸は、測定対象物2の表面に平行な平面内において任意の方向を向くことができる。この回転機構は、例えばコンピュータ70により制御される。
【0028】
ラインフォーカスビームL1を測定対象物2の表面に照射すると、測定対象物2の表面に対して所定の角度φで斜めに進行する超音波を発生させることができる。このとき、横波超音波と縦波超音波が同時に発生し、横波超音波と縦波超音波とでは、その進行方向角度φが異なる。本実施形態では、主として、超音波のうち横波だけ考えることにする。再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めるには、横波についての情報だけを得れば十分だからである。
【0029】
具体的に、ラインフォーカスビームL1を、そのラインの向きが測定対象物2の幅方向に平行となるようにして測定対象物2の表面に照射すると、圧延方向偏波横波が発生し、一方、ラインフォーカスビームL1を、そのラインの向きが測定対象物2の圧延方向に平行となるようにして測定対象物2の表面に照射すると、幅方向偏波横波が発生する。
【0030】
尚、点状のレーザビームを測定対象物2の表面に照射すると、測定対象物2の表面に対していろいろな方向に進行する超音波が発生する。当然、それらの超音波には、圧延方向偏波横波、幅方向偏波横波が含まれているが、その強度は小さいので、圧延方向偏波横波と幅方向偏波横波を正確に検出することは困難である。このため、本実施形態では、ラインフォーカスビームL1を用い、そのラインの向きを変えることにより、圧延方向偏波横波と幅方向偏波横波をそれぞれ独立に発生させることにしている。
【0031】
ビーム取得部41は、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各超音波について、当該超音波が測定対象物2の底面で反射して再び表面に戻ってきた位置(検出点位置)に、超音波検出用レーザ20から発せられた第二レーザビームL2を導くと共に、測定対象物2の表面で反射した第二レーザビームL2を取得するものである。このビーム取得部41は、集光レンズ45a,45bと、ハーフミラー46とを有する。また、ビーム取得部41は、一体的に構成されており、圧延方向及び幅方向に沿って移動することができる。
【0032】
光ファイバ91bによりビーム取得部41に導かれた第二レーザビームL2は、集光レンズ45aで集光され、ハーフミラー46を透過した後、測定対象物2上の検出点位置に照射される。ここで、測定対象物2の内部を伝播する横波超音波の進行方向角度φは予め分かっているので、その横波超音波の検出点位置も容易に知ることができる。ビーム取得部41は、その検出点位置に、集光レンズ45aによって集光された第二レーザビームL2を導く。
【0033】
また、本実施形態では、ビーム取得部41は、ラインフォーカスビームL1の略中心点を通りそのラインに直交する平面と測定対象物2の表面とが交わる直線上に、第二レーザビームL2を導くことにしている。すなわち、当該直線上の所定位置が検出点位置となる。例えば、ラインフォーカスビームL1の端点では、点状のレーザビームを照射した場合と同じ状況になり、超音波がいろいろな方向に発生する。このため、ラインフォーカスビームL1の端点を通りそのラインに直交する平面と測定対象物2の表面とが交わる直線上には、いろいろな方向に発生した超音波が戻ってくるので、所定方向に偏波した横波を正確に検出することができない。これに対し、ラインフォーカスビームL1の略中心点では、所定方向に偏波した横波だけが発生するので、ラインフォーカスビームL1の略中心点を通りそのラインに直交する平面と測定対象物2の表面とが交わる直線上の所定位置を検出点位置とすることにより、所定方向に偏波した横波を正確に検出することができる。
【0034】
測定対象物2の表面は粗面であるため、第二レーザビームL2は測定対象物2の表面においてほぼ等方的に散乱される。このとき、当該検出点位置に、測定対象物2の内部を伝播してきた超音波が戻ってくると、当該検出点位置が超音波振動をする。これにより、測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2は、測定対象物2の表面の超音波振動に起因するドップラーシフトを受けて周波数が変化する。
【0035】
測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2のうち、その一部は、ハーフミラー46で反射され、集光レンズ45bで集光された後、光ファイバ91cに入射する。この光ファイバ91cは、かかる第二レーザビームL2を干渉計50に導くものである。光ファイバ91cから出射した第二レーザビームL2は、集光レンズ92で集光された後、干渉計50に入射する。
【0036】
干渉計50としては、例えばファブリ・ペロー干渉計が用いられる。このファブリ・ペロー干渉計50は、超音波振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を検出するものであり、互いに対向する二つの反射ミラーを有する。この二つの反射ミラーは共振器を構成し、第二レーザビームL2を二つの反射ミラーの間で多重反射させることによりバンドパスフィルタとして機能する。二つの反射ミラー間の距離を調節することにより、この共振器を透過する光の周波数を調節することができる。
【0037】
ここで、ファブリ・ペロー干渉計50における共振曲線について説明する。図5はこの共振曲線の一例を示す図である。図5において、横軸は入射する光の周波数fを、縦軸はファブリ・ペロー干渉計50からの出力、すなわちファブリ・ペロー干渉計50を透過する光の強度Iを示している。図5から分かるように、透過光強度Iは、特定の周波数において急峻なピークを示すが、ピークの前後では速やかに低下する。このピークを示す周波数は、ファブリ・ペロー干渉計50の反射ミラー間の距離を調節することによって変えることができる。そこで、図5に示す曲線の傾きが最大となる点(共振曲線動作点)Aにおける周波数が、ちょうど第二レーザビームL2の発振周波数と一致するように反射ミラー間の距離が調節されていれば、周波数のわずかな変化±Δfを、相対的に大きな透過光強度の変化±ΔIに変換することができる。これにより、ファブリ・ペロー干渉計50は、測定対象物2の表面の超音波振動に起因するドップラーシフトを受けて周波数が変化した第二レーザビームL2が入力したときに、その周波数の変化を透過光強度の変化として出力する。
【0038】
ファブリ・ペロー干渉計50から出力された透過光強度は、光検出器60に送られる。光検出器60は、透過光強度を電気信号に変換するものである。これにより、超音波振動は、最終的に電気的な信号として捉えられる。光検出器60からの信号は、コンピュータ70に送られ、波形データとして記録される。
【0039】
コンピュータ70は、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各横波超音波について、第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、当該横波超音波が測定対象物2の内部を伝播し、その底面で反射して再び表面に戻ってくるまでの伝播時間を求める。超音波発生用レーザ10からレーザビームが発せられたタイミングと、ラインフォーカスビームL1が測定対象物2に照射するタイミングとは予め分かっている。このため、コンピュータ70は、光検出器60から送られた波形データに基づいて、周波数変化を検出したタイミングを調べることにより、横波超音波の伝播時間を求めることができる。
【0040】
また、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の伝播時間に基づいてその圧延方向偏波横波の音速VS1を算出すると共に、幅方向偏波横波の伝播時間に基づいてその幅方向偏波横波の音速VS2を算出する。そして、その算出した圧延方向偏波横波の音速VS1及び幅方向偏波横波の音速VS2を用いて、音速パラメータα=(VS1−VS2)/{(VS1+VS2)/2}を求める。すなわち、コンピュータ70は、本発明の音速パラメータ算出手段としての役割を果たす。
【0041】
コンピュータ70は、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各横波超音波について、第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出する。そして、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS1と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS2とを用いて、減衰率パラメータβ=(AS1−AS2)/{(AS1+AS2)/2}を求める。すなわち、コンピュータ70は、本発明の減衰率パラメータ算出手段としての役割を果たす。
【0042】
コンピュータ70の記憶部には、(1)式に示すような、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータと、(2)式に示すような、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβとの関係を示す第二のデータとが記憶されている。コンピュータ70は、その求めた音速パラメータαと減衰率パラメータβとを用いて、記憶部に記憶された当該測定対象物2と同じ鋼種についての第一のデータ及び第二のデータに基づいて当該測定対象物2の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yとを求める。
【0043】
具体的には、次のようにして再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを求める。音速パラメータαと減衰率パラメータβはそれぞれ、
α=(a3x3+a2x2+a1x)+(b1y+b0)・・・ (1)式
β=(c3x3+c2x2+c1x)+(d1y+d0)・・・ (2)式
で与えられる。まず、(2)式を、yについて解いて、
y=β−(c3x3+c2x2+c1)−d0≡f(x,β)・・・ (3)式
と表し、これを(1)式に代入する。これにより、
(a3x3+a2x2+a1x)+b1×f(x,β)+b0−α=0・・・ (4)式
が得られる。これをxについて解くことにより、再結晶率xを求めることができる。このとき、例えばニュートン法などの関数のゼロ値を求める一般的な手法を使用すればよい。こうして求めた再結晶率xを、(3)式のy=f(x,β)に代入することにより、結晶率アスペクト比yを求めることができる。
【0044】
ユーザは予め、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータ、すなわち(1)式の方程式に現れる各定数a3,a2,a1,b1,b0と、各鋼種について再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係を示す第二のデータ、すなわち(2)式の方程式に現れる各定数c3,c2,c1,d1,d0とを求めておく必要がある。これらのデータを得るには、まず、各鋼種について、複数の第一サンプル(厚板)と複数の第二サンプル(厚板)とを用意する。ここで、第一サンプル及び第二サンプルとしては、厚さが約5mmであるものを用いる。そして、第一サンプルとしては、再結晶率xが略同じ、例えば0%であるような厚板を用い、第二サンプルとしては、結晶粒アスペクト比yが略同じ、例えば2〜3であるような厚板を用いる。
【0045】
ユーザは、複数の第一サンプルについては、結晶粒アスペクト比y、音速パラメータα、減衰パラメータβを個別に求める。具体的には、結晶粒アスペクト比yは、当該第一サンプルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの断面を顕微鏡で観察して、結晶粒のサイズを実測することにより、求められる。一方、音速パラメータαと減衰率パラメータβは、例えば本実施形態の装置を用いることにより求められる。こうして求めた、複数の第一サンプルについての結晶粒アスペクト比yと音速パラメータαをグラフで表すと、図3(a)に示すようなグラフが得られる。また、複数の第一サンプルについての結晶粒アスペクト比yと減衰率パラメータβをグラフで表すと、図3(b)に示すようなグラフが得られる。
【0046】
また、ユーザは、複数の第二サンプルについては、再結晶率x、音速パラメータα、減衰パラメータβを個別に求める。具体的には、再結晶率xは、当該第二サンプルをその長手方向に垂直な平面で切断したときの断面を顕微鏡で観察して、ある領域において再結晶粒の占める割合を実測することにより、求められる。一方、音速パラメータαと減衰率パラメータβは、例えば本実施形態の装置を用いることにより求められる。こうして求めた、複数の第二サンプルについての再結晶率xと音速パラメータαをグラフで表すと、図4(a)に示すようなグラフが得られる。また、複数の第二サンプルについての再結晶率xと減衰率パラメータβをグラフで表すと、図4(b)に示すようなグラフが得られる。
【0047】
次に、これら四つのグラフについて、プロットした各点を繋ぐ近似曲線を求める。図3(a)に示すような結晶粒アスペクト比yと音速パラメータαとの関係を示すグラフの近似曲線(一次関数)、図4(a)に示すような再結晶率xと音速パラメータαとの関係を示すグラフの近似曲線(三次関数)、及びあるサンプルについての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y、音速パラメータαの一組の値を用いて、上記の(1)式における各定数a3,a2,a1,b1,b0を決定することができる。また、図3(b)に示すような結晶粒アスペクト比yと減衰率パラメータβとの関係を示すグラフの近似曲線(一次関数)、図4(b)に示すような再結晶率xと減衰率パラメータβとの関係を示すグラフの近似曲線(三次関数)、及びあるサンプルについての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y、減衰率パラメータβの一組の値を用いて、上記の(2)式における各定数c3,c2,c1,d1,d0を決定することができる。
【0048】
尚、一般に、再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係と、再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係はそれぞれ、鋼種毎に異なるので、かかる関係を鋼種毎に求めることにしている。
【0049】
ところで、サンプルの音速パラメータαや減衰率パラメータβを求める場合には、図1に示す装置の代わりに、図6に示すような装置を用いることが望ましい。図6は本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置の変形例を説明するための図である。図6に示す再結晶率・アスペクト比測定装置は、超音波発生用レーザ10と、超音波検出用レーザ20と、超音波発生部31aと、ビーム取得部41aと、干渉計50と、光検出器60と、コンピュータ70と、回転ステージ100とを備える。尚、図6の再結晶率・アスペクト比測定装置において、図1の装置と同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0050】
図6の再結晶率・アスペクト比測定装置が図1に示す装置と異なる点は、主に二つある。第一は、回転ステージ100に測定対象物2を載置し、回転ステージ100を回転させることによりラインフォーカスビームL1のラインの向きを変える点である。すなわち、超音波発生部31aはシリンドリカルレンズ35の回転機構を有していない。第二は、超音波発生部31aとビーム取得部41aとを別個に構成し、ビーム取得部41aを測定対象物2を介して超音波発生部31aと反対側に配置した点である。すなわち、ビーム取得部41aは、圧延方向偏波横波及び幅方向偏波横波の各超音波について、当該横波超音波が到達する測定対象物2の底面の位置に、第二レーザビームL2を導くと共に、測定対象物2の底面で反射した第二レーザビームL2を取得する。その他の構成は、図1の再結晶率・アスペクト比測定装置と略同様である。
【0051】
図6の再結晶率・アスペクト比測定装置は、その構成が簡易であり、特に、サイズのそれ程大きくない測定対象物2に対する測定を行う場合に適している。したがって、上述したサンプルについてその音速パラメータαや減衰率パラメータβを求める場合に好適である。但し、この装置は、測定対象物2を回転ステージ100に載置するので、熱間オンラインでの測定を行う場合に用いることはできない。
【0052】
次に、本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置において、測定対象物2の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを測定する手順について説明する。図7はその再結晶率・アスペクト比測定装置において測定対象物2の再結晶率xと結晶粒アスペクト比yを測定する手順を説明するためのフローチャートである。
【0053】
まず、コンピュータ70は、シリンドリカルレンズ35の長手方向が幅方向となるように、シリンドリカルレンズ35の回転機構を制御する(S1)。その後、超音波発生用レーザ10からレーザビームを発すると共に、超音波検出用レーザ20から第二レーザビームL2を発する。超音波発生用レーザ10からのレーザビームは、シリンドリカルレンズ35でライン状に集光され、ラインフォーカスビームL1として測定対象物2の表面に照射される。このとき、ラインフォーカスビームL1のラインの向きは測定対象物2の幅方向に平行であるので、測定対象物2の内部には圧延方向偏波横波が発生する。測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2がファブリ・ペロー干渉計50に入射することにより、ファブリ・ペロー干渉計50は、圧延方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を検出する。そして、コンピュータ70は、その第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データを取得し、所定のメモリに記憶する(S2)。
【0054】
次に、コンピュータ70は、シリンドリカルレンズ35の長手方向が圧延方向となるように、シリンドリカルレンズ35の回転機構を制御する(S3)。その後、超音波発生用レーザ10からレーザビームを発すると共に、超音波検出用レーザ20から第二レーザビームL2を発する。このとき、シリンドリカルレンズ35で集光されたラインフォーカスビームL1のラインの向きは測定対象物2の圧延方向に平行であるので、測定対象物2の内部には幅方向偏波横波が発生する。測定対象物2の表面で散乱された第二レーザビームL2がファブリ・ペロー干渉計50に入射することにより、ファブリ・ペロー干渉計50は、幅方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を検出する。そして、コンピュータ70は、その第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データを取得し、所定のメモリに記憶する(S4)。
【0055】
次に、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、圧延方向変位横波の伝播時間を求めると共に、幅方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、幅方向変位横波の伝播時間を求める(S5)。その後、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の伝播時間に基づいて圧延方向偏波横波の音速VS1を算出すると共に、幅方向偏波横波の伝播時間に基づいて幅方向偏波横波の音速VS2を算出する(S6)。そして、圧延方向偏波横波の音速VS1と幅方向偏波横波の音速VS2とを用いて、音速パラメータαを求める(S7)。
【0056】
また、コンピュータ70は、圧延方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS1を算出すると共に、幅方向偏波横波の超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームL2の周波数変化を表す波形データに基づいて、幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS2を算出する(S8)。そして、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS1と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値AS2とを用いて、減衰率パラメータβを求める(S9)。
【0057】
次に、コンピュータ70は、記憶部に記憶された測定対象物2と同じ鋼種についての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び音速パラメータαの関係を示す第一のデータ、当該鋼種についての再結晶率x、結晶粒アスペクト比y及び減衰率パラメータβの関係を示す第二のデータを利用し、当該測定対象物2の音速パラメータα及び減衰率パラメータβから当該測定対象物2の再結晶率x及び結晶粒アスペクト比yを求める(S10)。こうして得られた測定対象物2の再結晶率x及び結晶粒アスペクト比yは、例えば、コンピュータ70の画面に表示される。
【0058】
本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置では、レーザ超音波法を用いることにより、測定対象物の内部にその表面に対して斜めに進行する横波超音波を発生させ、圧延方向偏波横波、幅方向偏波横波の各々について、当該横波超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームの周波数変化を表す波形データを取得し、その波形データに基づいて当該横波超音波の音速、波形振幅の二乗積分値を算出する。そして、圧延方向偏波横波の音速と幅方向偏波横波の音速とを用いて測定対象物についての音速パラメータを求めると共に、圧延方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値と幅方向偏波横波の波形振幅の二乗積分値とを用いて測定対象物についての減衰率パラメータを求める。その求めた音速パラメータと減衰率パラメータとを用い、コンピュータの記憶部に記憶された測定対象物と同じ鋼種についての第一のデータ及び第二のデータに基づいて測定対象物についての再結晶率と結晶粒アスペクト比を得る。したがって、本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置を用いると、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めることができる。このため、かかる再結晶率と結晶率アスペクト比についての情報を、例えば次工程の圧延条件へフィードフォワードすることにより、組織微細の鋼材を効率的・安定的に製造できるようになり、また、高精度な鋼材の製造技術による材質ばらつきの低減にも貢献することができる。
【0059】
尚、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、上記の実施形態では、ラインフォーカスビームを測定対象物の表面に照射することにより、測定対象物の内部に横波を発生させ、その発生させた横波を検出する場合について説明したが、横波と同時に縦波が発生するので、その縦波が測定対象物の底面で横波にモード変換する成分であるモード変換横波を検出するようにしてもよい。但し、この場合は、測定対象物の底面でモード変換しなかった反射縦波をも検出する必要がある。
【0061】
また、上記の実施形態では、測定対象物として、熱間プロセスで製造される厚板を用いた場合について説明したが、本発明の再結晶率・アスペクト比測定装置は、かかる厚板以外のどのような金属に対しても適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の再結晶率・アスペクト比測定装置では、レーザ超音波法を用いることにより、測定対象物の内部にその表面に対して斜めに進行する横波超音波を発生させ、圧延方向に偏波した第一の横波超音波、幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波の振動に起因して生じる第二レーザビームの周波数変化を表す波形データを取得し、その波形データに基づいて当該横波超音波の音速、波形振幅の二乗積分値を算出する。そして、第一の横波超音波の音速と第二の横波超音波の音速とを用いて測定対象物についての音速パラメータを求めると共に、第一の横波超音波の波形振幅二乗積分値と第二の横波超音波の波形振幅二乗積分値とを用いて測定対象物についての減衰率パラメータを求める。その求めた音速パラメータと減衰率パラメータとを用い、記憶手段に記憶された第一のデータ及び第二のデータに基づいて測定対象物についての再結晶率と結晶率アスペクト比を得る。したがって、本発明の再結晶率・アスペクト比測定装置を用いると、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めることができる。
【0063】
また、本発明の再結晶率・アスペクト比測定方法によれば、上記と同様に、熱間オンラインで測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である再結晶率・アスペクト比測定装置の概略構成図である。
【図2】その再結晶率・アスペクト比測定装置におけるヘッド部の概略構成図である。
【図3】(a)はある鋼種についての結晶粒アスペクト比と音速パラメータとの関係を示すグラフ、(b)はその鋼種についての結晶粒アスペクト比と減衰率パラメータとの関係を示すグラフである。
【図4】(a)はその鋼種についての再結晶率と音速パラメータとの関係を示すグラフ、(b)はその鋼種についての再結晶率と減衰率パラメータとの関係を示すグラフである。
【図5】本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置におけるファブリ・ペロー干渉計の共振曲線の一例を示す図である。
【図6】本実施形態の再結晶率・アスペクト比測定装置の変形例を説明するための図である。
【図7】再結晶率・アスペクト比測定装置において測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比を測定する手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
2…測定対象物
10…超音波発生用レーザ
20…超音波検出用レーザ
30…ヘッド部
31,31a…超音波発生部
35…シリンドリカルレンズ
41,41a…ビーム取得部
45a,45b…集光レンズ
46…ハーフミラー
50…干渉計
60…光検出器
70…コンピュータ
91a,91b,91c…光ファイバ
92…集光レンズ
100…回転ステージ
Claims (6)
- 板状の測定対象物についての再結晶率及び結晶粒アスペクト比を測定する再結晶率・アスペクト比測定装置であって、
各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び横波音速の異方性を表す音速パラメータの関係を示す第一のデータと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び横波音速の減衰率の異方性を表す減衰率パラメータの関係を示す第二のデータとを記憶する記憶手段と、
第一レーザビームを前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に横波超音波を発生させる超音波発生手段と、
前記測定対象物の内部に発生した、前記測定対象物の長手方向に偏波した第一の横波超音波、前記測定対象物の幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波が到達する前記測定対象物の所定位置に第二レーザビームを導くと共に、前記測定対象物で反射した前記第二レーザビームを取得するビーム取得手段と、
前記ビーム取得手段で取得された前記第二レーザビームに基づいて、当該横波超音波の振動に起因して生じる前記第二レーザビームの周波数の変化を検出する周波数変化検出手段と、
前記第一の横波超音波及び前記第二の横波超音波の各々について、前記周波数変化検出手段で検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波が前記測定対象物の内部を伝播した伝播時間を求め、その求めた伝播時間に基づいて当該横波超音波の音速を算出し、且つ、前記第一の横波超音波の音速と前記第二の横波超音波の音速とを用いて前記測定対象物についての音速パラメータを求める音速パラメータ算出手段と、
前記第一の横波超音波及び前記第二の横波超音波の各々について、前記周波数変化検出手段で検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出し、且つ、前記第一の横波超音波の波形振幅の二乗積分値と前記第二の横波超音波の波形振幅の二乗積分値とを用いて前記測定対象物についての減衰率パラメータを求める減衰率パラメータ算出手段と、
前記音速パラメータ算出手段で求めた音速パラメータと前記減衰率パラメータ算出手段で求めた減衰率パラメータとを用い、前記記憶手段に記憶された前記測定対象物と同じ鋼種についての前記第一のデータ及び前記第二のデータに基づいて前記測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比とを求める演算手段と、
を具備することを特徴とする再結晶率・アスペクト比測定装置。 - 前記第一レーザビームはライン状のものであり、且つ、前記超音波発生手段は、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の幅方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第一の横波超音波を発生させると共に、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の長手方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第二の横波超音波を発生させることを特徴とする請求項1記載の再結晶率・アスペクト比測定装置。
- 前記ビーム取得手段は、前記第一レーザビームのラインの中心点を通りそのラインに直交する平面と前記測定対象物の表面又は底面とが交わる直線上に、前記第二レーザビームを導くことを特徴とする請求項1又は2記載の再結晶率・アスペクト比測定装置。
- 板状の測定対象物についての再結晶率及び結晶粒アスペクト比を測定する再結晶率・アスペクト比測定方法であって、
第一レーザビームを前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に横波超音波を発生させる第一ステップと、
前記測定対象物の内部に発生した、前記測定対象物の長手方向に偏波した第一の横波超音波、前記測定対象物の幅方向に偏波した第二の横波超音波の各々について、当該横波超音波が到達する前記測定対象物の所定位置に第二レーザビームを導くと共に、前記測定対象物で反射した前記第二レーザビームを取得する第二ステップと、
前記第二ステップで取得された前記第二レーザビームに基づいて、当該横波超音波の振動に起因して生じる前記第二レーザビームの周波数の変化を検出する第三ステップと、
前記第三ステップで検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波が前記測定対象物の内部を伝播した伝播時間を求める第四ステップと、
前記第四ステップで求めた伝播時間に基づいて当該横波超音波の音速を算出する第五ステップと、
前記第五ステップで得られた前記第一の横波超音波の音速と前記第二の横波超音波の音速とを用いて前記測定対象物についての横波音速の異方性を表す音速パラメータを求める第六ステップと、
前記第三ステップで検出された前記第二レーザビームの周波数変化を表す波形データに基づいて当該横波超音波の波形振幅の二乗積分値を算出する第七ステップと、
前記第七ステップで得られた前記第一の横波超音波の波形振幅の二乗積分値と前記第二の横波超音波の波形振幅の二乗積分値とを用いて前記測定対象物についての横波音速の減衰率の異方性を表す減衰率パラメータを求める第八ステップと、
各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び音速パラメータの関係を示す第一のデータと、各鋼種について再結晶率、結晶粒アスペクト比及び減衰率パラメータの関係を示す第二のデータとが予め求められており、前記測定対象物と同じ鋼種についての前記第一のデータ及び前記第二のデータに基づいて、前記第六ステップで求めた音速パラメータと前記第八ステップで求めた減衰率パラメータとを用いて前記測定対象物の再結晶率と結晶粒アスペクト比とを求める第九ステップと、
を具備することを特徴とする再結晶率・アスペクト比測定方法。 - 前記第一レーザビームはライン状のものであり、且つ、前記第一ステップでは、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の幅方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第一の横波超音波を発生させると共に、前記第一レーザビームを、そのラインの向きが前記測定対象物の長手方向となるようにして前記測定対象物の表面に照射することにより、前記測定対象物の内部に前記第二の横波超音波を発生させることを特徴とする請求項4記載の再結晶率・アスペクト比測定方法。
- 前記第二ステップでは、前記第一レーザビームのラインの中心点を通りそのラインに直交する平面と前記測定対象物の表面又は底面とが交わる直線上に、前記第二レーザビームを導くことを特徴とする請求項4又は5記載の再結晶率・アスペクト比測定方法。
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