JP2004330383A - ねじ締め装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ねじのねじ込み位置に応じてドライバビットからねじに与えられる押圧力を適正にするねじ締め装置の提供。
【解決手段】本発明は、ACサーボモータ51の駆動を受けて回転可能かつねじに係合可能なドライバビット53を有するねじ締めツール5と、このねじ締めツール5を軸方向に往復移動操作可能なエアシリンダ機構3とを有する。
前記エアシリンダ機構3は、作動流体であるエアの圧力を調節可能な電空レギュレータ34を有し、この電空レギュレータ34を制御し、ねじのねじ込み位置に応じてエアシリンダ機構3へ供給されるエアの圧力を調節することにより、ドライバビット53からねじに与えられる押圧力を適正に変更できるようになっている。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、ACサーボモータ51の駆動を受けて回転可能かつねじに係合可能なドライバビット53を有するねじ締めツール5と、このねじ締めツール5を軸方向に往復移動操作可能なエアシリンダ機構3とを有する。
前記エアシリンダ機構3は、作動流体であるエアの圧力を調節可能な電空レギュレータ34を有し、この電空レギュレータ34を制御し、ねじのねじ込み位置に応じてエアシリンダ機構3へ供給されるエアの圧力を調節することにより、ドライバビット53からねじに与えられる押圧力を適正に変更できるようになっている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークにねじを締め付ける時にねじ締めツールからねじに与えられる押圧力を適宜変更可能なねじ締め装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特許文献に示すようなねじ締め装置が知られている。このねじ締め装置は、エアシリンダの駆動を受けて往復移動するブラケットに電動ドライバを設置し、この電動ドライバの出力軸にはビット駆動軸を介してねじ締めビットが連結されている。また、ブラケットには、前記ビット駆動軸を内包する真空パイプが往復移動可能に配置され、この真空パイプには、前記ねじ締めビットを内包する吸着パイプが連設される。
【0003】
前記従来のねじ締め装置においては、エアシリンダの作動によりブラケットを前進させ、ねじ締めビット、吸着パイプ等をワークに向けて移動させる。その過程で、真空パイプを通じて吸着パイプからエアが吸引され、吸着パイプ内にはねじが吸引保持される。そして、吸着パイプがワークに接すると、吸着パイプに対してねじ締めビットが前進し、ねじをワーク上に押し出す。同時に電動ドライバが駆動してねじ締めビットが回転駆動され、ドライバビットからねじに回転伝達がなされてねじがワークのめねじに締め付けられる。
【0004】
【特許文献】特開平6−39653号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のねじ締め装置においては、ワークのめねじにねじをねじ込んで締め付ける時、エアシリンダの力でドライバビットがねじに押圧される。この場合、エアシリンダには一定のエア圧が加えられるため、ドライバビットからねじに与えられる押圧力は、ねじ込み開始から締付け完了までの間、ほぼ一定である。一般には、ねじの頭部座面がワークに着座して以降、締付トルクが増大すると、ドライバビットが回転にともなってねじから外れてしまう、所謂カムアウトが発生するため、締付トルクが大きくなる過程ではカムアウトを防ぐために押圧力を高める必要がある。従って、エアシリンダに加えるエア圧は、通常、ねじが着座して後の締付トルク増大に対処して高く設定される。しかし、そうすると低い押圧力でねじ込みが行える着座までのねじ込み過程でねじに加わる押圧力も高くなるため、ねじのねじ部とめねじとの間に不必要な摩擦が生じてねじおよびめねじの摩耗を生じる等の不具合が発生する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、回転駆動源の駆動を受けて回転可能かつねじに係合可能なドライバビットを有するねじ締めツールと、前記ねじ締めツールを軸方向に往復移動操作可能な流体圧作動機構とを有するねじ締め装置において、前記流体圧作動機構は作動流体の圧力を調節可能な流体圧調節手段を有し、また、前記ねじのねじ込み位置に応じて前記流体圧調節手段から生まれる作動流体の圧力が所定の圧力となるよう当該流体圧調節手段を制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
なお、前記ねじ締めツールは、ドライバビットからねじに与えられる押圧力に応じた信号を出力可能な押圧力検出手段を有し、また、前記制御手段は、前記押圧力検出手段の出力信号を受けて流体圧調節手段の作動指令信号を補正するよう構成されていることが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、1はねじ締め装置であり、コラム2に配した流体圧作動機構の一例であるエアシリンダ機構3と、このエアシリンダ機構3のピストンロッド31に連結された移動テーブル4と、この移動テーブル4に配置されたねじ締めツール5と、エアシリンダ機構3およびねじ締めツール5の制御を行うための制御手段6とを備えている。
【0009】
前記エアシリンダ機構3は、圧縮空気(以下、単にエアという)を作動流体として作動するものであり、前記ピストンロッド31と、このピストンロッド31のピストン部31aが収容され、当該ピストン部31aによって2気室に分割されるシリンダ32と、このシリンダ32の各気室へのエアの給・排気を制御する周知の電磁弁33と、この電磁弁33に接続された流体圧調節手段の一例である電空レギュレータ34と、前記ピストンロッド31のピストン部31aを検知可能なスイッチ35a〜35eとを備える。
【0010】
前記電空レギュレータ34は、制御手段6からの指令(電気信号)に応じて電磁弁33に供給するエアの圧力(以下、エア圧という場合がある)を調節するものである。また、前記各スイッチ35a〜35eは、図2に示すように、原点位置、ねじ80がワークに接触する手前の所定位置(以下、ワーク手前ねじ位置という)、ねじ80がワークのめねじに接触する位置(以下、ねじ込み開始位置という)、ねじ80が着座する直前の位置(以下、着座前位置という)、およびねじ80が最終的に締付けられる位置(以下、締付完了位置という)をそれぞれ検出するためのものである。
【0011】
前記ねじ締めツール5は、回転駆動源の一例であるACサーボモータ51(以下、モータ51という)の駆動を受けて回転する駆動軸51aを有し、駆動軸51aには、伝達軸52を介してドライバビット53が連結されている。この駆動軸51a、伝達軸52、ドライバビット53は、間に緩衝機構等を設けず直結されている。なお、ドライバビット53はエア吸引を行う吸引スリーブ54に内包してあり、この吸引スリーブ54にねじ80を吸引し、ねじ80をドライバビット53先端に保持できるように構成される。
【0012】
また、前記モータ51には移動テーブル4に据えられる台座55が設けられ、この台座55には、押圧力検出手段7が配置してある。この押圧力検出手段7は、図3に示すように、ブリッジ回路を構成するよう台座55に貼付された歪みゲージ71でなる検出抵抗と、このブリッジ回路に基準電圧を供給する電源72と、ブリッジ回路の出力端に接続された信号増幅用の差動アンプ73と、この差動アンプ73の出力端に接続されて差動アンプ73の出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換部74とを備えている。このA/D変換部74は、制御手段6の後記制御部61に接続されている。
【0013】
前記歪みゲージ71で構成されるブリッジ回路の出力電圧は、ねじ締めツール5の軸方向(矢印Y方向)に台座55が歪むのに応じて変動する。つまり、エアシリンダ機構3の作動を受けてねじ締めツール5が軸方向に移動し、これによってドライバビット53がねじ80に押圧された時、その軸方向の反力を受けて台座55が歪むのを検出できるのである。このブリッジ回路の出力電圧信号は、差動アンプ73で増幅され、A/D変換部74でディジタル変換されて制御部61に送られ、ここで解析される。これにより、ドライバビット53からねじ80に与えられる押圧力を検出できるよう構成されている。
【0014】
前記制御手段6は、制御部61と、この制御部61からの指令を受けて前記電空レギュレータ34の作動を制御するシリンダ駆動部62と、制御部61からの指令を受けて前記モータ51の駆動を制御するモータ駆動部63と、前記スイッチ35a〜35eの信号を処理するスイッチ信号処理部64と、各種制御データ等を記憶保持するための記憶部65と、情報表示用の表示部66と、各種設定値を入力可能な入力部67とを備える。
【0015】
前記記憶部65には、ねじ80が着座した後、最終的に締付けられるまでに発生する所定の前段トルクおよび、ねじ80が最終的に締付けられた状態で発生する最終締付トルクにそれぞれ対応するモータ51の負荷電流値(以下、それぞれ前段電流値、最終締付電流値という)も予め登録されている。また、記憶部65には、前記ねじ締め過程における各位置において電空レギュレータ34に与える指令値が予め登録されている。
【0016】
制御部61は、図4および図5に示すように、
S1:スタート信号の入力を待つ。
S2:シリンダ駆動部62に高圧作動指令信号を送るとともに、モータ駆動部63に高速駆動指令信号を送る。
S3:ねじがワーク手前ねじ位置に達し、スイッチ35bがONするのを待つ。
S4:シリンダ駆動部62に低圧作動指令信号を送る。
S5:ねじがねじ込み開始位置に達してスイッチ35cがONするのを待つ。
S6:シリンダ駆動部62に中圧作動指令信号を送る。
S7:押圧力検出手段7の信号から押圧力の実測値を割り出す。
S8:押圧力の実測値と中圧作動指令信号による押圧力の指令値との差分から、
それまでの中圧作動指令信号を補正し、これをシリンダ駆動部62に送る。
S9:スイッチ35dの状態を見てねじが着座前位置に達したか確認する。スイッチ35dがONしていない場合は、S7に戻る。
S10:シリンダ駆動部62に高圧作動指令信号を送る。
S11:押圧力検出手段7の信号から押圧力の実測値を割り出す。
S12:押圧力の実測値と高圧作動指令信号による押圧力の指令値との差分から、それまでの高圧作動指令信号を補正し、これをシリンダ駆動部62に送る。
S13:フラグの状態を確認し、フラグが立っている場合はS18にジャンプする。
S14:モータ駆動部63からモータ51の負荷電流値を取得する。
S15:負荷電流値が前段電流値に達しているか否かを確認し、達していない場合はS11に戻る。
S16:フラグを立てる。
S17:モータ駆動部63に低速駆動指令信号を送る。
S18:モータ駆動部63からモータ51の負荷電流値を取得する。
S19:取得した負荷電流値が最終締付電流値に達しているか否かを確認し、達していない場合はS11に戻る。
S20:スイッチ35eの状態を見てねじが締付完了位置に達したか確認する。スイッチ35eがONしていなければS26にジャンプする。
S21:シリンダ駆動部62およびモータ駆動部63に停止指令信号、表示部66に締付完了表示指令信号を送る。
S22:シリンダ駆動部62に復動指令信号を送る。
S23:スイッチ35aがONするのを待つ。
S24:シリンダ駆動部62に停止指令信号を送る。
S25:フラグを倒してエンド。
S26:シリンダ駆動部62およびモータ駆動部63に停止指令信号、表示部66にエラー表示指令信号を送り、S22にジャンプする。
の処理手順でねじ締め制御を行う。なお、図4および図5では省略しているが、制御部61は、ねじ締め制御の開始時点から内蔵タイマ(図示せず)による計時を行い、ねじ締め作業時間をチェックする。そして、所定ねじ締め作業時間内にねじ締め制御が完了しない場合には、作業を中断し、表示部66にエラー表示を行う。また、図4および図5では、文字数の都合上、シリンダ駆動部62をSD、モータ駆動部63をMDと表現している。
【0017】
次に本ねじ締め装置1の作用について図面に従って説明する。
スタート信号が入力されると、まず、シリンダ駆動部62からの指令信号を受けて電空レギュレータ34がエア圧を所定の高圧値に調節するとともに、シリンダ駆動部62からの指令信号により電磁弁33が作動する。これにより、シリンダ32にはピストンロッド31が伸びる方向に高圧のエアが供給されるため、移動テーブル4ないしねじ締めツール5が高速で下降する。
【0018】
ねじ締めツール5が下降する過程で、吸引スリーブ54内にはねじ80が吸引保持される。そして、吸引スリーブ54がワークに接すると、吸引スリーブ54に対してドライバビット53が下降し、ねじ80をワーク側に押し出す。これにより、ねじ80がワーク手前ねじ位置(スイッチ35bがONする位置)に達すると、電空レギュレータ34はエア圧を所定の低圧に調節する。この結果、ドライバビット53の下降速度が減じられ、ねじ80がワークに接する時の衝撃を緩和することができる。
【0019】
ねじ80がねじ込み開始位置(スイッチ35cがONする位置)に達すると、ねじ80はドライバビット53と係合して回転伝達を受け、ワークのめねじにねじ込まれる。また、ねじ80がねじ込み開始位置に達すると、電空レギュレータ34はエア圧を所定の中圧値に調節する。これにより、シリンダ32に供給されるエアは中圧に切り替えられるため、ドライバビット53は、ねじ80からカムアウトせず、かつねじ80を必要以上に押圧しない程度の押圧力でねじ80に押圧されることになる。
【0020】
前述のようにエアシリンダ機構3が中圧のエアで作動する間、ドライバビット53からねじ80に与えられている押圧力が押圧力検出手段7の信号から割り出され、これが指令値と比較され、その差分に応じてシリンダ駆動部62へ与える中圧作動指令信号の補正が繰り返される。これにより押圧力が適正に維持されるため、ねじ80のねじ部とめねじとに余計な摩擦抵抗を生じさせることなく、しかもカムアウトを確実に防止しつつ、ねじ80を高速でねじ込むことが可能である。
【0021】
ねじ込みにともなってねじ80が着座前位置(スイッチ35dがONする位置)に達すると、電空レギュレータ34はエア圧を所定の高圧値に調節する。これにより、シリンダ32に供給されるエアの圧力が高圧に切り替えられるため、ドライバビット53からねじ80に与えられる押圧力が高められる。よって、続くねじ80の着座にともなって急激に増加する締付トルクの反力で、カムアウトが生じるのを防止できる。
【0022】
ねじ80が着座した後、モータ51の負荷電流値が前段電流値に達したことが検出されると、モータ51は低速駆動に切り替えられる。これにより、ドライバビット53は低速回転に切り替わり、ねじ80を最終締付トルクが発生するまで(モータ51の負荷電流値が最終締付電流値に到達するまで)慎重に締め付けることができる。
【0023】
着座前位置からモータ51の負荷電流値が最終締付電流値に到達するまでの間、前述同様にシリンダ駆動部62への指令値が補正され、押圧力が適正に維持される。よって、エアシリンダ機構3が高圧のエアで作動する間のカムアウトの発生を防止し、確実にねじ80を締め付けることができる。
【0024】
モータ51の負荷電流値が最終締付電流値に達すると、ねじ80が最終締付位置に到達しているか否かがスイッチ35eの状態から確認される。これにより、ねじ80の締付トルクと締付高さの両方が確認されることとなり、両方共OKである場合には締付完了となる。この時、スイッチ35eがONしていなければ、締付高さ不良でエラーとなる。このようにしてねじ80の締め付けが完了すると、シリンダ駆動部52からの指令信号により電磁弁33が切り替えられ、ピストンロッド31がシリンダ32内に後退する。これにより、ねじ締めツール5は原点位置に戻され、次の作業に備える。
【0025】
なお、以上の説明では流体圧作動機構の一例としてエアシリンダ機構3を用いたが、流体圧作動機構として油圧の加除によってピストンロッドが作動する周知の油圧シリンダ機構を用いても得られる効果は同じである。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係るねじ締め装置は、エアシリンダ機構等の流体圧作動機構における作動流体の圧力を調節可能な流体圧調節手段を有し、この流体圧調節手段を制御し、ねじのねじ込み位置に応じて作動流体の圧力を所定の圧力に調節するように構成されている。このため、ねじのねじ込み位置に応じてドライバビットがねじを押圧する力を適正に変更することができ、ねじの締付けを正確に、効率よく行うことができる等の利点がある。また、ドライバビットからねじに与えられている押圧力に応じて流体圧調節手段の作動指令信号を補正するため、常時押圧力を適正に維持することが可能である。従って、精度の高い押圧力管理を実現し、前述の効果をより顕著にすることができる等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るねじ締め装置の概略全体説明図である。
【図2】本発明に係るねじ締め装置によるねじ締めの過程とACサーボモータの駆動制御および押圧力の変化の関係を示す説明図である。
【図3】本発明に係るねじ締め装置の要部を示すブロック説明図である。
【図4】本発明に係るねじ締め装置によるねじ締め制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るねじ締め装置によるねじ締め制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ねじ締め装置
2 コラム
3 エアシリンダ機構
31 ピストンロッド
32 シリンダ
33 電磁弁
34 電空レギュレータ
35a〜35e スイッチ
5 ねじ締めツール
51 ACサーボモータ
52 伝達軸
53 ドライバビット
54 吸引スリーブ
55 台座
6 制御手段
61 制御部
62 シリンダ駆動部
63 モータ駆動部
64 スイッチ信号処理部
65 記憶部
66 表示部
67 入力部
7 押圧力検出手段
71 歪みゲージ
72 電源
73 差動アンプ
74 A/D変換部
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークにねじを締め付ける時にねじ締めツールからねじに与えられる押圧力を適宜変更可能なねじ締め装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特許文献に示すようなねじ締め装置が知られている。このねじ締め装置は、エアシリンダの駆動を受けて往復移動するブラケットに電動ドライバを設置し、この電動ドライバの出力軸にはビット駆動軸を介してねじ締めビットが連結されている。また、ブラケットには、前記ビット駆動軸を内包する真空パイプが往復移動可能に配置され、この真空パイプには、前記ねじ締めビットを内包する吸着パイプが連設される。
【0003】
前記従来のねじ締め装置においては、エアシリンダの作動によりブラケットを前進させ、ねじ締めビット、吸着パイプ等をワークに向けて移動させる。その過程で、真空パイプを通じて吸着パイプからエアが吸引され、吸着パイプ内にはねじが吸引保持される。そして、吸着パイプがワークに接すると、吸着パイプに対してねじ締めビットが前進し、ねじをワーク上に押し出す。同時に電動ドライバが駆動してねじ締めビットが回転駆動され、ドライバビットからねじに回転伝達がなされてねじがワークのめねじに締め付けられる。
【0004】
【特許文献】特開平6−39653号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のねじ締め装置においては、ワークのめねじにねじをねじ込んで締め付ける時、エアシリンダの力でドライバビットがねじに押圧される。この場合、エアシリンダには一定のエア圧が加えられるため、ドライバビットからねじに与えられる押圧力は、ねじ込み開始から締付け完了までの間、ほぼ一定である。一般には、ねじの頭部座面がワークに着座して以降、締付トルクが増大すると、ドライバビットが回転にともなってねじから外れてしまう、所謂カムアウトが発生するため、締付トルクが大きくなる過程ではカムアウトを防ぐために押圧力を高める必要がある。従って、エアシリンダに加えるエア圧は、通常、ねじが着座して後の締付トルク増大に対処して高く設定される。しかし、そうすると低い押圧力でねじ込みが行える着座までのねじ込み過程でねじに加わる押圧力も高くなるため、ねじのねじ部とめねじとの間に不必要な摩擦が生じてねじおよびめねじの摩耗を生じる等の不具合が発生する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、回転駆動源の駆動を受けて回転可能かつねじに係合可能なドライバビットを有するねじ締めツールと、前記ねじ締めツールを軸方向に往復移動操作可能な流体圧作動機構とを有するねじ締め装置において、前記流体圧作動機構は作動流体の圧力を調節可能な流体圧調節手段を有し、また、前記ねじのねじ込み位置に応じて前記流体圧調節手段から生まれる作動流体の圧力が所定の圧力となるよう当該流体圧調節手段を制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0007】
なお、前記ねじ締めツールは、ドライバビットからねじに与えられる押圧力に応じた信号を出力可能な押圧力検出手段を有し、また、前記制御手段は、前記押圧力検出手段の出力信号を受けて流体圧調節手段の作動指令信号を補正するよう構成されていることが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、1はねじ締め装置であり、コラム2に配した流体圧作動機構の一例であるエアシリンダ機構3と、このエアシリンダ機構3のピストンロッド31に連結された移動テーブル4と、この移動テーブル4に配置されたねじ締めツール5と、エアシリンダ機構3およびねじ締めツール5の制御を行うための制御手段6とを備えている。
【0009】
前記エアシリンダ機構3は、圧縮空気(以下、単にエアという)を作動流体として作動するものであり、前記ピストンロッド31と、このピストンロッド31のピストン部31aが収容され、当該ピストン部31aによって2気室に分割されるシリンダ32と、このシリンダ32の各気室へのエアの給・排気を制御する周知の電磁弁33と、この電磁弁33に接続された流体圧調節手段の一例である電空レギュレータ34と、前記ピストンロッド31のピストン部31aを検知可能なスイッチ35a〜35eとを備える。
【0010】
前記電空レギュレータ34は、制御手段6からの指令(電気信号)に応じて電磁弁33に供給するエアの圧力(以下、エア圧という場合がある)を調節するものである。また、前記各スイッチ35a〜35eは、図2に示すように、原点位置、ねじ80がワークに接触する手前の所定位置(以下、ワーク手前ねじ位置という)、ねじ80がワークのめねじに接触する位置(以下、ねじ込み開始位置という)、ねじ80が着座する直前の位置(以下、着座前位置という)、およびねじ80が最終的に締付けられる位置(以下、締付完了位置という)をそれぞれ検出するためのものである。
【0011】
前記ねじ締めツール5は、回転駆動源の一例であるACサーボモータ51(以下、モータ51という)の駆動を受けて回転する駆動軸51aを有し、駆動軸51aには、伝達軸52を介してドライバビット53が連結されている。この駆動軸51a、伝達軸52、ドライバビット53は、間に緩衝機構等を設けず直結されている。なお、ドライバビット53はエア吸引を行う吸引スリーブ54に内包してあり、この吸引スリーブ54にねじ80を吸引し、ねじ80をドライバビット53先端に保持できるように構成される。
【0012】
また、前記モータ51には移動テーブル4に据えられる台座55が設けられ、この台座55には、押圧力検出手段7が配置してある。この押圧力検出手段7は、図3に示すように、ブリッジ回路を構成するよう台座55に貼付された歪みゲージ71でなる検出抵抗と、このブリッジ回路に基準電圧を供給する電源72と、ブリッジ回路の出力端に接続された信号増幅用の差動アンプ73と、この差動アンプ73の出力端に接続されて差動アンプ73の出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換部74とを備えている。このA/D変換部74は、制御手段6の後記制御部61に接続されている。
【0013】
前記歪みゲージ71で構成されるブリッジ回路の出力電圧は、ねじ締めツール5の軸方向(矢印Y方向)に台座55が歪むのに応じて変動する。つまり、エアシリンダ機構3の作動を受けてねじ締めツール5が軸方向に移動し、これによってドライバビット53がねじ80に押圧された時、その軸方向の反力を受けて台座55が歪むのを検出できるのである。このブリッジ回路の出力電圧信号は、差動アンプ73で増幅され、A/D変換部74でディジタル変換されて制御部61に送られ、ここで解析される。これにより、ドライバビット53からねじ80に与えられる押圧力を検出できるよう構成されている。
【0014】
前記制御手段6は、制御部61と、この制御部61からの指令を受けて前記電空レギュレータ34の作動を制御するシリンダ駆動部62と、制御部61からの指令を受けて前記モータ51の駆動を制御するモータ駆動部63と、前記スイッチ35a〜35eの信号を処理するスイッチ信号処理部64と、各種制御データ等を記憶保持するための記憶部65と、情報表示用の表示部66と、各種設定値を入力可能な入力部67とを備える。
【0015】
前記記憶部65には、ねじ80が着座した後、最終的に締付けられるまでに発生する所定の前段トルクおよび、ねじ80が最終的に締付けられた状態で発生する最終締付トルクにそれぞれ対応するモータ51の負荷電流値(以下、それぞれ前段電流値、最終締付電流値という)も予め登録されている。また、記憶部65には、前記ねじ締め過程における各位置において電空レギュレータ34に与える指令値が予め登録されている。
【0016】
制御部61は、図4および図5に示すように、
S1:スタート信号の入力を待つ。
S2:シリンダ駆動部62に高圧作動指令信号を送るとともに、モータ駆動部63に高速駆動指令信号を送る。
S3:ねじがワーク手前ねじ位置に達し、スイッチ35bがONするのを待つ。
S4:シリンダ駆動部62に低圧作動指令信号を送る。
S5:ねじがねじ込み開始位置に達してスイッチ35cがONするのを待つ。
S6:シリンダ駆動部62に中圧作動指令信号を送る。
S7:押圧力検出手段7の信号から押圧力の実測値を割り出す。
S8:押圧力の実測値と中圧作動指令信号による押圧力の指令値との差分から、
それまでの中圧作動指令信号を補正し、これをシリンダ駆動部62に送る。
S9:スイッチ35dの状態を見てねじが着座前位置に達したか確認する。スイッチ35dがONしていない場合は、S7に戻る。
S10:シリンダ駆動部62に高圧作動指令信号を送る。
S11:押圧力検出手段7の信号から押圧力の実測値を割り出す。
S12:押圧力の実測値と高圧作動指令信号による押圧力の指令値との差分から、それまでの高圧作動指令信号を補正し、これをシリンダ駆動部62に送る。
S13:フラグの状態を確認し、フラグが立っている場合はS18にジャンプする。
S14:モータ駆動部63からモータ51の負荷電流値を取得する。
S15:負荷電流値が前段電流値に達しているか否かを確認し、達していない場合はS11に戻る。
S16:フラグを立てる。
S17:モータ駆動部63に低速駆動指令信号を送る。
S18:モータ駆動部63からモータ51の負荷電流値を取得する。
S19:取得した負荷電流値が最終締付電流値に達しているか否かを確認し、達していない場合はS11に戻る。
S20:スイッチ35eの状態を見てねじが締付完了位置に達したか確認する。スイッチ35eがONしていなければS26にジャンプする。
S21:シリンダ駆動部62およびモータ駆動部63に停止指令信号、表示部66に締付完了表示指令信号を送る。
S22:シリンダ駆動部62に復動指令信号を送る。
S23:スイッチ35aがONするのを待つ。
S24:シリンダ駆動部62に停止指令信号を送る。
S25:フラグを倒してエンド。
S26:シリンダ駆動部62およびモータ駆動部63に停止指令信号、表示部66にエラー表示指令信号を送り、S22にジャンプする。
の処理手順でねじ締め制御を行う。なお、図4および図5では省略しているが、制御部61は、ねじ締め制御の開始時点から内蔵タイマ(図示せず)による計時を行い、ねじ締め作業時間をチェックする。そして、所定ねじ締め作業時間内にねじ締め制御が完了しない場合には、作業を中断し、表示部66にエラー表示を行う。また、図4および図5では、文字数の都合上、シリンダ駆動部62をSD、モータ駆動部63をMDと表現している。
【0017】
次に本ねじ締め装置1の作用について図面に従って説明する。
スタート信号が入力されると、まず、シリンダ駆動部62からの指令信号を受けて電空レギュレータ34がエア圧を所定の高圧値に調節するとともに、シリンダ駆動部62からの指令信号により電磁弁33が作動する。これにより、シリンダ32にはピストンロッド31が伸びる方向に高圧のエアが供給されるため、移動テーブル4ないしねじ締めツール5が高速で下降する。
【0018】
ねじ締めツール5が下降する過程で、吸引スリーブ54内にはねじ80が吸引保持される。そして、吸引スリーブ54がワークに接すると、吸引スリーブ54に対してドライバビット53が下降し、ねじ80をワーク側に押し出す。これにより、ねじ80がワーク手前ねじ位置(スイッチ35bがONする位置)に達すると、電空レギュレータ34はエア圧を所定の低圧に調節する。この結果、ドライバビット53の下降速度が減じられ、ねじ80がワークに接する時の衝撃を緩和することができる。
【0019】
ねじ80がねじ込み開始位置(スイッチ35cがONする位置)に達すると、ねじ80はドライバビット53と係合して回転伝達を受け、ワークのめねじにねじ込まれる。また、ねじ80がねじ込み開始位置に達すると、電空レギュレータ34はエア圧を所定の中圧値に調節する。これにより、シリンダ32に供給されるエアは中圧に切り替えられるため、ドライバビット53は、ねじ80からカムアウトせず、かつねじ80を必要以上に押圧しない程度の押圧力でねじ80に押圧されることになる。
【0020】
前述のようにエアシリンダ機構3が中圧のエアで作動する間、ドライバビット53からねじ80に与えられている押圧力が押圧力検出手段7の信号から割り出され、これが指令値と比較され、その差分に応じてシリンダ駆動部62へ与える中圧作動指令信号の補正が繰り返される。これにより押圧力が適正に維持されるため、ねじ80のねじ部とめねじとに余計な摩擦抵抗を生じさせることなく、しかもカムアウトを確実に防止しつつ、ねじ80を高速でねじ込むことが可能である。
【0021】
ねじ込みにともなってねじ80が着座前位置(スイッチ35dがONする位置)に達すると、電空レギュレータ34はエア圧を所定の高圧値に調節する。これにより、シリンダ32に供給されるエアの圧力が高圧に切り替えられるため、ドライバビット53からねじ80に与えられる押圧力が高められる。よって、続くねじ80の着座にともなって急激に増加する締付トルクの反力で、カムアウトが生じるのを防止できる。
【0022】
ねじ80が着座した後、モータ51の負荷電流値が前段電流値に達したことが検出されると、モータ51は低速駆動に切り替えられる。これにより、ドライバビット53は低速回転に切り替わり、ねじ80を最終締付トルクが発生するまで(モータ51の負荷電流値が最終締付電流値に到達するまで)慎重に締め付けることができる。
【0023】
着座前位置からモータ51の負荷電流値が最終締付電流値に到達するまでの間、前述同様にシリンダ駆動部62への指令値が補正され、押圧力が適正に維持される。よって、エアシリンダ機構3が高圧のエアで作動する間のカムアウトの発生を防止し、確実にねじ80を締め付けることができる。
【0024】
モータ51の負荷電流値が最終締付電流値に達すると、ねじ80が最終締付位置に到達しているか否かがスイッチ35eの状態から確認される。これにより、ねじ80の締付トルクと締付高さの両方が確認されることとなり、両方共OKである場合には締付完了となる。この時、スイッチ35eがONしていなければ、締付高さ不良でエラーとなる。このようにしてねじ80の締め付けが完了すると、シリンダ駆動部52からの指令信号により電磁弁33が切り替えられ、ピストンロッド31がシリンダ32内に後退する。これにより、ねじ締めツール5は原点位置に戻され、次の作業に備える。
【0025】
なお、以上の説明では流体圧作動機構の一例としてエアシリンダ機構3を用いたが、流体圧作動機構として油圧の加除によってピストンロッドが作動する周知の油圧シリンダ機構を用いても得られる効果は同じである。
【0026】
【発明の効果】
本発明に係るねじ締め装置は、エアシリンダ機構等の流体圧作動機構における作動流体の圧力を調節可能な流体圧調節手段を有し、この流体圧調節手段を制御し、ねじのねじ込み位置に応じて作動流体の圧力を所定の圧力に調節するように構成されている。このため、ねじのねじ込み位置に応じてドライバビットがねじを押圧する力を適正に変更することができ、ねじの締付けを正確に、効率よく行うことができる等の利点がある。また、ドライバビットからねじに与えられている押圧力に応じて流体圧調節手段の作動指令信号を補正するため、常時押圧力を適正に維持することが可能である。従って、精度の高い押圧力管理を実現し、前述の効果をより顕著にすることができる等の利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るねじ締め装置の概略全体説明図である。
【図2】本発明に係るねじ締め装置によるねじ締めの過程とACサーボモータの駆動制御および押圧力の変化の関係を示す説明図である。
【図3】本発明に係るねじ締め装置の要部を示すブロック説明図である。
【図4】本発明に係るねじ締め装置によるねじ締め制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るねじ締め装置によるねじ締め制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ねじ締め装置
2 コラム
3 エアシリンダ機構
31 ピストンロッド
32 シリンダ
33 電磁弁
34 電空レギュレータ
35a〜35e スイッチ
5 ねじ締めツール
51 ACサーボモータ
52 伝達軸
53 ドライバビット
54 吸引スリーブ
55 台座
6 制御手段
61 制御部
62 シリンダ駆動部
63 モータ駆動部
64 スイッチ信号処理部
65 記憶部
66 表示部
67 入力部
7 押圧力検出手段
71 歪みゲージ
72 電源
73 差動アンプ
74 A/D変換部
Claims (2)
- 回転駆動源の駆動を受けて回転可能かつねじに係合可能なドライバビットを有するねじ締めツールと、前記ねじ締めツールを軸方向に往復移動操作可能な流体圧作動機構とを有するねじ締め装置において、
前記流体圧作動機構は作動流体の圧力を調節可能な流体圧調節手段を有し、
また、前記ねじのねじ込み位置に応じて前記流体圧調節手段から生まれる作動流体の圧力が所定の圧力となるよう当該流体圧調節手段を制御する制御手段を備えていることを特徴とするねじ締め装置。 - ねじ締めツールは、ドライバビットからねじに与えられる押圧力に応じた信号を出力可能な押圧力検出手段を有し、また、制御手段は、前記押圧力検出手段の出力信号を受けて流体圧調節手段の作動指令信号を補正するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のねじ締め装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003132240A JP2004330383A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | ねじ締め装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003132240A JP2004330383A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | ねじ締め装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004330383A true JP2004330383A (ja) | 2004-11-25 |
Family
ID=33507180
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003132240A Pending JP2004330383A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | ねじ締め装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004330383A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008164349A (ja) * | 2006-12-27 | 2008-07-17 | Nitto Seiko Co Ltd | ねじ山検査装置 |
JP2011255280A (ja) * | 2010-06-07 | 2011-12-22 | Yanmar Co Ltd | 脱芒機及びそれを備えた穀物処理設備 |
JP7391938B2 (ja) | 2018-07-25 | 2023-12-05 | 北京理工大学 | トルク係数サンプリング用の測定装置、及びトルク係数モデルの構築方法 |
-
2003
- 2003-05-09 JP JP2003132240A patent/JP2004330383A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008164349A (ja) * | 2006-12-27 | 2008-07-17 | Nitto Seiko Co Ltd | ねじ山検査装置 |
JP2011255280A (ja) * | 2010-06-07 | 2011-12-22 | Yanmar Co Ltd | 脱芒機及びそれを備えた穀物処理設備 |
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