JP2004330005A - 柿の皮を原料とする吸着剤とそれを用いたウラニウムとトリウムの分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価な吸着剤を用い、環境中に低濃度で存在するウラニウムやトリウムを分離・除去する方法を提供する。特に希土類元素中に共存する微量のウラニウムやトリウムの分離・除去方法を提供する。
【解決手段】干し柿の生産に際して大量に発生する渋柿をそのまま粉砕し、パラホルムアルデヒド等の架橋剤を用いて架橋を行い、その後、洗浄、乾燥することによって安価に調製される吸着剤による。このような吸着剤を既存の攪拌装置中でウラニウムやトリウムを含有する水と攪拌し、その後、吸着剤を濾別することにより、水中のウラニウムやトリウムは除去される。あるいはこのような吸着剤をカラムに充填し、ウラニウムやトリウムを含有する水を通液することにより、水中のウラニウムやトリウムは除去される。吸着後のカラムはpHが1より低い酸水溶液をカラムに通液することにより、吸着したウラニウムやトリウムが濃縮されて溶離され、吸着剤が再生される。しかる後に再度の吸着・除去に供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】干し柿の生産に際して大量に発生する渋柿をそのまま粉砕し、パラホルムアルデヒド等の架橋剤を用いて架橋を行い、その後、洗浄、乾燥することによって安価に調製される吸着剤による。このような吸着剤を既存の攪拌装置中でウラニウムやトリウムを含有する水と攪拌し、その後、吸着剤を濾別することにより、水中のウラニウムやトリウムは除去される。あるいはこのような吸着剤をカラムに充填し、ウラニウムやトリウムを含有する水を通液することにより、水中のウラニウムやトリウムは除去される。吸着後のカラムはpHが1より低い酸水溶液をカラムに通液することにより、吸着したウラニウムやトリウムが濃縮されて溶離され、吸着剤が再生される。しかる後に再度の吸着・除去に供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶液中から、特に希土類金属イオンが存在する水溶液中からウラニルイオンとトリウムイオンとを効果的に吸着・分離・除去する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウラニウムはウラニウムの鉱石の他に、モナザイト等の希土類金属の鉱石中にも含まれ、トリウムも希土類金属の鉱石中に含まれている。これらは放射性元素であり、環境中に漏出すると放射能による汚染を引き起こす可能性が高い。このためウラニウムの鉱山の他、希土類金属の鉱山においても、鉱滓中に微量に含まれるこれらの元素の溶出により、周辺の環境が放射能による被害を受けた例が幾例も報告されている。すなわちこれらは雨水等により溶出し、周囲の環境中の土壌や地下水の放射能汚染をもたらす。
【0003】
このような環境中のウラニウムやトリウムの除去に関してホスフィン酸やホスホン酸型のキレート樹脂の使用が提案されているが(例えばH.Egawa, T.Nonaka, M.Ikari; Journal of Applied Polymer Science, 29巻6号、 pp.2045−2055 (1984), S.D. Alexandratos, D.R. Quillen, W.J.McDowell, Separation Science & Technology, 22巻2,3号、 pp.983−995 (1987))、キレート樹脂は非常に高価であり、環境中の微量のウラニウムやトリウムの除去には不向きである。
【0004】
坂口等は柿タンニンがウラニウムやトリウムの吸着・除去に有効であることを報告している(例えばT.Sakaguchi, A.Nakajima; Separation Science & Technology, 29巻2号、 pp.205−221 (1994))。またミモザタンニンやワットルタンニンを原料とした吸着剤による金属イオンの吸着剤が報告されており(それぞれ例えば山口東彦、井浦良徳、樋口光夫、坂田功;木材学会誌、37巻9号、pp.815−820 (1991)、およびY.Nakano, K.Takeshita, T.Tsutsumi; Water Research, 35巻2号、pp.496−500 (2001))、一部はタンニックスという商品として市販されている(http://www.mnf.co.jp/nbrdc/tannix/tannixj.htm)。しかしながら、これらの吸着剤は上記のタンニン成分を、それを含有する植物から抽出して調製されたものであり、それらの植物から抽出・回収するにはそれなりのコストを要するため、これらのタンニン成分の吸着剤も高価であり、上記の目的には適さない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来に無い安価な費用で環境中に低濃度で存在するウラニウムやトリウムを分離・除去する方法を提供することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、タンニン成分を含む植物からこれらを費用をかけて抽出するのではなく、渋柿の皮等のタンニン成分を多く含有する植物の部分そのものを吸着剤として利用することにより、環境中に低濃度で存在するウラニウムやトリウムを安価な費用で吸着・分離・除去できることを見出した。これらの研究成果に基づき、本発明を完成するに至った。
【0007】
様々な果実や茶葉等の多くの植物中には多種、多様なるポリフェノール類が含まれているが、中でも柿の中には柿タンニンと呼ばれる強烈な渋味を発生させるポリフェノール類が多く含まれている。すなわち収穫適期の成熟した渋柿は1〜2%の可溶性柿タンニンを含有する。また未熟な渋柿より採取される柿渋は5〜6%の柿タンニンを含有している。
【0008】
柿渋はタンパク質の除去能が極めて優れており、わが国では清酒のオリ下げ、清澄剤として欠かせないものである。またこの柿渋は金属との錯形成に優れており、特にウラニウムとは安定な錯体を形成することはよく知られている。このような事実に基づき坂口等は柿タンニンによるウラニウムの吸着・回収技術を開発したが(例えばT.Sakaguchi, A.Nakajima; Separation Science & Technology, 29巻2号、 pp.205−221 (1994))、柿渋からの柿タンニンの回収には費用を要するため、環境中に低濃度で存在するウラニウムの除去等には不適である。
【0009】
わが国においては年間約10万トンの渋柿を用いて干し柿が生産されているが、その際約1割程度を占める柿の皮が廃棄物として発生する。この中には柿タンニンが数%含まれている。本発明者等はこの柿の皮の廃棄物を有効利用することにより、低廉なる経費で環境中のウラニウムやトリウム、ならびに様々なその他の重金属が効率的に吸着・除去できると予測した。
【0010】
本発明はこのような予測に基づいて研究開発された柿の皮の廃棄物を原料とする低廉なる金属吸着剤の製造方法とその利用技術とを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
柿の皮の主成分はセルロースやヘミセルロース等の植物繊維であり、この中に柿渋タンニンのポリフェノール類や糖類等の低分子の成分が混在する。ポリフェノール類はpHの高い水溶液ばかりでなく、中性付近のpHの水にもその一部が溶解するため、水中からの金属イオンの吸着剤として利用するためには、溶解防止のために架橋処理を行う必要がある。
【0012】
架橋の方法としてはホルムアルデヒドやグルタルアルデヒド等のアルデヒド類、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、ジイソシアネート類、ヒドラジン等の架橋剤を利用して既往の架橋方法により実施することが可能である。
【0013】
架橋処理することにより調製される本発明の吸着剤を用いれば、ウラニウムやトリウムを低濃度で含有する水溶液とバッチ操作あるいはカラム操作により接触させることにより、これらの元素を吸着、除去することができる。この場合ウラニウムとトリウムについて吸着・除去するのに好適なpHの範囲が存在する。
【0014】
例えばトリウムを吸着・除去するには、pHが2.5〜9、好ましくはpHが3〜8の水溶液から吸着を行うのが好適である。同様にウラニウムを吸着・除去するには、pHが3.5〜9、好ましくはpHが4〜8の水溶液から吸着を行うのが好適である。
【0015】
本発明の吸着剤に吸着されたトリウムとウラニウムを吸着剤から脱離させ、吸着剤を再生し、再度吸着操作に供するにはpHの低い酸性水溶液と接触させることにより達成できる。
【0016】
例えばトリウムを吸着剤から脱離するためにはpHが1以下、好ましくはpHが0.5以下の酸水溶液と接触することにより脱離を行うのが好適である。同様にウラニウムを吸着剤から脱離するためにはpHが2.5以下、好ましくはpHが2以下の酸水溶液と接触することにより脱離を行うのが好適である。
【0017】
【実施例】
以下に実施例により本発明の実施の形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例1 吸着剤の製造方法
吸着剤は柿の皮から例えば以下の方法により製造される。
干し柿の製造において発生する渋柿の皮45gをそのままの状態で粉砕し、15gのパラホルムアルデヒドと共に60mlの濃硫酸中に入れ、100℃で24時間加熱攪拌することにより架橋を行った。炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した後、大量の蒸留水、温水、希塩酸により順々に洗浄を行い、最後に洗浄液が中性になるまで蒸留水で洗浄した。その後、対流乾燥器を用いて100℃で24時間乾燥した後、得られた塊をボールミルで粉砕し、さらに篩い分けして粒径が150ミクロン以下のものを吸着剤として用いた。
【0018】
実施例2 トリウム、ウラニウム、ルテチウムの吸着に及ぼす pH の効果
実施例1に示した方法により製造され、さらに乾燥した吸着剤10mgと、15ppmの濃度のウラニルイオンを含み任意のpHに調整した水溶液7.5 cm3とを30℃に保たれたフラスコ中で24時間振り混ぜるさせることにより、水溶液中のウラニウムを吸着剤に吸着させた。吸着前後のpHをpHメーターにより、またウラニウムの濃度をICP発光分光分析装置により測定した。吸着による水溶液中のウラニウムの濃度の減少量より次式に従って吸着百分率を求めた。
吸着百分率=(吸着前のウラニウム濃度 ― 吸着後のウラニウム濃度)/吸着前のウラニウム濃度 ×100
結果は吸着百分率と吸着後のpHの関係として図1に●印のプロットで示す。
【0019】
トリウムとルテチウムについても同様な吸着実験を行った。結果を図1に同じく吸着百分率と吸着後のpHの関係として、トリウムとルテチウムについて、それぞれ○印および▽印のプロットで示す。
【0020】
先に示したウラニウムの吸着の結果とも比較すると、これら3種の金属イオンは吸着の起こるpHが互いにかなりかけ離れており、これら3種の金属イオンは本発明の吸着剤を用いることにより容易に相互に分離可能であることが分る。特にトリウムとウラニウムの吸着はルテチウムの吸着と比較すると、より低いpHにおいて優先的に起こっている。このことはルテチウムを始めとする希土類金属元素中に含まれる微量のトリウムやウラニウムの吸着・除去に本発明の吸着剤が好適であることを示している。
【0021】
実施例3 トリウム、ウラニウム、ルテチウムの吸着に要する時間
30℃に保ったフラスコ中に15ppmの濃度のウラニウム、またはトリウム、またはルテチウムを含み、pHを5に調整した水溶液7.5 cm3を取り、これに10mgの乾燥した本発明の吸着剤を加え、ある一定時間振り混ぜた。一定時間後水溶液を濾過して取り出し、その中に含まれるウラニウム、またはトリウム、またはルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。一定時間後の各金属の濃度の減少量より実施例2で述べた吸着百分率を求めた。このようにして求めた各金属の吸着百分率と振り混ぜ時間との関係を図2に示す。
●印で示すウラニウムは最初から100%の吸着に達しており、○印で示すトリウムも40分後には吸着百分率は一定値に達している。すなわちこれらの金属イオンの本発明の吸着剤への吸着は非常に迅速に起こることが分る。これと比較するとルテチウムの吸着百分率は一定値に達するのに約200分以上を要しており、ウランやトリウムと比較すると吸着が遅いことが分かる。
【0022】
実施例4 トリウム、ウラニウム、ルテチウムを完全に吸着・除去するのに必要な吸着剤の添加量
30℃に保たれたフラスコ中に10ppmの濃度のトリウム、またはウラニウム、またはルテチウムを含むpHが5に調整された水溶液100 cm3を取り、これに様々な重量の本発明の吸着剤を添加し、24時間振り混ぜた。振り混ぜ後、水溶液を濾過して取り出し、その中に含まれるウラニウム、またはトリウム、またはルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。振り混ぜ後の各金属の濃度の減少量より実施例2で述べた吸着百分率を求めた。このようにして求めた各金属の吸着百分率と固液比との関係を図3に示す。ここで固液比とは振り混ぜに供された本発明の吸着剤の乾燥重量と水溶液の体積の比であり次式より計算される。
固液比=(吸着ゲルの乾燥重量g)/(金属水溶液量dm3)
【0023】
図3の結果より、トリウムとウラニウムに関しては固液比が約0.2の時、吸着百分率が100%に達している。すなわち10ppmの濃度で存在するウラニウムやトリウムを100%除去するためには、当該の水溶液1dm3に対して本発明の吸着剤を0.2g添加して振り混ぜれば十分であることが分る。一方、ルテチウムに関しては固液比が1の時吸着百分率が100%になっており、10ppmの濃度で存在するルテチウムの完全な除去のためには当該の水溶液1dm3に対して本発明の吸着剤を1g添加して振り混ぜることが必要であることが分る。
【0024】
実施例5 本発明の吸着剤を充填したカラムによるウラニウムとルテチウムの分離
内径が0.8cmのガラス製のカラムに本発明の吸着剤を乾燥重量で0.486g充填した。この重量は吸着剤の充填体積0.98cm3に相当する。このようにして充填したカラムにウラニウムとルテチウムをそれぞれ50ppmの濃度で含んだpHが3.8の水溶液を毎時6cm3(SV=6.12)の割合で供給した。一定時間毎にカラムの出口よりフラクションコレクターを用いて液を採取し、ウラニウムとルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。
【0025】
カラムの出口におけるウラニウムとルテチウムの濃度と水溶液が出口より流出し始めてからの時間との関係をそれぞれの元素の相対濃度とベッド体積の関係として図4に示す。ここでそれぞれの元素の相対濃度とは次式で定義される、当該の元素のカラム出口での濃度と入り口での濃度、すなわち供給液の原料濃度との比である。
相対濃度=(流出液中の濃度)/(供給液中の濃度)
またベッド体積とは、次式で定義される供給される水溶液の充填層内での滞留時間である。
ベッド体積=(水溶液の供給速度×水溶液の供給時間)/(充填した吸着剤の体積)
【0026】
図4の結果より○印で示されるルテチウムの場合は、ベッド体積が5までは出口濃度が0であるのに対して、すなわちベッド体積が5の時にルテチウムの破過が始まるのに対して、●印で示されるウラニウムの場合は、ベッド体積が30までは出口濃度が0である。すなわちウラニウムの破過はベッド体積が30の時に始まる。
このように本発明の吸着剤を充填したカラムを用いれば、ウラニウムとルテチウムの破過が始まるベッド体積は大きく異なり、両者の相互分離が容易に達成できることが証明された。
【0027】
実施例6 カラム中の本発明の吸着剤に吸着したウラニウムとルテチウムの溶離
実施例5の操作でベッド体積が150に達した時、すなわちウラニウムとルテチウムの双方のカラムからの出口濃度が入り口濃度と等しくなった時に原料水溶液の供給を止め、蒸留水をしばらく通液してカラムの洗浄を行った後、1mol/dm3の濃度の塩酸を毎時6cm3(SV=6.12)の割合でカラムに供給した。塩酸により本発明の吸着剤の充填層に吸着していたウラニウムと少量のルテチウムは溶離され,カラムの出口より流出する。
実施例5の場合と同様に一定時間毎にカラムの出口よりフラクションコレクターを用いて液を採取し、ウラニウムとルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。
【0028】
カラムの出口におけるウラニウムとルテチウムの濃度と塩酸溶離液が出口より流出し始めてからの時間との関係をそれぞれの元素の相対濃度とベッド体積の関係として図5に示す。ここでのそれぞれの元素の相対濃度とは当該の元素のカラム出口での濃度と実施例5の操作における入り口濃度、すなわち供給液の原料濃度との比である。
●印で示されるウラニウムの場合、供給液の濃度と比較して最大で25倍以上に濃縮されて出口より流出する。○印で示されるルテチウムも多少は流出しているが、ウランの濃度と比較すると非常に低い。このように本発明の吸着剤を充填したカラムを用いることにより、ウラニウムはルテチウムより分離され、さらに高濃度に濃縮される。
【0029】
実施例7 本発明の吸着剤を充填したカラムの繰り返し使用に対する耐久性
内径8mmのガラス製のカラムに0.1gの本発明の吸着剤を充填し、これにpHが4.9で濃度が4ppmのウラニウム水溶液を毎時15.4cm3 (SV=30)の割合で30 cm3供給することにより、ウラニウムを本発明の吸着剤に吸着をさせた。その後、1mol/dm3の濃度の塩酸を20 cm3供給し、本発明の吸着剤に吸着したウラニウムの脱離を行った。このような吸着と脱離の操作を連続して10回繰り返し行った。
【0030】
図6に吸着百分率、および脱離百分率と繰り返し回数との関係を示す。この場合の吸着百分率および脱離
百分率は次式で定義される。
吸着百分率=(吸着したウラニウムのmol数)/(通液した溶液に含まれるウラニウムの総mol数)×100 %
脱離百分率=(脱離されたウラニウムのmol数)/(吸着剤に吸着したウラニウムの総mol数)×100 %
図6の結果より、カラムに供給した水溶液中のウラニウムは本発明の吸着剤により100%吸着され、さらにこのように吸着されたウラニウムはほぼ100%が塩酸により脱離されることが分る。しかもこのような吸着−脱離機能は、少なくとも10回繰り返し操作を行っても劣化しないことが分る。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の吸着剤は、干し柿の生産の際に発生する渋柿の皮を原料として、簡単な方法により安価に製造することができる。本発明の吸着剤を用いれば、環境中に微量濃度で存在する、放射性元素であるウラニウムとトリウムを極めて効率的に吸着・除去することができる。特に希土類元素中に不純物として微量に存在するウラニウムとトリウムとを極めて効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】15ppmの濃度のウラニウム、又はトリウム、又はルテチウムを含む様々なpHの水溶液7.5mlと、本発明の吸着剤10mgとを24時間接触させた場合の各金属イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。●、○、▽の記号はそれぞれウラニウム、トリウム、ルテチウムについての結果を示す。
【図2】15ppmの濃度のウラニウム、又はトリウム、又はルテチウムを含むpHが5に調整された水溶液7.5mlと、本発明の吸着剤10mgとをフラスコ中で振り混ぜた場合の、各金属イオンの吸着百分率(縦軸、%)と振り混ぜ時間(横軸、分)との関係を示す。●、○、▽の記号はそれぞれウラニウム、トリウム、ルテチウムについての結果を示す。
【図3】15ppmの濃度のウラニウム、又はトリウム、又はルテチウムを含むpHが5に調整された水溶液7.5mlと、様々な重量の本発明の吸着剤とを24時間振り混ぜた場合の各金属イオンの吸着百分率(縦軸、%)と、吸着剤と水溶液の固液比(横軸、g/dm3)との関係を示す。●、○、▽の記号はそれぞれウラニウム、トリウム、ルテチウムについての結果を示す。
【図4】それぞれ50ppmの濃度のウラニウムとルテチウムとを含み、pHが3.8の水溶液を、本発明の吸着剤を0.486g充填したカラムに通液した場合の、カラムの出口での各金属イオンの相対濃度(縦軸)とベッド体積(横軸)との関係を示す。●、○の記号はそれぞれウラニウムとルテチウムについての結果を示す。
【図5】図4に示したように、カラムにウラニウムとルテチウムの混合水溶液を通液した後、1mol/dm3の濃度の塩酸を通液して溶離を行った場合の、カラムの出口での各金属イオンの相対濃度(縦軸)とベッド体積(横軸)との関係を示す。●、○の記号はそれぞれウラニウムとルテチウムについての結果を示す。
【図6】0.1gの吸着剤を充填したカラムにpHが4.9で、4ppmの濃度のウラニウム水溶液を通液して吸着させた後、1mol/dm3の濃度の塩酸を通液して脱離する操作を10回繰り返した場合の、ウラニウムの吸着百分率(縦軸、左、%)ならびに脱離百分率(縦軸、右、%)と繰り返し回数(横軸)との関係を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶液中から、特に希土類金属イオンが存在する水溶液中からウラニルイオンとトリウムイオンとを効果的に吸着・分離・除去する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウラニウムはウラニウムの鉱石の他に、モナザイト等の希土類金属の鉱石中にも含まれ、トリウムも希土類金属の鉱石中に含まれている。これらは放射性元素であり、環境中に漏出すると放射能による汚染を引き起こす可能性が高い。このためウラニウムの鉱山の他、希土類金属の鉱山においても、鉱滓中に微量に含まれるこれらの元素の溶出により、周辺の環境が放射能による被害を受けた例が幾例も報告されている。すなわちこれらは雨水等により溶出し、周囲の環境中の土壌や地下水の放射能汚染をもたらす。
【0003】
このような環境中のウラニウムやトリウムの除去に関してホスフィン酸やホスホン酸型のキレート樹脂の使用が提案されているが(例えばH.Egawa, T.Nonaka, M.Ikari; Journal of Applied Polymer Science, 29巻6号、 pp.2045−2055 (1984), S.D. Alexandratos, D.R. Quillen, W.J.McDowell, Separation Science & Technology, 22巻2,3号、 pp.983−995 (1987))、キレート樹脂は非常に高価であり、環境中の微量のウラニウムやトリウムの除去には不向きである。
【0004】
坂口等は柿タンニンがウラニウムやトリウムの吸着・除去に有効であることを報告している(例えばT.Sakaguchi, A.Nakajima; Separation Science & Technology, 29巻2号、 pp.205−221 (1994))。またミモザタンニンやワットルタンニンを原料とした吸着剤による金属イオンの吸着剤が報告されており(それぞれ例えば山口東彦、井浦良徳、樋口光夫、坂田功;木材学会誌、37巻9号、pp.815−820 (1991)、およびY.Nakano, K.Takeshita, T.Tsutsumi; Water Research, 35巻2号、pp.496−500 (2001))、一部はタンニックスという商品として市販されている(http://www.mnf.co.jp/nbrdc/tannix/tannixj.htm)。しかしながら、これらの吸着剤は上記のタンニン成分を、それを含有する植物から抽出して調製されたものであり、それらの植物から抽出・回収するにはそれなりのコストを要するため、これらのタンニン成分の吸着剤も高価であり、上記の目的には適さない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は従来に無い安価な費用で環境中に低濃度で存在するウラニウムやトリウムを分離・除去する方法を提供することをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、タンニン成分を含む植物からこれらを費用をかけて抽出するのではなく、渋柿の皮等のタンニン成分を多く含有する植物の部分そのものを吸着剤として利用することにより、環境中に低濃度で存在するウラニウムやトリウムを安価な費用で吸着・分離・除去できることを見出した。これらの研究成果に基づき、本発明を完成するに至った。
【0007】
様々な果実や茶葉等の多くの植物中には多種、多様なるポリフェノール類が含まれているが、中でも柿の中には柿タンニンと呼ばれる強烈な渋味を発生させるポリフェノール類が多く含まれている。すなわち収穫適期の成熟した渋柿は1〜2%の可溶性柿タンニンを含有する。また未熟な渋柿より採取される柿渋は5〜6%の柿タンニンを含有している。
【0008】
柿渋はタンパク質の除去能が極めて優れており、わが国では清酒のオリ下げ、清澄剤として欠かせないものである。またこの柿渋は金属との錯形成に優れており、特にウラニウムとは安定な錯体を形成することはよく知られている。このような事実に基づき坂口等は柿タンニンによるウラニウムの吸着・回収技術を開発したが(例えばT.Sakaguchi, A.Nakajima; Separation Science & Technology, 29巻2号、 pp.205−221 (1994))、柿渋からの柿タンニンの回収には費用を要するため、環境中に低濃度で存在するウラニウムの除去等には不適である。
【0009】
わが国においては年間約10万トンの渋柿を用いて干し柿が生産されているが、その際約1割程度を占める柿の皮が廃棄物として発生する。この中には柿タンニンが数%含まれている。本発明者等はこの柿の皮の廃棄物を有効利用することにより、低廉なる経費で環境中のウラニウムやトリウム、ならびに様々なその他の重金属が効率的に吸着・除去できると予測した。
【0010】
本発明はこのような予測に基づいて研究開発された柿の皮の廃棄物を原料とする低廉なる金属吸着剤の製造方法とその利用技術とを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
柿の皮の主成分はセルロースやヘミセルロース等の植物繊維であり、この中に柿渋タンニンのポリフェノール類や糖類等の低分子の成分が混在する。ポリフェノール類はpHの高い水溶液ばかりでなく、中性付近のpHの水にもその一部が溶解するため、水中からの金属イオンの吸着剤として利用するためには、溶解防止のために架橋処理を行う必要がある。
【0012】
架橋の方法としてはホルムアルデヒドやグルタルアルデヒド等のアルデヒド類、ジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、ジイソシアネート類、ヒドラジン等の架橋剤を利用して既往の架橋方法により実施することが可能である。
【0013】
架橋処理することにより調製される本発明の吸着剤を用いれば、ウラニウムやトリウムを低濃度で含有する水溶液とバッチ操作あるいはカラム操作により接触させることにより、これらの元素を吸着、除去することができる。この場合ウラニウムとトリウムについて吸着・除去するのに好適なpHの範囲が存在する。
【0014】
例えばトリウムを吸着・除去するには、pHが2.5〜9、好ましくはpHが3〜8の水溶液から吸着を行うのが好適である。同様にウラニウムを吸着・除去するには、pHが3.5〜9、好ましくはpHが4〜8の水溶液から吸着を行うのが好適である。
【0015】
本発明の吸着剤に吸着されたトリウムとウラニウムを吸着剤から脱離させ、吸着剤を再生し、再度吸着操作に供するにはpHの低い酸性水溶液と接触させることにより達成できる。
【0016】
例えばトリウムを吸着剤から脱離するためにはpHが1以下、好ましくはpHが0.5以下の酸水溶液と接触することにより脱離を行うのが好適である。同様にウラニウムを吸着剤から脱離するためにはpHが2.5以下、好ましくはpHが2以下の酸水溶液と接触することにより脱離を行うのが好適である。
【0017】
【実施例】
以下に実施例により本発明の実施の形態をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例1 吸着剤の製造方法
吸着剤は柿の皮から例えば以下の方法により製造される。
干し柿の製造において発生する渋柿の皮45gをそのままの状態で粉砕し、15gのパラホルムアルデヒドと共に60mlの濃硫酸中に入れ、100℃で24時間加熱攪拌することにより架橋を行った。炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した後、大量の蒸留水、温水、希塩酸により順々に洗浄を行い、最後に洗浄液が中性になるまで蒸留水で洗浄した。その後、対流乾燥器を用いて100℃で24時間乾燥した後、得られた塊をボールミルで粉砕し、さらに篩い分けして粒径が150ミクロン以下のものを吸着剤として用いた。
【0018】
実施例2 トリウム、ウラニウム、ルテチウムの吸着に及ぼす pH の効果
実施例1に示した方法により製造され、さらに乾燥した吸着剤10mgと、15ppmの濃度のウラニルイオンを含み任意のpHに調整した水溶液7.5 cm3とを30℃に保たれたフラスコ中で24時間振り混ぜるさせることにより、水溶液中のウラニウムを吸着剤に吸着させた。吸着前後のpHをpHメーターにより、またウラニウムの濃度をICP発光分光分析装置により測定した。吸着による水溶液中のウラニウムの濃度の減少量より次式に従って吸着百分率を求めた。
吸着百分率=(吸着前のウラニウム濃度 ― 吸着後のウラニウム濃度)/吸着前のウラニウム濃度 ×100
結果は吸着百分率と吸着後のpHの関係として図1に●印のプロットで示す。
【0019】
トリウムとルテチウムについても同様な吸着実験を行った。結果を図1に同じく吸着百分率と吸着後のpHの関係として、トリウムとルテチウムについて、それぞれ○印および▽印のプロットで示す。
【0020】
先に示したウラニウムの吸着の結果とも比較すると、これら3種の金属イオンは吸着の起こるpHが互いにかなりかけ離れており、これら3種の金属イオンは本発明の吸着剤を用いることにより容易に相互に分離可能であることが分る。特にトリウムとウラニウムの吸着はルテチウムの吸着と比較すると、より低いpHにおいて優先的に起こっている。このことはルテチウムを始めとする希土類金属元素中に含まれる微量のトリウムやウラニウムの吸着・除去に本発明の吸着剤が好適であることを示している。
【0021】
実施例3 トリウム、ウラニウム、ルテチウムの吸着に要する時間
30℃に保ったフラスコ中に15ppmの濃度のウラニウム、またはトリウム、またはルテチウムを含み、pHを5に調整した水溶液7.5 cm3を取り、これに10mgの乾燥した本発明の吸着剤を加え、ある一定時間振り混ぜた。一定時間後水溶液を濾過して取り出し、その中に含まれるウラニウム、またはトリウム、またはルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。一定時間後の各金属の濃度の減少量より実施例2で述べた吸着百分率を求めた。このようにして求めた各金属の吸着百分率と振り混ぜ時間との関係を図2に示す。
●印で示すウラニウムは最初から100%の吸着に達しており、○印で示すトリウムも40分後には吸着百分率は一定値に達している。すなわちこれらの金属イオンの本発明の吸着剤への吸着は非常に迅速に起こることが分る。これと比較するとルテチウムの吸着百分率は一定値に達するのに約200分以上を要しており、ウランやトリウムと比較すると吸着が遅いことが分かる。
【0022】
実施例4 トリウム、ウラニウム、ルテチウムを完全に吸着・除去するのに必要な吸着剤の添加量
30℃に保たれたフラスコ中に10ppmの濃度のトリウム、またはウラニウム、またはルテチウムを含むpHが5に調整された水溶液100 cm3を取り、これに様々な重量の本発明の吸着剤を添加し、24時間振り混ぜた。振り混ぜ後、水溶液を濾過して取り出し、その中に含まれるウラニウム、またはトリウム、またはルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。振り混ぜ後の各金属の濃度の減少量より実施例2で述べた吸着百分率を求めた。このようにして求めた各金属の吸着百分率と固液比との関係を図3に示す。ここで固液比とは振り混ぜに供された本発明の吸着剤の乾燥重量と水溶液の体積の比であり次式より計算される。
固液比=(吸着ゲルの乾燥重量g)/(金属水溶液量dm3)
【0023】
図3の結果より、トリウムとウラニウムに関しては固液比が約0.2の時、吸着百分率が100%に達している。すなわち10ppmの濃度で存在するウラニウムやトリウムを100%除去するためには、当該の水溶液1dm3に対して本発明の吸着剤を0.2g添加して振り混ぜれば十分であることが分る。一方、ルテチウムに関しては固液比が1の時吸着百分率が100%になっており、10ppmの濃度で存在するルテチウムの完全な除去のためには当該の水溶液1dm3に対して本発明の吸着剤を1g添加して振り混ぜることが必要であることが分る。
【0024】
実施例5 本発明の吸着剤を充填したカラムによるウラニウムとルテチウムの分離
内径が0.8cmのガラス製のカラムに本発明の吸着剤を乾燥重量で0.486g充填した。この重量は吸着剤の充填体積0.98cm3に相当する。このようにして充填したカラムにウラニウムとルテチウムをそれぞれ50ppmの濃度で含んだpHが3.8の水溶液を毎時6cm3(SV=6.12)の割合で供給した。一定時間毎にカラムの出口よりフラクションコレクターを用いて液を採取し、ウラニウムとルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。
【0025】
カラムの出口におけるウラニウムとルテチウムの濃度と水溶液が出口より流出し始めてからの時間との関係をそれぞれの元素の相対濃度とベッド体積の関係として図4に示す。ここでそれぞれの元素の相対濃度とは次式で定義される、当該の元素のカラム出口での濃度と入り口での濃度、すなわち供給液の原料濃度との比である。
相対濃度=(流出液中の濃度)/(供給液中の濃度)
またベッド体積とは、次式で定義される供給される水溶液の充填層内での滞留時間である。
ベッド体積=(水溶液の供給速度×水溶液の供給時間)/(充填した吸着剤の体積)
【0026】
図4の結果より○印で示されるルテチウムの場合は、ベッド体積が5までは出口濃度が0であるのに対して、すなわちベッド体積が5の時にルテチウムの破過が始まるのに対して、●印で示されるウラニウムの場合は、ベッド体積が30までは出口濃度が0である。すなわちウラニウムの破過はベッド体積が30の時に始まる。
このように本発明の吸着剤を充填したカラムを用いれば、ウラニウムとルテチウムの破過が始まるベッド体積は大きく異なり、両者の相互分離が容易に達成できることが証明された。
【0027】
実施例6 カラム中の本発明の吸着剤に吸着したウラニウムとルテチウムの溶離
実施例5の操作でベッド体積が150に達した時、すなわちウラニウムとルテチウムの双方のカラムからの出口濃度が入り口濃度と等しくなった時に原料水溶液の供給を止め、蒸留水をしばらく通液してカラムの洗浄を行った後、1mol/dm3の濃度の塩酸を毎時6cm3(SV=6.12)の割合でカラムに供給した。塩酸により本発明の吸着剤の充填層に吸着していたウラニウムと少量のルテチウムは溶離され,カラムの出口より流出する。
実施例5の場合と同様に一定時間毎にカラムの出口よりフラクションコレクターを用いて液を採取し、ウラニウムとルテチウムの濃度をICP発光分光分析装置を用いて測定した。
【0028】
カラムの出口におけるウラニウムとルテチウムの濃度と塩酸溶離液が出口より流出し始めてからの時間との関係をそれぞれの元素の相対濃度とベッド体積の関係として図5に示す。ここでのそれぞれの元素の相対濃度とは当該の元素のカラム出口での濃度と実施例5の操作における入り口濃度、すなわち供給液の原料濃度との比である。
●印で示されるウラニウムの場合、供給液の濃度と比較して最大で25倍以上に濃縮されて出口より流出する。○印で示されるルテチウムも多少は流出しているが、ウランの濃度と比較すると非常に低い。このように本発明の吸着剤を充填したカラムを用いることにより、ウラニウムはルテチウムより分離され、さらに高濃度に濃縮される。
【0029】
実施例7 本発明の吸着剤を充填したカラムの繰り返し使用に対する耐久性
内径8mmのガラス製のカラムに0.1gの本発明の吸着剤を充填し、これにpHが4.9で濃度が4ppmのウラニウム水溶液を毎時15.4cm3 (SV=30)の割合で30 cm3供給することにより、ウラニウムを本発明の吸着剤に吸着をさせた。その後、1mol/dm3の濃度の塩酸を20 cm3供給し、本発明の吸着剤に吸着したウラニウムの脱離を行った。このような吸着と脱離の操作を連続して10回繰り返し行った。
【0030】
図6に吸着百分率、および脱離百分率と繰り返し回数との関係を示す。この場合の吸着百分率および脱離
百分率は次式で定義される。
吸着百分率=(吸着したウラニウムのmol数)/(通液した溶液に含まれるウラニウムの総mol数)×100 %
脱離百分率=(脱離されたウラニウムのmol数)/(吸着剤に吸着したウラニウムの総mol数)×100 %
図6の結果より、カラムに供給した水溶液中のウラニウムは本発明の吸着剤により100%吸着され、さらにこのように吸着されたウラニウムはほぼ100%が塩酸により脱離されることが分る。しかもこのような吸着−脱離機能は、少なくとも10回繰り返し操作を行っても劣化しないことが分る。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の吸着剤は、干し柿の生産の際に発生する渋柿の皮を原料として、簡単な方法により安価に製造することができる。本発明の吸着剤を用いれば、環境中に微量濃度で存在する、放射性元素であるウラニウムとトリウムを極めて効率的に吸着・除去することができる。特に希土類元素中に不純物として微量に存在するウラニウムとトリウムとを極めて効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】15ppmの濃度のウラニウム、又はトリウム、又はルテチウムを含む様々なpHの水溶液7.5mlと、本発明の吸着剤10mgとを24時間接触させた場合の各金属イオンの吸着百分率(縦軸、%)と吸着後の水溶液のpH(横軸)との関係を示す。●、○、▽の記号はそれぞれウラニウム、トリウム、ルテチウムについての結果を示す。
【図2】15ppmの濃度のウラニウム、又はトリウム、又はルテチウムを含むpHが5に調整された水溶液7.5mlと、本発明の吸着剤10mgとをフラスコ中で振り混ぜた場合の、各金属イオンの吸着百分率(縦軸、%)と振り混ぜ時間(横軸、分)との関係を示す。●、○、▽の記号はそれぞれウラニウム、トリウム、ルテチウムについての結果を示す。
【図3】15ppmの濃度のウラニウム、又はトリウム、又はルテチウムを含むpHが5に調整された水溶液7.5mlと、様々な重量の本発明の吸着剤とを24時間振り混ぜた場合の各金属イオンの吸着百分率(縦軸、%)と、吸着剤と水溶液の固液比(横軸、g/dm3)との関係を示す。●、○、▽の記号はそれぞれウラニウム、トリウム、ルテチウムについての結果を示す。
【図4】それぞれ50ppmの濃度のウラニウムとルテチウムとを含み、pHが3.8の水溶液を、本発明の吸着剤を0.486g充填したカラムに通液した場合の、カラムの出口での各金属イオンの相対濃度(縦軸)とベッド体積(横軸)との関係を示す。●、○の記号はそれぞれウラニウムとルテチウムについての結果を示す。
【図5】図4に示したように、カラムにウラニウムとルテチウムの混合水溶液を通液した後、1mol/dm3の濃度の塩酸を通液して溶離を行った場合の、カラムの出口での各金属イオンの相対濃度(縦軸)とベッド体積(横軸)との関係を示す。●、○の記号はそれぞれウラニウムとルテチウムについての結果を示す。
【図6】0.1gの吸着剤を充填したカラムにpHが4.9で、4ppmの濃度のウラニウム水溶液を通液して吸着させた後、1mol/dm3の濃度の塩酸を通液して脱離する操作を10回繰り返した場合の、ウラニウムの吸着百分率(縦軸、左、%)ならびに脱離百分率(縦軸、右、%)と繰り返し回数(横軸)との関係を示す。
Claims (4)
- 原料が柿の皮を特徴とする吸着剤。
- 請求項1の柿の皮が渋柿の皮であることを特徴とする吸着剤。
- 請求項1の吸着剤を使用することを特徴とする水中からのウラニウムとトリウムの吸着・除去方法。
- 請求項3において希土類金属イオンからの分離を特徴とするウラニウムとトリウムの選択的吸着・除去方法。
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