JP2004329124A - 幼苗植栽用保育ブロックと緑化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】肥料成分を含有する植生基盤材からなる半割れの複数を合体してなる中空筒状の幼苗植栽用保育ブロック10の内部に、幼苗Xの根系部を土壌及び有機物Yと共に収容し、地面に掘削した植栽穴の中に、当該保育ブロック10と共に埋設する。該保育ブロック10には、(1)貫通溝も貫通穴も有しない中空柱形状のI型幼苗植栽用保育ブロック、(2)上下方の貫通溝を有する中空柱形状のII型幼苗植栽用保育ブロック、(3)水平方向の貫通穴又は貫通溝を有する中空柱形状のIII型保育ブロックの基本的な3つを有し、その組み合わせ使用により、幼苗の活着率と生育が大幅に改善される。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は幼苗植栽用保育ブロックと該幼苗植栽用保育ブロックを用いた緑化方法に関するものであり、より詳しくは、温暖化に伴う地球規模の砂漠化を防止するために必要な乾燥荒廃地緑化に関し、植栽苗木の活着率を高めるための緑化技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
地球環境保全のための緑化手法としては、苗木植栽が一般的である。降水量の多い熱帯乃至亜熱帯地域においては良好な植栽結果が報告されているものの、乾燥荒廃地では、土中からの根系吸収水分量が僅かであるのに対し、枝葉からは高温や風により強制的に水分が奪われるため、植栽木の枯死が多く、緑化施工が極めて困難な状況にある。
【0003】
また、乾燥荒廃地においては植栽苗木の枯死を防ぐために、多量の潅水を長年継続して行わなくてはならないが、潅水を行っても枯死や生育不良になる場所が多い。更に、乾燥地では水が得られ難く潅水ができない地域が大半を占めている。このように、乾燥荒廃地においては、植林事業は全く経済的採算が取れず停滞しているのが現状であり、植栽苗木の枯死を防ぐための新しい緑化技術の確立が切望されている。
【0004】
荒廃した地球の生態環境を再生するには、熱帯降雨林の植栽造林だけでなく、乾燥地帯の荒廃地緑化が重要な解決すべき課題であるが、乾燥地帯では旱魃により多くの人々が飢餓に陥っており、貧困の救済や食糧生産のできる生態環境の再生を現実化するための緑化手法の開発も、緊急かつ重要課題になっている。
【0005】
とりわけ、苗木植栽法が乾燥地帯の造林手法として適用できない実質的な一要因は、根系形態の不自然さにある。天然林の根系は、太くて長い根系が地中深くまで侵入するのに対し、人工植栽林の根系は、細くて短い根系が地表面近くを這い、地中に深く侵入しないことが認められており、このことが基因して、植栽木は乾燥で容易に枯死してしまうものと考えられている。
【0006】
すなわち、乾燥枯死を防ぐために現状では潅水を継続する必要があるものの、乾燥地帯では採水が極めて困難であるとともに潅水作業には莫大な経費を要するという問題がある。さらに、多量に潅水すると塩分が地表に集積し、この集積した塩分により植物が枯死する問題も起きている。
【0007】
本発明は上述した実状に鑑み鋭意検討されたものであり、その目的は、つぎの(1)乃至(3)の課題を解決できる幼苗植栽用保育ブロックと該幼苗植栽用保育ブロックを使用した緑化方法を提供するにある。
【0008】
(1) 幼苗の根系を天然性木の根系のように、太く長い根系が、地中に深く伸長するように誘導すること。
【0009】
(2)乾燥による幼苗の枯死を減少させること。
【0010】
(3)「1〜2年生の幼苗」を用い、植栽後の生育の促進を図ること。
【0011】
なお、肥料成分を含有する植生基盤材を原材として上下方向の貫通穴複数を有する練炭状に型成形された種子床(播種用土壌ブロック)と、該種子床を使用した緑化方法が提案されている(例えば特許文献1参照)ものの、このブロックは播種用であるに対して、本発明に係るブロックは特には樹木幼苗植栽用である点において両発明は別個、異別のものである。
【0012】
【特許文献1】
特開2003−47307号公報、(図1乃至図3)
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明が採用した手段は、叙上の特許請求範囲の欄に記載のとおりである。
【0014】
すなわち、請求項1の発明は、肥料成分を含有する植生基盤材からなる複数の半割れを合体した中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックの内部に幼苗の根系部を土壌と共に収容し、施工地面上に掘削した植栽穴の最上部に、幼苗の根系部を土壌や有機物と共に幼苗植栽用保育ブロックの筒状部に収容保護して埋設するところに特徴を有する緑化方法を、その要旨とする。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載の緑化方法において、前記幼苗植栽用保育ブロックを埋設した地上部に、当該幼苗植栽用保育ブロックの埋設上部を囲むように筒状物または半割り筒状物を併設するものを、その要旨とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の緑化方法において、前記幼苗植栽用保育ブロックを埋設した地表をマルチ資材で覆うものを、その要旨とする。
【0017】
つぎに、請求項4の発明は、肥料成分を含有する植生基盤材からなる複数の半割れを合体してなる中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックであって、施工地面上に掘削した植栽穴の最上部に、幼苗の根系部を土壌や有機物と共に収容保護して埋設されるものを、その要旨とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4記載の幼苗植栽用保育ブロックにおいて、前記半割れの内側に上下方向に貫通する溝を設け、中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックの内面側に上下方向に貫通する溝を形成するものを、その要旨とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項4記載の幼苗植栽用保育ブロックにおいて、前記半割れの内側に、水平方向の貫通穴または水平方向の貫通溝のいずれかを設け、中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックの内面側に水平方向の貫通穴または水平方向の貫通溝を形成するものを、その要旨とする。
【0020】
請求項7の発明は、請求項4〜6のいずれかに記載の保育ブロックにおいて、前記植生基盤材に酸素発生剤又は保水剤が含まれているものを、その要旨とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、つぎのア)乃至ク)の観点から鋭意開発されたものである。
【0022】
ア)導入樹木の根系を天然性樹木の根系のように太く長く伸長させるには、大型苗木を用いず、1〜2年生の幼苗を生育させ根系を地中深くに誘導伸長させることを考え、I〜III型幼苗植栽用保育ブロックを作製した。
【0023】
イ)乾燥に弱い植栽直後の苗木を乾燥した荒廃地により確実に定着を図るために、幼苗植栽用保育ブロックの保水性の向上と、植物の根系が幼苗植栽用保育ブロックの水分を有効に活用できるよう、生育に好ましい条件を備えた幼苗植栽用保育ブロックを案出した。
【0024】
ウ)根系を天然性木の根系のように地中深く誘導伸長させるために、幼苗植栽用保育ブロックで幼苗の根系部を包囲し埋設すると、幼苗の乾燥枯死が少なく、また、垂下根が地中深くに誘導伸長させることを認めた。
【0025】
エ)幼苗植栽用保育ブロック中の水分を根系が有効に活用できるよう、幼苗植栽用保育ブロックの内側に適度な深さをもつ上下方向の溝を設けところ、溝を設けないものに比べ溝を設けたものは、溝の中に根系が伸長し、幼苗が乾燥枯死し難くなることを確認した。
【0026】
オ)幼苗植栽用保育ブロックに設けた水平方向の溝や穴から、根系(水平根)が周囲の土中に容易に伸長することを期待して、溝や穴を設けたところ、水平根の伸長が旺盛になるほど垂下根の伸長量が増し、垂下根が重力方向により速く伸長することを確認した。
【0027】
カ)幼苗植栽用保育ブロック作製時に酸素保持剤を添加混合したところ、粘性土の中に根系が密度高く侵入することを確認した。
【0028】
キ)肥料養分を幼苗植栽用保育ブロック外に流出分散させないように、水で溶解し難い肥料を混合すると肥料分が目的の幼苗植物のみに吸収され、生育が促されることを確認した。
【0029】
ク)施工地面上を掘削した植栽穴に、前記I〜III型幼苗植栽用保育ブロックを用い幼苗木の根系部を収容保護して埋設すると、植栽木の活着率は幼苗植栽用保育ブロックを用いない従来の植栽方法に比べ著しく高まり、また、その後の生育も良好になる結果を得た。
【0030】
図1は本発明の幼苗植栽用保育ブロック10を示す概略斜視図であり、土壌、有機質資材、肥料養分、土壌改良材などを混合した植生基盤材を成形した複数の半割れ10’からなり、該半割れ10’を合体して中空筒状に形成されており、施工地面上を掘削した植栽穴17の最上部に、土壌及び有機物Yで固めた幼苗Xの根系部を収容したまま埋設される。
【0031】
一般に土壌を強く加圧しすぎると、土壌の透水性や通気性が不良になり、根系が土壌中に侵入し難くなる傾向がある。本発明の幼苗植栽用保育ブロック10は、好ましくは、土壌硬度が山中式土壌硬度計指数で25mm〜28mmとなるよう加圧成型される。この範囲の硬さに基盤材が加圧成型されていると、保水性、通気性、保肥性、耐侵食性に優れた幼苗植栽用保育ブロック10として製造できるからである。
【0032】
一般に、土壌を強く加圧すると、土壌の透水性や通気性が不良になり根系が土壌中に侵入しないが、本発明では、幼苗植栽用保育ブロック10の側壁に上下に幾筋もの溝を設けているので、透水性や通気性の不良な粘土分の多い土壌を用いる場合でも、根系は当該保育ブロック10の中に伸長することができ、これにより、植物の乾燥枯死が減少し、生育が促進できた。
【0033】
本発明の幼苗植栽用保育ブロック10は、6ヵ月〜20ヶ月間はほぼその形状を保持し、その後は根系の生長とともに自然に劣化崩壊し、自然土に戻り、環境汚染することはない。
【0034】
また、本発明の幼苗植栽用保育ブロック10は、製造に際して、バインダーとしてアスファルト乳剤やアクリルポリマーなどの化学的資材を使用していないので生態環境を汚染することもない。
【0035】
以下、本発明の実施の態様(I〜III型幼苗植栽用保育ブロック)をより詳細に説明する。
図2(a)はI型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ11の平面図、図2(b)は同半割れ11の正面図である。図3(a)はII型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ12の平面図、図3(b)は同半割れ12の正面図である。図4(a)はIII型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ13の平面図、図4(b)は同半割れ13の正面図である。
【0036】
本発明の緑化方法において、幼苗植栽用保育ブロック10として、その内面側に▲1▼貫通溝も貫通穴も有しない柱形状のI型幼苗植栽用保育ブロック、▲2▼上下方向の貫通溝14を有する柱形状のII型幼苗植栽用保育ブロック、▲3▼水平方向の貫通穴15と貫通溝16を有するIII型幼苗植栽用型保育ブロックのいずれかが好適に用いられ、施工地面上を掘削した植栽穴17の最上部に収容、埋設される。
【0037】
I〜III型幼苗植栽用保育ブロックの全体形状は、概ね、その径が5〜20cm、高さ5〜20cmの円形乃至方形の柱状物であるが、その寸法形状などは、幼苗の大きさ、荒廃地の立地条件への適合性を考慮して適宜設計変更される事項である。
【0038】
このI〜III型幼苗植栽用保育ブロックは、I〜III型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ11、12、13をそれぞれ複数合体させてなる。
【0039】
このI〜III型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ11、12、13は、土壌、有機質資材、肥料成分、土壌改良材などを混合した植生基盤材を加圧成形したものである。これらI〜III型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ11、12、13の成形は、上述の通り、I〜III型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ11、12、13を1つ1つ成型しても良いし、I〜III型幼苗植栽用保育ブロックの状態で成型し、それを分割してI〜III型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ11、12、13としても良い。
【0040】
さらに、加圧成形時に、上下方向の貫通溝14と水平方向の貫通穴15や貫通溝16を同時成型したり、後付け削設できることは無論のことである。
【0041】
本発明の幼苗植栽用保育ブロック10を作製する土壌を特に限定するものではない。施工地の近傍に存する粘性土壌、湖沼や河川のダム等の堆積泥土、砕石場排泥、浄水場排泥等の他、ゼオライト、ベントナイト、アタパルジャイト等の鉱産粘土成分の単独又は2種以上の混合物などが例示できるが、保肥性、保水性の高い粘性土壌を使用することが好ましい。土壌は、植生基盤材全体当たり50〜80重量%(乾燥重量比)の割合に配合されるが、その配合割合は適宜設計変更可能な事項である。
【0042】
なお、粘土分の少ない砂質土を使用する場合には、高吸水性高分子化合物が添加される。好適な高吸水性高分子化合物としては、例えば商品名を「サンウエットGT−1、IM5000、IM1000(三洋化成工業製)」、「サーモゲル(興人製)」、「PNVANA−010(昭和電工製)」などを挙げることができる。使用する高吸水性高分子化合物は、概ね、植生基盤材全体当たり0.01〜0.1重量%(乾燥重量基準)の割合で混合される。ただし、その混合割合は、使用する高吸水性高分子化合物の吸水倍率によって適宜変更される事項である。
【0043】
つぎに、前記肥料成分としては、有機質堆肥、イネやムギわら、トウモロコシ等の植物残津、樹皮や枝条の粉砕物、ピートモス、コンポスト、オガクズ、ココピート、椰子繊維などを挙げることができるが、その種類及び配合割合を特に限定するものではない。幼苗植栽用保育ブロック10の保肥性、保水性、通気性が改善でき、根系の伸長が盛んになる。なお、施工地近傍で入手可能な有機質堆肥を用いると、施工コストを削減できるから好ましい。
【0044】
なお、使用肥料は、例えば、商品名を「グリーンマップ」、「グリーンマップII」、「ノンストレス」(日本合同肥料製)などの周囲に流亡し難い環境保全型の肥料を配合することができる。かかる肥料を配合すると、肥料分が水で溶解し幼苗植栽用保育ブロック10外に流亡することが少なく、周囲の雑草等に奪われることが少ないため、目的の導入植物に集中的に吸収され、目的植物の生育を促進することができる。
【0045】
つぎに、前記土壌改良材としては、パーライト、炭、石炭、酸素発生剤、アルギン酸ソーダ、保水剤、団粒化剤等を挙げることができるが、その種類及び配合割合などを特に限定するものではない。土壌改良材を配合することにより、幼苗植栽用保育ブロック10中の空気量の改善や微生物活性を高めることができる。
【0046】
ついで、本発明の幼苗植栽用保育ブロック10を使用した緑化方法を図5乃至図8を参照しながら説明する。ただし、本発明の幼苗植栽用保育ブロック10に用いる幼苗の種類には特に限定はなく、木本植物(潜在自然植生、先駆樹種)、草本植物など市場で入手可能な幼苗のほか、施工地近傍より採取できる郷土植物の幼苗を用いることができる。
【0047】
より詳しくは、先ず、予め根系がとぐろ状に絡み合わないように生長させた幼苗の根系21を切断せず、根系の付着土壌を除去しないように本発明の幼苗植栽用保育ブロック10の中空筒体の中に土壌及び有機物Y等とともに収容し、ついで、施工地にホールカッターを用いて形成した植栽穴17の中に埋め戻し土20を用いて埋設し、幼苗植栽用保育ブロック上に1〜2cm厚の覆土Zを行う(図5参照)。
【0048】
ただし、ホールカッターを用いて開けた植栽穴17の中には、幼苗植栽用保育ブロック10を単独収容しても良いし、幼苗植栽用保育ブロック10の複数個を段積みして収容し、その最上段に、幼苗を収容した幼苗植栽用保育ブロック10を設置することもできる。段積みに際しては、I型〜III型幼苗植栽用ブロックをどの順番に積み重
ねるかは適宜設計変更可能な事項である。
【0049】
なお、本発明の幼苗植栽用保育ブロック10を覆土Zした後にマルチ資材18で被覆すると、土壌表面からの水分蒸発を防ぐことができることから好ましい。マルチ資材としては、石(砂利)、礫、枯れ草、バーク、紙、布などが例示できる(図6参照)。
【0050】
また、本発明の幼苗植栽用保育ブロック10を覆土Zした後に、幼苗植栽用保育ブロック10の地上部に筒状物19または半割り筒状物を設置すると、動物害、雑草の被圧、飛砂の害を防止できるから好適である(図7参照)。
【0051】
さらに、植栽穴17から下方に向く例えば小径の根系誘導孔22が掘削されていると、根系を更に深く伸長させることができるからさらに好適である(図8参照)。
【0052】
通常、植栽穴17に挿入した幼苗植栽用保育ブロック10の上面部が地表面と同じ高さになるように設置し、乾燥地では地表面よりもやや低めに、また、湿潤地では畝の頂部に設置することが好ましい。植栽穴の施工間隔は、苗木植栽に準じる。
【0053】
一般に、乾燥地帯で大きな植栽穴を掘ったり耕うんすると、土壌の粗孔隙が増し土壌が乾燥して植栽苗木が枯死する傾向がある。本発明の緑化方法では、現地の土壌構造を崩さずに植生を導入することを考慮して、ホールカッターと幼苗植栽用保育ブロック10を組み合わせて施工するため、その土地本来の土中水分の流れを維持しながら植生導入を図ることができる。また、幼苗植栽用保育ブロック10は、ホールカッターで開けた植栽穴17の土層面から徐々に供給される土中水分を効率的に吸収することができ、また、導入植物の根系は幼苗植栽用保育ブロック10と地山の土層面との隙間を下降して伸長するので、稚樹の枯死回避に有利になる。
【0054】
乾燥地にて従来のように苗木植栽を行うと、根系の吸水量と蒸散量とのバランスが当初から崩れるために潅水を行うことが必須であるが、本発明となる幼苗植栽用保育ブロック10を用いた緑化方法によると、幼苗植栽用保育ブロック10の構成資材が保水能力の高い粘土質土壌を主体としていること、地山の土層構造を崩さず地山から湧出する水分を幼苗植栽用保育ブロック10が有効に吸収し利用することとが互いに相まって、根系の吸水量と蒸散量とのバランスをとりながら植物を生育させることができるので、潅水が不要になるのである。
【0055】
幼苗植栽用保育ブロック10の内面側に設けた上下方向の貫通溝14の中は、湿度が高まり発根に好適な環境が形成されるので、幼苗の根系は中空筒状の幼苗植栽用保育ブロック10に沿って土中に深く伸長できる。また、樹木の主根(垂下根)は、幼苗植栽用保育ブロック10の中空筒状部に沿って重力方向に深く伸長するが、側根(水平根)は上下方向に溝の中や、水平方向の貫通穴15や貫通溝16に侵入し、側根が周囲に広く伸長発達する。このように、本発明では、上下方向の貫通溝14と水平方向の貫通穴15や貫通溝16とを一箇所又は適数箇所に設けてあることから、根系の発達を促し、また自然林に近い根系形状に早期に誘導することできるため、自然環境と調和した植物群落の造成に有利である。
【0056】
【実施例1】
本発明の幼苗植栽用保育ブロックと一般に行われている苗木植栽法(一般造林手法)との初期生長に関する効果を比較検討した。
【0057】
花崗岩のマサ土において、播種1年後のヒノキの幼苗について、幼苗植栽用保育ブロック10を用いて植栽した場合と幼苗植栽用保育ブロック10を用いずに植栽した場合について比較した。1年後の活着率は、一般造林手法区では58%であったのに対し、本発明の幼苗植栽用保育ブロック区では96%であり、活着率が著しく高まった。
【0058】
平均年間伸長量を比較すると、一般造林手法区では6cm±4cmであったのに対し、
本発明の幼苗植栽用保育ブロック区では20cm±6cmとなり、明らかな差が見られた。また、根系の伸長状況にも大きな差が見られた。一般造林手法区の根系は、浅く、垂下根の発達が少なく、側根も細く短い。これに対し、本発明の幼苗植栽用保育ブロック区の根系は、太い直根が重量方向に深く伸長し、また、伸長範囲が著しく広いことが観察された。
【0059】
また、本発明の幼苗植栽用保育ブロック区の根系は幼苗植栽用保育ブロック10の内面側に設けた上下方向の貫通溝14に沿って深く伸長している状況や側根(水平根)が水平方向に設けた貫通穴15や貫通溝16に侵入し幼苗植栽用保育ブロック10の周辺土壌に伸長している状況が観察された。このように、本発明の幼苗植栽用保育ブロック区の根系形態は、根系の侵入深度が深いこと、根系の伸長範囲が広いことなど、天然性樹木の根系構造とかなり近似した根系形態になっていることが確認された。
【0060】
【実施例2】
本発明の幼苗植栽用保育ブロック10を砂地に埋め、幼苗植栽用保育ブロック10中の土壌水分の変動と幼苗植栽用保育ブロック10を埋設しない砂地の土壌水分の変動を測定した。実験は最初に十分潅水した後その後高温乾燥下において、土壌水分の減少状況を2ヶ月間(7月11日〜9月10日)測定した。その結果、砂中区では30日後に永久萎凋点に達したのに対し、幼苗植栽用保育ブロック区では60日後に永久萎凋点に達した。この結果から、本発明の幼苗植栽用保育ブロック10を用いて幼苗を収容保護し埋設することは、幼苗の枯死回避に有効であることが推察できる。
【0061】
【実施例3】
幼苗植栽用保育ブロック10の内面側に上下方向の貫通溝14を設けた区と設けない区について、大豆を2ヶ月間生育させ根系重量を比べると、上下方向の溝を設けた区の根系重量は溝を設けない区の1.4倍であった。この結果から、上下方向の貫通溝14を設けると根系の発達が良好になることが分かる。
【0062】
【発明の効果】
本発明の幼苗植栽用保育ブロックを用いると、つぎの(1)乃至(7)の実効性に優れた作用効果が得られる。
【0063】
(1) 植生基盤材からなる半割れを合体した中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックは、幼苗の根系伸長を助け、根系を重力方向に地中深く、また広範囲に誘導し伸長させる働きがある。このため、▲1▼土壌保全機能の向上、▲2▼乾燥枯死の回避、▲3▼山地保水機能(水源涵養)の向上、▲4▼長時間に亘って保形できる。
【0064】
(2) 幼苗植栽用保育ブロックに設けた上下方向の貫通溝の中に根系が侵入するため、幼苗植栽用保育ブロック中の水分や養分の利用効率が高まり、また地中深くに向けて根系の伸長が促進されるため、幼苗の枯死回避、生育促進に役立つ。つまり、幼植物の定着率を高め、初期生育を促進させ得る。
【0065】
(3) 本発明の幼苗植栽用保育ブロックは保肥力が高いので、肥料分の周囲への流亡を防ぎ、幼植物に集中的に養分を与えることができるので、幼植物の生育が促進できる。
【0066】
(4) 本発明の幼苗植栽用保育ブロックは保水力が高く、その水分が根系伸長に有効に利用され根系が地中深く伸長するのを促すことから、通常散水管理が不要である。つまり、広く乾燥地へ適用できる。
【0067】
(5) 本発明の幼苗植栽用保育ブロックの主資材は土壌と有機物であり、土壌は河川堆積土などを用いることができること、有機物資材には農作物の殻、生ごみ堆肥などを用いるので、自然のエネルギー循環の流れを換えるものではなく、また、生態環境を乱すものではないことが相まって、荒廃した生態系の回復を助け、その持続性を支えるものとして活用できる。
【0068】
(6) 苗木作りや施工後の潅水管理が通常不要であるので、施工経費の削減が図れる。また、簡単で実行性の向上が図れる。
【0069】
(7) 本発明の幼苗植栽用保育ブロックの適用範囲は極めて広く、一般植栽が困難である広大な乾燥地帯に対して広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明となる幼苗植栽用保育ブロックを模式的に示す斜視図であり、図1(b)は同保育ブロックの使用時の状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2(a)は、本発明となる幼苗植栽用I型保育ブロックを構成する半割れを模式的に示す平面図であり、図2(b)は同半割れの正面図である。
【図3】図3(a)は、本発明となる幼苗植栽用II型保育ブロックを構成する半割れを模式的に示す平面図であり、図3(b)は同半割れの正面図である。
【図4】図4(a)は本発明となる幼苗植栽用のIII型保育ブロックを構成する半割れを模式的に示す平面図であり、図4(b)は同半割れの正面図である。
【図5】図5は、本発明の幼苗植栽用保育ブロックを用いた緑化方法を説明するための概略図である。ホールカッターで掘削した植栽穴の最上部に、幼苗根系部を土壌や有機物と共に幼苗植栽用保育ブロック内に収容し、保護したまま埋設される。
【図6】図6は、本発明の幼苗植栽用保育ブロックを用いた緑化方法を説明するための概略図である。幼苗植栽用保育ブロック内に幼苗根系部を土壌や有機物と共に収容したまま埋設し、地表をマルチ資材で覆っている。
【図7】図7は、本発明の幼苗植栽用保育ブロックを用いた緑化方法を説明するための概略図である。幼苗根系部を土壌や有機物と共に幼苗植栽用保育ブロックで収容したまま埋設した地上部に、当該幼苗植栽用保育ブロックの埋設上部を囲むように筒状物が併設されている。
【図8】図8は、本発明の幼苗植栽用保育ブロックを用いた他の緑化方法を説明するための概略図である。硬質土壌において根系をさらに深く伸張させるために、植栽穴から下方に向く小径の根茎誘導孔が併設されている。
【符号の説明】
10 幼苗植栽用保育ブロック
10’ 半割れ
11 I型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ
12 II型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ
13 III型幼苗植栽用保育ブロックを構成する半割れ
14 上下方向の貫通溝
15 水平方向の貫通穴
16 水平方向の貫通溝
17 ホールカッターで開けた植栽穴
18 マルチ資材
19 筒状物
20 埋め戻し土
21 根系
22 根系誘導孔
X 幼苗
Y 土壌及び有機物
Z 覆土
Claims (7)
- 肥料成分を含有する植生基盤材からなる複数の半割れを合体した中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックの内部に幼苗の根系部を土壌と共に収容し、施工地面上に掘削した植栽穴の最上部に、幼苗の根系部を土壌や有機物と共に幼苗植栽用保育ブロックの筒状部に収容保護して埋設することを特徴とする緑化方法。
- 前記緑化方法において、
前記幼苗植栽用保育ブロックを埋設した地上部に、当該幼苗植栽用保育ブロックの埋設上部を囲むように筒状物または半割り筒状物を併設することを特徴とする請求項1記載の緑化方法。 - 前記幼苗植栽用保育ブロックを埋設した地表をマルチ資材で覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の緑化方法。
- 肥料成分を含有する植生基盤材からなる複数の半割れを合体してなる中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックであって、
施工地面上に掘削した植栽穴の最上部に、幼苗の根系部を土壌や有機物と共に収容保護して埋設されることを特徴とする幼苗植栽用保育ブロック。 - 前記半割れの内側に上下方向に貫通する溝を設け、中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックの内面側に上下方向に貫通する溝を形成することを特徴とする請求項4記載の幼苗植栽用保育ブロック。
- 前記半割れの内側に、水平方向の貫通穴または水平方向の貫通溝のいずれかを設け、中空筒状の幼苗植栽用保育ブロックの内面側に水平方向の貫通穴または水平方向の貫通溝を形成することを特徴とする請求項4記載の幼苗植栽用保育ブロック。
- 前記植生基盤材に酸素発生剤又は保水剤が含まれていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の幼苗植栽用保育ブロック。
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