JP2004328088A - 干渉源地球局の位置特定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】静止軌道Oの内側の円軌道Pを地球の回転と逆向きに周回する監視衛星Mを置き、静止通信衛星Aの真下付近を監視衛星Mが通過しているとき、地球局Xが静止通信衛星Aに向けて発した電波は監視衛星Mにも到達し、これを中継して地球方向へ送り返すと、地球局Xの電波が静止通信衛星Aを介して地球局Gに達するに要した時間と監視衛星Mを介して地球局Gに到達するに要した時間との差を測定でき、これより等価的に静止通信衛星Aから地球局Xに至る距離AXと、監視衛星Mから地球局Xに至る距離MXとの差AX−MXが求まり、地図上に解曲線が引ける。静止通信衛星Aの真下付近を監視衛星Mが通過する過程で解曲線を複数描くと、それらの交点として地球局Xの位置が特定できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地球局が送信した電波が、運用中の静止通信衛星に対して干渉を与えているとき、その地球局の地図上での位置を、監視衛星を用いて特定する方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
静止軌道上で運用中の静止通信衛星に対して、地球局が送信した電波が干渉を与えると、通信回線に障害が生じ、最悪の場合は回線断に至る。このことは衛星通信において大きな潜在的問題である。電波干渉が発生したとき、その対策をとるためには、問題の地球局が地図上のどこにあるかを知るのが効果的である。干渉源地球局の位置を特定するための方法として、干渉源地球局から干渉を受ける静止通信衛星が2つあり、それら2つの静止通信衛星からの電波を受信する地球局がある場合に、それぞれの静止通信衛星が干渉源地球局から干渉電波を受ける遅延差を用いて干渉源地球局の地図上の位置を特定する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
ウィリアム・ダブリュ.・スミス,ジュニア(WILLIAM W. SMITH,JR)、ポール・ジー.・ステッフス(PAUL G. STEFFES),衛星干渉評定システムのための時間遅延技術(Time Delay Techniques for Satellite Interference Location System),米国電気電子技術者協会 航空宇宙電子システム報告(IEEE TRANSACTIONS ON AEROSPACE AND ELECTRONIC SYSTEMS)Vol.AES−25,No.2 1989年3月,p.224−p.231
【0004】
上述した従来技術である干渉源地球局の位置特定方法を以下に説明する。図6において、地球Tの地表面にある地球局Xが送信した電波が、静止軌道O上にある静止通信衛星Aに干渉を与えているとする。また、静止通信衛星Aの付近には別の静止通信衛星Bがあって、静止通信衛星A,Bは同じ周波数帯で運用しているとする。
【0005】
このとき、静止通信衛星Bもまた低レベルながら、地球局Xからの干渉電波を受ける。なぜなら、一般に送信アンテナはメインローブのほかにサイドローブをもつため、静止通信衛星Aと静止通信衛星Bが地球局Xのアンテナサイドローブの広がり範囲内にあれば、静止通信衛星Bにも電波が入感するのである。従って、干渉源地球局である地球局Xからの電波を、静止通信衛星Aと静止通信衛星Bの下り回線を通じて共に地球局Gにおいて受信したならば、地球局Xの電波が静止通信衛星Aを介して地球局Gに到達するのに要した時間と、地球教Xの電波が静止通信衛星Bを介して地球局Gに到達するのに要した時間との差(遅延時間)を、地球局Gで測定し得る。
【0006】
ここで、静止通信衛星A,Bの位置が分かっているとすると、上記のように測定した遅延時間により等価的に、静止通信衛星Aから地球局Xに至る距離AXと、静止通信衛星Bから地球局Xに至る距離BXとの差AX−BXを測定したとみなしてよい。このように測定した距離差に基づいて、地図上における地球局Xの位置を特定するのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の干渉源地球局の位置特定方法には、次のような欠点があった。まず、静止通信衛星Aと同じ周波数帯で運用する静止通信衛星Bが軌道上に存在していても、静止通信衛星Aと静止通信衛星Bの間隔が地球局Xのアンテナサイドローブの広がりに比べて大きかったならば、静止通信衛星Bには地球局Xの電波が入感しないから、上記の距離差の測定は不可能である。つまり、静止衛星軌道上における静止通信衛星の配置状況と、干渉源地球局の位置および電波の送信特性と、干渉源地球局の位置特定を行う地球局の位置、といった諸条件が満たされていなければ、上記の方法は適用できないのである。
【0008】
また、上記の距離差測定ができた場合には、その距離差を満たす地表面上(地図上)の点の集合として、一本の曲線(ほぼ直線と看做しうる場合も含む)が規定され、この地図上に描いた曲線(以下、この曲線を解曲線と称する。)上のどこかに、地球局Xが位置すると判断できるものの、地図上の一点として地球局Xの位置を特定することは出来ない。なお、上記の解曲線の現れ方は、干渉源地球局に対する静止通信衛星Aと静止通信衛星Bの位置に依存する。なかでも特に、図7に示すように、地球局Xから見上げて観察したとき、静止通信衛星Aと静止通信衛星Bを結ぶ線分がどの方向を指すかということに依存する。
【0009】
さて、静止静止通信衛星といえども実際には、地球Tに対してわずかに動いており、静止軌道Oから微動することとなる。たとえば、1回目の距離差の測定を行ったとき、静止通信衛星Aと静止通信衛星Bは、図7において、それぞれA1とB1にあり、これに対応して地図上に解曲線が1つ描かれたとする。時間が経過した後に、2回目の距離差の測定を行うと、静止通信衛星Aと静止通信衛星Bの位置は、図7で、例えばA2とB2のようにそれぞれ変わったとすると、それに応じて地図上には1つ目の解曲線と異なる解曲線が描かれる。
【0010】
よって、原理上は、2つの解曲線の交点上に地球局Xがあると特定されるのであるが、実際には、図7においてA1からA2への静止通信衛星Aの動きと、B1からB2への静止通信衛星Bの動きは、共に地心から見て0.1度程度を超え得ないのに対し、静止通信衛星Aと静止通信衛星Bの間隔は数度(典型的には4度)あるため、線分A1B1と線分A2B2の指す方向はわずかな違いしかもたないから、上記の2つの解曲線は、たとえ異なっていてもその交わりかたは平行に近い。すなわち、地球局Xの位置を地図上の一点に特定するのは事実上不可能であり、実質的には、1つの解曲線上に干渉源地球局(地球局X)があることを知るに止まり、その位置を狭く絞り込むのは困難である。
【0011】
以上のように、従来の干渉源地球局の位置特定方法では、以下のような欠点があったのである。▲1▼:干渉源地球局の位置特定は、行い得る場合と行い得ない場合があり、それは軌道上の静止通信衛星の配置状況等に依存する。▲2▼:たとえ干渉源地球局の位置特定を行い得たとしても、その特定は1次元的にとどまり、2次元的な位置特定は難しい。
【0012】
そこで、本発明は、静止軌道上の衛星配置状況等に依存することなく、干渉源地球局の位置特定を好適に行い得る干渉源地球局の位置特定方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、静止軌道上の静止通信衛星に干渉を与える電波を発する地球局である干渉源地球局の位置を、地上の他の地球局である監視地球局により特定する干渉源地球局の位置特定方法であって、静止軌道より高度が低い円軌道上を地球と逆向きに周回し、干渉源地球局からの干渉電波を受ける被干渉衛星が使用する周波数とは異なる周波数で下り回線の通信を行う監視衛星を置き、上記監視衛星が、被干渉衛星の真下を通過する過程で、少なくとも2回以上、干渉源地球局から到来した電波を中継して地球方向へ送り返し、上記監視衛星からの下り回線と被干渉衛星からの下り回線を共に監視地球局によって受信する毎に、干渉源地球局が発した電波が被干渉衛星を介して監視地球局に至るに要した時間と、干渉源地球局が発した電波が監視衛星を介して監視地球局に至るに要した時間の差を測定し、その時間の差の測定に基づいて、被干渉衛星から干渉源地球局に至る距離と、監視衛星から干渉源地球局に至る距離の差を求め、その求めた距離の差に基づいて、干渉源地球局が存在する可能性のある点の集合である解曲線を地図上に引き、上記監視衛星からの下り回線と被干渉衛星からの下り回線を共に監視地球局によって受信する毎に引かれた複数の解曲線の交点として、干渉源地球局の位置を特定するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の干渉源地球局の位置特定方法において、上記監視衛星の軌道は、赤道面から傾斜させた円軌道であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の干渉源地球局の位置特定方法において、第1監視衛星が赤道面から傾斜する円軌道を周回するときに、赤道面から十分に離れていて、干渉源地球局と第1監視衛星と被干渉衛星が一直線に並ばない範囲である稼働領域が全周の半分以上となるように第1監視衛星の軌道の傾斜角を設定し、上記第1監視衛星による稼働領域とならない範囲が稼働領域となるように周回軌道を設定した第2監視衛星を設けるようにしたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る干渉源地球局の位置特定方法の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1において、静止軌道Oにある静止通信衛星Aが、地球局X(干渉源地球局)からの干渉電波を受けている被干渉衛星であるとする。この図は、自転する地球に紙面が貼り付いているものとして、北極を見下ろすように描いている。よって図上で地球局Xの位置は動かず、静止通信衛星もA点にあってほとんど動かない。
【0018】
また、静止軌道Oの内側の円軌道上に、監視用の通信衛星として監視衛星Mを置き、監視衛星Mは地球の回転と逆向きに軌道Pを周回させる。一例として、監視衛星Mの軌道は静止軌道(約36000km)より2000km下にあるとすると、監視衛星Mは静止通信衛星Aの真下を約11時間30分に1回の割合で通過する。静止通信衛星Aの真下付近を監視衛星Mが通過しているとき、地球局Xが静止通信衛星Aに向けて発した電波は監視衛星Mにも到達する。監視衛星Mは、静止通信衛星Aと同様に、地球から送られてきた電波を中継して地球方向へ送り返す。ただし、監視衛星Mの下り回線は、静止通信衛星Aと異なる周波数を用いるものとし、監視衛星Mからの電波と静止通信衛星Aからの電波を識別して受信できるようにしておく。
【0019】
このとき、静止通信衛星Aからの中継電波と監視衛星Mの下り回線を共に地球局Gで受信したならば、地球局Xの電波が静止通信衛星Aを介して地球局Gに達するに要した時間と、地球局Xの電波が監視衛星Mを介して地球局Gに到達するに要した時間との差を測定し得る。よって、地球局Xからの干渉電波受信時における静止通信衛星Aと監視衛星Mの位置が分かっているとすると、上記の時間差測定により、等価的に静止通信衛星Aから地球局Xに至る距離AXと、監視衛星Mから地球局Xに至る距離MXとの差AX−MXが測定される。この測定を、以下では単に距離差測定と称する。
【0020】
図2は、監視衛星Mが静止通信衛星Aの真下付近を通過中のとき、それを赤道面Eに沿って観察したもので、地球Tと静止通信衛星Aは紙面に固定されているが、監視衛星Mは紙面をよぎって手前に出てくるように動く。そのとき地球局Xから静止通信衛星A,監視衛星Mを見上げて観察すると、図3のようになって、監視衛星Mは静止通信衛星Aの下側を、図中の左側から右側へ、順にM1,M2,M3のように通過する。監視衛星Mが、M1とM3の位置にある時に、それぞれ、上述による距離差測定を行うと、地図上に2つの解曲線が引かれる。線分M1Aと線分M3Aが指す方向は大きく異なることから、地図上に引いた2つの解曲線も大きな角をもって互いに交わることとなり、その結果、地球局Xの位置を1点に特定することが可能となる。実際には、監視衛星MがM1からM2を経てM3に至るまでの間に多数回の距離差測定を行い得るので、多数の解曲線が共通に交わる点として地球局Xの位置特定をさらに絞り込むことが可能である。
【0021】
上述したように、静止軌道Oの真下約2000kmで地球の時点方向と逆向きの円軌道Pを有する監視衛星Mを用いた干渉源地球局の位置特定方法によれば、静止通信衛星Aが静止軌道O上のどこにあろうとも、静止通信衛星Aの真下を監視衛星Mが約11時間半ごとに必ず通過するので、干渉源地球局の位置特定をおこなうための地球局Gに相当する地球局を、適切に選んだ複数の場所に設けたならば、静止軌道上のどの静止通信衛星に電波干渉が発生しようとも、干渉源地球局の位置特定を実行することが必ず可能であり、その実行までの待ち時間は11時間半を越えることはない。無論、監視衛星Mを同一軌道上に複数配置しておけば、干渉源地球局の位置特定までの待ち時間を一層短縮できる。
【0022】
したがって、本実施形態に係る干渉源地球局の位置特定方法によれば、静止通信衛星の配置状況等に起因して干渉源地球局の位置特定が不可能となる事態は起きないし、干渉源地球局の位置を複数の解曲線の交点として特定できる。すなわち、本実施形態に係る干渉源地球局の位置特定方法では、従来の干渉源地球局の位置特定方法に内在していた欠点▲1▼,▲2▼を一挙に解決できるのである。しかも、一定の待ち時間の間に干渉源地球局の位置を必ず特定できることは、干渉の迅速な除去につながり、それは衛星通信回線の信頼性を保つ上で効果が大きい。
【0023】
以上の説明では、本発明方法の適用に際して、静止軌道上での静止通信衛星Aの位置と、地球上での地球局Xの位置は、共に任意でよいとしたが、これには唯一の例外がある。それは地球局Xが赤道上に位置する場合である。このような場合には、監視衛星Mが軌道P上を進んでいくと、ある時点で地球局X、監視衛星M、静止通信衛星Aが一直線上に並ぶ。それを図3に即していえば、静止通信衛星Aは監視衛星Mの通過飛跡の上にある。すると、線分M1A,M2A,M3A等の指す方向は皆ひとしくなることから、解曲線も大きく交わらず、従来の方法における欠点▲2▼と類似の状況を生じるため、地球局Xの位置を1点に特定することが難しい。
【0024】
しかしながら、本発明方法では、従来の方法とは異なり、このような状況が生じたことで、地球局Xが赤道上に位置することを特定できる効果をもつ。従って、地図上の1点への位置特定は全く不可能ではない。すなわち、静止軌道よりも内側の円軌道を地球の自転方向と逆向きに回る監視衛星を用いるときは、干渉源地球局が赤道上に位置するときに位置特定の誤差が増すという限定条件のもとで、常に地球局の位置特定が可能である。
【0025】
とはいえ、上記の実施形態では、干渉源地球局が赤道上に位置していた場合に、位置特定の誤差範囲が特に南北方向に広がることを免れない。このような不都合が生じる原因は、上述のとおり地球局X、監視衛星M、静止通信衛星Aが一直線上に並び得ることにある。そこで、このような不都合をも解消することができる干渉源地球局の位置特定方法の実施形態を以下に説明する。
【0026】
図4に示すのは、監視衛星Mの軌道Pを赤道面Eから小さな角度θだけ傾斜させたもので、監視衛星Mが赤道面Eから離れるときの離れ方が、監視衛星Mが軌道P上を進むにつれて周期的に変化することとなる。初めに、監視衛星Mが赤道面から最も離れたMaにあったとすると、それは監視衛星Mが進むにつれてMbを経て、Mcに達した所で赤道面をよぎり、軌道半周回の後には初めの離れ方を南北逆転したMdに達する。その後は反対向きの動きをたどり、軌道半周回の後に初めのMaに戻る。
【0027】
さて、このように軌道Pを一周するあいだ、監視衛星Mは静止軌道上にある色々な静止通信衛星の真下付近を通過する。いま、ある静止通信衛星Aの真下付近を通過したとき、赤道面からの監視衛星Mの離れ方は、例えばMbであったとしよう。線分A−Mbを延長した直線をLとすると、Lは地球と交差しない。これは、地球の子午線を通る面内に監視衛星Mと静止通信衛星Aが位置する場合であっても、干渉源地球局X−監視衛星M−静止通信衛星Aが一直線に並ばないことを意味する。すなわち、任意の場所にある地球局Xが静止通信衛星Aに干渉を与えた場合、地球局Xの位置特定が可能である。このように、監視衛星Mが赤道面Eから十分に離れていて、干渉源地球局Xと監視衛星Mと静止通信衛星Aが一直線に並ばない範囲であれば、地上にある地球局Xの位置特定は絶対に可能となる。
【0028】
なお、監視衛星Mの軌道Pを赤道面Eから傾けても、L(線分A−Mを延長した直線)が地球と交差する範囲においては、干渉源地球局X−監視衛星M−静止通信衛星Aが一直線に並ぶ可能性があるため、上述した第1実施形態と同様に、干渉源地球局Xの位置特定が困難ケースが生ずる。すなわち、監視衛星Mの軌道面からの離れ方に依って、Lが地球と交差しない範囲(干渉源地球局の位置特定が絶対に可能な稼働領域)と、Lが地球と交差する範囲(干渉源地球局の位置特定が困難になるケースが生ずる領域)とに区分けできる。
【0029】
図5(a)は、第1監視衛星Mが軌道を一周するなかで、赤道面からの離れ方が十分となる領域(Lが地球と交差しない範囲)を示すもので、例えば、第1監視衛星Mが赤道面から離れている距離に応じて、2つの稼働領域1a,1bが得られることを示す。本図では、紙面は地球に貼り付けず、慣性空間に立場をおいて遠い所から北極を見下ろしている。もし、稼働領域1aで第1監視衛星Mが赤道面から北側へ離れているなら、稼働領域1bでは第1監視衛星Mは赤道面の南側へ離れる。また、傾斜角度θが大きいほど、稼働領域が軌道の一周回のなかに占める割合が増す。例として、監視衛星Mの軌道Pが静止軌道Oの2000km下にあるとすると、傾斜角度θを0.6度にすれば、稼働領域1aと稼働領域1bを合わせた割合は軌道全周の2分の1を超える。
【0030】
ここで、もう1機の監視衛星である第2監視衛星M′を配備し、その軌道P′の形状および傾斜の角度は第1監視衛星Mと同じにする(図5(b)参照)。そして、第2監視衛星M′の稼働領域2a,2bは、Mの稼働領域1a,1bと相補的になるように配置する。それには、第1監視衛星Mが赤道面をよぎる点と、第2監視衛星M′が赤道面をよぎる点とが、地球Tの中心から見て90度異なるように配置すればよい。こうすれば、地球T上の任意の場所にある地球局が静止軌道O上にある静止通信衛星に干渉を与えたとき、第1監視衛星Mもしくは第2監視衛星M′のどちらか一方の稼働領域でカバーされているので、干渉源地球局の位置特定は必ず可能となる。
【0031】
このように、2機の監視衛星を用いるならば、任意の地球局が任意の静止通信衛星に電波干渉を与えたとき、常に地球局の位置特定が可能である。また、本実施形態のように、監視衛星Mと監視衛星M′の稼働領域を相補的に設けた場合は、地球上のどの位置に干渉源地球局があっても、位置特定を実行するまでの待ち時間は11時間半を越えない。なお、監視衛星Mの軌跡Pおよび監視衛星M′の軌跡P′が赤道面Eと成す傾斜角θを大きくすれば、夫々の稼働領域が広がるので、監視衛星Mと監視衛星M′の両衛星にカバーされる領域が広がることとなり、両衛星の稼働領域に含まれる領域に干渉源地球局があった場合には、その位置特定までの待ち時間を一層短縮できるという利点がある。
【0032】
また、上述した2つの実施形態では、監視衛星の軌道を、静止軌道より2000km低い円軌道に設定して説明したが、監視衛星の軌道は、特にこの高度に限定されるものではない。しかしながら、監視衛星と静止衛星は、互いに逆向きに飛行してすれ違うから、安全を保つために十分な高度差をとる必要がある。その一方で、干渉源地球局→静止通信衛星→監視地球局の伝搬路で着信した信号と、干渉源地球局→監視衛星→監視地球局の伝搬路で着信した信号の時間差検出に際して、両伝搬路の距離が大きく異なるほど、より複雑な信号処理が必要になるという問題があり、この点からは、監視衛星と静止衛星の高度差は少ないほうが良いのである。このような二律背反する条件を共に満たす高度差として、上記実施形態にて述べた2000kmの高度差は望ましいものである。
【0033】
なお、地球の自転に逆行する監視衛星の軌道を、静止軌道の外側に設けても、干渉源地球局の位置特定は可能であるから、技術的には問題ないものの、現実的には、監視衛星の軌道を静止軌道の内側に設定せざるを得ない。なぜなら、一般的に衛星が静止軌道上において寿命を終えるに先だって、その衛星が漂流して運用中の静止衛星に危険を及ぼすことを未然に避けるため、静止軌道の外側へその衛星を移動させる規約となっているからである。実際、静止軌道の外側には使用済みとなった元静止衛星が広い高度範囲に亘って漂流しているので、その中に逆行する監視衛星を置くのは危険である。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る干渉源地球局の位置特定方法によれば、静止軌道より高度が低い円軌道上を地球と逆向きに周回する監視衛星を置き、この監視衛星が被干渉衛星の真下を通過する過程で、少なくとも2回以上、干渉源地球局から到来した電波を中継して地球方向へ送り返し、監視衛星からの下り回線と被干渉衛星からの下り回線を共に監視地球局によって受信する毎に解曲線が得られ、それら複数の解曲線の交点として干渉源地球局の位置を特定するものとしたので、静止通信衛星の配置状況等に起因して干渉源地球局の位置特定が不可能となる事態は起きないし、干渉源地球局の位置を複数の解曲線の交点として特定できる。すなわち、本発明に係る干渉源地球局の位置特定方法では、従来の干渉源地球局の位置特定方法に内在していた欠点▲1▼,▲2▼を一挙に解決できるのである。しかも、一定の待ち時間の間に干渉源地球局の位置を必ず特定できることは、干渉の迅速な除去につながり、それは衛星通信回線の信頼性を保つ上で効果が大きい。
【0035】
また、請求項2に係る干渉源地球局の位置特定方法によれば、監視衛星の軌道を、赤道面から傾斜させた円軌道としたので、赤道面上の干渉源地球局の位置特定が困難となる状態を抑制できる。
【0036】
また、請求項3に係る干渉源地球局の位置特定方法によれば、第1監視衛星が赤道面から傾斜する円軌道を周回するときに、赤道面から十分に離れていて、干渉源地球局と第1監視衛星と被干渉衛星が一直線に並ばない範囲である稼働領域が全周の半分以上となるように第1監視衛星の軌道の傾斜角を設定し、上記第1監視衛星による稼働領域とならない範囲が稼働領域となるように周回軌道を設定した第2監視衛星を設けるようにしたので、地上の全領域で干渉源地球局の位置特定を必ず行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る干渉源地球局の位置特定方法における、静止軌道Oの静止通信衛星Aと軌道Pの監視衛星Mと、地上の地球局Xと地球局Gにおける電波の送受信関係を示す説明図である。
【図2】赤道面に沿って観察した、第1実施形態における、静止通信衛星Aと監視衛星Mと地球局Xの位置関係を示す説明図である。
【図3】地球局Xから見上げて観察した静止通信衛星Aと監視衛星Mの位置関係を示す説明図である。
【図4】赤道面に沿って観察した、第2実施形態における、静止通信衛星Aと監視衛星Mと地球局Xの位置関係を示す説明図である。
【図5】(a)赤道面からθだけ傾斜させた軌道Pを有する監視衛星Mの稼働領域を示す説明図である。(b)赤道面からθだけ傾斜させた軌道P′を有する監視衛星M′の稼働領域を示す説明図である。
【図6】従来の干渉源地球局の位置特定方法における、静止軌道上の静止通信衛星Aと静止通信衛星Bと、地上の地球局Xと地球局Gにおける電波の送受信関係を示す説明図である。
【図7】静止軌道Oに対する静止通信衛星Aと静止通信衛星Bの位置変化の説明図である。
【符号の説明】
A 静止通信衛星
M,M′ 監視衛星
X 地球局(干渉源地球局)
G 地球局(監視地球局)
O 静止軌道
P,P′ 監視衛星M,M′の軌道
1a,1b 監視衛星Mの稼働領域
2a,2b 監視衛星M′の稼働領域
Claims (3)
- 静止軌道上の静止通信衛星に干渉を与える電波を発する地球局である干渉源地球局の位置を、地上の他の地球局である監視地球局により特定する干渉源地球局の位置特定方法であって、
静止軌道より高度が低い円軌道上を地球と逆向きに周回し、干渉源地球局からの干渉電波を受ける被干渉衛星が使用する周波数とは異なる周波数で下り回線の通信を行う監視衛星を置き、
上記監視衛星が、被干渉衛星の真下を通過する過程で、少なくとも2回以上、干渉源地球局から到来した電波を中継して地球方向へ送り返し、
上記監視衛星からの下り回線と被干渉衛星からの下り回線を共に監視地球局によって受信する毎に、干渉源地球局が発した電波が被干渉衛星を介して監視地球局に至るに要した時間と、干渉源地球局が発した電波が監視衛星を介して監視地球局に至るに要した時間の差を測定し、その時間の差の測定に基づいて、被干渉衛星から干渉源地球局に至る距離と、監視衛星から干渉源地球局に至る距離の差を求め、その求めた距離の差に基づいて、干渉源地球局が存在する可能性のある点の集合である解曲線を地図上に引き、
上記監視衛星からの下り回線と被干渉衛星からの下り回線を共に監視地球局によって受信する毎に引かれた複数の解曲線の交点として、干渉源地球局の位置を特定するようにしたことを特徴とする干渉源地球局の位置特定方法。 - 上記監視衛星の軌道は、赤道面から傾斜させた円軌道であることを特徴とする請求項1に記載の干渉源地球局の位置特定方法。
- 第1監視衛星が赤道面から傾斜する円軌道を周回するときに、赤道面から十分に離れていて、干渉源地球局と第1監視衛星と被干渉衛星が一直線に並ばない範囲である稼働領域が全周の半分以上となるように第1監視衛星の軌道の傾斜角を設定し、上記第1監視衛星による稼働領域とならない範囲が稼働領域となるように周回軌道を設定した第2監視衛星を設けるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の干渉源地球局の位置特定方法。
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