JP2004324832A - 歯付ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】ゴム配合物で形成されたベルト本体の歯部表面を繊維織物で被覆した歯付ベルトにおいて、繊維織物の摩擦抵抗を長期にわたって低減させてベルト寿命の向上に寄与する歯付ベルトを提供することを目的とする。
【解決手段】長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、心線3を埋設した背部4とを有し、上記歯部2の表面に歯布5を被覆した歯付ベルト1であり、上記歯布5として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥して第1ゴム層13(コートゴム層)を付着した後、これらを加硫加圧により一体化した構成からなる。
【選択図】 図1
【解決手段】長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、心線3を埋設した背部4とを有し、上記歯部2の表面に歯布5を被覆した歯付ベルト1であり、上記歯布5として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥して第1ゴム層13(コートゴム層)を付着した後、これらを加硫加圧により一体化した構成からなる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は歯付ベルトに係り、特に耐摩耗性および耐歯欠け性を改善した歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンのカム軸及びインジェクションポンプやオイルポンプ、水ポンプ等の補機類を同時に駆動する歯付ベルトにおいては、エンジンの高出力化やエンジンルームのコンパクト化に伴い使用条件が一層厳しくなり、更なる耐久性の向上が要求されてきている。また、一般産業用機械に使用される歯付ベルトも同様である。
【0003】
このような歯付ベルトの故障形態は、心線の疲労によるベルトの切断と過負荷や歯布摩耗による歯欠けに大別される。心線の疲労による切断に対しては、アラミド心線や高強度ガラスの細径心線の使用や耐熱性に優れる水素化ニトリルゴム(H−NBR)配合物の使用、エンジン側の改良としてベルト張力を始動時及び走行時共一定に保つオートテンショナーの使用等により改良され、切断故障の発生は減少している。
【0004】
しかし、歯欠けの発生を改善するために、高強力タイプのナイロン6−6、アラミド繊維を素材した歯布の使用などの対策が施されているものの未だ十分ではない。そこで、歯布を被覆した歯付ベルトの耐歯欠け性を更に向上させるために、歯布表面の低摩擦係数化を図ることが有力視されている。特許文献1には、歯布の織物層の外側にフッ素樹脂を含むポリマーマトリックス層を吹き付け又は塗布によりコーティングする歯付ベルトが提案されている。このフッ素樹脂は、特殊なポリマーマトリックス内に境界層無しに結合され、そしてこのポリマーマトリックスを歯布に結合している。
【0005】
また、特許文献2には、歯布の表面及び内部に繊維化したフッ素樹脂を含むゴム混合物を含浸させ、歯布の裏面を接着層を介してベルト本体のゴム層に結合する歯付ベルトが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
EP0662571B1公報
【特許文献2】
特開平7−151190号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フッ素樹脂がポリマーマトリックスに強固に結合されているため、フッ素樹脂がマトリックスに囲われたままになって、フッ素樹脂による摩擦係数低減作用が十分発揮できなくなるという問題点があった。また、ポリマーマトリックスの材質的制限から、含有できるフッ素樹脂量が少なく、ポリマーマトリックス層の厚みも薄くなり、フッ素樹脂による耐歯欠け性の向上が十分ではないという問題点があった。
【0008】
また特許文献2でも、ゴム混合物中で繊維化したフッ素樹脂が摩擦面に露出する機会が少なく、フッ素樹脂による摩擦係数低減作用が十分ではなくなるという問題点があった。また、フッ素樹脂を繊維化して異物化させずに強度を維持するために、歯布に含浸させるゴム100重量部に対して1〜30重量部程度のフッ素樹脂しか含有させることができず、耐歯欠け性の向上が十分ではないという問題点があった。
【0009】
また、一般産業用及び自動車用の動力伝達用途のVベルト、Vリブドベルトにおいては、ベルト背面とプーリとの摩耗及び異音の発生を防止するために、ベルト背面に繊維織物からなる織物が貼り付けられた構造になっている。この場合も、歯付ベルトと同様に繊維織物の摩擦係数を低減させることによって、耐磨耗性を向上させ、異音を低下させることが要望されているが、有効な対策が提案されていなかった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、ゴム配合物で形成されたベルト本体の歯部表面を繊維織物で被覆した歯付ベルトにおいて、繊維織物の摩擦抵抗を長期にわたって低減させてベルト寿命の向上に寄与する歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1記載の発明では、長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、上記歯布として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥してコートゴム層を付着した後、これらを加硫加圧により一体化した歯付ベルトであり、多量のシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体をレゾルシン−ホルマリンの初期縮合物である樹脂分とゴムラテックスの固形分を介して繊維織物の表裏面および繊維間に集束させることができ,更に金属製プーリと常時接触する歯付ベルトを保護し。低い摩擦係数を長期に維持することができる。
【0012】
本願の請求項2記載の発明は、シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体がレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液のレゾルシン110重量部に対して5〜10重量部含有している歯付ベルトである。
【0013】
本願の請求項3記載の発明は、長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、上記歯布として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を配合したゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥してコートゴム層を付着した後、これらを加硫加圧により一体化した歯付ベルトである。
【0014】
本願の請求項4記載の発明は、第2処理液のコートゴム層の表面に,更にゴム糊に粉末状減摩材を添加した第3処理液に含浸し乾燥させて最外ゴム層を付着し、これらを加硫加圧により一体化した歯付ベルトである。
【0015】
本願の請求項5記載の発明は、上記粉末状減摩材がグラファイト,二硫化モリブデン,ガラスビーズ,セラミック粉体,球状樹脂粉末,アラミド,ポリアミド,ポリエステル,そしてポリベンゾオキサゾールのカット糸又は粉末から選ばれた少なくとも一種である歯付ベルトである。
【0016】
本願の請求項6記載の発明は、第2処理液のゴム糊にイソシアネート化合物もしくはエポキシ化合物が添加されている歯付ベルトであり、処理繊維織物とベルト本体との接着をさらに向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の歯付ベルトを図面に基づいて説明する。図1は歯付ベルトの歯面に被覆された処理繊維織物の拡大断面図であり、図2は歯付ベルトの構造を示す斜視図である。
【0018】
図2は本実施形態に係る歯付ベルトの部分正面図であり、歯付ベルト1は長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、該歯部2と連続する背部4と、背部4に埋設された心線3と、歯部2の表面に被覆された歯布5を有している。歯布5はベルトの長手方向に延在する緯糸と、ベルトの幅方向に延在する経糸とを織成して成る繊維材料を基材として構成される。
【0019】
しかして、本実施例では、まず歯布5を構成している繊維織物を以下の方法によって処理する。
【0020】
(1)図1に示すように、緯糸7と経糸8で形成する繊維織物9をレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス(RFL)処理液中にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節する。その後、150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥する。RFL層10はシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体と、ゴムラテックスを加熱し乾燥して得られたゴム固形物のゴム成分11と、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物の樹脂系接着成分12である。更に、上記繊維織物9をベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液に含浸付着させた後、一対の加圧ロール間を通して第2処理液の付着量を調節する。その後、150〜180°Cで1〜3分間加熱乾燥して第1ゴム層13(コートゴム層)を形成する。
【0021】
前記RFL処理液は、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものであり、この場合レゾルシンとホルマリンのモル比は3/1〜1/3にすることが接着力を高めるうえで好適である。また、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物は、これをゴムラテックスのゴム分100重量部に対してその樹脂分が5〜50重量部になるようにゴムラテックスと混合したものである。
【0022】
ゴム成分11を形成するゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体(VP)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、水素添加NBR(H−NBR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、天然ゴム等の一種又は二種以上のブレンド物が使用される。
【0023】
(2)繊維織物9をRFL処理液中にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節し、その後150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥してRFL層10を形成する。更に、シリコーン−アクリル樹脂共重合体を配合したベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液を付着させた第1ゴム層13を形成する。
【0024】
シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体は、シリコーン樹脂の優れた表面摺動性の効果とアクリル部でポリマーとの相溶性をもたせた平均粒径30〜250μmの粉体であり、例えば市販品として日信化学工業社製のシャリーヌRが知られている。
【0025】
RFL処理液に対するシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体の配合量は、レゾルシン110質量部に5〜20質量部、より好ましくは5〜10質量部である。シリコーン−アクリル樹脂共重合体の添加量が5質量部未満の場合には、歯布5とプーリ表面との摩擦係数の低下が期待できず、また一方20質量部を超えると、接着力の低下が起こる。またゴム糊に対する配合量はゴム100重量部に対し5〜30重量部,より好ましくは5〜20重量部である。
【0026】
(3)繊維織物9をRFL処理液にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節し、その後150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥してRFL層10を形成し、更にベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液を付着させた第1ゴム層13を形成し、更に上記第1ゴム層13の表面に、ゴム糊にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体以外の粉末状減摩材を添加した第3処理液に含浸し乾燥させて最外ゴム層14を付着する。
【0027】
上記粉末状減摩材としては、層状構造のグラファイト、二硫化モリブデン、ガラスビーズ、セラミック粉末、球状フェノール樹脂粉末及びアラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、繊維のカット糸又は粉末の一種以上が例示できる。特にグラファイトはゴム成分との馴染みもよく、ベルトの耐久性をより向上させる。この添加量は、ゴム配合物のゴム成分100重量部に対して50〜400重量部が好ましい。
【0028】
(5)繊維織物9をRFL処理液中にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節し、その後150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥してRFL層10を形成し、更にイソシアネート化合物もしくはエポキシ化合物を添加したベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液に含浸し150〜180°Cで1〜3分間加熱乾燥して第1ゴム層13を形成し、更に上記第1ゴム層13の表面に、ゴム糊に粉末状減摩材を添加した第3処理液に含浸し80〜150°Cで1〜3分間加熱乾燥させて最外ゴム層14を付着する。
【0029】
ここで使用するイソシアネート化合物は、シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を付着処理した繊維織物とベルト本体との接着力を向上させるものであり、その具体例としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。このイソシアネート化合物もトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。また、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。
【0030】
また、エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール.ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン.ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物などである。上記エポキシ化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0031】
歯付ベルトの製造方法は、上記の処理した繊維織物をミシンジョントして筒状にしたものを溝条部と凸条部を交互に有するモールドに挿入した後、コードからなる心線をスピニングし、その上にベルト本体を形成する未加硫ゴムシートを巻き付ける。その後、ジャケットを被せた後、加硫工程に移される。加硫時に、未加硫ゴムシートを繊維織物とともに溝条部へ流し込み、処理繊維織物をベルト本体と一体的に加硫してベルトスリーブを作製する。
加硫したベルトスリーブをモールドから抜き取った後、これを切断機の2つの軸に取り付け、張力を与えて回転させながら、カッターによって所定幅に切断して歯付ベルトを作製する。
【0032】
歯布5の緯糸7、経糸8等を形成する繊維織物の材質としては、それぞれナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、綿等の何れか又はこれらの組み合わせが採用できる。繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでも良く、単独組成の撚糸又は混撚糸、混紡糸の何れであっても良く、また織成構成は綾織り、繻子織り、平織り等何れでもよい。
【0033】
自動車用歯付ベルトであって、使用環境が100℃以上の高温で、150,000km以上の長寿命を要求される場合、ベルト本体にH−NBRが使用されるが、歯布に含浸付着されるRFL処理液には、H−NBRとCSMのラテックスと、VPラテックスとの通常のブレンド物を使用すると、長寿命を達成できる。一方、一般産業用Vベルトであって、ベルト本体に天然ゴム及びSBRを使用している場合、ベルト背面を被覆する背布に含浸被覆されるRFL処理液には、VPラテックス、SBRラテックス及びこれらのブレンド物を使用することができる。
【0034】
なお、ベルト本体を形成するゴム配合物の材質には特に制限はなく、使用条件に応じて適切なものが適宜選択される。自動車エンジン用及び各種エンジン用歯付ベルトの場合、耐熱性と耐油性を備えたH−NBR、CR、CSM等が使用される。一般産業用機械に用いる歯付ベルトには、H−NBR、CR、CSM以外に、NBR、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、SBR、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、フッ素ゴム、シリコンゴム等何れの場合も使用可能である。このような歯付ベルトの場合、図1で説明した歯布の使用が有効である。
【0035】
また、ベルト本体の内部に埋設される心線3に制限はなく、一般にはガラス心線及びアラミド心線が使用される。また、ポリベンゾオキサゾール、ポリパラフェニレンナフタレート、ポリエステル、アクリル、カーボン、スチールを組成とする撚コードの何れでも使用できる。ガラス心線の組成はEガラス、Sガラス(高強度ガラス)何れでも良く、フィラメントの太さ及びフィラメントの収束本数及びストランド本数に制限されない。また、接着処理剤及び屈曲時のガラスフィラメントの保護材として使用されるサイジング剤、RFL、オーバーコート剤等にも制限されない。一方、アラミド心線においても、材質の分子構造の違いや心線構成及びフィラメントの大きさや接着処理剤の違いによっても制限されない。他の組成からなる心線の撚コードについても同様に特別の制限はない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、目的を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0037】
歯布として経糸に1.5デニールのパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束した200デニールのフィラメント糸と、そして緯糸にテクノーラ(200D/2本、コーネックス30番手/1本(紡績糸)、スパンデックス140D/1本からなる合撚糸を使用し、織時組織(経110本/5cm、緯120本/5cm)からなる2/2綾織帆布を製織したものを使用した。製織後、帆布を水中にて振動を与えて製織時の幅の約1/2幅まで収縮させて歯布とした。また、表1に歯部と背部に使用するゴム配合物を、表2にRFL処理液(第1処理液)を、表3にゴム糊(第2処理液)、そして表4にゴム糊(第3処理液)を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
実施例A
上記繊維材料を、RFL処理液に浸漬し、120℃にて乾燥後、180℃にて2分間熱処理した。次に、表3から表4の順に従ってゴム層を形成し、ベルト本体被覆用の処理繊維材料(歯布)とした。
【0043】
次に、ベルト作製用金型に上記の歯布を巻き付け、SZ撚りの一対のコードをRFL及びイソシアネートにて接着処理された心線(ガラス繊維、1.2mm直径)を一定ピッチ(1.4mm)でスパイラルに一定張力で巻き付け、その上に表1の配合からなる2.5mmのゴムシートを貼り付けた。更に、加硫缶に投入して通常の圧入方式により歯形を形成させた後160℃にて30分加圧加硫して、ベルト背面を一定厚さに研磨し一定幅にカットして歯付きベルトを得た。
【0044】
作製したベルトのサイズは、ベルト幅15mm、ベルト歯形Y(8.0mmピッチ)、歯数105であり、通常105Y15と表示される。ベルト走行評価で使用する走行試験機は、駆動プーリ(歯数21)と従動プーリ(歯数42)間に歯付ベルトを巻き付け、この歯付ベルトの背面にテンションプーリ(直径52mm)を当接したものであり、該ベルトを雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数7,200rpm、ベルトの初張力300kgfにて1000時間走行させ、歯面の摩耗による歯欠けに至る走行時間を測定した。その結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
この結果、実施例では、シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を使用した歯布を使用した場合には、比較例1に比べて高負荷走行寿命時間が大幅に延びていることが判る。
【0047】
【発明の効果】
上記本願発明の歯付ベルトによると、上記歯布としてシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を繊維織物の表裏面及び繊維間に集束させることにより、歯付ベルトの歯部の摩耗を保護し、低い摩擦係数を長期に維持することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の製造方法によって得られた歯付ベルトの歯面に被覆された処理繊維織物の拡大断面図である。
【図2】本発明の製造方法によって得られた歯付ベルトの全体構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
7 緯糸
8 経糸
9 繊維織物
10 RFL層
13 第1ゴム層
14 第2ゴム層
【発明の属する技術分野】
本発明は歯付ベルトに係り、特に耐摩耗性および耐歯欠け性を改善した歯付ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンのカム軸及びインジェクションポンプやオイルポンプ、水ポンプ等の補機類を同時に駆動する歯付ベルトにおいては、エンジンの高出力化やエンジンルームのコンパクト化に伴い使用条件が一層厳しくなり、更なる耐久性の向上が要求されてきている。また、一般産業用機械に使用される歯付ベルトも同様である。
【0003】
このような歯付ベルトの故障形態は、心線の疲労によるベルトの切断と過負荷や歯布摩耗による歯欠けに大別される。心線の疲労による切断に対しては、アラミド心線や高強度ガラスの細径心線の使用や耐熱性に優れる水素化ニトリルゴム(H−NBR)配合物の使用、エンジン側の改良としてベルト張力を始動時及び走行時共一定に保つオートテンショナーの使用等により改良され、切断故障の発生は減少している。
【0004】
しかし、歯欠けの発生を改善するために、高強力タイプのナイロン6−6、アラミド繊維を素材した歯布の使用などの対策が施されているものの未だ十分ではない。そこで、歯布を被覆した歯付ベルトの耐歯欠け性を更に向上させるために、歯布表面の低摩擦係数化を図ることが有力視されている。特許文献1には、歯布の織物層の外側にフッ素樹脂を含むポリマーマトリックス層を吹き付け又は塗布によりコーティングする歯付ベルトが提案されている。このフッ素樹脂は、特殊なポリマーマトリックス内に境界層無しに結合され、そしてこのポリマーマトリックスを歯布に結合している。
【0005】
また、特許文献2には、歯布の表面及び内部に繊維化したフッ素樹脂を含むゴム混合物を含浸させ、歯布の裏面を接着層を介してベルト本体のゴム層に結合する歯付ベルトが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
EP0662571B1公報
【特許文献2】
特開平7−151190号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フッ素樹脂がポリマーマトリックスに強固に結合されているため、フッ素樹脂がマトリックスに囲われたままになって、フッ素樹脂による摩擦係数低減作用が十分発揮できなくなるという問題点があった。また、ポリマーマトリックスの材質的制限から、含有できるフッ素樹脂量が少なく、ポリマーマトリックス層の厚みも薄くなり、フッ素樹脂による耐歯欠け性の向上が十分ではないという問題点があった。
【0008】
また特許文献2でも、ゴム混合物中で繊維化したフッ素樹脂が摩擦面に露出する機会が少なく、フッ素樹脂による摩擦係数低減作用が十分ではなくなるという問題点があった。また、フッ素樹脂を繊維化して異物化させずに強度を維持するために、歯布に含浸させるゴム100重量部に対して1〜30重量部程度のフッ素樹脂しか含有させることができず、耐歯欠け性の向上が十分ではないという問題点があった。
【0009】
また、一般産業用及び自動車用の動力伝達用途のVベルト、Vリブドベルトにおいては、ベルト背面とプーリとの摩耗及び異音の発生を防止するために、ベルト背面に繊維織物からなる織物が貼り付けられた構造になっている。この場合も、歯付ベルトと同様に繊維織物の摩擦係数を低減させることによって、耐磨耗性を向上させ、異音を低下させることが要望されているが、有効な対策が提案されていなかった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、ゴム配合物で形成されたベルト本体の歯部表面を繊維織物で被覆した歯付ベルトにおいて、繊維織物の摩擦抵抗を長期にわたって低減させてベルト寿命の向上に寄与する歯付ベルトを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願の請求項1記載の発明では、長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、上記歯布として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥してコートゴム層を付着した後、これらを加硫加圧により一体化した歯付ベルトであり、多量のシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体をレゾルシン−ホルマリンの初期縮合物である樹脂分とゴムラテックスの固形分を介して繊維織物の表裏面および繊維間に集束させることができ,更に金属製プーリと常時接触する歯付ベルトを保護し。低い摩擦係数を長期に維持することができる。
【0012】
本願の請求項2記載の発明は、シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体がレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液のレゾルシン110重量部に対して5〜10重量部含有している歯付ベルトである。
【0013】
本願の請求項3記載の発明は、長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、上記歯布として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を配合したゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥してコートゴム層を付着した後、これらを加硫加圧により一体化した歯付ベルトである。
【0014】
本願の請求項4記載の発明は、第2処理液のコートゴム層の表面に,更にゴム糊に粉末状減摩材を添加した第3処理液に含浸し乾燥させて最外ゴム層を付着し、これらを加硫加圧により一体化した歯付ベルトである。
【0015】
本願の請求項5記載の発明は、上記粉末状減摩材がグラファイト,二硫化モリブデン,ガラスビーズ,セラミック粉体,球状樹脂粉末,アラミド,ポリアミド,ポリエステル,そしてポリベンゾオキサゾールのカット糸又は粉末から選ばれた少なくとも一種である歯付ベルトである。
【0016】
本願の請求項6記載の発明は、第2処理液のゴム糊にイソシアネート化合物もしくはエポキシ化合物が添加されている歯付ベルトであり、処理繊維織物とベルト本体との接着をさらに向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の歯付ベルトを図面に基づいて説明する。図1は歯付ベルトの歯面に被覆された処理繊維織物の拡大断面図であり、図2は歯付ベルトの構造を示す斜視図である。
【0018】
図2は本実施形態に係る歯付ベルトの部分正面図であり、歯付ベルト1は長手方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部2と、該歯部2と連続する背部4と、背部4に埋設された心線3と、歯部2の表面に被覆された歯布5を有している。歯布5はベルトの長手方向に延在する緯糸と、ベルトの幅方向に延在する経糸とを織成して成る繊維材料を基材として構成される。
【0019】
しかして、本実施例では、まず歯布5を構成している繊維織物を以下の方法によって処理する。
【0020】
(1)図1に示すように、緯糸7と経糸8で形成する繊維織物9をレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス(RFL)処理液中にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節する。その後、150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥する。RFL層10はシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体と、ゴムラテックスを加熱し乾燥して得られたゴム固形物のゴム成分11と、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物の樹脂系接着成分12である。更に、上記繊維織物9をベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液に含浸付着させた後、一対の加圧ロール間を通して第2処理液の付着量を調節する。その後、150〜180°Cで1〜3分間加熱乾燥して第1ゴム層13(コートゴム層)を形成する。
【0021】
前記RFL処理液は、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物とゴムラテックスとを混合したものであり、この場合レゾルシンとホルマリンのモル比は3/1〜1/3にすることが接着力を高めるうえで好適である。また、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物は、これをゴムラテックスのゴム分100重量部に対してその樹脂分が5〜50重量部になるようにゴムラテックスと混合したものである。
【0022】
ゴム成分11を形成するゴムラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体(VP)、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(NBR)、水素添加NBR(H−NBR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、天然ゴム等の一種又は二種以上のブレンド物が使用される。
【0023】
(2)繊維織物9をRFL処理液中にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節し、その後150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥してRFL層10を形成する。更に、シリコーン−アクリル樹脂共重合体を配合したベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液を付着させた第1ゴム層13を形成する。
【0024】
シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体は、シリコーン樹脂の優れた表面摺動性の効果とアクリル部でポリマーとの相溶性をもたせた平均粒径30〜250μmの粉体であり、例えば市販品として日信化学工業社製のシャリーヌRが知られている。
【0025】
RFL処理液に対するシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体の配合量は、レゾルシン110質量部に5〜20質量部、より好ましくは5〜10質量部である。シリコーン−アクリル樹脂共重合体の添加量が5質量部未満の場合には、歯布5とプーリ表面との摩擦係数の低下が期待できず、また一方20質量部を超えると、接着力の低下が起こる。またゴム糊に対する配合量はゴム100重量部に対し5〜30重量部,より好ましくは5〜20重量部である。
【0026】
(3)繊維織物9をRFL処理液にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節し、その後150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥してRFL層10を形成し、更にベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液を付着させた第1ゴム層13を形成し、更に上記第1ゴム層13の表面に、ゴム糊にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体以外の粉末状減摩材を添加した第3処理液に含浸し乾燥させて最外ゴム層14を付着する。
【0027】
上記粉末状減摩材としては、層状構造のグラファイト、二硫化モリブデン、ガラスビーズ、セラミック粉末、球状フェノール樹脂粉末及びアラミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、繊維のカット糸又は粉末の一種以上が例示できる。特にグラファイトはゴム成分との馴染みもよく、ベルトの耐久性をより向上させる。この添加量は、ゴム配合物のゴム成分100重量部に対して50〜400重量部が好ましい。
【0028】
(5)繊維織物9をRFL処理液中にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を分散した第1処理液に含浸した後、一対の加圧ロール間を通して第1処理液の付着量を調節し、その後150〜200°Cで1〜3分間加熱乾燥してRFL層10を形成し、更にイソシアネート化合物もしくはエポキシ化合物を添加したベルト本体と同種のゴム配合物をメチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の溶剤に溶解し、混合したゴム糊からなる第2処理液に含浸し150〜180°Cで1〜3分間加熱乾燥して第1ゴム層13を形成し、更に上記第1ゴム層13の表面に、ゴム糊に粉末状減摩材を添加した第3処理液に含浸し80〜150°Cで1〜3分間加熱乾燥させて最外ゴム層14を付着する。
【0029】
ここで使用するイソシアネート化合物は、シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を付着処理した繊維織物とベルト本体との接着力を向上させるものであり、その具体例としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。このイソシアネート化合物もトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。また、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。
【0030】
また、エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール.ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン.ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物などである。上記エポキシ化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0031】
歯付ベルトの製造方法は、上記の処理した繊維織物をミシンジョントして筒状にしたものを溝条部と凸条部を交互に有するモールドに挿入した後、コードからなる心線をスピニングし、その上にベルト本体を形成する未加硫ゴムシートを巻き付ける。その後、ジャケットを被せた後、加硫工程に移される。加硫時に、未加硫ゴムシートを繊維織物とともに溝条部へ流し込み、処理繊維織物をベルト本体と一体的に加硫してベルトスリーブを作製する。
加硫したベルトスリーブをモールドから抜き取った後、これを切断機の2つの軸に取り付け、張力を与えて回転させながら、カッターによって所定幅に切断して歯付ベルトを作製する。
【0032】
歯布5の緯糸7、経糸8等を形成する繊維織物の材質としては、それぞれナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、綿等の何れか又はこれらの組み合わせが採用できる。繊維の形態は、フィラメント糸及び紡績糸の何れでも良く、単独組成の撚糸又は混撚糸、混紡糸の何れであっても良く、また織成構成は綾織り、繻子織り、平織り等何れでもよい。
【0033】
自動車用歯付ベルトであって、使用環境が100℃以上の高温で、150,000km以上の長寿命を要求される場合、ベルト本体にH−NBRが使用されるが、歯布に含浸付着されるRFL処理液には、H−NBRとCSMのラテックスと、VPラテックスとの通常のブレンド物を使用すると、長寿命を達成できる。一方、一般産業用Vベルトであって、ベルト本体に天然ゴム及びSBRを使用している場合、ベルト背面を被覆する背布に含浸被覆されるRFL処理液には、VPラテックス、SBRラテックス及びこれらのブレンド物を使用することができる。
【0034】
なお、ベルト本体を形成するゴム配合物の材質には特に制限はなく、使用条件に応じて適切なものが適宜選択される。自動車エンジン用及び各種エンジン用歯付ベルトの場合、耐熱性と耐油性を備えたH−NBR、CR、CSM等が使用される。一般産業用機械に用いる歯付ベルトには、H−NBR、CR、CSM以外に、NBR、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、エチレンプロピレン共重合体(EPR)、SBR、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、フッ素ゴム、シリコンゴム等何れの場合も使用可能である。このような歯付ベルトの場合、図1で説明した歯布の使用が有効である。
【0035】
また、ベルト本体の内部に埋設される心線3に制限はなく、一般にはガラス心線及びアラミド心線が使用される。また、ポリベンゾオキサゾール、ポリパラフェニレンナフタレート、ポリエステル、アクリル、カーボン、スチールを組成とする撚コードの何れでも使用できる。ガラス心線の組成はEガラス、Sガラス(高強度ガラス)何れでも良く、フィラメントの太さ及びフィラメントの収束本数及びストランド本数に制限されない。また、接着処理剤及び屈曲時のガラスフィラメントの保護材として使用されるサイジング剤、RFL、オーバーコート剤等にも制限されない。一方、アラミド心線においても、材質の分子構造の違いや心線構成及びフィラメントの大きさや接着処理剤の違いによっても制限されない。他の組成からなる心線の撚コードについても同様に特別の制限はない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、目的を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0037】
歯布として経糸に1.5デニールのパラ系アラミド繊維のフィラメント原糸を収束した200デニールのフィラメント糸と、そして緯糸にテクノーラ(200D/2本、コーネックス30番手/1本(紡績糸)、スパンデックス140D/1本からなる合撚糸を使用し、織時組織(経110本/5cm、緯120本/5cm)からなる2/2綾織帆布を製織したものを使用した。製織後、帆布を水中にて振動を与えて製織時の幅の約1/2幅まで収縮させて歯布とした。また、表1に歯部と背部に使用するゴム配合物を、表2にRFL処理液(第1処理液)を、表3にゴム糊(第2処理液)、そして表4にゴム糊(第3処理液)を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
実施例A
上記繊維材料を、RFL処理液に浸漬し、120℃にて乾燥後、180℃にて2分間熱処理した。次に、表3から表4の順に従ってゴム層を形成し、ベルト本体被覆用の処理繊維材料(歯布)とした。
【0043】
次に、ベルト作製用金型に上記の歯布を巻き付け、SZ撚りの一対のコードをRFL及びイソシアネートにて接着処理された心線(ガラス繊維、1.2mm直径)を一定ピッチ(1.4mm)でスパイラルに一定張力で巻き付け、その上に表1の配合からなる2.5mmのゴムシートを貼り付けた。更に、加硫缶に投入して通常の圧入方式により歯形を形成させた後160℃にて30分加圧加硫して、ベルト背面を一定厚さに研磨し一定幅にカットして歯付きベルトを得た。
【0044】
作製したベルトのサイズは、ベルト幅15mm、ベルト歯形Y(8.0mmピッチ)、歯数105であり、通常105Y15と表示される。ベルト走行評価で使用する走行試験機は、駆動プーリ(歯数21)と従動プーリ(歯数42)間に歯付ベルトを巻き付け、この歯付ベルトの背面にテンションプーリ(直径52mm)を当接したものであり、該ベルトを雰囲気温度120℃、駆動プーリの回転数7,200rpm、ベルトの初張力300kgfにて1000時間走行させ、歯面の摩耗による歯欠けに至る走行時間を測定した。その結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
この結果、実施例では、シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を使用した歯布を使用した場合には、比較例1に比べて高負荷走行寿命時間が大幅に延びていることが判る。
【0047】
【発明の効果】
上記本願発明の歯付ベルトによると、上記歯布としてシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を繊維織物の表裏面及び繊維間に集束させることにより、歯付ベルトの歯部の摩耗を保護し、低い摩擦係数を長期に維持することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の製造方法によって得られた歯付ベルトの歯面に被覆された処理繊維織物の拡大断面図である。
【図2】本発明の製造方法によって得られた歯付ベルトの全体構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 心線
4 背部
5 歯布
7 緯糸
8 経糸
9 繊維織物
10 RFL層
13 第1ゴム層
14 第2ゴム層
Claims (6)
- 長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、上記歯布として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥してコートゴム層を付着した後、これらを加硫加圧により一体化したことを特徴とする歯付ベルト。
- シリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体がレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液のレゾルシン110重量部に対して5〜10重量部含有している請求項1記載の歯付ベルト。
- 長さ方向に沿って所定間隔で配置した複数の歯部と、心線を埋設した背部とを有し、上記歯部の表面に歯布を被覆した歯付ベルトにおいて、上記歯布として未処理繊維織物をシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体が分散されたレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液の第1処理液に含浸し乾燥し、更にシリコーン−アクリル樹脂共重合体粉体を配合したゴム糊からなる第2処理液に含浸し乾燥してコートゴム層を付着した後、これらを加硫加圧により一体化したことを特徴とする歯付ベルト。
- 第2処理液のコートゴム層の表面に、更にゴム糊に粉末状減摩材を添加した第3処理液に含浸し乾燥させて最外ゴム層を付着し、これらを加硫加圧により一体化した請求項3記載の歯付ベルト。
- 上記粉末状減摩材がグラファイト,二硫化モリブデン,ガラスビーズ,セラミック粉体,球状樹脂粉末,アラミド,ポリアミド,ポリエステル,そしてポリベンゾオキサゾールのカット糸又は粉末から選ばれた少なくとも一種である請求項3記載の歯付ベルト。
- 第2処理液のゴム糊にイソシアネート化合物もしくはエポキシ化合物が添加されている請求項1または3記載の歯付ベルト。
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