JP2004323706A - 樹脂組成物及び該樹脂組成物を用いてなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境や生体に対する安全性の高い抗菌性材料を使用しながら、生産性、分散性、射出成形品の機械物性及び抗菌性に優れた樹脂成形品を提供する。
【解決手段】クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部とを含んでなる抗菌性材料0.1〜90重量%、および、熱可塑性樹脂10〜99.9重量%を含んでなる樹脂組成物。熱可塑性樹脂が、メルトフローレートが0.1〜400の樹脂である上記樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部とを含んでなる抗菌性材料0.1〜90重量%、および、熱可塑性樹脂10〜99.9重量%を含んでなる樹脂組成物。熱可塑性樹脂が、メルトフローレートが0.1〜400の樹脂である上記樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、新規な抗菌性樹脂組成物およびその用途である抗菌用成形品に関する。なお、本発明では、細菌、真菌などの菌類、ウイルスなどの微生物を称して菌という。
【0002】
【従来の技術】
一般に細菌を殺すのは細菌が栄養を取り込み、たんぱく質などを作って増える生物であり、抗生物質を投与すると細菌は栄養物といっしょに取り込みその毒性で死ぬことが知られており、抗生物質は細菌に取り込まれやすいように作られている。一方、ウイルスはたんぱく質の殻とその中に遺伝情報だけを持つ粒子であり、動物の細胞に寄生し細胞を壊しながら増え続けるため炎症を起こし病気になる。だが、ウイルスは抗生物質を取り取り込まないため効果はなく、強い薬でたたこうとすると細胞まで殺してしまう。ウイルスの感染症には予防を目的にしたワクチンが有効である。毒性を弱めたウイルスを注射して、ウイルスに対する免疫を作れば感染しにくくなる。従って細菌とウイルスでは明らかに死滅させるメカニズムが異なっている。
【0003】
クマザサ抽出成分は、抗菌性、抗腫瘍性対策に有効であることが判明している(特許文献1参照)。しかし、クマザサ抽出成分がこの細菌とウイルスの両方の防御に有効であることを発見した。このように、真菌、細菌などの菌類、ウイルスなどの広範囲な微生物の繁殖抑制に効果がある材料は他に知られていない。
【0004】
一方、近年、快適性と衛生性の要求から、抗菌抗黴性製品は、衣食住を初めとする生活関連資材、プラスチック工業、電子部品工業等のあらゆる産業関連分野において、非常に広範囲にわたって使用されている。抗菌抗黴性を機能として付加する方法としては、抗菌抗黴剤をプラスチックに混練し溶融押し出しによって成形したり、塗料に添加しウェットコーティングしたり、あるいは銀を蒸着やスパッタ等によってドライコーティングする方法などが採用されている。これらの製品に抗菌性を付与する手段として、樹脂に抗菌剤を添加して成形する方法(練り込み型)、あるいは抗菌剤を含む樹脂被覆剤で成形品を被覆する方法(塗布型)が一般的に利用されている。
【0005】
抗菌抗黴剤としては、無機系の抗菌剤、天然物より抽出した天然の抗菌剤、および有機系の抗黴剤が挙げられる。
【0006】
従来から利用されている無機系抗菌剤には、金属または金属イオンの抗菌性(殺菌力、静菌力)を利用したものが多い。特に微量で抗菌、殺菌効果の高い銀、銅、亜鉛などの金属イオンを、イオン交換法などを用いてゼオライト、シリカ、錯体、アパタイト、ヒドロキシアパタイト等などに吸着、担持させたもの、または燐酸塩または水ガラスなどに固溶化させたものや酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄等の光触媒機能を有するものなどが用いられる。これら抗菌剤は、効果が長期間に渡って持続し、耐熱性が高く、さらに安全性が高いなどの長所があるものの、塗料や樹脂に添加した際に抗菌剤が変色したり、抗黴効果が小さいこと等が短所となっている。
【0007】
例えば、銀成分の殺菌作用機構は、水分の存在下で溶出した銀成分が、細菌の菌体(細胞)表面の細胞膜に分布している主要酵素と反応して酵素作用を阻害、または水分の存在下、可視光の照射により活性酸素を発生することにより細菌を死滅させることが示唆されている。
【0008】
このような機構による抗菌効果は、共存する樹脂成分に悪影響を及ぼすことが多い。銀成分を含む抗菌剤と樹脂とを混合し成形した場合、加工時の熱により機械物性の低下等が生じるとともに、本来は透明〜半透明な樹脂の色が黄色〜褐色に変色したり、使用中に同様の物性の低下や変色が生じる場合があるが、これらの欠点を防止するために銀成分の溶出量を低減すると抗菌効果が低下する不都合が生じる。
【0009】
また、ある種の重金属の共存下では、樹脂成分の酸化劣化が促進されることはよく知られている。これは微量の金属化合物によるヒドロぺルオキシドの接触分解、酸素の活性化、金属と基質の反応、金属化合物の分解によるラジカル生成、光増感作用などによる。更に、抗菌剤から発生する活性酸素も樹脂の酸化劣化を促進する。
【0010】
特にハロゲン元素を含む重合触媒、例えばチーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合されたポリプロピレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂などは、銀等の金属成分との共存下において特に黄色〜褐色への変色が著しい。これは残存触媒中のハロゲン原子と金属イオンが反応するものと推定される。このような変色、物性の劣化は材料としての利用価値を著しく低下させる。
【0011】
これらの欠点を改良するために、金属成分を保持したゼオライト化合物による変色防止として、重金属不活性化剤で触媒残さを不活性化する方法(特開平4−117440号公報)、隠蔽性を有する白色顔料を添加して変色を防止する方法(特開平10−140012号公報)、ワックスで被覆された銀微粒子を用いる方法(特開平4−51957号公報)、あるいは中空粒子に金属を含む被覆層を形成させる方法(特開平7−196424号公報)などが開示されている(特許文献2〜5参照)。
【0012】
有機系抗黴剤としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオロジクロロメチルチオ−フタールイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルエステル、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド亜鉛、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド等が知られているが、毒性があり、溶出性であるために安全性及び持続性に問題がある物が多く、細菌に対して幅広い抗菌スペクトルを持たない。そこで、細菌、酵母、黴に対する幅広い抗菌スペクトルを得るために、抗菌剤と抗黴剤を混合することが試みられたが、抗菌抗黴効果の再現性、安全性はもちろんその効果の持続性に問題があった。
【0013】
しかしながら、上記抗菌抗黴剤は菌の種類によっては抗菌作用を示さず、十分な効果を得られないものが多い。また、抗菌抗かび作用の長期持続性や、急性経口毒性、皮膚刺激性、粘膜刺激性等の安全性においても問題が多くあった。このため、これらの抗菌抗かび剤を添加して抗菌抗黴作用を付与した樹脂においても、上記と同様の問題が多く見られた。
【0014】
また、天然系の抗菌剤には、茶タンニン、ヒノキチオール、孟宗竹抽出物、辛子抽出物、キトサン等があり、食品、包装材等に添加され実用化された例があるが、色、臭味を有するものも多く、その効果の持続性に難点がある。
【0015】
【特許文献1】WO99/62444号パンフレット
【特許文献2】特開平4−117440号公報
【特許文献3】特開平10−140012号公報
【特許文献4】特開平4−51957号公報
【特許文献5】特開平7−196424号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、本発明は、環境や生体に対する安全性の高い抗菌性材料を使用しながら、生産性、分散性、射出成形品の機械物性及び抗菌性に優れた樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部と含んでなる抗菌性材料0.1〜90重量%、および、
熱可塑性樹脂10〜99.9重量%を含んでなる樹脂組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、熱可塑性樹脂が、メルトフローレートが0.1〜400の樹脂である上記樹脂組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、上記樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。
【0020】
また、本発明は、クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部と混合して抗菌性材料を製造する工程1、および
抗菌性材料と熱可塑性樹脂とを混合して成形品を製造する工程2を含むことを特徴とする成形品の製造方法に関する。
また、本発明は、上記樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明では、無機多孔質にクマザサ抽出液を担持した抗菌性材料を使うことにより、樹脂成形品内面及び表面に存在する菌類の繁殖を抑えることができる。
【0022】
本発明で使用されるクマザサ抽出成分とは、イネ科クマザサから抽出される「ササ配糖体」を主成分とする成分である。「ササ配糖体」は、キシロース、アラビノース等のペントース(五炭糖)、ガラクトース、グルコース等のヘキソース(六炭糖)を構造単糖とする。
クマザサ抽出成分は、クマザサを水、アルコールなどの抽出溶剤に浸漬等してクマザサ抽出液として得ることができる。また、市販品として入手もできる。クマザサ抽出液は適宜、水等で希釈して使用することができる。
【0023】
本発明に使用するクマザサ抽出液は、例えば、クマザサの生葉または乾燥葉、好ましくは乾燥葉を、60〜130℃の水で常圧または加圧抽出して得られるものが好ましい。
【0024】
抽出法方法は特に限定されないが、例えば特許3212278号公報に記載された方法を使用できる。
【0025】
また、クマザサ抽出液は、スプレードライ、凍結乾燥、デキストリンなどの造形剤の添加等で一旦、粉状にすることができる。
【0026】
クマザサ抽出成分は、様々な菌類ウイルス類に対して抗菌性及び抗ウイルス性が発揮され、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、破傷風菌、クロストリジウム属ガス壊疸菌、カンジタ菌、白癬菌、ケカビ、クモノスカビ、アスペルギルス属菌、クリプトコッカス属菌、コクシジオイデス属菌、ヒストプラズマ属菌、
ヘルペスウイルス、コロナウイルスなどの菌またはウイルスに対する抗菌性及び抗ウイルス性を示すことが期待できる。
【0027】
本発明の抗菌性材料は、抽出液のまま、あるいは、種々の溶剤や水に溶解または分散して用いることができる。さらに、必要に応じて、その他の抗菌性材料、種々の添加剤、例えば、金属石鹸、ワックス、界面活性剤、保湿材、着色剤、粘度調整剤、乳化剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、芳香剤などを添加してもよい。
【0028】
その他の抗菌剤としては、銀系・銅系の無機系や有機物系の抗菌剤が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる無機多孔質としては、基本的には無機系の多孔質であれば特に問題がないが、例えば活性炭の炭素系、シリカ、アルミナ、マグネシア、シルセスキオキサン、ムライト、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリン、ゼオライト、スメクタイト、サポナイト、カネマイト、マガディアイト、ハロイサイト、カオリナイト、マイカ、タルク、硫酸バリウム、ケイソウ土、酸性白土、酸化亜鉛、酸化チタン、ナイトライト等のセラミック系、など挙げられる。活性炭は、炭素を有するものであるが、本発明では、無機多孔質に含まれるものとする。無機多孔質の添加量は、クマザサ抽出成分の固形分100重量部に対して、1〜100重量部用いるのが通常である。
【0030】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、メルトフローレート(以下、MFRという)が0.1〜400の樹脂が好適に用いられる。MFRとはJIS K−7210に準拠して測定されたMFRである。MFRが0.1以下では、得られる着色樹脂組成物の溶融粘度が高過ぎるため、印刷インキや塗料等の被覆剤の着色に用いた場合に着色不良が発生したり、熱可塑性樹脂の着色に用いた場合に色ムラやフローマークが発生する場合がある。一方、MFRが400以上になると、被覆剤や熱可塑性樹脂等の着色に用いた場合にブリードを起こしたり、耐候性あるいは耐熱性等に悪影響を及ぼすことがある。
【0031】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィン系樹脂としては、結晶性または非晶性ポリプロピレン、低密度または高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、1−ブテンのエチレンやプロピレンの共重合体、α−オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレンないしはプロピレンとαオレフィンとの共重合体及びその誘導体は、四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を重合触媒として共重合してなるポリオレフィンまたはその誘導体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。
【0032】
また、ポリオレフィン系以外の樹脂としては、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジエン系のポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−EPDM−スチレン(AES)樹脂、ナイロン、その他アクリル系樹脂、フッ素樹脂、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ホスファゼン樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。
【0033】
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中に10〜99.9重量%含有される。10重量%以下では成形樹脂との相溶性に問題が生じ、分散不良や筋目の原因となり、99.9重量%以上では目的の抗菌性を得ることができない。
【0034】
なお、熱可塑性樹脂の形状は、特に限定されるものではなく、粉体状であってもペレット状であっても良い。
【0035】
樹脂などの使用は、菌の増殖を助長する水や酸素や栄養源の外部からの供給を遮断する効果と、クマザサ抽出成分の基材からの流出を抑える効果が期待できる。
【0036】
例えば、保湿材としては、一般に吸湿性のあるものであればよく、特に限定されない。樹脂系内に水酸基やカルボン酸基のようなものを有しているものが代表してあげられ、澱粉、カルボキシメチルセルロース等の糖類、アクリル酸類、ポリエチレングリコール等のグリコール類、水系ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール鎖を有するポリエステル樹脂やポリエーテル樹脂、ポリエチレングリコール鎖を有するポリウレタン樹脂、ポリエチレングリコール鎖を有するポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその鹸化物、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、吸水性アクリル樹脂等の公知の樹脂やワックスが挙げられる。
【0037】
着色剤としては、従来から印刷インキ、塗料、あるいは熱可塑性樹脂の着色に使用されている公知の染料や有機顔料および無機顔料の1種以上を用いることができ、特に制限されることはないが、食用色素、クロロフィル等の食品添加物として認められている色素や生分解性プラスチック研究会(BPS)が指定する識別基準に則った無機顔料(アースカラー)が望ましい。
【0038】
その他、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、芳香剤などは、特に限定されないが人体に問題がないか影響の少ないものが望ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物の製造における原材料の混合方法に特に制限はない。クマザサ抽出成分と無機多孔質の2成分で、または熱可塑性樹脂を加えた3成分で混合してもよいし、これらの成分を混合した後、更に熱可塑性樹脂を添加してもよい。例えば、2成分または3成分をヘンシェルミキサーなどで混合した混合物と熱可塑性樹脂を、真空脱水機を装着したニーダーやヘンシェルミキサーに供給し、加熱減圧脱水溶融混練分散を連続して行うこともできる。または、全ての成分を一度に混合することも可能である。
【0040】
例えば、クマザサ抽出成分と無機多孔質の2成分、あるいは熱可塑性樹脂を加えた3成分を、それぞれ定量をヘンシェルミキサー、ディスパー、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター等の混合機によりプレミックスし、クマザサ抽出成分を無機多孔質に吸着させる。この配合物に熱可塑性樹脂を加えて、真空脱水機を装着した二軸スクリュー押出機に供給し、さらに熱可塑性樹脂の溶融する温度で混練する。この混練過程で、クマザサ抽出成分に含まれていた水は蒸発し、溶融した熱可塑性樹脂がクマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質を覆い(相置換)、混練時の剪断により無機多孔質が微細化され、さらにその表面が熱可塑性樹脂により覆われることにより再凝集が防止され、分散性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
本方法によれば、クマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質と熱可塑性樹脂の配合物に水が含まれていることにより、配合物の嵩密度が大きくなり、つまり混合されたクマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質と熱可塑性樹脂の距離が小さくなり混練時の両者の会合が効率的に行われ、クマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質が熱可塑性樹脂により多く濡れ、再凝集する無機多孔質が少ないため、分散性に優れた樹脂組成物が得られると考えられる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、圧縮成形、溶融押出成形、射出成形、移送成形、吹込成形、真空成形、粉末成形、カレンダー成形、フィルム多層成形、プレス加工、熱収縮、注型加工、積層成形、紡糸等の成形方法により製造することができるが、特に限定はない。
【0043】
本発明の抗菌剤を含む樹脂組成物は、歯ブラシ、筆記具、厨房用品などの日用品、繊維、OA機器、家電製品、シート、フィルムなどのプラスチック成形品に使用することができる。また、本発明の抗菌剤は、一般印刷インキ、住宅用内外壁塗料、壁紙用接着剤などに添加することができ、容易に抗菌性を付与することができる。さらに、本発明の抗菌剤を含む樹脂組成物および被覆剤は、安全性が高いため、食品包装用にも適応できる。
【0044】
本発明の成形品における含有量は、クマザサ抽出成分の固形分で、成形品100gあたりに約0.1〜10g含有するのがよい。特に0.5〜5gが望ましい。この含有量が多い場合は、その抗菌効果が高くなるが、あまり経済的ではない。含有量が少なすぎると抗菌性効果が小さくなる。
【0045】
無機多孔質を併用することでクマザサ抽出成分の抗菌性が向上する理由は、定かではないが、無機多孔質は非常に大きい表面積を有する。表面や内部に分散した無機多孔質に付着したクマザサ抽出成分が、通過する菌類と接触し、結果抗菌機能が増大すると考えられる。あるいは、無機多孔質に菌類が強固に付着したため、相乗的にクマザサの抗菌効果を発揮させたとも考えられる。この場合は、抗菌性は、単に特定の細菌のみならず、その他の細菌、真菌などの菌類、ウイルスなどの微生物、黴など一般に有効であることが期待できる。
【0046】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、「重量部」は単に「部」、「重量%」は単に「%」と記載する。
【0047】
<クマザサエキスの製造>
北海道天塩山系で9月に採取されたクマザサの乾燥葉を、加圧熱水タンクに入れ125℃10分間処理し、冷却水で熱水を80℃まで冷却し、エキスと含水固形分をスクリュープレスで分離して、含水率を約50重量%とした。次に、約50重量%含水固形分をオートクレーブに入れ、180℃で10分間、飽和水蒸気による加圧熱水処理を行った。処理した含水固形分を、再度加圧熱水抽出タンクに入れて110℃で5分間処理してエキスを抽出させた。第1回目のエキスと第2回目のエキスを合わせ、珪藻土濾過し、固形分50重量%となるまで減圧濃縮し、110〜130℃の流動殺菌処理してクマザサエキスを得た。
【0048】
実施例1
前述のクマザサ抽出液100部と、無機多孔質(MIZUKASIL P−752C<水澤化学製>)50部の2成分をヘンシェルミキサーでプレミックスしたものとポリエチレン(MFR=50<日本ポリケム製>)400部とを、先端に真空脱水機と真空ポンプを装着したスクリュー径30mm、L/D値42の二軸同方向回転型スクリュー押出機に供給し、回転数350rpm、設定温度120℃の条件で練肉・脱水・押出し、ペレタイザーでカットして20%濃度の樹脂組成物を作成した。
【0049】
実施例2〜9
実施例1に使用した熱可塑性樹脂を、それぞれポリ乳酸(MFR=20<三井化学製>)、ポリブチレンサクシネートアジペート(MFR=3<昭和高分子製>)、ポリエチレンテレフタレート(MFR=0.5<日本ユニペット製>)、ナイロン6(MFR=20、<ユニチカ製>)、アクリル樹脂(MFR=20、<三菱レーヨン製>)、ABS樹脂(MFR=55<旭化成工業製>)、ポリスチレン樹脂(MFR=2.8<旭化成工業製>)、ポリウレタン樹脂(MFR=65<住友バイエルウレタン製>)に変更し、脱水部分の押出設定温度をそれぞれ200℃、200℃、260℃、250℃、250℃、200℃、200℃、200℃の条件で実施例1と同様にして樹脂組成物を作成した。
【0050】
実施例10
前述のクマザサ抽出液100部と、保湿剤としてポリビニルアルコール樹脂5部、及び活性炭(白鷺P<日本エンバイロケミカル製>)50部を混合したものを真空脱水機と真空ポンプを装着したヘンシェルミキサーに供給し、設定温度120℃の条件で混合・脱水を行い、クマザサ吸着無機多孔質を作成した。
【0051】
比較例1〜9
実施例1〜9で用いた熱可塑性樹脂にクマザサ吸着無機多孔質を混合せずに全く単独の状態で準備した。
【0052】
比較例10
実施例2で用いたクマザサ抽出液を混合吸着させずに活性炭とポリビニルアルコール樹脂のみを用い、あとは実施例2と同様にして無機多孔質を得た。
【0053】
比較例11
実施例2で用いたクマザサ抽出液を、活性炭を用いず、クマザサ抽出液とポリビニルアルコール樹脂のみを用い、あとは実施例2と同様にして無機多孔質を得た。
【0054】
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた樹脂組成物の生産性評価、及び実施例1〜10及び比較例1〜11フィルム成形品の評価、分散性評価、射出成形品の機械物性評価及び抗菌性評価を表1に示す。
【0055】
[樹脂組成物の生産性評価]
(1)樹脂組成物の生産性を以下の基準で評価した。
○:脈流やストランド切れを生じることなく、順調に生産可能。
△:若干の脈流は生じるがストランド切れは生じず、生産は可能。
×:ストランド切れや脈流を発生し、生産不可能。
【0056】
[フィルム・シート成形品の評価]
各樹脂組成物あるいは無機多孔質をクマザサ抽出液の固形分換算で1.0%になるように、成形樹脂として、下記の熱可塑性樹脂に配合した。
<熱可塑性樹脂>
実施例1及び比較例1:ポリプロピレン(MFR=7<三井住友ポリオレフィン製>)
実施例2及び比較例2:ポリ乳酸(MFR=20<三井化学製>)
実施例3及び比較例3:ポリブチレンサクシネートアジペート(MFR=3<昭和高分子製>)
実施例4及び比較例4:ポリエチレンテレフタレート(MFR=0.5<日本ユニペット製>)
実施例5及び比較例5:ナイロン6(MFR=20、<ユニチカ製>)
実施例6及び比較例6:アクリル樹脂(MFR=20、<三菱レーヨン製>)
実施例7及び比較例7:ABS樹脂(MFR=55<旭化成工業製>)
実施例8及び比較例8:ポリスチレン樹脂(MFR=2.8<旭化成工業製>)
実施例9及び比較例9:ポリウレタン樹脂(MFR=65<住友バイエルウレタン製>)
実施例10及び比較例10:ポリプロピレン(MFR=7<三井住友ポリオレフィン製>)
【0057】
これらをTダイフィルム成形器(東洋精機製)を用いて成形温度280℃、回転数60rpmで溶融押出し、膜厚50μmのフィルム・シートを成形した。この成形品の(2)フィルム強度及び(3)フィルム状態についての評価は以下の基準で行った。
(2)フィルム強度評価フィルムの断面観察及びフィルム引張試験による評価試験
◎:フィルム空隙が極めて小さく、フィルム強度は充分である。
○:フィルム空隙が小さく、フィルム強度は実用上問題なし。
△:フィルム空隙がやや大きく、フィルム強度に劣り、加工性問題あり。
×:フィルム空隙が大きく、フィルムが脆い。
【0058】
(3)フィルム状態評価膜割れ、ブツ及び平滑性の有無等を目視評価試験
◎:非常に良好である。
○:実用上は問題なし。
△:膜割れ、ブツ及び平滑性のいずれかに問題あり。
×:悪い。
【0059】
[樹脂組成物の分散性評価]
樹脂組成物中の無機多孔質の分散状態について(4)〜(6)の評価を行った。
(4)押出機の先端部の圧力上昇値(5)Tダイ成形フィルム中の粗大粒子数(6)紡糸状態の目視評価
(4)押出機の先端部の圧力上昇値
各樹脂組成物をクマザサ抽出液の固形分換算で20%になるように、フィルム成形品の評価と同様にして各成形樹脂に配合したものを、先端に1450メッシュの金網を装着したスクリュー径が20mmの単軸押出機を用いて、それぞれ500g押出した。樹脂組成物中に未分散の無機多孔質が多く存在すると、押出しに伴い上記メッシュが目詰まりをきたす。そこで、押し出し初期における上記メッシュにかかる圧力の値と、500g分押し出した時の上記メッシュにかかる圧力の値との差(押出機先端部の圧力上昇値)を求め、樹脂組成物の分散状態を評価した。
【0060】
(5)Tダイフィルム中の粗大粒子数
(2)、(3)にて評価したTダイフィルム成形品を用い、各フィルムに含まれる無機多孔質の粗大粒子(10μmを基準)の数をルーゼックス450画像処理機(東洋インキ製造製)で測定して樹脂組成物の分散度を評価した。
5:5.0 ×101 個/cm2未満
4:5.0 ×101 個/cm2以上 1.0×102 個/cm2未満
3:1.0 ×102 個/cm2以上 1.0×103 個/cm2未満
2:1.0 ×103 個/cm2以上 7.0×103 個/cm2未満
1:7.0 ×103 個/cm2以上
【0061】
(6)紡糸状態の目視評価
実施例1〜5及び比較例1〜5の各樹脂組成物5部と、フィルム成形品の評価に記載した各成形樹脂100部とを混合して、縦型テスト紡糸機「スピニングテスター」(富士フィルター製)にて、ホッパー下230℃、混練部、ダイス部250℃で紡糸後、3倍延伸を行い、各繊維を得、紡糸性、目詰まり性等を以下の基準で評価した。
○:紡糸性、目詰まり性及び延伸性とも実用上は問題なし。
△:紡糸性、目詰まり性及び延伸性のいずれかに問題あり。
×:糸切れ発生。
−:評価せず
【0062】
[射出成形品における機械的物性評価]
実施例及び比較例記載の各樹脂組成物や無機多孔質について(7)機械的物性の保持率を評価した。
(7)機械的物性の保持率
各樹脂組成物5部と、フィルム成形品の評価に記載した成形樹脂100部との混合物を、射出成形機にて背圧0kg/cm2で射出成形しプレートを得た。得られた各プレートの引張強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃度の3試験をそれぞれ行った。成形樹脂のみからなるプレートで得られた値を100%としたときの各成形プレートの物性の保持率をそれぞれ求め以下の基準で評価した。3試験の機械的物性の保持率が、
○:全て96%以上の場合
△:1試験でも90%以上96%未満があった場合
×:1試験でも90%未満があった場合
とした。
【0063】
[抗菌性評価]
各樹脂組成物について、抗菌性を評価した。
(8)抗菌性評価
(7)で評価用に作成した射出成形品プレートを5cm×5cmの正方形に切り取って、紫外線により滅菌したものを試験試料としてシャーレに入れた。試験片に、大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)の菌数が約4.5×105個/mlである菌培養液0.1mlを滴下し、シャーレの蓋を閉め、35℃、相対湿度90%で19時間を保存した。試験片を滅菌生理食塩水1.9mlで洗い出し、回収液とした。この回収液を混釈平板培養法により普通寒天培地で35℃、24時間培養して生菌数を測定した。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明の抗菌剤は、少ない添加量で抗菌効果が得られ、樹脂に添加しても、加工性や成形性に問題を引き起こし難い。
【0066】
本発明の抗菌性材料およびこれを用いた樹脂組成物は、歯ブラシ、筆記具、厨房用品などの日用品、繊維、OA機器、家電製品、シート、フィルムなどのプラスチック成形品に使用することができる。
【0067】
また、本発明の抗菌剤は、一般印刷インキ、住宅用内外壁塗料、壁紙用接着剤などに添加することができ、容易に抗菌性を付与することができる。さらに、本発明の抗菌剤を含む樹脂組成物および成形品は、環境や生体に対する安全性が高いため、食品包装用にも適応できる。
【発明が属する技術分野】
本発明は、新規な抗菌性樹脂組成物およびその用途である抗菌用成形品に関する。なお、本発明では、細菌、真菌などの菌類、ウイルスなどの微生物を称して菌という。
【0002】
【従来の技術】
一般に細菌を殺すのは細菌が栄養を取り込み、たんぱく質などを作って増える生物であり、抗生物質を投与すると細菌は栄養物といっしょに取り込みその毒性で死ぬことが知られており、抗生物質は細菌に取り込まれやすいように作られている。一方、ウイルスはたんぱく質の殻とその中に遺伝情報だけを持つ粒子であり、動物の細胞に寄生し細胞を壊しながら増え続けるため炎症を起こし病気になる。だが、ウイルスは抗生物質を取り取り込まないため効果はなく、強い薬でたたこうとすると細胞まで殺してしまう。ウイルスの感染症には予防を目的にしたワクチンが有効である。毒性を弱めたウイルスを注射して、ウイルスに対する免疫を作れば感染しにくくなる。従って細菌とウイルスでは明らかに死滅させるメカニズムが異なっている。
【0003】
クマザサ抽出成分は、抗菌性、抗腫瘍性対策に有効であることが判明している(特許文献1参照)。しかし、クマザサ抽出成分がこの細菌とウイルスの両方の防御に有効であることを発見した。このように、真菌、細菌などの菌類、ウイルスなどの広範囲な微生物の繁殖抑制に効果がある材料は他に知られていない。
【0004】
一方、近年、快適性と衛生性の要求から、抗菌抗黴性製品は、衣食住を初めとする生活関連資材、プラスチック工業、電子部品工業等のあらゆる産業関連分野において、非常に広範囲にわたって使用されている。抗菌抗黴性を機能として付加する方法としては、抗菌抗黴剤をプラスチックに混練し溶融押し出しによって成形したり、塗料に添加しウェットコーティングしたり、あるいは銀を蒸着やスパッタ等によってドライコーティングする方法などが採用されている。これらの製品に抗菌性を付与する手段として、樹脂に抗菌剤を添加して成形する方法(練り込み型)、あるいは抗菌剤を含む樹脂被覆剤で成形品を被覆する方法(塗布型)が一般的に利用されている。
【0005】
抗菌抗黴剤としては、無機系の抗菌剤、天然物より抽出した天然の抗菌剤、および有機系の抗黴剤が挙げられる。
【0006】
従来から利用されている無機系抗菌剤には、金属または金属イオンの抗菌性(殺菌力、静菌力)を利用したものが多い。特に微量で抗菌、殺菌効果の高い銀、銅、亜鉛などの金属イオンを、イオン交換法などを用いてゼオライト、シリカ、錯体、アパタイト、ヒドロキシアパタイト等などに吸着、担持させたもの、または燐酸塩または水ガラスなどに固溶化させたものや酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄等の光触媒機能を有するものなどが用いられる。これら抗菌剤は、効果が長期間に渡って持続し、耐熱性が高く、さらに安全性が高いなどの長所があるものの、塗料や樹脂に添加した際に抗菌剤が変色したり、抗黴効果が小さいこと等が短所となっている。
【0007】
例えば、銀成分の殺菌作用機構は、水分の存在下で溶出した銀成分が、細菌の菌体(細胞)表面の細胞膜に分布している主要酵素と反応して酵素作用を阻害、または水分の存在下、可視光の照射により活性酸素を発生することにより細菌を死滅させることが示唆されている。
【0008】
このような機構による抗菌効果は、共存する樹脂成分に悪影響を及ぼすことが多い。銀成分を含む抗菌剤と樹脂とを混合し成形した場合、加工時の熱により機械物性の低下等が生じるとともに、本来は透明〜半透明な樹脂の色が黄色〜褐色に変色したり、使用中に同様の物性の低下や変色が生じる場合があるが、これらの欠点を防止するために銀成分の溶出量を低減すると抗菌効果が低下する不都合が生じる。
【0009】
また、ある種の重金属の共存下では、樹脂成分の酸化劣化が促進されることはよく知られている。これは微量の金属化合物によるヒドロぺルオキシドの接触分解、酸素の活性化、金属と基質の反応、金属化合物の分解によるラジカル生成、光増感作用などによる。更に、抗菌剤から発生する活性酸素も樹脂の酸化劣化を促進する。
【0010】
特にハロゲン元素を含む重合触媒、例えばチーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合されたポリプロピレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂などは、銀等の金属成分との共存下において特に黄色〜褐色への変色が著しい。これは残存触媒中のハロゲン原子と金属イオンが反応するものと推定される。このような変色、物性の劣化は材料としての利用価値を著しく低下させる。
【0011】
これらの欠点を改良するために、金属成分を保持したゼオライト化合物による変色防止として、重金属不活性化剤で触媒残さを不活性化する方法(特開平4−117440号公報)、隠蔽性を有する白色顔料を添加して変色を防止する方法(特開平10−140012号公報)、ワックスで被覆された銀微粒子を用いる方法(特開平4−51957号公報)、あるいは中空粒子に金属を含む被覆層を形成させる方法(特開平7−196424号公報)などが開示されている(特許文献2〜5参照)。
【0012】
有機系抗黴剤としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオロジクロロメチルチオ−フタールイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールカルバミン酸メチルエステル、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン、2,3,5,6−テトラクロロ−4(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド亜鉛、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド等が知られているが、毒性があり、溶出性であるために安全性及び持続性に問題がある物が多く、細菌に対して幅広い抗菌スペクトルを持たない。そこで、細菌、酵母、黴に対する幅広い抗菌スペクトルを得るために、抗菌剤と抗黴剤を混合することが試みられたが、抗菌抗黴効果の再現性、安全性はもちろんその効果の持続性に問題があった。
【0013】
しかしながら、上記抗菌抗黴剤は菌の種類によっては抗菌作用を示さず、十分な効果を得られないものが多い。また、抗菌抗かび作用の長期持続性や、急性経口毒性、皮膚刺激性、粘膜刺激性等の安全性においても問題が多くあった。このため、これらの抗菌抗かび剤を添加して抗菌抗黴作用を付与した樹脂においても、上記と同様の問題が多く見られた。
【0014】
また、天然系の抗菌剤には、茶タンニン、ヒノキチオール、孟宗竹抽出物、辛子抽出物、キトサン等があり、食品、包装材等に添加され実用化された例があるが、色、臭味を有するものも多く、その効果の持続性に難点がある。
【0015】
【特許文献1】WO99/62444号パンフレット
【特許文献2】特開平4−117440号公報
【特許文献3】特開平10−140012号公報
【特許文献4】特開平4−51957号公報
【特許文献5】特開平7−196424号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、本発明は、環境や生体に対する安全性の高い抗菌性材料を使用しながら、生産性、分散性、射出成形品の機械物性及び抗菌性に優れた樹脂成形品を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部と含んでなる抗菌性材料0.1〜90重量%、および、
熱可塑性樹脂10〜99.9重量%を含んでなる樹脂組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、熱可塑性樹脂が、メルトフローレートが0.1〜400の樹脂である上記樹脂組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、上記樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。
【0020】
また、本発明は、クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部と混合して抗菌性材料を製造する工程1、および
抗菌性材料と熱可塑性樹脂とを混合して成形品を製造する工程2を含むことを特徴とする成形品の製造方法に関する。
また、本発明は、上記樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明では、無機多孔質にクマザサ抽出液を担持した抗菌性材料を使うことにより、樹脂成形品内面及び表面に存在する菌類の繁殖を抑えることができる。
【0022】
本発明で使用されるクマザサ抽出成分とは、イネ科クマザサから抽出される「ササ配糖体」を主成分とする成分である。「ササ配糖体」は、キシロース、アラビノース等のペントース(五炭糖)、ガラクトース、グルコース等のヘキソース(六炭糖)を構造単糖とする。
クマザサ抽出成分は、クマザサを水、アルコールなどの抽出溶剤に浸漬等してクマザサ抽出液として得ることができる。また、市販品として入手もできる。クマザサ抽出液は適宜、水等で希釈して使用することができる。
【0023】
本発明に使用するクマザサ抽出液は、例えば、クマザサの生葉または乾燥葉、好ましくは乾燥葉を、60〜130℃の水で常圧または加圧抽出して得られるものが好ましい。
【0024】
抽出法方法は特に限定されないが、例えば特許3212278号公報に記載された方法を使用できる。
【0025】
また、クマザサ抽出液は、スプレードライ、凍結乾燥、デキストリンなどの造形剤の添加等で一旦、粉状にすることができる。
【0026】
クマザサ抽出成分は、様々な菌類ウイルス類に対して抗菌性及び抗ウイルス性が発揮され、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、破傷風菌、クロストリジウム属ガス壊疸菌、カンジタ菌、白癬菌、ケカビ、クモノスカビ、アスペルギルス属菌、クリプトコッカス属菌、コクシジオイデス属菌、ヒストプラズマ属菌、
ヘルペスウイルス、コロナウイルスなどの菌またはウイルスに対する抗菌性及び抗ウイルス性を示すことが期待できる。
【0027】
本発明の抗菌性材料は、抽出液のまま、あるいは、種々の溶剤や水に溶解または分散して用いることができる。さらに、必要に応じて、その他の抗菌性材料、種々の添加剤、例えば、金属石鹸、ワックス、界面活性剤、保湿材、着色剤、粘度調整剤、乳化剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、芳香剤などを添加してもよい。
【0028】
その他の抗菌剤としては、銀系・銅系の無機系や有機物系の抗菌剤が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる無機多孔質としては、基本的には無機系の多孔質であれば特に問題がないが、例えば活性炭の炭素系、シリカ、アルミナ、マグネシア、シルセスキオキサン、ムライト、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリン、ゼオライト、スメクタイト、サポナイト、カネマイト、マガディアイト、ハロイサイト、カオリナイト、マイカ、タルク、硫酸バリウム、ケイソウ土、酸性白土、酸化亜鉛、酸化チタン、ナイトライト等のセラミック系、など挙げられる。活性炭は、炭素を有するものであるが、本発明では、無機多孔質に含まれるものとする。無機多孔質の添加量は、クマザサ抽出成分の固形分100重量部に対して、1〜100重量部用いるのが通常である。
【0030】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、メルトフローレート(以下、MFRという)が0.1〜400の樹脂が好適に用いられる。MFRとはJIS K−7210に準拠して測定されたMFRである。MFRが0.1以下では、得られる着色樹脂組成物の溶融粘度が高過ぎるため、印刷インキや塗料等の被覆剤の着色に用いた場合に着色不良が発生したり、熱可塑性樹脂の着色に用いた場合に色ムラやフローマークが発生する場合がある。一方、MFRが400以上になると、被覆剤や熱可塑性樹脂等の着色に用いた場合にブリードを起こしたり、耐候性あるいは耐熱性等に悪影響を及ぼすことがある。
【0031】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィン系樹脂としては、結晶性または非晶性ポリプロピレン、低密度または高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、1−ブテンのエチレンやプロピレンの共重合体、α−オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレンないしはプロピレンとαオレフィンとの共重合体及びその誘導体は、四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を重合触媒として共重合してなるポリオレフィンまたはその誘導体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。
【0032】
また、ポリオレフィン系以外の樹脂としては、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジエン系のポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−EPDM−スチレン(AES)樹脂、ナイロン、その他アクリル系樹脂、フッ素樹脂、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ホスファゼン樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。
【0033】
熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中に10〜99.9重量%含有される。10重量%以下では成形樹脂との相溶性に問題が生じ、分散不良や筋目の原因となり、99.9重量%以上では目的の抗菌性を得ることができない。
【0034】
なお、熱可塑性樹脂の形状は、特に限定されるものではなく、粉体状であってもペレット状であっても良い。
【0035】
樹脂などの使用は、菌の増殖を助長する水や酸素や栄養源の外部からの供給を遮断する効果と、クマザサ抽出成分の基材からの流出を抑える効果が期待できる。
【0036】
例えば、保湿材としては、一般に吸湿性のあるものであればよく、特に限定されない。樹脂系内に水酸基やカルボン酸基のようなものを有しているものが代表してあげられ、澱粉、カルボキシメチルセルロース等の糖類、アクリル酸類、ポリエチレングリコール等のグリコール類、水系ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール鎖を有するポリエステル樹脂やポリエーテル樹脂、ポリエチレングリコール鎖を有するポリウレタン樹脂、ポリエチレングリコール鎖を有するポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその鹸化物、エチレン・酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、吸水性アクリル樹脂等の公知の樹脂やワックスが挙げられる。
【0037】
着色剤としては、従来から印刷インキ、塗料、あるいは熱可塑性樹脂の着色に使用されている公知の染料や有機顔料および無機顔料の1種以上を用いることができ、特に制限されることはないが、食用色素、クロロフィル等の食品添加物として認められている色素や生分解性プラスチック研究会(BPS)が指定する識別基準に則った無機顔料(アースカラー)が望ましい。
【0038】
その他、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、芳香剤などは、特に限定されないが人体に問題がないか影響の少ないものが望ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物の製造における原材料の混合方法に特に制限はない。クマザサ抽出成分と無機多孔質の2成分で、または熱可塑性樹脂を加えた3成分で混合してもよいし、これらの成分を混合した後、更に熱可塑性樹脂を添加してもよい。例えば、2成分または3成分をヘンシェルミキサーなどで混合した混合物と熱可塑性樹脂を、真空脱水機を装着したニーダーやヘンシェルミキサーに供給し、加熱減圧脱水溶融混練分散を連続して行うこともできる。または、全ての成分を一度に混合することも可能である。
【0040】
例えば、クマザサ抽出成分と無機多孔質の2成分、あるいは熱可塑性樹脂を加えた3成分を、それぞれ定量をヘンシェルミキサー、ディスパー、ニーダー、ロールミル、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、シュギミキサー、バーティカルグラニュレーター、ハイスピードミキサー、ファーマトリックス、ボールミル、スチールミル、サンドミル、振動ミル、アトライター等の混合機によりプレミックスし、クマザサ抽出成分を無機多孔質に吸着させる。この配合物に熱可塑性樹脂を加えて、真空脱水機を装着した二軸スクリュー押出機に供給し、さらに熱可塑性樹脂の溶融する温度で混練する。この混練過程で、クマザサ抽出成分に含まれていた水は蒸発し、溶融した熱可塑性樹脂がクマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質を覆い(相置換)、混練時の剪断により無機多孔質が微細化され、さらにその表面が熱可塑性樹脂により覆われることにより再凝集が防止され、分散性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
本方法によれば、クマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質と熱可塑性樹脂の配合物に水が含まれていることにより、配合物の嵩密度が大きくなり、つまり混合されたクマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質と熱可塑性樹脂の距離が小さくなり混練時の両者の会合が効率的に行われ、クマザサ抽出成分を吸着した無機多孔質が熱可塑性樹脂により多く濡れ、再凝集する無機多孔質が少ないため、分散性に優れた樹脂組成物が得られると考えられる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、圧縮成形、溶融押出成形、射出成形、移送成形、吹込成形、真空成形、粉末成形、カレンダー成形、フィルム多層成形、プレス加工、熱収縮、注型加工、積層成形、紡糸等の成形方法により製造することができるが、特に限定はない。
【0043】
本発明の抗菌剤を含む樹脂組成物は、歯ブラシ、筆記具、厨房用品などの日用品、繊維、OA機器、家電製品、シート、フィルムなどのプラスチック成形品に使用することができる。また、本発明の抗菌剤は、一般印刷インキ、住宅用内外壁塗料、壁紙用接着剤などに添加することができ、容易に抗菌性を付与することができる。さらに、本発明の抗菌剤を含む樹脂組成物および被覆剤は、安全性が高いため、食品包装用にも適応できる。
【0044】
本発明の成形品における含有量は、クマザサ抽出成分の固形分で、成形品100gあたりに約0.1〜10g含有するのがよい。特に0.5〜5gが望ましい。この含有量が多い場合は、その抗菌効果が高くなるが、あまり経済的ではない。含有量が少なすぎると抗菌性効果が小さくなる。
【0045】
無機多孔質を併用することでクマザサ抽出成分の抗菌性が向上する理由は、定かではないが、無機多孔質は非常に大きい表面積を有する。表面や内部に分散した無機多孔質に付着したクマザサ抽出成分が、通過する菌類と接触し、結果抗菌機能が増大すると考えられる。あるいは、無機多孔質に菌類が強固に付着したため、相乗的にクマザサの抗菌効果を発揮させたとも考えられる。この場合は、抗菌性は、単に特定の細菌のみならず、その他の細菌、真菌などの菌類、ウイルスなどの微生物、黴など一般に有効であることが期待できる。
【0046】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、「重量部」は単に「部」、「重量%」は単に「%」と記載する。
【0047】
<クマザサエキスの製造>
北海道天塩山系で9月に採取されたクマザサの乾燥葉を、加圧熱水タンクに入れ125℃10分間処理し、冷却水で熱水を80℃まで冷却し、エキスと含水固形分をスクリュープレスで分離して、含水率を約50重量%とした。次に、約50重量%含水固形分をオートクレーブに入れ、180℃で10分間、飽和水蒸気による加圧熱水処理を行った。処理した含水固形分を、再度加圧熱水抽出タンクに入れて110℃で5分間処理してエキスを抽出させた。第1回目のエキスと第2回目のエキスを合わせ、珪藻土濾過し、固形分50重量%となるまで減圧濃縮し、110〜130℃の流動殺菌処理してクマザサエキスを得た。
【0048】
実施例1
前述のクマザサ抽出液100部と、無機多孔質(MIZUKASIL P−752C<水澤化学製>)50部の2成分をヘンシェルミキサーでプレミックスしたものとポリエチレン(MFR=50<日本ポリケム製>)400部とを、先端に真空脱水機と真空ポンプを装着したスクリュー径30mm、L/D値42の二軸同方向回転型スクリュー押出機に供給し、回転数350rpm、設定温度120℃の条件で練肉・脱水・押出し、ペレタイザーでカットして20%濃度の樹脂組成物を作成した。
【0049】
実施例2〜9
実施例1に使用した熱可塑性樹脂を、それぞれポリ乳酸(MFR=20<三井化学製>)、ポリブチレンサクシネートアジペート(MFR=3<昭和高分子製>)、ポリエチレンテレフタレート(MFR=0.5<日本ユニペット製>)、ナイロン6(MFR=20、<ユニチカ製>)、アクリル樹脂(MFR=20、<三菱レーヨン製>)、ABS樹脂(MFR=55<旭化成工業製>)、ポリスチレン樹脂(MFR=2.8<旭化成工業製>)、ポリウレタン樹脂(MFR=65<住友バイエルウレタン製>)に変更し、脱水部分の押出設定温度をそれぞれ200℃、200℃、260℃、250℃、250℃、200℃、200℃、200℃の条件で実施例1と同様にして樹脂組成物を作成した。
【0050】
実施例10
前述のクマザサ抽出液100部と、保湿剤としてポリビニルアルコール樹脂5部、及び活性炭(白鷺P<日本エンバイロケミカル製>)50部を混合したものを真空脱水機と真空ポンプを装着したヘンシェルミキサーに供給し、設定温度120℃の条件で混合・脱水を行い、クマザサ吸着無機多孔質を作成した。
【0051】
比較例1〜9
実施例1〜9で用いた熱可塑性樹脂にクマザサ吸着無機多孔質を混合せずに全く単独の状態で準備した。
【0052】
比較例10
実施例2で用いたクマザサ抽出液を混合吸着させずに活性炭とポリビニルアルコール樹脂のみを用い、あとは実施例2と同様にして無機多孔質を得た。
【0053】
比較例11
実施例2で用いたクマザサ抽出液を、活性炭を用いず、クマザサ抽出液とポリビニルアルコール樹脂のみを用い、あとは実施例2と同様にして無機多孔質を得た。
【0054】
実施例1〜9及び比較例1〜9で得られた樹脂組成物の生産性評価、及び実施例1〜10及び比較例1〜11フィルム成形品の評価、分散性評価、射出成形品の機械物性評価及び抗菌性評価を表1に示す。
【0055】
[樹脂組成物の生産性評価]
(1)樹脂組成物の生産性を以下の基準で評価した。
○:脈流やストランド切れを生じることなく、順調に生産可能。
△:若干の脈流は生じるがストランド切れは生じず、生産は可能。
×:ストランド切れや脈流を発生し、生産不可能。
【0056】
[フィルム・シート成形品の評価]
各樹脂組成物あるいは無機多孔質をクマザサ抽出液の固形分換算で1.0%になるように、成形樹脂として、下記の熱可塑性樹脂に配合した。
<熱可塑性樹脂>
実施例1及び比較例1:ポリプロピレン(MFR=7<三井住友ポリオレフィン製>)
実施例2及び比較例2:ポリ乳酸(MFR=20<三井化学製>)
実施例3及び比較例3:ポリブチレンサクシネートアジペート(MFR=3<昭和高分子製>)
実施例4及び比較例4:ポリエチレンテレフタレート(MFR=0.5<日本ユニペット製>)
実施例5及び比較例5:ナイロン6(MFR=20、<ユニチカ製>)
実施例6及び比較例6:アクリル樹脂(MFR=20、<三菱レーヨン製>)
実施例7及び比較例7:ABS樹脂(MFR=55<旭化成工業製>)
実施例8及び比較例8:ポリスチレン樹脂(MFR=2.8<旭化成工業製>)
実施例9及び比較例9:ポリウレタン樹脂(MFR=65<住友バイエルウレタン製>)
実施例10及び比較例10:ポリプロピレン(MFR=7<三井住友ポリオレフィン製>)
【0057】
これらをTダイフィルム成形器(東洋精機製)を用いて成形温度280℃、回転数60rpmで溶融押出し、膜厚50μmのフィルム・シートを成形した。この成形品の(2)フィルム強度及び(3)フィルム状態についての評価は以下の基準で行った。
(2)フィルム強度評価フィルムの断面観察及びフィルム引張試験による評価試験
◎:フィルム空隙が極めて小さく、フィルム強度は充分である。
○:フィルム空隙が小さく、フィルム強度は実用上問題なし。
△:フィルム空隙がやや大きく、フィルム強度に劣り、加工性問題あり。
×:フィルム空隙が大きく、フィルムが脆い。
【0058】
(3)フィルム状態評価膜割れ、ブツ及び平滑性の有無等を目視評価試験
◎:非常に良好である。
○:実用上は問題なし。
△:膜割れ、ブツ及び平滑性のいずれかに問題あり。
×:悪い。
【0059】
[樹脂組成物の分散性評価]
樹脂組成物中の無機多孔質の分散状態について(4)〜(6)の評価を行った。
(4)押出機の先端部の圧力上昇値(5)Tダイ成形フィルム中の粗大粒子数(6)紡糸状態の目視評価
(4)押出機の先端部の圧力上昇値
各樹脂組成物をクマザサ抽出液の固形分換算で20%になるように、フィルム成形品の評価と同様にして各成形樹脂に配合したものを、先端に1450メッシュの金網を装着したスクリュー径が20mmの単軸押出機を用いて、それぞれ500g押出した。樹脂組成物中に未分散の無機多孔質が多く存在すると、押出しに伴い上記メッシュが目詰まりをきたす。そこで、押し出し初期における上記メッシュにかかる圧力の値と、500g分押し出した時の上記メッシュにかかる圧力の値との差(押出機先端部の圧力上昇値)を求め、樹脂組成物の分散状態を評価した。
【0060】
(5)Tダイフィルム中の粗大粒子数
(2)、(3)にて評価したTダイフィルム成形品を用い、各フィルムに含まれる無機多孔質の粗大粒子(10μmを基準)の数をルーゼックス450画像処理機(東洋インキ製造製)で測定して樹脂組成物の分散度を評価した。
5:5.0 ×101 個/cm2未満
4:5.0 ×101 個/cm2以上 1.0×102 個/cm2未満
3:1.0 ×102 個/cm2以上 1.0×103 個/cm2未満
2:1.0 ×103 個/cm2以上 7.0×103 個/cm2未満
1:7.0 ×103 個/cm2以上
【0061】
(6)紡糸状態の目視評価
実施例1〜5及び比較例1〜5の各樹脂組成物5部と、フィルム成形品の評価に記載した各成形樹脂100部とを混合して、縦型テスト紡糸機「スピニングテスター」(富士フィルター製)にて、ホッパー下230℃、混練部、ダイス部250℃で紡糸後、3倍延伸を行い、各繊維を得、紡糸性、目詰まり性等を以下の基準で評価した。
○:紡糸性、目詰まり性及び延伸性とも実用上は問題なし。
△:紡糸性、目詰まり性及び延伸性のいずれかに問題あり。
×:糸切れ発生。
−:評価せず
【0062】
[射出成形品における機械的物性評価]
実施例及び比較例記載の各樹脂組成物や無機多孔質について(7)機械的物性の保持率を評価した。
(7)機械的物性の保持率
各樹脂組成物5部と、フィルム成形品の評価に記載した成形樹脂100部との混合物を、射出成形機にて背圧0kg/cm2で射出成形しプレートを得た。得られた各プレートの引張強度、曲げ弾性率、アイゾット衝撃度の3試験をそれぞれ行った。成形樹脂のみからなるプレートで得られた値を100%としたときの各成形プレートの物性の保持率をそれぞれ求め以下の基準で評価した。3試験の機械的物性の保持率が、
○:全て96%以上の場合
△:1試験でも90%以上96%未満があった場合
×:1試験でも90%未満があった場合
とした。
【0063】
[抗菌性評価]
各樹脂組成物について、抗菌性を評価した。
(8)抗菌性評価
(7)で評価用に作成した射出成形品プレートを5cm×5cmの正方形に切り取って、紫外線により滅菌したものを試験試料としてシャーレに入れた。試験片に、大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)の菌数が約4.5×105個/mlである菌培養液0.1mlを滴下し、シャーレの蓋を閉め、35℃、相対湿度90%で19時間を保存した。試験片を滅菌生理食塩水1.9mlで洗い出し、回収液とした。この回収液を混釈平板培養法により普通寒天培地で35℃、24時間培養して生菌数を測定した。
【0064】
【表1】
【0065】
【発明の効果】
本発明の抗菌剤は、少ない添加量で抗菌効果が得られ、樹脂に添加しても、加工性や成形性に問題を引き起こし難い。
【0066】
本発明の抗菌性材料およびこれを用いた樹脂組成物は、歯ブラシ、筆記具、厨房用品などの日用品、繊維、OA機器、家電製品、シート、フィルムなどのプラスチック成形品に使用することができる。
【0067】
また、本発明の抗菌剤は、一般印刷インキ、住宅用内外壁塗料、壁紙用接着剤などに添加することができ、容易に抗菌性を付与することができる。さらに、本発明の抗菌剤を含む樹脂組成物および成形品は、環境や生体に対する安全性が高いため、食品包装用にも適応できる。
Claims (4)
- クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部と含んでなる抗菌性材料0.1〜90重量%、および、
熱可塑性樹脂10〜99.9重量%を含んでなる樹脂組成物。 - 熱可塑性樹脂が、メルトフローレートが0.1〜400の樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2記載の樹脂組成物を用いてなる成形品。
- クマザサ抽出成分0.01〜60重量部と無機多孔質0.01〜60重量部と混合して抗菌性材料を製造する工程1、および
抗菌性材料と熱可塑性樹脂とを混合して成形品を製造する工程2を含むことを特徴とする成形品の製造方法。
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- 2003-04-25 JP JP2003121303A patent/JP2004323706A/ja active Pending
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