JP2004321058A - 腸炎ビブリオ検出用培地 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させるものであり、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成させるため、識別性をより高めると共に、抗菌剤を必ずしも必要としない、より安価な腸炎ビブリオ検出用培地を提供する。
【解決手段】培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有することを特徴とする腸炎ビブリオ検出用培地。
【選択図】 無し
【解決手段】培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有することを特徴とする腸炎ビブリオ検出用培地。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食中毒原因菌として重要な腸炎ビブリオを簡易かつ正確に検出することができる腸炎ビブリオ検出用培地に関する。
【0002】
【従来技術】
腸炎ビブリオ(Vibrio parahemolyticus)は、細菌性食中毒の原因菌として高い頻度で検出される病原細菌の一種である。本菌は広く海洋中に分布し、海産物を多量に接種する我が国では重要な病原菌の一つであり、特に夏期に本菌が原因の食中毒が多発している。この食中毒は、急性胃腸炎であり、発熱、嘔吐、腹痛、下痢を伴うことを特徴としている(島田 俊雄.食品衛生研究 2001年、51巻、p.7−18 )。
【0003】
従来、食品中のビブリオ属細菌の検出方法としては、例えば寒天平板塗沫法が挙げられる。この方法は、食塩およびポリミキシンBを含む寒天平板培地上に一定量の検体を塗沫し、培養した細菌を肉眼で判定していた。
【0004】
しかしながら、寒天平板塗沫法では、結果が判明するまでに時間がかかりすぎ、特に鮮度が商品価値として重要な水産品などの食品の検査方法としては、不適当と言わざるを得なかった。
【0005】
このため、現在では、このような食中毒原因菌である腸炎ビブリオの検出培地として、TCBS(Thiosulfate citrate bile salts sucrose)寒天培地が広く用いられている。このTCBS寒天培地は、白糖とpH指示薬を含むものである。腸炎ビブリオが白糖を利用しないのに対し、ビブリオ属に属し、かつ食中毒の原因菌であるビブリオ・アルギノリティカスやビブリオ・コレラが白糖を利用して酸を生成するという性質を利用したものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
発育してきた菌は、菌体中にpH指示薬を取り込む。白糖を利用しない腸炎ビブリオは、pH指示薬の色調変化がないため、緑色のコロニーを形成するが、白糖を利用し酸を生成する菌は、pH指示薬が黄色に変色するため黄色のコロニーを形成する。
【0007】
しかしながら、TCBS寒天培地においては、検体中に腸炎ビブリオと類縁菌が共存した場合、腸炎ビブリオの緑色のコロニーが他の色に変色してしまうため、正確な検出ができないという問題があった。
【0008】
このため、腸炎ビブリオと同じビブリオ属に属する類縁菌が共存しても色の変化を生じずに、正確かつ簡便に腸炎ビブリオを検出することができる培地が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この培地は、検出可能な遊離性基を有するβ−グルコシダーゼ基質とグラム陽性菌抗菌物質とを含有するため、グラム陽性菌は生育せず、かつビブリオ・アルギノリティカスやビブリオ・コレラは白色のコロニーを形成し、腸炎ビブリオが選択的にβ−グルコシダーゼ基質由来の特性を有するコロニーを形成するので、腸炎ビブリオが正確かつ簡便に検出できるというものである。
【0010】
しかしながら、この培地は、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させるものではないため、未だ腸炎ビブリオのみを発色させるに至らず、識別性に劣ると共に、抗菌剤を使用するため、高価なものであった。
【0011】
一方、発色酵素基質または蛍光酵素基質を含有させた、低温で長期間保存しても結晶の析出がなく安定な大腸菌群発育用生培地が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、細菌の生育を確認するための発色剤として酵素、例えば、フォスファターゼ、エステラーゼ、リパーゼなどの発色酵素基質を含有する一般生菌検出用シート状培地が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これらの培地は、確かに細菌の検出に発色酵素基質などを用いているものの、腸炎ビブリオの検出に関しては、全く示唆されていない。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−355091号公報
【特許文献2】
特開平8−317787号公報
【特許文献3】
特開2001−245693号公報
【0013】
【非特許文献1】
小林俊一 他.日細誌 1963年、18巻、p.387
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させるものであり、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成させるため、識別性をより高めると共に、抗菌剤を必ずしも必要としない、より安価な腸炎ビブリオ検出用培地を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有させることにより、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させることに成功し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明は、下記のような構成からなるものである。
(1)培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有することを特徴とする腸炎ビブリオ検出用培地。
(2)発色酵素基質の含有量が0.01〜1g/Lの範囲である(1)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
(3)発色酵素基質が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、および3−インドリル−フォスフェートから成る群から選択される少なくとも1種、またはそれらの塩類である(1)または(2)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
(4)培地のpHが8.0〜9.5の範囲に調整されている(1)〜(3)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
(5)培地1Lあたり、発色酵素基質0.01〜1g、ペプトン1〜30g、酵母エキス1〜10g、チオ硫酸ナトリウム5〜20g、クエン酸ナトリウム5〜20g、塩化ナトリウム15〜40g、胆汁末1〜10g、および寒天5〜20gを含有する(1)〜(4)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の腸炎ビブリオ検出用培地の特徴は、培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有させることにある。この発色酵素基質は、腸炎ビブリオが産生するアルカリフォスファターゼによって分解されて、培地中で呈色する。従って腸炎ビブリオが培地上で増殖すると、肉眼(目視)により呈色したコロニーが観察される。
【0018】
この発色酵素基質の含有量は、0.01〜1g/Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.5g/Lの範囲である。基質の含有量が0.01g/L未満になると、コロニーの呈色に時間を要し、検出感度が低下する。逆に、1g/Lを超えると、生育しない腸炎ビブリオも存在する。
【0019】
本発明で使用する発色酵素基質としては、アルカリフォスファターゼによって分解されて培地中で呈色する限り、公知の基質の中から適宜選択することができる。その具体例としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、および3−インドリル−フォスフェートから成る群から選択される少なくとも1種、またはそれらの塩類が挙げられる。
【0020】
本発明においては、培地のpHは8.0〜9.5、好ましくは8.5〜9.0の範囲に調整する。アルカリフォスファターゼの至適pH付近で反応させることが望ましく、この範囲外のpHになると、酵素活性が著しく低下してしまうため、反応に長時間を要することになる。従って培地のpHを上記の範囲に調整するため緩衝剤を用いることが好ましい。この緩衝剤としては、pHを上記範囲に維持できるものであれば、特に制限されず、公知の緩衝液の中から適宜選択することができるが、中でもグッド緩衝液やリン酸緩衝液などが好ましい。
【0021】
本発明の腸炎ビブリオ検出用培地は、少なくとも培地1Lあたり、発色酵素基質0.01〜1g、ペプトン1〜30g、酵母エキス1〜10g、チオ硫酸ナトリウム5〜20g、クエン酸ナトリウム5〜20g、塩化ナトリウム15〜40g、胆汁末1〜10g、および寒天5〜20gを含有することが好ましい。これらの他に、腸炎ビブリオの発育を促進する栄養源として、硫酸アンモニウムなどの窒素源、マルトースやスクロースなどの糖類、さらに必要に応じてミネラルやビタミンなどの任意のものを含めることができる。
【0022】
本発明では、特に必要とされないが、雑菌の繁殖を抑制するための抗菌剤として、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシンなどのアミノグリコキシド系抗生物質、クロラムフェニコール、テトラサイクリンなどの広範囲抗生物質、広範囲の抗菌スペクトルを有するペニシリン、セファロスポリンを含有させることができる。
【0023】
本発明の培地は、液体、半流動、固形のいずれの形態もとりうるが、検出のし易さ等の観点から、固形培地が好ましく、より好ましくは平板固形培地の形態である。
固形培地の固化剤としては、寒天、カラギーナン、アガロースなど通常使用されているものが挙げられる。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させるものであり、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成させるため、食中毒原因菌として重要な腸炎ビブリオを簡易かつ正確に検出できる腸炎ビブリオ検出用培地を提供することができる。従って本発明によれば、腸炎ビブリオのみを特異的に検出できるので、臨床的にもその意義は大きいと考えられる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0026】
実施例1.
表1に示した培地成分81.1gを秤量し、1000mLの精製水に溶解した。振盪した後、pHを8.8±0.2に調整し、100℃で20分間加熱滅菌した。50℃に冷却後、20mLシャーレに分注して固化した。固化後、30分間乾燥した。
菌株を一晩培養し、その菌株をマクファーランド#1(3×108cfu/mL)となるように滅菌生理食塩水に添加した。この菌株をエーゼで培地に画線し、37℃で18時間培養した。
表2の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオは緑色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0027】
【0028】
【0029】
実施例2
実施例1で用いた5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩に代えて5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩を用いた以外は、実施例1と同様な方法により腸炎ビブリオのコロニーの呈色を調べた。
表3の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオはオレンジ色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0030】
【0031】
実施例3
実施例1で用いた5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩に代えて6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩を用いた以外は、実施例1と同様な方法により腸炎ビブリオのコロニーの呈色を調べた。
表4の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオはピンク色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0032】
【0033】
実施例4
実施例1で用いた5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩に代えて3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩を用いた以外は、実施例1と同様な方法により腸炎ビブリオのコロニーの呈色を調べた。
表5の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオは青色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0034】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食中毒原因菌として重要な腸炎ビブリオを簡易かつ正確に検出することができる腸炎ビブリオ検出用培地に関する。
【0002】
【従来技術】
腸炎ビブリオ(Vibrio parahemolyticus)は、細菌性食中毒の原因菌として高い頻度で検出される病原細菌の一種である。本菌は広く海洋中に分布し、海産物を多量に接種する我が国では重要な病原菌の一つであり、特に夏期に本菌が原因の食中毒が多発している。この食中毒は、急性胃腸炎であり、発熱、嘔吐、腹痛、下痢を伴うことを特徴としている(島田 俊雄.食品衛生研究 2001年、51巻、p.7−18 )。
【0003】
従来、食品中のビブリオ属細菌の検出方法としては、例えば寒天平板塗沫法が挙げられる。この方法は、食塩およびポリミキシンBを含む寒天平板培地上に一定量の検体を塗沫し、培養した細菌を肉眼で判定していた。
【0004】
しかしながら、寒天平板塗沫法では、結果が判明するまでに時間がかかりすぎ、特に鮮度が商品価値として重要な水産品などの食品の検査方法としては、不適当と言わざるを得なかった。
【0005】
このため、現在では、このような食中毒原因菌である腸炎ビブリオの検出培地として、TCBS(Thiosulfate citrate bile salts sucrose)寒天培地が広く用いられている。このTCBS寒天培地は、白糖とpH指示薬を含むものである。腸炎ビブリオが白糖を利用しないのに対し、ビブリオ属に属し、かつ食中毒の原因菌であるビブリオ・アルギノリティカスやビブリオ・コレラが白糖を利用して酸を生成するという性質を利用したものである(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
発育してきた菌は、菌体中にpH指示薬を取り込む。白糖を利用しない腸炎ビブリオは、pH指示薬の色調変化がないため、緑色のコロニーを形成するが、白糖を利用し酸を生成する菌は、pH指示薬が黄色に変色するため黄色のコロニーを形成する。
【0007】
しかしながら、TCBS寒天培地においては、検体中に腸炎ビブリオと類縁菌が共存した場合、腸炎ビブリオの緑色のコロニーが他の色に変色してしまうため、正確な検出ができないという問題があった。
【0008】
このため、腸炎ビブリオと同じビブリオ属に属する類縁菌が共存しても色の変化を生じずに、正確かつ簡便に腸炎ビブリオを検出することができる培地が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この培地は、検出可能な遊離性基を有するβ−グルコシダーゼ基質とグラム陽性菌抗菌物質とを含有するため、グラム陽性菌は生育せず、かつビブリオ・アルギノリティカスやビブリオ・コレラは白色のコロニーを形成し、腸炎ビブリオが選択的にβ−グルコシダーゼ基質由来の特性を有するコロニーを形成するので、腸炎ビブリオが正確かつ簡便に検出できるというものである。
【0010】
しかしながら、この培地は、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させるものではないため、未だ腸炎ビブリオのみを発色させるに至らず、識別性に劣ると共に、抗菌剤を使用するため、高価なものであった。
【0011】
一方、発色酵素基質または蛍光酵素基質を含有させた、低温で長期間保存しても結晶の析出がなく安定な大腸菌群発育用生培地が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、細菌の生育を確認するための発色剤として酵素、例えば、フォスファターゼ、エステラーゼ、リパーゼなどの発色酵素基質を含有する一般生菌検出用シート状培地が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これらの培地は、確かに細菌の検出に発色酵素基質などを用いているものの、腸炎ビブリオの検出に関しては、全く示唆されていない。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−355091号公報
【特許文献2】
特開平8−317787号公報
【特許文献3】
特開2001−245693号公報
【0013】
【非特許文献1】
小林俊一 他.日細誌 1963年、18巻、p.387
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させるものであり、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成させるため、識別性をより高めると共に、抗菌剤を必ずしも必要としない、より安価な腸炎ビブリオ検出用培地を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有させることにより、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させることに成功し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明は、下記のような構成からなるものである。
(1)培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有することを特徴とする腸炎ビブリオ検出用培地。
(2)発色酵素基質の含有量が0.01〜1g/Lの範囲である(1)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
(3)発色酵素基質が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、および3−インドリル−フォスフェートから成る群から選択される少なくとも1種、またはそれらの塩類である(1)または(2)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
(4)培地のpHが8.0〜9.5の範囲に調整されている(1)〜(3)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
(5)培地1Lあたり、発色酵素基質0.01〜1g、ペプトン1〜30g、酵母エキス1〜10g、チオ硫酸ナトリウム5〜20g、クエン酸ナトリウム5〜20g、塩化ナトリウム15〜40g、胆汁末1〜10g、および寒天5〜20gを含有する(1)〜(4)記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の腸炎ビブリオ検出用培地の特徴は、培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有させることにある。この発色酵素基質は、腸炎ビブリオが産生するアルカリフォスファターゼによって分解されて、培地中で呈色する。従って腸炎ビブリオが培地上で増殖すると、肉眼(目視)により呈色したコロニーが観察される。
【0018】
この発色酵素基質の含有量は、0.01〜1g/Lの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.5g/Lの範囲である。基質の含有量が0.01g/L未満になると、コロニーの呈色に時間を要し、検出感度が低下する。逆に、1g/Lを超えると、生育しない腸炎ビブリオも存在する。
【0019】
本発明で使用する発色酵素基質としては、アルカリフォスファターゼによって分解されて培地中で呈色する限り、公知の基質の中から適宜選択することができる。その具体例としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、および3−インドリル−フォスフェートから成る群から選択される少なくとも1種、またはそれらの塩類が挙げられる。
【0020】
本発明においては、培地のpHは8.0〜9.5、好ましくは8.5〜9.0の範囲に調整する。アルカリフォスファターゼの至適pH付近で反応させることが望ましく、この範囲外のpHになると、酵素活性が著しく低下してしまうため、反応に長時間を要することになる。従って培地のpHを上記の範囲に調整するため緩衝剤を用いることが好ましい。この緩衝剤としては、pHを上記範囲に維持できるものであれば、特に制限されず、公知の緩衝液の中から適宜選択することができるが、中でもグッド緩衝液やリン酸緩衝液などが好ましい。
【0021】
本発明の腸炎ビブリオ検出用培地は、少なくとも培地1Lあたり、発色酵素基質0.01〜1g、ペプトン1〜30g、酵母エキス1〜10g、チオ硫酸ナトリウム5〜20g、クエン酸ナトリウム5〜20g、塩化ナトリウム15〜40g、胆汁末1〜10g、および寒天5〜20gを含有することが好ましい。これらの他に、腸炎ビブリオの発育を促進する栄養源として、硫酸アンモニウムなどの窒素源、マルトースやスクロースなどの糖類、さらに必要に応じてミネラルやビタミンなどの任意のものを含めることができる。
【0022】
本発明では、特に必要とされないが、雑菌の繁殖を抑制するための抗菌剤として、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシンなどのアミノグリコキシド系抗生物質、クロラムフェニコール、テトラサイクリンなどの広範囲抗生物質、広範囲の抗菌スペクトルを有するペニシリン、セファロスポリンを含有させることができる。
【0023】
本発明の培地は、液体、半流動、固形のいずれの形態もとりうるが、検出のし易さ等の観点から、固形培地が好ましく、より好ましくは平板固形培地の形態である。
固形培地の固化剤としては、寒天、カラギーナン、アガロースなど通常使用されているものが挙げられる。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、腸炎ビブリオのみを呈色させたコロニーを形成させるものであり、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成させるため、食中毒原因菌として重要な腸炎ビブリオを簡易かつ正確に検出できる腸炎ビブリオ検出用培地を提供することができる。従って本発明によれば、腸炎ビブリオのみを特異的に検出できるので、臨床的にもその意義は大きいと考えられる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0026】
実施例1.
表1に示した培地成分81.1gを秤量し、1000mLの精製水に溶解した。振盪した後、pHを8.8±0.2に調整し、100℃で20分間加熱滅菌した。50℃に冷却後、20mLシャーレに分注して固化した。固化後、30分間乾燥した。
菌株を一晩培養し、その菌株をマクファーランド#1(3×108cfu/mL)となるように滅菌生理食塩水に添加した。この菌株をエーゼで培地に画線し、37℃で18時間培養した。
表2の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオは緑色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0027】
【0028】
【0029】
実施例2
実施例1で用いた5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩に代えて5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩を用いた以外は、実施例1と同様な方法により腸炎ビブリオのコロニーの呈色を調べた。
表3の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオはオレンジ色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0030】
【0031】
実施例3
実施例1で用いた5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩に代えて6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩を用いた以外は、実施例1と同様な方法により腸炎ビブリオのコロニーの呈色を調べた。
表4の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオはピンク色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0032】
【0033】
実施例4
実施例1で用いた5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩に代えて3−インドリル−フォスフェート・p−トルイジン塩を用いた以外は、実施例1と同様な方法により腸炎ビブリオのコロニーの呈色を調べた。
表5の結果に示すように、本発明の培地上では、腸炎ビブリオは青色のコロニーを形成し、他のビブリオ属は無色のコロニーを形成し、ビブリオ以外の菌は、発育を阻止されているか、無色のコロニーを形成した。従って本発明の培地を用いれば、腸炎ビブリオが正確かつ簡易に検出できることが判る。
【0034】
Claims (5)
- 培地中にアルカリフォスファターゼ発色酵素基質を含有することを特徴とする腸炎ビブリオ検出用培地。
- 発色酵素基質の含有量が0.01〜1g/Lの範囲である請求項1記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
- 発色酵素基質が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、6−クロロ−3−インドリル−フォスフェート、および3−インドリル−フォスフェートから成る群から選択される少なくとも1種、またはそれらの塩類である請求項1または2記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
- 培地のpHが8.0〜9.5の範囲に調整されている請求項1〜3記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
- 培地1Lあたり、発色酵素基質0.01〜1g、ペプトン1〜30g、酵母エキス1〜10g、チオ硫酸ナトリウム5〜20g、クエン酸ナトリウム5〜20g、塩化ナトリウム15〜40g、胆汁末1〜10g、および寒天5〜20gを含有する請求項1〜4記載の腸炎ビブリオ検出用培地。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003119209A JP2004321058A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 腸炎ビブリオ検出用培地 |
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JP2003119209A JP2004321058A (ja) | 2003-04-24 | 2003-04-24 | 腸炎ビブリオ検出用培地 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012139138A (ja) * | 2010-12-28 | 2012-07-26 | Nissui Pharm Co Ltd | 腸炎ビブリオの検出法 |
CN102703566A (zh) * | 2012-05-31 | 2012-10-03 | 上海市疾病预防控制中心 | 副溶血性弧菌产毒株鉴定平板试剂盒、制备及使用方法 |
-
2003
- 2003-04-24 JP JP2003119209A patent/JP2004321058A/ja active Pending
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CN102703566A (zh) * | 2012-05-31 | 2012-10-03 | 上海市疾病预防控制中心 | 副溶血性弧菌产毒株鉴定平板试剂盒、制备及使用方法 |
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