JP2004319672A - 発光ダイオード - Google Patents
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Abstract
【課題】電流分散層として金属酸化物の透明導電膜を用いた構造のLEDにおいて、透明導電膜上に形成したパッド電極の剥がれの問題を解決できる安価な電極構造を得ること。
【解決手段】半導体基板1上に発光部11となるpn接合のシングルヘテロ構造またはダブルヘテロ構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜7を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極8、9を形成した発光ダイオードにおいて、透明導電膜上の表面側電極8が重層構造から成り、その最下層8aがTi、最上層8bがAu、中間層8cがNi又はAlである構造とする。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体基板1上に発光部11となるpn接合のシングルヘテロ構造またはダブルヘテロ構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜7を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極8、9を形成した発光ダイオードにおいて、透明導電膜上の表面側電極8が重層構造から成り、その最下層8aがTi、最上層8bがAu、中間層8cがNi又はAlである構造とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流分散層として金属酸化物の透明導電膜を用いた構造の発光ダイオード、特にその透明導電膜上のパッド電極の剥がれを防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)はGaPの緑色、AlGaAsの赤色がほとんどであった。しかし、最近GaN系やAlGaInP系の結晶層を有機金属気相成長法(MOVPE法)で成長できるようになったことから、橙色、黄色、緑色、青色の高輝度LEDが製作できるようになってきた。
【0003】
MOVPE法で形成したLED用エピタキシャルウェハは、これまでに無かった短波長の発光や、高輝度を示すLEDの製作を可能とした。
【0004】
従来の高輝度LEDでは、光の取り出し面中にある表面側電極(パッド電極)で反射されて、その直下での発光が外部に取り出せないことから、発光の取出し方向に在る上部クラッド層の上に電流分散層(ウィンドウ層)を設けて、上部電極から供給された電流を電流分散層中でチップ横方向に広げ、上部電極直下以外の領域での発光割合を高くしている。しかし、高輝度を得るために、電流分散層の膜厚を厚く成長させようとすると、LED用エピタキシャルウェハのコストが高くなることが問題であった。
【0005】
これらの問題を解決する方法としては、電流分散層としてできるだけ抵抗の低い値が得られる材料を用いる方法がある。例えばAlGaInP4元系の場合には、電流分散層としてGaPやAlGaAsが用いられる。しかし、これらの抵抗率の低い材料を用いてもやはり電流分散を良くするためには、膜厚を8μm以上まで厚くする必要がある。
【0006】
そこで、電流分散層を薄くするために、電流分散層の抵抗率を低くすることが考えられる。移動度を大幅に変えることは困難であることから、キャリア濃度を高くしようと試みられているが、現段階では電流分散層を薄くできるほどキャリア濃度を高くすることはできない。
【0007】
この解決手段として、半導体の電流分散層の代わりに、酸化インジウム・錫(Indium Tin Oxide:略称ITO)のような金属酸化物から成る透明導電膜を電流分散層に用いる方法が提案されている。この金属酸化物を用いた透明導電膜は、キャリア濃度が非常に高く、薄い膜厚で十分な電流分散を得ることができる。
【0008】
この透明導電膜は半導体エピタキシャル層の表面に形成され、その上にワイヤボンディング用の金属電極(パッド電極)が形成される。ところが、この時、透明導電膜が金属酸化物である場合、その上に形成した上部電極(パッド電極)が、エッチングやダイシング等のプロセス加工中やワイヤボンディング中に剥がれるという大きな問題があった。
【0009】
この問題を解決する技術としては、n形酸化亜鉛を含む酸化物窓層(電流分散層)上の電極を重層構造とすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、電極の最下層を、遷移金属の金属酸化物を含む層から構成するものであり、具体的には、酸化ニッケル(NiO)(最下層)/Au(最上層)或いは酸化チタン(TiO2)/Al等の重層構造電極とするものである。
【0010】
この重層電極は、最下層の酸化物層を構成する金属元素であるNi或いはチタン(Ti)単体膜と最上層をなす金属膜との積層構造、即ち、Ni/Au或いはTi/Al重層構造を基として構成する。電極にオーミック性を付与するための熱処理(アロイング)或いはLED製造プロセスにおける加熱処理に伴い、かくの如く構成された単体金属の重層構造電極においては、最下層のNi層或いはTi層が下地の酸化物窓層から侵入する酸素により酸化され、酸化物を含む層となり、結果としてNiO/Au或いはTiO2/Al重層構造の電極が帰結される。
【0011】
上記特許文献1には、最上層をAuとする重層電極にあって、最下層と最上層との間に、モリブデン(Mo)またはPtからなる層を配備する構成例も開示されている。この様に、高融点金属からなる中間層が挿入された構成とすると、Au電極層との接合界面近傍の領域に酸素原子が濃縮されるのが避けられ、相互に強固に密着した重層電極がもたらされる利点がある。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−44503号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記問題を解決するために、電極剥がれ防止用電極として、最上層と最下層との間にモリブデンまたは白金を用いる方法の場合、これらの金属が高価であるという問題がある。
【0014】
また、これらの金属は高融点金属であることから、その形成方法には高価な装置であるスパッタ法を用いなくてはならない。こられの理由のため、発光ダイオードの価格が高くなる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、エピタキシャルウェハの表面に電流分散層として金属酸化物の透明導電膜を用いた構造のLEDにおいて、透明導電膜上に形成したパッド電極の剥がれの問題を解決することのできる安価な電極構造を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0017】
請求項1の発明に係る発光ダイオードは、半導体基板上に発光部となるpn接合のシングルヘテロ(SH)構造またはダブルヘテロ(DH)構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極を形成した発光ダイオードにおいて、透明導電膜上の表面側電極が重層構造から成り、その最下層がTi、最上層がAu、中間層がNiであることを特徴とする。
【0018】
これは透明導電膜上の表面側電極(パッド電極)がTi/Ni/Auの重層構造である発光ダイオードである。
【0019】
請求項2の発明は、半導体基板上に発光部となるpn接合のシングルヘテロ(SH)構造またはダブルヘテロ(DH)構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極を形成した発光ダイオードにおいて、透明導電膜上の表面側電極が重層構造から成り、その最下層がTi、最上層がAu、中間層がAlであることを特徴とする。
【0020】
これは透明導電膜の上のパッド電極がTi/Al/Auの重層構造である発光ダイオードである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の発光ダイオードにおいて、上記表面側電極の最上層が、アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層の二層構造からなることを特徴とする。
【0022】
<発明の要点>
上記目的を達するために、本発明では、金属酸化物の電流分散膜の上に形成するための剥がれにくい電極構造として、電流分散層としての金属酸化物からなる透明導電膜、例えばITO膜の表面に、まずTi層を形成し、そのTi層の上に、NiとAu、もしくはAlとAuを順次積層することにより、電極剥がれの問題を解決した。
【0023】
この構造の電極は、金属酸化物からなる透明導電膜からの電極剥がれを生じないという特長に加えて、最上層と最下層との間の中間層にNi又はAlを用いているため、従来の高価なモリブデンまたは白金を用いた構造に比べ、材料が安価である。また、スパッタ法を用いなくても、Ni又はAlは通常の真空蒸着法により製造できるという長所がある。従って、従来よりも発光ダイオードをより安価に提供することができる。
【0024】
透明導電膜は、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化マグネシウム(MgO)等の酸化物であってよいが、特に酸化インジウム錫(ITO)からなるのが好ましい。ITOの比抵抗は約3×10−6Ωmで、p型GaPの比抵抗の約百分の一であるので、透明導電膜をITOで形成することにより、透明導電膜の厚さを大幅に減少することができる。
【0025】
表面側電極は、結線が容易であること(良好なボンディング特性)、下部層との低いオーミック接触抵抗が安定して得られること(良好なオーミック特性)及び下部層との密着性が良好であることが要求される。これらを満たすものとして、本発明では表面側電極(パッド電極)をTi/Ni/Auの重層構造又はTi/Al/Auの重層構造とする。最上層がAuであるためボンディング特性も良好である。
【0026】
表面側電極(パッド電極)の最上層の材料は、ワイヤボンディング性の点からは、より柔らかい方が良い。このためパッド電極の最上層は、アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層の二層構造からなることが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0028】
本発明の一実施形態を説明するための発光ダイオードの構造を図1に示す。この発光ダイオードの構造は、第一導電型基板としてのn型のGaAs基板1上に、第一導電型バッファ層であるn型GaAsバッファ層10、第一導電型クラッド層であるn型AlGaInPクラッド層2と、AlGaInP活性層3と、第二導電型クラッド層であるp型AlGaInPクラッド層4とから成る発光部11があり、その上にp型GaP電流分散層(第二導電型電流分散層)5、その上にAlInP表面半導体層6が、さらにその上に、十分な透光性を有し、且つ電流分散を得られる電気特性を有する透明導電膜として、SnドープIn2O3(Indium Tin Oxide:略称ITO)から成るITO膜7がある。そして、チップの表面側中央つまりITO膜(透明導電膜)7の中央には円形のパッド電極(部分電極)から成る表面側電極8が設けられており、またチップの裏面には金属電極から成る基板側電極9が設けられている。
【0029】
ここまでの構造は従来の透明導電膜を用いた構造の発光ダイオードと同じであり、本発明はこの構造の発光ダイオードにおいて、電流分散層として作用する金属酸化膜(ITO膜7)上に設ける表面側電極8が三層の重層構造を持ち、その最下層8aがTi、最上層8bがAu、中間層8cがNi又はAlから成ることに特徴がある。
【0030】
かかる重層構造の表面側電極を持つ本発明の作用効果を確認するため、発光波長630nm付近の赤色発光ダイオード用エピタキシャルウェハの従来例と実施例を作製した。
【0031】
[従来例]
従来例として、図1に示したエピタキシャル層の積層構造を持つ発光波長630nm付近の赤色発光ダイオード用エピタキシャルウェハであって、表面側電極8の重層構造の材料のみ相違するものを作製した。
【0032】
n型GaAs基板1上に、MOVPE法で、n型(Seドープ)GaAsバッファ層10、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層2、アンドープ(Al0.15Ga0.85)0.5In0.5P活性層3、p型(亜鉛ドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層4、p型GaP電流分散層5を成長させ、その上にAlInP表面半導体層6をMOVPE成長で成長させた。
【0033】
このエピタキシャルウェハにITO膜7をスパッタ法にて形成した。この膜エピタキシャルウェハに対し、基板側全面にn型電極(基板側電極9)を形成し、またITO膜側に直径130μmの円形のパッド電極から成るp型電極(表面側電極8)を形成して、LEDチップとした。
【0034】
従来例の試料は3種作製した。まず、それらのn側電極(基板側電極9)は、真空蒸着法により、AuGe、Ni、Auを、それぞれ基板側から順に60nm、10nm、500nm蒸着した。
【0035】
またチップ上面のp側電極(表面側電極8)については、その最下層8a、中間層8c、最上層8bとして、第1試料ではAuZn、Ni、Auの三層、第2試料ではAuBe、Ni、Auの三層、または第3試料ではAuGe、Ni、Auの三層を、それぞれITO膜側から順に60nm、10nm、1000nm真空蒸着法により蒸着した。
【0036】
また別の第4試料として、Ti、AuをITO膜側から順に20nm、1000nm蒸着し、二層の重層構造を持つ表面側電極8としたものを作製した。
【0037】
上記ITO膜及び電極付きエピタキシャルウェハを、チップサイズ300μm角の発光ダイオードにするため、エッチングやダイシング等のプロセス加工及びワイヤボンディングを行った。この結果、第1試料であるAuZn、Ni、AuをITO膜側から順に蒸着したAuZn/Ni/Auの電極構造のものと、第2試料及び第3試料であるAuBe、Ni、Au及びAuGe、Ni、AuをITO膜側から順に蒸着したAuBe/Ni/Au及びAuGe/Ni/Au電極構造のものは、エッチングやダイシング等のプロセス加工中にパッド電極(表面側電極8)が約50%以上剥がれた。更にワイヤボンディング工程を行うと、電極パッド(表面側電極8)が98%以上剥がれた。
【0038】
また第4試料であるTi/Au電極構造のものは、ワイヤボンディング工程で、電極パッドのAu層がTi層から90%剥がれた(金属酸化膜とTiは密着していて剥がれない)。
【0039】
[実施例1]
図1の構造を持つ発光波長630nm付近の赤色発光ダイオード用エピタキシャルウェハを作製した。MOVPE法によるエピタキシャル層の成長方法、エピタキシャル層1〜6と10の積層構造等は、基本的に上記の従来例の場合と同じとした。また、スパッタ法によるITO膜7の形成方法、真空蒸着法による電極の形成方法及び電極形状も基本的に前記の従来例と同じとした。更にプロセス加工及びワイヤボンディング工程も、前記の従来例と同じとした。
【0040】
すなわち、n型GaAs基板1上に、MOVPE法で、n型(Seドープ)GaAsバッファ層10、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層2、アンドープ(Al0.15Ga0.85)0.5In0.5P活性層3、p型(亜鉛ドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層4、p型GaP電流分散層5を成長させ、その上にAlInP表面半導体層6をMOVPE成長で成長させた。このエピタキシャルウェハにITO膜7をスパッタ法にて形成した。
【0041】
このエピタキシャルウェハに対し、基板側全面にn型電極(基板側電極9)を形成し、またITO膜側に直径130μmの円形のパッド電極から成るp型電極(表面側電極8)を形成して、LEDチップとした。
【0042】
n型電極(基板側電極9)は、AuGe/Ni/Auの重層構造であり、真空蒸着法によりAuGeを60nm、Niを10nm、Auを500nm順に蒸着した。
【0043】
チップ上面側のITO膜7上のp側電極(表面側電極8)については、その最下層8a、中間層8c、最上層8bとして、Ti、Ni、Auを、真空蒸着法により、それぞれITO膜側から順に20nm、10nm、1000nm蒸着した。
【0044】
上記ITO膜及び電極付きエピタキシャルウェハを、チップサイズ300μm角の発光ダイオードにするため、上記従来例と同じエッチングやダイシング等のプロセス加工及びワイヤボンディング(超音波ボンディング法による結線)を行なった。この結果、エッチングやダイシング等のプロセス加工中での電極パッド剥がれは0〜1%と少なく、またワイヤボンディング工程での電極パッド剥がれも0〜1%にすることが出来た。更にワイヤボンディング工程でのAu層のみの剥がれも、0〜1%にすることが出来た。
【0045】
[実施例2]
チップ上面電極つまり表面側電極8に関し、実施例1と同じTi/Ni/Auの重層構造であるが、そのAuの膜厚を1000nm、Tiの膜厚を20nmと一定にして、Niの膜厚を5〜500nmに変えたものを作製した。この構造の表面側電極8を持つエピタキシャルウェハにおいても、エッチングやダイシング等のプロセス加工中での電極パッド剥がれを0〜1%に、またワイヤボンディング工程での電極パッド剥がれを0〜1%にすることが出来た。
【0046】
[実施例3]
この実施例3では、上記実施例1及び2の電極構造におけるNiの代わりにAlを用いた。すなわち、チップ上面電極つまり金属酸化膜上の表面側電極8を、最下層がTi、最上層がAu、中間層がAlである重層構造とした。
【0047】
このようにTi/Al/Auの重層構造から成るパッド電極を用いた場合にも、エッチングやダイシング等のプロセス加工中での電極パッド剥がれを0〜1%に、またワイヤボンディング工程での電極パッド剥がれを0〜1%にすることが出来た。このことから、上記実施例1及び2の電極構造におけるNiの代わりにAlを用いた構成の場合にも、全く同様に電極剥がれの問題が起こらないことを確認できた。
【0048】
[実施例4]
表面側電極(パッド電極)8の最上層8bの材料Auは、ワイヤボンディング性の点からは、より柔らかい方が良い。そこで、本実施例4では、上記実施例1〜3における三層の重層構造から成るパッド電極の最上層8bを、アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層の二層構造とした。このようにAu層の二層構造からなるパッド電極(アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層)を用いたところ、よりワイヤボンダビリティが良くなった。
【0049】
[変形例]
上記実施例では、pn接合により、より効率よく光を発光させるために活性層の両側にヘテロ構造を設け、電子と正孔とを活性層に閉じ込めるダブルヘテロ(DH)構造が採用されている。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、pn接合のシングルヘテロ(SH)構造の発光ダイオードについても適用することができる。又、上記実施例では金属酸化物である透明導電膜(ITO膜7)の成膜方法をスパッタ法としたが、透明導電膜(ITO膜7)の成膜方法はスパッタ法に限定されるものではなく、塗布法、スプレー熱分解法、真空蒸着法で透明導電膜(ITO膜7)を形成しても良い。
【0050】
本発明は、電流分散層として作用する金属酸化物からなる透明導電膜上に設けたパッド電極の剥がれをなくすることを本質とするものであり、LEDのエピタキシャル層の積層構造については、基本的に制約がなく、任意の構造とすることがきる。例えば、上記の実施の形態ではAlGaInP系のDH型LEDについて述べたが、本発明はGaAs系、AlGaAs系、InAlGaAs系あるいはZnSe系等他のDH型LEDにも適用できることはもちろんである。また以上の実施例の説明においてpとnとを全く逆に置き換えてもよい。さらにまた、上記のバッファ層10や表面半導体層6を省略した構成としたり、シングルヘテロ(SH)構造とすることができる。
【0051】
また本発明は、GaN、GaAlN、InGaN等の窒化ガリウム系化合物半導体による青色発光ダイオードの電極構造に適用することもできる。
【0052】
図2は、GaNよりなるホモ接合の発光ダイオード(LED)に本発明の電極構造を適用した例を示す。21はサファイア基板、22はn型GaN層、23は非常に高抵抗なp型GaN(i型GaN)層、24は透明導電膜、25はp型電極(表面側電極)、26はn型電極である。この図2に示すようにn型電極26はn型GaN層22の側面に設けられるが、本明細書においては、このn型電極26もチップの裏面側に通電のために形成した金属電極であって、上記基板側電極の概念に含まれるものとする。
【0053】
p型電極(表面側電極)25は、p型GaN層23上に形成された透明導電膜24上に設けられており、これらの電極に金線をワイヤーボンドして通電することにより、LEDより発する光を取り出す構造としている。この表面側電極25の構造は、既に実施例1〜4として説明した重層構造、つまり剥がれの生じない電極として形成される。図2には、代表的に最下層25a、最上層25b、中間層25cから成る重層構造の表面側電極25として示してある。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0055】
本発明では、金属酸化膜上の電極であるパッド電極をTi/Ni/Auの重層構造又はTi/Al/Auの重層構造としている。すなわち、本発明は、金属酸化物からなる透明導電膜の表面に、まず剥がれにくい層としてTi層を形成し、そのTi層の上に、NiとAu、もしくはAlとAuを順次積層する構成であるため、パッド電極全体として金属酸化物の透明導電膜上から電極剥がれを生じなくなる。そして、最上層はAuから成るため、これに対するワイヤボンディング性も良好である。よって、本発明の電極構造を用いることにより、ITO膜等の金属酸化物の透明導電膜を用いたLEDの製作を実現することができる。
【0056】
更に、本発明で用いた電極材料は低融点材料であることから、一般的、且つ安価な装置である真空蒸着法でパッド電極を形成することができる。
【0057】
また本発明で用いた電極材料は比較的安価である。このため、発光ダイオード用の電極形成を、従来よりも高価にすること無く、形成することができる。
【0058】
本発明の対象とする発光ダイオードは、電流分散層としてITO膜等の金属酸化物からなる透明導電膜を用いて電流分散する構成であり、電流分散層を厚くする必要が無い。この技術により、LED用のエピタキシャル層の膜厚は五分の一から数十分の一まで薄くすることができる。これは、LEDを構成するエピタキシャル層の中で電流分散層の厚さがもっとも厚かったためである。これにより、LED用エピタキシャルウェハの価格を大幅に低くすることができる。
【0059】
また、これまでは半導体のエピタキシャル層を用いており、このエピタキシャル層を厚くしても十分な電流分散特性を得ることができなかったが、本発明では金属酸化物から成る透明導電膜を電流分散層に用いることを実現しているため、LEDの輝度を約50%程度高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光ダイオードの構造を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかる発光ダイオードの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 GaAs基板(第一導電型基板)
2 AlGaInPクラッド層(第一導電型クラッド層)
3 AlGaInP活性層
4 AlGaInPクラッド層(第二導電型クラッド層)
5 GaP電流分散層(第二導電型電流分散層)
6 AlInP表面半導体層
7 ITO膜(透明導電膜)
8 表面側電極
8a 最下層
8b 最上層
8c 中間層
9 基板側電極
10 GaAsバッファ層(第一導電型)
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流分散層として金属酸化物の透明導電膜を用いた構造の発光ダイオード、特にその透明導電膜上のパッド電極の剥がれを防止する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)はGaPの緑色、AlGaAsの赤色がほとんどであった。しかし、最近GaN系やAlGaInP系の結晶層を有機金属気相成長法(MOVPE法)で成長できるようになったことから、橙色、黄色、緑色、青色の高輝度LEDが製作できるようになってきた。
【0003】
MOVPE法で形成したLED用エピタキシャルウェハは、これまでに無かった短波長の発光や、高輝度を示すLEDの製作を可能とした。
【0004】
従来の高輝度LEDでは、光の取り出し面中にある表面側電極(パッド電極)で反射されて、その直下での発光が外部に取り出せないことから、発光の取出し方向に在る上部クラッド層の上に電流分散層(ウィンドウ層)を設けて、上部電極から供給された電流を電流分散層中でチップ横方向に広げ、上部電極直下以外の領域での発光割合を高くしている。しかし、高輝度を得るために、電流分散層の膜厚を厚く成長させようとすると、LED用エピタキシャルウェハのコストが高くなることが問題であった。
【0005】
これらの問題を解決する方法としては、電流分散層としてできるだけ抵抗の低い値が得られる材料を用いる方法がある。例えばAlGaInP4元系の場合には、電流分散層としてGaPやAlGaAsが用いられる。しかし、これらの抵抗率の低い材料を用いてもやはり電流分散を良くするためには、膜厚を8μm以上まで厚くする必要がある。
【0006】
そこで、電流分散層を薄くするために、電流分散層の抵抗率を低くすることが考えられる。移動度を大幅に変えることは困難であることから、キャリア濃度を高くしようと試みられているが、現段階では電流分散層を薄くできるほどキャリア濃度を高くすることはできない。
【0007】
この解決手段として、半導体の電流分散層の代わりに、酸化インジウム・錫(Indium Tin Oxide:略称ITO)のような金属酸化物から成る透明導電膜を電流分散層に用いる方法が提案されている。この金属酸化物を用いた透明導電膜は、キャリア濃度が非常に高く、薄い膜厚で十分な電流分散を得ることができる。
【0008】
この透明導電膜は半導体エピタキシャル層の表面に形成され、その上にワイヤボンディング用の金属電極(パッド電極)が形成される。ところが、この時、透明導電膜が金属酸化物である場合、その上に形成した上部電極(パッド電極)が、エッチングやダイシング等のプロセス加工中やワイヤボンディング中に剥がれるという大きな問題があった。
【0009】
この問題を解決する技術としては、n形酸化亜鉛を含む酸化物窓層(電流分散層)上の電極を重層構造とすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、電極の最下層を、遷移金属の金属酸化物を含む層から構成するものであり、具体的には、酸化ニッケル(NiO)(最下層)/Au(最上層)或いは酸化チタン(TiO2)/Al等の重層構造電極とするものである。
【0010】
この重層電極は、最下層の酸化物層を構成する金属元素であるNi或いはチタン(Ti)単体膜と最上層をなす金属膜との積層構造、即ち、Ni/Au或いはTi/Al重層構造を基として構成する。電極にオーミック性を付与するための熱処理(アロイング)或いはLED製造プロセスにおける加熱処理に伴い、かくの如く構成された単体金属の重層構造電極においては、最下層のNi層或いはTi層が下地の酸化物窓層から侵入する酸素により酸化され、酸化物を含む層となり、結果としてNiO/Au或いはTiO2/Al重層構造の電極が帰結される。
【0011】
上記特許文献1には、最上層をAuとする重層電極にあって、最下層と最上層との間に、モリブデン(Mo)またはPtからなる層を配備する構成例も開示されている。この様に、高融点金属からなる中間層が挿入された構成とすると、Au電極層との接合界面近傍の領域に酸素原子が濃縮されるのが避けられ、相互に強固に密着した重層電極がもたらされる利点がある。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−44503号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記問題を解決するために、電極剥がれ防止用電極として、最上層と最下層との間にモリブデンまたは白金を用いる方法の場合、これらの金属が高価であるという問題がある。
【0014】
また、これらの金属は高融点金属であることから、その形成方法には高価な装置であるスパッタ法を用いなくてはならない。こられの理由のため、発光ダイオードの価格が高くなる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、エピタキシャルウェハの表面に電流分散層として金属酸化物の透明導電膜を用いた構造のLEDにおいて、透明導電膜上に形成したパッド電極の剥がれの問題を解決することのできる安価な電極構造を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0017】
請求項1の発明に係る発光ダイオードは、半導体基板上に発光部となるpn接合のシングルヘテロ(SH)構造またはダブルヘテロ(DH)構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極を形成した発光ダイオードにおいて、透明導電膜上の表面側電極が重層構造から成り、その最下層がTi、最上層がAu、中間層がNiであることを特徴とする。
【0018】
これは透明導電膜上の表面側電極(パッド電極)がTi/Ni/Auの重層構造である発光ダイオードである。
【0019】
請求項2の発明は、半導体基板上に発光部となるpn接合のシングルヘテロ(SH)構造またはダブルヘテロ(DH)構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極を形成した発光ダイオードにおいて、透明導電膜上の表面側電極が重層構造から成り、その最下層がTi、最上層がAu、中間層がAlであることを特徴とする。
【0020】
これは透明導電膜の上のパッド電極がTi/Al/Auの重層構造である発光ダイオードである。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の発光ダイオードにおいて、上記表面側電極の最上層が、アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層の二層構造からなることを特徴とする。
【0022】
<発明の要点>
上記目的を達するために、本発明では、金属酸化物の電流分散膜の上に形成するための剥がれにくい電極構造として、電流分散層としての金属酸化物からなる透明導電膜、例えばITO膜の表面に、まずTi層を形成し、そのTi層の上に、NiとAu、もしくはAlとAuを順次積層することにより、電極剥がれの問題を解決した。
【0023】
この構造の電極は、金属酸化物からなる透明導電膜からの電極剥がれを生じないという特長に加えて、最上層と最下層との間の中間層にNi又はAlを用いているため、従来の高価なモリブデンまたは白金を用いた構造に比べ、材料が安価である。また、スパッタ法を用いなくても、Ni又はAlは通常の真空蒸着法により製造できるという長所がある。従って、従来よりも発光ダイオードをより安価に提供することができる。
【0024】
透明導電膜は、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In2O3)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化マグネシウム(MgO)等の酸化物であってよいが、特に酸化インジウム錫(ITO)からなるのが好ましい。ITOの比抵抗は約3×10−6Ωmで、p型GaPの比抵抗の約百分の一であるので、透明導電膜をITOで形成することにより、透明導電膜の厚さを大幅に減少することができる。
【0025】
表面側電極は、結線が容易であること(良好なボンディング特性)、下部層との低いオーミック接触抵抗が安定して得られること(良好なオーミック特性)及び下部層との密着性が良好であることが要求される。これらを満たすものとして、本発明では表面側電極(パッド電極)をTi/Ni/Auの重層構造又はTi/Al/Auの重層構造とする。最上層がAuであるためボンディング特性も良好である。
【0026】
表面側電極(パッド電極)の最上層の材料は、ワイヤボンディング性の点からは、より柔らかい方が良い。このためパッド電極の最上層は、アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層の二層構造からなることが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0028】
本発明の一実施形態を説明するための発光ダイオードの構造を図1に示す。この発光ダイオードの構造は、第一導電型基板としてのn型のGaAs基板1上に、第一導電型バッファ層であるn型GaAsバッファ層10、第一導電型クラッド層であるn型AlGaInPクラッド層2と、AlGaInP活性層3と、第二導電型クラッド層であるp型AlGaInPクラッド層4とから成る発光部11があり、その上にp型GaP電流分散層(第二導電型電流分散層)5、その上にAlInP表面半導体層6が、さらにその上に、十分な透光性を有し、且つ電流分散を得られる電気特性を有する透明導電膜として、SnドープIn2O3(Indium Tin Oxide:略称ITO)から成るITO膜7がある。そして、チップの表面側中央つまりITO膜(透明導電膜)7の中央には円形のパッド電極(部分電極)から成る表面側電極8が設けられており、またチップの裏面には金属電極から成る基板側電極9が設けられている。
【0029】
ここまでの構造は従来の透明導電膜を用いた構造の発光ダイオードと同じであり、本発明はこの構造の発光ダイオードにおいて、電流分散層として作用する金属酸化膜(ITO膜7)上に設ける表面側電極8が三層の重層構造を持ち、その最下層8aがTi、最上層8bがAu、中間層8cがNi又はAlから成ることに特徴がある。
【0030】
かかる重層構造の表面側電極を持つ本発明の作用効果を確認するため、発光波長630nm付近の赤色発光ダイオード用エピタキシャルウェハの従来例と実施例を作製した。
【0031】
[従来例]
従来例として、図1に示したエピタキシャル層の積層構造を持つ発光波長630nm付近の赤色発光ダイオード用エピタキシャルウェハであって、表面側電極8の重層構造の材料のみ相違するものを作製した。
【0032】
n型GaAs基板1上に、MOVPE法で、n型(Seドープ)GaAsバッファ層10、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層2、アンドープ(Al0.15Ga0.85)0.5In0.5P活性層3、p型(亜鉛ドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層4、p型GaP電流分散層5を成長させ、その上にAlInP表面半導体層6をMOVPE成長で成長させた。
【0033】
このエピタキシャルウェハにITO膜7をスパッタ法にて形成した。この膜エピタキシャルウェハに対し、基板側全面にn型電極(基板側電極9)を形成し、またITO膜側に直径130μmの円形のパッド電極から成るp型電極(表面側電極8)を形成して、LEDチップとした。
【0034】
従来例の試料は3種作製した。まず、それらのn側電極(基板側電極9)は、真空蒸着法により、AuGe、Ni、Auを、それぞれ基板側から順に60nm、10nm、500nm蒸着した。
【0035】
またチップ上面のp側電極(表面側電極8)については、その最下層8a、中間層8c、最上層8bとして、第1試料ではAuZn、Ni、Auの三層、第2試料ではAuBe、Ni、Auの三層、または第3試料ではAuGe、Ni、Auの三層を、それぞれITO膜側から順に60nm、10nm、1000nm真空蒸着法により蒸着した。
【0036】
また別の第4試料として、Ti、AuをITO膜側から順に20nm、1000nm蒸着し、二層の重層構造を持つ表面側電極8としたものを作製した。
【0037】
上記ITO膜及び電極付きエピタキシャルウェハを、チップサイズ300μm角の発光ダイオードにするため、エッチングやダイシング等のプロセス加工及びワイヤボンディングを行った。この結果、第1試料であるAuZn、Ni、AuをITO膜側から順に蒸着したAuZn/Ni/Auの電極構造のものと、第2試料及び第3試料であるAuBe、Ni、Au及びAuGe、Ni、AuをITO膜側から順に蒸着したAuBe/Ni/Au及びAuGe/Ni/Au電極構造のものは、エッチングやダイシング等のプロセス加工中にパッド電極(表面側電極8)が約50%以上剥がれた。更にワイヤボンディング工程を行うと、電極パッド(表面側電極8)が98%以上剥がれた。
【0038】
また第4試料であるTi/Au電極構造のものは、ワイヤボンディング工程で、電極パッドのAu層がTi層から90%剥がれた(金属酸化膜とTiは密着していて剥がれない)。
【0039】
[実施例1]
図1の構造を持つ発光波長630nm付近の赤色発光ダイオード用エピタキシャルウェハを作製した。MOVPE法によるエピタキシャル層の成長方法、エピタキシャル層1〜6と10の積層構造等は、基本的に上記の従来例の場合と同じとした。また、スパッタ法によるITO膜7の形成方法、真空蒸着法による電極の形成方法及び電極形状も基本的に前記の従来例と同じとした。更にプロセス加工及びワイヤボンディング工程も、前記の従来例と同じとした。
【0040】
すなわち、n型GaAs基板1上に、MOVPE法で、n型(Seドープ)GaAsバッファ層10、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層2、アンドープ(Al0.15Ga0.85)0.5In0.5P活性層3、p型(亜鉛ドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層4、p型GaP電流分散層5を成長させ、その上にAlInP表面半導体層6をMOVPE成長で成長させた。このエピタキシャルウェハにITO膜7をスパッタ法にて形成した。
【0041】
このエピタキシャルウェハに対し、基板側全面にn型電極(基板側電極9)を形成し、またITO膜側に直径130μmの円形のパッド電極から成るp型電極(表面側電極8)を形成して、LEDチップとした。
【0042】
n型電極(基板側電極9)は、AuGe/Ni/Auの重層構造であり、真空蒸着法によりAuGeを60nm、Niを10nm、Auを500nm順に蒸着した。
【0043】
チップ上面側のITO膜7上のp側電極(表面側電極8)については、その最下層8a、中間層8c、最上層8bとして、Ti、Ni、Auを、真空蒸着法により、それぞれITO膜側から順に20nm、10nm、1000nm蒸着した。
【0044】
上記ITO膜及び電極付きエピタキシャルウェハを、チップサイズ300μm角の発光ダイオードにするため、上記従来例と同じエッチングやダイシング等のプロセス加工及びワイヤボンディング(超音波ボンディング法による結線)を行なった。この結果、エッチングやダイシング等のプロセス加工中での電極パッド剥がれは0〜1%と少なく、またワイヤボンディング工程での電極パッド剥がれも0〜1%にすることが出来た。更にワイヤボンディング工程でのAu層のみの剥がれも、0〜1%にすることが出来た。
【0045】
[実施例2]
チップ上面電極つまり表面側電極8に関し、実施例1と同じTi/Ni/Auの重層構造であるが、そのAuの膜厚を1000nm、Tiの膜厚を20nmと一定にして、Niの膜厚を5〜500nmに変えたものを作製した。この構造の表面側電極8を持つエピタキシャルウェハにおいても、エッチングやダイシング等のプロセス加工中での電極パッド剥がれを0〜1%に、またワイヤボンディング工程での電極パッド剥がれを0〜1%にすることが出来た。
【0046】
[実施例3]
この実施例3では、上記実施例1及び2の電極構造におけるNiの代わりにAlを用いた。すなわち、チップ上面電極つまり金属酸化膜上の表面側電極8を、最下層がTi、最上層がAu、中間層がAlである重層構造とした。
【0047】
このようにTi/Al/Auの重層構造から成るパッド電極を用いた場合にも、エッチングやダイシング等のプロセス加工中での電極パッド剥がれを0〜1%に、またワイヤボンディング工程での電極パッド剥がれを0〜1%にすることが出来た。このことから、上記実施例1及び2の電極構造におけるNiの代わりにAlを用いた構成の場合にも、全く同様に電極剥がれの問題が起こらないことを確認できた。
【0048】
[実施例4]
表面側電極(パッド電極)8の最上層8bの材料Auは、ワイヤボンディング性の点からは、より柔らかい方が良い。そこで、本実施例4では、上記実施例1〜3における三層の重層構造から成るパッド電極の最上層8bを、アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層の二層構造とした。このようにAu層の二層構造からなるパッド電極(アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層)を用いたところ、よりワイヤボンダビリティが良くなった。
【0049】
[変形例]
上記実施例では、pn接合により、より効率よく光を発光させるために活性層の両側にヘテロ構造を設け、電子と正孔とを活性層に閉じ込めるダブルヘテロ(DH)構造が採用されている。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、pn接合のシングルヘテロ(SH)構造の発光ダイオードについても適用することができる。又、上記実施例では金属酸化物である透明導電膜(ITO膜7)の成膜方法をスパッタ法としたが、透明導電膜(ITO膜7)の成膜方法はスパッタ法に限定されるものではなく、塗布法、スプレー熱分解法、真空蒸着法で透明導電膜(ITO膜7)を形成しても良い。
【0050】
本発明は、電流分散層として作用する金属酸化物からなる透明導電膜上に設けたパッド電極の剥がれをなくすることを本質とするものであり、LEDのエピタキシャル層の積層構造については、基本的に制約がなく、任意の構造とすることがきる。例えば、上記の実施の形態ではAlGaInP系のDH型LEDについて述べたが、本発明はGaAs系、AlGaAs系、InAlGaAs系あるいはZnSe系等他のDH型LEDにも適用できることはもちろんである。また以上の実施例の説明においてpとnとを全く逆に置き換えてもよい。さらにまた、上記のバッファ層10や表面半導体層6を省略した構成としたり、シングルヘテロ(SH)構造とすることができる。
【0051】
また本発明は、GaN、GaAlN、InGaN等の窒化ガリウム系化合物半導体による青色発光ダイオードの電極構造に適用することもできる。
【0052】
図2は、GaNよりなるホモ接合の発光ダイオード(LED)に本発明の電極構造を適用した例を示す。21はサファイア基板、22はn型GaN層、23は非常に高抵抗なp型GaN(i型GaN)層、24は透明導電膜、25はp型電極(表面側電極)、26はn型電極である。この図2に示すようにn型電極26はn型GaN層22の側面に設けられるが、本明細書においては、このn型電極26もチップの裏面側に通電のために形成した金属電極であって、上記基板側電極の概念に含まれるものとする。
【0053】
p型電極(表面側電極)25は、p型GaN層23上に形成された透明導電膜24上に設けられており、これらの電極に金線をワイヤーボンドして通電することにより、LEDより発する光を取り出す構造としている。この表面側電極25の構造は、既に実施例1〜4として説明した重層構造、つまり剥がれの生じない電極として形成される。図2には、代表的に最下層25a、最上層25b、中間層25cから成る重層構造の表面側電極25として示してある。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0055】
本発明では、金属酸化膜上の電極であるパッド電極をTi/Ni/Auの重層構造又はTi/Al/Auの重層構造としている。すなわち、本発明は、金属酸化物からなる透明導電膜の表面に、まず剥がれにくい層としてTi層を形成し、そのTi層の上に、NiとAu、もしくはAlとAuを順次積層する構成であるため、パッド電極全体として金属酸化物の透明導電膜上から電極剥がれを生じなくなる。そして、最上層はAuから成るため、これに対するワイヤボンディング性も良好である。よって、本発明の電極構造を用いることにより、ITO膜等の金属酸化物の透明導電膜を用いたLEDの製作を実現することができる。
【0056】
更に、本発明で用いた電極材料は低融点材料であることから、一般的、且つ安価な装置である真空蒸着法でパッド電極を形成することができる。
【0057】
また本発明で用いた電極材料は比較的安価である。このため、発光ダイオード用の電極形成を、従来よりも高価にすること無く、形成することができる。
【0058】
本発明の対象とする発光ダイオードは、電流分散層としてITO膜等の金属酸化物からなる透明導電膜を用いて電流分散する構成であり、電流分散層を厚くする必要が無い。この技術により、LED用のエピタキシャル層の膜厚は五分の一から数十分の一まで薄くすることができる。これは、LEDを構成するエピタキシャル層の中で電流分散層の厚さがもっとも厚かったためである。これにより、LED用エピタキシャルウェハの価格を大幅に低くすることができる。
【0059】
また、これまでは半導体のエピタキシャル層を用いており、このエピタキシャル層を厚くしても十分な電流分散特性を得ることができなかったが、本発明では金属酸化物から成る透明導電膜を電流分散層に用いることを実現しているため、LEDの輝度を約50%程度高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる発光ダイオードの構造を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかる発光ダイオードの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 GaAs基板(第一導電型基板)
2 AlGaInPクラッド層(第一導電型クラッド層)
3 AlGaInP活性層
4 AlGaInPクラッド層(第二導電型クラッド層)
5 GaP電流分散層(第二導電型電流分散層)
6 AlInP表面半導体層
7 ITO膜(透明導電膜)
8 表面側電極
8a 最下層
8b 最上層
8c 中間層
9 基板側電極
10 GaAsバッファ層(第一導電型)
Claims (3)
- 半導体基板上に発光部となるpn接合のシングルヘテロ構造またはダブルヘテロ構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極を形成した発光ダイオードにおいて、
透明導電膜上の表面側電極が重層構造から成り、その最下層がTi、最上層がAu、中間層がNiであることを特徴とする発光ダイオード。 - 半導体基板上に発光部となるpn接合のシングルヘテロ構造またはダブルヘテロ構造を形成し、その上に電流分散層として金属酸化物からなる透明導電膜を形成し、その表面側と裏面側に通電のための金属電極を形成した発光ダイオードにおいて、
透明導電膜上の表面側電極が重層構造から成り、その最下層がTi、最上層がAu、中間層がAlであることを特徴とする発光ダイオード。 - 請求項1又は2記載の発光ダイオードにおいて、
上記表面側電極の最上層が、アロイ処理したAu層とアロイ処理しないAu層の二層構造からなることを特徴とする発光ダイオード。
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