JP2004319071A - 光磁気記録媒体及び光磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

光磁気記録媒体及び光磁気記録媒体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 記録層から再生層に転写された磁区を拡大する際、磁区の拡大動作をスムーズにすることにより、再生信号のジッタを低減して再生信号の信号対雑音比(S/N)を向上させた磁区拡大方式の光磁気記録媒体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 磁区拡大方式の光磁気記録媒体の再生層を形成する際に、再生層の再生光入射側表面における遷移金属の組成比を再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比より高くする。これにより、情報再生時に再生層の再生光入射側表面及びその反対側の表面における磁化の大きさの差を小さくして、磁区の拡大動作をスムーズにし、再生信号のジッタを低減して再生信号のS/Nを向上させる。
【選択図】 図3

Description

本発明は光磁気記録媒体及びその製造方法に関し、より詳細には、高密度記録された情報を確実に十分な再生信号強度で再生可能な光磁気記録媒体及びその製造方法に関する。
現在、一般に使用されている光記録媒体は、ポリカーボネート製の基板と、基板上に形成されたまたは塗布された磁性薄膜、相変化薄膜あるいは色素薄膜等とで構成される。基板上にはあらかじめスパイラル状に溝(トラック)が刻まれており、この溝に沿ってレーザー光を走査しながら溝上の薄膜にレーザー光を照射して情報の記録再生を行なう。このような従来の光記録媒体では、基板側から記録再生用のレーザー光を入射して情報の記録再生を行なうので、基板上の傷や粉塵などによってデータ再生ができなくなる可能性は低い。それゆえ、基板側から記録再生用のレーザー光を入射して情報の記録再生を行なうタイプの光記録媒体は所望の場所へ自由に持ち運びすることのできる記録媒体として有用である。また、カートリッジ等を用いて傷や粉塵から記録媒体を守り、基板を介さず直接記録面へレーザー光を照射して情報の記録再生を行なうタイプの光記録媒体も考案されている。このような光記録媒体では、開口数の大きな対物レンズを用いて記録媒体上に集光されるレーザー光のスポット径をより小さくすることができるので、高記録密度媒体として有利である。
情報の高記録密度化は、トラック間隔(以下では、トラックピッチという)を狭め且つ記録マークの間隔(以下では、ビットピッチという)を狭くして記録マークのサイズを小さくすることにより達成される。しかしながら、記録マークを再生光のスポット径より小さくすると、スポット内に複数の記録マークが入り、記録マークの分別ができなくなるという問題が生じる。この問題は、光記録媒体に限らず、光磁気記録媒体でも発生する。
光磁気記録媒体では、この問題を解決する方法として、磁気超解像方式(例えば、特許文献1参照)と磁区拡大再生方式(例えば、特許文献2参照)の2つの再生方法が提案されている。磁気超解像方式の光磁気記録媒体は、主に、情報に対応する記録磁区を記録する記録層と、その記録磁区の再生を補助するための磁性層とから構成される。磁気超解像方式では、情報再生時に光磁気記録媒体に照射される再生光のスポット内の温度分布と磁気超解像媒体の磁気特性を組み合わせることにより、実効的に再生光の分解能を超えた情報再生が可能となる。しかしながら、磁気超解像方式の光磁気記録媒体では再生に寄与する再生光のスポットサイズが減少するので、再生信号の振幅も小さくなる。
一方、磁区拡大再生方式(MAMMOS:Magnetic Amplifying Magneto-Optical System)の光磁気記録媒体は、主に、情報を磁区として記録する記録層と、記録層から転写された磁区を拡大して再生する再生層とから構成される。磁区拡大再生方式の光磁気記録媒体では、再生光を光磁気記録媒体に照射して加熱することにより、記録層の磁区を再生層に転写するとともに、再生磁界で再生層に転写された磁区を拡大する。それゆえ、情報が記録層に微小な記録磁区(記録マーク)として記録されていても、再生時には再生層で拡大された磁区から再生信号を検出することができるので、十分な信号振幅で情報を再生することができる。従って、高記録密度媒体としては、磁気超解像方式の光磁気記録媒体より、磁区拡大再生方式の光磁気記録媒体の方が有効である。
また、光磁気記録媒体には、基板側から再生光を入射するタイプと、記録膜に直接再生光を照射するタイプ(例えば、特許文献3参照)がある。特許文献3で開示されている光磁気記録媒体は磁性層が情報記録層の一層のみで構成されており、反射膜の組成や膜厚の調整により記録再生特性を向上させている。
特開平6−150418号公報(第7−8頁、第1−6図) 特開平8−7350号公報(第2−3頁、第1、5及び6図) 特開2001−228032号公報(第5頁)
上述のように磁区拡大再生方式は光磁気記録媒体の高密度記録を可能とするため、この方式に適した光磁気記録媒体の製品化が期待されている。特に再生光に青色レーザーなどの短波長レーザーを用いた場合にはさらなる高密度記録が可能になる。これらの期待に応えるためには磁区拡大再生方式の光磁気記録媒体をより最適化することが必要であり、そのためには磁性層の磁化特性などの最適化を検討する必要がある。
本発明の目的は、磁区拡大再生方式の光磁気記録媒体を構成する磁性層の最適化を図り、高記録密度で且つ再生特性の優れた磁区拡大再生方式の光磁気記録媒体を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、希土類遷移金属で形成された記録層と、希土類遷移金属で形成された再生層と、磁性材料で形成され、前記記録層と前記再生層との間に配置された補助磁性層とを備える光磁気記録媒体であって、前記記録層、補助磁性層及び再生層は前記光磁気記録媒体に再生光を照射しない状態では磁気的に交換結合しており、前記光磁気記録媒体に再生光を照射して前記記録層と再生層の交換結合力を遮断する温度以上に加熱することにより、前記記録層から前記再生層に転写された磁区を拡大して、該拡大された磁区から情報が再生され、前記再生層の再生光入射側表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が、前記再生層の再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より高いことを特徴とする光磁気記録媒体が提供される。
本発明の第1の態様に従う光磁気記録媒体は、情報再生時に外部磁界を必要としない磁区拡大再生方式(以下では、無磁界MAMMOSという)の光磁気記録媒体であり、主に情報を磁区として記録する記録層と、記録層から転写された磁区を拡大して再生する再生層と、記録層と再生層との間に作用する磁気的な交換結合力を制御するための補助磁性層(以下では、トリガ層という場合もある)とから構成される。以下に、無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体における情報の再生原理を簡単に説明する。
記録層は、例えばTb、Fe及びCoの元素からなる希土類遷移金属合金で形成され、室温からキュリー温度まで遷移金属優勢(以下では、TM(Transition Metal)リッチという)のフェリ磁性を示すように設計され、且つ、垂直磁化膜になるような組成が選択される。記録層のキュリー温度及び保磁力は十分大きく設計されるため、情報再生に際して再生光が照射されても情報に対応する記録磁区の磁化は保持されている。再生層は、例えばGd、Fe及びCoからなる希土類遷移金属合金で形成され、室温からキュリー温度まで希土類金属優勢(以下では、RE(Rare Earth)リッチという)のフェリ磁性を示すように設計され、且つ、垂直磁化膜になるような組成が選択される。トリガ層は、例えばTb及びFeからなる希土類遷移金属合金で形成される。ただし、以下の説明ではトリガ層はTMリッチの希土類遷移金属で形成され、キュリー温度より十分低い温度で垂直磁化を有するように設計されているとする。また、再生層は磁区が安定して存在し得る最小磁区の大きさ、いわゆる最小磁区径が記録層に比べて大きくなるように設計されており、通常、再生層の最小磁区径は再生光のスポット径のサイズ程度になるように調整されている。
無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体における再生層の磁区拡大の原理を図6〜9を用いて説明する。図6に、再生光が照射される前の無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体における記録層4、トリガ層5及び再生層6に形成された磁区の磁化状態を示した。各層に形成された磁区の大きさは、図6に示すように、再生光が照射される前はディスク進行方向において全て同じものとする。図6中、太い矢印(白抜き矢印)は、それぞれの層の全体の(合成)磁化を示し、太い矢印の内部に記載された細い矢印(黒矢印)は、遷移金属(FeやCo)の磁気スピンを示している。記録層4及びトリガ層5はTMリッチであるため、同じ縦列の磁区では、それらの全体の磁化は遷移金属のスピンと同じ方向を向いている。一方、再生層6はREリッチであるため、全体の磁化は遷移金属のスピンと逆方向を向いている。
記録層4、トリガ層5及び再生層6のそれぞれの遷移金属同士は、室温において数10kOe以上の強い結合力で結合しているために、図6に示すように、記録層4、トリガ層5及び再生層6の同じ縦列の磁区では、遷移金属の磁気スピンを示す細い矢印は全て同じ方向を向いている。従って、再生層6における磁区の全体の磁化は、その下方のトリガ層5及び記録層4の磁区の全体の磁化と互いに反対を向いており、記録層4の磁区が再生層6に逆向きで転写されている。ここで、トリガ層5及び再生層6のそれぞれの磁区を、例えば、図6の右側に示したように概念的に磁石5’及び6’とみなせば、トリガ層5と再生層6の全体磁化が互いに逆向きの状態は、磁石5’及び6’の同じ極同士が隣接している状態と同様であり、静磁気的には極めて不安定な状態である。すなわち、トリガ層5と再生層6との間で働く静磁エネルギー反発力のために不安定な状態となっている。しかしながら、再生光照射前は、トリガ層5及び再生層6の遷移金属のスピン同士の交換結合力の方が、静磁エネルギー反発力よりも強いために、図6に示すように、トリガ層5及び再生層6の全体の磁化が互いに反対を向いた状態が持続されている。
情報を再生するために、図7に示すように、光磁気記録媒体に再生光10を対物レンズ9で集光させて照射して再生層6上に光スポットSを形成すると、再生光10の光強度分布に従って光スポットS内に温度分布が生じ、特に光スポットSの中央付近の温度が高くなる。このとき、加熱されたトリガ層5の領域11(以下では、再生温度領域という場合もある)では、トリガ層5がその上下に隣接する記録層4の磁区15と再生層6の磁区13との間の磁気的結合(交換結合)を遮断するように働く。交換結合力の遮断方法としては、例えば、再生温度領域11におけるトリガ層5の磁化を垂直磁化から面内磁化に変化させることにより、記録層と再生層との間の交換結合力を遮断しても良い。ここで、図7に示すように、再生温度領域11の上部に位置する再生層6の磁区13と隣接している再生層6の磁区23とその下方の記録層4の磁区25について考える。
まず、図8(a)に示すように、再生光10が照射されたときに再生層6の磁区23の磁壁26が移動せずに、そのままの状態になっていると仮定し、そのとき、再生層6下面に働いている静磁エネルギー反発力と交換エネルギー引力(交換結合力)との関係を図8(b)に示した。ただし、光磁気記録媒体は再生光10に対して相対的に図8(a)中の破線の矢印方向に進行しているので、記録層4と再生層6との間に働く交換結合力が遮断されているトリガ層5の再生温度領域11は、再生光スポットS内の中央部ではなく、光スポット内の光磁気記録媒体の進行方向側(図8(a)上では左側)の領域に形成される。また、図8(a)に示すように、再生光スポットS内の右側の部分は、まだ温度が低い状態で、再生層6に、大きな交換エネルギー引力と比較的大きな静磁エネルギー反発力が働いている。
交換エネルギー引力は、再生層6の遷移金属とトリガ層5の遷移金属との交換結合エネルギーに基づいて発生する引力であり、遷移金属同士は強い結合力を示すため、図8(b)に示すように、低温領域においては極めて大きな値を示し、静磁エネルギー反発力を上回っている。しかしながら、図8(b)に示すように、低温領域から再生温度領域に近づくにしたがって交換エネルギー引力は急激に減少し、再生温度領域においてゼロとなる。これは、再生温度領域でトリガ層5が記録層4と再生層6との間に働く交換結合力を遮断するように働くためである。一方、静磁エネルギー反発力は、互いに逆向きの、トリガ層5の全体の磁化と再生層6の全体の磁化との間で働く静磁気的なエネルギーに基づく反発力である。静磁エネルギー反発力は、図8(b)に示すように、低温領域から再生温度領域に近づくにしたがってトリガ層5の磁化が小さくなるために減少している。しかしながら、静磁エネルギー反発力は、再生温度領域においてもゼロとはならず、所定の値を有している。すなわち、再生温度領域11上の再生層6の磁区27には、静磁エネルギー反発力が働いている。これは、図8(a)に示すように、再生温度領域11の再生層6の磁区27の磁化が、再生温度領域11の記録層4の磁区28の磁化と反対向きで、それら磁区の間で反発力が働いているためである。
図8(a)中のトリガ層5と再生層6との界面領域14は低温領域と再生温度領域の境界近傍の温度に加熱されており、この界面領域14では静磁反発力が交換結合力を上回っている。この場合、図9(a)に示すように、まず再生層6の磁区23の左側の磁区23’において、静磁エネルギー反発力が交換エネルギー引力を上回るため、磁区23’が反転する。この拡大再生層6の最小磁区径は記録磁区の最小磁区径よりも大きく、光スポット径と同程度になるよう磁気特性を調整してあるため、図8(b)の磁区23Aのように拡大再生層6の磁区はほぼ光スポット径になるまで拡大する。このような磁区拡大を利用した場合、再生層6からは、大きな再生信号を検出することができる。
ところで、発明者らの検証実験によると、無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、再生時に再生層に転写された磁区の拡大動作は、再生光によって生じる再生層中の膜厚方向の温度分布とそれに伴い誘起される膜厚方向の磁化分布に影響されることが分かった。特に、再生層の磁区の拡大動作をスムーズに行なうためには、再生時に再生層中の膜厚方向の磁化分布が一定になる方が好ましいことが分かった。そして、再生層中の膜厚方向の磁化分布が一定でない場合には、磁区の拡大動作がスムーズに行なわれず、再生信号のジッタが大きくなることが分かった。
具体的に説明すると、高密度記録された無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、開口数の大きな対物レンズを使用して情報再生を行うので、再生光照射時には再生光の焦点距離が短くなり、再生層の再生光入射側表面とその反対側の表面における温度差が大きくなる。これにより、再生層の表面間の磁化の大きさの差も大きくなり、再生層の磁区の拡大動作がスムーズに行われなくなる。特に、基板側とは反対側から再生光を入射するタイプ(以下では、ファーストサーフェス型という)の無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、基板側から再生光を入射するタイプの光磁気記録媒体に比べて、より開口数の大きな対物レンズが必然的に用いられるので、再生層の再生光入射側表面とその反対側の表面における温度差が一層大きくなり、再生層の表面間の磁化の大きさの差も一層大きくなる。それゆえ、ファーストサーフェス型無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、再生層の磁区の拡大動作がさらにスムーズに行なわれなくなり、再生特性が一層劣化するという問題が生じる。
また、無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、再生層の補助磁性層側とは反対側の表面に隣接してSiN膜で形成されたエンハンス層が設けられる。基板側から再生光を入射させるタイプの無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、再生層はエンハンス層上に形成される。発明者らの検証実験によると、SiN膜上に希土類遷移金属から成る再生層を形成すると、再生層を形成する希土類遷移金属のうち希土類金属が選択的にSiN膜に取り込まれることが分かった。すなわち、基板側から再生光を入射させるタイプの無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、再生層のSiN膜側表面(以下では、再生光入射側表面という場合もある)の組成は、再生層のSiN膜とは反対側表面の組成に比べて遷移金属の組成比が高くなる。これにより、基板側から再生光を入射させるタイプの無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、ファーストサーフェス型無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体に比べて、再生光照射時に再生層の表面間に温度差が生じても、再生層の表面間の磁化の差が小さくなり、再生信号のジッタが小さくなることが分かった。
本発明の第1の態様に従う光磁気記録媒体では、希土類遷移金属で形成された再生層の膜厚方向の組成分布は、再生光を照射した場合に再生層中の膜厚方向に生じる不均一な温度分布に応じて再生層中の膜厚方向の磁化分布がほぼ均一になるように調節されている。具体的には、再生層が再生温度近傍に加熱されているときに、再生層の再生光入射側の表面における磁化の大きさと再生光入射側とは反対側の表面における磁化の大きさとの差が小さくなるように、再生層の再生光入射側の表面における遷移金属の組成比が再生層の再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比より高くなるように設定されている。これにより、本発明の光磁気記録媒体では、再生時に再生層の再生光入射側の表面における磁化の大きさと再生光入射側とは反対側の表面における磁化の大きさが近い値となり、再生層の磁区の拡大動作がスムーズに行なわれ、再生信号のジッタを小さくすることができる。
ここで、本発明の第1の態様に従う光磁気記録媒体の再生層の磁化特性について図4を用いてさらに具体的に説明する。図4は再生層の再生光入射側の表面における磁化の温度特性と、再生層の再生光入射側とは反対側の表面における磁化の温度特性との関係を示した図である。図4中の曲線(1)は再生層の再生光入射側とは反対側の表面における磁化の温度特性であり、曲線(2)は再生層の再生光入射側の表面における磁化の温度特性である。再生層の再生光入射側の表面における遷移金属の組成比は、再生層の再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比より高いため、図4に示すように、再生層の再生光入射側の表面のキュリー温度(曲線(2)が横軸と交わる点)は再生層の再生光入射側とは反対側の表面のキュリー温度(曲線(1)が横軸と交わる点)より高くなる。しかしながら、情報再生時には再生層の再生光入射側の表面の温度は、再生層の再生光入射側とは反対側の表面の温度より高くなる。ここで、再生層の再生光入射側とは反対側の表面の温度に対して、再生層の再生光入射側の表面における磁化の温度特性(曲線(2))を図4中にプロットすると、曲線(3)に示すように再生温度Trにて曲線(1)と交わる磁化の温度特性が得られる。すなわち、本発明の第1の態様に従う光磁気記録媒体では、再生層の再生光入射側とは反対側の表面が再生温度Trに加熱されているとき、再生層の再生光入射側とは反対側の表面における磁化(曲線(1))の大きさと再生層の再生光入射側の表面における磁化(曲線(3))の大きさとの差が小さく(図4では等しく)なるように、再生層の再生光入射側の表面及び再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比がそれぞれ調節されている。それゆえ、再生時には再生層の両側の表面における磁化の大きさが近い値となるので、再生層の磁区の拡大動作がスムーズに行なわれ、再生信号のジッタを小さくすることができる。
本発明の第1の態様に従う光磁気記録媒体では、再生層の再生光入射側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が、再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より0.5at%〜4.5at%の範囲で高いことが好ましく、特に1.5at%〜3.5at%の範囲で高いことが好ましい。
また、本発明の第1の態様に従う光磁気記録媒体では、再生層の再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比に対する再生層内の膜厚方向の中間における遷移金属の組成比の増加量が、再生層の再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比に対する再生層の再生光入射側の表面における遷移金属の組成比の増加量の1/4以下であることが好ましく、特に1/8以下であることが好ましい。
また、本発明の第1の態様に従う光磁気記録媒体では、再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が再生層内の膜厚方向で再生層の再生光入射側表面に近づくにしたがって連続的に高くなることが好ましい。
本発明の第2の態様に従えば、希土類遷移金属で形成された記録層と、希土類遷移金属で形成された再生層と、磁性材料で形成され、前記記録層と前記再生層との間に配置された補助磁性層とを備える光磁気記録媒体であって、前記記録層、補助磁性層及び再生層は前記光磁気記録媒体に再生光を照射しない状態では磁気的に交換結合しており、前記光磁気記録媒体に再生光を照射して前記記録層と再生層の交換結合力を遮断する温度以上に加熱することにより、前記記録層から前記再生層に転写された磁区を拡大して、該拡大された磁区から情報が再生され、前記再生層が第1再生層と第2再生層とから形成され、第2再生層が第1再生層より再生光入射側に配置され、第2再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が第1再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より高いことを特徴とする光磁気記録媒体が提供される。
本発明の第2の態様に従う光磁気記録媒体では、再生層は第1再生層と第2再生層とから構成され、それぞれ希土類遷移金属で形成されている。第2再生層は第1再生層より再生光入射側に配置されている。また、第2再生層中の遷移金属の組成比は第1再生層中の遷移金属の組成比より高くなるように設定されている。第1再生層と第2再生層との遷移金属の組成比の差は、再生光を照射したときに再生層中の膜厚方向に生じる不均一な温度分布に応じて、第2再生層の再生光入射側の表面における磁化の大きさと、第1再生層の再生光入射側とは反対側の表面における磁化の大きさとの差が小さくなるように調節されている。それゆえ、本発明の第2の態様に従う光磁気記録媒体では、再生時に再生層中の膜厚方向に不均一な温度分布が発生しても、再生層の再生光入射側の表面の磁化の大きさと再生光入射側とは反対側の表面の磁化の大きさが近い値となるので、再生層の磁区の拡大動作がスムーズに行なわれ、再生信号のジッタを小さくすることができる。
本発明の第2の態様に従う光磁気記録媒体では、第2再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が、第1再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より0.5at%〜4.5at%の範囲で高いことが好ましく、特に1.5at%〜3.5at%の範囲で高いことが好ましい。また、第2再生層の膜厚は第1再生層の膜厚の半分以下にするのが好ましい。
また、本発明の第1及び第2の態様に従う光磁気記録媒体は、再生光が基板を介さず、再生層、補助磁性層及び記録層などの積層膜に直接照射されるタイプ、すなわちファーストサーフェス型の光磁気記録媒体であることが好ましい。
また、本発明の第1及び第2の態様に従う光磁気記録媒体では、再生層の補助磁性層側とは反対側の表面にSiN膜で形成されたエンハンス層を備えることが好ましい。
本発明の第3の態様に従えば、第1または第2の態様に従う光磁気記録媒体の製造方法であって、再生層、補助磁性層及び記録層を形成する遷移金属及び希土類金属のターゲットを用いて、再生層、補助磁性層及び記録層をスパッタリングにより形成する工程を含み、前記再生層をスパッタリングにより形成する際に、前記再生層を形成する遷移金属または希土類金属のターゲットに投入する電力をスパッタ時間とともに変化させることを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法が提供される。
本発明の光磁気記録媒体の製造方法では、希土類遷移金属から成る再生層をスパッタリングにより形成する際に、遷移金属のターゲットに投入する電力をスパッタ時間とともに増加させる、あるいは、希土類金属のターゲットに投入する電力をスパッタ時間とともに減少させることにより、再生層の再生光入射側の表面における遷移金属の組成比が再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比より高くなるように調節する。これにより、再生信号のジッタの小さい光磁気記録媒体を作製することができる。
また、再生層の膜厚方向の組成分布を調節する方法として、スパッタリングに用いるガス圧を調節しても良い。遷移金属より希土類金属の方が酸化されやすいので、ガス圧を上げると遷移金属の組成比が大きくなる。それゆえ、ガス圧をスパッタ時間とともに変化させて再生層の膜厚方向の組成を調節することができる。また、再生層の膜厚方向の組成分布を調節する別の方法として、スパッタリングに用いるガス種をスパッタ時間とともに変化させても良い。例えば、スパッタリングの途中で酸素分圧のより高いガスに換えることにより、再生層の遷移金属の組成比を調節することができる。また、再生層を形成する希土類遷移金属の各構成元素材料をスパッタリングにより順に堆積させて再生層を形成する場合には、各構成元素材料の積層周期をスパッタ時間とともに変化させて再生層の膜厚方向の組成分布を調節しても良い。再生層を形成する各構成元素材料の積層周期を変化させることにより遷移金属と希土類金属の堆積量が変化するので再生層の組成比を調節することができる。また、積層周期単位当たりの酸素混入量を膜厚とともに変化させても良い。
本発明の光磁気記録媒体及びその製造方法によれば、再生光照射時に再生層の再生光入射側表面とその反対側の表面との間に温度差が生じても、再生層の再生光入射側表面における遷移金属の組成比が再生光入射側とは反対側の表面における遷移金属の組成比より高くなるように再生層が形成されているので、再生層の再生光入射側表面とその反対側の表面における磁化の大きさの差が小さくなる。それゆえ、再生時に記録層から転写された再生層の磁区が拡大するとき、再生層の磁区の拡大動作がスムーズに行なわれるので、再生信号のジッタが下がり、再生信号のS/Nが向上する。
以下に、本発明の光磁気記録媒体及びその製造方法について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1では、再生光が基板を介さず直接膜面に照射するタイプ、すなわちファーストサーフェス型無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体を作製した。図1にこの例で作製した光磁気記録媒体の構造を示した。光磁気記録媒体は、図1に示すように、基板1上にヒートシンク層2、記録補助層3、記録層4、トリガ層5、再生層6、エンハンス層7及び保護層8が順次積層された構造を有する。ヒートシンク層2は情報の記録再生時に媒体の熱的感度を調整する層であり、記録補助層3は、より小さい変調磁界で記録層に記録磁区が形成されるように機能する磁性層である。記録層4は情報が磁化情報として記録される層であり、トリガ層5は記録層4と後述する再生層6との間の磁気的な交換結合力を制御する層であり、再生層6は記録層4から転写された磁区が拡大される層である。ただし、トリガ層5のキュリー温度より十分低い温度では、記録層4と再生層6はトリガ層5を介して磁気的に交換結合している。エンハンス層8は、層内で再生用光ビームを多重干渉させ、情報再生時に検出されるカー回転角を実効的に増加させるための層である。保護層8は、基板1上に順次積層された各層2〜7を保護するための層である。
以下に、この例で作製した光磁気記録媒体の作製方法を説明する。まず、基板1には、透明のポリカーボネート基板を用いた。基板1の表面には、トラッキング用の溝やクロック信号生成用のピットに対応する凹凸パターンを射出成形機(不図示)により成形した。
次に、光磁気記録媒体の各層2〜7はスパッタ装置(不図示)を用いて、基板1の凹凸パターンが形成されている側の表面上に順次形成した。まず、基板1上に、ヒートシンク層2としてAlTiSi膜を40nm形成した。成膜方法はAlTiの合金ターゲットとSiの単体ターゲットを同時スパッタして形成した。
次いで、ヒートシンク層2上に、記録補助層3としてGdFeCo膜を10nm形成した。成膜方法はGd、Fe及びCoの単体ターゲットを同時スパッタして形成した。GdFeCo膜は面内磁化を有し、補償温度が室温以下、キュリー温度が270℃となるように補助記録層3の組成を調整した。
次いで、記録補助層3上に、記録層4としてTbFeCo膜を60nm形成した。成膜方法は、Tb、Fe及びCoの単体ターゲットを同時スパッタして形成した。TbFeCo膜は室温からキュリー温度まで遷移金属優勢の垂直磁化を有し、補償温度が約25℃、キュリー温度が250℃となるように記録層4の組成を調整した。
次いで、記録層4上に、トリガ層5としてTbFe膜を10nm形成した。成膜方法は、Tb及びFeの単体ターゲットを同時スパッタして形成した。TbFe膜は室温からキュリー温度まで遷移金属優勢の磁化を有し、キュリー温度より十分低い温度では垂直磁化を示した。なお、この例では、トリガ層5の補償温度が室温以下となるようにトリガ層5の組成を調整した。
さらに、トリガ層5上に、再生層6としてGdFeCo膜を30nm形成した。成膜方法はGd、Fe及びCoの単体ターゲットを同時スパッタして形成した。この際、Gd及びFeの各単体ターゲットに投入した電力は図2に示すようなタイムスケジュールで投入した。図2中の実線が希土類金属Gdターゲットのスパッタ時間に対する投入電力の変化であり、破線が遷移金属Feターゲットのスパッタ時間に対する投入電力の変化である。図2に示すように、Gdターゲットの投入電力はスパッタ時間とともに、指数関数的に1.1〜1.0kWまで減少させた。一方、Feターゲットの投入電力はスパッタ時間に関係無く2.0kWで一定とした。なお、この例では、Coターゲットの投入電力はスパッタ時間に関係無く約100Wで一定とした(不図示)。
上記方法で再生層6を形成した結果、再生層のトリガ層5側表面における遷移金属の組成比に対する再生層中の遷移金属の組成比差の膜厚方向の分布は、図3の実線に示すような組成分布となった。この例で作製した光磁気記録媒体では、再生層中の遷移金属の組成比差は、図3に示すように、トリガ層5側表面(膜厚が約0〜5nmの領域)からエンハンス層7側表面(膜厚が約25〜30nmの領域)に向かって指数関数的に増加する。この例では、再生層6のトリガ層5側表面の遷移金属の組成比とエンハンス層7側表面の遷移金属の組成比との差を、図3に示すように、1.0at%とした。また、この例で形成した光磁気記録媒体の再生層6では、トリガ層5側表面の再生層のキュリー温度が約260℃、補償温度はキュリー温度以上であった。一方、エンハンス層7側表面の再生層のキュリー温度が約280℃、補償温度はキュリー温度以上であった。また、再生層6は室温からキュリー温度まで希土類金属優勢のフェリ磁性を示す垂直磁化膜であった。
次に、再生層6上に、エンハンス層7としてSiN膜を35nm形成した。成膜方法はAr+N雰囲気中でSiターゲットをスパッタして形成した。最後に、エンハンス層7上に、保護層8としてアクリル系の紫外線硬化型樹脂を塗布して、その後紫外線の照射により硬化させて形成した。保護層8の膜厚は15μmとした。以上の製造方法により、図1に示したファーストサーフェス型無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体を得た。
上記製造方法で作製された光磁気記録媒体では、再生層のトリガ層側表面における磁化の温度特性と、再生層のエンハンス層側表面における磁化の温度特性との関係は図4のようになった。図4中の曲線(1)が再生層のトリガ層側表面における磁化の温度特性であり、曲線(2)が再生層のエンハンス層側表面における磁化の温度特性である。再生層のエンハンス層側表面における遷移金属の組成比は、再生層のトリガ層側表面における遷移金属の組成比より高いため、図4に示すように、再生層のエンハンス層側表面のキュリー温度(曲線(2)が横軸と交わる点)は再生層のトリガ層側表面のキュリー温度(曲線(1)が横軸と交わる点)より高くなる。しかしながら、情報再生時には再生層のエンハンス層側表面が再生光入射側となるので、再生層のエンハンス層側表面の温度は再生層のトリガ層側表面の温度より高くなる。それゆえ、再生層のトリガ層側表面の温度に対して、再生層のエンハンス層側表面における磁化の温度特性(曲線(2))を図4中にプロットすると、曲線(3)に示すような磁化の温度特性が得られる。ここで、この例で作製した光磁気記録媒体では、再生層のトリガ層側表面が再生温度Trに加熱されているとき、再生層のトリガ層側表面(曲線(1))における磁化の大きさと再生層のエンハンス層側表面(曲線(3))における磁化の大きさがほぼ等しくなるように、再生層のトリガ層側表面及びエンハンス層側表面における遷移金属の組成比がそれぞれ調節されている。すなわち、この例で作製した無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、再生時に再生層のトリガ層側の表面における磁化の大きさと再生層のエンハンス層側の表面における磁化の大きさがほぼ同じ値になる。それゆえ、記録層から転写された再生層の磁区が再生時にスムーズに拡大するので、再生信号のジッタが少なくなる。
また、実施例1では、再生層6のトリガ層5側表面の遷移金属の組成比がエンハンス層7側表面の遷移金属の組成比より0.5〜5at%の範囲で高くなる種々の光磁気記録媒体を作製して、それらの電気信号特性を評価した。
この例で作製した種々の光磁気記録媒体の電気信号評価には、波長405nmのレーザー光源と開口数0.9の対物レンズとを有する光ヘッドを備えた記録再生装置(不図示)を用いた。データ記録用磁場は、光磁気記録媒体に接近したコイルに電流を流すことにより発生させた。データ記録の際にはコイルに流れる電流を記録データに従って変調させて磁界を印加し、且つ、記録用の光パルスを照射してデータを光磁気記録媒体に記録した。ただし、記録データは0.1μmの繰り返しマークとした。光磁気記録媒体の線速は6m/sとし、電気信号特性が最も良くなるように記録パワー及び再生パワーを調整した。なお、ここでは電気信号特性の評価としてジッタ測定とエラーレート測定を行なった。ジッタ測定では、再生信号を最適な信号判定用のレベルに基づいて一定電圧値でスライスして、このスライス位置における再生信号のジッタを測定した。エラーレート測定は、適切なブースト値及びカットオフ値を有するイコライザーを用いて、再生信号のビットエラーレートが最も下がるような条件で測定した。
この例で作製した種々の光磁気記録媒体のジッタ測定の結果を表1に示した。ただし、表1中の遷移金属の組成比差B−A(at%)は、再生層のトリガ層側表面(図3中の再生層の膜厚が約0〜5nmの領域)における遷移金属の組成比Aと、エンハンス層側表面(図3中の再生層の膜厚が約25〜30nmの領域)における遷移金属の組成比Bとの差である。また、表1には、ジッタ測定可能であった組成比差B−Aについてのみジッタ値を記入した。なお、再生層の組成を膜厚方向に変化させない場合のジッタ値は15%であった。
Figure 2004319071
表1から明らかなように、組成比差B−Aが0.5〜4.5at%の間で、ジッタ値は15%より小さくなりジッタ特性が改善されることが分かった。特に、組成比差B−Aを1.5〜3.5at%にすると、ジッタ値が14%より小さくなり、ジッタ特性がさらに改善されることが分かった。
次に、この例で作製した種々の光磁気記録媒体のエラーレート測定の結果を表2に示した。また、表2には、ビットエラーレートが測定可能であった組成比差B−Aについてのみビットエラーレートを記入してある。なお、再生層の組成を膜厚方向に変化させない場合のビットエラーレートは5.0E−4であった。
Figure 2004319071
表2から明らかなように、遷移金属の組成比差B−Aが0.5〜4.5at%で、ビットエラーレートが5.0E−4より小さくなり、エラー値が改善された。特に、組成比差B−Aが1.5〜3.5at%の場合には、ビットエラーレートは3.0E−4より小さくなり、エラー値が大きく改善されることが分かった。
実施例2では、実施例1と同様に、ファーストサーフェス型無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体を作製した。図5に、この例で作製した光磁気記録媒体の構造を示した。この例で作製した光磁気記録媒体は、図5に示すように、基板1上にヒートシンク層2、記録補助層3、記録層4、トリガ層5、第1再生層6a、第2再生層6b、エンハンス層7及び保護層8が順次積層された構造を有する。
実施例2の光磁気記録媒体では、再生層6を第1再生層6aと第2再生層6bで形成した以外は、実施例1と同様に作製した。第1再生層6a及び第2再生層6bはスパッタ装置(不図示)により形成した。その方法は以下の通りである。まず、トリガ層5上に、第1再生層6aとしてGdFeCo膜を25nm形成した。成膜方法はGd、Fe及びCoの単体ターゲットを同時スパッタして形成した。この際、Gd、Fe及びCoの各ターゲットに投入した電力はそれぞれ1.1kW、2.0kW及び100Wで一定とした。次いで、第1再生層6a上に第2再生層としてGdFeCo膜を5nm形成した。成膜方法はGd、Fe及びCoの単体ターゲットを同時スパッタして形成した。ただし、第2再生層6bを形成する際、Gd、Fe及びCoの各ターゲットに投入した電力はそれぞれ1.0kW、2.0kW及び100Wで一定とした。すなわち、第2再生層6bをスパッタリングで形成する際に希土類金属Gdのターゲットに投入する電力を、第1再生層6aを形成する際に希土類金属Gdのターゲットに投入した電力より小さくすることにより、第2再生層6bの遷移金属の組成比が第1再生層6aの遷移金属の組成比より大きくなるように形成した。上記方法で形成された第1再生層6aと第2再生層6bとの遷移金属の組成比の差は1.0at%であった。また、第1再生層6aのキュリー温度は約260℃、補償温度はキュリー温度以上であり、室温からキュリー温度まで希土類金属優勢のフェリ磁性を示した。一方、第2再生層6bのキュリー温度は約300℃、補償温度はキュリー温度以上であり、室温からキュリー温度まで希土類金属優勢のフェリ磁性を示した。
上記製造方法で作製された光磁気記録媒体の第1再生層6aと第2再生層6bにおける磁化の温度特性の関係は、実施例1と同様に、図4のようになる。第1再生層6aの磁化の温度特性は図4中の曲線(1)のような特性になり、第2再生層6bの磁化の温度特性は曲線(2)のようになる。そして、再生光照射時には再生光入射側となる第2再生層6bの温度が第1再生層6aより高くなるので、実施例1と同様に、第1再生層6aの温度に対する第2再生層6bの磁化の温度特性(曲線(2))を図4中にプロットすると、曲線(3)に示すような磁化の温度特性が得られる。ここで、この例で作製した光磁気記録媒体では、第1再生層6aの温度が再生温度Tr近傍に加熱されているとき、第2再生層6bのエンハンス層7側表面(再生層6の再生光入射側表面)における磁化の大きさと、第1再生層6aのトリガ層5側表面における磁化の大きさがほぼ等しくなるように、第1再生層6a及び第2再生層6bの遷移金属の組成比差が調整されている。すなわち、この例で作製した無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体では、第2再生層6bのエンハンス層7側表面(再生層6の再生光入射側表面)における磁化の大きさと第1再生層6aのトリガ層5側表面における磁化の大きさがほぼ同じ値になる。これにより、記録層から転写された再生層の磁区は再生時にスムーズ拡大するので、再生信号のジッタが少なくなる。
実施例2では、第2再生層の遷移金属の組成比を第1再生層の遷移金属の組成比より0.5〜5at%の範囲で増加させ、且つ、第2再生層の膜厚を1〜15nmの範囲で変化させた種々の光磁気記録媒体を作製して電気信号特性を評価した。ただし、第1再生層の膜厚は25nmで一定とした。この例では、実施例1と同様に、電気信号特性としてジッタ測定とエラーレート測定を行なった。記録データは0.1μmの繰り返しマークとした。
この例で作製した種々の光磁気記録媒体のジッタ測定の結果を表3に示した。ただし、表3中の遷移金属の組成比差B−A(at%)は、第2再生層の遷移金属の組成比Bと第1再生層の遷移金属の組成比Aとの差である。また、表3には、ジッタ測定可能であった組成比差B−A及び第2再生層の膜厚についてのみジッタ値を記入した。なお、第1再生層と第2再生層の遷移金属の組成比が同じである場合のジッタ値は15%であった。
Figure 2004319071
表3から明らかなように、この例で作製した光記録媒体では、遷移金属の組成比差B−Aが0.5〜4.5at%で且つ第2再生層の膜厚が10nm以下の範囲である場合にジッタ値が15%より小さくなり、ジッタ特性が改善されることが分かった。特に、組成比差B−Aを1.5〜3.5at%で且つ第2再生層の膜厚を3〜5nmの範囲にすると、ジッタ値が14%より小さくなり、ジッタ特性がさらに改善されることが分かった。
次に、この例で作製した種々の光磁気記録媒体のエラーレート測定の結果を表4に示した。ただし、表4には、ビットエラーレート測定可能であった組成比差B−A及び第2再生層の膜厚についてのみビットエラーレート値を記入した。なお、第1再生層と第2再生層の遷移金属の組成比が同じである場合のビットエラーレート値は5.0E−4であった。
Figure 2004319071
表4から明らかなように、この例で作製した光記録媒体では、第2再生層と第1再生層との遷移金属の組成比差B−Aが0.5〜4.5at%で且つ第2再生層の膜厚が10nm以下の範囲である場合には、ビットエラーレート値が5.0E−4より小さくなり、エラーレート特性が改善されることが分かった。特に、遷移金属の組成比差B−Aを1.5〜3.5at%で且つ第2再生層の膜厚を3〜5nmの範囲にすると、ビットエラーレート値が4.0E−4以下となり、エラーレート特性がさらに改善されることが分かった。
上記実施例1及び2では、再生光が基板を介さず直接膜面に照射するファーストサーフェス型無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。再生光を基板を介して照射するタイプの無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体についても検討した結果、実施例1及び2と同様の効果が認められた。
上記実施例1では、再生層中の再生光入射側表面の遷移金属の組成比を再生光入射側とは反対側表面の遷移金属の組成比より大きくするために、また、実施例2では第2再生層の遷移金属の組成比を第1再生層の遷移金属の組成比より大きくするために、同時スパッタで再生層を形成する際、各単体ターゲットのうち希土類金属のターゲットの投入電力を低くして形成したが、本発明はこれに限定されない。スパッタ時にガス圧あるいはガス種を変えたても良い。また、再生層を形成する各構成元素材料の単体ターゲットを順番にスパッタして再生層を形成する方法を用いる場合には、各構成元素材料の積層周期を変化させることにより遷移金属の組成比を調節しても良い。
本発明の光磁気記録媒体及びその製造方法によれば、磁区拡大再生方式の光磁気記録媒体を構成する磁性層の最適化を図ることができるので、高記録密度で且つ再生特性の優れた磁区拡大再生方式の光磁気記録媒体を提供することができる。
実施例1で作製した光磁気記録媒体の概略断面図である。 再生層の膜厚に対する再生層形成時の各単体ターゲットに投入する電力のタイムスケジュールを示した図である。 再生層のトリガ層側表面における遷移金属の組成比に対する再生層中の遷移金属の組成比差の膜厚方向の分布を示した図である。 再生層の再生光入射側表面の磁化の温度特性と、再生光入射側とは反対側の表面の磁化の温度特性の関係を示した図である。 実施例2で作製した光磁気記録媒体の概略断面図である。 無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体の再生原理を説明する図であり、再生光が照射される前の再生層、トリガ層及び記録層の磁化の様子を示した図である。 無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体の再生原理を説明する図であり、再生光が照射されている様子を示した図である。 無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体の再生原理を説明する図であり、図8(a)及び(b)は再生層の磁区が拡大していないときの静磁エネルギー反発力と交換エネルギー引力との関係を示した図である。 無磁界MAMMOSの光磁気記録媒体の再生原理を説明する図であり、図9(a)及び(b)は再生層の磁区が拡大する様子を示した図である。
符号の説明
1 基板
2 ヒートシンク層
3 記録補助層
4 記録層
5 トリガ層
6 再生層
6a 第1再生層
6b 第2再生層
7 エンハンス層
8 保護層

Claims (10)

  1. 希土類遷移金属で形成された記録層と、
    希土類遷移金属で形成された再生層と、
    磁性材料で形成され、前記記録層と前記再生層との間に配置された補助磁性層とを備える光磁気記録媒体であって、
    前記記録層、補助磁性層及び再生層は前記光磁気記録媒体に再生光を照射しない状態では磁気的に交換結合しており、前記光磁気記録媒体に再生光を照射して前記記録層と再生層の交換結合力を遮断する温度以上に加熱することにより、前記記録層から前記再生層に転写された磁区を拡大して、該拡大された磁区から情報が再生され、
    前記再生層の再生光入射側表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が、前記再生層の再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より高いことを特徴とする光磁気記録媒体。
  2. 前記再生層の再生光入射側表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が、前記再生層の再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より0.5at%〜4.5at%の範囲で高いことを特徴とする請求項1に記載の光磁気記録媒体。
  3. 前記再生層の再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比に対する前記再生層内の膜厚方向の中間における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比の増加量が、前記再生層の再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比に対する前記再生層の再生光入射側表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比の増加量の1/4以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光磁気記録媒体。
  4. 前記再生層の再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比に対する前記再生層内の膜厚方向の中間における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比の増加量が、前記再生層の再生光入射側とは反対側の表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比に対する前記再生層の再生光入射側表面における希土類遷移金属中の遷移金属の組成比の増加量の1/8以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光磁気記録媒体。
  5. 前記再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が前記再生層内の膜厚方向で前記再生層の再生光入射側表面に近づくにしたがって連続的に高くなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光磁気記録媒体。
  6. 希土類遷移金属で形成された記録層と、
    希土類遷移金属で形成された再生層と、
    磁性材料で形成され、前記記録層と前記再生層との間に配置された補助磁性層とを備える光磁気記録媒体であって、
    前記記録層、補助磁性層及び再生層は前記光磁気記録媒体に再生光を照射しない状態では磁気的に交換結合しており、前記光磁気記録媒体に再生光を照射して前記記録層と再生層の交換結合力を遮断する温度以上に加熱することにより、前記記録層から前記再生層に転写された磁区を拡大して、該拡大された磁区から情報が再生され、
    前記再生層が第1再生層と第2再生層とから形成され、第2再生層が第1再生層より再生光入射側に配置され、第2再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が第1再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より高いことを特徴とする光磁気記録媒体。
  7. 第2再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比が第1再生層を形成する希土類遷移金属中の遷移金属の組成比より0.5at%〜4.5at%の範囲で高いことを特徴とする請求項6に記載の光磁気記録媒体。
  8. 再生光が基板を介さず、前記再生層、補助磁性層及び記録層に照射されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光磁気記録媒体。
  9. 前記再生層の補助磁性層側とは反対側の表面にSiN膜で形成されたエンハンス層を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光磁気記録媒体。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の光磁気記録媒体の製造方法であって、再生層、補助磁性層及び記録層を形成する遷移金属及び希土類金属のターゲットを用いて、再生層、補助磁性層及び記録層をスパッタリングにより形成する工程を含み、前記再生層をスパッタリングにより形成する際に、前記再生層を形成する遷移金属または希土類金属のターゲットに投入する電力をスパッタ時間とともに変化させることを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法。
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