JP2004317154A - 単核球抽出液の製造方法及び単核球抗原の分析方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記製造方法は、血液と赤血球溶解用溶液とを接触させることにより、血液中の赤血球を溶血させた後、遠心操作を行うことにより単核球分画を得る工程と、前記単核球分画と、膜可溶化用界面活性剤とを接触させることにより、単核球抽出液を得る工程とを含む。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、単核球抽出液の製造方法、及び前記製造方法を用いて調製した単核球抽出液を被検試料として用いる分析方法に関する。なお、本明細書における前記「分析」には、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。
【0002】
【従来の技術】
現在、末梢血を初発材料とした単核球の分離法として、比重遠心用分離液[例えば、Ficoll−Hypaque(ファルマシア)又はモノポリ分離培地(Flow−laboratories)]を用いる比重遠心分離法が広く用いられている(非特許文献1)。これらの方法に用いる比重遠心用分離液は比較的高価であり、多数の検体の処理にはコストを要する。
【0003】
また、これらの分離液を使用する場合、末梢血を分離液上に重層する工程が存在する。その工程においては、末梢血と分離液との界面を乱さない操作が要求される。また、操作ミスなどにより、上層の末梢血と下層の分離液との界面を乱した場合、単核球が分離できなくなるなど、操作が煩雑で熟練を要する。また、これらの分離液を使用し、単核球の層を形成する場合には、通常、末梢血を5mL程度以上必要とする。
【0004】
また、単核球からのタンパク質抽出には、超音波処理等、細胞に対して強い物理的衝撃を与え、細胞膜を破壊することにより、単核球中のタンパク質を抽出する方法が広く用いられている。これらの方法では、抽出中の発熱を防ぐため、抽出中は容器を氷冷する必要があり、操作は複雑である。
【0005】
しかしながら、単核球抽出物を検査対象試料として用いる検査項目は多岐に及ぶ。また、検査対象抗原は、単核球表面抗原の場合、あるいは、単核球抗原の場合がある。実例として、例えば、単核球のCD抗原を測定するサブセット検査は、感染症(例えば、HIV又はEBウイルス等)の診断、あるいは、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リューマチ、シェーグレン症候群、又は多発性硬化症等)等の多岐に及ぶ診断に用いられている。また、末梢血単核球中のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(以下、DPDと略称する)測定(非特許文献2)、並びに末梢血単核球のCD3抗原測定及びCD11b抗原測定も行われている。
【0006】
【非特許文献1】
藤原大美ら,「免疫研究法ハンドブック」,中外医学社,1992年,p.24−26
【非特許文献2】
ロナルド・エー・フレミング(Ronald A.Fleming)ら,「キャンサー・リサーチ(CANCER RESEARCH)」,(米国),1992年,第52巻,p.2899−2902
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の前記の欠点を解消し、簡便且つ安価な、血液(例えば、末梢血)からの単核球抽出液の製造方法、すなわち、血液(例えば、末梢血)単核球中の単核球抗原(例えば、タンパク質)抽出法を提供することにある。また、前記製造方法により調製した単核球抽出液を試料として用いる、単核球抗原分析方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、血液と赤血球溶解用溶液とを接触させることにより、血液中の赤血球を溶血させた後、遠心操作を行うことにより単核球分画を得る工程(以下、単核球分離工程と称する);及び
前記単核球分画と、膜可溶化用界面活性剤とを接触させることにより、単核球抽出液を得る工程(以下、界面活性剤処理工程と称する)
を含むことを特徴とする、単核球抽出液の製造方法により解決することができる。
また、本発明は、前記製造方法により調製した単核球抽出液を、被検試料として用いる、単核球抗原の分析方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法における単核球分離工程において初発材料として使用する血液は、単核球を分離可能な血液であって、分離処理を実施する前の血液である限り、特に限定されるものではなく、一般的には、例えば、末梢血又は骨髄液等が用いられているが、採血が容易な点で、末梢血が特に適している。なお、本明細書において「分離処理を実施する前の血液」とは、血液成分の分離又は除去操作を経ていない血液を意味し、例えば、採血直後の全血、あるいは、採決後、単に保存していただけの全血などを挙げることができる。
初発材料となる末梢血を得るためには、通常の採血法を用いることができる。採血管を用いる場合、抗凝固剤を含むものを用いることが好ましい。また抗凝固剤の種類としては、例えば、ヘパリンナトリウム、クエン酸ナトリウム、又はEDTA等を用いることができる。
【0010】
単核球分離工程では、単核球分離液として、一般的な赤血球溶解用溶液を用いることができる。前記赤血球溶解用溶液は、比重遠心分離法によって血液から分画した単核球画分から、残存赤血球を除去するために、通常、使用されており、例えば、塩化アンモニウム水溶液、又は塩化アンモニウム含有緩衝液(例えば、塩化アンモニウム含有トリス緩衝液、又は塩化アンモニウム含有リン酸緩衝液)等を用いることもできるし、あるいは、市販の赤血球溶解用溶液(Vitalyse Erythrocyte Lysing Kit;フナコシ社)を用いることもできる。
【0011】
単核球分離工程において血液(特には末梢血)と単核球分離液(すなわち、赤血球溶解用溶液)とを接触させる際には、従来法である比重遠心分離法の場合と異なり、分離液上に注意深く重層する操作は必要とせず、例えば、反応容器に両者を単に添加し、混合することもできるし、あるいは、一方のみが入った容器に、残る一方を添加し、混合することもできる。
【0012】
血液と赤血球溶解用溶液との接触による溶血反応は、緩衝液成分の浸透圧差に基づくものである。従って、血液と赤血球溶解用溶液との添加比率は、赤血球溶解用溶液中の緩衝液成分の溶血反応系における最終濃度により適宜決定することができる。一般的に使用されている市販の赤血球溶解用溶液(例えば、Vitalyse Erythrocyte Lysing Kit;フナコシ社)を用いる場合には、赤血球溶解用溶液中の緩衝液成分の溶血反応系における最終濃度は、80%(vol/vol)以上が好ましいので、血液1容に対し、赤血球溶解用溶液5容以上が好ましく、血液1容に対し、赤血球溶解用溶液10容程度がより好ましい。
両者を添加及び混合した後、静置、あるいは、転倒混和することにより、溶血反応を生起することができる。より円滑な溶血反応を行うためには、反応容器中に血液と赤血球溶解用溶液とを添加した後、反応容器を緩やかに転倒混和することが好ましい。
【0013】
血液と赤血球溶解用溶液とを添加し、混合した後、通常、1分以上の反応時間にて溶血反応を行うことができる。円滑な溶血反応を行うためには、反応時間は10分以上が好ましい。溶血反応の完了は、例えば、目視により、反応前に濁度を呈していた反応溶液が透明に変化したことを指標として確認することができる。また、溶血反応時の温度は目的に応じて設定することができるが、0℃〜50℃が好ましく、15℃〜30℃がより好ましい。
【0014】
単核球分離工程における血液と赤血球溶解用溶液との接触に用いる反応容器としては、例えば、ガラス製チューブ又は合成樹脂製チューブ等を用いることができる。また、これらの容器の形状は、転倒混和を考慮し、密閉可能であることが好ましく、また、反応終了後、その他の容器に移すことなく直ちに遠心操作を行うことができる形状が好ましい。
【0015】
血液と赤血球溶解用溶液との反応後の遠心操作は、通常、1500G以下で行うことができ、300G程度が好ましい。この遠心操作により生じた上清は、主に、血清成分と、赤血球の溶血により生じた画分であるので、これらを除去し、細胞ペレットのみを回収することにより、単核球分画を得ることができる。この遠心操作は、1回だけ実施することもできるし、あるいは、複数回行うこともできる。夾雑成分の効率良い除去のため、2回以上行うことが好ましい。
【0016】
前記遠心操作により得られた単核球分画は、そのままの状態で、次の界面活性剤処理工程に用いることができるが、夾雑成分の効率良い除去のため、更に洗浄を行うことが好ましい。洗浄用緩衝液としては、一般に細胞の洗浄に広く用いられている生理食塩水又は緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと略称する)若しくはトリス緩衝生理食塩水(以下、TBSと略称する)等を用いることができる。洗浄方法としては、例えば、単核球分画を洗浄用緩衝液に懸濁し、遠心操作を行い、上清画分を除去し、細胞ペレットを回収する方法等を用いることができる。
【0017】
界面活性剤処理工程では、単核球分離工程で得られた単核球分画に対して、あるいは、単核球分離工程の後、所望により、更に洗浄操作を実施して得られた単核球分画に対して、膜可溶化用界面活性剤処理によりタンパク質抽出を行い、単核球抽出液を得ることができる。
前記膜可溶化用界面活性剤処理では、例えば、単核球分画に対して膜可溶化用界面活性剤溶液を添加し、静置、あるいは、撹拌器(例えば、試験管ミキサー等)等を用いて撹拌することにより、タンパク質抽出を行うことができる。前記タンパク質抽出は、0〜50℃で行うことが好ましい。また、処理時間は、1秒〜1時間が好ましい。
得られた抽出液をそのまま、単核球抽出液とすることもできるし、所望により、遠心操作を行い、夾雑物を除去した後の上清を、単核球抽出液とすることもできる。
【0018】
本発明に用いる膜可溶化用界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、
N,N−ビス (3−D−グルコンアミドプロピル) コラミド[N,N−Bis (3−D−gluconamidopropyl) cholamide;商品名BIGCHAP]、
N,N−ビス (3−D−グルコンアミドプロピル) デオキシコラミド[N,N−Bis (3−D−gluconamidopropyl) deoxycholamide;商品名Deoxy−BIGCHAP]、
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル[Polyoxyethylene (9) Lauryl Ether;商品名NIKKOL BL−9EX]、
オクタノイル−N−メチルグルカミド(Octanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−8)、
ノナノイル−N−メチルグルカミド(Nonanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−9)、
デカノイル−N−メチルグルカミド(Decanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−10)、
ポリオキシエチレン (8)オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (8) Octylphenyl Ether;商品名TritonX−114]、
ポリオキシエチレン (9) オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (9) Octylphenyl Ether;商品名NP−40]、
ポリオキシエチレン (10) オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (10) Octylphenyl Ether:商品名TritonX−100]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノラウレート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monolaurate;商品名Tween20]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノパルミテート[Polyoxyethylene (20)
Sorbitan Monopalmitate;商品名Tween40]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノステアレート[Polyoxyethylene (20)
Sorbitan Monostearate;商品名Tween60]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノオレエート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monooleate;商品名Tween80]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタントリオレエート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Trioleate]、
ポリオキシエチレン (23) ラウリルエーテル[Polyoxyethylene (23) Lauryl Ether;商品名Brij35]、
ポリオキシエチレン (20) セチルエーテル[Polyoxyethylene (20) Cethyl Ether;商品名Brij58)]、
n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド(n−Dodecyl−ベータ−D−maltopyranoside)、
n−ヘプチル−ベータ−D−チオグルコピラノシド(n−Heptyl−ベータ−D−thioglucopyranoside)、
n−オクチル−ベータ−D−グルコピラノシド(n−Octyl−ベータ−D−glucopyranoside)、
n−オクチル−ベータ−D−チオグルコピラノシド(n−Octyl−ベータ−D−thioglucopyranoside)、
n−ノニル−ベータ−D−チオマルトシド(n−Nonyl−ベータ−D−thiomaltoside)、
ジギトニン(Digitonin)、又は
サポニン(Saponin)
等を用いることができる。
【0019】
両性界面活性剤としては、例えば、
3−[(3−コラミドプロピル) ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート[3−[(3−Cholamidopropyl) dimethylammonio]−1−propanesulfonate;商品名CHAPS]、
又は
3−[(3−コラミドプロピル) ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート[3−[(3−Cholamidopropyl) dimethylammonio]−2−hydroxy−1−propanesulfonate;商品名CHAPSO]
等を用いることができる。
【0020】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、
ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecylsulfate)、
ドデシル硫酸リチウム(Lithium Dodecylsulfate)、
3,5−ジヨードサリチル酸リチウム(Lithium 3,5−Diiodosalicylate)、
ドデシル硫酸トリス[Tris (hydroxymethyl) aminomethane Dodecyl Sulfate;Tris DS]、
コール酸ナトリウム(Sodium Cholate)、
デオキシコール酸ナトリウム(Sodium Deoxycholate)、
N−ラウロイルサルコシン(N−Lauroylsarcosine)、又は
N−ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム(Sodium N−Dodecanoylsarcosinate)
等を用いることができる。
【0021】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、
セチルジメチルエチルアンモニウムブロマイド(Cetyldimethylethylammonium Bromide)、
セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(Cethltrimethylammonium Bromide)、
セチルトリメチルアンモニウムクロライド(Cethyltrimethylammonium Chloride)、又は
グアニジンチオシアネート(Guanidine Thiocyanate)
等を用いることができる。
【0022】
これらの界面活性剤は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて用いることができる。また、界面活性剤濃度は、目的に応じて、例えば、測定対象物の抽出効率、安定性、及び測定法に干渉しない濃度を設定することができ、例えば、0.01%〜50%に設定することができる。また、密閉可能な容器を用いた場合、抽出中に抽出液の飛沫が発生せず、より安全性の高い抽出を行うことができる。
【0023】
膜可溶化用界面活性剤処理に用いる溶液には、分析対象抗原の保護剤としてタンパク質分解酵素阻害剤を添加することもできる。本発明において用いることのできるタンパク質分解酵素阻害剤は、例えば、大豆トリプシンインヒビター(soybean trypsin inhibitor;SBTI)、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFP)、ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DNTB)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン(GSH)、N−エチルマレイミド(NEM)、p−クロロメルクリ安息香酸(PCMB)、p−ヒドロキシメルクリ安息香酸(PHMB)、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、N−トシル−L−リシルクロロメチルケトン(TLCK)、N−トシル−L−フェニルアラニルメチルケトン(TPCK)、ロイコペプチン(leukopeptin)、又はペプスタチン(pepstatin)等を挙げることができる。
これらのタンパク質分解酵素阻害剤は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて用いることができる。また、タンパク質分解酵素阻害剤濃度は、目的に応じて、例えば、0.01μmol/L以上に設定することができるが、これに限定されるものではなく、目的に応じた濃度を設定することができる。
【0024】
本発明の製造方法で得られた単核球抽出液は、単核球抗原分析用試料として用いることができる。すなわち、本発明の製造方法は、単核球抗原分析用試料の製造方法でもある。本発明の単核球抗原分析方法では、本発明の製造方法により得られた抽出液を被検試料として用いること以外は、分析対象の各単核球抗原に応じた公知の分析方法により、前記分析対象物を分析することができる。この場合、目的に応じて、単核球抽出液を直接分析することもできるし、あるいは、適切な緩衝液を用いて希釈し、分析することもできる。
【0025】
本発明の分析方法で分析可能な単核球抗原には、単核球表面抗原及び単核球中抗原とが含まれ、例えば、タンパク質、核酸、脂質、又は糖類等を挙げることができる。前記タンパク質としては、例えば、単核球表面抗原であるCD3抗原若しくはCD11b抗原、又は単核球中抗原であるDPD等を挙げることができる。
例えば、単核球表面抗原であるCD抗原測定を行うことにより、例えば、感染症(例えば、ヒト免疫不全ウイルス又はEBウイルス等)の診断、あるいは、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リューマチ、シェーグレン症候群、又は多発性硬化症等)等の多岐に及ぶ診断に用いることができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《末梢血単核球抽出液の調製》
本実施例では、後述の実施例2に記載の末梢血単核球のCD3抗原測定、実施例3に記載のCD11b抗原測定、及び実施例4に記載の末梢血単核球中のDPD測定に用いる試料として、末梢血単核球抽出液を調製した。
【0027】
(1)本発明方法による、末梢血からの単核球の分離
初発材料として、ヘパリン入り採血管を用いて末梢血を採血した。また、単核球分離液として、0.83%塩化アンモニウム水溶液及び0.17mol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.65)を9容:1容の割合で混合した緩衝液を用いた。まず、単核球分離液9mLに対し、先に採血した末梢血1mLを添加した。その後、両者を混合し、室温にて15分間反応させた。反応終了後、300G及び25℃にて5分間遠心し、遠心上清を除去し、細胞ペレットを得た。更に、細胞ペレットに対し、単核球分離液9mLを添加し、緩やかにペレットをほぐした後、室温、15分間反応させた。反応終了後、300G及び25℃にて5分間遠心し、遠心上清を除去した。得られた細胞ペレットを単核球とした。
【0028】
(2)従来法(モノポリ分離培地を使用)による、末梢血からの単核球の分離
対照実験として、モノポリ分離培地(Flow−laboratories)を用いて末梢血から単核球を調製した。すなわち、初発材料として、ヘパリン入り採血管を用いて末梢血を採血し、単核球分離液として、モノポリ分離培地(Flow−laboratories)を用いた。まず、単核球分離液10mLに対し、先に採血した末梢血10mLを重層し、1500G及び25℃にて20分間遠心後、単核球を分離した。
【0029】
(3)単核球の洗浄
実施例1(1)又は実施例1(2)で得られた各単核球に対し、20mmol/L PBS(pH7.4)9mLを添加し、緩やかに細胞をほぐした後、300G及び25℃にて5分間遠心し、遠心上清を除去した。再度残った細胞ペレットに対し、20mmol/L PBS(pH7.4)9mLを添加し、緩やかに細胞ペレットをほぐした後、300G及び25℃にて5分間遠心し、遠心上清を除去し、得られた細胞ペレットを洗浄済み単核球とした。
【0030】
(4)単核球抽出液の調製
実施例1(3)で調製した洗浄済み単核球を、密閉可能なチューブに入れ、4%CHAPS及び1mmol/L PMSFを含む20mmol/L PBS(pH7.4)100μLを添加し、試験管ミキサーを用いて30秒間撹拌した。撹拌終了後、氷浴中にて30分間静置し、その後、20000G及び4℃にて30分間遠心し、遠心上清を回収し、これを単核球抽出液とした。
【0031】
【実施例2】
《末梢血単核球のCD3抗原測定》
(1)検体希釈液及び標準液の調製
実施例1にて調製した単核球抽出液を4%CHAPSを含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、検体希釈液を調製した。また、CD3抗原陽性細胞抽出物を4%CHAPSを含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、標準液を調製した。
【0032】
(2)CD3抗原測定用ELISAプレートの調製
50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH 9.0)を用いて調製した抗CD3ウサギIgG(DAKO)溶液(500倍希釈)を、96穴マイクロタイタープレート(DNA−BIND;Costar)のウェルに50μL/ウェルずつ分注し、4℃にて1晩静置した。その後、ウェル中の溶液を抜き取り、次いで1%スキムミルク、3%蔗糖、及び0.15mol/L NaClを含む0.1mol/Lトリス緩衝液(pH8.6)を200μL/ウェルずつ分注し、25℃にて2時間静置し、ブロッキング操作を行うことにより、CD3抗原測定用ELISAプレートを調製した。
【0033】
(3)CD3抗原測定用ビオチン標識抗体溶液及びアビジン酵素溶液の調製
ビオチン標識抗CD3抗体(ビオチン標識UCHT−1抗体;イムノテック)を、5%スキムミルク及び0.05%Tween20を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて100倍に希釈し、CD3抗原測定用ビオチン標識抗体溶液を調製した。
また、西洋ワサビペルオキシダーゼ−アビジン(Horseradish Peroxidase−Avidin D;ベクター)を、5%スキムミルク及び0.05%Tween20を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて10000倍に希釈し、アビジン酵素溶液を調製した。
更に、先に調製したCD3抗原測定用ELISAプレートと組み合わせることにより、CD3抗原測定用ELISA試薬を調製した。
【0034】
(4)単核球抽出液中CD3抗原のELISA法による測定
測定に先立ち、先に調製した検体希釈液又は標準液50μLとCD3抗原測定用ビオチン標識抗体溶液50μLとを混合し、25℃にて1時間静置反応した。次いで、先に調製したCD3抗原測定用ELISAプレートのウェルに、前記混合液(CD3抗原測定用ビオチン標識抗体溶液と混合反応した検体希釈液又は標準液)を50μL/ウェルずつ分注し、37℃にて1時間静置した。反応終了後、0.05%Tween20を含む20mmol/L PBS(pH7.4)にて、300μL/ウェルの量で5回洗浄した。次いで、先に調製したアビジン酵素溶液を50μL/ウェルずつ分注し、室温にて30分間静置した。反応終了後、0.05%Tween20を含む20mmol/L PBS(pH7.4)にて、300μL/ウェルの量で4回洗浄した。次いで、市販のペルオキシダーゼ用基質試薬(BM Chemiluminescence ELISA reagent;ベーリンガーマンハイム)を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて10分間静置した。反応終了後、発光検出器(ルミノス9000D;ダイアヤトロン)にて0.5秒間の発光量を測定した。なお、検体希釈液中のCD3抗原濃度は、標準液の測定値から算出した。
【0035】
結果を図1に示す。なお、CD3抗原濃度は、標準液中に含まれるCD3抗原陽性細胞抽出物の280nmの吸光度にて示した。
図1に示すように、本発明方法により得られた末梢血単核球ののCD3抗原量と、従来法であるモノポリ分離培地を使用して得られた末梢血単核球ののCD3抗原量とは、近似した測定結果が得られた。
【0036】
【実施例3】
《末梢血単核球のCD11b抗原測定》
(1)検体希釈液及び標準液の調製
CD3抗原陽性細胞抽出物の代わりに、CD11b抗原陽性細胞抽出物を用いること以外は、実施例2(1)の操作を繰り返すことにより、検体希釈液及び標準液を調製した。
【0037】
(2)CD11b抗原測定用ELISAプレートの調製
50mmol/Lホウ酸緩衝液(pH 9.0)を用いて調製した抗CD11b抗体(クローン44:Harlan)溶液(2μg/mL)を、96穴マイクロタイタープレート(DNA−BIND;Costar)のウェルに50μL/ウェルずつ分注し、4℃にて1晩静置した。その後、ウェル中の溶液を抜き取り、次いで1%スキムミルク、3%蔗糖、及び0.15mol/L NaClを含む0.1mol/Lトリス緩衝液(pH8.6)を200μL/ウェルずつ分注し、25℃にて2時間静置し、ブロッキング操作を行うことにより、CD11b抗原測定用ELISAプレートを調製した。
【0038】
(3)CD11b抗原測定用ビオチン標識抗体溶液及びアビジン酵素溶液の調製
0.1mol/L炭酸緩衝液(pH 8.4)を用いて調製した抗CD11b抗体(Bear−1)溶液(1mg/mL)1.5mLに対し、ジメチルスルホキシドを用いて調製したコハク酸イミド修飾ビオチン(NHS−LC−Biotin;PIERCE)溶液(2mg/mL)30μLを添加し、撹拌した。その後、氷上にて2時間静置反応し、反応終了後、20mmol/L PBS(pH7.4)に対して4℃にて1晩透析し、CD11b抗原測定用ビオチン標識抗体を得た。このように調製したCD11b抗原測定用ビオチン標識抗体を、5%スキムミルク及び0.05%Tween20を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて3.6μg/mLに希釈し、CD11b抗原測定用ビオチン標識抗体溶液を調製した。
また、実施例2(3)の操作を繰り返すことにより、アビジン酵素溶液を調製した。
更に、先に調製したCD11b抗原測定用ELISAプレートと組み合わせることにより、CD11b抗原測定用ELISA試薬を調製した。
【0039】
(4)単核球抽出液中CD11b抗原のELISA法による測定
実施例3(1)で調製した検体希釈液及び標準液、実施例3(2)で調製したCD11b抗原測定用ELISAプレート、並びに実施例3(3)で調製したCD11b抗原測定用ビオチン標識抗体溶液及びアビジン酵素溶液を用いること以外は、実施例2(4)の操作を繰り返すことにより、単核球抽出液中CD11b抗原の測定を実施した。
【0040】
結果を図2に示す。なお、CD11b抗原濃度は、標準液中に含まれるCD11b抗原陽性細胞抽出物の280nmの吸光度にて示した。
図2に示すように、本発明方法により得られた末梢血単核球のCD11b抗原量と、従来法であるモノポリ分離培地を使用して得られた末梢血単核球のCD11b抗原量とは、近似した測定結果が得られた。
【0041】
【実施例4】
《末梢血単核球中のDPD測定》
(1)末梢血単核球中DPDのELISA法による測定
(1−1)検体希釈液及び標準液の調製
実施例1にて調製した単核球抽出液を、2%ウシ血清アルブミン(以下、BSAと略称する)及び0.1%Triton X−100を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、検体希釈液を調製した。
また、MIA Paca細胞(ATCC番号:CRL−1420)抽出物を、2%BSA及び0.1%Triton X−100を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、標準液を調製した。
【0042】
(1−2)DPD測定用ELISAプレートの調製
抗DPDウサギIgGを定法によりペプシン消化し、抗DPDウサギF(ab’)2を調製した。50mmol/L炭酸緩衝液(pH 9.6)を用いて調製した10μg/mL抗DPDウサギF(ab’)2溶液を、96穴マイクロタイタープレート(MS8696F;住友ベークライト)の各ウェルに100μL/ウェルずつ分注し、4℃にて1晩静置した。その後、ウェル中の溶液を抜き取り、次いで、1%BSAを含む20mmol/L PBS(pH7.4)を250μL/ウェルずつ分注し、25℃にて1時間静置し、ブロッキング操作を行うことにより、DPD測定用ELISAプレートを調製した。
【0043】
(1−3)DPD測定用酵素標識抗体の調製
抗DPDウサギIgGを定法によりペプシン消化し、抗DPDウサギF(ab’)2を調製した。これとは別に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(以下、HRPと略称する)を化学修飾し、BSAと結合させることにより、HRP−BSA複合体を調製した。その後、抗DPDウサギF(ab’)2を用いて定法にて抗DPDウサギFab‘断片を調製し、同時にHRP−BSA複合体の化学修飾物を調製し、両者を結合することにより、DPD測定用酵素標識抗体を調製した。更に、先に調製したDPD測定用ELISAプレートと組み合わせることにより、DPD測定用ELISA試薬を調製した。
【0044】
(1−4)単核球抽出液中DPDのELISA法による測定
先に調製したDPD測定用ELISAプレートのウェルに、検体希釈液又は標準液を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて1時間静置した。反応終了後、0.1%Triton X−100を含む生理食塩水300μL/ウェルにて3回洗浄した。次いで、0.1%TritonX−100及び20%正常ヤギ血清を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて調製したDPD測定用酵素標識抗体溶液(5μg/mL)を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて1時間静置した。反応終了後、0.1%Triton X−100を含む生理食塩水300μL/ウェルにて3回洗浄した。次いで、0.26%オルトフェニレンジアミン二塩酸塩(以下、OPDと略称する)及び0.006%過酸化水素を含む0.1mol/L酢酸緩衝液(pH5.5)を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて30分間静置した。反応終了後、0.05mol/L硫酸水溶液を100μL/ウェルずつ分注し、得られた490nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。なお、検体希釈液中のDPD濃度は、標準液の測定値から算出した。
【0045】
(2)単核球抽出液中DPDのタンパク濃度測定
先に調製した単核球抽出液を、20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、検体希釈液を調製した。また、BSAを、20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈することにより、標準液を調製した。
【0046】
96穴マイクロタイタープレート(MS8696F;住友ベークライト)のウェルに、市販のタンパク質アッセイ試薬(BCA Protein Assay Reagent;PIERECE社)を200μL/ウェルずつ分注した。次いで、検体希釈液又は標準液を10μL/ウェルずつ分注し、室温にて30分間静置した。反応終了後、得られた630nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。なお、検体希釈液中のDPD濃度は、標準液の測定値から算出した。
【0047】
上記測定の結果、本発明方法により得られた単核球中DPD量は、2回測定したところ、92.10pmol/min/mg protein及び64.04pmol/min/mg proteinであり、その平均値は、78.07pmol/min/mg proteinであった。また、従来法であるモノポリ分離培地を使用して得られた単核球中DPD量は、81.16pmol/min/mg proteinであった。なお、表示の単位は、単位タンパク質当たりの比活性値である。
本発明方法により得られた単核球中DPD量と、従来法であるモノポリ分離培地を使用して得られた単核球中DPD量とは、近似した測定結果が得られた。
【0048】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、従来、単核球の分離に用いられてきた高価な比重遠心用分離溶液を用いる必要がないため、安価であり、しかも、熟練を有する複雑な操作も必要がなく、簡便である。また、細胞に対して超音波処理等の強い物理的衝撃を与えることがないため、抽出中の発熱を抑えることができる。しかも、密閉可能な容器を用いた操作が可能であるため、安全性の点でも有利である。
更に本発明の製造方法は、血液(特に末梢血)単核球抗原分析方法、特には、末梢血単核球のCD3抗原測定法、CD11b抗原測定法、及び末梢血単核球中のDPD測定法に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法又は従来法(モノポリ分離培地)を用いて調製した各単核球抽出液中のCD3抗原量を、ELISA法により測定した結果を示すグラフである。
【図2】本発明方法又は従来法(モノポリ分離培地)を用いて調製した各単核球抽出液中のCD11b抗原量を、ELISA法により測定した結果を示すグラフである。
Claims (6)
- 血液と赤血球溶解用溶液とを接触させることにより、血液中の赤血球を溶血させた後、遠心操作を行うことにより単核球分画を得る工程;及び
前記単核球分画と、膜可溶化用界面活性剤とを接触させることにより、単核球抽出液を得る工程
を含むことを特徴とする、単核球抽出液の製造方法。 - 単核球分画を、生理食塩水又は緩衝液で洗浄した後、膜可溶化用界面活性剤との接触を実施する、請求項1に記載の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法により調製した単核球抽出液を、被検試料として用いる、単核球抗原の分析方法。
- 単核球抗原が単核球表面抗原である、請求項3に記載の分析方法。
- 単核球表面抗原がCD3抗原又はCD11b抗原である、請求項4に記載の分析方法。
- 単核球抗原がジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼである、請求項3に記載の分析方法。
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