JP2004314456A - 繊維補強セメント板のフローオン抄造方法 - Google Patents

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宏 渡邉
Shinichi Suzuki
伸一 鈴木
Katsunori Akiyama
勝則 秋山
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Abstract

【課題】透水性シートを介してグリーンシート表層の浮き水を吸引装置によりグリーンシートの上方に排水する繊維補強セメント板のフローオン抄造において、グリーンシート表層の固形分の排出を抑制し、歩留まりを向上させる。
【解決手段】抄造方向に関して吸引装置(8)の上流側でグリーンシート(4)に凝集剤(12)を散布する。該透水性シートの目開きは100μm以上、500μm以下である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、繊維補強セメント板のフローオン抄造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、透水性シートを介してグリーンシート表層の浮き水を吸引装置によりグリーンシートの上方に排水する繊維補強セメント板のフローオン抄造において、グリーンシート表層の固形分の排出を抑制し、歩留まりを向上させることのできる繊維補強セメント板のフローオン抄造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
外壁材、屋根材、塀材等の建築用外装材に用いられるセメント板の製造技術としてフローオン抄造方法が知られている。
【0003】
フローオン抄造方法では、セメント、骨材等にパルプ等の補強繊維が配合され、固形分濃度25〜65%程度の比較的高濃度若しくは高濃度としたセメントスラリーを脱水ベルト上に供給する。脱水ベルトは、たとえばフェルト製等の透水性を有するものであり、無端状に形成され、駆動ロール及び従動ロールに懸架されて周回移動する。この脱水ベルト上に供給されたセメントスラリーは抄造幅に展開し、グリーンシートとなるが、フローオン抄造方法では、グリーンシート中に含まれる水分を、脱水ベルトの下方に配設されたサクションボックスを通じて脱水ベルトの下方に減圧脱水する。
【0004】
また、フローオン抄造方法では、グリーンシートの表面に透水性を有する透水性シートを接触させ、グリーンシートの地合調整を行っている。最近では、この透水性シートを介してグリーンシート表層の浮き水を吸引装置によりグリーンシートの上方に排水し、脱水効率を向上させるという試みがこの出願の出願人によりなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特願2002−272168(未公開)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、透水性シートについては、グリーンシートの地合調整を良好に行うためには目開きを比較的粗くする必要があった。だが、目開きの比較的粗い透水性シートを使用すると、吸引装置によるグリーンシート表層の浮き水の排水時に、浮き水とともにグリーンシート表層の固形分までも排出されてしまい、その結果、抄造の歩留まりが低下するという問題がその後の検討により明らかになった。
【0007】
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、透水性シートを介してグリーンシート表層の浮き水を吸引装置によりグリーンシートの上方に排水する繊維補強セメント板のフローオン抄造において、グリーンシート表層の固形分の排出を抑制し、歩留まりを向上させることのできる繊維補強セメント板のフローオン抄造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、補強繊維が配合されたセメントスラリーを脱水ベルト上に供給し、脱水ベルト上に展開するグリーンシートの表面に透水性を有する透水性シートを接触させ、グリーンシート中に含まれる水分を脱水ベルトの下方に減圧脱水するとともに、グリーンシート表層の浮き水を吸引装置によりグリーンシートの上方に排水する繊維補強セメント板のフローオン抄造方法であり、抄造方向に関して吸引装置の上流側でグリーンシートに凝集剤を散布することを特徴とする繊維補強セメント板のフローオン抄造方法(請求項1)を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、透水性シートの目開きが100μm以上、500μm以下であること(請求項2)を一態様として提供する。
【0010】
以下、実施例を示し、この出願の発明の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法についてさらに詳しく説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、この出願の発明の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法を概略的に示した概要図である。
【0012】
この出願の発明の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法では、図1に示したように、セメント、骨材等にパルプ等の補強繊維を配合し、固形分濃度25〜65%程度とした比較的高濃度若しくは高濃度のセメントスラリー(1)を、その供給手段としてのたとえばフローボックス(2)から、フェルト製等の透水性を有し、無端状に形成され、周回移動する脱水ベルト(3)上に供給する。セメントスラリー(1)は、脱水ベルト(3)上で抄造幅に展開してグリーンシート(4)となり、脱水ベルト(3)に載って図1図中の矢印方向(抄造方向)に移動する。
【0013】
次いで、この出願の発明の繊維補強セメント板の抄造方法では、グリーンシート(4)の表面に透水性を有する透水性シート(5)を接触させ、グリーンシート(4)中に含まれる水分を脱水ベルト(3)の下方にサクションボックス(6)を通じて減圧脱水する。また、グリーンシート(4)の表層の浮き水(7)を吸引装置(8)によりグリーンシート(4)の上方に排水する。そして、脱水品(9)を得る。
【0014】
この出願の発明の繊維補強セメント板の抄造方法では、図1に示したように、透水性シート(5)は、脱水ベルト(3)と同様に、無端状に形成することができる。この場合、無端状の透水性シート(5)は、数本のロールに懸架させ、周回移動自在とすることができる。この周回移動は、グリーンシート(4)との接触によりグリーンシート(4)にともなわれて行われるようにしたり、あるいはロールのいずれかを駆動ロールとし、抄造方向と同方向に行うようにしたりすることができる。なお、透水性シート(5)は、グリーンシート(4)の表層の浮き水(7)を通すことのできる透水性、すなわち、その程度の目開きを有するシート材である。一方、その材質については特に限定されない。
【0015】
吸引装置(8)は、図1に示したように、グリーンシート(4)の表層の浮き水(7)をグリーンシート(4)の上方に排水することができるように、グリーンシート(4)に接触する透水性シート(5)の直上に配置することができる。この吸引装置(8)の抄造方向に関して下流側には、吸引装置(8)と隣り合うように、あるいは吸引装置(8)と一体的にスクレーパー(10)を配設することができる。スクレーパー(10)は、透水性シート(5)上においてグリーンシート(4)をやや圧迫し、浮き水(7)を擦り取るものである。このスクレーパー(10)によって、浮き水(7)がグリーンシート(4)の表層に擦り出され、浮き水(7)の量を増やすことができる。このため、より多くの浮き水(7)を吸引装置(8)により排水することができ、脱水効率の向上が図られる。このようなスクレーパー(10)の構成、構造等には特に制限はなく、たとえば、板状、ロール状等の適宜なものを採用することができる。
【0016】
また、図1に示したように、この出願の発明の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法では、吸引装置(8)の抄造方向に関して上流側に振動装置(11)を配置し、脱水ベルト(3)上に展開するグリーンシート(4)に振動を与え、表面のならしを行うことができる。振動装置(11)によるグリーンシート(4)への振動の付与は、透水性シート(5)を介して行うことができる。
【0017】
そして、この出願の発明の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法では、抄造方向に関して吸引装置(8)の上流側でグリーンシート(4)に凝集剤(12)を散布する。凝集剤(12)の散布により、グリーンシート(4)の表層の固形分が凝集し、粒径が拡大して透水性シート(5)の目開きよりも大きくなる。その結果、吸引装置(8)による浮き水(7)の排水に際して、浮き水(7)とともにグリーンシート(4)の表層の固形分が排出されるのが抑制され、抄造の歩留まりが向上する。
【0018】
凝集剤(12)の種類には特に制限はなく、セメントスラリー(1)中の固形分を凝集させることのできるものが適宜採用される。たとえば、アニオン系ポリアクリルアミド等の高分子凝集剤等が例示される。また、凝集剤(12)の散布位置は、上記のとおり、抄造方向に関して吸引装置(8)の上流側であればよく、たとえば図1に示したように、グリーンシート(4)が透水性シート(5)に接触する前とすることができる。この他、凝集剤(12)の散布位置は、グリーンシート(4)が透水性シート(5)に接触した後であっても、搬送方向に関して吸引装置(8)より上流側であればよく、たとえば、振動装置(11)が配置される場合、振動装置(11)と吸引装置(8)の間とすることもできる。
【0019】
なお、この出願の発明の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法では、凝集剤(12)の散布に応じて透水性シート(5)の目開きを、後述する実施例のように所定の範囲とすることにより、グリーンシート(4)の表層の固形分の排出をより良好に抑制し、歩留まりをより向上させることができる。透水性シート(5)の目開きの範囲は、100μm以上、500μm以下が示される。透水性シート(5)の目開きが100μm未満であると、凝集剤により凝集し、径の拡大した固形分は透水性シート(5)を通過しにくくなるが、透水性シート(5)に目詰まりが生じやすくなり、連続生産性に支障をきたす。透水性シート(5)の目開きが500μmを超えると、凝集剤により凝集し、径が拡大しても固形分は透水性シート(5)を通過し、吸引装置(8)による浮き水(7)の排水の際に排出されやすくなる。
【0020】
【実施例】
[実施例1]
セメント、珪石粉を4:3の割合で混合し、パルプを6wt%添加して水を加え、固形分濃度40%のセメントスラリーを作製した。このセメントスラリーを図1に示したフローボックス(2)から速度15m/分で移動する脱水ベルト(3)上に供給した。脱水ベルト(3)には、通気度100±10cc/cm/秒のフェルトを用いた。透水性シート(5)は、無端状のもとし、脱水ベルト(3)の上方に数本のロールにより懸架してその一部をグリーンシート(4)の表面に接触させた。グリーンシート(4)の表面に接触する透水性シート(5)の直上には吸引装置(8)を配置し、この吸引装置(8)により、グリーンシート(4)の表層の浮き水(7)をグリーンシート(4)の上方に排水した。吸引装置(8)には、水封式ポンプ(5kW)を使用し、吸引圧を1〜3kPaとした。
【0021】
また、図1に示したように、グリーンシート(4)の抄造方向に関して吸引装置(8)の上流側におけるフローボックス(2)と透水性シート(5)との間で、グリーンシート(4)に凝集剤(12)を散布した。凝集剤(12)にはアニオン系ポリアクリルアミドを使用した。
【0022】
吸引装置(8)から排水される排水中の固形分濃度を測定した。また、異なる目開きの透水性シート(5)を使用し、同じく吸引装置(8)から排水される排水中の固形分濃度を測定した。その結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1において凝集剤(12)を散布しない他は同様にして繊維補強セメント板のフローオン抄造を行った。その結果も表1に示した。
【0023】
【表1】
Figure 2004314456
以上の実施例1及び比較例1の結果から明らかなように、凝集剤(12)を散布することにより、吸引装置(8)による浮き水(7)の排水に際してグリーンシート(4)の表層から排出される固形分が減少する。このことから、繊維補強セメント板の抄造の歩留まりが改善されることが確認される。
【0024】
また、凝集剤(12)の散布効果は、透水性シート(5)の目開きが500μm以下で顕著となっている。一方、透水性シート(5)の目開きが100μm未満になると、透水性シート(5)が目詰まりしやすくなり、連続生産が困難になった。このことから、透水性シート(5)の目開きの下限は100μmが適当であると理解される。
【0025】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施形態及び実施例によって限定されるものではない。セメントスラリーの組成、凝集剤の種類及び散布量、透水性シートの材質等の細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、透水性シートを介してグリーンシート表層の浮き水を吸引装置によりグリーンシートの上方に排水する繊維補強セメント板のフローオン抄造において、グリーンシート表層の固形分の排出を抑制し、歩留まりを向上させることができる。繊維補強セメント板の生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法を概略的に示した概要図である。
【符号の説明】
1 セメントスラリー
2 フローボックス
3 脱水ベルト
4 グリーンシート
5 透水性シート
6 サクションボックス
7 浮き水
8 吸引装置
9 脱水品
10 スクレーパー
11 振動装置
12 凝集剤

Claims (2)

  1. 補強繊維が配合されたセメントスラリーを脱水ベルト上に供給し、脱水ベルト上に展開するグリーンシートの表面に透水性を有する透水性シートを接触させ、グリーンシート中に含まれる水分を脱水ベルトの下方に減圧脱水するとともに、グリーンシート表層の浮き水を吸引装置によりグリーンシートの上方に排水する繊維補強セメント板のフローオン抄造方法であり、抄造方向に関して吸引装置の上流側でグリーンシートに凝集剤を散布することを特徴とする繊維補強セメント板のフローオン抄造方法。
  2. 透水性シートの目開きが100μm以上、500μm以下である請求項1記載の繊維補強セメント板のフローオン抄造方法。
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