JP2004308693A - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的効率を向上させて駆動源である電動アクチュエータの小型軽量化を図りながら、その機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキピストン6を作動させるための作動液が供給される液圧室7内に、スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13の螺合部分が配置され、そのスクリュー部12cの外周面(螺合面)には金属系コーティングが施される。
【選択図】 図1
【解決手段】ブレーキピストン6を作動させるための作動液が供給される液圧室7内に、スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13の螺合部分が配置され、そのスクリュー部12cの外周面(螺合面)には金属系コーティングが施される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両用ブレーキ装置には、車輪内に設けられ制動力を発生させるブレーキ機構部が主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキ時においては電動モータにて作動するように構成されているものが、例えば特許文献1にて開示されている。
【0003】
特許文献1のブレーキ装置は、ブレーキキャリパ内にブレーキピストンが出没可能に配設され、該ピストンの突出に伴って摩擦材をブレーキのロータに圧接させることで制動力を得るように構成されている。ブレーキピストンの反摩擦材側には液圧室が設けられ、該液圧室にはブレーキピストンを作動させる作動液が供給される。そして、主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にてブレーキピストンが作動される。
【0004】
又、液圧室内にはスピンドル及びナットが収容されており、スピンドルは該ブレーキ装置に一体に備えられる電動機により回転される。このスピンドルは外周面にネジが形成され、回転不能に設けられるナットと螺合している。つまり、電動機によるスピンドルの回転がナットの直線運動に変換され、該ナットの直線運動に伴って前記ブレーキピストンが作動するように構成されている。そして、駐車ブレーキ時においては電動機にてブレーキピストンが作動される。
【0005】
尚、駐車ブレーキ時においてはロータに対してブレーキバッドが圧接するため、該パッドには反力(ロータから離間する方向の力)が作用してブレーキピストンが没入しようとするが、スピンドルとナットとの間のセルフロッキング作用により、該ピストンが没入することが防止される。これにより、電動機への電源供給が遮断されてもブレーキピストンの作動位置が維持され、摩擦材の圧接力、即ち制動力が維持されるようになっている。
【0006】
しかしながら、駐車ブレーキ時において所望の制動力を得るためには、ロータに対して摩擦材を圧接する必要があるため、ブレーキピストンを作動させるスピンドルとナットとの間の摩擦抵抗は大きい。そのため、電動機は高出力なものが必要となるが、高出力の電動機は、体格が大きく、重量が重い。一方、ブレーキ装置が配置される車輪内は狭い空間であり、しかも車輪付近の重量が大きいと乗り心地に影響を与えることは周知である。従って、車輪内に配置されるブレーキ装置には小型軽量化が要求され、該ブレーキ装置に用いられる電動機に対しても同様に小型軽量化が要求されている。そこで、ブレーキ装置の機械的効率を向上させて電動機にかかる負荷を軽減し、出力の小さい小型軽量の電動機を使用可能とすることが求められている。
【0007】
そこで、特許文献2のブレーキ装置では、スピンドル及びナットの少なくとも一方に減摩コーティングを施す技術が開示されている。従って、この技術を、液圧及び電動機により作動するように構成した前記特許文献1のブレーキ装置に適用すれば、該ブレーキ装置の電動機の小型軽量化が可能となる。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−510760号公報
【特許文献2】
特開2000−145845号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献2のブレーキ装置においては減摩コーティングの具体的な開示はなされていない。従って、上記特許文献1のブレーキ装置のように、スピンドル及びナットが液圧室内に配置され常に作動液にて晒される場合に例えば樹脂系の減摩コーティングを施すと、そのコーティングが作動液により侵されて摩擦を低減する効果を有しなくなってしまう。その結果、スピンドルとナットとの間の摩擦抵抗が大きくなり、場合によっては電動機にて作動しなくなる虞があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、機械的効率を向上させて駆動源である電動アクチュエータの小型軽量化を図りながら、その機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる車両用ブレーキ装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1に記載の発明は、ブレーキキャリパ内に出没可能に配設されるブレーキピストンを作動させるための作動液が供給される液圧室を有し、該液圧室内の作動液圧を高くすることで該ブレーキピストンを突出させ、その突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、前記回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、を備えた車両用ブレーキ装置であって、前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材の螺合部分が少なくとも前記液圧室内に配置され、該回転ネジ部材及び該直動ネジ部材の各螺合面の少なくとも一方には金属系コーティングが施されていることをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置において、前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材に形成されるネジは、断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されていることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ装置において、前記金属系コーティングは、前記回転ネジ部材に対してのみ施されていることをその要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置において、前記金属系コーティングが施される部材は鉄鋼よりなり、その部材に対して施される金属系コーティングは硬質クロムめっき又はニッケルめっきであることをその要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置において、前記金属系コーティングは、前記ブレーキピストンを突出させる際に前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材のネジにおいて互いが接触する接触面に対してのみ施されていることをその要旨とする。
【0016】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ブレーキピストンを作動させるための作動液が供給される液圧室内に、少なくとも回転ネジ部材及び直動ネジ部材の螺合部分が配置され、その回転ネジ部材及び直動ネジ部材の各螺合面の少なくとも一方には金属系コーティングが施される。これにより、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の摩擦抵抗が低減されるので、これら部材間の機械的効率が向上する。そのため、回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータの出力を低く設定することができ、該アクチュエータの小型軽量化を図ることが可能となる。又、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の螺合部分は液圧室内に配置され常に作動液に晒されるが、螺合面に施されるコーティングは金属系コーティングであるため、耐環境性が高く、コーティングが作動液にて侵されることが防止される。そのため、長期にわたりコーティングの効果を維持することができ、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、回転ネジ部材及び直動ネジ部材に形成されるネジは、断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成される。これにより、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の変換効率が高くなるので、両部材間の機械的効率がより向上する。又、螺合部分の強度が高くなるので、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の耐久性が向上する。又、螺合面を容易に形成できるので、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の低コスト化に貢献できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、金属系コーティングは、回転ネジ部材に対してのみ施される。即ち、回転ネジ部材はネジが形成される面が外周面であるため、回転ネジ部材の製造における管理がし易く、低コスト化等に貢献できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、金属系コーティングが施される部材は鉄鋼よりなり、その部材に対して施される金属系コーティングは硬質クロムめっき又はニッケルめっきである。つまり、硬質クロムめっき又はニッケルめっきは鉄鋼よりなる部材に対して密着性が良好で剥離し難いので、コーティングの耐久性が高くなる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、金属系コーティングは、ブレーキピストンを突出させる際に回転ネジ部材及び直動ネジ部材のネジにおいて互いが接触する接触面に対してのみ施される。つまり、ブレーキピストンを突出させる際に回転ネジ部材及び直動ネジ部材のネジの接触面には、摩擦材が回転体に圧接した時に該摩擦材が受ける反力により過大な圧力が作用し、この接触面における摩擦抵抗が大きくなる。そのため、この接触面にのみ金属系コーティングを施すようにしても、機械的効率を向上できる。しかも、この場合、金属系コーティングを施す面を極力少なくすることができるので、コーティングにかかる材料費を安価にすることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、本実施形態の車両用ブレーキ装置1を示す。尚、図1は、図2のA−A断面図である。
【0022】
車両用ブレーキ装置1は、図示しない車輪(例えば、各後輪)内にそれぞれ配設されている。ブレーキ装置1は、ブレーキペダル(図示略)の操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキスイッチ(図示略)の操作に基づいた駐車ブレーキ時においては後述の電動モータ21にて作動するように構成されている。
【0023】
ブレーキ装置1は、ブレーキ機構部2と、駐車ブレーキアクチュエータ3とを備えている。
ブレーキ機構部2は浮動型のブレーキキャリパ4を備え、該キャリパ4にはピストン収容部5が形成されている。ピストン収容部5には、ブレーキピストン6が回転不能かつ出没可能(軸方向に移動可能)に収容されている。ブレーキピストン6の基端部とピストン収容部5とで囲まれた空間は液圧室7となっており、該液圧室7には作動液が供給される。
【0024】
ブレーキピストン6の先端部には、摩擦材としてのブレーキパッド8が固定されている。このブレーキパッド8と対向する前記ブレーキキャリパ4の所定部位には該パッド8と対をなす摩擦材としてのブレーキパッド9が固定されている。これらブレーキパッド8,9間には、車輪(後輪)と一体回転するように設けられる回転体としてのブレーキディスク10が位置している。
【0025】
そして、ブレーキペダル(図示略)の踏み込み量が増加すると、その増加量に応じて液圧室7内の作動液圧が高くなり、その圧力増加によりブレーキピストン6が押圧されて突出する。すると、ブレーキピストン6に固定されるブレーキパッド8がブレーキディスク10の一側面に圧接するとともに、その圧接に基づいてブレーキキャリパ4が移動して他方のブレーキパッド9が該ディスク10の他側面に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)に制動力が生じるようになっている。
【0026】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなり、その圧力減少によりブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接することで生じる反力等によりブレーキピストン6が没入する。すると、ブレーキディスク10に対するブレーキパッド8,9の圧接力が減少し、制動力が減少する。そして、ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間するようになっている。
【0027】
前記ブレーキキャリパ4内には、運動変換機構11が収容されている。運動変換機構11は、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aの回転運動を往復直線運動に変換してブレーキピストン6に伝達し、該ピストン6を作動させるものである。運動変換機構11は、回転ネジ部材としてのスクリューシャフト12と直動ネジ部材としてのナット部材13とを備えている。
【0028】
スクリューシャフト12は、基端部(反ブレーキピストン6側端部)から先端部に向かって順にシャフト部12a、フランジ部12b及びスクリュー部12cを備えている。
【0029】
シャフト部12aは、その外周面がラジアル滑り軸受14を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。シャフト部12aの基端部はブレーキキャリパ4から突出し、その突出する部分には該シャフト12の軸方向に突出する連結凸部12dが形成されている。この連結凸部12dは、2面幅をなしている。即ち、連結凸部12dは、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aと回転方向において係合し、該出力軸部34aの回転をスクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0030】
フランジ部12bは、前記液圧室7内に位置しており、該液圧室7内において反ブレーキピストン6側の面がスラストボール軸受15を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。
【0031】
スクリュー部12cは、図3に示すように、螺合面としての外周面12eにネジ17が形成されており、そのネジ17の断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。スクリュー部12cは、ナット部材13と螺合される。即ち、ナット部材13の螺合面としての内周面13bに形成されるネジ18においても、その断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。尚、このスクリュー部12cとナット部材13とは、セルフロッキング作用が生じる構成となっている。
【0032】
又、スクリュー部12cには、外周面12e全体に硬質クロムめっき又はニッケルめっき(無電解ニッケル+リンめっき、複合(ニッケル+炭素ケイ素)めっき等)といった金属系コーティングCが施されている。尚、スクリュー部12cを有するスクリューシャフト12は鉄鋼よりなり、この材料に対する金属系コーティングCとしては硬質クロムめっき又はニッケルめっきが密着性が良好で剥離し難いという利点があるため好ましい。このように金属系コーティングCが施されたスクリュー部12cは、外周面12eの摩擦係数が小さくなり、ナット部材13との摩擦抵抗が低減されている。又、スクリュー部12cは液圧室7内に配置され常に作動液に晒されるが、該スクリュー部12cに施されるコーティングは金属系コーティングCであるため、そのコーティングCが作動液にて侵されることが防止され、長期にわたりコーティングCによる効果が維持される。
【0033】
ここで、前記ブレーキピストン6には、スクリュー部12c及びナット部材13を収容すべく基端部から先端部に向かって凹状をなす中空部6aが形成されている。中空部6aは、ナット部材13の先端側端面と軸方向において係合する段差部6bを有している。因みに、中空部6aは、前記液圧室7と連通しており、該液圧室7の一部をなしている。ナット部材13にはキー16が組み付けられており、そのキー16によりナット部材13はブレーキピストン6に対して回転不能に連結されている。又、ナット部材13は、ブレーキピストン6に対して段差部6bに当接するまで軸方向に移動可能となっている。
【0034】
そして、スクリューシャフト12が一方に回転されると(正転駆動されると)、ブレーキピストン6に対して回転不能に連結されているナット部材13は、スクリュー部12cの先端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6の段差部6bを押圧して該ピストン6を突出させる。一方、スクリューシャフト12が他方に回転されると(逆転駆動されると)、ナット部材13はスクリュー部12cに基端部側に向かって移動する。尚、ナット部材13が同方向に移動する際、該ナット部材13とブレーキピストン6とは係合しないので、該ナット部材13は該ピストン6を作動させない。
【0035】
又、上記したように作動液によりブレーキピストン6が突出する場合、ナット部材13とブレーキピストン6とは軸方向に係合しないため、該ピストン6のみが突出するようになっている。尚、ナット部材13の所定部位には軸方向に貫通する貫通孔13aが形成されており、該貫通孔13aは液圧室7内の作動液を中空部6a内に導入するためのものである。つまり、ブレーキピストン6において液圧を受ける面積が増大するように構成されている。
【0036】
このようなブレーキ機構部2には、駐車ブレーキアクチュエータ3が複数の取付ボルト(図示略)により一体に組み付けられている。駐車ブレーキアクチュエータ3は、電動アクチュエータを構成する直流モータ等の電動モータ21と、該モータ21の回転を減速する減速機構22とを備えている。これら電動モータ21及び減速機構22は、収容ケース23内に設けたモータ収容部23a及び減速機構収容部23bにそれぞれ収容され、蓋部材24により閉塞される。蓋部材24は、収容ケース23に対して複数の取付ボルト25にて固定される。
【0037】
電動モータ21は、モータ収容部23aに嵌挿されて固定されている。電動モータ21は、その軸線L2が前記ブレーキピストン6(スクリューシャフト12)の軸線L1と平行をなし、かつ回転軸21aが該ピストン6とは反対側に突出するように配置されている。回転軸21aには、ピニオン30が固定されている。
【0038】
そして、電動モータ21は、駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチ(図示略)がオン操作されると、ブレーキ機構部2にて所望の制動力が生じるまで(ブレーキディスク10にブレーキパッド8,9が所望の圧接力で圧接するまで)電源が供給されて正転駆動され、その後、電源供給が遮断される。一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、ブレーキ機構部2にて生じていた制動力がゼロになるまで(ブレーキディスク10からブレーキパッド8,9が離間するまで)電源が供給されて逆転駆動され、その後、電源供給が遮断される。
【0039】
減速機構22は、減速機構収容部23b内に収容され、前記運動変換機構11の反ブレーキピストン6側に配置されている。減速機構22は、第1〜第4減速ギヤ31〜34を備えている。
【0040】
第1減速ギヤ31は、大径ギヤ部31aと小径ギヤ部31bとが一体回転可能に連結されており、電動モータ21の回転軸21a(スクリューシャフト12)と平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸35により回転可能に支持されている。この第1減速ギヤ31の大径ギヤ部31aは、ピニオン30と噛合されている。第2減速ギヤ32は、大径ギヤ部32aと小径ギヤ部32bとが一体回転可能に連結されており、後述する第4減速ギヤ34に固定される支軸37にて回転可能に支持されている。この第2減速ギヤ32の大径ギヤ部32aは、第1減速ギヤ31の小径ギヤ部31bと噛合されている。第3減速ギヤ33は、大径ギヤ部33aと小径ギヤ部33bとが一体回転可能に連結されており、前記回転軸21aと平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸36により回転可能に支持されている。この第3減速ギヤ33の大径ギヤ部33aは、第2減速ギヤ32の小径ギヤ部32bと噛合されている。
【0041】
第4減速ギヤ34は、中心部に出力軸部34aが形成されている。出力軸部34aには、軸方向一方に突出するように支軸37が固定されている。この支軸37は、前記第2減速ギヤ32を支持するとともに、その先端が蓋部材24に対して回転可能に支持されている。又、この支軸37は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。つまり、第4減速ギヤ34及び前記第2減速ギヤ32は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。出力軸部34aの軸方向他端部は、収容ケース23に対して回転可能に支持されている。出力軸部34aの軸方向他端部には、連結凹部34bが形成されている。この連結凹部34bは断面2面幅をなし、該連結凹部34bには前記スクリューシャフト12の連結凸部12dが嵌挿される。つまり、この連結凹部34bは、該スクリューシャフト12の連結凸部12dと回転方向において係合して、出力軸部34aの回転を該スクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0042】
前記蓋部材24には、前記ピニオン30の先端面に対向する位置に貫通孔24aが形成されている。これに対し、前記ピニオン30の先端面には、工具(図示略)と連結するための工具連結孔30aが形成されている。即ち、貫通孔24aから工具を挿入して工具連結孔30aに嵌挿して該工具とピニオン30とを連結し、該工具によりピニオン30が回転できるように構成されている。そのため、電動モータ21によりブレーキピストン6を突出させて駐車ブレーキを作動させた状態で該モータ21が作動不能に陥った場合に、工具によりピニオン30を回転させて駐車ブレーキの作動を解除すべくブレーキピストン6を没入させることが可能となっている。そして、貫通孔24aはネジ孔となっており、通常は該貫通孔24aにボルト26が螺入されて、該ボルト26にて該貫通孔24aが閉塞されている。
【0043】
このように構成されたブレーキ装置1は、ブレーキペダルの操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時には液圧で作動し、駐車ブレーキスイッチの操作に基づいた駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する。
【0044】
[主ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
ブレーキペダルの踏み込み量が増加すると、その増加量に応じてブレーキ機構部2の液圧室7内の作動液圧が高くなる。すると、その圧力を受けてブレーキピストン6が押圧されて突出し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)にブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が生じる。
【0045】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなる。すると、ブレーキパッド8,9が受ける反力等によりブレーキピストン6が没入し、制動力が減少する。ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間する。即ち、制動力がゼロとなる。
【0046】
[駐車ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチがオン操作されると、電動モータ21に正転のための電源が供給され該モータ21は正転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を正転駆動させる。スクリューシャフト12が正転駆動されると、ナット部材13はブレーキピストン6を突出させるように押圧し、その押圧に基づいてブレーキピストン6はブレーキパッド8,9をブレーキディスク10に圧接させて制動力を発生させる。そして、車両を駐車するのに必要な所望の制動力が生じるまで電動モータ21に電源が供給された後、該モータ21への電源供給が遮断される。
【0047】
このとき、ブレーキピストン6はブレーキディスク10に圧接するブレーキパッド8,9から反力を受けて没入しようとするが、スクリューシャフト12(スクリュー部12c)とナット部材13との間でセルフロッキング作用が生じる構成となっているため、該ピストン6が没入することが防止されている。これにより、電動モータ21への電源供給が遮断されてもブレーキピストン6の突出位置が維持され、ブレーキパッド8,9の圧接力、即ち制動力が維持される(駐車ブレーキ作動)。
【0048】
一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、電動モータ21に逆転のための電源が供給され該モータ21は逆転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を逆転駆動させる。スクリューシャフト12が逆転駆動されると、ナット部材13はスクリュー部12cの基端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなる。ブレーキピストン6がナット部材13から押圧力を受けなくなると、ブレーキパッド8,9から受ける反力等により該ピストン6が没入し、制動力が減少する。そして、電動モータ21はブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に対して所定距離だけ離間するようにナット部材13がスクリュー部12cの所定位置に配置されるまで逆転駆動され、その後、該モータ21への電源供給が停止される。これに伴ってブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10から所定距離だけ離間し、制動力がゼロとなる(駐車ブレーキの作動解除)。
【0049】
尚、上記したように、駐車ブレーキが作動した状態で何らかの原因で電動モータ21が作動不能に陥った場合、このままの状態では駐車ブレーキが作動したまま維持されてしまい、次に車両を発進若しくは移動させる際に支障を来す場合がある。そこで、このような場合には、蓋部材24の貫通孔24aに螺着されているボルト26を抜き取り、その貫通孔24aから工具を挿入してピニオン30の先端面に設けられる工具連結孔30aに嵌挿する。そして、工具を操作してスクリューシャフト12が逆転するようにピニオン30を回転させ、ナット部材13をスクリュー部12cの基端部側に移動させる。すると、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなり、ブレーキパッド8,9から受ける反力等によりブレーキピストン6が没入する。このようにして、外部から工具によりブレーキパッド8,9をブレーキディスク10から離間させ、駐車ブレーキの作動を解除することが可能となっている。
【0050】
次に、本実施形態のブレーキ装置1の特徴的な作用効果を述べる。
(1)ブレーキピストン6を作動させるための作動液が供給される液圧室7内に、スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13の螺合部分が配置され、そのスクリュー部12cの外周面12e(螺合面)には金属系コーティングCが施される。これにより、スクリュー部12cとナット部材13との間の摩擦抵抗が低減されるので、これら部材間の機械的効率が向上する。そのため、スクリューシャフト12を回転させる電動モータ21の出力を低く設定することができ、該モータ21(アクチュエータ3)の小型軽量化を図ることができる。又、スクリュー部12c及びナット部材13の螺合部分は液圧室7内に配置され常に作動液に晒されるが、該スクリュー部12cの外周面12e(螺合面)に施されるコーティングは金属系コーティングCであるため、耐環境性が高く、コーティングCが作動液にて侵されることが防止される。そのため、長期にわたりコーティングCの効果を維持することができ、スクリュー部12cとナット部材13との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる。
【0051】
(2)スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13に形成されるネジ17,18は、断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成される。これにより、スクリュー部12cとナット部材13との間の変換効率が高くなるので、両部材間の機械的効率をより向上することができる。又、螺合部分の強度が高くなるので、スクリューシャフト12及びナット部材13の耐久性を向上することができる。又、螺合面を容易に形成できるので、スクリューシャフト12及びナット部材13の低コスト化に貢献することができる。
【0052】
(3)金属系コーティングCは、スクリューシャフト12に対してのみ施される。即ち、スクリューシャフト12はネジ17が形成される面が外周面12eであるため、スクリューシャフト12の製造における管理がし易く、低コスト化等に貢献することができる。
【0053】
(4)金属系コーティングCが施されるスクリューシャフト12は鉄鋼よりなり、該シャフト12に対して施される金属系コーティングCは硬質クロムめっき又はニッケルめっきである。つまり、硬質クロムめっき又はニッケルめっきは鉄鋼よりなる部材に対して密着性が良好で剥離し難いので、コーティングCの耐久性を高くすることができる。
【0054】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13に形成されるネジ17,18を台形ネジで構成したが、その他のネジ形状であってもよい。
【0055】
○上記実施形態では、スクリューシャフト12を鉄鋼製としたが、これ以外の材料で形成してもよい。
○上記実施形態では、金属系コーティングCとして硬質クロムめっき又はニッケルを用いたが、これ以外の金属系コーティングであってもよい。
【0056】
○上記実施形態では、スクリューシャフト12のスクリュー部12cの外周面12e全体に金属系コーティングCを施したが、これに限定されるものではない。例えば、ナット部材13の内周面13b全体に金属系コーティングCを施してもよい。又、スクリュー部12cの外周面12eとナット部材13の内周面13bとの両方に金属系コーティングCを施してもよい。
【0057】
又、図4に示すように、ブレーキピストン6を突出させる際にスクリュー部12c及びナット部材13のネジ17,18において互いが接触する接触面17a,18aにそれぞれ金属系コーティングCを施すようにしてもよい。又、この場合、一方の接触面17a,18aにのみ金属系コーティングCを施すようにしてもよい。つまり、ブレーキピストン6を突出させる際にスクリュー部12c及びナット部材13のネジ17,18の接触面17a,18aには、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接した時に該パッド8,9が受ける反力により過大な圧力が作用し、この接触面17a,18aにおける摩擦抵抗が大きくなる。そのため、この接触面17a,18aにのみ金属系コーティングCを施すようにしても、機械的効率を向上することができる。しかも、この場合、金属系コーティングCを施す面を極力少なくすることができるので、コーティングCにかかる材料費を安価にすることが可能となる。
【0058】
○上記実施形態のブレーキ装置1は、主ブレーキ時には作動液による液圧にて作動させ、駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する構成であったが、液圧による作動を省略し、主ブレーキ時及び駐車ブレーキ時の両場合においても電動モータ21にて作動するような構成であってもよい。尚、この場合であっても同様に、スクリューシャフト12のスクリュー部12cの外周面12eに施されるコーティングは金属系コーティングCであるため、耐環境性が高く、長期にわたりコーティングCの効果を維持することができる。従って、スクリューシャフト12とナット部材13との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる。
【0059】
○上記実施形態のブレーキ装置1の構成は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、ブレーキ機構部2や駐車ブレーキアクチュエータ3の構成を適宜変更してもよい。又、駐車ブレーキアクチュエータ3を構成する電動モータ21や減速機構22の構成を適宜変更してもよい。
【0060】
上記各実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ) ブレーキキャリパ内にブレーキピストンを出没可能に配設し、該ピストンの突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、
前記回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材の各螺合面の少なくとも一方には金属系コーティングが施されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0061】
このようにすれば、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の摩擦抵抗が低減されるので、これら部材間の機械的効率が向上する。そのため、回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータの出力を低く設定することができ、該アクチュエータの小型軽量化を図ることが可能となる。又、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の螺合面に施されるコーティングは金属系コーティングであるため、耐環境性が高く、長期にわたりコーティングの効果を維持することができる。従って、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、機械的効率を向上させて駆動源である電動アクチュエータの小型軽量化を図りながら、その機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる車両用ブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【図2】アクチュエータの内部を説明するための図。
【図3】スクリューシャフトとナット部材との螺合部分の拡大断面図。
【図4】別例におけるスクリューシャフトとナット部材との螺合部分の拡大断面図。
【符号の説明】
2…ブレーキ機構部、4…ブレーキキャリパ、6…ブレーキピストン、7…液圧室、8,9…摩擦材としてのブレーキパッド、10…回転体としてのブレーキディスク、11…運動変換機構、12…回転ネジ部材としてのスクリューシャフト、12e…螺合面としての外周面、13…直動ネジ部材としてのナット部材、13b…螺合面としての内周面、17,18…ネジ、17a,18a…接触面、21…電動アクチュエータを構成する電動モータ、C…金属系コーティング。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両用ブレーキ装置には、車輪内に設けられ制動力を発生させるブレーキ機構部が主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキ時においては電動モータにて作動するように構成されているものが、例えば特許文献1にて開示されている。
【0003】
特許文献1のブレーキ装置は、ブレーキキャリパ内にブレーキピストンが出没可能に配設され、該ピストンの突出に伴って摩擦材をブレーキのロータに圧接させることで制動力を得るように構成されている。ブレーキピストンの反摩擦材側には液圧室が設けられ、該液圧室にはブレーキピストンを作動させる作動液が供給される。そして、主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にてブレーキピストンが作動される。
【0004】
又、液圧室内にはスピンドル及びナットが収容されており、スピンドルは該ブレーキ装置に一体に備えられる電動機により回転される。このスピンドルは外周面にネジが形成され、回転不能に設けられるナットと螺合している。つまり、電動機によるスピンドルの回転がナットの直線運動に変換され、該ナットの直線運動に伴って前記ブレーキピストンが作動するように構成されている。そして、駐車ブレーキ時においては電動機にてブレーキピストンが作動される。
【0005】
尚、駐車ブレーキ時においてはロータに対してブレーキバッドが圧接するため、該パッドには反力(ロータから離間する方向の力)が作用してブレーキピストンが没入しようとするが、スピンドルとナットとの間のセルフロッキング作用により、該ピストンが没入することが防止される。これにより、電動機への電源供給が遮断されてもブレーキピストンの作動位置が維持され、摩擦材の圧接力、即ち制動力が維持されるようになっている。
【0006】
しかしながら、駐車ブレーキ時において所望の制動力を得るためには、ロータに対して摩擦材を圧接する必要があるため、ブレーキピストンを作動させるスピンドルとナットとの間の摩擦抵抗は大きい。そのため、電動機は高出力なものが必要となるが、高出力の電動機は、体格が大きく、重量が重い。一方、ブレーキ装置が配置される車輪内は狭い空間であり、しかも車輪付近の重量が大きいと乗り心地に影響を与えることは周知である。従って、車輪内に配置されるブレーキ装置には小型軽量化が要求され、該ブレーキ装置に用いられる電動機に対しても同様に小型軽量化が要求されている。そこで、ブレーキ装置の機械的効率を向上させて電動機にかかる負荷を軽減し、出力の小さい小型軽量の電動機を使用可能とすることが求められている。
【0007】
そこで、特許文献2のブレーキ装置では、スピンドル及びナットの少なくとも一方に減摩コーティングを施す技術が開示されている。従って、この技術を、液圧及び電動機により作動するように構成した前記特許文献1のブレーキ装置に適用すれば、該ブレーキ装置の電動機の小型軽量化が可能となる。
【0008】
【特許文献1】
特表2001−510760号公報
【特許文献2】
特開2000−145845号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献2のブレーキ装置においては減摩コーティングの具体的な開示はなされていない。従って、上記特許文献1のブレーキ装置のように、スピンドル及びナットが液圧室内に配置され常に作動液にて晒される場合に例えば樹脂系の減摩コーティングを施すと、そのコーティングが作動液により侵されて摩擦を低減する効果を有しなくなってしまう。その結果、スピンドルとナットとの間の摩擦抵抗が大きくなり、場合によっては電動機にて作動しなくなる虞があった。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、機械的効率を向上させて駆動源である電動アクチュエータの小型軽量化を図りながら、その機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる車両用ブレーキ装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、請求項1に記載の発明は、ブレーキキャリパ内に出没可能に配設されるブレーキピストンを作動させるための作動液が供給される液圧室を有し、該液圧室内の作動液圧を高くすることで該ブレーキピストンを突出させ、その突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、前記回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、を備えた車両用ブレーキ装置であって、前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材の螺合部分が少なくとも前記液圧室内に配置され、該回転ネジ部材及び該直動ネジ部材の各螺合面の少なくとも一方には金属系コーティングが施されていることをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ブレーキ装置において、前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材に形成されるネジは、断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されていることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ装置において、前記金属系コーティングは、前記回転ネジ部材に対してのみ施されていることをその要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置において、前記金属系コーティングが施される部材は鉄鋼よりなり、その部材に対して施される金属系コーティングは硬質クロムめっき又はニッケルめっきであることをその要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置において、前記金属系コーティングは、前記ブレーキピストンを突出させる際に前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材のネジにおいて互いが接触する接触面に対してのみ施されていることをその要旨とする。
【0016】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ブレーキピストンを作動させるための作動液が供給される液圧室内に、少なくとも回転ネジ部材及び直動ネジ部材の螺合部分が配置され、その回転ネジ部材及び直動ネジ部材の各螺合面の少なくとも一方には金属系コーティングが施される。これにより、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の摩擦抵抗が低減されるので、これら部材間の機械的効率が向上する。そのため、回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータの出力を低く設定することができ、該アクチュエータの小型軽量化を図ることが可能となる。又、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の螺合部分は液圧室内に配置され常に作動液に晒されるが、螺合面に施されるコーティングは金属系コーティングであるため、耐環境性が高く、コーティングが作動液にて侵されることが防止される。そのため、長期にわたりコーティングの効果を維持することができ、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、回転ネジ部材及び直動ネジ部材に形成されるネジは、断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成される。これにより、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の変換効率が高くなるので、両部材間の機械的効率がより向上する。又、螺合部分の強度が高くなるので、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の耐久性が向上する。又、螺合面を容易に形成できるので、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の低コスト化に貢献できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、金属系コーティングは、回転ネジ部材に対してのみ施される。即ち、回転ネジ部材はネジが形成される面が外周面であるため、回転ネジ部材の製造における管理がし易く、低コスト化等に貢献できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、金属系コーティングが施される部材は鉄鋼よりなり、その部材に対して施される金属系コーティングは硬質クロムめっき又はニッケルめっきである。つまり、硬質クロムめっき又はニッケルめっきは鉄鋼よりなる部材に対して密着性が良好で剥離し難いので、コーティングの耐久性が高くなる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、金属系コーティングは、ブレーキピストンを突出させる際に回転ネジ部材及び直動ネジ部材のネジにおいて互いが接触する接触面に対してのみ施される。つまり、ブレーキピストンを突出させる際に回転ネジ部材及び直動ネジ部材のネジの接触面には、摩擦材が回転体に圧接した時に該摩擦材が受ける反力により過大な圧力が作用し、この接触面における摩擦抵抗が大きくなる。そのため、この接触面にのみ金属系コーティングを施すようにしても、機械的効率を向上できる。しかも、この場合、金属系コーティングを施す面を極力少なくすることができるので、コーティングにかかる材料費を安価にすることが可能となる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、本実施形態の車両用ブレーキ装置1を示す。尚、図1は、図2のA−A断面図である。
【0022】
車両用ブレーキ装置1は、図示しない車輪(例えば、各後輪)内にそれぞれ配設されている。ブレーキ装置1は、ブレーキペダル(図示略)の操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時においては液圧にて作動し、駐車ブレーキスイッチ(図示略)の操作に基づいた駐車ブレーキ時においては後述の電動モータ21にて作動するように構成されている。
【0023】
ブレーキ装置1は、ブレーキ機構部2と、駐車ブレーキアクチュエータ3とを備えている。
ブレーキ機構部2は浮動型のブレーキキャリパ4を備え、該キャリパ4にはピストン収容部5が形成されている。ピストン収容部5には、ブレーキピストン6が回転不能かつ出没可能(軸方向に移動可能)に収容されている。ブレーキピストン6の基端部とピストン収容部5とで囲まれた空間は液圧室7となっており、該液圧室7には作動液が供給される。
【0024】
ブレーキピストン6の先端部には、摩擦材としてのブレーキパッド8が固定されている。このブレーキパッド8と対向する前記ブレーキキャリパ4の所定部位には該パッド8と対をなす摩擦材としてのブレーキパッド9が固定されている。これらブレーキパッド8,9間には、車輪(後輪)と一体回転するように設けられる回転体としてのブレーキディスク10が位置している。
【0025】
そして、ブレーキペダル(図示略)の踏み込み量が増加すると、その増加量に応じて液圧室7内の作動液圧が高くなり、その圧力増加によりブレーキピストン6が押圧されて突出する。すると、ブレーキピストン6に固定されるブレーキパッド8がブレーキディスク10の一側面に圧接するとともに、その圧接に基づいてブレーキキャリパ4が移動して他方のブレーキパッド9が該ディスク10の他側面に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)に制動力が生じるようになっている。
【0026】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなり、その圧力減少によりブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接することで生じる反力等によりブレーキピストン6が没入する。すると、ブレーキディスク10に対するブレーキパッド8,9の圧接力が減少し、制動力が減少する。そして、ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間するようになっている。
【0027】
前記ブレーキキャリパ4内には、運動変換機構11が収容されている。運動変換機構11は、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aの回転運動を往復直線運動に変換してブレーキピストン6に伝達し、該ピストン6を作動させるものである。運動変換機構11は、回転ネジ部材としてのスクリューシャフト12と直動ネジ部材としてのナット部材13とを備えている。
【0028】
スクリューシャフト12は、基端部(反ブレーキピストン6側端部)から先端部に向かって順にシャフト部12a、フランジ部12b及びスクリュー部12cを備えている。
【0029】
シャフト部12aは、その外周面がラジアル滑り軸受14を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。シャフト部12aの基端部はブレーキキャリパ4から突出し、その突出する部分には該シャフト12の軸方向に突出する連結凸部12dが形成されている。この連結凸部12dは、2面幅をなしている。即ち、連結凸部12dは、駐車ブレーキアクチュエータ3の出力軸部34aと回転方向において係合し、該出力軸部34aの回転をスクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0030】
フランジ部12bは、前記液圧室7内に位置しており、該液圧室7内において反ブレーキピストン6側の面がスラストボール軸受15を介してブレーキキャリパ4に対し回転可能に支持されている。
【0031】
スクリュー部12cは、図3に示すように、螺合面としての外周面12eにネジ17が形成されており、そのネジ17の断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。スクリュー部12cは、ナット部材13と螺合される。即ち、ナット部材13の螺合面としての内周面13bに形成されるネジ18においても、その断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されている。尚、このスクリュー部12cとナット部材13とは、セルフロッキング作用が生じる構成となっている。
【0032】
又、スクリュー部12cには、外周面12e全体に硬質クロムめっき又はニッケルめっき(無電解ニッケル+リンめっき、複合(ニッケル+炭素ケイ素)めっき等)といった金属系コーティングCが施されている。尚、スクリュー部12cを有するスクリューシャフト12は鉄鋼よりなり、この材料に対する金属系コーティングCとしては硬質クロムめっき又はニッケルめっきが密着性が良好で剥離し難いという利点があるため好ましい。このように金属系コーティングCが施されたスクリュー部12cは、外周面12eの摩擦係数が小さくなり、ナット部材13との摩擦抵抗が低減されている。又、スクリュー部12cは液圧室7内に配置され常に作動液に晒されるが、該スクリュー部12cに施されるコーティングは金属系コーティングCであるため、そのコーティングCが作動液にて侵されることが防止され、長期にわたりコーティングCによる効果が維持される。
【0033】
ここで、前記ブレーキピストン6には、スクリュー部12c及びナット部材13を収容すべく基端部から先端部に向かって凹状をなす中空部6aが形成されている。中空部6aは、ナット部材13の先端側端面と軸方向において係合する段差部6bを有している。因みに、中空部6aは、前記液圧室7と連通しており、該液圧室7の一部をなしている。ナット部材13にはキー16が組み付けられており、そのキー16によりナット部材13はブレーキピストン6に対して回転不能に連結されている。又、ナット部材13は、ブレーキピストン6に対して段差部6bに当接するまで軸方向に移動可能となっている。
【0034】
そして、スクリューシャフト12が一方に回転されると(正転駆動されると)、ブレーキピストン6に対して回転不能に連結されているナット部材13は、スクリュー部12cの先端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6の段差部6bを押圧して該ピストン6を突出させる。一方、スクリューシャフト12が他方に回転されると(逆転駆動されると)、ナット部材13はスクリュー部12cに基端部側に向かって移動する。尚、ナット部材13が同方向に移動する際、該ナット部材13とブレーキピストン6とは係合しないので、該ナット部材13は該ピストン6を作動させない。
【0035】
又、上記したように作動液によりブレーキピストン6が突出する場合、ナット部材13とブレーキピストン6とは軸方向に係合しないため、該ピストン6のみが突出するようになっている。尚、ナット部材13の所定部位には軸方向に貫通する貫通孔13aが形成されており、該貫通孔13aは液圧室7内の作動液を中空部6a内に導入するためのものである。つまり、ブレーキピストン6において液圧を受ける面積が増大するように構成されている。
【0036】
このようなブレーキ機構部2には、駐車ブレーキアクチュエータ3が複数の取付ボルト(図示略)により一体に組み付けられている。駐車ブレーキアクチュエータ3は、電動アクチュエータを構成する直流モータ等の電動モータ21と、該モータ21の回転を減速する減速機構22とを備えている。これら電動モータ21及び減速機構22は、収容ケース23内に設けたモータ収容部23a及び減速機構収容部23bにそれぞれ収容され、蓋部材24により閉塞される。蓋部材24は、収容ケース23に対して複数の取付ボルト25にて固定される。
【0037】
電動モータ21は、モータ収容部23aに嵌挿されて固定されている。電動モータ21は、その軸線L2が前記ブレーキピストン6(スクリューシャフト12)の軸線L1と平行をなし、かつ回転軸21aが該ピストン6とは反対側に突出するように配置されている。回転軸21aには、ピニオン30が固定されている。
【0038】
そして、電動モータ21は、駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチ(図示略)がオン操作されると、ブレーキ機構部2にて所望の制動力が生じるまで(ブレーキディスク10にブレーキパッド8,9が所望の圧接力で圧接するまで)電源が供給されて正転駆動され、その後、電源供給が遮断される。一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、ブレーキ機構部2にて生じていた制動力がゼロになるまで(ブレーキディスク10からブレーキパッド8,9が離間するまで)電源が供給されて逆転駆動され、その後、電源供給が遮断される。
【0039】
減速機構22は、減速機構収容部23b内に収容され、前記運動変換機構11の反ブレーキピストン6側に配置されている。減速機構22は、第1〜第4減速ギヤ31〜34を備えている。
【0040】
第1減速ギヤ31は、大径ギヤ部31aと小径ギヤ部31bとが一体回転可能に連結されており、電動モータ21の回転軸21a(スクリューシャフト12)と平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸35により回転可能に支持されている。この第1減速ギヤ31の大径ギヤ部31aは、ピニオン30と噛合されている。第2減速ギヤ32は、大径ギヤ部32aと小径ギヤ部32bとが一体回転可能に連結されており、後述する第4減速ギヤ34に固定される支軸37にて回転可能に支持されている。この第2減速ギヤ32の大径ギヤ部32aは、第1減速ギヤ31の小径ギヤ部31bと噛合されている。第3減速ギヤ33は、大径ギヤ部33aと小径ギヤ部33bとが一体回転可能に連結されており、前記回転軸21aと平行となるように収容ケース23と蓋部材24とに跨って固定される支軸36により回転可能に支持されている。この第3減速ギヤ33の大径ギヤ部33aは、第2減速ギヤ32の小径ギヤ部32bと噛合されている。
【0041】
第4減速ギヤ34は、中心部に出力軸部34aが形成されている。出力軸部34aには、軸方向一方に突出するように支軸37が固定されている。この支軸37は、前記第2減速ギヤ32を支持するとともに、その先端が蓋部材24に対して回転可能に支持されている。又、この支軸37は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。つまり、第4減速ギヤ34及び前記第2減速ギヤ32は、前記スクリューシャフト12と同軸となるように軸線L1上に配置されている。出力軸部34aの軸方向他端部は、収容ケース23に対して回転可能に支持されている。出力軸部34aの軸方向他端部には、連結凹部34bが形成されている。この連結凹部34bは断面2面幅をなし、該連結凹部34bには前記スクリューシャフト12の連結凸部12dが嵌挿される。つまり、この連結凹部34bは、該スクリューシャフト12の連結凸部12dと回転方向において係合して、出力軸部34aの回転を該スクリューシャフト12に伝達するようになっている。
【0042】
前記蓋部材24には、前記ピニオン30の先端面に対向する位置に貫通孔24aが形成されている。これに対し、前記ピニオン30の先端面には、工具(図示略)と連結するための工具連結孔30aが形成されている。即ち、貫通孔24aから工具を挿入して工具連結孔30aに嵌挿して該工具とピニオン30とを連結し、該工具によりピニオン30が回転できるように構成されている。そのため、電動モータ21によりブレーキピストン6を突出させて駐車ブレーキを作動させた状態で該モータ21が作動不能に陥った場合に、工具によりピニオン30を回転させて駐車ブレーキの作動を解除すべくブレーキピストン6を没入させることが可能となっている。そして、貫通孔24aはネジ孔となっており、通常は該貫通孔24aにボルト26が螺入されて、該ボルト26にて該貫通孔24aが閉塞されている。
【0043】
このように構成されたブレーキ装置1は、ブレーキペダルの操作に基づいた主ブレーキ(走行時等に使用するブレーキ)時には液圧で作動し、駐車ブレーキスイッチの操作に基づいた駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する。
【0044】
[主ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
ブレーキペダルの踏み込み量が増加すると、その増加量に応じてブレーキ機構部2の液圧室7内の作動液圧が高くなる。すると、その圧力を受けてブレーキピストン6が押圧されて突出し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接する。これにより、ブレーキディスク10、即ち車輪(後輪)にブレーキペダルの踏み込み量に応じた制動力が生じる。
【0045】
一方、ブレーキペダルの踏み込み量が減少すると、その減少量に応じて液圧室7内の作動液圧が低くなる。すると、ブレーキパッド8,9が受ける反力等によりブレーキピストン6が没入し、制動力が減少する。ブレーキペダルの踏み込みがなくなると、ブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9はブレーキディスク10と離間する。即ち、制動力がゼロとなる。
【0046】
[駐車ブレーキ時におけるブレーキ装置1の動作]
駐車ブレーキを作動させるべく駐車ブレーキスイッチがオン操作されると、電動モータ21に正転のための電源が供給され該モータ21は正転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を正転駆動させる。スクリューシャフト12が正転駆動されると、ナット部材13はブレーキピストン6を突出させるように押圧し、その押圧に基づいてブレーキピストン6はブレーキパッド8,9をブレーキディスク10に圧接させて制動力を発生させる。そして、車両を駐車するのに必要な所望の制動力が生じるまで電動モータ21に電源が供給された後、該モータ21への電源供給が遮断される。
【0047】
このとき、ブレーキピストン6はブレーキディスク10に圧接するブレーキパッド8,9から反力を受けて没入しようとするが、スクリューシャフト12(スクリュー部12c)とナット部材13との間でセルフロッキング作用が生じる構成となっているため、該ピストン6が没入することが防止されている。これにより、電動モータ21への電源供給が遮断されてもブレーキピストン6の突出位置が維持され、ブレーキパッド8,9の圧接力、即ち制動力が維持される(駐車ブレーキ作動)。
【0048】
一方、駐車ブレーキの作動を解除すべく駐車ブレーキスイッチがオフ操作されると、電動モータ21に逆転のための電源が供給され該モータ21は逆転駆動する。すると、電動モータ21は、減速機構22を介してスクリューシャフト12を逆転駆動させる。スクリューシャフト12が逆転駆動されると、ナット部材13はスクリュー部12cの基端部側に向かって移動し、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなる。ブレーキピストン6がナット部材13から押圧力を受けなくなると、ブレーキパッド8,9から受ける反力等により該ピストン6が没入し、制動力が減少する。そして、電動モータ21はブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に対して所定距離だけ離間するようにナット部材13がスクリュー部12cの所定位置に配置されるまで逆転駆動され、その後、該モータ21への電源供給が停止される。これに伴ってブレーキピストン6が更に没入し、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10から所定距離だけ離間し、制動力がゼロとなる(駐車ブレーキの作動解除)。
【0049】
尚、上記したように、駐車ブレーキが作動した状態で何らかの原因で電動モータ21が作動不能に陥った場合、このままの状態では駐車ブレーキが作動したまま維持されてしまい、次に車両を発進若しくは移動させる際に支障を来す場合がある。そこで、このような場合には、蓋部材24の貫通孔24aに螺着されているボルト26を抜き取り、その貫通孔24aから工具を挿入してピニオン30の先端面に設けられる工具連結孔30aに嵌挿する。そして、工具を操作してスクリューシャフト12が逆転するようにピニオン30を回転させ、ナット部材13をスクリュー部12cの基端部側に移動させる。すると、ブレーキピストン6はナット部材13から押圧力を受けなくなり、ブレーキパッド8,9から受ける反力等によりブレーキピストン6が没入する。このようにして、外部から工具によりブレーキパッド8,9をブレーキディスク10から離間させ、駐車ブレーキの作動を解除することが可能となっている。
【0050】
次に、本実施形態のブレーキ装置1の特徴的な作用効果を述べる。
(1)ブレーキピストン6を作動させるための作動液が供給される液圧室7内に、スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13の螺合部分が配置され、そのスクリュー部12cの外周面12e(螺合面)には金属系コーティングCが施される。これにより、スクリュー部12cとナット部材13との間の摩擦抵抗が低減されるので、これら部材間の機械的効率が向上する。そのため、スクリューシャフト12を回転させる電動モータ21の出力を低く設定することができ、該モータ21(アクチュエータ3)の小型軽量化を図ることができる。又、スクリュー部12c及びナット部材13の螺合部分は液圧室7内に配置され常に作動液に晒されるが、該スクリュー部12cの外周面12e(螺合面)に施されるコーティングは金属系コーティングCであるため、耐環境性が高く、コーティングCが作動液にて侵されることが防止される。そのため、長期にわたりコーティングCの効果を維持することができ、スクリュー部12cとナット部材13との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる。
【0051】
(2)スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13に形成されるネジ17,18は、断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成される。これにより、スクリュー部12cとナット部材13との間の変換効率が高くなるので、両部材間の機械的効率をより向上することができる。又、螺合部分の強度が高くなるので、スクリューシャフト12及びナット部材13の耐久性を向上することができる。又、螺合面を容易に形成できるので、スクリューシャフト12及びナット部材13の低コスト化に貢献することができる。
【0052】
(3)金属系コーティングCは、スクリューシャフト12に対してのみ施される。即ち、スクリューシャフト12はネジ17が形成される面が外周面12eであるため、スクリューシャフト12の製造における管理がし易く、低コスト化等に貢献することができる。
【0053】
(4)金属系コーティングCが施されるスクリューシャフト12は鉄鋼よりなり、該シャフト12に対して施される金属系コーティングCは硬質クロムめっき又はニッケルめっきである。つまり、硬質クロムめっき又はニッケルめっきは鉄鋼よりなる部材に対して密着性が良好で剥離し難いので、コーティングCの耐久性を高くすることができる。
【0054】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、スクリューシャフト12のスクリュー部12c及びナット部材13に形成されるネジ17,18を台形ネジで構成したが、その他のネジ形状であってもよい。
【0055】
○上記実施形態では、スクリューシャフト12を鉄鋼製としたが、これ以外の材料で形成してもよい。
○上記実施形態では、金属系コーティングCとして硬質クロムめっき又はニッケルを用いたが、これ以外の金属系コーティングであってもよい。
【0056】
○上記実施形態では、スクリューシャフト12のスクリュー部12cの外周面12e全体に金属系コーティングCを施したが、これに限定されるものではない。例えば、ナット部材13の内周面13b全体に金属系コーティングCを施してもよい。又、スクリュー部12cの外周面12eとナット部材13の内周面13bとの両方に金属系コーティングCを施してもよい。
【0057】
又、図4に示すように、ブレーキピストン6を突出させる際にスクリュー部12c及びナット部材13のネジ17,18において互いが接触する接触面17a,18aにそれぞれ金属系コーティングCを施すようにしてもよい。又、この場合、一方の接触面17a,18aにのみ金属系コーティングCを施すようにしてもよい。つまり、ブレーキピストン6を突出させる際にスクリュー部12c及びナット部材13のネジ17,18の接触面17a,18aには、ブレーキパッド8,9がブレーキディスク10に圧接した時に該パッド8,9が受ける反力により過大な圧力が作用し、この接触面17a,18aにおける摩擦抵抗が大きくなる。そのため、この接触面17a,18aにのみ金属系コーティングCを施すようにしても、機械的効率を向上することができる。しかも、この場合、金属系コーティングCを施す面を極力少なくすることができるので、コーティングCにかかる材料費を安価にすることが可能となる。
【0058】
○上記実施形態のブレーキ装置1は、主ブレーキ時には作動液による液圧にて作動させ、駐車ブレーキ時には電動モータ21にて作動する構成であったが、液圧による作動を省略し、主ブレーキ時及び駐車ブレーキ時の両場合においても電動モータ21にて作動するような構成であってもよい。尚、この場合であっても同様に、スクリューシャフト12のスクリュー部12cの外周面12eに施されるコーティングは金属系コーティングCであるため、耐環境性が高く、長期にわたりコーティングCの効果を維持することができる。従って、スクリューシャフト12とナット部材13との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる。
【0059】
○上記実施形態のブレーキ装置1の構成は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。例えば、ブレーキ機構部2や駐車ブレーキアクチュエータ3の構成を適宜変更してもよい。又、駐車ブレーキアクチュエータ3を構成する電動モータ21や減速機構22の構成を適宜変更してもよい。
【0060】
上記各実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ) ブレーキキャリパ内にブレーキピストンを出没可能に配設し、該ピストンの突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、
前記回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材の各螺合面の少なくとも一方には金属系コーティングが施されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【0061】
このようにすれば、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の摩擦抵抗が低減されるので、これら部材間の機械的効率が向上する。そのため、回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータの出力を低く設定することができ、該アクチュエータの小型軽量化を図ることが可能となる。又、回転ネジ部材及び直動ネジ部材の螺合面に施されるコーティングは金属系コーティングであるため、耐環境性が高く、長期にわたりコーティングの効果を維持することができる。従って、回転ネジ部材と直動ネジ部材との間の機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、機械的効率を向上させて駆動源である電動アクチュエータの小型軽量化を図りながら、その機械的効率を長期にわたり良好に維持することができる車両用ブレーキ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の車両用ブレーキ装置の断面図。
【図2】アクチュエータの内部を説明するための図。
【図3】スクリューシャフトとナット部材との螺合部分の拡大断面図。
【図4】別例におけるスクリューシャフトとナット部材との螺合部分の拡大断面図。
【符号の説明】
2…ブレーキ機構部、4…ブレーキキャリパ、6…ブレーキピストン、7…液圧室、8,9…摩擦材としてのブレーキパッド、10…回転体としてのブレーキディスク、11…運動変換機構、12…回転ネジ部材としてのスクリューシャフト、12e…螺合面としての外周面、13…直動ネジ部材としてのナット部材、13b…螺合面としての内周面、17,18…ネジ、17a,18a…接触面、21…電動アクチュエータを構成する電動モータ、C…金属系コーティング。
Claims (5)
- ブレーキキャリパ内に出没可能に配設されるブレーキピストンを作動させるための作動液が供給される液圧室を有し、該液圧室内の作動液圧を高くすることで該ブレーキピストンを突出させ、その突出に基づいて摩擦材を車輪とともに回転される回転体に対して圧接させて制動力を得るように構成されるブレーキ機構部と、
回転ネジ部材に直動ネジ部材を螺合し、該回転ネジ部材の回転運動を該直動ネジ部材の直線運動に変換し、その直線運動に基づいて前記ブレーキピストンを作動させる運動変換機構と、
前記回転ネジ部材を回転させる電動アクチュエータと、
を備えた車両用ブレーキ装置であって、
前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材の螺合部分が少なくとも前記液圧室内に配置され、該回転ネジ部材及び該直動ネジ部材の各螺合面の少なくとも一方には金属系コーティングが施されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 請求項1に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材に形成されるネジは、断面形状が台形形状をなす台形ネジで構成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記金属系コーティングは、前記回転ネジ部材に対してのみ施されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記金属系コーティングが施される部材は鉄鋼よりなり、その部材に対して施される金属系コーティングは硬質クロムめっき又はニッケルめっきであることを特徴とする車両用ブレーキ装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ブレーキ装置において、
前記金属系コーティングは、前記ブレーキピストンを突出させる際に前記回転ネジ部材及び前記直動ネジ部材のネジにおいて互いが接触する接触面に対してのみ施されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
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JP2007085541A (ja) * | 2005-09-22 | 2007-04-05 | Mando Corp | 駐車機能を備えたディスクブレーキ |
JP2007120728A (ja) * | 2005-10-31 | 2007-05-17 | Hitachi Ltd | ディスクブレーキ |
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-
2003
- 2003-04-02 JP JP2003099662A patent/JP2004308693A/ja active Pending
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