JP2004308591A - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】可動スクロールやオルダム継手の各運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗等を低減させることによって、運転効率を向上させることである。
【解決手段】公転する可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(26)を備えている。オルダム継手(26)のリング(26a)は、内外周端部が半楕円状に形成されている。また、可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)は、テーパ状に形成されている。オルダム継手(26)等の運動において、オルダム継手(26)等の周囲に存在する潤滑油が半楕円状等に沿って円滑に流通されることによって、潤滑油に起因する撹拌抵抗等が低減され、運転効率が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】公転する可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(26)を備えている。オルダム継手(26)のリング(26a)は、内外周端部が半楕円状に形成されている。また、可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)は、テーパ状に形成されている。オルダム継手(26)等の運動において、オルダム継手(26)等の周囲に存在する潤滑油が半楕円状等に沿って円滑に流通されることによって、潤滑油に起因する撹拌抵抗等が低減され、運転効率が向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール圧縮機に関し、特に、運転効率の低下対策に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、冷凍装置等において冷媒を圧縮する圧縮機として、スクロール圧縮機が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この種の圧縮機は、密閉型のケーシング内に、駆動機構と該駆動機構に駆動軸を介して連結されたスクロール式の圧縮機構とを備えている。
【0003】
上記圧縮機構は、固定スクロールと、該固定スクロールに噛合する可動スクロールとを備えている。上記可動スクロールは、該可動スクロールの背面側に位置するフレームの上面に形成された凹部に配置されると共に、駆動軸の偏心部に連結されている。
【0004】
上記可動スクロールとフレームとの間には、該可動スクロールの自転を阻止するオルダム継手が設けられている。該オルダム継手は、可動スクロールおよびフレームのそれぞれに嵌合している。
【0005】
一方、上記駆動軸の内部には、給油孔が形成され、ケーシングの底部に貯留された潤滑油が給油孔を通って圧縮機構の各摺動部位(軸受部やフレーム内部)に供給されている。つまり、潤滑油が可動スクロールおよびオルダム継手とフレームとの間に供給されている。
【0006】
【特許文献1】
特公平7−56273号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のスクロール圧縮機では、オルダム継手とフレームとの間における潤滑油の撹拌抵抗が大きく、損失が大きいという問題があった。
【0008】
つまり、上記オルダム継手は、可動スクロールとフレームとの間に設けられ、該可動スクロールおよびフレームに対し往復直線運動を行う。この際、潤滑油の流体抵抗(撹拌抵抗)により、オルダム継手の円滑な運動が妨げられていた。したがって、この潤滑油に起因する撹拌抵抗の発生によって、圧縮機の運転効率が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オルダム継手の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗を低減させることによって、運転効率を向上させることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
具体的に、請求項1に係る発明は、ケーシング(10)内に固定スクロール(21)と該固定スクロール(21)に噛合する可動スクロール(22)とが収納される一方、可動スクロール(22)と該可動スクロール(22)の背面側に設けられたフレーム(23)との間には、リング(26a)およびキー(26b,26c)を備えて可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(26)が設けられたスクロール圧縮機を前提としている。そして、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。
【0011】
上記の発明では、オルダム継手(26)は、可動スクロール(22)の公転運動に伴って往復直線運動を行う。そして、該オルダム継手(26)の運動により、オルダム継手(26)の周囲に存在する潤滑油が撹拌される。すなわち、オルダム継手(26)は、該オルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に潤滑油の流体抵抗を受ける。
【0012】
ところが、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。したがって、リング(26a)の外側に存在する潤滑油は、外周端部の先細形状に沿ってオルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に円滑に流通される。すなわち、リング(26a)の外周端部における潤滑油の流体抵抗が低減される。この結果、上記オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗が低減され、運転効率が向上する。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1において、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における内周端部は、内側に向かって先細となる先細形状に形成されている。
【0014】
上記の発明では、リング(26a)の内側に存在する潤滑油は、内周端部の先細形状に沿ってオルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に円滑に流通されるので、リング(26a)の内周端部においても潤滑油の流体抵抗が低減される。したがって、上記オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗がより低減される。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または2において、上記先細形状は、半楕円状、くさび状およびテーパ状の何れかである。
【0016】
上記の発明では、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油は、半楕円状の場合は、その略流線形に沿って、くさび状およびテーパ状の場合は、その傾斜面に沿ってオルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に円滑に流通される。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、請求項2において、上記先細形状は、半楕円状であり、リング(26a)における可動スクロール(22)側の片面には、該可動スクロール(22)を支持するための平面座(26d)が形成されている。
【0018】
上記の発明では、リング(26a)の外周端部および内周端部は、半楕円状に形成されている。すなわち、上記リング(26a)の両面は、全体または大部分が曲面で形成されている。
【0019】
ここで、上記可動スクロール(22)は、リング(26a)の曲面にではなく平面座(26d)に載置されて支持される。したがって、上記可動スクロール(22)は、安定に配置され、確実に固定スクロール(21)に噛合される。
【0020】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項において、上記オルダム継手(26)のキー(26b,26c)は、可動スクロール(22)に嵌合するスクロールキー(26b)と、フレーム(23)に嵌合するフレームキー(26c)とにより構成されている。そして、上記スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)のうち少なくとも一方は、リング(26a)の径方向の両端部が先端に向かって先細となる流線形状またはテーパ状に形成されている。
【0021】
上記の発明では、スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)は、それぞれ可動スクロール(22)の公転運動およびオルダム継手(26)の往復直線運動によって、リング(26a)の径方向に潤滑油の流体抵抗を受ける。ところが、スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)のうち少なくとも一方の周囲に存在する潤滑油は、先細となる流線形に沿って、または先細となるテーパ状の傾斜面に沿って円滑に流通されるので、両キー(26b,26c)のうち少なくとも一方における潤滑油の流体抵抗が低減される。したがって、オルダム継手(26)における潤滑油に起因する撹拌抵抗が確実に低減される。
【0022】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項において、上記可動スクロール(22)は、鏡板(22a)と該鏡板(22a)の上面に立設される渦巻き状のラップ(22b)とを備えている。そして、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。
【0023】
上記の発明では、可動スクロール(22)が公転運動を行っている間は、該可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面とが接近と離隔を繰り返す。これにより、上記鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面との間に存在する潤滑油による撹拌抵抗が発生する。いわゆる潤滑油に起因するポンピングロスが発生する。
【0024】
ところが、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。したがって、鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面とが接近すると、その両者の間に存在する潤滑油が外周部(22e)の先細形状に沿って円滑に流出される。逆に、鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面とが離隔すると、その両者の間に潤滑油が外周部(22e)の先細形状に沿って円滑に流入される。この結果、上記可動スクロール(22)の公転運動における潤滑油に起因するポンピングロスが低減され、運転効率がより向上する。
【0025】
また、請求項7に係る発明は、請求項6において、上記可動スクロール(22)の先細形状は、テーパ面である。
【0026】
上記の発明では、鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面との間に存在する潤滑油は、テーパ面に沿って円滑且つ確実に流入出される。
【0027】
また、請求項8に係る発明は、請求項7において、上記テーパ面は、フレーム(23)側の片面から他の片面に向かって外側に傾斜している。
【0028】
上記の発明では、可動スクロール(22)における固定スクロール(21)側の片面にスラスト荷重による面圧が作用する。ところが、上記可動スクロール(22)のテーパ面は、可動スクロール(22)におけるフレーム(23)側の片面、つまり面圧が作用しない片面の面積が減少するように形成されている。したがって、上記可動スクロール(22)における固定スクロール(21)側の片面の耐圧性を低下させることなく、安全なスクロール圧縮機が提供される。
【0029】
【発明の実施の形態1】
以下、本発明の実施形態1を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
本実施形態1のスクロール圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられ、冷媒を圧縮するものである。
【0031】
図1に示すように、上記スクロール圧縮機(1)は、ケーシング(10)を備えている。該ケーシング(10)内には、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する駆動機構(30)とが収納されている。該駆動機構(30)は、圧縮機構(20)の下方に配置され、軸である駆動軸(32)を介して圧縮機構(20)に連結されている。
【0032】
上記ケーシング(10)は、上下方向に延びる円筒状に形成され、該ケーシング(10)が密閉ドーム型の圧力容器に構成している。
【0033】
上記圧縮機構(20)は、固定スクロール(21)と、該固定スクロール(21)に噛合する可動スクロール(22)とを備えると共に、固定スクロール(21)を固定支持するフレーム(23)を備えている。
【0034】
上記フレーム(23)は、その全周に亘ってケーシング(10)の上部内面に気密状に接合されている。そして、上記ケーシング(10)内は、フレーム(23)の上方の低圧空間(S1)とフレーム(23)の下方の高圧空間(S2)とに区画されている。
【0035】
上記フレーム(23)は、フレーム凹部(24)と軸受部(25)とを備えている。上記フレーム凹部(24)は、フレーム(23)の上面に凹設された第1凹陥部(24a)と、該第1凹陥部(24a)の底面に凹設された第2凹陥部(24b)とにより構成されている。一方、上記軸受部(25)は、フレーム(23)の下面中央に延設されて形成されている。上記軸受部(25)には、駆動軸(32)が挿入され滑り軸受(25a)を介して回転自在に支持されている。
【0036】
上記固定スクロール(21)は、略円板状の鏡板(21a)と、該鏡板(21a)の下面に立設された渦巻き状のラップ(21b)とを備えている。
【0037】
図2に示すように、上記固定スクロール(21)の鏡板(21a)には、該鏡板(21a)の外周縁部が下方へ延設され、その下端が径方向外方へ張り出されたフランジ(21c)が形成されている。該フランジ(21c)がフレーム(23)の上面に固定されている。
【0038】
一方、上記可動スクロール(22)は、略円板状の鏡板(22a)と、該鏡板(22a)の上面に立設された渦巻き状のラップ(22b)とを備えている。上記鏡板(22a)の下面には、下方に延設されたボス(22d)が形成されている。上記ラップ(22b)は、固定スクロール(21)のラップ(21b)に噛合するように構成されている。上記ボス(22d)には、駆動軸(32)の上端に一体に形成された偏心部(32a)が滑り軸受(22c)を介して挿入連結されている。
【0039】
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)は、フレーム(23)の第1凹陥部(24a)内に位置する一方、上記ボス(22d)は、フレーム(23)の第2凹陥部(24b)内に位置している。
【0040】
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)と第1凹陥部(24a)の底面との間には、可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(26)が配設されている。
【0041】
図3および図4に示すように、上記オルダム継手(26)は、環状のリング(26a)を備えている。該リング(26a)の上面には、突設された一対のスクロールキー(26b)が形成される一方、下面には、突設された一対のフレームキー(26c)が形成されている。上記スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)は、それぞれの径方向における中心線が互いに直交するように構成されている。
【0042】
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)の下面には、直径方向に延びる一対の第1ガイド溝(図示しない)が形成されている。一方、上記フレーム(23)の第1凹陥部(24a)の底面には、直径方向に延びる一対の第2ガイド溝(図示しない)が形成されている。そして、上記第1ガイド溝および第2ガイド溝は、それぞれにスクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)が嵌合して摺動するように構成されている。すなわち、上記両キー(26b,26c)および両ガイド溝は、可動スクロール(22)がフレーム(23)に対して自転運動を行わずに公転運動を行うように構成されている。
【0043】
上記ケーシング(10)は、冷媒回路の冷媒を圧縮機構(20)に導く吸入管(14)と、ケーシング(10)内の冷媒をケーシング(2)外に吐出するための吐出管(15)とを備えている。上記吸入管(14)は、低圧空間(S1)に連通されている。一方、上記吐出管(15)は、高圧空間(S2)に連通されている。
【0044】
上記圧縮機構(20)は、固定スクロール(21)に形成された吸入口(Pi)および吐出口(Po)を備える一方、両ラップ(21b,22b)の接触部同士の間隙で区画形成された圧縮室(C)を備えている。上記吸入口(Pi)は、圧縮室(C)の外周端から低圧空間(S1)に連通されている(図2参照)。一方、上記吐出口(Po)は、圧縮室(C)の内周端から吐出凹部(28a)および連通路(28b)を介して高圧空間(S2)に連通されている。
【0045】
すなわち、上記圧縮機構(20)は、可動スクロール(22)の公転運動により、低圧空間(S1)の冷媒が吸入口(Pi)を通じて圧縮室(C)に吸入され、圧縮された後、吐出口(Po)から吐出され、冷媒通路を通じて高圧空間(S2)に流入されるように構成されている。
【0046】
上記駆動機構(30)は、高圧空間(S2)に設けられ、モータ(31)により構成されている。該モータ(31)は、ステータ(33)とロータ(34)とを備え、該ロータ(34)には駆動軸(32)が挿入されて固定されている。
【0047】
上記ケーシング(10)内の底部には、潤滑油が貯留される油溜り(59)が形成されている。上記駆動軸(32)の下端部には、油溜り(59)に浸漬された給油ポンプ(36)が設けられている。該給油ポンプ(36)は、駆動軸(32)の回転により油溜り(59)の潤滑油を汲み上げるように構成されている。
【0048】
そして、上記駆動軸(32)の内部には、該駆動軸(32)の下端から上端に亘って給油通路(71)が形成されている。該給油通路(71)の下端は、給油ポンプ(36)に連通されている。すなわち、上記給油通路(71)は、給油ポンプ(36)により汲み上げられた潤滑油が各滑り軸受(22c,25a)や両スクロール(21,22)の摺動面などに供給されるように形成されている。
【0049】
ところで、上記可動スクロール(22)は、該可動スクロール(22)が公転運動を行っている間、鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが接近と離隔を繰り返す構成となっている。また、上記接近と離隔を繰り返す間、可動スクロール(22)は、鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面との間に存在する潤滑油が可動スクロール(22)の鏡板(22a)によって撹拌される。
【0050】
一方、上記オルダム継手(26)は、可動スクロール(22)が公転運動を行っている間、つまり、オルダム継手(26)がフレーム(23)および可動スクロール(22)に対して往復直線運動を行っている間、オルダム継手(26)の周囲に存在する潤滑油が該オルダム継手(26)のリング(26a)および両キー(26b,26c)によって撹拌される。
【0051】
そこで、本発明の特徴として、上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)は、外側に向かって先細となるテーパ状に形成されている。本実施形態1では、上記テーパ状は、図1に示すように、鏡板(22a)の下面から上面に向かって、すなわち、フレーム(23)側の片面から他の片面に向かって外側に傾斜するテーパ面により形成されている。
【0052】
さらに詳述すると、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、該外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが接近すると、両者の間に存在する潤滑油が鏡板(22a)の外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に逃げるように構成されている。一方、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、該外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが離隔すると、両者の間に潤滑油が鏡板(22a)の外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に流れ込むように構成されている。
【0053】
また、図5に示すように、上記オルダム継手(26)のリング(26a)は、その断面が楕円状に形成されている。すなわち、上記リング(26a)における外周端部および内周端部は、それぞれ外側および内側に向かって先細となる半楕円状に形成されている。該楕円は、その長軸が第1凹陥部(24a)の底面と平行を成すように形成されている。
【0054】
一方、図3および図8に示すように、オルダム継手(26)のスクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)は、断面が流線形に形成されている。すなわち、上記両キー(26b,26c)は、リング(26a)の径方向の両端部が先端に向かって先細となる流線形状に形成されている。さらに詳述すると、リング(26a)の径方向、つまり、オルダム継手(26)の運動方向に流線形を成すように構成されている。
【0055】
上記可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動において、リング(26a)は、該リング(26a)の周囲に存在する潤滑油が外周端部や内周端部の半楕円状に沿って円滑に流通されるように構成され、両キー(26b,26c)は、該両キー(26b,26c)の周囲に存在する潤滑油が端部の流線形状に沿って円滑に流通されるように構成されている。
【0056】
また、上記リング(26a)の上面には、突設された平面座(26d)が複数個(本実施形態1では、4個)形成されている。該平面座(26d)は、上面が平滑な面で形成され、可動スクロール(22)の鏡板(22a)が平面座(26d)の上面に水平に載置されるように構成されている。
【0057】
−運転動作−
次に、上述したスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0058】
まず、電動機(7)を駆動すると、駆動軸(32)が回転し、可動スクロール(22)が固定スクロール(21)に対して公転運動を行う。その際、オルダム継手(26)のスクロールキー(26b)が可動スクロール(22)の第1ガイド溝に案内されると共に、オルダム継手(26)のフレームキー(26c)がフレーム(23)の第2ガイド溝に案内されるので、可動スクロール(22)の自転が阻止される。なお、可動スクロール(22)は、駆動軸(32)の偏心部(32a)の所定偏心量を公転半径とする公転運動を行う。
【0059】
上記可動スクロール(22)の公転運動に伴って、圧縮室(C)の容積が周期的に増減を繰り返す。上記圧縮室(C)の容積が増大すると、冷媒回路の冷媒が吸入管(14)から低圧空間(S1)に吸入される。この吸入された冷媒は、吸入口(Pi)から圧縮室(C)に吸い込まれる。次に、圧縮室(C)に吸い込まれた冷媒は、圧縮室(C)の容積が減少することにより、圧縮され、吐出口(Po)から吐出される。その後、圧縮された冷媒は、冷媒通路を通じて高圧空間(S2)に流入され、吐出管(15)から冷媒回路に戻る。
【0060】
一方、上記給油ポンプ(36)により油溜り(59)の潤滑油が各滑り軸受(22c,25a)や両スクロール(21,22)の摺動面などに供給される。そして、第1凹陥部(24a)内や第2凹陥部(24b)内に潤滑油が溜まる。
【0061】
ところで、上記可動スクロール(22)の公転運動によって、該可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の第1凹陥部(24a)の内周壁面とは、接近と離隔とを繰り返す。この接近と離隔とが繰り返されることによって、上記鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面との間に存在する潤滑油は撹拌される。いわゆる、潤滑油に起因するポンピング現象が発生する。
【0062】
ここで、上記鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが接近すると、両者の間に存在する潤滑油が外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に逃げる。逆に、上記鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが離隔すると、両者の間に潤滑油が外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に流れ込む。したがって、上記可動スクロール(22)の公転運動における潤滑油による撹拌抵抗が低減される。
【0063】
一方、上記可動スクロール(22)の公転運動に伴って、オルダム継手(26)は往復直線運動を行う。上記可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動によって、該オルダム継手(26)の周囲に存在する潤滑油は撹拌される。
【0064】
ここで、上記オルダム継手(26)のリング(26a)の周囲に存在する潤滑油は、リング(26a)の外周端部および内周端部の半楕円状に沿って円滑に流通される。一方、オルダム継手(26)の両キー(26b,26c)の周囲に存在する潤滑油は、両キー(26b,26c)における端部の流線形状に沿って円滑に流通される。したがって、オルダム継手(26)における潤滑油による撹拌抵抗が低減される。
【0065】
−実施形態の効果−
以上説明したように、本実施形態1によれば、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部および内周端部をそれぞれ外側および内側に向かって先細となる半楕円状に形成するようにしたために、オルダム継手(26)の往復直線運動において、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油を外周端部等の半楕円状に沿って円滑に流通させることができる。したがって、上記リング(26a)における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。この結果、上記オルダム継手(26)における潤滑油による撹拌抵抗を低減することができ、運転効率を向上させることができる。
【0066】
また、上記オルダム継手(26)の両キー(26b,26c)は、リング(26a)の径方向の両端部を先端に向かって先細となる流線形状に形成するようにしたために、可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動において、両キー(26b,26c)の周囲に存在する潤滑油を両端部の流線形状に沿って円滑に流通させることができる。したがって、上記両キー(26b,26c)における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。
【0067】
また、上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)を外側に向かって先細となるテーパ状に形成するようにしたために、可動スクロール(22)の公転運動において、外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面との間に存在する潤滑油を外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に流入出させることができる。したがって、潤滑油に起因するポンピングロスを低減することができる。
【0068】
また、上記リング(26a)の上面には、可動スクロール(22)を支持するための平面座(26d)を複数個形成するようにしたために、可動スクロール(22)を安定に配置することができる。したがって、可動スクロール(22)を固定スクロール(21)に確実に噛合させることができる。
【0069】
また、上記スクロール圧縮機(1)における特に高速回転領域では、可動スクロール(22)の潤滑油によるポンピングロスや撹拌抵抗が増大するため、上述の効果をより一層得ることができる。
【0070】
【発明の実施の形態2】
次に、本発明の実施形態2を図面に基づいて詳細に説明する。
【0071】
本実施形態2は、図6に示すように、上記実施形態1がオルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部および内周端部を半楕円状に形成したのに代えて、くさび状に形成したものである。
【0072】
すなわち、上記外周端部および内周端部は、傾斜角の等しい2つの傾斜面により形成されている。
【0073】
したがって、上記オルダム継手(26)の運動において、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油を外周端部等の傾斜面に沿って円滑に流通させることができる。その他の構造、作用および効果は、実施形態1と同様である。
【0074】
【発明の実施の形態3】
次に、本発明の実施形態3を図面に基づいて詳細に説明する。
【0075】
本実施形態3は、図7に示すように、上記実施形態1がオルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部および内周端部を半楕円状に形成したのに代えて、テーパ状に形成したものである。
【0076】
すなわち、上記外周端部および内周端部は、リング(26a)の上面から下面に向かってそれぞれ外側および内側に傾斜するテーパ面により形成されている。
【0077】
したがって、上記オルダム継手(26)の運動において、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油を外周端部等のテーパ面に沿って円滑に流通させることができる。その他の構造、作用および効果は、実施形態1と同様である。
【0078】
【発明の実施の形態4】
次に、本発明の実施形態4を図面に基づいて詳細に説明する。
【0079】
本実施形態4は、図9に示すように、上記実施形態1がオルダム継手(26)のスクロールキー(26b)においてリング(26a)の径方向の両端部を流線形状に形成したのに代えて、テーパ状に形成したものである。
【0080】
すなわち、上記両端部は、上面から下面に向かってそれぞれリング(26a)における径方向外方および内方に傾斜するテーパ面により形成されている。
【0081】
したがって、上記可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動において、スクロールキー(26b)の周囲に存在する潤滑油を両端部のテーパ面に沿って円滑に流通させることができる。その他の構造、作用および効果は、実施形態1と同様である。
【0082】
【発明のその他の実施の形態】
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0083】
例えば、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部のみを外側に向かって先細となる半楕円状、くさび状またはテーパ状に形成するようにしてもよい。
【0084】
また、上記オルダム継手(26)の両キー部(26b,26c)のうち何れか一方においてのみ、リング(26a)の径方向の両端部を先端に向かって先細となる流線形状またはくさび状に形成するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態4では、オルダム継手(26)のスクロールキー(26b)においてリング(26a)の径方向の両端部を先端に向かって先細となるテーパ状に形成するようにしたが、フレームキー(26c)において同様にしてもよい。
【0086】
また、上記可動スクロール(22)の外周部(22e)のテーパ面は、鏡板(22a)の上面から下面に向かって外側に傾斜していてもよい。
【0087】
また、本発明は、空気調和装置の他、各種の冷凍装置に適用してもよいことは勿論である。
【0088】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部を外側に向かって先細となる先細形状に形成し、オルダム継手(26)の往復直線運動に伴って、リング(26a)の外側に存在する潤滑油を上記先細形状に沿って円滑に流通させるようにしたために、リング(26a)の外周端部における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。したがって、オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗を低減することができる。この結果、スクロール圧縮機(1)の運転効率を向上させることができる。
【0089】
また、請求項2に係る発明によれば、上記リング(26a)における内周端部を内側に向かって先細となる先細形状に形成するようにしたために、リング(26a)における外周端部および内周端部の両方における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。したがって、オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗をより低減することができる。
【0090】
また、請求項3に係る発明によれば、上記先細形状を半楕円状、くさび状またはテーパ状に形成するようにしたために、潤滑油を略流線形または傾斜面に沿って円滑に且つ確実に流通させることができる。したがって、オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗を確実に低減することができる。
【0091】
また、請求項4に係る発明によれば、リング(26a)における内外周端部を内外側に向かって先細となる半楕円状に形成した場合、すなわち、リング(26a)における可動スクロール(22)側の片面の全部または大部分が曲面から成っている場合に、リング(26a)における可動スクロール(22)側の片面に可動スクロール(22)を支持するための平面座(26d)を設けるようにしたために、可動スクロール(22)を安定に配置することができる。したがって、可動スクロール(22)を固定スクロール(21)に確実に噛合させることができる。
【0092】
また、請求項5に係る発明によれば、可動スクロール(22)およびオルダム継手(26)の運動に伴って、スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)のうち少なくとも一方の周囲に存在する潤滑油を先細となる流線形に沿って、または先細となるテーパ状の傾斜面に沿って円滑に流通させるようにしたために、両キー(26b,26c)のうち少なくとも一方における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。したがって、オルダム継手(26)における潤滑油に起因する撹拌抵抗を確実に低減することができる。
【0093】
また、請求項6に係る発明によれば、可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)を外側に向かって先細となる先細形状に形成するようにしたために、可動スクロール(22)の公転運動に伴って外周部(22e)とフレーム(23)とが接近と離隔を繰り返す際に、外周部(22e)とフレーム(23)との間に潤滑油を上記先細形状に沿って円滑に流入出させることができる。したがって、可動スクロール(22)の公転運動に伴う潤滑油に起因するポンピングロスを低減することができる。この結果、スクロール圧縮機(1)の運転効率を確実に向上させることができる。
【0094】
また、請求項7に係る発明によれば、上記外周部(22e)の先細形状をテーパ面で形成するようにしたために、外周部(22e)とフレーム(23)との間に潤滑油を円滑に且つ確実に流入出させることができる。
【0095】
また、請求項8に係る発明によれば、上記テーパ面をフレーム(23)側の片面から他の片面に向かって外側に傾斜するように形成して、可動スクロール(22)におけるフレーム(23)側の片面の面積を減少させるようにしたので、固定スクロール(21)側の片面、つまりスラスト荷重による面圧が作用する面における耐圧性の低下を防止することできる。したがって、安全なスクロール圧縮機(1)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1に係るスクロール圧縮機の構造を示す断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定スクロールの平面図である。
【図3】実施形態1に係るオルダム継手の斜視図である。
【図4】実施形態1に係るオルダム継手の断面図である。
【図5】実施形態1に係るオルダム継手のリングの径方向における断面形状を示す図である。
【図6】実施形態2に係るオルダム継手のリングの径方向における断面形状を示す図である。
【図7】実施形態3に係るオルダム継手のリングの径方向における断面形状を示す図である。
【図8】実施形態1に係るオルダム継手のスクロールキーにおいて、リングの径方向の断面形状を示す図である。
【図9】実施形態4に係るオルダム継手のスクロールキーにおいて、リングの径方向の断面形状を示す図である。
【符号の説明】
(1)スクロール圧縮機
(10)ケーシング
(21)固定スクロール
(22)可動スクロール
(22a)鏡板
(22b)ラップ
(22e)外周部
(23)フレーム
(26)オルダム継手
(26a)リング
(26b)スクロールキー
(26c)フレームキー
(26d)平面座
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール圧縮機に関し、特に、運転効率の低下対策に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、冷凍装置等において冷媒を圧縮する圧縮機として、スクロール圧縮機が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この種の圧縮機は、密閉型のケーシング内に、駆動機構と該駆動機構に駆動軸を介して連結されたスクロール式の圧縮機構とを備えている。
【0003】
上記圧縮機構は、固定スクロールと、該固定スクロールに噛合する可動スクロールとを備えている。上記可動スクロールは、該可動スクロールの背面側に位置するフレームの上面に形成された凹部に配置されると共に、駆動軸の偏心部に連結されている。
【0004】
上記可動スクロールとフレームとの間には、該可動スクロールの自転を阻止するオルダム継手が設けられている。該オルダム継手は、可動スクロールおよびフレームのそれぞれに嵌合している。
【0005】
一方、上記駆動軸の内部には、給油孔が形成され、ケーシングの底部に貯留された潤滑油が給油孔を通って圧縮機構の各摺動部位(軸受部やフレーム内部)に供給されている。つまり、潤滑油が可動スクロールおよびオルダム継手とフレームとの間に供給されている。
【0006】
【特許文献1】
特公平7−56273号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のスクロール圧縮機では、オルダム継手とフレームとの間における潤滑油の撹拌抵抗が大きく、損失が大きいという問題があった。
【0008】
つまり、上記オルダム継手は、可動スクロールとフレームとの間に設けられ、該可動スクロールおよびフレームに対し往復直線運動を行う。この際、潤滑油の流体抵抗(撹拌抵抗)により、オルダム継手の円滑な運動が妨げられていた。したがって、この潤滑油に起因する撹拌抵抗の発生によって、圧縮機の運転効率が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オルダム継手の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗を低減させることによって、運転効率を向上させることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
具体的に、請求項1に係る発明は、ケーシング(10)内に固定スクロール(21)と該固定スクロール(21)に噛合する可動スクロール(22)とが収納される一方、可動スクロール(22)と該可動スクロール(22)の背面側に設けられたフレーム(23)との間には、リング(26a)およびキー(26b,26c)を備えて可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(26)が設けられたスクロール圧縮機を前提としている。そして、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。
【0011】
上記の発明では、オルダム継手(26)は、可動スクロール(22)の公転運動に伴って往復直線運動を行う。そして、該オルダム継手(26)の運動により、オルダム継手(26)の周囲に存在する潤滑油が撹拌される。すなわち、オルダム継手(26)は、該オルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に潤滑油の流体抵抗を受ける。
【0012】
ところが、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。したがって、リング(26a)の外側に存在する潤滑油は、外周端部の先細形状に沿ってオルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に円滑に流通される。すなわち、リング(26a)の外周端部における潤滑油の流体抵抗が低減される。この結果、上記オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗が低減され、運転効率が向上する。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1において、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における内周端部は、内側に向かって先細となる先細形状に形成されている。
【0014】
上記の発明では、リング(26a)の内側に存在する潤滑油は、内周端部の先細形状に沿ってオルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に円滑に流通されるので、リング(26a)の内周端部においても潤滑油の流体抵抗が低減される。したがって、上記オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗がより低減される。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または2において、上記先細形状は、半楕円状、くさび状およびテーパ状の何れかである。
【0016】
上記の発明では、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油は、半楕円状の場合は、その略流線形に沿って、くさび状およびテーパ状の場合は、その傾斜面に沿ってオルダム継手(26)の進行方向に対して逆方向に円滑に流通される。
【0017】
また、請求項4に係る発明は、請求項2において、上記先細形状は、半楕円状であり、リング(26a)における可動スクロール(22)側の片面には、該可動スクロール(22)を支持するための平面座(26d)が形成されている。
【0018】
上記の発明では、リング(26a)の外周端部および内周端部は、半楕円状に形成されている。すなわち、上記リング(26a)の両面は、全体または大部分が曲面で形成されている。
【0019】
ここで、上記可動スクロール(22)は、リング(26a)の曲面にではなく平面座(26d)に載置されて支持される。したがって、上記可動スクロール(22)は、安定に配置され、確実に固定スクロール(21)に噛合される。
【0020】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項において、上記オルダム継手(26)のキー(26b,26c)は、可動スクロール(22)に嵌合するスクロールキー(26b)と、フレーム(23)に嵌合するフレームキー(26c)とにより構成されている。そして、上記スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)のうち少なくとも一方は、リング(26a)の径方向の両端部が先端に向かって先細となる流線形状またはテーパ状に形成されている。
【0021】
上記の発明では、スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)は、それぞれ可動スクロール(22)の公転運動およびオルダム継手(26)の往復直線運動によって、リング(26a)の径方向に潤滑油の流体抵抗を受ける。ところが、スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)のうち少なくとも一方の周囲に存在する潤滑油は、先細となる流線形に沿って、または先細となるテーパ状の傾斜面に沿って円滑に流通されるので、両キー(26b,26c)のうち少なくとも一方における潤滑油の流体抵抗が低減される。したがって、オルダム継手(26)における潤滑油に起因する撹拌抵抗が確実に低減される。
【0022】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項において、上記可動スクロール(22)は、鏡板(22a)と該鏡板(22a)の上面に立設される渦巻き状のラップ(22b)とを備えている。そして、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。
【0023】
上記の発明では、可動スクロール(22)が公転運動を行っている間は、該可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面とが接近と離隔を繰り返す。これにより、上記鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面との間に存在する潤滑油による撹拌抵抗が発生する。いわゆる潤滑油に起因するポンピングロスが発生する。
【0024】
ところが、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている。したがって、鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面とが接近すると、その両者の間に存在する潤滑油が外周部(22e)の先細形状に沿って円滑に流出される。逆に、鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面とが離隔すると、その両者の間に潤滑油が外周部(22e)の先細形状に沿って円滑に流入される。この結果、上記可動スクロール(22)の公転運動における潤滑油に起因するポンピングロスが低減され、運転効率がより向上する。
【0025】
また、請求項7に係る発明は、請求項6において、上記可動スクロール(22)の先細形状は、テーパ面である。
【0026】
上記の発明では、鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の内周壁面との間に存在する潤滑油は、テーパ面に沿って円滑且つ確実に流入出される。
【0027】
また、請求項8に係る発明は、請求項7において、上記テーパ面は、フレーム(23)側の片面から他の片面に向かって外側に傾斜している。
【0028】
上記の発明では、可動スクロール(22)における固定スクロール(21)側の片面にスラスト荷重による面圧が作用する。ところが、上記可動スクロール(22)のテーパ面は、可動スクロール(22)におけるフレーム(23)側の片面、つまり面圧が作用しない片面の面積が減少するように形成されている。したがって、上記可動スクロール(22)における固定スクロール(21)側の片面の耐圧性を低下させることなく、安全なスクロール圧縮機が提供される。
【0029】
【発明の実施の形態1】
以下、本発明の実施形態1を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
本実施形態1のスクロール圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられ、冷媒を圧縮するものである。
【0031】
図1に示すように、上記スクロール圧縮機(1)は、ケーシング(10)を備えている。該ケーシング(10)内には、冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する駆動機構(30)とが収納されている。該駆動機構(30)は、圧縮機構(20)の下方に配置され、軸である駆動軸(32)を介して圧縮機構(20)に連結されている。
【0032】
上記ケーシング(10)は、上下方向に延びる円筒状に形成され、該ケーシング(10)が密閉ドーム型の圧力容器に構成している。
【0033】
上記圧縮機構(20)は、固定スクロール(21)と、該固定スクロール(21)に噛合する可動スクロール(22)とを備えると共に、固定スクロール(21)を固定支持するフレーム(23)を備えている。
【0034】
上記フレーム(23)は、その全周に亘ってケーシング(10)の上部内面に気密状に接合されている。そして、上記ケーシング(10)内は、フレーム(23)の上方の低圧空間(S1)とフレーム(23)の下方の高圧空間(S2)とに区画されている。
【0035】
上記フレーム(23)は、フレーム凹部(24)と軸受部(25)とを備えている。上記フレーム凹部(24)は、フレーム(23)の上面に凹設された第1凹陥部(24a)と、該第1凹陥部(24a)の底面に凹設された第2凹陥部(24b)とにより構成されている。一方、上記軸受部(25)は、フレーム(23)の下面中央に延設されて形成されている。上記軸受部(25)には、駆動軸(32)が挿入され滑り軸受(25a)を介して回転自在に支持されている。
【0036】
上記固定スクロール(21)は、略円板状の鏡板(21a)と、該鏡板(21a)の下面に立設された渦巻き状のラップ(21b)とを備えている。
【0037】
図2に示すように、上記固定スクロール(21)の鏡板(21a)には、該鏡板(21a)の外周縁部が下方へ延設され、その下端が径方向外方へ張り出されたフランジ(21c)が形成されている。該フランジ(21c)がフレーム(23)の上面に固定されている。
【0038】
一方、上記可動スクロール(22)は、略円板状の鏡板(22a)と、該鏡板(22a)の上面に立設された渦巻き状のラップ(22b)とを備えている。上記鏡板(22a)の下面には、下方に延設されたボス(22d)が形成されている。上記ラップ(22b)は、固定スクロール(21)のラップ(21b)に噛合するように構成されている。上記ボス(22d)には、駆動軸(32)の上端に一体に形成された偏心部(32a)が滑り軸受(22c)を介して挿入連結されている。
【0039】
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)は、フレーム(23)の第1凹陥部(24a)内に位置する一方、上記ボス(22d)は、フレーム(23)の第2凹陥部(24b)内に位置している。
【0040】
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)と第1凹陥部(24a)の底面との間には、可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(26)が配設されている。
【0041】
図3および図4に示すように、上記オルダム継手(26)は、環状のリング(26a)を備えている。該リング(26a)の上面には、突設された一対のスクロールキー(26b)が形成される一方、下面には、突設された一対のフレームキー(26c)が形成されている。上記スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)は、それぞれの径方向における中心線が互いに直交するように構成されている。
【0042】
上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)の下面には、直径方向に延びる一対の第1ガイド溝(図示しない)が形成されている。一方、上記フレーム(23)の第1凹陥部(24a)の底面には、直径方向に延びる一対の第2ガイド溝(図示しない)が形成されている。そして、上記第1ガイド溝および第2ガイド溝は、それぞれにスクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)が嵌合して摺動するように構成されている。すなわち、上記両キー(26b,26c)および両ガイド溝は、可動スクロール(22)がフレーム(23)に対して自転運動を行わずに公転運動を行うように構成されている。
【0043】
上記ケーシング(10)は、冷媒回路の冷媒を圧縮機構(20)に導く吸入管(14)と、ケーシング(10)内の冷媒をケーシング(2)外に吐出するための吐出管(15)とを備えている。上記吸入管(14)は、低圧空間(S1)に連通されている。一方、上記吐出管(15)は、高圧空間(S2)に連通されている。
【0044】
上記圧縮機構(20)は、固定スクロール(21)に形成された吸入口(Pi)および吐出口(Po)を備える一方、両ラップ(21b,22b)の接触部同士の間隙で区画形成された圧縮室(C)を備えている。上記吸入口(Pi)は、圧縮室(C)の外周端から低圧空間(S1)に連通されている(図2参照)。一方、上記吐出口(Po)は、圧縮室(C)の内周端から吐出凹部(28a)および連通路(28b)を介して高圧空間(S2)に連通されている。
【0045】
すなわち、上記圧縮機構(20)は、可動スクロール(22)の公転運動により、低圧空間(S1)の冷媒が吸入口(Pi)を通じて圧縮室(C)に吸入され、圧縮された後、吐出口(Po)から吐出され、冷媒通路を通じて高圧空間(S2)に流入されるように構成されている。
【0046】
上記駆動機構(30)は、高圧空間(S2)に設けられ、モータ(31)により構成されている。該モータ(31)は、ステータ(33)とロータ(34)とを備え、該ロータ(34)には駆動軸(32)が挿入されて固定されている。
【0047】
上記ケーシング(10)内の底部には、潤滑油が貯留される油溜り(59)が形成されている。上記駆動軸(32)の下端部には、油溜り(59)に浸漬された給油ポンプ(36)が設けられている。該給油ポンプ(36)は、駆動軸(32)の回転により油溜り(59)の潤滑油を汲み上げるように構成されている。
【0048】
そして、上記駆動軸(32)の内部には、該駆動軸(32)の下端から上端に亘って給油通路(71)が形成されている。該給油通路(71)の下端は、給油ポンプ(36)に連通されている。すなわち、上記給油通路(71)は、給油ポンプ(36)により汲み上げられた潤滑油が各滑り軸受(22c,25a)や両スクロール(21,22)の摺動面などに供給されるように形成されている。
【0049】
ところで、上記可動スクロール(22)は、該可動スクロール(22)が公転運動を行っている間、鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが接近と離隔を繰り返す構成となっている。また、上記接近と離隔を繰り返す間、可動スクロール(22)は、鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面との間に存在する潤滑油が可動スクロール(22)の鏡板(22a)によって撹拌される。
【0050】
一方、上記オルダム継手(26)は、可動スクロール(22)が公転運動を行っている間、つまり、オルダム継手(26)がフレーム(23)および可動スクロール(22)に対して往復直線運動を行っている間、オルダム継手(26)の周囲に存在する潤滑油が該オルダム継手(26)のリング(26a)および両キー(26b,26c)によって撹拌される。
【0051】
そこで、本発明の特徴として、上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)は、外側に向かって先細となるテーパ状に形成されている。本実施形態1では、上記テーパ状は、図1に示すように、鏡板(22a)の下面から上面に向かって、すなわち、フレーム(23)側の片面から他の片面に向かって外側に傾斜するテーパ面により形成されている。
【0052】
さらに詳述すると、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、該外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが接近すると、両者の間に存在する潤滑油が鏡板(22a)の外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に逃げるように構成されている。一方、上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、該外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが離隔すると、両者の間に潤滑油が鏡板(22a)の外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に流れ込むように構成されている。
【0053】
また、図5に示すように、上記オルダム継手(26)のリング(26a)は、その断面が楕円状に形成されている。すなわち、上記リング(26a)における外周端部および内周端部は、それぞれ外側および内側に向かって先細となる半楕円状に形成されている。該楕円は、その長軸が第1凹陥部(24a)の底面と平行を成すように形成されている。
【0054】
一方、図3および図8に示すように、オルダム継手(26)のスクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)は、断面が流線形に形成されている。すなわち、上記両キー(26b,26c)は、リング(26a)の径方向の両端部が先端に向かって先細となる流線形状に形成されている。さらに詳述すると、リング(26a)の径方向、つまり、オルダム継手(26)の運動方向に流線形を成すように構成されている。
【0055】
上記可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動において、リング(26a)は、該リング(26a)の周囲に存在する潤滑油が外周端部や内周端部の半楕円状に沿って円滑に流通されるように構成され、両キー(26b,26c)は、該両キー(26b,26c)の周囲に存在する潤滑油が端部の流線形状に沿って円滑に流通されるように構成されている。
【0056】
また、上記リング(26a)の上面には、突設された平面座(26d)が複数個(本実施形態1では、4個)形成されている。該平面座(26d)は、上面が平滑な面で形成され、可動スクロール(22)の鏡板(22a)が平面座(26d)の上面に水平に載置されるように構成されている。
【0057】
−運転動作−
次に、上述したスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0058】
まず、電動機(7)を駆動すると、駆動軸(32)が回転し、可動スクロール(22)が固定スクロール(21)に対して公転運動を行う。その際、オルダム継手(26)のスクロールキー(26b)が可動スクロール(22)の第1ガイド溝に案内されると共に、オルダム継手(26)のフレームキー(26c)がフレーム(23)の第2ガイド溝に案内されるので、可動スクロール(22)の自転が阻止される。なお、可動スクロール(22)は、駆動軸(32)の偏心部(32a)の所定偏心量を公転半径とする公転運動を行う。
【0059】
上記可動スクロール(22)の公転運動に伴って、圧縮室(C)の容積が周期的に増減を繰り返す。上記圧縮室(C)の容積が増大すると、冷媒回路の冷媒が吸入管(14)から低圧空間(S1)に吸入される。この吸入された冷媒は、吸入口(Pi)から圧縮室(C)に吸い込まれる。次に、圧縮室(C)に吸い込まれた冷媒は、圧縮室(C)の容積が減少することにより、圧縮され、吐出口(Po)から吐出される。その後、圧縮された冷媒は、冷媒通路を通じて高圧空間(S2)に流入され、吐出管(15)から冷媒回路に戻る。
【0060】
一方、上記給油ポンプ(36)により油溜り(59)の潤滑油が各滑り軸受(22c,25a)や両スクロール(21,22)の摺動面などに供給される。そして、第1凹陥部(24a)内や第2凹陥部(24b)内に潤滑油が溜まる。
【0061】
ところで、上記可動スクロール(22)の公転運動によって、該可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)とフレーム(23)の第1凹陥部(24a)の内周壁面とは、接近と離隔とを繰り返す。この接近と離隔とが繰り返されることによって、上記鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面との間に存在する潤滑油は撹拌される。いわゆる、潤滑油に起因するポンピング現象が発生する。
【0062】
ここで、上記鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが接近すると、両者の間に存在する潤滑油が外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に逃げる。逆に、上記鏡板(22a)の外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面とが離隔すると、両者の間に潤滑油が外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に流れ込む。したがって、上記可動スクロール(22)の公転運動における潤滑油による撹拌抵抗が低減される。
【0063】
一方、上記可動スクロール(22)の公転運動に伴って、オルダム継手(26)は往復直線運動を行う。上記可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動によって、該オルダム継手(26)の周囲に存在する潤滑油は撹拌される。
【0064】
ここで、上記オルダム継手(26)のリング(26a)の周囲に存在する潤滑油は、リング(26a)の外周端部および内周端部の半楕円状に沿って円滑に流通される。一方、オルダム継手(26)の両キー(26b,26c)の周囲に存在する潤滑油は、両キー(26b,26c)における端部の流線形状に沿って円滑に流通される。したがって、オルダム継手(26)における潤滑油による撹拌抵抗が低減される。
【0065】
−実施形態の効果−
以上説明したように、本実施形態1によれば、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部および内周端部をそれぞれ外側および内側に向かって先細となる半楕円状に形成するようにしたために、オルダム継手(26)の往復直線運動において、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油を外周端部等の半楕円状に沿って円滑に流通させることができる。したがって、上記リング(26a)における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。この結果、上記オルダム継手(26)における潤滑油による撹拌抵抗を低減することができ、運転効率を向上させることができる。
【0066】
また、上記オルダム継手(26)の両キー(26b,26c)は、リング(26a)の径方向の両端部を先端に向かって先細となる流線形状に形成するようにしたために、可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動において、両キー(26b,26c)の周囲に存在する潤滑油を両端部の流線形状に沿って円滑に流通させることができる。したがって、上記両キー(26b,26c)における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。
【0067】
また、上記可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)を外側に向かって先細となるテーパ状に形成するようにしたために、可動スクロール(22)の公転運動において、外周部(22e)と第1凹陥部(24a)の内周壁面との間に存在する潤滑油を外周部(22e)のテーパ面に沿って円滑に流入出させることができる。したがって、潤滑油に起因するポンピングロスを低減することができる。
【0068】
また、上記リング(26a)の上面には、可動スクロール(22)を支持するための平面座(26d)を複数個形成するようにしたために、可動スクロール(22)を安定に配置することができる。したがって、可動スクロール(22)を固定スクロール(21)に確実に噛合させることができる。
【0069】
また、上記スクロール圧縮機(1)における特に高速回転領域では、可動スクロール(22)の潤滑油によるポンピングロスや撹拌抵抗が増大するため、上述の効果をより一層得ることができる。
【0070】
【発明の実施の形態2】
次に、本発明の実施形態2を図面に基づいて詳細に説明する。
【0071】
本実施形態2は、図6に示すように、上記実施形態1がオルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部および内周端部を半楕円状に形成したのに代えて、くさび状に形成したものである。
【0072】
すなわち、上記外周端部および内周端部は、傾斜角の等しい2つの傾斜面により形成されている。
【0073】
したがって、上記オルダム継手(26)の運動において、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油を外周端部等の傾斜面に沿って円滑に流通させることができる。その他の構造、作用および効果は、実施形態1と同様である。
【0074】
【発明の実施の形態3】
次に、本発明の実施形態3を図面に基づいて詳細に説明する。
【0075】
本実施形態3は、図7に示すように、上記実施形態1がオルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部および内周端部を半楕円状に形成したのに代えて、テーパ状に形成したものである。
【0076】
すなわち、上記外周端部および内周端部は、リング(26a)の上面から下面に向かってそれぞれ外側および内側に傾斜するテーパ面により形成されている。
【0077】
したがって、上記オルダム継手(26)の運動において、リング(26a)の周囲に存在する潤滑油を外周端部等のテーパ面に沿って円滑に流通させることができる。その他の構造、作用および効果は、実施形態1と同様である。
【0078】
【発明の実施の形態4】
次に、本発明の実施形態4を図面に基づいて詳細に説明する。
【0079】
本実施形態4は、図9に示すように、上記実施形態1がオルダム継手(26)のスクロールキー(26b)においてリング(26a)の径方向の両端部を流線形状に形成したのに代えて、テーパ状に形成したものである。
【0080】
すなわち、上記両端部は、上面から下面に向かってそれぞれリング(26a)における径方向外方および内方に傾斜するテーパ面により形成されている。
【0081】
したがって、上記可動スクロール(22)やオルダム継手(26)の運動において、スクロールキー(26b)の周囲に存在する潤滑油を両端部のテーパ面に沿って円滑に流通させることができる。その他の構造、作用および効果は、実施形態1と同様である。
【0082】
【発明のその他の実施の形態】
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0083】
例えば、上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部のみを外側に向かって先細となる半楕円状、くさび状またはテーパ状に形成するようにしてもよい。
【0084】
また、上記オルダム継手(26)の両キー部(26b,26c)のうち何れか一方においてのみ、リング(26a)の径方向の両端部を先端に向かって先細となる流線形状またはくさび状に形成するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態4では、オルダム継手(26)のスクロールキー(26b)においてリング(26a)の径方向の両端部を先端に向かって先細となるテーパ状に形成するようにしたが、フレームキー(26c)において同様にしてもよい。
【0086】
また、上記可動スクロール(22)の外周部(22e)のテーパ面は、鏡板(22a)の上面から下面に向かって外側に傾斜していてもよい。
【0087】
また、本発明は、空気調和装置の他、各種の冷凍装置に適用してもよいことは勿論である。
【0088】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係る発明によれば、オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部を外側に向かって先細となる先細形状に形成し、オルダム継手(26)の往復直線運動に伴って、リング(26a)の外側に存在する潤滑油を上記先細形状に沿って円滑に流通させるようにしたために、リング(26a)の外周端部における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。したがって、オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗を低減することができる。この結果、スクロール圧縮機(1)の運転効率を向上させることができる。
【0089】
また、請求項2に係る発明によれば、上記リング(26a)における内周端部を内側に向かって先細となる先細形状に形成するようにしたために、リング(26a)における外周端部および内周端部の両方における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。したがって、オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗をより低減することができる。
【0090】
また、請求項3に係る発明によれば、上記先細形状を半楕円状、くさび状またはテーパ状に形成するようにしたために、潤滑油を略流線形または傾斜面に沿って円滑に且つ確実に流通させることができる。したがって、オルダム継手(26)の運動における潤滑油に起因する撹拌抵抗を確実に低減することができる。
【0091】
また、請求項4に係る発明によれば、リング(26a)における内外周端部を内外側に向かって先細となる半楕円状に形成した場合、すなわち、リング(26a)における可動スクロール(22)側の片面の全部または大部分が曲面から成っている場合に、リング(26a)における可動スクロール(22)側の片面に可動スクロール(22)を支持するための平面座(26d)を設けるようにしたために、可動スクロール(22)を安定に配置することができる。したがって、可動スクロール(22)を固定スクロール(21)に確実に噛合させることができる。
【0092】
また、請求項5に係る発明によれば、可動スクロール(22)およびオルダム継手(26)の運動に伴って、スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)のうち少なくとも一方の周囲に存在する潤滑油を先細となる流線形に沿って、または先細となるテーパ状の傾斜面に沿って円滑に流通させるようにしたために、両キー(26b,26c)のうち少なくとも一方における潤滑油の流体抵抗を低減することができる。したがって、オルダム継手(26)における潤滑油に起因する撹拌抵抗を確実に低減することができる。
【0093】
また、請求項6に係る発明によれば、可動スクロール(22)の鏡板(22a)の外周部(22e)を外側に向かって先細となる先細形状に形成するようにしたために、可動スクロール(22)の公転運動に伴って外周部(22e)とフレーム(23)とが接近と離隔を繰り返す際に、外周部(22e)とフレーム(23)との間に潤滑油を上記先細形状に沿って円滑に流入出させることができる。したがって、可動スクロール(22)の公転運動に伴う潤滑油に起因するポンピングロスを低減することができる。この結果、スクロール圧縮機(1)の運転効率を確実に向上させることができる。
【0094】
また、請求項7に係る発明によれば、上記外周部(22e)の先細形状をテーパ面で形成するようにしたために、外周部(22e)とフレーム(23)との間に潤滑油を円滑に且つ確実に流入出させることができる。
【0095】
また、請求項8に係る発明によれば、上記テーパ面をフレーム(23)側の片面から他の片面に向かって外側に傾斜するように形成して、可動スクロール(22)におけるフレーム(23)側の片面の面積を減少させるようにしたので、固定スクロール(21)側の片面、つまりスラスト荷重による面圧が作用する面における耐圧性の低下を防止することできる。したがって、安全なスクロール圧縮機(1)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1に係るスクロール圧縮機の構造を示す断面図である。
【図2】実施形態1に係る固定スクロールの平面図である。
【図3】実施形態1に係るオルダム継手の斜視図である。
【図4】実施形態1に係るオルダム継手の断面図である。
【図5】実施形態1に係るオルダム継手のリングの径方向における断面形状を示す図である。
【図6】実施形態2に係るオルダム継手のリングの径方向における断面形状を示す図である。
【図7】実施形態3に係るオルダム継手のリングの径方向における断面形状を示す図である。
【図8】実施形態1に係るオルダム継手のスクロールキーにおいて、リングの径方向の断面形状を示す図である。
【図9】実施形態4に係るオルダム継手のスクロールキーにおいて、リングの径方向の断面形状を示す図である。
【符号の説明】
(1)スクロール圧縮機
(10)ケーシング
(21)固定スクロール
(22)可動スクロール
(22a)鏡板
(22b)ラップ
(22e)外周部
(23)フレーム
(26)オルダム継手
(26a)リング
(26b)スクロールキー
(26c)フレームキー
(26d)平面座
Claims (8)
- ケーシング(10)内に、固定スクロール(21)と、該固定スクロール(21)に噛合する可動スクロール(22)とが収納される一方、
上記可動スクロール(22)と該可動スクロール(22)の背面側に設けられたフレーム(23)との間には、リング(26a)およびキー(26b,26c)を備えて可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(26)が設けられたスクロール圧縮機であって、
上記オルダム継手(26)のリング(26a)における外周端部は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1において、
上記オルダム継手(26)のリング(26a)における内周端部は、内側に向かって先細となる先細形状に形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1または2において、
上記先細形状は、半楕円状、くさび状およびテーパ状の何れかであることを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項2において、
上記先細形状は、半楕円状であり、
上記リング(26a)における可動スクロール(22)側の片面には、該可動スクロール(22)を支持するための平面座(26d)が形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1〜4の何れか1項において、
上記オルダム継手(26)のキー(26b,26c)は、可動スクロール(22)に嵌合するスクロールキー(26b)と、フレーム(23)に嵌合するフレームキー(26c)とにより構成され、
上記スクロールキー(26b)およびフレームキー(26c)のうち少なくとも一方は、リング(26a)の径方向の両端部が先端に向かって先細となる流線形状またはテーパ状に形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項1〜5の何れか1項において、
上記可動スクロール(22)は、鏡板(22a)と該鏡板(22a)の上面に立設される渦巻き状のラップ(22b)とを備え、
上記鏡板(22a)の外周部(22e)は、外側に向かって先細となる先細形状に形成されている
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項6において、
上記可動スクロール(22)の先細形状は、テーパ面である
ことを特徴とするスクロール圧縮機。 - 請求項7において、
上記テーパ面は、フレーム(23)側の片面から他の片面に向かって外側に傾斜している
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
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2003
- 2003-04-09 JP JP2003104811A patent/JP2004308591A/ja active Pending
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