JP2004308509A - ディーゼルエンジン用排気浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ディーゼルエンジン1の排気通路には排気中の微粒子を捕集し蓄積する酸化触媒付フィルタ8が設けられている。フィルタ8を再生する際、フィルタ8に第1の噴射量の燃料をポスト噴射により供給し、それによるフィルタ8を通過する排気の温度上昇に基づきフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定する。そして、推定された微粒子の量が多くなるほど大きくなる第2の噴射量を設定し、第1の噴射量の燃料をフィルタ8に供給した後、第2の噴射量の燃料をポスト噴射によりフィルタ8に供給することでフィルタ8の再生処理を行う。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、エンジンの排気浄化装置に関し、特に、ディーゼルエンジンから排出されるディーゼルパティキュレートを捕集するディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンの排気ガス中にはカーボン粒子を主とする微粒子(ディーゼルパティキュレート)が含まれているため、ディーゼルエンジンのなかには排気通路に微粒子を捕集するフィルタを設け、微粒子が大気中に放出されないようにしたものがある。このようなディーゼルエンジンでは、フィルタに捕集されている微粒子の量が多くなるとフィルタの捕集能力が低下してくるので、捕集量が多くなってきた場合は適当なタイミングで捕集されている微粒子を燃焼させ、フィルタを再生する必要がある。
【0003】
特許文献1では、フィルタの上流側に燃料を未点火のまま噴射してフィルタが有する酸化触媒上で反応させ、その反応熱によりフィルタ内部の温度を酸化触媒の活性下限温度以上に維持することでフィルタに捕集されている微粒子を燃焼させ、フィルタの再生処理を行っている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−122015
【0005】
【発明が解決しようとしている問題点】
しかしながら、特許文献1に開示されている排気浄化装置では、フィルタ下流に温度センサを取り付けるとともにフィルタ前後に圧力センサを取り付け、フィルタ出口温度、フィルタ前後の圧力差に基づき再生処理を行っており、その構成の複雑さが排気浄化装置にかかるコストを上昇させる原因となっていた。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたものであり、簡単な構成かつ低コストで最適なフィルタ再生処理を行うことができる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【0007】
【問題点を解決するための手段】
フィルタの再生処理時には、まず、フィルタに第1の噴射量の燃料を供給し、それによるフィルタを通過する排気の温度上昇に基づきフィルタに蓄積されている微粒子の量を推定する。そして、推定された微粒子の量が多くなるほど大きくなる第2の噴射量を設定し、フィルタに第1の噴射量の燃料を供給した後、第2の噴射量の燃料をフィルタに供給することでフィルタの再生処理を行う。
【0008】
【作用及び効果】
本発明によれば、第1の噴射量でフィルタに燃料を供給したときのフィルタを通過する排気の温度上昇に基づき、フィルタに蓄積されている微粒子の量を推定し、推定された微粒子の量に見合った第2の噴射量の燃料がその後供給されてフィルタの再生処理が行われる。
【0009】
フィルタを通過する排気の温度上昇を検出する手段を設ければ足り、簡単な構成かつ低コストで最適なフィルタの再生処理を実現することができる。蓄積されている微粒子の量に見合った燃料量が供給されるので、フィルタの再生が不完全なまま再生処理が終了したり、フィルタ再生後も燃料が供給し続けられてフィルタの劣化を引き起こしたりするのを未然に防ぐことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る排気浄化装置を備えたディーゼルエンジン1の概略構成を示しており、車両に搭載されている。エンジン1はいわゆるコモンレール方式のディーゼルエンジンである。図示しない燃料タンクから供給される燃料は、高圧燃料噴射ポンプ2によりコモンレール3に圧送され、これによってコモンレール3内に蓄えられた高圧の燃料は所定のタイミングで各インジェクタ4から各気筒5に噴射される。
【0012】
エンジン1の排気は排気マニホールド6を通って排気管7に流入し、ディーゼルパティキュレートフィルタ(酸化触媒付きフィルタ)8を通って大気に排出される。フィルタ8はセラミック、金属製不織布等の耐熱性を有する多孔質の材料から形成されており、排気が流れる多数の細い流路を有している。また、フィルタ8は酸化触媒を有しており、酸化触媒はフィルタ8と一体的に設けられている。エンジン1の排気がフィルタ8に流入すると、フィルタ8は排気に含まれているカーボン粒子を主とする微粒子(ディーゼルパティキュレート)を捕集し、捕集された微粒子はフィルタ8に蓄積される。
【0013】
フィルタ8の上流側にはフィルタ8の入口温度Tin(フィルタ8に流入する排気の温度)を検出する上流側温度センサ24、フィルタ8の出口温度Tout(フィルタ8から流出する排気の温度)を検出する下流側温度センサ25が取り付けられている。
【0014】
エンジンコントロールユニット(以下、ECU)20には、エンジン1の吸入空気量を検出するエアフローメータ21、エンジン1の冷却水温を検出する水温センサ22、運転者によるアクセル操作量を検出するアクセル操作量センサ23からの信号等、車両の運転状態を示す信号が入力され、入力された信号に基づき高圧燃料噴射ポンプ2、インジェクタ4を駆動し、エンジン1の燃料噴射制御を行う。さらに、ECU20には温度センサ24、25からの信号も入力され、フィルタ8の状態を判断するのに用いられる。
【0015】
ECU20はフィルタ8の再生処理の要否を判断し、フィルタ8の再生処理が必要であると判断した場合には、まず、空燃比を小側に変更するとともに、通常の燃料噴射後にエンジン1の各気筒内に燃料を追加的に噴射するポスト噴射を数十秒程度継続する第1の再生処理を行い、そのときのフィルタ8を通過する排気の温度の上昇代に基づきフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定する。フィルタ8に蓄積されている微粒子の量が多いほど燃料が供給されたときに生じる燃焼の規模が大きくなり、フィルタ8を通過する排気の温度上昇代も大きくなるので、第1の再生処理を行ったときのフィルタ8を通過する排気の温度上昇代をモニタすることによって、フィルタ8に蓄積されている微粒子を正確に推定することができる。フィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定したら、推定量に応じた燃料噴射量を設定し、設定した燃料噴射量でポスト噴射を推定量に応じた時間だけ継続し、フィルタ8の完全な再生を行う(第2の再生処理)。さらに、ECU20は、第2の再生処理によるフィルタ8における排気温度の上昇代に基づきフィルタ8の劣化判定を併せて行う。
【0016】
以下、ECU20が行うフィルタ8の再生処理について図2に示すフローチャートを参照しながら詳しく説明する。このフローチャートはフィルタ8の再生処理が必要である判断されたとき、例えば、前回の再生処理実行時から所定時間経過したときに実行される。
【0017】
まず、ステップS1では、エンジン1の運転状態(例えば、エンジン回転速度と負荷ないし燃料噴射量の組み合わせ)が所定の再生処理領域内にあるかどうかが判断される。再生処理領域は、フィルタ8の再生処理の効率、再生処理が運転性能に与える影響等を考慮して設定され、例えば中速中負荷領域(定常運転領域)に設定される。
【0018】
運転状態が所定の再生処理領域内にあると判断されたらステップS2に進み、第1の再生処理が行われる。第1の再生処理では各インジェクタ4から噴射される燃料量を増量補正してエンジン1の空燃比λを通常運転時の1.4以上から1.0程度まで減少させるとともに、所定の噴射量POSTINJ0(第1の噴射量)の燃料を通常の燃料噴射の後に追加的に噴射するポスト噴射を行う。この第1の再生処理は数十秒程度継続される。
【0019】
ステップS3では、第1の再生処理を行ったときのフィルタ8を通過する排気の温度上昇代ΔTを演算する。具体的には、図3に示すように、フィルタ8の出口温度Toutの最大値から入口温度Tinの最大値を減じることでフィルタ8における排気の上昇代ΔTを求める。フィルタ8の入口温度Tinと出口温度Toutの差を排気の温度上昇代ΔTとするのは、フィルタ8に蓄積している微粒子の量を正確に推定するためにはポスト噴射により噴射された追加燃料がフィルタ8の酸化触媒により反応し、これによって微粒子が燃焼することによる温度上昇代を正確に知ることが必要であるところ、出口温度Toutの温度上昇代にはエンジン1の空燃比を変更したことによる温度上昇代も含まれており、この空燃比変更による温度上昇代を除く必要があるからである。空燃比を変更したことによる排気温度の変化の影響は出口温度Tout、入口温度Tinの双方に現れるので、出口温度Toutから入口温度Tinを減じることでこの影響を除くことができる。
【0020】
なお、ここでは推定精度を優先してフィルタ8の入口温度Tinと出口温度Toutの差からフィルタ8に蓄積している微粒子の量を推定しているが、フィルタ8の出口温度Toutの上昇代のみに基づきフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定するようにしても構わない。これによれば、微粒子蓄積量の推定精度が若干落ちるものの、上流側温度センサ24が不要になり、装置の構成をさらに簡略化し、コストを下げることができるという利点がある。なお、フィルタ8の出口温度Toutの上昇代のみに基づき微粒子の蓄積量を推定する場合であっても、上昇代のうち燃料がフィルタ8上で反応し微粒子が燃焼することによる温度上昇代を、出口温度Toutの変化特性等から抽出することができれば、微粒子の蓄積量の正確な推定が可能である。
【0021】
ステップS4では、ステップS3で求めたフィルタ8を通過する排気の温度上昇代ΔTに基づきフィルタ8に蓄積されている微粒子の量ESTPMを推定する。具体的には、実験結果に基づき作成される図4に示すようなテーブルを予め用意しておき、これを参照することによってフィルタ8に蓄積されている微粒子の量ESTPMを推定する。
【0022】
図4に示すように、フィルタ8を通過する排気の温度上昇代ΔTが大きいほどフィルタ8に蓄積されている微粒子の量も多くなる。これは、フィルタ8に燃料が供給されると酸化触媒上で反応し、その反応熱によって蓄積されている微粒子が燃焼するのであるが、蓄積されている微粒子の量が多いほどそれだけ燃えるものも多く、排気温度の上昇代も大きくなるからである。
【0023】
ステップS5ではステップS4で推定した微粒子蓄積量ESTPMに基づき図5に示すテーブルを参照して、後述する第2の再生処理でのポスト燃料噴射量POSTINJ(第2の噴射量)と、第2の再生処理を行う時間RTM(再生時間)を設定する。フィルタ8に蓄積されている微粒子の量が多いほど、フィルタ8の再生に要する燃料量は多くなり、また、再生に要する時間は長くなることから、ポスト燃料噴射量POSTINJ、第2の再生処理を行う時間RTMはそれぞれステップS4で推定された微粒子蓄積量ESTPMが多くなるほど大きな値に設定される。なお、第2の再生処理を行う時間RTMは第1の再生処理の時間よりも長く設定され、例えば、推定された微粒子蓄積量ESTPMに応じて変化する5分程度の長さに設定される。
【0024】
ステップS6では、エンジン1の運転状態が所定の再生処理領域にあるかどうかが再び判断される。再生処理領域にあるかどうか再度判断するのは、第1の再生処理を実行している間にエンジン1の運転状態が所定の再生処理領域を外れている可能性もあるからである。エンジン1の運転状態が所定の再生処理領域にあると判断された場合は第2の再生処理を行うべくステップS7に進み、タイマTMを開始させる。タイマTMは第2の再生処理を開始してからの経過時間を計測するために用いられる。
【0025】
ステップS8では、エンジン1の空燃比λを第1の再生処理同様に通常運転時よりも濃くして1.0程度とし、ステップS5で設定されたポスト燃料噴射量POSTINJでもってポスト噴射を行う。
【0026】
ステップS9では、フィルタ8の出口温度Toutが所定の高温度Toutthよりも高くなっていないか判断される。所定の高温度Toutthは、フィルタ8の内部温度がフィルタ8及びその酸化触媒を劣化させない温度の上限に設定される。フィルタ8の出口温度Toutが所定の高温度Toutthを超えていると判断された場合は、第2の再生処理を直ちに中止、すなわち、エンジン1の空燃比λを通常運転時の1.4以上に戻し、さらにポスト燃料噴射を中止する。これにより、温度が過度に上昇することによってフィルタ8、その酸化触媒が劣化するのを未然に防ぐことができる。
【0027】
フィルタ8の出口温度Toutが所定の高温度Toutthを超えていない場合はステップS10に進み、タイマTMがステップS5で設定した再生処理時間RTMを超えていないかどうか判断する。再生処理時間RTMを超えている場合はフィルタ8の再生処理が完了したと判断してステップS11に進んで劣化判定を行った後、フィルタ8の再生処理を終了し、超えていない場合はステップS8に戻ってタイマTMが再生処理時間RTMを超えるまで第2の再生処理を継続する。
【0028】
ステップS11ではフィルタ8の劣化判定を行う。劣化判定は、ステップS4で推定された微粒子蓄積量ESTPMが劣化していないフィルタ8に蓄積しているときに第2の再生処理を行ったとした場合に予想されるフィルタ8における排気温度の上昇代ΔT100と、ステップS7からS10で実際に第2の再生処理を行ったときのフィルタ8における排気温度の上昇代ΔTとの比較により行われる。
【0029】
具体的には、ステップS3と同様にフィルタ8の入口温度Tinと出口温度Toutの差に基づき、さらに具体的には出口温度Toutの最大値から入口温度Tinの最大値を減じて実際の排気温度の上昇代ΔTを求め、これの予想される排気温度の上昇代ΔT100に対する比率が所定値DL(例えば、60%)以下の場合に、フィルタ8が劣化していると判断する。これは、実際の排気温度の上昇代ΔTが予想される排気温度の上昇代ΔT100よりも小さいということは、ステップS4で推定されただけの微粒子量が実際にはフィルタ8に蓄積していなかったことを意味し、フィルタ8が劣化してその微粒子捕集能力が低下しているといえるからである。
【0030】
なお、予想されるフィルタ8における排気上昇代ΔT100は、推定された微粒子蓄積量ESTPMと予想されるフィルタ8における排気上昇代ΔT100との関係を規定したテーブルを実験データ等に基づき予め用意しておき、これを参照して求めるものとし、フィルタ8の劣化を判定する所定値DLは要求される排気性能に応じて設定される。
【0031】
次に、上記再生処理を行うことによる作用について説明する。
【0032】
本発明に係る排気浄化装置では、フィルタ8に蓄積されている微粒子の量が増大し、フィルタ8の再生処理を行うことが必要となった場合は、エンジン1の空燃比λを1.0程度まで濃くし、さらに、通常の燃料噴射の後にポスト噴射を行う第1の再生処理が行われる。この第1の再生処理はフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定するために行われるので、推定するのに必要最低限の時間、例えば、数十秒程度だけ行われる。
【0033】
図7はフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を変えて第1の再生処理を行ったときのフィルタ8の入口温度Tin、出口温度Toutの変化を示している。フィルタ8に蓄積されている微粒子の量に応じてフィルタ8における排気温度の上昇代が変わり、温度上昇代が一番大きい▲1▼のケースが最も蓄積されている微粒子の量が多く、▲2▼、▲3▼の順に蓄積されている微粒子の量は少なくなる。このように、微粒子の蓄積量に応じてフィルタ8を通過する排気温度の上昇代が変化するので、フィルタ8における排気温度の上昇代をモニタすることによって、フィルタ8に蓄積されている微粒子の量を正確に推定することができる。
【0034】
第1の再生処理に続いて行われる第2の再生処理では、ポスト噴射における燃料噴射量、再生処理を行う時間が、推定された微粒子蓄積量に基づいて行われ、図8に示すように、蓄積されている微粒子の量が最も多い▲1▼のケースでポスト燃料噴射量は最も多くなり、蓄積されている微粒子の量が少なくなる▲2▼、▲3▼ではポスト噴射での噴射量も小さくなる。また、再生処理時間は、図9に示すように、蓄積されている微粒子の量が最も多い▲1▼のケースで再生処理時間が最も長くなり、蓄積されている微粒子の量が少なくなる▲2▼、▲3▼では再生処理時間も短くなる。これにより、フィルタ8に蓄積されている微粒子を処理するのに必要かつ十分な燃料をフィルタ8に供給することができ、最適なフィルタ再生処理を実行することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明に係るディーゼルエンジン用排気浄化装置は、エンジン1に接続されてエンジン1の排気が流通する排気通路7と、排気通路7の途中に設けられてエンジン1の排気中に含まれる微粒子を捕集し蓄積する酸化触媒付きフィルタ8と、フィルタ8を再生する際にフィルタ8に燃料を供給する手段(ポスト燃料噴射)と、フィルタ8を通過する排気の温度上昇を検出する手段(温度センサ24、25)とを備え、フィルタ8を再生する際、フィルタ8に第1の噴射量の燃料を供給し(第1の再生処理)、それによるフィルタ8を通過する排気の温度上昇に基づきフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定し、推定された微粒子の量が多くなるほど大きくなる第2の噴射量を設定し、第1の噴射量の燃料を供給した後、第2の噴射量の燃料をフィルタ8に供給することでフィルタ8の再生処理(第2の再生処理)を行うように構成する。
【0036】
第1の噴射量の燃料を供給したときのフィルタ8における排気の温度上昇からフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定し、その後、推定された微粒子の量に見合った第2の噴射量の燃料をフィルタ8に供給することでフィルタ8の再生処理を行うようにしたことにより、簡単かつ低コストで最適なフィルタ再生処理を実現することができる。
【0037】
つまり、再生処理を行うにあたっては、最低限、フィルタ8を通過する排気の温度上昇を検出する手段を追加すればよく、フィルタ下流に温度センサを取り付けるとともにフィルタ前後に圧力センサを取り付けていた従来の構成と比べて装置構成を大幅に簡略化し、コストを下げることができる。また、フィルタ8に蓄積されている微粒子の量を第1の噴射量の燃料をフィルタ8に供給したときのフィルタ8での排気の温度上昇に基づき推定するようにしたことでフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を正確に推定することができ、また、推定された微粒子蓄積量に見合った第2の噴射量の燃料をフィルタ8に供給し、フィルタ8の再生を行うようにしたことにより、再生が十分に行われないまま再生処理が中断されたり、再生終了後も燃料が供給され続けてフィルタ8に悪影響を与えたりするのを防止できる。
【0038】
フィルタ8に燃料を供給するには、エンジン1の通常燃料噴射の後にエンジン1の各気筒内に燃料を追加的に噴射(ポスト噴射)するようにするのが好適である。この方法によれば、追加燃料を供給するインジェクタ等の装置を新たに追加することなく本発明を適用することができ、装置の構成が複雑化するのを抑えることができる。
【0039】
フィルタ8を通過する排気の温度上昇としては、フィルタ8の出口温度と入口温度の差を検出するのが好ましい。フィルタ8に蓄積されている微粒子の量を正確に推定するためには、フィルタ8に供給された燃料がフィルタ8の酸化触媒上で反応して微粒子が燃焼することによる温度上昇を知ることが必要であるが、フィルタ8を通過する排気の温度はエンジン1の運転状態によっても変化してしまう。例えば、再生処理中にエンジン1の空燃比を変更すれば排気温度も変化し、出口温度だけをモニタするだけでは燃料がフィルタ上で反応することによる温度変化と区別することが難しい。上記実施形態でフィルタ8の出口温度と入口温度の差をフィルタ8を通過する排気の温度上昇としているのは、エンジン1の運転状態の変化の影響を除くためであり、これによって、燃料がフィルタ8の酸化触媒上で反応することによる温度上昇を正確に知ることができ、微粒子蓄積量の推定精度を向上させることができる。
【0040】
なお、上記実施形態ではフィルタ8の出口温度と入口温度の差をもってフィルタ8を通過する排気の温度上昇としているが、フィルタ8の出口温度に代えてフィルタ8の内部温度を用いても同様の制御が可能である。この場合、図10に示すように、フィルタ8の下流に設けられていた温度センサ25をなくし、その代わりにフィルタ8の内部温度を検出する温度センサ27を取り付け、EUC20における制御では、出口温度Tinに代えてフィルタ8の内部温度を用いるようにすればよい。
【0041】
あるいは、フィルタ8を通過する排気の温度上昇として、フィルタ8の出口温度(あるいは内部温度)の変化を用いてもよい。この場合、微粒子蓄積量の推定精度が若干落ちるが、フィルタ8の出口側に温度センサを設けるだけでよいので、装置の構成をさらに簡略化し、コストを下げることができる。なお、この場合であっても、フィルタ8の出口温度(あるいは内部温度)の上昇代から、例えば、出口温度の変化特性を見るなどなして、燃料が酸化触媒上で反応し微粒子が燃焼することによる温度上昇分を見極めることができれば、入口温度と出口温度の差に基づく場合とほぼ同等の精度でフィルタ8に蓄積されている微粒子の量を推定することが可能である。
【0042】
また、フィルタ8の再生処理(第2の再生処理)が行われる時間は、推定された微粒子の蓄積量が多くなるほど長く設定される。これは、蓄積されている微粒子の量が多くなるほどそれを再生に要する時間も長くなるからであり、再生処理を行う時間を推定微粒子蓄積量に応じて設定することでより適切な再生処理を行うことが可能となる。
【0043】
さらに、再生処理中は、フィルタ8の出口温度(あるいは内部温度)をモニタし、フィルタ8の出口温度(あるいは内部温度)がフィルタ8を劣化させない所定の上限温度を超えたときは直ちにフィルタ8の再生処理を中止する。これにより、フィルタ8の温度が過度に上昇してフィルタ8やフィルタ8の酸化触媒が劣化するのを未然に防ぐことができる。
【0044】
さらに、再生処理を行う際、第2の噴射量の燃料をフィルタ8に供給した場合に予測されるフィルタ8での排気の温度上昇と、第2の噴射量の燃料をフィルタ8に実際に供給した場合のフィルタ8での排気の温度上昇とに基づきフィルタ8が劣化したかどうかを判断する。フィルタ8が劣化しているときは第2の噴射量の燃料を実際に供給した場合の排気温度上昇が、予想される温度上昇よりも小さくなるので、これによってフィルタ8の劣化の有無を判断することができる。この方法によれば、新たな構成を追加することなくフィルタ8の劣化判定が可能になる。
【0045】
また、再生処理を行う際に、エンジン1の空燃比を小側に変更する(上記実施形態では通常時の1.4以上から1.0程度まで減少させる)ようにする。これにより、エンジン1の排気温度を上昇させて微粒子の燃焼を補助し、再生処理がより効率的に行われるようにすることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上記実施形態は本発明を説明するためのものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の構成に限定する趣旨ではない。上記実施形態は当業者にとって自明な範囲で種々の変更が可能であり、例えば、ここでは車両用ディーゼルエンジンを例にとって説明したが、本発明は車両用に限らず、ディーゼルエンジンに広く適用可能なものである。適用可能なディーゼルエンジンの種類も上記したコモンレール式のディーゼルエンジンに限定されるものではない。
【0047】
さらに、再生処理時にフィルタ8に供給する追加燃料をポスト噴射を行うことによって供給しているが、フィルタ8に追加燃料を供給する方法はこれ以外の方法であっても良く、例えば、図1に示すように、フィルタ8の上流に追加インジェクタ26を取り付け、ポスト噴射に代えて、あるいはポスト噴射とともにこの追加インジェクタ26から燃料を排気中に供給するようにしてもよい。この構成は、エンジン1がコモンレール式でない等の理由によりポスト噴射ができない場合や、フィルタ8に確実に短時間のうちに燃料を供給したい場合に有効である。
【0048】
また、フィルタ8に蓄積されている微粒子の量の推定は、上記実施形態ではフィルタ8における排気温度の上昇代に基づき推定しているが、排気温度の上昇速度や単位時間あたりの上昇量に基づき推定するようにしても同じである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排気浄化装置を備えたディーゼルエンジンの概略構成図である。
【図2】エンジンコントロールユニットが行うディーゼルパティキュレートフィルタの再生処理の内容を示したフローチャートである。
【図3】第1の再生処理を行ったときのフィルタの入口温度と出口温度の変化を示したタイムチャートである。
【図4】第1の再生処理を行ったときのフィルタを通過する排気の温度の上昇代とフィルタに蓄積されている微粒子の量の関係を規定したテーブルである。
【図5】推定されたフィルタに蓄積されている微粒子の量から、ポスト噴射での燃料噴射量、第2の再生処理の時間を設定するためのテーブルである。
【図6】第2の再生処理を行ったときのフィルタの入口温度と出口温度の変化を示したタイムチャートであり、実線はフィルタが劣化していない場合のフィルタ出口温度の変化、一点鎖線はフィルタが劣化している場合のフィルタ出口温度の変化を示す。
【図7】第1の再生処理を行ったときのフィルタを通過する排気の温度の上昇代がフィルタに蓄積されている微粒子の量に応じて変化する様子を示したタイムチャートである。
【図8】フィルタに蓄積されている微粒子の量に応じてポスト噴射での燃料噴射量が変更される様子を示した図である。
【図9】フィルタに蓄積されている微粒子の量に応じて第2の再生処理の時間が変更される様子を示した図である。
【図10】実施形態の一部変更例である。
【図11】同じく実施形態の一部変更例である。
【符号の説明】
1 ディーゼルエンジン
2 高圧燃料噴射ポンプ
3 コモンレール
4 インジェクタ
8 ディーゼルパティキュレートフィルタ(フィルタ)
20 エンジンコントロールユニット
24 上流側温度センサ
25 下流側温度センサ
26 追加インジェクタ
27 内部温度センサ
Claims (9)
- エンジンに接続されて前記エンジンの排気が流通する排気通路と、
前記排気通路の途中に設けられて前記エンジンの排気中に含まれる微粒子を捕集し蓄積する酸化触媒付きフィルタと、
前記フィルタを再生する際に前記フィルタに燃料を供給する手段と、
前記フィルタを通過する排気の温度上昇を検出する手段と、
前記フィルタの再生する際、前記フィルタに第1の噴射量の燃料を供給し、それによる前記フィルタを通過する排気の温度上昇に基づき前記フィルタに蓄積されている微粒子の量を推定する手段と、
推定された微粒子の量が多くなるほど大きくなる第2の噴射量を設定する手段と、
前記第1の噴射量の燃料を前記フィルタに供給した後、前記第2の噴射量の燃料を前記フィルタに供給することで前記フィルタの再生処理を行う手段と、
を備えたことを特徴とするディーゼルエンジン用排気浄化装置。 - 前記フィルタに燃料を供給する手段は、前記エンジンの通常燃料噴射の後に前記エンジンの気筒内に燃料を追加的に噴射する手段であることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
- 前記フィルタに燃料を供給する手段は、前記排気通路の途中に設けられて前記前記フィルタ上流の排気中に燃料を追加的に噴射する手段であることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
- 前記排気の温度上昇を検出する手段は、前記フィルタの出口温度もしくは内部温度と前記フィルタの入口温度の差を前記排気の温度上昇として検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかひとつに記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
- 前記排気の温度上昇を検出する手段は、前記フィルタの出口温度もしくは内部温度の変化を前記排気の温度上昇として検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかひとつに記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
- 推定された微粒子の量が多くなるほど長くなる再生処理時間を設定する手段を備え、前記フィルタの再生処理を行う手段は、設定された再生処理時間の間、前記第2の噴射量の燃料を前記フィルタに供給することを特徴とする請求項1から5のいずれかひとつに記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
- 前記フィルタの再生処理を行っている間に前記フィルタの出口温度もしくは内部温度が前記フィルタを劣化させない所定の上限温度を超えたときは直ちに前記フィルタの再生処理を中止することを特徴とする請求項1から6のいずれかひとつに記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
- 前記第2の噴射量の燃料を前記フィルタに供給した場合に予測される前記フィルタを通過する排気の温度上昇と、前記第2の噴射量の燃料を前記フィルタに実際に供給した場合の前記フィルタを通過する排気の温度上昇と、に基づき前記フィルタが劣化したかどうかを判断することを特徴とする請求項1から6のいずれかひとつに記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
- 前記フィルタの再生処理を行っている間、前記エンジンの空燃比を小側に変更することを特徴とする請求項1から8のいずれかひとつに記載のディーゼルエンジン用排気浄化装置。
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