JP2004303738A - ガラスセラミックス複合電解質、及びリチウム二次電池 - Google Patents

ガラスセラミックス複合電解質、及びリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 媒体中に非水系電解液を含浸してなる電解質において、高いイオン伝導性を有し、かつ厚みを薄くした場合においても十分な機械的強度を有する電解質、および電池容量が高く、充放電サイクル特性も良好で、長期的に安定して使用できるリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】 リチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を含有する媒体中に非水系電解液を含浸してなるガラスセラミックス複合電解質、およびその複合電解質と、正極、負極、とを備えたリチウム二次電池。ガラスセラミックス粉体は平均粒径20μm以下(体積分率)、かつ最大粒径が44μm以下であり、リチウムイオン伝導度1×10-4S・cm-1以上の粒子からなる。ガラスセラミックス複合電解質の厚さは100μm以下であり、リチウムイオン伝導度は1×10-5S・cm-1以上である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を含有する複合電解質に関する。更に、本発明はこの複合電解質を備えたリチウム二次電池に関する。
従来から、電池における電解質としては、一般に水系或いは非水系の電解液が使用されていたが、近年、このような液体が中心の電解質に替わり、高分子で構成されたポリマー電解質を用いたリチウム二次電池が注目されるようになった。
すなわち、このようにポリマー電解質を用いたリチウム二次電池においては、ポリマー電解質中に液体の電解液が保持されるため、漏液しにくく、腐食性も少なく、電池の構造が簡単でその組立ても容易になる等の利点があった。
ここで、このようなポリマー電解質は電解液のみに比べ、リチウムイオンの伝導性が低いため、このポリマー電解質の厚みを薄くすることが行なわれるようになった。しかし、このようにポリマー電解質を薄くした場合その機械的強度が低くなって、電池の作製時にこのポリマー電解質が破壊され、正極と負極とが短絡し易いという問題があった。
そこで、従来においては、特開平6−140052号公報等に示されるように、電解質中にアルミナ等の無機酸化物を添加して複合電解質とし、機械的強度を向上させることが提案された。アルミナ以外にもシリカやアルミン酸リチウム等の無機酸化物が提案されている。
しかし、アルミナ等の無機酸化物を電解質中に添加させると、複合電解質におけるリチウムイオンの伝導性が大きく低下する問題がある。また、この複合電解質を備えたリチウム二次電池において充放電を繰り返して行なうと、電解質と上記の無機酸化物とが反応して、リチウム二次電池における充放電サイクル特性が大きく低下してしまう。
特開平6−140052号公報
本発明は、媒体中に非水系電解液を含浸してなる電解質において、高いイオン伝導性を有し、かつ厚みを薄くした場合においても十分な機械的強度を有する電解質を提供することを目的とする。また、本発明は、非水系電解液を含浸してなる電解質をセパレータとして備えたリチウム二次電池において、電池容量が高く、充放電サイクル特性も良好で、長期的に安定して使用できるリチウム二次電池を提供することをもう一つの目的とする。
本発明者らは、電解質中に種々の充填物を添加して詳細な実験を行った結果、特定の組成のガラスセラミックス粉体を非水系電解液と共にポリマー媒体中に分散・含有させたガラスセラミックス複合電解質は、従来のリチウムイオンの伝導性を示さない無機酸化物を含んだ複合電解質に比べて著しく高いリチウムイオンの伝導性を示すことを見出した。また、ここで得られた複合電解質をリチウム二次電池に応用すると、従来のリチウムイオン伝導性を示さない無機酸化物を含んだ複合電解質をリチウム二次電池に適用した場合に比べて電池容量が高く、充放電サイクル特性も著しく向上することを発見し、本発明をなすに至った。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、リチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を含有する媒体中に非水系電解液を含浸してなり、イオン伝導度が1×10−5S・cm−1以上であるガラスセラミックス複合電解質であり、請求項2に記載の発明は、該ガラスセラミックス粉体は平均粒径20μm以下(体積分率)、かつ最大粒径が44μm以下であり、リチウムイオン伝導度1×10-4S・cm-1以上の粒子からなる請求項1記載の複合電解質であり、請求項3に記載の発明は、該媒体はシート状高分子材料にガラスセラミックス粉体を含有してなる請求項1又は2記載の複合電解質であり、請求項4に記載の発明は、厚さ100μm以下であり、イオン伝導度1×10-5S・cm-1以上である請求項1から3のうちいずれか一項記載の複合電解質であり、請求項5に記載の発明は、該媒体中におけるガラスセラミックス粉体の含有量が10〜90質量%である請求項1から4のうちいずれか一項記載の複合電解質であり、請求項6に記載の発明は、正極、負極、及びセパレータを備えたリチウム二次電池であって、該セパレータは請求項1から5のうちいずれか一項記載の複合電解質からなるリチウム二次電池である。
そして、本発明の複合電解質は、リチウムイオン伝導性の電解質中にリチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を含有させることにより、電解質におけるリチウムイオンの伝導性が低下するということが少なく、電解質の機械的強度が向上され、さらに電池容量、特に充電容量も高くできる。
また、上記のガラスセラミックス粉体は反応性が低いため、充放電時に電解液とこのガラスセラミックスとが反応するということが少なくなり、従来のアルミナ等の無機酸化物を添加した電解質のように電解質が反応してリチウム二次電池の充放電サイクル特性が低下するということも少なくなる。
本発明の複合電解質は電池として使用した場合、薄い方が電池の単位体積当たりの電極面積が広く確保できるため高容量の電池が得られる。そこで、本発明の複合電解質は厚さが100μm以下のシート状が好ましい。また、本発明の複合電解質において、ガラスセラミックス粉体は媒体中に均一に分散されていることが、複合電解質のイオン伝導性、及び機械的強度の点で好ましい。分散性を良好にするために、ガラスセラミックス粉体の粒径は、平均で20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。最大粒径としては44μm以下が好ましい。
リチウムイオン二次電池の充放電時におけるリチウムイオンの移動性は、電解質のリチウムイオン伝導度に依存するため、本発明の複合電解質のリチウムイオン伝導度は高い方が好ましい。具体的には、1×10-5S・cm-1以上であることが好ましく、1×10-4S・cm-1以上であることがより好ましい。
ゲル状の固体電解質のイオン伝導度は電解液自体のリチウムイオン伝導度よりも一般には低い。また、ゲル状の固体電解質に機械的強度を増すために無機酸化物を添加する場合、添加材自体のリチウムイオン伝導性が低いと、電解質のイオン伝導性は更に低下するのが一般的である。ところが、添加材としてリチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を用いると、電解質のリチウムイオン伝導性の低下を防止する効果があり、結局、高いイオン伝導度と、十分な機械的強度を有する複合電解質を得ることができる。本発明の複合電解質において、添加材としてのガラスセラミックス粉体は、複合電解質のリチウムイオン伝導度よりも高いリチウムイオン伝導度のガラスセラミックス粒子からなることが望ましい。具体的には、ガラスセラミックス粉体を構成するガラスセラミックス粒子のリチウムイオン伝導度は、好ましくは1×10-4S・cm-1以上であり、より好ましくは1×10-3S・cm-1以上である。
本発明の複合電解質を構成する媒体は、電池として用いた時の体積当たりの電池容量を大きくできるとともに、可撓性を有し様々な形状に成形が可能である点から、シート状高分子材料にガラスセラミックス粉体を含有してなることが好ましい。また、本発明の複合電解質を構成する媒体は、非水系電解液を含浸してゲル状物となるよう、微細な孔を有する多孔質体であることが好ましい。
本発明の複合電解質を構成するシート状高分子材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素樹脂、ポリアミド類、ポリエステル類ポリアクリレート等の高分子材料を用いることができる。媒体の材料としては、電解液を安定して含浸させることができること、加工性が良好であること、可撓性に優れること、ガラスセラミックスとの相性が良く高いイオン伝導性を示すこと等が要求される。これらの性質をバランスよく備えたものとして、特にフッ素樹脂が好ましい。
また、本発明の複合電解質において非水系電解液を構成する溶質としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3LiClO4)、トリフル
オロメタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)等のリチウム化合物を用いることができる。
さらに、上記の溶質の溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2-ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、アセトニトリル等の有機溶媒を使用することができる。上記の溶質を上記溶媒に溶解して非水系電解液とし、本発明の複合電解質に使用することができる。本発明の複合電解質はゲル状であることが好ましい。複合電解質をゲル状にすることにより、非水系電解液を高濃度に安定して含浸させることができ、高いイオン伝導性を発現することができる。これらの非水系電解液を用いることにより、本発明の複合電解質をゲル状とすることができる。
ここで、上記のように電解質中に高いイオン伝導度を有するリチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を含有させる際、その量が少ないと、複合電解質のリチウムイオン伝導度の向上がみられず、また複合電解質における強度を十分に向上させることができない。一方、その量が多くなりすぎると電解液の含有量が少なくなるため、複合電解質および上記のガラスセラミックス粉体と電極との接触がほとんど固体同士となるため接触性が悪くなって電極と複合電解質及び上記のガラスセラミックス粉体の間におけるリチウムイオンの移動性が悪くなる。そこで、本発明の複合電解質において、媒体中におけるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉体の含有量の下限としては10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、上限としては90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
本発明の複合電解質は、リチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を含有する。このガラスセラミックス粉体は主結晶相がLi1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(0≦x≦1、0≦y≦1)のガラスセラミックスからなることが好ましい。このガラスセラミックス粉体は、Li2O-Al2O3-TiO2-SiO2-P2O5系の組成の母ガラスを熱処理して、主結晶相をLi1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12として結晶化させ、その後、粉砕することにより得ることができる。主結晶相Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12のパラメータとして、好ましくは、0≦x≦1、0≦y≦1であり、より好ましくは、0≦x≦0.4、0<y≦0.6である。また、母ガラスの酸化物換算の組成比としては、mol%表示で、Li2Oは12〜18%、Al2O3は5〜10%、TiO2は35〜45%、SiO2は1〜10%、P2O5は30〜40%であることが好ましい。この組成範囲の場合、溶融ガラスをキャストして容易にガラスを得ることができ、この母ガラスを熱処理して得られる上記結晶相をもつガラスセラミックスは高いリチウムイオン伝導性を有する。
本発明のリチウム二次電池は正極、負極、及びセパレータとしてガラスセラミックス複合電解質を備える。本発明のリチウム二次電池において、その正極に使用する材料としては、リチウムの吸蔵,放出が可能な遷移金属化合物を主成分として用いることができる。例えば、マンガン,コバルト,ニッケル,バナジウム,ニオブ、モリブデン、チタン等の遷移金属とリチウムを含む遷移金属酸化物を主成分として使用することができる。特に、主成分としてコバルト酸リチウムを含有する正極が、高起電力、サイクル特性の点で優れる。
また、本発明のリチウム二次電池において、その負極に使用する材料としては、金属リチウムやリチウムの吸蔵,放出が可能な合金,酸化物及びカーボン材料等を使用することができる。
以上記述したように、本発明における複合電解質を用いたリチウム二次電池用においては、複合電解質中にリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉体を含有させるようにしたため、この複合電解質におけるリチウムイオンの伝導性が低下するということがなく、複合電解質における機械的強度が向上した上に、優れた電池容量を有するリチウム二次電池が得られるようになった。
また、上記のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスは充放電時に高分子材料からなる媒体と反応するということが少ないため、リチウム二次電池における放電容量が大きく、急激に低下するということも抑制された優れたリチウム二次電池が得られるようになった。
さらに、安全性を高めるために有機電解液成分を減らした場合においても、高い放電容量を有したリチウム二次電池の製造が可能となった。
以下、本発明に係る複合電解質、及びこれを備えたリチウム二次電池について、具体的な実施例を挙げて説明すると共に、比較例を挙げ本発明に係る複合電解質、及びこれを備えたリチウム二次電池が優れている点を明らかにする。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
(実施例1)
リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉体の作製
原料としてNH4H2PO4、Al(PO3)3、Li2CO3、SiO2、TiO2を使用し、これらを酸化物換算のmol%でP2O5を35.0%、Al2O3を7.5%、Li2Oを15.0%、TiO2を38.0%、SiO2を4.5%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃でガラス融液を撹拌しながら2時間加熱熔解した。その後、ガラス融液を水中に直接キャストし、母ガラスを得た。この母ガラスを950℃で12時間の熱処理を行うことにより、目的のガラスセラミックスを得た。析出した結晶相は粉末X線回折法により、Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。そのガラスセラミックスのイオン伝導度は、25℃の室温において1.4×10-3S・cm-1であった。このガラスセラミックスを、遊星ボールミルを用いて粉砕した後に分級を行ない、平均粒径7μmのリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉体を得た。
媒体の作製
ポリビニリデンフルオライド(PVdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)および上記リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスのそれぞれの粉体を35:40:25の質量比でアセトンに20質量%投入し、アセトン懸濁液を調製した。この液をキャスティング法により成膜した後、真空乾燥させて厚さ50μmのシート状ガラスセラミックス複合媒体を作製した。
非水系電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を50:50の質量比で混合した溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶解して、非水系電解液とした。
複合電解質の作製
上記ガラスセラミックス複合媒体を、室温で上記非水系電解液に10分間浸漬することによって、ゲル状物からなるシート状の複合電解質を得た。
イオン伝導度の測定
この得られた複合電解質を2枚のステンレスシートで挾み込み、これらのステンレスシートを電極として、リチウムイオン伝導度測定用の試料を作製した。室温におけるインピーダンス測定を行ない、イオン伝導度を求めた結果、イオン伝導度は、3.1×10-4S・cm-1であった。
(比較例1)
媒体の作製時に、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの替わりに、表面修飾されたフュームドシリカ(SiO2)を同量加えたこと以外は、実施例1と同様にシート状複合電解質を作製し、同様にイオン伝導度を求めた。その結果、イオン伝導度は、1.7×10-4S・cm-1であった。
実施例1と比較例1を比較すると、それぞれの複合電解質膜のイオン伝導度は2倍近く実施例1の方が高い結果となった。これはイオン伝導性ガラスセラミックスを含有した効果である。
(実施例2)
次に、正極、負極、及びセパレータとしてガラスセラミックス複合電解質とを備えたリチウム二次電池の作製例を説明する。
正極の作製
正極の作製には、正極材料として市販のコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電剤としてアセチレンブラック、結着剤としてフッ素樹脂粉末(ポリビニリデンフルオライド(PVdF))を用いた。質量比で82:10:8のコバルト酸リチウム、アセチレンブラック、及びポリビニリデンフルオライドを、アセトンを用いて混合し、次に、キャスティング法により、この混合物を厚さ10μmのアルミニウム箔上に塗布した。更に、これを100℃の温度で乾燥させた。これにより、正極集電体(アルミニウム箔)上に厚さが約100μmのシート状の正極を作製した。
負極の作製
負極の作製には、負極材料として市販の10μmの黒鉛粉末、結着剤としてフッ素樹脂(ポリビニリデンフルオライド(PVdF))を用いた。質量比で92:8の黒鉛粉末とポリビニリデンフルオライドを、アセトンを用いて混合し、次に、キャスティング法により、この混合物を厚さ10μmの銅箔上に塗布した。更に、これを100℃の温度で乾燥させた。これにより、負極集電体(銅箔)上に厚さが約100μmのシート状の負極を作製した。
媒体の作製
実施例1と同様にシート状のガラスセラミックス複合媒体を作製した。
非水系電解液の調製
実施例1と同様に非水系電解液を調製した。
リチウム二次電池の組み立て
上記の正極、負極の間にセパレータとして上記のシート状ガラスセラミックス複合媒体を挾み込んで、ダブルローラーラミネータによって接着し、正極集電体、正極、ガラスセラミックス複合媒体、負極、負極集電体の5層構造体を組み立てた。この5層構造体を、室温で上記非水系電解液に10分間浸漬して、ガラスセラミックス複合媒体に非水系電解液を含浸させて複合電解質とし、セパレータとしてこの複合電解質を備えたリチウム二次電池を作製した。非水系電解液の含浸量は複合電解質の質量の約60%であった。このリチウム二次電池の構造を図1に示す。図1のリチウム二次電池において、1は正極集電体、2は正極、3はガラスセラミックス複合電解質、4は負極、5は負極集電体を示す。1層が8cm2のこのリチウム二次電池をさらに6層積層させて、400mAh級のリチウム二次電池を組み上げ、室温25℃において定電流で充放電サイクル試験を行った。この試験では、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0V、充電速度10mA/cm2とし、電池の放電容量を測定した。なお、このリチウム二次電池のエネルギー容量は1480mWhであった。
(比較例2)
媒体の作製時に、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉体の替わりに、表面修飾された粉末状のフュームドシリカ(SiO2)を同量加えたこと以外は、実施例2と同様にリチウム二次電池を作製し、同条件にて充放電サイクル試験を行い、電池の放電容量を測定した。
実施例2及び比較例2で得られた電池それぞれの初期放電容量と300サイクル目の放電容量の測定結果を表1に示した。
Figure 2004303738
表1から明らかなように、本実施例2の電池は、比較例2に比べて放電容量が大きいことが分かる。また、この電池における理論電池容量は約8mAh/cm2であり、実施例2の電池では非常に近い値を示しており、優れたセル性能を有していることも分かる。
また、実施例2及び比較例2で得られた電池それぞれの充放電サイクルに伴う放電容量の変化を図2に示した。
図2より、初期においても、300サイクル目においても、実施例2の放電容量は比較例2の初期容量と比較してはるかに大きいことが明らかである。つまり、このリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを電解質に含有することによって、高容量なリチウム二次電池の作製が可能となった。
(実施例3)
実施例2と同様に複合電解質を備えたリチウム二次電池を組み立て、同じく室温25℃において充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの条件下の充放電サイクル試験を実施例2に比較して3倍の急速充電を適用して行った。
(比較例3)
比較例2と同様にリチウム二次電池を組み立て、同じく室温25℃において充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの同じ条件下の充放電サイクル試験を実施例2に比較して3倍の急速充電を適用して行った。
実施例3及び比較例3で得られた電池それぞれの初期放電容量と300サイクル目の放電容量の測定結果を表2に示した。
Figure 2004303738
表2から明らかなように、本実施例3の電池は、比較例3に比べて放電容量が大きいことが分かり、急速充電においても優れたセル性能を有していることも分かる。
また、実施例3及び比較例3で得られた電池それぞれの充放電サイクルに伴う放電容量の変化を図3に示した。
図3より、初期においても、300サイクル目においても、実施例3の放電容量は比較例3の初期容量と比較してはるかに大きいことが明らかである。
(実施例4)
実施例2と同様に複合電解質を備えたリチウム二次電池を組み立て、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの同じ条件下の充放電サイクル試験において作動温度を変化させて行った。試験は、-10℃、0℃、25℃、50℃、75℃の各温度で行った。
(比較例4)
比較例2と同様にリチウム二次電池を組み立て、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの同じ条件下の充放電サイクル試験において作動温度を変化させて行った。試験は、-10℃、0℃、25℃、50℃、75℃の各温度で行った。
実施例4及び比較例4で得られた電池それぞれの作動温度に対する初期放電容量の値の変化を図4に示した。
図4より、実施例4の電池は、-10℃から75℃までと広い温度範囲で大きな放電容量を維持し、比較例4と比較してもはるかに優れていることが明らかである。
(実施例5)
媒体の作製時に、可塑剤として用いていたヘキサフルオロプロピレンHFPを使用せずに、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)とリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスのそれぞれの粉体を60:40の質量比で同様にアセトン懸濁液とし、シート状ガラスセラミックス複合媒体を作製したこと以外は、実施例2と同様に複合電解質を備えたリチウム二次電池を作製した。非水系電解液の含浸量は複合電解質の質量の約18%であった。
(比較例5)
媒体の作製時に、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉体の替わりに、表面修飾された粉末状のフュームドシリカ(SiO2)を同量加えたこと以外は、実施例5と同様に電池を作製した。
可塑剤として使用していたヘキサフルオロプロピレン(HFP)を使用していない実施例5及び比較例4の電池では、どちらの場合も電解液の含浸性が悪く、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)を使用した実施例4及び比較例4の電池と比較して3割程度の含浸率しかなかった。
実施例5及び比較例5で得られた電池それぞれの作動温度に対する初期放電容量の値の変化を図5に示した。
比較例2〜4と比較して電解液を3割程度しか含まない比較例5の電池では、非常に小さい放電容量しか示さなかった。それに比べて同様に電解液を3割程度しか含まない実施例5の電池では、充分に高い放電容量を示し、比較例4とほぼ同等かそれ以上の容量が得られた。これは、複合電解質に含有させたリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの優位性によるものである。つまり、リチウム二次電池内の有機液体成分である電解液の割合を減らした場合においても、充分に高い放電容量を有した電池の製造が可能であり、この結果さらに安全性に優れたリチウム二次電池が製造できることを示唆している。
実施例2におけるガラスセラミックス複合電解質を備えたリチウム二次電池の内部構造を示した断面説明図である。 実施例2及び比較例2で得られた電池それぞれの充放電サイクルに伴う放電容量の変化を示すグラフである。 実施例3及び比較例3で得られた電池それぞれの充放電サイクルに伴う放電容量の変化を示すグラフである。 実施例4及び比較例4で得られた電池それぞれの温度条件に対する初期放電容量を示すグラフである。 実施例5及び比較例5で得られた電池それぞれの温度条件に対する初期放電容量を示すグラフである。
符号の説明
1:正極集電体
2:正極
3:ガラスセラミックス複合電解質
4:負極
5:負極集電体

Claims (6)

  1. リチウムイオン伝導性のガラスセラミックス粉体を含有する媒体中に非水系電解液を含浸してなり、イオン伝導度が1×10−5S・cm−1以上であるガラスセラミックス複合電解質。
  2. 該ガラスセラミックス粉体は平均粒径20μm以下(体積分率)、かつ最大粒径が44μm以下であり、リチウムイオン伝導度1×10-4S・cm-1以上の粒子からなる請求項1記載の複合電解質。
  3. 該媒体はシート状高分子材料にガラスセラミックス粉体を含有してなる請求項1又は2記載の複合電解質。
  4. 厚さ100μm以下であり、イオン伝導度1×10-5S・cm-1以上である請求項1から3のうちいずれか一項記載の複合電解質。
  5. 該媒体中におけるガラスセラミックス粉体の含有量が10〜90質量%である請求項1から4のうちいずれか一項記載の複合電解質。
  6. 正極、負極、及びセパレータを備えたリチウム二次電池であって、該セパレータは請求項1から5のうちいずれか一項記載の複合電解質からなるリチウム二次電池。

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