JP2004303641A - 電子放出源、その製造方法およびディスプレイ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カソード電極ライン16とゲート電極ライン17との間に通電し、各冷陰極19に所定の電界を加える。その結果、局所的な電界集中および冷陰極19内でのホットエレクトロンの走行により、冷陰極19中から真空中に多数の電子が放出され、それらが蛍光体に衝突して発光する。このように、冷陰極19として導電性微粒子19aを含有したものを採用したので、低電圧による安定した電子の放出が可能となる。しかも、薄型で大画面のディスプレイ装置10を低コストで作製することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、強い電場を作用させ、トンネル効果によって冷陰極から電子を真空中に放出させる電子放出源、およびその電子放出源の製造方法、ならびに多数の電子放出源が配列されたディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ブラウン管ディスプレイ装置(CRT)と同等の高画質が得られ、しかも液晶ディスプレイ装置と同等に発色速度およびレスポンス速度が速く、フラット化および薄型化も可能なフィールドエミッションディスプレイ装置(以下、FED)が開発されている。
FEDとは、カソード用基板の表面に、上下に交差配置される各複数本のカソード電極ラインとゲート電極ラインとを有し、両電極ラインの各交差領域をそれぞれ1画素とする。各画素領域にあっては、上側配置されるゲート電極ラインに、互いに離間した多数の微細な開口部がそれぞれ形成され、しかも下側配置されるカソード電極ラインの各開口部内の領域には、多数の冷陰極が配設されている。これらのカソード用基板、カソード電極ライン、ゲート電極ラインおよび冷陰極により電子放出源が構成される。また、カソード用基板から、そのカソード電極ライン側に向かって離間してアノード用基板が配置され、アノード用基板のカソード電極ライン側の面には、蛍光体が形成されている。電子放出源と蛍光体との間は真空に保たれている。
このFEDは、所定の電気信号に応じて、対応する画素領域の各冷陰極を励起し、これにより各冷陰極から真空中に電子を放出し、各電子を真空中で加速して蛍光体に照射する。この照射された各電子は、蛍光体の一部分にそれぞれ衝突して可視光を放出し、所定の画像を表示するように構成されている。
【0003】
従来、冷陰極としては、例えば(1) シリコン製の円錐形状を有するSpindtタイプのもの、(2) 2枚の金属膜の間に絶縁膜を介在したMIM(Metal−Insulator−Metal)タイプのもの、そして(3) カーボンナノチューブを使用するタイプのものなどが知られていた。
(1) Spindtタイプのものは、リソグラフィーなどの半導体の微細加工技術を応用して作製される冷陰極である。また、(2) MIMタイプのものは、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、カソード用基板の上に、金属膜、絶縁膜、他の金属膜を順次成長させることにより作製される冷陰極である。さらに、(3) カーボンナノチューブタイプのものは、例えば特許文献1のように、炭素を材料とした直径数〜数10nmの線状材料より構成される冷陰極である。カーボンナノチューブは、半導体の微細加工技術に比べて微細加工の制御が容易な炭素の自己組織化によって作製される。カーボンナノチューブに電界を印加することで、電子を放出する。例えば、外部印加電界が0.7V/μm程度でも電子を放出する。その結果、駆動電圧を低く設定することができ、しかもカーボンナノチューブは化学的に安定であるので、機械的にも強靱となる。
【0004】
また、このカーボンナノチューブの製造方法としては、主に2種類が知られている。具体的には、(a) 第1の方法は、前記微細加工技術と併用し、炭素の自己組織化を利用する化学気相成長法によって、少数のカーボンナノチューブを成長させる方法である。一方、(b) 第2の方法は、あらかじめ作製されたカーボンナノチューブをバインダ中に練り込みペースト状とし、これをスクリーン印刷法によりカソード電極ラインの表面に塗布することで、カーボンナノチューブの塊をカソード電極ラインにアレイ状に配置する方法である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−51642号公報(第1頁、図1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、(1) Spindtタイプの冷陰極を有する電子放出源では、このようにリソグラフィーなどの高価な半導体の微細加工技術を利用し、冷陰極を作製していた。そのため、コスト高を招いていた。しかも、冷陰極から電子を放出させるには、電子放出源と蛍光体との間を高真空(10−9torr程度)に保ち、高い電圧を印加させる必要があった。
また、MIMタイプの冷陰極を有する電子放出源によれば、Spindtタイプと同じように冷陰極から電子を放出するときに、高い電圧が必要であった。
【0007】
さらに、カーボンナノチューブタイプの冷陰極を有する電子放出源によれば、電子放出源と蛍光体との間が比較的低真空(10−6Torr程度)でも、冷陰極からの電子の放出が可能となる。しかしながら、以下の課題があった。
すなわち、(a) 前記第1の方法によって製造される電子放出源では、Spindtタイプの電子放出源に比べて作製が容易で安価となるものの、同様に高価な微細加工技術を必要としていた。そのため、大面積のカソード用基板に、低コストで多数の電子放出源を配列させることができなかった。また、(b) 第2の方法により製造される電子放出源では、冷陰極から電子を引き出すためのゲート電極を有する電子放出源の作製が困難であった。しかも、前述した冷陰極からの電子放出の低電圧化が難しかった。
【0008】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、冷陰極として金属などの導電性微粒子を含有するものを採用すれば、冷陰極に所定の電界を加えることで、局所的な電界集中および冷陰極内でのホットエレクトロンの走行により、冷陰極中から真空中に電子が放出される現象を知見し(2000年12月、国際ディスプレイワークショップ予稿集,P.979〜P.982参照)、この発明を完成させた。
【0009】
【発明の目的】
この発明は、低電圧でも安定した電子の放出が可能で、しかも薄型で大画面のディスプレイを低コストで作製可能な電子放出源、その製造方法およびディスプレイ装置を提供することを、その目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、カソード用基板に形成されたカソード電極ラインと、互いに離間した多数の微細な開口部を有し、前記カソード電極ラインに絶縁層を介して形成されたゲート電極ラインと、前記カソード電極ラインの各開口部内の領域に配設され、該カソード電極ラインとゲート電極ラインとの間で生じた電圧差によって電子をそれぞれ放出させる多数の冷陰極とを備えた電子放出源において、各冷陰極が、電子を放出する導電性微粒子を含有した電子放出源である。
【0011】
カソード用基板の素材としては、例えばガラスを含む各種のセラミックスなどを採用することができる。
カソード電極ラインの素材としては、例えばニオブ、モリブデン、クロムなどを採用することができる。
絶縁層の素材としては、例えば二酸化シリコンなどを採用することができる。
ゲート電極ラインの素材としては、例えばニオブ、モリブデン、クロムなどを採用することができる。
絶縁膜の厚さは1〜20μm、好ましくは1〜5μmである。1μm未満ではゲート電極ラインとカソードとの間の絶縁性が保たれ難くなる。また、20μmを超えると膜形成に長時間を要すると同時に、膜の剥離という障害が発生し、また低電圧化が困難になるという不都合が生じる。
開口部の大きさは、直径1〜100μm、好ましくは3〜10μmである。
1μm未満では微細加工コストが上昇するという不都合が生じる。また、100μmを超えると高精細化が困難になると同時に、カソードの一部分でしか電子を放出しなくなるという不都合が生じる。
【0012】
導電性微粒子の素材は、導電性を含有すれば限定されない。例えば、パラジウム、銀、銅、ニッケルなどを採用することができる。
また、導電性微粒子の大きさは限定されない。例えば40nm〜10μm、好ましくは50nm〜1μmである。
導電性微粒子から電子を放出させる外部印加電界の大きさは、導電性微粒子の素材のほか、冷陰極および導電性微粒子の大きさなどにより、適宜変更される。例えば導電性微粒子として、粒径100nmのパラジウム微粒子を使用した場合、0.5〜1V/μmで電子放出が生じる。この電界の値は小さい方が好ましい。また、1V/μmを超えると、低電圧で動作させることが困難になり、消費電力の増大を招くという不都合が生じる。1つの電子放出源(FEDにおける1画素の領域に相当)に形成される冷陰極の個数は限定されない。例えば1〜1000個である。
【0013】
冷陰極の形成方法は限定されない。例えば、導電性微粒子を含む液状の電子放出材料をカソード電極に噴射するインクジェット式液滴吐出法、導電性微粒子を含むターゲット基板(蒸発材料)にレーザ光を照射して蒸発させ、薄膜を形成するレーザアブレーション法、スピンコート法を利用し、溶液中に酸化シリコンが混入されたSOG(Spin On Glass)法、スクリーン印刷法などを採用することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記導電性微粒子の素材がパラジウムである請求項1に記載の電子放出源である。
パラジウムは、その他の導電性微粒子に比べて、微粒子を作り易く、酸化に対して安定であるという点で優れている。
【0015】
請求項3に記載の発明は、カソード用基板に形成されたカソード電極ラインに、絶縁層を介して、互いに離間した多数の微細な開口部を有しているゲート電極ラインを形成する工程と、前記カソード電極ラインの各開口部内の領域に、前記カソード電極ラインとゲート電極ラインとの間で生じた電圧差によって電子をそれぞれ放出させる多数の冷陰極を形成する工程とを備えた電子放出源の製造方法において、各冷陰極は、電子を放出する導電性微粒子を含む液状の電子放出材料をカソード電極ラインに噴射するインクジェット式液滴吐出法により形成される電子放出源の製造方法である。
【0016】
カソード電極ラインの形成方法としては、まずカソード用基板の表面に、例えばCVD法、スパッタリング法などにより所定の電極材料からなる導電膜を成膜する。次に、例えばリソグラフィー、反応性イオンエッチングなどにより、導電膜を帯状に加工する。その結果、カソード電極ラインが得られる。
絶縁層の形成方法としては、例えばスパッタリングまたはCVDなどの各種の薄膜形成技術により、カソード用基板の表面に、カソード電極ラインを介して所定の厚さの絶縁層を成膜することにより得られる。
【0017】
ゲート電極ラインの形成方法としては、例えば絶縁層およびカソード電極ラインを介して、カソード用基板の表面に、例えばCVD法、スパッタリング法などにより所定の電極材料からなる導電膜を成膜する。その後、写真製版法または反応性イオンエッチング法により、導体膜をカソード電極ラインと直交する帯状に加工する。これにより、開口部が存在しないゲート電極ラインが形成される。その後、ゲート電極ラインと絶縁層とを貫通し、カソード電極ラインまで到達する平面視して円形状の多数の微細な開口部を、例えば写真製版法または反応性イオンエッチングなどにより形成する。これにより、多数の開口部が存在するゲート電極ラインが形成される。
インクジェット式液滴吐出法における液状の電子放出材料の噴射方式は限定されない。例えば、(1) 荷電変調方式(Seet方式)および拡散方式(Hertz方式)を含む連続噴射方式、(2) ピエゾ方式、サーマル方式、静電誘引方式、放電方式を含むDOD(Drop on Demand)方式を採用することができる。その他、熱溶融インク(ソリッドインク方式)、インクミスト方式なども採用することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記導電性微粒子の素材がパラジウムである請求項3に記載の電子放出源の製造方法である。
【0019】
請求項5に記載の発明は、カソード用基板と、該カソード用基板に形成されたカソード電極ラインと、互いに離間した多数の微細な開口部を有し、前記カソード電極ラインに絶縁層を介して形成されたゲート電極ラインと、前記カソード電極ラインの各開口部内の領域に配設され、該カソード電極ラインとゲート電極ラインとの間で生じた電圧差によって電子をそれぞれ放出させる多数の冷陰極と、前記カソード用基板から、そのカソード電極ライン側に向かって離間して配置されたアノード用基板と、該アノード用基板のカソード電極ライン側の面に形成された蛍光体とを備えたディスプレイ装置において、前記冷陰極が、前記電子を放出する導電性微粒子を含有したディスプレイ装置である。
【0020】
カソード電極ラインと蛍光体との間の距離は限定されない。例えば、1〜5mmである。また、カソード電極ラインと蛍光体との間の真空度は、10−6〜10−9Torr、好ましくは10−8〜10−9Torrである。10−6Torr未満では、イオン化したガス分子によりスパッタが生じ、寿命が短くなる。また、10−9Torrを超えると、真空保持が困難になるという不都合が生じる。
アノード用基板の素材は限定されない。例えば、導電性を有する酸化インジウム・スズ薄膜を形成したガラス基板などを採用することができる。
蛍光体の素材も限定されない。例えば、CRT用の赤、青、緑の各色を発行する蛍光塗料などを採用することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、前記導電性微粒子の素材がパラジウムである請求項5に記載のディスプレイ装置である。
【0022】
【作用】
請求項1の電子放出源、請求項3の電子放出源の製造方法および請求項5のディスプレイ装置によれば、カソード電極ラインとゲート電極ラインとの間に通電し、各冷陰極に所定の電界を加える。その結果、局所的な電界集中および冷陰極内でのホットエレクトロンの走行によって、冷陰極中から真空中に多数の電子が放出される。放出された各電子は、例えばディスプレイ装置によると、真空中で加速され、蛍光体に照射される。照射後の各電子は、蛍光体の一部分にそれぞれ衝突し、可視光を放出する。これにより、アノード用基板には、その蛍光体側の面に所定の画像が表示される。
このように、冷陰極として導電性微粒子を含有したものを採用したので、低電圧による安定した電子の放出が可能となる。しかも、薄型で大画面のディスプレイを低コストで作製することができる。
【0023】
特に、請求項2の電子放出源、請求項4の電子放出源の製造方法および請求項5のディスプレイ装置によれば、導電性微粒子の素材としてパラジウムを採用したので、他の導電性微粒子の素材に比べて、酸化に対して安定であるのでバインダーの素材が限定され難く寿命も長いという効果が得られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。まず、第1の実施例を説明する。
図1および図2において、10は第1の実施例に係るディスプレイ装置で、このディスプレイ装置10は、電子を放出する多数の電子放出源11を平面視してマトリクス形状に配設した電子放出構造体12と、電子放出源11から離間して配置され、蛍光体13を有する発光構造体14とを備えたフィールドエミッションディスプレイ装置である。
【0025】
まず、電子放出構造体12を説明する。電子放出源11は、カソード用基板15と、カソード用基板15に形成されたカソード電極ライン16と、互いに離間した多数の微細な開口部17aを有し、カソード電極ライン16に絶縁層18を介して形成されたゲート電極ライン17と、カソード電極ライン16の各開口部17a内の領域に配設され、カソード電極ライン16とゲート電極ライン17との間で生じた電圧差によって電子をそれぞれ放出させる多数の冷陰極19とを備えている。
カソード用基板15はガラス製で、その表面には多数本の帯状のカソード電極ライン16が形成されている。各カソード電極ライン16の表面には前記絶縁層18が形成され、さらにその上に各カソード電極ライン16と直交した状態で、多数本の帯状のゲート電極ライン17が形成されている。したがって、各ゲート電極ライン17は、各カソード電極ライン16とともにマトリクス構造を有している。前記絶縁層18は、二酸化シリコン製で、厚さは3μm程度である。
【0026】
両電極ライン16,17はそれぞれモリブデン製で、各厚さは1μm程度である。隣接するカソード電極ライン16同士の間隔、および、隣接するゲート電極ライン17同士の間隔は、それぞれ10μm程度である。各カソード電極ライン16および各ゲート電極ライン17は、図示しない制御手段にそれぞれ接続され、その駆動が制御される。
両電極ライン16,17の各交差領域においては、ゲート電極ライン17と絶縁層18とを貫通し、カソード電極ライン16まで達した平面視して円形状を有する多数の微細な開口部17aが、それぞれ形成されている。各開口部17aの底面となるカソード電極ライン16の表面には、多数の冷陰極19が個々に形成されている。各冷陰極19は、電子を放出するパラジウム製の導電性微粒子19aを含有している。導電性微粒子19aの平均粒径は50nmである。これらのカソード電極ライン16、ゲート電極ライン17および冷陰極19により、前記電子放出源11が構成される。
一方、前記発光構造体14は、アノード用基板20と、このアノード用基板20のカソード電極ライン16側の面に形成された前記蛍光体13とを有している。また、電子放出源11のカソード電極ライン16と、蛍光体13との間は真空に保たれている。
【0027】
次に、図1〜図3を参照して、電子放出源11の製造方法を説明する。
まず、図1および図2に示すように、カソード用基板15の表面に、CVD法によりモリブデンからなる導電膜を成膜する。次に、公知のリソグラフィー技術により、導電膜を帯状に加工する。これにより、互いに所定の間隔で離間した多数本のカソード電極ライン16が形成される。
続く絶縁層18の形成にあっては、CVD法により、カソード用基板15の表面全域にカソード電極ライン16の上から二酸化シリコン製の絶縁層18を成膜する。
【0028】
それから、ゲート電極ライン17の形成が行われる。すなわち、絶縁層18およびカソード電極ライン16を介して、カソード用基板15の表面に、CVD法によりモリブデン製の導電膜を成膜する。その後、公知の反応性イオンエッチング法により、この導体膜をカソード電極ライン16と直交する多数本の帯状に加工する。その結果、前記開口部17aが存在しない多数本のゲート電極ライン17が形成される。次に、リソグラフィー技術により、対応するゲート電極ライン17と絶縁層18とを貫通し、下層のカソード電極ライン16まで到達した平面視して円形状の多数の微細な開口部17aを、HF溶液を使ったウエットエッチングによってそれぞれ形成する。これにより、多数の開口部17aが存在するゲート電極ライン17が形成される。
【0029】
続いて、図3を参照して、前記冷陰極19を詳細に説明する。
図3に示すように、冷陰極19は、電子を放出する導電性微粒子19aを含有している。冷陰極19は、インクジェット式液滴吐出装置21を用い、導電性微粒子19aを含む液状の電子放出材料22を、各開口部17aを経てカソード電極ライン16の表面の外部露出した領域に吐出することで形成される。電子放出材料22は、有機シリカ製のバインダにパラジウム製の導電性微粒子19aを所定量添加し、これを図示しない攪拌装置に投入し、所定時間だけ混練したものである。導電性微粒子19aの添加量は、バインダ100重量部に対して約1000重量部である。
【0030】
前記インクジェット式液滴吐出装置21は、多数本のインクジェット式ノズル23が、ゲート電極ライン17の各開口部17aと同じ縦横の間隔で配列されたピエゾ方式の液滴吐出装置である。各インクジェット式ノズル23には、前記液状の電子放出材料22の吐出口23aがそれぞれ形成されている。各吐出口23aは、共有する1本の流路により連通されている。流路内の所定位置には、振動することで流路内の容積を高速度で増減させる圧電素子24が設けられている。したがって、圧電素子24を振動させれば、流路内を流れる電子放出材料22の一部が、各吐出口23aから液滴となって噴出される。こうして噴出された電子放出材料22は、対応する開口部17aを通過し、カソード電極ライン16の外部露出した表面の領域に付着される。その後、所定時間が経過することでバインダの揮発成分が揮発し、カソード電極ライン16の表面に多数の冷陰極19がそれぞれマトリクス形状に配置される。冷陰極19の直径dは10μmである。
以上の工程により、図1および図2に示す前記電子放出源11が形成される。
【0031】
次に、第1の実施例に係るディスプレイ装置10の作動を説明する。
図1に示すように、図示しない制御手段からの指令に基づき、カソード電極ライン16とゲート電極ライン17との間に通電し、各冷陰極19に所定の電界を加える。これにより、局所的な電界集中および冷陰極19内でのホットエレクトロンの走行によって、冷陰極19中から真空中に多数の電子が放出される。放出された各電子は、カソード電極ライン16とアノード用基板20との間に印加された電圧により真空中で加速され、蛍光体13に照射される。照射後の各電子は、蛍光体13の一部分にそれぞれ衝突し、可視光を放出する。その結果、アノード用基板20には、その蛍光体13側の面に所定の画像が表示される。
【0032】
このように、冷陰極19として導電性微粒子19aを含有したものを採用したので、カソード電極ライン16とゲート電極ライン17との間の印加電圧がV程度(電界の強さ0.5V/μm程度)で、ディスプレイとしての必要な電流量を得ることができる。これにより、低電圧によるディスプレイ装置10の安定した駆動が可能となる。しかも、薄型で大画面のディスプレイ装置10が低コストで作製可能になる。
また、導電性微粒子19aの素材としてパラジウムを採用したので、銅、ニッケルなどの他の導電性微粒子19aの素材に比べて、酸化に対して安定でバインダの素材を選択し易く、寿命も長いという効果が得られる。
【0033】
次に、図4を参照して、この発明の第2の実施例に係るディスプレイ装置30を説明する。
図4に示すように、第2の実施例のディスプレイ装置30は、第1の実施例のディスプレイ装置10のようにゲート電極ライン17に多数の開口部17aを形成せず、ゲート電極ライン17により、冷陰極19を表面側から被覆した例である。これにより、電子放出の面内均一性が向上する。電子の飛び出し方向がそろい易い、真空度が悪化しても安定に動作するという効果が得られる。
その他の構成、作用および効果は、第1の実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0034】
【発明の効果】
請求項1の電子放出源、請求項3の電子放出源の製造方法および請求項5のディスプレイ装置によれば、冷陰極として、電子を放出する導電性微粒子を含有したものを採用したので、低電圧による安定した電子の放出が可能で、薄型で大画面のディスプレイを作製することができる。
【0035】
特に、請求項2の電子放出源、請求項4の電子放出源の製造方法および請求項5のディスプレイ装置によれば、導電性微粒子の素材としてパラジウムを採用したので、他の導電性微粒子の素材に比べて、酸化に対して安定であり、バインダの素材を選択し易く、寿命も短いという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例に係るディスプレイ装置の一部を構成する電子放出源の要部拡大断面図である。
【図2】この発明の第1の実施例に係るディスプレイ装置の要部拡大斜視図である。
【図3】この発明の第1の実施例に係る冷陰極の形成方法を説明する要部拡大断面図である。
【図4】この発明の第2の実施例に係るディスプレイ装置の一部を構成する電子放出源要部拡大断面図である。
【符号の説明】
10,30 ディスプレイ装置、
11 電子放出源、
13 蛍光体、
15 カソード用基板、
16 カソード電極ライン、
17 ゲート電極ライン、
17a 開口部、
18 絶縁層、
19 冷陰極、
19a 導電性微粒子、
20 アノード用基板、
21 インクジェット式液滴吐出装置。
Claims (6)
- カソード用基板と、
該カソード用基板に形成されたカソード電極ラインと、
互いに離間した多数の微細な開口部を有し、前記カソード電極ラインに絶縁層を介して形成されたゲート電極ラインと、
前記カソード電極ラインの各開口部内の領域に配設され、該カソード電極ラインとゲート電極ラインとの間で生じた電圧差によって電子をそれぞれ放出させる多数の冷陰極とを備えた電子放出源において、
各冷陰極が、電子を放出する導電性微粒子を含有した電子放出源。 - 前記導電性微粒子の素材が、パラジウムである請求項1に記載の電子放出源。
- カソード用基板にカソード電極ラインを形成する工程と、
該カソード電極ラインに形成されたカソード電極ラインに、絶縁層を介して、互いに離間した多数の微細な開口部を有しているゲート電極ラインを形成する工程と、
前記カソード電極ラインの各開口部内の領域に、前記カソード電極ラインとゲート電極ラインとの間で生じた電圧差によって電子をそれぞれ放出させる多数の冷陰極を形成する工程とを備えた電子放出源の製造方法において、
各冷陰極は、電子を放出する導電性微粒子を含む液状の電子放出材料をカソード電極ラインに噴射するインクジェット式液滴吐出法により形成される電子放出源の製造方法。 - 前記導電性微粒子の素材が、パラジウムである請求項3に記載の電子放出源の製造方法。
- カソード用基板と、
該カソード用基板に形成されたカソード電極ラインと、
互いに離間した多数の微細な開口部を有し、前記カソード電極ラインに絶縁層を介して形成されたゲート電極ラインと、
前記カソード電極ラインの各開口部内の領域に配設され、該カソード電極ラインとゲート電極ラインとの間で生じた電圧差によって電子をそれぞれ放出させる多数の冷陰極と、
前記カソード用基板から、そのカソード電極ライン側に向かって離間して配置されたアノード用基板と、
該アノード用基板のカソード電極ライン側の面に形成された蛍光体とを備えたディスプレイ装置において、
前記冷陰極が、前記電子を放出する導電性微粒子を含有したディスプレイ装置。 - 前記導電性微粒子の素材が、パラジウムである請求項5に記載のディスプレイ装置。
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