JP2004055347A - 電子放出素子、電子放出装置、表示装置、および電子放出素子の製造方法 - Google Patents
電子放出素子、電子放出装置、表示装置、および電子放出素子の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】この発明は、経時的な特性劣化を抑制しつつ使用寿命を延長でき、十分な量の電子を安定して放出できる電子放出素子を提供することを課題とする。
【解決手段】電子放出素子18は、リアプレート10の内面に形成された一対の素子電極31、32を有する。素子電極31、32は、一定のギャップを介して対向配置され、ギャップをつなぐように複数の独立した導電膜34が設けられる。各導電膜34の中間位置には、電子放出部36が形成される。
【選択図】 図5
【解決手段】電子放出素子18は、リアプレート10の内面に形成された一対の素子電極31、32を有する。素子電極31、32は、一定のギャップを介して対向配置され、ギャップをつなぐように複数の独立した導電膜34が設けられる。各導電膜34の中間位置には、電子放出部36が形成される。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一対の電極膜間に電位差を与えることにより電子を放出する電子放出素子、この電子放出素子を基板上に複数個整列配置した電子放出装置、この電子放出装置から放出される電子を蛍光体に衝突させて画像を表示する表示装置、および上記電子放出素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子として、例えば、絶縁性の基板上に形成された導電性薄膜に電流を流すことにより電子を放出させる現象を利用した表面伝導型電子放出素子が知られている。
【0003】
この種の電子放出素子は、例えば、絶縁性の基板上に、一定のギャップを介して対向した一対の電極パターンを形成し、ギャップを介して一対の電極パターンをつなぐように導電性の薄膜を設け、一対の電極パターン間に電位差を与えることによりギャップの略中間位置で導電性の薄膜に亀裂を生じさせることにより形成される。
【0004】
そして、この電子放出素子を動作させる際、一対の電極パターン間に電位差を与えることにより、導電性の薄膜に形成された亀裂、すなわち電子放出部から電子を放出させる。
【0005】
このような電子放出素子は、基板上に複数個並べて形成されて電子放出装置が構成され、この電子放出装置に蛍光体スクリーンが組み合わされて表示装置が構成される。
【0006】
表示装置の動作時には、外部から電子放出装置に対して画像データに基づく駆動信号が与えられ、複数の電子放出素子の電極対に選択的に電位差が与えられて電子が放出される。そして、各電子放出素子に一対一で対応して設けられた蛍光体スクリーンの各画素が選択的に励起発光されて画像が表示される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した表示装置で高精細且つ鮮明な画像を長時間にわたって安定して表示させるためには、各画素に一対一で対応して設けられた複数の電子放出素子から十分な量の電子を放出させた上で、電子放出素子の経時的な特性劣化を抑制しつつ使用寿命を均一化することが望ましい。
【0008】
しかし、上述した従来の表示装置では、各電子放出素子から放出される電子が各種粒子に衝突することにより発生されるイオン粒子が電子放出素子の導電性薄膜に衝突して導電性薄膜を破壊してしまう問題があった。このように、電子放出素子の導電性薄膜がイオン衝撃により破壊されると、当該電子放出素子が動作不能となり、対応する画素が永久に表示不能となってしまう。
【0009】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、経時的な特性劣化を抑制しつつ使用寿命を延長でき、十分な量の電子を安定して放出できる電子放出素子、およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、この発明の目的は、使用寿命を均一化できる複数の電子放出素子を備えた電子放出装置、およびこの電子放出装置を組み込んだ表示装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の電子放出素子は、一定のギャップを介して設けられた一対の電極膜と、上記ギャップを介して上記一対の電極膜をつなぐように互いに独立して設けられた複数の導電膜と、上記ギャップの略中間位置で上記各導電膜に形成され、上記一対の電極膜に与えられる電位差に応じた電子を放出する複数の電子放出部と、を備えている。
【0012】
また、本発明の電子放出装置は、上記電子放出素子を基板上に複数個並べて配置したものであって、外部から与えられる信号に応じて各電子放出素子の一対の電極膜に選択的に電位差を与えることにより上記複数の電子放出素子から選択的に電子を放出させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の表示装置は、上記電子放出装置と、この電子放出装置の複数の電子放出素子から選択的に放出される電子の衝突により画像を表示する画像表示部と、を備えている。
【0014】
更に、本発明の電子放出素子の製造方法によると、基板上に一対の電極膜を一定のギャップを介して対向するように形成する電極膜形成工程と、上記ギャップを介して上記一対の電極膜をつなぐ複数の独立した導電膜を形成する導電膜形成工程と、上記一対の電極膜間に電位差を与えることにより複数の導電膜に通電して、ギャップの略中間位置で各導電膜に複数の電子放出部を形成する電子放出部形成工程と、を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1には、この発明の表示装置として表面伝導型電子放出表示装置(以下、SEDと称する)の外観斜視図を示してある。
【0017】
SEDは、それぞれ矩形状の石英ガラスからなるリアプレート10およびフェースプレート12を有する。これらのプレート10、12は、約1.5〜3.0mmの間隔を置いて対向配置されている。そして、リアプレート10およびフェースプレート12は、ガラスからなる矩形枠状の側壁14を介して周縁部同志が接合され、偏平な矩形状の真空外囲器15を構成している。
【0018】
図2および図3に示すように、フェースプレート12の内面には蛍光体スクリーン16が形成されている。この蛍光体スクリーン16は、赤、青、緑の複数の蛍光体層16a、および蛍光体層間に位置した黒色着色層16bを並べて構成されている。これらの蛍光体層16aはストライプ状あるいはドット状に形成されている。また、蛍光体スクリーン16上には、アルミニウム等からなるメタルバック17が形成されている。さらに、フェースプレート12と蛍光体スクリーン16との間に、例えばITOからなる透明導電膜あるいはカラーフィルタ膜を設けてもよい。このように、フェースプレート12に複数の層を積層した構造が、本発明の画像表示部として機能する。
【0019】
リアプレート10(基板)の内面には、蛍光体層16aを励起発光させるための電子ビームを放出する多数の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素毎、すなわち蛍光体層16a毎に一対一で対応して設けられ、複数列および複数行に並べて配列されている。各電子放出素子18の詳細については後に詳述する。
【0020】
図4に示すように、リアプレート10上には、多数の電子放出素子18を接続する多数本の配線がマトリックス状に設けられている。このように、多数の電子放出素子18をマトリックス状に配線してリアプレート10上に配置した構造が、本発明の電子放出装置として機能する。電子放出素子18の配列については、種々のものを採用できるが、ここでは、図4を用いてその一例を説明する。
【0021】
電子放出装置は、リアプレート10の内面に、多数の電子放出素子18を整列配置して構成される。すなわち、図中X方向(上下方向)にn個、Y方向(左右方向)にm個の電子放出素子18が形成されている。
【0022】
各電子放出素子18の一方の電極は、それぞれ同じ行にある電子放出素子18同士で共通の配線により接続されている。これをY配線と呼ぶ。Y配線は、Y1からYmまでm本ある。また、各電子放出素子18の他方の電極は、それぞれ同じ列にある電子放出素子18同士で共通の配線により接続されている。これをX配線と呼ぶ。X配線は、X1からXnまでn本ある。
【0023】
X配線およびY配線は、各電子放出素子18の後述する一対の電極膜と同様な材料で、同様な成膜およびパターニング方法で形成される。また、全てのX配線とY配線との間には交差点があるが、全ての交差点は図示しない絶縁膜により、電気的に絶縁されているものとする。この絶縁膜として、例えば、真空蒸着法、印刷<BR>法、スパッタ法等を用いて形成されるSiO2等がある。
【0024】
例えば、Y配線には、Y方向に配列した電子放出素子18の行を選択するための信号電圧(走査信号)が印加され、X配線にはX方向に配列した電子放出素子18の電流を変調するための信号電圧(変調信号)が印加されるようになっている。従って、各電子放出素子18に印加される駆動電圧は、各電子放出素子18に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0025】
例えば、特定の電子放出素子18に着目して、Y配線にマイナスしきい値電圧Vf[V]を印加し、X配線に0[V]を印加した場合は、素子電極間にはしきい値電圧が印加されることになる。
【0026】
従って、例えば、配線Y1にマイナスのしきい値電圧Vf[V]を印加(走査信号を入力)し、配線X1に0[V]、X2〜Xnには0[V]以上の任意電圧(変調信号)を印加する事により、配線Y1と配線X1に配線された電子放出素子18では、素子電流は放出されず、その他の電子放出素子18では任意の素子電流が放出されることになる。
【0027】
この様に、上記構成の電子放出装置においては、単純なマトリクス配線を用いて、特定の電子放出素子18を選択的に独立して駆動することが可能である。
【0028】
また、上記のように構成されたフェースプレート12とリアプレート10の周縁部同士を接合する側壁14は、例えば、低融点ガラス、低融点金属等の封着材20により、リアプレート10の周縁部およびフェースプレート12の周縁部に封着され、フェースプレート12およびリアプレート10を接合している。
【0029】
さらに、SEDは、リアプレート10およびフェースプレート12の間に配設されたスペーサアッセンブリ22を備えている。このスペーサアッセンブリ22は、板状のグリッド24と、グリッドの両面に一体的に立設された複数の柱状のスペーサ30と、を備えて構成されている。
【0030】
詳細に述べると、グリッド24はフェースプレート12の内面に対向した第1面24aおよびリアプレート10の内面に対向した第2面24bを有し、これらのプレート10、12と平行に配置されている。そして、グリッド24には、エッチング等により多数のビーム通過孔26および複数のスペーサ開孔28が形成されている。ビーム通過孔26は、それぞれ電子放出素子18に対向して配列されているとともに、スペーサ開孔28は、それぞれビーム通過孔間に位置し所定のピッチで配列されている。
【0031】
グリッド24は、例えば鉄−ニッケル系の金属板により厚さ0.1〜0.25mmに形成されているとともに、その表面には、金属板を構成する元素からなる酸化膜、例えば、Fe3O4、NiFe3O4からなる酸化膜が形成されている。また、ビーム通過孔26は、0.15〜0.25mm×0.20〜0.40mmの矩形状に形成され、スペーサ開孔28は直径が約0.1〜0.2mmの略円形に形成されている。
【0032】
グリッド24の第1面24a上には、各スペーサ開孔28に重ねて第1スペーサ30aが一体的に立設され、その延出端は、メタルバック17および蛍光体スクリーン16の黒色着色層16bを介してフェースプレート12の内面に当接している。また、グリッド24の第2面24b上には、各スペーサ開孔28に重ねて第2スペーサ30bが一体的に立設され、その延出端は、リアプレート10の内面に当接している。そして、各スペーサ開孔28、第1および第2スペーサ30a、30bは互いに整列して位置し、第1および第2スペーサ30a、30bはこのスペーサ開孔28を介して互いに一体的に連結されている。
【0033】
第1および第2スペーサ30a、30bの各々は、グリッド24側からその延出端に向かって徐々に径が小さくなる先細のテーパ形状、すなわち、より詳細には略円錐台形状に形成されている。
【0034】
例えば、各第1スペーサ30aは、グリッド24側の端の径が約400μm、延出端側の径が約280μm、高さが約0.3〜0.5mmに形成され、アスペクト比(高さ/グリッド側端の径)は0.75〜1.25となっている。
【0035】
また、各第2スペーサ30bは、グリッド24側の端径が約400μm、延出端側の径が約150μm、高さが約1〜1.2mmに形成され、アスペクト比は、2.5〜3となっている。
【0036】
前述したように、グリッドに形成された各スペーサ開孔28の径は約0.1〜0.2mmであり、第1スペーサ30aのグリッド側端の径、及び第2スペーサ30bのグリッド側端の径よりも十分に小さく、設定されている。そして、第1スペーサ30aおよび第2スペーサ30bをスペーサ開孔28と同軸的に整列して一体的に設けることにより、第1および第2スペーサはスペーサ開孔28を通して互いに一体的に連結され、グリッド24と一体に形成されている。
【0037】
そして、上記のように構成されたスペーサアッセンブリ22のグリッド24は、図示しない電源から所定の電圧が印加され、クロストークを防止するとともに各ビーム通過孔26により対応する電子放出素子18から放出された電子ビームを所望の蛍光体層上に収束する。また、第1および第2スペーサ30a、30bは、フェースプレート12およびリアプレート10の内面に当接することにより、これらのプレートに作用する大気圧荷重を支持し、プレート間の間隔を所定値に維持している。
【0038】
さらに、上記のように製造されたスペーサアッセンブリ22を組み込んでSEDを製造する。この場合、予め、電子放出素子18が設けられているとともに側壁14が接合されたリアプレート10と、蛍光体スクリーン16およびメタルバック17の設けられたフェースプレート12とを用意しておく。そして、上記のように製造されたスペーサアッセンブリ22をリアプレート10上に位置決めした状態で、このリアプレート10およびフェースプレート12を図示しない真空チャンバ内に配置する。そして、真空チャンバ内を真空排気した状態で、側壁14を介してフェースプレート12をリアプレート10に接合する。これにより、スペーサアッセンブリ22を備えたSEDが製造される。
【0039】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る電子表出素子18について、図5を参照して説明する。図5には、1つの電子放出素子18をリアプレート10の内面側から見た平面図を示してある。
【0040】
この電子放出素子18は、リアプレート10の内面に、互いに離間した2つの素子電極31、32(電極膜)を形成し、素子電極31、32間のギャップをつなぐように複数の導電膜34を形成し、ギャップの略中間位置で各導電膜34に電子放出部36を形成して構成されている。
【0041】
リアプレート10の材料として、本実施の形態で採用した石英ガラスの他に、Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等によりSiO2を積層した積層体、アルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いることができる。
【0042】
また、素子電極31、32の材料としては、一般的な導体材料を用いることができ、例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属、或は合金印刷導体、半導体材料等から適宜選択される。本実施の形態では、Ptにより素子電極31、32を形成した。
【0043】
各素子電極31、32は、それぞれ1辺が55μmの正方形状に形成され、対向する端辺同士が20μmの均一なギャップを形成する位置に対向配置されている。
【0044】
導電膜34の材料としては、例えば、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pb等の金属、PdO、SnO2、In2O3、PbO、Sb2O3等の酸化物導電体、HfB2、ZrB2、LaB6、CeB6、YB4、GdB4等の硼化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WC等の炭化物、TiN、ZrN、HfN等の窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン等が挙げられる。
【0045】
本実施の形態では、Pdをスパッタリングにより形成して大気中で加熱して酸化させた後、フォトリソグラフィー或いはドライエッチングにより、幅4μm、長さ40μmのパターンを形成し、ギャップの長さ方向に沿って1μm間隔で並んだ11個の導電膜34を形成した。
【0046】
導電膜34には、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いる事が好ましい。その膜厚は、数Å〜数百nmの範囲とするのが好ましい。
【0047】
電子放出部36は、導電膜34の一部に形成された高抵抗の亀裂により構成され、導電膜34の膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手法等に依存したものとなる。
【0048】
電子放出部36の内部には、直径が数Åから数十nmの範囲の導電性微粒子が存在する場合もある。この導電性微粒子は、導電膜34を構成する材料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有するものとなる。また、電子放出部36及びその近傍の導電膜34には、炭素及び炭素化合物を有することもできる。
【0049】
次に、上記構造の電子放出素子18の製造方法について、その一例をあげて説明する。
【0050】
まず、リアプレート10を有機溶剤により十分に洗浄し、真空蒸着法により素子電極31、32の材料となるPtを成膜する。この後、フォトリソグラフィー技術により、上述した形状の素子電極31、32をリアプレート10上に形成する。
【0051】
次に、上記のように素子電極31、32を設けたリアプレート10上に、有機金属溶液を塗布して、有機金属膜を形成する。有機金属溶液には、導電膜34の材料(本実施の形態ではPd)を主元素とする有機化合物の溶液を用いることができる。そして、この有機金属膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング、レーザ加工等によりパターニングし、導電膜34を形成する。尚、有機金属溶液の塗布方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用いることができる。
【0052】
さらに、各導電膜34に電子放出部36を形成するためのフォーミング処理を行う。フォーミング処理は、通常、一対の素子電極31、32に電位差を与えて各導電膜34に通電することにより行う。
【0053】
つまり、素子電極31、32間に、電圧を印加する事により、導電膜34内に、ジュール熱が発生し、導電膜34に亀裂が生じ、電子放出部36が形成される。フォーミング処理時における電圧は、パルス波形が望ましい。フォーミング処理の終了は、例えば、0.1[V]程度の電圧印加により流れる電流を測定し、抵抗値を求めて、1[MΩ]以上の抵抗を示した時点とすることができる。
【0054】
本実施の形態では、素子電極31、32と導電膜34を形成した状態のリアプレート10を図示しない真空装置内に設置し、−4乗Pa台の真空中で素子電極31、32間に電圧を印加した。電圧波形は矩形波パルスとし、パルス幅を0.1[msec]、パルス間隔を16[msec]、波高値を10[V]として、60秒間電圧を印加した。この結果、素子電極31、32が対向する端辺と平行に、11個の導電膜34の略中間位置にそれぞれ細長い電子放出部36が形成された。
【0055】
上記のようにフォーミング処理を終えた電子放出素子18には活性化処理を施すのが好ましい。活性化処理とは、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、フォーミング処理と同様に、素子電極31、32間にパルス状の電圧を印加することで実施される。この活性化処理により、後述する素子電流Ifおよび放出電流Ieが著しく増加する。
【0056】
活性化処理にて有機物質のガスを含有する雰囲気は、油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空装置内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することができる他、真空中に適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。適当な有機物質としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、有機酸類等がある。
【0057】
本実施の形態では、真空装置中にメタンを−3乗Pa台で導入し、活性化処理を実施した。素子電極31、32に印加する電圧は、18[V]の矩形パルスで、パルス幅を1[msec]、パルス間隔を10[msec]とし、30分間電圧を印加した。
【0058】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If,放出電流Ieが、著しく変化するようになる。尚、堆積物の膜厚は、50[nm]以下の範囲とするのが好ましく、30[nm]以下の範囲とすることがより好ましい。
【0059】
最後に、上述した処理工程を経て得られた電子放出素子18には、安定化処理を実施することが好ましい。この安定化処理は、真空装置内の有機物質を排気する処理である。真空装置を排気する真空排気装置は、当該装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。
【0060】
真空装置内の有機成分の分圧は、上記炭素あるいは炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で10− 6Pa以下が好ましく、さらには10−8Pa以下が特に好ましい。さらに、真空装置内を排気するときには、真空装置全体を加熱して、真空装置内壁や、電子放出素子18に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。
【0061】
次に、上記のように製造された電子放出素子18の基本特性について、図6および図7を参照して説明する。図6には電子放出素子18の特性を評価するための特性評価装置の概念図を示してあり、図7には評価結果の一例をグラフにして示してある。
【0062】
図6に示すように、特性評価装置40は、評価対象となる電子放出素子18をセットする真空容器42を有する。真空容器42内は、有機成分が十分に排気された状態に保たれる。また、真空容器42内には、電子放出素子18の電子放出面に対向するアノード電極44が設けられている。アノード電極44は、電子放出素子18の上方に2[mm]離間した位置に設けられている。
【0063】
電子放出素子18の素子電極31、32間には、電源51により、パルス形状の電圧が印加され、素子電極31、32間を流れる電流If(以下、素子電流Ifと称する)が電流測定計52で測定される。また、アノード電極44には、電源53により、数100〜数10[kV]のアノード電圧が印加され、このとき電子放出素子18から放出されてアノード電極44を流れる電流Ie(以下、放出電流Ieと称する)が電流測定計54で測定される。
【0064】
図7には、この特性評価装置40で評価を行った電子放出素子18の素子特性を模式的に示した。この時のアノード電圧は一定とした。図7から明らかの様に、素子電流If、放出電流Ieと素子電圧Vfとは、Fowler−Nordheimの関係に従う、電界電子放出特性を示している。電界電子放出では、電子放出のしきい値電圧を有している。
【0065】
つまり、しきい値電圧以上の素子電圧Vfにより、放出電流Ieを任意にコントロールすることが可能である。逆に、しきい値電圧以下の素子電圧Vfでは、放出電流Ieを放出させない事も可能である。この特性を利用すると複数の電子放出素子18を配して構成した電子放出装置、および表示装置への応用が可能となる。
【0066】
本実施の形態の電子放出素子18を上記特性評価装置40にセットして特性を評価したところ、次のような結果が得られた。
【0067】
評価時の真空は1×10− 7[Pa]である。アノード電極44は、Taにより形成し、電子放出素子18との間隔を2mmとし、アノード電圧を5[kV]とした。この状態で、当該電子放出素子18の素子電極31、32間に素子電圧を印加し、その時に流れる素子電流If及び放出電流Ieを測定した。この結果、素子電圧8[V]程度から急激に素子電流If、放出電流Ieが増加し、素子電圧17[V]では素子電流Ifが0.85[mA]、放出電流Ieが4.7[μA]となった。
【0068】
これに対し、多数の導電膜34を持たない点のみが本実施の形態の電子放出素子18と異なる従来型の素子を用意し、本実施の形態の電子放出素子18とその寿命特性を比較評価した。尚、従来型の電子放出素子の導電膜は、直径5[μm]の円形に形成した。
【0069】
比較評価では、本実施の形態の電子放出素子18と従来型の電子放出素子とをそれぞれ100個ずつ同一基板上に作成し、素子電圧を17[V]、パルス幅を1[msec]、パルス間隔を16[msec]、アノード電圧を5[kV]として、50時間の評価を実施した。
【0070】
そして、50時間評価後に、各電子放出素子の素子電流Ifおよび放出電流Ieを検出し、各電流値を初期値と比較した保持率を調べた。その結果を図8に示す。これよると、素子電流Ifの保持率および放出電流Ieの保持率ともに、本実施の形態の電子放出素子18の方が従来のものと比較して、保持率の高い試験体の個数が多いことがわかる。つまり、本実施の形態の電子放出素子18は冗長設計により、従来の素子に比較して、安定した寿命特性を有している事が確認された。
【0071】
以上のように、本実施の形態によると、一対の素子電極31、32をつなぐように複数に分割した導電膜34を設けたため、従来のように1枚の導電膜を設けた素子と比較して、経時的な特性劣化を抑制でき、使用寿命を延長できる。つまり、イオン衝撃によって導電膜34が破壊されるような場合であっても、本実施の形態の電子放出素子18は複数の導電膜34を有するため、イオンが衝突した導電膜34だけが破壊されることになり、他の導電膜34に影響が及ぼされることがない。これに対し、1枚の導電膜しか持たない従来の素子では、イオン衝撃によって唯一の導電膜が破壊されることとなり、この時点で素子の動作が不能となる。
【0072】
また、上述したように複数の導電膜34を有する電子放出素子18を備えた電子放出装置、および表示装置においては、全ての電子放出素子18の使用寿命を略均一にでき、長期間にわたって画面に欠点等の不具合を生じることを防止でき、良質な画像を表示できる。
【0073】
次に、この発明の第2の実施の形態に係る電子放出素子60について、図9を参照して説明する。尚、この電子放出素子60は、上述した電子放出素子18と形状が異なるが、製造工程は同じである。
【0074】
電子放出素子60は、互いに対向する部位が櫛形に形成された一対の素子電極61、62を有する。言い換えると、素子電極61(62)は、他方の素子電極62(61)に向かって互いに略平行に延びた複数本の矩形部分61a(62a)を有する。矩形部分61a(62a)は、50[μm]の長さ、および3.5[μm]の幅をそれぞれ有し、互いに入れ子状に配置され、隣接する矩形部分62a(61a)との間のギャップが3[μm]に設定されている。
【0075】
つまり、このように電極の端辺を折り曲げた櫛形形状にすることにより、一対の素子電極61、62間に形成されるギャップの長さを、上述した第1の実施の形態の電子放出素子18のギャップと比較して飛躍的に長くすることができる。言い換えると、素子電極の対向する端辺を折り曲げることにより、ギャップの長さを少なくとも電極の幅より長くできる。
【0076】
そして、このようにして長くされたギャップをつなぐように、多数の導電膜64が互いに離間して独立して設けられる。各導電膜64は、矩形部分に沿った長さが5[μm]に形成され、それと直交する方向の長さが4[μm]に形成されている。
【0077】
また、各導電膜64には、ギャップの略中間位置で、電子放出部66が形成されている。電子放出部66は、一対の素子電極61、62間に電位差を与えることにより形成される。
【0078】
以上のように、本実施の形態によると、延長されたギャップに多くの導電膜64を形成できるため、各導電膜64に形成される電子放出部66の全長、すなわち電子放出部全体の面積も大きくできる。具体的には、本実施の形態では、第1の実施の形態の電子放出部36の約5.8倍の面積の電子放出部を確保できた。
【0079】
また、これにより、所望する素子電流If、放出電流Ieを得るための素子電圧を低くできた。具体的には、第1の実施の形態の素子電圧より2.3[V]低くできた。つまり、電子放出部の単位長さ当りの電流値を83%軽減できた。
【0080】
この電子放出素子60を基板上に10個形成して、評価装置を用いて第1の実施の形態と同じ条件で駆動したところ、50時間経っても素子電流If、放出電流Ieともに保持率が95%以上であった。つまり、本実施の形態では、素子電圧を抑えた上で十分な量の電子を安定して放出できるようになった。
【0081】
次に、この発明の第3の実施の形態に係る電子放出素子70について、図10を参照して説明する。
【0082】
電子放出素子70は、互いに対向する部位が楔形に形成された一対の素子電極71、72を有する。言い換えると、素子電極71(72)は、他方の素子電極72(71)に向かって延びた二等辺三角形状の楔部分71a(72a)を有する。楔部分71a(72a)は、底辺が10[μm]、高さが45[μm]に形成され、各素子電極71、72に4つずつ設けられている。対向する素子電極71、72は、その入れ子状に配置された隣接する楔部分71a、72a間のギャップが2[μm]になるように位置決めされて形成されている。
【0083】
本実施の形態においても、一対の素子電極71、72間に形成されるギャップの長さを長くすることができる。そして、このようにして長くされたギャップをつなぐように、多数の導電膜74が互いに離間して独立して設けられる。各導電膜74は、長さが50[μm]、幅が4.5[μm]に形成されており、複数の楔部分71a、72aをつなぐように設けられている。
【0084】
また、各導電膜74には、複数箇所で素子電極71、72をつなぐそれぞれの位置で、ギャップの略中間位置に電子放出部76が形成されている。言い換えると、各導電膜74は、複数の電子放出部76を有する。
【0085】
以上のように、本実施の形態の電子放出素子70も、上述した第1および第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。具体的には、本実施の形態では、第1の実施の形態の電子放出部36の約4.5倍の面積の電子放出部を確保できた。また、所望する素子電流If、放出電流Ieを得るための素子電圧を低くできた。具体的には、第1の実施の形態の素子電圧より2.1[V]低くできた。言い換えると、電子放出部の単位長さ当りの電流値を78%軽減できた。
【0086】
また、この電子放出素子70を基板上に10個形成して、評価装置を用いて第1の実施の形態と同じ条件で駆動したところ、50時間経っても素子電流If、放出電流Ieともに保持率が95%以上であった。つまり、本実施の形態でも、素子電圧を抑えた上で十分な量の電子を安定して放出できるようになった。
【0087】
尚、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、上述した実施の形態では、素子電極間のギャップを長くするように電極が対向する端辺を櫛形或いは楔型に形成した場合について説明したが、これに限らず、素子電極の形状は任意に設定できる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の電子放出素子は、上記のような構成および作用を有しているので、経時的な特性劣化を抑制しつつ使用寿命を延長でき、十分な量の電子を安定して放出できる。
【0089】
また、上記電子放出素子を複数個備えたこの発明の電子放出装置、および表示装置は、電子放出装置の使用寿命を均一化できることから、長期間にわたって安定したパフォーマンスを発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る表示装置を示す外観斜視図。
【図2】図1の表示装置の断面図。
【図3】図2を部分的に拡大して示す図。
【図4】図1の表示装置に組み込まれた電子放出装置を示す概念図。
【図5】図4の装置に組み込まれた第1の実施の形態に係る電子放出素子を示す平面図。
【図6】図5の電子放出素子の特性を評価するための評価装置を示す概念図。
【図7】図6の評価装置による評価の一例を示すグラフ。
【図8】図5の電子放出素子の特性を評価した結果を従来と比較して示す図。
【図9】この発明の第2の実施の形態に係る電子放出素子を示す平面図。
【図10】この発明の第3の実施の形態に係る電子放出素子を示す平面図。
【符号の説明】
10…リアプレート、
12…フェースプレート、
14…側壁、
16…蛍光体スクリーン、
18…電子放出素子、
22…スペーサアッセンブリ、
31、32…素子電極、
34…導電膜、
36…電子放出部、
40…特性評価装置、
60、70…電子放出素子。
【発明の属する技術分野】
この発明は、一対の電極膜間に電位差を与えることにより電子を放出する電子放出素子、この電子放出素子を基板上に複数個整列配置した電子放出装置、この電子放出装置から放出される電子を蛍光体に衝突させて画像を表示する表示装置、および上記電子放出素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子として、例えば、絶縁性の基板上に形成された導電性薄膜に電流を流すことにより電子を放出させる現象を利用した表面伝導型電子放出素子が知られている。
【0003】
この種の電子放出素子は、例えば、絶縁性の基板上に、一定のギャップを介して対向した一対の電極パターンを形成し、ギャップを介して一対の電極パターンをつなぐように導電性の薄膜を設け、一対の電極パターン間に電位差を与えることによりギャップの略中間位置で導電性の薄膜に亀裂を生じさせることにより形成される。
【0004】
そして、この電子放出素子を動作させる際、一対の電極パターン間に電位差を与えることにより、導電性の薄膜に形成された亀裂、すなわち電子放出部から電子を放出させる。
【0005】
このような電子放出素子は、基板上に複数個並べて形成されて電子放出装置が構成され、この電子放出装置に蛍光体スクリーンが組み合わされて表示装置が構成される。
【0006】
表示装置の動作時には、外部から電子放出装置に対して画像データに基づく駆動信号が与えられ、複数の電子放出素子の電極対に選択的に電位差が与えられて電子が放出される。そして、各電子放出素子に一対一で対応して設けられた蛍光体スクリーンの各画素が選択的に励起発光されて画像が表示される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した表示装置で高精細且つ鮮明な画像を長時間にわたって安定して表示させるためには、各画素に一対一で対応して設けられた複数の電子放出素子から十分な量の電子を放出させた上で、電子放出素子の経時的な特性劣化を抑制しつつ使用寿命を均一化することが望ましい。
【0008】
しかし、上述した従来の表示装置では、各電子放出素子から放出される電子が各種粒子に衝突することにより発生されるイオン粒子が電子放出素子の導電性薄膜に衝突して導電性薄膜を破壊してしまう問題があった。このように、電子放出素子の導電性薄膜がイオン衝撃により破壊されると、当該電子放出素子が動作不能となり、対応する画素が永久に表示不能となってしまう。
【0009】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、経時的な特性劣化を抑制しつつ使用寿命を延長でき、十分な量の電子を安定して放出できる電子放出素子、およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、この発明の目的は、使用寿命を均一化できる複数の電子放出素子を備えた電子放出装置、およびこの電子放出装置を組み込んだ表示装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の電子放出素子は、一定のギャップを介して設けられた一対の電極膜と、上記ギャップを介して上記一対の電極膜をつなぐように互いに独立して設けられた複数の導電膜と、上記ギャップの略中間位置で上記各導電膜に形成され、上記一対の電極膜に与えられる電位差に応じた電子を放出する複数の電子放出部と、を備えている。
【0012】
また、本発明の電子放出装置は、上記電子放出素子を基板上に複数個並べて配置したものであって、外部から与えられる信号に応じて各電子放出素子の一対の電極膜に選択的に電位差を与えることにより上記複数の電子放出素子から選択的に電子を放出させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の表示装置は、上記電子放出装置と、この電子放出装置の複数の電子放出素子から選択的に放出される電子の衝突により画像を表示する画像表示部と、を備えている。
【0014】
更に、本発明の電子放出素子の製造方法によると、基板上に一対の電極膜を一定のギャップを介して対向するように形成する電極膜形成工程と、上記ギャップを介して上記一対の電極膜をつなぐ複数の独立した導電膜を形成する導電膜形成工程と、上記一対の電極膜間に電位差を与えることにより複数の導電膜に通電して、ギャップの略中間位置で各導電膜に複数の電子放出部を形成する電子放出部形成工程と、を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1には、この発明の表示装置として表面伝導型電子放出表示装置(以下、SEDと称する)の外観斜視図を示してある。
【0017】
SEDは、それぞれ矩形状の石英ガラスからなるリアプレート10およびフェースプレート12を有する。これらのプレート10、12は、約1.5〜3.0mmの間隔を置いて対向配置されている。そして、リアプレート10およびフェースプレート12は、ガラスからなる矩形枠状の側壁14を介して周縁部同志が接合され、偏平な矩形状の真空外囲器15を構成している。
【0018】
図2および図3に示すように、フェースプレート12の内面には蛍光体スクリーン16が形成されている。この蛍光体スクリーン16は、赤、青、緑の複数の蛍光体層16a、および蛍光体層間に位置した黒色着色層16bを並べて構成されている。これらの蛍光体層16aはストライプ状あるいはドット状に形成されている。また、蛍光体スクリーン16上には、アルミニウム等からなるメタルバック17が形成されている。さらに、フェースプレート12と蛍光体スクリーン16との間に、例えばITOからなる透明導電膜あるいはカラーフィルタ膜を設けてもよい。このように、フェースプレート12に複数の層を積層した構造が、本発明の画像表示部として機能する。
【0019】
リアプレート10(基板)の内面には、蛍光体層16aを励起発光させるための電子ビームを放出する多数の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素毎、すなわち蛍光体層16a毎に一対一で対応して設けられ、複数列および複数行に並べて配列されている。各電子放出素子18の詳細については後に詳述する。
【0020】
図4に示すように、リアプレート10上には、多数の電子放出素子18を接続する多数本の配線がマトリックス状に設けられている。このように、多数の電子放出素子18をマトリックス状に配線してリアプレート10上に配置した構造が、本発明の電子放出装置として機能する。電子放出素子18の配列については、種々のものを採用できるが、ここでは、図4を用いてその一例を説明する。
【0021】
電子放出装置は、リアプレート10の内面に、多数の電子放出素子18を整列配置して構成される。すなわち、図中X方向(上下方向)にn個、Y方向(左右方向)にm個の電子放出素子18が形成されている。
【0022】
各電子放出素子18の一方の電極は、それぞれ同じ行にある電子放出素子18同士で共通の配線により接続されている。これをY配線と呼ぶ。Y配線は、Y1からYmまでm本ある。また、各電子放出素子18の他方の電極は、それぞれ同じ列にある電子放出素子18同士で共通の配線により接続されている。これをX配線と呼ぶ。X配線は、X1からXnまでn本ある。
【0023】
X配線およびY配線は、各電子放出素子18の後述する一対の電極膜と同様な材料で、同様な成膜およびパターニング方法で形成される。また、全てのX配線とY配線との間には交差点があるが、全ての交差点は図示しない絶縁膜により、電気的に絶縁されているものとする。この絶縁膜として、例えば、真空蒸着法、印刷<BR>法、スパッタ法等を用いて形成されるSiO2等がある。
【0024】
例えば、Y配線には、Y方向に配列した電子放出素子18の行を選択するための信号電圧(走査信号)が印加され、X配線にはX方向に配列した電子放出素子18の電流を変調するための信号電圧(変調信号)が印加されるようになっている。従って、各電子放出素子18に印加される駆動電圧は、各電子放出素子18に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0025】
例えば、特定の電子放出素子18に着目して、Y配線にマイナスしきい値電圧Vf[V]を印加し、X配線に0[V]を印加した場合は、素子電極間にはしきい値電圧が印加されることになる。
【0026】
従って、例えば、配線Y1にマイナスのしきい値電圧Vf[V]を印加(走査信号を入力)し、配線X1に0[V]、X2〜Xnには0[V]以上の任意電圧(変調信号)を印加する事により、配線Y1と配線X1に配線された電子放出素子18では、素子電流は放出されず、その他の電子放出素子18では任意の素子電流が放出されることになる。
【0027】
この様に、上記構成の電子放出装置においては、単純なマトリクス配線を用いて、特定の電子放出素子18を選択的に独立して駆動することが可能である。
【0028】
また、上記のように構成されたフェースプレート12とリアプレート10の周縁部同士を接合する側壁14は、例えば、低融点ガラス、低融点金属等の封着材20により、リアプレート10の周縁部およびフェースプレート12の周縁部に封着され、フェースプレート12およびリアプレート10を接合している。
【0029】
さらに、SEDは、リアプレート10およびフェースプレート12の間に配設されたスペーサアッセンブリ22を備えている。このスペーサアッセンブリ22は、板状のグリッド24と、グリッドの両面に一体的に立設された複数の柱状のスペーサ30と、を備えて構成されている。
【0030】
詳細に述べると、グリッド24はフェースプレート12の内面に対向した第1面24aおよびリアプレート10の内面に対向した第2面24bを有し、これらのプレート10、12と平行に配置されている。そして、グリッド24には、エッチング等により多数のビーム通過孔26および複数のスペーサ開孔28が形成されている。ビーム通過孔26は、それぞれ電子放出素子18に対向して配列されているとともに、スペーサ開孔28は、それぞれビーム通過孔間に位置し所定のピッチで配列されている。
【0031】
グリッド24は、例えば鉄−ニッケル系の金属板により厚さ0.1〜0.25mmに形成されているとともに、その表面には、金属板を構成する元素からなる酸化膜、例えば、Fe3O4、NiFe3O4からなる酸化膜が形成されている。また、ビーム通過孔26は、0.15〜0.25mm×0.20〜0.40mmの矩形状に形成され、スペーサ開孔28は直径が約0.1〜0.2mmの略円形に形成されている。
【0032】
グリッド24の第1面24a上には、各スペーサ開孔28に重ねて第1スペーサ30aが一体的に立設され、その延出端は、メタルバック17および蛍光体スクリーン16の黒色着色層16bを介してフェースプレート12の内面に当接している。また、グリッド24の第2面24b上には、各スペーサ開孔28に重ねて第2スペーサ30bが一体的に立設され、その延出端は、リアプレート10の内面に当接している。そして、各スペーサ開孔28、第1および第2スペーサ30a、30bは互いに整列して位置し、第1および第2スペーサ30a、30bはこのスペーサ開孔28を介して互いに一体的に連結されている。
【0033】
第1および第2スペーサ30a、30bの各々は、グリッド24側からその延出端に向かって徐々に径が小さくなる先細のテーパ形状、すなわち、より詳細には略円錐台形状に形成されている。
【0034】
例えば、各第1スペーサ30aは、グリッド24側の端の径が約400μm、延出端側の径が約280μm、高さが約0.3〜0.5mmに形成され、アスペクト比(高さ/グリッド側端の径)は0.75〜1.25となっている。
【0035】
また、各第2スペーサ30bは、グリッド24側の端径が約400μm、延出端側の径が約150μm、高さが約1〜1.2mmに形成され、アスペクト比は、2.5〜3となっている。
【0036】
前述したように、グリッドに形成された各スペーサ開孔28の径は約0.1〜0.2mmであり、第1スペーサ30aのグリッド側端の径、及び第2スペーサ30bのグリッド側端の径よりも十分に小さく、設定されている。そして、第1スペーサ30aおよび第2スペーサ30bをスペーサ開孔28と同軸的に整列して一体的に設けることにより、第1および第2スペーサはスペーサ開孔28を通して互いに一体的に連結され、グリッド24と一体に形成されている。
【0037】
そして、上記のように構成されたスペーサアッセンブリ22のグリッド24は、図示しない電源から所定の電圧が印加され、クロストークを防止するとともに各ビーム通過孔26により対応する電子放出素子18から放出された電子ビームを所望の蛍光体層上に収束する。また、第1および第2スペーサ30a、30bは、フェースプレート12およびリアプレート10の内面に当接することにより、これらのプレートに作用する大気圧荷重を支持し、プレート間の間隔を所定値に維持している。
【0038】
さらに、上記のように製造されたスペーサアッセンブリ22を組み込んでSEDを製造する。この場合、予め、電子放出素子18が設けられているとともに側壁14が接合されたリアプレート10と、蛍光体スクリーン16およびメタルバック17の設けられたフェースプレート12とを用意しておく。そして、上記のように製造されたスペーサアッセンブリ22をリアプレート10上に位置決めした状態で、このリアプレート10およびフェースプレート12を図示しない真空チャンバ内に配置する。そして、真空チャンバ内を真空排気した状態で、側壁14を介してフェースプレート12をリアプレート10に接合する。これにより、スペーサアッセンブリ22を備えたSEDが製造される。
【0039】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る電子表出素子18について、図5を参照して説明する。図5には、1つの電子放出素子18をリアプレート10の内面側から見た平面図を示してある。
【0040】
この電子放出素子18は、リアプレート10の内面に、互いに離間した2つの素子電極31、32(電極膜)を形成し、素子電極31、32間のギャップをつなぐように複数の導電膜34を形成し、ギャップの略中間位置で各導電膜34に電子放出部36を形成して構成されている。
【0041】
リアプレート10の材料として、本実施の形態で採用した石英ガラスの他に、Na等の不純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、青板ガラスにスパッタ法等によりSiO2を積層した積層体、アルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いることができる。
【0042】
また、素子電極31、32の材料としては、一般的な導体材料を用いることができ、例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属、或は合金印刷導体、半導体材料等から適宜選択される。本実施の形態では、Ptにより素子電極31、32を形成した。
【0043】
各素子電極31、32は、それぞれ1辺が55μmの正方形状に形成され、対向する端辺同士が20μmの均一なギャップを形成する位置に対向配置されている。
【0044】
導電膜34の材料としては、例えば、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pb等の金属、PdO、SnO2、In2O3、PbO、Sb2O3等の酸化物導電体、HfB2、ZrB2、LaB6、CeB6、YB4、GdB4等の硼化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WC等の炭化物、TiN、ZrN、HfN等の窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン等が挙げられる。
【0045】
本実施の形態では、Pdをスパッタリングにより形成して大気中で加熱して酸化させた後、フォトリソグラフィー或いはドライエッチングにより、幅4μm、長さ40μmのパターンを形成し、ギャップの長さ方向に沿って1μm間隔で並んだ11個の導電膜34を形成した。
【0046】
導電膜34には、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いる事が好ましい。その膜厚は、数Å〜数百nmの範囲とするのが好ましい。
【0047】
電子放出部36は、導電膜34の一部に形成された高抵抗の亀裂により構成され、導電膜34の膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手法等に依存したものとなる。
【0048】
電子放出部36の内部には、直径が数Åから数十nmの範囲の導電性微粒子が存在する場合もある。この導電性微粒子は、導電膜34を構成する材料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有するものとなる。また、電子放出部36及びその近傍の導電膜34には、炭素及び炭素化合物を有することもできる。
【0049】
次に、上記構造の電子放出素子18の製造方法について、その一例をあげて説明する。
【0050】
まず、リアプレート10を有機溶剤により十分に洗浄し、真空蒸着法により素子電極31、32の材料となるPtを成膜する。この後、フォトリソグラフィー技術により、上述した形状の素子電極31、32をリアプレート10上に形成する。
【0051】
次に、上記のように素子電極31、32を設けたリアプレート10上に、有機金属溶液を塗布して、有機金属膜を形成する。有機金属溶液には、導電膜34の材料(本実施の形態ではPd)を主元素とする有機化合物の溶液を用いることができる。そして、この有機金属膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング、レーザ加工等によりパターニングし、導電膜34を形成する。尚、有機金属溶液の塗布方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用いることができる。
【0052】
さらに、各導電膜34に電子放出部36を形成するためのフォーミング処理を行う。フォーミング処理は、通常、一対の素子電極31、32に電位差を与えて各導電膜34に通電することにより行う。
【0053】
つまり、素子電極31、32間に、電圧を印加する事により、導電膜34内に、ジュール熱が発生し、導電膜34に亀裂が生じ、電子放出部36が形成される。フォーミング処理時における電圧は、パルス波形が望ましい。フォーミング処理の終了は、例えば、0.1[V]程度の電圧印加により流れる電流を測定し、抵抗値を求めて、1[MΩ]以上の抵抗を示した時点とすることができる。
【0054】
本実施の形態では、素子電極31、32と導電膜34を形成した状態のリアプレート10を図示しない真空装置内に設置し、−4乗Pa台の真空中で素子電極31、32間に電圧を印加した。電圧波形は矩形波パルスとし、パルス幅を0.1[msec]、パルス間隔を16[msec]、波高値を10[V]として、60秒間電圧を印加した。この結果、素子電極31、32が対向する端辺と平行に、11個の導電膜34の略中間位置にそれぞれ細長い電子放出部36が形成された。
【0055】
上記のようにフォーミング処理を終えた電子放出素子18には活性化処理を施すのが好ましい。活性化処理とは、例えば、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、フォーミング処理と同様に、素子電極31、32間にパルス状の電圧を印加することで実施される。この活性化処理により、後述する素子電流Ifおよび放出電流Ieが著しく増加する。
【0056】
活性化処理にて有機物質のガスを含有する雰囲気は、油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空装置内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成することができる他、真空中に適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。適当な有機物質としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、有機酸類等がある。
【0057】
本実施の形態では、真空装置中にメタンを−3乗Pa台で導入し、活性化処理を実施した。素子電極31、32に印加する電圧は、18[V]の矩形パルスで、パルス幅を1[msec]、パルス間隔を10[msec]とし、30分間電圧を印加した。
【0058】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If,放出電流Ieが、著しく変化するようになる。尚、堆積物の膜厚は、50[nm]以下の範囲とするのが好ましく、30[nm]以下の範囲とすることがより好ましい。
【0059】
最後に、上述した処理工程を経て得られた電子放出素子18には、安定化処理を実施することが好ましい。この安定化処理は、真空装置内の有機物質を排気する処理である。真空装置を排気する真空排気装置は、当該装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。
【0060】
真空装置内の有機成分の分圧は、上記炭素あるいは炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で10− 6Pa以下が好ましく、さらには10−8Pa以下が特に好ましい。さらに、真空装置内を排気するときには、真空装置全体を加熱して、真空装置内壁や、電子放出素子18に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。
【0061】
次に、上記のように製造された電子放出素子18の基本特性について、図6および図7を参照して説明する。図6には電子放出素子18の特性を評価するための特性評価装置の概念図を示してあり、図7には評価結果の一例をグラフにして示してある。
【0062】
図6に示すように、特性評価装置40は、評価対象となる電子放出素子18をセットする真空容器42を有する。真空容器42内は、有機成分が十分に排気された状態に保たれる。また、真空容器42内には、電子放出素子18の電子放出面に対向するアノード電極44が設けられている。アノード電極44は、電子放出素子18の上方に2[mm]離間した位置に設けられている。
【0063】
電子放出素子18の素子電極31、32間には、電源51により、パルス形状の電圧が印加され、素子電極31、32間を流れる電流If(以下、素子電流Ifと称する)が電流測定計52で測定される。また、アノード電極44には、電源53により、数100〜数10[kV]のアノード電圧が印加され、このとき電子放出素子18から放出されてアノード電極44を流れる電流Ie(以下、放出電流Ieと称する)が電流測定計54で測定される。
【0064】
図7には、この特性評価装置40で評価を行った電子放出素子18の素子特性を模式的に示した。この時のアノード電圧は一定とした。図7から明らかの様に、素子電流If、放出電流Ieと素子電圧Vfとは、Fowler−Nordheimの関係に従う、電界電子放出特性を示している。電界電子放出では、電子放出のしきい値電圧を有している。
【0065】
つまり、しきい値電圧以上の素子電圧Vfにより、放出電流Ieを任意にコントロールすることが可能である。逆に、しきい値電圧以下の素子電圧Vfでは、放出電流Ieを放出させない事も可能である。この特性を利用すると複数の電子放出素子18を配して構成した電子放出装置、および表示装置への応用が可能となる。
【0066】
本実施の形態の電子放出素子18を上記特性評価装置40にセットして特性を評価したところ、次のような結果が得られた。
【0067】
評価時の真空は1×10− 7[Pa]である。アノード電極44は、Taにより形成し、電子放出素子18との間隔を2mmとし、アノード電圧を5[kV]とした。この状態で、当該電子放出素子18の素子電極31、32間に素子電圧を印加し、その時に流れる素子電流If及び放出電流Ieを測定した。この結果、素子電圧8[V]程度から急激に素子電流If、放出電流Ieが増加し、素子電圧17[V]では素子電流Ifが0.85[mA]、放出電流Ieが4.7[μA]となった。
【0068】
これに対し、多数の導電膜34を持たない点のみが本実施の形態の電子放出素子18と異なる従来型の素子を用意し、本実施の形態の電子放出素子18とその寿命特性を比較評価した。尚、従来型の電子放出素子の導電膜は、直径5[μm]の円形に形成した。
【0069】
比較評価では、本実施の形態の電子放出素子18と従来型の電子放出素子とをそれぞれ100個ずつ同一基板上に作成し、素子電圧を17[V]、パルス幅を1[msec]、パルス間隔を16[msec]、アノード電圧を5[kV]として、50時間の評価を実施した。
【0070】
そして、50時間評価後に、各電子放出素子の素子電流Ifおよび放出電流Ieを検出し、各電流値を初期値と比較した保持率を調べた。その結果を図8に示す。これよると、素子電流Ifの保持率および放出電流Ieの保持率ともに、本実施の形態の電子放出素子18の方が従来のものと比較して、保持率の高い試験体の個数が多いことがわかる。つまり、本実施の形態の電子放出素子18は冗長設計により、従来の素子に比較して、安定した寿命特性を有している事が確認された。
【0071】
以上のように、本実施の形態によると、一対の素子電極31、32をつなぐように複数に分割した導電膜34を設けたため、従来のように1枚の導電膜を設けた素子と比較して、経時的な特性劣化を抑制でき、使用寿命を延長できる。つまり、イオン衝撃によって導電膜34が破壊されるような場合であっても、本実施の形態の電子放出素子18は複数の導電膜34を有するため、イオンが衝突した導電膜34だけが破壊されることになり、他の導電膜34に影響が及ぼされることがない。これに対し、1枚の導電膜しか持たない従来の素子では、イオン衝撃によって唯一の導電膜が破壊されることとなり、この時点で素子の動作が不能となる。
【0072】
また、上述したように複数の導電膜34を有する電子放出素子18を備えた電子放出装置、および表示装置においては、全ての電子放出素子18の使用寿命を略均一にでき、長期間にわたって画面に欠点等の不具合を生じることを防止でき、良質な画像を表示できる。
【0073】
次に、この発明の第2の実施の形態に係る電子放出素子60について、図9を参照して説明する。尚、この電子放出素子60は、上述した電子放出素子18と形状が異なるが、製造工程は同じである。
【0074】
電子放出素子60は、互いに対向する部位が櫛形に形成された一対の素子電極61、62を有する。言い換えると、素子電極61(62)は、他方の素子電極62(61)に向かって互いに略平行に延びた複数本の矩形部分61a(62a)を有する。矩形部分61a(62a)は、50[μm]の長さ、および3.5[μm]の幅をそれぞれ有し、互いに入れ子状に配置され、隣接する矩形部分62a(61a)との間のギャップが3[μm]に設定されている。
【0075】
つまり、このように電極の端辺を折り曲げた櫛形形状にすることにより、一対の素子電極61、62間に形成されるギャップの長さを、上述した第1の実施の形態の電子放出素子18のギャップと比較して飛躍的に長くすることができる。言い換えると、素子電極の対向する端辺を折り曲げることにより、ギャップの長さを少なくとも電極の幅より長くできる。
【0076】
そして、このようにして長くされたギャップをつなぐように、多数の導電膜64が互いに離間して独立して設けられる。各導電膜64は、矩形部分に沿った長さが5[μm]に形成され、それと直交する方向の長さが4[μm]に形成されている。
【0077】
また、各導電膜64には、ギャップの略中間位置で、電子放出部66が形成されている。電子放出部66は、一対の素子電極61、62間に電位差を与えることにより形成される。
【0078】
以上のように、本実施の形態によると、延長されたギャップに多くの導電膜64を形成できるため、各導電膜64に形成される電子放出部66の全長、すなわち電子放出部全体の面積も大きくできる。具体的には、本実施の形態では、第1の実施の形態の電子放出部36の約5.8倍の面積の電子放出部を確保できた。
【0079】
また、これにより、所望する素子電流If、放出電流Ieを得るための素子電圧を低くできた。具体的には、第1の実施の形態の素子電圧より2.3[V]低くできた。つまり、電子放出部の単位長さ当りの電流値を83%軽減できた。
【0080】
この電子放出素子60を基板上に10個形成して、評価装置を用いて第1の実施の形態と同じ条件で駆動したところ、50時間経っても素子電流If、放出電流Ieともに保持率が95%以上であった。つまり、本実施の形態では、素子電圧を抑えた上で十分な量の電子を安定して放出できるようになった。
【0081】
次に、この発明の第3の実施の形態に係る電子放出素子70について、図10を参照して説明する。
【0082】
電子放出素子70は、互いに対向する部位が楔形に形成された一対の素子電極71、72を有する。言い換えると、素子電極71(72)は、他方の素子電極72(71)に向かって延びた二等辺三角形状の楔部分71a(72a)を有する。楔部分71a(72a)は、底辺が10[μm]、高さが45[μm]に形成され、各素子電極71、72に4つずつ設けられている。対向する素子電極71、72は、その入れ子状に配置された隣接する楔部分71a、72a間のギャップが2[μm]になるように位置決めされて形成されている。
【0083】
本実施の形態においても、一対の素子電極71、72間に形成されるギャップの長さを長くすることができる。そして、このようにして長くされたギャップをつなぐように、多数の導電膜74が互いに離間して独立して設けられる。各導電膜74は、長さが50[μm]、幅が4.5[μm]に形成されており、複数の楔部分71a、72aをつなぐように設けられている。
【0084】
また、各導電膜74には、複数箇所で素子電極71、72をつなぐそれぞれの位置で、ギャップの略中間位置に電子放出部76が形成されている。言い換えると、各導電膜74は、複数の電子放出部76を有する。
【0085】
以上のように、本実施の形態の電子放出素子70も、上述した第1および第2の実施の形態と同様の効果を奏することができる。具体的には、本実施の形態では、第1の実施の形態の電子放出部36の約4.5倍の面積の電子放出部を確保できた。また、所望する素子電流If、放出電流Ieを得るための素子電圧を低くできた。具体的には、第1の実施の形態の素子電圧より2.1[V]低くできた。言い換えると、電子放出部の単位長さ当りの電流値を78%軽減できた。
【0086】
また、この電子放出素子70を基板上に10個形成して、評価装置を用いて第1の実施の形態と同じ条件で駆動したところ、50時間経っても素子電流If、放出電流Ieともに保持率が95%以上であった。つまり、本実施の形態でも、素子電圧を抑えた上で十分な量の電子を安定して放出できるようになった。
【0087】
尚、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、上述した実施の形態では、素子電極間のギャップを長くするように電極が対向する端辺を櫛形或いは楔型に形成した場合について説明したが、これに限らず、素子電極の形状は任意に設定できる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の電子放出素子は、上記のような構成および作用を有しているので、経時的な特性劣化を抑制しつつ使用寿命を延長でき、十分な量の電子を安定して放出できる。
【0089】
また、上記電子放出素子を複数個備えたこの発明の電子放出装置、および表示装置は、電子放出装置の使用寿命を均一化できることから、長期間にわたって安定したパフォーマンスを発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る表示装置を示す外観斜視図。
【図2】図1の表示装置の断面図。
【図3】図2を部分的に拡大して示す図。
【図4】図1の表示装置に組み込まれた電子放出装置を示す概念図。
【図5】図4の装置に組み込まれた第1の実施の形態に係る電子放出素子を示す平面図。
【図6】図5の電子放出素子の特性を評価するための評価装置を示す概念図。
【図7】図6の評価装置による評価の一例を示すグラフ。
【図8】図5の電子放出素子の特性を評価した結果を従来と比較して示す図。
【図9】この発明の第2の実施の形態に係る電子放出素子を示す平面図。
【図10】この発明の第3の実施の形態に係る電子放出素子を示す平面図。
【符号の説明】
10…リアプレート、
12…フェースプレート、
14…側壁、
16…蛍光体スクリーン、
18…電子放出素子、
22…スペーサアッセンブリ、
31、32…素子電極、
34…導電膜、
36…電子放出部、
40…特性評価装置、
60、70…電子放出素子。
Claims (6)
- 一定のギャップを介して設けられた一対の電極膜と、
上記ギャップを介して上記一対の電極膜をつなぐように互いに独立して設けられた複数の導電膜と、
上記ギャップの略中間位置で上記各導電膜に形成され、上記一対の電極膜に与えられる電位差に応じた電子を放出する複数の電子放出部と、
を有することを特徴とする電子放出素子。 - 上記一対の電極膜が上記ギャップを介して対向する端辺は、該ギャップを少なくとも電極膜の幅より長くせしめるように折り曲げた形状を有することを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
- 上記複数の導電膜のうち少なくとも1つは、2箇所以上で上記ギャップを介して上記一対の電極膜をつなぐように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子放出素子。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の電子放出素子を基板上に複数個並べて配置した電子放出装置であって、外部から与えられる信号に応じて各電子放出素子の一対の電極に選択的に電位差を与えることにより上記複数の電子放出素子から選択的に電子を放出させる電子放出装置。
- 請求項4に記載の電子放出装置と、
この電子放出装置の複数の電子放出素子から選択的に放出される電子の衝突により画像を表示する画像表示部と、
を有することを特徴とする表示装置。 - 基板上に一対の電極膜を一定のギャップを介して対向するように形成する電極膜形成工程と、
上記ギャップを介して上記一対の電極膜をつなぐ複数の独立した導電膜を形成する導電膜形成工程と、
上記一対の電極膜間に電位差を与えることにより複数の導電膜に通電して、ギャップの略中間位置で各導電膜に複数の電子放出部を形成する電子放出部形成工程と、
を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
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2002
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