JP2004301566A - 排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置及びその迅速計測方法 - Google Patents

排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置及びその迅速計測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短時間で微量計測可能な排ガス中の半揮発性有機化合物、特にダイオキシン類の迅速計測装置及びその迅速計測方法を提供する。
【解決手段】計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤12に排ガス中の半揮発性有機化合物を吸着させた後、固体吸着剤12を第1の加熱部31によって100〜180℃で5〜10分間加熱して、固体吸着剤12に吸着した水分を除去し、更に、固体吸着剤12を300〜400℃まで段階的に昇温して、固体吸着剤12に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させ、更に、離脱した半揮発性有機化合物を複数の冷却部32、33によって冷却して、濃縮し、更に、冷却された半揮発性有機化合物を第2の加熱部34、35によって300〜400℃まで加熱し、半揮発性有機化合物を離脱させる工程を複数回行って、半揮発性有機化合物を計測する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排ガス中の半揮発性有機化合物、特にダイオキシン類の迅速計測装置及びその迅速計測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大気又は焼却炉等の排ガスに含まれるダイオキシン類等の半揮発性有機化合物のモニタリングの重要性がますます高まっている。特に、ダイオキシン類については、平成12年1月15日にダイオキシン類対策特別措置法が施行され、焼却炉等から発生する排ガスや排水に対し、ダイオキシン類の排出基準値が設定され、一般環境大気等には、ダイオキシン類の環境基準値が設定された。それに伴い、ダイオキシン類等の半揮発性有機化合物の計測を正確に、かつ、迅速に行うことが重要になっている。
従来、非特許文献1には、半揮発性有機化合物の計測方法として、焼却炉中の排ガスをインピンジャー内の液体吸着剤及びXAD−2樹脂等の固体吸着剤により捕捉し、これら液体吸着剤及び固体吸着剤から、ソックスレー等の抽出装置を用いて計測対象成分を抽出し、濃縮、クロマト処理等により不純物を除去して、最終濃縮液を作成し、この最終濃縮液を高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計によって計測する方法が開示されている。
【0003】
また、非特許文献2には、試料を固体吸着剤、例えば、テナックス(登録商標)中を通過させ、計測対象物質を固体吸着剤に吸着させ、この固体吸着剤を加熱して、計測対象物質を固体吸着剤より離脱させ、検出器で計測する方法が開示されている。
更に、焼却炉等の排出ガスを直接固体吸着剤に導入し、固体吸着剤を加熱して、計測対象物質を脱着させ、計測対象物質をオンラインで計測する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−46820号公報
【非特許文献1】
日本工業規格 JIS K0311
【非特許文献2】
米国環境保護庁 揮発性有機化合物の分析方法 4月、1984
(EPA Method T0−1 Method for the Determinaiton of Volatile Organic Compounds in Ambient Air Using Tenax Adsorption and Gas Chromatography/Mass Spectrometry(GC/MS))
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法は未だ解決すべき以下のような問題があった。
非特許文献1の方法では、抽出、濃縮、不純物の除去作業は手分析であり、かつ、工程も長いため、分析には、かなりの時間と費用を要する。
また、非特許文献2の分析方法では、計測対象物質が揮発性化合物(一般に25℃での飽和水蒸気圧が、10−1mmHg以上である有機化合物)から半揮発性有機化合物(一般に25℃での飽和水蒸気圧が、10−1mmHgから10−7mmHgである有機化合物)となり、水分や低沸点の有機化合物が、計測に対し妨害となる物質(以下、妨害物質という)となり、これらの妨害物質を低減、除去することが必要となる。
【0006】
更に、特許文献1の分析方法では、除湿器内部での計測対象物質の損失及び汚染物質の混入、また、計測の妨害物質となる低沸点の有機化合物の除去不足により、計測対象物質の安定した計測が難しく、採取方法、妨害物質の低減、除去方法の見直しが必要である。
また、装置内での経路が長いため、経路配管内やバルブ内に計測対象物質の吸着が起こり易く、極微量濃度、例えば、10−9〜10−12 g(つまり、ng〜pg)オーダーの計測を高精度で行うことは大変難しい。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、短時間で微量計測可能な排ガス中の半揮発性有機化合物、特にダイオキシン類の迅速計測装置及びその迅速計測方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う第1の発明に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置は、(1)排ガスの通過する煙道内に取付けられ、該煙道内の排ガスを採取するプローブと、前記プローブで採取された排ガスの経路に配置され、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤とを備えた採取手段と、
(2)前記半揮発性有機化合物が吸着された固体吸着剤を配置する試料導入部と、前記試料導入部に配置された固体吸着剤を加熱して、半揮発性有機化合物を離脱させる第1の加熱部と、前記第1の加熱部によって固体吸着剤から離脱した半揮発性有機化合物を冷却して、濃縮する複数の冷却部と、前記複数の冷却部にそれぞれ設けられ、該冷却部を加熱して、該冷却部内の半揮発性有機化合物を離脱させる第2の加熱部とを備えた脱着手段と、
(3)前記脱着手段から離脱した半揮発性有機化合物を計測する計測手段と、
(4)前記試料導入部に配置された固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を、前記試料導入部から前記計測手段まで移動させる移動層を供給する移動層供給手段を有し、
半揮発性有機化合物の配管経路を短くして、半揮発性有機化合物の損失及び汚染物質の混入を防止する。
【0008】
これによって、半揮発性有機化合物の採取時間、及び計測時間を短くすることができる。更に、固体吸着剤には、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されているので、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物の微量計測が可能である。また、脱着手段は、冷却部及び第2の加熱部を複数有するので、固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を高濃度に濃縮することができる。
【0009】
計測対象物質である半揮発性有機化合物は、一般に25℃での飽和水蒸気圧が、10−1mmHgから10−7mmHgである有機化合物であり、塩素化ジベンゾ−p−ジオキシン(chlorodibenzo−p−dioxins 、以下、ダイオキシンという)、ポリ塩素化ジベンゾフラン(chlorodibenzofurans )及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(coplanar polychlorobiphenyls、以下、コプラナーPCBという)を含むダイオキシン類がある。更に、ダイオキシン類には、それらの代替指標物質であるクロロベンゼン類、クロロフェノール類などが含まれる。また、揮発性有機化合物は、25℃での飽和水蒸気圧が、10−1mmHg以上の有機化合物であり、例えば、前述した特許文献1のTABLE1に記載されている有機化合物がある。また、計測対象物質は、焼却炉、重油等の燃焼ボイラー等から発生する排ガス中の半揮発性有機化合物である。
【0010】
ここで、固体吸着剤としては、テナックス(登録商標)、活性炭、及びガラスビーズ等を使用することができ、これらと同等の半揮発性有機化合物の吸着能力のあるものであれば、いずれも使用することができる。また、固体吸着剤は、排ガスを吸着する前に、固体吸着剤に含有する計測対象物質及び計測の妨害物質を除去するため、300〜400℃に加熱するのが好ましい。
また、内部標準物質としては、計測対象物質(つまり、半揮発性有機化合物)の13C、37CL、及び H等の安定同位体置換化合物を使用することができる。
【0011】
また、冷却部としては、ペルチェ素子が組み込まれたクライオフォーカスユニットを使用し、第1の加熱部で加熱された固体吸着剤から離脱して、気体となっている半揮発性有機化合物を液化して、濃縮することができる。また、クライオフォーカスユニットには、第2の加熱部が設けられ、液化された半揮発性有機化合物を気化し、クライオフォーカスユニットから離脱させることができる。
更に、冷却部を、複数設けることにより、半揮発性有機化合物を高濃度に濃縮することができる。なお、半揮発性有機化合物は、分計測手段の計測に適した濃度まで濃縮されればよい。
【0012】
また、計測手段としては、計測対象物質を分離するガスクロマトグラフと分離された計測対象物質を計測する質量分析計とを有し、半揮発性有機化合物を高精度に定性分析及び定量分析をすることができるガスクロマトグラフ質量分析計を使用するのが好ましい。ここで、ガスクロマトグラフの用いられるカラムとしては、溶融シリカ製のキャピラリーカラムが好適に使用される。また、質量分析計としては、高分解能の質量分析計である単収束磁場偏向型質量分析計、二重収束質量分析計、及びフーリエ変換質量分析計、また、低分解能の質量分析計である四重極質量分析計、イオントラップ質量分析計、及び飛行時間型質量分析計のいずれも使用することができる。
また、計測手段としては、半揮発性有機化合物の計測目的に合った計測装置を使用することもできる。例えば、紫外、赤外、及び可視等の分光分析器や、抗原抗体反応による分析装置、超音速分子ジェット多光子吸収イオン化質量分析装置であってもよく、水素炎イオン化検出器、電気化学検出器等の検出器を有するガスクロマトグラフを用いてもよい。
移動層としては、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが使用され、移動層供給手段としては、不活性ガスの入ったボンベを用いてもよい。
【0013】
前記目的に沿う第2の発明に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置は、(1)排ガスの通過する煙道内に取付けられ、該煙道内の排ガスを採取するプローブと、前記プローブで採取された排ガスの経路に配置され、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤と、前記固体吸着剤を加熱して、半揮発性有機化合物を離脱させる第1の加熱部と、前記プローブと固体吸着剤の間に設けられたバルブとを備えた採取手段と、
(2)前記第1の加熱部によって固体吸着剤から離脱し、前記バルブを介して供給された半揮発性有機化合物を、冷却して、濃縮する複数の冷却部と、前記複数の冷却部にそれぞれ設けられ、該冷却部を加熱して、該冷却部内の半揮発性有機化合物を離脱させる第2の加熱部とを備えた脱着手段と、
(3)前記脱着手段から離脱した半揮発性有機化合物を計測する計測手段と、
(4)前記固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を、前記バルブ及び前記冷却部を介して、前記計測手段まで移動させる移動層を供給する移動層供給手段を有し、
半揮発性有機化合物の配管経路を短くして、半揮発性有機化合物の損失及び汚染物質の混入を防止する。
【0014】
これによって、固体吸着剤から離脱した半揮発性有機化合物を移動層にと共に計測手段まで移動させ、オンライン計測ができ、半揮発性有機化合物の採取時間及び計測時間を短くすることができる。また、半揮発性有機化合物のモニタリングが簡単にできる。更に、固体吸着剤には、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されているので、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物の微量計測が可能である。また、脱着手段は、冷却部及び第2の加熱部を複数有するので、固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を高濃度に濃縮することができる。
ここで、移動層は、排ガスの採取方向とは反対方向から供給され、第1の加熱部によって固体吸着剤から離脱した半揮発性有機化合物は、プローブと固体吸着剤の間に設けられたバルブを切り替えることによって、脱着手段へと送ることができる。
【0015】
第1及び第2の発明に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置において、前記採取手段は、第3の加熱部が設けられ、前記プローブから採取される排ガスを加熱して、前記固体吸着剤に吸着される水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくするのが好ましい。
これによって、排ガス中の半揮発性有機化合物を固体吸着剤から離脱させることなく、固体吸着剤に吸着され、半揮発性有機化合物を計測する際の妨害物質となる水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくすることができる。
【0016】
前記目的に沿う第3の発明に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法は、排ガス中の半揮発性有機化合物を、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤に吸着させた後、この固体吸着剤を加熱して、前記半揮発性有機化合物を離脱させ、この離脱した半揮発性有機化合物を計測する排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法において、
前記固体吸着剤に吸着させた後、前記固体吸着剤を100〜180℃で5〜10分間加熱して、前記固体吸着剤に吸着した水分を除去し、更に、前記固体吸着剤を300〜400℃まで段階的に昇温して、該固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させ、更に、前記離脱した半揮発性有機化合物を冷却して、濃縮し、更に、該冷却された半揮発性有機化合物を300〜400℃まで加熱し、半揮発性有機化合物を離脱させる工程を複数回行う。
【0017】
これによって、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させずに、固体吸着剤に吸着された水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物等の半揮発性有機化合物を計測する際の妨害物質を除去することができ、更に、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を十分に濃縮して、半揮発性有機化合物を計測することができる。
なお、固体吸着剤を加熱する温度は、水分等が気化する温度以上であると共に、排ガス中の半揮発性有機化合物が離脱する温度未満、つまり、100〜180℃、好ましくは、110〜170℃、より好ましくは、110〜130℃に加熱する。加熱温度が、100℃未満では、水分が除去され難く、180℃以上では、半揮発性有機化合物が固体吸着剤から離脱する。また、加熱時間は、水分等が十分に除去できる時間であればよい。
【0018】
第3の発明に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法において、排ガス中の半揮発性有機化合物を固体吸着剤に吸着させる際には、前記排ガスを100〜180℃に加熱して、前記固体吸着剤に吸着される水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくすることもできる。
これによって、排ガス中の半揮発性有機化合物を固体吸着剤から離脱させることなく、固体吸着剤に吸着され、半揮発性有機化合物を計測する際の妨害物質となる水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくすることができる。
なお、固体吸着剤を加熱する温度は、水分等が気化する温度以上であると共に、排ガス中の半揮発性有機化合物が固体吸着剤から離脱する温度未満、つまり、100〜180℃、好ましくは、120〜170℃、より好ましくは、130〜150℃に加熱する。加熱温度が、100℃未満では、水分が除去され難く、180℃以上では、半揮発性有機化合物が固体吸着剤から離脱する。
【0019】
第3の発明に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法において、前記固体吸着剤は、予め300〜400℃に加熱され、更に、内部標準物質が添加される固体吸着剤の前処理が施されていることが好ましい。
これによって、固体吸着剤は、夾雑物質を含まず、更に、内部標準物質が添加され、半揮発性有機化合物の計測精度を高くすることができる。
なお、固体吸着剤を加熱する温度は、300℃未満では、低沸点の有機化合物、及び測定対象物質である半揮発性有機化合物を完全に除去し難く、400℃までの加熱によって、高沸点の有機化合物は完全に気化するので、400℃以上に加熱する必要はない。
【0020】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置の説明図、図2は半揮発性有機化合物の加熱温度と回収率の関係を示すグラフ、図3は本発明の第2の実施の形態に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置の説明図、図4は本発明の一実施例に係る迅速計測装置での半揮発性有機化合物の計測結果を示すチャートである。
【0021】
図1、図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置(以下、迅速計測装置という)10について説明する。迅速計測装置10は、図示しない焼却炉から発生する排ガスを、焼却炉外部に排出する煙道11から採取し、更に、採取した排ガス中の半揮発性有機化合物を計測する装置である。迅速計測装置10は、煙道11に取付けられ、排ガス中の半揮発性有機化合物を吸着する固体吸着剤12を装着した採取手段13と、固体吸着剤12に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させ、冷却して、濃縮させる脱着手段14と、脱着手段14に接続され、濃縮された半揮発性有機化合物を計測する計測手段の一例であるガスクロマトグラフ質量分析計(以下、GC/MSという)15と、脱着手段14及びGC/MS15に気体の移動層を供給する移動層供給手段16を有している。なお、脱着手段14、GC/MS15、及び移動層供給手段16は、焼却炉外部の分析室に設置されている。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0022】
採取手段13は、煙道11内に取付けられ、煙道11内の排ガスを採取する先部が実質的に90度に折れ曲がったプローブ20を有する採取管21と、採取管21内の下流側に設置され、固体吸着剤12が内側に装着されている吸着管22と、採取管21の周囲に設けられた巻き付け型のヒーターで構成された第3の加熱部23とを有している。採取管21は、半揮発性有機化合物の吸着がなく、少なくとも180℃以上の高温に耐え得るものであればよく、ガラス管、特に石英ガラス管が好適に用いられる。また、採取管21の周囲に設けられた第3の加熱部23は、採取管21内を少なくとも180℃に加熱できるものであればよく、採取管21と一体に形成されてもよい。
【0023】
また、本実施の形態では、固体吸着剤12は、半揮発性有機化合物を吸着でき、少なくとも180℃以上の耐熱性を有する粒状のテナックス(Tenax TA/登録商標)を使用した。また、吸着管22は、その外径が採取管21の内径よりも少しだけ小さく、採取管21内に装着可能なガラス管であって、固体吸着剤21を内包し、吸着管22の両開口部からガラスウール25を詰めて、粒状の固体吸着剤21がこぼれないように形成されている。
更に、採取管21の下流側には、フレキシブルチューブ26が接続され、フレキシブルチューブ26には、流量計27及びポンプ28が取付けられ、流量計27により、流量を確認しながらポンプ28によって排ガスを吸引し、排ガス中の半揮発性有機化合物を固体吸着剤12に吸着させる。
【0024】
ここで、計測対象物質である半揮発性有機化合物としては、塩素化ジベンゾ−p−ジオキシン(chlorodibenzo−p−dioxins 、以下、ダイオキシンという)、ポリ塩素化ジベンゾフラン(chlorodibenzofurans )及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(coplanar polychlorobiphenyls、以下、コプラナーPCBという)を含むダイオキシン類、例えば、3つの5塩化ジベンゾフラン(13468PeCDF(1,3,4,6,8−penta chlorodibenzofuran)、12468PeCDF、23467PeCDF)がある。従って、固体吸着剤12には、内部標準物質、例えば、これら3つの5塩化ジベンゾフランの炭素(12C)を安定同位体(13C)で置換した5塩化ジベンゾフラン(以下、安定同位体置換5塩化ジベンゾフランという)が添加されている。
【0025】
脱着手段14は、半揮発性有機化合物が吸着された固体吸着剤12を内包した吸着管22を配置する試料導入部30と、試料導入部30に配置された吸着管22内の固体吸着剤12を加熱して、半揮発性有機化合物を離脱させる第1の加熱部31と、第1の加熱部31によって固体吸着剤12から離脱した半揮発性有機化合物を冷却して、濃縮する複数、例えば2つの冷却部32、33と、冷却部32、33にそれぞれ設けられる第2の加熱部34、35とを備えている。
ここで、冷却部32、33は、クライオフォーカスユニットで冷却している。また、第2の加熱部34、35は、ペルチェ素子によって構成され、冷却部32、33の外周を覆うように取付けられている。なお、試料導入部30からGC/MS15までは、1つのシームレス管37で形成され、バルブや継ぎ目のないシームレス管37内を半揮発性有機化合物が移動するので、半揮発性有機化合物の損失を防止することができる。
【0026】
GC/MS15は、四重極ガスクロマトグラフ質量分析計を使用している。GC/MS15は、半揮発性有機化合物を分離する溶融シリカ製のキャピラリーカラム41を有するガスクロマトグラフ42と、ガスクロマトグラフ42で分離された化合物の定性分析及び定量分析が可能である検出部43及びデータ処理部44を有する質量分析計45とを備えている。
また、移動層供給手段16は、移動層の一例であるヘリウムガスが貯留されたガスボンベ50と、ガスボンベ50に取付けられたバルブ51と、バルブ51と試料導入部30とを接続し、移動層を供給する供給管52によって構成されている。移動層供給手段16では、バルブ51を開き、ガスボンベ50内のヘリウムガスを、試料導入部30の上流側からGC/MS15まで供給することができる。
【0027】
次に、迅速計測装置10を使用した排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法について説明する。
(1)まず、迅速計測装置10に使用する固体吸着剤12は、固体吸着剤12に含有されている計測対象物質及び妨害物質を除去するため、前処理として固体吸着剤12を内包する吸着管22内に、不活性ガス、例えば窒素ガスを流しながら、300〜400℃に加熱し、更に、内部標準物質として、安定同位体置換ジベンゾフランを添加する。前処理が行われた固体吸着剤12を有する吸着管22を採取管21内の下流側に装着する。
【0028】
(2)次に、焼却炉の煙道11に、採取手段13を設置する。煙道11内には、プローブ20が差し込まれ、更に、第3の加熱部23によって採取管21が100〜180℃(例えば、150℃)まで加熱される。なお、採取管21の温度は、採取管21の表面に取付けられた図示しない温度計によって測定されている。採取管21が、150℃まで加熱されたときに、ポンプ28を稼働させ、0.5〜1.0L/分の速度で、10〜50分間、煙道11内の排ガスを吸引する。排ガスの経路に配設された固体吸着剤12には、排ガス中の半揮発性有機化合物が吸着される。また、この際の吸引速度は、流量計27によって確認されると共に、ポンプに取付けられた図示しないカウンターによって総吸引量も確認される。なお、本実施の形態では、1.0L/分で20分間吸引し、排ガスの総吸引量を20Lとした。
【0029】
(3)吸着管22は、100℃未満まで冷却された後、採取管21から取り外す。取り外された吸着管22に、窒素ガスを吹き込み、吸着管22内を窒素ガスで置換する。次に、吸着管22は、両端の開口部を図示しないステンレス製のキャップで密閉し、分析室まで搬送する。更に、吸着管22から前記キャップを外して、試料導入部30に配置する。
(4)移動層供給手段16のガスボンベ50に設けられたバルブ51を開いて、試料導入部30に配置された吸着管22内に、ヘリウムガスを、例えば、50ml/分で供給すると共に、第1の加熱部31により、100〜180℃で5〜10分間(例えば、150℃で10分間)加熱する。これにより、試料採取時に固体吸着剤12に少量吸着した水分は、蒸発し、ヘリウムガスと共に移動して、ほぼ完全に除去される。
【0030】
(5)更に、吸着管22を、第1の加熱部31によって、300〜400℃(例えば、300℃)まで段階的に昇温する。この際に、加熱温度が、200℃となるまでには、沸点の低い揮発性有機化合物は、気化し、ヘリウムガスと共に移動して除去される。計測対象物質である半揮発性有機化合物は、200℃以上で気化して、固体吸着剤12から離脱し、ヘリウムガスの移動と共に、冷却部32まで移動する。
(6)気化した半揮発性有機化合物が通過する時間に合わせて、冷却部32を−150℃に冷却する。冷却部32において、半揮発性有機化合物は、液化し、濃縮される。なお、半揮発性有機化合物が気化する以前には、冷却部32を冷却しないので、半揮発性有機化合物よりも前、つまり、200℃以下で気化した水分、炭酸ガス、及び揮発性有機化合物等の低沸点有機化合物は液化せず、半揮発性有機化合物を計測する際の妨害物質を除去することができる。
【0031】
(7)次に、冷却部32に取付けられた第2の加熱部34で、冷却部32を加熱することにより、濃縮された半揮発性有機化合物を300〜400℃(例えば、300℃)まで加熱して、気化させ、冷却部33に移動させる。
(8)冷却部33を、気化した半揮発性有機化合物が通過する時間に合わせて−150℃に冷却する。なお、冷却する温度は、半揮発性有機化合物が液化する温度であればよい。第2の加熱部34によって気化した半揮発性有機化合物は、冷却部33において、再び液化し、濃縮される。
(9)この濃縮された半揮発性有機化合物は、冷却部33に取付けられた第2の加熱部35によって、冷却部33を加熱することにより、300〜400℃(例えば、300℃)まで加熱され、気化し、GC/MS15に供給される。
【0032】
(10)GC/MS15に供給された半揮発性有機化合物は、キャピラリーカラム41を備えたガスクロマトグラフ42によって分離され、検出部43及びデータ処理部43を有する質量分析計45によって定性分析及び定量分析が行われる。
なお、前記した(6)〜(9)の工程では、冷却濃縮及び加熱離脱操作を、冷却部32、33及び第2の加熱部34、35によって、2回行っているが、冷却濃縮及び加熱離脱操作は、半揮発性有機化合物を、GC/MS15に供給できる量まで濃縮できればよいので、1回でもよいし、3回以上でもよい。
また、図2に示すように、半揮発性有機化合物は、温度が180℃を超えると、固体吸着剤から離脱し、回収率が悪くなり、温度が100℃未満になると水分が蒸発しないので、排ガスの採取時には、温度を100〜180℃、好ましくは、110〜170℃、より好ましくは、110〜130℃に保持する必要がある。
【0033】
図3を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置(以下、迅速計測装置という)60について説明する。なお、迅速計測装置10と同一の構成要素については同一の番号を付してその詳しい説明を省略する。
迅速計測装置60は、図示しない焼却炉から発生する排ガスを排出している煙道11に取付けられ、排ガス中の半揮発性有機化合物を吸着する固体吸着剤12を装着した採取手段61と、固体吸着剤12から離脱した半揮発性有機化合物を冷却及び加熱して、濃縮する脱着手段62と、脱着手段62に接続され、濃縮された半揮発性有機化合物を計測するGC/MS15と、固体吸着剤12、脱着手段62及びGC/MS15に気体の移動層を供給する移動層供給手段63を有している。以下、それぞれについて詳しく説明する。
【0034】
採取手段61は、煙道11内に取付けられ、煙道11内の排ガスを採取する先部が実質的に90度に折れ曲がったプローブ70を有するガラス製の第1の採取管71と、第1の採取管71の周囲に設けられた巻き付け型のヒーターで構成された第3の加熱部72とを有している。更に、採取手段61は、第1の採取管71とテフロン(登録商標)製のジョイント73を介して、固体吸着剤12を内包している吸着管22が接続される。更に、吸着管22には、巻き付け型のヒーターで構成された第1の加熱部75が取付けられている。
また、第1の採取管71内には、プローブ70から採取された排ガスを第1の採取管71から吸着管22に供給する方向と、吸着管22内の固体吸着剤12を加熱して、離脱した半揮発性有機化合物を、吸着管22から、第1の採取管71に実質的に垂直方向に設けられた貫通孔77を介して、脱着手段62に供給する方向とを切り替えることができるバルブ76が設けられている。
【0035】
更に、吸着管22の下流側には、フレキシブルチューブ78が接続され、フレキシブルチューブ78の他端にはバルブ79が接続されている。バルブ79は、フレキシブルチューブ80を介して、流量計27及びポンプ28が取付けられている。
また、バルブ79には、移動層供給手段63を構成している供給管81、バルブ51、及びガスボンベ50が接続されている。
バルブ79は、その切り替えにより、ポンプ28を稼働して、煙道11内の排ガスを採取する際には、フレキシブルチューブ78とフレキシブルチューブ80とを接続し、また、固体吸着剤12にヘリウムガスを供給する際には、フレキシブルチューブ78と供給管81を接続することができる。
【0036】
脱着手段62は、複数、例えば2つのクライオフォーカスユニットで冷却する冷却部90、91と、冷却部90、91の外周を覆うようにそれぞれ設けられる第2の加熱部92、93とを備えている。また、第1の採取管71の貫通孔77に設けられたフレキシブルチューブ94に接続されるシームレス管91によって、四重極型のGC/MS15に供給される。
GC/MS15は、溶融シリカ製のキャピラリーカラム41を備えたガスクロマトグラフ42と、検出部43及びデータ処理部44を有する質量分析計45とを有する。
【0037】
次に、迅速計測装置60を使用した排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法について説明する。
(1)焼却炉の煙道11にプローブ70を差し込み、迅速計測装置60を設置する。なお、吸着管22には、予め加熱処理及び内部標準物質を添加された固体吸着剤12を内包している吸着管22を取付けておく。
(2)次に、第1及び第3の加熱部75、72を加熱し、第1の採取管71及び吸着管22を100〜180℃(例えば、150℃)まで加熱する。
(3)第1の採取管71及び吸着管22が、150℃まで加熱されたときに、排ガスがプローブ70、第1の採取管71、及び吸着管22を通る経路となるように、バルブ76及びバルブ79を切り替える。更に、ポンプ28を稼働させ、0.5〜1.0L/分の速度で、10〜50分間、煙道11内の排ガスを吸引し、吸着管22に装着された固体吸着剤12に、排ガス中の半揮発性有機化合物を吸着させる。また、この際の吸引速度は、流量計27によって確認すると共に、ポンプに取付けられた図示しないカウンターによって総吸引量も確認する。なお、本実施の形態では、1.0L/分で20分間吸引し、排ガスの総吸引量を20Lとした。
【0038】
(4)排ガスの採取後、ガスボンベ50内のヘリウムガスを脱着手段62方向へ供給するように(即ち、ガスボンベ50、吸着管22、フレキシブルチューブ94を通る経路)、バルブ76、79を切り替える。更に、ガスボンベ50のバルブ51開き、ヘリウムガスを、例えば、50ml/分で流すと共に、第1の加熱部75により、100〜180℃で5〜10分間(例えば、150℃で10分間)加熱され、試料採取時に固体吸着剤12に少量吸着した水分を、ほぼ完全に除去する。
(5)更に、第1の加熱部75を200℃まで加熱して、沸点の低い揮発性有機化合物を除去する。更に、第1の加熱部75を300〜400℃(例えば、300℃)まで昇温し、計測対象物質である半揮発性有機化合物を気化させて、固体吸着剤12から離脱させる。この離脱した半揮発性有機化合物は、ヘリウムガスの移動と共に冷却部90まで移動する。
(6)気化した半揮発性有機化合物が通過する時間に合わせて−150℃に冷却した冷却部90において、半揮発性有機化合物は、液化し、濃縮される。
【0039】
(7)次に、冷却部90に取付けられた第2の加熱部92で、濃縮された半揮発性有機化合物を300℃まで加熱して、揮発させ、冷却部91に移動させる。(8)第2の加熱部92によって気化した半揮発性有機化合物は、気化した半揮発性有機化合物が通過する時間に合わせて−150℃に冷却した冷却部91において、再び液化し、濃縮される。なお、冷却する温度は、半揮発性有機化合物が液化する温度であればよい。
(9)この濃縮された半揮発性有機化合物は、冷却部91に取付けられた第2の加熱部93によって、300℃まで加熱され、気化し、GC/MS15に供給される。
【0040】
(10)GC/MS15に供給された半揮発性有機化合物は、キャピラリーカラム41を備えたガスクロマトグラフ42によって分離され、検出部43及びデータ処理部44を有する質量分析計45によって定性分析及び定量分析が行われる。
なお、前記した(6)〜(9)の工程では、冷却濃縮及び加熱離脱操作を、冷却部90、91及び第2の加熱部92、93によって、2回行っているが、冷却濃縮及び加熱離脱操作は、半揮発性有機化合物を、GC/MS15に供給できる量まで濃縮できればよいので、1回でもよいし、3回以上でもよい。
【0041】
【実施例】
実施例として、本発明の実施の形態に係る迅速計測装置10で半揮発性有機化合物としてダイオキシン類の計測を行った。また、比較例として、公定法であるJIS K0311によって、同様にダイオキシン類の計測を行った。
比較例では、半揮発性有機化合物を計測するために、試料採取準備工程、試料採取工程、抽出工程、濃縮工程、精製工程、及び計測工程を経て、計測され、それぞれ1時間、3〜5時間、3日間、1日間、4日間、及び1日間程度かかり、準備から計測終了まで、およそ10日間程度かかった。
迅速計測装置10による計測では、抽出工程及び濃縮工程を必要とせず、試料採取準備工程、試料採取工程、精製工程、及び計測工程は、それぞれ30分間、10〜50分間、20分間、及び1時間程度で済み、準備から計測終了まで、およそ2〜3時間程度で終わり、工期は劇的に短縮された。
【0042】
図4に示すように、本実施例において、GC/MS15によるガスクロマトグラムは、リテンションタイムも鋭く、良好な結果となった。
また、実施例及び比較例において、同時に排ガスの採取を行った。比較例では、採取時間は、4時間である。また、実施例では、採取時間を20分とし、4時間の間に、8回の採取が可能であった。
比較例での計測では、排ガス中のダイオキシン類の濃度は、4.7ng−TEQ/m となった。また、実施例では、8回の採取による結果は、それぞれ4.9、4.6、8.8、6.1、4.3、2.8、3.1、6.2ng−TEQ/m となり、平均値は5.1ng−TEQ/m 、変動係数は38%であった。
【0043】
このように、実施例の半揮発性有機化合物の計測は、公定法であるJIS K0311を用いた方法と比較しても、遜色がなく、十分高感度の計測が可能であることが分かった。また、公定法では4時間の平均濃度の計測であったが、本実施例では、排ガスの採取時間が短く、その間に複数の結果を得ることができ、平均濃度を求めることはもとより、時系列変化も追跡することができた。
【0044】
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置及びその迅速計測方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、固体吸着剤として、活性炭、ガラスビーズを用いてもよい。
また、質量分析計としては、高分解能の質量分析計である単収束磁場偏向型質量分析計、二重収束質量分析計、及びフーリエ変換質量分析計、また低分解能の質量分析計であるイオントラップ質量分析計、及び飛行時間型質量分析計のいずれを使用してもよい。
【0045】
更に、計測手段として、半揮発性有機化合物の計測目的に合った計測装置を使用してもよい。例えば、紫外、赤外、及び可視等の分光分析器や、抗原抗体反応(イムノアッセイ)による分析装置、超音速分子ジェット多光子吸収イオン化質量分析装置であってもよく、水素炎イオン化検出器、電気化学検出器等の検出器を有するガスクロマトグラフを用いてもよい。また、移動層としては、ヘリウムガスの他に、窒素ガス等の不活性ガスを使用してもよい。
更に、内部標準物質としては、計測対象物質の炭素の安定同位体置換化合物(13C)の他に、塩素の安定同位体置換化合物(37CL)、及び水素の安定同位体置換化合物( H)等の安定同位体置換化合物を使用してもよい。
【0046】
【発明の効果】
請求項1及びこれに従属する請求項3記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置においては、(1)煙道内の排ガスを採取するプローブと、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤とを備えた採取手段と、(2)半揮発性有機化合物が吸着された固体吸着剤を配置する試料導入部と、試料導入部に配置された固体吸着剤を加熱する第1の加熱部と、第1の加熱部によって固体吸着剤から離脱した半揮発性有機化合物を冷却して、濃縮する複数の冷却部と、複数の冷却部にそれぞれ設けられる第2の加熱部とを備えた脱着手段と、(3)脱着手段から離脱した半揮発性有機化合物を計測する計測手段と、(4)試料導入部に配置された固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を、試料導入部から計測手段まで移動させる移動層を供給する移動層供給手段を有し、半揮発性有機化合物の配管経路を短くして、半揮発性有機化合物の損失及び汚染物質の混入を防止するので、半揮発性有機化合物の採取時間、及び計測時間を短くすることができる。更に、固体吸着剤には、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されているので、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物の微量計測が可能である。また、脱着手段は、冷却部及び第2の加熱部を複数有するので、固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を高濃度に濃縮することができる。
【0047】
請求項2及びこれに従属する請求項3記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置においては、(1)煙道内の排ガスを採取するプローブと、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤と、固体吸着剤を加熱する第1の加熱部と、プローブと固体吸着剤の間に設けられたバルブとを備えた採取手段と、(2)第1の加熱部によって固体吸着剤から離脱し、バルブを介して供給された半揮発性有機化合物を、冷却して、濃縮する複数の冷却部と、複数の冷却部にそれぞれ設けられる第2の加熱部とを備えた脱着手段と、(3)脱着手段から離脱した半揮発性有機化合物を計測する計測手段と、(4)固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を、バルブ及び冷却部を介して、計測手段まで移動させる移動層を供給する移動層供給手段を有し、半揮発性有機化合物の配管経路を短くして、半揮発性有機化合物の損失及び汚染物質の混入を防止するので、固体吸着剤から離脱した半揮発性有機化合物を移動層にと共に計測手段まで移動させ、オンライン計測ができ、半揮発性有機化合物の採取時間及び計測時間を短くすることができる。また、半揮発性有機化合物のモニタリングが簡単にできる。更に、固体吸着剤には、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されているので、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物の微量計測が可能である。また、脱着手段は、冷却部及び第2の加熱部を複数有するので、固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を高濃度に濃縮することができる。
【0048】
特に、請求項3記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置においては、採取手段は、第3の加熱部が設けられ、プローブから採取される排ガスを加熱して、固体吸着剤に吸着される水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくするので、排ガス中の半揮発性有機化合物を固体吸着剤から離脱させることなく、固体吸着剤に吸着され、半揮発性有機化合物を計測する際の妨害物質となる水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくすることができる。
【0049】
請求項4〜6記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法においては、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤に排ガス中の半揮発性有機化合物を吸着させた後、固体吸着剤を100〜180℃で5〜10分間加熱して、固体吸着剤に吸着した水分を除去し、更に、固体吸着剤を300〜400℃まで段階的に昇温して、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させ、更に、離脱した半揮発性有機化合物を冷却して、濃縮し、更に、冷却された半揮発性有機化合物を300〜400℃まで加熱し、半揮発性有機化合物を離脱させる工程を複数回行って、半揮発性有機化合物を計測するので、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させずに、固体吸着剤に吸着された水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物等の半揮発性有機化合物を計測する際の妨害物質を除去することができ、更に、固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を十分に濃縮して、半揮発性有機化合物を計測することができる。
【0050】
特に、請求項5記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法においては、排ガス中の半揮発性有機化合物を固体吸着剤に吸着させる際には、排ガスを100〜180℃に加熱して、固体吸着剤に吸着される水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくするので、排ガス中の半揮発性有機化合物を固体吸着剤から離脱させることなく、固体吸着剤に吸着され、半揮発性有機化合物を計測する際の妨害物質となる水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくすることができる。
請求項6記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法においては、固体吸着剤は、予め300〜400℃に加熱され、更に、内部標準物質が添加される固体吸着剤の前処理が施されているので、固体吸着剤は、夾雑物質を含まず、更に、内部標準物質が添加され、半揮発性有機化合物の計測精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置の説明図である。
【図2】半揮発性有機化合物の加熱温度と回収率の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置の説明図である。
【図4】本発明の一実施例に係る迅速計測装置による半揮発性有機化合物の計測結果を示すチャートである。
【符号の説明】
10:排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置、11:煙道、12:固体吸着剤、13:採取手段、14:脱着手段、15:ガスクロマトグラフ質量分析計、16:移動層供給手段、20:プローブ、21:採取管、22:吸着管、23:第3の加熱部、25:ガラスウール、26:フレキシブルチューブ、27:流量計、28:ポンプ、30:試料導入部、31:第1の加熱部、32、33:冷却部、34、35:第2の加熱部、37:シームレス管、41:キャピラリーカラム、42:ガスクロマトグラフ、43:検出部、44:データ処理部、45:質量分析計、50:ガスボンベ、51:バルブ、52:供給管、60:排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置、61:採取手段、62:脱着手段、63:移動層供給手段、70:プローブ、71:第1の採取管、72:第3の加熱部、73:ジョイント、75:第1の加熱部、76:バルブ、77:貫通孔、78:フレキシブルチューブ、79:バルブ、80:フレキシブルチューブ、81:供給管、90、91:冷却部、92、93:第2の加熱部、94:フレキシブルチューブ、95:シームレス管

Claims (6)

  1. (1)排ガスの通過する煙道内に取付けられ、該煙道内の排ガスを採取するプローブと、前記プローブで採取された排ガスの経路に配置され、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤とを備えた採取手段と、
    (2)前記半揮発性有機化合物が吸着された固体吸着剤を配置する試料導入部と、前記試料導入部に配置された固体吸着剤を加熱して、前記半揮発性有機化合物を離脱させる第1の加熱部と、前記第1の加熱部によって前記固体吸着剤から離脱した半揮発性有機化合物を冷却して、濃縮する複数の冷却部と、前記複数の冷却部にそれぞれ設けられ、該冷却部を加熱して、該冷却部内の半揮発性有機化合物を離脱させる第2の加熱部とを備えた脱着手段と、
    (3)前記脱着手段から離脱した半揮発性有機化合物を計測する計測手段と、
    (4)前記試料導入部に配置された固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を、前記試料導入部から前記計測手段まで移動させる移動層を供給する移動層供給手段を有し、
    半揮発性有機化合物の配管経路を短くして、半揮発性有機化合物の損失及び汚染物質の混入を防止することを特徴とする排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置。
  2. (1)排ガスの通過する煙道内に取付けられ、該煙道内の排ガスを採取するプローブと、前記プローブで採取された排ガスの経路に配置され、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤と、前記固体吸着剤を加熱して、半揮発性有機化合物を離脱させる第1の加熱部と、前記プローブと固体吸着剤の間に設けられたバルブとを備えた採取手段と、
    (2)前記第1の加熱部によって前記固体吸着剤から離脱し、前記バルブを介して供給された半揮発性有機化合物を、冷却して、濃縮する複数の冷却部と、前記複数の冷却部にそれぞれ設けられ、該冷却部を加熱して、該冷却部内の半揮発性有機化合物を離脱させる第2の加熱部とを備えた脱着手段と、
    (3)前記脱着手段から離脱した半揮発性有機化合物を計測する計測手段と、
    (4)前記固体吸着剤に吸着した半揮発性有機化合物を、前記バルブ及び前記冷却部を介して、前記計測手段まで移動させる移動層を供給する移動層供給手段を有し、
    半揮発性有機化合物の配管経路を短くして、半揮発性有機化合物の損失及び汚染物質の混入を防止することを特徴とする排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置。
  3. 請求項1及び2のいずれか1項に記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置において、前記採取手段は、第3の加熱部が設けられ、前記プローブから採取される排ガスを加熱して、前記固体吸着剤に吸着される水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくすることを特徴とする排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測装置。
  4. 排ガス中の半揮発性有機化合物を、計測する半揮発性有機化合物を安定同位体で置換した内部標準物質が添加されている固体吸着剤に吸着させた後、この固体吸着剤を加熱して、前記固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させ、この離脱した半揮発性有機化合物を計測する排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法において、
    前記固体吸着剤に吸着させた後、前記固体吸着剤を100〜180℃で5〜10分間加熱して、前記固体吸着剤に吸着した水分を除去し、更に、前記固体吸着剤を300〜400℃まで段階的に昇温して、該固体吸着剤に吸着された半揮発性有機化合物を離脱させ、この離脱した半揮発性有機化合物を冷却して、濃縮し、更に、この冷却された半揮発性有機化合物を300〜400℃まで加熱し、半揮発性有機化合物を離脱させる工程を複数回行うことを特徴とする排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法。
  5. 請求項4記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法において、前記排ガス中の半揮発性有機化合物を前記固体吸着剤に吸着させる際には、前記排ガスを100〜180℃に加熱して、前記固体吸着剤に吸着される水分、炭酸ガス及び揮発性有機化合物を少なくすることを特徴とする排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法。
  6. 請求項4及び5のいずれか1項に記載の排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法において、前記固体吸着剤は、予め300〜400℃に加熱され、更に、前記内部標準物質が添加される固体吸着剤の前処理が施されていることを特徴とする排ガス中の半揮発性有機化合物の迅速計測方法。
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