JP2004301251A - フルトロイダル型無段変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】変速ローラの回転速度を直接実測しなくてもディスクローラ間のスリップの有無を判定できるようにして、潤滑油存在部にセンサを設ける等の装置の複雑化を招来することなく、ディスクローラ間を適正な接触状態に維持する。
【解決手段】相対向する凹湾曲状の軌道面3b、12bを有する入力ディスク3及び出力ディスク12と、この両ディスク3,12の軌道面間に配置されかつその軌道面3b、12b上を転動しながら当該両ディスク3,12間のトルク伝達を行う複数の変速ローラ14と、両ディスク3,12の軸心方向に対して傾動可能でかつ変速ローラ14の回転方向に垂直な方向に押し引き可能となるように当該変速ローラ14を支持する支持部材15と、を備えているフルトロイダル型無段変速機において、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiと、その両ディスク3,12の軸心方向に対する変速ローラ14の傾動角度φから定まる第二変速比Ri/Roとの差に基づいてディスクローラ間のスリップの有無を判定する制御装置23を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】相対向する凹湾曲状の軌道面3b、12bを有する入力ディスク3及び出力ディスク12と、この両ディスク3,12の軌道面間に配置されかつその軌道面3b、12b上を転動しながら当該両ディスク3,12間のトルク伝達を行う複数の変速ローラ14と、両ディスク3,12の軸心方向に対して傾動可能でかつ変速ローラ14の回転方向に垂直な方向に押し引き可能となるように当該変速ローラ14を支持する支持部材15と、を備えているフルトロイダル型無段変速機において、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiと、その両ディスク3,12の軸心方向に対する変速ローラ14の傾動角度φから定まる第二変速比Ri/Roとの差に基づいてディスクローラ間のスリップの有無を判定する制御装置23を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の変速装置として用いられるフルトロイダル型無段変速機に関し、特に、その入出力ディスクと変速ローラの接触部に発生するスリップを防止ないし抑制する制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗用車用の変速装置として、従来のオートマティックトランスミッションに代わるトロイダル型無段変速機が注目されており、かかる無段変速機は、入出力ディスクと変速ローラとの接触点を結んだ線が当該変速ローラの傾動中心を通過しないハーフトロイダル型と、その線が当該変速ローラの傾動中心を通過するフルトロイダル型とに大別される。
【0003】
このうち、フルトロイダル型無段変速機の主要部であるバリエータは、凹湾曲状の軌道面を有する入力ディスク及び出力ディスクを、軌道面同士が互いに対向するように配置し、両ディスク間に複数の変速ローラを配置して成るものである。各ディスクの軸方向には油圧による端末負荷が付与され、これにより、変速ローラは各ディスクの軌道面に油膜を介して圧接する。入力ディスクはエンジンで駆動される入力軸に連結され、この入力軸の回転によって、入力ディスクから変速ローラを介して出力ディスクにトルクが伝達される。また、変速動作は、必要なトルクに応じて、変速ローラを支持するキャリッジ(支持部材)を変速シリンダで押し引きして変速ローラの傾動角度を調整することにより、無段階で行われる。
【0004】
かかるフルトロイダル型無段変速機において、両ディスクと変速ローラは油膜を介して非常に高い圧力で互いに接している。このため、油膜を形成するトラクションオイルの粘度が高くなって大きなトラクションを伝達できるが、このさい油膜に作用するせん断力により油膜部(接触面に介在するオイル)の油温も上昇する。この油温が上昇すると油の粘度が下がる結果、トラクションが低下したり、油膜が薄くなって各ディスクと変速ローラとが直接接触し、グロススリップを起こして損傷する恐れがある。
そこで、この種のフルトロイダル型無段変速機において、各ディスクの回転速度と変速ローラの回転速度を検出し、これらの回転速度から求めたディスクローラ間のスリップ率又は速度差が許容値を超えないように、両ディスクと変速ローラの接触条件を緩和させるフィードバック制御を行うことにより、ディスクローラ間のスリップを防止する制御方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
WO01/57417 A1(6〜9頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のフルトロイダル型無段変速機では、変速ローラの周方向に等間隔おきに形成した貫通孔や凹部(ターゲット)の数を磁気センサでカウントすることにより、ディスクローラ間のスリップ率又は速度差を求めるのに必要な変速ローラの回転速度を実測するようにしている。
しかしながら、この種の無段変速機に使用する変速ローラは、高温の潤滑油が存在する環境下で使用されるため、かかる変速ローラに対して上記貫通孔や凹部のようなターゲットを形成してその動きをセンサで検出する場合には、当該センサの設置が非常に困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、変速ローラの回転速度を直接実測しなくてもディスクローラ間のスリップの有無を判定できるようにして、潤滑油存在部にセンサを設ける等の装置の複雑化を招来することなく、ディスクローラ間を適正な接触状態に維持することができるフルトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は次の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明は、相対向する凹湾曲状の軌道面を有する入力ディスク及び出力ディスクと、この両ディスクの軌道面間に配置されかつその軌道面上を転動しながら当該両ディスク間のトルク伝達を行う複数の変速ローラと、前記両ディスクの軸心方向に対して傾動可能でかつ前記変速ローラの回転方向に垂直な方向に押し引き可能となるように当該変速ローラを支持する支持部材と、を備えているフルトロイダル型無段変速機において、前記両ディスクの回転速度比で定義される第一変速比と、その両ディスクの軸心方向に対する前記変速ローラの傾動角度から定まる第二変速比との差に基づいてディスクローラ間のスリップの有無を判定する制御装置が設けられていることを特徴とする。
【0009】
後述する実施形態でも述べる通り、この種のフルトロイダル型無段変速機において、ディスクローラ間にスリップが発生していない場合には、両ディスクの回転速度比で定義される第一変速比は、変速ローラの中心が移動していない定常状態においては、変速ローラの傾動角度から定まる第二変速比と一致し、逆に、ディスクローラ間のスリップが大きくなるほど、その第一変速比と第二変速比の差が広がる。このため、これら第一変速比と第二変速比の差を逐次把握しておけば、ディスクローラ間のスリップの有無を判定することができる。
そして、かかるスリップの有無を判定するのに必要となる上記の各変速比のうち、第一変速比については、両ディスクの回転速度の実測値から求めることができ、第二変速比を定めるためのデータとなる変速ローラの傾動角度については、少なくとも支持部材の押し引き方向の移動距離の実測値から求めることができるので、結局、本発明によれば、変速ローラの回転速度を直接実測しなくても、ディスクローラ間のスリップの有無を判定することができる。
【0010】
本発明の無段変速機においては、前記制御装置は、より具体的には、次の式で定義されるスリップ指標Δdを演算し、このスリップ指標Δdが予め求めておいた許容値を超えるか否かでディスクローラ間のスリップの有無を判定する。
Δd=ωo/ωi+Ri/Ro−2Rt×dθ/dt/ωi/Ro
ただし、
ωi:入力ディスクの回転速度
ωo:出力ディスクの回転速度
Ri:入力ディスクの接触半径
Ro:出力ディスクの接触半径
dθ/dt:ディスク軸心回りの変速ローラの中心位置速度
【0011】
この場合、支持部材の押し引き方向の移動距離と同支持部材の軸心回りの回転角度とから変速ローラの傾動角度を算出し、この傾動角度に基づいて第二変速比を求めるようにすれば、ディスク軸心回りの変速ローラの回転変動がない定常状態になっているか否かに関係なく、その傾動角度が正確に算出されるので、より正確なスリップ防止制御を行うことができる。
他方、変速ローラが定常状態であるという条件の下では、支持部材の押し引き方向の移動距離のみから変速ローラの傾動角度を算出し、この傾動角度に基づいて第二変速比を求めることができる。この場合には、支持部材の軸心回りの回転角度を実測するセンサを設ける必要がなくなるので、当該無段変速機の製造コストを低減することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
図4は、本発明に係るフルトロイダル型無段変速機の主要部を構成するバリエータ1の概略断面図である。
同図に示すように、このバリエータ1は、乗用車等の車両のエンジンEにより回転駆動される入力軸2を備えており、その両端近傍にはそれぞれ入力ディスク3が支持されている。各入力ディスク3の一側面には、凹湾曲状の軌道面3bが形成されており、その内周には複数条の溝を切ったスプライン穴3aが形成されている。
【0013】
各入力ディスク3は、入力軸2に形成されたスプライン軸部2aをスプライン穴3aに挿通することにより、入力軸2と一体回転可能に組み付けられている。右側の入力ディスク3は、入力軸2に一体に設けられた係止つば部2bによって図示の状態から右方への移動が規制されている。また、左側の入力ディスク3の軌道面3bと反対側の背面には、当該背面全体を覆うケーシング4と、ケーシング4の内周に内接したバックアップ板5と、入力軸2に固定されかつ入力ディスク3及びバックアップ板5が軸方向の左方に移動することを規制する係止リング6及び止め輪7と、係止リング6の外周に装着されかつバックアップ板5に予圧を付与するワッシャ8が設けられている。
【0014】
バックアップ板5の外周にはOリング5aが装着されており、ケーシング4の内面と、入力ディスク3の背面と、バックアップ板5とによって囲まれた入力軸2の周りの空間に油室9aが形成されている。この油室9aは、入力軸2の軸線方向に延びる第一油路2cと、その右端部から径方向に延びる第二油路2dとに連通しており、第一油路2cには外部から油圧が供給される。このようにして、ケーシング4及びバックアップ板5を押圧シリンダ9とし、入力ディスク3をピストンとする油圧シリンダ装置が構成されている。
【0015】
入力軸2の軸方向中央部には、バリエータ1の出力部10が入力軸2に対して相対回転自在に支持されている。この出力部10は、出力部材11と、この出力部材11にそれぞれ一体回転可能に支持された一対の出力ディスク12とを備えている。各出力ディスク12の、入力ディスク3の軌道面3bに対向する一側面には、凹湾曲状の軌道面12bが形成されている。また、出力部材11の外周には、動力伝達用のチェーン13と噛み合うスプロケットギア11aが形成されている。
【0016】
入力ディスク3の軌道面3bとこれに対向する出力ディスク12の軌道面12bとの間はトロイド状隙間として構成されており、このトロイド状隙間には、各軌道面3b,12bと圧接して回転する円盤状の変速ローラ14が円周等配に3個(図4では、1個のみ図示)設けられている。従って、変速ローラ14は左右一対のトロイド状隙間に計6個配置されている。この各ローラ14は、キャリッジ(支持部材)15によって回転軸14a周りに回転自在に支持されているとともに、当該キャリッジ15によって各軌道面3b,12bに対する相対的な接触位置を調整できるようになっている。
【0017】
本実施形態のバリエータ1において、第一油路2cを介して油室9aに端末負荷としての油圧が付与されると、左側の入力ディスク3が右方に付勢され、変速ローラ14を介して左側の出力ディスク12が右方に付勢される。これにより、右側の出力ディスク12から出力部材11を介して、左側の出力ディスク12が右方に付勢される。さらに、右側の出力ディスク12から変速ローラ14を介して右側の入力ディスク3が押圧されるが、この入力ディスク3は係止つば部2bにより止められているため、端末負荷がバリエータ1全体に付与され、左右の各変速ローラ14が両ディスク3,12間に所定の圧力で挟持された状態となる。そして、この状態で入力軸2に動力が付与されると、入力ディスク3から出力ディスク12に対して合計6個の変速ローラ14を介してトルクが伝達されることになる。
【0018】
図1は、上記バリエータ1の油圧制御システムの回路構成図である。
なお、この図1では、説明の簡略化のために一個の変速ローラ14に関する回路構成を示しているが、実際には、各ローラ14ごとに変速シリンダ16が設けられている。
同図に示すように、変速ローラ14には、所定のキャスター角βをもって傾斜したキャリッジ15が連結されている。このキャリッジ15には変速シリンダ16が接続されていて、このシリンダ16の各油室16a,16bにそれぞれ供給される油圧P1,P2の差圧Pr(=P1−P2)により、前進又は後退方向に駆動力(以下、リアクション力という。)が付与される。
【0019】
すなわち、バリエータ1の油圧回路には、第一ポンプ17と第一圧力制御弁18により構成される油圧発生経路と、第二ポンプ20と第二圧力制御弁21により構成される油圧発生経路が設けられており、第一圧力制御弁18によって制御された油圧は変速シリンダ16の第一油室16aと押圧シリンダ9に供給され、第二圧力制御弁21によって制御された油圧は変速シリンダ16の第二油室16bに供給される。
しかして、上記各圧力制御弁18,21は、車両の電子制御ユニットである制御装置(以下、ECUという。)23の指令によって作動し、変速シリンダ16の第一及び第二油室16a,16bの圧力を調整して、キャリッジ15に前進又は後退方向のリアクション力を付与するものである。第一油室16aに付与される油圧と第二油室16bに付与される油圧は、それぞれ第一及び第二圧力計24,25によってリアルタイムに検出され、それらの検出値P1,P2はいずれもECU23に送られている。
【0020】
また、本実施形態のバリエータ1の油圧回路では、前記第一及び第二ポンプ17,20とは別系統で、潤滑オイル専用の第三ポンプ34とリリーフ弁35により構成される油圧発生経路が設けられており、この第三ポンプ34の吐出側は、オイルクーラ等よりなる冷却装置(通常はオフ)26及び流量調整弁27を経て、各ディスク3,12の近傍に配置されたノズル28に接続されている。このため、上記ノズル28から、各ディスク3,12の軌道面3b,12bとローラ14の転動面の接触部近傍に対して、作動油が潤滑オイルとして噴射されるようになっている。 なお、冷却装置26からノズル28に至るまでの配管経路には温度センサ29が接続されており、この温度センサ29は潤滑オイルの温度を検出して、その出力信号をECU23に送る。
【0021】
ECU23には、入力ディスク3の回転速度ωiを検出するための速度センサ30と、出力ディスク12の回転速度ωoを検出するための速度センサ31が接続され、これらの速度センサ30,31の出力信号は、所定のサンプリング時間でリアルタイムにECU23に取り込まれている。また、ECU23には、変速シリンダ16のピストン位置xp(キャリッジ15の押し引き方向の移動距離)を検出するための変位センサ32と、キャリッジ15の軸心回りの回転角度γ(図3(b)参照)を検出するためのロータリエンコーダ等よりなる回転角センサ33が接続され、これらのセンサ32,33の出力信号も、所定のサンプリング時間でリアルタイムにECU23に取り込まれている。
【0022】
更に、図示していないが、ECU23には、車速センサ、車体の傾斜角センサ、アクセルペダルやブレーキペダルに対応して設けられた圧力センサ、エンジン回転数センサから、それぞれ、車速、車体の傾斜角、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込み圧力、エンジン回転数等の情報が常時入力されている。
上記構成に係るバリエータ1では、キャリッジ15を所定のキャスター角βで傾斜させた状態で各ディスク3,12間に変速ローラ14を介装しているので、車両の運転中において、キャリッジ15のリアクション力(F=(P1−P2)×シリンダ断面積)と出力ディスク12を駆動するのに必要な出力トルクToとの間に力の不均衡が生じると、変速ローラ14及びキャリッジ15は、キャリッジ15の軸線周りに回転軸14aを傾斜させることによりその不均衡を解消しようとする。
【0023】
これにより、変速ローラ14の位置が図4の二点鎖線に示すように変化し、両ディスク3,12間の速度比が連続的に変化する。従って、例えば、リアクション力Fに抗してキャリッジ15が押し返されるような大きな抵抗力が出力ディスク12に発生すると、変速ローラ14は回転軸14aの傾斜角度を変化させてより大きな出力トルクを発生させ、このようにしてバリエータ1の変速比が結果的に「シフトダウン」されることになる。
【0024】
すなわち、本実施形態のバリエータ1では、変速ローラ14を支持するキャリッジ15のリアクション力Fの変化のみに対応して瞬時に必要な出力トルクToが得られるトルク制御が行われており、その結果として変速比が変化しているものである。このようなトルク及び変速比の変化は、単純に、リアクション力Fの増減又は外部抵抗(走行抵抗)の変動に対する応答のみで実行され、極めて迅速で効率的であることが確認されている。なお、図4における左右各3個ずつのローラ14は、左右対称になるように同期して回転軸14aを傾斜させ、それらの傾斜角度は6個のローラすべてについて一致している。
【0025】
次に、図2のフローチャートを参照して、前記ECU23によって行われるディスクローラ間のスリップを防止するための制御方式について説明する。
まず、ECU23は、フラグFをゼロに設定して各データをイニシャライズしたあと(ステップS1)、この制御に必要なデータとして、前記入力ディスク3の回転速度ωi、出力ディスクの回転速度ωo、変速シリンダ16のピストン位置xp、及び、キャリッジ15の回転角度γを、それぞれデータ入力する(ステップS2)。
【0026】
ところで、上記ピストン位置xpは、両ディスク3,12の軸心回りにおける変速ローラ14の中心位置θ(図3(c)参照)を用いて、次の式(1)のように近似して表される。
(1) xp=Rt×sinθ×cosβ
従って、この式(1)にピストン位置xpを代入することにより、変速ローラ14の中心位置θを算出することができる。なお、この式(1)において、Rtは、変速ローラ14の両ディスク3,12のトロイド半径である(図3(a)参照)。
【0027】
また、両ディスク3,12の軸心方向に対する変速ローラ14の傾動角度φは、前記キャリッジ15のキャスター角β、同キャリッジ15の回転角度γ及び変速ローラ14の中心位置θとから、次の式(2)により算出することができる。
(2) φ=Arctan(cosβsinγ/(sinβsinγsinθ+cosγcosθ))
更に、入力ディスク3の接触半径Riと出力ディスクの接触半径Ro(図3(a)参照)とは、トロイド半径Rt、ローラ半径Rr及び上記傾動角度φを用いて、それぞれ、次の式(3)及び(4)のように表すことができる。
(3) Ri=Rt−Rr×sinφ
(4) Ro=Rt+Rr×sinφ
【0028】
一方、仮に、ディスクローラ間に滑りが生じていないと仮定した場合、変速ローラ14に関して、その中心位置における回転変位の釣り合いを考えると、次の式(5)が成立する。ただし、この式(5)において、dθ/dtは、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心位置速度を意味する。
(5) (ωiRi+ωoRo)/2=Rt×dθ/dt
そこで、上記式(5)の両辺をωiとRoで乗算して無次元化し、その右辺を左辺に移項することにより、両ディスク3,12と変速ローラ14の接触部における滑りの指標(スリップ指標)Δdとして次の式(6)が得られる。
(6) Δd=ωo/ωi+Ri/Ro−2Rt×dθ/dt/ωi/Ro
【0029】
かかるスリップ指標Δdを構成する式(6)の右辺第一項〜第三項のうち、第一項は、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiであり、第二項は、変速ローラ14のディスク3,12に対する接触半径比で定義される第二変速比Ri/Roであり、第三項は、ディスク軸心回りの変速ローラ14の時間的変動dθ/dtに伴う変動項を表す。なお、両ディスク3,12は逆向きに回転することから第一変速比ωo/ωiは必ず負の数になるので、上記式(6)の右辺第一項及び第二項は両変速比ωo/ωi,Ri/Ro間の差を表している。
【0030】
そして、かかる式(6)で定義されるスリップ指標Δdにおいて、変速ローラ14の接触部に滑りがない場合には当該指標Δdはゼロとなり、接触部における滑りが大きいほど当該指標Δdは大きくなる。
すなわち、ディスクローラ間にスリップが発生していない場合には、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiは、変速ローラ14の中心が移動していない定常状態(dθ/dt=0の状態)においては、変速ローラ14の傾動角度φから定まる第二変速比Ri/Roと一致し、これとは逆に、ディスクローラ間のスリップが大きくなるほど、その第一変速比ωo/ωiと第二変速比Ri/Roの差が広がることになる。従って、これら第一変速比ωo/ωiと第二変速比Ri/Roの差を逐次把握しておけば、ディスクローラ間のスリップの有無を判定することができる。
【0031】
一方、前記式(6)の右辺各項のうち、第一変速比ωo/ωiは、両ディスク3,12の回転速度センサ30,31の実測値ωi,ωoから求めることができ、第二変速比Ri/Roは、ピストン位置xpを前記式(1)に代入して得られた変速ローラ14の中心位置θと、キャリッジ15の回転角センサ33の実測値γとを前記式(2)に代入して変速ローラ14の傾動角度φを演算し、更に、この傾動角度φを前記式(3)及び(4)に代入して得られた各半径Ri,Roより求めることができる。また、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心位置速度dθ/dtは、前記(1)式によって所定のサンプリング時間で得られている中心位置θを、そのサンプリング時間ごとに微分することによって得られる。
【0032】
そこで、ECU23は、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiと、両ディスク3,12の軸心方向に対する変速ローラ14の傾動角度φから定まる第二変速比Ri/Roと、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心位置速度dθ/dtを演算したあと(ステップS3)、それら変速比と速度から構成される前記式(6)で定義されるスリップ指標Δdを演算する(ステップS4)。
【0033】
そして、ECU23には、実機による実験又はシミュレーションによって求められた、ディスクローラ間でスリップが発生しない程度のスリップ指標Δdの許容値dmaxが予め格納されており、ECU23は、スリップ指標Δdが予め求めておいたその許容値dmaxを超えるか否かでディスクローラ間のスリップの有無を判定する(ステップS5)。すなわち、ECU23は、求められたスリップ指標Δdが許容値dmax以上である場合には、フラグFを1にして(ステップS6)、ディスクローラ間の接触条件を緩和する信号を出力する(ステップS7)。
【0034】
ここで、ディスクローラ間の接触条件とは、入出力ディスク3,12と変速ローラ14との接触荷重、接触面圧、相対速度、表面粗さ、接触面間の油膜厚さ、油膜パラメータ及び油温等のことであり、接触部の損傷や寿命、トラクション、伝達効率、振動等に影響を及ぼす条件のことを意味する。従って、これらの接触条件を緩和するとは、ディスクローラ間の接触部の損傷を防止するために、或いは、接触部のトラクションの低下を防止するために接触荷重を低減したり、相対速度を低減したり、潤滑油温度を低下させたり、潤滑油の供給量を増加したりすることを意味する。
【0035】
他方、ECU23は、求められたスリップ指標Δdが許容値dmax未満である場合には、フラグが1であるか否か、すなわち、接触条件緩和信号を出力中であるか否かを確認する(ステップS8)。そして、出力中であれば、ECU23は、そのフラグFをゼロに戻してから(ステップS9)、接触条件緩和信号を解除する信号を出力したあと(ステップS10)、前記ステップS2に戻って引き続きスリップ指標Δdを監視する。また、出力中でない場合には、ECU23は、ステップS8からそのままステップS2に戻り、引き続きスリップ指標Δdを監視する。
【0036】
このように、本実施形態に係る無段変速機によれば、両ディスク3,12の回転速度ωi,ωo、ピストン移動量xp及びキャリッジの回転角度γから演算可能なスリップ指標Δdを逐次求め、この指標Δdが予め求めておいた許容値dmaxを超えるか否かでディスクローラ間のスリップの有無を判定するようにしているので、変速ローラ14の回転速度を直接実測することなく、ディスクローラ間のスリップ(特に、グロススリップ)の有無を判定することができる。
【0037】
なお、上記した実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明に含まれる。
例えば、上記実施形態において、変速ローラ14の中心がディスク軸心回りに回転しない定常状態(dθ/dt=0)であるという条件の下では、キャリッジ15の押し引き方向の移動距離であるピストン位置xpのみから変速ローラ14の傾動角度φを算出し、この傾動角度φに基づいて第二変速比Ri/Roを求めることにしてもよい。
【0038】
すなわち、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心移動がない定常状態の場合(dθ/dt=0)には、次の式(7)が成立する。
(7) sinθ=tanβtanφ
そして、この場合には、上記式(7)により、変速ローラ14の傾動角度φを同ローラ14の中心位置θのみで表すことができ、更に、この中心位置θは前記式(1)によってピストン位置xpから求めることができる。
このため、結局、第二変速比Ri/Roは、ピストン位置xpを前記式(1)に代入して変速ローラ14の中心位置θを求め、この中心位置θを前記式(7)に代入して変速ローラ14の傾動角度φを求め、更に、この傾動角度φを前記式(3)及び(4)に代入して得られた各半径Ri,Roより求めることができる。
【0039】
従って、このように変速ローラ14が定常状態(dθ/dt=0)にあるという条件を付加した場合には、キャリッジ15の軸心回りの回転角度γを実測するセンサ33を設けなくても、前記スリップ指標Δdによるスリップ防止制御を行うことができるので、フルトロイダル型無段変速機の製造コストを低減することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、変速ローラの回転速度を直接実測しなくてもディスクローラ間のスリップの有無を判定することができるので、潤滑油存在部にセンサを設ける等の装置の複雑化を招来することなく、ディスクローラ間を適正な接触状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無段変速機の主要部を構成するバリエータの油圧制御システムの回路構成図である。
【図2】ECUで行われるスリップ防止制御のフローチャートである。
【図3】各パラメータの概略説明図である。
【図4】バリエータの概略断面図である。
【符号の説明】
1 バリエータ
3 入力ディスク
3b 軌道面
12 出力ディスク
12b 軌道面
14 変速ローラ
15 キャリッジ(支持部材)
23 制御装置(ECU)
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の変速装置として用いられるフルトロイダル型無段変速機に関し、特に、その入出力ディスクと変速ローラの接触部に発生するスリップを防止ないし抑制する制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗用車用の変速装置として、従来のオートマティックトランスミッションに代わるトロイダル型無段変速機が注目されており、かかる無段変速機は、入出力ディスクと変速ローラとの接触点を結んだ線が当該変速ローラの傾動中心を通過しないハーフトロイダル型と、その線が当該変速ローラの傾動中心を通過するフルトロイダル型とに大別される。
【0003】
このうち、フルトロイダル型無段変速機の主要部であるバリエータは、凹湾曲状の軌道面を有する入力ディスク及び出力ディスクを、軌道面同士が互いに対向するように配置し、両ディスク間に複数の変速ローラを配置して成るものである。各ディスクの軸方向には油圧による端末負荷が付与され、これにより、変速ローラは各ディスクの軌道面に油膜を介して圧接する。入力ディスクはエンジンで駆動される入力軸に連結され、この入力軸の回転によって、入力ディスクから変速ローラを介して出力ディスクにトルクが伝達される。また、変速動作は、必要なトルクに応じて、変速ローラを支持するキャリッジ(支持部材)を変速シリンダで押し引きして変速ローラの傾動角度を調整することにより、無段階で行われる。
【0004】
かかるフルトロイダル型無段変速機において、両ディスクと変速ローラは油膜を介して非常に高い圧力で互いに接している。このため、油膜を形成するトラクションオイルの粘度が高くなって大きなトラクションを伝達できるが、このさい油膜に作用するせん断力により油膜部(接触面に介在するオイル)の油温も上昇する。この油温が上昇すると油の粘度が下がる結果、トラクションが低下したり、油膜が薄くなって各ディスクと変速ローラとが直接接触し、グロススリップを起こして損傷する恐れがある。
そこで、この種のフルトロイダル型無段変速機において、各ディスクの回転速度と変速ローラの回転速度を検出し、これらの回転速度から求めたディスクローラ間のスリップ率又は速度差が許容値を超えないように、両ディスクと変速ローラの接触条件を緩和させるフィードバック制御を行うことにより、ディスクローラ間のスリップを防止する制御方式が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
WO01/57417 A1(6〜9頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のフルトロイダル型無段変速機では、変速ローラの周方向に等間隔おきに形成した貫通孔や凹部(ターゲット)の数を磁気センサでカウントすることにより、ディスクローラ間のスリップ率又は速度差を求めるのに必要な変速ローラの回転速度を実測するようにしている。
しかしながら、この種の無段変速機に使用する変速ローラは、高温の潤滑油が存在する環境下で使用されるため、かかる変速ローラに対して上記貫通孔や凹部のようなターゲットを形成してその動きをセンサで検出する場合には、当該センサの設置が非常に困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、変速ローラの回転速度を直接実測しなくてもディスクローラ間のスリップの有無を判定できるようにして、潤滑油存在部にセンサを設ける等の装置の複雑化を招来することなく、ディスクローラ間を適正な接触状態に維持することができるフルトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は次の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明は、相対向する凹湾曲状の軌道面を有する入力ディスク及び出力ディスクと、この両ディスクの軌道面間に配置されかつその軌道面上を転動しながら当該両ディスク間のトルク伝達を行う複数の変速ローラと、前記両ディスクの軸心方向に対して傾動可能でかつ前記変速ローラの回転方向に垂直な方向に押し引き可能となるように当該変速ローラを支持する支持部材と、を備えているフルトロイダル型無段変速機において、前記両ディスクの回転速度比で定義される第一変速比と、その両ディスクの軸心方向に対する前記変速ローラの傾動角度から定まる第二変速比との差に基づいてディスクローラ間のスリップの有無を判定する制御装置が設けられていることを特徴とする。
【0009】
後述する実施形態でも述べる通り、この種のフルトロイダル型無段変速機において、ディスクローラ間にスリップが発生していない場合には、両ディスクの回転速度比で定義される第一変速比は、変速ローラの中心が移動していない定常状態においては、変速ローラの傾動角度から定まる第二変速比と一致し、逆に、ディスクローラ間のスリップが大きくなるほど、その第一変速比と第二変速比の差が広がる。このため、これら第一変速比と第二変速比の差を逐次把握しておけば、ディスクローラ間のスリップの有無を判定することができる。
そして、かかるスリップの有無を判定するのに必要となる上記の各変速比のうち、第一変速比については、両ディスクの回転速度の実測値から求めることができ、第二変速比を定めるためのデータとなる変速ローラの傾動角度については、少なくとも支持部材の押し引き方向の移動距離の実測値から求めることができるので、結局、本発明によれば、変速ローラの回転速度を直接実測しなくても、ディスクローラ間のスリップの有無を判定することができる。
【0010】
本発明の無段変速機においては、前記制御装置は、より具体的には、次の式で定義されるスリップ指標Δdを演算し、このスリップ指標Δdが予め求めておいた許容値を超えるか否かでディスクローラ間のスリップの有無を判定する。
Δd=ωo/ωi+Ri/Ro−2Rt×dθ/dt/ωi/Ro
ただし、
ωi:入力ディスクの回転速度
ωo:出力ディスクの回転速度
Ri:入力ディスクの接触半径
Ro:出力ディスクの接触半径
dθ/dt:ディスク軸心回りの変速ローラの中心位置速度
【0011】
この場合、支持部材の押し引き方向の移動距離と同支持部材の軸心回りの回転角度とから変速ローラの傾動角度を算出し、この傾動角度に基づいて第二変速比を求めるようにすれば、ディスク軸心回りの変速ローラの回転変動がない定常状態になっているか否かに関係なく、その傾動角度が正確に算出されるので、より正確なスリップ防止制御を行うことができる。
他方、変速ローラが定常状態であるという条件の下では、支持部材の押し引き方向の移動距離のみから変速ローラの傾動角度を算出し、この傾動角度に基づいて第二変速比を求めることができる。この場合には、支持部材の軸心回りの回転角度を実測するセンサを設ける必要がなくなるので、当該無段変速機の製造コストを低減することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
図4は、本発明に係るフルトロイダル型無段変速機の主要部を構成するバリエータ1の概略断面図である。
同図に示すように、このバリエータ1は、乗用車等の車両のエンジンEにより回転駆動される入力軸2を備えており、その両端近傍にはそれぞれ入力ディスク3が支持されている。各入力ディスク3の一側面には、凹湾曲状の軌道面3bが形成されており、その内周には複数条の溝を切ったスプライン穴3aが形成されている。
【0013】
各入力ディスク3は、入力軸2に形成されたスプライン軸部2aをスプライン穴3aに挿通することにより、入力軸2と一体回転可能に組み付けられている。右側の入力ディスク3は、入力軸2に一体に設けられた係止つば部2bによって図示の状態から右方への移動が規制されている。また、左側の入力ディスク3の軌道面3bと反対側の背面には、当該背面全体を覆うケーシング4と、ケーシング4の内周に内接したバックアップ板5と、入力軸2に固定されかつ入力ディスク3及びバックアップ板5が軸方向の左方に移動することを規制する係止リング6及び止め輪7と、係止リング6の外周に装着されかつバックアップ板5に予圧を付与するワッシャ8が設けられている。
【0014】
バックアップ板5の外周にはOリング5aが装着されており、ケーシング4の内面と、入力ディスク3の背面と、バックアップ板5とによって囲まれた入力軸2の周りの空間に油室9aが形成されている。この油室9aは、入力軸2の軸線方向に延びる第一油路2cと、その右端部から径方向に延びる第二油路2dとに連通しており、第一油路2cには外部から油圧が供給される。このようにして、ケーシング4及びバックアップ板5を押圧シリンダ9とし、入力ディスク3をピストンとする油圧シリンダ装置が構成されている。
【0015】
入力軸2の軸方向中央部には、バリエータ1の出力部10が入力軸2に対して相対回転自在に支持されている。この出力部10は、出力部材11と、この出力部材11にそれぞれ一体回転可能に支持された一対の出力ディスク12とを備えている。各出力ディスク12の、入力ディスク3の軌道面3bに対向する一側面には、凹湾曲状の軌道面12bが形成されている。また、出力部材11の外周には、動力伝達用のチェーン13と噛み合うスプロケットギア11aが形成されている。
【0016】
入力ディスク3の軌道面3bとこれに対向する出力ディスク12の軌道面12bとの間はトロイド状隙間として構成されており、このトロイド状隙間には、各軌道面3b,12bと圧接して回転する円盤状の変速ローラ14が円周等配に3個(図4では、1個のみ図示)設けられている。従って、変速ローラ14は左右一対のトロイド状隙間に計6個配置されている。この各ローラ14は、キャリッジ(支持部材)15によって回転軸14a周りに回転自在に支持されているとともに、当該キャリッジ15によって各軌道面3b,12bに対する相対的な接触位置を調整できるようになっている。
【0017】
本実施形態のバリエータ1において、第一油路2cを介して油室9aに端末負荷としての油圧が付与されると、左側の入力ディスク3が右方に付勢され、変速ローラ14を介して左側の出力ディスク12が右方に付勢される。これにより、右側の出力ディスク12から出力部材11を介して、左側の出力ディスク12が右方に付勢される。さらに、右側の出力ディスク12から変速ローラ14を介して右側の入力ディスク3が押圧されるが、この入力ディスク3は係止つば部2bにより止められているため、端末負荷がバリエータ1全体に付与され、左右の各変速ローラ14が両ディスク3,12間に所定の圧力で挟持された状態となる。そして、この状態で入力軸2に動力が付与されると、入力ディスク3から出力ディスク12に対して合計6個の変速ローラ14を介してトルクが伝達されることになる。
【0018】
図1は、上記バリエータ1の油圧制御システムの回路構成図である。
なお、この図1では、説明の簡略化のために一個の変速ローラ14に関する回路構成を示しているが、実際には、各ローラ14ごとに変速シリンダ16が設けられている。
同図に示すように、変速ローラ14には、所定のキャスター角βをもって傾斜したキャリッジ15が連結されている。このキャリッジ15には変速シリンダ16が接続されていて、このシリンダ16の各油室16a,16bにそれぞれ供給される油圧P1,P2の差圧Pr(=P1−P2)により、前進又は後退方向に駆動力(以下、リアクション力という。)が付与される。
【0019】
すなわち、バリエータ1の油圧回路には、第一ポンプ17と第一圧力制御弁18により構成される油圧発生経路と、第二ポンプ20と第二圧力制御弁21により構成される油圧発生経路が設けられており、第一圧力制御弁18によって制御された油圧は変速シリンダ16の第一油室16aと押圧シリンダ9に供給され、第二圧力制御弁21によって制御された油圧は変速シリンダ16の第二油室16bに供給される。
しかして、上記各圧力制御弁18,21は、車両の電子制御ユニットである制御装置(以下、ECUという。)23の指令によって作動し、変速シリンダ16の第一及び第二油室16a,16bの圧力を調整して、キャリッジ15に前進又は後退方向のリアクション力を付与するものである。第一油室16aに付与される油圧と第二油室16bに付与される油圧は、それぞれ第一及び第二圧力計24,25によってリアルタイムに検出され、それらの検出値P1,P2はいずれもECU23に送られている。
【0020】
また、本実施形態のバリエータ1の油圧回路では、前記第一及び第二ポンプ17,20とは別系統で、潤滑オイル専用の第三ポンプ34とリリーフ弁35により構成される油圧発生経路が設けられており、この第三ポンプ34の吐出側は、オイルクーラ等よりなる冷却装置(通常はオフ)26及び流量調整弁27を経て、各ディスク3,12の近傍に配置されたノズル28に接続されている。このため、上記ノズル28から、各ディスク3,12の軌道面3b,12bとローラ14の転動面の接触部近傍に対して、作動油が潤滑オイルとして噴射されるようになっている。 なお、冷却装置26からノズル28に至るまでの配管経路には温度センサ29が接続されており、この温度センサ29は潤滑オイルの温度を検出して、その出力信号をECU23に送る。
【0021】
ECU23には、入力ディスク3の回転速度ωiを検出するための速度センサ30と、出力ディスク12の回転速度ωoを検出するための速度センサ31が接続され、これらの速度センサ30,31の出力信号は、所定のサンプリング時間でリアルタイムにECU23に取り込まれている。また、ECU23には、変速シリンダ16のピストン位置xp(キャリッジ15の押し引き方向の移動距離)を検出するための変位センサ32と、キャリッジ15の軸心回りの回転角度γ(図3(b)参照)を検出するためのロータリエンコーダ等よりなる回転角センサ33が接続され、これらのセンサ32,33の出力信号も、所定のサンプリング時間でリアルタイムにECU23に取り込まれている。
【0022】
更に、図示していないが、ECU23には、車速センサ、車体の傾斜角センサ、アクセルペダルやブレーキペダルに対応して設けられた圧力センサ、エンジン回転数センサから、それぞれ、車速、車体の傾斜角、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込み圧力、エンジン回転数等の情報が常時入力されている。
上記構成に係るバリエータ1では、キャリッジ15を所定のキャスター角βで傾斜させた状態で各ディスク3,12間に変速ローラ14を介装しているので、車両の運転中において、キャリッジ15のリアクション力(F=(P1−P2)×シリンダ断面積)と出力ディスク12を駆動するのに必要な出力トルクToとの間に力の不均衡が生じると、変速ローラ14及びキャリッジ15は、キャリッジ15の軸線周りに回転軸14aを傾斜させることによりその不均衡を解消しようとする。
【0023】
これにより、変速ローラ14の位置が図4の二点鎖線に示すように変化し、両ディスク3,12間の速度比が連続的に変化する。従って、例えば、リアクション力Fに抗してキャリッジ15が押し返されるような大きな抵抗力が出力ディスク12に発生すると、変速ローラ14は回転軸14aの傾斜角度を変化させてより大きな出力トルクを発生させ、このようにしてバリエータ1の変速比が結果的に「シフトダウン」されることになる。
【0024】
すなわち、本実施形態のバリエータ1では、変速ローラ14を支持するキャリッジ15のリアクション力Fの変化のみに対応して瞬時に必要な出力トルクToが得られるトルク制御が行われており、その結果として変速比が変化しているものである。このようなトルク及び変速比の変化は、単純に、リアクション力Fの増減又は外部抵抗(走行抵抗)の変動に対する応答のみで実行され、極めて迅速で効率的であることが確認されている。なお、図4における左右各3個ずつのローラ14は、左右対称になるように同期して回転軸14aを傾斜させ、それらの傾斜角度は6個のローラすべてについて一致している。
【0025】
次に、図2のフローチャートを参照して、前記ECU23によって行われるディスクローラ間のスリップを防止するための制御方式について説明する。
まず、ECU23は、フラグFをゼロに設定して各データをイニシャライズしたあと(ステップS1)、この制御に必要なデータとして、前記入力ディスク3の回転速度ωi、出力ディスクの回転速度ωo、変速シリンダ16のピストン位置xp、及び、キャリッジ15の回転角度γを、それぞれデータ入力する(ステップS2)。
【0026】
ところで、上記ピストン位置xpは、両ディスク3,12の軸心回りにおける変速ローラ14の中心位置θ(図3(c)参照)を用いて、次の式(1)のように近似して表される。
(1) xp=Rt×sinθ×cosβ
従って、この式(1)にピストン位置xpを代入することにより、変速ローラ14の中心位置θを算出することができる。なお、この式(1)において、Rtは、変速ローラ14の両ディスク3,12のトロイド半径である(図3(a)参照)。
【0027】
また、両ディスク3,12の軸心方向に対する変速ローラ14の傾動角度φは、前記キャリッジ15のキャスター角β、同キャリッジ15の回転角度γ及び変速ローラ14の中心位置θとから、次の式(2)により算出することができる。
(2) φ=Arctan(cosβsinγ/(sinβsinγsinθ+cosγcosθ))
更に、入力ディスク3の接触半径Riと出力ディスクの接触半径Ro(図3(a)参照)とは、トロイド半径Rt、ローラ半径Rr及び上記傾動角度φを用いて、それぞれ、次の式(3)及び(4)のように表すことができる。
(3) Ri=Rt−Rr×sinφ
(4) Ro=Rt+Rr×sinφ
【0028】
一方、仮に、ディスクローラ間に滑りが生じていないと仮定した場合、変速ローラ14に関して、その中心位置における回転変位の釣り合いを考えると、次の式(5)が成立する。ただし、この式(5)において、dθ/dtは、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心位置速度を意味する。
(5) (ωiRi+ωoRo)/2=Rt×dθ/dt
そこで、上記式(5)の両辺をωiとRoで乗算して無次元化し、その右辺を左辺に移項することにより、両ディスク3,12と変速ローラ14の接触部における滑りの指標(スリップ指標)Δdとして次の式(6)が得られる。
(6) Δd=ωo/ωi+Ri/Ro−2Rt×dθ/dt/ωi/Ro
【0029】
かかるスリップ指標Δdを構成する式(6)の右辺第一項〜第三項のうち、第一項は、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiであり、第二項は、変速ローラ14のディスク3,12に対する接触半径比で定義される第二変速比Ri/Roであり、第三項は、ディスク軸心回りの変速ローラ14の時間的変動dθ/dtに伴う変動項を表す。なお、両ディスク3,12は逆向きに回転することから第一変速比ωo/ωiは必ず負の数になるので、上記式(6)の右辺第一項及び第二項は両変速比ωo/ωi,Ri/Ro間の差を表している。
【0030】
そして、かかる式(6)で定義されるスリップ指標Δdにおいて、変速ローラ14の接触部に滑りがない場合には当該指標Δdはゼロとなり、接触部における滑りが大きいほど当該指標Δdは大きくなる。
すなわち、ディスクローラ間にスリップが発生していない場合には、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiは、変速ローラ14の中心が移動していない定常状態(dθ/dt=0の状態)においては、変速ローラ14の傾動角度φから定まる第二変速比Ri/Roと一致し、これとは逆に、ディスクローラ間のスリップが大きくなるほど、その第一変速比ωo/ωiと第二変速比Ri/Roの差が広がることになる。従って、これら第一変速比ωo/ωiと第二変速比Ri/Roの差を逐次把握しておけば、ディスクローラ間のスリップの有無を判定することができる。
【0031】
一方、前記式(6)の右辺各項のうち、第一変速比ωo/ωiは、両ディスク3,12の回転速度センサ30,31の実測値ωi,ωoから求めることができ、第二変速比Ri/Roは、ピストン位置xpを前記式(1)に代入して得られた変速ローラ14の中心位置θと、キャリッジ15の回転角センサ33の実測値γとを前記式(2)に代入して変速ローラ14の傾動角度φを演算し、更に、この傾動角度φを前記式(3)及び(4)に代入して得られた各半径Ri,Roより求めることができる。また、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心位置速度dθ/dtは、前記(1)式によって所定のサンプリング時間で得られている中心位置θを、そのサンプリング時間ごとに微分することによって得られる。
【0032】
そこで、ECU23は、両ディスク3,12の回転速度比で定義される第一変速比ωo/ωiと、両ディスク3,12の軸心方向に対する変速ローラ14の傾動角度φから定まる第二変速比Ri/Roと、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心位置速度dθ/dtを演算したあと(ステップS3)、それら変速比と速度から構成される前記式(6)で定義されるスリップ指標Δdを演算する(ステップS4)。
【0033】
そして、ECU23には、実機による実験又はシミュレーションによって求められた、ディスクローラ間でスリップが発生しない程度のスリップ指標Δdの許容値dmaxが予め格納されており、ECU23は、スリップ指標Δdが予め求めておいたその許容値dmaxを超えるか否かでディスクローラ間のスリップの有無を判定する(ステップS5)。すなわち、ECU23は、求められたスリップ指標Δdが許容値dmax以上である場合には、フラグFを1にして(ステップS6)、ディスクローラ間の接触条件を緩和する信号を出力する(ステップS7)。
【0034】
ここで、ディスクローラ間の接触条件とは、入出力ディスク3,12と変速ローラ14との接触荷重、接触面圧、相対速度、表面粗さ、接触面間の油膜厚さ、油膜パラメータ及び油温等のことであり、接触部の損傷や寿命、トラクション、伝達効率、振動等に影響を及ぼす条件のことを意味する。従って、これらの接触条件を緩和するとは、ディスクローラ間の接触部の損傷を防止するために、或いは、接触部のトラクションの低下を防止するために接触荷重を低減したり、相対速度を低減したり、潤滑油温度を低下させたり、潤滑油の供給量を増加したりすることを意味する。
【0035】
他方、ECU23は、求められたスリップ指標Δdが許容値dmax未満である場合には、フラグが1であるか否か、すなわち、接触条件緩和信号を出力中であるか否かを確認する(ステップS8)。そして、出力中であれば、ECU23は、そのフラグFをゼロに戻してから(ステップS9)、接触条件緩和信号を解除する信号を出力したあと(ステップS10)、前記ステップS2に戻って引き続きスリップ指標Δdを監視する。また、出力中でない場合には、ECU23は、ステップS8からそのままステップS2に戻り、引き続きスリップ指標Δdを監視する。
【0036】
このように、本実施形態に係る無段変速機によれば、両ディスク3,12の回転速度ωi,ωo、ピストン移動量xp及びキャリッジの回転角度γから演算可能なスリップ指標Δdを逐次求め、この指標Δdが予め求めておいた許容値dmaxを超えるか否かでディスクローラ間のスリップの有無を判定するようにしているので、変速ローラ14の回転速度を直接実測することなく、ディスクローラ間のスリップ(特に、グロススリップ)の有無を判定することができる。
【0037】
なお、上記した実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明に含まれる。
例えば、上記実施形態において、変速ローラ14の中心がディスク軸心回りに回転しない定常状態(dθ/dt=0)であるという条件の下では、キャリッジ15の押し引き方向の移動距離であるピストン位置xpのみから変速ローラ14の傾動角度φを算出し、この傾動角度φに基づいて第二変速比Ri/Roを求めることにしてもよい。
【0038】
すなわち、ディスク軸心回りの変速ローラ14の中心移動がない定常状態の場合(dθ/dt=0)には、次の式(7)が成立する。
(7) sinθ=tanβtanφ
そして、この場合には、上記式(7)により、変速ローラ14の傾動角度φを同ローラ14の中心位置θのみで表すことができ、更に、この中心位置θは前記式(1)によってピストン位置xpから求めることができる。
このため、結局、第二変速比Ri/Roは、ピストン位置xpを前記式(1)に代入して変速ローラ14の中心位置θを求め、この中心位置θを前記式(7)に代入して変速ローラ14の傾動角度φを求め、更に、この傾動角度φを前記式(3)及び(4)に代入して得られた各半径Ri,Roより求めることができる。
【0039】
従って、このように変速ローラ14が定常状態(dθ/dt=0)にあるという条件を付加した場合には、キャリッジ15の軸心回りの回転角度γを実測するセンサ33を設けなくても、前記スリップ指標Δdによるスリップ防止制御を行うことができるので、フルトロイダル型無段変速機の製造コストを低減することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、変速ローラの回転速度を直接実測しなくてもディスクローラ間のスリップの有無を判定することができるので、潤滑油存在部にセンサを設ける等の装置の複雑化を招来することなく、ディスクローラ間を適正な接触状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無段変速機の主要部を構成するバリエータの油圧制御システムの回路構成図である。
【図2】ECUで行われるスリップ防止制御のフローチャートである。
【図3】各パラメータの概略説明図である。
【図4】バリエータの概略断面図である。
【符号の説明】
1 バリエータ
3 入力ディスク
3b 軌道面
12 出力ディスク
12b 軌道面
14 変速ローラ
15 キャリッジ(支持部材)
23 制御装置(ECU)
Claims (4)
- 相対向する凹湾曲状の軌道面を有する入力ディスク及び出力ディスクと、この両ディスクの軌道面間に配置されかつその軌道面上を転動しながら当該両ディスク間のトルク伝達を行う複数の変速ローラと、前記両ディスクの軸心方向に対して傾動可能でかつ前記変速ローラの回転方向に垂直な方向に押し引き可能となるように当該変速ローラを支持する支持部材と、を備えているフルトロイダル型無段変速機において、
前記両ディスクの回転速度比で定義される第一変速比と、その両ディスクの軸心方向に対する前記変速ローラの傾動角度から定まる第二変速比との差に基づいてディスクローラ間のスリップの有無を判定する制御装置が設けられていることを特徴とするフルトロイダル型無断変速機。 - 制御装置は、次の式で定義されるスリップ指標Δdを演算し、このスリップ指標Δdが予め求めておいた許容値を超えるか否かでディスクローラ間のスリップの有無を判定するものである請求項1に記載のフルトロイダル型無段変速機。
Δd=ωo/ωi+Ri/Ro−2Rt×dθ/dt/ωi/Ro
ただし、
ωi:入力ディスクの回転速度
ωo:出力ディスクの回転速度
Ri:入力ディスクの接触半径
Ro:出力ディスクの接触半径
dθ/dt:ディスク軸心回りの変速ローラの中心位置速度 - 制御装置は、支持部材の押し引き方向の移動距離と同支持部材の軸心回りの回転角度とから変速ローラの傾動角度を算出し、この傾動角度に基づいて第二変速比を求めるものである請求項1又は2に記載のフルトロイダル型無段変速機。
- 制御装置は、支持部材の押し引き方向の移動距離のみから変速ローラの傾動角度を算出し、この傾動角度に基づいて第二変速比を求めるものである請求項1又は2に記載のフルトロイダル型無段変速機。
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