JP2004300419A - 改質ろ液の製造方法および該製造方法で得られる改質ろ液 - Google Patents

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和誠 井上
Tsutomu Katagiri
務 片桐
Katsuaki Osato
克明 大里
Fujio Tsuchiya
富士雄 土屋
Ryoko Sudo
良考 須藤
Chiaki Suyama
千秋 須山
Takashi Yamaguchi
剛史 山口
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Abstract

【課題】 沈降性タールを含まない、木酢液の代替品を提供する。
【解決手段】 破砕された木質系バイオマスを380℃以下、水の存在下で飽和水蒸気圧以上の圧力条件で改質処理する改質工程と、改質工程で得られた改質反応物を固形成分と液体成分に分離する分離工程とを有し、分離工程で得られた液体成分を改質ろ液として回収することを特徴とする改質ろ液の製造方法、およびこの製造方法で得られ、沈降性タールを実質的に含まず、酢酸に対するフェノール類の濃度比が0.1以上で、乳酸の濃度比が0.01〜1.0で、グリコール酸の濃度比が0.01〜2.0である改質ろ液。
【選択図】 なし

Description

本発明は、改質ろ液の製造方法および該製造方法で得られる改質ろ液に関する。
現代の農業では、化学肥料、農薬を大量に投入することによって大量の農産物を生産している。しかし、農薬等による環境汚染が社会問題となっている。
田畑に木酢液を用いると、化学肥料や農薬を減らすことができることはよく知られている。
木酢液は炭化炉あるいは乾留炉により木質系原料を炭化する時に生じる排煙を冷却、凝縮させた液体(粗木酢液)を3ヶ月以上静置して上層の約10質量%の軽質油、下層の約20質量%の沈降性タールを除いた約70質量%の中層の液体とされている。
しかし、上記の従来法による木酢液は3ヶ月以上の静置により沈降性タールを除いても、まだ木酢液中には沈降性タールが溶解して残存しており、この沈降性タールには3,4−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルアンスレン等の発ガン性物質をはじめとした有害物質が含まれており、これらの除去のため蒸留等の操作を別途実施している。
木酢液の製造にあたって、炭化窯内の温度を250〜420℃という低温度として炭化することによりベンツピレンの発生を抑制した木酢液の製造方法の提案がある(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、炭化窯内に熱風を供給する熱風炉と炭化窯内に発生する煙の煙道と、煙道から煙を吸引する吸引ファンと、風量を調整する風量調節ダンパーを備え、炭化窯内に設けた温度計からのデータで熱風炉のバーナーの焚き量と風量調節ダンパーで炭化窯内の温度を250〜420℃に調節するものである。
また、燃焼ガスを木材乾燥室に送り込み、燃焼ガスの混在する木材乾燥室の一部を燃焼室に返送することにより低酸素濃度条件で木質材料を燃焼させ、得られた燃焼ガスを冷却して良質な木酢液を得る提案もある(例えば、特許文献2参照。)。
特開2000−44965号公報 特開平10−158660号公報
特許文献1および特許文献2に記載の提案は、いずれも製造条件の振れ幅を小さく制御しているものの、原理的には燃焼技術を基礎としており、従来の木酢液製造方法の範疇をでることはできず、沈降性タールの生成を防止することはできていない。
また、従来の木酢液の製造方法では、木質材料の燃焼・炭化で、加熱量と送風・排気のコントロールのみで木酢液を得ているので木酢液の製造条件のコントロールが困難であり、得られる木酢液の品質も不安定であるという問題があった。
本発明者らは、燃焼技術を用いない方法である木質系バイオマスを加圧熱水で改質してスラリー燃料を得る際に副生するろ液が木酢液と類似の組成を有し、防虫性、抗菌性、植物育成促進効果等の性能が木酢液に対して同等以上であり、沈降性タールを実質的に含有しないことを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の改質ろ液の製造方法は、破砕された木質系バイオマスを380℃以下、水の存在下で飽和水蒸気圧以上の圧力条件で改質処理する改質工程と、改質工程で得られた改質反応物を固形成分と液体成分に分離する分離工程とを有し、分離工程で得られた液体成分を改質ろ液として回収することを特徴とする。
また、本発明の改質ろ液は前記製造方法で得られ、沈降性タールを実質的に含まず、酢酸に対するフェノール類の濃度比が0.1以上であることを特徴とする。
さらに、酢酸に対する乳酸の濃度比が0.01〜1.0であり、酢酸に対するグリコール酸の濃度比が0.01〜2.0である改質ろ液であることを特徴とする。
本発明の改質ろ液の製造方法によれば、沈降性タールや発ガン性物質を含まない、木酢液の同等品を効率的に安定して得ることができる。
また、本発明の改質ろ液は、木酢液の代替品としていずれの用途にも使用可能であり沈降性タールを含有しないので、3ヶ月の静置処理を行わずとも、製造直後から使用可能である。また、発ガン性物質を含まないので安全である。
本発明で用いられる木質系バイオマスとしては、間伐材、おがくず、チップ、端材などの木材加工木屑、街路樹剪定材、木質建築廃材、樹皮、流木等を例示できる。
本発明の改質ろ液の製造方法は、改質工程と、分離工程とを有する。
改質工程においては、予め破砕された木質系バイオマスを380℃以下、水の存在下で飽和水蒸気圧以上の圧力をかけて改質処理する。
改質工程における処理温度は、200〜380℃、好ましくは220〜350℃、さらに好ましくは250〜320℃である。
操作圧力としては、水の飽和水蒸気圧以上であれば特に限定されないが、水の飽和蒸気圧より0.5〜5MPa高くするのが好ましく、1〜3MPa高くするのがより好ましい。
改質工程における処理時間は特に限定されるものではないが、2分〜120分であることが好ましく、10〜50分であることがより好ましく、20〜30分が更に好ましい。
この処理時間は処理温度とのかねあいであり、処理温度が高ければ短い処理時間とすることができ、処理温度が低ければ処理時間をより長くとればよい。
改質工程は、オートクレーブなどを用いたバッチ処理であってもよく、1つ又は2以上の反応帯域からなる連続式反応装置であってもよい。
改質工程においては、上記温度範囲に保ち、装置内では加圧熱水で保持されている条件が必要である。
改質処理にあたっては、木質系バイオマス自身が保有する水分で改質することができるが、さらに水を加えてもよい。加える水の全量または一部を後述の分離工程で生成する液体成分で代替してもよい。
改質工程に用いられる水の量は、木質系バイオマス原料が元々含有する水分量によっても異なるが、木質系バイオマス原料に対して質量(ドライベース)で、1〜20倍程度であるのが好ましく、0.5〜10倍程度とするのがより好ましい。
改質工程は、木質系バイオマス原料を炭化、すなわち木質系バイオマス原料の酸素/炭素原子比を減少させて、燃料としての発熱量を向上させる工程であり、水の存在下、飽和蒸気圧以上の圧力で所定時間所定の温度範囲におくことにより酸素/炭素原子比を減少させる。同時に木質系バイオマスに含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンがそれぞれ熱分解を受けてこれらに由来する分解物が水分中に溶出する。セルロースは200℃から、ヘミセルロースは150℃から、リグニンは280℃から熱分解を開始する。セルロースからは酢酸等が、ヘミセルロースからはフルフラール類が、リグニンからはフェノール類が主として生成する。
改質工程において、水の存在下で改質処理を行うと、従来の炭化炉あるいは乾留炉での木酢液の製造に比べて、木酢液に相当する成分が効率よく回収される。
この理由は、従来の木酢液の製造方法では木酢液の成分を気化させた後、冷却しているのに比べ、本発明の製造方法では、高温かつ飽和水蒸気圧以上の圧力下にある亜臨界状態の水分が抽出溶剤として作用するため効率的な抽出(回収)が行われているものと推測される。
すなわち、亜臨界状態の水分の存在下で改質しているので、燃焼技術を基本とする従来の炭化処理に比べて部分的に脱酸素するマイルドな熱分解処理によって酸素/炭素原子比を低下させることになり、熱分解生成物中には実質的に沈降性タールが生成することがない。また、加熱温度が380℃以下で改質処理しているので、3,4−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルアンスレン等の発ガン性物質を生成することがない。
改質工程により得られる改質反応物は、冷却して常圧に戻した後、分離工程において、固体成分と液体成分とに分離される。
分離工程により、固体成分が改質バイオマスのケーキとして得られる。このケーキは、固形分濃度が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
分離工程で分離された液体成分が、本発明の改質ろ液である。
この際、改質ろ液を前記改質工程の水分として使用することもできる。
分離工程における固体成分と液体成分の分離は、葉状濾過器、フィルタープレス、圧搾機、遠心ろ過機、遠心分離機など通常分離に用いられるものであればどのような装置を用いて行ってもよい。
この分離は取り扱える範囲であれば高温の状態で行ってもよく、常温で行ってもよい。
本発明の改質ろ液の製造方法においては、上述のように木質系バイオマス原料を亜臨界状態の水分の存在下で、380℃以下という比較的マイルドな温度条件で熱分解処理しているので、温度、滞留時間等を厳密に制御できるため、安定した条件下で改質ろ液の製造が可能であり、安定した品質の改質ろ液を提供することができる。
このようにして回収された改質ろ液中には酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、クロトン酸等の有機酸;フェノール、バニリン、メトキシフェノール、グアヤコール等のフェノール類;メチルフルフラール等のフルフラール類;シクロテン類およびマルトールが含まれる。
そして、本発明の改質ろ液の特性は、沈降性タールを実質的に含まず、酢酸に対するフェノール類の濃度比が0.1以上である。
本発明において、沈降性タールとは、溶液を暗所で3ヶ月静置して下層に沈降するタール状物質であり、木タールともいう。また、実質的に含まないとは、タール状物質を分離する必要のない量であることを意味し、1質量%以下である。
また、本発明におけるフェノール類とは、フェノール以外に、(1)2−メトキシフェノール(グアヤコール)、(2)4−メチル−2−メトキシフェノール、(3)4−エチル−2−メトキシフェノール、(4)2,6−ジメトキシフェノール、(5)2,6−ジメトキシ−4−メチルフェノール、(6)p−クレゾール、(7)m−クレゾール、(8)o−クレゾール、(9)バニリンを含み、10種のフェノール系化合物の総称である。
さらに、本発明の改質ろ液の特性は、乳酸およびグリコール酸を所定濃度含有するものである。酢酸に対する乳酸の濃度比は0.01〜1.0、好ましくは0.05〜0.8の範囲である。この乳酸は、従来の木酢液には含有されておらず、本発明の改質ろ液に固有のものであり、乳酸を含有することにより、発酵環境の腐敗菌の増加を抑制する効果等が期待される。
酢酸に対するグリコール酸の濃度比は、0.01〜2.0、好ましくは0.05〜1.5の範囲である。このグリコール酸は、易生分解性であり、乳酸とともに腐敗菌の増殖を抑え、有用な菌の増殖に寄与することが期待される。
有機酸の濃度は従来法で製造された木酢液に比べると低いが、木酢液の田畑への散布にあたっては木酢液は希釈して使用されており、本発明の改質ろ液は通常使用にあたっては木酢液と比較しても遜色のないものである。
本発明の改質ろ液中のフェノール類の有機酸、特に酢酸との相対的な存在比は0.1以上と一般の木酢液が0.05程度であるのにに比べると大きい。フェノール類は防虫性、抗菌性に優れるために、本発明の改質ろ液は防虫性、抗菌性に優れる木酢液同等品として優れた特性を示す。
フェノール類中にはo−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール類も含まれるがその存在量は従来法による木酢液と比較すると極めて少ない。従来法による木酢液には通常数百ppm含まれるが、本発明の改質ろ液中に含まれるクレゾール類は、水質汚濁防止法で定める排水基準(5ppm)を下回る量である。
従来法で製造される木酢液は刺激的な燻煙臭が強く、この刺激臭を嫌うユーザーのためにあえて脱臭操作を行うなどの工夫も行われているが、本発明の改質ろ液はこの燻煙臭は強くなく、さらに、成分中にグアヤコール、マルトール、バニリン、シクロテン、フルフラール等の香気成分が含まれるため、好ましく感じられる芳香臭を有している。
本発明の改質ろ液には沈降タール(木タール)が実質的に含まれないため、従
来法による木酢液で行われている3ヶ月以上の静置が不要である。また、3,4
−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルア
ンスレン等の発ガン性物質も含まれない。
本発明の改質ろ液は減農薬剤の他、木材防腐剤としても使用可能である。
さらに、本発明の改質ろ液は防虫効果を有し、植物成長促進効果も有する。このような効果から、本発明の改質ろ液は土壌改良補助剤、土壌消毒剤として有効である。
さらに、畜舎の脱臭、防臭用の脱臭原料としても有効であり、木酢液と同様、飼料添加剤、食品添加物を含め、その他広範囲の用途に使用可能である。
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
木材として、乾燥したおが屑(杉)を破砕して粒径0.5mm以下にしたものを用い、このおが屑に水を加え、攪拌混合しておが屑濃度が10質量%の原料スラリーを調製した。
改質工程においては連続式の加圧熱水処理装置を用いた。
この加圧熱水処理装置は、原料供給タンク、原料供給ポンプ、加圧熱水処理部を有し、原料供給タンクと加圧熱水処理部とが原料供給ポンプを介して配管によりつながれているものである。原料供給ポンプはスラリーポンプであり、その吐出側には液の逆流を防止する逆止弁が接続され、それを経て加圧熱水処理部に接続している。加圧熱水処理部は充分な滞留時間を確保できるよう設計された内径8mmのステンレス製スパイラル管で構成され、所定の温度まで加熱する余熱管部分と所定時間それを維持する反応管部分とからなり、全長260mである。この予熱管および反応管は外部加熱ヒーター(電気ヒーター)を備え、温度制御可能なシステムを有している。反応管の出口側には改質工程における水溶媒を液相に保つため、その蒸気圧以上の圧となるよう窒素ガスを封入する蓄圧器が付帯さ
れている。その後続工程に、加熱熱水処理部は反応後の生成物を払い出すためのロックホッパー型の落圧システムを経て生成物受槽に接続されている。ロックホッパー型の落圧システムは上下のバルブの開閉をタイマー制御できるようにしてあり、生成物の排出操作時に、反応管部分への圧力変動等が影響しないように作動する。生成物受槽は冷却管を付帯している。
上記で調製した原料スラリーを原料供給タンクに入れ、原料供給ポンプにより、加圧熱水処理部に供給した。加圧熱水処理部において、原料スラリーを300℃まで予熱した後、その温度で反応管部分に30分滞留(圧力12MPa)するようにした。反応管部分でおが屑は炭化し、また、おが屑中のセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンの一部が熱分解して熱分解生成物が熱水中に溶解してくる。
改質生成物を落圧システムを経て、生成物受槽に間欠的に排出した。生成物受槽内で生成物を常温付近まで冷却した後、生成物受槽の底面の開閉弁から取り出し、別途設置しておいた濾過器にかけて、固体部分と改質ろ液部分に分けた。改質ろ液中には沈降性のタール状物質は認められなかった。
固体部分は、例えば粉砕して、水と界面活性剤を加えて混練して高粘性のスラリーにすると高品質のスラリー燃料となる。
得られた改質ろ液は芳香臭を有する赤褐色の透明な均一水溶液で、そのpHは2.9、有機酸含有量は1.0質量%、比重は1.003であった。また、改質ろ液を3ヶ月暗所に放置しても沈降性タールは沈降してこなかった。
さらに、GC−MS法とLC法とにより成分分析を行った結果、有機酸として、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、クロトン酸が含まれ、フェノール性物質として、フェノール、バニリン、メトキシフェノール、グアヤコールが含まれ、その他、フルフラール類、シクロテン類およびマルトールが含まれることを確認した。これらの分析の結果、得られた改質ろ液は木酢液の成分と共通の成分を多く含むことが明らかとなった。
得られた改質ろ液における酢酸に対するフェノール類の濃度比は0.16であった。
また、得られた改質ろ液における酢酸に対する乳酸の濃度比は0.6であり、グリコール酸の濃度比は1.2であった。
クレゾール類の総含有量は5ppm未満であった。
また、液体クロマト分析を行った結果、通常、木酢液中に含まれる3,4−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルアンスレン等の発ガン性物質は検出されなかった。
また、得られた炭化物についてもこれらの発ガン性物質が含まれないことを確認した。
この連続式の加圧熱水処理装置の運転中、定期的に改質ろ液の品質を調べたところ、終始、安定な品質の改質ろ液が得られていた。
(実施例2)
おが屑(杉)の代わりに乾燥して粒径0.5mm以下に破砕したアカシアマンギュウムを用いた以外は実施例1と同様にして黒色の固形分と改質ろ液を得た。
固形分は炭化しており、改質ろ液は芳香臭を有する赤褐色の透明な均一水溶液であった。この場合も、溶液中には沈降性タールの生成は認められなかった。
この改質ろ液について分析した結果、そのpHは2.9、有機酸含有量は1.0質量%であり、沈降性タールは含まれなかった。
また、組成分析の結果、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、クロトン酸等の有機酸、フェノール、バニリン、メトキシフェノール、グアヤコール等のフェノール類の他、メチルフルフラール等のフルフラール類やシクロテン類等が確認された。
得られた改質ろ液における酢酸に対するフェノール類の濃度比は0.11であり、グリコール酸の濃度比は1.3であった。
また、得られた改質ろ液における酢酸に対する乳酸の濃度比は0.4であった。
クレゾール類の総含有量は5ppm未満であった。
この改質ろ液中にも3,4−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルアンスレン等の存在は確認されなかった。
この連続式の加圧熱水処理装置の運転中、定期的に改質ろ液の品質を調べたところ、終始、安定な品質の改質ろ液が得られていた。
(実施例3)
木材として、乾燥して粒径1mm以下に破砕した杉43gに水360gを加えて攪拌混合してスラリー化したものを原料として、内容積1リットルのステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素ガスを封入して、外部から電気ヒーターで加熱し、約1時間半で加圧熱水処理の設定条件(温度270℃、圧力14MPa)として、この状態で30分間維持して改質処理を行った。
その後、加熱ヒーターの電源を切り、ヒーター部分を解放して、オートクレーブを冷却し、常温になってから内容物を取り出した。内容物は炭化物と水溶液からなるスラリーであり、これをヌッチェで吸引ろ過して炭化物と改質ろ液に分けた。固形物はスラリー燃料の原料として利用することができる。
改質ろ液は芳香臭を有する赤褐色の透明な均一水溶液であった。この場合も、溶液中には沈降性タールの生成は認められなかった。
この改質ろ液について分析した結果、そのpHは3.2、有機酸含有量は0.9質量%であり、沈降性タールは含まれなかった。
また、組成分析の結果、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、クロトン酸等の有機酸、フェノール、バニリン、メトキシフェノール、グアヤコール等のフェノール類の他、メチルフルフラール等のフルフラール類やシクロテン類等が確認された。
得られた改質ろ液における酢酸に対するフェノール類の濃度比は0.12であった。
また、得られた改質ろ液における酢酸に対する乳酸の濃度比は0.5であり、グリコール酸の濃度比は1.4であった。
クレゾール類の総含有量は5ppm未満であった。
この改質ろ液中にも3,4−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルアンスレン等の存在は確認されなかった。
(実施例4)
木材として、乾燥して粒径1mm以下に破砕した杉40gに水360gを加えて攪拌混合してスラリー化したものを原料として、内容積1リットルのステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素ガスを封入して、外部から電気ヒーターで加熱し、約1時間半で加圧熱水処理の設定条件(温度220℃、圧力5MPa)として、この状態で30分間維持して改質処理を行った。
その後、加熱ヒーターの電源を切り、ヒーター部分を解放して、オートクレーブを冷却し、常温になってから内容物を取り出した。内容物は炭化物と水溶液からなるスラリーであり、これをヌッチェで吸引ろ過して炭化物と改質ろ液に分けた。
改質ろ液は、芳香臭を有する淡赤褐色の透明な均一水溶液であった。この場合も、溶液中には沈降性タールの生成は認められなかった。
この改質ろ液について分析した結果、そのpHは3.2、有機酸含有量は0.5質量%であり、沈降性タールは含まれなかった。
また、組成分析の結果、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、クロトン酸等の有機酸、フェノール、バニリン、メトキシフェノール、グアヤコール等のフェノール類の他、メチルフルフラール等のフルフラール類やシクロテン類等が確認された。
得られた改質ろ液における酢酸に対するフェノール類の濃度比は0.15であった。
また、得られた改質ろ液における酢酸に対する乳酸の濃度比は0.1であり、グリコール酸の濃度比は0.2であった。
クレゾール類の総含有量は5ppm未満であった。
この改質ろ液中にも3,4−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルアンスレン等の存在は確認されなかった。
実施例1〜4の結果から、本発明の改質ろ液は従来の木酢液に含まれる成分と共通の成分を多く含み、見かけ上の酸度およびpHは木酢液協会が定める規格に合致することがわかる。また、本発明の改質ろ液は、従来の木酢液に見られる沈降性タールを含まないことがわかる。従って、本発明の改質ろ液を木酢液と同様の用途に用いるにあたって、3ヶ月以上静置する必要がない。また、本発明の改質ろ液は3,4−ベンツピレン、1,2,5,6−ジベンズアンスラセン、3−メチルコ−ルアンスレン等の発ガン性物質を含まないことがわかる。
本発明の改質ろ液は、防虫性、抗菌性、植物育成効果などを有し、肥料添加剤、農薬添加剤、土壌改良剤、土壌消毒剤、飼料添加剤などの用途に用いられる。

Claims (5)

  1. 破砕された木質系バイオマスを380℃以下、水の存在下で飽和水蒸気圧以上の圧力条件で改質処理する改質工程と、改質工程で得られた改質反応物を固形成分と液体成分に分離する分離工程とを有し、分離工程で得られた液体成分を改質ろ液として回収することを特徴とする改質ろ液の製造方法。
  2. 改質工程における改質処理が、温度200〜380℃、処理時間2〜120分である請求項1記載の製造方法。
  3. 請求項1または2の製造方法で得られ、沈降性タールを実質的に含まず、酢酸に対するフェノール類の濃度比が0.1以上である改質ろ液。
  4. 酢酸に対する乳酸の濃度比が0.01〜1.0である請求項3記載の改質ろ液。
  5. 酢酸に対するグリコール酸の濃度比が0.01〜2.0である請求項3又は4記載の改質ろ液。
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