JP2004298740A - 薬液調合用膜エレメント及び薬液調合装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】二つの端面21,22及び外周面23を有し、流体の流路となる二つの端面間を貫通する貫通孔が形成された多孔質材料からなる基材20と、貫通孔の内表面に形成されたセラミック膜とを備え、外周面23から基材20を透過して貫通孔内に流入した薬液流体41を、一方の端面21から貫通孔内に流入した稀釈流体42によって高稀釈倍率で混合させて、稀釈薬液流体40として、他方の端面22から流出させる薬液調合用膜エレメント100であって、セラミック膜の膜面積の合計が、それらを透過した稀釈薬液流体40が所定の超低濃度(pH)となるように制御されてなることを特徴とする薬液調合用膜エレメント100。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、薬液調合用膜エレメント及び薬液調合装置に関する。さらに詳しくは、薬液調合装置に配設されて、薬液流体を稀釈流体によって高い稀釈倍率で(超稀釈濃度に)稀釈する際に、汚染の少ない超稀釈濃度の稀釈薬液流体を正確に調合することが可能な薬液調合用膜エレメント及び薬液調合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、半導体、液晶ガラス、フォトマスク等の製造工程で使用する洗浄液として、純水等に微量のアンモニアや硫酸を加えて機能を高めた機能水が用いられている。微量のアンモニア水や硫酸溶液等を純水等に加えてアンモニア等を微量含有する調合液すなわち機能水を製造する方法として、通常、純水等と低い濃度のアンモニア水等を準備し、純水等にアンモニア水等を少量加え混合して機能水を調合することが考えられる。
【0003】しかしながら、例えば、アンモニア水等に対する純水等による稀釈倍率を1000倍以上に大きくして、アンモニアを微量注入した調合液を得ようとすると、特に、連続式で、かつ全体の液量が少量の場合に、正確な濃度の調合液を得ることは極めて困難であるという問題があった。
【0004】また、従来の制御弁、定量注入ポンプを用いようとしても、高稀釈倍率で全体の流量が少量の場合、装置として微小直径の配管を利用しなければならないが、そのような配管には通常の制御弁、定量注入ポンプ等は接続されることができず、また接続できる制御弁、定量注入ポンプは特殊なものであるため高価なものとならざるを得ないという問題があった。
【0005】このような状況に鑑み、拡散注入法を利用した、第1の溶液と着目成分の濃度が第1の溶液よりも高い第2の溶液とを多孔質媒体を介して接触させ、拡散により第2の溶液を第1の溶液中へ注入することを特徴とする二液混合方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−143660号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この拡散注入法で用いられる多孔質媒体(セラミック膜フィルター)では、薬剤(例えば、アンモニア水)の透過量が多きすぎるため、アンモニア水等に対する純水等の稀釈倍率を1000倍以上に大きくして、得られる機能水のpHを9〜10に正確に制御することは極めて困難であるとともに、純水等が多孔質媒体(セラミック膜フィルター)の外表面を通過するため、得られる機能水に多孔質媒体(セラミック膜フィルター)の外表面から微粒子が混入するという問題があった。
【0008】本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、薬液調合装置に配設されて、薬液流体を稀釈流体によって高い稀釈倍率で(超稀釈濃度に)稀釈する際に、汚染の少ない超稀釈濃度の稀釈薬液流体を正確に調合することが可能な薬液調合用膜エレメント及び薬液調合装を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を達成するため種々研究した結果、流動状態下にある稀釈流体に薬液流体を注入してpHをインラインにて制御する時に、薬液流体の注入量の制御を、多孔質材料からなる基材がモノリス型の場合、貫通孔に形成されたセラミック膜の膜面積の合計(セラミック膜が形成された貫通孔の個数)、及びチューブラー型の場合、基材(貫通孔)に形成されたセラミック膜の膜面積を制御することによって、汚染の少ない超稀釈濃度の稀釈薬液流体を正確に調合することが可能な薬液調合用膜エレメントを実現することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
[1] 二つの端面及び外周面を有し、流体の流路となる前記二つの端面間を貫通する複数の貫通孔が形成された多孔質材料からなる基材と、前記基材の前記貫通孔の内表面(内壁)に形成されたセラミック膜とを備え、前記外周面から前記基材及び前記セラミック膜を透過して前記貫通孔内に流入した薬液流体を、一方の前記端面から前記貫通孔内に流入した稀釈流体によって高稀釈倍率で前記貫通孔内で混合させて調合し、前記貫通孔を経由して、前記薬液流体よりも超低濃度の稀釈薬液流体として、他方の前記端面から流出させる薬液調合用膜エレメントであって、前記基材の前記貫通孔のそれぞれの内表面(内壁)に形成された前記セラミック膜の膜面積の合計が、それらを透過した前記稀釈薬液流体が所定の超低濃度(pH)となるように調合されることが可能な膜面積に制御されてなることを特徴とする薬液調合用膜エレメント。
【0011】
[2] 前記基材に形成された複数の前記貫通孔のうち、所定の貫通孔の内表面(内壁)に、前記セラミック膜に代えて、前記薬液流体を透過させない薬液流体不透過膜が形成されてなる前記[1]に記載の薬液調合用膜エレメント。
【0012】
[3] 前記基材が円柱状であり、前記貫通孔が最密充填構造で合計19個又は37個形成されてなる前記[1]又は[2]に記載の薬液調合用膜エレメント。
【0013】
[4] 前記貫通孔が、中心に1個、その周りに、同心にそれぞれ6個及び12個形成されてなり、前記中心の1個及び最外周の12個の前記貫通孔に前記薬液流体不透過膜が形成され、かつ中間の6個の前記貫通孔に前記セラミック膜が形成されてなる前記[3]に記載の薬液調合用膜エレメント。
【0014】
[5] 前記薬液流体不透過膜が、釉薬、フッ素樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料からなる前記[1]〜[4]のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
【0015】
[6] 二つの端面及び外周面を有し、流体の流路となる前記二つの端面間を貫通する一つの貫通孔が形成された多孔質材料からなる基材と、前記基材の前記貫通孔の内表面(内壁)に形成されたセラミック膜とを備え、前記外周面から前記基材及び前記セラミック膜を透過して前記貫通孔内に流入した薬液流体を、一方の前記端面から前記貫通孔内に流入した稀釈流体によって高稀釈倍率で前記貫通孔内で混合させて調合し、前記貫通孔を経由して、前記薬液流体よりも超低濃度の稀釈薬液流体として、他方の前記端面から流出させる薬液調合用膜エレメントであって、前記基材の前記貫通孔の内表面(内壁)に形成された前記セラミック膜の膜面積が、それを透過した前記稀釈薬液流体が所定の超低濃度(pH)となるように調合されることが可能な膜面積(前記基材の長さ)に制御されてなることを特徴とする薬液調合用膜エレメント。
【0016】
[7] 前記稀釈流体が超純水で、前記薬液流体が濃度1〜30%のアンモニア水で、前記稀釈薬液流体がpH9〜10のアンモニア水である前記[1]〜[6]のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
【0017】
[8] 前記セラミック膜が、分画分子量が3,000以上で細孔径が0.1μm以下のものである前記[1]〜[7]のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
【0018】
[9] 前記セラミック膜が、チタニア及び/又はジルコニアからなる前記[1]〜[8]のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
【0019】
[10] 前記基材が、アルミナ、窒化珪素及びシリコンカーバイドからなる群から選ばれる少なくとも一種からなる前記[1]〜[9]のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
【0020】
[11] 前記基材及び前記セラミック膜に代えて、膜面積が0.5×10−3〜2.5×10−3m2で、単位膜面積当たりの透水量が25〜100リットル/m2hの、ポリアクニロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリスルフォンからなる中空糸膜が用いられてなり、前記中空糸膜の膜面積が、その合計を透過した前記稀釈薬液流体が所定の超低濃度(pH)に調合されることが可能なように制御されてなる前記[1]に記載の薬液調合用膜エレメント。
【0021】
[12] 前記[1]〜[11]のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメントと、薬液流体流入手段と、稀釈流体流入手段とを備えることを特徴とする薬液調合装置。
【0022】
[13] 超音波発生手段をさらに備える前記[12]に記載の薬液調合装置。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の薬液調合用膜エレメント及び薬液調合装置を、その実施の形態によって図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0024】図1は、本発明の薬液調合用膜エレメントの一の実施の形態を模式的に示す説明図である。図1に示すように、本実施の形態においては、流動状態下にある稀釈流体42としての超純水に、薬液流体41としての1〜30%のアンモニア水を注入してpHをインラインにて制御する時に、薬液流体41としてのアンモニア水の注入量の制御を、貫通孔に形成されたセラミック膜(図示せず)の膜面積の合計(セラミック膜が形成された貫通孔の個数)で行う場合を示している。すなわち、本発明の薬液調合用膜エレメント100は、二つの端面21,22及び外周面23を有し、流体の流路となる二つの端面間を貫通する19個の貫通孔1〜19が形成された多孔質材料からなる基材20と、基材20の貫通孔1〜19の内表面(内壁)に形成されたセラミック膜(図示せず)とを備え、外周面23から基材20を透過して貫通孔1〜19内に流入した薬液流体41を、一方の端面21から貫通孔1〜19内に流入した稀釈流体42によって高稀釈倍率で貫通孔1〜19内で混合させて調合し、貫通孔1〜19を経由して、薬液流体41よりも超低濃度の稀釈薬液流体40として、他方の端面22から流出させる薬液調合用膜エレメント100であって、基材20の貫通孔の内表面(内壁)に形成されたセラミック膜の膜面積の合計が、それらを透過した稀釈薬液流体40が所定の超低濃度(pH)となるように調合されることが可能な膜面積に制御されている。なお、本実施の形態の場合、貫通孔の個数は19個でそのうちの13個にはセラミック膜に代えて薬液流体不透過膜(図示せず)が形成されているので、セラミック膜が形成された貫通孔は合計6個である。
【0025】本実施の形態においては、稀釈流体42として超純水を、薬液流体41としてアンモニア水を用いて、稀釈薬液流体40としてpH9〜10のアンモニア水を得る場合を示しているが、薬液流体41として、例えば、pH4〜5の酸性溶液を得る場合には、塩酸、硫酸、硝酸等であってもよく、また、上述のアンモニア水の場合と同様に、pH9〜10のアルカリ性溶液を得る場合には、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液、水酸化カリウム(KOH)水溶液等であってもよい。
【0026】また、本実施の形態においては、基材20の形状が円柱状のもの(モノリス型)を示すが、後述するように、チューブラー型であってもよく、セラミック膜の代わりに中空糸膜を用いたものであってもよい。
【0027】また、本実施の形態においては、貫通孔として最密充填構造で合計19個形成した場合を示しているが、同様に最密充填構造で37個形成してもよい。
【0028】また、本実施の形態においては、貫通孔が、中心に1個、その周りに、同心にそれぞれ6個及び12個形成されてなり、中心の1個の貫通孔19及び最外周の12個の貫通孔1〜12に薬液流体不透過膜が形成され、かつ中間の6個の貫通孔13〜18にセラミック膜が形成された場合を示している。
【0029】本発明に用いられる基材としては、例えば、アルミナ、窒化珪素及びシリコンカーバイドからなる群から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。中でも、耐蝕性に優れる点、及び全有機物量(TOC)の溶出を防止する点から、アルミナが好ましい。
【0030】本発明に用いられるセラミック膜としては、例えば、チタニア及び/又はジルコニアからなるものを挙げることができる。
【0031】また、本発明に用いられるセラミック膜としては、それを透過する透過流体量が低いほど正確に制御することができるため、分画分子量が3,000以上で細孔径0.1μm以下のものであることが好ましく、分画分子量10,000以上で細孔径0.1μm以下のものであることがさらに好ましい。
【0032】また、本発明に用いられる薬液流体不透過膜としては、例えば、釉薬、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の材料からなるものを挙げることができる。中でも、基材及びセラミック膜との接触性、耐食性、及びシール性等の観点から、ガラス質の釉薬からなるものが好ましい。
【0033】薬液流体不透過膜として釉薬を用いる場合、釉薬とセラミック膜との焼成温度の違いにより、端面と貫通孔の内壁との釉薬部分を800〜1000℃で焼成させた後、酸化チタン(TiO2)の粒子を含んだコート液を用いてセラミック膜コートを行い、さらに350〜550℃で焼成して酸化チタン(TiO2)膜を得ることが好ましい。この逆の温度で焼成を行なうと、釉薬の焼成時にTiO2膜が取れてしまうことがある。また、長尺の基材の貫通孔の内壁に、細孔径が0.1μmのアルミナ(Al2O3)からなる膜を形成した後、所定の基材長さとなるように切断し、洗浄、乾燥を行い、次いで、両端面を釉薬でシールし、所定の貫通孔の内壁を釉薬でコートし、800〜1000℃で釉薬を焼成により焼結させ、その後、TiO2粒子を含んだコート液で貫通孔の内壁をコートし、350〜550℃で焼成することが好ましい。
【0034】また、超純水の流量を十分に保持した状態で、薬液流体の透過量を少なくするためにセラミック膜の膜面積の小さいものを用いることが好ましい。
【0035】例えば、超純水の流量を保持するために、その流量として最大20リットル/minの時に線速2m/sec以下を確保した上で、圧力損失を低く抑えることができる構造として、基材が30mm(直径)×25mm(長さ)のモノリス型の場合で、最密充填構造とした場合、貫通孔の直径が4mmで19個のもの、又は直径が3mmで37個のものを用いることが好ましい。この場合、直径が4mmで、個数が19個の場合、19個のうち、セラミック膜を形成するのは6個以下とし、直径が3mmで、個数が37個の場合は、37個のうち、セラミック膜を形成するるのは7個以下とすることが好ましい。それ以外の貫通孔は、線速2m/sec以下を保持するため、貫通孔を塞ぐのではなく、貫通孔の内表面(内壁)を、薬液流体不透過膜、例えば、ガラス質の釉薬でコートし、アンモニア水が透過しないようにすることが好ましい。この時、セラミック膜を透過したアンモニア水と超純水とを効率的に混合させるため、セラミック膜が形成された貫通孔13〜18は対称な配置にすることが好ましい(図1参照)。
【0036】表1に、基材が30mm(直径)×25mm(長さ)のモノリス型の場合で、貫通孔に形成されたセラミック膜の膜面積の合計(セラミック膜が形成された貫通孔の個数)と、得られる稀釈薬液流体(アンモニア水)のpHとの関係を示す。半導体、液晶ガラス及びフォトマスク等の洗浄において、pHは9〜10の範囲内で行う必要があるため、基材がモノリス型の場合、表1から、セラミック膜が形成された貫通孔の個数(膜孔数)は10以下(セラミック膜の膜面積の合計は、0.0030m2以下)に制御しなくてはならないことがわかる。以下に具体的な計算例を示す。
【0037】分画分子量10,000のセラミック膜の単位膜面積当たりの透水量は、平均50リットル/m2h(濾過圧力0.1MPa、濾過温度20℃)であり、長さ25mmの薬液調合用膜エレメントの1貫通孔当たりの膜面積は、π×(4/1000)×25/1000=0.0003m2であり、超純水流量を、20リットル/min=1200リットル/hとし、添加アンモニア水原液濃度を5質量%とした時、混合された希薄なアンモニア水の濃度(単位(mg/リットル))は、0.05×50×0.0003×(セラミック膜が形成された貫通孔の個数/1200)×106より求められる。さらに、アンモニア濃度が判ったことから、濃度とpHとの関係を示す図4のグラフよりセラミック膜が形成された貫通孔の個数(セラミック膜の膜面積の合計)に対する混合後のpHを予測することが可能となる。pH計では応答性が遅いため、比抵抗計を代用することができる。一般的にpHと比抵抗との間には相関関係があり、実験結果から近似式で下記式に示すことができる。
pH=−0.5×ln(比抵抗)+8.43
pH10以下にするということは比抵抗を0.042MΩ・cm以上にすることに相当する。実際には、上記に示した単位膜面積当たりの透水量は平均であるため、透水量の上限値の80リットル/m2h(濾過圧力0.1MPa、濾過温度20℃)の場合を考慮しなくてはならない。混合後の希薄アンモニア水の濃度(単位(mg/リットル))は、0.05×80×0.0003×(セラミック膜が形成された貫通孔の個数/1200)×106より求められる。混合後の希薄アンモニア水中のアンモニア濃度がpH10以下を満たすには、図4に示すグラフより、6.6(mg/リットル)以下でなければならないので、0.05×80×0.0003×(セラミック膜が形成された貫通孔の個数/1200)×106≦6.6の式よりセラミック膜が形成された貫通孔の個数≦6が算出され、安全を考えると6個以下(セラミック膜の膜面積の合計は、0.0018m2以下)にしなくてはならないことがわかる。
【0038】
【表1】
【0039】また、図2及び図3に示すように、基材30として、その内表面(内壁)にセラミック膜(図示せず)が形成されたチューブラー型を用いる場合、チューブラー型の基材30の太さによりチューブラー型の基材30の外側に稀釈流体(超純水)52を流し、内側から外側へ薬液流体(アンモニア水)51を透過させるか(図2参照)、又はチューブラー型の基材30の内側に稀釈流体(超純水)52を流し、外側から内側へ薬液流体(アンモニア水)51を透過させる(図3参照)ことが好ましい。この場合、前述のように、稀釈流体(超純水)52がセラミック膜部を通過する線速を2m/sec以下にする必要があることから、外径が10mmで、内径が7mmの場合は前者に、また、外径が30mmで内径が22mmの場合は、後者にすることが好ましい。
【0040】表2に、基材が10mm(外径)×7mm(内径)のチューブラー型の場合で、セラミック膜の膜面積と、得られる稀釈薬液流体50のpHとの関係を示す。半導体、液晶ガラス、フォトマスク等の洗浄において、pHは9〜10の範囲内で行う必要があるため、表2から、基材(貫通孔)の長さは140mm以下に制御しなくてはならないことがわかる。
【0041】チューブラー型もモノリス型の場合と同様に計算することができる。すなわち、チューブラー型の場合、長さが1m当たりの膜面積は0.022m2であり、ある長さに対する混合後の希薄アンモニア水の濃度(単位(mg/リットル))は、分画分子量10,000のセラミック膜の単位膜面積当たりの透水量の平均値50リットル/m2h(濾過圧力0.1MPa、濾過温度20℃)の時0.05×50×0.022×(長さ/1000/1200)×106より求められる。混合後の希薄アンモニア水中のアンモニア濃度がpH10以下を満たすには、表2及び図4に示すグラフより、6.6(mg/リットル)以下でなければならないので0.05×50×0.022×(長さ/1000/1200)×106≦6.6の式より、長さ≦140mm(膜面積は、0.00308m2以下)であることが算出される。また、安全を考え、透水量の上限値80リットル/m2h(濾過圧力0.1MPa、濾過温度20℃)の場合を考慮すると0.05×80×0.022×(長さ/1000/1200)×106≦6.6の式より、基材(貫通孔)の長さは90mm以下(膜面積は、0.00198m2以下)にしなくてはならないことがわかる。
【0042】
【表2】
【0043】また、使用する薬液流体により有機膜を用いることができる場合は、基材及びセラミック膜に代えて、中空糸膜を用いることもできる。中空糸膜としては、例えば、膜面積が0.5×10−3〜2.5×10−3m2で、単位膜面積当たりの透水量が25〜100リットル/m2hの、ポリアクニロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリスルフォンからなるものを挙げることができる。この場合、中空糸の本数又は長さにより膜面積を制御することが好ましい。この場合も、セラミック膜のチューブラー型と同様に超純水の線速の制限によってアンモニア水を外側から内側へ透過させるか、又は外側から内側へ透過させるかを決定することが好ましい。
【0044】中空糸膜の場合、セラミック膜とは異なり、より小さい分画分子量の膜が存在する。例えば、材質がポリスルフォンで、分画分子量3,000の場合、透水量は110リットル/m2h(濾過圧力0.1MPa、濾過温度20℃)となる。内径が0.8mmの中空糸を用いる場合、0.05×110×(膜面積/(20×60))×106≦6.6より、表3及び図4に示すグラフを参照すると、膜面積は0.00143m2以下でなければならないことがわかる。中空糸の内径が0.8mmであることによりその長さは、π×(0.8/1000)×長さ≦0.00143の式より、長さとしては、0.57m以下(570mm以下)(膜面積は、0.00143m2以下)であればよいことがわかる。この場合、570mmの中空糸1本でも、例えば、57mmの中空糸を10本束ねたものであってもよく、合計の長さが570mm以下(膜面積は、0.00143m2以下)であればよい。
【0045】
【表3】
【0046】以下、本発明の薬液調合装置の一の実施の形態について具体的に説明する。
【0047】図5に示すように、本実施の形態の薬液調合装置200は、上記の薬液調合用膜エレメント100と、薬液流体流入手段60と、稀釈流体流入手段70と、薬液流体流入調整手段80とを備えている。
【0048】本発明の薬液調合装置200は、超音波発生手段92をさらに備えることが好ましい(本実施の形態においては、超音波発生手段92を後述する洗浄機90の内部に配設した場合(洗浄機90に内蔵された場合)を示す)。pHを9〜10に調節したアンモニア水と超音波を用いることで微粒子の除去効率を向上させることができる。一般的に、微粒子はマイナスに帯電しており、静電気力によって洗浄対象物に付着している。そこへ50kHz〜3MHzの超音波を用いて微粒子を洗浄対象物より強制的に剥離させ、同時に、アルカリ水(希薄なアンモニア水)を使用すると洗浄対象物の表面がマイナスに帯電し、電気的な反発力により一旦剥離した微粒子の洗浄対象物への再付着を防止することが可能となる。この時、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)のような金属イオンを含んだ薬液ではなく、アンモニアを用いることで、薬液による金属汚染を防ぐこともできる。pHが高すぎると(アンモニア濃度が高すぎると)洗浄対象物によっては表面をエッチングしてしまうため、pHは10以下にしなくてはならない。
【0049】薬液流体41(51)を流入させる薬液流体流入手段60としては、例えば、薬液流体41(51)を貯留したキャニスター缶61に加圧窒素ガス62を圧入することを挙げることができる。なお、加圧窒素ガス62の圧入配管には、微粒子除去用のフィルタ63が配設されることが好ましい。
【0050】稀釈流体42(52)を流入させる稀釈流体流入手段70としては、例えば、ポンプを挙げることができるが、加圧された所定の流量の超純水を用いる場合は、ポンプを用いなくてもよい。
【0051】薬液流体流入調整手段80としては、例えば、pH計又は比抵抗計若しくは導電率計と電磁弁とを備えたものを挙げることができる。図5においては、高速電磁弁(S)と導電率計(XIS)とを用いた場合を示す。セラミック膜によりアンモニア水は超純水中に微量に添加されるが、超純水の流量変動に対応するため、pH計と電磁弁とによりアンモニア水の添加をフィードバック制御することが好ましい。この場合、pH計は応答速度が遅いため、相関関係にある導電率計又は比抵抗計を用いることもできる。なお、薬液流体流入調整手段80は、必ずしも用いなくてもよい。
【0052】超音波発生手段としては、例えば、超音波発振器を挙げることができる。
【0053】図5は、本発明の薬液調合装置200で得られた稀釈薬液流体40が、洗浄対象物91が収納されるとともに超音波発生手段(超音波発振器)92が配設された洗浄機90に送られる場合を示す。
【0054】
【実施例】以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
【0055】(実施例1)
基材(材質アルミナ)の寸法が30mm(直径)×25mm(長さ)のモノリス型で、セラミック膜の材質がチタニアで、貫通孔の直径が4mmで、個数が19個で、かつ中心1個と最外周12個が釉薬(材質SiO2)でコートされたモノリス型のセラミック膜エレメントを用い、貫通孔に流入させた超純水に、基材を透過させた5質量%のアンモニア水を添加することによって、比抵抗が0.2MΩ・cmに制御された超稀釈アンモニア水が得られた。なお、図6に示すように、後段に設置された洗浄機の稼動状況に対応して薬液調合装置を通過する超純水の流量は2〜20リットル/分と変化するが、得られた超稀釈アンモニア水の比抵抗値は0.1〜0.2MΩ・cmの制御範囲内に収まることが確認された。この比抵抗の0.1MΩ・cmはpH9.6に相当し、0.2MΩ・cmはpH9.2に相当することから非常に狭い範囲内でpHの制御が可能であることがわかる。また、得られた超稀釈アンモニア水を用いて浸漬式洗浄機内でガラス基板を洗浄した。洗浄後のガラス基板上に残存する微粒子数は、後述する比較例1の場合における微粒子残存量を100個とした場合、50個であった。このことから、本実施例で得られた超稀釈アンモニア水は、洗浄性が高いことがわかる。なお、微粒子のカウントは0.2μm以上のものを直顕法により測定を行った。
【0056】(実施例2)
実施例1における場合と同様の材質からなる基材の寸法が10mm(外径)×7mm(内径)×90mm(長さ)のチューブラー型で、実施例1における場合と同様のセラミック膜を用いたチューブラー型のセラミック膜エレメントを用い、基材の外側に流入させた超純水に、基材を内側から透過させた5質量%のアンモニア水を添加することによって、比抵抗が0.2MΩ・cmに制御された超稀釈アンモニア水が得られた。図6に示すように、実施例1場合と同様に、得られた超稀釈アンモニア水の比抵抗値は0.1〜0.2MΩ・cmの制御範囲内に収まることが確認された。洗浄後のガラス基板上に残存する微粒子数は60個であった。
【0057】(実施例3)
超音波発振器が内臓された浸漬式洗浄機を用いて、基板を1kHzで振動させながら、得られた超稀釈アンモニア水で基板を洗浄したこと以外は、実施例1と同様にした。洗浄後のガラス基板上に残存する微粒子数は40個であった。
【0058】(実施例4)
超音波発振器が内臓された浸漬式洗浄機を用いて、基板を1kHzで振動させながら、得られた超稀釈アンモニア水で基板を洗浄したこと以外は、実施例2と同様にした。洗浄後のガラス基板上に残存する微粒子数は50個であった。
【0059】(比較例1)
基材(材質アルミナ)の寸法が、30mm(直径)×25mm(長さ)のモノリス型で、セラミック膜の材質がチタニアで、貫通孔の直径が4mmで、個数が19個で、19個全てにセラミック膜をつけたモノリス型のセラミック膜エレメントを用い、貫通孔に流入させた超純水に、基材を透過させた5質量%のアンモニア水を添加することによって希釈アンモニア水を得た。得られた稀釈アンモニア水の比抵抗値は0.1〜0.2MΩ・cmの制御範囲内に収まらず、最小0.029MΩ・cmであることが確認された。得られた稀釈アンモニア水を用いて、実施例1と同様にしてガラス基板の洗浄を行なった。この場合の微粒子残存量を100個とした。
【0060】実施例1〜4及び比較例1における洗浄後のガラス基板上に残存する微粒子数をまとめて表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によって、薬液調合装置に配設されて、薬液流体を稀釈流体によって高い稀釈倍率で(超稀釈濃度に)稀釈する際に、汚染の少ない超稀釈濃度の稀釈薬液流体を正確に調合することが可能な薬液調合用膜エレメント及び薬液調合装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬液調合用膜エレメント(モノリス型)の一の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の薬液調合用膜エレメント(チューブラー型)の一の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の薬液調合用膜エレメント(チューブラー型)の一の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明における、アンモニア濃度とpHとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の薬液調合装置の一の実施の形態を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の薬液調合用膜エレメントの実施例1及び実施例2において得られた超稀釈アンモニア水の比抵抗値が、0.1〜0.2MΩ・cmの制御範囲内に収まることを確認的に示すグラフである。
【符号の説明】
1〜19…貫通孔、20,30…基材、21,22…端面、23…外周面、40,50…稀釈薬液流体、41,51…薬液流体(アンモニア水)、42,52…稀釈流体(超純水)、60…薬液流体流入手段、61…キャニスター缶、62…加圧窒素ガス、63…微粒子除去用フィルタ、70…稀釈流体流入手段、80…薬液流体流入調整手段、90…洗浄機、91…洗浄対象物、92…超音波発生手段(超音波発振器)、100…薬液調合用膜エレメント、200…薬液調合装置、S…高速電磁弁、XIS…導電率計。
Claims (13)
- 二つの端面及び外周面を有し、流体の流路となる前記二つの端面間を貫通する複数の貫通孔が形成された多孔質材料からなる基材と、前記基材の前記貫通孔の内表面(内壁)に形成されたセラミック膜とを備え、前記外周面から前記基材及び前記セラミック膜を透過して前記貫通孔内に流入した薬液流体を、一方の前記端面から前記貫通孔内に流入した稀釈流体によって高稀釈倍率で前記貫通孔内で混合させて調合し、前記貫通孔を経由して、前記薬液流体よりも超低濃度の稀釈薬液流体として、他方の前記端面から流出させる薬液調合用膜エレメントであって、
前記基材の前記貫通孔のそれぞれの内表面(内壁)に形成された前記セラミック膜の膜面積の合計が、それらを透過した前記稀釈薬液流体が所定の超低濃度(pH)となるように調合されることが可能な膜面積に制御されてなることを特徴とする薬液調合用膜エレメント。 - 前記基材に形成された複数の前記貫通孔のうち、所定の貫通孔の内表面(内壁)に、前記セラミック膜に代えて、前記薬液流体を透過させない薬液流体不透過膜が形成されてなる請求項1に記載の薬液調合用膜エレメント。
- 前記基材が円柱状であり、前記貫通孔が最密充填構造で合計19個又は37個形成されてなる請求項1又は2に記載の薬液調合用膜エレメント。
- 前記貫通孔が、中心に1個、その周りに、同心にそれぞれ6個及び12個形成されてなり、前記中心の1個及び最外周の12個の前記貫通孔に前記薬液流体不透過膜が形成され、かつ中間の6個の前記貫通孔に前記セラミック膜が形成されてなる請求項3に記載の薬液調合用膜エレメント。
- 前記薬液流体不透過膜が、釉薬、フッ素樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の材料からなる請求項1〜4のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
- 二つの端面及び外周面を有し、流体の流路となる前記二つの端面間を貫通する一つの貫通孔が形成された多孔質材料からなる基材と、前記基材の前記貫通孔の内表面(内壁)に形成されたセラミック膜とを備え、前記外周面から前記基材及び前記セラミック膜を透過して前記貫通孔内に流入した薬液流体を、一方の前記端面から前記貫通孔内に流入した稀釈流体によって高稀釈倍率で前記貫通孔内で混合させて調合し、前記貫通孔を経由して、前記薬液流体よりも超低濃度の稀釈薬液流体として、他方の前記端面から流出させる薬液調合用膜エレメントであって、
前記基材の前記貫通孔の内表面(内壁)に形成された前記セラミック膜の膜面積が、それを透過した前記稀釈薬液流体が所定の超低濃度(pH)となるように調合されることが可能な膜面積(前記基材の長さ)に制御されてなることを特徴とする薬液調合用膜エレメント。 - 前記稀釈流体が超純水で、前記薬液流体が濃度1〜30%のアンモニア水で、前記稀釈薬液流体がpH9〜10のアンモニア水である請求項1〜6のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
- 前記セラミック膜が、分画分子量が3,000以上で細孔径が0.1μm以下のものである請求項1〜7のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
- 前記セラミック膜が、チタニア及び/又はジルコニアからなる請求項1〜8のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
- 前記基材が、アルミナ、窒化珪素及びシリコンカーバイドからなる群から選ばれる少なくとも一種からなる請求項1〜9のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメント。
- 前記基材及び前記セラミック膜に代えて、膜面積が0.5×10−3〜2.5×10−3m2で、単位膜面積当たりの透水量が25〜100リットル/m2hの、ポリアクニロニトリル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はポリスルフォンからなる中空糸膜が用いられてなり、前記中空糸膜の膜面積が、その合計を透過した前記稀釈薬液流体が所定の超低濃度(pH)に調合されることが可能なように制御されてなる請求項1に記載の薬液調合用膜エレメント。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の薬液調合用膜エレメントと、薬液流体流入手段と、稀釈流体流入手段とを備えることを特徴とする薬液調合装置。
- 超音波発生手段をさらに備える請求項12に記載の薬液調合装置。
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