この発明はUSGAのゴルフルールに従いつつ、ティーからの大きな飛距離を与える、高いレジリエンスを持つゴルフボールを目的とする。ゴルフボールのレジリエンスの測定法は、当業者には周知である。インパクト時点の、ボールのレジリエンシーを測定する1方法では、エアーキャノンまたはゴルフクラブヘッドの速度と等価な速度にて、ボールを推進させる他の手段を利用する。該ボールを、大きな剛性ブロックに向けて発射させ、そのインバウンド(inbound)およびアウトバウンド(outbound)速度を測定する。この速度は、光スクリーンを利用して測定でき、該スクリーンは該ボールが一定の距離を移動するのに必要な時間を測定する。この移動時間で割った該一定距離は、この一定の距離に渡る、該ボールの平均速度に等しい。該アウトバウンド速度対該インバウンド速度の比は、一般に反発係数(coefficient of restitution:COR)と呼ばれている。このCORは、特定のインバウンド速度における、ゴルフボールのレジリエンスに関する直接的な尺度である。ゴルフボールは線形−粘弾性形式で挙動するので、インバウンドボール速度は、機能的にクラブのスイングスピードと等価である。一実施例において、この発明は、低スイングスピード競技者のために、このCORを最大にすることを求める。これらの競技者は、該ボールに対して低スイングスピードで該クラブを振っており、従ってインパクト後の低いボール速度およびティーからの短い飛距離のみを得る傾向にある。
図1を参照すると、ゴルフボール10は、そのコア12を製造するのに、当分野において公知の、任意の適当な材料を含むことができる。一実施例において、この発明によるゴルフボール10は、約200,000を越える分子量および少なくとも約40なるレジリエンス指数をもつ、ポリブタジエン材料またはその反応生成物から作られた材料を含有する、1以上の層16および18を含むコア12、ポリウレタン配合物またはその反応生成物を含む、カバー層20、および該コア12と該カバー20との間に設けられた中間層22を含む。中間層22はマントル層、外側コア層または内側カバー層であって良い。
従って、改良されたゴルフボールは、この発明によれば、(a)ポリブタジエン反応生成物、例えば分子量が200,000を上回り、レジリエンス指数が少なくとも40のポリブタジエン反応生成物を含むコア、(b)コアの周りに配された中間層、および、(c)ポリウレタン材料を含む少なくとも1層を含むカバーにより、調製することができる。中間層は好ましくは堅固(rigid)であり、少なくとも80ショアCまたは少なくとも55ショアDより大きなデュロメータ硬度を有する。中間層は好ましくはジエンポリマーを含む。代替的には、中間層は、注型された、またはRIMの熱硬化性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリウレタン−アイオノマー、エポキシまたはこれらのブレンドを含む。
図1に示すように、該ゴルフボールのコア12はソリッドであってよい。このコアは、熱硬化性ソリッドゴム球または熱可塑性ソリッド球を含むことができる。該コア12は、熱可塑性および/または熱硬化性材料で形成された、ソリッドセンタ16およびソリッド層18から製造できる。場合により、該センタ16は、糸巻き層18およびこの発明によるカバーで覆われる。
所定の特性に依存して、この発明により製造されるボールは、従来の構成を持つボールと比較して、圧縮率または弾性率を小さくしながら、実質的に同一またはより高いレジリエンス、または反発係数(COR)を実現することができる。更に、この発明により調製したボールは、また従来の構成を持つボールと比較して、圧縮率における増大を伴うこと無しに、実質的に高いレジリエンスまたはCORを実現することができる。このレジリエンスのもう一つの尺度は、上記の「損失正接」即ちtanδであり、これは対象の動的剛性を測定した際に得られる。損失正接およびこのような動的特性に関連する学術用語は、典型的にはASTM D4092−90に記載されている。かくして、より低い損失正接は、より高いレジリエンシーを実現し、結果としてより高いじゃん発性能を実現する。低い損失正接は、ゴルフクラブからゴルフボールに付与されたエネルギーの殆どが、動的エネルギー、即ち推進速度および得られるより長い飛距離に変換されたことを意味する。ゴルフボールの剛性(rigidity)または圧縮性剛性(compressive stiffness)は、例えば上記の動的剛性により測定できる。より高い動的剛性は、より高い圧縮性の剛性を意味する。所定の圧縮性剛性を持つゴルフボールを製造するために、該架橋されたポリブタジエン反応生成物の動的剛性は、−50℃において約50,000N/m未満であるべきである。好ましくは、この動的剛性は、−50℃において約10,000〜40,000N/mなる範囲、より好ましくは、該動的剛性は−50℃において約20,000〜30,000N/mなる範囲とすべきである。
該動的剛性は、幾つかの点で動的弾性率(dynamic modulus)と類似する。動的剛性は、ここに記載するようなプローブの幾何形状に依存し、一方で動的弾性率は、幾何形状とは無関係の固有の物質特性である。この動的剛性の測定は、サンプル物品の別々の点における、損失正接の測定および動的な弾性率の定量的測定を可能とする、固有の特性を持つ。この発明の場合において、該物品は、ゴルフボールコアの少なくとも一部である。該ポリブタジエン反応生成物は、好ましくは−50℃において約0.1より低い損失正接を有し、より好ましくは−50℃において約0.07より低い。
センタ配合物は、好ましくは少なくとも約40のレジリエンス指数を持つ、少なくとも1種のゴム材料を含む。好ましくは、該レジリエンス指数は、少なくとも約50である。多数のポリブタジエンポリマーに関する比較を、以下の表1に掲載する。弾性ゴルフボールを生成し、従ってこの発明によるゴルフボールのセンタまたは他の部分において使用するのに適したポリマーは、CB23、CB22、BR60および1207Gを含むが、これらに限定されない。レジリエンス指数を計算する方法を説明するために、このレジリエンス指数を100℃で測定する。CB23は、OH、アクロンのバイエル社(Bayer Corporation)から市販品として入手できる。CB23については、例えばそのレジリエンス指数は以下のように計算する:CB23のレジリエンス指数=100,000・[(0.954)−(0.407)]/990=55
ゴルフボール部分の成型方法および組成は、典型的に材料特性の勾配をもたらす。従来技術において利用された方法は、一般にこれら勾配を定量するために、硬度(hardness)を利用した。硬度は、静的弾性率(static modulus)の定性的な尺度であり、またゴルフボールの使用すなわちクラブによる衝撃に関連する変形速度における、材料の弾性率を表さない。ポリマー科学の当業者には周知であるように、時間−温度の重ね合わせ原理を利用して、代替的な偏向速度をエミュレートすることができる。ポリブタジエンを含むゴルフボール部分に対して、0〜−50℃なる範囲の温度における、1−Hzの振動は、ゴルフボールの衝撃速度と、定量的に等価であると考えられる。従って、0〜−50℃なる範囲の温度における損失正接および動的剛性の測定は、好ましくは約−20〜−50℃の温度における、ゴルフボールの性能を、正確に予想するのに利用できる。
該ゴルフボールコアのポリブタジエン材料は、典型的に少なくとも約15のショアA硬度、好ましくは約30ショアA〜80ショアD硬度、より好ましくは約50ショアA〜60ショアD硬度を持つ。好ましい一実施例においては、該コア12は、その幾何中心において、約20〜85ショアC、好ましくは約40〜80ショアCおよびより好ましくは約60〜70ショアC硬度をもつ。該ゴルフボールコアの表面は、典型的に該幾何中心におけるよりも硬い。例えば、中心において65ショアC硬度を持つ、ゴルフボールコア、即ち球は、その表面において約80〜85ショアC硬度を持つ。その比重は、ゴルフボールポリブタジエン材料用には、典型的に約0.7を越え、好ましくは約1を越える。
更に、この発明により製造したゴルフボールにおける、加硫したゴム、例えばポリブタジエンは、典型的に約40〜約80、好ましくは約45〜約60、およびより好ましくは約45〜約55のムーニー粘度を持つ。ムーニー粘度は、典型的にASTM D−1646−99に従って測定する。
該コアセンタまたは外側層の少なくとも一方は、シス−トランス触媒、ポリブタジエンを含む弾性ポリマー、フリーラジカル源、および場合により架橋剤、フィラーまたはその両者を含む、反応生成物を含有する。好ましくは、このポリブタジエン反応生成物は、該ゴルフボールセンタの少なくとも一部を形成するのに使用され、また以下の検討は、該センタを製造するための本実施例に関する。好ましくは、該反応生成物は、−50℃にて測定した第1の動的剛性を有し、これは0℃にて測定した第2の動的剛性の約130%未満である。より好ましくは、この第1動的剛性は、該第2の動的剛性の約125%未満である。最も好ましくは、この第1動的剛性は、該第2の動的剛性の約110%未満である。
このように、この発明は、また該ポリブタジエン弾性ポリマー成分のシス−アイソマーを、成型サイクル中に、そのトランス−アイソマーに転化して、ゴルフボールを製造する方法をも含む。ポリマー、シス−トランス触媒、フィラー、架橋剤、およびフリーラジカル源の種々の組み合わせを使用できる。より高い弾性およびより低い圧縮率のセンタまたは中間層を得るために、好ましくは約90%を越えるシス−アイソマー含有率を持つ、高分子量ポリブタジエンを転化して、該ゴルフボールまたはその部分における任意の点における、トランス−アイソマー含有率を高め、好ましくは該成型サイクル中の、該ゴルフボールまたはその部分の実質的全てに渡り、該トランス−アイソマー含有率を高める。より好ましくは、該シス−ポリブタジエンアイソマーは、全ポリブタジエン含量の約95%を越える量で存在する。如何なる特別な理論にも拘泥するつもりは無いが、該初期のポリブタジエンおよび該反応生成物両者において、1,2−ポリブタジエンアイソマー(ビニル−ポリブタジエン)の量が少ないことが望ましいと考えられている。典型的に、該ビニル−ポリブタジエンアイソマー含有率は、約7%未満である。好ましくは、該ビニル−ポリブタジエンアイソマー含有率は、約4%未満である。より好ましくは、該ビニル−ポリブタジエンアイソマー含有率は、約2%未満である。如何なる特別な理論にも拘泥するつもりは無いが、該併合されたシス−およびトランス−ポリブタジエン骨格の結果的に見られる移動度は、該反応生成物およびこれを含有するゴルフボールの、低い弾性率および高いレジリエンスによるものであると考えられている。
一実施例において、クラブヘッドスピード160ft/秒における、該ゴルフボールの反発係数は、少なくとも約0.76であり、あるインバウンド速度に対する反発係数の勾配の大きさは、少なくとも約0.001s/ftである。
この発明は、また約300,000を越える分子量および少なくとも約40なるレジリエンス指数を有するポリブタジエンを含み、かつ少なくとも約1.51インチなる外径を持つ一つのセンタ、外側コア層を取巻く内側カバー層、および該内側カバー層の周りに設けられた外側カバー層を含む、ゴルフボールにも関連し、該外側カバー層は、7.5質量%未満の未反応イソシアネート基を含むプレポリマーから製造されたポリウレタン配合物を含有し、かつ該内側カバーは、ポリイソプレンを含む。
ゴルフボール競技特性にとって望ましく、かつ有利な、高いレジリエンスおよび低い弾性率(低圧縮率)特性を示す、ポリマー反応生成物を製造するために、好ましくは高分子量シス−1,4−ポリブタジエンを、その成型サイクル中に、そのトランス−アイソマーに転化することができる。「高分子量」とは、典型的に該ポリブタジエン材料が、約200,000を越える平均分子量を持つことを意味する。好ましくは、このポリブタジエンの分子量は、約250,000を越え、より好ましくは約300,000〜500,000なる範囲内にある。如何なる特別な理論にも拘泥するつもりは無いが、該フリーラジカル源との組み合わせによる、該シス−トランス触媒成分は、ある割合の該ポリブタジエンポリマー成分を、そのシス−構造からトランス−構造に転化するように機能するものと考えられる。このシス−トランス転化は、シス−トランス転化触媒、例えば有機硫黄または金属−含有有機硫黄化合物、硫黄または金属を含まない、置換または無置換の芳香族有機化合物、無機硫化化合物、芳香族有機金属化合物、またはこれらの混合物の存在を必要とする。このシス−トランス転化触媒成分は、1種以上のここに記載したシス−トランス触媒を含むことができる。例えば、該シス−トランス触媒は、有機硫黄化合物と無機硫化化合物とのブレンドであり得る。
一実施例において、該少なくとも1種の有機硫黄成分は、実質的に金属を含まず、この実質的に含まないとは、典型的に約10質量%未満の金属、好ましくは約3質量%未満の金属、より好ましくは約1質量%未満の金属、および最も好ましくは痕跡量の金属のみを含む、例えば約0.01質量%未満の金属を含むことを意味する。もう一つの実施例において、該有機硫黄成分は、全く金属を含まない。
この発明において言及する際に本明細書で使用する用語「有機硫黄化合物」または「有機硫黄成分」とは、少なくとも1種の4,4’−ジフェニルジスルフィド;4,4’−ジトリルジスルフィド;2,2’−ベンズアミドジフェニルジスルフィド;ビス(2−アミノフェニル)ジスルフィド;ビス(4−アミノフェニル)ジスルフィド;ビス(3−アミノフェニル)ジスルフィド;2,2’−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(5−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(6−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(7−アミノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(8−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(2−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(3−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(4−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(5−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(6−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(7−アミノナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(8−アミノナフチル)ジスルフィド;1,2’−ジアミノ−1,2’−ジチオジナフタレン;2,3’−ジアミノ−1,2’−ジチオジナフタレン;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,4−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド;ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィド;ビス(2−シアノフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ニトロフェニル)ジスルフィド;ビス(2−ニトロフェニル)ジスルフィド;2,2’−ジチオ安息香酸エチルエステル;2,2’−ジチオ安息香酸メチルエステル;2,2’−ジチオ安息香酸;4,4’−ジチオ安息香酸エチルエステル;ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド;ビス(2−アセチルフェニル)ジスルフィド;ビス(4−ホルミルフェニル)ジスルフィド;ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド;1,1’−ジナフチルジスルフィド;2,2’−ジナフチルジスルフィド;1,2’−ジナフチルジスルフィド;2,2’−ビス(1−クロロジナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(1−ブロモナフチル)ジスルフィド;1,1’−ビス(2−クロロナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(1−シアノナフチル)ジスルフィド;2,2’−ビス(1−アセチルナフチル)ジスルフィド等;またはこれらの混合物を意味する。好ましい有機硫黄成分は、4,4’−ジフェニルジスルフィド、4,4’−ジトリルジスルフィド、または2,2’−ベンズアミドジフェニルジスルフィド、またはこれらの混合物を含む。より好ましくは、有機硫黄成分は、4,4’−ジトリルジスルフィドを含む。この有機硫黄シス−トランス触媒が存在する場合、このものは、好ましくは少なくとも約12%のトランス−ポリブタジエンアイソマーを含むように、該反応生成物を製造するのに十分な量で存在するが、典型的には全弾性ポリマー成分を基準として、約32%を越えるトランス−ポリブタジエンアイソマーを含むように製造される。もう一つの実施例において、金属−含有有機硫黄成分を、この発明に従って使用できる。適当な金属−含有有機硫黄成分は、ジエチルジチオカルバメート、ジアミルジチオカルバメートおよびジメチルジチオカルバメートまたはこれらの混合物の、カドミウム、銅、鉛、およびルテニウム類似体を包含するが、これらに制限されない。
硫黄または金属を含まない、適当な置換または無置換の芳香族有機成分は、4,4’−ジフェニルアセチレン、アゾベンゼン、またはこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。該芳香族有機基は、好ましくはそのサイズにおいて、C6〜C20なる範囲にあり、またより好ましくはC6〜C10なる範囲にある。適当な無機硫化物成分は、硫化チタン、硫化マンガン、および鉄、カルシウム、コバルト、モリブデン、タングステン、銅、セレン、イットリウム、亜鉛、錫、およびビスマスの類似の硫化物を包含するが、これらに限定されない。
置換または無置換芳香族有機化合物も、上記シス−トランス触媒に含めることができる。適当な置換または無置換芳香族有機成分は、式:(R1)X−R3−M−R4−(R2)y(ここで、R1およびR2は、各々水素原子または置換または無置換のC1−20直鎖、分岐または環式アルキル、アルコキシ、またはアルキルチオ基、または単一の、複数のあるいは縮合リング状C6〜C24芳香族基であり、xおよびyは各々0〜5なる範囲の整数であり、R3およびR4は、各々単一の、複数のあるいは縮合リング状C6〜C24芳香族基から選択され、またMは、アゾ基または金属製分を含む)で表される成分を含むが、これらに限定されない。R3およびR4は、各々好ましくはC6〜C10芳香族基から選択され、より好ましくはフェニル、ベンジル、ナフチル、ベンズアミド、およびベンゾチアジル基から選択される。R1およびR2は、各々好ましくは置換または無置換のC1−10直鎖、分岐または環式アルキル、アルコキシ、またはアルキルチオ基、あるいはC6〜C10芳香族基から選択される。R1、R2、R3またはR4が置換されている場合、その置換は、1種以上の以下の置換基を含むことができる。すなわち:ヒドロキシおよびその金属塩;メルカプトおよびその金属塩;ハロゲン;アミノ、ニトロ、シアノ、およびアミド;エステル、酸を含むカルボキシおよびその金属塩;シリル;アクリレートおよびその金属塩;スルホニルまたはスルホンアミド;およびホスフェートおよびホスファイトである。Mが金属成分である場合、これは、当業者が入手できる、任意の適当な金属元素であり得る。典型的には、この金属は、遷移金属であろうが、好ましくはテルルまたはセレンである。一実施例において、該芳香族有機化合物は、実質的に金属を含まないものであり、一方別の実施例では、該芳香族有機化合物は、全く金属を含まないものである。
該シス−トランス転化触媒は、また第VIA族成分を含むこともできる。元素硫黄および重合体硫黄は、例えばOH、シャルドンのエラストケム社(Elastochem,Inc.)から、市販品として入手できる。硫黄触媒化合物の例は、PB(RM−S)−80元素硫黄およびPB(CRST)−65重合体硫黄を含み、これら各々は、エラストケム社から入手できる。テロイ(TELLOY)なる商品名のテルル触媒の例およびバンデックス(VANDEX)なる商品名のセレン触媒の例は、各々RTバンダービルト(Vanderbilt)から市販品として入手できる。このシス−トランス触媒は、典型的に全弾性ポリマー成分100部当たり、約0.1〜10部なる量で存在する。好ましくは、このシス−トランス触媒は、全弾性ポリマー成分100部当たり、約0.1〜8部なる量で存在する。より好ましくは、このシス−トランス触媒は、全弾性ポリマー成分100部当たり、約0.1〜5部なる量で存在する。このシス−トランス触媒は、典型的に、該トランス−ポリブタジエンアイソマー含有率を高めて、全弾性ポリマー成分を基準として、約5%〜70%のトランス−ポリブタジエンアイソマーを含むように、該反応生成物を製造するのに十分な量で存在する。
ここで参照するポリブタジエンのトランス−アイソマー含有率の測定は、以下のとおりであった。また以下のように実施可能である。較正用の標準物質を、既知のトランス−アイソマー含有率(例えば、高い比率および低い比率のトランス−ポリブタジエン)を持つ少なくとも2種のポリブタジエンゴムサンプルを用いて調製する。これらサンプルは、少なくとも約1.5%〜50%なる範囲の段階的なトランス−ポリブタジエン含有率を生成し、あるいは該未知の量の限界を確定して、得られる検量線が、少なくとも約13点の等間隔で配置された点を含むように、単独で使用しまたは一緒に配合する。
市販品として入手できる、光音響(Photoacoustic:PAS)セルを備えた、フーリエ変換赤外(FTIR)分光装置を使用して、各標準物質のPASスペクトルを、以下の装置パラメータを使用して得た:走査速度:2.5KHz(0.16cm/s光学速度)、1.2KHzのエレクトロニックフィルタを使用、アンダーサンプリング(undersampling)比を2に設定(サンプル採取前の、ゼロを横切るレーザーシグナル数)、感度設定1について、375〜4000cm−1なる範囲に渡り、4cm−1なる解像度にて、最低128回の走査を相互に加算する。
これらシス−、トランス−、およびビニル−ポリブタジエンピークは、典型的に該PASスペクトルにおいて、600〜1100cm−1なる範囲内に見出される。該トランス−ポリブタジエンピーク各々の下部の面積は、積算できる。これら3種のアイソマーピークの全面積に対する、各ピーク面積の割合を決定することにより、該トランス−ポリブタジエン面積割合対実際のトランス−ポリブタジエン含有率の、検量線を構築することが可能となる。得られた検量線の相関係数(R2)は、0.95なる最小値でなければならない。
該PASセルを、離型剤等の異物を含まない、新たに切り出した汚染されていない表面を含むサンプルで満たすことによって、対象とする点(例えば、該コアの表面または中心)において、未知コア材料につき、上記のパラメータを使用して、PASスペクトルが得られる。該未知材料のトランス−ポリブタジエン面積の割合を分析して、該検量線から、実際のトランス−アイソマー含有率を決定する。
硫酸バリウムを含む、既知の一状況において、トランス−含有率をテストするための上記方法は、精度が劣る可能性がある。従って、ポリブタジエンのトランス−含有率に関する付随的なまたは別のテストは、以下のとおりである。較正用の標準物質を、既知のトランス−アイソマー含有率(例えば、高い比率および低い比率のトランス−ポリブタジエン)を持つ少なくとも2種のポリブタジエンを用いて調製する。これらサンプルは、少なくとも約1.5%〜50%なる範囲の段階的なトランス−ポリブタジエン含有率を生成し、あるいは該未知の量の限界を確定して、得られる較正カーブが、少なくとも約13点の等間隔で配置された点を含むように、単独で使用しまたは一緒に配合する。
近赤外レーザーを備えた、フーリエ変換ラマン(FT−ラマン)分光装置を使用して、各標準物質のストークス−ラマンスペクトルを、以下の装置パラメータを使用して得た:過度の加熱または蛍光発光を起こさずに、良好なシグナル−ノイズ比(S/N)を得るのに十分なレーザー出力(典型的には、約400〜800mWが適当である);解像度2cm−1;ラマンシフトスペクトル範囲:約400〜4000cm−1;少なくとも300回の走査について加算。
較正カーブは、上で得たデータから、ケモメトリック(chemometrics)法およびソフトウエア、例えばNHサレムのギャラクチックインダストリーズ社(Galactic Industries Corp.)から入手できるPLSplus/IQ等を使用して構築できる。許容される較正は、SNV(デトレンド(detrend))経路長補正を使用して得たPLS−1曲線、平均中心データ調製、およびスペクトル範囲約1600〜1700cm−1に渡る5−点SG二次導関数を利用して、このソフトウエアによって得た。得られた検量線の補正係数(R2)は、0.95なる最小値でなければならない。
該コア材料のラマンスペクトルを、該サンプル内の対象とする点(例えば、該ゴルフボールコアの表面または中心)において、この装置を使用して得る。このサンプルは、例えば離型剤等の異物を含まないものである必要がある。このPLS検量線を利用して、該サンプルのスペクトルを解析して、該サンプルのトランス−ポリブタジエンアイソマー含有率を決定する。
しばしばフリーラジカル開始剤とも呼ばれる、フリーラジカル源が、この発明の配合物および方法において必要とされる。このフリーラジカル源は、典型的にはペルオキシドであり、また好ましくは有機ペルオキシドである。適当なフリーラジカル源は、ジ−t−アミルペルオキシド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンペルオキシド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、a−aビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、等およびこれらの混合物である。該ペルオキシドは、典型的に全弾性ポリマー成分100部当たり約0.1部を越える量で、好ましくは全弾性ポリマー成分100部当たり約0.1〜15部、およびより好ましくは全弾性ポリマー成分100部当たり約0.2〜5部なる範囲の量で存在する。この発明による幾分かのシス−トランス触媒の存在は、従来の架橋反応と比較して、多量のフリーラジカル源、例えばここに記載の量を必要とする可能性がある。100%活性の開始剤は、好ましくはポリブタジエン100部につき、約0.05〜5phrなる範囲の量で添加される。より好ましくは、添加すべき開始剤の量は、約0.15〜4phrおよび最も好ましくは約0.25〜3phrなる範囲にある。このフリーラジカル源は、その代わりにまたはこれに加えて、電子ビーム、UVまたはγ−線照射、X−線照射、あるいはフリーラジカルを発生し得る任意の他の高エネルギー輻射源であっても良い。更に、加熱がしばしばフリーラジカル発生開始を容易にすることを理解すべきである。
架橋剤を含めて、該反応生成物の硬度を高める。適当な架橋剤は、不飽和脂肪酸またはモノカルボン酸の1種以上の金属塩、例えば亜鉛、アルミニウム、ナトリウム、リチウム、ニッケル、カルシウム、またはマグネシウムアクリレート塩等、並びにその混合物を含む。好ましいアクリレートは、亜鉛アクリレート、亜鉛ジアクリレート、亜鉛メタクリレート、および亜鉛ジメタクリレート、およびこれらの混合物を含む。該架橋剤は、該弾性ポリマー成分におけるポリマー鎖の一部を架橋するのに十分な量で存在する必要がある。例えば、該所定の圧縮率は、架橋の程度を調節することにより達成できる。これは、例えば架橋剤の型および量を、当業者には周知の方法で変更することによって達成できる。該架橋剤は、典型的に該弾性ポリマー成分の約0.1%を越える量で、好ましくは該弾性ポリマー成分の約10〜40%なる範囲の量で、より好ましくは該弾性ポリマー成分の約10〜30%なる範囲の量で存在する。有機硫黄を、該シス−トランス添加触媒として選択した場合、亜鉛ジアクリレートを、架橋剤として選択することができ、また好ましくは約25phr未満の量で存在する。適当な市販品として入手できる亜鉛ジアクリレートは、ザルトマー社(Sartomer Corporation)から入手できるものを含む。
この発明の配合物は、またフィラーを含むことができ、これはポリブタジエン材料に添加されて、該コアの密度および/または比重を調節し、また該カバーに添加することも可能である。ここで使用する用語「フィラー」とは、対象とするゴルフボールコアの密度および/または他の特性を調節するために使用できる、任意の化合物または配合物を含む。この発明のゴルフボールコアにおいて有用なフィラーは、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、フレーク、繊維、およびリグラインド(これは、粉砕された再生コア材料、例えば約30メッシュ粒径まで粉砕される)を含む。使用するフィラーの型および量は、該配合物における他の成分の量および質量に支配される。というのは、45.93g(1.62オンス)というゴルフボール質量の最大値が、米国ゴルフ協会(USGA)によって設定されているからである。一般に使用される適当なフィラーは、約2〜20なる範囲の比重を持つ。好ましい一実施例では、この比重は、約2〜6であり得る。一実施例において、該センタ材料は、約1〜5、好ましくは約1.1〜2なる範囲の比重を持つことができる。
フィラーは、典型的にポリマーまたは無機粒子である。その例は、沈降水和シリカ;クレー;タルク;アスベスト;ガラス繊維;アラミド繊維;マイカ;メタ珪酸カルシウム;硫酸バリウム;硫化亜鉛;リトポン;ケイ酸塩;炭化珪素;珪藻土;ポリ塩化ビニル;炭酸塩、例えば炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム;金属、例えばチタン、タングステン、アルミニウム、ビスマス、ニッケル、モリブデン、鉄、鉛、銅、ホウ素、コバルト、ベリリウム、亜鉛、および錫;金属合金、例えばスチール、黄銅、青銅、炭化ホウ素ホイスカー、および炭化タングステンホイスカー;金属酸化物、例えば酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、および酸化ジルコニウム;粒状炭素質材料、例えばグラファイト、カーボンブラック、コットンフロック、天然ビチューメン、セルロースフロックおよびレザー繊維;マイクロバルーン、例えばガラスおよびセラミック;フライアッシュ;およびこれらの組み合わせを含む。
この発明に従って製造される、該センタにおける該ポリブタジエン材料に、場合により酸化防止剤を含めることができる。酸化防止剤は、該ポリブタジエンの酸化性の劣化を阻害または防止することのできる化合物である。この発明において有用な酸化防止剤は、ジヒドロキノリン酸化防止剤、アミン型の酸化防止剤およびフェノール型の酸化防止剤を含むが、これらに制限されない。
他の随意の成分、例えばテトラメチルチウラム等の促進剤、加工助剤、加工油、可塑剤、染料および顔料、並びに当業者には周知の他の添加剤を、この発明において使用することができ、その量は、これらがその目的を達成するのに十分なものである。
この発明に従って、該ゴルフボールセンタまたは該コアの任意の部分を製造するのに使用される、該ポリマー、フリーラジカル開始剤、フィラーおよび任意の他の材料を組み合わせて、当業者には公知のあらゆる型の混合手段によって、混合物を製造できる。適当な型の混合は、一回および多数回混合等を含む。該ゴルフボールセンタまたは追加の層の特性を改善するために使用する、該架橋剤およびあらゆる他の随意の添加剤を、同様に任意の型の混合により併合することができる。成分が順次添加される、1回の混合工程が好ましい。というのは、この型の混合は、効率を高め、かつこの工程に要するコストを減じる傾向があるからである。好ましい混合サイクルは、一段階であり、そこに該ポリマー、シス−トランス触媒、フィラー、亜鉛ジアクリレート、およびペルオキシドが順次添加される。適当な混合装置は、当業者には周知であり、このような装置は、バンバリーミキサー、二本ロールミル、または二軸スクリュー押出機を含むことができる。典型的には、ポリマーを混合するための従来の混合速度が使用されるが、この速度は、これら構成成分に、実質的な均一分散性を付与するのに十分高いものである必要がある。他方、この速度は、高すぎてはならない。というのは、高い混合速度は、混合すべき該ポリマーを破断する傾向があり、特に該弾性ポリマー成分の分子量を不当に減じる可能性があるからである。従って、この速度は、該ポリマー成分の望ましい高分子量部分の喪失をもたらす恐れのある、高い剪断を回避するのに十分に低いものとすべきである。また、混合速度が高すぎることは、不当に高い量の発熱をもたらし、該プレフォームが成型され、かつコアの回りに結合される前に、架橋を開始してしまう可能性がある。この混合温度は、ポリマー成分の型に、またより重要なことには、フリーラジカル開始剤の型に依存する。例えば、このフリーラジカル開始剤として、ジ(2−t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼンを使用した場合、これら成分を安全に混合するのに適した混合温度は、約80〜125℃、好ましくは約88〜110℃およびより好ましくは約90〜100℃である。更に、混合温度を、該ペルオキシドの分解温度以下に維持することが重要である。例えば、該ペルオキシドとしてジクミルペルオキシドを選択した場合、この温度は200°Fを越えるべきではない。適当な混合速度および温度は、当業者にとって周知であり、あるいは不当な実験を行うこと無しに、容易に決定できる。
この混合物を、例えば圧縮成型または射出成型に掛けて、該センタ用のソリッド球または中間層を形成するための、半球型のシェルを得ることができる。このポリマー混合物を、成型サイクルに付して、そこで熱および圧力を印加し、一方で該混合物を鋳型内に閉じ込める。そのキャビティーの形状は、成型すべきゴルフボールの部分に依存する。この圧縮および加熱が、1種以上のペルオキシドを分解することによって、フリーラジカルを遊離し、これは、該シス−トランス転化および架橋を同時に開始することを可能とする。この成型サイクルの温度および期間は、選択されたペルオキシドおよびシス−トランス触媒の型に基づいて、容易に選択できる。この成型サイクルは、単一の温度にて、固定された期間、該混合物を成型する単一の段階を含むことができる。ジクミルペルオキシドを含む混合物に対する、単一段階成型サイクルの一例は、約2,500psiにて、335°Fで11分間、該ポリマー混合物を維持することであろう。この成型サイクルは、また2段階の工程を含むこともでき、そこで該ポリマー混合物は、第1温度にて、第1の期間、該金型内に維持され、次いで第2の典型的にはより高い温度にて、第2の期間維持される。二段階成型サイクルの一例は、290°Fにて40分間、該金型を維持し、次いで金型温度を340°Fまで上げ、この温度にて金型を20分間維持することであろう。この発明の好ましい実施例において、単一段階の硬化サイクルを利用する。単一段階法は、効果的かつ効率的であり、二段階法の時間およびコストを減じる。該弾性ポリマー成分、ポリブタジエン、シス−トランス転化触媒、付随的ポリマー、フリーラジカル開始剤、フィラーおよびこの発明に従って該ゴルフボールセンタまたは該コアの任意の部分を製造する際に使用される、任意の他の材料を混合して、射出成型法によりゴルフボールを製造する。該射出成型法も当業者には周知である。該硬化時間は、選択された種々の材料に依存するが、特に適した硬化時間は、約5〜18分、好ましくは約8〜15分およびより好ましくは約10〜12分である。当業者は、使用する特定の材料および本明細書における議論に基づいて、上下方向に、硬化時間を容易に調節できるであろう。
未硬化の弾性ポリマー成分よりも多量のトランス−ポリブタジエンを含む、この硬化された弾性ポリマー成分は、内部のある点において第1の硬度を持ち、また第2の硬度を持つ表面を有する物品に形成される。該第2の硬度は、該第1の硬度の10%を越える量だけ、該第1の硬度とは異なっている。好ましくは、この物品は、球であり、該点は、この物品の中央にある。もう一つの実施例において、該第2の硬度は、該第1の硬度の20%を越える量だけ、該第1の硬度とは異なっている。この硬化された物品は、また内部位置に第1の量のトランス−ポリブタジエンを、また表面位置に第2の量のトランス−ポリブタジエンを含み、ここで該第1の量は、少なくとも約6%、該第2の量よりも少なく、好ましくは少なくとも約10%、該第2の量よりも少なく、またより好ましくは少なくとも約20%、該第2の量よりも少ない。該内部位置は、好ましくは中央にあり、また該物品は、好ましくは球である。
この発明に従って製造したゴルフボールのコアまたは該コアの一部分の圧縮率は、典型的には約15〜100である。一実施例において、この圧縮率は、約50以下であり、より好ましくは約25以下である。好ましい一実施例において、この圧縮率は、約60〜90、より好ましくは約70〜85である。圧縮率を測定するための種々の等価な方法が存在する。例えば、70アッチ圧縮率(以前は、「PGA圧縮率」と呼ばれた)は、100kgの荷重および「バネ定数」36Kgf/mmの下で、3.2mmなる撓みの中心硬度と等価である。一実施例において、該ゴルフボールコアは、130kg−10kgテストの下で、約3.3mm〜7mmなる範囲の撓みを有する。
一実施例において、該コアは、センタと外側層とで構成される。該センタは、少なくとも約0.5インチ、好ましくは約0.75インチ〜1.5インチなる範囲の外径を有する。好ましい一実施例においては、該センタは、約0.8〜1.2インチなる範囲の外径を持つ。
もう一つの実施例において、該センタは、第1の量のトランス−アイソマーを含む、ポリブタジエンの転化反応生成物、フリーラジカル源および少なくとも1種のシス−トランス転化触媒から作られた材料を含む。好ましい一実施例において、この反応は、該第1の量のトランス−アイソマーよりも大きな、第2の量のトランス−アイソマーを含む、ポリブタジエン反応生成物を形成するのに十分な温度および時間にて起こる。一実施例において、該シス−トランス転化触媒は、有機硫黄化合物、無機硫黄化合物、芳香族有機金属化合物、金属−有機硫黄化合物、テルル、セレン、元素硫黄、重合体硫黄、または芳香族有機化合物の内の少なくとも1種を含む。好ましくは、この触媒は、有機硫黄化合物を含み、また好ましい一実施例では、この触媒は、少なくとも1種の4,4’−ジフェニルジスルフィド、または2,2’−ベンズアミドジフェニルジスルフィド、またはその組み合わせを含む。このシス−トランス転化触媒は、典型的に、ポリブタジエン100部当たり、約0.1〜10部なる範囲の量で存在する。
好ましくは、該コア12は、少なくとも約1インチ、より好ましくは約1.3〜1.6インチなる範囲の、外径D1をもつ。一実施例において、該コアの外径は、約1.4インチ〜1.58インチなる範囲にある。上記のように、該外側層は、少なくとも1本の糸30を巻付けることにより製造できる。この場合、該センタの径は、好ましくは少なくとも1.4インチである。従って、使用する糸の量は、該コアのサイズに比して小さい傾向にある。該糸巻き層は、圧縮率を下げる可能性があり、またよりソフトな感触をもつボールを与える。また、該糸巻き層は、極めて剛性であり、また該ボールの硬度を増す。一実施例において、該糸巻き層の厚みは、約0.762cm(約0.3インチ)未満である。好ましい一実施例において、該糸巻き層の厚みは、約0.254cm(約0.1インチ)未満である。この好ましい実施例において、該糸材料は、ポリエーテル尿素または極めて硬い、高引張り弾性率糸を含む。ここで、「硬い、高引張り弾性率」とは、少なくとも約10,000,000psiなる引張り弾性率を意味するものと理解すべきである。
ポリイソプレン、ポリエーテル尿素、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの組み合わせを含む、糸材料を、この発明において使用することができる。比較的高いおよび低い弾性率糸を、同時にセンタの周りに巻付けることができる。更に、もう一つの実施例において、後の被覆工程に関わる圧縮および/または射出成型工程中に、「軟化」して、中間層または融合層を生成する、ポリエーテル尿素等の糸を使用できる。また、成型中に軟化しない、ポリイソプレン等の糸を、この発明において使用することもできる。一実施例において、該糸巻き層において、ポリエステル尿素を含む糸を使用することが好ましい。
図1のゴルフボール10は、ゴルフボールの分野において利用されている、任意の公知法によって製造できる。例えば、このゴルフボールは、該ソリッドセンタ16を、射出成型または圧縮成型することにより製造できる。該多層コアに関連して、次に他の層16を、該センタ上に射出成型または圧縮成型することができる。糸巻きの実施例においては、次に該糸を該ソリッドセンタの周りに巻きつけて、前に記載したように、該糸巻き層16を形成する。該カバー層14を、次に当分野において周知の方法により、該層16の回りに、射出成型、圧縮成型、反応射出成型または流し込み成型することができる。
この発明のゴルフボールは、またまず半球型のカップを圧縮成型することによりシェルを形成することによって製造でき、該カップは、該シェルを生成するように一緒に結合して、キャビティーを形成し、このキャビティーを流体または液体で満たして、流体で満たされたセンタを形成する。一実施例において、該シェルは、ソリッド層により覆われている。他の実施例においては、次いで糸を、該シェルの回りに直接巻きつけて、該センタと糸巻き層との間において望ましい追加の層が存在しない場合には、上記のようにして、糸巻き層を形成し、あるいは該張力を掛けた材料を、該センタ層の周りに設ける前に、該シェルの周りに該中間層を形成する。次いで、該カバーを、該糸巻き層の周りに設ける。
該カバーにとって望ましい性質は、特に良好な成型適正、高い磨耗抵抗、高い引裂き強度、高いレジリエンス、および良好な離型性である。このカバーは、典型的に十分な強度、良好な性能特性および耐久性をもたらす厚みを有する。このカバーは、好ましくは約0.1インチ未満の、より好ましくは約0.05インチ未満の、および最も好ましくは約0.01〜約0.04インチなる範囲の厚みを持つ。他の実施例において、該外側カバー層は、0.02インチ未満および好ましくは0.01インチ未満である。この発明は、特にコアと、内側カバー層と、外側カバー層とを含む、多層ゴルフボールを目的とする。この実施例においては、好ましくは、該内側および外側カバー層両者は、約0.05インチ未満の、より好ましくは約0.02〜約0.04インチなる範囲の厚みを持つ。
内側および外側カバー層を持つ実施例において、該内側カバー層は、以下のように調製できる。射出成型、圧縮成型または流し込み成型を利用できるが、好ましい一実施例においては、この内側カバーは、圧縮成型を利用して該コア上に形成される。該コアの回りの金型を閉じるべく、圧力を高める適当な速度は、容易に決定することができる。従って、1〜30秒程度、好ましくは2〜20秒なる範囲の時間は、関与する他のプロセス条件および材料に応じた、適当なものであり得る。好ましい一実施例において、約10−15秒なる時間が、この金型を閉じるのに最も適した時間である。この時間は、各金型部分がこれらの間の該ポリイソプレン材料と接触した時点から測定され、該金型および該センタに掛かる圧力を、該金型を完全に閉じるまで高めるのに要する時間に関連する。有利なことに、この方法は、射出成型法を利用した場合に起こる可能性のある、ウエルドラインの形成を阻害または防止するのを補助する。
この発明の1側面によれば、中間層22は、マントル層、内側カバー、または外側コア層でよく、任意の天然または合成バラタ材料、即ちトランス−ポリイソプレン、バラタと他の材料とのブレンド、またはコアの回りに成型できる同様な材料で作ることができる。一実施例においては、圧縮成型法を利用して、該中間層を形成する。一実施例において、該中間層は、またスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、あるいはSBR−強化樹脂、例えばOH、アクロンのグッドイヤータイヤ&ゴム社(Goodyear Tire & Rubber Co.)から、プライオライト(PLIOLITETM)として入手できるものをスチフナーとして、および比重を調節するための1種以上のフィラーを含むこともできる。適当なフィラーは、本明細書に記載のものを含む。好ましいフィラーは、小さな粒径を持ち、かつ高い比重を持つもの、例えばタングステンである。慣性モーメントを高めるために、該内側カバーの質量を、できる限り高めることが必要である。この中間層は、該糸巻きコアに適用する際に、あるいは後成型工程において、加硫することができるが、必須ではない。この中間層の外側表面は、該外側カバーを適用する前に、ハロゲン化、化学的表面変性または処理、UV照射、電子ビームへの暴露、マイクロ波照射、被覆(噴霧、浸漬または静電塗布による)、プラズマ照射、またはコロナ放電処理の1種以上によって、出願中の米国特許出願No.09/389,058に記載されているように、処理することができる。この特許出願を参照してここに含める。好ましくは、この処理は、該内側カバー層の、該外側カバー層に対する接着性を高めるであろう。この処理を利用して、該ベース材料中に配合された材料を活性化することができ、これは、該外側カバーと、同様な好ましい相互作用を行い、例えば接着を容易にするであろう。この処理は、更に該ベース材料の軟化点を高めるように、ある材料を活性かして、該最終製品の温度安定性を改善するのに利用できる。該中間層は、該糸巻きコアに剛性を与える。
径約1.68インチをもつボールに関連して、該中間層の外径は、好ましくは約1.55〜1.67インチなる範囲内にある。一実施例において、この外径は、約1.6〜1.64インチなる範囲内にある。中間層の外径の例は、1.62インチである。別の実施例において、この外径は、約1.66〜1.67インチなる範囲内にある。この中間層は、好ましくは、約0.01〜0.1インチ、好ましくは約0.02〜0.05インチなる範囲の厚みを持つ。好ましい一実施例において、この中間層の厚みは、約0.03〜0.04インチなる範囲内にある。別の実施例において、該中間層は、約0.05〜0.09インチなる範囲内にある。好ましい一実施例において、この中間層は、該コア上で測定した場合に、約20〜80ショアD、好ましくは約50〜75ショアD、およびより好ましくは約52〜64ショアD硬度を持つ。該材料のスラブは、僅かに低い硬度を持つであろう。該コアおよび中間層の圧縮率は、典型的に約20〜100、好ましくは約30〜75なる範囲にある。好ましい一実施例において、該コアおよび中間層の圧縮率は、約40〜70なる範囲にある。一実施例において、該中間層は、比重約0.8〜1.3、好ましくは約0.9〜1.2を有する。一実施例において、中間層を含む、部分的に成型したゴルフボールの質量は、約40g〜46g、好ましくは約40g〜42gである。該中間層の損失正接は、一実施例においては、約−30〜20℃なる温度にて、約0.03〜0.08であり得る。該中間層の弾性および複素弾性率は、約−30〜20℃なる温度に渡り、約5,000〜12,000Kgf/cm
2であり得る。以下の表に、好ましい中間層材料およびその特性を掲載する。
1:該ブレンド比は、バラタ/プライオライトによって行った。
2:SG変化を伴うブレンドは、90バラタ/10プライオライトブレンドを用いて作成。
3:この50/50柔軟性は全て、テスト中に破損した。
この発明の該ゴルフボール用のポリイソプレン材料は、好ましくは約500〜300,000psi、好ましくは約50,000〜150,000psiおよび最も好ましくは約60,000〜140,000psiなる範囲の曲げ弾性率を持つ。
この発明の他の側面によれば、中間層22のデュロメータ硬度(durometer hardness)は少なくとも約80ショアCまたは少なくとも約55ショアDであり、中間層22はジエンゴムを含んでいる。適切なジエンポリマーはこれに限定されないが、シス−またはトランス−ポリプロピレンまたはバラタを含む天然ゴム、またはシス−またはトランス−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリ(ノルボルナン)(norbornene)、ポリオクテナメル、およびポリペンタナメルを含む合成ゴムその他が含まれる。他の適切なジエンポリマーは、メタローセン触媒ジエンポリマー、コマリマー、およびターポリマー、例えば、メタローセン触媒ポリブタジエン、エチレンプロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーターポリマー(EPDM)、イソプレン、官能化モノマーとのコポリマー(ポーラー基)、EPR、その他を含む。ここで用いられるように、「メタローセン触媒」はメタローセンの触媒により高分子化を含み、一般に、負電荷を付与された2つのシクロペンタジエンアニオンにより挟み込まれた、正電荷を付与された金属イオンおよび他のシングルサイト触媒を含む。
上に検討したように、Pro−VI(商標)ゴルフボールのアイオノマー内部カバーと同様に働くために、中間層22は好ましくは比較的大きな硬度を有する。中間層22のデュロメータ硬度は好ましくは55ショアDより大きく、より好ましくは60ショアDより大きい。好ましい硬度を実現するために、ジエンゴム配合物は好ましくは高度に架橋される。ゴム配合物の例は100phrのポリブタジエン、36phrの亜鉛ジアクリレートまたは他の金属塩ジアクリレート、ジメタクリレートまたはモノメタクリレート反応性共薬剤(コエージェント。co−agent)、約0.1から1phrのペロキサイド、重量フィラーおよび付加的な有機硫黄例えばZnPCPTを含む。他のゴム配合物の例は、亜鉛ジアクリレートまたは他の金属塩ジアクリレート、ジメタクリレート、モノメタクリレート反応性コエージェントを50phrより多く含み、より好ましくは60phrより多く含む点を除けば上記と同じである。最も好ましい実施例は約66phrの亜鉛ジアクリレートを含む。通常のコアをキャストするそのような配合物例の特性は以下のようなものである。
代替的には、ジエンゴムを大量の亜鉛ジアクリレートまたは他の金属塩ジアクリレート、ジメタクリレート、またはモノメタクリレート反応性コエージェントで架橋して所望の硬度をえるのに代えて、ジエンゴムに1以上の添加剤をブレンドしてジエンゴムを硬化させてもよい。適切な添加剤は、スチレン−ブタジエンゴム(「SBR」)またはSBR強化樹脂、例えば、オハイオ州アクロンおGoodyear Tire & Rubber CoからPLIOLITE(商標)として入手できるものである。他の適切な添加剤にはワックス、ステアリン酸塩、変性熱可塑性または熱硬化性ポリマーである。
好ましくは、中間層の比重は0.90から1.25であり、その厚さは約0.010から約0.020インチであり、さらに好ましくは、約0.020インチから約0.100インチであり、最も好ましくは、約0.020インチから約0.060インチである。代替的には、1つの実施例では、中間層およびカバーの比重は実質的に同一、例えば、0.05の範囲で、または好ましくは0.02の範囲で同一である。ポリイソプレンを含む中間層に関連して先に検討したように、中間層は、外側カバーを付ける前に、ハロゲン化、化学表面改質または処理、UV照射、電子ビーム照射、マイクロ波照射、コーティング、プラズマまたはコロナ放電のうちの1または複数を適用して処理することができる。さらに、中間層は水蒸気の曲がりくねった通路を形成するように設計したフレーク等のフィラーを含み、その結果、中間層が水蒸気の浸入を阻止するバリアとなる。水蒸気バリア層は2001年10月9日出願の出願番号09/973342の本出願が所有する米国特許出願「水蒸気バリア層を具備するゴルフボール」に十分に開示されている。この出願を参照してここに含める。
この発明の他の側面によれば、中間層22のデュロメータ硬度は少なくとも80ショアCまたは少なくとも55ショアD硬度であり、中間層22は注型、反応性射出成型熱硬化ポリウレタン、ポリ尿素、ポリウレタン−アイオノマー、ポリウレタン尿素混成物、ウレタンまたは尿素部分を含むブレンドまたはコポリマー、エポキシ、ポリエステルまたはこれらのブレンドを含む。先に検討したように、Pro−VI(商標)ゴルフボールのアイオノマー内部カバーと同様に働くために、中間層22は好ましくは比較的大きな硬度を有する。中間層22のデュロメータ硬度は好ましくは55ショアDより大きく、より好ましくは60ショアDより大きい。
適切なポリウレタンおよびポリ尿素はカバー層または外側カバー層20と関連して以下で検討する。所望の硬度を達成するために、ポリウレタンおよびポリ尿素はフィラーとブレンドされてよい。適切なフィラーはまた以下で検討する。
代替的には、フィラーなしで所望の硬度を有する適切なポリウレタンが、Simula Incが所有する米国特許6127505号「耐衝撃ポリウレタンおよびその製造方法」およびSimula Incが所有する米国特許5962617号「耐衝撃ポリウレタンおよびその製造方法」に開示されている。これら‘505および’617参考文献は、77から82ショアDの範囲の硬度を有する耐衝撃、高硬度のポリウレタンを開示している。‘505および’617の開示内容はここに参照して全体として含める。他の適切なポリウレタンは熱可塑性尿素拡張ポリウレタンを含み、これはフィラーとともにまたはフィラーなしに用いられ、Simulaが所有する米国特許6258917号および5811506号、「押し出し加工可能な熱可塑性エラストマー尿素拡張ポリウレタン」に開示されている。これら参考文献も参照して含める。
さらに、プレスクリプションガラス、カメラレンズ、サーモオプティカルスイッチ、プラスチックカラーレンズ、およびコンタクトレンズ、その他の分野で用いられているポリウレタンもこの発明の中間層で用いられる。このようなポリウレタンは、米国特許第6276994号、6246809号、6027816号、5830578号、5757464号、6070979号、5790232号、5753730号、5496641号、5462806号、5310577号、4975328号および4708908号に開示されている。これら参考文献は参照してここに含める。
好ましくは、中間層の比重は0.90から1.25であり、その厚さは約0.010から約0.150インチであり、より好ましくは約0.020インチから約0.100インチであり、最も好ましくは、約0.020インチから約0.060インチである。また、ポリイソプレンまたはジエンゴムを含む中間層に関連して先に検討したように、中間層は、外側カバーを付ける前に、ハロゲン化、化学表面改質または処理、UV照射、電子ビーム照射、マイクロ波照射、コーティング、プラズマまたはコロナ放電のうちの1または複数を適用して処理することができる。さらに、中間層は水蒸気の曲がりくねった通路を形成するように設計したフレーク等のフィラーを含み、その結果、中間層が水蒸気の浸入を阻止するバリアとなる。
カバー層または外側カバー層20は、当分野で通常のスキルを有する者に知られている任意の材料を含み、これには、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチックが含まれるが、好ましくは、カバー層はつぎのような適切な材料のいずれをも含む。
(1)ポリウレタン、例えば、ポリオールおよびジイソシアネートまたはポリイソシアネートから準備されたもの、および米国特許5334673号および米国特許6506851号および米国特許出願10/194059号に開示されたもの;
(2)ポリ尿素、例えば、米国特許5484870号および米国特許出願10/228311号に開示されたもの;
(3)ポリウレタン−尿素混成物、ウレタンまたは尿素部分を含むブレンドまたはコポリマー。
カバーは、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つの硬化剤の反応性生成物を含むポリウレタン配合物を含む。硬化剤は、例えば、1以上のジアミン、1以上のポリオール、またはこれらの組み合わせを含んで良い。少なくとも1つのポリイソシアネートは、1以上のポリオールと結合してプレポリマーを生成し、これをこの後少なくとも1つの硬化剤と結合してもい。この結果、ここでポリオールを記述する時に、ポリオールはポリウレタン材料の1つのまたは2つのコンポーネントすなわちプレポリマーの部分としてまたは硬化剤中に用いて適切である。ポリウレタン配合物は内側カバー、外側カバーまたは双方を生成するために用いても良い。1つの好ましい実施例では、外側カバーはポリウレタン配合物を含む。
別の好ましい実施例において、該硬化剤は、ポリオール硬化剤を含む。より好ましい実施例において、該ポリオール硬化剤は、エチレングリコール;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;低分子量ポリテトラメチレンエーテルグリコール;1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン;1,3−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン;1,3−ビス{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;レゾルシノール−ジ−(β−ヒドロキシエチル)エーテル;ヒドロキノン−ジ−(β−ヒドロキシエチル)エーテル;トリメチロールプロパン;またはこれらの混合物を含む。
一実施例において、該ポリウレタン配合物は、少なくとも1種のイソシアネートおよび少なくとも1種の硬化剤を含む。更に別の実施例において、該ポリウレタン配合物は、少なくとも1種のイソシアネート、少なくとも1種のポリオールおよび少なくとも1種の硬化剤を含む。好ましい一実施例において、該イソシアネートは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリマー状の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド−変性液状4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−メチルキシレンジイソシアネート、m−メチルキシレンジイソシアネート、o−メチルキシレンジイソシアネート、またはこれらの混合物を含む。好ましいもう一つの実施例では、該少なくとも1種のポリオールは、ポリエーテルポリオール、ヒドロキシ末端を持つポリブタジエン、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、あるいはこれらの混合物を含む。更に別の好ましい実施例では、該硬化剤は、ポリアミン硬化剤、ポリオール硬化剤、またはこれらの混合物を含む。より好ましい実施例では、該硬化剤は、ポリアミン硬化剤を含む。最も好ましい実施例において、該ポリアミン硬化剤は、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンまたはそのアイソマー;3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンまたはそのアイソマー;4,4’−ビス(sec−ブチルアミノ)−ジフェニルメタン;1,4−ビス−(sec−ブチルアミノ)−ベンゼン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン);4,4’−メチレン−ビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン);トリメチレングリコール−ジ−p−アミノベンゾエート;ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート;N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン;p,p’−メチレンジアニリン;フェニレンジアミン;4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン);4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン);4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン;2,2’,3,3’−テトラクロロジアミノジフェニルメタン;4,4’−メチレン−ビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン);またはこれらの混合物を含む。
当業者が入手できるあらゆるポリイソシアネートが、この発明で使用するのに適している。ポリイソシアネートの例は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリマー状のMDI、カルボジイミド−変性液状MDI、4、4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、p−テトラメチルキシレンジイソシアネート(p−TMXDI)、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート(m−TMXDI)、エチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカン−1,12−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、HDIのトリイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジイソシアネート(TMDI)、テトラセンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、アンスラセンジイソシアネート、およびこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。ポリイソシアネートは、2以上のイソシアネート基を持つもの、即ちジ−、トリ−およびテトラ−イソシアネートとして、当業者には公知である。好ましくは、このポリイソシアネートは、MDI、PPDI、TDIまたはこれらの混合物を含み、より好ましくは、該ポリイソシアネートはMDIを含む。本明細書で使用する用語「MDI」は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリマー状のMDI、カルボジイミド−変性液状MDI、およびこれらの混合物を含み、更に使用する該ポリイソシアネートは、「低遊離モノマー含有率」のものであると理解すべきであり、従来のジイソシアネートよりも、低レベルの「遊離」モノマー状イソシアネート基を持つものと、当業者は理解すべきであり、即ちこの発明の配合物は、典型的に約0.1%未満の遊離モノマー基を含む。「低遊離モノマー含有率」ジイソシアネートの例は、ローフリーモノマー(Low Free Monomer)MDI、ローフリーモノマーTDIおよびローフリーモノマーPPDIを含むが、これらに制限されない。
該少なくとも1種のポリイソシアネートは、約14%未満の未反応のNCO基を含むべきである。好ましくは、該少なくとも1種のポリイソシアネートは、約7.5%を越えないNCO基、より好ましくは約2.5%〜約7.5%なる範囲のNCO基および最も好ましくは約4%〜約6.5%なる範囲のNCO基を含む。
当業者の入手できるあらゆるポリオールが、この発明において使用するのに適している。一実施例において、該ポリオールの分子量は、約200〜約6000なる範囲内にある。ポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、ヒドロキシ末端を持つポリブタジエン(部分的に/完全に水添された誘導体を含む)、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリカーボネートポリオールを含むが、これらに制限されない。例は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールおよびこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。該炭化水素鎖は、飽和または不飽和結合および置換または無置換の芳香族および環式基を含むことができる。好ましくは、この発明の該ポリオールは、PTMEGを含む。
他の実施例において、ポリエステルポリオールは、この発明の該ポリウレタン材料中に含まれる。適当なポリエステルポリオールは、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリエチレンプロピレンアジペートグリコール、o−フタレート−1,6−ヘキサンジオールおよびこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。該炭化水素鎖は、飽和または不飽和結合、または置換または無置換の芳香族および環式基を含むことができる。
もう一つの実施例において、ポリカプロラクトンポリオールは、この発明の材料に含まれる。適当なポリカプロラクトンポリオールは、1,6−ヘキサンジオール−開始ポリカプロラクトン、ジエチレングリコール開始ポリカプロラクトン、トリメチロールプロパン開始ポリカプロラクトン、ネオペンチルグリコール開始ポリカプロラクトン、1,4−ブタンジオール−開始ポリカプロラクトンおよびこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。該炭化水素鎖は、飽和または不飽和結合、または置換または無置換の芳香族および環式基を含むことができる。
更に別の実施例において、ポリカーボネートポリオールは、この発明のポリウレタン材料に含まれる。適当なポリカーボネートは、ポリフタレートカーボネートを含むが、これに限定されない。該炭化水素鎖は、飽和または不飽和結合、または置換または無置換の芳香族および環式基を含むことができる。
ポリアミン硬化剤も、この発明のポリウレタン配合物における該硬化剤で使用するのに適している。また、これは、得られるボールの切断抵抗、剪断抵抗および耐衝撃性を改善することが分かっている。好ましいポリアミン硬化剤は、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンおよびそのアイソマー;3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンおよびそのアイソマー、例えば3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン;4,4’−ビス(2−クロロアニリン);4,4’−ビス(sec−ブチルアミノ)−ジフェニルメタン;1,4−ビス(sec−ブチルアミノ)−ベンゼン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン);4,4’−メチレン−ビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン);ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエート;N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン;p,p’−メチレンジアニリン(MDA);m−フェニレンジアミン(MPDA);4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)(MOCA);4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン);4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン;2,2’,3,3’−テトラクロロジアミノジフェニルメタン;4,4’−メチレン−ビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン);トリメチレングリコールジ−p−アミノベンゾエート;およびこれらの混合物を含むが,これらに限定されない。好ましくは、この発明の硬化剤は、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミンおよびそのアイソマー、例えばエタキュア(ETHACURE)300を含む。第一および第二アミン両者を含む、適当なポリアミン硬化剤は、好ましくは約64〜約2000なる範囲の重量平均分子量を持つ。
少なくとも1種のジオール、トリオール、テトラオールまたはヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、上記のポリウレタン配合物に添加できる。適当なジオール、トリオールおよびテトラオール基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、低分子量ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン、1,3−ビス{2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}ベンゼン、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、レゾルシノール−ジ−(4−ヒドロキシエチル)エーテル、ヒドロキノン−ジ−(4−ヒドロキシエチル)エーテルおよびこれらの混合物を含む。好ましいヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンおよびこれらの混合物を含む。
好ましくは、該ヒドロキシ末端を持つ硬化剤は、約48〜2000なる範囲の分子量を持つ。本明細書で使用する分子量とは、絶対質量平均分子量であるものと理解すべきであり、また当業者にはそのように理解されるであろう。
該ヒドロキシ末端を持つおよびアミン型の硬化剤両者は、1種以上の飽和、不飽和、芳香族および環式基を含むことができる。また、該ヒドロキシ末端を持つおよびアミン型の硬化剤は、1以上のハロゲン原子を含むことができる。該ポリウレタン配合物は、硬化剤のブレンドまたは混合物から製造できる。しかし、所望により、該ポリウレタン配合物は、単一の硬化剤を使用して製造することができる。
当業者にとって公知の任意の方法を利用して、ポリイソシアネート、ポリオールおよびこの発明の硬化剤を併合することができる。当分野においてワンショット法として知られる、一般的に利用されている方法の一つは、該ポリイソシアネート、ポリオールおよび硬化剤の併流式混合を含む。この方法は、不均質(よりランダムな)混合物を与え、製造業者に対して、得られる配合物の分子構造に対する低い制御性をもたらす。好ましい混合方法は、プレポリマー法として知られている。この方法において、該ポリイソシアネートおよび該ポリオールは、該硬化剤の添加前に、別途混合される。この方法は、より均質な混合物をもたらし、より一貫性のあるポリマー配合物を与える。
随意のフィラー成分は、前に説明した成分のブレンドに、付加的な密度を付与するように、選択することができる。該フィラー成分の選択は、意図するゴルフボールの特性に依存する。該ポリウレタンの該フィラー成分において使用する、フィラーの例は、該ポリブタジエン反応成分に関連して本明細書に記載したものを含む。類似のまたは同一の添加剤、例えばナノ粒子、繊維、ガラス球および/または種々の金属、例えばチタンおよびタングステンを、1以上のゴルフボール特性を改善するのに必要とされる量で、この発明の該ポリウレタン配合物にも添加することができる。該ポリウレタン配合物に添加することのできる追加の成分は、UV安定剤および他の染料、並びに蛍光増白剤および蛍光性顔料および染料を含む。このような付随的な成分は、その所定の目的を達成するであろう、任意の量で添加することができる。
極めて薄い性質のために、この発明により、流体形状で適用される、注型性反応性材料の使用が、ゴルフボール上に、極めて薄い外側カバー層の形成を可能とすることが分かった。具体的には、反応して、ウレタンエラストマー材料を形成する、注型性反応性液体が、所定の極めて薄い外側カバー層を与えることが分かった。
該ウレタンエラストマー材料を形成するのに使用される、該注型性反応性液体は、様々な塗布技術、例えば当分野において周知の噴霧、浸漬、スピン塗布または流し塗り法を利用して、該内側コア上に適用できる。適当な塗布技術の一例は、1995年5月2日に出願された、「ゴルフボール上にポリウレタンカバーを形成するための、方法並びに装置(Method And Apparatus For Forming Polyurethane Cover On A Golf Ball)」と題する、米国特許第5,733,428号に記載されているものである。この特許の開示事項全体を、この発明の参考とする。
該カバーまたは該外側カバーは、内側並びに外側カバー層両者が存在する場合には、好ましくは混合し、かつ該金型部分内部に該材料を導入することにより、該コアの回りに形成される。その粘度を経時で測定し、後の各金型部分を満たす工程、一方の金型部分に該コアを導入する工程、該金型を閉じる工程の適当な時期を、半溶融状態のカバー材料内で該コアの芯出しを行い、かつ全体としての均一性を達成するように、決定することが重要である。該金型部分にコアを導入するための、該硬化中のウレタンミックスの適当な粘度範囲は、凡そ約2,000cP〜約30,000cPなる範囲にあるものと決定され、その好ましい範囲は、約8,000cP〜約15,000cPである。
該カバーの製造を開始するために、該プレポリマーと硬化剤との混合は、混合ヘッドを含む自動化されたミキサー内に、ラインを介して、秤量した硬化剤およびプレポリマーを供給することによって、達成できる。上部を予備加熱した金型部分を満たし、各金型部分内の孔に移動するピンを使用して、固定装置に配置する。この反応中の材料を、上部の金型部分で約10〜約80秒間滞留させた後、コアを、制御された速度で、該ゲル化し、かつ反応している混合物中に沈める。後の時点において、底部の金型部分または一連の底部金型部分は、該キャビティーに導入された、同様な混合物の量を含む。
ボールカップは、ホース内の減圧(または部分的な真空)により、該ボールコアを維持することができる。ゲル化後に、約10〜約80秒間、該被覆コアを該金型部分に位置させ、該真空を解除して、該コアの取り出しを可能とする。上部にコアおよび固化されたカバー部分を有する該金型部分を、該芯出し固定装置から取り出し、反転させ、適当な時間早めに、選択された量の、該部分に導入された反応中のポリウレタンプレポリマーおよび硬化剤を含む、他の金型部分と噛み合わせて、ゲル化を開始させる。
同様に、ブラウン(Brown)等の米国特許第5,006,297号およびウー(Wu)の米国特許第5,334,673号両者も、適当な成型技術を開示しており、該技術は、この発明で使用する該注型性の反応性液体を適用するために利用できる。これら各特許の開示事項を、この発明の参考とする。しかし、この発明の方法は、これら技術の利用に限定されるものではない。
一実施例において、該カバーは、典型的に−30〜20℃なる範囲の温度において、0.16〜0.075なる範囲の損失正接を持つ。一実施例において、該ボール上の該カバー層の複素弾性率は、−30〜20℃なる範囲の温度において、約1000〜2800Kgf/cm2なる範囲にある。一実施例において、該カバー材料の比重は、約1〜2、好ましくは約1.1〜1.4なる範囲内にある。好ましい一実施例において、該カバー材料は、約1.15〜1.25なる範囲内の比重を持つ。
この発明に従ってゴルフボールを製造する場合、該ボールは、典型的に約60%を越える、好ましくは約65%を越える、およびより好ましくは約75%を越えるディンプル被覆率を持つであろう。このゴルフボール上の該カバーの曲げ弾性率は、典型的に約500psiを越え、および好ましくは約500〜80,000psiなる範囲にある。
本明細書で論じたように、該外側カバー層は、好ましくは比較的軟質のポリウレタン材料で作られる。特に、該外側カバー層の材料は、ASTM D2240−00により測定された材料硬度、約20〜約60ショアD、好ましくは約30〜約50ショアDを持つべきである。一実施例において、該外側カバー材料の材料硬度は、約45ショアDである。該外側カバー材料の硬度を、該ゴルフボール上で直接測定する場合、その値は、該材料の硬度よりも高くなる傾向がある。一実施例において、該ゴルフボール上で測定した、該外側カバーの硬度は、約45〜約60ショアDなる範囲内にある。該内側カバー層は、好ましくは約50〜約70ショアD、より好ましくは約60〜約65ショアDなる範囲内の材料硬度を持つ。別の実施例において、該内側カバー層は、該ゴルフボール上で測定した場合、約45〜約64ショアDなる範囲の硬度を持つ。
得られるゴルフボールは、典型的に約0.7を越える、好ましくは約0.75を越える、およびより好ましくは約0.78を越える反発係数を持つ。このゴルフボールは、また典型的に、少なくとも約40、好ましくは約50〜120、およびより好ましくは約60〜100なる範囲の、アッチ圧縮率(これは過去において、PGA圧縮率と呼ばれていた)をも有する。
[実験例]
この発明の上記および他の局面は、以下の実施例を参照することによって、更に十分に理解できる。以下の実験例は、ゴルフボールの構成に関わる、この発明の好ましい実施例を単に例示するものである。これら実験例は、何等この発明を限定するものではない。
実験例1:スリーピースソリッドボール用のコア
様々な単一ピースコアを、この発明に従って調製し、また幾つかのコアを、従来の材料を用いて調製した。以下の表2に示す全てのコアは、径1.58インチとなるように製造した。各コアに関する処方は、以下の表2に示したとおりである。
首尾よくシス−ポリブタジエンアイソマーの一部を、そのトランス−アイソマーに変換する、様々な金属硫化物シス−トランス転化触媒を、表3に示す。カリフレックス(CARIFLEX) BR1220ポリブタジエン(100phr)を、酸化亜鉛(5phr)、ジクミルペルオキシド(3phr、フリーラジカル開始剤)および亜鉛ジアクリレート(25phr)と反応させ、この発明による反応生成物を製造した。
トランス−アイソマー転化率は、1.7phr未満から3.7phrを越えるまでの量で存在する、種々の触媒に対して、8%以下から、17%以上までの範囲内にある。この表の結果は、明らかに種々の濃度における、多数の異なるシス−トランス転化触媒が、該トランス−ポリブタジエン含有率を高める上で、有効であることを立証している。
実験例2:有機硫黄シス−トランス転化触媒を用いた、コア
有機硫黄化合物を該シス−トランス転化触媒として用いて、この発明に従って、コアを製造した。得られたコアの特性は、明らかに、従来の技術によって構築したコアの例と比較して、この発明により製造したゴルフボールコアが有利であることを示している。その組成および物性を以下の表4に示した。
この発明により製造したコアの圧縮荷重は、米国特許第5,697,856号、同第5,252,652号および同第4,692,497号に従って製造したコアの圧縮荷重の約半分であり、一方同時にほぼ同一のまたは幾つかの場合には、高いCOR(レジリエンス)を示した。この発明に従って製造したコアは、低い圧縮荷重(ソフト)を有し、かつ弾力性(速い)がある。その圧縮荷重は、米国特許第3,239,228号に従って構築したコアの値よりも大きく、かつ大幅に高いCORを持つ。米国特許第3,239,228号のコアは、極めてソフトで、極めて遅い(極めて低いCOR)。
0〜−50℃における動的剛性の変動(%)を、該コアのエッジおよび中心部両者において測定した。この発明のコアの、エッジおよび中心部両者におけるこの動的剛性は、検討した温度範囲において、20%未満のほんの僅かな変動を示した。米国特許第3,239,228号に従って製造したコアは、230%もの変動を示し、一方他の公知技術に従って製造したコアは、同一の温度範囲に渡り、130%を越える、および典型的には150%程度に変動する動的剛性を示した。
この発明に従って製造したコアおよび上記と同一の4つの特許に記載のように製造したコアの、中心およびエッジの双方におけるトランス−アイソマー転化割合(%)を測定し、トランス−勾配を算出した。この発明によるコアは、エッジから中心にかけて、約32%のトランス−勾配を有していた。この発明に従って製造したコアに関連して、硬化前後のトランス−%をも測定して、この発明の方法の有効性を検討した。該トランス−アイソマーに転化されたポリブタジエンの割合は、該中心における殆ど40%から、そのエッジにおける55%を越える割合に及んでいた。従来の技術、米国特許第3,239,228号および同第4,692,497号に従って調製した2種のコアは、トランス−勾配ゼロを示した。米国特許第5,697,856号に従って調製した第3のコアは、エッジから中心にかけて、18%未満の僅かなトランス−勾配を示したに過ぎなかった。米国特許第5,252,652号に従って調製した第4のコアは、エッジから中心にかけて、殆ど65%もの極めて大きな勾配を示した。
実験例3:無機硫化物シスートランス転化触媒を使用したコア
この発明によるコアを、該シスートランス転化触媒として、無機硫化物を使用して製造した。得られたコアの特性は、従来の技術により構築したコアの例と比較して、この発明に従って製造したゴルフボールコアの優位性を、明らかに立証している。該コアの成分および物性を、表4に示した。
該圧縮荷重は、米国特許第5,697,856号、同第5,252,652号および同第4,692,497号に従って構築した3種のコアに関する圧縮荷重の約半分である。一方、同時にほぼ同一の、および幾つかの場合においては、より高いCOR(レジリエンス)を維持する。この発明により製造したコアは、柔軟であり、しかも弾力性(速い)がある。その圧縮荷重は、米国特許第3,239,228号に従って構築したコアの値よりも大きく、かつ大幅に高いCORを持つ。米国特許第3,239,228号のコアは、極めてソフトで、極めて遅い(低いCOR)。
0〜−50℃における動的剛性の変動(%)を、該コアのエッジおよび中心部両者において測定した。この発明のコアの、エッジおよび中心部両者におけるこの動的剛性は、検討した温度範囲において、125%未満で、ほんの僅かな変動を示した。米国特許第3,239,228号に従って製造したコアは、230%もの変動を示し、一方他の公知技術に従って製造したコアは、同一の温度範囲に渡り、130%を越える、および典型的には150%程度に変動する動的剛性を示した。
この発明に従って製造したコアおよび上記と同一の4つの特許に記載のように製造したコアの、中心およびエッジ両者におけるトランス−アイソマー転化割合(%)を測定し、トランス−勾配を算出した。この発明によるコアは、エッジから中心にかけて、約45%のトランス−勾配を有していた。従来の技術、米国特許第3,239,228号および同第4,692,497号に従って調製した2種のコアは、トランス−勾配ゼロを示した。米国特許第5,697,856号に従って調製した第3のコアは、エッジから中心にかけて、18%未満の僅かなトランス−勾配を示したに過ぎなかった。米国特許第5,252,652号に従って調製した第4のコアは、エッジから中心にかけて、殆ど65%もの極めて大きな勾配を示した。
実験例4:有機硫黄および無機硫化物シスートランス転化触媒のブレンド用いたコア
この発明によるコアを、該シスートランス転化触媒として、有機硫黄と無機硫化物とのブレンドを使用して製造した。得られたコアの特性は、従来の技術により構築したコアの例と比較して、この発明に従って製造したゴルフボールコアの優位性を、明らかに立証している。該コアの成分および物性を、表4に示した。
該圧縮荷重は、米国特許第5,697,856号、同第5,252,652号および同第4,692,497号に従って構築した3種のコアに関する圧縮荷重の約半分である。一方、同時にほぼ同一の、および幾つかの場合においては、より高いCOR(レジリエンス)を維持する。この発明により製造したコアは、柔軟であり、しかも弾力性(速い)がある。この発明の圧縮荷重は、米国特許第3,239,228号に従って構築した第4のコアの値よりも大きく、かつ大幅に高いCORを持つ。米国特許第3,239,228号のコアは、極めてソフトで、極めて遅い(低いCOR)。
0〜−50℃における動的剛性の変動(%)を、該コアのエッジおよび中心部両者において測定した。この発明のコアの、エッジおよび中心部両者におけるこの動的剛性は、検討した温度範囲において、121%未満で、ほんの僅かな変動を示した。米国特許第3,239,228号に従って製造したコアは、230%もの変動を示し、一方他の公知技術に従って製造したコアは、同一の温度範囲に渡り、130%を越える、および典型的には150%程度に変動する動的剛性を示した。
この発明に従って製造したコアおよび上記と同一の4つの特許に記載のように製造したコアの、中心およびエッジ両者におけるトランス−アイソマー転化割合(%)を測定し、トランス−勾配を算出した。この発明によるコアは、エッジから中心にかけて、約44%のトランス−勾配を有していた。この発明に従って製造したコアに関連して、硬化前後のトランス−%をも測定して、この発明の方法の有効性を検討した。該トランス−アイソマーに転化されたポリブタジエンの割合は、該中心における殆ど26%から、そのエッジにおける45%を越える割合に及んでいた。米国特許第3,239,228号および同第4,692,497号に従って調製した2種のコアは、トランス−勾配ゼロを示した。米国特許第5,697,856号に従って調製した第3のコアは、エッジから中心にかけて、18%未満の僅かなトランス−勾配を示したに過ぎなかった。米国特許第5,252,652号に従って調製した第4のコアは、エッジから中心にかけて、殆ど65%もの極めて大きな勾配を示した。
実験例5:この発明に従って調製した糸巻きボール
この発明による二重コアゴルフボールを調製することができ、これはソリッドセンタ、このソリッドセンタを取巻く、張力の掛けられた材料製の中間層および該中間層の周りに同心状に設けられた、多層カバーを含む。その成分および物性を、以下の表5に示す。
該センタは、出発物質としてのカリフレックス BR−1220から製造でき、唯一の違いは、バロックス(VAROX)802−40KE−HPペルオキシド(良好なスコーチ抵抗を持つペルオキシド(peroxide with technology))を、この発明のDTDSシスートランス触媒およびジクミルペルオキシドと置き換えたことである。この置換は、該成型工程中に、該ポリブタジエン材料の一部を、そのトランス構造のものに転化することを可能とする。得られるソリッドセンタは、外径約約1.15インチを持つことができる。これにより調製される該ポリブタジエン反応生成物は、従来のボールの1.5%というトランス−アイソマー含有率に比して、40%なるトランス−アイソマー含有率をもつ。外径約1.56インチを持つ中間層は、該ソリッドセンタの周りに、張力の作用下にある糸材料を巻回して、糸巻きコアを製造することにより構築できる。該張力が掛けられた材料は、公知のシス−ポリイソプレン糸を包含する。
実験例6:この発明に従って製造したソリッドボール
ボールの一例を、約40−50なるムーニー粘度を持つポリブタジエンゴム、DTDSシス−トランス転化触媒、20−35phrの亜鉛ジアクリレートおよび該センタの密度を調節するための、タングステンフィラーを使用して調製することができる。このコアの径は、約1.5−1.6インチであり得る。このコアの圧縮率は、望ましくは約50−60であり、130kg−10kgテストの下で、約3.0mmを越える反りを有する。
トランス−ポリイソプレンで作られた内側カバーは、該コア上に圧縮成型することができる。該内側カバーは、約45−64ショアD硬度を持つことができ、また該内側カバーは、望ましくは約0.02−0.05インチなる厚みで形成される。
好ましくは、クラレ(Kuraray)から入手できる剛性のトランス−ポリイソプレンを使用する。このトランス−ポリイソプレンは、スチレン−ブタジエンゴムおよび/またはスチレン−強化樹脂、例えばより剛性の高い化合物としての、プライオライトと混合することができる。好ましくは、該SBR等は、該内側カバー材料化合物の、0〜50%なる範囲の量で存在する。
該外側カバーは、該ボール上で測定した際に、硬化された際の硬度約45−60ショアDをもつ、MDIを主成分とする注型ウレタン材料から製造できる。このカバーは、好ましくは、約0.01−0.03インチの厚みを持つ。このウレタンは、1当量の、6.0%NCOを含むMDI/PTMEGポリオール2000プレポリマー、0.95当量のエタキュア(Ethacure)300および3.5%HCC−19584(白色分散物)から製造できる。エタキュア300は、アルバーマール社(Albermarle Corporation)から市販品として入手できる。公知の塗料または他のカラー安定化パッケージを、該ゴルフボールのカバー上に適用することができる。適当なディンプルパターンは、約590mm3なるディンプル体積を持つ、392二重ディンプル正二十面体パターンである。
実験例7:ポリエーテル尿素糸巻きゴルフボール
この発明によれば、ボールは、該巻き糸を適用する前に、約40−80なる圧縮率を持つ、約1.40−1.55インチのコアを含むことができる。ポリエーテル尿素糸材料製の糸巻き層(該糸巻き層の外径は1.55−1.60インチを適用し、次に、上に示したものと同一のカバー材料を用いて、2層のカバー材料層で覆うことができる。
実験例8:ジエンゴムを含む硬い中間層を具備するゴルフボール
この発明の1つの側面によれば、ボールは内部コア、中間層およりカバーを含む。中間層は、マントル層、外側コアまたは内側カバーでありえる。中間層のデュロメータ硬度は約60ショアDより大きい。最内のコアの直径は約1.50インチから約1.62インチであり、好ましくは約1.55から約1.60インチであり、最も好ましくは約1.58インチである。最内のコアの比重は好ましくは約0.90から約1.40であり、より好ましくは約1.50から約1.20である。この例では、中間層は、外側コアであり、外側コアの直径は高々1.66インチであり、好ましくは、1.50インチから約1.64インチ、より好ましくは約1.62インチである。外側コアの比重は好ましくは約0.90から約1.20であり、より好ましくは約1.05から1.18である。外側コアの厚さは好ましくは約0.020から約0.060インチである。内側コアは好ましくはポリブタジエンがベースの配合物であり、外側カバーは好ましくはポリウレタンまたはポリ尿素である。
外側コアはジエンゴムを含む。より好ましくは外側コアは100phrのポリブタジエン、66phrの亜鉛ジアクリレート反応性コエージェント、約0.1phrのペロキサイドおよび重いフィラーを含む。この外側コアの硬度は約66ショアDである。
実験例9:ポリウレタンを含む硬い中間層を具備するゴルフボール
この実験例は実験例7と類似するが、外側コアが硬いポリウレタンを含み、そのデュロメータ硬度がボール表面で測定して約60ショアDより大きいことが異なる。ポリウレタンは米国特許5,962,617号に開示された例に従って製造され、そのデュロメータ硬度は約80−81ショアDである。この参考文献はすでに参照して含めている。外側コアは、ボール表面で測定された時に約55ショアDの硬度を有し、中間層は外側コアより大きな硬度を有しなければならない。
本明細書に記載した、この発明の例示的な実施例は、上記目的を満たすことは明らかであるが、当業者が、多くの改良並びに他の実施例を工夫できることは明らかであろう。例えば、この発明は、1本以上の糸を使用でき、ここで該糸は、相互に化学的、物理的または機械的に異なったものである。従って、上記の特許請求の範囲は、この発明の精神並びに範囲に入るこのような全ての改良並びに実施例を、カバーするものであると理解すべきである。