JP2004297304A - ハウリング抑制機能を備えた補聴器 - Google Patents

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Abstract

【課題】補聴器の装用状況に応じたハウリング抑制処理を行うことができるハウリング抑制機能を備えた補聴器を提供する。
【解決手段】外部マイクロホン6と補聴処理部7とイヤホン8からなる補聴器において、イヤホン8の近傍に設けてイヤホン8の出力変化を検出する耳内マイクロホン9と、この耳内マイクロホン9の出力信号とイヤホン8の入力信号から音響帰還経路3を経て外部マイクロホン6に入力される音響もれ成分を推定する音響もれ成分推定手段10と、この音響もれ成分推定手段10で推定した音響もれ成分を外部マイクロホン6の出力信号から減算して補聴処理部7へ出力するハウリング抑制処理手段11を設けた。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、補聴器のイヤホンとマイクロホンとの間に形成される音響帰還経路により生じるハウリングを抑制する機能を備えた補聴器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプログラマブル補聴器におけるイヤホンとマイクロホンとの間に形成される音響帰還経路(もれ経路)によって生じるハウリングを抑制する方法としては、ハウリングが発生すると、そのピーク値を検知しノッチフィルタを用いてハウリングピークを除去する方法が主流である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平5―207596号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ノッチフィルタによるハウリング抑制方法では局所的高ゲインでハウリング抑制を行うため、ハウリング周波数が合わない場合には、ハウリング抑制効果がないばかりか、補聴処理の周波数特性にも悪影響を与えることになる。
また、ハウリング周波数の検出精度ならびにハウリング周波数に対してノッチフィルタでハウリング抑制を行っても抑制を行った周波数とは別の周波数でのハウリングを起こす可能性があり、ハウリング周波数の追跡、適応処理が困難となっている。
更に、このようなノッチフィルタによるハウリング抑制方法では、ハウリング発生後に抑制処理を行うため、ハウリングが必ず生じてしまう。
【0005】
挿耳形補聴器では、装用者によって補聴器装用時に耳管内圧の上昇を抑えるために“ベント”と呼ばれる耳介側−外圧と外耳道側−耳内圧を平衡にするための管路を挿耳形補聴器内部に外耳道側から耳介側にかけて予め形成する場合がある。
高度難聴者向けに調整を行う際、一般的に先ず補聴器の音響出力とゲインレベルを装用者の聴力レベルまでハウリングを起こさないように上げていく必要がある。
しかし、“ベント”を持つ挿耳形補聴器では、この予め形成してある管路から音もれが生じ、ハウリングが容易に生じてしまう。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、補聴器の装用状況に応じたハウリング抑制処理を行うことができるハウリング抑制機能を備えた補聴器を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、外部マイクロホンと補聴処理部とイヤホンからなる補聴器において、イヤホンの近傍に設けてイヤホンの出力変化を検出する耳内マイクロホンと、この耳内マイクロホンの出力信号とイヤホンの入力信号から音響帰還経路を経て外部マイクロホンに入力される音響もれ成分を推定する音響もれ成分推定手段と、この音響もれ成分推定手段で推定した音響もれ成分を外部マイクロホンの出力信号から減算して補聴処理部へ出力するハウリング抑制処理手段を設けた。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のハウリング抑制機能を備えた補聴器において、前記音響もれ成分推定手段が、音響帰還経路が形成されることによるイヤホンの出力信号と耳内マイクロホンの入力信号との関係を与える内部伝達関数の変化から、音響帰還経路によるイヤホンの出力信号と外部マイクロホンに入力される音響もれ成分との関係を与えるもれ伝達関数を推定し、音響もれ成分を算出するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は挿耳形補聴器の装用状態を示す模式図、図2は本発明に係るハウリング抑制機能を備えた補聴器のブロック図、図3は音響もれ成分推定手段のブロック図である。
【0010】
挿耳形補聴器1を装用すると、図1に示すように、咀嚼などの顎運動により、補聴器1と外耳道2の間に音響帰還経路(もれ経路)3が形成されることがある。
また、装用者により、挿入時に生じる外耳道内圧の上昇を外部の大気圧と平衡にするため、外耳側から外耳道側までの管路を予め形成している場合があり、これが音響帰還経路3となる場合もある。
このような音響帰還経路3が形成されると、一般にはハウリングが生じる。4は耳介、5は鼓膜である。
【0011】
本発明に係るハウリング抑制機能を備えた補聴器1は、図2に示すように、外部音を検出して電気信号に変換する外部マイクロホン6と、外部マイクロホン6の出力などを処理する補聴処理部7と、補聴処理部7の出力を電気音響変換して外耳道2内に放音するイヤホン8と、イヤホン8の近傍に設けた耳内マイクロホン9と、音響もれ成分を推定する音響もれ成分推定手段10と、ハウリングを抑制した信号を補聴処理部7へ出力するハウリング抑制処理手段11からなる。
【0012】
なお、G(s)は外耳道2と音響帰還経路3によって形成される音響もれ成分によるイヤホン8の出力信号と耳内マイクロホン9の入力信号との関係を与える実際の内部伝達関数、H(s)は外耳道2、音響帰還経路3、耳介4によるイヤホン8の出力信号と外部マイクロホン6の入力信号(音響もれ成分)との関係を与える実際のもれ伝達関数である。G(s)及びH(s)は、入出力比をs領域(ラプラス変換域)で表した伝達関数である。
【0013】
耳内マイクロホン9は、図1に示すイヤホン8と外部マイクロホン6との間に形成される音響帰還経路3を通って外部マイクロホン6に戻る音響もれ成分を検出するためにイヤホン8から放音された音響出力を検出する。
【0014】
音響もれ成分推定手段10は、イヤホン8の入力信号と耳内マイクロホン9の出力信号から音響帰還経路3を経て外部マイクロホン6に入力される音響もれ成分を推定する。
【0015】
ハウリング抑制処理手段11は、音響もれ成分推定手段10で算出した音響もれ成分を外部マイクロホン6の出力信号から減算し、補聴処理部7への入力信号とする。
【0016】
そして、音響もれ成分推定手段10は、図3に示すように、もれのない内部伝達関数設定部12と、内部伝達関数推定部13と、推定内部伝達関数設定部14と、もれ伝達関数推定部15と、推定もれ伝達関数設定部16からなる。
【0017】
もれのない内部伝達関数設定部12は、音響帰還経路3が形成されておらず音響もれ成分のない状態でのイヤホン8の出力信号と耳内マイクロホン9の入力信号との関係を与える、もれのない内部伝達関数G0(s)を設定する。もれのない内部伝達関数G0(s)は、事前に求めて設定される。
【0018】
内部伝達関数算出部13は、イヤホン8の入力信号と耳内マイクロホン9の出力信号から、算出内部伝達関数G’(s)を算出する。算出内部伝達関数設定部14は、内部伝達関数算出部13で算出した算出内部伝達関数G’(s)を設定する。
【0019】
もれ伝達関数推定部15は、イヤホン8の入力信号を入力信号とした場合のもれのない内部伝達関数G0(s)及び算出内部伝達関数G’(s)の出力信号の差分から、耳内マイクロホン9から見た音響もれ成分の周波数応答に応じた推定もれ伝達関数H’(s)を算出する。
【0020】
ここで、耳内マイクロホン9と外部マイクロホン6で検出される音響もれ成分は、その周波数特性におけるピークがほぼ対応しているため、推定もれ伝達関数H’(s)は耳内マイクロホン9から見た音響もれ成分の周波数応答に着目することにより算出することができる。
【0021】
推定もれ伝達関数設定部16は、もれ伝達関数推定部15で算出した推定もれ伝達関数H’(s)を設定する。イヤホン8の入力信号を入力信号とした場合の推定もれ伝達関数H’(s) の出力信号が、耳内マイクロホン9から見た音響もれ成分となる。
【0022】
以上のように構成した本発明に係るハウリング抑制機能を備えた補聴器1の動作について説明する。
図1に示すように、補聴器1と外耳道2の間に音響帰還経路3が形成されている状態でイヤホン8から定常的に音響信号が出力されると、一般的に音響帰還経路3を経た音響もれ成分が外部マイクロホン6に入力してハウリングが発生することになるが、本発明に係るハウリング抑制機能を備えた補聴器1は、次のように動作してハウリングを抑制する。
【0023】
先ず、イヤホン8から定常的に音響信号が出力されると、内部伝達関数算出部13が、イヤホン8の入力信号と耳内マイクロホン9の出力信号から、算出内部伝達関数G’(s)を算出し、算出内部伝達関数設定部14が、内部伝達関数算出部13で算出した算出内部伝達関数G’(s)を設定する。
【0024】
次いで、もれ伝達関数推定部15が、予め設定してある内部伝達関数G0(s)の出力信号と算出内部伝達関数設定部14で設定した算出内部伝達関数G’(s)の出力信号の差分から、耳内マイクロホン9から見た音響もれ成分の周波数応答に応じた推定もれ伝達関数H’(s)を算出し、推定もれ伝達関数設定部16が、もれ伝達関数推定部15で算出した推定もれ伝達関数H’(s)を設定する。
【0025】
次いで、推定もれ伝達関数設定部16がイヤホン8の入力信号を入力して、耳内マイクロホン9から見た音響もれ成分を出力する。推定もれ伝達関数設定部16が出力した音響もれ成分は、ハウリング抑制処理手段11に入力される。すると、ハウリング抑制処理手段11では、外部マイクロホン6の出力信号から音響もれ成分を減算する。そして、外部マイクロホン6の出力信号から音響もれ成分を減算した信号が、補聴処理部7の入力信号となる。
【0026】
よって、音響帰還経路3が形成されている状態でイヤホン8から定常的に音響信号が出力される場合において、音響帰還経路3を経た音響もれ成分が外部マイクロホン6に入力することにより発生するハウリングを抑制することができる。
【0027】
また、ベント付き補聴器についても同様な手法により、ハウリング抑制効果が得られる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、補聴器の装用状況に応じた補聴処理の周波数特性を劣化させないハウリング抑制処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】挿耳形補聴器の装用状態を示す模式図
【図2】本発明に係るハウリング抑制機能を備えた補聴器のブロック図
【図3】音響もれ成分推定手段のブロック図
【符号の説明】
1…補聴器、2…外耳道、3…音響帰還経路、6…外部マイクロホン、7…補聴処理部、8…イヤホン、9…耳内マイクロホン、10…音響もれ成分推定手段、11…ハウリング抑制処理手段。

Claims (2)

  1. 外部マイクロホンと補聴処理部とイヤホンからなる補聴器において、イヤホンの近傍に設けてイヤホンの出力変化を検出する耳内マイクロホンと、この耳内マイクロホンの出力信号とイヤホンの入力信号から音響帰還経路を経て外部マイクロホンに入力される音響もれ成分を推定する音響もれ成分推定手段と、この音響もれ成分推定手段で推定した音響もれ成分を外部マイクロホンの出力信号から減算して補聴処理部へ出力するハウリング抑制処理手段を設けたことを特徴とするハウリング抑制機能を備えた補聴器。
  2. 前記音響もれ成分推定手段は、音響帰還経路が形成されることによるイヤホンの出力信号と耳内マイクロホンの入力信号との関係を与える内部伝達関数の変化から、音響帰還経路によるイヤホンの出力信号と外部マイクロホンに入力される音響もれ成分との関係を与えるもれ伝達関数を推定し、音響もれ成分を算出する請求項1記載のハウリング抑制機能を備えた補聴器。
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