上記従来技術に記載したように、半導体装置で発生したリーク不良、特に接合リークについては、前工程を完成したチップを電気的に検査する方法しかなかった。しかし、接合形成のためのイオン打ち込みや熱処理の工程は、製造工程の初期の段階であるため、この段階で不良が発生しても該ウエハが完成して電気テストを実施するまで検知することができず、不良発生から対策実施まで時間を要していた。
また、半導体の開発段階では、各プロセスで微細パターン形成上の不良が発生しやすい。このような不良が発生すると、リーク不良は電気テストにおいても検知することが不可能となる。すなわち、従来は微細パターン形成プロセスの開発を終了し、この加工プロセスで不良が発生しなくなってから、完成後のウエハを用いて製造初期の段階の不良が検知されるため、対策に数ヶ月レベルの膨大な時間を費やし、半導体開発期間を遅らせる要因となっていた。
また、電気テストを実施する場合には、探針をウエハに接触させる必要があり、そのために完成したウエハしか検査することができないという問題があった。さらにトランジスタ一つ一つに探針を接触させるには、極微細な針を使用する必要があり、さらに針当てに時間を要するため、トランジスタ一つ一つへの計測を適用することが困難という問題があった。
また、電子ビームをトランジスタに照射し、吸収電流によりリーク量を計測する検査方法では、吸収電流量が微弱であるために、1箇所測定するのに膨大な時間を要してしまい、広領域の中から不良箇所を見つけ出す検査には不適切であるという問題があった。
本発明の目的は、上記の課題を解決し、工程途中、特に前工程途中のウエハを直接検査する検査技術を提供し、且つ、ウエハに非接触で高速に、形状から判別できない接合リーク箇所を特定する検査方法を提供することに有る。また、非接触で高速に工程途中のウエハを検査する方法を提供することにより、製造初期の段階でリーク不良の分布やリーク電流を把握し、該試料および製造プロセスの歩留まり予測を立てる技術を提供することにある。
さらに、これらの技術を早期に多種・多工程の半導体装置その他の微細回路パターンに適用することにより、接合形成プロセスの最適化およびプロセス管理を実施でき、その結果を製造条件に反映し、半導体装置等の信頼性を高めるとともに不良率を低減するのに寄与する検査方法および装置、半導体の製造方法を供与することにある。
半導体装置を電子ビームで検査する方法としては、例えば、測長SEMのように微小電流の電子ビームを細く絞り、ウエハに照射して画像を形成することにより、微細形状観察や線幅測定を実施する方法があるが、形状観察は実施できても接合リーク不良を検知することは不可能である。また、SEM式ウエハ自動外観検査装置のように、大電流電子ビームを高速に1回または複数回試料に照射して画像を形成し、電位コントラストにより電気的回路オープンやショート等の欠陥を自動的に検査する方法がある。しかし、本方法においても、接合リーク不良箇所の特定に関して考慮されていない。
そこで、本発明者らは、電子ビーム照射により形成される電位コントラスト像を利用して、リーク不良を検知するためには、まず、接合が形成されたウエハを検査する必要があり、且つ、接合に対して逆バイアスになるように帯電をさせるように制御する必要があるということを見出した。例えば、pn接合を形成している半導体の場合には、表面が正に帯電するように制御する必要がある。制御するための手段としては、電子ビームの照射エネルギー、電子ビーム電流、走査速度、照射する回数およびタイミングを調整することにより実行できる。
従来の装置においては、通常電子ビーム電流は一定であり、また、電子ビーム走査速度も固定である。さらに、電子ビームを複数回照射して画像を形成する場合にも、走査速度固定で画像形成時の画素サイズが固定であると、同一箇所・同一トランジスタに電子ビームが照射する間隔も固定となってしまう。
しかし、上記のように正常に接合が形成されたトランジスタを正に帯電させ、飽和状態にするためには、電子ビームを短い間隔で同一のトランジスタ箇所に複数回照射しつづける必要があることを、本発明者らは見出した。それにより、正常な箇所は正に帯電し飽和状態になるが、リークが発生していると、帯電してもすぐに基板から電子が供給されて帯電が緩和してしまう。その結果、短い間隔で所定の電流の電子ビームを照射すると、正常な箇所とリーク発生箇所で帯電レベルに差がつき、これを電位コントラストとして観察すると明暗の差として区別することができるということを、本発明者らは見出した。
正に帯電させて発生した二次電子を画像化すると、正常なトランジスタは帯電電圧が高いので、電位コントラスト像では暗く見えるが、リーク発生により帯電電圧が低い箇所では、電位コントラスト像は明るく見える。この画像の明るさから、例えば同等パターン同士を比較処理することにより、不良発生箇所を特定することができる。また、正常な接合形成箇所と同等のリファレンス画像をあらかじめ記憶しておき、この明るさと被検査ウエハの明るさを比較することにより不良発生箇所を特定することができる。また、予め電位を測定しておき、所定の明るさと電位の関係を求めておくことにより、取得した電位コントラスト像の明るさ絶対値から良否の判定をすることができるようになる。
本発明者らは、上記検査を実現するために、電子ビームを照射する条件を検討した。その結果、電子ビーム電流、電子ビーム照射時間、電子ビーム照射のインターバル時間を可変にし、独立して制御することにより、所望の検査をしたいリーク電流やリフレッシュ時間に対応して電子線画像の電位コントラストの明暗を変化させることができることを見出した。電子ビーム電流は、コンデンサレンズや絞り系や各種電極の電圧で変えることができ、電子線照射時間は、走査速度または倍率を変えることで変化させることができる。そして、照射インターバル時間については、照射領域をベクタスキャンにし、照射と照射の間隔をブランキング時間で調整することにより、任意に可変にできることを見出した。
次に、電子線画像を形成するための二次電子信号検出においては、複数回照射して正常部とリーク不良部に電位差が生じてから電子線画像を形成したほうが、正常部と不良部のコントラストが大きくなり、画像処理において不良部を検出しやすい。そのための手段として、本発明者らは、同一箇所に複数回電子ビームを照射し、画像形成時には予め指定した電子ビーム照射n回目の画像以降を用いることにした。この「n」の値は、上記の電子ビーム照射条件により可変である。
さらに、上記の方法で電子線画像を形成し、予め指定した検査領域に対して順次電子線画像を取得すべく、ステージをステップアンドリピートで移動し、該箇所の電子線画像を取得し、次の箇所へステージが移動し、該箇所の画像を取得するということを繰り返し、指定した領域の検査を実行することにした。この際、上記手段により高速にベクタスキャンでn回目以降の電子線画像を取得し、リアルタイムで画像処理を実行し、不良候補となった箇所については電子線画像を自動保存するようにすることにより、高速に広範囲のリーク検査を実行することができるようになる。検査を実施しながら、不良を検出した場合には、不良箇所をマップ表示し、さらに不良部の画像明るさからリーク電流またはリフレッシュ時間を算出し、度数分布表示することにより、不良発生のレベルを一目で把握することができる。
このようにして検査を実行するが、同一箇所で複数の条件で同様の検査を実行し、複数のリフレッシュ時間に対応して度数分布を把握することにより、被検査ウエハのリフレッシュ時間特性を導出することが可能となることを見出した。
さらに、上記検査を半導体プロセス構築に適用し、例えば接合形成プロセスにおける条件だし時の判定手段として上記検査方法を用いることにより、接合形成のイオン打ち込みを完了した時点の工程で検査を実行し、プロセス条件の良否判定を実行することにより、早期にプロセスを最適化できるようになる。
これらの検査方法を実施し、また、これらの機能を備えた検査装置を用いることにより、工程途中のウエハを用いてリーク不良を自動的に見つけ出し、プロセスの良否を判定する検査を実施することが可能となる。このような検査方法を実現するための手段ついて、以下に述べる。
第一の手段は、接合を有する工程のウエハに対して、接合が逆バイアスになるような条件で電子ビームを照射し、且つ、短い間隔で複数回照射することにより、正常に接合が形成された箇所が帯電し飽和に近い状態になるように制御した。例えば、pn接合の場合には、正に帯電するようにし、このために低照射エネルギーの電子ビームがウエハに入射するようにした。これにより、複数回照射すると正常に接合が形成された箇所は電位コントラスト像では帯電電圧が高いため暗くなり、リーク不良が発生した箇所は帯電電圧が低いため明るくなるので、電位コントラスト像によりリーク発生箇所を認識できるようになった。
第二の手段は、検査の対象とするリーク電流やリフレッシュ時間に応じて検査を実行可能とするために、電子ビーム電流、電子ビーム照射時間、ビーム照射間隔時間を独立して設定するようにしたものである。電子ビーム電流はコンデンサレンズや絞り系や各種電極の電圧で変えることができ、電子線照射時間は、走査速度または倍率を変えることで変化させることができる。そして、照射インターバル時間については、照射領域をベクタスキャンにし、照射と照射の間隔をブランキング時間で調整可能である。これらを組合わせることにより、所望のリフレッシュ時間に対応した検査条件を設定することが可能になった。
第三の手段は、信号検出において予め指定した「n」回目以降の信号を取得し画像化するようにした。これにより、正常部とリーク不良発生部のコントラストを大きくでき、不良部検出の感度を向上することができるようになった。
第四の手段は、試料台をステップアンドリピートで移動しながら順次上記手段により画像を形成し、リアルタイムで画像処理を施しながら不良候補が存在する箇所の画像を自動的に保存する検査方法を採用した。画像処理においては、同等パターン同士を比較検査する方法と、良品のリファレンス画像を予め取得してこれと比較検査する方法と、電位等の情報から明るさの絶対値より良否判定をする方法を検討した。これらのいずれかを実行することにより、指定された領域のリーク不良発生箇所の情報を得ることが可能になる。
第五の手段は、検出された不良の箇所を、マップ表示させ、さらにリーク電流あるいはリフレッシュ時間に対する不良発生頻度を度数分布で表示させ、且つ、不良発生箇所の座標を外部通信で出力でき、さらに、外部からも座標情報等を授受できるようにしたものである。これにより、電気テストの情報と突き合わせたり、他の検査装置との相関を評価することが可能となるし、分布表示により欠陥の特徴的な分布を把握し、原因特定に用いることができる。さらに、リーク電流あるいはリフレッシュ時間に対する不良頻度の度数分布表示により電気テスト結果との相関を容易に求めることが可能となる。
第六の手段は、上記手段による検査を半導体プロセス製造条件設定時に適用し、接合形成後の工程のウエハを検査することにより即座にプロセスの良否を判定できるようにしたものである。これにより、例えば接合形成プロセスの最適条件は該検査により判定することができるようになる。
以上で述べた各種手段により、半導体装置において形状では判別できない電気的なリーク不良を、接合形成直後の工程のウエハを用いて実施することができるようになり、さらに、本検査によりリーク不良発生の特性や分布を把握することができるようになる。
また、半導体製造プロセスにおいては、条件を最適化したり変動していないかどうかをモニタする手段として上記検査を用いることにより、接合形成直後に良否判定を実施することができるので、早いサイクルで条件の最適化を実施することが可能になる。これにより、従来方法および従来装置よりも高速且つ高精度に半導体装置をはじめとする各種基板の製造プロセスにおける不良の原因を対策することができ、高い歩留まりすなわち良品率を確保できると同時に不良発生を検知してから対策までのTATを短縮することが可能となる。
本発明の検査方法及び検査装置を用いることにより、半導体製造工程途中のウエハで検査が可能となった。また、接合形成のためのイオン打ち込み処理直後に検査が可能になったので、リーク不良が発生した場合には即座に本発明の検査により検知することが可能となり、その結果、プロセス条件最適化を実施する際に、プロセスの良否を即座に判定できるため、対策の効率が大幅に向上し、その結果半導体製造プロセスの開発期間および歩留まり向上期間を大幅に短縮することができるようになった。
また、本発明による検査においては、リーク不良の分布を把握することが可能になり、また、異なるリフレッシュ時間における不良発生頻度を求めることができるようになるので、ある一つのリフレッシュ時間における不良レベル以外の特性を把握することができるようになり、その結果、不良発生原因を分布から容易に求めることが可能となった。また、不良レベルの特性を把握することにより、被検査ウエハの歩留まりを予測することが可能となった。
これらの効果により、ウエハ上に発生したリーク不良有無、不良分布、および不良発生原因効率的に高速に、且つ高精度に把握できるので、本検査を基板製造プロセスへ適用することにより、上記従来技術では検査が不可能であった工程途中のウエハで早期に検査することを可能にし、問題点を正確に即座に把握できるようになるので、基板製造プロセスにいち早く異常対策処理を講ずることができ、その結果半導体装置その他の基板の不良率を低減し生産性を高めることができる。
また、上記検査を適用することにより、異常発生をいち早く検知することができ、従来よりも早期に対策を講ずることができるので、多量の不良発生を未然に防止することができ、さらにその結果、不良の発生そのものを低減させることができるので、半導体装置等の信頼性を高めることができ、新製品等の開発効率が向上し、且つ、製造コストが削減できる。
以下、本発明の検査方法および検査装置の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、製造工程途中の半導体ウエハにおいて、リーク不良有無を検査する検査方法および検査装置について記載する。
まず、本実施例における半導体装置の検査装置の構成を図1に示す。半導体装置の検査装置1は、電子光学系2、ステージ機構系3、ウエハ搬送系4、真空排気系5、光学顕微鏡6、制御系7、操作部8より構成されている。
電子光学系2は、電子銃9、コンデンサレンズ10、対物レンズ11、検出器12、ブランキング制御電極13、偏向器14、ウエハ高さ検出器15より構成されている。
ステージ機構系3は、XYステージ16およびウエハを載置するためのホルダ17、ホルダ17およびウエハ18に負の電圧を印加するためのリターディング電源19より構成されている。XYステージ16には、レーザ測長による位置検出器が取り付けられている。ウエハ搬送系4はカセット載置部20とウエハローダ21より構成されており、ウエハホルダ17はウエハ18を載置した状態でローダ21とXYステージ16を行き来するようになっている。
制御系7は、信号検出系制御部22、ビーム偏向補正制御部23、ブランキング制御部24、電子光学系制御部25、ウエハ高さセンサ検出系26、機構・ステージ制御部27より構成されている。操作部8は、操作画面および操作部28、画像処理部29、画像・検査データ保存部30、外部サーバ31からのデータ授受を行うデータ入力部32、データ変換部33より構成されている。
上記図1における、電子ビーム偏向制御部の拡大図を図2に示す。電子ビーム34は、ブランキング制御電極13によって、試料ウエハ18に照射するタイミングを制御され、かつ試料ウエハ18に照射する際には偏向器14によって走査スピードおよび走査領域35を制御され、走査のスピードに応じて検出器12に信号が検出される
次に、図1および図2で示した検査装置の各部の動作について、リフレッシュ不良を検査するためのフローに従い説明する。図3に検査のフローを示す。図1、図2および図3を用いて以下にフローと各部の動作について記載する。
まず、ウエハが任意の棚に設置されたウエハカセットを、図1のウエハ搬送系4におけるカセット載置部20に置く(図3のステップ36)。
次に、操作画面28より、検査すべきウエハを指定するために、該ウエハがセットされたカセット内棚番号を指定する。そして、走査画面28より、各種検査条件を入力する(図3のステップ37)。検査条件入力内容としては、電子ビーム電流、電子ビーム照射エネルギー、走査速度および信号検出サンプリングクロック、1画面あたりの視野サイズ、1走査毎のブランキング時間、1画面あたりの画像取得回数、画像処理に用いる取得画像、検査領域、被検査ウエハ18に関する各種情報、複数毎のウエハを自動的に続けて検査するかどうか、同じウエハを異なる検査条件で続けて検査するかどうか等の内容を入力する。個々のパラメータを入力することも可能であるが、通常は検出したいリフレッシュ時間に応じて、上記各種検査パラメータの組合わせが検査条件ファイルとしてデータベース化されており、リフレッシュ時間に応じた検査条件ファイルを選択して入力するだけでよい。これらの条件入力が完了(図3のステップ37)したら、ステップ38として、検査をスタートする(図3のステップ38)。
自動検査をスタートすると、まず、設定されたウエハ18を検査装置1内に搬送する。ウエハ搬送系4においては、被検査ウエハ18の直径が異なる場合にも、ウエハ形状がオリエンテーションフラット型あるいはノッチ型のように異なる場合にも、ウエハ18を載置するためのホルダ17を、ウエハの大きさや形状にあわせて交換することにより対応できるようになっている。該被検査ウエハ18は、カセット20からアーム、予備真空室等を含むウエハローダ21によりホルダ17上に載置され、保持固定されてホルダとともにウエハローダ21内で真空排気され、既に真空排気系5で真空になっている検査室に搬送される。(図3のステップ39)
ウエハがロードされたら、上記入力された検査条件に基づき、電子光学系制御部25より各部に電子線照射条件が設定される。そして、図4に示すような、ウエハホルダ17上に載置されたビーム校正用パターン50が電子光学系下にくるようにステージ16が移動し(図3のステップ40)、ビーム校正用パターン50の電子線画像を取得し、該画像より焦点及び非点収差の調整を行う。そして、被検査ウエハ18上の所定の箇所に移動し、ウエハ18の電子線画像を取得し、コントラスト等を調整する。ここで、電子線照射条件等を変更する必要が生じた場合にはパラメータを変更し、再度ビーム校正を実施することが可能である。同時にウエハ18の高さを高さ検出器15より求め、ウエハ高さ検出系26により高さ情報と電子ビームの合焦点条件の相関を求め、この後の電子線画像取得時には毎回焦点合わせを実行することなく、ウエハ高さ検出の結果より合焦点条件に自動的に調整する。これにより、高速連続電子線画像取得が可能になった(図3のステップ41)。
電子線照射条件および焦点及び非点収差調整が完了したら、ウエハ18上の2点によりアライメントを実施する(図3のステップ42)。図1および図5を用いて、本実施例におけるアライメント方法を示す。自動的にレビューを実行するために必要な自動アライメントを実行するために、予め被観察ウエハと同等のパターンをもつウエハを用いて、アライメントを実行するためのチップ、アライメント用に形成されたパターンあるいはアライメントに適したパターンの光学顕微鏡画像およびSEM画像、該アライメント用パターンが存在するチップ内の位置情報を求め、登録し、検査条件入力(図3のステップ37)の中で既設定座標および辞書画像を読み出せるようにしておく。
検査においては、ウエハ内あるいはチップ内の設定された領域を高精度に視野出しする必要がある。そのため、欠陥部の視野出しを実行する前に予め上記方法で登録したアライメント条件およびアライメント画像を用いて、自動的にアライメントを実行(図3のステップ42)する。既に述べたように、予めアライメント用パターンが存在する箇所として、指定された箇所の光学顕微鏡画像(図5の52と電子線画像55はメモリに登録され、この画像名および指定したアライメントターゲットの座標(2点;X1,Y1、X2,Y2)は、検査条件ファイルの中に登録されている。
アライメントでは、上記1点目のチップ52上のアライメント用パターン54が存在すると検査条件ファイル上で登録された座標に試料台を移動し、まず光学顕微鏡6にて画像を取得し、画像処理により既登録の光学顕微鏡画像と一致する箇所を自動で探索し、検出されたら検出点の座標を演算により算出する。検出された座標に基づき同一箇所の電子線画像55を取得し、画像処理により既登録の電子線画像と一致する箇所を自動的に探索し、検出されたら検出点の座標(X1,Y1)を演算により算出し、1点目の座標として記憶する。
次に、回路パターンのマトリクス上で平行な位置にある2点目のチップ53についても、同様にアライメントパターンが存在すると思われる箇所にステージが移動する。そのため、1点目と同様に光学顕微鏡画像52'と電子線画像55'で各々画像処理により既登録画像と一致する箇所を探索し、検出された箇所の座標(X2,Y2)を演算により算出し、2点目の座標として記憶する。1点目のチップ上のアライメントマーク位置(X1,Y1)とチップサイズのデータから算出した2点目の予想位置と、実際に画像を取得して得られた(X2,Y2)の座標位置との2点間の座標ずれ、すなわち、X方向およびY方向のずれ量より、ステージ移動方向に対する被検査基板上の回路パターン配列の回転量θを求め、この回転量θより電子線を走査する方向の補正量を決定する。また、アライメントパターン(X1,Y1、X2,Y2)の位置を検知し、該座標値からのオフセット値および座標系の倍率を算出して、検査領域や検査開始点を被検査ウエハ上の回路パターンの位置にあわせて検知することができる。
アライメントが完了したら、アライメント結果に基づき回転や座標値を補正し、次に、試料ホルダ17上に載置された第二の校正用パターン51に移動する(図3のステップ43)。第二の校正用パターン51は、予め正常に接合が形成されたトランジスタまたは、トランジスタに相当するパターンであり、該パターン51を用いて正常部の明るさを校正する。この結果をふまえて、ウエハ18上に移動し、ウエハ上のパターン箇所の画像を取得し、明るさ調整すなわちキャリブレーションを実施する(図3のステップ44)。
キャリブレーションが完了したら、検査を実施する(図3のステップ45)。検査方法については、後で詳細に説明する。指定された領域の検査を実施しながら、リアルタイムで画像処理を実施し、欠陥発生箇所については自動的に画像を保存する(図3のステップ46)。そして、検査結果を操作部28に表示し、且つデータをデータ変換部32、33を介して外部に出力する(図3のステップ47)。
検査条件の入力(図3のステップ37)において、同一箇所を複数回異なる条件で検査する設定をした場合には、一度検査された領域に帯電除去処理を施す(図3のステップ48)。帯電除去部については図1では図示していないが、例えば、紫外光を照射することにより帯電除去処理を施す。
そして、再び異なる電子ビーム照射条件により検査を実行する(図3のステップ45)。このようにして、検査を完了したら、ウエハをアンロードして検査を終了する(図3のステップ49)。
次に、リフレッシュ不良を検出するための検査方法について、以下に詳細に説明する。図6に、電子ビーム34をウエハ18に照射した場合の作用の概念図を示す。試料の構造は、基板61上に素子分離層62が形成されており、この素子分離層62により各トランジスタは分離されている。トランジスタ部は、プラグ57を埋め込まれた穴パターンが存在し、基板61とプラグ57は導通しているが、プラグパターンは層間絶縁膜58で囲われている構造となっている。
そして、プラグ57直下の基板部に、pn接合60が形成されている。本実施例では、基板はp型基板を用い、プラグ埋め込み材料としてはn型イオンをドープしたポリシリコン膜を用いた。このような試料に電子ビーム34を入射する。ここで、電子ビームの照射エネルギーは、プラグ57部の二次電子放出効率が1より大きい条件を選択する。本実施例では、照射エネルギーを500eVに設定した。また、電子ビーム電流は5nAに設定し、ビームの走査速度および信号のサンプリングクロックは50MHzに設定した。これらの照射条件は、指定範囲内で任意に設定可能である。例えば、電子ビーム電流は10pAから100nAの範囲で設定することが可能であり、サンプリングクロックは100kHzから100MHzの範囲で設定可能である。
上記の条件で試料に電子ビームを照射すると、照射した電子ビーム34よりも多くの二次電子56が発生する。その結果、プラグ57部は正に帯電する。プラグ57は基板61に導通しているが、pn接合60が存在している。pn接合においては、接合限界に空乏層を有し、順バイアスに電位がかかると電流が流れるが、逆バイアスに電位がかかると電流は流れない。本実施例では、n領域に対応するプラグ表面が正に帯電しているため、逆バイアス状態になっている。従って、p領域に対応する基板61からは電流が流れず、電子の供給が極めて少ない。そのため、帯電した電荷が緩和するまでには長い時間を要する。しかし、pn接合でリークが発生していると、基板61から電子の供給が比較的多くなるため、プラグ57の正の帯電が緩和する時間は短くなる。この帯電緩和時間は、プラグ57の帯電量、プラグ57の容量、およびリーク電流量により異なる。
図7を用いて、リフレッシュ不良を検出するための電子ビーム照射方法を説明する。図7は、電子ビームを同一トランジスタに複数回照射した場合の帯電緩和の様子を示した図である。例えば、電子ビーム電流を1〜5nA、走査速度およびサンプリングクロックを50MHz〜100MHzに設定し、1回のビーム照射でプラグ帯電電圧が飽和状態にならないようにする。この条件で、同一トランジスタに電子ビームを複数回照射する。
図7(a)には、複数回照射する際の電子ビーム照射間隔が十分長い場合の帯電電圧の様子を示す。電子ビームの照射時間(Tdose)により1回照射あたりの帯電電圧(Vj)が決まる。この帯電電圧(Vj)と接合部の抵抗(Rj)の関係より、リーク電流(IL)が求まる。また、接合部の抵抗(Rj)と容量(Cj)の積により帯電緩和時間(τj)が求まる。電子ビームの照射間隔(Tint)が帯電緩和時間(τj)よりも長い場合には、正常なpn接合を有するプラグもリーク不良を発生したプラグも次回の照射までに帯電電圧が完全に緩和するため、電位差は生じない。
ところが、図7(b)に示すように、照射間隔(Tint)が正常なpn接合を有するプラグの帯電緩和時間(τj)よりも短い条件で電子ビームを複数回照射すると、正常なpn接合部は帯電が進み、飽和状態となる。
しかし、図7(c)に示すように、リーク不良を発生したプラグでは、帯電緩和時間(τj)が正常部よりも短いため、照射毎に帯電が緩和し、複数回照射しても帯電レベルは低いままとなる。したがって、図8に示すように、正常部とリーク不良発生部で電位差が生じ、電位差に応じて電位コントラストの明るさが変化するため、正常部63は一様に暗くなり、リーク不良部64のみが明るく見える。この画像を、同等パターン同士で比較したり、第二の校正用パターン(図4の51)で取得した正常なpn接合に相当するパターンの明るさと比較したりして不良発生箇所を特定することができる。
リーク不良検出感度を制御するためには、図7で示した電子ビーム照射タイミングおよび1回照射あたりの帯電電圧、そして電子ビーム照射回数を可変にして設定することにより実現できる。電子ビーム照射タイミングは、図9に示す方法により制御することができる。すなわち、電子ビームの走査速度を決め、それに加えて1回の走査あたりの時間すなわち走査幅を任意に設定できるようにする。そして、XY走査する場合の画像サイズXおよびYを任意に変えることにより、あるトランジスタ部に電子ビームが照射されて再度電子ビームが照射されるまでの時間を制御することができる。タイミング間隔を遅くしたい場合には、走査と次の走査の間ブランキングすることにより、タイミングを調整することができる。本実施例では、上記のように電子ビーム電流5nA、走査速度50MHzにし、照射間隔を100μsから500μsの範囲に設定した。その結果、リフレッシュ不良を検出することに成功した。
検査結果の表示例を図10に示す。図10(a)は、検査の結果、リーク不良が発生した箇所をウエハ上の分布で示したものである。また、図10(b)はチップ上の分布で示したものである、リフレッシュ不良は、プロセスの条件に大きく影響を受けるため、例えばウエハ周辺で発生しやすかったり、チップ周辺で発生する場合がある。このような分布の特徴を的確に把握するために上記結果表示が必要となる。
(実施例2)
第2の実施例は、上記第1の実施例における検査結果をビット累積度数で表示したものである。図11にビット累積度数表示の例を示す。ビット累積度数は、各リフレッシュ時間毎のビット数より求めることができるが、実際の検査においてはあらゆるリフレッシュ時間に対応した検査を実行することは実質不可能である。そこで、本実施例では、第1の実施例で説明した各種検査条件を組合わせることにより、3種類のリフレッシュ時間に対応する検査条件を設定し、検査を実行した。第一の検査条件で検査した結果、図11の65に相当するリフレッシュ時間のビットを検出し、その結果を累積度数に入力し、同様の方法で図11の66および図11の67に相当するリフレッシュ時間のビット数を求め、累積度数に入力した。その結果、正常チップとリーク不良チップで特性の差を検知することができた。
例えば、ビーム電流を5nA、パターンをビームで照射する時間(Tdose)を30ns、ビーム照射間隔(Tint)を10msに設定して測定すると、約100〜200msのリフレッシュ時間を境界として、これよりリフレッシュ時間の長いビットは暗く、短いビットは明るくなる。従って、明るいビットの発生頻度を測定することにより度数を求めることができる。
(実施例3)
第3の実施例では、フラッシュメモリ製品のリーク不良検査に適用した例である。フラッシュメモリにおいては、フローティングゲートを介して電荷の蓄積、消去を行う。そのため、ゲートと基板間の酸化膜に欠陥等が存在し、リークを発生すると不良となる。本検査方法を適用することにより、ゲートと基板間のリーク不良が検出可能になった。また、ソースとドレイン間でリークが発生している場合に、原因が結晶欠陥等による場合であれば、基板上のプラグパターンを検査することによりリーク不良発生箇所を特定することができる。
(実施例4)
第4の実施例では、図12に示すように、試料台にヒータ68および温度制御部69を追加し、高温で検査を可能にしたものである。
リフレッシュ不良は、温度によりリーク電流の特性が変化する。室温では差がでにくい領域のリーク電流でも、温度を高くすることにより帯電緩和特性に差をつけることが可能となる。
同様の装置構成において、ヒータ部を冷却機構に変更し、低温で検査を実施することも可能である。
(実施例5)
第5の実施例は、上記第1から第4の実施例で述べた検査方法および検査装置を含む半導体製造プロセスにおける検査解析システムの実施例である。図13に半導体製造工程における検査解析システムの概略図を示す。システム70は、本発明の検査装置1、異物外観検査装置71、レビュー装置72、FIBや断面SEM、TEM等の解析装置73、電気テストを実施するテスタ74、データ収集解析部75、製造プロセス条件データベース・管理システム76より構成されている。
本発明の検査装置1で検査された結果は、データ収集システム75内のサーバ77を介してデータベース78に記録される。このデータと電気テスト74の結果の相関を評価したり、プロセス製造条件による不良発生の推移を評価したりすることにより、歩留まり管理を実行でき、且つ不良発生時に他の検査装置の検査結果やプロセス条件との相関を即座に解析でき、不良発生原因を早期に突きとめることが可能となった。従って、従来は不良が発生してから検知し対策を施すまで数ヶ月を要していたが、本願の検査方法および検査システムを適用することにより不良が発生してから1〜数日で対策を施すことができるようになり、半導体開発および製造の効率が大幅に向上した。
(実施例6)
本実施例は、上記検査方法を半導体製造方法に適用した場合について説明する。図14は半導体製造工程のフローを示している。従来方法では着工(図14のステップ79)して各種工程を経て前工程を完成し(図14のステップ83)、電気テストを実施(図14のステップ84)してから接合プロセスの良否を判定し、その結果を接合プロセスへフィードバックし、対策を行ってきた(図14のステップ87)。しかし、従来方法では接合形成工程(図14のステップ81)を通過してからフィードバックを講じる(図14のステップ87)までに1〜数ヶ月の期間を要し、その間不良が発生していた場合にはすべての製品が不良となってしまったり、低歩留まりのまま製造してしまっていた。
これに対して、本発明による検査方法は、接合形成の直後に実施する(図14のステップ85)。この結果に基づき、直前の接合形成工程(図14のステップ81)にフィードバックする(図14のステップ86)ことにより、従来数ヶ月を要していた対策期間が数日に短縮されるようになり、接合プロセスの最適化を早期に実施できるようになる。また、本発明の検査を定期的にインラインで実施することにより、各種製造条件の変動や異常の発生を即座に把握することができるようになるため、多量の不良発生を未然に防ぐことができる。
また、本発明の検査方法および検査装置を適用し、短時間に効率よく正確に被検査ウエハの製造プロセス条件を決定することが可能となり、その結果、より適切なプロセスを製造工程に適用できるので製品の信頼性を向上することができる。また、本発明による検査は自動化されているので、不良発生を早期に検知できるので半導体装置の生産性を高めることができるようになる。
以上、本発明の代表的な装置の構成および、検査方法について、具体的な検査のフローおよび各部の作用、検査条件を決定するためのフロー、そして、検査および検査条件設定方法の実施例について説明してきたが、本発明の範囲を逸脱しない範囲で請求項目に掲げた複数の特徴を組み合わせた検査方法および検査装置についても可能である。
1… 検査装置、2… 電子光学系、3… ステージ系、4… ウエハ搬送系、5… 真空排気系、6… 光学顕微鏡、7… 制御系、8… 操作部、9… 電子銃、10… コンデンサレンズ、11… 対物レンズ、12… 検出器、13… ブランキング制御電極、14… 偏向器、15… 高さセンサ、16… XYステージ、17… ウエハホルダ、18… ウエハ、19… リターディング電源、20… ウエハカセット、21… ウエハローダ、22…信号検出系制御部、23… ブランキング制御部、24… ビーム偏向制御部、25… 電子光学系制御部、26… 高さ検出系、27… ステージ制御部、28… 操作画面・操作部、29… 画像処理部、30… データ保持部、31… 外部サーバ、32… データ入力部、33… データ変換部、34… 一次電子ビーム、35… 走査領域、50… ビーム校正用パターン、51… pn接合相当パターン、52… アライメント1点目指定チップ、53… アライメント2点目指定チップ、54… アライメント用光学顕微鏡画像、55… アライメント用電子線画像、56… 二次電子、57… プラグ部、58… 層間絶縁膜、59… 空乏層、60… pn接合部、61… 基板、62… 素子分離層、63… 正常ビット、64… リーク発生ビット、65… 第一のリフレッシュ時間、66… 第二のリフレッシュ時間、67… 第三のリフレッシュ時間、68… ヒータあるいは冷却機構、69…温度制御部、70… 検査解析システム、71… 異物外観検査装置、72… レビュー装置、73… 不良解析装置、74… テスタ、75… データ収集解析システム、76… プロセス製造条件管理データベース、77… データ収集用サーバ、78… データ保管部。