JP2004296541A - 電波吸収体 - Google Patents

電波吸収体 Download PDF

Info

Publication number
JP2004296541A
JP2004296541A JP2003083752A JP2003083752A JP2004296541A JP 2004296541 A JP2004296541 A JP 2004296541A JP 2003083752 A JP2003083752 A JP 2003083752A JP 2003083752 A JP2003083752 A JP 2003083752A JP 2004296541 A JP2004296541 A JP 2004296541A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
radio wave
layer
wave absorber
paint
protective layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003083752A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshio Kudo
敏夫 工藤
Kazuyuki Kashiwabara
一之 柏原
Hitoshi Sato
仁 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
CI Kasei Co Ltd
Mitsubishi Cable Industries Ltd
Original Assignee
CI Kasei Co Ltd
Mitsubishi Cable Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by CI Kasei Co Ltd, Mitsubishi Cable Industries Ltd filed Critical CI Kasei Co Ltd
Priority to JP2003083752A priority Critical patent/JP2004296541A/ja
Publication of JP2004296541A publication Critical patent/JP2004296541A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Shielding Devices Or Components To Electric Or Magnetic Fields (AREA)

Abstract

【課題】屋外での使用時に電波吸収特性、可撓性が低下することなく、従来より向上された耐候性を有し、さらにその表面が様々な色彩を有し得る電波吸収体の提供。
【解決手段】カルボニル鉄を還元した鉄粉を塩素化ポリエチレン中に分散させてなる電波吸収層と、当該電波吸収層の一方の側に配置される可撓性保護層と、他方の側に配置される電波反射層とを備えてなる電波吸収体。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋外での使用時に電波吸収特性、可撓性が低下することなく、従来より向上された耐候性を有し、さらにその表面が様々な色彩を有し得る電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ITS(Intelligent Transport Systems;高度道路交通システム)に代表される交通インフラの情報化に伴い、ETC(Electronic Toll Collection;ノンストップ自動料金収受)システムやAHS(Advanced cruise−assist Highway System;走行支援道路システム)、レーダや衛星通信などによるDSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)システム、双方向道路情報システムなど、ミリ波、マイクロ波などの電波の使用による無線通信技術を応用したシステムの導入が拡大している。これらのシステムでは、使用電波が路面や吸音壁などの周囲の構造物によって反射されることによる通信領域内での電波の乱反射(すなわち、不要散乱波)がシステムの誤作動を引き起こす原因となっており、問題とされている。この問題を解決すべく、当該システム近傍の路側、吸音壁、高架、料金所(アイランド、ブース、ゲート上屋、柱、軒先等)などの電波の散乱が懸念される箇所には、この不要散乱波を抑えることを目的として、電波吸収特性を有する電波吸収体を設置する試みが従来よりなされてきた。
【0003】
また、電波吸収体を屋外で使用する場合、風、雨、光線、特に紫外線等による電波吸収体の劣化(例えば、変色、脆化、割れ、ヒビ等)が問題となる。そのため、例えば、路側、吸音壁、料金所ゲート上屋などに含まれる平面部分については、紫外線等による電波吸収体の劣化防止を目的として、電波吸収体の電波の入射を意図する面に耐候性に優れた樹脂層(例えば、厚さ約0.5〜2.0mmの紫外吸収層)を設けてパネル化したパネル型の電波吸収体が開発され、布設されている。
【0004】
一方、料金所のアイランド付近、柱周りなどに含まれる曲面部分へのパネル型電波吸収体の布設は困難であり、このような部分には、可撓性を有するシート型の電波吸収体が開発され、布設されている。従来の典型的なシート型の電波吸収体としては、その可撓性を達成するために、例えばゴムやプラスチックなどのバインダー中に導電性カーボンの粉末、軟磁性金属粒子、フェライトの粉末、カルボニル鉄を還元した鉄粉などの電波損失材を混合し、これをシート状に成形してなる電波吸収層(例えば、特許文献1参照。)、ならびに金属箔を含む電波反射層を備えたものなどが挙げられる。
【0005】
しかし、シート型の電波吸収体を屋外で使用する場合、電波吸収体の電波吸収特性および可撓性を維持し、なおかつ紫外線等による劣化を抑制しなければならない。
【0006】
そこで、耐候性付与を目的として、パネル型電波吸収体と同様にして、シート型電波吸収体の表面(すなわち、電波の入射を意図する側の面)に、例えば、厚さ約20〜300μmの紫外吸収層(例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル等の樹脂に紫外線吸収剤等の耐候剤を配合してなるもの)を圧着または接着によって積層させることが提案され、実施されている。しかしながら、電波吸収体の表面にこのような剛性を有する樹脂板にて紫外吸収層を積層した場合、電波吸収層が紫外吸収層と電波反射層との間に挟まれ、その結果、電波吸収体の電波吸収特性および/または可撓性が大きく低下することが問題となる。また、その積層工程も煩雑である。
【0007】
あるいは、紫外吸収層を用いずに、紫外線吸収剤等の耐候剤を直接電波吸収層のバインダー中に配合させることも考えられるが、この方法では、バインダー中に電波損失材に加えて、耐候剤、必要に応じて他の添加剤が包含されることとなり、製造されたシートは脆化し、電波吸収特性および可撓性が低下する傾向にある。
【0008】
上記で使用する紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系(例えば、フェニル サリシレート、p−tert−ブチルフェニル サリシレート等)、ベンゾフェノン系(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン 3水和物、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−(2−アクリロイルエトキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル酸 n−ヘキサデシルエステル等)、ベンゾトリアゾール系(例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等)等が挙げられる。
【0009】
従って、当該分野では、屋外での使用時に電波吸収特性、可撓性が低下することなく、従来より向上された耐候性を有する電波吸収体、すなわち、優れた電波吸収特性、優れた可撓性および優れた耐候性を有する電波吸収体の開発が望まれている。
【0010】
また、電波吸収層は、一般的に、バインダー中に導電性カーボン粉末、軟磁性金属粒子、フェライトの粉末、またはカルボニル鉄を還元した鉄粉等の電波損失材を配合してなるものであるため、電波吸収体の表面(即ち、電波吸収体において電波の入射を意図した側の面)は黒色もしくは灰色であった。概して、電波吸収体は、路側、吸音壁、高架、料金所(例えば、アイランド、ブース、ゲート上屋、柱、軒先等)、また、将来的には、駐車場、ドライブスルー、ガソリンスタンド等の壁面や看板など比較的人目に付やすい個所に設置される可能性が高く、前者の場合、周囲の景観との整合性、後者の場合、デザインが重要となることから、当該分野では、表面が様々な色彩を有する電波吸収体の提供が望まれている。そのために、上記パネル型およびシート型の電波吸収体において、有色または着色した樹脂層(厚さ約10〜500μmの樹脂シート)を電波吸収体の表面にさらに積層することが提案され、実施されている。しかし、上述のように、パネル型の電波吸収体は曲面部分への布設に不適切であり、他方、シート型の電波吸収体では、さらなる樹脂層の追加によって電波吸収体の電波吸収特性および可撓性が大きく低下し、その結果、曲面部分への布設が困難となる。さらに、シート型の電波吸収体を屋外で使用する場合、有色または着色した耐候性の樹脂層(例えば、厚さ約10〜500μmの上記紫外吸収層)を積層する試みがなされているが、この樹脂層は上記紫外線吸収剤等の耐候剤を含むため、その色および着色に制限を受ける。また、着色により樹脂層の可撓性が低下する。
【0011】
従って、屋外での使用時に電波吸収特性、可撓性が低下することなく、従来より向上された耐候性を有し、さらにその表面が様々な色彩を有し得る電波吸収体の開発は非常に困難であった。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−50506号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、屋外での使用時に電波吸収特性、可撓性が低下することなく、従来より向上された耐候性を有し、さらにその表面が様々な色彩を有し得る電波吸収体の提供である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、特に、ポリウレタン塗料およびアクリル塗料が、カルボニル鉄を還元した鉄粉を塩素化ポリエチレン中に分散させてなる電波吸収層に対して良好な密着性、接着性を有し、しかも耐候性であることから、該電波吸収層の電波の入射を意図した側にポリウレタン塗料またはアクリル塗料を塗布してなる可撓性保護層(以下、単に保護層と略記する場合もある)が、屋外での使用時に電波吸収体の電波吸収特性、可撓性を低下させることなく、電波吸収体に耐候性を付与することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
【0015】
〔1〕 カルボニル鉄を還元した鉄粉を塩素化ポリエチレン中に分散させてなる電波吸収層と、当該電波吸収層の一方の側に配置される可撓性保護層と、他方の側に配置される電波反射層とを備えてなる電波吸収体。
〔2〕 該保護層がポリウレタン塗料にて形成されている上記〔1〕に記載の電波吸収体。
〔3〕 ポリウレタン塗料が2液型である上記〔2〕に記載の電波吸収体。
〔4〕 該保護層がアクリル塗料にて形成されている上記〔1〕に記載の電波吸収体。
〔5〕 該保護層に顔料が配合されている上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の電波吸収体。
〔6〕 電波反射層がアルミニウムラミネート箔である上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の電波吸収体。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい一例の電波吸収体1を簡略化して示す図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は斜視図である。なお図1(a)は、図1(b)の切断面線IA−IAからみた断面である。本発明の電波吸収体1は、電波吸収層2と、電波吸収層2の一方の側(すなわち、電波の入射を意図する側であって、図1の例では、厚み方向一方Z1側)に配置された保護層3と、他方の側(すなわち、電波吸収層2の電波の入射を意図しない側であって、図1の例では、厚み方向他方Z2側)に配置された電波反射層4とを基本的に備えるシート状物である。図1には、厚み方向一方Z1側(電波の入射を意図する側)から厚み方向他方Z2側(電波の入射を意図しない側)へ向かって順に、保護層3、電波吸収層2、電波反射層4が互いに隣接して配置されてなる例を示す。
【0017】
本発明における電波吸収層2としては、塩素化ポリエチレン中にカルボニル鉄を還元した鉄粉を分散させてなるものが用いられる。
【0018】
塩素化ポリエチレンは、当該電波吸収層2においてバインダーとして使用される。塩素化ポリエチレンを使用することで、高充填の電波吸収層(たとえば、充填密度が20vol%〜60vol%程度)を形成することができ、充填可能な鉄粉量の幅を広くとれることから、鉄粉量の調整により種々の周波数(1GHz〜110GHz)に対応する電波吸収体が実現可能であるという利点を有する。
【0019】
電波損失材として本発明に使用される「カルボニル鉄を還元した鉄粉」は、カルボニル法にて生産された高純度(純度:97重量%以上)の鉄粉(以下、「カルボニル鉄粉」ということがある)を還元して得られた鉄粉(以下、「カルボニル還元鉄粉」ということがある)を指す。なお当該「カルボニル鉄粉」、「カルボニル還元鉄粉」の名称は、生産工程中の中間体である「ペンタカルボニル鉄」に由来するものであり、カルボニル基を有する訳ではない。本発明に用いるカルボニル還元鉄粉は、その形状に特に制限はなく、球状や針状、その他の様々な形状のものを用いることができるが、バインダー(塩素化ポリエチレン)への分散性が良好であり、またバインダーにカルボニル還元鉄粉を混合した混合物を圧延加工する際に配向することなくシート成形を容易に行えることから、球状のカルボニル還元鉄粉を用いることが好ましい。なお本明細書中において、カルボニル還元鉄粉の形状に関して「球状」とはアスペクト比(上記粒子をあらゆる方向で測定した場合の最小長さに対する最大長さの比)が1〜5であるものを指し、「針状」とはアスペクト比が5よりも大きいものを指すものとする。
【0020】
本発明に使用するカルボニル還元鉄粉末は、平均粒径が1μm〜10μmであるのが好ましく、3μm〜7μmであるのがより好ましく、3μm〜5μmであるのがさらにより好ましい。カルボニル還元鉄粉末の平均粒径が1μm未満であると、バインダー中での分散性が低下する傾向にあるためであり、またカルボニル還元鉄粉末の平均粒径が10μmを超えると、電波吸収特性が低下する傾向にあるためである。
【0021】
上記平均粒径は、たとえば以下の手順にて測定できる。
測定対象(カルボニル還元鉄の粉末)を水またはエタノールなどの有機液体に投入し、35kHz〜40kHz程度の超音波を付与した状態にて約2分間分散処理して得た分散液を用い、かつその場合の粒状物の量は該分散液のレーザ透過率(入射光量に対する出力光量の比)が70%〜95%となる量とし、次いで該分散液について、マイクロトラック粒度分析計にかけてレーザー光の散乱により個々の粒状物の粒径(D1、D2、D3・・・)、および各粒径ごとの存在個数(N1、N2、N3・・・)を計測する(個々の粒状物の粒径(D)は、マイクロトラック粒度分析計によれば種々の形状の粒状物ごとに球相当径が自動的に測定される)。
【0022】
視野内に存在する個々の粒子の個数(N)と各粒径(D)とから、下記式(1)にて平均粒径を算出する。
平均粒径=(ΣND/ΣN)1/3 (1)
【0023】
カルボニル還元鉄粉は、従来公知の種々の手法にて得ることができる。
球状のカルボニル還元鉄粉については、たとえば、図2のフローチャートに簡略化して示すような工程を包含する方法にて製造することができる。本手法によれば、まず、カルボニル法により鉄からカルボニル鉄粉を得る(鉄(Fe)に一酸化炭素を反応させてペンタカルボニル鉄(Fe(CO))を得た後、これを蒸留し、次いで、熱分解してカルボニル鉄粉とする。得られたカルボニル鉄粉を水素還元して、カルボニル還元鉄粉とする。
また、針状のカルボニル還元鉄粉については、たとえば、特開平10−32398号公報に記載の製法などによって得ることができる。
【0024】
上記平均粒径を有するようなカルボニル還元鉄粉は、上記で適宜得られたカルボニル還元鉄粉を、気流により分級するなどして取得することができる。
【0025】
カルボニル還元鉄粉は、市販のもの、たとえば、BASF Japan社製の球状のカルボニル鉄粉(純度:97重量%)や、ISP Japan社製の球状のカルボニル鉄粉(純度:97重量%)を使用してもよい。
【0026】
本発明の電波吸収層2において、上記カルボニル還元鉄粉は、塩素化ポリエチレン100重量部に対し、10重量部〜1000重量部配合されているのが好ましく、200重量部〜900重量部配合されるのがより好ましい。カルボニル還元鉄粉の配合が塩素化ポリエチレン100重量部に対し10重量部未満であると、充分な電波吸収特性が得られにくい傾向にあるため好ましくない。また、カルボニル還元鉄粉の配合が塩素化ポリエチレン100重量部に対し1000重量部を超えると、電波吸収層を層状(シート状)に成形することが困難となる傾向にあるため好ましくない。
【0027】
電波吸収層2は、例えば、塩素化ポリエチレン中にカルボニル還元鉄粉を混合し、後述するような添加剤を必要に応じて適宜混合した後、均一に分散するよう70℃〜130℃で10分間〜1時間程度混練した後、当該混合物を公知の手法にてシート状に成型することによって形成される。成型方法は、従来公知のロール圧延加工にて行ってもプレス加工によって行ってもよいが、生産効率が良好である点より、ロール圧延加工によりシート状に成型するのが好ましい。ロール圧延加工の場合、たとえば、100℃〜150℃のロール温度、0.1MPa〜2MPaの圧力で行えばよい。
【0028】
電波吸収層2は、通常、概ね均一な厚みを有するように形成され、その厚みは、対象とする電波の周波数に応じて適宜選択する。例えば、5.8GHzの周波数(ETCで規定された周波数)を対象とする場合、電波吸収層2の厚みを1.5mm〜2.1mm(1.8mm±0.3mm)とすることで優れた電波吸収特性が得られる。この場合、電波吸収層2の厚みが1.5mm〜2.1mmを外れると、5.8GHzの周波数を有する電波の吸収特性は低下する傾向にある。
【0029】
本発明において、保護層3は、電波吸収体への耐候性付与(電波吸収層2が直接、外気に接することおよび紫外線等の光線を受けることを防ぐ)および着色を目的として、図1に示す例のように電波吸収層2の一方の側(すなわち、電波の入射を意図した側であって、厚み方向一方Z1側)に配置される。本発明の保護層3は、電波吸収層2の一方の側に塗料を塗布・乾燥(硬化)することで形成され得る可撓性保護層である。
【0030】
本発明において、可撓性保護層の「可撓性」とは、5mm±0.2mm×150mmに切り出した電波吸収体サンプルに半径10mmの曲げ変形を加えた際、電波吸収体の保護層に割れ、ひび、白化が発生しないことを意味する。
【0031】
塗料の塗布による保護層の設置は、従来のように圧着または接着による紫外吸収層としての樹脂板の積層を省略することができ、また、塗料の塗付け量を耐候性、着色効果が損なわれない程度に極力少なくすることができるので、層を容易に非常に薄く、均一に形成することができ、その結果、電波吸収体の電波吸収特性、可撓性の低下を抑制することができるという利点を有する。
【0032】
電波吸収層に塗料を塗布する方法としては、例えば、JIS K 5500に基づく、エアスプレー塗り:塗料に圧力を掛けて、塗料を強制的にノズルから噴出させて塗装する方法;カーテンフローコーティング:還流し、カーテン状に流下した塗料中に被塗物を水平に連続的に通過させて塗装する方法;コイルコーティング:カラー鋼板の塗装に用いられる金属コイルに塗料を連続的に塗装し、塗膜が乾燥してから再び巻き取る方法;静電塗装:霧化した塗料粒子と被塗物との間に静電電位差をかけて塗料の霧を被塗物に引き付けて塗る方法等が挙げられる。なかでもエアスプレー塗りが好ましい。
【0033】
保護層となる塗料には、耐候性、ならびに上述の電波吸収層2に対する高い密着性および接着性が要求される。電波吸収層2に対して密着性、接着性の低い塗料は、電波吸収層2に塗布してなる保護層3が、電波吸収体1を曲げた際に、剥離し易くなる傾向があるため好ましくない。本発明では、耐候性を有し、電波吸収層2に対して、密着性、接着性が高い塗料として、ポリウレタン樹脂塗料(本明細書中、ポリウレタン塗料という場合もある)およびアクリル塗料を用いる。その理由は、ポリウレタン塗料およびアクリル塗料が、当該電波吸収体の電波吸収層のバインダーとして使用する塩素化ポリエチレンに対して、非常に高い密着性、接着性を有し、その硬化後に優れた可撓性を有するからである。
【0034】
本発明において「ポリウレタン塗料」とは、塗膜形成の主要素である高分子樹脂骨格中に、ウレタン結合(−NHCO−O−)を有するか、あるいは塗膜を形成する過程においてウレタン結合を形成する塗料を意味し、本発明において、当業者に公知のポリウレタン塗料(例えば、文献:ポリウレタン樹脂ハンドブック、岩田敬治編(日刊工業新聞社)に記載のポリウレタン塗料)ならびに市販のポリウレタン塗料を使用することができる。
【0035】
概して、ポリウレタン塗料は、大きく、ブロックイソシアネートを利用する「1液型」のポリウレタン塗料と、イソシアネート基をそのまま利用する「2液型」のポリウレタン塗料の2つに分けられる。
【0036】
本発明において「1液型のポリウレタン塗料」とは、ウレタン結合の形成に必要なイソシアネート基(−N=C=O)をブロックイソシアネートの加熱分解(以下、焼付硬化という場合もある)によって生成することができる塗料を意味する。
【0037】
本発明において「2液型のポリウレタン塗料」とは、塗布の際、イソシアネート基(−N=C=O)を有するイソシアネートプレポリマーを含む硬化剤と、活性水素化合物であるポリマーポリオールを含む主剤とを混合して使用する塗料を意味する。
【0038】
1液型のポリウレタン塗料の場合、ウレタン結合の形成に必要なイソシアネート基はブロックイソシアネートの加熱分解によって生成するため、ブロックイソシアネートの焼付硬化過程が不可欠となる。従って、1液型のポリウレタン塗料を用いた保護層3の作製には焼付硬化過程およびそのための設備が必要となる。他方、2液型のポリウレタン塗料の場合、塗料の硬化は、主剤と硬化剤中の各成分が反応することによって進行するので塗料の硬化養生のための特別な設備は不要である。また、2液型のポリウレタン塗料として湿気硬化型塗料を用い、空気中の湿気を利用して硬化を促進してもよい。上記の観点から2液型のポリウレタン塗料が好ましい。
【0039】
また、ポリウレタン塗料としては、例えば、黄変タイプ、難黄変タイプ、無黄変タイプ等のポリウレタン塗料が挙げられる。
【0040】
本発明において「黄変タイプ」とは、ポリウレタン塗料に使用されるポリイソシアネートの種類が黄変型であることを意味する。
【0041】
本発明において「難黄変タイプ」とは、ポリウレタン塗料に使用されるポリイソシアネートの種類が難黄変型であることを意味する。
【0042】
本発明において「無黄変タイプ」とは、ポリウレタン塗料に使用されるポリイソシアネートの種類が無黄変型であることを意味する。
【0043】
本発明の電波吸収体は主に屋外での使用が意図されており、その使用環境にもよるが、ポリウレタン塗料としては、退色の観点から無黄変タイプのポリウレタン塗料が好ましい。
【0044】
本発明で使用するポリウレタン塗料としては、無黄変タイプのポリウレタン塗料または2液型のポリウレタン塗料が好ましく、無黄変タイプの2液型ポリウレタン塗料が特に好ましい。
【0045】
また、本発明において、「アクリル塗料」としては、当業者に公知のアクリル塗料(例えば、文献「水性コーティングの最新技術と市場、監修/桐生春雄(桐生技術士事務所 所長)」に記載のアクリル塗料)ならびに市販のアクリル塗料を使用することができる。
【0046】
本発明において、アクリル塗料として、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはN−メチロール(メタ)アクリロアミド4〜40重量%と(メタ)アクリル酸の炭素数1〜12アルキルエステルの少なくとも1種60〜96重量%との共重合によって得られるアクリル系樹脂を主体とするものが、優れた耐候性および可撓性を有しているので好ましい。また、上記のアクリル系樹脂に他の相溶性のある樹脂を混合することも可能である。例えば、セルロースアセテートブチレート樹脂、フルオロアルキル基を側鎖に有するアクリル樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂などを挙げることができる。
【0047】
ポリウレタン塗料およびアクリル塗料は、当該電波吸収層に対して密着性、接着性が高く、塗膜(即ち、保護層3)の剥離を抑制することができる。また、保護層3を非常に薄く、均一にしかも容易に形成することができ、その結果、電波吸収体の可撓性の低下、および厚みによる電波吸収特性の低下を抑制することができる。
【0048】
上記塗料(すなわち、可撓性保護層)に無機顔料、有機顔料等の顔料を1種またはそれ以上配合させることで、従来の電波吸収体の表面(即ち、電波の入射を意図した側の面)では実現できなかった色(例えば、従来の黒色、灰色以外に白色、赤色、黄色、橙赤色、褐色、緑色、青色、紫色、赤紫色およびこれらの中間色等)を呈することができ、その結果、電波吸収体の表面は様々な色彩を有することができる。
【0049】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、ランプブラック、チタンブラック、合成鉄黒(以上、黒色)、亜鉛末、亜酸化亜鉛、スレート粉(以上、灰色)、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトポン、バライト、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ(以上、白色)、カドミウム赤、カドミウム水銀赤、銀朱、べんがら、モリブデン赤、鉛丹(以上、赤色)、アンバー、酸化鉄茶(以上、褐色)、カドミウム黄、亜鉛黄、黄土、黄色酸化鉄、黄鉛、チタン黄(以上、黄色)、コバルト緑、クロム緑(以上、緑色)、群青、紺青、コバルト青(以上、青色)等が挙げられる。
【0050】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、塩基系染料系レーキ、フタロシアニン顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。
【0051】
アゾ顔料(アゾ基を有する赤色〜黄色系顔料)としては、例えば、パーマネント レッド 4R、パラレッド、パーマネント レッド F5R、ブリリアント ボルドー10B、ブリリアント カーミン 6B、ブリリアント カーミン3B、ボルドー 5B、パーマネント カーミン FB、リソール レッド R、リソール レッド B、ブリリアント ファスト スカーレット、ピラゾロン レッド、ファイアレッド(以上、赤色)、ファストエロー G、ファストエロー 10G、ジスアゾエロー GR(以上、黄色)、ジスアゾ オレンジ、ピラゾロン オレンジ、ブリリアント スカーレット G、レーキ レッド C、レーキ レッド D(以上、橙赤色)等が挙げられる。
【0052】
ニトロソ顔料(ニトロソ基を有する緑色系レーキ顔料)としては、例えば、ナフトール グリーンB等が挙げられる。
【0053】
ニトロ顔料(ニトロ基を有する黄色系の顔料)としては、例えば、ナフトールエロー S(黄色)等が挙げられる。
【0054】
塩基系染料系レーキとしては、例えば、ローダミン Bレーキ、ローダミン 6Gレーキ(以上、赤紫色)等が挙げられる。
【0055】
フタロシアニン顔料としては、例えば、フタロシアニン ブルー、フタロシアニン グリーン、ファスト スカイ ブルー、アニリン ブラック等が挙げられる。
【0056】
ジオキサジン系顔料としては、例えば、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0057】
また、上記の塗料には、電波吸収特性、電波吸収層との接着性を阻害しない範囲で、耐候剤(紫外線吸収剤、光安定剤等)を配合してもよい。
【0058】
紫外線吸収剤としては、例えば、上記従来の技術で列挙した紫外線吸収剤等を使用することができ、使用する紫外線吸収剤は特に限定されない。なかでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の使用が好ましい。光安定剤としては、当業者に公知の光安定剤を使用することができる。
【0059】
本発明において保護層3は、塗装による着色の効果、保護層3の強度、および電波吸収特性に及ぼす影響の観点から、概ね均一な厚みを有し、その厚みが10μm〜300μmであるのが好ましく、30μm〜100μmであるのがより好ましい。保護層3の厚みが10μm未満であると、十分な着色効果が得られず、また塗膜の強度が得られないために擦過傷等を生じ易くなるため好ましくなく、また保護層3の厚みが300μmを超えると、電波吸収特性を低下させる原因となるため好ましくない。
【0060】
保護層3の好ましい態様としては、ポリウレタン塗料またはアクリル塗料、好ましくはポリウレタン塗料、より好ましくは無黄変タイプのポリウレタン塗料または2液型のポリウレタン塗料、さらにより好ましくは無黄変タイプの2液型ポリウレタン塗料を厚みが10μm〜300μm、好ましくは30μm〜100μm、より好ましくは50μmになるようにエアスプレー塗り、カーテンフローコーティング、コイルコーティング、静電塗装、好ましくはエアスプレー塗りにて塗布してなる可撓性保護層が挙げられる。
【0061】
電波反射層は、入射して電波吸収層を通過してきた電波を反射し、新たに入射してきた電波を相殺するために設けられたものであって、導電性を有し、電波吸収層の終端インピーダンスが0(ゼロ)となるものであれば、特に制限なく使用できる。このような電波反射層としては、たとえば、アルミニウム、銅、鉄などの金属箔が適用される。電波反射層4は、図1に示す例のように、電波吸収層2の厚み方向他方Z2側に設けられているならば、接着剤層等の層が介在されていてもよいが、優れた電波吸収特性を有する電波吸収体を実現し得る観点からは、電波吸収層2の電波の入射を意図しない側(厚み方向他方Z2側)に隙間なく隣接させて設けるのが好ましい。上記接着剤層等の層を設ける場合には、その厚み(電波吸収層2と電波反射層4との間隔)は、50μm以下であるのが好ましく、30μm以下であるのがよりこのましい。
【0062】
本発明における電波反射層4としては、図1に示すように上記金属箔5の片面に防食層6を形成したもの(金属ラミネート箔)を用い、これを、防食層6を形成した側が電波の入射を意図しない側(厚み方向他方Z2側)に配置されるように設けられたものであるのが好ましい。防食層6の形成材料としては、公知の樹脂を用いればよく、具体的には、ポリエステル樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。高周波に見られる表皮効果を考慮すると、導電率の大きなアルミニウムを金属ラミネート箔の金属箔として使用した場合、その厚みを薄く抑えることができるという観点から、アルミニウムラミネート箔が好ましい。特に、アルミニウム箔と、ポリエステル樹脂とからなるアルミニウムラミネート箔が好ましい。アルミニウムラミネート箔を電波吸収層2の電波の入射を意図しない側にアルミニウム箔を電波吸収層2と隣接させて接着する。この際、アルミニウムラミネート箔と電波吸収層との間隔は、通常10〜50μm、好ましくは10〜20μmである。
【0063】
また、電波吸収層の電波の入射を意図する側とは反対側の面に導電性塗料を塗布して反射層を形成することもできる。導電性塗料を塗布する場合、例えば、スプレー方式で塗料を噴霧させて電波吸収層に塗布する方法や電波吸収層を回転させて塗料を均一の厚みとなるように塗布する方法等が挙げられる。
【0064】
上記防食層6を金属箔に接着させる方法としては、たとえば熱圧着による接着や公知の接着剤を介しての接着等が挙げられる。
【0065】
電波反射層4は、概ね均一な厚みを有するように形成されるのが好ましい。電波反射層4の厚みは、特に制限はないが、たとえば図1のように金属ラミネート箔で実現する場合には、金属箔5の厚みが10μm〜100μm程度であり、防食層6の厚みが10μm〜200μm程度であるのが好ましい。
【0066】
電波吸収層2と電波反射層4とを接着させる手段としては、シート状に成型した電波吸収層2に、金属箔5を隣接させるようにして電波反射層4を載置し、たとえば100℃〜150℃、0.1MPa〜2MPaの条件でプレスを施して熱接着する方法や、弾性系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、エラストマー系接着剤、熱可塑性樹脂系接着剤、瞬間系接着剤、無機系接着剤など公知の接着剤を使用して接着する方法などが挙げられる。
【0067】
なお上記の保護層3と電波反射層4は、どちらを先に電波吸収層2に設けてもよく、また同時に設けてもよい。
【0068】
上述してきたように、本発明の電波吸収体1は、カルボニル鉄を還元した鉄粉を塩素化ポリエチレン中に分散させてなる電波吸収層2と、当該電波吸収層2の一方の側に配置される保護層3と、他方の側に配置される電波反射層4とを基本的に備えてなるものである。本発明の好ましい態様において、保護層3はポリウレタン塗料またはアクリル塗料の塗膜であり、電波反射層4はアルミニウムラミネート箔である。本発明の電波吸収体がこのような構成を基本的に備えることで、電波吸収特性および可撓性を低下させることなく、耐候性を向上させることができた。すなわち、当該電波吸収体は、優れた電波吸収特性、優れた可撓性および優れた耐候性を有する。さらに、保護層3が顔料を含む場合、その表面は様々な色彩を有することができる。
【0069】
本明細書中「優れた電波吸収特性」とは、アーチ法(測定条件:入射角:10°、測定周波数域:3〜8GHz)に基づき、5.8GHz(ETCで規定された周波数)の電波を20dB以上減衰できる性質(すなわち、20dB以上の電波反射減衰量を示す性質)をいう。
【0070】
本明細書中「優れた可撓性」とは、たとえば、5mm±0.2mm×150mmの大きさの電波吸収体を半径10mm以下に曲げても、電波吸収体を構成する各層に割れ、ひび、白化などが生じない性質をいう。
【0071】
本明細書中「優れた耐候性」とは、たとえば、サンシャインウェザオメータによる500時間以上の促進耐候性試験(JIS A 1415「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」による)後において、上記定義の優れた電波吸収特性および優れた可撓性を維持している性質をいう。
【0072】
なお本発明における電波吸収層2には、電波吸収特性および可撓性を低下させない範囲で、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤などの添加剤が適宜添加されていてもよい。
【0073】
難燃剤が添加される場合、たとえば、バインダーである塩素化ポリエチレン100重量部あたり有機臭化物系難燃剤と亜鉛系難燃剤との混合物を50重量部〜400重量部配合されているのが好ましく、100重量部〜300重量部配合されているのがより好ましい。このような難燃剤の混合物の添加により、電波吸収体の難燃性が向上する。上記難燃剤の混合物が塩素化ポリエチレン100重量部あたり50重量部未満しか配合されていないと、難燃性の向上がみられない傾向にあり、また上記難燃剤の混合物が塩素化ポリエチレン100重量部あたり400重量部を超えて配合されていると、難燃性は向上する反面、電波吸収能が低下する傾向にある。
【0074】
上記難燃剤の混合物が添加される場合、有機臭化物系難燃剤と亜鉛系難燃剤との混合割合は、95:5〜60:40であるのが好ましく、90:10〜70:30であるのがより好ましい。
【0075】
有機臭化物系難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビスペンタブロモジフェニル、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンなどを用いることができる。
【0076】
亜鉛系難燃剤としては、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化亜鉛などを用いることができる。
【0077】
また必要に応じ、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの上記以外の難燃剤を併用することもできる。さらに、難燃助剤を添加してもよい。
【0078】
難燃助剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、レゾルシノールジホスフェート、ジメチルメチルホスフェート、トリアリルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、縮合型ホスフェート等のリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等が挙げられる。
【0079】
電波吸収層2に添加してもよい可塑剤としては、たとえば、ジオクチルフタラート(DOP)やジブチルフタラート(DBP)などのフタル酸エステル系のもの、ジオクチルアジペート(DOA)などのアジピン酸エステル系のもの、ジオクチルセバケート(DOS)などのセバシン酸エステル系のもの、トリメリット酸オクチルエステルなどのトリメリット酸エステル系、ピロメリット酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ化大豆油などが挙げられる。可塑剤は、通常、塩素化ポリエチレン100重量部あたり5重量部以下添加することができる。
【0080】
電波吸収層2に添加してもよい充填剤としては、従来公知の種々の有機系、無機系の充填剤を使用することができるが、電波吸収特性を損なうことなく圧延加工性を向上できることから、無機系の充填剤を配合するのが好ましい。このような無機系の充填剤としては、たとえば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。シリカとしては、具体的には、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダル・シリカ、噴霧状シリカなどが例示される。炭酸カルシウムとしては、具体的には、沈降性炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、胡粉などが例示される。クレーとしては、具体的には、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とし、カオリン質クレー(カオリンナイト、ハロサイト)、パイロフェライト質クレー、セリサイト質クレー、またはカオリナイトを600℃で焼成した焼成クレーなどが例示される。タルクとしては、含水ケイ酸マグネシウムを主成分としたものなどが例示される。カーボンとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどが例示される。
【0081】
中でも、圧延成形後の電波吸収層の表面形状が良好である点で、平均粒径が5μm以下のカーボンを配合するのが、特に好ましい。上記カーボンの平均粒径は、上述したカルボニル還元鉄と同様にして測定できる。
【0082】
電波吸収層2に添加してもよい酸化防止剤としては、従来公知のフェノール系の酸化防止剤、チオエーテル系の酸化防止剤など、従来公知の種々のものが挙げられる。酸化防止剤は、通常、塩素化ポリエチレン100重量部あたり3重量部以下添加することができる。
【0083】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例1
塩素化ポリエチレンに、ISP Japan社製カルボニル還元鉄粉(S−1641、平均粒径3μm〜5μm、純度97重量%)を38vol%配合し、混練した組成物を120℃のロール温度で0.5MPaの圧力でロール圧延加工を施し、厚み2mmのシート状の電波吸収層2を形成した。
このような電波吸収層2と、電波反射層4としてアルミニウムラミネート箔(アルミニウム箔:10μm/ポリエステル樹脂:25μm)をアルミニウム箔が電波吸収層2と隣接するように配置して載置し、130℃、0.2MPaの条件でプレス熱圧着を施し、電波吸収層2の上記アルミニウムラミネート箔を設けていない側にエアスプレー塗りにて2液型ポリウレタン塗料(青色、無黄変タイプ)を厚さ50μmになるように塗布し、室温にて24時間放置して硬化させて保護層3を設け、図1に示したような電波吸収体1のサンプルを作製した。
【0085】
実施例2
実施例1と同一の電波吸収層2および電波反射層4を作製し、実施例1と同様に電波吸収層2に電波反射層4を設け、電波吸収層2の電波反射層4を設けていない側にアクリル塗料(2−ヒドロキシエチルメタクリレート30重量部、メチルメタクリレート40重量部、n−ブチルメタクリレート30重量部よりなるモノマー混合物を共重合して得られるアクリル系樹脂100重量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤((商品名)TINUVIN327、チバガイギー社製)1重量部を配合し、これを酢酸エチル/イソプロピルアルコール=60/40の溶剤中、固形分15重量%のアクリル塗料)をエアスプレー塗りにて塗布して厚さ50μmの保護層3を設け、図1に示したような電波吸収体1のサンプルを作製した。
【0086】
比較例1
保護層3を設けなかった以外は実施例1と同様にして、電波吸収体のサンプルを作製した。
【0087】
比較例2
保護層3の代わりに耐候性塩化ビニルシート(厚さ50μm)を接着(接着剤層の厚さ20μm)によって電波吸収層に設けたこと以外は実施例1と同様にして、電波吸収体のサンプルを作製した。
【0088】
〔評価試験〕
(1)電波吸収能試験
実施例1および実施例2ならびに比較例1および比較例2の各サンプルを300mm×300mmに切り出したものについて、アーチ法(入射角:10°、周波数:5.8GHz(測定周波数範囲:3GHz〜8GHz))にて電波吸収能の評価試験を行った。
実施例1および実施例2ならびに比較例1および比較例2のサンプルはともに、25dBの電波反射減衰量を示した。
【0089】
(2)可撓性試験
実施例1および実施例2ならびに比較例1および比較例2の各サンプルを5mm±0.2mm×150mmに切り出したものをそれぞれ5サンプル作製し、各サンプルに半径10mmの曲げ変形を加え、割れ、ひび、白化の有無を目視により確認した。曲げ変形後、実施例1および実施例2ならびに比較例1のサンプルにおいて割れ等の変化は確認されず、比較例2のサンプルにおいて、耐候性塩化ビニルシートの白化が確認された。
【0090】
(3)耐候性試験
実施例1および実施例2ならびに比較例1および比較例2の各サンプルを300mm×300mmに切り出したものについて、サンシャインウェザオメータにより、500時間の促進耐候性試験(JIS A 1415「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」による)を行った。試験後の各サンプルについて電波吸収能を評価したところ、実施例1および実施例2のサンプルは24dB、比較例1のサンプルは18dBの電波反射減衰量を示し、比較例2のサンプルは24dBの反射減衰量を示した。一方、同サンプルをさらに5mm±0.2mm×150mm(各5サンプル)に切り出したものについて、その可撓性を確認した。実施例1および実施例2のサンプルでは、すべてのサンプルで、割れ等の変化は認められなかったが、比較例1のサンプルでは、表面に微細なひびが多数入ることが目視により確認された。また、比較例2のサンプルでは白化が確認された。
【0091】
以上のことから、比較例1の電波吸収体は、耐候性試験後、電波吸収特性および可撓性の低下を示すが、本発明の電波吸収体(実施例1および実施例2)は、耐候性試験の後でも優れた電波吸収特性、優れた可撓性を有し、優れた耐候性を示すことが判る。また、比較例2の電波吸収体は可撓性に乏しく、また、耐候性試験後において可撓性がさらに低下することが判る。従って、本発明の電波吸収体が優れた電波吸収特性、優れた可撓性および優れた耐候性を有することが実証された。
【0092】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、カルボニル鉄を還元した鉄粉を塩素化ポリエチレン中に分散させてなる電波吸収層の一方の側(電波の入射を意図した側)にポリウレタン塗料またはアクリル塗料を塗布してなる可撓性保護層は、屋外での使用時に紫外線等による電波吸収体の劣化を抑制することができ、優れた電波吸収特性および可撓性を維持することができる。特に、ポリウレタン塗料およびアクリル塗料が当該電波吸収層に対して良好な密着性、接着性を有することから、保護層を非常に薄く、均一にしかも容易に形成することができ、しかも、保護層の剥離を防止することができる。さらに、保護層に顔料を配合することで従来の電波吸収体の表面では見受けられなかった様々な色彩を出すことができる。
【0093】
従って、本発明によれば、屋外での使用時に電波吸収特性、可撓性が低下することなく、従来より向上された耐候性を有し、さらにその表面が様々な色彩を有し得る電波吸収体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一例の電波吸収体1を簡略化して示す図である。図1(a)は、電波吸収体1の断面図であって、電波吸収体1の構造を模式的に示す。ただし、各層の厚みは実際の層の比とは異なっている。図1(b)は電波吸収体1の斜視図である。
【図2】本発明に使用するカルボニル還元鉄粉を製造する方法の一例を簡略化して示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 電波吸収体
2 電波吸収層
3 保護層
4 電波反射層
5 金属箔
6 防食層

Claims (6)

  1. カルボニル鉄を還元した鉄粉を塩素化ポリエチレン中に分散させてなる電波吸収層と、当該電波吸収層の一方の側に配置される可撓性保護層と、他方の側に配置される電波反射層とを備えてなる電波吸収体。
  2. 該保護層がポリウレタン塗料にて形成されている請求項1に記載の電波吸収体。
  3. ポリウレタン塗料が2液型である請求項2に記載の電波吸収体。
  4. 該保護層がアクリル塗料にて形成されている請求項1に記載の電波吸収体。
  5. 該保護層に顔料が配合されている請求項1〜4のいずれかに記載の電波吸収体。
  6. 電波反射層がアルミニウムラミネート箔である請求項1〜5のいずれかに記載の電波吸収体。
JP2003083752A 2003-03-25 2003-03-25 電波吸収体 Pending JP2004296541A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003083752A JP2004296541A (ja) 2003-03-25 2003-03-25 電波吸収体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003083752A JP2004296541A (ja) 2003-03-25 2003-03-25 電波吸収体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004296541A true JP2004296541A (ja) 2004-10-21

Family

ID=33399134

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003083752A Pending JP2004296541A (ja) 2003-03-25 2003-03-25 電波吸収体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004296541A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220039301A1 (en) * 2019-05-14 2022-02-03 Fujifilm Corporation Radio wave absorber and compound

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220039301A1 (en) * 2019-05-14 2022-02-03 Fujifilm Corporation Radio wave absorber and compound

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI418603B (zh) 光穿透型電磁波屏蔽積層體及其製造方法、光穿透型電波吸收體,以及接著劑組成物
CN103298891B (zh) 包含片状硅酸盐颜料的涂层组合物和用于生成透明或半透明的发射性涂层的方法
CN1133082C (zh) 逆向反射制品及其制造方法
JP5168151B2 (ja) 複合粒子およびその用途
JPWO2019116858A1 (ja) 塗料、カバーガラス、太陽光発電モジュールおよび建築用外壁材
CN103282202A (zh) 高阻燃聚合物构件、阻燃性制品和阻燃化方法
KR101265171B1 (ko) 태양 전지용 이면 보호 시트 및 그 제조 방법
WO2020111159A1 (ja) 準ミリ波・ミリ波帯域用電波吸収シート及び準ミリ波・ミリ波電波吸収方法
KR101273356B1 (ko) 단열부직포를 이용한 복합시트 구조체 및 그를 이용한 복합시트 방수 공법
WO2019077808A1 (ja) ミリ波帯域用電波吸収シート及びミリ波電波吸収方法
US20120107604A1 (en) Composite particles, composition for forming coating layer, printing ink, coating material composition, coated article and resin film having coating layer
JPH11323197A (ja) 遮熱性塗料
JPH11240112A (ja) 防曇性積層体
US9422712B2 (en) Temperature controlled variable reflectivity coatings
JP2004296541A (ja) 電波吸収体
US20170165949A1 (en) Heat shielding material, heat shielding composition and heat shielding structure employing the same
JP4969893B2 (ja) 被覆基材及びその製造方法
CN103249560A (zh) 热功能性阻燃聚合物构件
JP2004128171A (ja) 電波吸収体
CN103298613A (zh) 物理的功能性阻燃聚合物构件和化学的功能性阻燃聚合物构件
JP2005228939A (ja) 電磁波吸収体及びその製造方法
JPS60155267A (ja) 赤外線輻射被覆組成物
WO2021085508A1 (ja) ミリ波吸収性を有する構造体
JP6540825B2 (ja) 被覆金属板
JP4685685B2 (ja) 被覆基材及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060322

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090217

A521 Written amendment

Effective date: 20090415

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20090714

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091110