JP2004296417A - El発光装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】防水・防湿効果および安全性に優れ、しかも発光強度の低下を可及的に抑止できるEL発光装置を提供すること。
【解決手段】前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有し面状の発光領域を構成するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有し面状の発光領域を構成するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、EL発光層を備えるEL発光装置に関し、特に各種のインクが塗布されたり、各種の筆記具で描かれることにより、装飾、看板、インテリア、玩具等として好適な、ユーザが任意に発光パターンを形成することができるEL発光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)材料からなるEL発光層を備える発光装置として、例えば、基材シート、電極部、絶縁体層(反射層)、EL発光層、トップコート層(エポキシ系の保護フィルム)をこの順で積層した構造を有するEL発光装置が知られている(例えば、特許文献1)。
このEL発光装置では、電極部における第1電極と第2電極の間に交流電源電圧を印加するとともに、トップコート層上に任意形状の透明電極を成膜することで、好みに応じた発光パターンを形成するようにされている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−153582号の段落0021
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
EL発光装置では、水や湿気(水等)が浸透して電極部に達すると、その電極部で電気分解が発生したり、電極の酸化に起因する断線(破損)が発生するおそれがある。また、第1電極と第2電極の間が水等を介して直接的に接続されるので、安全性の点でも問題がある。
この点、引用文献1記載のEL発光装置では、トップコート層が防水層としての機能をある程度は果たしている。しかし、トップコート層は露出しており、しかも層厚も小さいため、摺擦等によりトップコート層の一部が劣化しやすい。その場合、前記問題点が顕在化する。
これを解消するためには、トップコート層の層厚を大きくすることが考えられるが、層厚を大きくすると誘電率が小さくなるため、発光強度が低減してしまうという新たな問題が生じる。
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、防水・防湿効果および安全性に優れ、しかも発光強度の低下を可及的に抑止できるEL発光装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有し面状の発光領域を構成するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有し面状の発光領域を構成するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極の一方と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部と、前記EL発光層の一面側に配置された反射層とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記反射層は浸透防止機能を有し前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方と前記EL発光層との間に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部と、前記EL発光層の一面側に配置された基材シートとを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記基材シートは浸透防止機能を有し前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方と前記EL発光層との間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記EL発光層が浸透防止機能を有していることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明の「交流電界形成体」としては、周知のインク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具、導電性または誘電性を有するシート材などを用いることができる。 このうちインクとしては、その塗布状態において106Ω/□ 以下の表面抵抗値を有し、且つ光透過性を有するものであり、酸化インジウム、酸化錫、アンチモン、酸化亜鉛などの導体材料のうち少なくとも1種類以上の粉体を溶剤中に含むものが望ましい。さらに、インクとして、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylene Dioxi Thiophene)などの導電性ポリマーあるいはそれと前記導体材料の粉体との混合体を用いても良い。このような場合には、拭き取りなどによる除去までは長期間発光させることができる。
また、前述したインク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具は、有機あるいは無機の着色顔料を含むものでもよい。
なお、「交流電界形成体」は、誘電率の高い水や溶剤から構成されてもよい。この場合には、ドライヤで乾燥させたり、拭き取ることにより容易に除去できる。
以上のように、本明細書に記した「交流電界形成体」とは、所謂誘電体でも良く、所謂導体でもよい。つまり、本明細書に記した「交流電界形成体」とは、EL発光層の他面側に付着すると、EL発光層内に電界を形成するもの全てを示している。
【0011】
前記請求項1〜請求項5記載の発明によれば、第1電極および第2電極の間に交流電源電圧を印加した状態でEL発光層の他面側に交流電界形成体を形成すると、あるいは、EL発光層の他面側に交流電界形成体を形成した状態で第1電極および第2電極の間に交流電源電圧を印加すると、EL発光層内に交流電界が形成され、その交流電界形成体の直下部分だけが局部的に発光する。このため、所望の発光パターンをユーザが容易に作成できることになる。
【0012】
また、請求項1記載の発明によれば、第1電極および第2電極と前記EL発光層の間には合成樹脂から構成される防水層が設けられているので、その防水層によって水等の浸透が防止され、第1の電極および第2の電極に水等が付着することが防止される。このため、第1電極と第2電極の間で電気分解が発生することを防止できるとともに、電極の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0013】
さらに、請求項2記載の発明によれば、第1電極および第2電極の一方と前記EL発光層の間には合成樹脂から構成される防水層が設けられているので、その防水層によって水等の浸透が防止され、一方の電極に水等が付着することが防止される。このため、第1電極および第2電極の間で電気分解が発生することを防止できるとともに、一方の電極の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0014】
また、請求項3または4記載の発明によれば、浸透防止機能を有する合成樹脂部分によって請求項1または2記載の発明と同様な作用・効果を奏する。
【0015】
さらに、請求項5記載の本発明によれば、EL発光層が浸透防止機能を有するので、水等の浸透が防止され、第1の電極および第2の電極に水等が付着することが防止される。このため、第1電極および第2電極の間で電気分解が発生することを防止できるとともに、電極の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
I.第1の実施形態
1.全体構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る薄板状のEL発光装置1の表面側の一部を層毎に切り欠いて示す平面図である。図2はEL発光装置1の要部の断面図すなわち図1に示されたEL発光装置1の断面の一部を拡大して示す図である。
このEL発光装置1は、図1に示すように、全体として矩形をなし、その上面(表面)の略全体に矩形の発光領域Aを備えている。このEL発光装置1は、図2に示すように、基材シート14、電極部20、防水層30、光反射層28およびEL(Electroluminescence:エレクトロルミネッセンス)発光層26がこの順で積層された構造を持つ。
そして、このEL発光装置1は、例えばユーザが手書きや印刷などにより交流電界形成体11をEL発光層26の表面に付着させ、電極部に交流電源電圧を印加すると、発光領域Aは交流電界形成体11の付着パターンに対応した発光パターン12で局部的に発光表示する。
【0017】
2.各部の構成
(1)基材シート14
基材シート14はEL発光層26の後述する一面26a側に配置されている。この基材シート14は透明あるいは不透明の合成樹脂またはガラスからなる。例えば、合成樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂が用いられる。
【0018】
(2)電極部20
電極部20はEL発光層26の一面26a側に配置されている。そして、この電極部20は第1電極16および第2電極18を備えている。第1電極16と第2電極18は、互いに接近し境界領域Kを隔てて電気的に絶縁されている。この第1電極16および第2電極18は図示例では櫛形に形成されている。そして、発光領域Aにおいて単位面積当たりで境界領域Kが略等しくなるように、第1電極16および第2電極18が形成されている。この第1電極16および第2電極18は可撓性を有している。
【0019】
以上の第1電極16と第2電極18は、EL発光装置1の一方の長辺および他方の長辺に沿ってそれぞれ位置するバス電極16Bおよび18Bと、そのバス電極16B、18Bから互い違いとなるように相手側へ向かって等間隔で突き出す櫛電極16K、18Kとを備えている。
【0020】
バス電極16B、18Bのうちの表面に露出した端部が端子として機能する。第1電極16(櫛電極16K)および第2電極18(櫛電極18K)の間隔、すなわち境界領域Kの幅寸法Wkは、例えば0.1〜2.0mm程度、好適には0.3〜1.0mm程度である。第1電極16(櫛電極16K)および第2電極18(櫛電極18K)の幅寸法Weは、例えば0.1〜5.0mm程度、好適には0.3〜3.0mm程度である。
【0021】
なお、第1電極16および第2電極18は、例えば、銀粉を含むペースト状の銀ペースト、銅粉を含むペースト状の銅ペースト、カーボン等の導電性ペーストをスクリーン印刷により所定のパターンで基材シート14に塗着した後熱乾燥処理することにより固着される。なお、第1電極16および第2電極18は、銅、アルミニウム等の金属箔あるいは金属蒸着膜をエッチングすることにより形成されたものであってもよい。
【0022】
(3)防水層30
防水層30は第1電極16および第2電極18と光反射層28の間に配置されている。
【0023】
この防水層30は合成樹脂、例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコンゴム等のシリコン系樹脂、その他エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニール共重合体その他のシール性の高い樹脂によって形成されている。これらの樹脂は、例えばUV硬化、IR硬化、二液硬化、加熱硬化等の方法によって硬化される。
【0024】
この防水層30は、交流電界形成体11が液体の場合に、その交流電界形成体11が電極部20まで浸入すること、すなわち、交流電界形成体11が第1電極16および第2電極18の双方に付着することを防止する。
【0025】
(4)光反射層28
光反射層28は防水層30とEL発光層26の間に配置されている。そして、この光反射層28はEL発光層26の一面26aに密着する状態で固着されている。
【0026】
この光反射層28は、チタン酸バリウム、ロッシェル塩のような強誘電体粉末である無機粉末を例えばアクリル樹脂等の結合剤として機能する樹脂中に分散することにより構成される。この強誘電体粉末のような無機粉末は白色を呈する顔料であることから、光反射層28は白色となり、光反射機能を有効に発揮する。
【0027】
なお、この光反射層28は、10〜30μm程度の厚みと200〜300V程度の耐電圧と、30〜100程度の誘電率さらに好適には60〜100程度の誘電率とを有している。
【0028】
(5)EL発光層26
EL発光層26は、例えば蛍光体あるいは燐光体粒子である有機あるいは無機のEL発光体26Lと、そのEL発光体26Lを分散状態で固定する透明な樹脂結合剤26Pとから構成されている。樹脂結合材26Pとしてはポリエステル樹脂等の誘電率の高い樹脂が好適に選択される。このEL発光層26は、30〜40μm程度の厚みと、50〜150V程度の耐電圧と、10〜30程度の誘電率とを有している。好適には、EL発光体26Lの径の1.5倍以上の厚みとされる。この場合には、EL発光層26の表面が滑らかとされ、例えば表面粗さが30μm以下とされる。
【0029】
以上のように構成されたEL発光層26は、第1電極16と第2電極18の間に交流電源電圧が印加されることにより、所定の発光色例えば青緑色で発光する。
【0030】
(6)交流電界形成体11
交流電界形成体11はEL発光層26の他面26a側に付着される。
【0031】
この交流電界形成体11としては、周知のインク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具、導電性を有するシート材(以下導体シートと称す。)等を用いることができる。インク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具としては有機あるいは無機の着色顔料を含むものを使用してもよい。
【0032】
前記インクとしては、例えば、その塗布状態において106Ω/□以下の表面抵抗値を有し、且つ光透過性を有するものであり、酸化インジウム、酸化錫、アンチモン、酸化亜鉛などの導体材料のうちの少なくとも1種類以上の粉体を溶剤中に含むものが好ましい。また、前記インクとして、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylene Dioxi Thiophene)等の導電性ポリマーあるいはそれと前記導体材料の粉体との混合体を用いても良い。この場合、拭き取り等によって除去するまで長期間発光させることができる。また、交流電界形成体11は誘電率の高い水や溶剤から構成されてもよい。この場合には、ドライヤで乾燥させたり、拭き取ることにより、交流電界形成体11を容易に除去できる。
【0033】
3.動作・作用
EL発光層26の他面26b上に交流電界形成体11を所望のパターンで付着させる。この交流電界形成体11の付着は、筆(鉛筆、パステル、クレヨン)によって描いたり、インクジェットプリンタによる印刷やスクリーン印刷をしたり、導体シートを貼ったりすることによって行われる。この状態で、バス電極16B,18Bのうち表面に露出した端部に交流電源32からの交流電源電圧を印加する。なお、予め前記端部に交流電源電圧を印加しておいた後に交流電界形成体11を付着させてもよい。
【0034】
すると、交流電界形成体11の付着によってEL発光層26内に交流電界が形成され、EL発光層26のうちの交流電界形成体11の直下部分だけが局部的に発光する。つまり、EL発光層26および光反射層28は誘電率が高いことから、交流電界形成体11の付着によって、第1電極16、光反射層28,EL発光層26,交流電界形成体11,EL発光層26、光反射層28,第2電極18等からなる図3に示す閉回路33(交流回路)と等価な回路が形成され、EL発光層26内に交流電界が形成される。そして、交流電界形成体11の付着部分の直下が発光する。一方、交流電界形成体11が付着していない部分の直下は、EL発光層26内の交流電界の強さが発光に至るほど十分ではなく、発光しない。このように交流電界形成体11の直下部分のみが選択的に発光するように前記光反射層28,EL発光層26などの厚み寸法や誘電率が設定される。
【0035】
なお、交流電界形成体11が液状のものであると、EL発光層26の他面26bに交流電界形成体11を付着した際に、傷や、不可避的に存在するピンホール31等を通って交流電界形成体11がEL発光層26と光反射層28とに浸入する場合がある。しかし、防水層30は交流電界形成体30のそれ以上の浸入を阻止する。また、防水層30は空気中の水分または湿気の浸入も阻止する。
【0036】
4.効果
本実施形態によれば、EL発光層26のうちの交流電界形成体11の直下部分に交流電界が形成され、その部分だけが局部的に発光する。このことは、所望の発光パターンと同じパターンで交流電界形成体11を付着させれば、所望の発光パターンを得ることができることを意味する。よって、所望の発光パターンをユーザ側で簡単に作成できるEL発光装置1が得られる。
【0037】
また、本実施形態によれば、防水層30によって水等の浸入が阻止されるので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することを防止できる。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0038】
さらに、本実施形態では、前記電極部20は、第1電極16と第2電極18との間の境界領域Kが発光領域Aにおいて単位面積当たり略等しくなるように配置されているので、前記面状の発光領域A内のいずれの場所においても、交流電界形成体11の直下に位置するEL発光層26の発光に発光むらがなく、発光強度が均一となる。
【0039】
また、第1電極16と第2電極18との間の境界領域Kの幅寸法Wkは、例えば0.1〜2.0mm程度、好適には0.3〜1.0mm程度である。第1電極16(櫛電極16K)および第2電極18(櫛電極18K)の幅寸法Weは、例えば0.1〜5.0mm程度、好適には0.3〜3.0mm程度であるので、交流電界形成体11の直下に位置するEL発光層26の発光に発光むらがなく、発光強度が均一となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、前記EL発光層26は20〜50μmの厚みを有するので、高い発光強度が得られる。ちなみに、20μmを下まわるとEL発光体26Lに印加される電界強度が高くなる反面、発光に寄与するEL発光体26Lが減少し、50μmを上まわると発光に寄与するEL発光体26Lが増加する反面、EL発光体26Lに印加される電界強度が低くなり、いずれにしても発光強度が低下することになる。
【0041】
また、本実施形態では、EL発光層26と電極部20との間にEL発光層26からの光を反射する光反射層28を備えるので、EL発光層26からの光が光反射層28によってそのEL発光層26側へ反射されることとなり、発光効率が高くなり、一層高い発光強度が得られる。
【0042】
さらに、本実施形態では、光反射層28は、強誘電体粉末を樹脂結合剤により結合することにより構成されることから、その強誘電体粉末は略白色を呈し光反射に寄与するので、一層高い発光強度が得られると同時に、強誘電体粉末は高い誘電率を備えていることから、光反射層28の誘電率が高くなるので、光反射層28がEL発光層26と電極部20との間に介在しても、EL発光体26Lに印加される電界強度をそれほど低下させることがない。
【0043】
また、本案施形態では、光反射層28は、30〜100の誘電率、さらに好適には60〜100の誘電率を有し、光反射層28の誘電率が30以上、さらに好適には60以上であるので、光反射層28がEL発光層26と電極部20との間に介在しても、EL発光体26Lに印加される電界強度をそれほど低下させることがない。
【0044】
さらに、本実施形態では、交流電界形成体11は、その形成状態において106Ω/□以下の表面抵抗値を有し、且つ光透過性を有するものであることから、第1電極16および第2電極18間の閉回路33の一部を構成することができるので、EL発光層26を局部的に発光させることができる。
【0045】
5.第1の実施形態の変形例(1)
第1実施形態では、防水層30を電極部20と光反射層28の間に配置したが、図4に示すように、防水層30を光反射層28とEL発光層26との間に配置してもよい。なお、同図において、前記第1実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第1電極16および第2電極18の双方に交流電界形成体11や水等が付着するのを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で交流電界形成体11の電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0047】
6.第1の実施形態の変形例(2)
また、図5に示すように、光反射層28を設けない構造とすることができる。同図では、防水層30が電極部20とEL発光層26の間に設けられている。なお、前述した実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第1電極16および第2電極18の双方に交流電界形成体11や水等が付着するのを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で交流電界形成体11の電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0049】
II.第2の実施形態
1.全体構成
第2の実施形態に係るEL発光装置1を、図6を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のEL発光装置1では、基材シート14上に第2電極18のみが形成され、防水層30と光反射層28の間に第1電極16が配置されている。そして、防水層30は第1電極16と第2電極18の間に設けられている。
すなわち、本実施形態では、基材シート14、第2電極18、防水層30、第1電極16、光反射層28およびEL発光層26がこの順に積層された構造となっている。
【0050】
2.作用
本実施形態の防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第2電極18に交流電界形成体11や水等が付着することを防止する。
【0051】
3.効果
EL発光層26のうちの交流電界形成体11の直下部分に交流電界が形成され、その部分だけが局部的に発光する。このことは、所望の発光パターンと同じパターンで交流電界形成体11を付着させれば、所望の発光パターンを得ることができることを意味する。よって、所望の発光パターンをユーザ側で簡単に作成できるEL発光装置1が得られる。
【0052】
また、本実施形態によれば、防水層30によって水等の浸入が阻止されるので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することを防止できる。また、第2電極18の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0053】
4.第2の実施形態の変形例(1)
本実施形態では、基材シート14、第2電極18、防水層30、第1電極16、光反射層28およびEL発光層26がこの順に積層されているが、図7に示すように、基材シート14、第2電極18、光反射層28、防水層30、第1電極16およびEL発光層26がこの順に積層された構造であってもよい。なお、前述した実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第2電極18に交流電界形成体11や水等が付着することを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0055】
5.第2の実施形態の変形例(2)
また、図8に示すように、光反射層28を設けない構造とすることができる。同図では、防水層30が第2電極18と第1電極16の間に設けられている。なお、前述した実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第2電極18に交流電界形成体11や水等が付着することを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0057】
III.第3の実施形態
1.全体構成
本実施形態は、図9に示すように、EL発光層26に水や湿気等の浸透防止機能を持たせたものである。すなわち、EL発光層26は、例えば蛍光体あるいは燐光体粒子である有機あるいは無機のEL発光体26Lと、そのEL発光体26Lを分散状態で固定する透明な樹脂結合剤26Pとから構成されるが、その樹脂結合剤26Pとして防水性、防湿性のある合成樹脂を使用したものである。例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコンゴム等のシリコン系樹脂、その他エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニール共重合体その他のシール性の高い樹脂が使用される。これらの樹脂は、例えばUV硬化、IR硬化、二液硬化、加熱硬化等の方法によって硬化される。
【0058】
また、本実施形態では、EL発光層26の上にトップコート層40が設けられている。このトップコート層40を設ける主たる目的は、EL発光層26の表面を平滑にするためのものである。したがって、EL発光層26の表面がそれ自体で平滑であれば、設ける必要はない。
【0059】
このトップコート層40としては、例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴムなどのフッ素系合成樹脂、シリコンゴムなどのシリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂等、ウレタン系の樹脂が使用される。このトップコート層40を設ける主たる目的は上述のようにEL発光層26の表面を平滑にし、筆等で描いた交流電界形成体11を消去しやすくするためであるので、その目的を達成できる程度の厚さに形成すればよい。一方で、トップコート層40は薄ければ薄いほど好適である。厚くすればする程発光強度が低下してしまうからである。
実用的には、実効値で1μm〜2μm程度にすることが好ましい。ここに「実効値」とはEL発光層26の最頂部に付着したトップコート層40の厚さ寸法である。この実効値で1μm〜2μm程度とするには、塗布値で5〜8μm程度の厚さとすれば足りる。ここに「塗布値」とは凹凸がない状態で塗布した場合の厚さである。
【0060】
2.効果
EL発光層26が水等の浸入を阻止するので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0061】
IV.第4の実施形態
1.全体構成
本実施形態は、図10に示すように、光反射層28に水や湿気等の浸透防止機能を持たせたものである。すなわち、光反射層28を構成する樹脂として防水性、防湿性のある合成樹脂を使用したものである。例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコンゴム等のシリコン系樹脂、その他エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニール共重合体その他のシール性の高い樹脂が使用される。これらの樹脂は、例えばUV硬化、IR硬化、二液硬化、加熱硬化等の方法によって硬化される。
【0062】
2.効果
光反射層28が水等の浸入を阻止するので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することを防止できる。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0063】
3.第4の実施形態の変形
第4の実施形態では、第1電極16および第2電極18とEL発光層26の間に浸透防止機能を持つ光反射層28を設けたが、浸透防止機能を持つ光反射層28を挟んで第2電極18と第1電極16を設けるようにしてもよい。
【0064】
V.第5の実施形態
1.全体構成
本実施形態は、図11に示すように、浸透防止機能を持つ基材シート14の裏面に第1電極16および第2電極18を設けたものである。すなわち、基材シート14としては、例えばポリエチレンテレフタレートによって構成したものが使用される。
【0065】
2.効果
基材シート14が表側からの水等の浸入を阻止するので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
なお、この構造は、EL発光装置1がケース体などに組み込まれる場合に使用される。このようにケース体に組み込む場合には裏面側が露出しないようにシールされるのが一般的であるので、裏側からの水等の付着は考慮しなくてよい。必要ならば、露出する電極を浸透防止機能を持つ合成樹脂でコーティングするか、その電極をアルマイト処理すればよい。
【0066】
3.第5の実施形態の変形
第5の実施形態では、基材シート14の裏面に第1電極16および第2電極18を設けたが、基材シート14を挟んで第2電極18と第1電極16を設けるようにしてもよい。
【0067】
VI.本発明の範囲
(1)前述した実施形態では、第1電極16および第2電極18を櫛形に形成している。しかし、本発明では、第1電極16と第2電極18を種々の形状に形成してもよい。
例えば、図11に示すように、第1電極16と第2電極18を、矩形状の枠部16w、18wと、これらの枠部16w、18w内に複数配された平行部16h、18hとを備えて、簀子(すのこ)状に形成してもよい。平行部16h、18hは、互いに平行であるとともに、互いに等間隔に配されている。
このように構成された第1電極16と第2電極18とは、同図に示すように、平行部16h、18hが互いに直交する格好で重ねられるのが望ましい。勿論、第1電極16と第2電極18とは、互いに電気的に絶縁される。また、図示しないが、本発明では、第1電極16と第2電極18をそれぞれ格子状に形成してもよいことはもちろんである。
【0068】
(2)また、実施形態のEL発光装置1では電極部20とEL発光層26との間に光反射層28を設けていたが、それは光反射により発光効率を高めることを目的としたものであるから、必ずしも設けなくてもよい。
【0069】
(3)また、前述の実施例の第1電極16および第2電極18は導電性ペーストが塗着されたものから構成されていたが、カーボン粒子が樹脂などで結合されることにより構成されたもの、ITO膜などの金属蒸着膜からなるものであってもよい。第1電極16および第2電極18が、ITO膜のような透明導電層から構成される場合には、基材シート14を透明樹脂から構成することにより、両面発光が可能となる。
【0070】
(4)さらに、前述の実施形態のEL発光装置1において、電気的あるいは機械的保護するための保護シートなどが外部に付加されてもよい。
【0071】
(5)また、前述の実施形態において、EL発光装置1は矩形の板状であってその端縁が直線であったが、そのEL発光装置1は円形あるいは楕円であってその端縁が曲線であってもよい。
【0072】
(6)さらに、第1および第2の実施形態のEL発光装置1では発光層26が露出した構造となっているが、この発光層26の上に第3の実施形態と同様のトップコート層40を設けてもよい。
【0073】
(7)本発明のEL発光装置1は、例えば、装飾、看板、インテリア、玩具などに用いることができる。
【0074】
(8)また、防水層を特別に設けたり、または浸透防止機能を有する合成樹脂でEL発光層、反射層を構成する代わりに、電極にアルミニウムを使用し、それにアルミナ処理を施してもよい。このようにすれば、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、電極の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0075】
【発明の効果】
請求項1〜5に記載の発明によれば、第1電極および第2電極の間に交流電源電圧を印加すると、EL発光層のうちの交流電界形成体の直下部分が局部的に発光する。このため、EL発光装置の面状の発光領域において、所望の発光パターンをユーザ側で容易に作成できる。
【0076】
また、請求項1〜5記載の発明によれば、少なくとも一方の電極に交流電界形成体や水等が付着することが防止されるので、第1電極および第2電極の間で電気分解が発生することが防止される。また、少なくとも一方の電極の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0077】
さらに、請求項1〜5記載の発明によれば、少なくとも一方の電極に表側から浸入する交流電界形成体や水等が付着することが防止されるので、第1電極と第2電極の短絡が防げることから安全なEL発光装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るEL発光装置を、層毎に一部を切り欠いて示す平面図である。
【図2】図1に示したEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示されたEL発光装置の発光原理を説明する電気的な等価回路を示す図である。
【図4】図2に示されたEL発光装置の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】図2に示されたEL発光装置の他の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図7】図6に示されたEL発光装置の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図8】図6に示されたEL発光装置の他の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図12】本発明のEL発光装置の第1電極と第2電極の変形例を示す説明図である。
1 EL発光装置
11 交流電界形成体
16 第1電極
18 第2電極
20 電極層
26a 一面
26b 他面
28 光反射層
30 防水層
33 閉回路(交流回路)
A 発光領域
K 境界領域
【発明の属する技術分野】
本発明は、EL発光層を備えるEL発光装置に関し、特に各種のインクが塗布されたり、各種の筆記具で描かれることにより、装飾、看板、インテリア、玩具等として好適な、ユーザが任意に発光パターンを形成することができるEL発光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)材料からなるEL発光層を備える発光装置として、例えば、基材シート、電極部、絶縁体層(反射層)、EL発光層、トップコート層(エポキシ系の保護フィルム)をこの順で積層した構造を有するEL発光装置が知られている(例えば、特許文献1)。
このEL発光装置では、電極部における第1電極と第2電極の間に交流電源電圧を印加するとともに、トップコート層上に任意形状の透明電極を成膜することで、好みに応じた発光パターンを形成するようにされている。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−153582号の段落0021
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
EL発光装置では、水や湿気(水等)が浸透して電極部に達すると、その電極部で電気分解が発生したり、電極の酸化に起因する断線(破損)が発生するおそれがある。また、第1電極と第2電極の間が水等を介して直接的に接続されるので、安全性の点でも問題がある。
この点、引用文献1記載のEL発光装置では、トップコート層が防水層としての機能をある程度は果たしている。しかし、トップコート層は露出しており、しかも層厚も小さいため、摺擦等によりトップコート層の一部が劣化しやすい。その場合、前記問題点が顕在化する。
これを解消するためには、トップコート層の層厚を大きくすることが考えられるが、層厚を大きくすると誘電率が小さくなるため、発光強度が低減してしまうという新たな問題が生じる。
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、防水・防湿効果および安全性に優れ、しかも発光強度の低下を可及的に抑止できるEL発光装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有し面状の発光領域を構成するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有し面状の発光領域を構成するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極の一方と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部と、前記EL発光層の一面側に配置された反射層とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記反射層は浸透防止機能を有し前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方と前記EL発光層との間に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部と、前記EL発光層の一面側に配置された基材シートとを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記基材シートは浸透防止機能を有し前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方と前記EL発光層との間に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明のEL発光装置は、EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記EL発光層が浸透防止機能を有していることを特徴とする。
【0010】
なお、本発明の「交流電界形成体」としては、周知のインク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具、導電性または誘電性を有するシート材などを用いることができる。 このうちインクとしては、その塗布状態において106Ω/□ 以下の表面抵抗値を有し、且つ光透過性を有するものであり、酸化インジウム、酸化錫、アンチモン、酸化亜鉛などの導体材料のうち少なくとも1種類以上の粉体を溶剤中に含むものが望ましい。さらに、インクとして、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylene Dioxi Thiophene)などの導電性ポリマーあるいはそれと前記導体材料の粉体との混合体を用いても良い。このような場合には、拭き取りなどによる除去までは長期間発光させることができる。
また、前述したインク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具は、有機あるいは無機の着色顔料を含むものでもよい。
なお、「交流電界形成体」は、誘電率の高い水や溶剤から構成されてもよい。この場合には、ドライヤで乾燥させたり、拭き取ることにより容易に除去できる。
以上のように、本明細書に記した「交流電界形成体」とは、所謂誘電体でも良く、所謂導体でもよい。つまり、本明細書に記した「交流電界形成体」とは、EL発光層の他面側に付着すると、EL発光層内に電界を形成するもの全てを示している。
【0011】
前記請求項1〜請求項5記載の発明によれば、第1電極および第2電極の間に交流電源電圧を印加した状態でEL発光層の他面側に交流電界形成体を形成すると、あるいは、EL発光層の他面側に交流電界形成体を形成した状態で第1電極および第2電極の間に交流電源電圧を印加すると、EL発光層内に交流電界が形成され、その交流電界形成体の直下部分だけが局部的に発光する。このため、所望の発光パターンをユーザが容易に作成できることになる。
【0012】
また、請求項1記載の発明によれば、第1電極および第2電極と前記EL発光層の間には合成樹脂から構成される防水層が設けられているので、その防水層によって水等の浸透が防止され、第1の電極および第2の電極に水等が付着することが防止される。このため、第1電極と第2電極の間で電気分解が発生することを防止できるとともに、電極の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0013】
さらに、請求項2記載の発明によれば、第1電極および第2電極の一方と前記EL発光層の間には合成樹脂から構成される防水層が設けられているので、その防水層によって水等の浸透が防止され、一方の電極に水等が付着することが防止される。このため、第1電極および第2電極の間で電気分解が発生することを防止できるとともに、一方の電極の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0014】
また、請求項3または4記載の発明によれば、浸透防止機能を有する合成樹脂部分によって請求項1または2記載の発明と同様な作用・効果を奏する。
【0015】
さらに、請求項5記載の本発明によれば、EL発光層が浸透防止機能を有するので、水等の浸透が防止され、第1の電極および第2の電極に水等が付着することが防止される。このため、第1電極および第2電極の間で電気分解が発生することを防止できるとともに、電極の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
I.第1の実施形態
1.全体構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る薄板状のEL発光装置1の表面側の一部を層毎に切り欠いて示す平面図である。図2はEL発光装置1の要部の断面図すなわち図1に示されたEL発光装置1の断面の一部を拡大して示す図である。
このEL発光装置1は、図1に示すように、全体として矩形をなし、その上面(表面)の略全体に矩形の発光領域Aを備えている。このEL発光装置1は、図2に示すように、基材シート14、電極部20、防水層30、光反射層28およびEL(Electroluminescence:エレクトロルミネッセンス)発光層26がこの順で積層された構造を持つ。
そして、このEL発光装置1は、例えばユーザが手書きや印刷などにより交流電界形成体11をEL発光層26の表面に付着させ、電極部に交流電源電圧を印加すると、発光領域Aは交流電界形成体11の付着パターンに対応した発光パターン12で局部的に発光表示する。
【0017】
2.各部の構成
(1)基材シート14
基材シート14はEL発光層26の後述する一面26a側に配置されている。この基材シート14は透明あるいは不透明の合成樹脂またはガラスからなる。例えば、合成樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂が用いられる。
【0018】
(2)電極部20
電極部20はEL発光層26の一面26a側に配置されている。そして、この電極部20は第1電極16および第2電極18を備えている。第1電極16と第2電極18は、互いに接近し境界領域Kを隔てて電気的に絶縁されている。この第1電極16および第2電極18は図示例では櫛形に形成されている。そして、発光領域Aにおいて単位面積当たりで境界領域Kが略等しくなるように、第1電極16および第2電極18が形成されている。この第1電極16および第2電極18は可撓性を有している。
【0019】
以上の第1電極16と第2電極18は、EL発光装置1の一方の長辺および他方の長辺に沿ってそれぞれ位置するバス電極16Bおよび18Bと、そのバス電極16B、18Bから互い違いとなるように相手側へ向かって等間隔で突き出す櫛電極16K、18Kとを備えている。
【0020】
バス電極16B、18Bのうちの表面に露出した端部が端子として機能する。第1電極16(櫛電極16K)および第2電極18(櫛電極18K)の間隔、すなわち境界領域Kの幅寸法Wkは、例えば0.1〜2.0mm程度、好適には0.3〜1.0mm程度である。第1電極16(櫛電極16K)および第2電極18(櫛電極18K)の幅寸法Weは、例えば0.1〜5.0mm程度、好適には0.3〜3.0mm程度である。
【0021】
なお、第1電極16および第2電極18は、例えば、銀粉を含むペースト状の銀ペースト、銅粉を含むペースト状の銅ペースト、カーボン等の導電性ペーストをスクリーン印刷により所定のパターンで基材シート14に塗着した後熱乾燥処理することにより固着される。なお、第1電極16および第2電極18は、銅、アルミニウム等の金属箔あるいは金属蒸着膜をエッチングすることにより形成されたものであってもよい。
【0022】
(3)防水層30
防水層30は第1電極16および第2電極18と光反射層28の間に配置されている。
【0023】
この防水層30は合成樹脂、例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコンゴム等のシリコン系樹脂、その他エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニール共重合体その他のシール性の高い樹脂によって形成されている。これらの樹脂は、例えばUV硬化、IR硬化、二液硬化、加熱硬化等の方法によって硬化される。
【0024】
この防水層30は、交流電界形成体11が液体の場合に、その交流電界形成体11が電極部20まで浸入すること、すなわち、交流電界形成体11が第1電極16および第2電極18の双方に付着することを防止する。
【0025】
(4)光反射層28
光反射層28は防水層30とEL発光層26の間に配置されている。そして、この光反射層28はEL発光層26の一面26aに密着する状態で固着されている。
【0026】
この光反射層28は、チタン酸バリウム、ロッシェル塩のような強誘電体粉末である無機粉末を例えばアクリル樹脂等の結合剤として機能する樹脂中に分散することにより構成される。この強誘電体粉末のような無機粉末は白色を呈する顔料であることから、光反射層28は白色となり、光反射機能を有効に発揮する。
【0027】
なお、この光反射層28は、10〜30μm程度の厚みと200〜300V程度の耐電圧と、30〜100程度の誘電率さらに好適には60〜100程度の誘電率とを有している。
【0028】
(5)EL発光層26
EL発光層26は、例えば蛍光体あるいは燐光体粒子である有機あるいは無機のEL発光体26Lと、そのEL発光体26Lを分散状態で固定する透明な樹脂結合剤26Pとから構成されている。樹脂結合材26Pとしてはポリエステル樹脂等の誘電率の高い樹脂が好適に選択される。このEL発光層26は、30〜40μm程度の厚みと、50〜150V程度の耐電圧と、10〜30程度の誘電率とを有している。好適には、EL発光体26Lの径の1.5倍以上の厚みとされる。この場合には、EL発光層26の表面が滑らかとされ、例えば表面粗さが30μm以下とされる。
【0029】
以上のように構成されたEL発光層26は、第1電極16と第2電極18の間に交流電源電圧が印加されることにより、所定の発光色例えば青緑色で発光する。
【0030】
(6)交流電界形成体11
交流電界形成体11はEL発光層26の他面26a側に付着される。
【0031】
この交流電界形成体11としては、周知のインク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具、導電性を有するシート材(以下導体シートと称す。)等を用いることができる。インク、鉛筆、クレヨンやパステルなどの棒状の絵具としては有機あるいは無機の着色顔料を含むものを使用してもよい。
【0032】
前記インクとしては、例えば、その塗布状態において106Ω/□以下の表面抵抗値を有し、且つ光透過性を有するものであり、酸化インジウム、酸化錫、アンチモン、酸化亜鉛などの導体材料のうちの少なくとも1種類以上の粉体を溶剤中に含むものが好ましい。また、前記インクとして、ポリエチレンジオキシチオフェン(Polyethylene Dioxi Thiophene)等の導電性ポリマーあるいはそれと前記導体材料の粉体との混合体を用いても良い。この場合、拭き取り等によって除去するまで長期間発光させることができる。また、交流電界形成体11は誘電率の高い水や溶剤から構成されてもよい。この場合には、ドライヤで乾燥させたり、拭き取ることにより、交流電界形成体11を容易に除去できる。
【0033】
3.動作・作用
EL発光層26の他面26b上に交流電界形成体11を所望のパターンで付着させる。この交流電界形成体11の付着は、筆(鉛筆、パステル、クレヨン)によって描いたり、インクジェットプリンタによる印刷やスクリーン印刷をしたり、導体シートを貼ったりすることによって行われる。この状態で、バス電極16B,18Bのうち表面に露出した端部に交流電源32からの交流電源電圧を印加する。なお、予め前記端部に交流電源電圧を印加しておいた後に交流電界形成体11を付着させてもよい。
【0034】
すると、交流電界形成体11の付着によってEL発光層26内に交流電界が形成され、EL発光層26のうちの交流電界形成体11の直下部分だけが局部的に発光する。つまり、EL発光層26および光反射層28は誘電率が高いことから、交流電界形成体11の付着によって、第1電極16、光反射層28,EL発光層26,交流電界形成体11,EL発光層26、光反射層28,第2電極18等からなる図3に示す閉回路33(交流回路)と等価な回路が形成され、EL発光層26内に交流電界が形成される。そして、交流電界形成体11の付着部分の直下が発光する。一方、交流電界形成体11が付着していない部分の直下は、EL発光層26内の交流電界の強さが発光に至るほど十分ではなく、発光しない。このように交流電界形成体11の直下部分のみが選択的に発光するように前記光反射層28,EL発光層26などの厚み寸法や誘電率が設定される。
【0035】
なお、交流電界形成体11が液状のものであると、EL発光層26の他面26bに交流電界形成体11を付着した際に、傷や、不可避的に存在するピンホール31等を通って交流電界形成体11がEL発光層26と光反射層28とに浸入する場合がある。しかし、防水層30は交流電界形成体30のそれ以上の浸入を阻止する。また、防水層30は空気中の水分または湿気の浸入も阻止する。
【0036】
4.効果
本実施形態によれば、EL発光層26のうちの交流電界形成体11の直下部分に交流電界が形成され、その部分だけが局部的に発光する。このことは、所望の発光パターンと同じパターンで交流電界形成体11を付着させれば、所望の発光パターンを得ることができることを意味する。よって、所望の発光パターンをユーザ側で簡単に作成できるEL発光装置1が得られる。
【0037】
また、本実施形態によれば、防水層30によって水等の浸入が阻止されるので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することを防止できる。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0038】
さらに、本実施形態では、前記電極部20は、第1電極16と第2電極18との間の境界領域Kが発光領域Aにおいて単位面積当たり略等しくなるように配置されているので、前記面状の発光領域A内のいずれの場所においても、交流電界形成体11の直下に位置するEL発光層26の発光に発光むらがなく、発光強度が均一となる。
【0039】
また、第1電極16と第2電極18との間の境界領域Kの幅寸法Wkは、例えば0.1〜2.0mm程度、好適には0.3〜1.0mm程度である。第1電極16(櫛電極16K)および第2電極18(櫛電極18K)の幅寸法Weは、例えば0.1〜5.0mm程度、好適には0.3〜3.0mm程度であるので、交流電界形成体11の直下に位置するEL発光層26の発光に発光むらがなく、発光強度が均一となる。
【0040】
さらに、本実施形態では、前記EL発光層26は20〜50μmの厚みを有するので、高い発光強度が得られる。ちなみに、20μmを下まわるとEL発光体26Lに印加される電界強度が高くなる反面、発光に寄与するEL発光体26Lが減少し、50μmを上まわると発光に寄与するEL発光体26Lが増加する反面、EL発光体26Lに印加される電界強度が低くなり、いずれにしても発光強度が低下することになる。
【0041】
また、本実施形態では、EL発光層26と電極部20との間にEL発光層26からの光を反射する光反射層28を備えるので、EL発光層26からの光が光反射層28によってそのEL発光層26側へ反射されることとなり、発光効率が高くなり、一層高い発光強度が得られる。
【0042】
さらに、本実施形態では、光反射層28は、強誘電体粉末を樹脂結合剤により結合することにより構成されることから、その強誘電体粉末は略白色を呈し光反射に寄与するので、一層高い発光強度が得られると同時に、強誘電体粉末は高い誘電率を備えていることから、光反射層28の誘電率が高くなるので、光反射層28がEL発光層26と電極部20との間に介在しても、EL発光体26Lに印加される電界強度をそれほど低下させることがない。
【0043】
また、本案施形態では、光反射層28は、30〜100の誘電率、さらに好適には60〜100の誘電率を有し、光反射層28の誘電率が30以上、さらに好適には60以上であるので、光反射層28がEL発光層26と電極部20との間に介在しても、EL発光体26Lに印加される電界強度をそれほど低下させることがない。
【0044】
さらに、本実施形態では、交流電界形成体11は、その形成状態において106Ω/□以下の表面抵抗値を有し、且つ光透過性を有するものであることから、第1電極16および第2電極18間の閉回路33の一部を構成することができるので、EL発光層26を局部的に発光させることができる。
【0045】
5.第1の実施形態の変形例(1)
第1実施形態では、防水層30を電極部20と光反射層28の間に配置したが、図4に示すように、防水層30を光反射層28とEL発光層26との間に配置してもよい。なお、同図において、前記第1実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第1電極16および第2電極18の双方に交流電界形成体11や水等が付着するのを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で交流電界形成体11の電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0047】
6.第1の実施形態の変形例(2)
また、図5に示すように、光反射層28を設けない構造とすることができる。同図では、防水層30が電極部20とEL発光層26の間に設けられている。なお、前述した実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0048】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第1電極16および第2電極18の双方に交流電界形成体11や水等が付着するのを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で交流電界形成体11の電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0049】
II.第2の実施形態
1.全体構成
第2の実施形態に係るEL発光装置1を、図6を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のEL発光装置1では、基材シート14上に第2電極18のみが形成され、防水層30と光反射層28の間に第1電極16が配置されている。そして、防水層30は第1電極16と第2電極18の間に設けられている。
すなわち、本実施形態では、基材シート14、第2電極18、防水層30、第1電極16、光反射層28およびEL発光層26がこの順に積層された構造となっている。
【0050】
2.作用
本実施形態の防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第2電極18に交流電界形成体11や水等が付着することを防止する。
【0051】
3.効果
EL発光層26のうちの交流電界形成体11の直下部分に交流電界が形成され、その部分だけが局部的に発光する。このことは、所望の発光パターンと同じパターンで交流電界形成体11を付着させれば、所望の発光パターンを得ることができることを意味する。よって、所望の発光パターンをユーザ側で簡単に作成できるEL発光装置1が得られる。
【0052】
また、本実施形態によれば、防水層30によって水等の浸入が阻止されるので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することを防止できる。また、第2電極18の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0053】
4.第2の実施形態の変形例(1)
本実施形態では、基材シート14、第2電極18、防水層30、第1電極16、光反射層28およびEL発光層26がこの順に積層されているが、図7に示すように、基材シート14、第2電極18、光反射層28、防水層30、第1電極16およびEL発光層26がこの順に積層された構造であってもよい。なお、前述した実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第2電極18に交流電界形成体11や水等が付着することを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0055】
5.第2の実施形態の変形例(2)
また、図8に示すように、光反射層28を設けない構造とすることができる。同図では、防水層30が第2電極18と第1電極16の間に設けられている。なお、前述した実施形態と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この場合も、防水層30は交流電界形成体11や水等の浸入を阻止し、第2電極18に交流電界形成体11や水等が付着することを防止する。その結果、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0057】
III.第3の実施形態
1.全体構成
本実施形態は、図9に示すように、EL発光層26に水や湿気等の浸透防止機能を持たせたものである。すなわち、EL発光層26は、例えば蛍光体あるいは燐光体粒子である有機あるいは無機のEL発光体26Lと、そのEL発光体26Lを分散状態で固定する透明な樹脂結合剤26Pとから構成されるが、その樹脂結合剤26Pとして防水性、防湿性のある合成樹脂を使用したものである。例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコンゴム等のシリコン系樹脂、その他エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニール共重合体その他のシール性の高い樹脂が使用される。これらの樹脂は、例えばUV硬化、IR硬化、二液硬化、加熱硬化等の方法によって硬化される。
【0058】
また、本実施形態では、EL発光層26の上にトップコート層40が設けられている。このトップコート層40を設ける主たる目的は、EL発光層26の表面を平滑にするためのものである。したがって、EL発光層26の表面がそれ自体で平滑であれば、設ける必要はない。
【0059】
このトップコート層40としては、例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴムなどのフッ素系合成樹脂、シリコンゴムなどのシリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂等、ウレタン系の樹脂が使用される。このトップコート層40を設ける主たる目的は上述のようにEL発光層26の表面を平滑にし、筆等で描いた交流電界形成体11を消去しやすくするためであるので、その目的を達成できる程度の厚さに形成すればよい。一方で、トップコート層40は薄ければ薄いほど好適である。厚くすればする程発光強度が低下してしまうからである。
実用的には、実効値で1μm〜2μm程度にすることが好ましい。ここに「実効値」とはEL発光層26の最頂部に付着したトップコート層40の厚さ寸法である。この実効値で1μm〜2μm程度とするには、塗布値で5〜8μm程度の厚さとすれば足りる。ここに「塗布値」とは凹凸がない状態で塗布した場合の厚さである。
【0060】
2.効果
EL発光層26が水等の浸入を阻止するので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0061】
IV.第4の実施形態
1.全体構成
本実施形態は、図10に示すように、光反射層28に水や湿気等の浸透防止機能を持たせたものである。すなわち、光反射層28を構成する樹脂として防水性、防湿性のある合成樹脂を使用したものである。例えば4フッ化エチレン樹脂、フッ素ゴム等のフッ素系樹脂、シリコンゴム等のシリコン系樹脂、その他エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニール共重合体その他のシール性の高い樹脂が使用される。これらの樹脂は、例えばUV硬化、IR硬化、二液硬化、加熱硬化等の方法によって硬化される。
【0062】
2.効果
光反射層28が水等の浸入を阻止するので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することを防止できる。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)を防止できる。
【0063】
3.第4の実施形態の変形
第4の実施形態では、第1電極16および第2電極18とEL発光層26の間に浸透防止機能を持つ光反射層28を設けたが、浸透防止機能を持つ光反射層28を挟んで第2電極18と第1電極16を設けるようにしてもよい。
【0064】
V.第5の実施形態
1.全体構成
本実施形態は、図11に示すように、浸透防止機能を持つ基材シート14の裏面に第1電極16および第2電極18を設けたものである。すなわち、基材シート14としては、例えばポリエチレンテレフタレートによって構成したものが使用される。
【0065】
2.効果
基材シート14が表側からの水等の浸入を阻止するので、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、第1電極16および第2電極18の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
なお、この構造は、EL発光装置1がケース体などに組み込まれる場合に使用される。このようにケース体に組み込む場合には裏面側が露出しないようにシールされるのが一般的であるので、裏側からの水等の付着は考慮しなくてよい。必要ならば、露出する電極を浸透防止機能を持つ合成樹脂でコーティングするか、その電極をアルマイト処理すればよい。
【0066】
3.第5の実施形態の変形
第5の実施形態では、基材シート14の裏面に第1電極16および第2電極18を設けたが、基材シート14を挟んで第2電極18と第1電極16を設けるようにしてもよい。
【0067】
VI.本発明の範囲
(1)前述した実施形態では、第1電極16および第2電極18を櫛形に形成している。しかし、本発明では、第1電極16と第2電極18を種々の形状に形成してもよい。
例えば、図11に示すように、第1電極16と第2電極18を、矩形状の枠部16w、18wと、これらの枠部16w、18w内に複数配された平行部16h、18hとを備えて、簀子(すのこ)状に形成してもよい。平行部16h、18hは、互いに平行であるとともに、互いに等間隔に配されている。
このように構成された第1電極16と第2電極18とは、同図に示すように、平行部16h、18hが互いに直交する格好で重ねられるのが望ましい。勿論、第1電極16と第2電極18とは、互いに電気的に絶縁される。また、図示しないが、本発明では、第1電極16と第2電極18をそれぞれ格子状に形成してもよいことはもちろんである。
【0068】
(2)また、実施形態のEL発光装置1では電極部20とEL発光層26との間に光反射層28を設けていたが、それは光反射により発光効率を高めることを目的としたものであるから、必ずしも設けなくてもよい。
【0069】
(3)また、前述の実施例の第1電極16および第2電極18は導電性ペーストが塗着されたものから構成されていたが、カーボン粒子が樹脂などで結合されることにより構成されたもの、ITO膜などの金属蒸着膜からなるものであってもよい。第1電極16および第2電極18が、ITO膜のような透明導電層から構成される場合には、基材シート14を透明樹脂から構成することにより、両面発光が可能となる。
【0070】
(4)さらに、前述の実施形態のEL発光装置1において、電気的あるいは機械的保護するための保護シートなどが外部に付加されてもよい。
【0071】
(5)また、前述の実施形態において、EL発光装置1は矩形の板状であってその端縁が直線であったが、そのEL発光装置1は円形あるいは楕円であってその端縁が曲線であってもよい。
【0072】
(6)さらに、第1および第2の実施形態のEL発光装置1では発光層26が露出した構造となっているが、この発光層26の上に第3の実施形態と同様のトップコート層40を設けてもよい。
【0073】
(7)本発明のEL発光装置1は、例えば、装飾、看板、インテリア、玩具などに用いることができる。
【0074】
(8)また、防水層を特別に設けたり、または浸透防止機能を有する合成樹脂でEL発光層、反射層を構成する代わりに、電極にアルミニウムを使用し、それにアルミナ処理を施してもよい。このようにすれば、第1電極16と第2電極18の間で電気分解が発生することが防止される。また、電極の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0075】
【発明の効果】
請求項1〜5に記載の発明によれば、第1電極および第2電極の間に交流電源電圧を印加すると、EL発光層のうちの交流電界形成体の直下部分が局部的に発光する。このため、EL発光装置の面状の発光領域において、所望の発光パターンをユーザ側で容易に作成できる。
【0076】
また、請求項1〜5記載の発明によれば、少なくとも一方の電極に交流電界形成体や水等が付着することが防止されるので、第1電極および第2電極の間で電気分解が発生することが防止される。また、少なくとも一方の電極の酸化に起因する断線(破損)が防止される。
【0077】
さらに、請求項1〜5記載の発明によれば、少なくとも一方の電極に表側から浸入する交流電界形成体や水等が付着することが防止されるので、第1電極と第2電極の短絡が防げることから安全なEL発光装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るEL発光装置を、層毎に一部を切り欠いて示す平面図である。
【図2】図1に示したEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示されたEL発光装置の発光原理を説明する電気的な等価回路を示す図である。
【図4】図2に示されたEL発光装置の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】図2に示されたEL発光装置の他の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図7】図6に示されたEL発光装置の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図8】図6に示されたEL発光装置の他の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るEL発光装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図12】本発明のEL発光装置の第1電極と第2電極の変形例を示す説明図である。
1 EL発光装置
11 交流電界形成体
16 第1電極
18 第2電極
20 電極層
26a 一面
26b 他面
28 光反射層
30 防水層
33 閉回路(交流回路)
A 発光領域
K 境界領域
Claims (5)
- EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とするEL発光装置。
- EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記第1電極および前記第2電極の一方と前記EL発光層の間には合成樹脂からなる防水層が配置されていることを特徴とするEL発光装置。
- EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部と、前記EL発光層の一面側に配置された反射層とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記反射層は浸透防止機能を有し前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方と前記EL発光層との間に配置されていることを特徴とするEL発光装置。
- EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部と、前記EL発光層の一面側に配置された基材シートとを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記基材シートは浸透防止機能を有し前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方と前記EL発光層との間に配置されていることを特徴とするEL発光装置。
- EL発光体を有するEL発光層と、前記EL発光層の一面側に配置され互いに接近し境界領域を隔てて電気的に絶縁された所定のパターンを持つ第1電極および第2電極を有する電極部とを備え、前記EL発光層の他面側には、前記第1電極と前記第2電極の間に印加される交流電源電圧によって前記EL発光層内に交流電界を形成する交流電界形成体が付着可能となっており、前記EL発光層が浸透防止機能を有していることを特徴とするEL発光装置。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060207 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20070731 |