JP2004296302A - 荷電粒子発生装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アノードにつながった第1の電極と、これに対向して設けられた第2の電極の形成する電界により、取り出された荷電粒子を偏向する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、荷電粒子を加速する荷電粒子加速器に設けられた荷電粒子発生装置に関するもので、特に荷電粒子加速器内部に設置されたものに係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、荷電粒子加速器として、偏向電磁石の発生する磁場が一定で、荷電粒子の加速と共に平衡軌道が周回軌道の外側に広がり加速を行うFFAG(Fixed Field Alternating Gradient)加速器が示されている(例えば、非特許文献1参照)。
これに対して、平衡軌道が変化せず一定の軌道で加速を行うベータトロン加速器が示されている(例えば、非特許文献2参照)。
また、従来のベータトロン加速器に用いられている電子銃の構造が示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
【非特許文献1】
“Development of a FFAG proton synchrotron”Proceedings of EPAC 2000,Vienna Austria 2000.P581〜P583,Fig1
【非特許文献2】
亀井、木原共著「加速器科学(パリティ物理学コース)」丸善株式会社 平成5年9月20日発行 4章ベータトロンP39〜P43Fig4.1
【非特許文献3】
熊谷編集「加速器(実験物理学講座281」共立出版株式会社 1975年12月25日発行 P555 図13.7
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
最近、前記非特許文献1に示されたFFAG加速器の原理を利用して、電子や陽子を大電流で加速させるという要求の増加につれ、KHzオーダの高周波の繰り返し加速を行うことが検討されている。
また、非特許文献2に示されたベータトロンについても、従来の50〜300Hzと比較的低周波の繰り返し加速から、同様にKHzオーダの高周波加速による大電流化の検討が行われている。
しかしながら前記のような荷電粒子加速器の高い繰り返しによる大電流化要求に対する、電子やイオン等の荷電粒子発生装置として、前記非特許文献3に示された従来の電子銃では対応することはできない。すなわち、
(1)従来は50〜60Hz、1〜10μsec程度の仕様であり、前記高周波の繰り返し仕様に対しては適用できない。
(2)電子銃を出た電子ビームが周回して戻ってくる時、電子銃に衝突する割合が多く、電子の入射効率が低い。これを解消するには周回毎のエネルギーゲインを上げることも考えられるがベータトロンの場合、加速コア電源のコストアップや加速コアの発熱の問題があり難しい。
(3)また電子銃を出たビーム特性が良くなく、発散ビームとなる。
等の問題点があった。
【0005】
この発明は前記のような課題を解決するためになされたもので、荷電粒子発生装置から出た荷電粒子を加速器に対して高い効率で入射させるとともに、高い収束性を有する荷電粒子発生装置を提供し、大電流加速を可能としようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
荷電粒子を周回軌道上で加速する荷電粒子加速器に設けられた荷電粒子発生装置において、荷電粒子発生装置は、アノードとカソードと第1および第2の電極とを備えており、アノードはカソードを取り囲んで設けられているとともに、荷電粒子の取り出しを行う取り出し窓を有するものであり、第1の電極はアノードの取り出し窓の一方の縁から取り出される荷電粒子の軌道方向に伸びて周回軌道と取り出される荷電粒子の軌道との間に設けられているとともに、アノードと電気的につながった構造を有するものであり、第2の電極は取り出される荷電粒子の軌道を挟むように第1の電極に対向して設けられており、第1の電極と第2の電極で形成される電界によって、取り出される荷電粒子が偏向されるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、図示省略した繰り返し加速型の荷電粒子加速器、例えばベータトロンやFFAG加速器の内部に設置された電子や陽子等の荷電粒子発生装置100の断面図であり、とくに荷電粒子取り出し窓部の断面を示した図である。図1において、カソード1には10KV〜200KVの負の電圧が印加されており、これを取り囲むように設けられたアノード3は接地されている。カソード1から出た荷電粒子は、グリッド2を経て、アノード3に設けられた荷電粒子の取り出しを行う取り出し窓3aに向けて加速される。グリッド2に印加する電界を変えることによって荷電粒子発生装置100から取り出される荷電粒子の強度が調整される。この時取り出される荷電粒子の軌道6を図1に模式的に示している。アノード3には、荷電粒子取り出し窓3aの一方の縁3bから、取り出される荷電粒子の軌道6に沿って伸びた第1の電極3cが設けられている。この実施の形態1による図1に示した第1の電極3cは、取り出し窓3aの中心部から約25mm伸延するとともに、取り出される荷電粒子の軌道6に沿って前記第1の電極3cの肉厚が薄くなる構造を有している。なおこの図1に示した例では、アノード3と第1の電極3cとが一体構造のものを示しているが必ずしも一体である必要はなく、電気的につながった構造であればよい。
【0008】
前記第1の電極3cに対向し取り出される荷電粒子の軌道6を挟むように第2の電極5が設けられている。この第2の電極5には5〜20KVの正の電圧が印加され、前記第1の電極3cと第2の電極5とで形成される電界によって、前記取り出される荷電粒子は図1に示すように軌道6が図の下側方向に曲げられている。繰り返し加速型の荷電粒子加速器では、前記荷電粒子発生装置100から入射直後の周回荷電粒子は、荷電粒子発生装置100と接近した軌道7を有している。
なお荷電粒子発生装置100は図1に示した取り出し窓3a以外の部分では円筒状をなすアノード3に取り囲まれてカソード1、グリッド2が設けられているか、あるいはそれぞれが薄肉の円環状のものであってもよい。
【0009】
前述したように、入射直後の荷電粒子の周回軌道7と、荷電粒子発生装置100とは接近していて、従来技術のように、電子銃を出た電子ビームが戻ってきた時電子銃に衝突する割合が多いと入射効率が下がる。これを改善しようとすると、ターンセパレーションを大きくする必要がある。ターンセパレーションとは、荷電粒子発生装置100に最も近い位置での入射ビームつまり取り出し荷電粒子軌道と周回ビームとの軌道間隔のことを言う。この実施の形態1のように、取り出し軌道6に沿って第1の電極3cを設け、対向して設けられた第2の電極5に正の電圧を印加すると、取り出された荷電粒子の軌道6は図1に示すよう曲げられる。
【0010】
図1に示す構造で第2の電極5を設置しないまたは第2の電極5に電圧を印加しない場合の取り出し軌道6と周回軌道7との関係は、後述する図3で詳しく示す。
周回軌道7が荷電粒子発生装置100に衝突しないようにするには取り出し軌道6と周回軌道7とのターンセパレーションは、従来の技術ではかなり大きい値が必要であり、それを実現するのは容易でない。
本実施の形態1によるターンセパレーションは、例えばビームサイズが半径2mm、第1の電極3cの肉厚が先端で1mmの場合、2mm×2+1mm=5mmであれば取り出された荷電粒子をロスすることなく、荷電粒子加速器に入射させることが可能である。また、ターンセパレーションが1mmより大きければ入射が可能となる。このようにターンセパレーションが小さいことは、特にベータトロンやFFAG加速器に用いられている誘導加速方式ではメリットが大きい。
なお、前記第1の電極3cの肉厚を1mmとしたが、0.5mm以下の薄構造であればさらに入射効率を上げられることは言うまでもない。
また、図1に示した荷電粒子発生装置100は、周回軌道の内側に設置する例つまり、加速器の中央部付近に設ける例を示したが、これに限らず周回軌道の外側に設けてもよい。
【0011】
実施の形態2.
実施の形態1では、グリッド2を設け電界を変えることで荷電粒子発生装置100から出る荷電粒子の強度を調整することを示した。しかし、第2の電極5に印加する電圧を調整して取り出す荷電粒子の強度を調整してもよい。その場合グリッド2が不要となり、荷電粒子発生装置100の構造および電源が単純化される。
【0012】
実施の形態3.
この発明の実施の形態1に示した荷電粒子発生装置100に印加する高圧電源200の構成の一例を図2に示す。
前述した図1のカソード1とアノード3との距離を出来るだけ狭くすることは、荷電粒子発生装置100の小型化に有効である。この距離は絶縁距離であり、印加電圧と雰囲気(真空)によって一義的に決まる。しかしながら印加する電圧をパルスとし、両電極1、3間に印加する時間を、荷電粒子加速器の入射タイミングに合わせた時間とすることによって、前記両電極1、3間の距離を狭くすることが可能である。加速器が例えば1KHz繰り返し、パルス幅10μsで入射の場合、荷電粒子発生装置100にも、1KHz、パルス幅10μsの高電圧を印加するシステムが望ましい。
従来、上記のような短いパルスの高電圧を発生させる為には、サイラトロンのような真空管を用いることが一般的であった。しかしメンテナンス、耐久性を配慮すると図2のようなシステムを採用することが望ましい。
【0013】
図2において、荷電粒子発生装置用電源200は、直流の高圧電源21が設けられており、例えば電子ビームを60KeVで取り出す際には、マイナス60KVの直流電圧を発生して半導体スイッチ24に出力する。この半導体スイッチ24はMOSFETなど数KHzの早い切り替えが可能なものであり、前記直流高圧電源21の発生する直流電圧をON、OFFした繰り返し数が前記数KHzのパルス電圧を、カソード1に印加する。グリッド22、ヒータ(フィラメント)電源23は負の高電圧に対し浮いている必要があり図3に示すような配線となる。
なお、前記繰り返し数は前述したように、加速器のビーム繰り返し数と同期させる。また、図2に示したグリッド電源22は、実施の形態2の場合には必要としない。
【0014】
次に、本発明の実施の形態1による荷電粒子発生装置100の軌道解析の2例を図3、図4に基づいて説明する。
図は電極形状をモデル化して電界分布を計算し、電子ビーム軌道解析を実施した例を示す。図ではアノード3の一部分のみが示されており、カソード1や第1の電極3c、第2の電極5が示されてないが、それらを考慮したモデルで電界計算およびビーム軌道解析を実施している。図3でアノード3の直径を20mmの場合31と、直径40mmの場合32を示している。
図示省略したカソード1には負の60KVの電圧が印加されており、電子ビームは60KeVのエネルギで出射される。荷電粒子発生装置100は図示省略された磁場発生装置の出力する50ガウスの磁場中に置かれており、出射された電子ビームは概円軌道を周回する。このビームシミュレーションは荷電粒子加速器で加速を行わないとした条件で計算をしており、電子ビームは周回後にも同じ位置に戻ってきている。
電子ビーム軌道33は第1の電極3cがない時の軌道を示し、電子ビーム軌道34は第1の電極3cがあり、第2の電極5に正の10KVが印加されている時の荷電粒子発生装置100からの出射されたビーム軌道であり、その軌道34で出射された電子ビームが周回して戻った軌道を7に示す。
なおこの時、第1の電極3cの長さは取り出し窓中央より25mmとしている。
【0015】
このように荷電粒子発生装置100から出た電子ビームは、第1の電極3cと第2の電極5の電界の影響で図の下側に曲げられて、その後は周回概円軌道となる。図3の条件では周回ビームは直径20mmのアノード31をかわすことができるが、直径40mmのアノード32はかわすことができない。従って上記条件では図1に示すアノード3の外径を20mm程度にしておく必要があることがわかる。
【0016】
一方、図4は第2の電極5に印加する電圧を正の20KVとした時の計算結果である。図4の条件では周回ビーム7は、直径20mmのアノード31および直径40mmのアノード32の双方の電極をかわすことができている。このように第2の電極5に印加する電圧を調整することで周回可能な電子ビームの割合、すなわちビーム電流を調整することが可能である。このことは、図1に示したグリッド2の有無にかかわらず可能であり、グリッド2の無しのときに効果が大である。ここで第2の電極5に印加する電圧を高く設定し過ぎると(本計算条件では30KV以上)、電極間に放電が発生したり、取り出しビームサイズが増大してしまう。上記条件では10KV程度が最も良いビーム条件を作ることができる。また、印加する電圧は実施の形態3で示したようなパルス高電圧とする方が望ましく、またアノード3とカソード1との距離はなるべく小さい方が望ましい。
【0017】
実施の形態4.
実施の形態4を図に基づいて説明する。
図5(a)に実施の形態4による荷電粒子発生装置100の断面図による構成を示す。
実施の形態1に示した図1とは、第2の電極の構造が相違して第2の電極5aとしている以外は同一である。図に示すように第2の電極5aの前記第1の電極3cに対向する側に凸部5bを設けることによって、取り出しビーム軌道6上の電界分布に収束作用をもたせることが可能となり、取り出しビームの広がりを抑えることができる。
すなわち、カソード1から発生する電子ビーム6はある幅を有しており、第2の電極5aの偏向作用で電子ビームを曲げると電子ビームが広がって(ビームサイズが大きくなって)、安定周回できない可能性があるが、前記図5(a)に示した第2の電極5aの形状とすることで電子ビームの広がりを抑えている。この構成の荷電粒子発生装置100のビームシミュレーション結果を図6に示す。縦軸、横軸はビーム座標を示し、単位はmである。ビームの広がりは全幅で最大8mm程度ある。この取り出しの後に荷電粒子加速器中の周回軌道を加速されるが、周回磁界に収束作用があり、ビームサイズの加速中の最大幅は10mm程度で安定加速が可能である。
なお、図5(b)に示すように、第2の電極5cは凸部5b、凹部5dを設けたものであっても同様に電界分布に収束作用をもたせることも可能である。また前記凹部5dのみを設けてもよい。
【0018】
なお、この実施の形態1〜4の荷電粒子発生装置100では荷電粒子として電子の場合で説明したが、電子に限定されるものでなく、陽子等の荷電粒子であってもよいことは言うまでもない。
【0019】
【発明の効果】
この発明は以上述べたような構成の荷電粒子発生装置であるので、以下のような効果がある。
すなわち、荷電粒子を周回軌道上で加速する荷電粒子加速器に設けられた荷電粒子発生装置において、荷電粒子発生装置は、アノードとカソードと第1および第2の電極とを備えており、アノードはカソードを取り囲んで設けられているとともに、荷電粒子の取り出しを行う取り出し窓を有するものであり、第1の電極はアノードの取り出し窓の一方の縁から取り出される荷電粒子の軌道方向に伸びて周回軌道と取り出される荷電粒子の軌道との間に設けられているとともに、アノードと電気的につながった構造を有するものであり、第2の電極は取り出される荷電粒子の軌道を挟むように第1の電極に対向して設けられており、第1の電極と第2の電極で形成される電界によって、取り出された荷電粒子が偏向されるものであるので、取り出された荷電粒子をロスすることなく加速器に入射させることが可能となり、大電流ビーム加速が可能となる。また、ターンセパレーションが小さいので、加速器装置が小型となるという特徴も有する。
さらには、第2の電極に印加する電圧を調整することにより、加速器中を周回可能なビーム電流を調整可能という優れた効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による荷電粒子発生装置を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態3による荷電粒子発生装置に印加する高電圧の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による荷電粒子発生装置の軌道解析の例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による荷電粒子発生装置の軌道解析の他の例を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態4による荷電粒子発生装置を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態4による荷電粒子発生装置の軌道解析の例を示す図である。
【符号の説明】
1 カソード、3,31,32 アノード、3a 取り出し窓、
3b 一方の縁、3c 第1の電極、5,5a,5c 第2の電極、
6,34,36 取り出し荷電粒子軌道、7,35 周回軌道、
21 直流高圧電源、24 半導体スイッチ、100 荷電粒子発生装置。
Claims (5)
- 荷電粒子を周回軌道上で加速する荷電粒子加速器に設けられた荷電粒子発生装置において、前記荷電粒子発生装置は、アノードとカソードと第1および第2の電極とを備えており、前記アノードは前記カソードを取り囲んで設けられているとともに、荷電粒子の取り出しを行う取り出し窓を有するものであり、前記第1の電極は前記アノードの前記取り出し窓の一方の縁から取り出される荷電粒子の軌道方向に伸びて前記周回軌道と前記取り出される荷電粒子の軌道との間に設けられているとともに、前記アノードと電気的につながった構造を有するものであり、前記第2の電極は前記取り出される荷電粒子の軌道を挟むように前記第1の電極に対向して設けられており、前記第1の電極と前記第2の電極で形成される電界によって、取り出される荷電粒子が偏向されることを特徴とする荷電粒子発生装置。
- 前記第1の電極の肉厚が、伸びる方向に薄くなっている構造であることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子発生装置。
- 前記荷電粒子加速器はベータトロン加速器またはFFAG加速器のいずれかとすることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子発生装置。
- 前記カソードに印加される電圧は、直流高圧電源から発生させた直流電圧を半導体スイッチでスイッチングしたパルス電圧電源から供給されるものであり、そのパルスのタイミングは前記荷電粒子加速器の荷電粒子の入射のタイミングと同一であることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子発生装置。
- 前記第2の電極の前記第1の電極と対向する側には、凸部あるいは凹部またはその双方のいずれかが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子発生装置。
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