JP2004293336A - 密閉型圧縮機 - Google Patents

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智明 及川
Yasuyoshi Tajima
庸賀 田島
Koji Masumoto
浩二 増本
Osamu Kazama
修 風間
Toshio Arai
利夫 荒井
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Abstract

【課題】従来、回転子にフェライト磁石を使用している場合は、キュリー温度(約460℃)以下であれば減磁の恐れがなく、焼嵌めができるが、高磁力の希土類磁石を使用する場合は、高温で減磁し易すく、減磁開始温度は磁気回路のパーミアンスによるが、焼嵌めによる固着は非常に困難となり、回転軸全体をD型構造をとっているものは、回転軸の加工時間がかかり、高価なものになるとともに回転軸と回転子をクリアランスを持った隙間嵌めにすると、精度が悪いものになる等の問題があった。
【解決手段】この発明は、フェライト磁石を用い永久磁石を備えた回転子を設けた電動機において、軸方向一部に切り欠きを設けた円筒形の回転軸と、この切欠き部付きの回転軸と相似形状の内径形状を持つ回転子とを嵌め合い固定した。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエアコン、冷蔵庫などに用いられる圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的な密閉型圧縮機は、電動機の固定子に永久磁石が埋め込まれ、特に、低容量圧縮機では永久磁石には安価なフェライト磁石が用いられることが多く、回転子は円筒形状をした回転軸に焼嵌めされ、回転子内径寸法を回転軸寸法よりわずかに小さめに製造し、回転子を加熱する(例えば200℃〜300℃)ことによって、内径を拡大させ回転軸を嵌め込む焼き嵌め方式をとっている(例えば、特許文献参照)。
【0003】
【特許文献】
特開平09−215237号公報
特開平09−233752号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の密閉型圧縮機は以上のように構成されており、回転子にフェライト磁石を使用している場合は、キュリー温度(約460℃)以下であれば減磁の恐れがなく、焼嵌めができるが、高磁力の希土類磁石を使用する場合は、高温で減磁し易すく、減磁開始温度は磁気回路のパーミアンスによるが、概略150℃〜200℃で減磁し始める。よって、焼嵌めによる固着は非常に困難となる。
【0005】
また、例えば、回転軸全体をD型構造をとっているものは、回転軸の加工時間がかかり、高価なものになるとともに回転軸と回転子をクリアランスを持った隙間嵌めにすると、精度が悪いものになるし、圧入とすれば製造設備が大掛かりなものになってしまうという問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る圧縮機は、軸方向一部に切欠き部を設けた円筒形の回転軸と、この切欠き部付きの回転軸と相似形状の内径形状を持つ回転子を嵌め合い固定したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態における圧縮機の回転軸を示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1による圧縮機の回転軸を示す上面図、図3はこの発明の実施の形態1による圧縮機の回転子を示す断面図、図4(a)はこの発明の実施の形態1による圧縮機の回転子の上部半月穴を示す断面図、図4(b)はこの発明の実施の形態1による圧縮機の回転子の下部円穴を示す断面図である。図5は回転軸と回転子を嵌め合わされた状態を示す断面図、図6はこの発明の実施の形態1による回転軸と回転子を圧縮機に組込んだ状態を示す圧縮機の断面図である。図に示すように、回転軸1は圧縮要素部2と連結されており、電源端子3より供給された電流により密閉容器4に固定された固定子5に回転磁界が発生し、この回転磁界によって回転子6が回転し、回転子6と嵌め合われた回転軸1が回転することによって、圧縮要素部2が動作し、冷媒ガスを圧縮し圧縮機としての動作を行っている。
【0008】
回転子6は、薄板の電磁鋼板が積層された鉄心7と、この鉄心7に埋め込まれた希土類磁石を用いた永久磁石8を備え、この永久磁石8の破片が冷媒回路中に飛び出ないように鉄心7の両端部に非磁性体製の端板9を配置し、リベット10等で両端部を固定している。
【0009】
ここで、回転軸1には図1に示すように切欠き部1aが形成されており、一方、回転子6の内径部には、前記切欠き部1aと相似となる半月形状を含む回転軸挿入口11が形成されている。この回転軸挿入口11のうち挿入口一側端の半月形状の切欠き嵌合い部11aと円形状の挿入口11bが回転軸切欠き部1aと相似形状となっている部分である。図5には前記回転軸1と回転子6が嵌め合わされた状態を示す。回転軸1と回転子6は焼き嵌め固定されている。すなわち、回転軸1の外径と切欠き部1aの寸法は回転子6の内径(回転軸挿入口)と切欠き嵌合い部11aの寸法よりも数μm〜数十μm大きく作られており、回転子6を誘導加熱や炉で加熱することにより回転子6の内径(回転軸挿入口)を回転軸径以上に拡大させ、その状態で回転軸1を挿入し、その後回転子6が冷却することによって内径が元に戻ろうとして回転軸1を締め付け固定されるものである。
【0010】
加熱による回転子内径(回転軸挿入口)の膨張量は次式で表される。即ち、
Δd=α×d×t
Δd:内径膨張量、
α:電磁鋼板の線膨張係数、
d:元の内径、t:温度差、
加熱温度と内径膨張量の関係は図7(a)のように示される。
【0011】
加熱温度は回転軸1の外径以上となる温度a以上となれば、嵌め込むことは可能となる。圧縮機の運転時には圧縮負荷により、回転子6と回転軸1の間にトルクが発生するため、このトルクに打ち勝つように回転子6と回転軸1にはトルク保持力を確保しなければならない。この保持力を大きくするためには、回転子6の締め付け力を大きくしてあげればよく、焼き嵌め前の回転軸1と回転子内径の寸法差を大きくすればよい。即ち、回転子加熱温度を高くし、小さな回転子内径を大きく広げる必要がある。
【0012】
図7(b)は回転子加熱温度と回転子、回転軸のトルク保持力の関係を示したものであり、温度が高くなるほど、回転子初期内径を小さくでき、保持力を高くできることを示している。圧縮機のトルクと安全率を考え、必要保持力が、Fcであれば加熱温度はc以上必要となる。しかしながら、近年、高出力化、高効率化を目的とし、永久磁石に高磁力の希土類磁石を使用することが多くなってきた。希土類磁石(Nd−Fe−B系、Sm−Co系、Sm−Fe系)は温度と減磁が図7(c)のような関係にあり、ある温度以上に加熱されると磁石が減磁し、圧縮機の性能が低下してしまう。これは、従来一般的だったフェライト磁石とは逆の特性である(フェライト磁石は高温ほど減磁に対する対する耐力が強い。ただし、キュリー温度以下)。
【0013】
減磁開始温度は、磁石の種類(保磁力)、形状、寸法、鉄心の形状、エアギャップの大きさ等によって定まるパーミアンスによって異なるが、通常圧縮機用モータを設計する場合、必要保持力を確保しようとすると、減磁によって制約されることが多く、減磁を防ぐために、コストをかけたり、モータ効率を落として減磁対策設計を施したり、回転子と回転軸を組み付けたあとに、磁石を着磁する製造工程に変更するなどしていた。製造工程の変更は、設備が大掛かりなものになるか、設備を簡略化するため、固定子巻線を利用して着磁する場合は、十分に着磁できなかったり、固定子巻線に大電流を流すため巻線にダメージを与えたりすることになる。近年、高効率化のために採用されている集中巻方式の固定子では特にこの傾向(着磁不十分、巻線ダメージ)が大きい。
【0014】
しかしながら、この発明における圧縮機は、回転軸1の一部に切欠き部1aを設け、回転子6の内径部にも、相似形状の部分である切欠き嵌合い部11aを形成しているため、トルク保持力を大きくすることができる。
【0015】
図7(c)において、加熱温度bは、減磁しないか、又は多少減磁しても、圧縮機性能に影響を及ぼさない程度の減磁量であり、この温度b時の焼き嵌めトルク保持力は必要保持力Fcより小さな保持力Fbとなる。切欠き部1aとそれに嵌め合わされる切欠き嵌合い部11aは、このトルク保持力不足分Fc−Fbを補うものとなる。ここで温度bは温度a以上である。そうしなければ、焼き嵌めできないことになる。ここで、予め回転軸1を回転子内径よりも小さくしておき、焼き嵌めをせずにトルク保持力を切欠き部1aのみで持たせるということが考えられるが、切欠き部1aはトルク方向(回転方向)の保持はできるが、回転子6の上下方向の抜けに対しては保持できない。この発明は、軸方向の回転子抜けに対しては、焼き嵌めで保持し、回転方向のトルク保持については、焼き嵌め力を切欠き部1aで保持するものである。よって、温度bは軸方向の回転子抜けを防止できる保持力Fbを確保し、かつ、永久磁石が減磁によって特性上問題の出ない温度に設定される。
【0016】
図8はこの発明の実施の形態1による他の圧縮機の回転軸を示す正面図である。図9はこの発明の実施の形態1による圧縮機の他の回転軸を示す上面図である。図において、円筒の回転軸1の一部を切欠き、第2の切欠き部1bを設け、回転方向の力を保持できる形状であれば良い。前記図1乃至図5に示したように円筒の回転軸の一部を単純にカットしたDカットが製造的は簡単で、コストが安価になる。
【0017】
図10はこの発明の実施の形態1による他の圧縮機の回転軸を示す正面図である。図11はこの発明の実施の形態1による圧縮機の回転子を示す上面図である。図において、円筒の回転軸1の一部を切欠き、第3の切欠き部1cを設け、回転方向の力を保持できる形状であれば良い。
【0018】
また、図1、図8および図10に示す第1の切欠き部1a、第2の切欠き部1bおよび第3の切欠き部1cは、回転軸1の圧縮要素部2とは逆の端部に設けることが生産上最も効率が良い。
【0019】
図12は、この発明の実施の形態1による他の回転子の鉄心を示す縦断面図である。図において、回転子鉄心7は、薄板の電磁鋼板12にカシメ突部13を回転子1径より大き目の径でカシメの長辺を半径方向に一致して設け、多数枚積層して形成されている。この積層は、カシメ突部13を圧入し合うことによって、鉄心打抜き金型内で自動的にかしめられる。
【0020】
図13はこの発明の実施の形態1による他の回転子の鉄心を示す上面図、図14はこの発明の実施の形態1による他の回転子の鉄心のカシメ要部詳細図で、(a)はVカシメと呼ばれる突形状の要部上面図、(b)はVカシメと呼ばれる突形状の横断面図、(c)は角平カシメと呼ばれる突形状の要部上面図、(d)は角平カシメと呼ばれる突形状の横断面図である。図において、Vカシメはx軸方向はV型の傾斜がついているため、x軸方向のずれに対しては弱いが、y軸方向のずれには強いものとなっている。角平カシメは傾斜はついていないが、y軸方向の方が、x軸方向よりも長く抵抗が大きいため、ずれに対しての耐力はあることになる。
【0021】
この発明は、切欠き部1aによって回転方向のトルク保持力を持たせるものとなっているが、この時、回転軸1の切欠き部1aと円筒の部分との境界に対応する回転子鉄心部7aにせん断力を生じることになる。ここで、カシメ部14を回転子鉄心7の半径方向に長軸(x方向)を合わせれば,回転方向トルクによるせん断に対し保持を補うものになり、回転子の剛性を増加させるものとなる。
【0022】
また、カシメ形状はこのVカシメ、角平カシメに限らず、丸台形カシメなど、ずれに対する強度に差があれば、その高強度方向を回転方向トルクによるせん断を補う方向にすれば同様の効果を得ることができる。
【0023】
なお、この発明に関わる圧縮機は図3に表わしたようなロータリ型式圧縮機に限るものでなく、レシプロ型、スクロール型、スクリュー型等どのタイプの圧縮機に採用できるものである。
【0024】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、軸方向一部に切欠き部を設けた円筒形の回転軸と、この切欠き部付きの回転軸と相似形状の内径形状を持つ回転子とを嵌め合い固定したので、永久磁石を減磁させないように回転子と回転軸を固着させ、回転方向トルクに耐えうる圧縮機を安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による圧縮機の回転軸を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による圧縮機の回転軸を示す上面図である。
【図3】この発明の実施の形態1による圧縮機の回転子を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1による圧縮機の回転子を示す横断面図で(a)はある。
【図5】この発明の実施の形態1による回転軸と回転子を嵌め合わされた状態を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1による回転軸と回転子を圧縮機に組込だ状態を示す圧縮機の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態1による回転軸と回転子との加熱温度と内径膨張量、トルク保持力、減磁率の関係を示す特性図で、(a)は内径膨張量、(b)はトルク保持力、(c)は減磁率である。
【図8】この発明の実施の形態1による他の例の回転軸を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態1による他の例の回転軸を示す上面図である。
【図10】この発明の実施の形態1による他の例の回転軸を示す正面図である。
【図11】この発明の実施の形態1による他の例の回転子を示す上面図である。
【図12】この発明の実施の形態1による他の回転子の鉄心を示す縦断面図である。
【図13】この発明の実施の形態1による他の回転子の鉄心を示す上面図である。
【図14】この発明の実施の形態1による他の回転子の鉄心のカシメ要部詳細図で、(a)はVカシメ形状の上面図、(b)はVカシメ形状の横断面図、(c)は角平カシメ形状の上面図、(d)は角平カシメ形状の横断面図である。
【符号の説明】
1 回転軸、1a 切欠き部、2 圧縮要素部、3 電源端子、4 密閉容器、5 固定子、6 回転子、7 鉄心、8 永久磁石、9 端板、10 リベット、11 回転軸挿入口、11a 回転軸切欠き部、11b 切欠き嵌合い部、12 電磁鋼板、13 カシメ突部。

Claims (5)

  1. 軸方向一部に切欠き部を設けた円筒形の回転軸と、この切欠き部付きの回転軸と相似形状の内径形状を持つ回転子とを嵌め合い固定したことを特徴とする密閉型圧縮機。
  2. 嵌め合い固定に焼嵌めを用いたことを特徴とする請求項1記載の密閉型圧縮機。
  3. 切欠き形状はDカットとしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の密閉型圧縮機。
  4. 切欠きの軸方向位置は、回転軸端部に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の密閉型圧縮機。
  5. 回転子は薄板を積層して構成され、その積層固定はカシメによって成され、そのカシメの長辺を半径方向に一致させて設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の密閉型圧縮機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7412304B2 (en) 2004-03-25 2008-08-12 Ip Power Systems Corporation Power system for area containing a set of power consumers

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