JP2004293265A - 底泥覆土工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水底に堆積している軟弱な汚染底質土層B上に透水性土木シート4を敷設して、底泥の舞上がりを防止し、その後、覆土船11上のバックホウ10に持たせた吐出管12を利用してスラリー化した覆土材を土木シート4上に堆積させ、底泥と覆土材との混合を防止しながら覆土層Cを形成する。ここで、覆土材としては、粒径74μm以下の細粒分を20重量%以上含むもの、例えば、山土、建設残土、石炭灰、高炉スラグ、活性汚泥溶融スラグ等を選択するのが望ましい。これら覆土材は、砂に比べて著しく安価であるので施工コストの低減を図ることができ、また、前記細粒分がダイオキシン等の汚染物質を吸着するので、有害物質の流出を確実に防止することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海洋、湖沼、河川等の底泥を処理するための工法に係り、特にダイオキシン等の有害物質を含む軟弱な汚染底質土の封じ込めに向けて好適な底泥覆土工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
海洋、湖沼、河川等の底泥を処理するための工法としては、浚渫、改質、置換、覆砂等の種々の工法が従来より用いられているが、施工に大掛かりな設備を必要とせず、しかも面倒な後処理を必要としないことから、覆砂工法が多用される傾向にある。
ところで、底泥が、ダイオキシン等の有害物質を含む軟弱な汚染底質土である場合、この上に単に砂を撒布すると、汚染底質土(底泥)が舞上がって周辺に拡散してしまい、新たな公害を引き起こすことになる。また、汚染底質土と砂との攪拌混合が避けられないため、ダイオキシン等の汚染物質の流出を抑えるには、覆砂層を厚く形成しなければならず、良質な砂の入手が困難な状況もあって、底泥処理に要するコスト負担がきわめて大きくなる、
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載の工法では、台船上から水底近傍まで延ばした排砂管の先端に、回転排出弁の回転により砂を定量的に排出できるようにした装置を取付け、該装置の姿勢を制御しながら砂を撒布するようにし、また、特許文献2に記載の工法では、注水管を付設したホッパ下に減勢板を配置した水底撒布装置を水底近傍に据付け、ホッパ内から減勢板に落下させた砂を注水管からの放水で崩しながら撒布するようにしている。
なお、特許文献3には、ヘドロ層上に、砂、砕石等の透水材を堆積させて透水層を形成した後、この透水層上に不透水性シートを敷設し、さらにこのシート上にコンクリート、モルタル等の固化材を堆積させ、その後、前記透水層を通してヘドロ層の抜水を強制的に行う底泥の処理工法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−197465号公報
【特許文献2】
特開平11−256579号公報
【特許文献3】
特開昭51−90732号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1、2等に記載の覆砂工法によれば、水底近傍で砂を撒布するので、軟弱な汚染底質土の舞上がりが抑制されるとはいえ、砂と汚染底質土との攪拌混合が避けられず、本質的な問題解決には到らない。特に、砂と汚染底質土との攪拌混合層がどの程度の厚さに形成されるか予測困難であり、安全を考慮して覆砂層を厚く形成しなければならず、コスト負担の増大が避けられない。
なお、上記特許文献3に記載の工法によれば、不透水性シートで透水層(覆砂層)を覆うので、砂と汚染底質土とが混合しても特別の問題はないが、シート敷設に際して所定幅のシートの継目を接合(溶着)させる必要があることに加え、シートの周縁を完全に水底に定着させる必要があり、シート自体が汎用の土木シートに比べて著しく高価であることもあって、シート敷設に多大のコストがかかる。
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、底泥を舞上がらせることなく、しかも覆土材を厚く堆積させたり、高価な不透水性シートを使用することなく、有害物質を含む底泥を確実に封じ込めることができる底泥覆土工法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、水底に透水性土木シートを敷設して底泥を覆った後、該土木シート上に、スラリー化した覆土材を堆積させることを特徴とする。
このように行う底泥覆土工法においては、最初に土木シートを敷設し、その後に、覆土材を土木シート上に堆積させるので、底泥が舞上がることはなくなり、その上、底泥と覆土材とが混合することもなくなる。また、底泥と覆土材との混合が防止される結果、覆土層の厚さを薄くすることができる。
本発明において、上記覆土材は、粒径74μm以下の細粒分を含むようにするのが望ましい。このように覆土材に細粒分を含ませた場合は、透水性土木シートを通過した水分に、ダイオキシン等の有害物質が含まれていたとしても、前記細粒分に有害物質が吸着され、有害物質の流出がより確実に防止される。
本発明で用いる覆土材は、粒径74μm以下の細粒分を一定量以上(一例として、20重量%以上)含んでいればその種類は任意であり、山土および建設残土はもちろん、石炭灰、高炉スラグ、活性汚泥溶融スラグ等を用いることができる。この場合、前記した各種覆土材を単独で用いても、複合して用いてもよく、いずれにしても、砂に比べて著しく割安となる。
本発明はまた、上記覆土材に固化材を添加するようにしてもよく、固化材により土木シート上に堆積させた覆土材が固結するので、水深が浅くて波浪の影響が水底に及んでも、覆土層は安定する。この場合、固化材の種類は任意であり、普通ポルトランドセメントはもちろん、高炉セメント等を用いることができる。
本発明はさらに、上記覆土材に不分離材(分離防止材)を添加するようにしてもよく、この場合は、材料分離が確実に防止されるので、土木シート上に効率よく覆土材を堆積させることができる。このような不分離材としては、ポリアクリルアミドなどがあるが、石炭灰は不分離材としても機能するので、石炭灰を覆土材として用いる場合は、特別の不分離材は不要になる。
本発明において、上記スラリー化した覆土材は、そのスランプを8〜20cmとするのが望ましい。このようにスランプを設定することで、流動性は良好となり、覆土材を効率よく長距離輸送できることはもちろん、土木シートの直上まで円滑に圧送することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
本実施の形態は、港湾内の底泥を封じ込めるもので、その実施に際しては、先ず、図2に示すように岸壁1の近傍に、作業機械としてのクローラクレーン2を搭載した作業船(シート敷設船)3を係留し、クローラクレーン2のクレーン2aを操作して、海底地盤(水底)A上に堆積している軟弱な汚染底質土層(底泥層)B上に透水性土木シート4を敷設し、この作業をクローラクレーン2を移動させ、かつシート敷設船3を移動させながら繰返して、港湾内の必要範囲に土木シート4を敷設する。
次に、図1、図3および図4に示すように上記シート敷設船3に代えて、作業機械としてのバックホウ10を搭載した作業船(覆土船)11を岸壁1の近傍に係留し、この覆土船11上でバックホウ10を走行させて、前記土木シート4上に、スラリー化した覆土材を堆積させ、この作業を覆土船11を移動させながら繰返して、前記土木シート4上に所望厚さの覆土層Cを形成する。
【0008】
上記土木シート4を敷設する工法は任意であるが、ここでは、特許第3108802号公報に記載のシート敷設工法を採用している。この工法においては、土木シート4を巻回してなるシートロールがクローラクレーン2のクレーン2aに吊下した吊具5に支持される。この吊具5の位置は、GPSおよび超音波測量システムによりシート敷設船3上で監視されるようになっており、また、シート敷設船3は、ワイヤ6を操作するウインチ7により位置決めおよび操船される。なお、図2中、8は、外部にGPSアンテナ8aを、内部に各種制御機器(図示略)をそれぞれ装備したコントロール室であり、このコントロール室8内でクローラクレーン2およびウインチ7の動作が集中的に制御されるようになっている。また、吊具5には、土木シート4の敷設状態を監視する水中カメラ9が設置されている。
【0009】
シート敷設に際しては、土木シート4の一端をウエイトWを利用して固定した後、前記吊具5の位置を確認しながらクローラクレーン2のクレーン2aを操作して、吊具5を汚染底質土層Bに沿って移動させる。すると、シートロールから土木シート4が一定速度で引出され、汚染底質土層Bは次第に土木シートにより覆われる。このとき、土木シート4は汚染底質土層Bの上に静かに着底し、したがって、汚染底質土が舞上がることはない。そして、シートロールの全量に相当する土木シート4を敷設し終えたら、前記吊具5に新たなシートロールをセットし、クローラクレーン2の位置を変えて、先に敷設した土木シート4にラップさせながら次の土木シート4を敷設し、その後、シート敷設船3を所定ピッチで移動させながら前記作業を繰返し、必要範囲に土木シート4を敷設する。
【0010】
上記土木シート4上にスラリー化した覆土材を堆積させて覆土層Cを形成する工法は任意であるが、ここでは、覆土船11上に配置されたバックホウ10のアーム10aの先端部に吐出管12を持たせると共に、覆土船11上にスラリー化した覆土材を貯留するホッパ13とポンプ14とを搭載し、ポンプ14の運転によりホッパ13内のスラリー化した覆土材を前記吐出管12へ配管15を通して圧送するようにしている。本実施の形態において、前記スラリー化した覆土材は陸上に設置した混合プラント(図示略)で調合されるようになっており、この調合でスラリー化した覆土材は、陸上から覆土船11まで延ばした輸送管16を通して前記ホッパ13へポンプ圧送される。なお、覆土船11は、その上に搭載したウインチ17によるワイヤ18の操作で、操船および係留されるようになっている。また、吐出管12には、覆土状態を監視する水中カメラ19が設置されている。
【0011】
上記混合プラントにおいては、覆土材として用意した山土、建設残土、石炭灰、高炉スラグ、活性汚泥溶融スラグ等に水を適当量混合し、所望によりさらに固化材、不分離材等を加えてスラリー化する。本実施の形態において、前記覆土材は、粒径74μm以下の細粒分を20重量%以上含むものを用いるようにする。このため、使用する覆土材について、事前に粒径加算曲線を求めて細粒分の含有量を把握し、必要により各種覆土材の配合量を決定する。また、本実施の形態においては、水の配合量を適宜調整して、スラリー化した覆土材のスランプを8〜20cmに調整する。なお、固化材および不分離材を添加する場合、それらの添加量はわずかでよい。
【0012】
上記スラリー化した覆土材を土木シート4上に堆積させるに際しては、バックホウ10に持たせた吐出管12を土木シート4に近づけ、その高さを維持しながらバックホウ10を船幅方向へ往復走行させ(図4)、あるいはそのアーム10aを操作し、この間、ポンプ14から吐出管12にスラリー化した覆土材を圧送する。すると、吐出管12から吐出された覆土材が、前記バックホウ10の走行あるいはアーム操作に応じて土木シート4上に堆積し、覆土船11を定ピッチで移動させながら前記バックホウ10の往復動あるいはアーム操作を繰返すことで、土木シート4上には所定厚さの覆土層Cが形成される。この場合、覆土層Cは、一層に形成してもよいが、複層に形成して必要厚さとしてもよい。複層に形成する場合は、吐出管12からの、スラリー化した覆土材の吐出量を少なくすることができるので、覆土材の拡散が抑制される。なお、吐出管12からの覆土材の吐出量は、ポンプ14から吐出管12に対する圧送圧力およびバックホウ10の走行速度やアーム操作速度を調整することにより制御可能である。
【0013】
このようにして水底の軟弱な汚染底質土層Bは、透水性土木シート4とその上の覆土層Cとにより二重に封じ込められるようになり、汚染底質土層Bに含まれるダイオキシン等の有害物質が流出することはなくなる。この場合、透水性土木シート4は、不透水シートに比べて著しく安価であるので、施工コストがそれほど上昇することはない。本実施の形態においては、覆土材として、山土、建設残土、石炭灰、高炉スラグ、活性汚泥溶融スラグ等を用いているので、高価な砂を用いる場合に比べて、施工コストは低減する。特に建設残土、石炭灰、高炉スラグ、活性汚泥溶融スラグ等は廃棄物として多量に発生するので、廃棄物処分の上でもきわめて有用となる。また、本実施の形態においては特に、覆土材として、粒径74μm以下の細粒分を20重量%以上含むものを用いているので、透水性土木シート4を通過した水分にダイオキシン等の有害物質が含まれていても、前記細粒分に有害物質が吸着され、有害物質の流出はより確実に防止される。
【0014】
なお、上記実施の形態においては、シート敷設の作業機械としてクローラクレーン2を、覆土材吐出の作業機械としてバックホウ10をそれぞれ用いたが、これら作業機械の種類は任意であり、クローラクレーン2、バックホウ10に代えて他の作業機械を用いてもよいことはもちろんである。
また、上記実施の形態においては、陸上に混合プラントを設置して覆土船11上のホッパ13へスラリー化した覆土材をポンプ圧送するようにしたが、この混合プラントは、覆土船11上に設置するようにしてもよく、覆土船11上に設置した場合は、覆土状況を観察しながら調合内容を速やかに変更することができる。
また、上記実施の形態においては、スラリー化した覆土材のスランプを8〜20cmに設定したが、本発明は、このスランプをより小さく設定してもよいもので、スランプを小さく設定した場合は、コンベアによる輸送が可能になるほか、トレミー管等による覆土材打設も可能になる。
さらに、上記実施の形態においては、覆土材として山土、建設残土、石炭灰、高炉スラグ、活性汚泥溶融スラグ等を用いたが、本発明は、これらに代えて砂を用いてもよいことはもちろんである。この場合でも、砂と汚染底質土とが混合することがないので、覆砂層を薄く形成することができ、コスト負担はそれほど上昇しない。
【0015】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る底泥覆土工法によれば、底泥上に透水性土木シートを敷設した後、この土木シート上に覆土材を堆積させるので、底泥が舞上がることはなくなるばかりか、底泥と覆土材とが混合することもなくなり、覆土層の厚さを薄くしても底泥を確実に封じ込めるできる。また、安価な土木シートの使用に加え、覆土材の種類に制限を受けないこともあって、施工コストの低減を達成でき、本発明の利用価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る底泥覆土工法における覆土の施工状況を拡大して示す断面図である。
【図2】本底泥覆土工法におけるシート敷設の全体的な施工状況を示す断面図である。
【図3】本底泥覆土工法における覆土の全体的な施工状況を示す断面図である。
【図4】本底泥覆土工法における覆土の全体的な施工状況を示す平面図である。
【符号の説明】
2 クローラクレーン(作業機械)
3 シート敷設船
4 透水性土木シート
10 バックホウ(作業機械)
11 覆土船
12 吐出管
13 ホッパ
14 ポンプ
A 海底地盤(水底)
B 汚染底質土層(底泥)
C 覆土層
Claims (6)
- 水底に透水性土木シートを敷設して底泥を覆った後、該土木シート上に、スラリー化した覆土材を堆積させることを特徴とする底泥覆土工法。
- 覆土材が、粒径74μm以下の細粒分を含むことを特徴とする請求項1に記載の底泥覆土工法。
- 覆土材として、山土、建設残土、石炭灰、高炉スラグ、下水汚泥溶融スラグ等から選択された少なくとも一種を用いることを特徴とする請求項2に記載の底泥覆土工法。
- 覆土材に、固化材を添加することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の底泥覆土工法。
- 覆土材に、不分離材を添加することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の底泥覆土工法。
- スラリー化した覆土材のスランプを、8〜20cmに設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の底泥覆土工法。
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