JP2004292892A - 高強度アルミニウム合金鍛造材及びこれを用いた鍛造製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】必須含有元素として、Cuを0.15〜0.35質量%、Mgを0.8〜1.5質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Feを0.25〜0.50質量%、Siを0.1〜0.5質量%含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる包装容器用アルミニウム合金板であって、伸び率が5.5%以上、加工硬化指数が0.06以上、かつ、耐力が290N/mm2以下であることを特徴とする包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度アルミニウム合金鍛造材及びこれを用いて製造された鍛造製品に係り、特に、機械的強度と耐食性に優れた高強度アルミニウム合金鍛造材及びこれを用いて製造された鍛造製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両、船舶、あるいは航空機をはじめとする輸送機の構造部材には、軽量かつ機械的特性に優れたアルミニウム合金が多用され、その中で、成形性及び焼付硬化性等の面からJIS H 4001のAl−Mg−Si系の6000系合金が好適に用いられている。この6000系合金は、耐食性、特に応力腐食割れに対する耐性でも優れるとともに、Mg等の含有量が比較的少ないので、このスクラップを溶解して6000系合金の原料へ再生するリサイクル性にも優れた材料である。
【0003】
また、前記6000系合金が輸送機の構造部材に適用される際には、コスト削減や複雑な形状への加工性の点から、その鋳造材や鍛造材が用いられる。このうち、特に、高強度、高靱性等が要求される構造部材には、主に、前記6000系合金の鍛造材が適用される。
【0004】
近年、地球環境への負荷を軽減させるために、前記輸送機では、更なる軽量化及び耐食性の向上が図られている。それにともなって、その構造部材たるアルミニウム合金の鍛造材に対して、更なる薄肉化、ひいてはそれを実現させるための強度や靱性等の機械的特性の向上、及び耐食性の向上が要請されている。
【0005】
たとえば、アルミニウム合金組織の粒界上に存在するMg2SiやAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径を1.2μm以下とするとともに、これら晶析出物同士の平均間隔を3.0μm以上とし、なおかつ、該アルミニウム合金鍛造材をアノードとし、30℃で5%のNaCl水溶液中において、100μA/cm2で30分間直流電解後に測定されるアルミニウム合金鍛造材の自然電位の最低値を−1020mV以上になるにように構成することにより、アルミニウム合金鍛造材の耐食性を向上させる技術(耐食性に優れた高強度高靱性アルミニウム合金鍛造材)が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、アルミニウム合金組織の粒界上に存在するMg2SiやAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の平均粒径を1.2μm以下とするとともに、これら晶析出物同士の平均間隔を3.0μm以上とし、なおかつ、デンドライト2次アーム間隔(DAS)が30μm以下となるように鋳造することにより、アルミニウム合金鍛造材の耐食性、強度、及び靱性を向上させる技術(耐食性に優れた高強度高靱性アルミニウム合金鍛造材)が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、アルミニウム合金組織中のMg2SiやAl−Fe−Si−(Mn、Cr、Zr)系晶析出物の合計の面積率を1.5%以下とすることにより、アルミニウム合金鍛造材の機械的特性を向上させる技術(高強度高靱性アルミニウム合金鍛造材)が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0008】
あるいは、アルミニウム合金の溶体化処理後のミクロ組織における再結晶粒の平均結晶粒径が45μm以下であり、Al−Fe系及びMg2Si晶析物の平均粒径を5μm以下とするとともに、これら晶析物間の平均間隔を20μm以上、なおかつ単位体積あたりの分散粒子の個数を1個/μm3以上とすることにより、アルミニウム合金鍛造素材の機械的特性を向上させる技術(プレス成形性及びヘム加工性に優れたアルミニウム合金板)が開示されている(たとえば、特許文献4参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−294382号公報(第2−11頁)
【特許文献2】
特開2001−107168号公報(第2−9頁)
【特許文献3】
特開2000−144296号公報(第2−10頁)
【特許文献4】
特開2000−144294号公報(第2−11頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、アルミニウム合金鍛造材の高強度化を図るべく、アルミニウム合金中のSiの含有量を過剰とする、あるいはアルミニウム合金にCuのような高強度化に寄与する元素を添加すると、アルミニウム合金素材の強度や靱性等の機械的特性を一段と高めることが可能になるが、アルミニウム合金の鍛造材の組織における粒界腐食や応力腐食割れの感受性が顕著となって耐食性が低下するという問題が生じることとなって、機械的特性と耐食性とは互いに二律背反の関係にあるといえる。
【0011】
そこで、前記問題点を解決するために、本発明の目的は、前記のように機械的特性を向上させるべく、アルミニウム合金中のSiの含有量を過剰とした場合や、アルミニウム合金中にCuのような高強度化に寄与する元素を添加した場合でも粒界腐食や応力腐食割れが抑えられ、かつ、所望とする高強度化及び高靱性化が得られるアルミニウム合金鍛造材、及びこのアルミニウム合金鍛造材を用いて製造されたアルミニウム合金鍛造製品を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者らは、前記粒界腐食や応力腐食割れが抑えられる、優れた耐食性と、所望とする高強度化及び高靱性化とを両立させるべく、6000系合金に含有される元素の最適化について検討を行った。その結果、必須元素であるMg、Si、Mn及びTiの含有量を規制するとともにSiとMgの比率Si/Mgをさらに規制し、Cr及び/又はZrの元素を含むとともにこれらの含有量を規制し、さらに0.11μm以下の平均粒径の分散粒子が単位面積あたり13個/μm2以上存在するように規制することにより、前記目的を達成することが可能なことを見い出し、本発明を創作するに至った。
【0013】
(1)すなわち、本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材は、必須含有元素として、Mgを0.6〜1.8質量%、Siを0.8〜1.8質量%、SiとMgの比率Si/Mgが1以上、Mnを0.1〜1.0質量%、Tiを0.01〜0.10質量%含有するとともに、選択的含有元素として、Crを0.05〜0.2質量%及び/又はZrを0.01〜0.2質量%含み、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成からなり、さらに、0.11μm以下の平均粒径の分散粒子が単位面積あたり13個/μm2以上存在する構成とした。
【0014】
このように構成すれば、Mg、Si、Mn及びTiの含有量を規制するとともにSiとMgの比率Si/Mgをさらに規制し、Cr及び/又はZrを含むとともにこれらの含有量を規制したので、アルミニウム合金中のSiの含有量を過剰とした場合や、アルミニウム合金中にCuのような高強度化に寄与する元素を添加した場合でも粒界腐食や応力腐食割れが抑えられ、かつ、所望とする高強度化及び高靱性化が得られるアルミニウム合金鍛造材、及びこのアルミニウム合金鍛造材を用いて製造されたアルミニウム合金鍛造製品が具現される。
【0015】
(2)また、本発明は、高強度アルミニウム合金鍛造材において、さらにCuを0.2〜0.6質量%含有することが望ましい。
【0016】
このように構成すれば、前記高強度アルミニウム合金鍛造材において、高引張強度を実現し得るので、優れた機械的強度が具現される。
【0017】
(3)そして、本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材は、前記高強度アルミニウム合金鍛造材を用いて鍛造した後に機械加工をして鍛造製品として製造される。
【0018】
このように構成すれば、粒界腐食や応力腐食割れが抑えられて優れた耐食性を備えるとともに、強度や靱性等が向上されたアルミニウム合金鍛造製品が具現される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材には、JIS H4000で規定される6000系合金が用いられる。具体的には、たとえば、JIS H4000で規定される6101合金、6003合金、6151合金、6061合金、6N01合金、6063合金等が挙げられる。
【0020】
そして、本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材は、このような6000系合金を用いて従来公知の通常の製造方法にて製造される。すなわち、まず、本発明で規制する合金成分を有するアルミニウム合金を溶解した後、所定の冷却速度で冷却することにより、丸棒等の鍛造前の形態に鋳造し、鍛造素材とする。ここで、鋳造方法は、連続鋳造でも、半連続鋳造でも、どちらでも差し支えない。
【0021】
次に、前記鍛造素材に均質化熱処理を施す。本発明は、前記均質化熱処理の工程における温度及び時間について特に限定するものではないが、前記したアルミニウム合金の鍛造素材を製造する際に生じ易いアルミニウム合金成分の偏析を抑えて均質化するとともに、続いて行われる鍛造加工の効率性を確保する観点から、この工程温度を通常の条件範囲である温度480〜560℃で4〜8時間保持し、均質化熱処理を施す。
【0022】
引き続き、前記鍛造素材に鍛造加工を施すが、鍛造加工前に材料が、400〜480℃になるように調整する。これは、均質化熱処理後、一旦冷却を施した後に再度加熱しても良いし、均熱温度から直接この温度範囲まで冷却して、鍛造を開始しても良い。なお、数回に分けて鍛造をする(粗鍛造、中間鍛造、仕上げ鍛造等)場合には、適宜各鍛造間に材料を再加熱する工程を設けてもよい。
【0023】
そして、鍛造素材を所定の形状に鍛造加工した後は、溶体化焼入れ、そして析出時効処理(いわゆるT6処理)を施すことにより本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材が得られる。
【0024】
つぎに、本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材で、各種合金の含有量、分散粒子の平均結晶粒径の大きさと密度を数値限定した理由について説明する。
【0025】
(Mg:0.6〜1.8質量%)
Mgは、本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材の強度を必要かつ充分に確保するために重要な元素である。すなわち、Mgの含有量が、0.6質量%未満であると所望の強度が得られず、また、1.8質量%より多くなると強度は高くなるものの耐食性が阻害される。このため、本発明にあっては、Mgの含有量を0.6〜1.8質量%とする。
【0026】
(Si:0.8〜1.8質量%)
Siは、アルミニウム合金中、Mgと共に人工時効処理により強度を付与するための元素である。このSiの含有量が0.8質量%以上であると、このアルミニウム合金鍛造材で所要の機械的特性が確保される。このSiの含有量が1.8質量%を超えると、後記する不可避的不純物の一つであるFe及び後記する必須含有元素の一つであるMnと共に、比較的サイズの大きなAl−Fe−Mn−Si系の金属間化合物が形成され、靭性・耐食性が低下する。従って、本発明に含まれるアルミニウム合金板中のSiの含有量は、0.8〜1.8質量%とする。
【0027】
(Si/Mg比:1以上)
Si及びMgは、Mg2Siの析出物を形成して強度を向上させる。Siは、Al−Mn−Si等の晶出物も形成するため、Si/Mg比が少ないとMg2Siが充分形成されず、強度の向上が図れないこととなる。従って、Si/Mg比は、1.0以上であることが必要であるが、Siが多すぎても強度の大幅な向上が望めず、一方で靭性が低下する等の弊害が生ずる可能性がある。従って、Si/Mg比の好ましい範囲は、1.1〜1.3である。
【0028】
(Mn:0.1〜1.0質量%)
Mnは、アルミニウム合金の強度向上及び組織微細化の役割を果たすものである。このMnの含有量が0.1質量%未満であると、強度不足となると共に組織が粗くなり、また、1.0質量%を超えると、引張強度・耐力は上るが、靭性・鍛造性が低下することとなる。このため、本発明にあっては、Mnの含有量を0.1〜1.0質量%とする。
【0029】
(Ti:0.01〜0.10質量%)
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出、圧延、鍛造時の加工性を向上させるために添加する元素である。しかし、Tiの0.01質量%未満の含有では、加工性向上の効果が得られない。一方、Tiを0.10質量%を超えて含有すると、粗大な晶出物を形成し、前記加工性を低下させる。従って、Tiの含有量は、0.01〜0.10質量%の範囲とすることが望ましい。
【0030】
また、本発明に係るアルミニウム合金鍛造材及びこれを用いた鍛造材は、機械的強度を、より充分に高めるために、Cr及び/又はZrを、以下の含有量で含有する。
【0031】
(Cr:0.05〜0.2質量%)
Crはアルミニウム合金中の結晶粒の大きさに寄与する元素である。すなわち、Crの含有量が、0.05質量%より少ないと、アルミニウム合金中で最大長が50μmを超えるような粗大な結晶粒が生成し易くなる。また、Cr含有量が、0.2%を超えると、溶解及び鋳造時に粗大な晶出物を生成しやすく、破壊の起点となり、靭性や疲労特性を低下させる原因となる。従って、本発明にあっては、Crを含有させる場合は、その含有量を0.05〜0.2質量%の範囲に規制する。
【0032】
(Zr:0.01〜0.2質量%)
Zrは、微細なAl−Zr系分散粒子を析出させ、結晶粒化や亜結晶粒化する効果が大きい。このZrの含有量が、0.01質量%未満であるとこれらの効果が期待できず、一方、0.2質量%を超えると、溶解及び鋳造時に粗大な晶出物を生成しやすく、破壊の起点となり、靭性や疲労特性を低下させる原因となる。従って、本発明にあっては、Zrを含有させる場合は、その含有量を0.01〜0.2質量%の範囲に規制する。
【0033】
(不可避的不純物)
本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材に含まれる不可避的不純物としては、Zn、Fe等が挙げられる。本発明の効果を奏するためには、これらの不可避的不純物の含有量を各々0.1質量%以下及び0.3質量%以下に抑える必要がある。なお、本発明にあっては、このFeの含有量が少なければ少ないほど、粗大化したAl−Fe系晶出物の生成が少なくなるので好ましい。
【0034】
(分散粒子の平均結晶粒径が0.11μm以下の金属間化合物が13個/μm2以上)
本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材で、分散粒子の平均粒径が0.11μmより大きな金属間化合物でその密度が13個/μm2よりも少ないと、最終製品の結晶粒が粗大になり、機械的性質・耐食性が低下する。前記高強度アルミニウム合金鍛造材の製造ロットの違いや形状の違いによる機械的特性等のバラツキを考慮すると、分散粒子の平均結晶粒径が0.11μm以下の金属間化合物が13個/μm2以上となることが好ましい。
【0035】
(Cu:0.2〜0.6質量%)
Cuは、本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材の強度を向上させる元素である。このCuの含有量が、0.2質量%未満であると所望の強度が得られず、0.6質量%を超えると耐食性が阻害される。このため、本発明にあっては、Cuの含有量を0.2〜0.6質量%とする。
【0036】
ここで、本発明に係る高強度アルミニウム合金鍛造材から鍛造製品としてサスペンション部品を成形する工程の一つの実施例について説明する。まず、押出し加工、又は、鋳造により形成した丸棒材を所定の長さに切断した成形用素材を製造する。そして、鍛造前の予備加工として、前記成形用素材を加熱してロール成形を行い、成形用素材の外観形状をサスペンション部品の外観形状に近づけることが、歪が少なく寸法精度のよい鍛造製品に仕上げるためにより好ましい。次に、鍛造工程として、予備加工により成形した予備加工品にプレス加工を施す。このプレス加工は三段階に分けて行われ、最初のプレス加工である第一鍛造は、第一の金型により大まかな形状に成形する。次に、第一の金型よりも最終形状に近い形状を有する第二の金型を用いて第二鍛造を行う。そして、最終仕上げ金型により仕上げ鍛造を行い、発生したバリを除去した後、前記T6処理を施して、サスペンション部品の鍛造製品が完成する。
【0037】
(実施例)
以下、本発明の必要条件を満たす実施例を、本発明の必要条件を満足しない比較例と対比させながら、具体的に説明する。
【0038】
すなわち、表1に示す化学組成のアルミニウム合金鍛造材を用いて、本発明に係る実施の態様のアルミニウム合金の供試材による実施例(No.1〜8)と、本発明の要件を満足しないアルミニウム合金の供試材による比較例(No.9〜15)とを作製した。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、前記供試材の各々について、種々の評価試験を行った結果を表2に示すが、表2の番号は、表1の番号と対応しており、同じ番号の供試材は同一の化学組成を有する。
【0041】
【表2】
【0042】
(分散粒子の測定方法)
鍛造終了後、鍛造材よりサンプリングを行い試験片を調製した。透過電子顕微鏡TEM(倍率×10000)で、前記試験片の任意の測定箇所10視野を観察し、画像解析装置により、分散粒子の粒径と数を算出し、その平均値を採用している。なお、前記分散粒子の粒径は、前記各視野で測定できる個々の前記分散粒子の最大長を分散粒子サイズとした。また、本発明における分散粒子とは、均質化熱処理時に形成される析出物であって、主としてAl−Mn系、Al−Cr系、Al−Zr系の分散粒子を意味する。
【0043】
(機械的特性)
アルミニウム合金鍛造材から複数個採取した試験片の引張強度(MPa)、耐力(MPa)、伸び(%)及びシャルピー衝撃値(J/cm2)等の機械的特性を測定し、その結果も表2に示す。
【0044】
(応力腐食割れ試験:SCC)
アルミニウム合金鍛造材から、各々の化学成分組成の試験片を採取し、応力腐食割れ試験を実施した。応力腐食割れ試験の条件は、JIS−H−8711(アルミニウム合金材料の応力腐食割れ試験方法)の規定に準拠し、交互漬せき法で、30日間行い、応力腐食割れ発生の有無を確認した。これらの結果を、応力腐食割れが発生している場合を「×」、発生していない場合を「○」として、表2に示す。
【0045】
表1の実施例(No.1〜8)は、本発明に係る実施の態様の実施例であり、これらはすべて本発明の化学成分組成の範囲内であり、表2を参照すると、何れも、分散粒子サイズが、0.11μm以下、かつ、分散粒子密度が13個/μm2以上である。また、機械的特性のうち引張強度及び耐力に関し、実施例は、何れも、比較例(No.9〜15)の該当する値を上回っており、さらに応力腐食割れに対する耐性が優れていることがわかる。また、実施例No.4,No.5,No.7及びNo.8は、これら以外の実施例と比較して、化学成分組成のうちCuをさらに含有しているので、表2を参照すると、引張強度がすべての実施例の中でも最も高い方に位置することがわかった。
【0046】
一方、比較例No.9は、化学成分組成が本発明の範囲内ではあるが、表2を参照すると、分散粒子のサイズが0.11μmを超えており、さらに分散粒子密度が10個/μm2以下(13個/μm2以下)となっているため、応力腐食割れが起こり易くまたシャルピー衝撃値も低いという欠点を有するものであった。また、No.11は、化学成分組成のうち選択的含有元素であるCr及びZrをともに含有せず、表2を参照すると、比較例No.9と同様に、分散粒子のサイズが0.11μmを超えており、さらに分散粒子密度が10個/μm2以下(13個/μm2以下)となっているため、応力腐食割れが起こり易いという欠点を有するものであった。
【0047】
比較例No.10とNo.12は、応力腐食割れに対する耐性は良好であったが、Si/Mg比が本発明の範囲の下限値未満であるため、引張強度と耐力が比較例の中でも最も低い方に位置する値であった。
【0048】
また、比較例No.13は、応力腐食割れに対する耐性は良好であったが、化学成分組成のうち、Si/Mg比が本発明の範囲の上限値を超えたため、伸びが比較例の中で最も低い方から2番目であり、機械的性質が好ましいものではなかった。
【0049】
比較例No.14及びNo.15は、化学成分組成の必須含有元素のうち、それぞれMn及びTiを含まないため、応力腐食割れが起こり易いという欠点を有するものであった。
【0050】
従って、これらのすべての比較例については、引張特性、耐力、伸び、シャルピー衝撃値、応力腐食割れ耐性に関し、充分満足できる結果を得られなかったことがわかる。ゆえに、これら比較例は、機械的特性及び耐食性など鍛造材としての信頼性の問題から使用することができず、また、本発明の構成要件の臨界的意義も理解できる。
【0051】
以上、本発明に係る実施例について具体的に説明したが、本発明はこのような実施例のみに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限りにおいて適宜変更することが可能である。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したとおりに構成される本発明によれば、以下の効果が具現される。すなわち、本発明に係る請求項1によれば、Mg、Si、Mn及びTiの含有量を規制し、Si/Mgの比率を規制し、Cr及び/又はZrを含むとともにこれらの含有量を規制し、さらに、分散粒子の平均粒径及び単位面積の密度を規制したので、粒界腐食や応力腐食割れが抑えられ、かつ、所望とする高強度化及び高靱性化が得られるアルミニウム合金鍛造材を提供することができる。
【0053】
また、請求項2の発明によれば、前記アルミニウム合金鍛造材で、含有量を規制したCuを含むようにしたので応力腐食割れが抑えられ、かつ、所望とする高強度化が得られるアルミニウム合金鍛造材を提供することができる。
【0054】
そして、請求項3の発明によれば、前記高強度アルミニウム合金鍛造材を用いて製造されるので、粒界腐食や応力腐食割れが抑えられて優れた耐食性を備えるとともに、強度や靱性等が向上されたアルミニウム合金鍛造製品を提供することができる。
Claims (3)
- 必須含有元素として、Mgを0.6〜1.8質量%、Siを0.8〜1.8質量%、SiとMgの比率Si/Mgが1以上、Mnを0.1〜1.0質量%、Tiを0.01〜0.10質量%含有するとともに、
選択的含有元素として、Crを0.05〜0.2質量%及び/又はZrを0.01〜0.2質量%含み、
残部がAl及び不可避的不純物からなる組成からなり、さらに、
0.11μm以下の平均粒径の分散粒子が単位面積あたり13個/μm2以上存在することを特徴とする高強度アルミニウム合金鍛造材。 - Cuを0.2〜0.6質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度アルミニウム合金鍛造材。
- 請求項1又は請求項2に記載の高強度アルミニウム合金鍛造材を用いて鍛造した後に機械加工をして製造された鍛造製品。
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