JP2004292391A - ヘアリンス組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有するヘアリンス組成物であって、前記(C)成分の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ、前記(A)成分と(B)成分とで形成される会合体に被覆された状態にあることを特徴とするヘアリンス組成物。
前記(C)成分のシリコーン化合物が、分子重合度1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンであることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有するヘアリンス組成物であって、前記(C)成分の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ、前記(A)成分と(B)成分とで形成される会合体に被覆された状態にあることを特徴とするヘアリンス組成物。
前記(C)成分のシリコーン化合物が、分子重合度1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンであることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ヘアリンス組成物には、仕上がり後の滑らかさを良好にし、ブラシ通り性に優れ、スタイリング時に扱いやすい毛髪の感触を実現するために、カチオン界面活性剤、高級アルコールと共にシリコーン化合物を配合し、消費者の要求品質を満たすよう検討が行われてきている。
【0003】
しかしながら、ヘアカラーリングなどによりダメージの進行した毛髪では、シリコーン化合物の吸着効率が低下しており、充分なコンディショニング効果を得るためには、シリコーン化合物を高濃度に配合する必要があった。
そのため、シリコーン化合物の配合量が、カチオン性界面活性剤や高級アルコールの配合量と比較して、過剰になる場合もみられている。
【0004】
このような製品では、高温での保存安定性が低下するため、夏場の環境を想定した高温での長期保存試験において、シリコーン化合物が上方に分離する現象がみられている。
これらの問題等を解決するために、例えば、カチオン性界面活性剤と高級アルコールの配合比率を制限した上で、これらの成分とシリコーン化合物を常温の水性成分と混合し、全体を攪拌しながら70〜80℃に加温し、その後冷却するという特異な製造方法により、リンス剤組成物全量に対して最大80%のシリコーン化合物を安定的に配合できるという技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
更に、従来の製造方法を用いる場合として、例えば、重合度の高いガム状ジメチルポリシロキサンを選定することにより、シリコーンの吸着効率を高める技術が開示され、これにより、シリコーン及びカチオン界面活性剤や高級アルコールが毛髪に緻密に吸着すると共に、洗髪時における脱離が困難になるため、ブラッシングにおける毛髪の保護効果を高め、枝毛の発生を防ぐと共に、優れた光沢(艶)を与える効果もあることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−165541号公報(特許請求の範囲、段落0009〜0029等)
【特許文献2】
特開平4−305516号公報(特許請求の範囲、段落0005〜0008、段落0014等)
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載される製造方法では、水性成分を含むリンス剤全体を高温に加熱する必要があるため、配合時の昇温・冷却に時間がかかり、工場における生産を想定した場合、実際的ではないという課題がある。
また、従来のヘアリンスの製造方法と比較して、シリコーン化合物と水性成分との間の界面張力が高いこと、及び、シリコーン化合物にかかる機械的攪拌力が弱いため、リンス製剤中でのシリコーン化合物の粒径制御が困難であり、平均粒径も大きくなりやすい傾向にある。
更に、上記特許文献2に記載されるシリコーンの高吸着化により残存性を上げる方法では、使い始めの数回は優れたリンス効果を実感できるが、その高い蓄積性により、繰り返し使用した場合に不都合が生じやすいという課題がある。この課題は、髪の根元付近のべたつき感として現れる場合が多く、また、乾燥時のゴワツキ感や静電気の発生も起こりやすくなるため、毛先部分ではパサパサした感じが強くなる。これらの課題は、蓄積したシリコーンの弊害によるものである。更に、毛髪に蓄積した高分子量のガム状シリコーンは、シャンプーにおける界面活性剤ミセルの可溶化力では充分に洗浄できないため、上記のような不都合等が生じた場合、消費者は当該製品の使用を中止して、蓄積したシリコーンを徐々に減少させるか、または、ヘアカットによって取り除くしかないものである。
【0008】
一方、上記のような繰り返し使用によって生じる毛髪の不具合を改善するために、例えば、カチオン性界面活性剤とシリコーン化合物を併用するヘアリンス組成物において、シリコーンの重合度を特定の範囲として、洗浄による適度な脱離性を付与し、更に、毛髪の艶、滑らかさ及びサラサラ感を改善する技術が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0009】
【特許文献3】
特開平6−271431号公報(特許請求の範囲、段落0005〜0006)等)
【特許文献4】
特開平6−271432号公報(特許請求の範囲、段落0005〜0006等)
【0010】
しかしながら、上記特許文献3及び4に記載される製造方法において、シリコーン化合物の重合度を特定の範囲としても、使用時において毛先のパサパサした感じは改善せず、特にヘアカラーリングを繰り返したダメージヘアには効果が低いという課題がある。
また、コンディショニング効果を高めるために、ヘアリンス剤を通常の倍量使用したり、毛髪に塗布した後に長時間放置してからすすぎを行なったり、すすぎの時間を短くした場合、毛先のパサつきは改善傾向がみられたが、繰り返し使用すると髪の根元付近にべたつき感が生じてしまう課題があるものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題について鋭意研究を行った結果、ヘアリンス組成物を構成する成分として、カチオン性界面活性剤、炭素数14〜22の高級アルコール及びシリコーン化合物を含有し、このシリコーン化合物の製剤中での平均粒径を特定の範囲内とし、更に、前記カチオン性界面活性剤と高級アルコールとで形成される会合体に被覆された状態にある場合に、非常に高い相乗効果等を発現することを見い出すと共に、より高い効果を発現するシリコーン化合物の種類を見い出し、並びに、このようなヘアリンス組成物を安定的に、再現良く製造する製造方法を見い出すことによって、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) (A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有するヘアリンス組成物であって、前記(C)成分の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かち、前記(A)成分と(B)成分とで形成される会合体に被覆された状態にあることを特徴とするヘアリンス組成物。
(2) 前記(C)成分のシリコーン化合物が、平均重合度1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンである請求項(1)記載のヘアリンス組成物。
(3) (A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有する上記(1)又は(2)記載のヘアリンス組成物の製造方法であって、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用水とを加熱混合して60〜85℃にて液晶相を形成せしめ、該液晶相に前記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することを特徴とするヘアリンス組成物の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について更に詳細に説明する。
本発明のヘアリンス組成物は、(A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有するヘアリンス組成物であって、前記(C)成分の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ、前記(A)成分と(B)成分とで形成される会合体に被覆された状態にあることを特徴とするものである。
また、本発明のヘアリンス組成物の製造方法は、(A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有する上記構成のヘアリンス組成物の製造方法であって、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用水とを加熱混合して60〜85℃にて液晶相を形成せしめ、該液晶相に前記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することを特徴とするものである。
以下において、「本発明」というときは、上記ヘアリンス組成物及びその製造方法の両方を含むものである。
【0014】
本発明で用いる(A)成分のカチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン及びその4級アンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン塩、アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩、アシルグアニジン誘導体、モノ−N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステル塩などのアミノ酸系カチオン性界面活性剤、アルキルベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられ、これらの中で、特に、髪を柔らかく、更にしなやかにする点から、塩化ベへニルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが好ましい。
この(A)成分の含有量は、ヘアリンス組成物全量に対して、好ましくは、0.01〜5質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、0.1〜3%とすることが望ましい。この(A)成分の含有量が0.01%未満では、効果が不充分の場合があり、また、5%超過では製剤上の問題が生じる場合がある。
【0015】
本発明で用いる(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の少なくとも1種が挙げられ、これらの中で、特に、更に髪をコンディショニングする点から、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
なお、本発明において、(B)成分である高級アルコールの炭素数が14未満の場合は、高温時に融解しやすくなり、また、炭素数が22を超える場合は、低温保存で析出がみられ、分離を起こしやすくなり、好ましくない。
また、この(B)成分の含有量は、ヘアリンス組成物全量に対して、好ましくは、0.1〜10%、更に好ましくは、0.5〜8%とすることが望ましい。この(B)成分の含有量が0.1%未満では、効果が不充分の場合があり、また、10%超過では使用性に悪影響がある場合がある。
【0016】
本発明で用いる(C)成分であるシリコーン化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン誘導体等の少なくとも1種が挙げられる。
また、この(C)成分の含有量は、ヘアリンス組成物全量に対して、好ましくは、0.01〜10%、更に好ましくは、0.1〜8%とすることが望ましい。この(C)成分の含有量が0.01%未満では、効果が不充分の場合があり、また、10%超過では製剤安定性に悪影響がある場合がある。
【0017】
本発明において、上記(C)成分のシリコーン化合物は、製剤中での平均粒径は、0.01〜5μmの範囲内にあることが必要であり、好ましくは、0.05〜3μmの範囲内にあることが望ましい。
また、上記範囲となる平均粒径のシリコーン化合物は、上記(A)成分のカチオン性界面活性剤と、上記(B)成分の高級アルコールとで形成される会合体、具体的には、ゲル状の会合体に被覆された状態にあることが必要である。
本発明において、(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径を0.01〜5μmの範囲内に制御するためには、例えば、上記平均粒径の範囲内に調整されたシリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合することなどにより調製することができる。
【0018】
本発明において、(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあることは、例えば、光学顕微鏡観察により確認することができる。
具体的には、試料となるヘアリンス組成物をスライドガラスに少量採取し、カバーガラスを被せるか、薄く伸び広げることによって観察する。その際、球形に近い状態で観察される(C)成分のシリコーン化合物と、不定形で連続的に観察される(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールからなるゲル状会合体が容易に分離観察できるので、(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径を、同倍率でのスケールと比較して算出することができる。
【0019】
この(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径が0.01μm未満の場合、リンス処理後の毛髪への残存性が極端に低くなるため、ヘアカラーを繰り返した毛髪の毛先において、充分な滑らかさが発現されないこととなる。また、(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径が5μmを越えて大きい場合は、1週間程度の繰り返し使用により、髪の根元付近にべたつき感が生じ、本発明の効果を発揮することができないこととなる。なお、この(C)成分の平均粒径の限定理由等については、更に後述する。
【0020】
本発明において、上記(C)成分のシリコーン化合物が、上記(A)成分のカチオン性界面活性剤と上記(B)成分の高級アルコールとで形成されるゲル状の会合体に被覆されているかどうかは、以下の方法等により確認することができる。
例えば、約0.2gのヘアリンス組成物を、水で濡らした約1gの毛髪のテストピースに塗布し、指またはクシにより髪全体に広げたのち、テストピースをスライドガラスに載せ、リンス成分をガラス表面に転写する。
このガラス表面を顕微鏡で観察することによって、(C)成分のシリコーン化合物が、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとからなるゲル状会合体に被覆されているか否か判別できるものとなる。
すなわち、ヘアリンス組成物中の(C)成分のシリコーン化合物が、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールからなる会合体に被覆されている場合(本発明の場合)、ガラス面に転写された全てのシリコーン化合物の周辺にゲル状の会合体が観察されるが、被覆されていない場合(本発明の範囲外となる場合)は、周辺に会合体が存在しないシリコーン粒子が多く観察されることとなる。
【0021】
また、毛髪のテストピースを用いてガラス面に転写を行なう方法により、ヘアリンス組成物中のシリコーンの存在状態のみでなく、上述の如く、その粒径についてもスケールと比較し算出することができる。
この(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとからなるゲル状会合体に被覆されている本発明の場合、ヘアリンス組成物は、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることがなく、かつ、毛先まで優れた滑らかさを発現することとなる。
【0022】
これに対して、(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にある場合でも、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールからなる会合体に被覆されていない場合は、大別して、▲1▼毛先までの優れた滑らかさが発現されないという不具合、▲2▼繰り返し使用時に毛髪の根元付近にベタツキ感を生じるという不具合が生じることとなる。
上記▲1▼の不具合は、シリコーンの吸着効率が低い時に多くみられ、上記▲2▼の不具合は、シリコーンの過剰蓄積が起こる場合に多くみられる。
【0023】
上記2点の不具合が起こりやすくなった原因を、a)従来のヘアリンス組成物におけるヘアリンスの製造方法と製剤中のシリコーン粒径との関係、並びに、b)ダメージによる毛髪表面の化学的変化について考察しながら、以下に、具体的に説明する。
まず、上記a)の不具合を従来のリンスの製造方法と製剤中のシリコーン粒径との関係を考察等しながら説明する。
一般に、カチオン性界面活性剤、高級アルコール及びシリコーン化合物の3成分の併用は、現在のヘアリンス組成物では汎用されている技術である。
上記3成分を含むヘアリンス、ヘアトリートメント剤の一般的な製造方法は、例えば、フレグランスジャーナル社から発行されている雑誌FRAGRANCE JOURNALの1992年6月号104頁にある「男性用整髪料,ヘアトリートメント製品の製造技術」及び1992年7月号91頁にある「ヘアリンスの製造技術」に詳しく記載されている。また、2001年にフレグランスジャーナル社から発刊されている書籍「香粧品製造学−技術と実際−」の第5章 毛髪化粧品シャンプー・リンスの頁にも詳しく記載されている。
上記の各技術資料には、融点以上に加熱したカチオン性界面活性剤と高級アルコールの溶融混合物に適量の温水を添加して、充分に攪拌した後に冷却することによって、カチオン性界面活性剤と高級アルコールとを層状に均一に配向した液晶を形成させることが記載されている。
【0024】
この液晶にシリコーン化合物を混合する方法としては、シリコーンオイルで添加する方法と、予備的に微細な乳化分散液(エマルジョン)としたものを添加する方法がある。
上記オイルの状態で添加する場合には、シリコーンの粒径をできるだけ微細化するために、シリコーン化合物と他成分との添加順序や温度を調整して、シリコーンと他成分との間の界面張力が低い状態として強い機械的攪拌力を加え、混合する必要がある。
【0025】
一方、上記エマルジョンとしたものを配合する場合は、すでにシリコーンの粒径が微細化されているため、ヘアリンス組成物を冷却した後に添加して攪拌混合する方法が採られている。
広くヘアリンスの組成及び調製方法をまとめたものとしては、Cosmetics & Toiletries誌の組成一覧表が知られている。例えば、1991年4月号95〜98頁には、オイルでの高温添加法の例としてInolex社、Pentapharm社の組成、エマルジョンを冷却した後に添加する例としてTri−K社、Nikko社の組成が紹介されている。また、1998年6月号89〜94頁には、オイルでの高温添加法の例としてARCO社、DesertWhale社、Lab Serobiologiques社、Silab/RITA社の組成、エマルジョンを冷却した後に添加する例としてCostec社の組成が紹介されている。
これらのヘアリンス組成物中のシリコーン化合物の粒径をみると、オイルで添加したものは、シリコーンオイルの粘度と機械的攪拌力によって異なるが多くの場合5〜50μm程度になる。
また、上記シリコーンオイルで添加する方法では、カチオン界面活性剤と高級アルコールとの液晶形成時にシリコーンが共存しているため、液晶状態の会合体にシリコーンが被覆されている場合が多い。
更に、上記エマルジョンとしたものを配合した場合、製剤中の粒径はエマルジョンの粒径に依存するため、エマルジョンを選択することにより0.01μm〜10μm程度まで調製が可能となる。このエマルジョンの配合は、液晶形成後に冷却した後混合するため、シリコーン化合物はカチオン界面活性剤と高級アルコールとの会合体に被覆されにくい状態となるものである。
【0026】
次に、上記b)の不具合をダメージによる毛髪表面の化学的変化を考察等しながら説明する。
毛髪の伸長は、通常、1ヵ月に約1cm程度であるため、毛先の部分は頭髪上に現れてから、数ヶ月から数年の時間が経過していることになる。
この長い間、毛髪はパーマやヘアカラーなどによる化学的ダメージと、ドライヤーやブラッシングなどの物理的ダメージを受け続けることになる。
このようなダメージにより、毛髪の表面に化学的に結合している特殊な脂肪酸が減少したり、多層状に重なったキューティクルの脱離などもみられるようになり、タンパク質などの親水性を持つ化合物が最表面付近に現れるようになる。
このため、毛先になるにしたがって毛髪表面の親水性が高まる傾向がみられる。一方、油分など疎水性の強い物質が、シャンプーやリンス処理などのように水が多量に共存する環境から吸着する際は、疎水性相互作用により疎水面に対して強い結合力が働くこととなる。
従って、ダメージを受けて親水性に傾いた毛髪表面に対して、シリコーンなどの油分の吸着効率は、ダメージを受けていない状態の毛髪と比較して著しく低下することとなる。
すなわち、高級アルコールやシリコーンなどのリンス成分は、毛先に近くなるにしたがって吸着量が減少していると考えられる。このことが、20代30代女性の8割以上がヘアカラーリングを行なっている現代の生活スタイルでは、消費者における毛先のパサつきの悩みが、深刻かつ増加している理由であると推察される。
【0027】
以上のように、今までのヘアリンス組成物においての課題は、上記▲1▼の毛先までの優れた滑らかさが発現されない場合か、上記▲2▼の繰り返し使用時に毛髪の根元付近にベタツキ感を生じる場合であるが、上記▲1▼の不具合は、親水性の強まった毛先に対してのシリコーンの吸着効率が低いことがその理由として推察され、また、上記▲2▼の不具合は、ダメージ部分に対しての吸着効率を向上させたあまり、根元に生えてきたノーマル状態の毛髪に対してシリコーンの過剰蓄積が起こるためによると推察される。
本発明では、上記のような、従来のヘアリンス組成物で解決できなかった課題に対して、繰り返し使用しても根元のべたつき感を生じないヘアリンス組成物が得られるものとなる。
本発明では、製剤中において(C)成分の平均粒径が特定の範囲となるシリコーン化合物を(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとからなる会合体に被覆させることによって、初めて、毛髪表面にシリコーン自体が強い相互作用で直接吸着する部分を減少させ、シャンプーによる洗浄において、カチオン性界面活性剤と高級アルコールと共に除去させることができるものとなる。
しかも、シリコーン化合物をオイルで配合する従来のヘアリンス組成物のように平均粒径が5〜50μm程度では、すすぎ時から乾燥時にかけてシリコーン化合物がカチオン性界面活性剤と高級アルコールとから一部分離し、単独吸着を起してしまうため、本発明の効果が得られないこととなる。
また、親水化された毛先部分の吸着力を向上させるためは、シリコーン化合物をカチオン性界面活性剤と高級アルコールからなる会合体に被覆させることが必要となる。
この理由は、疎水性の高い上記(C)成分のシリコーン化合物を(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとで形成される会合体で被覆することによってシリコーン化合物粒子の表面にカチオン性を帯びさせ、イオン的な結合力と双極子相互作用を付与することによって、吸着効率が飛躍的に高まるためである。
【0028】
以上の理由等により、本発明では、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコール及び(C)成分のシリコーン化合物を含有せしめ、(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内とし、かつ、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールとで形成される会合体に被覆された状態にあるヘアリンス組成物とすることにより、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現することとなる。
また、上記の(C)成分のシリコーン化合物としては、上述の如く、各種のシリコーン化合物を用いることができるが、好ましくは、特に、乾燥後のクシ通り性の点において非常に優れている点から、平均重合度が1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンの使用が更に望ましい。
【0029】
なお、本発明のヘアリンス組成物には、上記(A)成分〜(C)成分の各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、界面活性剤、ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、オリーブ油等油脂類、グリセリン脂肪酸エステル類、多価アルコール等のハイドロトロープ剤、高分子等の増粘剤、防腐剤、フケ止め剤、殺菌剤、酸化防止剤、トニック剤、着色剤、香料、紫外線吸収剤、減粘剤、タンパク質類、湿潤剤、pH調整剤、水(精製水、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水、海洋深層水等、以下同様)、溶剤など、通常の化粧料等に用いられている各種添加成分を、適宜含有することができる。
【0030】
上記特性を有する本発明のへアリンス組成物の製造方法(本発明方法)は、上記(A)成分のカチオン性界面活性剤と、上記(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用の水とを加熱混合し、品温60〜85℃にて液晶相を形成せしめた後、該液晶相に上記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することにより容易に製造することができる。なお、上記各種添加成分のうち、非水性成分は液晶形成前後の60℃以上で、水溶性成分及び香料は、冷却後50℃以下で配合することが望ましい。
【0031】
本発明方法において、(C)成分のシリコーン化合物の粒径を細かく(0.01〜5μmに)制御するためには、例えば、上記範囲の平均粒径となるシリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合する、または、シリコーン化合物にあらかじめシリコーン系界面活性剤を混合しておき、水との界面張力を低下させておくことなどが挙げられ、好ましくは、上記シリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合することが望ましい。
このエマルジョンとしたシリコーン化合物を配合すると、粒径を細かく制御しやすいため好適である。シリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合することにより、すでにシリコーン化合物の粒径が微細化されているため、より容易に製造することができることとなる。
【0032】
本発明方法において、上記シリコーン化合物のエマルジョンを、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールが液晶相を形成する前に添加すると、エマルジョンの粒径が破壊されるために、製剤中での粒径制御が難しくなる。また、冷却後にエマルジョンで混合する方法では、シリコーン化合物は(A)成分のカチオン界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとの会合体に被覆されにくいため、本発明の効果を発揮することができないこととなる。
【0033】
また、本発明方法において、上記液晶相を形成する温度及びシリコーン化合物の添加温度は、60〜85℃にて行う必要があり、好ましくは、60〜80℃が望ましい。この温度が60℃未満では、系の粘度が高まり、撹拌が困難となり、また、温度が85℃を超える場合は、原料の分解などによるにおいの劣化等が起こりやすくなり、好ましくない。
【0034】
このように構成される本発明のヘアリンス組成物の製造方法では、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用水とを加熱混合して60〜85℃にて液晶相を形成せしめ、該液晶相に前記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することより、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物が容易に製造することができることとなる。
【0035】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的かつ詳細に説明するが本発明は下記実施例によって限定されるものではない。なお、以下に示す、「%」はいずれも質量百分率である。
【0036】
〔実施例1〜3及び比較例1〜3〕
下記表1に示す配合成分、下記製造方法により各ヘアリンス組成物並びに標準試料(標準ヘアリンス組成物)を調製した。
得られた各ヘアリンス組成物について、下記方法等によりシリコーン化合物の平均粒径及びその存在状態、並びに、実使用した場合の毛先のパサつき感、繰り返し使用時のべたつき感について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0037】
〔製造方法1〜3〕
(製造方法1:実施例1〜3)
下記表1に示す(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールと精製水とをミキサーで混合し、下記表1に示す温度(65℃、70℃)にて液晶を形成せしめ、この各温度の液晶相に(C)成分のシリコーンエマルジョンを添加した後、残りの各種成分を添加混合せしめて各ヘアリンス組成物を得た。
(製造方法2:比較例1、標準試料)
下記表1に示す(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールと精製水とをミキサーで混合し、下記表1に示す温度(70℃)にて液晶を形成せしめ、この各温度の液晶相に(C)成分のシリコーンをオイル状態で添加した後、残りの各種成分を添加混合せしめて各ヘアリンス組成物を得た。
(製造方法3:比較例2〜3)
下記表1に示す(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールと精製水とをミキサーで混合し、70℃にて液晶を形成せしめた後、40℃まで冷却し、(C)成分のシリコーンエマルジョンを添加した後、残りの各種成分を添加混合せしめて各ヘアリンス組成物を得た。
【0038】
<各ヘアリンス組成物の評価方法及び評価基準>
(1) シリコーン粒径及び存在状態の確認
調製したヘアリンス中のシリコーン化合物がカチオン性界面活性剤と高級アルコールからなるゲル状の会合体に被覆されているかの判別及び平均粒径の測定は以下の方法により行なった。
約0.2gのヘアリンス組成物を、水で濡らした約1gの人毛髪のテストピースに塗布し、指により髪全体に広げたのち76mm×52mmのスライドガラスに載せ、転写したリンス成分をレーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK−8510型)で100倍に拡大し観察、写真撮影を行なった。平均粒径は、粒子100個をランダム抽出して、粒径を計測後、平均値を算出した。
【0039】
(2) ヘアリンス処理後の官能評価
▲1▼毛先のパサつき感の評価
ヘアカラーリングを行なっている20代女性パネルの頭髪を左右に2分し、まず同一の標準シャンプー(配合組成は下記表2)で洗髪した後に、片方に調製したリンス組成物を、もう片方に標準試料(標準リンス試料)をそれそれ3.0mLずつ塗布してリンス処理し、乾燥後の毛先のパサつき感を20名のパネルの申告により次のように評価し、20名の評点を算出し、以下の評価基準により評価した。
評点;+3点:標準試料に比較し非常に良い
+2点:標準試料に比較し良い
+1点:標準試料に比較しやや良い
0点:標準試料に比較し同等
−1点:標準試料に比較しやや悪い
−2点:標準試料に比較し悪い
−3点:標準試料に比較し非常に悪い
評価基準:
◎:20点以上
○:10点以上〜20点未満
△:−10点以上〜10点未満
×:−30点以上〜−10点未満
【0040】
▲2▼長期使用における髪の根元付近のべたつき感
ヘアカラーリングを行なっている20代女性パネル20名に対して、調製したリンス組成物と標準リンス試料を渡し、それぞれ10日間使い続けるホームユーステストを行なった。10日後の髪の根元付近におけるべたつき感をパネルの申告により次のように評価し、20名の評点を算出し以下の記号により記した。
なお、テスト中のシャンプーは同一の下記表2の標準シャンプー試料を使用させた。
評点;+3点:標準試料に比較し非常に良い
+2点:標準試料に比較し良い
+1点:標準試料に比較しやや良い
0点:標準試料に比較し同等
−1点:標準試料に比較しやや悪い
−2点:標準試料に比較し悪い
−3点:標準試料に比較し非常に悪い
評価基準:
◎:20点以上
○:10点以上〜20点未満
△:−10点以上〜10点未満
×:−30点以上〜−10点未満
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜3は、本発明の範囲外となる比較例1〜3に較べて、毛先のパサつき感もなく、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感も生じることがなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物であることが判明した。
比較例を個別的にみると、比較例1はシリコーン化合物をオイルで配合する従来のヘアリンス組成物のように平均粒径が10μm程度では、すすぎ時から乾燥時にかけてシリコーン化合物がカチオン性界面活性剤と高級アルコールとから一部分離し、単独吸着を起してしまうため、本発明の効果が得られないことが判り、また、比較例2及び3では、シリコーン化合物の添加温度が40℃のため、シリコーン化合物をカチオン性界面活性剤と高級アルコールからなる会合体に被覆させることができず、これらの場合も本発明の効果が得られないことが判った。
【0044】
〔実施例4〜11〕
下記表3及び表4に示す配合成分、上記製造方法1に準拠して実施例1〜3と別配合成分となる各ヘアリンス組成物を調製した。
得られた各ヘアリンス組成物について、上記方法等によりシリコーン化合物の平均粒径及びその存在状態、並びに、実使用した場合の毛先のパサつき感、繰り返し使用時のべたつき感について評価した。
これらの結果を下記表3及び4に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
上記表3及び表4の結果から結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例4〜11は、毛先のパサつき感もなく、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感も生じることがなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物であることが判明した。
また、実施例4〜6、8〜11のヘアリンス組成物は、平均重合度が1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンが含有されているので、実施例1〜3のヘアリンス組成物に較べて、更に、乾燥後のクシ通り性において非常に優れていることが判った。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物及びその製造方法が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ヘアリンス組成物には、仕上がり後の滑らかさを良好にし、ブラシ通り性に優れ、スタイリング時に扱いやすい毛髪の感触を実現するために、カチオン界面活性剤、高級アルコールと共にシリコーン化合物を配合し、消費者の要求品質を満たすよう検討が行われてきている。
【0003】
しかしながら、ヘアカラーリングなどによりダメージの進行した毛髪では、シリコーン化合物の吸着効率が低下しており、充分なコンディショニング効果を得るためには、シリコーン化合物を高濃度に配合する必要があった。
そのため、シリコーン化合物の配合量が、カチオン性界面活性剤や高級アルコールの配合量と比較して、過剰になる場合もみられている。
【0004】
このような製品では、高温での保存安定性が低下するため、夏場の環境を想定した高温での長期保存試験において、シリコーン化合物が上方に分離する現象がみられている。
これらの問題等を解決するために、例えば、カチオン性界面活性剤と高級アルコールの配合比率を制限した上で、これらの成分とシリコーン化合物を常温の水性成分と混合し、全体を攪拌しながら70〜80℃に加温し、その後冷却するという特異な製造方法により、リンス剤組成物全量に対して最大80%のシリコーン化合物を安定的に配合できるという技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
更に、従来の製造方法を用いる場合として、例えば、重合度の高いガム状ジメチルポリシロキサンを選定することにより、シリコーンの吸着効率を高める技術が開示され、これにより、シリコーン及びカチオン界面活性剤や高級アルコールが毛髪に緻密に吸着すると共に、洗髪時における脱離が困難になるため、ブラッシングにおける毛髪の保護効果を高め、枝毛の発生を防ぐと共に、優れた光沢(艶)を与える効果もあることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−165541号公報(特許請求の範囲、段落0009〜0029等)
【特許文献2】
特開平4−305516号公報(特許請求の範囲、段落0005〜0008、段落0014等)
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載される製造方法では、水性成分を含むリンス剤全体を高温に加熱する必要があるため、配合時の昇温・冷却に時間がかかり、工場における生産を想定した場合、実際的ではないという課題がある。
また、従来のヘアリンスの製造方法と比較して、シリコーン化合物と水性成分との間の界面張力が高いこと、及び、シリコーン化合物にかかる機械的攪拌力が弱いため、リンス製剤中でのシリコーン化合物の粒径制御が困難であり、平均粒径も大きくなりやすい傾向にある。
更に、上記特許文献2に記載されるシリコーンの高吸着化により残存性を上げる方法では、使い始めの数回は優れたリンス効果を実感できるが、その高い蓄積性により、繰り返し使用した場合に不都合が生じやすいという課題がある。この課題は、髪の根元付近のべたつき感として現れる場合が多く、また、乾燥時のゴワツキ感や静電気の発生も起こりやすくなるため、毛先部分ではパサパサした感じが強くなる。これらの課題は、蓄積したシリコーンの弊害によるものである。更に、毛髪に蓄積した高分子量のガム状シリコーンは、シャンプーにおける界面活性剤ミセルの可溶化力では充分に洗浄できないため、上記のような不都合等が生じた場合、消費者は当該製品の使用を中止して、蓄積したシリコーンを徐々に減少させるか、または、ヘアカットによって取り除くしかないものである。
【0008】
一方、上記のような繰り返し使用によって生じる毛髪の不具合を改善するために、例えば、カチオン性界面活性剤とシリコーン化合物を併用するヘアリンス組成物において、シリコーンの重合度を特定の範囲として、洗浄による適度な脱離性を付与し、更に、毛髪の艶、滑らかさ及びサラサラ感を改善する技術が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0009】
【特許文献3】
特開平6−271431号公報(特許請求の範囲、段落0005〜0006)等)
【特許文献4】
特開平6−271432号公報(特許請求の範囲、段落0005〜0006等)
【0010】
しかしながら、上記特許文献3及び4に記載される製造方法において、シリコーン化合物の重合度を特定の範囲としても、使用時において毛先のパサパサした感じは改善せず、特にヘアカラーリングを繰り返したダメージヘアには効果が低いという課題がある。
また、コンディショニング効果を高めるために、ヘアリンス剤を通常の倍量使用したり、毛髪に塗布した後に長時間放置してからすすぎを行なったり、すすぎの時間を短くした場合、毛先のパサつきは改善傾向がみられたが、繰り返し使用すると髪の根元付近にべたつき感が生じてしまう課題があるものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題について鋭意研究を行った結果、ヘアリンス組成物を構成する成分として、カチオン性界面活性剤、炭素数14〜22の高級アルコール及びシリコーン化合物を含有し、このシリコーン化合物の製剤中での平均粒径を特定の範囲内とし、更に、前記カチオン性界面活性剤と高級アルコールとで形成される会合体に被覆された状態にある場合に、非常に高い相乗効果等を発現することを見い出すと共に、より高い効果を発現するシリコーン化合物の種類を見い出し、並びに、このようなヘアリンス組成物を安定的に、再現良く製造する製造方法を見い出すことによって、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1) (A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有するヘアリンス組成物であって、前記(C)成分の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かち、前記(A)成分と(B)成分とで形成される会合体に被覆された状態にあることを特徴とするヘアリンス組成物。
(2) 前記(C)成分のシリコーン化合物が、平均重合度1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンである請求項(1)記載のヘアリンス組成物。
(3) (A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有する上記(1)又は(2)記載のヘアリンス組成物の製造方法であって、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用水とを加熱混合して60〜85℃にて液晶相を形成せしめ、該液晶相に前記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することを特徴とするヘアリンス組成物の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について更に詳細に説明する。
本発明のヘアリンス組成物は、(A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有するヘアリンス組成物であって、前記(C)成分の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ、前記(A)成分と(B)成分とで形成される会合体に被覆された状態にあることを特徴とするものである。
また、本発明のヘアリンス組成物の製造方法は、(A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有する上記構成のヘアリンス組成物の製造方法であって、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用水とを加熱混合して60〜85℃にて液晶相を形成せしめ、該液晶相に前記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することを特徴とするものである。
以下において、「本発明」というときは、上記ヘアリンス組成物及びその製造方法の両方を含むものである。
【0014】
本発明で用いる(A)成分のカチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン及びその4級アンモニウム塩、脂肪酸アミドアミン塩、アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩、アシルグアニジン誘導体、モノ−N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステル塩などのアミノ酸系カチオン性界面活性剤、アルキルベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられ、これらの中で、特に、髪を柔らかく、更にしなやかにする点から、塩化ベへニルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムが好ましい。
この(A)成分の含有量は、ヘアリンス組成物全量に対して、好ましくは、0.01〜5質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、0.1〜3%とすることが望ましい。この(A)成分の含有量が0.01%未満では、効果が不充分の場合があり、また、5%超過では製剤上の問題が生じる場合がある。
【0015】
本発明で用いる(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の少なくとも1種が挙げられ、これらの中で、特に、更に髪をコンディショニングする点から、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
なお、本発明において、(B)成分である高級アルコールの炭素数が14未満の場合は、高温時に融解しやすくなり、また、炭素数が22を超える場合は、低温保存で析出がみられ、分離を起こしやすくなり、好ましくない。
また、この(B)成分の含有量は、ヘアリンス組成物全量に対して、好ましくは、0.1〜10%、更に好ましくは、0.5〜8%とすることが望ましい。この(B)成分の含有量が0.1%未満では、効果が不充分の場合があり、また、10%超過では使用性に悪影響がある場合がある。
【0016】
本発明で用いる(C)成分であるシリコーン化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン誘導体等の少なくとも1種が挙げられる。
また、この(C)成分の含有量は、ヘアリンス組成物全量に対して、好ましくは、0.01〜10%、更に好ましくは、0.1〜8%とすることが望ましい。この(C)成分の含有量が0.01%未満では、効果が不充分の場合があり、また、10%超過では製剤安定性に悪影響がある場合がある。
【0017】
本発明において、上記(C)成分のシリコーン化合物は、製剤中での平均粒径は、0.01〜5μmの範囲内にあることが必要であり、好ましくは、0.05〜3μmの範囲内にあることが望ましい。
また、上記範囲となる平均粒径のシリコーン化合物は、上記(A)成分のカチオン性界面活性剤と、上記(B)成分の高級アルコールとで形成される会合体、具体的には、ゲル状の会合体に被覆された状態にあることが必要である。
本発明において、(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径を0.01〜5μmの範囲内に制御するためには、例えば、上記平均粒径の範囲内に調整されたシリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合することなどにより調製することができる。
【0018】
本発明において、(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあることは、例えば、光学顕微鏡観察により確認することができる。
具体的には、試料となるヘアリンス組成物をスライドガラスに少量採取し、カバーガラスを被せるか、薄く伸び広げることによって観察する。その際、球形に近い状態で観察される(C)成分のシリコーン化合物と、不定形で連続的に観察される(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールからなるゲル状会合体が容易に分離観察できるので、(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径を、同倍率でのスケールと比較して算出することができる。
【0019】
この(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径が0.01μm未満の場合、リンス処理後の毛髪への残存性が極端に低くなるため、ヘアカラーを繰り返した毛髪の毛先において、充分な滑らかさが発現されないこととなる。また、(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径が5μmを越えて大きい場合は、1週間程度の繰り返し使用により、髪の根元付近にべたつき感が生じ、本発明の効果を発揮することができないこととなる。なお、この(C)成分の平均粒径の限定理由等については、更に後述する。
【0020】
本発明において、上記(C)成分のシリコーン化合物が、上記(A)成分のカチオン性界面活性剤と上記(B)成分の高級アルコールとで形成されるゲル状の会合体に被覆されているかどうかは、以下の方法等により確認することができる。
例えば、約0.2gのヘアリンス組成物を、水で濡らした約1gの毛髪のテストピースに塗布し、指またはクシにより髪全体に広げたのち、テストピースをスライドガラスに載せ、リンス成分をガラス表面に転写する。
このガラス表面を顕微鏡で観察することによって、(C)成分のシリコーン化合物が、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとからなるゲル状会合体に被覆されているか否か判別できるものとなる。
すなわち、ヘアリンス組成物中の(C)成分のシリコーン化合物が、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールからなる会合体に被覆されている場合(本発明の場合)、ガラス面に転写された全てのシリコーン化合物の周辺にゲル状の会合体が観察されるが、被覆されていない場合(本発明の範囲外となる場合)は、周辺に会合体が存在しないシリコーン粒子が多く観察されることとなる。
【0021】
また、毛髪のテストピースを用いてガラス面に転写を行なう方法により、ヘアリンス組成物中のシリコーンの存在状態のみでなく、上述の如く、その粒径についてもスケールと比較し算出することができる。
この(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとからなるゲル状会合体に被覆されている本発明の場合、ヘアリンス組成物は、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることがなく、かつ、毛先まで優れた滑らかさを発現することとなる。
【0022】
これに対して、(C)成分のシリコーン化合物の平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にある場合でも、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールからなる会合体に被覆されていない場合は、大別して、▲1▼毛先までの優れた滑らかさが発現されないという不具合、▲2▼繰り返し使用時に毛髪の根元付近にベタツキ感を生じるという不具合が生じることとなる。
上記▲1▼の不具合は、シリコーンの吸着効率が低い時に多くみられ、上記▲2▼の不具合は、シリコーンの過剰蓄積が起こる場合に多くみられる。
【0023】
上記2点の不具合が起こりやすくなった原因を、a)従来のヘアリンス組成物におけるヘアリンスの製造方法と製剤中のシリコーン粒径との関係、並びに、b)ダメージによる毛髪表面の化学的変化について考察しながら、以下に、具体的に説明する。
まず、上記a)の不具合を従来のリンスの製造方法と製剤中のシリコーン粒径との関係を考察等しながら説明する。
一般に、カチオン性界面活性剤、高級アルコール及びシリコーン化合物の3成分の併用は、現在のヘアリンス組成物では汎用されている技術である。
上記3成分を含むヘアリンス、ヘアトリートメント剤の一般的な製造方法は、例えば、フレグランスジャーナル社から発行されている雑誌FRAGRANCE JOURNALの1992年6月号104頁にある「男性用整髪料,ヘアトリートメント製品の製造技術」及び1992年7月号91頁にある「ヘアリンスの製造技術」に詳しく記載されている。また、2001年にフレグランスジャーナル社から発刊されている書籍「香粧品製造学−技術と実際−」の第5章 毛髪化粧品シャンプー・リンスの頁にも詳しく記載されている。
上記の各技術資料には、融点以上に加熱したカチオン性界面活性剤と高級アルコールの溶融混合物に適量の温水を添加して、充分に攪拌した後に冷却することによって、カチオン性界面活性剤と高級アルコールとを層状に均一に配向した液晶を形成させることが記載されている。
【0024】
この液晶にシリコーン化合物を混合する方法としては、シリコーンオイルで添加する方法と、予備的に微細な乳化分散液(エマルジョン)としたものを添加する方法がある。
上記オイルの状態で添加する場合には、シリコーンの粒径をできるだけ微細化するために、シリコーン化合物と他成分との添加順序や温度を調整して、シリコーンと他成分との間の界面張力が低い状態として強い機械的攪拌力を加え、混合する必要がある。
【0025】
一方、上記エマルジョンとしたものを配合する場合は、すでにシリコーンの粒径が微細化されているため、ヘアリンス組成物を冷却した後に添加して攪拌混合する方法が採られている。
広くヘアリンスの組成及び調製方法をまとめたものとしては、Cosmetics & Toiletries誌の組成一覧表が知られている。例えば、1991年4月号95〜98頁には、オイルでの高温添加法の例としてInolex社、Pentapharm社の組成、エマルジョンを冷却した後に添加する例としてTri−K社、Nikko社の組成が紹介されている。また、1998年6月号89〜94頁には、オイルでの高温添加法の例としてARCO社、DesertWhale社、Lab Serobiologiques社、Silab/RITA社の組成、エマルジョンを冷却した後に添加する例としてCostec社の組成が紹介されている。
これらのヘアリンス組成物中のシリコーン化合物の粒径をみると、オイルで添加したものは、シリコーンオイルの粘度と機械的攪拌力によって異なるが多くの場合5〜50μm程度になる。
また、上記シリコーンオイルで添加する方法では、カチオン界面活性剤と高級アルコールとの液晶形成時にシリコーンが共存しているため、液晶状態の会合体にシリコーンが被覆されている場合が多い。
更に、上記エマルジョンとしたものを配合した場合、製剤中の粒径はエマルジョンの粒径に依存するため、エマルジョンを選択することにより0.01μm〜10μm程度まで調製が可能となる。このエマルジョンの配合は、液晶形成後に冷却した後混合するため、シリコーン化合物はカチオン界面活性剤と高級アルコールとの会合体に被覆されにくい状態となるものである。
【0026】
次に、上記b)の不具合をダメージによる毛髪表面の化学的変化を考察等しながら説明する。
毛髪の伸長は、通常、1ヵ月に約1cm程度であるため、毛先の部分は頭髪上に現れてから、数ヶ月から数年の時間が経過していることになる。
この長い間、毛髪はパーマやヘアカラーなどによる化学的ダメージと、ドライヤーやブラッシングなどの物理的ダメージを受け続けることになる。
このようなダメージにより、毛髪の表面に化学的に結合している特殊な脂肪酸が減少したり、多層状に重なったキューティクルの脱離などもみられるようになり、タンパク質などの親水性を持つ化合物が最表面付近に現れるようになる。
このため、毛先になるにしたがって毛髪表面の親水性が高まる傾向がみられる。一方、油分など疎水性の強い物質が、シャンプーやリンス処理などのように水が多量に共存する環境から吸着する際は、疎水性相互作用により疎水面に対して強い結合力が働くこととなる。
従って、ダメージを受けて親水性に傾いた毛髪表面に対して、シリコーンなどの油分の吸着効率は、ダメージを受けていない状態の毛髪と比較して著しく低下することとなる。
すなわち、高級アルコールやシリコーンなどのリンス成分は、毛先に近くなるにしたがって吸着量が減少していると考えられる。このことが、20代30代女性の8割以上がヘアカラーリングを行なっている現代の生活スタイルでは、消費者における毛先のパサつきの悩みが、深刻かつ増加している理由であると推察される。
【0027】
以上のように、今までのヘアリンス組成物においての課題は、上記▲1▼の毛先までの優れた滑らかさが発現されない場合か、上記▲2▼の繰り返し使用時に毛髪の根元付近にベタツキ感を生じる場合であるが、上記▲1▼の不具合は、親水性の強まった毛先に対してのシリコーンの吸着効率が低いことがその理由として推察され、また、上記▲2▼の不具合は、ダメージ部分に対しての吸着効率を向上させたあまり、根元に生えてきたノーマル状態の毛髪に対してシリコーンの過剰蓄積が起こるためによると推察される。
本発明では、上記のような、従来のヘアリンス組成物で解決できなかった課題に対して、繰り返し使用しても根元のべたつき感を生じないヘアリンス組成物が得られるものとなる。
本発明では、製剤中において(C)成分の平均粒径が特定の範囲となるシリコーン化合物を(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとからなる会合体に被覆させることによって、初めて、毛髪表面にシリコーン自体が強い相互作用で直接吸着する部分を減少させ、シャンプーによる洗浄において、カチオン性界面活性剤と高級アルコールと共に除去させることができるものとなる。
しかも、シリコーン化合物をオイルで配合する従来のヘアリンス組成物のように平均粒径が5〜50μm程度では、すすぎ時から乾燥時にかけてシリコーン化合物がカチオン性界面活性剤と高級アルコールとから一部分離し、単独吸着を起してしまうため、本発明の効果が得られないこととなる。
また、親水化された毛先部分の吸着力を向上させるためは、シリコーン化合物をカチオン性界面活性剤と高級アルコールからなる会合体に被覆させることが必要となる。
この理由は、疎水性の高い上記(C)成分のシリコーン化合物を(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとで形成される会合体で被覆することによってシリコーン化合物粒子の表面にカチオン性を帯びさせ、イオン的な結合力と双極子相互作用を付与することによって、吸着効率が飛躍的に高まるためである。
【0028】
以上の理由等により、本発明では、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコール及び(C)成分のシリコーン化合物を含有せしめ、(C)成分のシリコーン化合物の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内とし、かつ、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールとで形成される会合体に被覆された状態にあるヘアリンス組成物とすることにより、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現することとなる。
また、上記の(C)成分のシリコーン化合物としては、上述の如く、各種のシリコーン化合物を用いることができるが、好ましくは、特に、乾燥後のクシ通り性の点において非常に優れている点から、平均重合度が1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンの使用が更に望ましい。
【0029】
なお、本発明のヘアリンス組成物には、上記(A)成分〜(C)成分の各成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、界面活性剤、ヒマシ油、カカオ油、ミンク油、オリーブ油等油脂類、グリセリン脂肪酸エステル類、多価アルコール等のハイドロトロープ剤、高分子等の増粘剤、防腐剤、フケ止め剤、殺菌剤、酸化防止剤、トニック剤、着色剤、香料、紫外線吸収剤、減粘剤、タンパク質類、湿潤剤、pH調整剤、水(精製水、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水、海洋深層水等、以下同様)、溶剤など、通常の化粧料等に用いられている各種添加成分を、適宜含有することができる。
【0030】
上記特性を有する本発明のへアリンス組成物の製造方法(本発明方法)は、上記(A)成分のカチオン性界面活性剤と、上記(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用の水とを加熱混合し、品温60〜85℃にて液晶相を形成せしめた後、該液晶相に上記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することにより容易に製造することができる。なお、上記各種添加成分のうち、非水性成分は液晶形成前後の60℃以上で、水溶性成分及び香料は、冷却後50℃以下で配合することが望ましい。
【0031】
本発明方法において、(C)成分のシリコーン化合物の粒径を細かく(0.01〜5μmに)制御するためには、例えば、上記範囲の平均粒径となるシリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合する、または、シリコーン化合物にあらかじめシリコーン系界面活性剤を混合しておき、水との界面張力を低下させておくことなどが挙げられ、好ましくは、上記シリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合することが望ましい。
このエマルジョンとしたシリコーン化合物を配合すると、粒径を細かく制御しやすいため好適である。シリコーン化合物をエマルジョンとしたものを配合することにより、すでにシリコーン化合物の粒径が微細化されているため、より容易に製造することができることとなる。
【0032】
本発明方法において、上記シリコーン化合物のエマルジョンを、(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールが液晶相を形成する前に添加すると、エマルジョンの粒径が破壊されるために、製剤中での粒径制御が難しくなる。また、冷却後にエマルジョンで混合する方法では、シリコーン化合物は(A)成分のカチオン界面活性剤と(B)成分の高級アルコールとの会合体に被覆されにくいため、本発明の効果を発揮することができないこととなる。
【0033】
また、本発明方法において、上記液晶相を形成する温度及びシリコーン化合物の添加温度は、60〜85℃にて行う必要があり、好ましくは、60〜80℃が望ましい。この温度が60℃未満では、系の粘度が高まり、撹拌が困難となり、また、温度が85℃を超える場合は、原料の分解などによるにおいの劣化等が起こりやすくなり、好ましくない。
【0034】
このように構成される本発明のヘアリンス組成物の製造方法では、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用水とを加熱混合して60〜85℃にて液晶相を形成せしめ、該液晶相に前記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することより、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物が容易に製造することができることとなる。
【0035】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的かつ詳細に説明するが本発明は下記実施例によって限定されるものではない。なお、以下に示す、「%」はいずれも質量百分率である。
【0036】
〔実施例1〜3及び比較例1〜3〕
下記表1に示す配合成分、下記製造方法により各ヘアリンス組成物並びに標準試料(標準ヘアリンス組成物)を調製した。
得られた各ヘアリンス組成物について、下記方法等によりシリコーン化合物の平均粒径及びその存在状態、並びに、実使用した場合の毛先のパサつき感、繰り返し使用時のべたつき感について評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0037】
〔製造方法1〜3〕
(製造方法1:実施例1〜3)
下記表1に示す(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールと精製水とをミキサーで混合し、下記表1に示す温度(65℃、70℃)にて液晶を形成せしめ、この各温度の液晶相に(C)成分のシリコーンエマルジョンを添加した後、残りの各種成分を添加混合せしめて各ヘアリンス組成物を得た。
(製造方法2:比較例1、標準試料)
下記表1に示す(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールと精製水とをミキサーで混合し、下記表1に示す温度(70℃)にて液晶を形成せしめ、この各温度の液晶相に(C)成分のシリコーンをオイル状態で添加した後、残りの各種成分を添加混合せしめて各ヘアリンス組成物を得た。
(製造方法3:比較例2〜3)
下記表1に示す(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の高級アルコールと精製水とをミキサーで混合し、70℃にて液晶を形成せしめた後、40℃まで冷却し、(C)成分のシリコーンエマルジョンを添加した後、残りの各種成分を添加混合せしめて各ヘアリンス組成物を得た。
【0038】
<各ヘアリンス組成物の評価方法及び評価基準>
(1) シリコーン粒径及び存在状態の確認
調製したヘアリンス中のシリコーン化合物がカチオン性界面活性剤と高級アルコールからなるゲル状の会合体に被覆されているかの判別及び平均粒径の測定は以下の方法により行なった。
約0.2gのヘアリンス組成物を、水で濡らした約1gの人毛髪のテストピースに塗布し、指により髪全体に広げたのち76mm×52mmのスライドガラスに載せ、転写したリンス成分をレーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK−8510型)で100倍に拡大し観察、写真撮影を行なった。平均粒径は、粒子100個をランダム抽出して、粒径を計測後、平均値を算出した。
【0039】
(2) ヘアリンス処理後の官能評価
▲1▼毛先のパサつき感の評価
ヘアカラーリングを行なっている20代女性パネルの頭髪を左右に2分し、まず同一の標準シャンプー(配合組成は下記表2)で洗髪した後に、片方に調製したリンス組成物を、もう片方に標準試料(標準リンス試料)をそれそれ3.0mLずつ塗布してリンス処理し、乾燥後の毛先のパサつき感を20名のパネルの申告により次のように評価し、20名の評点を算出し、以下の評価基準により評価した。
評点;+3点:標準試料に比較し非常に良い
+2点:標準試料に比較し良い
+1点:標準試料に比較しやや良い
0点:標準試料に比較し同等
−1点:標準試料に比較しやや悪い
−2点:標準試料に比較し悪い
−3点:標準試料に比較し非常に悪い
評価基準:
◎:20点以上
○:10点以上〜20点未満
△:−10点以上〜10点未満
×:−30点以上〜−10点未満
【0040】
▲2▼長期使用における髪の根元付近のべたつき感
ヘアカラーリングを行なっている20代女性パネル20名に対して、調製したリンス組成物と標準リンス試料を渡し、それぞれ10日間使い続けるホームユーステストを行なった。10日後の髪の根元付近におけるべたつき感をパネルの申告により次のように評価し、20名の評点を算出し以下の記号により記した。
なお、テスト中のシャンプーは同一の下記表2の標準シャンプー試料を使用させた。
評点;+3点:標準試料に比較し非常に良い
+2点:標準試料に比較し良い
+1点:標準試料に比較しやや良い
0点:標準試料に比較し同等
−1点:標準試料に比較しやや悪い
−2点:標準試料に比較し悪い
−3点:標準試料に比較し非常に悪い
評価基準:
◎:20点以上
○:10点以上〜20点未満
△:−10点以上〜10点未満
×:−30点以上〜−10点未満
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜3は、本発明の範囲外となる比較例1〜3に較べて、毛先のパサつき感もなく、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感も生じることがなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物であることが判明した。
比較例を個別的にみると、比較例1はシリコーン化合物をオイルで配合する従来のヘアリンス組成物のように平均粒径が10μm程度では、すすぎ時から乾燥時にかけてシリコーン化合物がカチオン性界面活性剤と高級アルコールとから一部分離し、単独吸着を起してしまうため、本発明の効果が得られないことが判り、また、比較例2及び3では、シリコーン化合物の添加温度が40℃のため、シリコーン化合物をカチオン性界面活性剤と高級アルコールからなる会合体に被覆させることができず、これらの場合も本発明の効果が得られないことが判った。
【0044】
〔実施例4〜11〕
下記表3及び表4に示す配合成分、上記製造方法1に準拠して実施例1〜3と別配合成分となる各ヘアリンス組成物を調製した。
得られた各ヘアリンス組成物について、上記方法等によりシリコーン化合物の平均粒径及びその存在状態、並びに、実使用した場合の毛先のパサつき感、繰り返し使用時のべたつき感について評価した。
これらの結果を下記表3及び4に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
上記表3及び表4の結果から結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例4〜11は、毛先のパサつき感もなく、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感も生じることがなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物であることが判明した。
また、実施例4〜6、8〜11のヘアリンス組成物は、平均重合度が1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンが含有されているので、実施例1〜3のヘアリンス組成物に較べて、更に、乾燥後のクシ通り性において非常に優れていることが判った。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、繰り返し使用しても髪の根元付近のベタツキ感を生じることなく、毛先まで優れた滑らかさを発現するヘアリンス組成物及びその製造方法が提供される。
Claims (3)
- (A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有するヘアリンス組成物であって、前記(C)成分の製剤中での平均粒径が0.01〜5μmの範囲内にあり、かつ、前記(A)成分と(B)成分とで形成される会合体に被覆された状態にあることを特徴とするヘアリンス組成物。
- 前記(C)成分のシリコーン化合物が、平均重合度1000〜3800の範囲にあるジメチルポリシロキサンである請求項1記載のヘアリンス組成物。
- (A)カチオン性界面活性剤と、(B)炭素数14〜22の高級アルコールと、(C)シリコーン化合物とを含有する請求項1又は2記載のヘアリンス組成物の製造方法であって、前記(A)成分のカチオン性界面活性剤と(B)成分の炭素数14〜22の高級アルコールと液晶形成用水とを加熱混合して60〜85℃にて液晶相を形成せしめ、該液晶相に前記(C)成分のシリコーン化合物を添加混合することを特徴とするヘアリンス組成物の製造方法。
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JP2003088850A JP2004292391A (ja) | 2003-03-27 | 2003-03-27 | ヘアリンス組成物及びその製造方法 |
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JP2015522638A (ja) * | 2012-07-27 | 2015-08-06 | ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ | 組成物 |
JP2016121091A (ja) * | 2014-12-25 | 2016-07-07 | 花王株式会社 | 毛髪化粧料 |
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