このように固相成長では
1.固相成長領域の結晶性を改善すること
2.確実で再現性の高い固相成長を行うこと(信頼性の向上)
が必須の課題である。
上記2つの課題を解決すれば、固相成長法を用い、低温下で結晶性の良好な単結晶を提供することができる。
本発明では、例えば上記固相成長法を用い、占有面積が小さくかつ表面積の大きな電極を形成し、微細でかつ大容量のキャパシタを提供することを目的とする。
本発明では、例えば上記固相成長法を用い、結晶性が良好で信頼性の高い半導体装置および半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
また、本発明では例えば特性の良好なダイオードを提供することを目的とする。
さらに本発明では、特性のばらつきが少なく信頼性の高い薄膜トランジスタおよびトランジスタ集積回路を提供することを目的とする。
本発明の第1では、基板表面に形成された第1の導電型の半導体領域と、その上層に形成された第2の導電型の粒状単結晶シリコンとでpn接合を形成してダイオードを構成している。
本発明の第2では、第1の導電型の半導体領域を含む基板上に、所定の厚さの絶縁膜を介して、非晶質シリコン薄膜を堆積し、第2の導電型のシリコン薄膜を形成し、ついでこの非晶質シリコン薄膜に熱処理を施すことにより固相成長を行い第2の導電型の粒状単結晶シリコンを形成し、さらに該絶縁膜を熱処理により収縮せしめて前記第1の導電型の半導体領域と前記粒状単結晶シリコンとを接触せしめpn接合を形成し、ダイオードを形成するようにしたことを特徴とする。
[作用]
本発明者らは、固相成長法を用いて非晶質半導体薄膜を基板あるいは絶縁膜上に堆積するにあたり、その膜を構成する主元素からなる非晶質膜の平均原子間間隔分布を予め変化させることにより、再結晶化時の形状、膜質を所望に制御する方法(以下、「本発明に関連する方法」という)をはじめて見出した。本発明に関連する方法において、第1は、特に、その膜を構成する主元素からなる非晶質膜の平均原子間隔分布が、単結晶の平均原子間隔分布の1.02倍以上となるような成膜条件で成膜し、さらに平均原子間隔分布を単結晶の場合の1.02倍以上に維持した状態で再結晶化エネルギーを付与し固相成長を行い単結晶半導体薄膜を形成する。第2は、その膜を構成する主元素からなる非晶質膜の平均原子間隔をほぼ単結晶に等しい状態で再結晶化させるものである。
まず、本発明に関連する方法の第1では、非晶質半導体薄膜を、その堆積温度における単結晶の平均原子間隔の1.02倍以上となるような堆積速度で成膜し、熱処理等の再結晶化エネルギー付与によって再結晶化の直前まで原子間隔の緩んだ状態を維持しておき、熱処理時点で一気に再結晶化させることを特徴とするもので、このような状態を形成する方法としていくつかの方法がある。この単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離を持つ非晶質膜を得るには、熱処理の温度における堆積速度および膜厚が大きく支配するものであり、例えばシリコンの場合には、温度及びガス組成を変化させて種々の実験を行った結果、成膜速度Rが下式を満たす条件下でおこなった場合に、平均原子間距離が1.02以上の膜が得られることがわかった。
logR(Å/min)≧−10614/T(K)+14.857
また、単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離を持つ非晶質膜を得るにはその他、熱処理の温度における不純物濃度、熱処理の下地材質、非晶質膜の膜質等が挙げられる。
すなわち(1)それぞれの熱処理の温度における特定の範囲の堆積速度で堆積すること、(2)それぞれの熱処理の温度における特定の範囲の膜厚を用意すること、 (3)それぞれの熱処理の温度における特定の範囲の膜厚と特定の範囲のドーパント不純物濃度を用意すること、(4)それぞれの熱処理の温度における下地材質と特徴づけられる特定の範囲の膜厚を用意することなどが挙げられる。またさらには(5)非晶質表面に、上記原子間隔の緩んだ状態を維持させるため、非晶質膜の表面を清浄表面にする雰囲気とする手段を組み合わせること(6)非晶質表面上に、上記原子間隔の緩んだ状態を維持あるいは一層増幅させるため、非晶質膜表面上に別の膜を被着させ熱処理する手段もある。
なお、非晶質薄膜を形成した後、一旦温度を降下し、再び熱処理を行うようにしてもよいが、熱処理等の再結晶化エネルギーの付与に際して、非晶質薄膜が単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離をもつように、表面を清浄状態にするなどの条件を整える必要がある。また、再結晶化エネルギーは熱エネルギーの他、エレクトロンビームの照射や紫外光の照射など、熱エネルギー以外のエネルギーによってもよい。
また、本発明に関連する方法の第1では、基本的には、共有結合を主体にした半導体や半導体非晶質に適用した例を中心に示すが、金属などにも若干の修正を加えれば適用することが可能である。
例えば、本発明に関連する方法の第3では、開口を有する絶縁膜の形成された基板表面に膜厚80nm以下(さらに望ましくは20nm以下)の非晶質薄膜を堆積して、単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離を持つ非晶質薄膜を得、この非晶質薄膜表面を非酸化性雰囲気中で清浄状態に維持しつつ結晶化エネルギーを付与して、固相成長により単結晶化し、単結晶薄膜を形成するようにしている。望ましくはこの熱処理は、真空度10−4Torr以下さらに望ましくは10−6Torr以下の高真空下で行うようにしている。また望ましくはこの熱処理は、高純度のアルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気で行うようにしている。また望ましくはこの熱処理温度は、450度乃至600℃とするようにしている。さらに望ましくは非晶質薄膜堆積工程と熱処理工程を、同一チャンバー内で真空を破ることなく連続的に行うようにしている。
また本発明に関連する方法の第4では、開口を有する絶縁膜が表面に形成された基板上に、表面から絶縁膜との界面までの距離が、前記界面まで表面の自由原子が到達しうる程度に薄い膜厚を有する非晶質薄膜を堆積して、単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離を持つ非晶質薄膜を得、この非晶質薄膜表面を、表面の自由原子が界面まで自由に到達しうる程度の、自由表面状態に維持しつつ非酸化性雰囲気中で結晶化エネルギーを付与し、固相成長により単結晶化し、単結晶薄膜を形成するようにしている。但しこのときの平均原子間隔はシリコン基板の上に別途設けられたSiO2上に堆積した非晶質シリコン膜でモニタした。
また本発明に関連する方法の第5では、基板表面を覆う絶縁膜に開口部を形成して基板表面を露出させ、この基板表面に膜厚20nm以下の第1の非晶質薄膜を堆積して、単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離を持つ非晶質薄膜を得、この第1の非晶質薄膜表面を非酸化性雰囲気中で自由表面状態に維持しつつ結晶化エネルギーを付与し、固相成長により前記基板を結晶種として単結晶化し、第1の単結晶薄膜を形成し、さらにこの後単結晶薄膜上に膜厚80nm以下の第2の非晶質薄膜を堆積し、第2の非晶質薄膜表面を非酸化性雰囲気中で自由表面状態に維持しつつ結晶化エネルギーを付与し、固相成長により前記基板を結晶種として単結晶化し、単結晶薄膜を形成するようにしている。望ましくは、この第1の非晶質半導体薄膜を結晶化エネルギーを付与する工程は、10−4Torr以下さらに望ましくは10−6Torr以下の高真空下で加熱する工程である。さらに望ましくは、該第1の非晶質半導体に対して電気的に活性な元素を含有せしめるようにしている。さらに、第1の非晶質薄膜の堆積に先立ち、絶縁膜表面に、該第1の非晶質薄膜に対して電気的に活性な元素を含有せしめるようにしている。さらに望ましくは第2の非晶質薄膜に対しても同様に行う。
また、本発明に関連する方法の第6では、絶縁膜表面に前記式に示した堆積速度条件を満たすように非晶質薄膜を堆積して、単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離を持つ非晶質薄膜を得、結晶化エネルギーを付与し、結晶化と同時に原子を凝集させ、粒状の単結晶を形成する。望ましくはこの表面を自由な状態に保ち、原子が膜内で自由に動けるようにし、ケミカルポテンシャル(ギプス自由エネルギー)の変化に注目し、結晶化と同時にシリコン原子を動かし、原子を凝集させ、粒状の単結晶を形成する。
また本発明に関連する方法の第7では、基板表面を覆う絶縁膜の開口部からの固相成長により前記絶縁膜上に形成された単結晶半導体薄膜に、ソース・ドレイン領域を形成しMOS型半導体装置を形成している。また、基板表面を覆う絶縁膜の開口部からの固相成長により開口部から遠い位置まで伸びるように形成した単結晶半導体薄膜内に、複数個の素子を形成するようにしている。すなわち、基板表面を覆う絶縁膜の開口部からの固相成長により前記絶縁膜上に形成された単結晶半導体薄膜と、前記単結晶半導体薄膜内に形成され、それぞれ半導体素子を構成する複数の素子領域とを備えた半導体集積回路において、前記開口部の数が前記素子領域の数よりも少なくなるようにしてもよい。
さらに、本発明に関連する方法の第8では、非晶質半導体薄膜を基板あるいは絶縁膜上に堆積するにあたり、特に、その膜を構成する主元素からなる非晶質膜の平均原子間隔分布が、単結晶の平均原子間隔分布にほぼ一致するように形成し、これに結晶化エネルギーを付与し固相成長を行い単結晶半導体薄膜を形成する。
すなわち本発明は、非晶質半導体薄膜を、結晶化前後で同程度の密度に保つようにし、これにより、結晶化に際し、従来にない低応力化を達成することができ、大幅な結晶化寸法の拡大および膜質の向上などをはかるものである。
この単結晶における原子間距離とほぼ同程度、すなわち単結晶における原子間距離の0.98倍から1.02倍までの非晶質膜を用いるのが望ましく、さらに望ましくは0.995倍から1.005倍とするのが望ましく、このような平均原子間距離を持つ非晶質膜を得るには、堆積速度および膜厚などの成膜条件が大きく支配するものであり、例えばシリコンの場合には、温度及びガス組成を変化させて種々の実験を行った結果、成膜速度Rが下式を満たす条件下でおこなった場合に、平均原子間距離が1.02よりも小さい膜が得られることがわかった。
logR(A/min)<−10614/T(K)+14.857
また、単結晶における原子間距離にほぼ等しい平均原子間距離を持つ非晶質膜を得るにはその他、熱処理の温度における不純物濃度、熱処理の下地材質、非晶質膜の膜質等が挙げられる。
すなわち(1)それぞれ熱処理の温度における特定の範囲の堆積速度で堆積すること、(2)それぞれ熱処理の温度における特定の範囲の膜厚を用意すること、 (3)それぞれ熱処理の温度における特定の範囲の膜厚と特定の範囲のドーパント不純物濃度を用意すること、(4)それぞれ熱処理の温度における下地材質と特徴づけられる特定の範囲の膜厚を用意することなどが挙げられる。また、結晶化エネルギーは熱エネルギーの他、エレクトロンビームの照射や紫外光の照射など、熱エネルギー以外のエネルギーによってもよく、これらを同時に用いても良い。
また、本発明に関連する方法では、基本的には、共有結合を主体にした半導体や半導体非晶質に適用した例を中心に示すが、金属などにも若干の修正を加えれば適用することが可能である。
例えば本発明に関連する方法の第9では、基板上に、非晶質薄膜を、該薄膜の主構成元素の平均原子間隔を測定しつつ、該元素の単結晶における平均原子間隔とほぼ一致するように堆積条件を制御して、非晶質薄膜を堆積し、この非晶質薄膜に結晶化エネルギーを付与することにより固相成長を行い単結晶を形成するようにしている。この平均原子間隔の測定には例えば、ラマン散乱法を用いる。
また本発明に関連する方法の第10では、基板上に、非晶質シリコン薄膜を堆積したのち該非晶質シリコン薄膜中に、例えばシリコンイオンをイオン注入して単結晶における平均原子間隔とほぼ一致させ、この非晶質シリコン薄膜に結晶化エネルギーを付与することにより固相成長を行いシリコン単結晶を形成するようにしている。
さらにまた本発明に関連する方法の第11では、該平均原子間隔を領域毎に選択的に変化させ、その値によって領域ごとに、選択的にイオン注入量を制御するようにしている。
本発明に関連する方法の第12では、凹凸を有する表面(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)に、非晶質薄膜を該薄膜の主構成元素の平均原子間隔が、該元素の単結晶における平均原子間隔とほぼ一致するように非晶質薄膜を堆積し、前記非晶質薄膜に結晶化エネルギーを付与することにより固相成長を行い単結晶を形成するようにしている。この凹凸は20〜40nmのラインアンドスペースを持つ段差とするのが望ましい。
本発明に関連する方法の第13では、同一基板上にMOS型半導体素子とバイポーラ型半導体素子とが混在する半導体装置において、前記バイポーラ素子は、前記MOS型半導体素子を覆う絶縁膜の開口部に露呈する前記MOS型半導体素子のドレイン領域からの固相成長により形成された単結晶半導体薄膜の一部をベース領域とし、該ベース領域は、前記開口部を介して前記MOS型半導体素子のドレイン領域と電気的に接続されるようにしている。
ところで、非晶質から単結晶に再結晶化して行く過程では、不随意に結晶核が発生したり成長する部分があると、結晶性が不良になるばかりでなく、再結晶化寸法が伸びない等の不都合が生じる。結晶性の改善及び結晶化距離(単結晶の形成される範囲)の伸長を目指すには、出来るだけ高速で再結晶化させることである。
本発明者等は、鋭意検討し、種々の実験を重ねた結果、原子間距離に着目した全く新しい方法を見出だした。この方法は、固相成長における非晶質半導体中の個々の原子の動きを制御しようとするもので、今までにない現象を応用しているため、作用は、学問的にはまだ完全に解明されるに至っていないが、本発明者が鋭意調べた結果に基づいて説明する。
非晶質膜を高速で堆積する際、表面を清浄にし、膜厚を薄くしておくと、原子が一応結合しているが、原子間の結合が緩んだ状態を作り出すことができる。これが結果的には、平均原子間距離の寸法増大につながるわけである。そして平均原子間距離の増大を保ったまま、熱処理等のエネルギー付与を行うと表面の原子は動き易くなる。もし、非晶質膜が、所謂「種」になる単結晶露出部分に接触していると、その「種」結晶から、不随意に再結晶化する部分が発生する迄に、一気に高速で再結晶化するようにすれば、再結晶化寸法領域を拡大できる事を見いだした。
また、他方、もし、非晶質膜が、所謂「種」になる単結晶露出部分に接触していないと、一定の膜厚以下の薄い膜を用意した場合、非晶質部分は、結晶成長しながら凝集し、欠陥の無い粒状の単結晶とすることもできることを見いだした。このとき一つ一つの粒は単結晶になるが、本発明者等は、更に、膜厚や温度、下地などを選ぶことでこの粒を、任意の大きさに揃えることができることも見いだした。
さらに、結晶化熱処理温度の低温化や、熱処理時間の短縮、欠陥の低減、結晶方位の制御など原子が動き易いことで多くの制御が可能になった。
また、厚い膜を用いた従来の固相成長法では、図135に示すように、低い温度で結晶成長を進めるため、エピタキシャル成長のように自由な原子の移動ができず、一部の原子に格子の不整合が起きると結晶欠陥としてこの不整合が残ってしまう。そこでシリコン成長に伴う原子位置のずれが歪として残り、これによって双晶などの欠陥が多数発生してしまうということ、あるいは酸化物等の物質が介在することによってもその周辺の歪のきっかけが与えられ、そこから容易に欠陥が生じてしまうという結果になっていたことを発見した。
本発明に関連する方法は、結晶欠陥を生じないようにしながら結晶化を進めるためには、この不整合、歪等を緩和するために非晶質膜3中の原子を低温下でも自由に動けるようにすればよいとし、図1に示すように非晶質膜表面を清浄なまま固相成長させることにより、表面の原子を自由にしておくようにし、歪などのもとになる過剰な原子を表面から逃がしたり、不足した原子を表面から補うようにすることがポイントである。したがって表面を自由表面とするだけでなく、この表面状態が結晶成長界面まで伝わる膜厚80nm以下望ましくは数十nm以下に非晶質半導体膜を形成することも重要なポイントである。これにより600℃以下で固相成長を行うときの歪等を表面から逃がし、欠陥のない単結晶層を形成することを可能にした。
例えば本発明に関連する方法の第3によれば、半導体基板上に膜厚80nm以下の薄い非晶質薄膜を堆積し、この非晶質薄膜表面を非酸化性雰囲気中で自由表面状態に維持しつつ加熱し、固相成長により単結晶化し、単結晶シリコン薄膜を形成すれば、欠陥のない良好な単結晶薄膜を形成することができる。またこの膜の膜厚の下限は、成膜限界を考慮すると特にないが、理論的に超薄膜が形成可能であるとすると格子半径の数倍以上であるのが望ましい。
このように原子の自由な移動を可能にしつつ、熱処理を行うことにより、原子位置の歪による欠陥の発生を抑制し、膜質の良好な単結晶薄膜を形成するようにしている。なお、この600℃以下の温度では不純物の拡散は極めて遅く単結晶中の不純物は移動することができないので下地基板から非晶質中へあるいは単結晶化の進んだ非晶質膜から下地基板へ不純物が移動したりすることはない。
従来の方法では固相成長前に非晶質半導体膜を大気にさらすため表面に自然酸化膜が形成され、表面の原子が酸素との結合により、固定されてしまっている。また大気にさらすことがなくても固相成長のための熱処理雰囲気において表面原子が酸化され、固定されて、原子が押さえ付けられた状態で固相成長せしめられるのが通常であった。
従来、この固相成長時の熱処理雰囲気についてあまり議論されたことはなく、通常の真空度10−3Torr程度までの真空下や、不活性ガス雰囲気中で熱処理が行われることもあったが、真空度10−3Torr程度までの真空下や、通常の不活性ガス雰囲気中には、微量の酸素が含有されており、薄い自然酸化膜が形成されていた。
そこで本発明者らは、熱処理雰囲気を高真空にしたり、特に高純度に制御された不活性雰囲気を用いるようにしたりして、雰囲気から酸素を完全に近い状態に遮断して熱処理を行うことにより、自由表面を維持し、欠陥のない単結晶膜を形成することに成功した。また、非晶質薄膜の形成と固相成長とを別のチャンバーで行う場合には、固相成長に先立ち還元性雰囲気中で自然酸化膜を除去しておくようにすることが必要である。
なお、非晶質半導体膜には下地基板と異なる濃度の不純物をあらかじめ添加しておくこともでき、これによって基板表面の非常に浅い領域に不純物濃度の異なる単結晶層を形成することができる。また非晶質膜の材料そのものを変えて異なる材料の単結晶層を形成するようにすることもできる。
ここで、非晶質膜中の導電性不純物の濃度を制御するには以下の方法を用いる。気体の熱分解を用いる場合には成膜時、半導体材料を含む気体と同時に導電性不純物を含む気体を流して膜中にこの導電性不純物を取り込ませる。また下地基板に不純物が存在する場合にはむしろ不純物を含まない非晶質膜を成膜することにより、p型あるいはn型基板上に表面近傍の数十nmに限定してイントリンシックな層を形成することができ、半導体装置に微細化への利用価値は高い。他の方法として半導体材料のターゲットを蒸発させて高真空中に維持した基板表面に蒸着させる方法であるUHV法も有効である。また蒸発させる方法としてヒータで加熱する方法、電子ビームなどエネルギービームをあてて加熱する、アルゴンイオンなどのイオンを加速してぶつけターゲットの原子をたたきだすスパッタリング法等がある。いずれの方法を用いても同時に半導体材料以外の導電性不純物をターゲットとして用いて一緒に蒸着させれば下地基板と不純物濃度の異なる非晶質膜を形成することができる。あるいはまた導電性不純物を含む半導体材料をターゲットにしてもよいことはいうまでもない。
この方法において望ましくは、この熱処理を、真空度10−4Torr以下の高真空下で行うようにすれば、酸素濃度が極めて微量となり、表面酸化膜の形成を抑制することができ、膜質の良好な単結晶を形成することが可能となる。
また望ましくはこの熱処理を、高純度のアルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気で行うようにすれば酸素濃度が極めて微量となり、表面酸化膜の形成を抑制することができ、膜質の良好な単結晶薄膜を形成することが可能となる。 またこの方法において望ましくはこの熱処理温度を、450度乃至600℃とすることにより、不純物の拡散をほとんど皆無とすることができ、界面特性を良好にすることができる。
さらにこの方法において望ましくは非晶質薄膜堆積工程と熱処理工程を、同一チャンバー内で真空を破ることなく連続的に行うようにすれば、極めて容易に良好な単結晶薄膜を形成することが可能となる。
また本発明に関連する方法の第4の方法では、半導体基板上に、表面から半導体基板との界面までの距離が、前記界面まで表面の自由原子が到達しうる程度に薄い膜厚を有する非晶質薄膜を堆積し、この非晶質薄膜表面を、表面の自由原子が界面まで自由に到達しうる程度に、自由表面状態に維持しつつ非酸化性雰囲気中で加熱し、固相成長により単結晶化し、単結晶を形成するようにしているため、表面の原子は自由に動くことができ、歪のない良好な単結晶薄膜を形成することができる。
また本発明に関連する方法の第5の方法では、半導体基板表面に形成された絶縁膜の開口部を形成して基板表面を露出させ、この基板表面に膜厚20nm以下の第1の非晶質薄膜を堆積し、非晶質薄膜表面を非酸化性雰囲気中で自由表面状態に維持しつつ加熱し、固相成長により前記基板を結晶種として単結晶化し、第1の単結晶薄膜を形成することにより自由に原子が移動して結晶性の良好な膜を得ることができ、さらにこの後単結晶半導体薄膜上に膜厚80nm以下の第2の非晶質薄膜を堆積し、第2の非晶質薄膜表面を非酸化性雰囲気中で自由表面状態に維持しつつ加熱し、固相成長により前記基板を結晶種として単結晶化し、第2の単結晶薄膜を形成するようにしているため、ここでも自由に原子が移動して結晶性の良好な膜を得ることができ、ブランケット形状の半導体層を低温下で良好に形成することができる。
この方法において望ましくは、この第1の非晶質半導体薄膜を加熱する工程は、10−6Torr以下の高真空下で行うようにすれば、表面の原子がよりマイグレートし易い状態になり単結晶化が促進されて、シードとなる開口部表面から遠く離れた位置まで広範囲の単結晶化が可能となる。
また、さらに該第1の非晶質半導体に対して電気的に活性な元素を含有せしめることにより、単結晶化速度が増大する。
さらに、第1の非晶質半導体薄膜の堆積に先立ち、絶縁膜表面に、該第1の非晶質半導体に対して電気的に活性な元素を含有せしめることによっても単結晶化速度が増大する。
また本発明に関連する方法の第6では、絶縁膜表面に非晶質薄膜を堆積して、単結晶における原子間距離の1.02倍以上となる平均原子間距離を持つ非晶質薄膜を形成し、この結晶化と同時に原子を凝集させ粒状の単結晶を形成することにより、極めて結晶性が良好で粒径の揃った単結晶粒が、リソグラフィの精度に依存することなく容易に形成される。
本発明に関連する方法の第7では、結晶性の良好な単結晶薄膜が、基板と開口部を介して電気的に接続されており、ドレイン近傍で発生するインパクトイオン化による電流を基板に流すことができ、素子動作の安定したMOSトランジスタを得ることができる。また、チャネル領域を結晶性の良好な超薄膜とすることができるため、高速動作が可能である。さらにチャネル領域に不純物のほとんど入っていない層(i層)を形成することができるためキャリアの走行が不純物によって妨げられることのない高移動度のトランジスタを得ることができる。さらには、1個の開口部(種)から結晶性の良好な単結晶薄膜を遠くまで延ばすことができるため、基板表面を覆う絶縁膜の開口部からの固相成長により開口部から遠い位置まで単結晶半導体薄膜を延ばし、複数個の素子を形成するようにすれば、他の素子領域からの制限を受けることなく、結晶性の良好な薄膜形成を行うことができる。ここで単結晶薄膜の形成に際しては、本発明に関連する方法の第1、第2、第8、第9などの方法を用いる。
さらにまた、本発明者らは、検討の結果、従来の方法で成長距離が遠くまで伸びないことおよび成長距離に確率的な分布が見られることに関しては、成長端(非晶質と結晶との界面)が一定の速度で進まず波打っていることに起因していることを発見した。
また結晶性が悪い原因に関しては、1μm程度以上延ばすと双晶などが急激に増えていることを見つけた。とくに現状のプロセスでは、比較的良好な結晶性をもつ領域は1μm程度であり、能動デバイスを作成するためには寸法不足であることがわかった。
そこで、本発明者等は、鋭意検討し、種々の実験を重ねた結果、原子間距離に着目した全く新しい方法を見出だした。すなわち、高分解能の透過電子顕微鏡および顕微ラマン分光法をなどを用いてこの原因を調べ、結晶性の良好な単結晶を確実に得ることのできる方法を見出だした。また、さらには新しい応用として完全に配向した単結晶粒を提供する方法を見出だした。
具体的には、小型電気炉を用いて横方向固相成長の成長距離時間依存性を調べるとともに、透過電子顕微鏡を用いてその成長端を詳細に評価し、顕微ラマン法を用いて膜内の応力分布を測定した。その結果、本発明者らは成長距離と優先成長面、結晶欠陥および残留応力の間に非常に重要な関連性があることを把握し、この知見をもとに固相成長伸長策および単結晶の結晶性向上策を発見し、さらには完全配向単結晶粒の形成をも行い、実験的にも確認した。
特に、結晶化に際し低応力化をはかるために、原子間距離をほぼ単結晶のそれに等しくするには、それぞれの熱処理温度における原子密度が大きく支配するものであり、その他
それぞれの熱処理温度における不純物濃度
それぞれの熱処理温度における表面状態
それぞれの熱処理温度における下地膜の材料および構造
などが挙げられる。
すなわち、非晶質から単結晶に結晶化していく過程で、非晶質と単結晶の平均原子間距離が異なると結晶化に伴って応力が生じ、さらにこのような応力が結晶化界面の面方位を変化させ、さらには結晶欠陥を誘起し、また単結晶化寸法が伸びないなどの不都合を生じるということを発見し、この不都合を防ぐために、非晶質膜の平均原子間隔を単結晶の平均原子間隔とほぼ同程度(0.98倍以上1.02を越えない程度望ましくは1.01以下)とすることで、結晶化に際しての応力を抑制し結晶性の改善および単結晶化距離の伸長を可能にした。また、これにより表面から自己単結晶を成長させ得ることをも見出だし、これにより完全単結晶粒を得た。
この方法による作用は、今までにない現象を応用しているため、学問的にはまだ完全に解明されるに至っていないのが現状である。
本発明に関連する方法の第8によれば、双晶など結晶欠陥のない結晶性の良好な単結晶を遠くまで伸長せしめることができる。
また本発明に関連する方法の第9では、基板上に、非晶質薄膜を、ラマン散乱法等を用いて該薄膜の主構成元素の平均原子間隔を測定しつつ、該元素の単結晶における平均原子間隔とほぼ一致するように堆積条件を制御して、非晶質薄膜を堆積しているため、結晶化に際して密度変化が小さいため、応力の発生を抑制し、良好な単結晶を得ることができる。
また本発明に関連する方法の第10では、堆積された非晶質シリコン薄膜中のシリコンの平均原子間隔を測定する等の方法で、注入値を決定し、この値に基づき、シリコン単結晶における平均原子間隔に近づけるようにシリコンイオンをイオン注入して単結晶における平均原子間隔とほぼ一致させ、この非晶質シリコン薄膜に熱処理等を施すことにより、第2と同様結晶化に際して密度変化が小さいため、応力の発生を抑制し、良好な単結晶を得ることができる。
ところで、種から近い所から再結晶化していくため、遠いところでは、原子間隔が大きくなっていく。そこでこの点に着目し、本発明に関連する方法の第11では再結晶化に先立ち、所定の領域に選択的にイオン注入するようにしている。すなわち堆積された非晶質シリコン薄膜中のシリコンの平均原子間隔を領域ごとに測定し、この値に基づき、所定の平均原子間隔となるように領域ごとに算出された量のシリコンイオンをイオン注入して単結晶における平均原子間隔とほぼ一致させ、この非晶質シリコン薄膜に熱処理を施すことにより、結晶化に際して密度変化が小さいため、応力の発生を抑制し、良好な単結晶を得ることができる。
さらに本発明に関連する方法の第12では、表面に凹凸を有する基板(絶縁膜、半導体膜、導電膜)上に、非晶質薄膜を該薄膜の主構成元素の平均原子間隔が、該元素の単結晶における平均原子間隔とほぼ一致するように非晶質薄膜を堆積し、該非晶質薄膜に結晶化エネルギーを付与することにより固相成長を行い単結晶を形成するようにしているため、歪の発生が抑制されて結晶性が良好で、配向性の良い単結晶が形成される。ここでこの凹凸は20〜40nm程度とするのが望ましい。
本発明に関連する方法の第13では、バイポーラ素子を、MOS型半導体素子を覆う絶縁膜の開口部に露呈するMOS型半導体素子のドレイン領域からの固相成長により形成された単結晶半導体薄膜の一部をベース領域とし、該ベース領域が、前記開口部を介して前記MOS型半導体素子のドレイン領域と電気的に接続されるように形成しているため、接続部の結晶性が極めて良好で、接触抵抗が小さい上、積層構造であるにもかかわらず低温下で形成でき、下地側の素子の劣化を生じることがない。また電流値をバイポーラ素子で増幅することができるため、下側のMOS型半導体素子の電流値を増幅して、出力を大電流とすることにより高速動作を可能とすることができる。
本発明の第1乃至第14では、以上のような本発明に関連する方法を用いて得ることができる。
本発明の第1では、基板あるいは基板上に形成された薄膜上に、粒径よりも粒間距離が小さくなるように粒状の半導体もしくは絶縁体を各々分離形成して、これを素子領域として用いるようにしているため、特性が良好で信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
本発明の第2では、基板あるいは基板上に形成された薄膜上に、粒径よりも粒間距離が小さくなるように粒状の半導体もしくは絶縁体を各々分離形成して、これを素子領域として用いるようにしているため、特性が良好で信頼性の高い半導体装置を得ることができる。粒の形成に際しては第1、第2、第8、第9などの方法を用いる。
本発明の第3では、単結晶シリコンは、下地の基板あるいは薄膜表面に対する垂直軸がほぼ<100>方向に配向するように構成しているため、微細な素子を形成する際にも特性にばらつきがなく信頼性の高いものとなる。
本発明の第4の半導体装置では、粒状の単結晶シリコンは、最も出現頻度の高い粒径を中心に、その粒径の±20%以内に、90%以上の粒が含まれる粒径分布を有するため、微細な素子を形成する際にも特性にばらつきがなく信頼性の高いものとなる。
本発明者らが提案する主旨は、前述した通りであるが、その指摘するところに従って作成した半導体薄膜が、上記の様に、従来膜質をはるかに越えた良質な膜を提供する理由についてはまだ十分な解析が進んでいないのが現状である。
しかし、本発明者らは、鋭意検討し計算物理学に則り、今までにない新しいしかも厳密な計算機シミュレータを作成しその原理を推測できる域に達した。以下に本発明者らが、新しく作成したシミュレータを説明し、同シミュレータによる解折を説明する。
このシミュレータシステム中で最も重要なのは、Si原子間に働く力の算出と、さらには原子のポテンシャルの算出である。本発明者は、どのようなポテンシャルを採用するのが最もSi半導体にふさわしいかを予め十分に調査した。その結果、本発明者が対象としている問題、即ち再結晶化現象や非晶質を含む系には、基本的にはTersoffのポテンシャルを用いるのが良いと考えた。本発明者らは、Tersoffのポテンシャルに独自の改良を加えるとともに、数学的にも今までにない厳密な変形導出を加えた。ポテンシャルの大きさが分かれば、そこから粒子に加わる力や、速度等は容易に求められることになる。
本発明者によれば、独自に改良したTersoffに従い、i番目のSiに関する全ポテンシャルは
Σ(1/2)(Vij+Vji) …(1)
で記述できる。
本発明者による改良型Tersoffのポテンシャルは3体以上の粒子間の力を考慮しているので、上記(1)式に於いてVij≠Vjiである。着目するSi粒子の位置番号をiとし、その周辺の他の粒子番号をjとすると、上記Vijは
Vij=fc(rij){aijfR(rij)+bijfA(rij)} …(2)
である。
ここでrは粒子間の距離である。また、fc(rij)は、カットオフ関数と呼ばれ、fR(rij)は斥力を示し、またfA(rij)は引力を示す。aijは配位数を考慮したカットオフ係数、bijも配位数を考慮したカットオフ係数である。
本発明者による改良型Tersoffでは、配位数に特殊なパラメタを持たせることによって、陰に3体以上の力の効果を取り入れている。fRとfAは、Morse型のポテンシャルを変形したもので、
fR(r)=Aexp(−λ1r)、fA(r)=−Bexp(−λ2r)
である。
この内、λ1とλ2は定数であり、その大きさは原子間距離程度の値の逆数である。
これらを代入すると
Vij=fc(rij){aijAexp(−λ1r)−bijBexp(−λ2r)}
となる。
ところで、カットオフ関数fc(rij)は、
fc(r)=1 (r≦R−D)
fc(r)=1/2−1/2sin{(π/2)(r−R)/D} (R−D<r<+D)
fc(r)=0 (r≧R+D) …(3)
であり、ここに、Rは、通常対象とする構造の第一隣接ゾーンだけを含むようにその寸法を選ぶ。その値は大体2〜3オングストロームである。
次に、実効配位数bijであるが、ここでも上記カットオフ関数を使う。その定義は、本発明者による改良型Tersoffによれば、
bij=(1+βnζij n)−1/2n …(4)
ここに
ζij=ΣfC(rik)g(θijk)exp{λ3 3(rij−rik)3} …(5)
である。Σ記号はk≠i、jで回す。
ここで分かる様に、ζijの意味は第3の原子kが入ることによる環境因子であるので、i原子から見た場合とk原子から見た場合、互いに大きさは異なる。即ち、ζij≠ζjiである。
従って、bij≠bjiであり、さらに、上記(1)式で述べた様に、Vij≠Vjiである。
また、g(θ)はボンド角因子であり、
g(θ)=1+(c2/d2)−c2/(d2+cosθ2) …(6)
である。ここで、θは図136の様に取るものとする。θを求めるに当たり、実際の直交座標を用いて表現してみる。
即ち
rij=[{(xj−xi)2+(yj−yi)2+(zj−zi)2}]1/2 …(7)
であり、rikも同様の手続きで求められる。
そうすると内積をPijkとすると、
Pijk=(xj−xi)(xk−xi)+(yj−yi)(yk−yi)+(zj−zi)(zk−zi) …(8)
である。
これらを用いて
cosθijk=Pijk/(rijrik) …(9)
となる。
ここで、上記各式に於ける定数を示す。即ち、
R=3.0Å、D=0.2Å、A=3264.7eV、B=95.373eV、C=4.8381、
λ1=3.2394Å、λ2=1.3258Å、λ3=λ2、 …(10)
β=0.33675、n=22.956、d=2.0417
である。
以上の準備をした後、本発明者は、Si原子間に働く力の算出と、運動の速度の算出について、今までに類をみない厳密に計算を進めた。ポテンシャルの(2)式を位置の座標で微分すると力になる。即ち、
−(1/2)(∂Vij/∂xi) …(11)
−(1/2)(∂Vij/∂xj) …(12)
がそれぞれ粒子i,jに働く力のベクトルのx成分である。しかし実際にはこれを求めるに当たり、本発明者は各変数の寄与を慎重に詰め、厳密な高階偏微分式を作成した。
角度成分や動径成分を計算するにあたり、その順序を図137に示す様に整理して考えてみた。
(11)式及び(12)式で述べた式の値を、偏微分方程式の公式と、図137の呼応関係図を頼りに求めてみた。即ち、
−(1/2)(∂Vij/∂xi)=(1/2)[(∂Vij/∂rij)(∂rij/∂xi)+(∂Vij/∂ζij){(∂ζij/∂rij)(∂rij/∂xi)+Σ(∂ζij/∂rik)(∂rik/∂xi)+Σ(∂ζij/∂cosijk)(∂cosθijk/∂xi)}] …(13)
また、jに関する偏微分方程式の変形は、同様に下の様になる。特に、上記との対応が分かる様に、空白部分は空白のままにして置いた。
−(1/2)(∂Vij/∂xj)=(1/2)[(∂Vij/∂rij)(∂rij/∂xj)+(∂Vij/∂ζij){(∂ζij/∂rij)(∂rij/∂xj)+Σ(∂ζij/∂cosijk)(∂cosθijk/∂xj)}] …(14)
また、kに関する偏微分方程式の変形も、同様に下の様になる。上記(13)式との対応が分かる様に、空白部分は空白のままにして置いた。
−(1/2)(∂Vij/∂xk)=(1/2)[(∂Vij/∂ζij){(∂ζij/∂rik)(∂rik/∂xk)+(∂ζij/∂cosθijk)(∂cosθijk/∂xk)}] …(15)
と分解する。
そしてVijについては(2)式を用いて偏微分式を実際に求めてみると、
∂Vij/∂rij=(∂fc(rij)/∂rij){Aexp(−λ1rij)−bijBexp(−λ2rij)}+fc(rij){−λ1Aexp(−λ1rij)+λ2bijBexp(−λ2rij)}
=Aexp(−λ1rij){(∂fc(rij)/∂rij)−λ2fc(rij)}−Bexp(−λ2rij){(∂fc(rij)/∂rij)−λ2fcrij)}bij …(16)
となる。
ところで、∂fc(rij)/∂rijは
∂fc(rij)/∂rij=(−π/4D)cos{(π/2)(r−R)/D} (R−D<r<R+D)
∂fc(rij)/∂rij=0 (その他の場合) …(17)
また、
∂Vij/∂ζij=(∂Vij/∂bij)(∂bij/∂ζij)
=−Bfc(rij)exp(−λ2rij)(−1/2n)(1+βnζijn)−1/2n−1βnζijn−1
=Bfc(rij)exp(−λ2rij)bij(βζij)n/[2{1+(βζij)n}ζij] …(18)
さらに
∂ζij/∂rij=3λ3 3Σfc(rik)g(θijk)exp{λ3 3(rij−rik)3}(rij−rik)2 …(19)
∂ζij/∂rik=(dfc(rij/dij)g(θijk)exp{λ3 3(rij−rik)3}−3λ3 3fc(rik)g(θijk)exp{λ3 3(rij−rik)3}(rij−rik)2 …(20)
∂ζij/∂cosθijk=fc(rik)exp{λ3 3(rij−rik)3}dg(θijk)/dcosθijk
=fc(rik)exp{λ3 3(rij−rik)3}[2c2cosθijk/{d2+cos2θijk}2] …(21)
そして最後に
∂rij/∂xi=(xi−xj)/rij
=−∂rij/∂xj …(22)
さらに
∂rik/∂xi=(xi−xk)/rik
=−∂rij/∂xk …(23)
cosθijk/∂xi={1/(rijrik)}∂Pijk/∂xi+Pijk[(1/rik){∂/∂xi(1/rik)}+(1/rij{∂/∂xi(1/rik)}]
={1/(rijrik)}(xi−xk+xi−xj}−Pijk[{(xi−xj)/(rikrij 3)}+{(xi−xk)/(rijrik 3)}]
=(1/rik)[{(xi−xj/rij}−{(xi−xk)/(rikcosθijk}]+(1/rij)[{(xi−xk)/rik}−{(xi−xj)/rijcosθijk}] …(24)
∂cosθijk/∂xj=(−1/rij)[{(xi−xk/rik}−{(xi−xj)/(rijcosθijk}] …(25)
∂cosθijk/∂xk=(−1/rik)[{(xi−xj/rij}−{(xi−xk)/(rikcosθijk}] …(26)
以上はx方向について演算したものなので、これらの他にy方向や、z方向のものも用意する必要がある。その場合それぞれの最終変形式に於けるxを単にyやzに変化させれば良い。
さらに、本発明者は計算を進めた。定積計算とは、原子の運動があっても系の全体体積を一定に保つものである。上記今まで述べてきた手法は、定積計算であり、体積変化には格段の注意を払っていない。しかし、例えば再結晶化固相成長はおおむね体積変化を伴う。この場合、一般的には、運動エネルギからなる内部エネルギと、さらにポテンシャルエネルギと、エントロピ及び体積等を考慮したラグランジアンに戻り、ラグランジアンに対する運動方程式を立てる必要がある。ラグランジアンは次の様に記述できる。
即ち、
L(ri、∂t、V、∂V/∂t)=(1/2)Σm(∂ri/∂t)2+{(1/2)M(∂V/∂t)2}−PEV
である。
ここでPEは外部圧力であり、定圧計算の場合は、内部圧力がこれに等しくなる様に体積Vが変動する。またMは仮想質量である。これを基にラグランジアンに対する運動方程式を立てる。
即ち、
(∂L(qj,q´j)/∂qj)−d(∂L/∂q´j)/dt)=0
である。
この式を基に計算を進めれば良い。本発明者はこの部分についても厳密な作業を進めた。
本システムは上述したように個々のSi原子の運動を厳密に調べるものである。従って基本的な出力は個々粒子の各時間における、位置、速度、力等であるが、もっとマクロ的な諸量を算出することもできる。即ち、その一例として、熱伝導率をも求めることが出来る。本発明者はこの熱伝導率を算出する事によってその精度及び基本動作を検討した。また、このシステムでは単結晶を有限の温度として扱える様に工夫した。従来の演算方式では単結晶を絶対零度とするものがあったがこれでは熱流束が無限大となり、正確な伝導率の計算は出来なかった。今回、本発明者は「熱浴」を結晶の両端に付加し得るようにし、エネルギのやりとりを管理した。計算の結果、図138に示す様に、180Watt/meter/Kelvinの値を得ている。これは一般の文献によれば148〜150Watt/meter/Kelvinであるので、20%程度の誤差範囲内でほぼ満足な値である。
まず、このシミュレータを用いて、酸化膜上の非晶質薄膜の各粒子の時々刻々の運動を克明に検討した。例えば、600℃において結晶成長が進んでいる最中の成長端の各粒子の運動を図139に示す。非晶質薄膜中の原子密度が成長端の付近で低くなっていることがわかる。
上記シミュレータを用いて解析した結果を以下に記す。
まずこのシミュレータを用いて、酸化膜上の非晶質薄膜の各粒子の時々刻々の運動を克明に検討した。その結果を表1に示す。
特に計算では、Si原子の搖れの分布からまず、算術平均寸法を求め、この値からのズレの2乗和の平方根を∂xで表現してみた。この∂xの値の深さ方向の平均が、上述してきた平均原子間距離に相当するものである。また、表1は非晶質薄膜の再結晶化直前の表面層からほぼ1オングストローム程度の深さまでの粒子を対象にして算出したものである。表1からわかる様に、例えば600℃においては、∂xは0.3135オングストロームであり、他方、非晶質薄膜上に酸化膜を被着させた状態での再結晶化直前の∂xの値を求めたのが、下段の値である。即ち、600℃では0.1792オングストロームである。ここでも、表面層からほぼ1オングストローム程度の深さまでの粒子を対象にして算出したものである。
上記2つの値から比較するとわかる様に、明らかに酸化膜が表面に被着していると、原子の揺らぎ寸法は小さくなっていることがよく分かる。この∂xの変動の影響範囲を求めたところ、600℃程度であれば、ほぼ200オングストローム程度まで残存することが分かった。
さらに計算を進め、525℃で表1に示す様に、表面酸化膜が被着していない時は、∂x=0.3011オングストロームであり、表面酸化膜が被着している時は、∂x=0.1700オングストロームである。さらに400℃では、表1に示す様に、表面酸化膜が被着していない時は、∂x=0.2782オングストロームであり、表面酸化膜が被着している時は、∂x=0.1542オングストロームである。
このシミュレーション結果の指摘するところに従って作成した解析してみると次の様に解釈できる。即ち、半導体薄膜が、上記の様に、薄くなると、平均原子間距離が増大し、原子が非常に動き易い状態になるのである。従って、この様な状態では、「種」部から非常に高速に再結晶化するだけでなく、非常に良質な結晶が得られるわけである。図6(a)および(b)に本発明による、膜厚と平均原子間隔の算出値と実行値を示す。図6の横軸は膜厚の深さ方向を示し、縦軸は平均原子間隔距離を示している。膜厚が薄くなるほど、平均原子間距離が大きくなるのがわかる。
また、「種」部が無い状態の場合には、非晶質膜は、順次凝固して行き粒状になることが確認できた。このとき、本発明者らの計算によれば、非晶質膜が一端、凝固を始め、粒状になり出すと、内部エネルギのはけ口が無くなるので、その分だけ、温度が若干上昇し、再結晶化が一層促進されることが見いだされた。
試作したシミュレータの予想では、再結晶化前では、膜厚が薄くなるほど、非晶質膜表面及び膜中は結合状態が「緩んで」おり、下地界面のみが、その構造情報を与えている。
また、本発明者等は、なぜこのように、粒状になるかについても、上記シミュレータを用いて解折した。その結果、内部エネルギを小さくしようとする力によるものであることが確認できた。
以上のことから、本発明者の検討結果では、得られる単結晶膜の膜質と成膜ガス中の酸素分圧との関連は全くなく、別の現象であることを突き止めた。本発明者等の提案する方法によれば、非常に良好な単結晶が得られており、双晶等は全く認められていない。
また、「種」部がない状態の場合には本発明者らの計算によれば、表面側から結晶化が始まり、下方に向かって結晶化が進行し、結晶成長端の先に、低原子密度領域が発生することが見出だされた。また同時にシミュレータを用い、低原子密度領域で引っ張り歪みが発生していることも見出だした。
さらにまた、非晶質薄膜を600℃程度の温度に加熱すると再結晶化が開始される。このとき成長端付近の非晶質中には原子密度が低い領域が形成される。もともと非晶質膜が一般的成膜条件のCVD法などにおいて成膜されると単結晶よりも密度が低く、平均原子間隔が大きくなる。再結晶化の際には、もとの状態よりも密度を高める必要があるため、非晶質膜側の原子が結晶側に多めに引き寄せられるためである。結晶化が進むほど、結晶化端での低密度化は顕著になる。しかしあらかじめ、単結晶とほぼ等しい平均原子間隔の非晶質を用意すると、低密度領域は出現しないことになる。従って結晶化距離が遠くまで伸長することになる。
これを証明するために、次に示すような実験を行った。まず図140に示すように(100)シリコン基板上に絶縁膜を形成しこの一部を開口しシリコン基板を種とした試料を用い、従来の堆積条件で525℃、SiH4分圧1Torrで膜厚200nmのアモルファスシリコン膜を堆積し、600℃の熱処理をおこない[100]方向の成長について測定した。
これを光学顕微鏡で測定した結果を図141(a)に示す。この図は試料を真上から撮影した典型的な光学顕微鏡写真であるが、白い領域がすでに結晶化が進み単結晶になった領域である。1μmまで再現性よく「種」から均一に伸びるが、さらに長く熱処理を行うと成長端が波状になってくることがわかった。図141(b)は600℃5分間の熱処理後写真撮影を行う手順を数回繰り返し、横方向に固相成長していく時の成長端の移動から求めた典型的な成長距離の時間依存性を示す。図中の直線は原点を通らないが、成長のはじめにまず「種」から真上に伸び、次に横にのびはじめるため、上に伸びている時間だけ横に伸び始めるのが遅れていると考えられる。図中にひいた各々の直線の傾きから成長速度を求めると、aおよびbで多少ばらつきがみられるが、1.5〜2.0μmまでは成長速度100nm/分で進み、その後その1/4まで成長速度が遅くなる。一旦成長が遅れ始めた場所では成長速度は回復せず成長端は波状になる。そして最後は「種」以外のところから発生した結晶とぶつかって成長が止まる。
次に、この成長途中の成長端(アモルファスシリコンと結晶との界面)を断面の透過電子顕微鏡観察(TEM)で詳細に解析した。典型的な例として0.5μmまで成長させたものと2μmまで成長させたもの成長端の断面写真を図142、143、144、145に示す。この結果これらはそれぞれ(110)シリコン面優先成長モードと(111)シリコン面優先成長モードであることを見出だした。
これを図146に模式図で示す。すなわち[100]方向に横方向成長するに従い優先成長面が変化していくことを見出だした。
さらに本発明者らは、この膜内の応力を顕微ラマン法を用いて測定した。この結果図147に示すように、「種」ではほとんど応力がみられず「種」から1μm程度離れたところで3×109dyn/cm2にまで達していることがわかった。
これらの事実から、(110)シリコン面から(111)シリコン面への優先成長面の変化について以下のように考察した。
まず、シリコンの剪断降伏応力についてはこの結晶化を進めている温度では、2〜3×109dyn/cm2と思われる。この値は「種」から0.5μm以上横に成長した位置で発生するとみられる。この応力によって(111)シリコン面のずれが起こり(111)シリコン面の優先成長に変化していくと考えた。とくにこの考えでは成長が進むと、(111)双晶が引き続き起こるので、1μm以降では応力は一定値になり、しかも結晶性は回復しないはずである。事実、断面TEMで観察すると図26で示したように双晶が見えている。また若干寸法位置に誤差はあるが、成長速度の変化する点が(111)面優先成長モードの発生位置に相当している。
このように膜中の応力が結晶成長に極めて不利であることを発見し、この応力を低減すべく、応力発生の原因を種々考察した。この結果、応力は「種」部にはみられず成長に伴い増加している。そこで膜が結晶化するときの体積変化がその原因の1つであることに気付きこれに着目した。
膜が成長するに従い体積が変化するということは、同じ元素で構成されていても単結晶状態と非晶質状態で原子間の結合距離が変わる事によると考えられる。そこで非晶質状態でも単結晶の状態と同じ平均原子間隔にしておけば応力が生じないはずであると考えた。
このような予測から、単結晶の平均原子間隔にほぼ一致するような原子間隔の非晶質薄膜を形成して横方向固相成長を行ったところ、予測通り(110)面優先成長が10μm以上も続き、双晶など結晶欠陥がなく結晶性の良好な単結晶薄膜を得ることができた。
このように、非晶質膜が、所謂「種」になる単結晶露出部分に接触していると、その「種」結晶から、一気に高速で再結晶化し、不随意に再結晶化する部分が発生する迄に、再結晶化寸法領域を拡大できるわけである。
また、他方、非晶質膜が、所謂上記「種」になる単結晶露出部分に接着していない場合は、一定の膜厚以下の薄い膜を用意した場合、非晶質部分は、個々に、結晶成長しながら凝集し、粒状の欠陥の無い単結晶になる。
本発明は、原子間距離に着目した全く新しい方法を提供している。この方法による効果は、今までにない現象を応用しているので、学問的にはまだ完全に解明されるに至っていないが、現段階では、上記の様に説明できる。
本発明では、基板表面に形成された第1の導電型の半導体領域と、その上層に形成された第2の導電型の粒状単結晶シリコンとで極めて良好なpn接合を形成しているため、特性が極めて良好でかつばらつきの小さいダイオードを得ることができる。
また、本発明では、第1の導電型の半導体領域を含む基板上に、所定の厚さの絶縁膜を介して、非晶質シリコン薄膜を堆積し、第2の導電型のシリコン薄膜を形成し、ついでこの非晶質シリコン薄膜に熱処理を施すことにより固相成長を行い第2の導電型の粒状単結晶シリコンを形成し、前記第1の導電型の半導体領域と前記粒状単結晶シリコンとの間の該絶縁膜を熱処理により収縮消失せしめ、接触せしめてpn接合を形成し、ダイオードを形成するようにしているため、微細でかつ特性が極めて良好でかつばらつきの小さいダイオードを得ることができる。
本発明では、非晶質半導体薄膜を基板あるいは絶縁膜上に堆積するにあたり、特に、その膜を構成する主元素からなる非晶質膜の平均原子間隔分布が、単結晶の平均原子間隔分布にほぼ一致するように形成し、これに再結晶化エネルギーを付与し固相成長を行い単結晶半導体薄膜を形成する。
以下、実施例を用いて図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、第1の参考例ではSi単結晶薄膜を得るにあたり、非晶質Si膜の平均原子間隔を、予め、Si単結晶の平均原子間隔の1.02倍以上からなる膜を用い、非晶質膜の表面に酸化膜の成長付着を抑止し固相成長直前まで原子間隔を緩めるため、非酸化性雰囲気であるN2雰囲気にして、熱処理した。
図2は、本発明の第1の参考例の薄膜形成装置の概略を示す図である。この装置は、チャンバー101と、膜堆積用の原料ガス導入口102と、排気口103と、薄膜を形成すべき試料を載置する試料台104とを具備している。本参考例では、例えば原料ガスとして水素H2やSiH4あるいはジシラン等を導入するようになっており、また必要に応じてドーピングガスも導入可能である。図では簡略化のため、導入口は1つになっているが、これも必要に応じて試料台近傍まで別々に導入するようにしても良い。試料台104は加熱機構を具備しており、温度は適宜上昇あるいは降下できるようになっている。さらにここでは結晶性を判定するための評価装置(特殊REEHD装置)を具備しており、試料表面にビームを照射するビーム照射手段105と、試料表面からの反射電子を受ける受光管106とによって、「平均原子間隔」を高精度にモニタすることができるようになっている。このビーム照射手段および受光管は、試料表面に非常に小さい角度で入射及び反射させることができ、また適宜角度を変更できる。さらに上方には、結晶性評価装置の一つである、特殊ラマン分光器107が設けられている。この装置を用いて薄膜形成を行う方法について説明する。図3(a)および(b)は、本発明の第1の参考例の膜堆積のシーケンスの概略を示す図である。図3中横軸は時刻であり、縦軸は温度である。図4(a)乃至(c)は薄膜形成工程を示す図である。ここで縦軸の温度は図2の試料台104に付着させた熱電対で測定した。勿論上記熱電対は十分較正をしたものを用いている。
まず、図4(a)に示すように、p型の単結晶(100)シリコン基板201表面に予め酸化シリコン膜202を堆積させ、フォトリソグラフィにより開口部203を作成した。そして薄膜の堆積に先立ち、図3(a)および(b)の点T1以前の時点で基板等の清浄化を行うため、所定の温度及びガス組成で処理をした。
引き続き、図4(b)に示すように膜厚315オングストロームの非晶質シリコン膜204を堆積する。図3では点T1から点T2の間が所謂成膜工程に相当し、例えばこの参考例1では525℃であった。
そしてこの後窒素N2雰囲気中で再結晶化のための熱処理を行う。これは図3中時点T3からT4に相当し温度は例えば600℃であった。しかる後に温度を降下させ、時点T5以降で取りだす。このようにして図4(c)に示すように単結晶シリコン膜205が得られる。ここで、点1から点T2の成膜を、温度及びガス組成を変化させて行った結果、成膜速度Rが下式を満たす条件下でおこなった場合に、平均原子間距離が1.02以上の膜が得られた。
logR(Å/min)≧−10614/τ(K)+14.857
この条件が示す領域を図5に記す。この条件以外の領域では、平均原子間隔が1.02を上回る膜は成膜できなかった。
本参考例では、平均原子間隔を、シリコン単結晶の1.02倍以上を保持するため、非晶質シリコン膜204の表面に酸化膜が付着しないように、図2に示すチャンバ101内で、真空排気した状態で保持した。そして、そのまま図3のT3からT4に示す時点に相当する600℃で再結晶化させた。
図3(b)には、例えばここで用いた膜質の変遷の概略を示す。膜質は例えば図2に示した、特殊RHEED装置105、106及び特殊ラマン分光器107を用いて評価した。測定した結果を図3(b)に示す。横軸は時間の経過を示し、縦軸は平均原子間隔を示す。T2すなわち成膜終了の時点では、酸化シリコン膜202上の非晶質シリコン膜204の平均原子間隔は、シリコン単結晶に比較して1.02倍であった。また時点T5は、再結晶化した後に相当し、平均原子間隔は、シリコン単結晶に比較して1.00となっている。
この後、図2のチャンバ内でその膜質がどのようになっているかを評価した。評価結果を図6に示す。図6(a)は測定原理を示す図である。図6(b)から明らかなように、平均原子間距離は表面から80nm程度までは1.02以上であり、さらに深くなると極めて小さくなることがわかる。また横方向固相成長速度の測定結果を図7に示す。横軸は再結晶化時間をしめす。これは換言すれば、図3の時点T3からT4に相当するものである。縦軸は横方向再結晶化距離である。この横方向距離の寸法は、長ければ長いほどSOI素子としての利用に適するわけである。そしてまた、この再結晶化領域に結晶欠陥が極力少ない方が、SOI素子への応用展開に有利になるわけである。図7の図中の曲線aは、上記示してきた参考例に相当するものである。図7中の曲線b、c、dは、比較の為に作成した、従来方法に依るもので、いずれも膜厚200nmの非晶質膜を堆積し、格段の注意は払わず、途中で大気に曝した。その後、別の炉に入れ、N2雰囲気でアニールし、600℃1時間の熱処理を行ったものである。この時の平均原子間隔は1.001であった。このようにして再結晶化された従来例の場合、再結晶化速度が遅く双晶も多く含んでいた。
図からあきらかなように、本発明参考例の方法によれば、従来例の結果に比べて、約1.7倍の勾配で成長している。この勾配、即ち成長速度が早ければ早いほど、結晶性が良く、遠くまでのびるわけである。
既に作用の項で述べたように、非晶質から単結晶に再結晶化して行く過程では、不随意に結晶核が発生する部分があると、結晶性が不良になるばかりでなく、再結晶化寸法が伸びない等の不都合が生じる。従って、結晶性の改善及び結晶距離の伸長を目指すには、出来るだけ高速で再結晶化させることである。本発明の参考例の結果は、上記データでもわかる様に、「高速性」と、「結晶性」の両面に大きな成果を見出している。従来方法では、不純物を高濃度に添加したり、圧力を加えたりする手段を用いているが、本発明者等は、原子間距離に着目した全く新しい方法を提供している。
このように非晶質シリコン膜表面を清浄にし、膜厚等を予め薄くすることにより、原子が一応結合しているが、原子間の結合が緩んだ自由な状態を作り出しており、これが結果的には、平均原子間距離の寸法増大につながる。そして平均原子間距離の増大を保ったまま、熱処理を行うと非晶質シリコン膜表面の原子は動き易くなる。そして、「種」になる単結晶露出部分から、一気に高速で再結晶化し、不随意に再結晶化する部分が発生する迄に再結晶化寸法領域を拡大することができた。
なお、本参考例では、再結晶化工程に於いて、その雰囲気をN2としたが、これを水素雰囲気やアルゴン雰囲気としても良い。また、本参考例では固相成長温度を堆積温度よりも高温としたが逆に固相成長温度を低温として長時間熱処理してもよく、また光で固相成長を促進させてもよい。また熱処理以外にEBなどを用いても良い。
次に本発明の第2の参考例について説明する。
集積回路の微細化にともない半導体素子の大きさは限界に近づき、単に2次元的に縮小するだけでなく3次元的な配慮、すなわちチャネル領域の縮小を単にソースとドレインの間隔を狭めるというだけでなく、深さ方向にも縮小することが必要になってきた。例えばMOSでは、チャネルの間隔が〜0.1μm程度に狭くなってくると、実際に電流の流れるチャネルの表面近傍だけを低濃度層にする必要も生じてきており、今後のデバイスサイズの縮小にはこのような極薄い単結晶層の形成技術が不可欠となってくる。さらに、バイポーラートランジスタにおいてもベース領域を薄くすることで高速動作が可能となるなど本発明の応用範囲広い。
図8は本発明の第2の参考例としてバイポーラトランジスタのベース領域に用いることができる薄い単結晶シリコン層の製造方法を示したものである。
まず図8(a)に示すように、シリコン基板の表面を0.1%HF水溶液で洗浄して、表面の自然酸化膜2を除去し、基板の表面を清浄にする。この基板を図2の装置に移す。
つぎに、水素ガスを10000SCCM、1Torr流しながら525℃に温度を上げる。そして、525℃に保持したままシランガス500SCCM、3Torrを2分間流し、シランガスの熱分解反応により基板上に非晶質膜を堆積した。このときの非晶質膜の平均原子間隔は単結晶の1.02倍となった。但しこの平均原子間隔は別途基板上に設けた酸化シリコン膜の上に堆積した非晶質膜を用いてモニターした。非晶質膜3の膜厚を80nm以下にすると平均原子間隔は単結晶の1.02倍から徐々に増大した。
またシランガスと同時にジボランを流すとp型の半導体層ができ、ホスフィンを同時に流すとn型の半導体膜ができる。ここではシランガスのみを流した場合を示す。
このようにして、シランガスを流し非晶質シリコン膜3を成膜した後、再び高純度の水素ガスを流して非晶質シリコン膜の表面が酸化されないようにしながら600℃に昇温し、10時間保持した。なお、水素ガスの代わりにアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの高純度ガスを用いても同様であり、さらに、10−4Torr以下の高真空に維持しても良い。このように、600℃の非酸化性雰囲気で熱処理している間に図8(c)に示すように固相成長により下地シリコン基板から結晶化が起こり、非晶質シリコン3は単結晶シリコン層4になる。この時、非晶質シリコンの平均原子間隔は単結晶の1.02倍と緩んだ状態にあり、図1に示したように非晶質表面からシリコン原子が自由に動いて、固相成長するに従って余ったシリコン原子が表面に抜けたり、足りないシリコン原子が表面から補われるため、結晶欠陥の無い高品質の単結晶を成長させることができたものと思われる。
ここでシリコン原子の移動できる範囲、表面から補給の届く範囲、あるいは表面の活性なシリコン原子の結合ポテンシャルの及ぶ範囲を測定するため、膜厚を変化させて非晶質膜の平均原子間隔を変化させ、他の条件はまったく同様にして欠陥密度を測定した。すなわち非晶質シリコン膜の成長と固相成長は同一のチャンバー内で行うようにし表面に酸化膜の無い状態で固相成長させた場合の単結晶膜と、種々の膜厚の非晶質シリコン膜を成膜し従来通り一旦別の反応炉に移して表面に自然酸化膜を形成した後固相成長した場合との単結晶膜の欠陥密度の差を測定した。その結果を図9に示す。この図からあきらかなように、非晶質シリコン膜の膜厚を80nm以下にするのが望ましく、80nm以上にするとこれらの効果が及ばなくなり結晶欠陥がみられるようになる。
次に、膜厚を変えて非晶質膜の平均原子間隔を変化させ、酸化膜のない自由表面を維持した場合(曲線a)と、非晶質膜成膜後一旦大気中に取り出したり、固相成長中の雰囲気を酸化雰囲気にしたりすることで非晶質膜表面に酸化膜が存在する場合(曲線b)と、エレクトロンモビリティと非晶質膜の膜厚との関係を測定した結果を図10に示す。この場合酸化膜が存在しない形成方法である本発明膜厚が80nm以下の場合、すなわち非晶質膜の平均原子間隔が単結晶の1.02倍以上の場合には、エレクトロンモビリティは大きく、これを越えると小さくなるのに対し、表面に酸化膜が存在する従来の形成方法の場合はエレクトロンモビリティが小さい。この図から酸化膜の存在しないこと、平均原子間隔を単結晶の1.02倍以上に保つことがエレクトロンモビリティに極めて重要な役割をはたすことがわかる。比較のため図134に非晶質膜の表面が酸化されており、平均原子間隔が単結晶の1.02倍より小さい場合の固相成長の様子を説明したものを示したがこの場合、非晶質膜は原子がランダムに配置されており、結晶成長が進むと規則性のある結晶格子位置にそれぞれの原子が収まっていく。この時、ランダムな配置をしている原子の数と規則性のある格子位置に入っている原子の数は一致していない。これは局所的にはさらにひどく、図135に示したように結晶成長に伴い格子の間に余ったり、格子位置にあるべき原子が足りなくなったりしてしまう。にもかかわらず、それぞれの原子は非晶質といえども互いに結晶をもっておりモビリティは小さく全く自由に動けるわけではない。そこで、これらは格子歪や結晶欠陥、双晶などとして単結晶膜に残ってしまう。このため従来の方法の場合では、非晶質成膜後、固相成長で結晶化をすると単結晶中に多数の結晶欠陥存在する。これらは双晶や積層欠陥と呼ばれるものであり、点欠陥や転位ネット、らせん転位なども多く含む。
次に本発明の第3の参考例について説明する。なお前記参考例では水素雰囲気中で非晶質シリコン膜を成長したが、この例ではターボ分子ポンプを使って1×10−4Torrの高真空に排気しながら、熱処理して単結晶化する。すなわちシランガスの熱分解を用い、圧力3Torr、流量200sccm、525℃において堆積速度10nm/分で非晶質シリコンを堆積し、5分間シランガスを流し、シランガスを止めた後、ターボ分子ポンプを使って1×10−4Torrの真空に排気しながら、600℃、10時間熱処理して単結晶化し50nmの単結晶薄膜を成膜した。従来はロータリーポンプを用いて10−2Torr程度に排気しており、微量の酸素が自然酸化膜を形成していたが、ターボ分子ポンプの導入により極めて高真空を得ることができる。
この場合、透過電子顕微鏡(TEM)では、結晶欠陥が観察されず、膜厚を変化させたが、膜厚が80nm以下で、平均原子間隔が単結晶の1.02倍以上の膜ではいずれもTEMで結晶欠陥が観察されなかった。
次に本発明の第4の参考例について説明する。
この例では、キャリア濃度1×1017cm−3になるように、非晶質膜成膜時にシランガスと同時にホスフィンを流して形成した膜の単結晶化後の移動度を、Hall測定で求めた結果,図10に示したのと同様になった。従来のように表面に酸化膜があると薄い非晶質を用いても移動度の高い結晶性の良い単結晶は得られなかったのに対し、本発明の方法を用いると、膜厚が80nm以下すなわち平均原子間隔が単結晶の1.02倍以上である非晶質膜を用いて固相成長させると結晶性が急激に良くなり、単結晶シリコンで得られる移動度の限界まで移動度は向上させることができた。
次に本発明の第5の参考例について説明する。
この例では熱処理中の真空度による依存性を測定するため、前記参考例と同様にして非晶質シリコンを50nm成膜した後、真空度を変えて600℃、10時間熱処理した膜のHall移動度を測定した。この成膜直後の膜の平均原子間隔は単結晶の1.025倍であった。この結果、真空度が1×10−3Torrより悪くなると図11に示すように結晶化後の膜中の移動度は急激に低下した。これらの膜の表面を熱処理中にRHEED(Reflection High Energy Electron Difraction)により観察すると1×10−3Torrより悪い真空では、結晶化が終わってもシリコンの結晶を示す回折像が得られず、表面が酸化物が覆われていることも判明した。固相成長前後の平均原子間隔の時間変化を調べた結果成膜直後に単結晶の1.03倍であったものの炉内に放置されている間に徐々に平均原子間隔が縮み、固相成長直前には1.005まで縮んでいることが判明した。これは本発明の平均原子間隔の縮みの効果を裏付ける証拠の一つとして挙げられる。
さらに本発明の第6の参考例として、固相成長中の非晶質シリコン表面の酸化を防ぐために雰囲気を還元雰囲気とする方法について説明する。配管のつなぎ目などからの空気の漏れあるいは炉内の壁の吸着分子の再蒸発などによって、炉の中には酸素、水分などが漂っており、これを水素ガスで希釈あるいは押し流すことによって還元雰囲気とした。ここで、水素ガスの圧力を高く、流量を大きくすると表面の酸化が抑止され、堆積された非晶質膜の平均原子間隔が固相成長直前まで維持されるため、単結晶中の欠陥がなくなり、移動度が向上してくる。ここで下地基板として砒素濃度2×1019cm−3のn型シリコン基板を用い、この上層に膜厚20nmのイントリンシックの非晶質シリコン膜を形成し、上記水素を用いた還元雰囲気中で、580℃、1時間の熱処理を行い単結晶シリコン膜を形成した。堆積した20nmの非晶質シリコン膜の平均原子間隔は単結晶の1.03倍であった。但しこの値は別途堆積した酸化シリコン上の非晶質膜を用いてモニターした。
このとき水素流量を変化させ、水素流量とエレクトロンモビリティとの関係を測定した結果を図12に示す。この図からもあきらかなように、水素流量が増大するとエレクトロンモビリティが増大することがわかる。
なお還元性の水素雰囲気以外にアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスを流しても同様の効果が得られた。
単結晶化を終了した後の不純物分布をSIMSで分析した結果の一例を図13に示す。下地基板は砒素濃度2×1019cm−3のn型半導体であるが、その上に本発明の方法によって形成した20nmの単結晶薄膜はSIMSの検出限界以下の導電性不純物を含まないイントリンシックのままであった。
以上シリコンを含むガスの熱分解による化学気相堆積法(CVD法)を例に示したが、非晶質シリコン成膜に蒸着法、スパッタ法などを用いても同様の効果を得ることができた。また、シリコン以外にもゲルマニウムでも同様の効果を得ることができることはいうまでもない。
本発明の第7の参考例としてこの装置を用いてMOS型トランジスタを形成する方法について説明する。
まず、図14(a)に示すようにシリコン基板表面11に、一層目の半導体装置を形成した後、CVD法によりシリコン基板全面にシリコン酸化膜12を約1μm堆積する。ここで一層目の半導体装置はゲート電極6とソースドレイン領域7とからなるMOSFETであり、8は素子分離絶縁膜である。
次に図14(b)に示すように、レジストを塗布し露光現像した後、反応性イオンエッチングにより所望領域のシリコン酸化膜12をエッチングし、積層部分単結晶化の際に種結晶となるシリコン基板表面を露出させ、残るレジストを剥ぐ。そしてシリコン基板を酸等で洗浄し、露出しているシリコン表面を清浄に保ちながら非晶質シリコンの反応炉内に搬入する。
形成に際してはまず、ウェハを反応炉に搬入した後、反応炉内を真空引きする。後で固相成長をさせる時に種結晶となる露出シリコン面には、自然酸化膜が成長しないよう細心の注意をする。そして基板温度を450〜550℃に上げる。
ここで非晶質シリコンの堆積をシランガスを用いて行う場合、良質の非晶質シリコンを得るために基板温度は500〜550℃の間に保ち、ジシランガスを用いる場合には450〜550℃の間に保つ。シランあるいはジシランガスを反応炉内に導入し、これらシラン系ガスの熱分解反応により、基板全面に非晶質シリコン13を堆積する(図14(c))。この時,シラン系ガスにジボランあるいはホスフィンを混入し、ボロンあるいはリンを含む非晶質シリコン膜を堆積しても良い。この非晶質シリコン層の膜厚は20nm以下とする。このようにして20nm以下の所望の膜厚が得られた段階で、シラン系ガスの反応炉内への導入を止め炉内温度を低下させる。堆積速度はガス流量等で制御し前記の堆積速度式を満たす条件で成膜する。
続いて、継続して装置内を真空引きし、10−7Torr以下の高真空にして、炉内温度を600℃程度まで昇温し薄い非晶質シリコン膜を結晶化し、単結晶シリコン層14を形成する(図14(d))。この工程で、基板シリコンと接している面を固相成長のシードとして非晶質シリコンが横方向に単結晶化する。高真空中では、非晶質膜の平均原子間隔は堆積時の値に維持されるため、非晶質膜の結合は緩い状態に保たれており、非晶質及び単結晶シリコンの表面のシリコン原子は結合が不完全であるため非常に動き易く、表面をマイグレートして移動する。さらにまた20nm以下の薄膜にすることにより、表面マイグレートの影響が膜中全体に及び、膜中の原子全体が非常に動き易い状態に保たれる。そのため結晶化速度が大きく、単結晶化を妨げる無作為の結晶核生成が起こる前に、シードから遠くまで単結晶化される。例えば600℃で結晶化させた場合、20μmの長さまで単結晶化した。結晶成長させる温度はさらに低い温度でも良い。しかしその場合より長い時間が必要となる。例えば580℃では20時間以上必要であった。また、非晶質シリコン中に濃度1020cm−3程度のボロンあるいはリンを導入すると、結晶化速度が増加し、単結晶化領域は100μmとなった。さらに、下地の絶縁膜表面にあらかじめ高濃度のリン、ボロンなどシリコンに対して電気的活性な元素を入れておくとさらに広い領域の単結晶化を進めることができた。また絶縁膜そのものをリン、ボロンなどを含むガラスで形成しても同様の効果を得ることができた。これらの工夫により表面の原子のマイグレーションに加え、下の方の界面の原子の移動も起き易くすることで結晶成長の速度が速くなり、より広く単結晶化が進んだと考えられる。
また、非晶質シリコンを単結晶化する前に反応炉から一旦搬出して、イオン注入によりボロンやリンを導入するようにしても良い。この場合には、炉内に再度搬入した後、固相成長の前に自然酸化膜の剥離を再び行い、平均原子間隔を再度緩める必要がある。
またこの変形例として、単結晶化前に、非晶質層を所望の形状に整形しても良い。この場合には、レジストを塗布し、露光現像した後、RIEでシリコンをエッチングし、残るレジストを剥離する。また固相成長速度は成長の方向で大きく異なり、<100>方向が最も早いことが確認されている。そのため、非晶質層の形状は図15に示すように<100>方向に長辺がある形状にした。炉内にウェハを搬入し、非晶質シリコン上の自然酸化膜を前述の還元反応により剥離する。その後、高真空状態で固相成長を行う。
以上の工程で薄くかつ高品質の単結晶シリコン薄膜14が形成されるが特に必要がなければ、20nm以下の膜厚の単結晶薄膜をそのまま用いて素子を形成しても良い。この場合、むしろ移動度などは大きくなり、NMOSで1000cm−2/V・secを越えるものも得られた。ただし素子を形成する際、通常の素子と異なりソース・ドレインのコンタクト形成等に工夫を要する。まず、単結晶シリコン薄膜14の上に絶縁膜18を形成し、この絶縁膜18のソース・ドレインの一方に相当する領域にコンタクトを開ける。これにはRIE、CDE、フッ素系の水溶液などのいずれを用いても、オーバーエッチングにより単結晶膜を突き抜けるということが起きる。そこで、コンタクト抵抗を下げるために配線としては、通常用いられる多結晶シリコンではなく、タングステンシリサイドなどのシリサイドを用いた。例えばタングステンシリサイドの形成には、六フッ化タングステンと水素ガスの混合ガスなどを用いた。また、本発明を用いてコンタクト領域の単結晶薄膜の露出部分のクリーニングをしてから連続して高濃度にドープした20nm以下の薄膜非晶質シリコンを堆積し結晶化して配線として用いても良い。いずれにしても良好なコンタクト特性が得られ前記したように高移動度の素子(トランジスタなど)を形成することができた(図14(e))。
さらに本発明の第8の参考例として2回の非晶質シリコンの堆積と熱処理による結晶化を用いてより厚い単結晶層を形成する例について説明する。
1回目の非晶質シリコン堆積と結晶化は図14(a)乃至図14(d)に示した前記第6の参考例とまったく同様に行い図16(a)乃至図16(d)に示すように単結晶シリコン膜14を得る。
この後、2回目の非晶質シリコン堆積と結晶化を行う。すなわち第1の単結晶シリコン膜形成のための熱処理後、反応炉を開けることなくそのまま反応炉温度を450℃〜550℃にして、シラン系ガスを反応炉内に導入し、膜厚200nmの非晶質シリコン膜13sを堆積して(図16(e))、ガスの導入を止める。この時点ではシリコン基板11を炉外に搬出し、別のアニール炉を用いて結晶化しても良い。そして炉内温度を600℃程度に昇温し、図16(f)に示すように、先に結晶化した膜14をシードとして非晶質膜を垂直方向に単結晶化する。200nmの非晶質膜13sを堆積した場合、垂直方向に容易に単結晶化し単結晶シリコン膜14が得られた。
この後シリコン基板を真空炉外に搬出し、CVD法でシリコン酸化膜を堆積し、レジストを堆積して露光現像し、このレジストをマスクにして下層のシリコン酸化膜の所望領域を反応性イオンエッチングによりエッチングする。そして残りのレジストを剥離し、次にシリコン酸化膜をマスクとして単結晶化したシリコンの所望領域を反応性イオンエッチングによりエッチングする。再び、CVD法でシリコン酸化膜20を堆積した後、バイアススパッタ法でシリコン酸化膜を平坦化する。その後、単結晶シリコン層が露出されるまでシリコン酸化膜を湿式エッチングする(図16(g))。このようにしてシリコン酸化膜20によって素子分離のなされた2層目の単結晶シリコン層が得られ、単結晶シリコン層14としての合計膜厚220nmとなる。
以下は2層目のMOS型トランジスタの製造を記す。まず2層目のシリコン基板にしきい値制御のためのチャネルドーピングをし、ゲート絶縁膜となるCVDシリコン酸化膜を20nm堆積し、ゲート電極となるCVDポリシリコン膜を200nm堆積する。レジストを塗布し、露光現像し、RIEでポリシリコンをエッチングしてゲート電極を形成しさらに、ソース・ドレインとなる領域に導電性不純物をイオン注入する。ドーズ量は2層目シリコン膜の膜厚を考慮して決定する。例えば、膜厚が50nmの場合、1×1015cm−2とすると、Asイオンで1×1020cm−3の高濃度が得られた。そして活性化アニールを行い、導電性不純物を活性化する。さらにCVDシリコン酸化膜を堆積し、ソース・ドレイン電極形成のための開口部を設け、電極及び配線層を形成する。
また、本発明においては、非晶質膜形成は、スパッタ法あるいはUHV法を用いても良い。例えば、一部シリコン基板を露出させた絶縁膜を有するシリコン基板を10−10Torr以下の高真空に保持し、高純度シリコンをターゲットとして電子ビームで蒸発させ、このシリコン基板表面に蒸着させる。この時まず、蒸着により絶縁膜上に平均原子間隔1.03倍、膜厚20nmの非晶質シリコン膜を形成した後、このシリコン基板を高真空に保持したまま600℃で5時間以上加熱すると絶縁膜上に単結晶シリコン薄膜を形成することができた。
次に本発明の第1の実施例について説明する。
この例では図17に示すように、粒状の単結晶シリコン205を形成することを特徴とする。ここでもやはり、参考例1と同様にシリコン単結晶薄膜を得るにあたり、非晶質シリコン膜の平均原子間隔を、予め、シリコン単結晶の平均原子間隔の1.03倍以上からなる膜を用い、非晶質膜の表面に酸化膜の成長付着を抑止するため非酸化性雰囲気のN2にして、熱処理した。
膜作成の装置は、図2に示したものと同一のものを用いた。また薄膜形成のためのシーケンスは図3(a)と同一とした。しかし、試料構造は若干異なる形を選んだ。即ち、先の参考例1では図4に示すように酸化シリコン膜202に開口部203を設けたが、この実施例1では、図18(a)乃至(c)に示すように開口部を設けなかった。
まず、図18(a)に示すように、酸化シリコン膜202を形成した後、図18(b)に示すように非晶質シリコン膜204を堆積する。この膜厚は参考例1では315オングストロームであったが、ここでは200オングストロームとした。しかし、本実施例1の文頭にも報告した様に、膜堆積直後の測定結果では、平均原子間距離は、単結晶シリコン基板のそれに対して、1.03倍の値を得た。
この後、図18(c)に示すように600℃5時間の熱処理を行い単結晶シリコン205を形成する。ここで、再結晶化条件に関しては、参考例1と同一とした。即ち、表面自然酸化膜の被着を抑えるために、例えば同一炉を用いた。ここでは前述したように、非晶質シリコン膜が、再結晶化するにあたり、所謂「種」になる単結晶シリコン露出部分に接触していない様にした。その結果、図19にTEM写真を示す様に、非晶質部分は、結晶成長しながら凝集し、欠陥の全く無い極めて良質な単結晶粒を得た。図20にTEM写真を示す様に、その単結晶詳細観察の結果、下地の酸化シリコンに対して、垂直方向に〈001〉シリコン軸が成長している。
本発明者等は、更に、膜厚や温度、下地などを選ぶことでこの粒を、任意の大きさに揃えうることも突き止めた。ちなみに、図21(a)乃至(c)は、初期非晶質シリコン膜厚を200オングストローム、100オングストーム、50オングストロームとした場合の結果を示す。それぞれの場合の初期非晶質の平均原子間距離は、単結晶シリコン膜のそれに対して、1.03倍、1.032倍、1.034であった。これらは、いずれも、極めて良好な単結晶となっている。
次に本発明の第2の実施例について説明する。
ここではGe単結晶薄膜を得るにあたり、非晶質Ge膜の平均原子間隔を、予め、Ge単結晶の平均原子間隔の1.02倍以上からなる膜を用い、非晶質膜の表面に酸化膜の成長付着を抑止するため非酸化性雰囲気のN2にして、熱処理した。膜作成の装置は、参考例1と同様図2に示したものを用いた。
また膜堆積のためのシーケンスもここでは図3(a)と同一であった。試料構造は図22(a)に示すように図18(a)に示した実施例1のものと同様にした。即ち、この例でも、開口部を設けなかった。
そして、膜中のゲルマニウムの平均原子間隔が、Ge単結晶の平均原子間隔の1.02倍となるような堆積条件を用いて非晶質ゲルマニウム206を堆積した(図22(b)) 。このとき非晶質ゲルマニウムの膜厚は例えば115オングストロームであった。
このあと、再結晶化に関しては、参考例1と同様にして再結晶化を行い、粒状の単結晶ゲルマニウム膜207を形成した(図22(c))。即ち、表面自然酸化膜の被着を抑えるために、参考例1と同様の炉を用いた。
この例では、非晶質ゲルマニウム膜が、再結晶化するにあたり、所謂「種」になる単結晶露出部分に接触していないため、その結果は先の図18に示した例と同様に、非晶質部分は、結晶成長しながら凝集し、欠陥の全く無い極めて良質な単結晶を得た。しかも一軸性の配向を得た。
本発明者等は、更に、膜厚や温度、下地などを選ぶことでこの粒を、任意の大きさに揃えうることも突き止めた。
すなわち、非晶質膜の平均原子間隔を単結晶の1.02以上となるようにし、この非晶質膜の表面を自由な状態に保ち、原子が膜内で自由に動けるようにし、ケミカルポテンシャル(ギプス自由エネルギー)の変化に注目し、結晶化と同時にシリコン原子を動かし、原子を凝集させるものである。
この例について実施例3としてさらに説明する。
まず、図23(a)に示すようにシリコン基板41表面を950℃水蒸気雰囲気中で酸化し、膜厚0.1μmの酸化シリコン膜42を形成する。そしてCVD法により膜厚0.02μmの非晶質シリコン膜43を堆積する。ここで非晶質シリコン膜はシランガス1Torr、525℃で2分間の成膜を行った。
そして、この後シランガスを止め連続して600℃30分の熱処理を行い、図23(b)に示すように単結晶の粒状体44を形成する。この時ガス清浄器を通したアルゴンガスを流し続け、非晶質シリコンの表面が酸化されるのを抑制した。この熱処理により、非晶質シリコンは結晶化すると同時に凝集し、1つ1つが単結晶の粒状体層を形成する。このときの電子顕微鏡(SEM)写真を図24および図25に、断面の透過電子顕微鏡(TEM)写真を図26に示す。この1つ1つの粒は写真からも分かるように大きさ、間隔共に揃っている。しかもその大きさは再現性よく同じ大きさに制御されて形成される。
次にこの場合に、非晶質シリコン膜の膜厚と600℃で1時間熱処理した後の粒の大きさとの関係を測定した。この結果を図27に示す。この図からもともとの非晶質シリコンの膜厚が厚くすると粒の大きさを大きくすることができることがわかる。
また下地と非晶質シリコンとのなじみの程度により凝集したときの粒の形状を制御することも可能である。
すなわちシリコン酸化膜を下地にすると1つ1つの粒は小さくなる。これに対してリン硅酸ガラス(PSG)の場合、粒は大きく偏平になる。
次に、下地をPSG膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜の場合に非晶質シリコン膜の膜厚と600℃1時間の熱処理語の粒の直径との関係を測定しその結果を図28に示す。この結果から下地を種々選択することによっても粒の直径を制御することができることがわかる。この他、BSG、BPSG、AsSG膜などを用いても同様に粒の大きさを大きくすることができる。
さらにまた、熱処理の温度、雰囲気の酸化度によっても同様な制御を行うことができる。
次に本発明の第4の実施例について説明する。
まず、図29(a)に示すようにシリコン基板51表面にシランガスと酸素の混合ガスを用いてCVD法により基板温度450℃で、膜厚0.1μmの酸化シリコン膜52を形成し、さらにシランガスを用いたCVD法により膜厚0.03μmの非晶質シリコン膜53を堆積する。
そして、この後シランガスを止め連続して水素ガスを流しながら1時間保持すると、非晶質シリコンは結晶化し、凝集して図29(b)に示すように単結晶の粒状体54を形成する。
これを750℃、20時間にわたり塩酸ガスと水蒸気の混合ガスで酸化すると表面が約0.05μm周期の凹凸を有する酸化シリコン膜55を形成する(図29(c))。
この後この上層にシランガスを用いたCVD法により基板温度630℃で多結晶シリコン膜56を形成する(図29(d))。
これにより、表面を0.05μmの凹凸にして表面積を大きくした電極を形成することができる。この多結晶シリコン膜を電極として用いる場合には導電性不純物を後からイオン注入で形成しても良いが、ジボランなどのガスを同時に流して形成することもできる。このようにして全工程を800℃以下で実施することができるため、他の領域にMOS素子等が形成されている場合にも適用することができる。
さらに図29(c)の工程でシランガスによる成膜を基板温度550℃で行い非晶質シリコン膜を堆積し、再び図29(a)に示した工程から繰り返すことにより凹凸の大きな表面を形成することができる。
さらにシランガスに代えてジシランガスを用いたり、蒸着法やMBE法など他の方法で非晶質シリコン膜を形成するようにしても表面が酸化されず自由な状態を保つようにして結晶化を進めるようにすれば同様の効果を得ることができる。次に本発明の第5の実施例として、MOSキャパシタに本発明を用いる方法について説明する。
まず図30(a)に示すように、シリコン基板61表面に膜厚0.05μmの酸化シリコン膜62を形成し、レジストパターン63をマスクとしてイオン64を用いた異方性イオンエッチングにより酸化シリコン膜をエッチングする。
この後図30(b)に示すようにCVD法により酸化シリコン膜65を0.25μm堆積する。
そしてさらに図30(c)に示すようにレジストパターン66を形成してイオン67によって異方性エッチングを行う。
そしてエッチングがシリコン基板61まで進んだところでエッチングを終了する。このようにして図30(d)に示すように断面コの字状の酸化シリコン膜を形成する。ここで多少はオーバーエッチングになっても酸化シリコン膜の底が残るようにすればよい。
このようにして下地の形状加工ができたところで、まず、図30(e)に示すように表面全体に、シランガスを用いたCVD法により膜厚0.02μmの非晶質シリコン膜68を堆積する。
そして、この後シランガスを止め連続して水素ガスを流しながら550℃1時間の熱処理を行うと、断面コの字状の酸化シリコン膜65表面の非晶質シリコンは結晶化し、凝集して図30(f)に示すように単結晶の粒状体69を形成する。ここでシリコン基板61表面では非晶質シリコンは凝集せず単結晶シリコン基板と同様の結晶方位に固相成長し平坦な膜となる。
これを750℃、20時間にわたり塩酸ガスと水蒸気の混合ガスで酸化すると表面が約0.05μm周期の凹凸を有する酸化シリコン膜70を形成する(図30(g))。
この後この上層にシランガスを用いたCVD法により基板温度630℃でキャパシタ電極としての多結晶シリコン膜71、キャパシタ絶縁膜としての酸化シリコン膜72、キャパシタ電極としての多結晶シリコン膜73を形成しキャパシタを得る(図30(h))。
これにより、表面を0.05μmの凹凸にして表面積を大きくし実効的な容量の大きいキャパシタを形成することができる。
次に本発明の第9の参考例について説明する。
この方法では、Si単結晶薄膜を得るにあたり、図31に示すようにシリコン基板1表面に開口部をもつ酸化シリコン膜2を形成しこの上層に非晶質Si膜3を平均原子間隔が、Si単結晶の平均原子間隔とほぼ一致するように堆積し、これをN2雰囲気で、熱処理しシリコン単結晶を得るようにしている。
図32は、本発明の第9の参考例の薄膜形成装置の概略を示す図である。この装置は、チャンバー311にのぞき窓Wが形成され、この窓を介してレーザ光源315および分光器316が設置され、ラマン散乱分光法により非晶質膜の密度を、連続的に観察できるようにしたことを特徴とするものである。すなわちチャンバー311内に膜堆積用の原料ガス導入口312と、排気口313と、薄膜を形成すべき試料を載置する試料台314とを具備している。本実施例では、例えば原料ガスとして水素H2やSiH4あるいはジシラン等をマスフローコントローラ317を介して導入するようになっており、また必要に応じてドーピングガスも導入可能である。図では簡略化のため、導入口は1つになっているが、これも必要に応じて試料台近傍まで別々に導入するようにしても良い。さらにターボ分子ポンプ318によってチャンバー内の圧力も調整可能であり、さらにヒータ319によって基板温度を調整できるようになっている。
この装置を用いて薄膜形成を行う方法について説明する。
まず、p型の単結晶(100)シリコン基板表面に予め酸化シリコン膜を堆積させ、フォトリソグラフィにより開口部を作成した。そして薄膜の堆積に先立ち基板等の清浄化を行うため、所定の温度及びガス組成で処理をした。
引き続き、分光器によって平均原子間隔を測定しながらSiH4分圧1Torr、堆積速度7nm/分の条件で膜厚315オングストロームの非晶質シリコン膜を堆積する。ここで基板温度は525℃とした。分光器の出力から480cm−1にピークを持つスペクトルを得ることができ、このようにして形成した非晶質シリコン膜の平均原子間隔は480cm−1にピークを持つスペクトルを得ることができ、すなわち密度は単結晶シリコンのそれとほぼ同一であることがわかる。ここでスペクトル位置がシリコン原子の平均原子間隔および密度を反映していることも実験的に確かめた。すなわち、例えばスペクトルが低周波数側に1.01倍シフトしている試料について、RBS(ラザフォードバックスキャッタリング)法で密度測定を行うと、単結晶の密度に比べこの密度は1/1.01小さくなっていることがわかり、平均原子間隔が1.01倍に広がっていることが確認された。ここで非晶質膜の平均原子間隔は単結晶のそれの0.98以上で1.02までであるとよいが、望ましくは1.01以下さらに望ましくは0.995上で1.005まで、すなわち1に近いほどよい。
ここで、非晶質シリコンの成膜を、温度及びガス組成を変化させて行った結果、成膜速度Rが下式を満たす条件下でおこなった場合に、平均原子間距離が0.98〜1.02までの膜が得られた。
logR(A/min)<−10614/T(K)+14.857
この条件が示す領域を図33に記す。この条件以外の領域では、平均原子間隔が1.02を下回る膜は成膜できなかった。
このようにして非晶質膜の形成されたシリコン基板を、チャンバーから取り出し、図34に示すように窒素N2雰囲気中で再結晶化のための熱処理を行う。この温度は例えば600℃であった。この装置は導入口と排気口につながり、排気口は真空ポンプに接続され、真空引きを行うこともできるようになっている。次に、光学顕微鏡321で「種」から横方向への成長距離の時間依存性を測定した。このとき、炉の昇温速度は50℃/分、降温速度は99℃/分であった。熱処理を数分毎に分け、光学顕微鏡で写真撮影を行い、成長距離の時間依存性および成長速度の変化などを求めた。図35にその結果を示す。この結果成長速度は一定であり成長距離は時間と共に直線的に伸びていることがわかる。
このときの非晶質シリコンと単結晶シリコンとの界面いわゆる成長端の形状の観察および膜内の結晶欠陥の観察を透過電子顕微鏡を用いて行った。この結果、前述したように優先成長面の変化による双晶など結晶欠陥の発生と成長速度の減少を突き止めた。
次に、この優先成長面変化の抑止を確認するために、成長初期用として、600℃5分の熱処理のもの、長時間用として2時間のものを用意し、これらの試料の断面を、加速電圧400KV、分解能1オングストロームの透過電子顕微鏡(TEM)で観察した。図36および図37にこの写真を示す。図36は5分後のTEM像、図37(a)は2時間後の電子線回折像、図37(b)は2時間後のTEM像である。特に熱処理2時間を行った後の試料では、「種」から12μmまで結晶化が進んでおり、成長端も良好に(100)面を維持しており、電子線回折像でシリコン基板と同じ結晶方位の双晶などの欠陥を含まない良質の単結晶であることが確認された。
同様の評価を平均原子間距離が単結晶の0.98〜1.02の非晶質膜についても行ったが、いずれも高品質の単結晶を得ることができた。
さらに、この非晶質膜が単結晶化した後の残留応力を実際に顕微ラマン法によって測定し効果を確認した。ここで分光器は本発明者らが鋭意開発したもので、図38に示すように、Arレーザ416からのレーザ光を顕微鏡を介して試料表面の直径1μmの領域に集光し、180度散乱された光を分光器417に導入して分光測定を行った。受光部としてはマルチチャンネルCCDを用い、スペクトルを一度に受光してメモリに積算するように構成され、高感度を得ることができるようにしたものである。測定条件としては、レーザ波長514.5nm、試料照射エネルギー3mW、照射スポット直径1μmとした。
応力(σ)は、〜520cm−1のスペクトルピークを用い次式により算出した。
σ=2.49×109・(ωO−ωr)(dyn/cm2)
ここでσは応力、ωO(cm−1)は試料のスペクトルピークの波数,ωr(cm−1)は(100)シリコン(a)基板の室温におけるスペクトルピークの波数を示す。この係数を算出するのに用いた弾性歪み定数などは単結晶シリコンの値を用いた。図39にこの分光器で測定したラマンスペクトルを示す。このスペクトルのシフトから前記式を用いて応力を求めた。ピークが低応力側にシフトしていれば応力が引っ張りであることもわかる。ここではシフト量のみ用いた。レーザビームは直径1μmφまで絞られており、その範囲での平均応力を得ることができた。図40はこれによって得られた応力分布を示す図である。「種」から離れていても残留応力はほとんど見られず、本発明者のねらいどおりであることが確認できた。従って従来の膜で生じていた引っ張り応力は膜が縮むために生じていたことも再確認された。
以上の結果から、単結晶に近い密度の非晶質膜を用いることにより、結晶化に伴う応力が生じず、従って(110)シリコン面から(111)シリコン面への優先成長面の変化を抑制することができ、成長速度を落とすこと無く遠くまで伸ばすことができ、結晶性もよいものとなっている。
ここで非晶質膜の堆積に先立ち、「種」部の表面をできるだけ清浄にしておくこと、とりわけ自然酸化膜の除去が重要であるが、「種」部の表面の自然酸化膜の除去は、反応性ガスによる還元反応を用いた。例えば、850℃、SiH4分圧7×10−4Torrで30分処理することにより自然酸化膜は完全に除去することができた。また自然酸化膜除去後連続して非晶質膜を堆積することが重要である。 なお、本実施例では、再結晶化工程に於いて、その雰囲気をN2としたが、これを水素雰囲気やアルゴン雰囲気としても良い。また、本実施例では固相成長温度を堆積温度よりも高温としたが逆に固相成長温度を低温として長時間熱処理してもよく、また光で固相成長を促進させてもよい。また熱処理以外にEBなどを用いても良い。
次に本発明の第10の参考例について説明する。
この例では非晶質シリコン膜83の密度を単結晶の密度に一致させるために、成膜後の非晶質シリコン膜の密度を顕微ラマン法により測定し、この値に応じて算出された量のシリコンイオンをイオン注入するようにしたことを特徴とするものものである。
まず、図41(a)に示すように膜厚0.2μmの非晶質シリコン膜を堆積し、密度を顕微ラマン法により測定した。その結果0.97であることがわかり、この値から最適イオン注入量を算出し、3.75×1020atom/cm3を注入した。このとき加速電圧80keV、ドーズ量8.3×1014atom/cm2としたとき、密度を1.00にすることができた。
そして図41(c)に示すように、600℃2時間の熱処理を行い、単結晶シリコン膜3を形成した。
この様にして得られた単結晶シリコン膜には結晶欠陥は見られず図42に示すように残留応力は小さくまた、図43に示すように良好な単結晶シリコン膜となっている。
前記第9および第10の参考例では、「種」を用いた例について説明したが、次に本発明の第6の実施例として「種」を用いることなく熱処理をおこなった場合の実施例について説明する。
まず図44に示すように、(100)シリコン基板1表面に酸化シリコン膜2を形成した後、基板温度を515℃に保ちながらSiH4分圧2Torrで、膜厚20nmの非晶質シリコン膜3を堆積する。この非晶質シリコン膜の平均原子間隔は単結晶の1.03倍であった。
この後この非晶質シリコン膜に加速電圧20keVで5×1015atom/cm2のシリコンイオンをイオン注入した。この結果非晶質シリコン膜の平均原子間隔は単結晶の平均原子間隔とほぼ同程度となった。
次に、このシリコン基板の表面を純水で100倍に希釈したHF水溶液に1分間浸漬し、表面の自然酸化膜を除去し、基板の表面を清浄にする。この後5分以内にこの基板を図32に示した熱処理装置に移す。
つぎに、この熱処理装置内を1×10−7Torr以下の高真空にした後、基板温度を550℃まで昇温し、2時間保持した。
そして、基板温度を室温近くまで降温せしめたのち、真空を破り、シリコン基板を搬出した。
このようにして得られた結果を走査形電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図45(a)および(b)に写真および模式図に示す。この図からあきらかなように絶縁膜上に大きさが揃いかつ均一な粒状の単結晶シリコン4が形成されている。1つ1つのシリコン粒の構造を透過形電子顕微鏡(TEM)を用いて測定した結果を図46に示す。この結果シリコン粒には格子像が鮮明にみられ、それぞれの粒が単結晶化していることがわかった。そしてこの結果単結晶中に結晶欠陥の全く無い完全な単結晶が得られている。またこれら結晶粒の配向性を電子線回折で調べた結果を図47に示す。どの粒も垂直方向に<100>軸がある結晶方位を示すことがわかった。この配向性は全く新しい現象であるため、原因は未だ明らかでないが、どの粒もすべて良好な配向性を示している。
これに対し、シリコンイオンの注入を行うことなく同様の熱処理を行った場合のTEM写真を図48に示す。この場合も絶縁膜上に大きさが揃いかつ均一な粒状の単結晶シリコンが形成されているが、粒の格子像をよくみると、双晶等の結晶欠陥が認められる。また、それぞれの粒の配向性を電子線回折を用いて調べたところ、特に配向性は認められなかった。このような粒化単結晶の固相成長機構および欠陥発生機構はいまだ明らかではないが発明者らはTEM像の観察から以下のような機構を推察した。すなわち、結晶粒の「結晶核」は、結晶粒がほぼ球形の形状をしていること、および粒の中心の高さが非晶質膜の膜厚と一致することから、非晶質膜の表面で発生していると推察した。この核から単結晶化が進行する。結晶化の成長端の形状は絶縁膜側に鋭角の面で構成されている。成長端が下方(絶縁膜側に)ある程度進むと、非晶質膜と単結晶化膜の密度の違いから成長端に大きな応力が発生する。この応力を緩和させるために、成長端の面のずれが起こり、結晶欠陥が発生する。これは前述したシミュレーション結果と一致する。また、注入量を種々変化させた場合、5×1015atom/cm2を大きく外れるものについても同様であった。また、注入量を種々変化させ、非晶質膜の平均原子間隔を変化させたものを用いた場合の単結晶の結晶性との相関関係についてについて測定した結果を図49に示す。この結果、平均原子間隔が単結晶の0.98倍以上1.02倍までの場合結晶性が良好であることがわかった。
次に本発明の第7の実施例について説明する。この例では絶縁膜に凹凸を形成しこの上に非晶質シリコン膜を形成し、これを熱処理することにより結晶化するようにしている。
まず、図50(a)に示すように(100)シリコン基板1を用意しこの表面に膜厚300nmの酸化シリコン膜2を堆積する。
この後、図50(b)に示すようにこの酸化シリコン膜2の表面にレジストパターンを塗布し露光現像を行い形成したレジストパターンをマスクにして酸化シリコン膜を100nm程度エッチングし微細な凹凸を形成する。そしてレジストパターンを剥離し、基板温度を515℃に保ちながらSiH4分圧0.5Torrで、膜厚20nmの非晶質シリコン膜3を堆積する。この非晶質シリコン膜の平均原子間隔は単結晶の1.01倍であった。
つぎに、この熱処理装置内を1×10−7Torr以下の高真空にした後、基板温度を600℃まで昇温し、1時間保持した。
そして、基板温度を室温近くまで降温せしめたのち、真空を破り、シリコン基板を搬出した。
このようにして図50(c)に示すように結晶方位の完全に揃ったシリコン単結晶粒が形成されることがわかった。なお成膜に用いた装置にターボポンプを付けるなどの工夫をすれば成膜後連続して600℃に温度を上げるだけで同様の結果を得ることができた。
この現象は次のように説明することができる。すなわち図50(d)に拡大図を示すように下地に凹凸がある場合凹部に堆積した非晶質シリコン膜は側面と底面に絶縁膜を有するため水平方向と垂直方向との2方向に<100>軸がくるように配向する。2軸で結晶方位が抑えられるため、いずれの結晶粒も配向性を示すことになる。
これに対し、平坦な絶縁膜上の非晶質シリコン膜を単結晶化して粒を形成する場合垂直方向に<100>軸があるように単結晶化する。しかしながら1軸のみが配向しているため、水平面内の結晶方位は図51に示すように回転して定まらずそれぞれの粒で異なっている。
さらに、絶縁膜に微細な間隔で線状の凹凸を形成し、その上に非晶質シリコン膜を50nm堆積した例を図52に示す。ここでは非晶質シリコン膜の密度をラマン散乱法で測定しつつ単結晶の密度にほぼ等しくなるように成膜条件を制御して成膜し、熱処理を行った。この結果、非晶質シリコン膜が厚く形成されているため、単結晶膜は粒に分離せず欠陥の全く無い単結晶膜を得ることができた。
さらにこの単結晶膜の上層に第2の非晶質シリコン膜を200nm程度堆積し、熱処理を行うと、シリコン基板上に直接堆積して熱処理を行うことにより得られる単結晶化膜と同程度の結晶性を有する単結晶化膜を得ることができた。
次に本発明の第8の実施例について説明する。ここでは下地材質に微細な変化をつけて配向性を制御したことを特徴とする。すなわち、シリコン基板表面に形成された窒化シリコン膜2aに微細な線状の酸化シリコン膜2bを形成したものを用い、これに非晶質シリコン膜を形成し、熱処理を行うことにより単結晶シリコン膜を形成する。
まず、図53(a)に示すように(100)シリコン基板表面に窒化シリコン膜2aを形成しレジストパターンをマスクとして50nm程度の線状の凹部を形成し、ここに酸化シリコン膜2bを堆積してエッチバックを行い、凹部に酸化シリコン膜2bを埋め込むようにする。そしてこの上層に膜厚10nmの非晶質シリコン膜を堆積する。この非晶質シリコン膜の平均原子間隔は単結晶と同程度とした。ここでは同程度とするのが望ましいが0.98以上1.02さらに望ましくは0.995以上1.005までであればほぼ同様の効果を得ることができる。
そしてこのシリコン基板を、酸化膜が生じないように留意しつつ真空装置に搬入し、530℃2時間の熱処理を行い、図53(b)に示すように配向性の良好なシリコン単結晶結晶粒が生成される。
この原因は非晶質シリコン表面で結晶核が発生する際に、材質による界面でのポテンシャルの違いが何等かの影響で結晶核の面内回転を抑えるためと推察される。
この場合も単結晶膜の上層に第2の非晶質シリコン膜を堆積し、熱処理を行うと、シリコン基板上に直接堆積して熱処理を行うことによりえらえる単結晶化膜と同程度の結晶性を有する単結晶化膜を得ることができ、絶縁膜の「種」なしで完全な単結晶膜を形成することができた。
なお、窒化シリコン膜など熱膨張率がシリコンより大きいもので非晶質膜を覆い、熱応力により若干非晶質膜を収縮させるようにすると平均原子間隔1.02以上の膜でも結晶性の改善を得ることができた。
さらに本発明は、シリコンに限定されることなくゲルマニウムなどの半導体、金属、シリサイドなど非晶質膜と結晶の密度が異なる場合にこれを揃えることで結晶性の大幅な改善をはかることができる。
次に本発明の第9の実施例について説明する。
この例ではキャパシタ容量の実効的増大をはかるために、表面にシリコン粒を形成し、電極表面に凹凸を形成する方法について説明する。
まず、図54に示すようにn型(100)シリコン基板81表面に、素子分離絶縁膜82を形成して素子領域を形成した後、燐イオンを注入しコンタクトとしてのn+拡散層83を形成し、CVD法により500nmの酸化シリコン膜84を形成しリソグラフィとドライエッチングにより開口を形成する。そしてLPCVD法により膜厚100nmの多結晶シリコン膜85を形成し、POCl3を雰囲気中で950℃の熱処理を行うことにより燐を拡散し、さらに燐拡散中に多結晶シリコン膜表面に形成された自然酸化膜をフッ化アンモニウムを用いて除去し、リソグラフィおよびエッチングにより100×200μmの燐添加多結晶シリコン膜からなる下部電極85を形成する。このとき電極表面には膜厚1nm程度の薄い自然酸化膜86が形成されている。
そしてこの上層に図55に示すように、SiH4ガスを用い、CVD法により基板温度525℃圧力1Torrで、膜厚10nm程度の非晶質シリコン膜87を堆積する。
こののちSiH4ガスを排気し、非酸化性のArガスを導入して昇温し、600℃1時間の熱処理を行った。これにより図56に示すように非晶質シリコン膜87が単結晶シリコン粒88に変化し、表面に良好な凹凸が形成される。
そしてさらに800℃30分の熱処理を行う。これにより自然酸化膜86が消失し、多結晶シリコン膜と単結晶シリコン粒88とが電気的に接続される。
そして粒間の自然酸化膜を1%のHF溶液で除去した後、膜厚5.5nmの窒化シリコン膜89をSiH2Cl2とNH3とを用いたLPCVD法により堆積し(図57)、さらに800℃の酸素雰囲気中で酸化して酸化シリコン膜90を形成しいわゆるNO膜を形成する(図58)。
そしてシランガスを用いたCVD法により基板温度630℃で燐添加の多結晶シリコン膜を堆積し(図59)、これをパターニングして上部電極91(図60)を形成することによりキャパシタが完成する。
これにより、表面を0.05μmの凹凸にして単位面積を大きくした電極を形成することができる。このようにして全工程を800℃以下で実施することができるため、他の領域にMOS素子等が形成されている場合にも適用することができる。
またここでシリコン粒の分布密度は1平方μmあたり200個程度であり、幾何学的表面積を計算すると、シリコン粒が無い場合に比較しておよそ50%程度増大することがあきらかとなった。
なお図56の工程で非晶質シリコンが粒状の単結晶となった基板を大気中に取り出し、SEMで表面を観察したところ、図61に示すように非晶質シリコン膜87が単結晶シリコン粒88に変化しており、断面TEMでさらに詳しく観察した結果図62に示すように粒径60nm程度の完全に分離したシリコンの単結晶シリコン粒88が間隔20nm程度で形成されていることが確認された。粒径よりも粒間距離が小さいため、単結晶粒による表面積増大効果が顕著に得られることが分かった
この堆積および加熱方法によれば条件のマージンが広く再現性よくシリコン粒を形成することができる。また、非晶質シリコンの堆積膜厚、下地材質、熱処理温度を変えることで、粒径、粒間隔、粒分布密度を制御することが可能である。なお、この例では、熱処理に先立ち、非晶質シリコンは単結晶の平均原子間隔と同じになるようにする。あるいは単結晶の平均原子間隔の1.02倍以上となるようにしてもよい。
次に例として、下地を酸化シリコン、熱処理温度を600℃とし非晶質シリコンの膜厚を5、10、20nmと変化させた場合に形成される粒のSEM写真を図63に示す。また図64にSEM写真から求めた膜厚に対する粒径と粒分布密度との関係を示す。この結果から膜厚を制御することで粒径、分布密度を選択することができ、堆積膜厚が10nmのオーダーと非常に薄くすみ、電極形状に依存することなく粒を形成することができるため、スタック構造、トレンチ構造などの立体的電極構造との組み合わせが容易である。
なお、この方法では自然酸化膜86の上に単結晶粒を形成し、これを図65(a)および(b)に拡大説明図を示すように熱処理により自然酸化膜86を破壊し島状にし、さらに下地の多結晶シリコン膜85から燐を単結晶粒中に拡散せしめ、十分な電気的接続を得ることができることを発見しこれを利用している。
この様にして得られたキャパシタの容量を測定し、シリコン粒の形成されていない従来例のキャパシタの容量とキャパシタ数とを示すヒストグラムを図66に示す。この結果から従来のキャパシタに比べ本発明のキャパシタによれば容量が1.56倍に再現性よく増大していることがわかる。
また、この例では自然酸化膜の破壊を熱処理によって行うようにしたが、これに代えてイオン注入を用いても自然酸化膜の破壊とシリコン粒への不純物の導入による導電性の付与を行うことができる。
さらにまた、下地としては自然酸化膜の他窒化シリコン膜、PSG、BPSGなどを用い、同様にして表面に粒を形成し、熱処理あるいはイオン注入などによって粒と電極の導通を得ることができる。粒の材質に関しても、シリコンのみならず、ゲルマニウムなどの半導体、アルミニウム、金、等の金属の非晶質薄膜を非酸化性雰囲気中で熱処理した場合にも同様にして導電性微細粒を形成することが可能である。
次に本発明の第10の実施例について説明する。
前記第9の実施例では自然酸化膜上に非晶質シリコン膜を形成し熱処理によりシリコン粒を形成したが、絶縁膜に限らず、カーボンなどの導電性膜上でもシリコン粒は形成可能であることを利用している。この例ではトレンチを含む表面に非晶質カーボン膜を形成しこの上層に非晶質シリコン膜を形成し熱処理によりシリコン粒を形成することによりトレンチ型キャパシタの下部電極に凹凸を形成する方法について説明する。この場合、シリコン粒形成後、絶縁膜を除去する必要がないという大きな利点がある。
まず、図67に示すようにn型(100)シリコン基板表面に酸化シリコン膜403を堆積しリソグラフィとRIEにより開口したのち、これをマスクとしてRIEによりトレンチTを形成する。
そして図68に示すようにアセチレンを原料ガスとしてCVD法により非晶質カーボン膜405を形成し、排気後同一チャンバー内で続いて図69に示すように、SiH4ガスとPH4ガスの混合ガスを導入し、CVD法により基板温度525℃圧力1Torrで、膜厚10nm程度の燐添加の非晶質シリコン膜407を堆積する。
こののちSiH4ガスおよびPH4ガスの混合ガスを排気し、非酸化性のArガスを導入して昇温し、600℃1時間の熱処理を行った。これにより図70に示すように燐添加非晶質シリコン膜407が単結晶シリコン粒408に変化し、トレンチ内壁を含む表面全体に良好な凹凸が形成される。この粒径や粒間隔は前記第9の実施例とは異なるが、ここでも良好なシリコン粒が形成されている。そして、図71に示すように膜厚10nmの酸化シリコン膜409を形成しキャパシタ絶縁膜とする。
そしてシランガスを用いたCVD法により基板温度630℃で燐添加の多結晶シリコン膜を堆積し、これをパターニングして上部電極411(図72)を形成することによりキャパシタが完成する。
これにより、表面を0.05μmの凹凸にして単位面積を大きくした電極を形成することができ、実効的なキャパシタ容量を大幅に増大することができる。ここでは第9の実施例の効果に加え、シリコン粒を直接電極に接して形成できるため、絶縁膜の除去工程が不要になり工程が簡略化される。
なお、前記実施例では下部電極をカーボンで構成したが、多結晶シリコン膜などで形成した後表面をカーボン膜で被覆し、シリコン粒を形成するようにしてもよい。またシリコン粒の下地となる膜はカーボン膜に限定されること無くW、Ta、Ni、Tiなどの金属、NiSi、TiSiなどの金属硅素化合物、あるいはTiNなどを電極もしくは電極被覆剤として用いるようにしても、カーボン上同様表面に導電性微細粒を形成することができる。
次に本発明の第11の実施例について説明する。
これまでに示した例では、非晶質膜の形成後連続して非酸化性雰囲気中で熱処理を行うようにしたが、この例では非晶質膜の表面に酸化膜が形成されてしまった場合、フッ酸などを用いて自然酸化膜を除去し熱処理を行うようにすればシリコン粒が形成される。以下この例について説明する。
まず、図73(a)に示すように1000℃15分の熱酸化によりn型(100)シリコン基板501表面に膜厚500nmの酸化シリコン膜502を形成し、この上層に、SiH4ガスを用い、CVD法により基板温度525℃圧力1Torrで、膜厚10nm程度の非晶質シリコン膜503を堆積し、大気中に取り出す。このとき表面に自然酸化膜502sが形成されている。この状態で前記第9および第10の実施例と同様に600℃1時間の熱処理を行っても多結晶シリコン薄膜となり微細シリコン粒は形成されない。
ここではついで5%のHF溶液で自然酸化膜502sを除去し図73(b)に示すように非晶質シリコン膜503表面を露出せしめた後、表面が再び酸化されないように維持しつつ25℃以下に維持して基板を真空容器に搬入する。
そして、容器内を1×10−8Torrまで排気したのち昇温し、600℃1時間の熱処理を行う。これにより図73(c)に示すように単結晶シリコン粒504が形成される。この後この基板を大気中に取り出し、SEMで観察したところ図74に示すようにシリコン粒が確認された。
このように非晶質シリコン膜表面に一旦酸化膜が形成されても、酸化膜を除去してから再酸化を防ぎ高真空中あるいは非酸化性雰囲気中で熱処理を行うようにすれば、連続的に熱処理を行うことができない場合にも、シリコン粒を得ることができる。これは実際のキャパシタ形成工程で極めて有効な方法である。
なお、前記実施例ではキャパシタへの適用について説明したが、キャパシタに限定されること無く、表面積の増大が必要な場合など、低温下で容易に凹凸を形成可能であるためデバイス形成に極めて有効な方法である。
次に、本発明の第11の参考例について説明する。
この例では、図75にその製造工程図を示すように、シリコン基板601表面を覆う酸化シリコン膜602に形成された窓Wを種として固相成長せしめられた単結晶シリコン薄膜603内にソース・ドレイン領域S、Dを形成するとともに、これらの間にゲート絶縁膜604を介してゲート電極605を形成したものである。
本参考例の特徴は、従来に比べ結晶性の格段に優れた単結晶薄膜をMOS素子のチャネル領域に用いることであり、これによって従来得られなかった、高速動作素子を作成することができる。高速動作が可能となる要因は、結晶性が大幅に改善されたことであるが、さらに、チャネル領域が数十nmの極薄膜である事も大きく効いている。このような超薄膜を従来の方法で得ようとする場合、厚い非晶質シリコン層を形成して固相成長を行い再結晶化したのち、所望の厚さまでエッチバックするのが通常の方法であり、エッチングによって高精度の膜厚を得るのは極めて困難であったが、この方法では非晶質シリコン膜の形成に際し膜厚を制御すれば良いため、制御性よく容易に高精度の制御が可能である。また、ここではその詳細な原理にふれないが垂直電界の緩和によると考えられている。さらに、この素子構造では、基板とチャネル領域とが極めて良好な界面状態で電気的に接触しているため、ドレイン近傍で発生するインパクトイオン化による電流を基板へ流すことで素子動作の安定化を達成することができる。
製造に際してはまず、シリコン基板上にシランガスと酸素を材料としてCVD法を用いて500nmの酸化シリコン膜602を形成する。次にレジストをマスクに用い、酸化シリコン膜の一部をエッチングして窓Wを形成し、シリコン基板601を露出させる。なおエッチングには、反応性イオンエッチングあるいはフッ酸などによるウェットエッチングなどいずれの方法を用いても良いが、ここでは、反応性イオンエッチングを用いた。
続いて、「種」部のシリコン基板表面の酸化膜除去のため、高真空のCVD炉内にシランガスを導入し600℃、1×10−6Torr、2時間処理した後、連続して炉内の条件を525℃、1Torrに変更、非晶質シリコン膜を20nm堆積した。さらに、シランガスの導入を停止した後、連続して、600℃、30分の熱処理を行った。ここまでの工程で「種」部に20nmの単結晶シリコンの埋め込みがなされる。このようにし連続して、525℃の非晶質シリコン膜の成膜、600℃での結晶化を繰り返し、図75(a)に示すように「種」部の埋め込みを完了した。「種」部以外のシリコン膜はエッチングにより除去した。
この時、525℃で成膜した非晶質シリコン膜は、ラマン分光法で測定すると、原子間隔の平均距離がシリコン単結晶の原子間隔のほぼ1.02倍であり、高真空炉内で連続して結晶化を進めているときも結晶化する直前までこの値を維持していた。このようにシリコン原子の結合がゆるんだ状態で結晶化を進めると極めて結晶性の良好な単結晶が得られ、透過電子顕微鏡で調べても欠陥はみられなかった。
このように本発明の方法を用いれば、従来の選択エピタキシャル法「種」部のシリコン結晶の埋め込みには、ジクロルシランガスを材料として850℃、1Torrの成膜条件で、選択エピタキシャル成長を用いても良いが、我々は、ここでも本発明を用いてシリコン単結晶の埋め込みを行った。この方法では、選択エピタキシャル成長のような高温工程を必要とせず、すでに他の領域に素子を形成しておいても何等問題を生じない。
次にこの「種」部を用いて素子の能動層形成を行った。まず、高真空のCVD炉内に図75(a)の構造の試料を設置し、シランガスを導入しながら600℃、1×10−6Torr、2時間処理した。つぎに、連続して炉内の条件を525℃、1Torrに変更、非晶質シリコン膜を50nm堆積した。さらに、シランガスの導入を停止した後、連続して、600℃、30分熱処理を行った。
ここでも、525℃で成膜した非晶質シリコン膜は、原子間隔の平均距離がシリコン単結晶の原子間隔のほぼ1.02倍であり、高真空炉内で連続して結晶化を進めているときもこの値を維持した。結晶化後の膜を透過電子顕微鏡で調べても欠陥はみられなかった。
このようにして単結晶シリコン薄膜603を形成した後、ケミカルドライエッチング(CDE)を用いて素子分離を行った。そしてこの素子領域に図75(b)に示すようにソースおよびドレインとなる領域をイオン注入により形成し、さらに、ゲート酸化膜604の形成およびゲート電極605の形成を行った。
素子分離に用いたCDEおよびイオン注入はほぼ室温の工程であり、ゲート酸化膜など酸化膜はシランガスと酸素を用いたCVD法によって450℃で形成した。ゲートはジシランおよびジボランなどを材料としたCVD法により350℃で形成した。
このようにして形成されたMOSトランジスタの素子特性を図76に曲線aで示す。ここで曲線bは比較のために、基板とは接していない200nmのシリコン膜を用いた従来例の典型的なMOSトランジスタの素子特性を示した図である。両者を比較してみるとあきらかにドレイン電圧の増加に対するドレイン電流の増加の程度が、本発明の構造の方で大きくなっていることがわかる。この増加の程度は素子の移動度に相当している。この素子の移動度を実測したところ例えばNMOSでは700cm2V/secであった。これは、従来のバルク素子を上回る性能である。また、図中従来例のMOSトランジスタの方では「キンク」と呼ばれる素子特性の不規則な変化がみられているが、これはインパクトイオン化により生じた空孔がシリコン薄膜中に止まるために起きる現象と考えられる。素子をLSI回路として利用する際、このような特性の不規則な変化は設計上極めて不都合であるが、本発明の方法により作成した構造の素子ではこのような特性の不規則性はまったくみられなかった。
従来、結晶性の優れた単結晶薄膜を得るためにシリコンを一旦溶融する方法や、850℃程度の温度でエピタキシャル成長させる方法などが提案されているが、いずれも高温が必要であった。また低温で結晶成長を行う固相成長法も存在はあったが結晶性が悪く素子には使えないという問題があった。このような状況の中で本発明によれば、上記した方法を用いた固相成長法により、シリコン薄膜の結晶性を大幅に改善した。
以上の工程はすべて600℃以下の工程であり、例えば素子を積層化するなどすでに他の領域に素子を形成してある場合でも、すでに形成した素子に熱拡散など熱的影響を与えずに次々と新しく素子を追加形成していくことができる。しかも、それぞれの素子特性はシリコン基板に形成したもの以上に優れている。図77に、本発明の方法を用いて絶縁膜上にMOS素子を形成する前後でシリコン基板上にすでに形成しておいたMOS素子の特性を測定した結果を表で示す。ここではMOS素子の特性の代表的な例としてしきい値と移動度を示した。まずシリコン基板にnチャネル,pチャネルのMOS素子を1000個作成し、その特性を測定した。次に本発明の工程をすべて行うことにより、絶縁膜上にMOS素子を作成してから、すでにシリコン基板上に作成しておいたMOS素子の特性を再び測定した。表に示すようにnチャネル、pチャネルともに閾値、移動度の変化はみられなかった。この表からも、本発明は、素子の集積化、微細化に極めて有効な方法であることがわかる。
次に本発明の第12の参考例として、SOI素子の形成に本発明を用いた例を以下に示す。
本参考例の特徴を一言でいえば、図78に示すように「種」結晶を用いた固相成長法により絶縁膜上に単結晶シリコン薄膜を形成する際、「種」部から数十μmの遠方まで単結晶を成長させ、SOI素子を任意の位置に作製可能にした点にある。従来技術では、「種」からたかだか2〜3μmまでしか単結晶化できず、これは単体のSOI素子の大きさとほぼ同じ広さしかなく、素子のレイアウト上の自由度がほとんどなかった。
さらに従来技術でのもう一つの欠点は、集積化に不利である点である。例えば1μmのパターンを形成できる技術でSOI素子を作製しようとすると、まず酸化膜に穴をあける「種」の形成に1μm2の領域が必要になる。ソース、ドレインおよびゲートにそれぞれ1μm2の領域が必要であるから3μmしか単結晶が延びないと1つの「種」に1つのSOI素子しか作製できない。この時「種」の占める面積は、素子の占める面積の1/3にも達し集積化には極めて不利である。極論すればシリコン基板の1/4が「種」として使われて無駄になってしまう。さらに、0.5μmでパターンを形成できる技術を用いても、1/7の面積が「種」として使われて無駄になってしまう。また、従来技術では、「種」から単結晶成長している領域でも双晶などの欠陥が多数見られた。
本参考例は、非晶質の密度が単結晶シリコンと異なると、非晶質が結晶化する際に膜中に応力が生じ、これが結晶成長を阻害していることを発見し、非晶質の密度を単結晶シリコンに近づけることで、従来不可能であった数十μmの薄膜単結晶成長を可能にした。しかも、応力が低減されたため、結晶欠陥の発生も抑制され、上記数十μmの単結晶領域全体にわたって双晶などの欠陥も見られなくなった。
本参考例では、まず(100)シリコン基板に酸化シリコン膜602を500nm形成した。酸化シリコン膜602は熱酸化法で形成しても良いが、ここではシランガス0.2Torr、酸素ガス0.8Torr、堆積温度450℃の条件でCVD法を用いて形成した。次にレジストをマスクに、反応性イオンエッチングを用いてこの酸化シリコン膜602に開口部を設けた。このように酸化シリコン膜602に開口部を設け一部シリコン基板601を露出させた試料を、5%フッ酸溶液で5分間処理してからバックグランド1×10−6Torr以下の高真空まで排気可能なCVD炉に導入した。この炉を480℃まで昇温した後、ジシランガスを200SCCM、0.04Torr導入し非晶質膜を0.2μm厚に堆積した。この非晶質膜の密度をRBS測定(ラザフォード後方散乱測定)により求めたところ、ほぼ単結晶シリコンと等しい値であった。ここで、例えばジシランガスの圧力を0.1Torrまで上げて非晶質の堆積を行うと、その密度は単結晶の0.99倍であった。この場合、シリコンイオンを加速電圧80keV、3×1014atom/cm2イオン注入すると、ほぼシリコン単結晶の密度と等しくすることができた。我々は、非晶質シリコン膜を堆積するときに、堆積速度を適正化するとともに、特に基板の温度を下げることにより、容易に単結晶に近い密度の非晶質膜を成膜できることも見いだした。
このように非晶質膜を堆積した後、580℃、20時間の熱処理を行うと、図78(a)に示すような構造の単結晶薄膜を形成することができた。この単結晶薄膜の結晶性を高分解能透過電子顕微鏡を用いた断面TEM観察で調べたところ、双晶等の結晶欠陥の無い良好な結晶性の単結晶が数十μmの領域にわたって形成できていることが確認できた。
つぎに、この単結晶薄膜を用いてMOS素子の作製を行った。まず、単結晶薄膜を、ハロゲン系ガスを用いたCDE法により島状に素子分離した。つぎにゲート酸化膜40nmおよびゲート電極400nmをCVD法で堆積した。これを反応性イオンエッチングでゲート形状にパターニングした。さらに、ソースおよびドレインとする領域に、PMOSの場合には硼素を、NMOSの場合にはリンをイオン注入し950℃、30分の活性化熱処理を行った。
このようなMOS素子を図78(b)に示すように「種」から<010>方向に5μm間隔で12個配置した。この「種」から距離の異なる位置に作製した素子の特性を測定したところ、PMOSでは150cm2V/sec、NMOSでは600cm2V/secというほぼシリコン基板上に作製した素子と同程度の移動度が得られた。従来技術では、このような高移動度の素子は形成できず、また、「種」から2〜3μm離れた位置の素子では、正常なMOS動作が得られないものもあった。
図79は、この方法を用いて形成したシリコン薄膜(曲線a)と従来のシリコン薄膜(曲線b)の結晶欠陥の数をエッチピットで評価した結果を示す図である。エッチピットはフッ硝酸系混合溶液でシリコン膜表面を処理した後電子顕微鏡で観察すると、ピット状の窪みとして観察される。このピットは結晶欠陥がフッ硝酸系混合溶液で選択的に速くエッチングされることにより現れるものであり、欠陥の数と一致する。従来膜では欠陥の数が非常に多く、特に「種」を離れるとわずか数μmで1010個/cm2にも達する。本発明の方法によれば、「種」から35μm離れた位置においても、100個/cm2以下に押さえることができた。
さらに図79に示した構造のnチャネルおよびpチャネルのMOS素子を「種」からの距離を代えて100000個作成し、その特性を測定した。図80にこの特性の代表的値として、しきい値および移動度とその標準偏差を示した。この図に示すように、pチャネルnチャネルともに、移動度はシリコン基板に作成したMOSと同程度の値であり、しかも「種」から離れてもほとんど低下しない。また、しきい値のばらつきもほとんど増加せず、本発明を用いることにより「種」から離れた位置でも、従来よりも格段の素子特性の向上をはかることができた。
次に本発明の第12の実施例について説明する。
この例では、図81(a)乃至(k)に工程図を示すように、基板表面に形成されたp型シリコン領域と、その上層に本発明の方法で形成したn型の粒状単結晶シリコンとでpn接合を形成し、特性のばらつきの小さいダイオードを得るようにしたものである。
まず、図81(a)に示すように、シリコン基板701としてN−typeのSi(100)を用意する。このシリコン基板701の不純物濃度は特に限定しないが、本発明者らは1015/cm3程度を選んだ。このシリコン基板701に、1100℃で選択熱酸化を施し膜厚350nm程度の素子分離領域702を形成する。
次に図81(b)に示すように、ドライ酸化雰囲気で膜厚35nmの薄い酸化シリコン膜703を形成した。
しかる後に、図81(c)に示すように、イオン注入法により、例えばボロン不純物を、注入し埋め込みp+電極領域704を形成した。この時、別の方法として、例えば、埋め込みエピタキシャル法を用いても良い。ただし、エピタキシャル法の場合は、若干手順を変える必要がある。この領域704は後続工程で形成されるダイオードの電極の一部の引き出し拡散層になる。
次に、この酸化シリコン膜703に、フォトリソグラフィを用いて、図81(d)に示すように開口部705を形成する。しかる後に、再びフォトリソグラフィ法を用いて、マスクを形成しイオン注入を行い、図81(e)に示すようにこの開口部705の一方の部分に、引き出し用の高濃度p+不純物層706を形成した。他方開口部のうちもう一方の部分には、図81(f)に示すようにダイオードのもう一方の電極部分になるp−領域707を形成した。
次に、図81(g)に示す様に、本発明の構成要素の根幹の一部である極薄酸化膜708を形成する。この極薄酸化膜としては、例えば自然酸化膜を用いるようにしても良い。
次に図81(h)に示すように、やはり本発明の根幹の一部である非晶質シリコン膜709を堆積させた。ここでは、堆積温度は、例えば525℃で、堆積ガスは例えばSiH4であった。もっとも重要な用件である非晶質膜厚は、例えば、19.8nmであった。この時、本発明者等は、ドーピングガスとして、PH3を用い、堆積膜には高濃度n+不純物を含ませた。この非晶質シリコン膜709をパターニングし、ここでは図81(i)に示すように、ダイオード部分になるところを残して置く。しかる後に、この膜709の上に酸化膜等が被着していることが考えられるので、これを十分取り除き、再結晶化炉に挿入した。例えばその温度は600℃であった。
図81(j)に示す様に、600℃で熱処理すると、非晶質シリコン膜709の部分は再結晶化して、単結晶シリコン710となる。これは本発明の特徴である。しかも、その方位は基板と同一であり、このとき別にアニールを行ってもよいが、再結晶化のための熱処理により図81(k)に示すように、酸化膜の一部が収縮して破れ、上下の結晶性が連続になる。これが本発明になる単結晶ダイオードの骨子になるわけである。そして電極711、712をそれぞれ形成しダイオードが完成する。
上記述べてきた、単結晶粒成長時になぜ下地の極薄膜酸化膜が一部剥離し、上下に結晶的に結合したか、さらに、このような低温で、上下の結晶がなぜ方位まで揃って、良好な結晶が得られたのかを、本発明者らは鋭意追求したので、ここで簡単に説明する。
本発明者は、既に紹介した様に新しい分子動力学シミュレーションシステムを開発した。これを用いて上記プロセス現象の真髄に迫った。分子動力学シミュレータ中の各原子間のポテンシャル表現部分と界面作成部分を改良し、Si/SiO2界面を含むSi原子とO原子の運動計算ができる様にした。計算作業の一部を記す。Si/SiO2界面作成の初期条件としては、以下の通りである。即ち2つの約束事を設け、(i)初期条件としては dangling bond を一切残さないこと、(ii)初期結合長d及び初期結合角θはそれぞれ、dSi−Si=2.35オングストローム、dSi−O=1.60オングストローム、θSi=109.47°、θO=144.0°とすることである。しかる後、SiとO原子それぞれにマックスウエリアンに従った速度を乱数的に割り当てる。その後、界面を含む系全体で、エネルギを最小にする様に全粒子を運動方程式に則り移動させた。従って、充分計算が進んだ時点で、構造的緩和が起こり、結合長や結合角の分布等が求まる手はずである。多量の出力(各原子についての、時々刻々の位置と力と速度と、界面近傍の応力等のデータ)を分析した。
その結果を明らかになったことを以下に記す。まず非晶質シリコン膜709の再結晶化は、膜の上面近傍から成長、下層の薄膜酸化膜708に向かって進む。この時、基板701の結晶方位との整合性は全く無い。シリコン単結晶の成長が伸びるにしたがい、成長端近傍に引っ張り応力が蓄積することがわかった。他方、下層の薄酸化膜708にも、初期から基板701と極薄酸化膜708の原子間構造に起因する圧縮応力が蓄積している。従って、酸化膜708には大きな圧縮応力が蓄積し、蓄積量が一定値に達すると部分的に酸化膜708が破れることが解った。さらにこの瞬間に再結晶化粒710は、シリコン基板701との結晶方位の違いによるエネルギ量を下げる方向に力が働くことも解った。その後、再結晶化粒710は下地基板701と完全に近い同一軸になることも解った。
この後、本発明による単結晶微細ダイオードの特性を評価してみた。その結果を図82に示す。図中のqは電気素量で、Vは電圧を示し、kはボルツマン定数である。またTは絶対温度を示している。まず図から解る様に、良好な整流特性がみられている。更に、逆方向であるが、q|V|/kTの値で見てみると、耐圧は測定範囲では殆ど検出できず、理想に近い挙動を示している。この様に、理想に近い、整流特性及び耐圧が得られた理由は良く解らないが、考えられる項目としては以下の2点がある。一つには、結晶性が良い事,もう一つは、不純物の再分布がなく、完全急峻型が得られた事にある。
比較の為に、本発明者等は、従来の技術を用いてpnジャンクションを作成してみた。以下に作成手順と特性結果を簡単に報告する。
従来例としては、例えば、図81で代用すれば、図81(g)までは同じでも良い。その後、図81(h)では非晶質シリコン膜を堆積させたが、ここでは、多結晶Siを堆積させたものを用いる。この温度はたとえば、625℃であった。此の温度は、ここで明記しておきたいが、非常に高いわけである。このような温度処理は、もし下地に素子が有れば非常に不利になる。
そのあと、従来良く行われている様に、基板と多結晶Siの界面を目指して、ミクシング用のイオン注入を行った。その後、例えば970℃で熱処理を行い、その後、電極等を形成して、接合特性を測定した。その結果を図83に示す。明らかに耐圧が低下していることがわかる。此の様に、耐圧が低下している原因を調べると、一つには、接合領域が、完全に単結晶になっておらず、多分ミクシング時の欠陥だと推定されるものが多数残っている。さらにSIMSによって不純物分布を観察したが、急峻さが低下している。これらにより、特性が劣化したものと考えられる。
次に、本発明の第13の実施例について説明する。
この例では図84に示すように、固相成長により形成した粒状の単結晶シリコンを用いて、結晶粒径の揃った、しかもグレイン内部の結晶性が極めて良い多結晶シリコンを形成し、ここに移動度のバラツキ等の無い、素子特性の安定した薄膜トランジスタを形成した実施例を示す。
まず、シリコン基板901上に絶縁膜を堆積した後、単結晶シリコンを得るに当たり、非晶質シリコンの平均原子間隔を予めシリコン単結晶と一致するようにした膜を用い、さらに非晶質膜の表面に酸化膜の成長付着を抑止するため、還元性雰囲気のH2雰囲気にして、熱処理した。膜作成の装置は図32に示したものと同一のものを用いた。
まず図84(a)に示したように、シリコン基板901の上にシリコン酸化膜902を500nm堆積した後、非晶質シリコン膜903を堆積する。この膜厚は75nmとした。すると、本実施例の文頭に報告したように、堆積直後の測定結果では、平均原子間隔は、単結晶基板の1.005倍の値を得た。この後、堆積装置と同一装置を用いて、表面自然酸化膜の付着を抑えながら、580度5時間の熱処理を行い、単結晶シリコンを形成した。その結果、図84(b)に示したように、非晶質シリコン膜は単結晶化して粒状のシリコン単結晶粒が形成された。
TEM写真を用いた詳細な観察により、この単結晶粒は、垂直方向に<100>軸が配向しており、しかも、大きさと粒間隔がほぼ揃っていることが観察された。例えば、基板の真上から粒を捉えたSEM写真により、粒径分布を調べると、図85(a)に示したように、最大出現頻度の粒径1500オングストロームを中心に、±20%以内に90%以上の粒が含まれた。特に、最大出現頻度よりも1割以上大きい粒は、ほとんど見られなかった。この現象は、おそらく、ほとんどの結晶核の生成が、熱処理開始から比較的速い時間に同時に起こっているためと考えられる。また、隣接する粒の中心から中心までを測定して粒間隔を調べると、図85(b)に示したように、最大出現頻度の粒間隔1900オングストロームを中心に、±10%以内に90%以上の粒が含まれた。この様に、単結晶粒は大きさも間隔も揃い、しかも粒と粒は各々分離していた。
この粒の上に、図84(c)に示すように第2の非晶質シリコン903を2000オングストローム堆積した。この非晶質シリコンの平均原子間隔は1.005であった。
この後、580℃で30分熱処理し、図84(d)に示すように、粒状単結晶シリコン904を結晶の種として、第2の非晶質シリコンが固相成長し、多結晶シリコン905が形成される。TEM写真から多結晶シリコンのグレインを調べた所、幅1900オングストローム程度の柱状になっており、各々の柱状グレインが、垂直方向に<100>配向していた。また、多結晶シリコンのグレイン内も、図86(a)に示すように、通常の任意核形成による固相成長膜に比較して、結晶性が良好であった。この原因は明確では無いが、おそらく、結晶種として用いた単結晶粒の結晶性が極めて良好なためではないかと予想している。
比較のため、通常の非晶質膜固相成長により形成した多結晶膜の大粒径グレインの結晶性を図86(b)にTEM写真で示す。グレイン内部には双晶等の欠陥が多数見られる。しかもこれらの欠陥は1200℃以上の高温で熱処理しない限り、容易には消滅しない。
このようにしてグレインの大きさが揃った多結晶シリコン膜を形成した後、多結晶シリコン膜表面をエッチングして平坦化するとともにパターニングを行い、図84(e)に示したように表面が平坦な多結晶シリコン膜905をRIE等で島状に成形した。次に、B+チャネルイオン注入をドーズ量1×1013atoms/cm−2、40keVの条件で行った図84(f)。この後、多結晶シリコン膜905表面を熱酸化して、ゲート絶縁膜906を形成した。通常の多結晶膜表面は、様々な面方位のグレインで構成されているため、熱酸化でゲート絶縁膜を形成すると、各々の面方位で異なった酸化速度を有するため、酸化膜厚は1割程度ばらつく。このように酸化膜厚のばらつきを残したまま、トランジスタを形成した場合、しきい値電圧が大きくばらつく原因となる。ところが、本方法で形成した場合、多結晶の表面は殆ど(100)面であるため、TEM写真による測定の結果、3%程度のばらつきで抑えられていた。
次に図84(g)に示したように、ゲート電極907を形成した後、ゲート側壁に絶縁膜を堆積し、ソース・ドレインの導電層形成の為に、As+イオン注入を2x1019atoms/cm−3、40keVで行う。そして層間絶縁膜908を堆積し、電極形成用の開口部を設けた後に、ソース/ドレイン電極909、910を形成した。
このようにして、形成した薄膜トランジスタの電気特性を測定したところ、グレインの大きさが1900オングストロームと大きく、しかも1500オングストローム以下のグレインが無いために、多結晶膜表面のどの場所にトランジスタのチャネル領域が来ても、素子特性が安定していた。例えば、室温で移動度のばらつきを調べると、図87に示すように、従来の固相成長膜を用いる場合よりも、格段に移動度のばらつきが減少した。
従来の膜を用いた場合のVg−エレクトロン移動度特性は、図88に示すように、粒界がチャネル領域にたまたま存在しなかった場合と、存在した場合で、大きく異なってくる。この場合のエレクトロンの移動度の温度依存性を測定した結果を図89に示す。従来膜は、チャネル領域に粒界が存在する場合に、移動度は温度の低下に伴い大きく減少し、粒界が存在する場合と比較して、移動度の差は一層顕著になる。これに対して、本実施例の膜は、図88中に示したように、粒界がチャネル領域に均等に存在するため、素子特性が安定している。また、温度依存性も、図89に示した領域に落ちついていた。
なお、前記実施例では、熱処理に際しての非晶質シリコンの平均原子間隔をシリコン単結晶と同程度となるようにし、歪みのない単結晶シリコン膜を得たが、1.02以上となるようにしてもよい。
また、前記実施例では、全面に堆積した第一の非晶質シリコン膜を熱処理し、単結晶粒を形成したが、第一の非晶質シリコン膜を堆積後にRIE等によって、成形しても良い。次に本発明の第14の実施例としてこの例を示す。
まず、上述の非晶質シリコン膜を堆積した後、一旦堆積装置から出して図90(a)に示すように0.2μm幅の線状に整形した後、表面の自然酸化膜を剥離して清浄表面とし、再び堆積装置内に搬入した。このとき、平均原子間隔を測定すると、1.02であった。この状態で水素雰囲気で550℃2時間晒し、装置より搬出した。SEM写真で単結晶粒の並びを調べると、図90(b)に示すように、単結晶粒がほぼ一列に並んでいた。ここに第2の非晶質シリコン膜903を堆積して、図90(c)に示すように整形する。第一の非晶質シリコン膜903より形成した単結晶シリコン粒904を結晶核として第2の非晶質シリコン膜903を固相成長すると、第2の非晶質シリコン膜は図90(d)に示したように、粒界が垂直方向に走る、いわゆるバンブー構造の多結晶膜になった。ここに、図90(e)に示した様に粒界に平行にチャネルが形成されるようにしたトランジスタを形成した。多結晶膜のグレインサイズはおよそ2000オングストロームであった。この構造では移動度のばらつきは更に改善され、図91に示すように極めて狭い範囲内に制御することができた。
次に本発明の第15の実施例を示す。
この例も第14の実施例と同様に、単結晶シリコンを得るに当たり、非晶質シリコンの平均原子間隔を予めシリコン単結晶の1.02倍以上からなる膜を用い、熱処理を行って固相成長により形成した、結晶性の極めて良好な粒状の単結晶シリコンを用い、結晶粒径の揃った多結晶シリコンを形成して、移動度が高くしかもバラツキが小さい薄膜トランジスタを形成した例である。ここではゲート電極907の上層に多結晶シリコン905からなる素子領域を形成したことを特徴とする。
図92(a)に示したように、シリコン基板901上に絶縁膜902を堆積した後、多結晶シリコン膜からなるゲート電極907を形成した。次に、CVD法により、ゲート絶縁膜906を堆積した。
次いで図92(b)に示すように、ゲート絶縁膜906の上に、非晶質シリコン膜903を平均原子間隔が単結晶シリコンの1.02倍以上となるように堆積した。堆積膜厚は40nmとし、平均原子間隔を測定したところ、単結晶の1.02倍であった。この基板を図2に示した装置内に設置し、非酸化性雰囲気の550℃2時間熱処理したところ、図92(c)に示したように粒状の単結晶シリコンが得られた。TEM写真を用いた詳細な観察により、この単結晶粒も、垂直方向に<100>軸が配向しており、しかも、大きさと粒間隔がほぼ揃っていることが観察された。図93に示すように、粒径分布を調べると、最大出現頻度の粒径900オングストロームを中心に、±20%以内に90%以上の粒が含まれている。図94に示したように、粒間隔を調べると、最大出現頻度の粒間隔1200オングストロームを中心に、±20%以内に90%以上の粒が含まれている。
次に同一装置内で図92(d)に示すように第2の非晶質シリコン膜903を1200オングストローム堆積した。この非晶質膜の平均原子間隔は、単結晶の1.009倍であった。堆積装置内で600℃15分熱処理したところ、図92(e)に示すように、第2の非晶質シリコン膜903は単結晶シリコン粒を結晶種として、固相成長により単結晶化し、多結晶シリコンが形成された。この多結晶シリコンもTEM写真を用いて測定したところ、前記実施例14と同様にグレインの大きさが揃い、垂直方向に<100>軸が優先的に配向した多結晶薄膜であった。 グレインの大きさが揃った多結晶シリコン膜を形成した後、図92(f)に示したように多結晶シリコン膜をRIE等で島状に成形した。次に、ドーズ量1×1013atoms/cm2、40keVでPイオンをチャネルイオン注入した。そして活性化の為の熱処理を900℃30分行った。
次に、ソース・ドレインの導電層形成の為に、B+イオン注入を3×1015atoms/cm2、20keVで行う。層間絶縁膜908を堆積し、電極形成用の開口部を設けた後に、ソース/ドレイン電極909、910を形成した。
このようにして請求項1の方法を用いて形成した単結晶シリコンを用いた薄膜トランジスタは、下地側のチャネル領域も1200オングストローム程度の均一な粒径のグレインで構成されている。通常のCVD法で、導電性不純物濃度の低い多結晶シリコンを堆積すると、粒径は僅か300オングストローム程度にしかならない。このためキャリアの移動度は粒界での散乱により非常に小さくなる。また通常の非晶質膜の固相成長で形成した多結晶シリコンでも、下地との界面には玉砂利状の微小なグレインが多数存在し、移動度の減少の原因となっていた。ところが、この方法により形成した多結晶膜に於いては、チャネル領域である下地界面に微小グレインが全く無く、しかも結晶性が格段に向上しているため、移動度のバラツキが改善され、平均的な移動度も格段に向上している。また、移動度に影響する膜中酸素濃度をSIMS分析により測定したところ、図95に示すように、第一の非晶質膜の膜質が影響する下地界面近傍には酸素濃度が極めて低かった。これにより、酸素原子による散乱も低減され、高移動度の素子が作成出来た。
次に本発明の第13の参考例を示す。
この例では図96乃至図104に示すように、固相成長により形成した極めて結晶性の良好な単結晶シリコンを用いて形成した、ソースドレイン持ち上げ型MOSすなわちエレベーテッドソースドレインMOS素子について説明する。この方法で形成したMOS素子ではゲート酸化膜直下のチャネル領域に不純物がほとんど入っていない層を形成することができるため、キャリアの走行が不純物によって妨げられることなく、高移動度のトランジスタを得ることができるという特徴を有する。また、ゲート酸化膜直下で不純物濃度が高ければ高いほど反転層形成時の垂直方向の電界が強くなるため、キャリアがより強く酸化シリコン/シリコン界面に張り付いて走行するため、界面のわずかな凹凸もキャリアの散乱の原因となっていたが、本発明のMOS素子によればこのような問題もない。
まず図96に示すように、シリコン基板801表面に選択酸化によりフィールド酸化膜802を形成する。そして必要に応じて閾値電圧調整のためのイオン注入を行う。
そして図97に示すように、素子領域表面の清浄化を行った後、膜厚20nmのノンドープの非晶質シリコン膜803を堆積する。堆積直後の測定結果では、平均原子間隔は、単結晶シリコンの1.03倍であった。
この後、図98に示すように、堆積装置と同一装置内で、表面自然酸化膜の付着を抑えながら、550度1時間の熱処理を行い、単結晶シリコン804を形成した。このときシリコン基板上では単結晶804となるが、フィールド酸化膜802上では多結晶シリコン膜804Sとなっている。
そして図99に示すように素子領域のパターニングを行い、図100に示すようにゲート酸化膜805を形成する。
さらに図101に示すようにこの上層に多結晶シリコン膜806を堆積し図102に示すようにこれらをパターニングしてゲート電極806を形成する。
そして図103に示すようにこのゲート電極806をマスクとしてイオン注入を行いソース・ドレインS,Dを形成し、さらに層間絶縁膜807を形成した後コンタクトホールを介してソース電極808、ドレイン電極809、ゲート電極810を形成し、図104に示すようにMOS素子が完成する。
このようにして形成されたMOS素子のゲート電圧と移動度との関係を測定した結果を図105に曲線aに示すように極めて高移動度の特性を得ることができた。比較のために従来例の測定結果を曲線bに示す。従来の方法では高温でのエピタキシャル成長によって単結晶シリコンを形成するため基板からのオートドーピングによって、ゲート酸化膜直下のチャネル領域に不純物がドーピングされるのを避けることができないが、この方法によれば、低温下で結晶性の良好な単結晶シリコン膜を形成することがきるため基板からのオートドーピングもなく、ゲート酸化膜直下のチャネル領域に不純物がほとんどはいっていない層をつくることができる。このように、キャリアの走行の散乱体となる不純物のない単結晶層を形成することができるため、高移動度を得ることができる。またゲート酸化膜直下で不純物濃度が高ければ高いほど、反転層形成時の垂直方向の電界が高くなる。垂直電界が高いと、キャリアはより強く酸化シリコン/シリコン界面にはりついて走行することになり、界面のわずかな凹凸もキャリアの散乱体となり、移動度低下の原因となるが、本発明の方法で形成される素子構造ではゲート酸化膜下での不純物濃度を低くすることができるため移動度の低下を防ぐことができる。 またこの方法を用いて形成したリングオシレータの遅延時間とVddとの関係を測定した結果を図106に示す。この結果からも高速動作可能であることがわかる。これは本発明の素子では、上記効果に加えソースドレイン領域はフィールド酸化膜上に形成されるため、印加電圧に応じて基板側に空乏層が広がるのを防ぐことができ、充放電の度に遅延が生じるという問題もないためである。
このように本発明の方法を用いて形成したリングオシレータでは、移動度の向上とソース・ドレインのキャパシタンス低下の両方の効果により大幅な高速化をはかることができる。
次に本発明の第14の参考例を示す。
この例でも固相成長により形成した極めて結晶性の良好な単結晶シリコンを用いて形成した、ソースドレイン持ち上げ型MOSすなわちエレベーテッドソースドレインMOS素子について説明する。この方法では、図107乃至図115に示すように、トレンチ分離された素子領域内に、ゲート電極を形成しこの上層にソース・ドレイン領域のみを本発明の固相成長で形成し、チャネルは基板表面に形成するようにしている。この素子では低温下でソースドレインを形成することができるため不純物分布を急峻にすることができパンチスルーが抑制されるという特徴を有する。
この方法でも前記第13の参考例と同様、ゲート酸化膜直下のチャネル領域に不純物がほとんど入っていない層を形成することができるため、キャリアの走行が不純物によって妨げられることなく、高移動度のトランジスタを得ることができるという特徴を有する。また、ゲート酸化膜直下で不純物濃度が高ければ高いほど反転層形成時の垂直方向の電界が強くなるため、キャリアがより強く酸化シリコン/シリコン界面に張り付いて走行するため、界面のわずかな凹凸もキャリアの散乱の原因となっていたが、本発明のMOS素子によればこのような問題もない。
まず図107に示すようなシリコン基板811表面にSOI法によりトレンチ812を形成し図108に示すように、絶縁膜813を埋め込み素子分離を行う、そして必要に応じて閾値電圧調整のためのイオン注入を行う。
そして図109に示すように、ゲート酸化膜814を形成し、さらに図110に示すようにこの上層に多結晶シリコン膜を堆積し図111に示すようにこれらをパターニングしてゲート電極815を形成する。
そして図112に示すようにこのゲート電極815の上層にCVD法により酸化シリコン膜816を形成しRIE法によりゲート電極815の側壁のみに残留せしめ、リンイオンを注入して基板表面にn−層(図示せず)を形成する。そしてさらに基板表面の清浄化を行った後、膜厚20nmのノンドープの非晶質シリコン膜817を堆積する。堆積直後の測定結果では、平均原子間隔は、単結晶シリコンの1.03倍であった。
この後、図113に示すように、堆積装置と同一装置内で、表面自然酸化膜の付着を抑えながら、550度1時間の熱処理を行い、単結晶シリコン817Sを形成した。このときシリコン基板上では単結晶817Sとなるが、絶縁膜上では多結晶シリコン膜となっており、単結晶シリコンと多結晶シリコンの間で選択性をもつエッチング条件で選択エッチングを行い多結晶シリコンをエッチング除去して単結晶シリコン817Sのみを残留せしめる。
そして図114に示すようにパッシベーション膜としての酸化シリコン膜818を形成し、これにコンタクトホールを介してソース・ドレイン電極821、ゲート電極822を形成し、図115に示すようにエレベーテッドMOSトランジスタが完成する。
このようにして形成されたMOSトランジスタのゲート電圧とドレイン電流との関係を測定した結果を図116に曲線aに示す。比較のために従来例の測定結果を曲線bに示す。ここで示したトランジスタではチャネル長が0.23μmであった。このように非常に微細な素子であるにもかかわらず、サブスレッシホールド領域も良好な特性を得ることができることが分かる。このように微細素子であるにもかかわらず、パンチスルーが十分に良くできている理由については明らかではないが、ソースドレインの不純物分布が急峻になっているからであると考えられる。これは工程が特に低温下で行われていることにある。
また図117に曲線aで閾値電圧とチャネル長との関係を示した。この結果から本発明によればチャネル長が0.22μm程度になっても閾値電圧が低下していないことがわかる。これも不純物の再分布がないためであると考えられる。比較のために従来法で形成したトランジスタの特性を曲線bに示した。このトランジスタではチャネル長が0.5μm程度ですでにショートチャネル効果が出現している。
次に本発明の第15の参考例を示す。
この例では本発明の固相成長方法を用いてバイポーラトランジスタとMOSトランジスタとを集積化した例について説明する。
MOSトランジスタとバイポーラトランジスタとを比較すると、MOSトランジスタは大規模集積化が可能であるという長所がある反面、動作が遅いという欠点がある。これに対しバイポーラトランジスタは出力に大電流が得られ高速動作が可能であるという長所があるが、素子面積が大きく集積化が不利であるという欠点がある。この2種類のトランジスタを同時に用いて両者の長所を生かした大規模集積回路が知られている。
このような集積回路は、図133に一例を示すようにシリコン基板上にMOSトランジスタとバイポーラトランジスタとを横に配列し、バイポーラトランジスタのベースとMOSトランジスタのドレインとを電気的に接続し、ドレイン電流をバイポーラで増幅して大電流を得るようにすることができるという利点を有している。しかしながら、ドレインとベースが離れているため、配線を引き回さなければならず、大面積を必要とする上、互いの素子領域に影響を与えることなく形成しなければならないため、非常に複雑で長い工程を必要とするという問題があった。
この例ではこのような問題を解決すべく、MOSトランジスタのドレインに直接ベースが接続するように、上層に本発明の固相成長法で形成した単結晶シリコン内にバイポーラトランジスタを形成したものである。
図118乃至図131にその製造工程図、図132に等価回路図を示す。
まず図118に示すように、シリコン基板911表面に選択酸化によりフィールド酸化膜912を形成する。そして必要に応じて閾値電圧調整のためのイオン注入を行う。
そして図119に示すように、熱酸化を行いゲート絶縁膜913となる膜厚10nmの酸化シリコン膜を形成し、さらに図120に示すようにゲート電極914となるリンドープの多結晶シリコン膜を形成し、図121に示すようにこれらをパターニングする。
この後図122に示すようにCVD法により酸化シリコン膜を形成した後RIE法を用いてゲート電極914の側壁に酸化シリコン膜915を形成し、これをマスクとしてAsイオンを5×1015atoms/cm2イオン注入し、900℃30分の窒素雰囲気中での熱処理を行い、図123に示すようにソース・ドレイン領域916を形成する。
そして図124に示すようにCVD法により全面に膜厚300nmの酸化シリコン膜を堆積し、図125に示すようにドレイン領域916にコンタクトホール918を形成する。
そして図126に示すように全面に平均原子間隔が単結晶シリコンのそれとほぼ等しくなるように非晶質シリコン膜919を膜厚50nm程度堆積する。このときシランガスと同時にホスフィンガスPH3を流し、あらかじめリンが微量含まれた非晶質シリコン膜とした。
この後、図127に示すように、堆積装置と同一装置内で、表面自然酸化膜の付着を抑えながら、600℃3時間の熱処理を行い、n−単結晶シリコン920を形成した。単結晶化距離を測定するためにあらかじめ用意したモニタ装置を調べると、結晶化距離は15μmであった。またリン濃度を測定すると8×1017atoms/cm3であった。
そして図128に示すように素子領域のパターニングを行い、図129に示すようにこの単結晶シリコン920の一部にボロンイオンを注入しp−領域921を形成した。
次いで図130に示すようにエミッタ・コレクタ領域にボロンをイオン注入してp+領域922を形成し、不純物活性化のために850℃5分間のアニールをRTAで行い図131に示すようにソース電極923、ゲート電極924、エミッタ電極925、コレクタ電極926を形成し、集積回路が完成する。
このように積層構造でありながら、600℃という低温下で結晶性の良好な単結晶シリコンを得ることができ、かつ下層との界面特性が極めて良好であり、ドレインとベースの接続部における接触抵抗が極めて低い上、MOSトランジスタの拡散層に拡散長の伸びを生じるようなこともない。
この集積回路によれば、積層構造であるため素子面積を大幅に低減することができるのみならず、バイポーラトランジスタがMOSトランジスタの上方に形成されるため図133に示した従来の構造に比べ、バイポーラ領域で発生する熱がMOSトランジスタに伝達されにくく、MOSトランジスタの動作特性に影響を及ぼすことがない。またバイポーラトランジスタ自身も上層に位置するため放熱性がよく温度上昇を抑制することができる。