JP2004286146A - 自動変速機の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニュートラル制御の開始条件を正確に補正する。
【解決手段】路面勾配を検知するGセンサと、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退時のパルス数を検知するプライマリプーリ回転数センサ410と、初期状態における、ニュートラル制御を許可するG値の上限値とパルス数との関係を記憶するとともに、最新状態における、ニュートラル制御の開始時におけるG値と、ニュートラル制御からの復帰時におけるパルス数との関係を記憶し、記憶された初期状態の関係に基づいて、上限値から後退のパルス数を算出して、記憶された最新状態の関係に基づいて、算出された後退のパルス数から実際の車両状態に対応したG値の上限値を算出するECU1000とを含む。
【選択図】 図2
【解決手段】路面勾配を検知するGセンサと、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退時のパルス数を検知するプライマリプーリ回転数センサ410と、初期状態における、ニュートラル制御を許可するG値の上限値とパルス数との関係を記憶するとともに、最新状態における、ニュートラル制御の開始時におけるG値と、ニュートラル制御からの復帰時におけるパルス数との関係を記憶し、記憶された初期状態の関係に基づいて、上限値から後退のパルス数を算出して、記憶された最新状態の関係に基づいて、算出された後退のパルス数から実際の車両状態に対応したG値の上限値を算出するECU1000とを含む。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の自動変速機の制御に関し、特に、ニュートラル制御を実行する自動変速機の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される自動変速機は、エンジンとトルクコンバータ等を介して繋がるとともに複数のクラッチやブレーキなどの摩擦係合要素を有してなるギヤ式の変速機構から構成され、たとえば、アクセル開度および車速に基づいて自動的に摩擦係合要素の係合および解放を切換えて、自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される。また、変速機構としては、無端金属ベルトを、径を可変に制御できる2つのプーリに巻き掛けて、たとえば、アクセル開度および車速に基づいて自動的にこれら2つのプーリの径の比率を変化させることにより、自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される変速機構もある。
【0003】
一般的に、自動変速機を有した車両には運転者により操作されるシフトレバーが設けられ、シフトレバー操作に基づいて変速ポジション(例えば、後進走行ポジション、ニュートラルポジション、前進走行ポジション)が設定され、このように設定された変速ポジション内(通常は、前進走行ポジション内)において自動変速制御が行われる。
【0004】
このような自動変速機を有した車両において、前進走行ポジションが設定されて車両が停止している状態では、アイドリング回転するエンジンからの駆動力がトルクコンバータを介して変速機に伝達され、これが車輪に伝達されるため、いわゆるクリープ現象が発生する。クリープ現象は、登坂路での停車からの発進をスムーズに行わせることができるなど、所定条件下では非常に有用なのであるが、車両を停止保持したいときには不要な現象であり、車両のブレーキを作動させてクリープ力を抑えるようになっている。すなわち、エンジンからのクリープ力をブレーキにより抑えるようになっており、その分エンジンの燃費が低下するという問題がある。
【0005】
このようなことから、前進走行ポジションにおいて、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動されるとともにアクセルがほぼ全閉となって車両が停止している状態では、前進走行ポジションのまま変速機をニュートラルに近いニュートラル状態として、燃費の向上を図るニュートラル制御が提案されている。
【0006】
このニュートラル制御は、車両が急勾配の登坂路で行なわれると、ニュートラル制御からの復帰時に車両が後退する可能性があるので、ニュートラル制御の開始を許可する条件として車両が停止した路面の傾斜に対する上限値が設定される。車両に搭載された加速度センサ(Gセンサ)により検知した路面の傾斜が、設定された上限値を下回っているとニュートラル制御の開始が許可される。そのため、この加速度センサの信頼性は高くなければならない。
【0007】
特開2001−336618公報(特許文献1)は、傾斜センサ、加速度センサの取付誤差、温度および経年変化による誤差などを自動的に補正する補正装置を開示する。この補正装置は、車両に配設されて車両の走行方向の傾斜を検出する傾斜センサと、車両においてエンジン駆動力を車輪に伝達する動力伝達系を構成する変速機と、車両のブレーキの作動状態を検出するブレーキ作動検出器と、動力伝達系における変速機の出力軸から車輪に至る出力側回転部材の回転数を検出する出力回転数検出器とを有し、変速機によりニュートラル状態が形成されている間において、ブレーキ作動検出器により車両のブレーキが解除されたことが検出されかつ回転数検出器により出力側回転部材の回転がないことが検出されたときに、傾斜センサによる検出値を水平基準値とするように更新補正する。
【0008】
この補正装置によると、変速機によりニュートラル状態が形成されている間において、ブレーキ作動検出器により車両のブレーキが解除されたことが検出されかつ回転数検出器により出力側回転部材の回転がないことが検出されたときに、傾斜センサによる検出値を水平基準値とするように更新補正する。変速機がニュートラル状態で、ブレーキがオフであり、出力側回転部材の回転がないとなるのは、車両が平坦路上に位置して水平となった状態のときであり、このときに傾斜センサの検出値が水平を検出するように更新補正する、このため、傾斜センサの取付誤差があってもこれを自動的に補正することができ、さらに、温度変化、経年変化等により傾斜センサの検出値に誤差が生じてもこれをその都度、自動的に補正することができ、常に正確な傾斜を検出することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−336618公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ニュートラル制御の開始を許可する条件として設定される、傾斜の上限値は、車両の構造(エンジン、変速機など)により車両の種類ごとに一義的に決定され、その後変更されるものではない。そのため、経時的なGセンサの変化、Gセンサごとのばらつき、車両の搭乗者の変化、路面状態の差によるタイヤの転がり抵抗の変化、ドライバの技量などの要因が考慮されない。このような様々な要因を考慮して詳細にニュートラル制御を実行されることにより燃費の向上を実現できる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された補正装置を用いても、正確に傾斜を検出することができても、傾斜の上限値が変化するものではない。そのため、Gセンサの経時的変化を補正できても、それ以外の要因を考慮してニュートラル制御の開始を許可する制御を実行することはできない。そのため、ニュートラル制御を実行する範囲を狭めたままの状態である可能性も考えられ、燃費のさらなる向上や、ニュートラル制御からの復帰時のおける不具合(車両の後退など)の解決などを達成できない。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両が登坂路に停止した場合であっても、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる自動変速機の制御装置および制御方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る制御装置は、前進走行ポジションで、アクセル操作が行なわれず、ブレーキ操作が行なわれ、かつ車両が予め定められた車速以下であるという条件が成立した場合に、駆動源からの駆動力を自動変速機に伝達する入力クラッチを解放させるニュートラル制御を実行する自動変速機を制御する。この制御装置は、路面勾配を検知するための第1の検知手段と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いを検知するための第2の検知手段と、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値と後退の度合いとの関係を記憶するための第1の記憶手段と、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係を記憶するための第2の記憶手段と、第1の記憶手段に記憶された関係に基づいて、路面勾配の上限値に対応する後退の度合いを算出するための第1の算出手段と、第2の記憶手段に記憶された関係に基づいて、第1の算出手段により算出された後退の度合いに対応する路面勾配を算出するための第2の算出手段と、第1の記憶手段に記憶された路面勾配の上限値と第2の算出手段により算出された路面勾配とに基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正するための補正手段とを含む。
【0014】
第1の発明によると、車両がニュートラル制御を開始するときに第1の検知手段により路面勾配が、車両がニュートラル制御から復帰するときに第2の検知手段により後退の度合いが、それぞれ検知される。このように検知された、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係が第2の記憶手段に記憶される。車両は、車両の種類ごとに予めニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値が設定されるとともに、その路面勾配の上限値に対する後退の度合いが設定されて、第1の記憶手段に初期状態として記憶されている。すなわち、この第1の記憶手段に記憶された後退の度合いが許される最大の後退量を示す。第2の算出手段により、この第1の記憶手段に記憶された後退の度合いに基づいて、第2の記憶手段に記憶された現実の車両における路面勾配と後退の度合いとの関係を用いて路面勾配が算出される。この第2の算出手段により算出された路面勾配は、許される最大の後退量に対応する勾配であって、現実に車両がニュートラル制御を繰返し実行したときのデータに基づくものである。したがって、現実の車両の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出したことになる。補正手段により、この算出された路面勾配に基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する。このように補正すると、たとえば車両の種類ごとに一義的に路面勾配の上限値が設定されていてニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる自動変速機の制御装置を提供することができる。
【0015】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、第2の記憶手段は、時間的に新しい予め定められた数の、路面勾配と後退の度合いとのデータの組合せを記憶するための手段を含む。
【0016】
第2の発明によると、時間的に新しいデータの組合せであって、予め定められた数のデータの組合せを記憶して、精度高く、路面勾配と後退の度合いとの関係を解析することができる。この解析結果に基づいて、現実の車両の最新の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出することができる。
【0017】
第3の発明に係る制御装置は、第1の発明の構成に加えて、エンジンの状態が予め定められた状態であるときに、第2の記憶手段に、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるための手段をさらに含む。
【0018】
第3の発明によると、たとえば車両のエアコンディショナが作動していると、その作動がエンジンにて行なわれるので、エンジントルクが増える。この状態で、ニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習すると(たとえば、上限の路面勾配が大きくなるように学習する)、エアコンディショナが作動していない状態においてニュートラル制御から復帰した場合の車両の後退量が大きくなる可能性がある。そのため、エンジンに対する外乱要因が発生していない状態でのみ、第2の記憶手段に、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるようにする。
【0019】
第4の発明に係る制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、予め定められた状態は、エンジンの状態が車両に搭載された補機による外乱が発生していないという状態である。
【0020】
第4の発明によると、エンジンの外乱要因が発生していないときのデータに基づいて、正確にニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習することができる。
【0021】
第5の発明に係る制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、第1の検知手段は、加速度センサまたは傾斜センサである。
【0022】
第5の発明によると、車両に取り付けられた加速度センサまたは傾斜センサを用いて路面の傾斜を検知して、ニュートラル制御の開始を許可するか否かを判断できる。
【0023】
第6の発明に係る制御装置においては、第1〜5のいずれかの発明の構成に加えて、第2の検知手段は、自動変速機に設けられた回転数センサである。
【0024】
第6の発明によると、ニュートラル制御から復帰して自動変速機が走行ポジションであって、車両が後退する時には、自動変速機に設けられた回転軸の回転パルスを検知する回転数センサにより、車両の後退の度合いを検知できる。
【0025】
第7の発明に係る制御装置においては、第6の発明の構成に加えて、第2の検知手段は、自動変速機の入力側に設けられた回転数センサである。
【0026】
第7の発明によると、ニュートラル制御から復帰して自動変速機が走行ポジションであって、車両が後退する時には、自動変速機の変速比が大きいので、自動変速機の入力側で回転数を検知した方が出力側で検知するよりも精度よく車両の後退の度合いを検知できる。
【0027】
第8の発明に係る制御方法は、前進走行ポジションで、アクセル操作が行なわれず、ブレーキ操作が行なわれ、かつ車両が予め定められた車速以下であるという条件が成立した場合に、駆動源からの駆動力を自動変速機に伝達する入力クラッチを解放させるニュートラル制御を実行する自動変速機を制御する。この制御方法は、路面勾配を検知する第1の検知ステップと、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いを検知する第2の検知ステップと、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値と後退の度合いとの関係を予め準備する準備ステップと、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係を記憶する記憶ステップと、予め準備された関係に基づいて、路面勾配の上限値に対応する後退の度合いを算出する第1の算出ステップと、記憶ステップにて記憶された関係に基づいて、第1の算出ステップにて算出された後退の度合いに対応する路面勾配を算出する第2の算出ステップと、準備ステップにて準備された路面勾配の上限値と第2の算出ステップにて算出された路面勾配とに基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する補正ステップとを含む。
【0028】
第8の発明によると、車両がニュートラル制御を開始するときに第1の検知ステップにて路面勾配が、車両がニュートラル制御から復帰するときに第2の検知ステップにて後退の度合いが、それぞれ検知される。このように検知された、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係が記憶ステップにて記憶される。車両は、車両の種類ごとに予めニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値が設定されるとともに、その路面勾配の上限値に対する後退の度合いが設定されて、準備ステップにて初期状態として準備されている。すなわち、この準備ステップにて準備された後退の度合いが許される最大の後退量を示す。第2の算出ステップにて、この準備ステップにて準備された後退の度合いに基づいて、記憶ステップにて記憶された現実の車両における路面勾配と後退の度合いとの関係を用いて路面勾配が算出される。この第2の算出ステップにて算出された路面勾配は、許される最大の後退量に対応する勾配であって、現実に車両がニュートラル制御を繰返し実行したときのデータに基づくものである。したがって、現実の車両の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出したことになる。補正ステップにて、この算出された路面勾配に基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する。このように補正すると、たとえば車両の種類ごとに一義的に路面勾配の上限値が設定されていてニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる自動変速機の制御方法を提供することができる。
【0029】
第9の発明に係る制御方法においては、第8の発明の構成に加えて、記憶ステップは、時間的に新しい予め定められた数の、路面勾配と後退の度合いとのデータの組合せを記憶するステップを含む。
【0030】
第9の発明によると、時間的に新しいデータの組合せであって、予め定められた数のデータの組合せを記憶して、精度高く、路面勾配と後退の度合いとの関係を解析することができる。この解析結果に基づいて、現実の車両の最新の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出することができる。
【0031】
第10の発明に係る制御方法は、第8の発明の構成に加えて、エンジンの状態が予め定められた状態であるときに、記憶ステップにて、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるステップをさらに含む。
【0032】
第10の発明によると、たとえば車両のエアコンディショナが作動していると、その作動がエンジンにて行なわれるので、エンジントルクが増える。この状態で、ニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習すると(たとえば、上限の路面勾配が大きくなるように学習する)、エアコンディショナが作動していない状態においてニュートラル制御から復帰した場合の車両の後退量が大きくなる可能性がある。そのため、エンジンに対する外乱要因が発生していない状態でのみ、記憶ステップにて、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるようにする。
【0033】
第11の発明に係る制御方法においては、第10の発明の構成に加えて、予め定められた状態は、エンジンの状態が車両に搭載された補機による外乱が発生していないという状態である。
【0034】
第11の発明によると、エンジンの外乱要因が発生していないときのデータに基づいて、正確にニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0036】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。以下では、自動変速機をベルト式無段変速機として説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、前後進切換え装置290と、ベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission) 300と、デファレンシャルギヤ800と、ECU1000と、油圧制御部1100とから構成される。
【0038】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサにより検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0039】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200とCVT300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ400により検知される。
【0040】
CVT300は、前後進切換え装置290を介してトルクコンバータ200に接続される。CVT300は、入力側のプライマリプーリ500と、出力側のセカンダリプーリ600と、プライマリプーリ500とセカンダリプーリ600とに巻き掛けられた金属製のベルト700とから構成される。プライマリプーリ500は、プライマリシャフトに固定された固定シーブおよびプライマリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。セカンダリプーリ700は、セカンダリシャフトに固定されている固定シーブおよびセカンダリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。CVT300の、プライマリプーリの回転数NINは、プライマリプーリ回転数センサ410により、セカンダリプーリの回転数NOUTは、セカンダリプーリ回転数センサ420により、検知される。
【0041】
これら回転数センサは、プライマリプーリやセカンダリプーリの回転軸やこれに繋がるドライブシャフトに取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、CVT300の、入力軸であるプライマリプーリや出力軸であるセカンダリプーリの僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0042】
前後進切換え装置290は、ダブルピニオンプラネタリギヤ、リバース(後進用)ブレーキB1および入力クラッチC1を有している。プラネタリギヤは、そのサンギヤが入力軸に連結されており、第1および第2のピニオンP1,P2を支持するキャリヤCRがプライマリ側固定シーブに連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となるリバースブレーキB1に連結されており、またキャリアCRとサンギヤSとの間に入力クラッチC1が介在している。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、パーキング(P)ポジション、後進走行(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション以外の車両が前進するときに必ず係合状態で使用される。
【0043】
前進走行(D)ポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0044】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000および油圧制御部1100について説明する。
【0045】
図2に示すように、ECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1010には、タービン回転数センサ400からタービン回転数NTを表わす信号が、プライマリプーリ回転数センサ410からプライマリプーリ回転数NINを表わす信号が、セカンダリプーリ回転数センサ420からセカンダリプーリ回転数NOUTを表わす信号が、それぞれ入力される。
【0046】
図1に示すように、油圧制御部1100は、変速速度制御部1110と、ベルト挟圧力制御部1120と、ロックアップ係合圧制御部1130と、クラッチ圧制御部1140と、マニュアルバルブ1150とを含む。ECU1000から、油圧制御部1100の変速制御用デューティソレノイド(1)1200と、変速制御用デューティソレノイド(2)1210と、リニアソレノイド1220と、ロックアップソレノイド1230と、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240に制御信号が出力される。
【0047】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000の構造をさらに詳しく説明する。図2に示すように、ECU1000は、エンジン100を制御するエンジンコントロールコンピュータ1010と、トルクコンバータ200、前後進切換え装置290およびCVT300を制御するECT_ECU1020とを含む。
【0048】
図1に示した入出力信号に加えて、ECT_ECU1020には、ストップランプスイッチから、運転者によりブレーキペダルが踏まれていることを表わす信号、Gセンサ(加速度センサ、傾斜センサ)から、車両が登坂路などに停車したした際の登坂路の傾斜度を表わす信号が、それぞれ入力される。
【0049】
さらに、エンジンコントロールコンピュータ1010には、アクセル開度センサから、運転者により踏まれているアクセルの開度を表わす信号、スロットルポジションセンサから、電磁スロットルの開度を表わす信号、エンジン回転数センサから、エンジン100の回転数(NE)を表わす信号が、それぞれ入力される。エンジンコントロールコンピュータ1010とECT_ECU1020とは、相互に接続されている。
【0050】
油圧制御部1100においては、ECT_ECU1020からリニアソレノイド1220に出力された制御信号に基づいて、ベルト挟圧力制御部1120がCVT300のベルト700の挟圧力を制御するとともに、クラッチ圧制御部1140が入力クラッチ310の係合圧を制御する。
【0051】
このような構造を有するECU1000は、ニュートラル制御を開始する条件の1つである路面勾配を学習する。ECU1000は、その内部の記憶部にニュートラル制御を開始するときのGセンサから入力された値と、そのニュートラル制御から復帰したときのプライマリプーリ回転数センサ410で検知した車両が後退した分に対応するパルス数を記憶する。このようなGセンサ値とパルス数との組合せをテーブルに記憶しておいて、そのテーブルからGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを作成する。一方、ECU1000は、車両の初期状態におけるGセンサ値とパルス数との関係を記憶するとともに、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値をGセンサの値として記憶する。ECU1000は、初期状態として記憶させたGセンサ値とパルス数との関係を用いて、路面勾配の上限値(Gセンサ値)に対応するパルス数を算出する。ECU1000は、経時的に変化する要因に対応するために作成されたGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを用いて、算出されたパルス数に対応する現実の車両状態に対応した路面勾配の上限値(Gセンサ値)を算出する。初期状態における路面勾配の上限値(Gセンサ値)と算出された路面勾配の上限値(Gセンサ値)との差分が補正値になる。ECU1000におけるこのような処理をさらに詳細に述べる。
【0052】
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU1000の内部の記憶部に記憶されるテーブルについて説明する。
【0053】
図3に示すように、このテーブルは、ニュートラル制御が開始されたときのGセンサ値と、そのニュートラル制御から復帰したときのプライマリープーリ回転数センサ410が検知した車両の後退量に対応する入力パルス数との組合せを最大20組記憶する。21番目のデータの組合せがECU1000に入力されると、そのデータの組合せが1番目のデータの組合せとして記憶され、20番目のデータの組合せ(最も古いデータの組合せ)は、消去される。なお、このデータの組合せの個数は一例である。また、このテーブルに記憶されるデータの組合せは、Gセンサ値がニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値近傍のものに限定するようにしてもよい。
【0054】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020の内部の記憶部に記憶されるマップについて説明する。
【0055】
図4に示すように、このマップは、図3に示したテーブルを入力パルス数の昇順に並べ替えたものである。このような並べ替えは、入力パルスの昇順に限定されない。入力パルスの降順であってもよいし、Gセンサ値の昇順や降順であってもよい。ニュートラル制御が開始されたときのGセンサ値と、そのニュートラル制御から復帰したときの車両の後退量に対応する入力パルス数との関係が明確になればよい。
【0056】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU1000で実行されるニュートラル制御を許可する上限路面勾配の補正処理のプログラムの制御構造について説明する。なお、以下の説明では、ニュートラル制御が登坂路で実行される場合のみに限定する。
【0057】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU1000は、車両が登坂路で停止したか否かを判断する。このとき、ECU1000は、アクセル開度センサ、スロットルポジションセンサ、Gセンサ、ストップランプスイッチなどから入力される信号に基づいて判断する。車両が登坂路で停止していると(S100にてYES)、処理は、S110に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理は、S100へ戻され、車両が登坂路で停止するまで待つ。
【0058】
S110にて、ECU1000は、検知したGセンサ値(G(S))をテーブル(図3)に格納する。このとき格納されるGセンサ値は、ニュートラル制御の開始を許可したときの判断に用いられたGセンサの値である。S120にて、ECU1000は、ニュートラル制御からの復帰直後における車両後退時のプライマリプーリ回転数センサ410が検知したパルス値(NIN)をテーブル(図3)に格納する。このとき、格納されるパルス数は、登坂路におけるニュートラル制御からの復帰時における車両の後退量に対応する。
【0059】
S130にて、ECU1000は、テーブル(図3)内のデータをパルス値(NIN)の昇順(または降順)に並べ替えた、最新状態のGセンサ値−入力パルス数のマップ(図4)を作成する。S140にて、ECU1000は、初期状態のGセンサ値−入力パルス数のマップから、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(B)に対応するプライマリプーリ回転センサ410により検知されるべきパルス値(N(B))を算出する。これは、図6に示すGセンサ値と入力パルス数との関係を表わすマップにおいて、矢示(1)および矢示(2)により示される処理に対応する。
【0060】
S150にて、ECU1000は、最新状態のGセンサ値−入力パルス数のマップから、S140にて算出したプライマリプーリ回転数センサ410により検知されるべきパルス値(N(B))に対応する最新のニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(RET))を算出する。これは、図6に示すGセンサ値と入力パルス数との関係を表わすマップにおいて、矢示(3)および矢示(4)により示される処理に対応する。
【0061】
S160にて、ECU1000は、学習補正量ΔGを、G(RET)−G(B)として算出する。S170にて、ECU1000は、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値を、G(B)+ΔGとして補正する。
【0062】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る制御装置であるECU1000の動作について説明する。
【0063】
ニュートラル制御機能を有する車両が登坂路で停止すると(S100にてYES)、検知したGセンサ値(G(S))がテーブル(図3)に格納される。ニュートラル制御が実行されて、ニュートラル制御からの復帰が行なわれる。ニュートラル制御からの復帰直後における車両後退時のプライマリプーリ回転数センサ410が検知したパルス値(NIN)がテーブル(図3)に格納される。テーブル(図3)内のデータをパルス値(NIN)の昇順(または降順)に並べ替えた、最新状態のGセンサ値−入力パルス数のマップ(図4)が作成される。
【0064】
図6に示すGセンサ値と入力パルス数との関係を表わす初期状態のマップにおいて、矢示(1)および矢示(2)により示される処理が実行され、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(B))に対応するプライマリプーリ回転センサ410により検知されるべきパルス値(N(B))が算出される。図6に示す、Gセンサ値−入力パルス数との関係と表わす最新状態のマップにおいて、矢示(3)および矢示(4)により示される処理が実行され、S140にて算出された検知されるべきパルス値(N(B))に対応するニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(RET))が算出される。
【0065】
学習補正量ΔGが、G(RET)−G(B)として算出され、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値が、G(B)+ΔGとして補正される。
【0066】
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置であるECUによると、車両がニュートラル制御を開始するときのGセンサ値と、車両がニュートラル制御から復帰するときのパルス値とが、それぞれ検知されテーブルに格納される。車両は、車両の種類ごとに予めニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を表わすGセンサ値(G(B))が設定されるとともに、そのGセンサ値(G(B))にパルス数(N(B))が設定されている。ニュートラル制御からの復帰時に許容される車両の後退量に対応するパルス数(N(B))に対応する、車両の最新状態におけるGセンサ値とパルス数とのマップを用いて、最新の車両の状態を考慮した、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を表わすGセンサ値(G(RET))が算出される。これは、現実の車両の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出したことになる。この算出された路面勾配に基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する。このように補正すると、たとえば車両の種類ごとに一義的に路面勾配の上限値が設定されていてニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができ、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる。
【0067】
なお、上述した第1の実施の形態の図5に示すフローチャートを実行する条件として、エンジン100に外乱が発生していない条件を加えてもよい。このようにすると、たとえば車両のエアコンディショナが作動していると、その作動がエンジンにて行なわれるので、エンジントルクが増える。この状態で、ニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習すると正確に補正値を算出できない場合がある。このため、このような場合には、補正値ΔGを学習しないようにする。
【0068】
さらに、図5のフローチャートのS120にて、ニュートラル制御からの復帰直後における車両後退時のプライマリプーリ回転数センサ410が検知したパルス値(NIN)をテーブル(図3)に格納するときに、エンジン100の回転数を格納するようにしてもよい。格納されたエンジン100の回転数を考慮して、補正値ΔGを算出するようにする。このようにすると、エンジン100に対する外乱を考慮して、補正値ΔGを算出することができる。
【0069】
さらに、車両の後退量を検知するセンサは、プライマリプーリ回転数センサ410に限定されない。セカンダリプーリ回転数センサ420であってもよい。ただし、ニュートラル制御からの復帰時における変速比は大きいので、プライマリプーリ回転数センサ410の方が、セカンダリプーリ回転数センサ420を用いるよりも精度高く検知することができる。
【0070】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図7に示すECU3000により実現される。本実施の形態では、自動変速機を流体継手としてトルクコンバータを備え、遊星歯車式減速機構を有する自動変速機として説明する。
【0071】
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。図7に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン2100と、トルクコンバータ2200と、自動変速機2300と、ECU3000とから構成される。
【0072】
エンジン2100の出力軸は、トルクコンバータ2200の入力軸に接続される。エンジン2100とトルクコンバータ2200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ2400により検知されるエンジン2100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ2200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0073】
トルクコンバータ2200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ2210と、入力軸側のポンプ羽根車2220と、出力軸側のタービン羽根車2230と、ワンウェイクラッチ2250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ2240とから構成される。トルクコンバータ2200と自動変速機2300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ2200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ2410により検知される。自動変速機2300の出力軸回転数NOは、出力軸回転数センサ2420により検知される。
【0074】
図8に自動変速機2300の作動表を示す。図8に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C1)、ワンウェイクラッチ要素(F0、F3)が係合する。これらのクラッチ要素の中で、特にクラッチ要素C1を入力クラッチ2310という。この入力クラッチ2310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、図8の作動表に示すように、パーキング(P)ポジション、後進走行(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション以外の、車両が前進するための変速段を構成する際に必ず係合状態で使用される。
【0075】
前進走行(D)ポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ2310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0076】
本実施の形態に係るECU3000も、前述の第1の実施の形態におけるECU1000と同じように、ニュートラル制御を開始する条件の1つである路面勾配を学習する。
【0077】
ECU3000は、その内部の記憶部にニュートラル制御を開始するときのGセンサから入力された値と、そのニュートラル制御から復帰したときにタービン回転数センサ2410で検知した、車両が後退した分に対応するパルス数を記憶する。このようなGセンサ値とパルス数との組合せをテーブルに記憶しておいて、そのテーブルからGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを作成する。一方、ECU3000は、車両の初期状態におけるGセンサ値とパルス数との関係を記憶するとともに、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値をGセンサの値として記憶する。ECU3000は、初期状態として記憶させたGセンサ値とパルス数との関係を用いて、路面勾配の上限値(Gセンサ値)に対応するパルス数を算出する。ECU3000は、経時的に変化する要因に対応するために作成されたGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを用いて、算出されたパルス数に対応する現実の車両状態に対応した路面勾配の上限値(Gセンサ値)を算出する。初期状態における路面勾配の上限値(Gセンサ値)と算出された路面勾配の上限値(Gセンサ値)との差分が補正値になる。ECU3000は、このようにECU1000と同じような処理を実行する。
【0078】
以上のようにして、CVTではない、多数のクラッチとブレーキとで伝達経路を切替えるギヤ式の自動変速機であっても、CVTと同様に、上限Gセンサ値を補正して、ニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができ、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動変速機の制御ブロック図である。
【図2】図1に示すECUの詳細図である。
【図3】ECU内部の記憶部に記憶されるテーブルを示す図である。
【図4】ECU内部の記憶部に記憶されるマップを示す図である。
【図5】ECUで実行されるニュートラル制御処理のプログラムの制御構造を示す図である。
【図6】Gセンサ値と入力パルス数との関係を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る自動変速機の制御ブロック図である。
【図8】図7に示す自動変速機の作動表である。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、290 前後進切換え装置、300 入力クラッチ、400 タービン回転数センサ、410 プライマリプーリ回転数センサ、420 セカンダリプーリ回転数センサ、500 プライマリプーリ、600 セカンダリプーリ、700 ベルト、800 デファレンシャルギヤ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU、1100 油圧制御部、1110 変速速度制御部、1120 ベルト挟圧力制御部、1130ロックアップ係合圧制御部、1140 クラッチ圧力制御部、1150 マニュアルバルブ、1200 変速制御用デューティソレノイド(1)、1210 変速制御用デューティソレノイド(2)、1220 リニアソレノイド、1230 ロックアップソレノイド、1240 ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド、2100 エンジン、2200 トルクコンバータ、2210 ロックアップクラッチ、2220 ポンプ羽根車、2230 タービン羽根車、2240 ステータ、2250 ワンウェイクラッチ、2300 自動変速機、2310 入力クラッチ、2400 エンジン回転数センサ、2410 タービン回転数センサ、2420 出力軸回転数センサ、3000 ECU、3010 エンジンECU、3020 ECT_ECU、3030 VSC_ECU。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の自動変速機の制御に関し、特に、ニュートラル制御を実行する自動変速機の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載される自動変速機は、エンジンとトルクコンバータ等を介して繋がるとともに複数のクラッチやブレーキなどの摩擦係合要素を有してなるギヤ式の変速機構から構成され、たとえば、アクセル開度および車速に基づいて自動的に摩擦係合要素の係合および解放を切換えて、自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される。また、変速機構としては、無端金属ベルトを、径を可変に制御できる2つのプーリに巻き掛けて、たとえば、アクセル開度および車速に基づいて自動的にこれら2つのプーリの径の比率を変化させることにより、自動的に変速比(走行速度段)の切換えを行なうように構成される変速機構もある。
【0003】
一般的に、自動変速機を有した車両には運転者により操作されるシフトレバーが設けられ、シフトレバー操作に基づいて変速ポジション(例えば、後進走行ポジション、ニュートラルポジション、前進走行ポジション)が設定され、このように設定された変速ポジション内(通常は、前進走行ポジション内)において自動変速制御が行われる。
【0004】
このような自動変速機を有した車両において、前進走行ポジションが設定されて車両が停止している状態では、アイドリング回転するエンジンからの駆動力がトルクコンバータを介して変速機に伝達され、これが車輪に伝達されるため、いわゆるクリープ現象が発生する。クリープ現象は、登坂路での停車からの発進をスムーズに行わせることができるなど、所定条件下では非常に有用なのであるが、車両を停止保持したいときには不要な現象であり、車両のブレーキを作動させてクリープ力を抑えるようになっている。すなわち、エンジンからのクリープ力をブレーキにより抑えるようになっており、その分エンジンの燃費が低下するという問題がある。
【0005】
このようなことから、前進走行ポジションにおいて、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動されるとともにアクセルがほぼ全閉となって車両が停止している状態では、前進走行ポジションのまま変速機をニュートラルに近いニュートラル状態として、燃費の向上を図るニュートラル制御が提案されている。
【0006】
このニュートラル制御は、車両が急勾配の登坂路で行なわれると、ニュートラル制御からの復帰時に車両が後退する可能性があるので、ニュートラル制御の開始を許可する条件として車両が停止した路面の傾斜に対する上限値が設定される。車両に搭載された加速度センサ(Gセンサ)により検知した路面の傾斜が、設定された上限値を下回っているとニュートラル制御の開始が許可される。そのため、この加速度センサの信頼性は高くなければならない。
【0007】
特開2001−336618公報(特許文献1)は、傾斜センサ、加速度センサの取付誤差、温度および経年変化による誤差などを自動的に補正する補正装置を開示する。この補正装置は、車両に配設されて車両の走行方向の傾斜を検出する傾斜センサと、車両においてエンジン駆動力を車輪に伝達する動力伝達系を構成する変速機と、車両のブレーキの作動状態を検出するブレーキ作動検出器と、動力伝達系における変速機の出力軸から車輪に至る出力側回転部材の回転数を検出する出力回転数検出器とを有し、変速機によりニュートラル状態が形成されている間において、ブレーキ作動検出器により車両のブレーキが解除されたことが検出されかつ回転数検出器により出力側回転部材の回転がないことが検出されたときに、傾斜センサによる検出値を水平基準値とするように更新補正する。
【0008】
この補正装置によると、変速機によりニュートラル状態が形成されている間において、ブレーキ作動検出器により車両のブレーキが解除されたことが検出されかつ回転数検出器により出力側回転部材の回転がないことが検出されたときに、傾斜センサによる検出値を水平基準値とするように更新補正する。変速機がニュートラル状態で、ブレーキがオフであり、出力側回転部材の回転がないとなるのは、車両が平坦路上に位置して水平となった状態のときであり、このときに傾斜センサの検出値が水平を検出するように更新補正する、このため、傾斜センサの取付誤差があってもこれを自動的に補正することができ、さらに、温度変化、経年変化等により傾斜センサの検出値に誤差が生じてもこれをその都度、自動的に補正することができ、常に正確な傾斜を検出することができる。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−336618公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ニュートラル制御の開始を許可する条件として設定される、傾斜の上限値は、車両の構造(エンジン、変速機など)により車両の種類ごとに一義的に決定され、その後変更されるものではない。そのため、経時的なGセンサの変化、Gセンサごとのばらつき、車両の搭乗者の変化、路面状態の差によるタイヤの転がり抵抗の変化、ドライバの技量などの要因が考慮されない。このような様々な要因を考慮して詳細にニュートラル制御を実行されることにより燃費の向上を実現できる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された補正装置を用いても、正確に傾斜を検出することができても、傾斜の上限値が変化するものではない。そのため、Gセンサの経時的変化を補正できても、それ以外の要因を考慮してニュートラル制御の開始を許可する制御を実行することはできない。そのため、ニュートラル制御を実行する範囲を狭めたままの状態である可能性も考えられ、燃費のさらなる向上や、ニュートラル制御からの復帰時のおける不具合(車両の後退など)の解決などを達成できない。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両が登坂路に停止した場合であっても、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる自動変速機の制御装置および制御方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る制御装置は、前進走行ポジションで、アクセル操作が行なわれず、ブレーキ操作が行なわれ、かつ車両が予め定められた車速以下であるという条件が成立した場合に、駆動源からの駆動力を自動変速機に伝達する入力クラッチを解放させるニュートラル制御を実行する自動変速機を制御する。この制御装置は、路面勾配を検知するための第1の検知手段と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いを検知するための第2の検知手段と、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値と後退の度合いとの関係を記憶するための第1の記憶手段と、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係を記憶するための第2の記憶手段と、第1の記憶手段に記憶された関係に基づいて、路面勾配の上限値に対応する後退の度合いを算出するための第1の算出手段と、第2の記憶手段に記憶された関係に基づいて、第1の算出手段により算出された後退の度合いに対応する路面勾配を算出するための第2の算出手段と、第1の記憶手段に記憶された路面勾配の上限値と第2の算出手段により算出された路面勾配とに基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正するための補正手段とを含む。
【0014】
第1の発明によると、車両がニュートラル制御を開始するときに第1の検知手段により路面勾配が、車両がニュートラル制御から復帰するときに第2の検知手段により後退の度合いが、それぞれ検知される。このように検知された、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係が第2の記憶手段に記憶される。車両は、車両の種類ごとに予めニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値が設定されるとともに、その路面勾配の上限値に対する後退の度合いが設定されて、第1の記憶手段に初期状態として記憶されている。すなわち、この第1の記憶手段に記憶された後退の度合いが許される最大の後退量を示す。第2の算出手段により、この第1の記憶手段に記憶された後退の度合いに基づいて、第2の記憶手段に記憶された現実の車両における路面勾配と後退の度合いとの関係を用いて路面勾配が算出される。この第2の算出手段により算出された路面勾配は、許される最大の後退量に対応する勾配であって、現実に車両がニュートラル制御を繰返し実行したときのデータに基づくものである。したがって、現実の車両の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出したことになる。補正手段により、この算出された路面勾配に基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する。このように補正すると、たとえば車両の種類ごとに一義的に路面勾配の上限値が設定されていてニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる自動変速機の制御装置を提供することができる。
【0015】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、第2の記憶手段は、時間的に新しい予め定められた数の、路面勾配と後退の度合いとのデータの組合せを記憶するための手段を含む。
【0016】
第2の発明によると、時間的に新しいデータの組合せであって、予め定められた数のデータの組合せを記憶して、精度高く、路面勾配と後退の度合いとの関係を解析することができる。この解析結果に基づいて、現実の車両の最新の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出することができる。
【0017】
第3の発明に係る制御装置は、第1の発明の構成に加えて、エンジンの状態が予め定められた状態であるときに、第2の記憶手段に、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるための手段をさらに含む。
【0018】
第3の発明によると、たとえば車両のエアコンディショナが作動していると、その作動がエンジンにて行なわれるので、エンジントルクが増える。この状態で、ニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習すると(たとえば、上限の路面勾配が大きくなるように学習する)、エアコンディショナが作動していない状態においてニュートラル制御から復帰した場合の車両の後退量が大きくなる可能性がある。そのため、エンジンに対する外乱要因が発生していない状態でのみ、第2の記憶手段に、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるようにする。
【0019】
第4の発明に係る制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、予め定められた状態は、エンジンの状態が車両に搭載された補機による外乱が発生していないという状態である。
【0020】
第4の発明によると、エンジンの外乱要因が発生していないときのデータに基づいて、正確にニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習することができる。
【0021】
第5の発明に係る制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、第1の検知手段は、加速度センサまたは傾斜センサである。
【0022】
第5の発明によると、車両に取り付けられた加速度センサまたは傾斜センサを用いて路面の傾斜を検知して、ニュートラル制御の開始を許可するか否かを判断できる。
【0023】
第6の発明に係る制御装置においては、第1〜5のいずれかの発明の構成に加えて、第2の検知手段は、自動変速機に設けられた回転数センサである。
【0024】
第6の発明によると、ニュートラル制御から復帰して自動変速機が走行ポジションであって、車両が後退する時には、自動変速機に設けられた回転軸の回転パルスを検知する回転数センサにより、車両の後退の度合いを検知できる。
【0025】
第7の発明に係る制御装置においては、第6の発明の構成に加えて、第2の検知手段は、自動変速機の入力側に設けられた回転数センサである。
【0026】
第7の発明によると、ニュートラル制御から復帰して自動変速機が走行ポジションであって、車両が後退する時には、自動変速機の変速比が大きいので、自動変速機の入力側で回転数を検知した方が出力側で検知するよりも精度よく車両の後退の度合いを検知できる。
【0027】
第8の発明に係る制御方法は、前進走行ポジションで、アクセル操作が行なわれず、ブレーキ操作が行なわれ、かつ車両が予め定められた車速以下であるという条件が成立した場合に、駆動源からの駆動力を自動変速機に伝達する入力クラッチを解放させるニュートラル制御を実行する自動変速機を制御する。この制御方法は、路面勾配を検知する第1の検知ステップと、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いを検知する第2の検知ステップと、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値と後退の度合いとの関係を予め準備する準備ステップと、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係を記憶する記憶ステップと、予め準備された関係に基づいて、路面勾配の上限値に対応する後退の度合いを算出する第1の算出ステップと、記憶ステップにて記憶された関係に基づいて、第1の算出ステップにて算出された後退の度合いに対応する路面勾配を算出する第2の算出ステップと、準備ステップにて準備された路面勾配の上限値と第2の算出ステップにて算出された路面勾配とに基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する補正ステップとを含む。
【0028】
第8の発明によると、車両がニュートラル制御を開始するときに第1の検知ステップにて路面勾配が、車両がニュートラル制御から復帰するときに第2の検知ステップにて後退の度合いが、それぞれ検知される。このように検知された、ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係が記憶ステップにて記憶される。車両は、車両の種類ごとに予めニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値が設定されるとともに、その路面勾配の上限値に対する後退の度合いが設定されて、準備ステップにて初期状態として準備されている。すなわち、この準備ステップにて準備された後退の度合いが許される最大の後退量を示す。第2の算出ステップにて、この準備ステップにて準備された後退の度合いに基づいて、記憶ステップにて記憶された現実の車両における路面勾配と後退の度合いとの関係を用いて路面勾配が算出される。この第2の算出ステップにて算出された路面勾配は、許される最大の後退量に対応する勾配であって、現実に車両がニュートラル制御を繰返し実行したときのデータに基づくものである。したがって、現実の車両の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出したことになる。補正ステップにて、この算出された路面勾配に基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する。このように補正すると、たとえば車両の種類ごとに一義的に路面勾配の上限値が設定されていてニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができる。その結果、車両が登坂路に停止した場合であっても、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる自動変速機の制御方法を提供することができる。
【0029】
第9の発明に係る制御方法においては、第8の発明の構成に加えて、記憶ステップは、時間的に新しい予め定められた数の、路面勾配と後退の度合いとのデータの組合せを記憶するステップを含む。
【0030】
第9の発明によると、時間的に新しいデータの組合せであって、予め定められた数のデータの組合せを記憶して、精度高く、路面勾配と後退の度合いとの関係を解析することができる。この解析結果に基づいて、現実の車両の最新の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出することができる。
【0031】
第10の発明に係る制御方法は、第8の発明の構成に加えて、エンジンの状態が予め定められた状態であるときに、記憶ステップにて、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるステップをさらに含む。
【0032】
第10の発明によると、たとえば車両のエアコンディショナが作動していると、その作動がエンジンにて行なわれるので、エンジントルクが増える。この状態で、ニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習すると(たとえば、上限の路面勾配が大きくなるように学習する)、エアコンディショナが作動していない状態においてニュートラル制御から復帰した場合の車両の後退量が大きくなる可能性がある。そのため、エンジンに対する外乱要因が発生していない状態でのみ、記憶ステップにて、路面勾配と後退の度合いとの関係を記憶させるようにする。
【0033】
第11の発明に係る制御方法においては、第10の発明の構成に加えて、予め定められた状態は、エンジンの状態が車両に搭載された補機による外乱が発生していないという状態である。
【0034】
第11の発明によると、エンジンの外乱要因が発生していないときのデータに基づいて、正確にニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0036】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。以下では、自動変速機をベルト式無段変速機として説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0037】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、前後進切換え装置290と、ベルト式無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission) 300と、デファレンシャルギヤ800と、ECU1000と、油圧制御部1100とから構成される。
【0038】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサにより検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0039】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200とCVT300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ400により検知される。
【0040】
CVT300は、前後進切換え装置290を介してトルクコンバータ200に接続される。CVT300は、入力側のプライマリプーリ500と、出力側のセカンダリプーリ600と、プライマリプーリ500とセカンダリプーリ600とに巻き掛けられた金属製のベルト700とから構成される。プライマリプーリ500は、プライマリシャフトに固定された固定シーブおよびプライマリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。セカンダリプーリ700は、セカンダリシャフトに固定されている固定シーブおよびセカンダリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブからなる。CVT300の、プライマリプーリの回転数NINは、プライマリプーリ回転数センサ410により、セカンダリプーリの回転数NOUTは、セカンダリプーリ回転数センサ420により、検知される。
【0041】
これら回転数センサは、プライマリプーリやセカンダリプーリの回転軸やこれに繋がるドライブシャフトに取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、CVT300の、入力軸であるプライマリプーリや出力軸であるセカンダリプーリの僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0042】
前後進切換え装置290は、ダブルピニオンプラネタリギヤ、リバース(後進用)ブレーキB1および入力クラッチC1を有している。プラネタリギヤは、そのサンギヤが入力軸に連結されており、第1および第2のピニオンP1,P2を支持するキャリヤCRがプライマリ側固定シーブに連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となるリバースブレーキB1に連結されており、またキャリアCRとサンギヤSとの間に入力クラッチC1が介在している。この入力クラッチ310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、パーキング(P)ポジション、後進走行(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション以外の車両が前進するときに必ず係合状態で使用される。
【0043】
前進走行(D)ポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0044】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000および油圧制御部1100について説明する。
【0045】
図2に示すように、ECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1010には、タービン回転数センサ400からタービン回転数NTを表わす信号が、プライマリプーリ回転数センサ410からプライマリプーリ回転数NINを表わす信号が、セカンダリプーリ回転数センサ420からセカンダリプーリ回転数NOUTを表わす信号が、それぞれ入力される。
【0046】
図1に示すように、油圧制御部1100は、変速速度制御部1110と、ベルト挟圧力制御部1120と、ロックアップ係合圧制御部1130と、クラッチ圧制御部1140と、マニュアルバルブ1150とを含む。ECU1000から、油圧制御部1100の変速制御用デューティソレノイド(1)1200と、変速制御用デューティソレノイド(2)1210と、リニアソレノイド1220と、ロックアップソレノイド1230と、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240に制御信号が出力される。
【0047】
図2を参照して、これらのパワートレーンを制御するECU1000の構造をさらに詳しく説明する。図2に示すように、ECU1000は、エンジン100を制御するエンジンコントロールコンピュータ1010と、トルクコンバータ200、前後進切換え装置290およびCVT300を制御するECT_ECU1020とを含む。
【0048】
図1に示した入出力信号に加えて、ECT_ECU1020には、ストップランプスイッチから、運転者によりブレーキペダルが踏まれていることを表わす信号、Gセンサ(加速度センサ、傾斜センサ)から、車両が登坂路などに停車したした際の登坂路の傾斜度を表わす信号が、それぞれ入力される。
【0049】
さらに、エンジンコントロールコンピュータ1010には、アクセル開度センサから、運転者により踏まれているアクセルの開度を表わす信号、スロットルポジションセンサから、電磁スロットルの開度を表わす信号、エンジン回転数センサから、エンジン100の回転数(NE)を表わす信号が、それぞれ入力される。エンジンコントロールコンピュータ1010とECT_ECU1020とは、相互に接続されている。
【0050】
油圧制御部1100においては、ECT_ECU1020からリニアソレノイド1220に出力された制御信号に基づいて、ベルト挟圧力制御部1120がCVT300のベルト700の挟圧力を制御するとともに、クラッチ圧制御部1140が入力クラッチ310の係合圧を制御する。
【0051】
このような構造を有するECU1000は、ニュートラル制御を開始する条件の1つである路面勾配を学習する。ECU1000は、その内部の記憶部にニュートラル制御を開始するときのGセンサから入力された値と、そのニュートラル制御から復帰したときのプライマリプーリ回転数センサ410で検知した車両が後退した分に対応するパルス数を記憶する。このようなGセンサ値とパルス数との組合せをテーブルに記憶しておいて、そのテーブルからGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを作成する。一方、ECU1000は、車両の初期状態におけるGセンサ値とパルス数との関係を記憶するとともに、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値をGセンサの値として記憶する。ECU1000は、初期状態として記憶させたGセンサ値とパルス数との関係を用いて、路面勾配の上限値(Gセンサ値)に対応するパルス数を算出する。ECU1000は、経時的に変化する要因に対応するために作成されたGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを用いて、算出されたパルス数に対応する現実の車両状態に対応した路面勾配の上限値(Gセンサ値)を算出する。初期状態における路面勾配の上限値(Gセンサ値)と算出された路面勾配の上限値(Gセンサ値)との差分が補正値になる。ECU1000におけるこのような処理をさらに詳細に述べる。
【0052】
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU1000の内部の記憶部に記憶されるテーブルについて説明する。
【0053】
図3に示すように、このテーブルは、ニュートラル制御が開始されたときのGセンサ値と、そのニュートラル制御から復帰したときのプライマリープーリ回転数センサ410が検知した車両の後退量に対応する入力パルス数との組合せを最大20組記憶する。21番目のデータの組合せがECU1000に入力されると、そのデータの組合せが1番目のデータの組合せとして記憶され、20番目のデータの組合せ(最も古いデータの組合せ)は、消去される。なお、このデータの組合せの個数は一例である。また、このテーブルに記憶されるデータの組合せは、Gセンサ値がニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値近傍のものに限定するようにしてもよい。
【0054】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020の内部の記憶部に記憶されるマップについて説明する。
【0055】
図4に示すように、このマップは、図3に示したテーブルを入力パルス数の昇順に並べ替えたものである。このような並べ替えは、入力パルスの昇順に限定されない。入力パルスの降順であってもよいし、Gセンサ値の昇順や降順であってもよい。ニュートラル制御が開始されたときのGセンサ値と、そのニュートラル制御から復帰したときの車両の後退量に対応する入力パルス数との関係が明確になればよい。
【0056】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU1000で実行されるニュートラル制御を許可する上限路面勾配の補正処理のプログラムの制御構造について説明する。なお、以下の説明では、ニュートラル制御が登坂路で実行される場合のみに限定する。
【0057】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU1000は、車両が登坂路で停止したか否かを判断する。このとき、ECU1000は、アクセル開度センサ、スロットルポジションセンサ、Gセンサ、ストップランプスイッチなどから入力される信号に基づいて判断する。車両が登坂路で停止していると(S100にてYES)、処理は、S110に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理は、S100へ戻され、車両が登坂路で停止するまで待つ。
【0058】
S110にて、ECU1000は、検知したGセンサ値(G(S))をテーブル(図3)に格納する。このとき格納されるGセンサ値は、ニュートラル制御の開始を許可したときの判断に用いられたGセンサの値である。S120にて、ECU1000は、ニュートラル制御からの復帰直後における車両後退時のプライマリプーリ回転数センサ410が検知したパルス値(NIN)をテーブル(図3)に格納する。このとき、格納されるパルス数は、登坂路におけるニュートラル制御からの復帰時における車両の後退量に対応する。
【0059】
S130にて、ECU1000は、テーブル(図3)内のデータをパルス値(NIN)の昇順(または降順)に並べ替えた、最新状態のGセンサ値−入力パルス数のマップ(図4)を作成する。S140にて、ECU1000は、初期状態のGセンサ値−入力パルス数のマップから、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(B)に対応するプライマリプーリ回転センサ410により検知されるべきパルス値(N(B))を算出する。これは、図6に示すGセンサ値と入力パルス数との関係を表わすマップにおいて、矢示(1)および矢示(2)により示される処理に対応する。
【0060】
S150にて、ECU1000は、最新状態のGセンサ値−入力パルス数のマップから、S140にて算出したプライマリプーリ回転数センサ410により検知されるべきパルス値(N(B))に対応する最新のニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(RET))を算出する。これは、図6に示すGセンサ値と入力パルス数との関係を表わすマップにおいて、矢示(3)および矢示(4)により示される処理に対応する。
【0061】
S160にて、ECU1000は、学習補正量ΔGを、G(RET)−G(B)として算出する。S170にて、ECU1000は、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値を、G(B)+ΔGとして補正する。
【0062】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る制御装置であるECU1000の動作について説明する。
【0063】
ニュートラル制御機能を有する車両が登坂路で停止すると(S100にてYES)、検知したGセンサ値(G(S))がテーブル(図3)に格納される。ニュートラル制御が実行されて、ニュートラル制御からの復帰が行なわれる。ニュートラル制御からの復帰直後における車両後退時のプライマリプーリ回転数センサ410が検知したパルス値(NIN)がテーブル(図3)に格納される。テーブル(図3)内のデータをパルス値(NIN)の昇順(または降順)に並べ替えた、最新状態のGセンサ値−入力パルス数のマップ(図4)が作成される。
【0064】
図6に示すGセンサ値と入力パルス数との関係を表わす初期状態のマップにおいて、矢示(1)および矢示(2)により示される処理が実行され、初期状態における、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(B))に対応するプライマリプーリ回転センサ410により検知されるべきパルス値(N(B))が算出される。図6に示す、Gセンサ値−入力パルス数との関係と表わす最新状態のマップにおいて、矢示(3)および矢示(4)により示される処理が実行され、S140にて算出された検知されるべきパルス値(N(B))に対応するニュートラル制御の開始を許可する上限G値(G(RET))が算出される。
【0065】
学習補正量ΔGが、G(RET)−G(B)として算出され、ニュートラル制御の開始を許可する上限G値が、G(B)+ΔGとして補正される。
【0066】
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置であるECUによると、車両がニュートラル制御を開始するときのGセンサ値と、車両がニュートラル制御から復帰するときのパルス値とが、それぞれ検知されテーブルに格納される。車両は、車両の種類ごとに予めニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を表わすGセンサ値(G(B))が設定されるとともに、そのGセンサ値(G(B))にパルス数(N(B))が設定されている。ニュートラル制御からの復帰時に許容される車両の後退量に対応するパルス数(N(B))に対応する、車両の最新状態におけるGセンサ値とパルス数とのマップを用いて、最新の車両の状態を考慮した、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を表わすGセンサ値(G(RET))が算出される。これは、現実の車両の状態を考慮して、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配を算出したことになる。この算出された路面勾配に基づいて、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する。このように補正すると、たとえば車両の種類ごとに一義的に路面勾配の上限値が設定されていてニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができ、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる。
【0067】
なお、上述した第1の実施の形態の図5に示すフローチャートを実行する条件として、エンジン100に外乱が発生していない条件を加えてもよい。このようにすると、たとえば車両のエアコンディショナが作動していると、その作動がエンジンにて行なわれるので、エンジントルクが増える。この状態で、ニュートラル制御の開始を許可する上限の路面勾配を学習すると正確に補正値を算出できない場合がある。このため、このような場合には、補正値ΔGを学習しないようにする。
【0068】
さらに、図5のフローチャートのS120にて、ニュートラル制御からの復帰直後における車両後退時のプライマリプーリ回転数センサ410が検知したパルス値(NIN)をテーブル(図3)に格納するときに、エンジン100の回転数を格納するようにしてもよい。格納されたエンジン100の回転数を考慮して、補正値ΔGを算出するようにする。このようにすると、エンジン100に対する外乱を考慮して、補正値ΔGを算出することができる。
【0069】
さらに、車両の後退量を検知するセンサは、プライマリプーリ回転数センサ410に限定されない。セカンダリプーリ回転数センサ420であってもよい。ただし、ニュートラル制御からの復帰時における変速比は大きいので、プライマリプーリ回転数センサ410の方が、セカンダリプーリ回転数センサ420を用いるよりも精度高く検知することができる。
【0070】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図7に示すECU3000により実現される。本実施の形態では、自動変速機を流体継手としてトルクコンバータを備え、遊星歯車式減速機構を有する自動変速機として説明する。
【0071】
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。図7に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン2100と、トルクコンバータ2200と、自動変速機2300と、ECU3000とから構成される。
【0072】
エンジン2100の出力軸は、トルクコンバータ2200の入力軸に接続される。エンジン2100とトルクコンバータ2200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ2400により検知されるエンジン2100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ2200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0073】
トルクコンバータ2200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ2210と、入力軸側のポンプ羽根車2220と、出力軸側のタービン羽根車2230と、ワンウェイクラッチ2250を有し、トルク増幅機能を発現するステータ2240とから構成される。トルクコンバータ2200と自動変速機2300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ2200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ2410により検知される。自動変速機2300の出力軸回転数NOは、出力軸回転数センサ2420により検知される。
【0074】
図8に自動変速機2300の作動表を示す。図8に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C1)、ワンウェイクラッチ要素(F0、F3)が係合する。これらのクラッチ要素の中で、特にクラッチ要素C1を入力クラッチ2310という。この入力クラッチ2310は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、図8の作動表に示すように、パーキング(P)ポジション、後進走行(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション以外の、車両が前進するための変速段を構成する際に必ず係合状態で使用される。
【0075】
前進走行(D)ポジションであって、車両の状態が予め定められた条件を満足して停止した場合に、入力クラッチ2310を解放して所定のスリップ状態にして、ニュートラルに近い状態にする制御をニュートラル制御という。
【0076】
本実施の形態に係るECU3000も、前述の第1の実施の形態におけるECU1000と同じように、ニュートラル制御を開始する条件の1つである路面勾配を学習する。
【0077】
ECU3000は、その内部の記憶部にニュートラル制御を開始するときのGセンサから入力された値と、そのニュートラル制御から復帰したときにタービン回転数センサ2410で検知した、車両が後退した分に対応するパルス数を記憶する。このようなGセンサ値とパルス数との組合せをテーブルに記憶しておいて、そのテーブルからGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを作成する。一方、ECU3000は、車両の初期状態におけるGセンサ値とパルス数との関係を記憶するとともに、ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値をGセンサの値として記憶する。ECU3000は、初期状態として記憶させたGセンサ値とパルス数との関係を用いて、路面勾配の上限値(Gセンサ値)に対応するパルス数を算出する。ECU3000は、経時的に変化する要因に対応するために作成されたGセンサ値とパルス数との関係を表わすマップを用いて、算出されたパルス数に対応する現実の車両状態に対応した路面勾配の上限値(Gセンサ値)を算出する。初期状態における路面勾配の上限値(Gセンサ値)と算出された路面勾配の上限値(Gセンサ値)との差分が補正値になる。ECU3000は、このようにECU1000と同じような処理を実行する。
【0078】
以上のようにして、CVTではない、多数のクラッチとブレーキとで伝達経路を切替えるギヤ式の自動変速機であっても、CVTと同様に、上限Gセンサ値を補正して、ニュートラル制御の実行範囲が狭まることを避けることができ、最適にニュートラル制御を実行して燃費向上の効果の実現することができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動変速機の制御ブロック図である。
【図2】図1に示すECUの詳細図である。
【図3】ECU内部の記憶部に記憶されるテーブルを示す図である。
【図4】ECU内部の記憶部に記憶されるマップを示す図である。
【図5】ECUで実行されるニュートラル制御処理のプログラムの制御構造を示す図である。
【図6】Gセンサ値と入力パルス数との関係を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る自動変速機の制御ブロック図である。
【図8】図7に示す自動変速機の作動表である。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、290 前後進切換え装置、300 入力クラッチ、400 タービン回転数センサ、410 プライマリプーリ回転数センサ、420 セカンダリプーリ回転数センサ、500 プライマリプーリ、600 セカンダリプーリ、700 ベルト、800 デファレンシャルギヤ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU、1100 油圧制御部、1110 変速速度制御部、1120 ベルト挟圧力制御部、1130ロックアップ係合圧制御部、1140 クラッチ圧力制御部、1150 マニュアルバルブ、1200 変速制御用デューティソレノイド(1)、1210 変速制御用デューティソレノイド(2)、1220 リニアソレノイド、1230 ロックアップソレノイド、1240 ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド、2100 エンジン、2200 トルクコンバータ、2210 ロックアップクラッチ、2220 ポンプ羽根車、2230 タービン羽根車、2240 ステータ、2250 ワンウェイクラッチ、2300 自動変速機、2310 入力クラッチ、2400 エンジン回転数センサ、2410 タービン回転数センサ、2420 出力軸回転数センサ、3000 ECU、3010 エンジンECU、3020 ECT_ECU、3030 VSC_ECU。
Claims (11)
- 前進走行ポジションで、アクセル操作が行なわれず、ブレーキ操作が行なわれ、かつ車両が予め定められた車速以下であるという条件が成立した場合に、駆動源からの駆動力を自動変速機に伝達する入力クラッチを解放させるニュートラル制御を実行する自動変速機の制御装置であって、
路面勾配を検知するための第1の検知手段と、
前記ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いを検知するための第2の検知手段と、
初期状態における、前記ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値と前記後退の度合いとの関係を記憶するための第1の記憶手段と、
前記ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、前記ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係を記憶するための第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶された関係に基づいて、前記路面勾配の上限値に対応する後退の度合いを算出するための第1の算出手段と、
前記第2の記憶手段に記憶された関係に基づいて、前記第1の算出手段により算出された後退の度合いに対応する路面勾配を算出するための第2の算出手段と、
前記第1の記憶手段に記憶された路面勾配の上限値と前記第2の算出手段により算出された路面勾配とに基づいて、前記ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正するための補正手段とを含む、制御装置。 - 前記第2の記憶手段は、時間的に新しい予め定められた数の、前記路面勾配と前記後退の度合いとのデータの組合せを記憶するための手段を含む、請求項1に記載の制御装置。
- 前記制御装置は、エンジンの状態が予め定められた状態であるときに、前記第2の記憶手段に、前記路面勾配と前記後退の度合いとの関係を記憶させるための手段をさらに含む、請求項1に記載の制御装置。
- 前記予め定められた状態は、エンジンの状態が車両に搭載された補機による外乱が発生していないという状態である、請求項3に記載の制御装置。
- 前記第1の検知手段は、加速度センサまたは傾斜センサである、請求項1〜4のいずれかに記載の制御装置。
- 前記第2の検知手段は、前記自動変速機に設けられた回転数センサである、請求項1〜5のいずれかに記載の制御装置。
- 前記第2の検知手段は、前記自動変速機の入力側に設けられた回転数センサである、請求項6に記載の制御装置。
- 前進走行ポジションで、アクセル操作が行なわれず、ブレーキ操作が行なわれ、かつ車両が予め定められた車速以下であるという条件が成立した場合に、駆動源からの駆動力を自動変速機に伝達する入力クラッチを解放させるニュートラル制御を実行する自動変速機の制御方法であって、
路面勾配を検知する第1の検知ステップと、
前記ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いを検知する第2の検知ステップと、
初期状態における、前記ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値と前記後退の度合いとの関係を予め準備する準備ステップと、
前記ニュートラル制御の開始時において検知した路面勾配と、前記ニュートラル制御からの復帰時における車両の後退の度合いとの関係を記憶する記憶ステップと、
前記予め準備された関係に基づいて、前記路面勾配の上限値に対応する後退の度合いを算出する第1の算出ステップと、
前記記憶ステップにて記憶された関係に基づいて、前記第1の算出ステップにて算出された後退の度合いに対応する路面勾配を算出する第2の算出ステップと、
前記準備ステップにて準備された路面勾配の上限値と前記第2の算出ステップにて算出された路面勾配とに基づいて、前記ニュートラル制御の開始を許可する路面勾配の上限値を補正する補正ステップとを含む、制御方法。 - 前記記憶ステップは、時間的に新しい予め定められた数の、前記路面勾配と前記後退の度合いとのデータの組合せを記憶するステップを含む、請求項8に記載の制御方法。
- 前記制御方法は、エンジンの状態が予め定められた状態であるときに、前記記憶ステップにて、前記路面勾配と前記後退の度合いとの関係を記憶させるステップをさらに含む、請求項8に記載の制御方法。
- 前記予め定められた状態は、エンジンの状態が車両に搭載された補機による外乱が発生していないという状態である、請求項10に記載の制御方法。
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2003
- 2003-03-24 JP JP2003079949A patent/JP2004286146A/ja not_active Withdrawn
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