JP2004285846A - 低床式車両のエンジン冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低床式車両10は、車体を車体カバー70で覆い、シート58の前にこのシートに座った運転者Mnが足を載せる左右の低床73を設け、これら左右の低床間に運転者が乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部78を設け、跨ぎ部の下に水冷エンジン100を設けたスクータ型自動二輪車である。水冷エンジンは前部の気筒101と後部の気筒102を有する前後V型エンジンである。車体カバー内の前部にエンジン用ラジエータ55を設けるとともに、車体カバーの左右両側部に且つ前部の気筒と後部の気筒との間の位置に、ラジエータからの排風Fhを車体外方へ排出する排風口271を設けた。
【選択図】 図32
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低床式車両のエンジン冷却装置の改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車体を車体カバーで覆ったスクータ型自動二・三輪車等の低床式車両において、ラジエータによってエンジンを冷却する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特公昭62−47756号公報(第1−2頁、第1−2図)
【0004】
特許文献1によれば、従来の低床式車両のエンジン冷却装置は、車体を車体カバーで覆い、車体後部のシート下に水冷エンジンを設け、車体前部のレッグシールドの直前にエンジン用ラジエータを設け、レッグシールドにラジエータからの排風を後方へ排出する排風口を設けたというものである。
排風口から排出された排風は、シートに座った運転者の脚部の方向へ直接に流れる。寒冷時には、ラジエータで熱交換した後の排風によって、運転者の脚部を暖めることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の低床式車両のエンジン冷却装置では、エンジン用ラジエータと排風口との距離が短いので、排風の流路の調整が難しい。
【0006】
また、低床式車両の後部にV型エンジンのような大型で大重量のエンジンを搭載した場合には、低床式車両の前後の重量バランスを図るための配慮が必要となるので、改良の余地がある。
さらにまた、車体前部にエンジン用ラジエータを配置するとともに、車体後部にエンジンを配置したのでは、ラジエータからエンジンまでの配管が長くなるとともに、配管の自由度が小さくならざるを得ない。このため、ラジエータを走行風による冷却効率の高い車体前方に配置するには、改良の余地がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、▲1▼排風口から排出されたラジエータの排風の風量や温度を最適にする流路の調整がやり易くでき、▲2▼大重量のエンジンを搭載した低床式車両の重量バランスを高め、▲3▼ラジエータから水冷エンジンまでの配管を短くするとともに配管の自由度を高めることができる技術を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車体を車体カバーで覆ったスクータ型自動二・三輪車等の低床式車両において、この低床式車両は、シートの前にこのシートに座った運転者が足を載せる左右の低床を設け、これら左右の低床間に運転者が乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部を設け、この跨ぎ部の下に水冷エンジンを設け、この水冷エンジンを前部の気筒並びに後部の気筒を有する前後V型エンジンとし、車体カバー内の前部にエンジン用ラジエータを設けるとともに、車体カバーの左右両側部に且つ前部の気筒と後部の気筒との間の位置に、エンジン用ラジエータからの排風を車体外方へ排出する排風口を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項1によれば、車体カバー内の前部にエンジン用ラジエータを設けるとともに、車体カバーの左右両側部に且つ前部の気筒と後部の気筒との間の位置に、エンジン用ラジエータからの排風を車体外方へ排出する排風口を設けたことにより、ラジエータで熱交換した後の排風が、車体カバー内を後方へ流れつつエンジンの前後の気筒を冷却することができる。従って、水冷エンジンが車体カバーで覆われているにもかかわらず、水冷エンジンの温度を安定させることができる。
【0010】
さらに請求項1によれば、シートの前で左右の低床間に、運転者が乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部を設け、この跨ぎ部の下に水冷エンジンを設けたので、水冷エンジンを車体中央に配置することができる。一方、車体カバー内の前部にエンジン用ラジエータを設けたので、ラジエータを走行風による冷却効率の高い車体前方に配置することができる。このため、ラジエータから水冷エンジンまでの配管を短くできるので、配管の自由度を高めることができる。しかも、水冷エンジンを車体中央に配置したので、水冷エンジンを前後V型エンジンのような大型で大重量のエンジンとしたにもかかわらず、低床式車両の前後の重量バランスを、より高めることができる。
【0011】
しかも、車体中央に配置された水冷エンジンにおける、前部の気筒と後部の気筒との間の位置で、車体カバーの左右両側部に排風口を設けたので、車体カバー内の前部に配置されたエンジン用ラジエータから排風口までの距離を、比較的大きくとることができる。また、排風口から車体外方へ排出された排風は走行風と混合させることができる。このようなことから、排風口から排出された排風の風量や温度を最適にする流路の調整がやり易くなる。
【0012】
請求項2は、後部の気筒は跨ぎ部内に臨み、排風口は、排風が跨ぎ部の外面に沿って後方へ流れるように向けた開口であることを特徴とする。
後部の気筒を跨ぎ部内に臨ませたので、跨ぎ部内を流れる排風によって後部の気筒を効率良く冷却することができる。
さらには、排風口を、排風が跨ぎ部の外面に沿って後方へ流れるように向けたので、ラジエータで熱交換した後の排風によって、運転者の脚部を効率良く暖めることができる。
【0013】
請求項3は、排風口に、任意に角度設定が可能な可変式整流板を備えたことを特徴とする。
排風口に、任意に角度設定が可能な可変式整流板を備えたので、可変式整流板の角度を調整することにより、排風口から排出される排風の向き並びに風量を任意に調整することができる。このため、運転者の好みに応じて、脚部の方向へ流れる排風の向きや風量を調整することで、脚部周りの暖かさを調整することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは車幅中心(車体中心)を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0015】
先ず、低床式車両10の全体構成について説明する。図1は本発明に係る低床式車両の左側面図(その1)であり、車体カバーを装着した構成を示す。図2は本発明に係る低床式車両の左側面図(その2)であり、車体カバーを外した構成を示す。図3は本発明に係る低床式車両の平面図であり、車体カバーを外した構成を示す。
【0016】
低床式車両10は、車体フレーム20と、車体フレーム20のヘッドパイプ21に取付けたフロントフォーク51と、フロントフォーク51に取付けた前輪52と、フロントフォーク51に連結したハンドル53と、車体フレーム20の下部に取付けたパワーユニット54と、車体フレーム20の前上部に取付けたラジエータ55、エアクリーナ56並びに燃料タンク57と、車体フレーム20の後上部に取付けたシート58と、シート58の下方で車体フレーム20の後部に取付けた収納ボックス59と、車体フレーム20の後部に後輪用リヤクッション61で懸架したスイングアーム62と、スイングアーム62に取付けた後輪63と、を主要な構成部材とし、車体全体を車体カバー(カウル)70で覆ったフルカウリングタイプの車両である。
【0017】
より具体的には、シート58は前後に2人乗りするタンデムシートであり、中央部に運転者用の可動式(調整可能な)シートバック64を備える。このようなシート58は、車体フレーム20の後上部から後方へ延したシートレール65によって、車体フレーム20に取付けることができる。
P1はホイールベース(前輪52と後輪63との中心間距離)の中間位置であり、距離X1と距離X2とは等しい。
【0018】
車体カバー70は、図1に示すように、ヘッドパイプ21の前部及び前輪52の上部を覆うフロントカバー71と、このフロントカバー71の後部を覆うインナカバー72と、運転者の足を載せるステップフロアとしての左右の低床73(左側のみ示す。以下同じ。)と、これら低床73の外縁から下方へ延ばした左右のフロアスカート74と、インナカバー72から後方へ延ばし車体フレーム20の長手中央を覆うセンターカバー75と、このセンターカバー75から後方へ延ばし車体フレーム20の後部、シートレール65、収納ボックス59を覆うサイドカバー76と、サイドカバー76の後方で車体後上部を覆うリヤカバー77とからなる。
【0019】
図2は、車体フレーム20の前部を覆うフロントカバー71やエンジン用ラジエータ55を、ステー320を介して車体フレーム20で支持したことを示す。
【0020】
センターカバー75は、エアクリーナ56、燃料タンク57及びエンジン100をも覆う部材である。
図中、81はウインドスクリーン、82はフロントフェンダ、83はヘッドランプ、84はウインカー、85はリヤスポイラ兼リヤグリップ、86はテールランプ、87はリヤフェンダ、88はナンバプレートである。
【0021】
次に、車体フレーム20について説明する。図4は本発明に係る車体フレームの左側面図、図5は本発明に係る車体フレームの平面図、図6は本発明に係る車体フレームの正面図、図7は本発明に係る車体フレームを左側方から見た斜視図、図8は本発明に係る車体フレームを右側方から見た斜視図である。
【0022】
車体フレーム20は、ヘッドパイプ21から後下方へ延出する左右一対のアッパフレーム22,22と、ヘッドパイプ21から下方へ延出してV型エンジン100(図2参照)のクランクケース104の前部に連結する左右一対のダウンフレーム23,23と、からなり、V型エンジン100を懸架する、ダイヤモンド型フレームである。
【0023】
詳しく説明すると、アッパフレーム22,22は、ヘッドパイプ21の上部から後下方へ傾斜しつつ略直線状に延び、その下傾端部22aから傾斜度合いを緩やかにして更に後下方へ延びたパイプ材である。ダウンフレーム23,23は、ヘッドパイプ21の下部から後下方へ、アッパフレーム22,22よりも大きい傾斜角で延びたパイプ材である。
【0024】
左のアッパフレーム22と左のダウンフレーム23との間、及び右のアッパフレーム22と右のダウンフレーム23との間は、トラス形状のフレーム構造(三角形状の骨組み構造)である。
【0025】
具体的には、トラス形状のフレーム構造は、ヘッドパイプ21とダウンフレーム23との接合部分からアッパフレーム22へ向かって略水平な第1補強材24を延ばし、アッパフレーム22と第1補強材24との接合部分からダウンフレーム23の下端部まで第2補強材25を延して接合し、さらに、アッパフレーム22の下傾端部22aの近傍と第2補強材25の延出途中との間に第3補強材26を掛け渡した構成とすることによって、側面視三角形状の3つの空間部27〜29を有したものである。これらの空間部27〜29は車幅方向に貫通している。
【0026】
すなわち、第1の空間部27は、ヘッドパイプ21とアッパフレーム22と第1補強材24とによって形成された空間である。第2の空間部28は、ダウンフレーム23と第1・第2補強材24,25とによって形成された空間である。第3の空間部29は、アッパフレーム22と第2・第3補強材25,26とによって形成された空間である。
【0027】
さらに車体フレーム20は、アッパフレーム22における下傾端部22aの近傍で、左右のアッパフレーム22,22間にクロスメンバ31を掛け渡し、左右のダウンフレーム23,23の延出途中間並びに下端部間に2つのクロスメンバ32,33を掛け渡すことによって、剛性を確保したものである。左右のアッパフレーム22,22間のクロスメンバ31は、クッション用ブラケット34を備える。
【0028】
車体フレーム20は、左のダウンフレーム23の下端部に左側第1ハンガプレート35を備え、左の第3補強材26に左側第2ハンガプレート36を備え、左のアッパフレーム22と左の第3補強材26との接合部分近傍に左側第3ハンガプレート37を備え、左のアッパフレーム22の後端部に左側第4ハンガプレート44を備えるとともに、図8に示すように、右のダウンフレーム23の下端部に右側ハンガ部23aを備え、右の第3補強材26に右側第1ハンガプレート38を備え、右のアッパフレーム22と右の第3補強材26との接合部分近傍に右側第2ハンガプレート39を備え、右のアッパフレーム22の後端部に右側第3ハンガプレート48を備える。
これらのハンガプレート35〜39,44,48は、車体フレーム20から取外し可能な連結部材である。
【0029】
さらに車体フレーム20は、図5及び図8に示すように、ダウンフレーム23,23の下部にステー47,47を介して、左右の低床支持フレーム41,42を固定したものである。これら左右の低床支持フレーム41,42は、前後に延在して、低床73(図1参照)を支持する部材である。
左の低床支持フレーム41は、その後部を左のアッパフレーム22の後部にステー43並びに左側第4ハンガプレート44にて連結したパイプ材であって、後部にサイドスタンド46を一体に保持したものである。左側第4ハンガプレート44は、低床支持フレーム用ステーを兼ねる。
【0030】
詳しくは、左の低床支持フレーム41にブラケット45にてサイドスタンド46を起立及び格納可能に取付けた。図8に示すように、右の低床支持フレーム42は、その後部を想像線にて示す変速機ユニット130のブラケット172に連結したものである。
【0031】
以上の低床支持フレーム41,42の取付構造をまとめて述べる。
ダイヤモンド型フレームにおけるダウンフレーム23,23の下部に、前後に延在する低床支持フレーム41,42を固定し、これらの低床支持フレーム41,42により低床73(図1参照)を支持するようにした。このため、V型エンジン100(図2参照)を下げるように構成することができ、且つ、低床73を確実に支持することができる。
【0032】
さらには、左のダウンフレーム23の下部に固定した、左の低床支持フレーム41の後部を、さらに左のアッパフレーム22の後部にも連結した(図2及び図7参照)。このため、前後に長い左の低床支持フレーム41を、車体フレーム20により十分に固定することができる。この結果、低床支持フレーム41の剛性を高めることができ、低床73をより確実に支持することができ、支持剛性を一層高めることができる。
【0033】
一方、図8に示すように、右のダウンフレーム23の下部に固定した、右の低床支持フレーム42の後部を、さらに、剛性が大きい変速機ユニット130にも連結した。このため、前後に長い右の低床支持フレーム42を、車体フレーム20や変速機ユニット130により、十分に固定することができる。この結果、低床支持フレーム42の剛性を高めることができ、低床73をより確実に支持することができ、支持剛性を一層高めることができる。
【0034】
さらにまた、図4に示すように、左の低床支持フレーム41の後部に、サイドスタンド46を一体に保持させたので、低床支持フレーム41がサイドスタンド46を保持する役割を兼ねることができる。このため、他の機能部品との兼用化を達成することができ、サイドスタンド46を保持するブラケット45が小型ですみ、別部品からなる保持部品を設ける必要もない。しかも、前後に延びる低床支持フレーム41でサイドスタンド46を保持するのであるから、サイドスタンド46を前後方向の任意の位置に設定することができ、設計の自由度が高まる。
【0035】
次に、パワーユニット54周りの構成について説明する。図9は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、エアクリーナ並びに燃料タンク周りの左側面図である。
パワーユニット54は、前部の前後V型エンジン100と後部の変速機ユニット130とを組合わせたものである。すなわち、パワーユニット54に変速機ユニット130を備える(V型エンジン100の後部に変速機ユニット130を備える。)。
【0036】
図9に示すように、V型エンジン100は、側面視でバンク角θ1(気筒101,102間の挟み角θ1)を略90°又は90°を上回る角度に設定した、2気筒エンジンである。V型エンジン100において、前バンクの気筒101、すなわち前部の気筒101は、前輪52(図2参照)の車軸上方を指向するように前方へ概ね水平に延びる。後バンクの気筒102、すなわち後部の気筒102は、アッパフレーム22の下傾端部22aを指向するように上方へ概ね垂直に延びる。本発明は、このようにしてバンク角θ1の二等分線L1をヘッドパイプ21に指向させて、V型エンジン100を配置したことを特徴とする。
【0037】
さらに図9は、V型エンジン100のクランク軸103を、ホイールベースの中間位置P1(図2参照)よりも前方に配置することにより、前バンクの気筒101を左右のダウンフレーム23,23よりも前方に配置したこと、及び、後バンクの気筒102を左右のアッパフレーム22,22間に配置した(図3も参照)ことを示す。
【0038】
前バンクの気筒101を、左右のダウンフレーム23,23よりも前方に配置することによって、V型エンジン100を極力前方へ配置することができる。この結果、低床式車両10の重心を前に設定することができるので、前輪52と後輪63(図2参照)とにかかる荷重を、より適正に配分することができる。
【0039】
さらには、前バンクの気筒101を前に配置することによって、V型エンジン100のクランク軸103の位置が前方へ移る。この場合であっても、バンク角θ1の二等分線L1はヘッドパイプ21に指向する。クランク軸103の位置が前方へ移った分、バンク角θ1の二等分線L1が起立するので、これに応じて後バンクの気筒102が車体後方へ傾く。従って、後バンクの気筒102の高さを下げることができる。このため、V型エンジン100の搭載の自由度がより高まる。
【0040】
さらにまた、後バンクの気筒102を左右のアッパフレーム22,22間に配置したので、アッパフレーム22,22を下げても後バンクの気筒102に干渉することはない。このため、アッパフレーム22,22を極力低い位置に通すことができる。従って、車体フレーム20の重心が下がるので、低床式車両10の低重心化を図ることができる。しかも、低床73(図1参照)をより低くできるので、低床式車両10の居住性や足付き性が向上する。さらには、アッパフレーム22,22を下げることにより、運転者が乗車するときに、車体フレーム20をより跨ぎ易くなる。
【0041】
V型エンジン100を前方に配置できるようにするために、上記図2に示すようにエンジン(水冷エンジン)100のためのラジエータ55をヘッドパイプ21の前方に配置した。従来、水冷エンジンの前に配置されていたラジエータ55を、ヘッドパイプ21の前方に移すことによって、V型エンジン100を極力前方へ配置することができる。
【0042】
V型エンジン100並びに変速機ユニット130は、下半部を低床支持フレーム41,42(この図では左のみ示す。)の下方へ下げて配置したものである。このため、低床支持フレーム41,42で下から支えられる低床73(図1参照)の下方に、V型エンジン100並びに変速機ユニット130を配置して低床式車両10に搭載することができる。クランク軸103は、低床73並びに低床支持フレーム41,42よりも下方にある。
【0043】
このようにすることで、ヘッドパイプ21の高さ中央の点P2と変速機ユニット130の最終出力軸138とを通る直線L2の下方のスペースS1に、V型エンジン100並びに吸気系190を配置した。しかも、バンク角θ1の二等分線L1をヘッドパイプ21に指向させることができる。
【0044】
ここで、吸気系190とは、V型エンジン100に燃焼用空気を供給する系統であって、エアクリーナ56並びにエアクリーナ56から各気筒101,102に接続する各吸気連結管191,191を含む。
【0045】
バンク角θ1の二等分線L1をヘッドパイプ21に指向させて、V型エンジン100を配置したので、車体剛性の強い方向に二等分線L1が指向するので、V型エンジン100の振動に対して、より有利にすることができるとともに、ヘッドパイプ21と2つのシリンダ間の空間を有効に使うことができ、各気筒101,102のための吸気連結管191,191並びにエアクリーナ56を含む吸気系190を配置する、大きいスペースを確保することができる。従って、吸気系190の設計の自由度が高まる。
【0046】
また、このようなVバンク間の大きいスペースに、吸気連結管191,191並びにエアクリーナ56を含む吸気系190を、ヘッドパイプ21に指向させて配置するので、吸気系190及びV型エンジン100を効率良く連結することができ、V型エンジン100の性能向上を図ることができる。また、吸気系190を比較的低い位置に小型化して集約できる。このため、低い吸気系190の上部に燃料タンク57を容易に配置して、質量を前部に集中させることができる。
【0047】
低床式車両10の前部に燃料タンク57を配置することにより、低床式車両10の重心を前に設定することができるので、前輪52と後輪63とにかかる荷重を、より適正に配分することができる。しかも、シート58(図2参照)の下方に燃料タンク57を配置しなくてすむので、シート58下に大きいスペースを確保して、収納スペースの大きい収納ボックス59(図2参照)を配置するなど、多大な効果を発揮する。
【0048】
さらにまた、ヘッドパイプ21と変速機ユニット130の最終出力軸138とを通る直線L2の下方のスペースS1に、V型エンジン100並びに吸気系190を配置したので、エアクリーナ56の上方のスペースS2を有効に利用することができる。従って、エアクリーナ56の上方に機能部品としての燃料タンク57を容易に配置することができる。
【0049】
なお、図9の実施例では、後バンクの気筒102の先端並びに吸気系190のエアクリーナ56の上端は、直線L2よりも若干上方へ突き出てはいるものの、アッパフレーム22,22の上側の輪郭線と概ね一致する範囲内であり、実質的にはヘッドパイプ21と最終出力軸138とを通る直線L2の下方のスペースS1に配置されているものと、みなすことができる。
【0050】
ここで、上記図1〜図3及び図9に基づき、シート58、低床73,73、センターカバー75並びにエンジン100の関係について、まとめて説明する。
車体カバー70におけるセンターカバー75は、左右の低床73,73間に、運転者が乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部78を一体に設けたものである。この跨ぎ部78は、車体フレーム20の長手中央、すなわちアッパフレーム22の下傾端部22a(図9参照)周り、及び、V型エンジン100における後部の気筒102周りを覆う、正面断面視略下向きU字状カバーである。
【0051】
図1及び図2に示すように低床式車両10は、シート58の下に収納スペースを設け(すなわち、収納ボックス59を設け)、シート58の前にこのシート58に座った運転者が足を載せる左右の低床73,73を設け、これら左右の低床73,73間に跨ぎ部78を設け、この跨ぎ部78の下にエンジン100を設け、跨ぎ部78の前に燃料タンク57を配置したスクータである。
【0052】
エンジン100のクランク軸103を跨ぎ部78の下、すなわち、低床73,73よりも下方に配置するとともに、エンジン100の気筒(後部の気筒102)の頂部を跨ぎ部78内に臨ませるようにしたので、エンジン100の前方に大きいスペースを確保することができる。このスペースを有効利用して吸気連結管191,191並びにエアクリーナ56を含む吸気系190を配置することによって、吸気連結管191,191を直線に近い比較的単純な形状にすることができる。従って、吸気系190及びV型エンジン100を効率良く連結することができ、エンジン100の性能向上を図ることができる。さらには、吸気系190の設計の自由度が高まる。
【0053】
さらにまた、エンジン100の前方の比較的低位にエアクリーナ56を配置することによって、エアクリーナ56の上方に比較的低位の更なるスペースを確保することができる。この更なるスペースを有効利用して、燃料タンク57等の機能部品を容易に配置することができる。
【0054】
また、跨ぎ部78の前に燃料タンク57を配置することにより、シート58の下方に燃料タンク58を配置しなくてすむので、シート58下に大きいスペースを確保して、収納ボックス59の収納容量を大幅に大きくすることができるとともに、収納ボックス59の設計の自由度を高めることができる。
【0055】
また、エンジン100を、前部の気筒101並びに後部の気筒102を備えたV型エンジンにて構成したので、前後の気筒101,102間のスペースを有効利用することができる。従ってエンジン100の前方に、より大きいスペースを確保することができる。このようなより大きいスペースを有効利用して、吸気系190を一層容易に配置することができる。
さらにまた、V型エンジン100の2つの気筒101,102を前後に配置することにより、車幅が広がらなくてすみ、走行性能を高めるとともに、V型エンジン100の振動に対してもより有利にすることができる。
【0056】
図10は本発明に係るパワーユニットの断面図であり、上から見たパワーユニット54を展開した断面構造として表した。図11は本発明に係るパワーユニットの前半部の断面図である。図12は本発明に係るパワーユニットの後半部の断面図である。図13は本発明に係るパワーユニットの後部並びに後輪用スイングアーム周りの平面図である。
【0057】
図10〜図12にはパワーユニット54の断面構成を示す。なお、V型エンジン100については後バンクの気筒102を省略して表した。
V型エンジン100は、左右二分割形式のクランクケース104、クランクケース104に連結した前バンクの気筒101並びに後バンクの気筒102(図9参照)、これらの気筒101,102の先端に連結したヘッド105並びにヘッドカバー106、車幅方向に延びてクランクケース104内に回転可能に収納されたクランク軸103、クランク軸103にコネクティングロッド107にて連結されたピストン108、カム室109に収納された動弁機構111、点火プラグ112等からなり、水冷ジャケットを有する水冷式エンジンである。
【0058】
図中、113はカムチェーン、114は冷却水ポンプ用駆動ギヤ、115は右サイドカバー、116は交流発電機、117はスタータモータ(後述する)によるクランク軸駆動用ギヤである。
クランクケース104の左側部に左サイドカバー118を被せることで、クランク軸103の左端部、交流発電機116、後述する第1伝動軸136の左端部周りを大きく覆っている。
【0059】
変速機ユニット130は、V型エンジン100の一側部(右側R)でエンジン100に結合し、低床式車両10の一側部(右側R)にて後方へ延在し、後輪用スイングアーム62のピボット部分で、低床式車両10の他側部(左側L)から後輪63を駆動するように構成したものである。
このようにして、クランクケース104と変速機ユニット130とを、平面視略コ字状に組合わせてパワーユニット54を構成し、低床式車両10の他側部(左側L)に平面視略コ字状の開口(平面視略コ字状の開口部分のスペースS4)を設けることができる。
このように構成したので、V型エンジン100或いは変速機ユニット130のみの変更が可能となり、汎用性の高いパワーユニット54となる。
【0060】
詳しく説明すると、変速機ユニット130は、クランクケース104の後部右面に取付けるとともに後方へ延びた主ケース131、主ケース131の右側開口を塞ぐ第1カバー132、主ケース131と第1カバー132とによって形成した第1変速機室133、主ケース131の後部左側部に重ね合わせた副ケース134、主ケース131と副ケース134とによって形成した第2変速機室135、クランクケース104内の後部から第1変速機室133内へ車幅方向に延びる第1伝動軸136、第1変速機室133内の後部から第2変速機室135内へ車幅方向に延びる第2伝動軸137、第2変速機室135内から副ケース134を貫通して左外方へ延びる最終出力軸138、クランク軸103の左端部から第1伝動軸136の左端部へ動力を伝達する第1ギヤ機構139、第1伝動軸136の右端部から第2伝動軸137の右端部へ動力を伝達するベルト式無段変速機構141並びに遠心クラッチ142、第2伝動軸137の左端部から最終出力軸138へ動力を伝達する第2ギヤ機構143、等からなる。
【0061】
ベルト式無段変速機構141は、図示せぬサーボモータによって変速用ギヤ147を介して変速制御される、モータ制御方式を採用したものである。
144はバランサ、145はリラクタ、146はパルサ(クランク軸の角度センサ)であってエンジン100の点火制御並びに燃料噴射制御用に用いるものである。
【0062】
さらに図13を参照しつつ説明すると、最終出力軸138の左端に伝動軸151をスプライン結合し、伝動軸151に駆動スプロケット152を取付け、一方、後輪63用車軸153に被動スプロケット154を取付け、これらの駆動・被動スプロケット152,154間にチェーン155を掛けることで、V型エンジン100の動力を変速機ユニット130からチェーンドライブ機構150によって、後輪63に伝達することができる。
【0063】
ところで、最終出力軸138の軸心C1は後輪用スイングアーム62のピボット中心C1(スイング中心C1)でもある。
スイングアーム62は、左アーム161と右アーム162とこれら左・右アーム161,162間を繋ぐクロスメンバ163とからなる、平面視略H字状の部材であり、後端部に後輪63を回転自在に支承することができる。
【0064】
このようなスイングアーム62は、主ケース131の後部右側面と副ケース134の後部左側面とを、左・右アーム161,162の前端間で挟み込むように配置したものである。左アーム161の前端に有する左被支承部161aを、副ケース134の後部左側部に左ピボット164にて支承するとともに、右アーム162の前端に有する右被支承部162aを、主ケース131の後部右側部に右ピボット165にて支承することによって、スイングアーム62を上下スイング可能に取付けることができる。
【0065】
なお、ピボット165は主ケース131に出没可能にねじ込む雄ねじである。主ケース131にピボット165をねじ込むことで予め引き込んでおき、スイングアーム62をピボット中心C1に位置合わせした後に、ピボット165の先端を露出させて、右被支承部162aに嵌合することにより、主ケース131に右被支承部162aを取付けることができる。
【0066】
左アーム161はチェーンケースを兼ね、この左アーム161の左側開口をチェーンカバー166によって覆うことで、駆動・被動スプロケット152,154並びにチェーン155を収納することができる。
【0067】
以上の説明から明らかなように、パワーユニット54は、クランクケース104の後端部と、変速機ユニット130の主・副ケース131,134の左側部と、スイングアーム62の左アーム161の前端部と、によって囲んだ平面視略コ字状の開口を、低床式車両10の他側部(左側L)に設けることができる。
【0068】
次に、車体フレーム20とパワーユニット54との関係について説明する。図14は本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを左前方から見た斜視図である。図15は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを左後方から見た斜視図である。図16は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを右前方から見た斜視図である。
図17は本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを右後方から見た斜視図である。
【0069】
図14〜図17は、ダイヤモンド型フレームである車体フレーム20にV型エンジン100並びに変速機ユニット130を懸架したことを示す。
V型エンジン100については、クランクケース104の左側部を、左側第1・第2・第3ハンガプレート35,36,37を介して車体フレーム20に取付けるとともに、クランクケース104の右側部を、右側ハンガ部23a及び右側第1ハンガプレート38を介して車体フレーム20に取付けた。
【0070】
一方、変速機ユニット130については、主ケース131の左側部の上部を、左側第3・第4ハンガプレート37,44を介して車体フレーム20に取付けるとともに、主ケース131の右側部の上部を、右側第2・第3ハンガプレート39,48を介して車体フレーム20に取付けた。
なお、クロスメンバ32,33は、エンジン用ガード部材の役割を兼ねる。
【0071】
車体フレーム20をダイヤモンド型フレームとし、このダイヤモンド型フレームにV型エンジン100を懸架したので、エンジン100を車体フレーム20の一部とすることができる。このため、V型エンジン100の下にフレームの部材を通す必要がない。従って、V型エンジン100を最低地上高さまで下げることができる。この結果、図9に示すように、V型エンジン100のクランク軸103も下がるので、その分、低床73(図1参照)の上方のスペースを広くとることができる。さらには、V型エンジン100を下げることで、クランクケース104の上方に低床73を配置し、ステップ幅(低床73の幅)を狭くすることができる。
【0072】
このように本発明のレイアウトによれば、略90°又は90°を上回るバンク角θ1を有するV型エンジン100の搭載自由度を、より高めることができる。しかも、V型エンジン100を下げることで、低床式車両10の低重心化を図ることができる。
【0073】
図9を参照しつつ説明すると、アッパフレーム22,22は、V型エンジン100の後バンクの気筒102近傍まで後下方へ傾斜しつつ略直線状に延びた後に、傾斜度合いを緩やかにして、後輪用スイングアーム62のピボット(最終出力軸138の位置)近傍まで延びている。
【0074】
このようにして、アッパフレーム22,22を前後方向に概ね直線状に延すことができる。このため、アッパフレーム22,22の剛性をより高めることができ、この結果、車体フレーム20の剛性をより高めることができる。
このように、アッパフレーム22,22の前部は吸気系190の安定に寄与し、アッパフレーム22,22の後部は後輪63からの荷重を有効に受け止めるように機能することができる。従って、小型・軽量な構成によって車体フレーム20の剛性を有効に保持することができる。
【0075】
図15に示すように、車体フレーム20における左右の第1補強材24,24を外方へ湾曲するように形成したことにより、エアクリーナ56の容量を増すことができるとともに、エアクリーナ56を前方へ配置しても、ヘッドパイプ21に干渉したり、フロントフォーク51(図2参照)の最大旋回範囲で干渉しないようにすることができる。
【0076】
図15において、148は無段変速比可変用サーボモータであり、上記図11に示す変速用ギヤ147を介してベルト式無段変速機構141の無段変速比を制御するものである。図16において、121はエンジン冷却水用ポンプ(冷却水ポンプ)121である。さらに図16及び図17は、クランクケース104の右側面に変速機ユニット130を右上部のブラケット172及び図示せぬユニット内の取付け部分で取外し可能にボルトにて取付けたことを示す。
【0077】
ところで、上記図9に示すように、クランクケース104と変速機ユニット130とを、左側第3ハンガプレート37並びに連結部材173にて,上下で連結するとともに、これらの左側第3ハンガプレート37並びに連結部材173を、パワーユニット54の平面視略コ字状の開口側に設けたことを示す。左側第3ハンガプレート37は、連結部材の役割を果たす。
【0078】
詳しくは、クランクケース104の左後下部に連結部材173の前部を2個のボルト174,174で取付けるとともに、変速機ユニット130の左前下部に連結部材173の後部を1個のボルト175で取付けた。
また、クランクケース104の左後上部に左側第3ハンガプレート37(連結部材37)の前部を1個のボルト178で取付けるとともに、変速機ユニット130の左前上部に左側第3ハンガプレート37の後部を1個のボルト179で取付けた。
【0079】
このようにすることで、パワーユニット54の剛性を十分に確保することができる。従って、車体フレーム20の一部となるエンジン100並びに変速機ユニット130からなるパワーユニット54の剛性が高まるので、車体フレーム20の剛性をも、より高めることができる。
【0080】
さらには、上下の連結部材37,173をパワーユニット54の平面視略コ字状の開口側に設けることによって、開口部分を上下の連結部材37,173で補強することができるので、効率的に所望の剛性を確保することができ、剛性の確保に自由度がでるとともに、連結部材37,173が車体から突出しないので低床式車両10の外観性が高まる。
【0081】
さらに連結部材173は、上記図4〜図6に示すように、メインスタンド(スタンド部材)176を保持するように構成したものである。すなわち、正面視略門型のメインスタンド176の左上部を連結部材173の下端部に連結するとともに、メインスタンド176の右上部をステー177を介して変速機ユニット130の下部に連結することで、メインスタンド176を起立及び格納可能に取付けた。
【0082】
パワーユニット54の剛性を確保するための連結部材173が、メインスタンド176を保持する役割を兼ねるので、他の機能部品との兼用化を達成することができ、低床式車両10を、部品数が少なく軽量・小型の構成にすることができる。
【0083】
次に、吸気系190について説明する。図18は本発明に係る車体フレーム、V型エンジン、吸気系周りの左側面図であり、エアクリーナ56を断面して表した。図19は本発明に係るエアクリーナ並びに車体カバー周りの背面断面図、図20は本発明に係るエアクリーナの分解図、図21は本発明に係るエアクリーナの作用図である。
【0084】
上記図9及び図18を参照しつつ説明すると、V型エンジン100の上方に吸気連結管191,191並びにエアクリーナ56を含む吸気系190を配置し、エアクリーナ56の上部に、車両用付属品としての燃料タンク57を配置するスペースS2を設けたことが示されている。
詳しくは、V型エンジン100のVバンク間(気筒101,102間)に、ヘッドパイプ21に指向させて吸気系190を配置するとともに、この吸気系190の上部に燃料タンク57を配置した。
【0085】
より具体的に説明すると、V型エンジン100は、各気筒101,102をエアクリーナ56に連結する吸気連結管191,191をそれぞれ備える。各吸気連結管191,191は、それぞれスロットル弁192,192及び燃料噴射弁193,193を備えるとともに、エアクリーナ56内に延びる送気管(ファンネル)194,194を各々備える。送気管194,194は、吸気連結管191,191の各一端に接続し、側面視略ハ字状に配列したものである。これらの送気管194,194の間にフィルタエレメント206を配置した。
【0086】
図中、149はセルモータである。195はエアクリーナ56内の吸気温度を検出する吸気温度センサであり、燃料噴射弁193,193の噴射量を演算制御するときに、吸気温度で補正するために用いるものである。
【0087】
図18〜図20に示すように、エアクリーナ56は、低床式車両10の側方から保守・点検することが可能な構成である。エアクリーナ56の具体的な構成は、クリーナケース201と、クリーナケース201の下端開口202を塞ぐ脱着可能な底板203と、底板203からケース内に延びる2個の送気管194,194と、クリーナケース201の後上部に設けた点検口204を塞ぐ脱着可能な点検用リッド205と、クリーナケース201の内部に収納した筒状のフィルタエレメント206と、クリーナケース201の左側部又は右側部に設けたフィルタ点検孔207と、このフィルタ点検孔207を塞ぐ脱着可能な蓋部材208と、蓋部材208に設けた略L字状の吸気管209と、からなる。
底板203によって閉鎖されたクリーナケース201は、エンジン用吸気チャンバの機能を有する。
【0088】
蓋部材208は、吸気管209の一端を脱着可能に取付け、吸気管209に連通する連通管211を備え、連通管211に連通するフィルタエレメント206の一端を脱着可能に取付けたものである。このようにして、エアクリーナ56は、内部にフィルタエレメント206を備え、エアクリーナ56の側部の蓋部材208により脱着可能に構成することができる。
【0089】
エアクリーナ56を覆ったセンターカバー75(車体カバー70の一部)は、点検用孔75aを設けるとともに、この点検用孔75aを塞ぐ脱着可能な点検用リッド212を設けたものである。点検用リッド212は、蓋部材208に対向する位置にある。
【0090】
吸気管209から取り入れられた空気は、連通管211、フィルタエレメント206、クリーナケース201、送気管194,194、吸気連結管191,191を通って、図8に示すV型エンジン100の各気筒101,102に入る。
【0091】
フィルタエレメント206を保守・点検するには、図21に示すように、先ず、ビス213を外すとともに点検用リッド212の一端の係止溝212aを点検用孔75aの縁から引き抜く。これで、センターカバー75から点検用リッド212が外れる。
次に、ビス214を外して蓋部材208を点検用孔75aを通して外す。この結果、蓋部材208と共に、吸気管209及びフィルタエレメント206も外れる。
フィルタエレメント206を元に戻すには、上記取外し手順と逆手順にすればよい。
【0092】
以上の説明から明らかなように、エアクリーナ56を、低床式車両10の側方から保守・点検することが可能な構成にしたので、エアクリーナ56の上部から保守・点検をする必要はない。このため、エアクリーナ56の上部に有効利用可能な広いスペースを十分に確保することができる。
【0093】
さらには、エアクリーナ56の内部に備えたフィルタエレメント206を、エアクリーナ56の側部の蓋部材208により脱着可能に構成し、この蓋部材208に対向する点検用リッド212を、エアクリーナ56を覆った車体カバー70に設けたので、点検用リッド212を外した後に蓋部材208を外すことで、エアクリーナ56の側部からフィルタエレメント206を簡単に脱着することができる。このため、フィルタエレメント206の保守・点検作業が容易であり、作業性が高まる。
【0094】
さらにまた、図18に示すように、エアクリーナ56内に延びる複数の送気管194,194の間に、フィルタエレメント206を配置したので、エアクリーナ56の側部からフィルタエレメント206を脱着するときに、フィルタエレメント206が送気管194,194に干渉することはない。このため、干渉を防止するためにエアクリーナ56を大型にする必要もない。従って、エアクリーナ56の小型化を図ることができ、この結果、エアクリーナ56を低床式車両10に搭載する設計の自由度が高まる。
【0095】
また、エアクリーナの上部に、燃料タンク57(図9参照)等の車両用付属品を配置するスペースS2を設けたことで、スペースS2を有効利用して車両用付属品を容易に配置することができるとともに、荷重配分についても設計の自由度を高めることができる。例えば、低床式車両10の前部にエアクリーナ56並びに燃料タンク57を配置することにより、低床式車両10の重心を前に設定することができるので、前輪52と後輪63とにかかる荷重を、より適正に配分することができる。
【0096】
ところで、図18に示すように各々の吸気連結管191,191は、アッパフレーム22並びにダウンフレーム23にほぼ沿わせて配置したことを特徴とする。すなわち、前バンクの気筒101に接続された吸気連結管191をダウンフレーム23にほぼ沿わせて配置するとともに、後バンクの気筒102に接続された吸気連結管191をアッパフレーム22にほぼ沿わせて配置した。
【0097】
このため、各吸気連結管191,191を略直線状に構成することができる。略直線状の各吸気連結管191,191を採用することによって、各吸気連結管191,191から各気筒101,102へ、空気をより円滑に供給することができる。この結果、吸気効率をより向上させることができ、V型エンジン100の出力性能を、より高めることができる。
【0098】
しかも、このような構成をとることにより、車体フレーム20の内側のスペースを有効に使ってコンパクトに配置することができるので、設計の自由度を増すことができ、低床式車両10の外観性を高めることもできる。さらには、運転者が乗車するときに、車体フレーム20の跨ぎ易さを向上することができる。
【0099】
上述のように、各々の吸気連結管191,191の側面に対向するアッパフレーム22とダウンフレーム23との間は、トラス形状のフレーム構造である。このため、車体フレーム20のうち、各吸気連結管191,191の延在方向の剛性をより一層高めることができる。
従って、車体フレーム20自体の剛性を確保することができ、しかも、車体フレーム20内の吸気管等の車両用部品をしっかりと保持することができるとともに、車体フレーム20にこれらの車両用部品をガードする役割を持たせることができる。
【0100】
このトラス形状のフレーム構造に有する三角形状の第2の空間部28は、エアクリーナ56のフィルタエレメント206を出し入れすることのできる空間である。第2の空間部28を有するので、エアクリーナ56の側方からフィルタエレメント206を簡単に脱着することができる。このため、フィルタエレメント206の保守・点検作業が容易であり、作業性が高まる。しかも、エアクリーナ56の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0101】
なお、図19において、221,222はエレメント押え部である。図20において、223,223は送気管接続ジョイント、224,224は送気管接続フランジ、225・・・はビス、226,227はパッキンである。
【0102】
次に、V型エンジン100の排気系240について説明する。図22は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの左側面図、図23は本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの平面図である。
【0103】
上記図14〜図17も参照しつつ説明すると、V型エンジン100の排気系240は、後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241、前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242、第1の排気管241の後端と第2の排気管242の後端とを集合する集合管243、集合管243の後端に延長管244を介して接続した消音器245とからなる。消音器245は触媒246(図22参照)を内蔵し、後輪63の右上側に配置したものである。
【0104】
後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241は、後バンクの気筒102よりも後方(具体的には左後方)へ延出し、その後端を下方へ延して、パワーユニット54における平面視略コ字状の開口のスペースS4を通し、その下端を後方(具体的には右後方)へ延ばしてパワーユニット54の下を通し、その後端を集合管243を介して第2の排気管242に接続したものである。
【0105】
パワーユニット54の平面視略コ字状の開口部分のスペースS4に、V型エンジン100の後バンク102の気筒に接続された第1の排気管241を通したので、コ字状の開口部分のスペースS4を有効利用することができる。このため、第1の排気管241が車体から突出しないので、低床式車両10の外観性が高まる。
【0106】
前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242は、前バンクの気筒101から下方へ延ばし、その下端を右へ延ばし、その右端をパワーユニット54の右下部に沿って後方へ延ばし、その後端を集合管243に接続したものである。
【0107】
このように、排気管241,242は複数個有り、少なくとも1個の排気管をケース131の下方を通したものである。
すなわち、排気管は、前部の気筒101からケース131の下方を通って後方へ延びる前部気筒用の排気管242(第2の排気管242)と、後部の気筒102から下方へ延びた後にケース131の下方を通って後方へ延びる後部気筒用の排気管241(第1の排気管241)とからなる。これら前部・後部気筒用の各排気管241,242の後端を消音器245(排気用マフラ245)に接続するように構成したことを特徴とする。
【0108】
図14に示すように、第2の排気管242は、V型エンジン100の前面一側部(右側)を通り、V型エンジン100の他側部(左側)のエンジン前面のクランクケース104には、オイルフィルタ122及び又はオイルクーラ123を設けた。すなわち、クランクケース104の左半体における前部に、オイルフィルタ122やオイルクーラ123を備える。
【0109】
ところで、変速機ユニット130は、図11に示すように右側部に吸気口251を設けるとともに、ベルト式無段変速機構141のプーリ252にファン253を設け、外気を吸引して変速機ユニット130内を空冷する構成である。冷却した後の排風は、図14〜図16に示すように変速機ユニット130の後上部に備えた排風部材254によって大気に放出されることになる。
【0110】
排風部材254は、側面視で上下逆U字状のダクトであり、排風を第1・第2の排気管241,242に当てるように構成したものである。第1・第2の排気管241,242における排風が当たる部分は、第1の排気管241と第2の排気管242との集合部分、すなわち集合管243又はその近傍である。第1・第2の排気管241,242における排風が当たる部分に、上記排気センサ255を設けた。すなわち、集合管243の後部に排気センサ255を設けた。排風によって排気センサ255を冷却するので、排気センサ255の機能や性能を保持する上で有利となる。
【0111】
この排気センサ255は、排ガス中の酸素量を検出するものである。この検出データに基づいて、燃料噴射弁193,193(図18参照)の噴射量をフィードバック制御することができる。例えば、検出された酸素量が多いときには、空気供給量に対する燃料供給量の割合が小さいとして、燃料噴射弁193,193噴射量を増大させるように制御することになる。
【0112】
このように、第1・第2の排気管241,242における排風が当たる部分に排気センサ255を設けたので、排風によって排気センサ255を冷却することができる。排ガスによる排気センサ255の熱影響を軽減することができるので、排気センサ255の機能や性能を保持する上で有利となる。例えば、排気センサ255によって燃料噴射弁193,193(図18参照)を常に良好に噴射制御することができる。
【0113】
以上の排気系240をまとめて述べる。
パワーユニット54を平面視略コ字状に構成したので、V型エンジン100の後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241を、気筒102よりも後方へ延出し、その後端を下方へ延して平面視略コ字状の開口のスペースS4を通し、その下端を後方へ延ばし、その後端をV型エンジン100の前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242に接続することができる。
【0114】
このように、後バンクの気筒102に接続された第1の排気管241をパワーユニット54の上を通し、さらに平面視略コ字状の開口のスペースS4を通して下へ延ばすことで、このスペースS4を有効利用し、前バンクの気筒101に接続された第2の排気管242と接続することができる。従って、前後V型エンジンのための複数の排気管を効率良く配置することができる。
【0115】
さらには、変速機ユニット130の後部に備えた排風部材254の排風を、第1・第2の排気管241,242に当てるように構成したので、排風によって第1・第2の排気管241,242及び管内の排ガスを所望の温度に制御することができる。特に、変速機ユニット130を冷却した後の排風によって第1・第2の排気管241,242や排ガスを冷却するようにすることで、両方を同時に冷却することができ、別個の冷却手段を設ける必要がなく、低床式車両10の小型化を図ることができる。
【0116】
さらにまた、第1の排気管241と第2の排気管242との集合部分の近傍に、排風部材254の排風を当てるようにしたので、第1・第2の排気管241,242内の排ガスを一緒に冷却して温度制御することができるので、効率が良い。
【0117】
また、図14に示すように、V型エンジン100の前面の一側部には第2の排気管242を通すが、V型エンジン100の前面の他側部におけるクランクケース104には、第1・第2の排気管241,242を通さない。排気管241,242が通らない空いたスペースを有効利用して、V型エンジン100の前面の他側部におけるクランクケース104に、エンジン用オイル潤滑・冷却系の機能部品である、オイルフィルタ122やオイルクーラ123を設けることができるので、低床式車両10の小型化を図ることができる。
【0118】
次に、後輪用リヤクッション61の配置構成について説明する。
図24は本発明に係る低床式車両の概要図であり、シート58の下方に、シート58の前後長と略同等の前後長を有する収納ボックス59を備え、この収納ボックス59の下方に後輪用リヤクッション61を横置きにして配置したことを示す。図13を参照すると、リヤクッション61は、車体の略中心(車幅方向中心)に配置していることが判る。
【0119】
図25は本発明に係る収納ボックス並びに後輪用リヤクッション周りの左側面図、図26は図25の26−26線断面図である。
後輪用リヤクッション61は、アッパフレーム22の後部に沿って配置されている。詳しくは、アッパフレーム22のクッション用ブラケット34にリヤクッション61の一端部を連結し、スイングアーム62のクッション用ブラケット167にリヤクッション61の他端部を連結することで、アッパフレーム22の上に且つアッパフレーム22に略平行に、リヤクッション61を配置した。
【0120】
収納ボックス59は、その底面59aにリヤクッション61のための点検用リッド261を備える。リヤクッション61は、クッション性を調整するための調整部材61aを備える。収納ボックス59の底面59aは調整部材61aの真上にある。
リヤクッション61の調整時には、底面59aに弾性係合にて脱着可能に取付けられた点検用リッド261を外し、底面59aの点検用孔59bから工具262を差し込んで、調整部材61aを調整すればよい。調整作業が簡単である。
【0121】
以上のリヤクッション61の取付構造をまとめて述べる。
収納ボックス59の下方に後輪用リヤクッション61を横置きにして配置したので、収納ボックス59を前後に延しても、車体の略中心に在る後輪用リヤクッション61に干渉しない。従って、シート58の下方にシート58の前後長と略同等の前後長を有する収納ボックス59を配置することができる。このため、収納ボックス59の前後長を大きくして収納スペースを拡大することによって、長尺で径の大きい物を収納する収納スペースを容易に確保することができる。
【0122】
さらには、収納ボックス59の底面に後輪用リヤクッション61の点検用リッド261を備えたので、点検用リッド261を外してリヤクッション61の保守・点検をすることができる。収納ボックス59や車体カバー70(図1参照)を外すことなく、簡単に保守・点検作業をすることができるので、作業性が高まる。
【0123】
さらにまた、後輪用リヤクッション61を、ダイヤモンド型フレーム20のアッパフレーム22の後部に沿って配置したので、大きい剛性を有するアッパフレーム22によって、後輪用リヤクッション61の剛性を十分に確保することができるとともに、小型の懸架構造とすることができる。
【0124】
図27は本発明に係る収納ボックスの変形例図であり、上記図25に示す実施例に対応する。変形例の収納ボックス59は、底面59aに備えた点検用リッド263が、ヒンジ264にて開閉するヒンジ構造であることを特徴とする。他の構成については、上記図24〜図26と同じであり、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0125】
次に、消音器245(排気用マフラ245)の固定構造について説明する。
図28は本発明に係る消音器を固定した状態を示す低床式車両の右側面図、図29は本発明に係る消音器を固定した状態を示す右側面図、図30は本発明に係る変速機ユニットに対するマフラステーの取付構造を示す平面断面図である。
【0126】
上記図10及び図23も参照しつつ説明すると、低床式車両10は、変速機ユニット130のためのケース131の後部に排気用マフラ245(消音器245)を固定したことを特徴とする。詳しくは、排気用マフラ245は、ケース131にマフラステー247によって取付ける構成である。これらの排気用マフラ245及びマフラステー247は、ケース131の前後方向の略延長線上に延びている。
【0127】
より具体的に説明すると、主ケース131の右後部にステー取付部181,181を一体に形成し、このステー取付部181,181の右側面に略縦板状のマフラステー247の基端部247aを上下2個のボルト248,248にて取付け、マフラステー247をケース131の後方へ延ばし、その延びた先端部247bにマフラステー247を溶接、ボルト止め等にて固定したものである。
【0128】
以上の排気用マフラ245の固定構造をまとめて述べる。
変速機ユニット130のケース131の後部に排気用マフラ245を固定したので、エンジン100に変速機ユニット130を介して排気用マフラ245を組付けて、一体化する(ユニットにする)ことができる。排気用マフラ245を一体的に組付けたエンジン100を、車体フレーム20に取付けることができるので、組付け作業性を高めることができる。従って、低床式車両10の組付け作業性を高めることができる。しかも、ケース131によって、排気用マフラ245を固定するための固定部を兼ねることができる。従って、固定するための部材を削減することができるとともに、排気用マフラ245の組付け性を高めることができる。さらには、排気管241,242の長さを確保することができる。
【0129】
さらにまた、車体中央に運転者が乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部78を設け、この跨ぎ部78の下にエンジン100を設け、このエンジン100に変速機ユニット130を備えるようにしたので、エンジン100並びに変速機ユニット130を車体中央の低位に配置することができる。また、ケース131の後部に排気用マフラ245を固定したので、排気用マフラ245を車体後部の低位に配置することができる。このようにして、簡単な構成でエンジン100、変速機ユニット130並びに排気用マフラ245を低位に配置することにより、低床式車両10の低重心化を図るとともに、重量バランスを図ることができる。
【0130】
さらには、車体フレーム20をダイヤモンド型フレームとし、このダイヤモンド型フレームにエンジン100を懸架するようにしたので、排気用マフラ245が一体的に組付けられた状態のエンジン100を、車体フレーム20の一部とすることができる。従って、低床式車両10の組付け作業性を高めることができる。
さらには、エンジン100を車体フレーム20の一部とすることができるので、エンジン100の下にフレームの部材を通す必要がない。従って、エンジン100を最低地上高さまで下げることができる。このようにして、エンジン100の搭載自由度をより高めることができる。しかも、エンジン100を下げることで、低床式車両10の低重心化を図ることができる。
【0131】
さらにまた、車幅中心線CL(図23参照)に対し、ケース131と左右反対側に動力伝達機構150を配置したので、ケース131に固定された右の排気用マフラ245と、左の動力伝達機構150とを、左右に振り分けることができる。従って、排気用マフラ245並びに排気管241,242の配置の自由度を増すことができるとともに、低床式車両10の左右の重量バランスを高めることができる。
【0132】
また、排気用マフラ245を、ケース131の前後方向の略延長線上に延ばしたので、互いに組付けられた状態の前側のケース131と後側の排気用マフラ245とを、一体感や薄型感をもたせた、軽快な感じの外観にすることができる。従って、低床式車両10の外観性を高めることができる。
【0133】
また、ケース131に排気用マフラ245をマフラステー247で取付け、このマフラステー247をケース131の前後方向の略延長線上に延ばすようにしたので、前側のケース131に後側の排気用マフラ245をマフラステー247によって取付けた構成のユニットを、一体感や薄型感をもたせた、軽快な感じの外観にすることができる。従って、低床式車両10の外観性を高めることができる。
【0134】
複数個の排気管241,242のうち、少なくとも1個の排気管をケース131の下方の空きスペースに通したので、ケース131の下の空きスペースを有効活用することができる。さらには、少なくとも1個の排気管を低い位置に配置できるので、低床式車両10の低重心化を図ることができ、この結果、低床式車両10の走行性をより高めることができる。
【0135】
前後V型エンジン100の前部の気筒101に接続された前部気筒用の排気管242を、ケース131の下方を通して後方へ延ばし、また、後部の気筒102に接続された後部気筒用の排気管241を、下方へ延ばした後にケース131の下方を通して後方へ延ばし、これら前部・後部気筒用の各排気管241,242の後端を排気用マフラ245に接続したので、ケース131の下の空きスペースを有効活用することができる。しかも、低床式車両10の低重心化を図ることができ、この結果、低床式車両10の走行性をより高めることができる。
【0136】
図31は本発明に係る消音器の固定構造の変形例図であり、上記図29に示す実施例に対応する。変形例の消音器245の固定構造は、マフラステー247の一部、すなわち基端部247aの一部をケース131の後部の近傍へ延ばし、その端部247cを車体フレーム20のアッパフレーム22にボルト248にて取付けたことを特徴とする。他の構成については、上記図10、図23、図28〜図30と同じであり、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0137】
この変形例によれば、マフラステー247の一部をケース131の後部の近傍へ延ばし、その端部を車体フレーム20に取付けるようにしたので、排気用マフラ245を小型のマフラステー247によって、ケース131と車体フレーム20の両方に取付けることができる。従って、排気用マフラ245を一層堅固に取付けることができる。しかも、ケース131に取付けるマフラステー247が、車体フレーム20に取付ける取付部材を兼ねるので、取付部材の数量が増すことはない。
【0138】
次に、エンジン100をラジエータ71で冷却するエンジン冷却装置270の構成について説明する。図32は本発明に係るエンジン冷却装置の左側面図、図33は本発明に係るエンジン冷却装置の平面断面図である。
【0139】
上記図1、図3及び図24も参照しつつ説明すると、低床式車両10は、車体カバー70におけるセンターカバー75の左右両側部に、且つ、前部の気筒101と後部の気筒102との間の位置に、エンジン用ラジエータ55からの排風を車体外方へ排出する排風口271,271を設けたことを特徴とする。上述のように、後部の気筒102は跨ぎ部78内に臨む。
排風口271,271は、排風が跨ぎ部78の外面に沿って後方へ流れるように向けた、側面視略矩形状の開口であり、それぞれ図33に示す複数の整流板(ルーバ)272・・・を備える。
【0140】
図34(a)〜(c)は本発明に係る排風口並びに整流板の構成図である。(a)は左の排風口271並びに整流板272・・・を左側方から見た構成を示し、図32に対応する。(b)は、左の排風口271並びに整流板272・・・を上方から見た断面構成を示し、図33に対応する。(c)は整流板272の斜視図である。
【0141】
この図34は、複数の整流板272・・・が、任意に角度設定が可能な可変式整流板であることを示す。詳しく説明すると、これらの整流板272・・・は、排風口271を開閉可能に取付けた上下に細長い平板であって、上端並びに下端に互いに同心に配置された支承ピン273,273を一体的に備える。
支承ピン273,273は、排風口271の縁の位置で、ラバー製ブッシュ274,274を介して軸受275,275にて回転可能に支承された軸部材である。このような支承ピン273,273は、ラバー製ブッシュ274,274に堅い嵌合にて回転可能に取付けることになる。このため、支承ピン273,273とラバー製ブッシュ274,274との摩擦抵抗は、整流板272を手でやや強めの力によって回転させ得る程度の大きさに設定される。軸受275,275はセンターカバー75に取付けた部材である。276,276は排風口271の縁に設けた排風ガイド部である。
【0142】
以上のエンジン冷却装置270をまとめて述べる。
低床式車両10を前方へ走行させることにより、走行風Fcは車体カバー70内に入ってラジエータ55で熱交換する。
熱交換した後の排風Fhは、車体カバー70内を後方へ流れつつ、エアクリーナ56、吸気連結管191,191並びにエンジン100の前後の気筒101,102を冷却するとともに、排風口271,271から車体外方へ排出される。排出された排風Fhは、跨ぎ部78の外面に沿って後方へ流れて、運転者Mnの脚部Lgを暖めた後に、後方へ流れる。
【0143】
車体カバー70内の前部にラジエータ55を設けるとともに、車体カバー70の左右両側部に且つ前部の気筒101と後部の気筒102との間の位置に、ラジエータ55からの排風を車体外方へ排出する排風口271,271を設けたことにより、ラジエータ55で熱交換した後の排風Fhが、車体カバー70内を後方へ流れつつエンジン100の前後の気筒101,102を冷却することができる。従って、水冷エンジン100が車体カバー70で覆われているにもかかわらず、水冷エンジン100の温度を安定させることができる。
【0144】
さらには、シート58の前で左右の低床73,73間に、運転者Mnが乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部78を設け、この跨ぎ部78の下に水冷エンジン100を設けたので、水冷エンジン100を車体中央CLに配置することができる。一方、車体カバー70内の前部にエンジン用ラジエータ55を設けたので、ラジエータ55を走行風Fcによる冷却効率の高い車体前方に配置することができる。このため、ラジエータ55から水冷エンジン100までの配管を短くできるので、配管の自由度を高めることができる。しかも、水冷エンジン100を車体中央CLに配置したので、水冷エンジン100を前後V型エンジン100のような大型で大重量のエンジンとしたにもかかわらず、低床式車両10の前後の重量バランスを、より高めることができる。
【0145】
しかも、車体中央CLに配置された水冷エンジン100における、前部の気筒101と後部の気筒102との間の位置で、車体カバー70の左右両側部に排風口271,271を設けたので、車体カバー70内の前部に配置されたラジエータ55から排風口271,271までの距離を、比較的大きくとることができる。また、排風口271,271から車体外方へ排出された排風Fhは、跨ぎ部78に沿って後方へ流れる走行風Fcと混合させることができる。このようなことから、排風口271,271から排出された排風Fhの風量や温度を最適にする流路の調整がやり易くなる。
【0146】
さらにまた、後部の気筒102を跨ぎ部78内に臨ませたので、跨ぎ部78内を流れる排風Fhによって後部の気筒102を効率良く冷却することができる。さらには、排風口271,271を、排風Fhが跨ぎ部78の外面に沿って後方へ流れるように向けたので、ラジエータ55で熱交換した後の排風Fhによって、運転者Mnの脚部Lgを効率良く暖めることができる。
【0147】
また、排風口271,271に、任意に角度設定が可能な可変式整流板272・・・を備えたので、可変式整流板272・・・の角度を調整することにより、排風口271,271から排出される排風Fhの向き並びに風量を任意に調整することができる。このため、運転者Mnの好みに応じて、脚部Lgの方向へ流れる排風Fhの向きや風量を調整することで、脚部Lg周りの暖かさを調整することができる。
【0148】
なお、上記本発明の実施の形態において、低床式車両10はスクータ型自動二輪車に限らず、他の自動二輪車、三輪車、四輪車等であってもよい。
また、可変式整流板272・・・の構成は任意であり、例えば全ての可変式整流板272・・・が同時に変位する構成であってもよい。
【0149】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、車体カバー内の前部にエンジン用ラジエータを設けるとともに、車体カバーの左右両側部に且つ前部の気筒と後部の気筒との間の位置に、エンジン用ラジエータからの排風を車体外方へ排出する排風口を設けたことにより、ラジエータで熱交換した後の排風が、車体カバー内を後方へ流れつつエンジンの前後の気筒を冷却することができる。従って、水冷エンジンが車体カバーで覆われているにもかかわらず、水冷エンジンの温度を安定させることができる。
【0150】
さらに請求項1は、シートの前で左右の低床間に、運転者が乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部を設け、この跨ぎ部の下に水冷エンジンを設けたので、水冷エンジンを車体中央に配置することができる。一方、車体カバー内の前部にエンジン用ラジエータを設けたので、ラジエータを走行風による冷却効率の高い車体前方に配置することができる。このため、ラジエータから水冷エンジンまでの配管を短くできるので、配管の自由度を高めることができる。しかも、水冷エンジンを車体中央に配置したので、水冷エンジンを前後V型エンジンのような大型で大重量のエンジンとしたにもかかわらず、低床式車両の前後の重量バランスを、より高めることができる。
【0151】
しかも、車体中央に配置された水冷エンジンにおける、前部の気筒と後部の気筒との間の位置で、車体カバーの左右両側部に排風口を設けたので、車体カバー内の前部に配置されたエンジン用ラジエータから排風口までの距離を、比較的大きくとることができる。また、排風口から車体外方へ排出された排風は走行風と混合させることができる。このようなことから、排風口から排出された排風の風量や温度を最適にする流路の調整がやり易くなる。
【0152】
請求項2は、後部の気筒を跨ぎ部内に臨ませたので、跨ぎ部内を流れる排風によって後部の気筒を効率良く冷却することができる。
さらには、排風口を、排風が跨ぎ部の外面に沿って後方へ流れるように向けたので、ラジエータで熱交換した後の排風によって、運転者の脚部を効率良く暖めることができる。
【0153】
請求項3は、排風口に、任意に角度設定が可能な可変式整流板を備えたので、可変式整流板の角度を調整することにより、排風口から排出される排風の向き並びに風量を任意に調整することができる。このため、運転者の好みに応じて、脚部の方向へ流れる排風の向きや風量を調整することで、脚部周りの暖かさを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る低床式車両の左側面図(その1)
【図2】本発明に係る低床式車両の左側面図(その2)
【図3】本発明に係る低床式車両の平面図
【図4】本発明に係る車体フレームの左側面図
【図5】本発明に係る車体フレームの平面図
【図6】本発明に係る車体フレームの正面図
【図7】本発明に係る車体フレームを左側方から見た斜視図
【図8】本発明に係る車体フレームを右側方から見た斜視図
【図9】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、エアクリーナ並びに燃料タンク周りの左側面図
【図10】本発明に係るパワーユニットの断面図
【図11】本発明に係るパワーユニットの前半部の断面図
【図12】本発明に係るパワーユニットの後半部の断面図
【図13】本発明に係るパワーユニットの後部並びに後輪用スイングアーム周りの平面図
【図14】本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを左前方から見た斜視図
【図15】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを左後方から見た斜視図
【図16】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット並びにエアクリーナ周りを右前方から見た斜視図
【図17】本発明に係る車体フレーム並びにパワーユニット周りを右後方から見た斜視図
【図18】本発明に係る車体フレーム、V型エンジン、吸気系周りの左側面図
【図19】本発明に係るエアクリーナ並びに車体カバー周りの背面断面図
【図20】本発明に係るエアクリーナの分解図
【図21】本発明に係るエアクリーナの作用図
【図22】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの左側面図
【図23】本発明に係る車体フレーム、パワーユニット、排気系周りの平面図
【図24】本発明に係る低床式車両の概要図
【図25】本発明に係る収納ボックス並びに後輪用リヤクッション周りの左側面図
【図26】図25の26−26線断面図
【図27】本発明に係る収納ボックスの変形例図
【図28】本発明に係る消音器を固定した状態を示す低床式車両の右側面図
【図29】本発明に係る消音器を固定した状態を示す右側面図
【図30】本発明に係る変速機ユニットに対するマフラステーの取付構造を示す平面断面図
【図31】本発明に係る消音器の固定構造の変形例図
【図32】本発明に係るエンジン冷却装置の左側面図
【図33】本発明に係るエンジン冷却装置の平面断面図
【図34】本発明に係る排風口並びに整流板の構成図
【符号の説明】
10…低床式車両、20…車体(車体フレーム)、55…エンジン用ラジエータ、58…シート、70…車体カバー、73…低床、78…跨ぎ部、100…水冷エンジン(前後V型エンジン)、101…前部の気筒、102…後部の気筒、270…エンジン冷却装置、271…排風口、272…可変式整流板。
Claims (3)
- 車体を車体カバーで覆ったスクータ型自動二・三輪車等の低床式車両において、この低床式車両は、シートの前にこのシートに座った運転者が足を載せる左右の低床を設け、これら左右の低床間に運転者が乗車時に跨ぐことができる高さの跨ぎ部を設け、この跨ぎ部の下に水冷エンジンを設け、この水冷エンジンを前部の気筒並びに後部の気筒を有する前後V型エンジンとし、前記車体カバー内の前部にエンジン用ラジエータを設けるとともに、前記車体カバーの左右両側部に且つ前記前部の気筒と前記後部の気筒との間の位置に、前記エンジン用ラジエータからの排風を車体外方へ排出する排風口を設けたことを特徴とする低床式車両のエンジン冷却装置。
- 前記後部の気筒は前記跨ぎ部内に臨み、前記排風口は、前記排風が前記跨ぎ部の外面に沿って後方へ流れるように向けた開口であることを特徴とした請求項1記載の低床式車両のエンジン冷却装置。
- 前記排風口に、任意に角度設定が可能な可変式整流板を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の低床式車両のエンジン冷却装置。
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