JP2004285416A - 打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.15〜0.4%、Si≦0.5%、Mn≦1.0%、P≦0.05%を含有し残部実質的にFeから成り、板面硬度Hvが170〜280、幅方向の硬度差の最大値ΔHvが20以下である打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板であり、熱間圧延する際に、必要に応じて、粗バーエッジ部を加熱した後に仕上圧延を行い、さらに仕上圧延後のランナウト冷却中の鋼板エッジ部の冷却条件を制御して巻取ることにより、フェライト分率Vfが50%以下、幅方向のフェライト分率差の最大値ΔVfが30%以下であるミクロ組織を有する熱延鋼板とし、その後、酸洗、冷間圧延を行い製造する。あるいは、必要に応じて、酸洗後に600〜680℃の温度で20時間以上の焼鈍を行う。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のトランスミッション部品としてのギアやプレート等の素材として好適な薄鋼板及びその製造方法に関するものであり、特に冷間圧延ままで打抜き後の寸法精度に優れ、しかも、打抜き部品の硬度確保のための熱処理工程が不要である打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のトランスミッション部品として使用されるギヤやプレート等は、部品メーカーにおいて鋼板を所定の形状に打抜いた後、所望の硬度に調整するために打抜き後の部品に焼入れや時効析出等の硬化を目的とした熱処理を施すことによって製造される。
【0003】
しかし、近年、製造コストの削減を目的として、これらの熱処理の代わりに、冷間圧延による硬度確保が可能な鋼板の開発が要求されている。ところが、このような冷間圧延による硬度確保では、打抜き後の部品に大きな反りが発生する場合があった。そのため、打抜き後の部品にプレステンパーと呼ばれる熱処理が必要となり、さらにこのプレステンパーを行っても、部品の形状矯正が困難な場合があった。
【0004】
このようなことから、冷間圧延ままで打抜き後の部品の平坦度に優れる鋼板の開発が強く望まれていた。
【0005】
自動車のトランスミッション部品としてのギヤやプレート等の、打抜き後の硬度確保のための熱処理を省略する従来技術として、特許文献1に熱延板組織を硬質なベイニティックフェライトまたはベイナイトを主相とする精密打抜用高強度鋼板の製造方法が開示されている。
【0006】
また、部品の寸法精度を確保しながら強度を向上させる技術に関しては、特許文献2に、熱歪が大きくなる焼入れ処理の代わりにCuやVを添加して高強度化する高炭素鋼板およびその製造方法が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−295927号公報
【特許文献2】
特開平4−254546号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1は、次のような問題点を有している。即ち、特許文献1は、冷間圧延後の精密打抜き性、即ち、ダレやせん断面比率等の打抜き面の形態制御に関するものであり、打抜き部品の平坦度に関しては何ら言及されていない。また、ベイナイト等の低温変態相により強度を確保しているために、熱延時の巻取温度にバラツキが生じた場合、コイル長手方向、あるいは、広幅材ではコイル幅方向の材質変動が大きくなって、冷間圧延後の打抜き部品の寸法精度にバラツキが生じるという問題点を有している。
【0009】
特許文献2は、CuやVを時効析出させるための焼戻し処理温度での熱処理が必要であり、打抜部品の硬度確保のための熱処理を省略することができないという問題点を有している。
【0010】
このように、薄鋼板の打抜き後の部品の平坦度に優れ、しかも、打抜き部品の硬度確保のための熱処理工程が不要な鋼板およびその製造方法は、未だ提案されていないのが現状である。
【0011】
従って、この発明の目的は、自動車のトランスミッション部品としてのギヤやプレート等の素材として、打抜き部品の平坦度に優れ、しかも、打抜き部品の硬度確保のための熱処理工程が不要な鋼板およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた。その結果、次のような知見を得た。
【0013】
打抜き後の平坦度の劣化は、鋼板材質の不均一性による内部残留応力の発生に起因する。即ち、熱延板のコイル幅方向において大きな硬度差が生じる場合、冷間圧延後にも硬度差を生じるため、幅方向位置による残留応力の差異が生じ、この結果、打抜き部品の平坦度が劣化する。そこで、打抜き部品の平坦度の劣化を防止するためには、以下の点が重要であることを知見した。
▲1▼ 冷間圧延ままでのコイル幅方向の材質を均一にする、とくに硬度差を小さくする。
▲2▼ 冷間圧延の母材となる熱延鋼板の幅方向の材質を均一にする、とくに、熱延鋼板の幅方向の硬度差を小さくする。これにより、さらに優れた打抜き後の平坦度が得られる。
▲3▼ 冷間圧延前に焼鈍を行い、熱延板の残留応力低減および材質均一化をはかる。これによって極めて優れた打抜き後の平坦度が得られる。
▲4▼ 冷間圧延の母材となる熱延鋼板の幅方向のミクロ組織を均一にする、とくに、熱延鋼板の幅方向のフェライト分率の差を小さくする。これにより、さらに優れた打抜き後の平坦度が得られる。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0015】
(1)質量%で、C:0.15〜0.4%、Si≦0.5%、Mn≦1.0%、P≦0.05%を含有し残部実質的にFeから成り、鋼板板面硬度Hvが170〜280であり、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvが20以下であることを特徴とする打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
【0016】
(2)鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvが15以下であることを特徴とする請求項1記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
【0017】
(3)鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvが20以下である熱延鋼板を冷間圧延して製造される(1)または(2)に記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
【0018】
(4)フェライト分率Vfが50%以下であり、かつ、鋼板幅方向各位置におけるフェライト分率差の最大値ΔVfが30%以下であるミクロ組織を有する熱延鋼板を冷間圧延して製造される(2)に記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
【0019】
(5)質量%で、C:0.15〜0.4%、Si≦0.5%、Mn≦1.0%、P≦0.05%を含有し残部実質的にFeから成る組成を有する鋼を熱間圧延し、熱間圧延後の鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを20以下とし、さらに酸洗、冷間圧延し、冷間圧延後の鋼板板面硬度Hvを170〜280、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを20以下とすることを特徴とする打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
【0020】
(6)酸洗後に、600〜680℃の温度で20時間以上の焼鈍を行った後に冷間圧延し、冷間圧延後の鋼板板面硬度Hvを170〜280、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを15以下とすることを特徴とする(5)に記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
【0021】
(7)質量%で、C:0.15〜0.4%、Si≦0.5%、Mn≦1.0%、P≦0.05%を含有し残部実質的にFeから成る組成を有する鋼を熱間圧延する際に、粗圧延後の粗バーのエッジ部を加熱した後に仕上圧延を行い、その後、ランナウト冷却中の鋼板エッジ部の冷却条件を制御して巻取ることにより、フェライト分率Vfが50%以下、鋼板幅方向各位置におけるフェライト分率差の最大値ΔVfが30%以下であるミクロ組織を有する熱延鋼板とし、該熱延鋼板を酸洗、冷間圧延し、冷間圧延後の鋼板板面硬度Hvを170〜280、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを15以下としたことを特徴とする打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
【0022】
(8)酸洗後に、600〜680℃の温度で20時間以上の焼鈍を行うことを特徴とする(7)に記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の鋼板の成分組成、硬度、ミクロ組織、製造条件の限定理由について説明する。なお、%は質量%を示す。
【0024】
(1)成分組成
C:0.15〜0.4%
Cは、自動車のトランスミッション部品としてのギアやプレート等に必要な強度を付与するとともに、打抜き端面のバリの抑制作用を有する適量のカーバイドを得るために、少なくとも0.15%は必要である。しかし、0.4%を超えて添加すると、パーライト分率が高くなるため熱延での冷却ムラによる熱延鋼板の幅方向の硬度差が大きくなり、冷延後の打抜き平坦度が劣化する。従って、この発明においては、Cの含有量を0.15〜0.4%の範囲に限定した。
【0025】
Si:0.5%以下
Siは固溶強化により強度を上昇させる元素であり、適量の添加により熱延鋼板の強度を上昇させ、所望の強度を得るために必要となる冷間圧延率を低減することができる。その結果、冷間圧延ままでの打抜き後の寸法精度が改善される。しかし、Siは軟質なポリゴナルフェライトを生成させるため、0.5%を超える過剰な添加を行うと、熱延で冷却ムラが生じた場合にポリゴナルフェライトの生成量に起因してコイル幅方向で硬度差が大きくなる。また、ポリゴナルフェライトはバリ発生の原因となるため、Siの過剰な添加は製品の品質を低下させる。従って、Si量は0.5%以下とする。
【0026】
Mn:1.0%以下
Mnは固溶強化により強度を上昇させる元素であり、適量の添加により熱延鋼板の強度を上昇させ、所望の強度を得るために必要となる冷間圧延率を低減することができる。その結果、冷間圧延ままでの打抜き後の寸法精度が改善される。しかし、1.0%を超える過剰なMnは、偏析帯であるマンガンバンドを生成させ材質の不均一化をもたらし、打抜き後の寸法精度を低下させる。従って、Mn量は1.0%以下とする。
【0027】
P:0.05%以下
Pは固溶強化により強度を上昇させる元素であり、適量の添加により熱延鋼板の強度を上昇させ、所望の強度を得るために必要となる冷間圧延率を低減することができる。その結果、冷間圧延ままでの打抜き後の寸法精度が改善される。しかし、0.05%を超える過剰なP添加は軟質なポリゴナルフェライトを生成させるため、熱延で冷却ムラが生じた場合にポリゴナルフェライトの生成量に起因してコイル幅方向で硬度差が大きくなる。また、ポリゴナルフェライトはバリ発生の原因となるため過剰な添加は製品の品質を低下させる。さらに粒界脆化も招く。従って、P量は0.05%以下とする。
【0028】
なお、この発明における鋼には、強度確保のために0.1%以下のNb、0.5%以下のTi、0.1%以下のVを、延性向上のために0.01%以下のCaを添加しても良い。また、耐食性向上のためにMo、Ni、Cuをそれぞれ1%を超えない範囲で添加しても良い。
【0029】
(2)鋼板硬度
ギアやプレート等の自動車のトランスミッション部品に適用しする場合には鋼板硬度はとくに重要であり、冷間圧延ままの鋼板の板面硬度Hvが170未満の場合には十分な耐磨耗性が得られず、一方、Hvが280を超えるような場合には、逆に相手材の損耗を増大させる。そのため、鋼板板面硬度Hvを、170以上、280以下とする。さらに、より好ましくは、200以上、270以下である。
鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvが20を超えると鋼板の残留応力に不均一が生じ、打抜き後の平坦度が低下するため、ΔHvは20以下とする。また、優れた平坦度を得るためには、ΔHvを15以下とするのが好ましい。
【0030】
熱延鋼板の幅方向位置による板面硬度差が大きい場合には、冷間圧延後の硬度差も著しく大きくなるため、残留応力に差異が生じ、打抜き部品の優れた平坦度が得られない。従って、熱延鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを20以下とすることが望ましい。また、極めて優れた寸法精度を得るためには、最大硬度差ΔHvは15以下が好ましい。
【0031】
(3)ミクロ組織
熱延鋼板のミクロ組織において、フェライト分率Vfが50%を超えると、冷間圧延後の打抜き時に二次せん断面(バリ)が発生し、打抜き性が低下する。また、鋼板幅方向各位置におけるフェライト分率差の最大値ΔVfが30%を超える場合、冷間圧延時に歪みの伝播が不均一となり、残留応力の差異が生じ、打抜き後の寸法精度が劣化する。そのため、打抜き部品の品質を確保するためには、フェライト分率Vfが50%以下で、かつ、鋼板幅方向各位置におけるフェライト分率差の最大値ΔVfを30%以下とすることが望ましい。
【0032】
(4)製造条件
次に、本発明鋼板の製造方法について説明する。本発明鋼板は、本発明に規定する成分組成の鋼スラブを(A)熱間圧延−酸洗−冷間圧延−調質圧延、(B)熱間圧延−酸洗−球状化焼鈍−冷間圧延−調質圧延のいずれかの工程を経て製造される。本発明鋼板を製造する場合、熱延プロセスはスラブ加熱後圧延する方法、連続鋳造後短時間の加熱処理を施してあるいは該加熱工程を省略して直ちに圧延する方法のいずれでもよいが、優れた表面品質を付与するためには、一次スケールのみならず熱間圧延時に生成する二次スケールについても十分に除去するのが好ましい。なお、熱間圧延中においては、バーヒーターにより加熱を行ってもよい。
【0033】
粗バーのエッジ部加熱
熱延鋼板の幅方向の組織の均一化のために、エッジヒーターにより粗バーエッジ部を加熱し、エッジ部の過冷却を抑制することが望ましい。このときの熱延板巻取り時の幅方向の最大温度差を40℃以内とすることにより、幅方向の組織均一化の効果が得られる。
【0034】
ランナウト冷却中の中間温度及び鋼板エッジ部の冷却制御
熱延鋼板の幅方向の組織の均一化のために、ランナウト冷却中の中間温度を制御することが望ましい。中間温度が630℃超えの場合には、幅方向各位置のフェライト分率が不均一となり硬度分布も不均一となりやすいため、ランナウト冷却中の中間温度は630℃以下とすることが望ましい。さらに,ランナウト冷却中の鋼板エッジ部の水乗りを防止し、エッジ部の過冷却を抑制することが望ましい。このときの熱延板巻取り時の幅方向の最大温度差を40℃以内とすることにより、幅方向の組織均一化の効果が得られる。エッジ部の水乗り防止は、エッジ部の水冷ノズルの調整あるいは遮蔽板により水量を調整する。
【0035】
巻取温度
熱延鋼板の幅方向の組織の均一化のために、熱延時の巻取温度を制御することが望ましい。巻取温度が500℃未満の場合には、ランナウト上での冷却が大きく、熱延板の形状が劣化し幅方向で不均一な残留応力が発生し、打抜き後の寸法精度が劣化しやすいため、500℃以上とすることが望ましい。一方、フェライト分率の上昇抑制と酸洗による脱スケール性の観点から、巻取温度は700℃以下とすることが好ましい。
【0036】
焼鈍:600℃〜680℃、20時間以上
熱延板を酸洗後、焼鈍を行うことにより冷間圧延後の打抜き部品の平坦度が更に向上する。その効果は、600℃以上で得られるが、680℃を超えると軟質化しすぎるため冷間圧延率を高くせざるを得なくなり、逆に打抜き後の寸法精度は劣化する。また、この効果を得るには20時間以上の焼鈍が必要となる。従って、とくに優れた平坦度が求められる場合には、酸洗後に、600〜680℃の温度で20時間以上の焼鈍を行うことが望ましい。
【0037】
冷間圧延
冷間圧延時の圧延率は、70%を超えるような高い圧延率の場合、圧延負荷が高くなりすぎるため生産性を低下させる。このため、冷間圧延率は70%以下とすることが望ましい。このときの冷間圧延はタンデム圧延、リバース圧延のいずれでも良い。
【0038】
【実施例】
実施例1
表1に示す鋼板1から鋼板8の化学成分組成を有する鋼を溶製し、次いで表2に示した製造条件に従って熱間圧延−冷間圧延あるいは熱間圧延−焼鈍−冷間圧延を行って板幅1000mm、板厚1.80mmの冷延薄鋼板を製造した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
このようにして製造した熱延鋼板および冷延鋼板の幅方向3ヶ所の位置(1/4w、1/2w、3/4w、ここでwは鋼板全幅)で板面硬度Hvを測定し、硬度差を求めた。また、このようにして得られた冷延鋼板をレベラーにて形状矯正を行った後、この薄鋼板から直径89mmの円盤状試験片を打抜き(クリアランス:12%)、試験片の平坦度およびバリ発生の有無について評価した。
【0042】
平坦度は、硬度測定と同じ位置よりサンプルを採取し、図1に示す最大反り高さ(幅方向最大高さ)を測定し、評価した。これらの結果を表3に示す。比較材として、現行のS35CMを用いた同様の試験も実施した。
【0043】
【表3】
【0044】
表3から明らかなように、本発明法による鋼板1〜3の試験片において、鋼板幅方向の硬度差ΔHvが20以下で、現行S35CMより反り高さが小さくなり、またバリの発生もなく優れた品質が得られることが明らかとなった。また、冷間圧延前に焼鈍を実施することにより、極めて優れた寸法精度が得られることが明らかとなった。
【0045】
一方、製造条件を同一とした場合でも、Cが低い鋼板4では最終硬度が低くかつバリが発生した。また、C、Mnが高い鋼板5では熱延板、冷延板ともに幅方向の硬度差ΔHvが20を超えてしまい寸法精度に劣る。Si,Pの高い鋼板7では、幅方向の硬度差ΔHvが20を超えるとともに、バリが発生し材質が劣化した。さらに、鋼板1〜3においても幅方向の硬度差ΔHvが20を超える場合、寸法精度に劣ることが分った。
【0046】
実施例2
実施例1と同様に、表1に示す鋼板1から鋼板8の化学成分組成を有する鋼を溶製し、次いで表4に示した製造条件に従って熱間圧延、冷間圧延あるいは熱間圧延、焼鈍、冷間圧延を行って板幅1000mm、板厚1.80mmの冷延薄鋼板を製造した。
【0047】
【表4】
【0048】
このようにして製造した熱延鋼板について幅方向(1/4w、1/2w、3/4w、w:鋼板全幅)でのミクロ組織調査、冷延板については幅方向(1/4w、1/2w、3/4w、w:鋼板全幅)での硬度および硬度差を測定するとともに冷延鋼板をレベラーにて形状矯正を行った。次いで、この薄鋼板から直径89mmの円盤状試験片を打抜き(クリアランス:12%)、試験片の平坦度およびバリ発生の有無について評価した。
【0049】
ミクロ組織観察は、サンプルの板厚断面を研磨・腐食後、走査型電子顕微鏡にてミクロ組織を撮影し、0.01mm2の範囲でマイクロアナライザーを用いてフェライト分率Vfの測定を行った。
【0050】
平坦度は、硬度測定と同じ位置よりサンプルを採取し、図1に示す最大反り高さ(幅方向最大高さ)で評価した。これらの結果を表5に示す。比較材として、現行のS35CMを用いて同様の試験を実施した。
【0051】
【表5】
【0052】
表5から明らかなように、本発明法による鋼板1〜3の試験片において、熱延板の幅方向のフェライト分率Vfが50%以下で、最大差ΔVfが30%以下で、かつ鋼板幅方向の硬度差ΔHvが15以下となり、現行S35CMより極めて反り高さが小さくなるとともに、バリの発生もなく優れた品質が得られることが明らかとなった。また、冷圧前に焼鈍を実施することにより、極めて優れた寸法精度が得られることが明らかとなった。
【0053】
一方、製造条件を同一とした場合でも、Cが低い鋼板4では最終硬度が低くかつバリが発生した。また、C、Mnが高い鋼板5では熱延板、冷延板ともに幅方向の高度差ΔHvが15を超えてしまい寸法精度に劣る。Si,Pの高い鋼板7では、幅方向の高度差ΔHvが15を超えるとともに、バリが発生し材質が劣化した。
【0054】
さらに、鋼板1〜3においてもエッジヒーターあるいは水乗り防止を実施しない場合、幅方向のフェライト分率差ΔVfが30を超えるとともに冷延板の硬度差ΔHvが20を超えるため、寸法精度に劣ることが分った。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、自動車トランスミッション部品としてのギヤやプレート等の素材に好適な、打抜き寸法精度、とくに平坦度に優れ、しかも、打抜き部品の硬度確保のための熱処理工程が不要である鋼板が得られ、工業的に有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】平坦度(最大反り高さ)の測定方法を示す図である。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.15〜0.4%、Si≦0.5%、Mn≦1.0%、P≦0.05%を含有し残部実質的にFeから成り、鋼板板面硬度Hvが170〜280であり、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvが20以下であることを特徴とする打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
- 鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvが15以下であることを特徴とする請求項1記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
- 鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvが20以下である熱延鋼板を冷間圧延して製造される請求項1または2記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
- フェライト分率Vfが50%以下であり、かつ、鋼板幅方向各位置におけるフェライト分率差の最大値ΔVfが30%以下であるミクロ組織を有する熱延鋼板を冷間圧延して製造される請求項2記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板。
- 質量%で、C:0.15〜0.4%、Si≦0.5%、Mn≦1.0%、P≦0.05%を含有し残部実質的にFeから成る組成を有する鋼を熱間圧延し、熱間圧延後の鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを20以下とし、さらに酸洗、冷間圧延し、冷間圧延後の鋼板板面硬度Hvを170〜280、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを20以下とすることを特徴とする打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
- 酸洗後に、600〜680℃の温度で20時間以上の焼鈍を行った後に冷間圧延し、冷間圧延後の鋼板板面硬度Hvを170〜280、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを15以下とすることを特徴とする請求項5記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.15〜0.4%、Si≦0.5%、Mn≦1.0%、P≦0.05%を含有し残部実質的にFeから成る組成を有する鋼を熱間圧延する際に、粗圧延後の粗バーのエッジ部を加熱した後に仕上圧延を行い、その後、ランナウト冷却中の鋼板エッジ部の冷却条件を制御して巻取ることにより、フェライト分率Vfが50%以下、鋼板幅方向各位置におけるフェライト分率差の最大値ΔVfが30%以下であるミクロ組織を有する熱延鋼板とし、該熱延鋼板を酸洗、冷間圧延し、冷間圧延後の鋼板板面硬度Hvを170〜280、鋼板幅方向各位置における板面硬度差の最大値ΔHvを15以下としたことを特徴とする打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
- 酸洗後に、600〜680℃の温度で20時間以上の焼鈍を行うことを特徴とする請求項7記載の打抜き後の平坦度に優れる薄鋼板の製造方法。
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