JP2004283082A - 微粒子の超音波反応装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波反応装置における微粒子と有用物質の反応を促進する。
【解決手段】容器固定具14は、微粒子および前記微粒子と反応すべき物質の入った容器16を保持する。超音波漕18および超音波振動子20は、超音波漕18に収容される容器16に超音波を供給する。超音波振動子制御装置24は、集中制御装置28の制御下で、容器16への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御する。超音波振動子制御装置24は、XYZ駆動テーブル12を制御し、容器16が所定の軌跡を描くように容器16を移動させる。所定の軌跡は、超音波の作用ポイントが含まれるように設定されている。
【選択図】 図1
【解決手段】容器固定具14は、微粒子および前記微粒子と反応すべき物質の入った容器16を保持する。超音波漕18および超音波振動子20は、超音波漕18に収容される容器16に超音波を供給する。超音波振動子制御装置24は、集中制御装置28の制御下で、容器16への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御する。超音波振動子制御装置24は、XYZ駆動テーブル12を制御し、容器16が所定の軌跡を描くように容器16を移動させる。所定の軌跡は、超音波の作用ポイントが含まれるように設定されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波の作用下で微粒子と物質を反応させる装置および方法に関し、特に、微粒子と物質の反応の促進と安定化に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、粒子の表面に有用な物質を固定化させて新しい機能を実現させる微粒子技術が様々な分野において注目されている。例えば、医療の分野では、ドラッグデリバリーシステムと呼ばれる技術が知られている。ミクロ粒子にナノサイズの薬剤を結合させることにより、例えば、肺などに吸収しやすい粉体と共に薬剤も重点的に投与することが可能になる。また、環境分野では、ナノ微粒子表面に毒素等に特異的に結合する機能を付与した環境監視センサを構築する技術が提案されている。このセンサを各所に張り巡らせることにより、環境の全体像を描き、汚染物質の広がりや化学・生物兵器の進入までも感知できるようになる。さらに、ナノ微粒子表面に汚染物質を吸収する機能を持たせることにより、汚れた水や土壌の浄化に使うことも可能になる。
【0003】
従来から、各種微粒子の表面に新たな性質を付与させる技術として、乾式の他、液相中において重合を行わせる技術が広く知られている。具体的には、例えば、粒子表面を機能化剤にて被覆した機能性粒子の製造方法が種々実施されている。
【0004】
そして、液相中での化学反応の際、超音波が極めて優れた効果を発揮することも知られている。この技術は、反応槽の底面に配置されている超音波発生装置を駆動し、超音波発生装置から超音波を反応槽溶液の液面に向けて放射する。この主な効果は、キャビテーションに基づくものであると考えられ、キャビテーション内では、実際に高い温度や圧力がミクロ範囲で発生する。これにより、反応速度が増加し、誘導期、すなわち反応開始までの時間が短縮される、自己凝集した微粒子を分散させることができる、などのメリットがある。
【0005】
超音波を利用する反応装置は、例えば、特開平9−24270号公報に開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−24270号公報(第4ページ、図1)
【発明が解決しようとする課題】
微粒子の超音波反応装置は、バイオテクノロジーの分野でも利用され、例えば磁性細菌粒子にストレプトアビジンが固定化される。このとき、超音波の作用で、微粒子が分散し、その凝集が防止される。
【0007】
ここで、微粒子の反応過程では、一度反応が開始した後、二次的な反応が起こり、そして反応が進むと考えられる。超音波による微粒子の分散は、反応を起こさせるときには有効である。しかし、超音波が作用し続けると、この超音波による外力は、上記の二次的な反応を阻害すると考えられる。
【0008】
また、超音波を利用した反応装置では、反応液中の定在波が腹及び節を有することに起因して、攪拌の強さまたはキャビテーション現象による空洞の発生率が位置によって異なる。そのため、適当なポイントに反応サンプル容器を近づけないと超音波が十分に作用しないことがある。
【0009】
しかしながら、従来一般には、超音波の作用ポイントが、作業者により手作業で探索されるので、作用ポイントに適切に試料容器を位置させることができず、その結果、分散状態を保つことができずに凝集してしまうことがあった。そして、このことは、反応を不安定にする要因になる。すなわち、同じ内容の作業を繰り返し行っても、反応量がばらつく可能性が高い。とりわけ、ナノサイズの微粒子は、より凝集しやすい特徴を持つため、反応量がばらついていた。
【0010】
また、超音波を利用する反応装置では、超音波を作用させる媒体の温度が高温になり、その結果、微粒子に反応させる有用物質の機能が損失してしまうことがあった。
【0011】
本発明は上記背景の下でなされたものであり、その目的は、超音波を利用する反応装置での反応を促進し、また、安定性を向上できる技術を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波反応装置は、微粒子および前記微粒子と反応すべき物質の入った容器を保持する容器保持手段と、超音波漕および超音波源を含み、前記超音波漕に収容される前記容器に超音波を供給する超音波供給手段と、前記容器への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御する超音波制御手段と、を有する。
【0013】
本発明によれば、超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返すように超音波の供給が制御される。したがって、超音波の作用で微粒子が分散した状態で超音波の供給が制限され、これにより反応が促進する。微粒子への物質吸着量の増大が図れる。
【0014】
超音波制御では、例えば、予め決められた周期で超音波振動子の振動のオンオフが繰り返される。これにより、簡単な構成で反応を促進できる。
【0015】
また、好ましくは、超音波反応装置は、前記容器中の微粒子の分散状態を検出する分散状態検出手段を含み、前記超音波制御手段は、検出される分散状態に応じて、前記微粒子が分散している所定の状態で超音波の供給を制限する。これにより、凝集を防ぐように超音波を提供しつつ、分散状態で超音波供給を制限する、といった制御をより正確に行える。
【0016】
前記分散状態検出手段は、例えば、光学的に微粒子の分散状態を検出する。光学的な濁度の検出の原理が本発明に適用されてもよい。透過率が好適に利用できる。また、容器が撮影され、画像処理により分散状態が求められてもよい。
【0017】
また、前記分散状態検出手段は、微粒子の分散状態を表す前記容器内の圧力を検出してもよい。
【0018】
なお、本発明において、超音波の供給の制限は、典型的には、超音波振動子等の超音波源からの超音波の送信を制限することにより実現される。しかし、本発明はこれに限定されず、本発明の範囲内で、容器への超音波の供給が制限されればよい。
【0019】
また、超音波の供給制限は、典型的には超音波の提供の停止であるが、本発明はこれに限定されない。本発明の利点が得られるように、超音波の供給量が十分に低減されてもよい。
【0020】
さらに、超音波の供給状態と供給制限状態の繰り返しにおいては、超音波の強さが瞬時に変わってもよく、あるいは、徐々に変わってもよい。正弦波のような曲線を描いて超音波の強さが変わってもよい。
【0021】
好ましくは、本発明の超音波反応装置は、供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させる移動手段と、前記容器が所定の軌跡を描くように、前記移動手段による移動を制御する移動制御手段と、を有し、前記所定の軌跡上に超音波の作用ポイントが含まれるように前記所定の軌跡が設定されている。
【0022】
本発明によれば、超音波の作用ポイントを含むように設定された軌跡に沿って容器を移動させることで、超音波を容器に十分に作用させることができる。作用ポイントを正確に特定することは容易でないが、適当な範囲内にあることは分かる。この点に着目し、作用ポイントが含まれる可能性がある範囲を網羅するように軌跡が設定される。このように軌跡が設定されれば、その軌跡を辿るという簡単な構成で、作用ポイントを特定しない制御にも拘わらず、容器を作用ポイントに位置させることができる。従来の手作業でのポイント探索と比べて、簡単な構成にて、より確実に超音波の作用が得られる。また、所定の軌跡を通る制御なので、毎回同じ反応が起こるように図ることができ、反応の安定化が可能となる。
【0023】
なお、本発明の範囲内で、容器と超音波の作用ポイントが相対的に動けばよい。典型的には容器が動くが、これに限定されなくてよい。
【0024】
好ましくは、前記超音波制御装置は、前記供給状態では、所定の供給期間が経過する間、超音波を容器へ供給させ、前記移動制御手段は、前記供給期間内に前記所定の軌跡を通るように前記容器の移動を制御する。
【0025】
これにより、超音波の供給制限状態を設けて反応を促進しつつ、供給状態では容器に作用ポイントを通らせることで反応を促進して、これらにより反応量を増大できる。
【0026】
好ましくは、本発明の超音波反応装置は、供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させる移動手段と、前記容器へ作用する超音波を検出する超音波検出手段と、検出される超音波に基づいて、超音波の作用ポイントに前記容器が位置するように前記移動手段を制御する移動制御手段と、を含む。
【0027】
この態様によれば、超音波検出手段を設けたことで、より確実に、超音波の作用ポイントに容器を位置させることができる。これにより、毎回同様の反応を起こさせることができ、反応の安定化が図れる。
【0028】
好ましくは、本発明の超音波反応装置は、前記超音波漕の温度を検出する温度検出手段と、検出される温度に応じて動作し、前記超音波漕内の液体を循環させる温度制御機能付きの循環ポンプと、を有する。これにより、温度を調整して、反応の促進が図れる。例えば、超音波を作用させる媒体の温度が高温になり、微粒子に反応させる有用物質の機能が損失する、といった事態を回避できる。
【0029】
本発明は上記の超音波反応装置の態様には限定されない。本発明の別の態様は、例えば、微粒子の超音波反応方法である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態の超音波反応装置を示している。図示のように、超音波反応装置10は、XYZ駆動テーブル12と、XYZ駆動テーブル12に取り付けられる容器固定具14と、容器固定具14に固定される容器16を収容する超音波漕18と、超音波漕18の下面に取り付けられる超音波振動子20と、温度制御機能付きの循環ポンプ22と、を備える。
【0032】
また、制御用の構成として、超音波反応装置10は、超音波振動子20を制御する超音波振動子制御装置24と、XYZ駆動テーブル12を制御するXYZ駆動テーブル制御装置26と、それらを制御する集中制御装置28を備える。集中制御装置28は循環ポンプ22も制御する。
【0033】
上記構成において、容器固定具14、超音波漕18、超音波振動子20、XYZ駆動テーブル12は、それぞれ、本発明の容器保持手段、超音波漕、超音波源および移動手段に対応する。また、超音波振動子制御装置24およびXYZ駆動テーブル制御装置26が、集中制御装置28と共に、超音波制御手段および移動制御手段を構成する。
【0034】
超音波振動子制御装置24は、以下に説明するように、容器16への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御する。
【0035】
図2は、本実施の形態における超音波の制御を示している。本実施の形態では、超音波振動子20のオンオフが予め決められた周期で繰り返される。振動オンの期間と振動オフの期間はそれぞれ5分に設定されている。この特性に従い、超音波振動子制御装置24が超音波振動子20を駆動させる。
【0036】
また、図3は、XYZ駆動テーブル12の制御を示している。XYZ駆動テーブル12は、容器16が超音波漕18内で図3の軌跡Lを描くように、XYZ駆動テーブル制御装置26により制御される。
【0037】
ここで、超音波の作用は、超音波漕18の中でも場所によって異なる。超音波が十分に作用するポイントを、本実施の形態では、作用ポイントと呼ぶ。作用ポイントは、超音波漕18内の液体の量等で変わるので、作用ポイントを正確に特定することは容易でない。しかし、作用ポイントが含まれる可能性のある範囲Aは分かる。
【0038】
この点に着目して、容器の移動の軌跡Lが設定されている。すなわち、軌跡Lは、範囲Aを網羅するように設定されている。より詳細には、軌跡Lは、範囲A内で往復を繰り返し、範囲Aの全体を通る。
【0039】
また、図3には示されないが、軌跡Lは、上下方向にも、作用ポイントが存在する可能性のある範囲を網羅するように設定されている。したがって、容器Lは、高さを少しずつ変えて、図3の軌跡を描く。
【0040】
集中制御装置28は、超音波振動子制御装置24とXYZ駆動テーブル制御装置26を制御して、超音波振動と容器移動のタイミングを合わせる。図2に示したように、超音波振動子20は、一定の期間は振動し、一定の期間は停止する。超音波振動子20がオンの期間に、容器が軌跡L全体を通るように、制御が行われる。
【0041】
より詳細には、集中制御装置28が、超音波振動子制御装置24に振動開始を指示すると共に、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は、振動オンの期間内に、軌跡Lに沿って容器16を移動させる。そして、振動オン期間が経過すると、集中制御装置28が超音波振動子制御装置24に振動の停止を指示する。
【0042】
次に、超音波漕18の温度制御を説明する。図1に示されるように、超音波漕18には、温度検出手段としての温度センサ30が配置されている。温度センサ30は、超音波漕18内の溶媒の温度を検出する。温度センサ30の出力は、集中制御装置28に入力される。そして、集中制御装置28は、超音波漕18の温度を循環ポンプ22へ伝える。また、集中制御装置28は、超音波漕18の設定温度を循環ポンプ22へ伝える。
【0043】
循環ポンプ22は、前述のように温度制御機能をもち、集中制御装置28からの指示に従って超音波漕18の温度を調節する。循環ポンプ22は、検出された温度をモニタリングし、超音波漕18の温度を、集中制御装置28から指示された設定温度に維持する。
【0044】
次に、図1の超音波反応装置10の動作を説明する。まず、微粒子、反応させるべき有用物質および溶媒が容器16に入れられる(混合溶液すなわち反応溶液)。容器16は容器固定具14に固定される。集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26の制御下で、XYZ駆動テーブル12が容器16を、超音波漕18内の所定位置へ移動させる。
【0045】
図2の特性に従い、集中制御装置28は、超音波振動子制御装置24に超音波オンオフの指示を出す。集中制御装置28の指示に従い、超音波振動子制御装置24は超音波振動子20を駆動させる。したがって、超音波振動子20は、5分間超音波を発し、それから5分間停止し、というようにオンオフを繰り返す。
【0046】
集中制御装置28は、超音波オンの指示を超音波振動子制御装置24に出すときに、XYZ駆動テーブル制御装置26に対して容器16の移動を指示する。この指示を受けて、XYZ駆動テーブル制御装置26は、図3を用いて説明したように、所定の軌跡Lに沿って容器16を移動させる。容器16の移動は、図2の超音波オン期間内に軌跡Lを通りきるように制御される。これにより、超音波期間内の移動で、容器16は確実に超音波の作用ポイントを通る。
【0047】
また、循環ポンプ22は、超音波漕18内の溶媒を循環させる。温度センサ30の出力をモニタリングしながら、超音波漕18の温度が調整される。本実施の形態では、温度が一定に保たれる。
【0048】
以上の制御により、容器の位置、温度および超音波作用時間が自動的に制御される。そして、一定の温度下で、超音波のオンオフが繰り返される。超音波のオン期間に一度は超音波作用ポイントを通るように容器が移動する。所定の回数、超音波のオンオフが繰り返されると、集中制御装置28は反応を終了させる。集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に対して、容器16を超音波漕18から取り出すように指示する。これにより容器16は超音波漕18から取り出される。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返すように超音波の供給が制御されるので、超音波の作用で微粒子が分散した状態で超音波の供給が制限され、これにより反応が促進し、そして、微粒子への物質吸着量の増大が図れる。この効果については、さらに、後述にて実施例を示す。また、供給と供給制限の自動繰返しにより、手作業での操作よりも安定性が向上するという利点も得られる。
【0050】
また、本実施の形態は、上記の繰返し制御を、予め決められた周期で超音波振動子の振動のオンオフを繰り返すことで実現する。これにより、簡単な構成で反応を促進できる。
【0051】
また、本実施の形態は、上述のように、超音波作用ポイントがある程度の範囲に含まれることを利用し、超音波の作用ポイントを含むように容器の移動軌跡が予め設定されている。そして、この軌跡に沿って容器を移動させると、容器が作用ポイントを通る。このようにして、作用ポイントを特定しないまま、所定の軌跡に沿って容器を移動させるという簡単な構成で、容器に十分な強度の超音波を容器に作用させることができる。従来の手作業でのポイント探索と比べて、確実に超音波の作用が得られる。また、一定の軌跡を通る自動制御なので、毎回同じ反応が起こるように図ることができ、反応の安定化が可能となる。
【0052】
また、本実施の形態は、超音波の供給状態の継続期間に上記の軌跡を容器が通るように、容器の移動を制御する。これにより、超音波の供給制限状態を設けて反応を促進しつつ、供給状態では容器に作用ポイントを通らせることでも反応を促進して、全体として反応量を増大できる。
【0053】
また、本実施の形態は、温度制御機能付きの循環ポンプを設けたことで、温度を調節し、これにより反応の促進を図ることができる。超音波を作用させる媒体の温度が高温になり、微粒子に反応させる有用物質の機能が損失する、といった事態を回避できる。
【0054】
そして、本実施の形態の超音波反応装置によれば、例えば、微粒子が凝集しやすいナノサイズの微粒子であっても、さらに微粒子が自ら磁力を発するフェリ磁性体であっても、自己凝集を回避でき、分散状態を保てる。また、温度を一定に保ち、極端な高温を避けられるので、微粒子に反応させる有用物質の機能が失われるのを回避できる。さらに、超音波の作用する時間と停止する時間を設けたので、反応が進む。そして、これらにより、ナノサイズの微粒子表面への有用物質の吸着量を増大することができる。
【0055】
図4は、別の実施の形態を示している。上述の実施の形態では、図2のような定期的な超音波のオンオフ制御が行われた。これに対し、本実施の形態では、分散状態をモニタリングしながらオンオフ制御が行われる。以下において、図1の実施の形態と同様の事項の説明は適宜省略する。
【0056】
図4に示されるように、本実施の形態では、容器16中の微粒子の分散状態を検出するために、分散状態センサ32が設けられている。分散状態センサ32は、光学的に分散状態を検出する。分散状態センサ32は、濁度のセンサに用いる分光光度計で構成することができる。そして、濁度検出の原理で分散状態を検出できる。
【0057】
分光光度計は、試料における光の透過率を求める。試料の下方においては、分散の程度が大きいほど、光の透過率が大きく、凝集状態では、光の透過率が小さくなると考えられる。このことを利用し、ある程度粒子が分散した状態を表すように、所定の透過率しきい値を設定する。このしきい値以上の透過率が得られる状態を、超音波のオンオフ切替のトリガーになる所定の分散状態とする。透過率しきい値は集中制御装置28に記憶される。
【0058】
分散状態センタ32の出力は、集中制御装置28に入力される。集中制御装置28では、検出された透過率が、しきい値と比較される。透過率がしきい値以上であれば、所定の分散状態が得られていると判定される。
【0059】
集中制御装置28は、所定の分散状態が得られているとき、すなわち透過率がしきい値以上のとき、超音波振動子制御装置24に超音波停止の指示を出す。超音波振動子制御装置24は、超音波振動子20を制御して、超音波の発生を停止させる。
【0060】
超音波振動子20が停止した後、時間が経過すると、微粒子の分散の程度が小さくなり、凝集が始まる。これに伴い、透過率が低下していく。透過率がしきい値を下回ると、集中制御装置28は、超音波発生の指示を超音波振動子制御装置24に送る。超音波振動子制御装置24は、超音波振動子20を制御して、超音波を発生させる。
【0061】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、分散状態の検出結果に基づいて超音波が制御されるので、凝集を防ぐように超音波を提供しつつ、分散状態で超音波供給を制限するといった本発明の制御を、より正確に行える。
【0062】
上記の実施の形態では、試料の下部の透過率が求められた。これに対して、試料の上部の透過率が求められてもよい。この場合、分散の程度が大きいほど、透過率が小さく、逆に、凝集状態では透過率が大きくなると考えられる。この特性に応じて透過率のしきい値が設定され、透過率がしきい値以下の時に超音波の発生を停止する。
【0063】
また、分光光度計以外の構成が用いられてもよい。例えば、光の透過の程度を検出するために、光電管が利用可能である。
【0064】
また、カメラを備えて、画像処理により分散状態を検出することも考えられる。この場合、撮影画像は集中制御装置28に入力される。分散状態を判定するために、分散の程度に応じた試料の色の変化が利用される。すなわち、集中制御装置28は、分散の程度が異なる複数の分散状態における試料の色を記憶している。集中制御装置28は、画像から得られる試料の色を、記憶された色と比較して、所定の分散状態が得られているか否かを判定する。所定の分散状態が得られていれば、超音波の供給が制限される。
【0065】
画像処理では、試料の上部の色と、下部の色の差が求められてもよい。分散の程度が大きいほど、上下の色の差が小さいと考えられる。そこで、集中制御装置28は、上下の色の差が所定値以下であるか否かが判定される。色の差が所定値以下であれば、所定の分散状態が得られているので、超音波供給が制限される。
【0066】
さらに、分散状態の検出手段は、光学的なセンサに限られない。例えば、容器内の圧力を検出することが考えられる。この場合、圧力センサが容器内の底部に配置される。分散の程度に応じて、容器底部に加わる圧力が変化する傾向がある。このことを利用して、分散状態が検出される。すなわち、圧力センサの出力が集中制御装置28に入力され、圧力の大きさに応じて超音波のオンオフが制御される。
【0067】
図5は、本発明の別の実施の形態を示している。上述の実施の形態では、図3に示すように、試料の容器が予め決まった軌跡に沿って移動された。本実施の形態では、超音波をモニタリングしながら、容器の位置が制御される。
【0068】
図5に示されるように、本実施の形態では、容器16の下側に超音波センサ34が取り付けられる。超音波センサ34は、圧電素子で構成され、容器へ作用する超音波を検出する。超音波センサ34の出力は集中制御装置28へ送られる。
【0069】
図6および図7は、超音波センサ34の出力を示している。図6では、容器16が超音波の作用ポイントに位置していないが、図7では、容器16が作用ポイントに位置している。そのため、1次の検出信号が図6より図7で大きい。また、図7では、2次および3次の周波数においても、大きな信号が検出されている。
【0070】
本実施の形態では、集中制御装置28が、図7のような検出結果が得られるとき、容器16が超音波の作用ポイントに位置していると判断する。本実施の形態では、1次または2次の検出信号のしきい値が設定される。検出信号がしきい値以上であるとき、集中制御装置28は、容器16が作用ポイントにいると判定する。
【0071】
本実施の形態の超音波反応装置は、以下のように動作する。集中制御装置28は、超音波振動子制御装置24に超音波の発生を指示すると共に、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は、図3の軌跡に従って容器16を移動させる。
【0072】
集中制御装置28は、超音波センサ34の出力をモニタリングする。そして、図7に示すようなしきい値以上の信号が得られると、集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の停止を指示する。この指示に応えて、XYZ駆動テーブル制御装置26は容器16を停止させる。
【0073】
集中制御装置28は、超音波センサ34のモニタリングを継続する。検出される信号のレベルが低下し、しきい値を下回ると、集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は、容器16を移動させる。
【0074】
この場合、作用ポイントと容器16のずれは小さいと考えられる。そこで、XYZ駆動テーブル制御装置26は、容器16を所定の狭い範囲内で移動させる。この範囲は、図3の容器16の移動範囲より狭く設定されている。集中制御装置28は、超音波センサ34の出力を監視し、検出信号がしきい値以上まで回復すると、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の停止を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は容器16の移動を停止する。
【0075】
ところで、図6の実施の形態において、超音波の制御については、図2に示される周期的なオンオフ制御が行われてよい。ただし、センサを使って容器16を作用ポイントに位置させていることから、超音波のオン時間は短縮されてよい。
【0076】
あるいは、図6の実施の形態において、超音波制御としては、図5の実施の形態の制御が行われてもよい。すなわち、分散状態がモニタリングされ、所定の分散状態が得られると、超音波の供給が停止されてよい。
【0077】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、超音波を検出して、容器の移動を制御するので、より確実に、超音波の作用ポイントに容器を位置させることができる。これにより、毎回同様の反応を起こさせることができ、反応の安定化が図れる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明した。次に、本実施の形態の変形例を説明する。
【0079】
上記の実施の形態では、超音波の供給の制限は、超音波源である超音波振動子からの超音波の送信を制限することにより実現される。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明の範囲内で、容器への超音波の供給が制限されればよい。
【0080】
また、上述の実施の形態では、超音波の供給制限は、すなわち、超音波の提供の停止であった。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の利点が得られるように、超音波の供給量が十分に低減されてもよい。
【0081】
さらに、図2の波形では、超音波の供給状態と供給制限状態の切替においては、超音波の強さが瞬時に変更された。しかし、本発明はこれに限定されない。超音波の強さは徐々に変わってもよい。例えば、正弦波のような曲線を描いて超音波の強さが変わってもよく、このような制御も、供給状態と供給制限状態の繰り返し制御に含まれてよい。
【0082】
また、上記の実施の形態では、容器16が超音波漕18に対して移動した。しかし、本発明の範囲内で、供給される超音波に対して、相対的に容器が動けばよい。例えば、超音波振動子20が移動してもよい。
【0083】
本発明は、上述の実施の形態およびその変形例に限定されず、本発明に範囲内で上記の実施の形態を当業者が変更可能なことはもちろんである。
【0084】
【実施例】
本実施例では、磁性細菌粒子(BMPs)表面にストレプトアビジンが固定化される。
【0085】
反応させる微粒子には、単菌分離された磁性細菌Magnetospirillum sp. AMB−1が体内につくるバイオナノ磁性粒子(BMPs)を用いた。このBMPsの分離、精製は、既に開発された方法によって行い、10mM PBS (140mM NaCl, 2.7mM KCl, 10mM Na2HPO4 1.8mM KH2PO4, pH7.4) 中で懸濁され、摂氏4度で保存した。
【0086】
微粒子表面には最終的にストレプトアビジンを固定化した。このストレプトアビジン固定化の方法を以下に示す。ストレプトアビジン固定化BMPsは、磁性細菌膜上に存在すると考えられるアミノ基を利用して化学架橋を行った。まず、BMPs 1mgを、1mM クロスリンカー Sulfo−NHS−LC−LC−biotinを含むPBS 1mL中に懸濁し、本発明の超音波反応装置(図1の装置)にセットして、超音波のオンオフ制御と温度制御を行い、室温で30分間反応させ、ビオチンの導入を行った。反応後、磁気回収し、PBSで3回洗浄を行った。その後、ストレプトアビジン 100μgをPBS 1mL中に懸濁し、本超音波反応装置にセットして、超音波のオンオフ制御と温度制御を行い、室温で30分間反応させることにより粒子上にストレプトアビジンを固定化した。PBSで3回洗浄を行った後、DNAの非特異吸着を抑えるため、20μgのBSAを含むPBS 1mLでさらに洗浄することで未反応のアミノ基を還元し、ストレプトアビジン固定化BMPs(SA−BMPs)とした。
【0087】
固定化されたストレプトアビジンの定量を行った。その結果、293pmol/mg−BMPsのビオチン化DNAオリゴが回収されたことから、147pmol/mg−BMPsのストレプトアビジンが固定化されたことが予測される。
【0088】
図8は、温度制御機能付き循環ポンプの使用の効果を示している。図8では、横軸が経過時間であり、縦軸が温度である。そして、循環ポンプを使用したときと、使用しないときの温度の変化が示されている。図示のように、循環ポンプの使用により、温度が一定に保たれる。
【0089】
図9は、超音波のオンオフ制御の効果を示している。図中の「連続撹拌反応」は、オンオフ制御を行わないときの結果であり、超音波が連続的に供給されている。一方、「インターバル撹拌反応」は、図2に示されるように、オンオフ制御を行ったときの結果であり、超音波が断続的に供給される。図示のように、ビオチンオリゴDNA固定化量は、連続撹拌反応では129pmol/mg−BMPsであり、インターバル撹拌反応では293pmol/mg−BMPsであり、オンオフ制御による反応量の増加が見られる。
【0090】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返すように超音波の供給を制御することにより、超音波の作用で微粒子が分散した状態で超音波の供給が制限され、これにより反応が促進する。微粒子への物質吸着量の増大が図れる。
【0091】
また、本発明によれば、超音波の作用ポイントに位置するように容器の位置および移動が制御され、これにより反応の促進と安定化が図れる。
【0092】
また、本発明によれば、超音波漕の温度調整機能を設けたことにより、反応の促進が図れ、高温下による有用物質の機能損失が避けられる。
【0093】
このようにして、本発明によれば、反応の促進を図ると共に、安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る超音波反応装置を示す図である。
【図2】本実施の形態の超音波反応装置による超音波の制御を示す図である。
【図3】本実施の形態の超音波反応装置による容器の移動の制御を示す図である。
【図4】別の実施の形態に係る、粒子の分散状態をモニタリングする超音波反応装置を示す図である。
【図5】別の実施の形態に係る、超音波をモニタリングする超音波反応装置を示す図である。
【図6】容器が作用ポイントに位置しないときの超音波の検出信号を示す図である。
【図7】容器が作用ポイントに位置するときの超音波の検出信号を示す図である。
【図8】温度制御機能付きの循環ポンプによる温度調整効果を示す図である。
【図9】超音波のオンオフ制御による反応促進効果を示す図である。
【符号の説明】
10 超音波反応装置
12 XYZ駆動テーブル
14 容器固定具
16 容器
18 超音波漕
20 超音波振動子
22 循環ポンプ
24 超音波振動子制御装置
26 XYZ駆動テーブル制御装置
28 集中制御装置
30 温度センサ
32 分散状態センサ
34 超音波センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波の作用下で微粒子と物質を反応させる装置および方法に関し、特に、微粒子と物質の反応の促進と安定化に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、粒子の表面に有用な物質を固定化させて新しい機能を実現させる微粒子技術が様々な分野において注目されている。例えば、医療の分野では、ドラッグデリバリーシステムと呼ばれる技術が知られている。ミクロ粒子にナノサイズの薬剤を結合させることにより、例えば、肺などに吸収しやすい粉体と共に薬剤も重点的に投与することが可能になる。また、環境分野では、ナノ微粒子表面に毒素等に特異的に結合する機能を付与した環境監視センサを構築する技術が提案されている。このセンサを各所に張り巡らせることにより、環境の全体像を描き、汚染物質の広がりや化学・生物兵器の進入までも感知できるようになる。さらに、ナノ微粒子表面に汚染物質を吸収する機能を持たせることにより、汚れた水や土壌の浄化に使うことも可能になる。
【0003】
従来から、各種微粒子の表面に新たな性質を付与させる技術として、乾式の他、液相中において重合を行わせる技術が広く知られている。具体的には、例えば、粒子表面を機能化剤にて被覆した機能性粒子の製造方法が種々実施されている。
【0004】
そして、液相中での化学反応の際、超音波が極めて優れた効果を発揮することも知られている。この技術は、反応槽の底面に配置されている超音波発生装置を駆動し、超音波発生装置から超音波を反応槽溶液の液面に向けて放射する。この主な効果は、キャビテーションに基づくものであると考えられ、キャビテーション内では、実際に高い温度や圧力がミクロ範囲で発生する。これにより、反応速度が増加し、誘導期、すなわち反応開始までの時間が短縮される、自己凝集した微粒子を分散させることができる、などのメリットがある。
【0005】
超音波を利用する反応装置は、例えば、特開平9−24270号公報に開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−24270号公報(第4ページ、図1)
【発明が解決しようとする課題】
微粒子の超音波反応装置は、バイオテクノロジーの分野でも利用され、例えば磁性細菌粒子にストレプトアビジンが固定化される。このとき、超音波の作用で、微粒子が分散し、その凝集が防止される。
【0007】
ここで、微粒子の反応過程では、一度反応が開始した後、二次的な反応が起こり、そして反応が進むと考えられる。超音波による微粒子の分散は、反応を起こさせるときには有効である。しかし、超音波が作用し続けると、この超音波による外力は、上記の二次的な反応を阻害すると考えられる。
【0008】
また、超音波を利用した反応装置では、反応液中の定在波が腹及び節を有することに起因して、攪拌の強さまたはキャビテーション現象による空洞の発生率が位置によって異なる。そのため、適当なポイントに反応サンプル容器を近づけないと超音波が十分に作用しないことがある。
【0009】
しかしながら、従来一般には、超音波の作用ポイントが、作業者により手作業で探索されるので、作用ポイントに適切に試料容器を位置させることができず、その結果、分散状態を保つことができずに凝集してしまうことがあった。そして、このことは、反応を不安定にする要因になる。すなわち、同じ内容の作業を繰り返し行っても、反応量がばらつく可能性が高い。とりわけ、ナノサイズの微粒子は、より凝集しやすい特徴を持つため、反応量がばらついていた。
【0010】
また、超音波を利用する反応装置では、超音波を作用させる媒体の温度が高温になり、その結果、微粒子に反応させる有用物質の機能が損失してしまうことがあった。
【0011】
本発明は上記背景の下でなされたものであり、その目的は、超音波を利用する反応装置での反応を促進し、また、安定性を向上できる技術を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波反応装置は、微粒子および前記微粒子と反応すべき物質の入った容器を保持する容器保持手段と、超音波漕および超音波源を含み、前記超音波漕に収容される前記容器に超音波を供給する超音波供給手段と、前記容器への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御する超音波制御手段と、を有する。
【0013】
本発明によれば、超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返すように超音波の供給が制御される。したがって、超音波の作用で微粒子が分散した状態で超音波の供給が制限され、これにより反応が促進する。微粒子への物質吸着量の増大が図れる。
【0014】
超音波制御では、例えば、予め決められた周期で超音波振動子の振動のオンオフが繰り返される。これにより、簡単な構成で反応を促進できる。
【0015】
また、好ましくは、超音波反応装置は、前記容器中の微粒子の分散状態を検出する分散状態検出手段を含み、前記超音波制御手段は、検出される分散状態に応じて、前記微粒子が分散している所定の状態で超音波の供給を制限する。これにより、凝集を防ぐように超音波を提供しつつ、分散状態で超音波供給を制限する、といった制御をより正確に行える。
【0016】
前記分散状態検出手段は、例えば、光学的に微粒子の分散状態を検出する。光学的な濁度の検出の原理が本発明に適用されてもよい。透過率が好適に利用できる。また、容器が撮影され、画像処理により分散状態が求められてもよい。
【0017】
また、前記分散状態検出手段は、微粒子の分散状態を表す前記容器内の圧力を検出してもよい。
【0018】
なお、本発明において、超音波の供給の制限は、典型的には、超音波振動子等の超音波源からの超音波の送信を制限することにより実現される。しかし、本発明はこれに限定されず、本発明の範囲内で、容器への超音波の供給が制限されればよい。
【0019】
また、超音波の供給制限は、典型的には超音波の提供の停止であるが、本発明はこれに限定されない。本発明の利点が得られるように、超音波の供給量が十分に低減されてもよい。
【0020】
さらに、超音波の供給状態と供給制限状態の繰り返しにおいては、超音波の強さが瞬時に変わってもよく、あるいは、徐々に変わってもよい。正弦波のような曲線を描いて超音波の強さが変わってもよい。
【0021】
好ましくは、本発明の超音波反応装置は、供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させる移動手段と、前記容器が所定の軌跡を描くように、前記移動手段による移動を制御する移動制御手段と、を有し、前記所定の軌跡上に超音波の作用ポイントが含まれるように前記所定の軌跡が設定されている。
【0022】
本発明によれば、超音波の作用ポイントを含むように設定された軌跡に沿って容器を移動させることで、超音波を容器に十分に作用させることができる。作用ポイントを正確に特定することは容易でないが、適当な範囲内にあることは分かる。この点に着目し、作用ポイントが含まれる可能性がある範囲を網羅するように軌跡が設定される。このように軌跡が設定されれば、その軌跡を辿るという簡単な構成で、作用ポイントを特定しない制御にも拘わらず、容器を作用ポイントに位置させることができる。従来の手作業でのポイント探索と比べて、簡単な構成にて、より確実に超音波の作用が得られる。また、所定の軌跡を通る制御なので、毎回同じ反応が起こるように図ることができ、反応の安定化が可能となる。
【0023】
なお、本発明の範囲内で、容器と超音波の作用ポイントが相対的に動けばよい。典型的には容器が動くが、これに限定されなくてよい。
【0024】
好ましくは、前記超音波制御装置は、前記供給状態では、所定の供給期間が経過する間、超音波を容器へ供給させ、前記移動制御手段は、前記供給期間内に前記所定の軌跡を通るように前記容器の移動を制御する。
【0025】
これにより、超音波の供給制限状態を設けて反応を促進しつつ、供給状態では容器に作用ポイントを通らせることで反応を促進して、これらにより反応量を増大できる。
【0026】
好ましくは、本発明の超音波反応装置は、供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させる移動手段と、前記容器へ作用する超音波を検出する超音波検出手段と、検出される超音波に基づいて、超音波の作用ポイントに前記容器が位置するように前記移動手段を制御する移動制御手段と、を含む。
【0027】
この態様によれば、超音波検出手段を設けたことで、より確実に、超音波の作用ポイントに容器を位置させることができる。これにより、毎回同様の反応を起こさせることができ、反応の安定化が図れる。
【0028】
好ましくは、本発明の超音波反応装置は、前記超音波漕の温度を検出する温度検出手段と、検出される温度に応じて動作し、前記超音波漕内の液体を循環させる温度制御機能付きの循環ポンプと、を有する。これにより、温度を調整して、反応の促進が図れる。例えば、超音波を作用させる媒体の温度が高温になり、微粒子に反応させる有用物質の機能が損失する、といった事態を回避できる。
【0029】
本発明は上記の超音波反応装置の態様には限定されない。本発明の別の態様は、例えば、微粒子の超音波反応方法である。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態の超音波反応装置を示している。図示のように、超音波反応装置10は、XYZ駆動テーブル12と、XYZ駆動テーブル12に取り付けられる容器固定具14と、容器固定具14に固定される容器16を収容する超音波漕18と、超音波漕18の下面に取り付けられる超音波振動子20と、温度制御機能付きの循環ポンプ22と、を備える。
【0032】
また、制御用の構成として、超音波反応装置10は、超音波振動子20を制御する超音波振動子制御装置24と、XYZ駆動テーブル12を制御するXYZ駆動テーブル制御装置26と、それらを制御する集中制御装置28を備える。集中制御装置28は循環ポンプ22も制御する。
【0033】
上記構成において、容器固定具14、超音波漕18、超音波振動子20、XYZ駆動テーブル12は、それぞれ、本発明の容器保持手段、超音波漕、超音波源および移動手段に対応する。また、超音波振動子制御装置24およびXYZ駆動テーブル制御装置26が、集中制御装置28と共に、超音波制御手段および移動制御手段を構成する。
【0034】
超音波振動子制御装置24は、以下に説明するように、容器16への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御する。
【0035】
図2は、本実施の形態における超音波の制御を示している。本実施の形態では、超音波振動子20のオンオフが予め決められた周期で繰り返される。振動オンの期間と振動オフの期間はそれぞれ5分に設定されている。この特性に従い、超音波振動子制御装置24が超音波振動子20を駆動させる。
【0036】
また、図3は、XYZ駆動テーブル12の制御を示している。XYZ駆動テーブル12は、容器16が超音波漕18内で図3の軌跡Lを描くように、XYZ駆動テーブル制御装置26により制御される。
【0037】
ここで、超音波の作用は、超音波漕18の中でも場所によって異なる。超音波が十分に作用するポイントを、本実施の形態では、作用ポイントと呼ぶ。作用ポイントは、超音波漕18内の液体の量等で変わるので、作用ポイントを正確に特定することは容易でない。しかし、作用ポイントが含まれる可能性のある範囲Aは分かる。
【0038】
この点に着目して、容器の移動の軌跡Lが設定されている。すなわち、軌跡Lは、範囲Aを網羅するように設定されている。より詳細には、軌跡Lは、範囲A内で往復を繰り返し、範囲Aの全体を通る。
【0039】
また、図3には示されないが、軌跡Lは、上下方向にも、作用ポイントが存在する可能性のある範囲を網羅するように設定されている。したがって、容器Lは、高さを少しずつ変えて、図3の軌跡を描く。
【0040】
集中制御装置28は、超音波振動子制御装置24とXYZ駆動テーブル制御装置26を制御して、超音波振動と容器移動のタイミングを合わせる。図2に示したように、超音波振動子20は、一定の期間は振動し、一定の期間は停止する。超音波振動子20がオンの期間に、容器が軌跡L全体を通るように、制御が行われる。
【0041】
より詳細には、集中制御装置28が、超音波振動子制御装置24に振動開始を指示すると共に、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は、振動オンの期間内に、軌跡Lに沿って容器16を移動させる。そして、振動オン期間が経過すると、集中制御装置28が超音波振動子制御装置24に振動の停止を指示する。
【0042】
次に、超音波漕18の温度制御を説明する。図1に示されるように、超音波漕18には、温度検出手段としての温度センサ30が配置されている。温度センサ30は、超音波漕18内の溶媒の温度を検出する。温度センサ30の出力は、集中制御装置28に入力される。そして、集中制御装置28は、超音波漕18の温度を循環ポンプ22へ伝える。また、集中制御装置28は、超音波漕18の設定温度を循環ポンプ22へ伝える。
【0043】
循環ポンプ22は、前述のように温度制御機能をもち、集中制御装置28からの指示に従って超音波漕18の温度を調節する。循環ポンプ22は、検出された温度をモニタリングし、超音波漕18の温度を、集中制御装置28から指示された設定温度に維持する。
【0044】
次に、図1の超音波反応装置10の動作を説明する。まず、微粒子、反応させるべき有用物質および溶媒が容器16に入れられる(混合溶液すなわち反応溶液)。容器16は容器固定具14に固定される。集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26の制御下で、XYZ駆動テーブル12が容器16を、超音波漕18内の所定位置へ移動させる。
【0045】
図2の特性に従い、集中制御装置28は、超音波振動子制御装置24に超音波オンオフの指示を出す。集中制御装置28の指示に従い、超音波振動子制御装置24は超音波振動子20を駆動させる。したがって、超音波振動子20は、5分間超音波を発し、それから5分間停止し、というようにオンオフを繰り返す。
【0046】
集中制御装置28は、超音波オンの指示を超音波振動子制御装置24に出すときに、XYZ駆動テーブル制御装置26に対して容器16の移動を指示する。この指示を受けて、XYZ駆動テーブル制御装置26は、図3を用いて説明したように、所定の軌跡Lに沿って容器16を移動させる。容器16の移動は、図2の超音波オン期間内に軌跡Lを通りきるように制御される。これにより、超音波期間内の移動で、容器16は確実に超音波の作用ポイントを通る。
【0047】
また、循環ポンプ22は、超音波漕18内の溶媒を循環させる。温度センサ30の出力をモニタリングしながら、超音波漕18の温度が調整される。本実施の形態では、温度が一定に保たれる。
【0048】
以上の制御により、容器の位置、温度および超音波作用時間が自動的に制御される。そして、一定の温度下で、超音波のオンオフが繰り返される。超音波のオン期間に一度は超音波作用ポイントを通るように容器が移動する。所定の回数、超音波のオンオフが繰り返されると、集中制御装置28は反応を終了させる。集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に対して、容器16を超音波漕18から取り出すように指示する。これにより容器16は超音波漕18から取り出される。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返すように超音波の供給が制御されるので、超音波の作用で微粒子が分散した状態で超音波の供給が制限され、これにより反応が促進し、そして、微粒子への物質吸着量の増大が図れる。この効果については、さらに、後述にて実施例を示す。また、供給と供給制限の自動繰返しにより、手作業での操作よりも安定性が向上するという利点も得られる。
【0050】
また、本実施の形態は、上記の繰返し制御を、予め決められた周期で超音波振動子の振動のオンオフを繰り返すことで実現する。これにより、簡単な構成で反応を促進できる。
【0051】
また、本実施の形態は、上述のように、超音波作用ポイントがある程度の範囲に含まれることを利用し、超音波の作用ポイントを含むように容器の移動軌跡が予め設定されている。そして、この軌跡に沿って容器を移動させると、容器が作用ポイントを通る。このようにして、作用ポイントを特定しないまま、所定の軌跡に沿って容器を移動させるという簡単な構成で、容器に十分な強度の超音波を容器に作用させることができる。従来の手作業でのポイント探索と比べて、確実に超音波の作用が得られる。また、一定の軌跡を通る自動制御なので、毎回同じ反応が起こるように図ることができ、反応の安定化が可能となる。
【0052】
また、本実施の形態は、超音波の供給状態の継続期間に上記の軌跡を容器が通るように、容器の移動を制御する。これにより、超音波の供給制限状態を設けて反応を促進しつつ、供給状態では容器に作用ポイントを通らせることでも反応を促進して、全体として反応量を増大できる。
【0053】
また、本実施の形態は、温度制御機能付きの循環ポンプを設けたことで、温度を調節し、これにより反応の促進を図ることができる。超音波を作用させる媒体の温度が高温になり、微粒子に反応させる有用物質の機能が損失する、といった事態を回避できる。
【0054】
そして、本実施の形態の超音波反応装置によれば、例えば、微粒子が凝集しやすいナノサイズの微粒子であっても、さらに微粒子が自ら磁力を発するフェリ磁性体であっても、自己凝集を回避でき、分散状態を保てる。また、温度を一定に保ち、極端な高温を避けられるので、微粒子に反応させる有用物質の機能が失われるのを回避できる。さらに、超音波の作用する時間と停止する時間を設けたので、反応が進む。そして、これらにより、ナノサイズの微粒子表面への有用物質の吸着量を増大することができる。
【0055】
図4は、別の実施の形態を示している。上述の実施の形態では、図2のような定期的な超音波のオンオフ制御が行われた。これに対し、本実施の形態では、分散状態をモニタリングしながらオンオフ制御が行われる。以下において、図1の実施の形態と同様の事項の説明は適宜省略する。
【0056】
図4に示されるように、本実施の形態では、容器16中の微粒子の分散状態を検出するために、分散状態センサ32が設けられている。分散状態センサ32は、光学的に分散状態を検出する。分散状態センサ32は、濁度のセンサに用いる分光光度計で構成することができる。そして、濁度検出の原理で分散状態を検出できる。
【0057】
分光光度計は、試料における光の透過率を求める。試料の下方においては、分散の程度が大きいほど、光の透過率が大きく、凝集状態では、光の透過率が小さくなると考えられる。このことを利用し、ある程度粒子が分散した状態を表すように、所定の透過率しきい値を設定する。このしきい値以上の透過率が得られる状態を、超音波のオンオフ切替のトリガーになる所定の分散状態とする。透過率しきい値は集中制御装置28に記憶される。
【0058】
分散状態センタ32の出力は、集中制御装置28に入力される。集中制御装置28では、検出された透過率が、しきい値と比較される。透過率がしきい値以上であれば、所定の分散状態が得られていると判定される。
【0059】
集中制御装置28は、所定の分散状態が得られているとき、すなわち透過率がしきい値以上のとき、超音波振動子制御装置24に超音波停止の指示を出す。超音波振動子制御装置24は、超音波振動子20を制御して、超音波の発生を停止させる。
【0060】
超音波振動子20が停止した後、時間が経過すると、微粒子の分散の程度が小さくなり、凝集が始まる。これに伴い、透過率が低下していく。透過率がしきい値を下回ると、集中制御装置28は、超音波発生の指示を超音波振動子制御装置24に送る。超音波振動子制御装置24は、超音波振動子20を制御して、超音波を発生させる。
【0061】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、分散状態の検出結果に基づいて超音波が制御されるので、凝集を防ぐように超音波を提供しつつ、分散状態で超音波供給を制限するといった本発明の制御を、より正確に行える。
【0062】
上記の実施の形態では、試料の下部の透過率が求められた。これに対して、試料の上部の透過率が求められてもよい。この場合、分散の程度が大きいほど、透過率が小さく、逆に、凝集状態では透過率が大きくなると考えられる。この特性に応じて透過率のしきい値が設定され、透過率がしきい値以下の時に超音波の発生を停止する。
【0063】
また、分光光度計以外の構成が用いられてもよい。例えば、光の透過の程度を検出するために、光電管が利用可能である。
【0064】
また、カメラを備えて、画像処理により分散状態を検出することも考えられる。この場合、撮影画像は集中制御装置28に入力される。分散状態を判定するために、分散の程度に応じた試料の色の変化が利用される。すなわち、集中制御装置28は、分散の程度が異なる複数の分散状態における試料の色を記憶している。集中制御装置28は、画像から得られる試料の色を、記憶された色と比較して、所定の分散状態が得られているか否かを判定する。所定の分散状態が得られていれば、超音波の供給が制限される。
【0065】
画像処理では、試料の上部の色と、下部の色の差が求められてもよい。分散の程度が大きいほど、上下の色の差が小さいと考えられる。そこで、集中制御装置28は、上下の色の差が所定値以下であるか否かが判定される。色の差が所定値以下であれば、所定の分散状態が得られているので、超音波供給が制限される。
【0066】
さらに、分散状態の検出手段は、光学的なセンサに限られない。例えば、容器内の圧力を検出することが考えられる。この場合、圧力センサが容器内の底部に配置される。分散の程度に応じて、容器底部に加わる圧力が変化する傾向がある。このことを利用して、分散状態が検出される。すなわち、圧力センサの出力が集中制御装置28に入力され、圧力の大きさに応じて超音波のオンオフが制御される。
【0067】
図5は、本発明の別の実施の形態を示している。上述の実施の形態では、図3に示すように、試料の容器が予め決まった軌跡に沿って移動された。本実施の形態では、超音波をモニタリングしながら、容器の位置が制御される。
【0068】
図5に示されるように、本実施の形態では、容器16の下側に超音波センサ34が取り付けられる。超音波センサ34は、圧電素子で構成され、容器へ作用する超音波を検出する。超音波センサ34の出力は集中制御装置28へ送られる。
【0069】
図6および図7は、超音波センサ34の出力を示している。図6では、容器16が超音波の作用ポイントに位置していないが、図7では、容器16が作用ポイントに位置している。そのため、1次の検出信号が図6より図7で大きい。また、図7では、2次および3次の周波数においても、大きな信号が検出されている。
【0070】
本実施の形態では、集中制御装置28が、図7のような検出結果が得られるとき、容器16が超音波の作用ポイントに位置していると判断する。本実施の形態では、1次または2次の検出信号のしきい値が設定される。検出信号がしきい値以上であるとき、集中制御装置28は、容器16が作用ポイントにいると判定する。
【0071】
本実施の形態の超音波反応装置は、以下のように動作する。集中制御装置28は、超音波振動子制御装置24に超音波の発生を指示すると共に、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は、図3の軌跡に従って容器16を移動させる。
【0072】
集中制御装置28は、超音波センサ34の出力をモニタリングする。そして、図7に示すようなしきい値以上の信号が得られると、集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の停止を指示する。この指示に応えて、XYZ駆動テーブル制御装置26は容器16を停止させる。
【0073】
集中制御装置28は、超音波センサ34のモニタリングを継続する。検出される信号のレベルが低下し、しきい値を下回ると、集中制御装置28は、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の移動を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は、容器16を移動させる。
【0074】
この場合、作用ポイントと容器16のずれは小さいと考えられる。そこで、XYZ駆動テーブル制御装置26は、容器16を所定の狭い範囲内で移動させる。この範囲は、図3の容器16の移動範囲より狭く設定されている。集中制御装置28は、超音波センサ34の出力を監視し、検出信号がしきい値以上まで回復すると、XYZ駆動テーブル制御装置26に容器16の停止を指示する。XYZ駆動テーブル制御装置26は容器16の移動を停止する。
【0075】
ところで、図6の実施の形態において、超音波の制御については、図2に示される周期的なオンオフ制御が行われてよい。ただし、センサを使って容器16を作用ポイントに位置させていることから、超音波のオン時間は短縮されてよい。
【0076】
あるいは、図6の実施の形態において、超音波制御としては、図5の実施の形態の制御が行われてもよい。すなわち、分散状態がモニタリングされ、所定の分散状態が得られると、超音波の供給が停止されてよい。
【0077】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、超音波を検出して、容器の移動を制御するので、より確実に、超音波の作用ポイントに容器を位置させることができる。これにより、毎回同様の反応を起こさせることができ、反応の安定化が図れる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明した。次に、本実施の形態の変形例を説明する。
【0079】
上記の実施の形態では、超音波の供給の制限は、超音波源である超音波振動子からの超音波の送信を制限することにより実現される。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明の範囲内で、容器への超音波の供給が制限されればよい。
【0080】
また、上述の実施の形態では、超音波の供給制限は、すなわち、超音波の提供の停止であった。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の利点が得られるように、超音波の供給量が十分に低減されてもよい。
【0081】
さらに、図2の波形では、超音波の供給状態と供給制限状態の切替においては、超音波の強さが瞬時に変更された。しかし、本発明はこれに限定されない。超音波の強さは徐々に変わってもよい。例えば、正弦波のような曲線を描いて超音波の強さが変わってもよく、このような制御も、供給状態と供給制限状態の繰り返し制御に含まれてよい。
【0082】
また、上記の実施の形態では、容器16が超音波漕18に対して移動した。しかし、本発明の範囲内で、供給される超音波に対して、相対的に容器が動けばよい。例えば、超音波振動子20が移動してもよい。
【0083】
本発明は、上述の実施の形態およびその変形例に限定されず、本発明に範囲内で上記の実施の形態を当業者が変更可能なことはもちろんである。
【0084】
【実施例】
本実施例では、磁性細菌粒子(BMPs)表面にストレプトアビジンが固定化される。
【0085】
反応させる微粒子には、単菌分離された磁性細菌Magnetospirillum sp. AMB−1が体内につくるバイオナノ磁性粒子(BMPs)を用いた。このBMPsの分離、精製は、既に開発された方法によって行い、10mM PBS (140mM NaCl, 2.7mM KCl, 10mM Na2HPO4 1.8mM KH2PO4, pH7.4) 中で懸濁され、摂氏4度で保存した。
【0086】
微粒子表面には最終的にストレプトアビジンを固定化した。このストレプトアビジン固定化の方法を以下に示す。ストレプトアビジン固定化BMPsは、磁性細菌膜上に存在すると考えられるアミノ基を利用して化学架橋を行った。まず、BMPs 1mgを、1mM クロスリンカー Sulfo−NHS−LC−LC−biotinを含むPBS 1mL中に懸濁し、本発明の超音波反応装置(図1の装置)にセットして、超音波のオンオフ制御と温度制御を行い、室温で30分間反応させ、ビオチンの導入を行った。反応後、磁気回収し、PBSで3回洗浄を行った。その後、ストレプトアビジン 100μgをPBS 1mL中に懸濁し、本超音波反応装置にセットして、超音波のオンオフ制御と温度制御を行い、室温で30分間反応させることにより粒子上にストレプトアビジンを固定化した。PBSで3回洗浄を行った後、DNAの非特異吸着を抑えるため、20μgのBSAを含むPBS 1mLでさらに洗浄することで未反応のアミノ基を還元し、ストレプトアビジン固定化BMPs(SA−BMPs)とした。
【0087】
固定化されたストレプトアビジンの定量を行った。その結果、293pmol/mg−BMPsのビオチン化DNAオリゴが回収されたことから、147pmol/mg−BMPsのストレプトアビジンが固定化されたことが予測される。
【0088】
図8は、温度制御機能付き循環ポンプの使用の効果を示している。図8では、横軸が経過時間であり、縦軸が温度である。そして、循環ポンプを使用したときと、使用しないときの温度の変化が示されている。図示のように、循環ポンプの使用により、温度が一定に保たれる。
【0089】
図9は、超音波のオンオフ制御の効果を示している。図中の「連続撹拌反応」は、オンオフ制御を行わないときの結果であり、超音波が連続的に供給されている。一方、「インターバル撹拌反応」は、図2に示されるように、オンオフ制御を行ったときの結果であり、超音波が断続的に供給される。図示のように、ビオチンオリゴDNA固定化量は、連続撹拌反応では129pmol/mg−BMPsであり、インターバル撹拌反応では293pmol/mg−BMPsであり、オンオフ制御による反応量の増加が見られる。
【0090】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返すように超音波の供給を制御することにより、超音波の作用で微粒子が分散した状態で超音波の供給が制限され、これにより反応が促進する。微粒子への物質吸着量の増大が図れる。
【0091】
また、本発明によれば、超音波の作用ポイントに位置するように容器の位置および移動が制御され、これにより反応の促進と安定化が図れる。
【0092】
また、本発明によれば、超音波漕の温度調整機能を設けたことにより、反応の促進が図れ、高温下による有用物質の機能損失が避けられる。
【0093】
このようにして、本発明によれば、反応の促進を図ると共に、安定性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る超音波反応装置を示す図である。
【図2】本実施の形態の超音波反応装置による超音波の制御を示す図である。
【図3】本実施の形態の超音波反応装置による容器の移動の制御を示す図である。
【図4】別の実施の形態に係る、粒子の分散状態をモニタリングする超音波反応装置を示す図である。
【図5】別の実施の形態に係る、超音波をモニタリングする超音波反応装置を示す図である。
【図6】容器が作用ポイントに位置しないときの超音波の検出信号を示す図である。
【図7】容器が作用ポイントに位置するときの超音波の検出信号を示す図である。
【図8】温度制御機能付きの循環ポンプによる温度調整効果を示す図である。
【図9】超音波のオンオフ制御による反応促進効果を示す図である。
【符号の説明】
10 超音波反応装置
12 XYZ駆動テーブル
14 容器固定具
16 容器
18 超音波漕
20 超音波振動子
22 循環ポンプ
24 超音波振動子制御装置
26 XYZ駆動テーブル制御装置
28 集中制御装置
30 温度センサ
32 分散状態センサ
34 超音波センサ
Claims (18)
- 微粒子および前記微粒子と反応すべき物質の入った容器を保持する容器保持手段と、
超音波漕および超音波源を含み、前記超音波漕に収容される前記容器に超音波を供給する超音波供給手段と、
前記容器への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御する超音波制御手段と、
を有することを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項1に記載の微粒子の超音波反応装置において、
前記超音波制御手段は、予め決められた周期で超音波振動子に振動のオンオフを繰り返させることを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項1に記載の微粒子の超音波反応装置において、
前記容器中の微粒子の分散状態を検出する分散状態検出手段を含み、
前記超音波制御手段は、検出される分散状態に応じて、前記微粒子が分散している所定の状態で超音波の供給を制限することを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項3に記載の微粒子の超音波反応装置において、
前記分散状態検出手段は、光学的に微粒子の分散状態を検出することを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項3に記載の微粒子の超音波反応装置において、
前記分散状態検出手段は、微粒子の分散状態を表す前記容器内の圧力を検出することを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項1に記載の微粒子の超音波反応装置において、
供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させる移動手段と、
前記容器が所定の軌跡を描くように、前記移動手段による移動を制御する移動制御手段と、
を有し、前記所定の軌跡上に超音波の作用ポイントが含まれるように前記所定の軌跡が設定されていることを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項6に記載の微粒子の超音波反応装置において、
前記超音波制御装置は、前記供給状態では、所定の供給期間が経過する間、超音波を容器へ供給させ、
前記移動制御手段は、前記供給期間内に前記所定の軌跡を通るように前記容器の移動を制御することを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項1に記載の微粒子の超音波反応装置において、
供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させる移動手段と、
前記容器へ作用する超音波を検出する超音波検出手段と、
検出される超音波に基づいて、超音波の作用ポイントに前記容器が位置するように前記移動手段を制御する移動制御手段と、
を含むことを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の微粒子の超音波反応装置において、
前記超音波漕の温度を検出する温度検出手段と、
検出される温度に応じて動作し、前記超音波漕内の液体を循環させる温度制御機能付きの循環ポンプと、
を含むことを特徴とする微粒子の超音波反応装置。 - 微粒子および前記微粒子と反応すべき物質の入った容器を超音波漕内に収容し、前記容器に超音波を供給する微粒子の超音波反応方法であって、
前記容器への超音波の供給状態と供給制限状態が繰り返されるように超音波の供給を制御することを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項10に記載の微粒子の超音波反応方法において、
前記超音波制御手段は、予め決められた周期で超音波振動子に振動のオンオフを繰り返させることを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項11に記載の微粒子の超音波反応方法において、
前記容器中の微粒子の分散状態を検出し、検出される分散状態に応じて、前記微粒子が分散している所定の状態で超音波の供給を制限することを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項12に記載の微粒子の超音波反応方法において、
光学的に微粒子の分散状態を検出することを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項12に記載の微粒子の超音波反応方法において、
微粒子の分散状態を表す前記容器内の圧力を検出することを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項10に記載の微粒子の超音波反応方法において、
前記容器が所定の軌跡を描くように、供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させ、前記所定の軌跡は、該軌跡上に超音波の作用ポイントが含まれるように設定されていることを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項15に記載の微粒子の超音波反応方法において、
前記供給状態では、所定の供給期間が経過する間、超音波を容器へ供給するとともに、前記供給期間内に前記所定の軌跡を通るように前記容器の移動を制御することを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項10に記載の微粒子の超音波反応方法において、
前記容器へ作用する超音波を検出し、検出される超音波に基づいて、超音波の作用ポイントに前記容器が位置するように、供給される超音波に対して相対的に前記容器を移動させることを特徴とする微粒子の超音波反応方法。 - 請求項10〜17のいずれかに記載の微粒子の超音波反応方法において、
前記超音波漕の温度を検出し、検出される温度に応じて、温度制御機能付きの循環ポンプを用いて前記超音波漕内の液体を循環させることを特徴とする微粒子の超音波反応方法。
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JP2003079272A JP2004283082A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | 微粒子の超音波反応装置 |
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JP2003079272A JP2004283082A (ja) | 2003-03-24 | 2003-03-24 | 微粒子の超音波反応装置 |
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JP2004283082A true JP2004283082A (ja) | 2004-10-14 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008543553A (ja) * | 2005-06-22 | 2008-12-04 | ラフバラ ユニヴァーシティ エンタープライズィズ リミテッド | ナノ懸濁液の濃縮方法 |
JP2010184162A (ja) * | 2009-02-10 | 2010-08-26 | Hitachi Ltd | 粒子製造装置 |
JP2015160151A (ja) * | 2014-02-26 | 2015-09-07 | セイコーエプソン株式会社 | 分散液およびその製造方法、製造装置 |
-
2003
- 2003-03-24 JP JP2003079272A patent/JP2004283082A/ja active Pending
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