JP2004282284A - 送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】CDMAシステム等の地理的に高密度な条件で周波数の再利用を行う無線通信システムにおいて、明確な指標であるブロック誤り率を基準とし、かつ、干渉電力の瞬時的変動にも即応できるような形で、信号対干渉比を適切に制御する。
【解決手段】基準SIR計算部34は、ビタビ復号化部32から得られる受信ブロック単位の最尤パスメトリックにより、誤り検査部33による受信ブロック単位の誤り硬判定結果を軟判定化した結果に基づいて信号対干渉比の瞬時的変動を補正する制御値を計算すると共に、ブロック誤り率を目標値TBLERを基準として評価した結果に基づいて所定のブロック誤り率を確保する信号対干渉比の制御値を計算し、これらを合計して下り送信電力指示部35に対して送出する。
【選択図】 図2
【解決手段】基準SIR計算部34は、ビタビ復号化部32から得られる受信ブロック単位の最尤パスメトリックにより、誤り検査部33による受信ブロック単位の誤り硬判定結果を軟判定化した結果に基づいて信号対干渉比の瞬時的変動を補正する制御値を計算すると共に、ブロック誤り率を目標値TBLERを基準として評価した結果に基づいて所定のブロック誤り率を確保する信号対干渉比の制御値を計算し、これらを合計して下り送信電力指示部35に対して送出する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置に係り、特に受信側における誤り訂正結果を送信側にフィードバックして回線品質を維持することのできる送信電力制御方法、並びにそれを実現する無線通信システム及び無線通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
符号分割多元接続(CDMA)方式の無線通信システムにおいては、直交符号で区分された同一周波数を複数の移動局が共有するため、基地局がある移動局から受信した信号に対して、他の移動局からの受信信号が干渉となり、移動局から基地局への上り回線における通信品質(特に信号対干渉比、SIR)を劣化させる。特に、同一基地局に対して近距離に位置する移動局と遠距離に位置する移動局とが、送信側で同電力で送信すると、基地局の受信端においては、遠距離に位置する移動局からの受信信号に対して近距離に位置する移動局から相対的に大電力の干渉を受ける形になり、SIRの劣化が著しい(この現象は、いわゆる遠近問題として知られている)。
【0003】
この問題を解決するため、基地局の受信端においてSIRの所定値を維持することができるように、基地局から各移動局に対して送信電力制御コマンドを送出し、移動局側はこの送信電力制御コマンドにしたがって送信電力を設定する技術が用いられている。
【0004】
一方、基地局から移動局への下り回線においては、移動局が属するセルの基地局(通常、当該移動局との間で回線接続を行っている)からの受信信号については、当該移動局への信号であっても、他の移動局への信号(当該移動局に対しては干渉として作用する信号)であっても、共に同じ伝搬経路を経て受信されるため、信号及び干渉が共に伝搬経路に関して同一の変動を受けることとなり、受信SIRはほぼ一定となる。
【0005】
しかし、同一の周波数を使用している隣接セルがあって、その基地局から上述したのとは伝搬経路が異なる信号が干渉波として当該移動局に到来するような場合まで考慮すると、移動局での受信SIRはもはや一定値を保つとはいえない。したがって、下り回線においても、伝搬経路の変動等に起因する受信SIRの変動に追従し、所定の回線品質を維持するため、送信電力制御が不可欠である。
【0006】
このため、CDMAを基幹技術とする第三世代携帯電話のシステムにおいては、例えば移動局がそれぞれ受信SIRを評価して、その結果に基づき基地局に対して送信電力制御情報を送出し、基地局側においてこの情報に基づき送信電力制御を行うという対策がとられている。この場合、移動局は受信信号から所望の信号成分と干渉成分を抽出し、これから算出された受信SIRと所定の回線品質を得るための基準SIRとを比較して、送信電力制御情報の内容を決定し、これを基地局に対する送信信号に挿入して送信する。
【0007】
所定の回線品質を得るための基準SIRは移動局の置かれた環境によって異なり(例えば、郊外よりも都心部の方が基準SIRが一般に高い。)、その環境に適応した動的変更が必要である。したがって、移動局が受信SIRの変動を評価して、所定の回線品質を維持するように基準SIRを的確に制御することが重要となる。
【0008】
回線品質を評価するため、情報ビット列をブロック単位に区切り、送信側で各ブロックに誤り検査ビットを付加するブロック符号化を行って送信し、受信側で復号化して誤りの有無を判定するという方法が一般に用いられる。複数の一連のブロックを受信したとき、誤りが発見されたブロックの数の割合をブロック誤り率(BLER)として求め、この値が高いときは基準SIRを上げる必要があり、逆に低いときは基準SIRを下げてもよいと判断するものである(例えば、非特許文献1参照。)。
【0009】
このような下り回線の送信電力制御においては、受信SIRが良好で受信ブロックに誤りがない場合は基準SIRを減少させることが可能であるから、移動局は基地局に対し送信電力を下げる旨の制御情報を送信する。基地局側では、受信した送信電力制御情報に従って送信電力を減少させていき、その結果、移動局での受信SIRも低下していく。これは、他の移動局に対する干渉電力の低下につながるので、全体最適の観点から望ましいものである。
【0010】
しかし、隣接セル等の影響によって干渉電力が瞬時的に大きくなるような場合は、これに伴って受信SIRの劣化を生じ、バースト的な誤りが発生してBLERが急上昇する。したがって送信電力制御により、基準SIRを高める方向に働く送信電力制御情報が移動局から基地局に送られる。このとき問題となるのは、BLERが連続する一連のブロック数を母数として計算されるため、その評価にある程度の時間を要し、瞬時的な受信SIRの劣化に対して時間的に追従しきれない場合である。つまり、BLERの評価値のみによって基準SIRを制御する方法は、瞬時的な受信SIRの変動に対して即応できないという欠点がある。
【0011】
CDMA以外の方式をとる無線通信システムについて、同種の回線品質の劣化に対して、畳み込み符号及びその復号の技術を応用して、送信電力を制御する発明がなされている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に開示された発明は、トレリス符号化変調された信号を受信側でビタビ復号したときに得られるパスメトリックによって伝送誤り率を評価し、その結果に基づいて制御信号を生成して送信側にフィードバックするというものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平6−232922号公報(第2乃至第7ページ、図1)
【0013】
【非特許文献1】
H.Holma、A.Toskala共著、“WCDMA for UMTS”、出版元John Wiley & Sons、2000年刊行(第196乃至203ページ)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述したBLERの観測値を基本とする基準SIRの増減の制御は、BLERの規定値と比較しての良否という指標が明確であるが、定義上、一定数以上の連続するブロックについて誤りの有無を判定しない限りBLERを評価をすることができないので、即応性の面で問題がある。一方、上記の特許文献1に開示された発明は、即応性の面ではより優れるものと考えられるが、適用の対象がトレリス符号化変調を用いるシステムに限定されているので、例えば第三世代携帯電話のシステムにそのまま適用することができないという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は、基準SIR設定の指標が明確で、移動通信環境の変化に迅速に対応でき、第三世代携帯電話のシステムに適用することのできる送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の送信電力制御方法は、第1の無線通信装置が、ブロック単位で区切られた情報ビット列をブロック符号化及び畳み込み符号化して得られた連接符号化送信ビット列により搬送波を変調して送信した信号を、第2の無線通信装置が受信、復調し復号化する際のブロック誤り率が規定された無線通信システムにおける送信電力制御方法であって、前記第2の無線通信装置は、前記信号を受信して復調することにより、連接符号化受信ビット列を生成し、前記ブロック単位で前記連接符号化受信ビット列をトレリス線図を用いて復号化することにより、ブロック符号化受信ビット列及び最尤パスメトリック値を生成すると共に、前記ブロック符号化受信ビット列を復号化して誤り硬判定を得て、さらに、前記誤り硬判定の結果、前記最尤パスメトリック値及び1つ前のブロックで求めた誤り軟判定の結果を用いて誤り軟判定を得て、その結果に基づき前記受信における信号対干渉比の第1の所要の増減値を出力し、前記ブロック単位の前記誤り硬判定の結果に基づいて求めたブロック誤り率を前記規定されたブロック誤り率と比較することにより、前記受信における信号対干渉比の第2の所要の増減値を出力し、前記受信における信号対干渉比の第1及び第2の所要の増減値に基づいて、前記第1の無線通信装置の送信電力の増減に係る制御情報を生成して前記第1の無線通信装置に対して送信することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、無線通信システムにおいて規定されたBLERを指標とし、移動通信環境における瞬時的なSIRの変化に対しても迅速に対応して回線品質を保つことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明に係る送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置の第1の実施の形態を、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図示した無線通信システムは、基地局1及び移動局2から構成され、基地局1は回線網インターフェース11を介して図示しない回線網に接続されている。基地局1の送信系は、符号器12、変復調部13、送信部14及びアンテナ15から構成される。また、基地局1の受信系は、送信系と共用するアンテナ15及び変復調部13のほか、受信部16及び復号器17から構成される。18は送信電力制御部である。その他の本発明と直接関係のない基地局1の構成は、図1に示していない。
【0020】
一方、移動局2の受信系は、アンテナ21、受信部22、変復調部23、復号器24から構成される。25は入出力部で、受話器、送話器、表示器、操作ボタン、カメラ及びそれらの周辺回路等からなる。また、移動局2の送信系は、受信系と共用するアンテナ21及び変復調部23のほか、SIR評価部26、符号器27及び送信部28から構成される。なお説明の都合上、復号器24、SIR評価部26及び符号器27を含めてSIR制御部29とする。また、その他の本発明と直接関係のない移動局2の構成は、図1に示していない。
【0021】
なお、復号器24が行う復号化及び符号器27が行う符号化は、本発明の送信電力制御方法に直接関わるものを指し、音声や画像等の情報源符号化及び復号化の役割を果たす部分は、上記の周辺回路の一部として入出力部25に含まれるものとする。
【0022】
図2は、SIR制御部29を構成する復号器24、SIR評価部26及び符号器27の詳細の構成を示すブロック図である。この図に示すように、復号器24は、デフレーミング処理部30、デインターリーブ処理部31、ビタビ復号化部32及び誤り検査部33から構成され、SIR評価部26は基準SIR計算部34及び下り送信電力指示部35から構成されている。また、符号器27は、誤り検査ビット付加部36、畳み込み符号化部37、インターリーブ処理部38及びフレーミング処理部39から構成されている。なお、SIR制御部29に含まれない変復調部23及び入出力部25は、破線で示している。
【0023】
図3は、基準SIR計算部34の詳細の構成を示すブロック図である。この図に示すように、基準SIR計算部34は、軟判定処理部41、1ブロック遅延部42及び43、ΔSIR計算部A44、ΔSIR計算部B45、加算器46及び47、TSIRレジスタ48から構成される。なお、基準SIR計算部34に含まれないビタビ復号化部32、誤り検査部33及び下り送信電力指示部35は、破線で示している。
【0024】
続いて、図1を再び参照して、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの動作について説明する。まず基地局1から移動局2に対して送信する下り回線において、基地局1は、回線網インターフェース11を介して図示しない回線網から移動局2に対して送信すべき情報(例えば音声、メール文、画像)を受け取り、これを符号器12で誤り訂正符号化して下り送信ビット列を得ると共に、送信の時間的単位である送信フレームの形に編集(フレーム化)し、この下り送信フレームにより変復調部13において搬送波を変調して得た下り送信信号を、送信部14からアンテナ15を経て移動局2に対して送信する。
【0025】
なお、符号器12における誤り訂正符号化は、送信すべき情報を表す原ビット列を一定長で区切ったブロックの単位で誤り検査ビットを付加するブロック符号化と、これに続く畳み込み符号化からなる連接符号化に加え、インターリーブ処理を行う広い意味のものであると想定する。
【0026】
移動局2は、空間を伝搬してきた上記下り送信信号をアンテナ21及び受信部22により受信するが、通常このとき受信された信号は、雑音や干渉の影響を受けて、基地局1が送信した信号に対して誤りを含む可能性があるものとなっている。移動局2は、これを変復調部23で復調して得た下り受信フレームから、復号器24において下り受信ビット列を取り出す(デフレーム化)と共に誤り訂正復号化し、さらに入出力部25においてもとの情報(音声、メール文、画像等)を表す原ビット列を再現し、必要な変換を行って出力する。
【0027】
なお、復号器24における誤り訂正復号化は、基地局1における広い意味の誤り訂正符号化に対応して、デインターリーブ処理、ビタビ復号化及びブロック復号化からなるものと想定する。ブロック復号化の結果、各ブロック単位で誤りの有無が判定され、ブロック誤り率(BLER)が評価される。このBLERは、下り回線の品質を評価する指標であるが、その定義上、計測に一定の時間が必要である(例えば、BLER=0.01を基準値とすると、最小でも100ブロックについて誤りの有無を判定しなければ結果が得られない。)。この点は、発明が解決しようとする課題において述べたとおりである。
【0028】
ここで、復号器24で誤り訂正復号化する際に得られた誤りの程度に関する情報が、SIR評価部26に入力され、下り回線の受信SIRの過不足を評価してその結果に基づき基地局1の送信電力を制御する(受信SIRが不足する場合は基準SIRを上げるように送信電力を上げ、受信SIRが過剰である場合は基準SIRを下げるように送信電力を下げる。)ための情報が生成される。この情報は、上述したBLERを基準とするだけでなく、瞬時的な受信SIRの変化にも対応できるものであることが必要とされる。なお、この点を含め、SIR評価部26の動作については後で詳しく説明する。
【0029】
また、変復調部23は、その時点で推定して求めた受信SIRを、下り送信電力指示部35に対して出力する。受信SIRの推定については、例えば、基地局1の符号器12において、下り送信フレームにパターンが既知のパイロット信号ビット列を挿入し、移動局2の変復調部23が下り受信フレームを復調したとき得られた当該パイロット信号ビット列(ただし誤りを含む可能性がある。)とその既知パターンとの相関をとり、その相関値により受信SIRを推定する方法が知られている。
【0030】
次に、移動局2から基地局1に対して送信する上り回線において、移動局2は、入出力部25において入力され情報源符号化された音声、メール文、画像等の情報を、符号器27で誤り訂正符号化して上り送信ビット列を得ると共に、下り回線の場合と同様にフレーム化する。このフレーム化の際に、SIR制御部26から上述した基地局1の送信電力を制御するための情報が符号器27に対して入力され、この送信電力制御情報を含んだ上り送信フレームが生成される。移動局2は、この上り送信フレームにより変復調部23において搬送波を変調して得た上り送信信号を、送信部28からアンテナ21を経て基地局1に対して送信する。
【0031】
基地局1は、空間を伝搬してきた上記上り送信信号をアンテナ15及び受信部16により受信し、変復調部13で復調して上り受信フレームを得る。これを復号器17でデフレーム化して上り受信ビット列を得るとき、上記の送信電力制御情報を同時に抽出し、送信電力制御部18はこの抽出された送信電力制御情報に基づいて、送信部14に対して送信電力制御を行う。その他の上り受信ビット列を構成する情報は、復号器17で誤り訂正復号化され、回線網インターフェース11を介して図示しない回線網に送り出される。
【0032】
さて、本実施の形態に係る無線通信システムの動作において最も重要な移動局2のSIR評価部26の動作について、以下に図2及び図3を再び参照して説明する。初めに図2において、変復調部23から復号器24に入力された下り受信フレームは、まずデフレーミング処理部30においてデフレーム化され、次にデインターリーブ処理部31においてデインターリーブ処理がされる。
【0033】
これに続いて、ビタビ復号化部32において、可能性のある出力のビット列を表す複数のパスの中から、受信ビット列との間の距離(ハミング距離又はユークリッド距離等の符号間距離)が最も小さい出力ビット列に対応するパスを逐次選定し、復号処理の最終状態において上記の距離の累積値(パスメトリック)が最小であるパスを1つ選ぶという、よく知られたアルゴリズムに基づいてビタビ復号化が行われる。なお、最終的に選ばれたパスのパスメトリックは最尤パスメトリックと呼ばれ、下り回線の受信SIRが高いほどその値が小さいこともよく知られている。後で説明するように、この最尤パスメトリックの値が、基準SIR計算部34に入力されて用いられる。
【0034】
ビタビ復号化部32の出力は、最も確からしいと推定されたブロック符号化ビット列であるので、これを誤り検査部33に入力してブロック復号化を行い、ブロック単位で誤りの有無を判定する。この判定は、誤りの有無を2値で表現する硬判定と呼ばれるものである。その判定結果及び復号化された原ビット列は入出力部25に対して出力され、また同じ判定結果が基準SIR計算部34に対して出力される。
【0035】
次に、上記の最尤パスメトリック値及び判定結果を受け取ったSIR評価部26の基準SIR計算部34の動作について、図3を再び参照して詳しく説明する。いま受信され復号化されたブロックの誤りの有無について、誤り検査部33による硬判定結果のみから単純に基準SIRの上げ下げを決めるだけでは、回線品質がさまざまに変化する移動通信の環境に適切に対応することは難しい。そこで、誤り検査部33による硬判定結果をまず軟判定処理部41に入力し、ビタビ復号化部32から得られる最尤パスメトリック値を用いて、基準SIRの上げ下げの程度を木目細かく設定できるようにする。
【0036】
これは、硬判定値の軟判定化と呼ばれ、例えば硬判定の結果が「誤りあり」であって基準SIRを上げる制御値を出力する場合、最尤パスメトリック値が大きければ回線品質の劣化の程度が大きいと考えて基準SIRの上げ幅を大きくし、最尤パスメトリック値が小さければ回線品質の劣化の程度が小さいと考えて基準SIRの上げ幅を小さくするというものである。
【0037】
また、軟判定処理においては、いま受信したブロックと1つ前に受信したブロックとの間で受信SIRの相関関係をある程度考慮する必要がある。このため、1つ前のブロックの軟判定結果を、1ブロック遅延部42を介して軟判定処理部41に入力し、軟判定処理に用いている。
【0038】
軟判定処理部41は、以上の入力を得て軟判定結果を計算し出力する。この計算では、例えば、1ブロック前の軟判定値と最尤パスメトリック値(値が大きいほど基準SIRを上げる方向に作用させる。)とをそれぞれ適切に重み付けして加算すると共に、硬判定結果により基準SIRを上げるか下げるかの符号を決定するような方法が考えられ、無線通信システムの特性に応じて最適化すればよい。なお、入力の組合せに対して得るべき出力を予めテーブルとして準備しておけば、非線形演算が必要な場合であっても、迅速に軟判定処理を行うことができる。
【0039】
ΔSIR計算部A44は、軟判定処理部41から上記の軟判定結果を受け取って、対応する基準SIRの上げ下げ及びその大きさを決定する。この、軟判定処理部41及びΔSIR計算部A44による基準SIRの上げ下げの制御は、1ブロックごとに行われるので、回線品質の瞬時的な変動を補償するように作用する。ただし、回線品質についての絶対的な基準とは関わりなく、ブロック単位の誤りの有無とその程度に対応して、都度基準SIRの上げ下げを制御するものである点に注意しなければならない。
【0040】
一方、ΔSIR計算部B45は、同じく誤り検査部32から硬判定による誤り判定結果を受け取るが、ブロックごとに基準SIRを上げ下げする制御値を出力しないで、BLERを評価するために必要な数の連続するブロックについて硬判定結果を蓄積する。この評価の基準値は、目標BLER(TBLER)として与えられている。例えばTBLER=0.01の場合、ΔSIR計算部B45は、連続する100ブロック(BLER算出の母数)について硬判定結果を蓄積し、誤ったと判定されたブロックの数によってBLERを算出し、その値がTBLER=0.01よりも大きければ基準SIRを上げ、その値がTBLER=0.01よりも小さければ基準SIRを下げる制御値を出力する。
【0041】
このような蓄積及び算出の処理は、例えばマイクロプロセッサにより実行されるレジスタ機能及び加減乗除の演算により実現することができる。この、ΔSIR計算部B45による基準SIRの上げ下げの制御は、TBLERを回線品質についての絶対的な基準として行われるので、上述した軟判定処理部41及びΔSIR計算部A44による瞬時的な基準SIRの上げ下げの制御に対して、相補的に作用するものである。
【0042】
したがって、加算器46において、ΔSIR計算部A44及びΔSIR計算部B45各々による基準SIRの上げ下げの制御値を加算することにより、絶対的な基準であるTBLERに基づき、かつ、回線品質の瞬時変動にも対応できる基準SIRの上げ下げの制御値が得られる。この制御値(正負の値をとる。)を、加算器47において目標SIR(TSIR)レジスタ48に記憶されたTSIR値に加算し、TSIRの更新値を得て下り送信電力指示部35に対して出力すると共に、1ブロック遅延部43を介して次のブロックを処理するときのTSIRレジスタ48の内容を更新する。
【0043】
上記の基準SIR計算部34の出力であるTSIR値は、図2に示すように、下り送信電力指示部35に入力される。下り送信電力指示部35は、変復調部23から入力された推定SIR値をこのTSIR値と比較し、その大小及び差の絶対値に基づき、基地局1に対して指示すべき下り送信電力の上げ下げ及びその値を決定して、フレーミング処理部39に対して出力する。このような処理は、例えばマイクロプロセッサ等の演算処理によって実現することができる。
【0044】
これを受けたフレーミング処理部39は、上記の下り送信電力の上げ下げ及びその値についての制御情報を、入出力部25から誤り検査ビット付加部36、畳み込み符号化部37及びインタリーブ処理部38を経て送られてきた音声や画像等の本来送信すべき情報と共にフレーム化して、変復調部23に対して出力する。これが基地局1に対して送信され、基地局1において下り送信電力が制御されることは、既に説明した通りである。
【0045】
次に、以上の本実施の形態に係る動作について、図4に示したフローチャートを参照して説明する。このフローチャートはブロック単位の処理を表したもので、図中の記号“N”は、通信開始後何ブロック目の処理であるかを表す整数とする。また、“Nb”はBLER算出の母数、kは1以上の整数である。
【0046】
まず通信開始直後(“N=0”)には(ステップS1の“YES”)、ΔSIR計算部B45に対するTBLERの設定、BLERの初期化(ゼロに設定)及びTSIRレジスタ48におけるTSIR値の初期化が行われる(ステップS2)。初期化されたTSIR値が下り送信電力指示部に送出されて(ステップS3)、基地局1における下り回線の送信電力の初期値が設定され、Nの値が更新される(ステップS4)。
【0047】
次に、ブロックを受信し復号化した(“N≧1”)場合の処理について説明する。軟判定処理において、1つ前に受信したブロックの軟判定処理の結果を参照する必要があることから、Nの値が1である(1つ前の受信ブロックが存在しない)場合と、Nの値が2以上である場合とに分ける必要がある(ステップS5)。“N=1”のときは(ステップS5の“YES”)、実際には存在しない受信ブロック“0”の誤り軟判定値を何らかの値に設定して、以降の計算に用いる必要がある(ステップS6)。一方、Nの値が2以上である場合は(ステップS5の“NO”)、(N−1)番目(1つ前)の受信ブロックにおける誤り軟判定値を読み出す(ステップS7)。
【0048】
続いて、ビタビ復号化部32からN番目の受信ブロックにおける最尤パスメトリックの値を取得する(ステップS8)と共に、誤り検査部33からN番目の受信ブロックにおける誤り硬判定値を取得する(ステップS9)。なお、ステップS9においては、BLERの計算に供するため、誤りがあったと判定されたとき誤りブロック数の累和をカウントする。
【0049】
ΔSIR計算部A44は、以上のN番目の受信ブロックにおける最尤パスメトリック値及び誤り硬判定値並びにN−1番目の受信ブロックにおける誤り軟判定値に基づき、N番目の受信ブロックにおける誤り軟判定値を計算し(ステップS10)、さらに対応する基準SIRの上げ下げの制御値(“ΔSIR(軟判定)”)を決定する(ステップS11)。
【0050】
次に、Nが母数Nbの整数倍であるか否かを判断し、該当しない場合には(ステップS12の“NO”)、BLERの計算を行わず、またBLERに基づく基準SIRの上げ下げの制御値(“ΔSIR(BLER)”)をゼロとする(ステップS13)。一方、Nが母数Nbの整数倍である場合には(ステップS12の“YES”)、1受信ブロックごとの処理の都度ステップS9においてカウントされた「誤りあり」のブロック数の累和に基づき、ΔSIR計算部B45がBLERを計算し、その値を予め設定されたTBLERと比較して(ステップS14)、対応するΔSIR(BLER)の値を計算する(ステップS15)。なお、この計算の後BLERは初期値(ゼロ)に戻されて(ステップS16)、次の受信ブロック以降において再び「誤りあり」のブロック数の累和がカウントされて行くこととなる。
【0051】
ステップS11において計算されたΔSIR(軟判定)と、ステップS13又はS15において計算されたΔSIR(BLER)とは、加算器46において可算され、その結果に基づいてTSIR値が更新される(ステップS17)。更新されたTSIR値が下り送信電力指示部35に送られ(ステップS3)、Nの値が更新される(ステップS4)のは、“N=0”の場合と同様である。
【0052】
本発明の第1の実施の形態によれば、受信側でブロック単位の誤り軟判定値等に基づく即応性に優れた基準SIRの制御と定量的な基準であるBLERに基づく基準SIRの制御を組み合わせて、送信側に対して制御情報を送出し、送信側の送信電力を適切に制御することができる。
【0053】
なお、本実施の形態は、多元接続方式としてCDMAを採用する無線通信システムに好適であるが、CDMA以外の多元接続方式をとる無線通信システムにも適用することができるのはいうまでもない。また、以上の説明においては下り回線の基準SIRを制御するものと想定したが、上り回線についてもまったく同様に適用することができる。さらに、最尤パスメトリックを得るためにはビタビ復号に限らず、最大事後確率復号又はターボ復号を用いることもできる。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下に、本発明に係る送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置の第2の実施の形態を、図5を参照して説明する。なお、図1に示したシステム構成は、第2の実施の形態においてもまったく同様である。
【0055】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置(移動局2)のうち、SIR制御部29の構成を示すブロック図である。図2に示した第1の実施の形態に係る移動局2のSIR制御部29との構成上の相違は、ビタビ復号化部32と基準SIR計算部34との間に、ビット比較部50を設けた点である。その他の構成は、すべて図2と共通であるので、個別の説明は省略する。
【0056】
次に、同じく図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る移動局2のSIR制御部29の動作について説明する。変復調部23から復号器24に入力された下り受信フレームが、デフレーミング処理部30においてデフレーム化され、次にデインターリーブ処理部31においてデインターリーブ処理がされるまでの動作は、第1の実施の形態の場合と同様である。また、ビタビ復号化部32におけるビタビ復号動作も第1の実施の形態の場合と同様である。
【0057】
ビット比較部50は、ビタビ復号を行なう入力ビット列とその復号ビット列との単純比較ではなく、ビタビ復号によって得られた出力ビット列を再度、送信側で行なったと同一手順で畳込み符号化し、その結果とビタビ復号への入力ビット列の硬判定値との対応するビットどうしを比較し、その相違ビット数を計数する。このような処理を行なうことで誤り訂正前のビット誤り数を見積もることができ、パスメトリックを指標とした第1の実施の形態と同様に受信品質の評価が実現できる。これは、第1の実施の形態においてパスメトリックをハミング距離で定義した場合と等価であるから、その値を基準SIR計算部34に入力し、以降の動作は第1の実施の形態の場合とまったく同様に行うことができる。すなわち、本発明の第2の実施の形態によれば、パスメトリックの意味をハミング距離として物理的に明確にした形で処理を行うことができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、移動通信環境におけるSIRの変化に対して、正確、迅速かつ木目細かく無線通信システムを対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムのブロック図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るSIR制御部のブロック図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るSIR評価部のブロック図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るフローチャート。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るSIR制御部のブロック図。
【符号の説明】
1 基地局
2 移動局
11 回線網インターフェース
12 符号器
13 変復調部
14 送信部
15 アンテナ
16 受信部
17 復号器
18 送信電力制御部
21 アンテナ
22 受信部
23 変復調部
24 復号器
25 入出力部
26 SIR評価部
27 符号器
28 送信部
29 SIR制御部
30 デフレーミング処理部
31 デインターリーブ処理部
32 ビタビ復号化部
33 誤り検査部
34 基準SIR計算部
35 下り送信電力指示部
36 誤り検査ビット生成部
37 畳み込み符号化部
38 インターリーブ処理部
39 フレーミング処理部
41 軟判定処理部
42、43 1ブロック遅延部
44 ΔSIR計算部A
45 ΔSIR計算部B
46、47 加算器
48 TSIRレジスタ
【発明の属する技術分野】
本発明は送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置に係り、特に受信側における誤り訂正結果を送信側にフィードバックして回線品質を維持することのできる送信電力制御方法、並びにそれを実現する無線通信システム及び無線通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
符号分割多元接続(CDMA)方式の無線通信システムにおいては、直交符号で区分された同一周波数を複数の移動局が共有するため、基地局がある移動局から受信した信号に対して、他の移動局からの受信信号が干渉となり、移動局から基地局への上り回線における通信品質(特に信号対干渉比、SIR)を劣化させる。特に、同一基地局に対して近距離に位置する移動局と遠距離に位置する移動局とが、送信側で同電力で送信すると、基地局の受信端においては、遠距離に位置する移動局からの受信信号に対して近距離に位置する移動局から相対的に大電力の干渉を受ける形になり、SIRの劣化が著しい(この現象は、いわゆる遠近問題として知られている)。
【0003】
この問題を解決するため、基地局の受信端においてSIRの所定値を維持することができるように、基地局から各移動局に対して送信電力制御コマンドを送出し、移動局側はこの送信電力制御コマンドにしたがって送信電力を設定する技術が用いられている。
【0004】
一方、基地局から移動局への下り回線においては、移動局が属するセルの基地局(通常、当該移動局との間で回線接続を行っている)からの受信信号については、当該移動局への信号であっても、他の移動局への信号(当該移動局に対しては干渉として作用する信号)であっても、共に同じ伝搬経路を経て受信されるため、信号及び干渉が共に伝搬経路に関して同一の変動を受けることとなり、受信SIRはほぼ一定となる。
【0005】
しかし、同一の周波数を使用している隣接セルがあって、その基地局から上述したのとは伝搬経路が異なる信号が干渉波として当該移動局に到来するような場合まで考慮すると、移動局での受信SIRはもはや一定値を保つとはいえない。したがって、下り回線においても、伝搬経路の変動等に起因する受信SIRの変動に追従し、所定の回線品質を維持するため、送信電力制御が不可欠である。
【0006】
このため、CDMAを基幹技術とする第三世代携帯電話のシステムにおいては、例えば移動局がそれぞれ受信SIRを評価して、その結果に基づき基地局に対して送信電力制御情報を送出し、基地局側においてこの情報に基づき送信電力制御を行うという対策がとられている。この場合、移動局は受信信号から所望の信号成分と干渉成分を抽出し、これから算出された受信SIRと所定の回線品質を得るための基準SIRとを比較して、送信電力制御情報の内容を決定し、これを基地局に対する送信信号に挿入して送信する。
【0007】
所定の回線品質を得るための基準SIRは移動局の置かれた環境によって異なり(例えば、郊外よりも都心部の方が基準SIRが一般に高い。)、その環境に適応した動的変更が必要である。したがって、移動局が受信SIRの変動を評価して、所定の回線品質を維持するように基準SIRを的確に制御することが重要となる。
【0008】
回線品質を評価するため、情報ビット列をブロック単位に区切り、送信側で各ブロックに誤り検査ビットを付加するブロック符号化を行って送信し、受信側で復号化して誤りの有無を判定するという方法が一般に用いられる。複数の一連のブロックを受信したとき、誤りが発見されたブロックの数の割合をブロック誤り率(BLER)として求め、この値が高いときは基準SIRを上げる必要があり、逆に低いときは基準SIRを下げてもよいと判断するものである(例えば、非特許文献1参照。)。
【0009】
このような下り回線の送信電力制御においては、受信SIRが良好で受信ブロックに誤りがない場合は基準SIRを減少させることが可能であるから、移動局は基地局に対し送信電力を下げる旨の制御情報を送信する。基地局側では、受信した送信電力制御情報に従って送信電力を減少させていき、その結果、移動局での受信SIRも低下していく。これは、他の移動局に対する干渉電力の低下につながるので、全体最適の観点から望ましいものである。
【0010】
しかし、隣接セル等の影響によって干渉電力が瞬時的に大きくなるような場合は、これに伴って受信SIRの劣化を生じ、バースト的な誤りが発生してBLERが急上昇する。したがって送信電力制御により、基準SIRを高める方向に働く送信電力制御情報が移動局から基地局に送られる。このとき問題となるのは、BLERが連続する一連のブロック数を母数として計算されるため、その評価にある程度の時間を要し、瞬時的な受信SIRの劣化に対して時間的に追従しきれない場合である。つまり、BLERの評価値のみによって基準SIRを制御する方法は、瞬時的な受信SIRの変動に対して即応できないという欠点がある。
【0011】
CDMA以外の方式をとる無線通信システムについて、同種の回線品質の劣化に対して、畳み込み符号及びその復号の技術を応用して、送信電力を制御する発明がなされている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に開示された発明は、トレリス符号化変調された信号を受信側でビタビ復号したときに得られるパスメトリックによって伝送誤り率を評価し、その結果に基づいて制御信号を生成して送信側にフィードバックするというものである。
【0012】
【特許文献1】
特開平6−232922号公報(第2乃至第7ページ、図1)
【0013】
【非特許文献1】
H.Holma、A.Toskala共著、“WCDMA for UMTS”、出版元John Wiley & Sons、2000年刊行(第196乃至203ページ)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述したBLERの観測値を基本とする基準SIRの増減の制御は、BLERの規定値と比較しての良否という指標が明確であるが、定義上、一定数以上の連続するブロックについて誤りの有無を判定しない限りBLERを評価をすることができないので、即応性の面で問題がある。一方、上記の特許文献1に開示された発明は、即応性の面ではより優れるものと考えられるが、適用の対象がトレリス符号化変調を用いるシステムに限定されているので、例えば第三世代携帯電話のシステムにそのまま適用することができないという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は、基準SIR設定の指標が明確で、移動通信環境の変化に迅速に対応でき、第三世代携帯電話のシステムに適用することのできる送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の送信電力制御方法は、第1の無線通信装置が、ブロック単位で区切られた情報ビット列をブロック符号化及び畳み込み符号化して得られた連接符号化送信ビット列により搬送波を変調して送信した信号を、第2の無線通信装置が受信、復調し復号化する際のブロック誤り率が規定された無線通信システムにおける送信電力制御方法であって、前記第2の無線通信装置は、前記信号を受信して復調することにより、連接符号化受信ビット列を生成し、前記ブロック単位で前記連接符号化受信ビット列をトレリス線図を用いて復号化することにより、ブロック符号化受信ビット列及び最尤パスメトリック値を生成すると共に、前記ブロック符号化受信ビット列を復号化して誤り硬判定を得て、さらに、前記誤り硬判定の結果、前記最尤パスメトリック値及び1つ前のブロックで求めた誤り軟判定の結果を用いて誤り軟判定を得て、その結果に基づき前記受信における信号対干渉比の第1の所要の増減値を出力し、前記ブロック単位の前記誤り硬判定の結果に基づいて求めたブロック誤り率を前記規定されたブロック誤り率と比較することにより、前記受信における信号対干渉比の第2の所要の増減値を出力し、前記受信における信号対干渉比の第1及び第2の所要の増減値に基づいて、前記第1の無線通信装置の送信電力の増減に係る制御情報を生成して前記第1の無線通信装置に対して送信することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、無線通信システムにおいて規定されたBLERを指標とし、移動通信環境における瞬時的なSIRの変化に対しても迅速に対応して回線品質を保つことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明に係る送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置の第1の実施の形態を、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図示した無線通信システムは、基地局1及び移動局2から構成され、基地局1は回線網インターフェース11を介して図示しない回線網に接続されている。基地局1の送信系は、符号器12、変復調部13、送信部14及びアンテナ15から構成される。また、基地局1の受信系は、送信系と共用するアンテナ15及び変復調部13のほか、受信部16及び復号器17から構成される。18は送信電力制御部である。その他の本発明と直接関係のない基地局1の構成は、図1に示していない。
【0020】
一方、移動局2の受信系は、アンテナ21、受信部22、変復調部23、復号器24から構成される。25は入出力部で、受話器、送話器、表示器、操作ボタン、カメラ及びそれらの周辺回路等からなる。また、移動局2の送信系は、受信系と共用するアンテナ21及び変復調部23のほか、SIR評価部26、符号器27及び送信部28から構成される。なお説明の都合上、復号器24、SIR評価部26及び符号器27を含めてSIR制御部29とする。また、その他の本発明と直接関係のない移動局2の構成は、図1に示していない。
【0021】
なお、復号器24が行う復号化及び符号器27が行う符号化は、本発明の送信電力制御方法に直接関わるものを指し、音声や画像等の情報源符号化及び復号化の役割を果たす部分は、上記の周辺回路の一部として入出力部25に含まれるものとする。
【0022】
図2は、SIR制御部29を構成する復号器24、SIR評価部26及び符号器27の詳細の構成を示すブロック図である。この図に示すように、復号器24は、デフレーミング処理部30、デインターリーブ処理部31、ビタビ復号化部32及び誤り検査部33から構成され、SIR評価部26は基準SIR計算部34及び下り送信電力指示部35から構成されている。また、符号器27は、誤り検査ビット付加部36、畳み込み符号化部37、インターリーブ処理部38及びフレーミング処理部39から構成されている。なお、SIR制御部29に含まれない変復調部23及び入出力部25は、破線で示している。
【0023】
図3は、基準SIR計算部34の詳細の構成を示すブロック図である。この図に示すように、基準SIR計算部34は、軟判定処理部41、1ブロック遅延部42及び43、ΔSIR計算部A44、ΔSIR計算部B45、加算器46及び47、TSIRレジスタ48から構成される。なお、基準SIR計算部34に含まれないビタビ復号化部32、誤り検査部33及び下り送信電力指示部35は、破線で示している。
【0024】
続いて、図1を再び参照して、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの動作について説明する。まず基地局1から移動局2に対して送信する下り回線において、基地局1は、回線網インターフェース11を介して図示しない回線網から移動局2に対して送信すべき情報(例えば音声、メール文、画像)を受け取り、これを符号器12で誤り訂正符号化して下り送信ビット列を得ると共に、送信の時間的単位である送信フレームの形に編集(フレーム化)し、この下り送信フレームにより変復調部13において搬送波を変調して得た下り送信信号を、送信部14からアンテナ15を経て移動局2に対して送信する。
【0025】
なお、符号器12における誤り訂正符号化は、送信すべき情報を表す原ビット列を一定長で区切ったブロックの単位で誤り検査ビットを付加するブロック符号化と、これに続く畳み込み符号化からなる連接符号化に加え、インターリーブ処理を行う広い意味のものであると想定する。
【0026】
移動局2は、空間を伝搬してきた上記下り送信信号をアンテナ21及び受信部22により受信するが、通常このとき受信された信号は、雑音や干渉の影響を受けて、基地局1が送信した信号に対して誤りを含む可能性があるものとなっている。移動局2は、これを変復調部23で復調して得た下り受信フレームから、復号器24において下り受信ビット列を取り出す(デフレーム化)と共に誤り訂正復号化し、さらに入出力部25においてもとの情報(音声、メール文、画像等)を表す原ビット列を再現し、必要な変換を行って出力する。
【0027】
なお、復号器24における誤り訂正復号化は、基地局1における広い意味の誤り訂正符号化に対応して、デインターリーブ処理、ビタビ復号化及びブロック復号化からなるものと想定する。ブロック復号化の結果、各ブロック単位で誤りの有無が判定され、ブロック誤り率(BLER)が評価される。このBLERは、下り回線の品質を評価する指標であるが、その定義上、計測に一定の時間が必要である(例えば、BLER=0.01を基準値とすると、最小でも100ブロックについて誤りの有無を判定しなければ結果が得られない。)。この点は、発明が解決しようとする課題において述べたとおりである。
【0028】
ここで、復号器24で誤り訂正復号化する際に得られた誤りの程度に関する情報が、SIR評価部26に入力され、下り回線の受信SIRの過不足を評価してその結果に基づき基地局1の送信電力を制御する(受信SIRが不足する場合は基準SIRを上げるように送信電力を上げ、受信SIRが過剰である場合は基準SIRを下げるように送信電力を下げる。)ための情報が生成される。この情報は、上述したBLERを基準とするだけでなく、瞬時的な受信SIRの変化にも対応できるものであることが必要とされる。なお、この点を含め、SIR評価部26の動作については後で詳しく説明する。
【0029】
また、変復調部23は、その時点で推定して求めた受信SIRを、下り送信電力指示部35に対して出力する。受信SIRの推定については、例えば、基地局1の符号器12において、下り送信フレームにパターンが既知のパイロット信号ビット列を挿入し、移動局2の変復調部23が下り受信フレームを復調したとき得られた当該パイロット信号ビット列(ただし誤りを含む可能性がある。)とその既知パターンとの相関をとり、その相関値により受信SIRを推定する方法が知られている。
【0030】
次に、移動局2から基地局1に対して送信する上り回線において、移動局2は、入出力部25において入力され情報源符号化された音声、メール文、画像等の情報を、符号器27で誤り訂正符号化して上り送信ビット列を得ると共に、下り回線の場合と同様にフレーム化する。このフレーム化の際に、SIR制御部26から上述した基地局1の送信電力を制御するための情報が符号器27に対して入力され、この送信電力制御情報を含んだ上り送信フレームが生成される。移動局2は、この上り送信フレームにより変復調部23において搬送波を変調して得た上り送信信号を、送信部28からアンテナ21を経て基地局1に対して送信する。
【0031】
基地局1は、空間を伝搬してきた上記上り送信信号をアンテナ15及び受信部16により受信し、変復調部13で復調して上り受信フレームを得る。これを復号器17でデフレーム化して上り受信ビット列を得るとき、上記の送信電力制御情報を同時に抽出し、送信電力制御部18はこの抽出された送信電力制御情報に基づいて、送信部14に対して送信電力制御を行う。その他の上り受信ビット列を構成する情報は、復号器17で誤り訂正復号化され、回線網インターフェース11を介して図示しない回線網に送り出される。
【0032】
さて、本実施の形態に係る無線通信システムの動作において最も重要な移動局2のSIR評価部26の動作について、以下に図2及び図3を再び参照して説明する。初めに図2において、変復調部23から復号器24に入力された下り受信フレームは、まずデフレーミング処理部30においてデフレーム化され、次にデインターリーブ処理部31においてデインターリーブ処理がされる。
【0033】
これに続いて、ビタビ復号化部32において、可能性のある出力のビット列を表す複数のパスの中から、受信ビット列との間の距離(ハミング距離又はユークリッド距離等の符号間距離)が最も小さい出力ビット列に対応するパスを逐次選定し、復号処理の最終状態において上記の距離の累積値(パスメトリック)が最小であるパスを1つ選ぶという、よく知られたアルゴリズムに基づいてビタビ復号化が行われる。なお、最終的に選ばれたパスのパスメトリックは最尤パスメトリックと呼ばれ、下り回線の受信SIRが高いほどその値が小さいこともよく知られている。後で説明するように、この最尤パスメトリックの値が、基準SIR計算部34に入力されて用いられる。
【0034】
ビタビ復号化部32の出力は、最も確からしいと推定されたブロック符号化ビット列であるので、これを誤り検査部33に入力してブロック復号化を行い、ブロック単位で誤りの有無を判定する。この判定は、誤りの有無を2値で表現する硬判定と呼ばれるものである。その判定結果及び復号化された原ビット列は入出力部25に対して出力され、また同じ判定結果が基準SIR計算部34に対して出力される。
【0035】
次に、上記の最尤パスメトリック値及び判定結果を受け取ったSIR評価部26の基準SIR計算部34の動作について、図3を再び参照して詳しく説明する。いま受信され復号化されたブロックの誤りの有無について、誤り検査部33による硬判定結果のみから単純に基準SIRの上げ下げを決めるだけでは、回線品質がさまざまに変化する移動通信の環境に適切に対応することは難しい。そこで、誤り検査部33による硬判定結果をまず軟判定処理部41に入力し、ビタビ復号化部32から得られる最尤パスメトリック値を用いて、基準SIRの上げ下げの程度を木目細かく設定できるようにする。
【0036】
これは、硬判定値の軟判定化と呼ばれ、例えば硬判定の結果が「誤りあり」であって基準SIRを上げる制御値を出力する場合、最尤パスメトリック値が大きければ回線品質の劣化の程度が大きいと考えて基準SIRの上げ幅を大きくし、最尤パスメトリック値が小さければ回線品質の劣化の程度が小さいと考えて基準SIRの上げ幅を小さくするというものである。
【0037】
また、軟判定処理においては、いま受信したブロックと1つ前に受信したブロックとの間で受信SIRの相関関係をある程度考慮する必要がある。このため、1つ前のブロックの軟判定結果を、1ブロック遅延部42を介して軟判定処理部41に入力し、軟判定処理に用いている。
【0038】
軟判定処理部41は、以上の入力を得て軟判定結果を計算し出力する。この計算では、例えば、1ブロック前の軟判定値と最尤パスメトリック値(値が大きいほど基準SIRを上げる方向に作用させる。)とをそれぞれ適切に重み付けして加算すると共に、硬判定結果により基準SIRを上げるか下げるかの符号を決定するような方法が考えられ、無線通信システムの特性に応じて最適化すればよい。なお、入力の組合せに対して得るべき出力を予めテーブルとして準備しておけば、非線形演算が必要な場合であっても、迅速に軟判定処理を行うことができる。
【0039】
ΔSIR計算部A44は、軟判定処理部41から上記の軟判定結果を受け取って、対応する基準SIRの上げ下げ及びその大きさを決定する。この、軟判定処理部41及びΔSIR計算部A44による基準SIRの上げ下げの制御は、1ブロックごとに行われるので、回線品質の瞬時的な変動を補償するように作用する。ただし、回線品質についての絶対的な基準とは関わりなく、ブロック単位の誤りの有無とその程度に対応して、都度基準SIRの上げ下げを制御するものである点に注意しなければならない。
【0040】
一方、ΔSIR計算部B45は、同じく誤り検査部32から硬判定による誤り判定結果を受け取るが、ブロックごとに基準SIRを上げ下げする制御値を出力しないで、BLERを評価するために必要な数の連続するブロックについて硬判定結果を蓄積する。この評価の基準値は、目標BLER(TBLER)として与えられている。例えばTBLER=0.01の場合、ΔSIR計算部B45は、連続する100ブロック(BLER算出の母数)について硬判定結果を蓄積し、誤ったと判定されたブロックの数によってBLERを算出し、その値がTBLER=0.01よりも大きければ基準SIRを上げ、その値がTBLER=0.01よりも小さければ基準SIRを下げる制御値を出力する。
【0041】
このような蓄積及び算出の処理は、例えばマイクロプロセッサにより実行されるレジスタ機能及び加減乗除の演算により実現することができる。この、ΔSIR計算部B45による基準SIRの上げ下げの制御は、TBLERを回線品質についての絶対的な基準として行われるので、上述した軟判定処理部41及びΔSIR計算部A44による瞬時的な基準SIRの上げ下げの制御に対して、相補的に作用するものである。
【0042】
したがって、加算器46において、ΔSIR計算部A44及びΔSIR計算部B45各々による基準SIRの上げ下げの制御値を加算することにより、絶対的な基準であるTBLERに基づき、かつ、回線品質の瞬時変動にも対応できる基準SIRの上げ下げの制御値が得られる。この制御値(正負の値をとる。)を、加算器47において目標SIR(TSIR)レジスタ48に記憶されたTSIR値に加算し、TSIRの更新値を得て下り送信電力指示部35に対して出力すると共に、1ブロック遅延部43を介して次のブロックを処理するときのTSIRレジスタ48の内容を更新する。
【0043】
上記の基準SIR計算部34の出力であるTSIR値は、図2に示すように、下り送信電力指示部35に入力される。下り送信電力指示部35は、変復調部23から入力された推定SIR値をこのTSIR値と比較し、その大小及び差の絶対値に基づき、基地局1に対して指示すべき下り送信電力の上げ下げ及びその値を決定して、フレーミング処理部39に対して出力する。このような処理は、例えばマイクロプロセッサ等の演算処理によって実現することができる。
【0044】
これを受けたフレーミング処理部39は、上記の下り送信電力の上げ下げ及びその値についての制御情報を、入出力部25から誤り検査ビット付加部36、畳み込み符号化部37及びインタリーブ処理部38を経て送られてきた音声や画像等の本来送信すべき情報と共にフレーム化して、変復調部23に対して出力する。これが基地局1に対して送信され、基地局1において下り送信電力が制御されることは、既に説明した通りである。
【0045】
次に、以上の本実施の形態に係る動作について、図4に示したフローチャートを参照して説明する。このフローチャートはブロック単位の処理を表したもので、図中の記号“N”は、通信開始後何ブロック目の処理であるかを表す整数とする。また、“Nb”はBLER算出の母数、kは1以上の整数である。
【0046】
まず通信開始直後(“N=0”)には(ステップS1の“YES”)、ΔSIR計算部B45に対するTBLERの設定、BLERの初期化(ゼロに設定)及びTSIRレジスタ48におけるTSIR値の初期化が行われる(ステップS2)。初期化されたTSIR値が下り送信電力指示部に送出されて(ステップS3)、基地局1における下り回線の送信電力の初期値が設定され、Nの値が更新される(ステップS4)。
【0047】
次に、ブロックを受信し復号化した(“N≧1”)場合の処理について説明する。軟判定処理において、1つ前に受信したブロックの軟判定処理の結果を参照する必要があることから、Nの値が1である(1つ前の受信ブロックが存在しない)場合と、Nの値が2以上である場合とに分ける必要がある(ステップS5)。“N=1”のときは(ステップS5の“YES”)、実際には存在しない受信ブロック“0”の誤り軟判定値を何らかの値に設定して、以降の計算に用いる必要がある(ステップS6)。一方、Nの値が2以上である場合は(ステップS5の“NO”)、(N−1)番目(1つ前)の受信ブロックにおける誤り軟判定値を読み出す(ステップS7)。
【0048】
続いて、ビタビ復号化部32からN番目の受信ブロックにおける最尤パスメトリックの値を取得する(ステップS8)と共に、誤り検査部33からN番目の受信ブロックにおける誤り硬判定値を取得する(ステップS9)。なお、ステップS9においては、BLERの計算に供するため、誤りがあったと判定されたとき誤りブロック数の累和をカウントする。
【0049】
ΔSIR計算部A44は、以上のN番目の受信ブロックにおける最尤パスメトリック値及び誤り硬判定値並びにN−1番目の受信ブロックにおける誤り軟判定値に基づき、N番目の受信ブロックにおける誤り軟判定値を計算し(ステップS10)、さらに対応する基準SIRの上げ下げの制御値(“ΔSIR(軟判定)”)を決定する(ステップS11)。
【0050】
次に、Nが母数Nbの整数倍であるか否かを判断し、該当しない場合には(ステップS12の“NO”)、BLERの計算を行わず、またBLERに基づく基準SIRの上げ下げの制御値(“ΔSIR(BLER)”)をゼロとする(ステップS13)。一方、Nが母数Nbの整数倍である場合には(ステップS12の“YES”)、1受信ブロックごとの処理の都度ステップS9においてカウントされた「誤りあり」のブロック数の累和に基づき、ΔSIR計算部B45がBLERを計算し、その値を予め設定されたTBLERと比較して(ステップS14)、対応するΔSIR(BLER)の値を計算する(ステップS15)。なお、この計算の後BLERは初期値(ゼロ)に戻されて(ステップS16)、次の受信ブロック以降において再び「誤りあり」のブロック数の累和がカウントされて行くこととなる。
【0051】
ステップS11において計算されたΔSIR(軟判定)と、ステップS13又はS15において計算されたΔSIR(BLER)とは、加算器46において可算され、その結果に基づいてTSIR値が更新される(ステップS17)。更新されたTSIR値が下り送信電力指示部35に送られ(ステップS3)、Nの値が更新される(ステップS4)のは、“N=0”の場合と同様である。
【0052】
本発明の第1の実施の形態によれば、受信側でブロック単位の誤り軟判定値等に基づく即応性に優れた基準SIRの制御と定量的な基準であるBLERに基づく基準SIRの制御を組み合わせて、送信側に対して制御情報を送出し、送信側の送信電力を適切に制御することができる。
【0053】
なお、本実施の形態は、多元接続方式としてCDMAを採用する無線通信システムに好適であるが、CDMA以外の多元接続方式をとる無線通信システムにも適用することができるのはいうまでもない。また、以上の説明においては下り回線の基準SIRを制御するものと想定したが、上り回線についてもまったく同様に適用することができる。さらに、最尤パスメトリックを得るためにはビタビ復号に限らず、最大事後確率復号又はターボ復号を用いることもできる。
【0054】
(第2の実施の形態)
以下に、本発明に係る送信電力制御方法、無線通信システム及び無線通信装置の第2の実施の形態を、図5を参照して説明する。なお、図1に示したシステム構成は、第2の実施の形態においてもまったく同様である。
【0055】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る無線通信装置(移動局2)のうち、SIR制御部29の構成を示すブロック図である。図2に示した第1の実施の形態に係る移動局2のSIR制御部29との構成上の相違は、ビタビ復号化部32と基準SIR計算部34との間に、ビット比較部50を設けた点である。その他の構成は、すべて図2と共通であるので、個別の説明は省略する。
【0056】
次に、同じく図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る移動局2のSIR制御部29の動作について説明する。変復調部23から復号器24に入力された下り受信フレームが、デフレーミング処理部30においてデフレーム化され、次にデインターリーブ処理部31においてデインターリーブ処理がされるまでの動作は、第1の実施の形態の場合と同様である。また、ビタビ復号化部32におけるビタビ復号動作も第1の実施の形態の場合と同様である。
【0057】
ビット比較部50は、ビタビ復号を行なう入力ビット列とその復号ビット列との単純比較ではなく、ビタビ復号によって得られた出力ビット列を再度、送信側で行なったと同一手順で畳込み符号化し、その結果とビタビ復号への入力ビット列の硬判定値との対応するビットどうしを比較し、その相違ビット数を計数する。このような処理を行なうことで誤り訂正前のビット誤り数を見積もることができ、パスメトリックを指標とした第1の実施の形態と同様に受信品質の評価が実現できる。これは、第1の実施の形態においてパスメトリックをハミング距離で定義した場合と等価であるから、その値を基準SIR計算部34に入力し、以降の動作は第1の実施の形態の場合とまったく同様に行うことができる。すなわち、本発明の第2の実施の形態によれば、パスメトリックの意味をハミング距離として物理的に明確にした形で処理を行うことができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、移動通信環境におけるSIRの変化に対して、正確、迅速かつ木目細かく無線通信システムを対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムのブロック図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るSIR制御部のブロック図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るSIR評価部のブロック図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るフローチャート。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るSIR制御部のブロック図。
【符号の説明】
1 基地局
2 移動局
11 回線網インターフェース
12 符号器
13 変復調部
14 送信部
15 アンテナ
16 受信部
17 復号器
18 送信電力制御部
21 アンテナ
22 受信部
23 変復調部
24 復号器
25 入出力部
26 SIR評価部
27 符号器
28 送信部
29 SIR制御部
30 デフレーミング処理部
31 デインターリーブ処理部
32 ビタビ復号化部
33 誤り検査部
34 基準SIR計算部
35 下り送信電力指示部
36 誤り検査ビット生成部
37 畳み込み符号化部
38 インターリーブ処理部
39 フレーミング処理部
41 軟判定処理部
42、43 1ブロック遅延部
44 ΔSIR計算部A
45 ΔSIR計算部B
46、47 加算器
48 TSIRレジスタ
Claims (9)
- 第1の無線通信装置が、ブロック単位で区切られた情報ビット列をブロック符号化及び畳み込み符号化して得られた連接符号化送信ビット列により搬送波を変調して送信した信号を、第2の無線通信装置が受信、復調し復号化する際のブロック誤り率が規定された無線通信システムにおける送信電力制御方法であって、前記第2の無線通信装置は、
前記信号を受信して復調することにより、連接符号化受信ビット列を生成し、
前記ブロック単位で前記連接符号化受信ビット列をトレリス線図を用いて復号化することにより、ブロック符号化受信ビット列及び最尤パスメトリック値を生成すると共に、前記ブロック符号化受信ビット列を復号化して誤り硬判定を得て、さらに、前記誤り硬判定の結果、前記最尤パスメトリック値及び1つ前のブロックで求めた誤り軟判定の結果を用いて誤り軟判定を得て、その結果に基づき前記受信における信号対干渉比の第1の所要の増減値を出力し、
前記ブロック単位の前記誤り硬判定の結果に基づいて求めたブロック誤り率を前記規定されたブロック誤り率と比較することにより、前記受信における信号対干渉比の第2の所要の増減値を出力し、
前記受信における信号対干渉比の第1及び第2の所要の増減値に基づいて、前記第1の無線通信装置の送信電力の増減に係る制御情報を生成して前記第1の無線通信装置に対して送信することを特徴とする送信電力制御方法。 - 前記無線通信システムにおける送信電力制御方法において、前記トレリス線図を用いてする復号化はビタビ復号、最大事後確率復号又はターボ復号であることを特徴とする請求項1に記載の送信電力制御方法。
- 前記無線通信システムは、符号分割多元接続システムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送信電力制御方法。
- 第1の無線通信装置が、ブロック単位で区切られた情報ビット列をブロック符号化及び畳み込み符号化して得られた連接符号化送信ビット列により搬送波を変調して送信した信号を、第2の無線通信装置が受信、復調し復号化する際のブロック誤り率が規定された無線通信システムにおいて、前記第2の無線通信装置は、
前記信号を受信して復調することにより、連接符号化受信ビット列を生成し、
前記ブロック単位で前記連接符号化受信ビット列をトレリス線図を用いて復号化することにより、ブロック符号化受信ビット列及び最尤パスメトリック値を生成すると共に、前記ブロック符号化受信ビット列を復号化して誤り硬判定を得て、さらに、前記誤り硬判定の結果、前記最尤パスメトリック値及び1つ前のブロックで求めた誤り軟判定の結果を用いて誤り軟判定を得て、その結果に基づき前記受信における信号対干渉比の第1の所要の増減値を出力し、
前記ブロック単位の前記誤り硬判定の結果に基づいて求めたブロック誤り率を前記規定されたブロック誤り率と比較することにより、前記受信における信号対干渉比の第2の所要の増減値を出力し、
前記受信における信号対干渉比の第1及び第2の所要の増減値に基づいて、前記第1の無線通信装置の送信電力の増減に係る制御情報を生成して前記第1の無線通信装置に対して送信することを特徴とする無線通信システム。 - 前記無線通信システムにおいて、前記トレリス線図を用いてする復号化はビタビ復号、最大事後確率復号又はターボ復号であることを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
- 符号分割多元接続システムであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の無線通信システム。
- 相手側装置と共に構成する無線通信システムにおいて、前記相手側装置がブロック単位で区切られた情報ビット列をブロック符号化及び畳み込み符号化して得た連接符号化送信ビット列により搬送波を変調して送信した信号を、受信し復号化する際のブロック誤り率が規定された無線通信装置であって、
前記送信された信号を受信して復調することにより、連接符号化受信ビット列を生成する手段と、
前記連接符号化受信ビット列を前記ブロック単位でトレリス線図を用いて復号化し、ブロック符号化受信ビット列及び最尤パスメトリック値を生成する手段と、前記ブロック符号化受信ビット列を復号化して、誤り硬判定の結果を出力する手段と、
前記ブロック単位の前記誤り硬判定の結果、前記最尤パスメトリック値及び1つ前のブロックについてした誤り軟判定の結果を用いて誤り軟判定をする手段と、前記誤り軟判定の結果に基づき、前記受信における信号対干渉比の第1の所要の増減値を出力する手段と、
前記ブロック単位の前記誤り硬判定の結果に基づいて求めたブロック誤り率を前記規定されたブロック誤り率と比較することにより、前記受信における信号対干渉比の第2の所要の増減値を出力する手段と、
前記受信における信号対干渉比の第1及び第2の所要の増減値に基づいて、前記相手側装置の送信電力の増減に係る制御情報を生成して、前記相手側装置に対して送信する手段とを備えたことを特徴とする無線通信装置。 - 前記無線通信システムを構成する無線通信装置において、前記トレリス線図を用いてする復号化はビタビ復号、最大事後確率復号又はターボ復号であることを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
- 前記無線通信システムは符号分割多元接続システムであることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の無線通信装置。
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