JP2004281200A - 永久磁石型ecrイオン源 - Google Patents
永久磁石型ecrイオン源 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004281200A JP2004281200A JP2003070051A JP2003070051A JP2004281200A JP 2004281200 A JP2004281200 A JP 2004281200A JP 2003070051 A JP2003070051 A JP 2003070051A JP 2003070051 A JP2003070051 A JP 2003070051A JP 2004281200 A JP2004281200 A JP 2004281200A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- permanent magnet
- magnetic field
- ion source
- ecr
- magnet type
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Electron Sources, Ion Sources (AREA)
Abstract
【課題】小型省電力、簡易型が可能な実用的ECRイオン源を提供する。
【解決手段】プラズマチェンバー12と、このプラズマチェンバー12周囲に設けられる永久磁石16と、高周波電力を供給する高周波電源18とを備え、永久磁石16がプラズマチェンバー12内に発生するミラー磁場内の電子を高周波電源18から供給される高周波電力により加速して、中性原子或いはイオンから順次電子を剥ぎ取り、多価のイオンを生成するようにした永久磁石型ECRイオン源10において、永久磁石16の側面に所定形状の切り欠き部16aを設けることにより、ECR磁場に対して発生する逆転磁場の強度を低減するように構成した。
この場合、切り欠き部16aに高透磁率材料15を挿着した構成とすると、逆転磁場の抑制に更に効果的である。
【選択図】 図1
【解決手段】プラズマチェンバー12と、このプラズマチェンバー12周囲に設けられる永久磁石16と、高周波電力を供給する高周波電源18とを備え、永久磁石16がプラズマチェンバー12内に発生するミラー磁場内の電子を高周波電源18から供給される高周波電力により加速して、中性原子或いはイオンから順次電子を剥ぎ取り、多価のイオンを生成するようにした永久磁石型ECRイオン源10において、永久磁石16の側面に所定形状の切り欠き部16aを設けることにより、ECR磁場に対して発生する逆転磁場の強度を低減するように構成した。
この場合、切り欠き部16aに高透磁率材料15を挿着した構成とすると、逆転磁場の抑制に更に効果的である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン加速器の多価イオンソースとなるECR(Electron Cycrotron Resonance)イオン源に係り、特に、永久磁石リングを用いてミラー磁場を発生する永久磁石型ECRイオン源の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
ECRイオン源は、1960年代に、フランスのグルノーブル研究所のジェラー氏により発明された、電子サイクロトロン共鳴により高温電子を発生させて、中性元素を多価イオン化するイオン源である。
【0003】
ECRイオン源は、軸方向に2つのミラー磁場と半径方向に多極磁場を生成して、高温電子閉じ込めを行い、高周波電力を供給して、高強度の多価イオンを発生できる特徴がある。
現在、数多くの大型サイクロトロンのイオン源として利用され始めている。
【0004】
このECRイオン源の特徴は、供給する高周波電力の周波数に対応して、ECR磁場中において、供給される高周波電場とのサイクロトロン共鳴により加速される高温(高エネルギー)の電子が生成することである。
この高エネルギーの電子が、イオンや原子と衝突して、これらのイオンや原子中の電子を徐々に剥がして行き、多価イオンを生成する。
【0005】
次に、特許文献1に示すような、常伝導コイルによるECRイオン源の構成と基本動作について、図6を用いて説明する。
図6は、一般的常伝導コイルによるECRイオン源の構成を示す断面図である。
【0006】
図6に示すように、この型のECRイオン源100は、主要構成として、プラズマチェンバー102、イオン引き出し電極104、伝導型ソレノイドコイル106、導波管107、高周波電源108を備えている。
【0007】
伝導型ソレノイドコイル106は、プラズマチェンバー102内にミラー磁場を生成する。
電子が、軸方向のミラー磁場と、半径方向の6極磁場によって生成されたECR磁場面に囲まれたラクビーボール状のECRゾーン101の中に閉じ込められ、高周波電源108から、導波管107を経て供給されたマイクロ波で、サイクロトロン共鳴により加速される高温の電子が、そのラクビーボール状のECRゾーン101の中にある中性元素をイオン化し、或いは、イオンを更に多価のイオンにする。
【0008】
プラズマチェンバー102内のイオンは、イオン引き出し電極104により引き出され、イオン加速器等の他のデバイス(図示せず)のイオンソースに供される。
【0009】
常伝導コイルによるECRイオン源100の特徴は、電子及びイオンの閉じ込めが良いこと、及び、電子温度が高いことから、Xe+30やAr+7等の多価イオンを、高強度で生成することである。
【0010】
しかし、常伝導型ソレノイドコイルは100kW前後の電力と冷却システムとを高電圧ターミナルへ搭載する必要があるため、実用機としては、大型化と、運転コストが増大するという問題があった。
そこで、ミラー磁場を発生する伝導型ソレノイドコイルの代わりに、特許文献2に示すように、永久磁石を用いる装置が実用化された。
【0011】
この永久磁石型ECRイオン源について、図7を用いて説明する。
図7は、永久磁石型ECRイオン源の構成を示す断面図である。
【0012】
図7に示すように、この型のECRイオン源110は、主要構成として、プラズマチェンバー112、イオン引き出し電極114、リング状の永久磁石116、導波管117、高周波電源118を備えている。
ECR磁場を発生する伝導型ソレノイドコイルの代わりに、リング状の永久磁石116を用いるのが特徴である。
【0013】
【特許文献1】
特開平5−304111号公報
【特許文献2】
特開平6−333523号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の永久磁石型ECRイオン源では、多価イオンを生成するECRゾーンをつくるためのECR磁場に対して、ほぼ同じ磁場強度の逆転磁場も発生するという問題があった。
【0015】
この逆転磁場について、図8を用いて説明する。
図8は、従来の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
なお、磁場計算は「ポアソン」と呼ばれる磁場計算プログラムを用いている。
【0016】
図8の磁束の流れ図において、縦軸及び横軸は原点からの距離、同じく磁場強度の特性図において、縦軸は磁場強度を示し単位はガウス、横軸は原点からの距離で、単位はcmである。
また、同図では、永久磁石が左右非対称の場合で磁場計算を行っている。
【0017】
図8に示すように、プラズマチェンバー内にはECR磁場が形成されているが、原点からの距離12cmに最大となる、6000ガウス強の逆転磁場が発生している。
この逆転磁場により、導入マイクロ波が供給される途中の導波管中でプラズマが発生するために、この導入マイクロ波が減衰することや、ECRゾーンのプラズマが不安定となる。
【0018】
具体的には、ECRゾーンの外側に、13.6GHzのECR磁場である4850ガウスが存在する。
そのため入射した高周波電力が、その箇所で消費される。
このため永久磁石型ECRイオン源に使用する高周波電源を大きくし、かつこのロスの部分も含めて冷却する必要がある。
【0019】
この問題のために、従来の永久磁石型ECRイオン源では、大きな高周波電源と大規模な冷却システムが必要となり、そのため小型化、簡易化、低コスト化に悪影響をもたらしていた。
【0020】
本発明は、上記課題(問題点)を解決し、リング状の永久磁石によって生成される逆転磁場をECR磁場以下にし、ECRプラズマが発生するのを抑え、小型省電力、簡易型が可能な実用的ECRイオン源を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の永久磁石型ECRイオン源は、請求項1に記載のものでは、プラズマチェンバーと、このプラズマチェンバー周囲に設けられる永久磁石と、高周波電力を供給する高周波電源とを備え、前記永久磁石がプラズマチェンバー内に発生するECR磁場内の電子を前記高周波電源から供給される高周波電力により加速して、中性原子或いはイオンから順次電子を剥ぎ取り、多価のイオンを生成するようにした永久磁石型ECRイオン源において、前記永久磁石の側面に所定形状の切り欠き部を設けることにより、前記ECR磁場に対して発生する逆転磁場の強度を低減するように構成した。
【0022】
このように構成すると、ECRプラズマが発生するのを抑え、小型省電力、簡易型が可能な実用的永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0023】
請求項2に記載の永久磁石型ECRイオン源は、前記永久磁石の側面に設ける切り欠き部の断面形状が四角形状或いは三角形状である構成とした。
【0024】
このように構成すると、好適な形状の永久磁石を備えた永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0025】
請求項3に記載の永久磁石型ECRイオン源は、前記永久磁石の側面に設ける切り欠き部に高透磁率材料を挿着した構成とした。
【0026】
このように構成すると、逆転磁場の抑制に更に効果的である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の永久磁石型ECRイオン源の一実施の形態について、図1乃至図4を用いて説明する。
図1は、本発明の永久磁石型ECRイオン源の基本構成を示す側面図である。
図2は、本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す側面図である。
図3は、本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す正面図である。
図4は、本発明の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
なお、磁場計算は、従来のもの同様、「ポアソン」と呼ばれる磁場計算プログラムを用いている。
【0028】
先ず、本発明の永久磁石型ECRイオン源の基本構成について、図1を用いて説明する。
本発明の永久磁石型ECRイオン源10は、主要構成として、従来のもの同様に、プラズマチェンバー12、イオン引き出し電極14、プラズマチェンバー12の周囲に配される永久磁石16、導波管17、高周波電源18を備えている。
【0029】
永久磁石16は、プラズマチェンバー12内にECR磁場を生成し、ECR磁場面に囲まれたラクビーボール状のECRゾーン11の中に閉じ込められた電子が、高周波電源18から、導波管17を経て供給されたマイクロ波で、サイクロトロン共鳴により加速され、多価イオンを生成し、イオン引き出し電極14により引き出され、イオン加速器等の他のデバイスのイオンソースに供されるのは従来のものと同様である。
【0030】
一方、本願発明の永久磁石型ECRイオン源10は、プラズマチェンバー12の周囲に配される永久磁石16の側面に、図2及び図3に示すような断面が四角形状で、所定長さの切り欠き部16aを形成し、この切り欠き部16aに高透磁率材料15を挿入した点に特徴を有している。
【0031】
このような切り欠き部16aを設け、この切り欠き部16aに高透磁率材料15を挿入することにより、ECR磁場に対する逆転磁場の強度が低減していることを図4を用いて説明する。
図4に示すように、従来と同様に、プラズマチェンバー内にはECR磁場が形成されているが、原点からの距離12cmに最大となる逆転磁場の強度が、上記した従来例では6500ガウスであったものが、本発明では4200ガウス強に低減していることが理解される。
本発明の永久磁石型ECRイオン源10では、図4から明らかなように、ECR磁場の強度以下に、逆転磁場の磁場強度を低減することに成功している。
同図では、永久磁石が左右非対称の場合で、高透磁率材料15に鉄を用いた場合について磁場計算を行っている。
【0032】
また、同図に示すように、ECR磁場の正磁場を高めることが可能となった。
更に、正、逆転磁場領域をある程度分離することができ、そのため逆転磁場発生領域をプラズマチェンバー中に作らないようにすることができるため、正磁場をそれほど減じることがないことが示されている。
【0033】
なお、切り欠き部16aの形状、高透磁率材料15の挿入に関しては、2次や3次磁場シミュレーションプログラムを駆使して、プラズマチェンバー12内に逆転磁場が発生しないように、そして正磁場が減衰しないように、注意しながら決定する必要がある。
【0034】
以上のように、永久磁石16の側面に、切り欠き部16aを形成し、高透磁率材料15を挿入することにより、逆転磁場強度を低減することができたために、これまで、高周波電源は200から300kWを必要としているが、それが途中でロスすることがなく、100kW以下の高周波電源を用いればよくなり、低電力化が可能となった。
【0035】
また削減分の電力100から200kW分の冷却が必要がなくなるため、従来は、100kVから500kVの高圧ステーションに100から200kWの電力輸送とその冷却システムが必要であったが、数kWの電力で十分となった。その結果、本発明により、産業、医療への真の実用機が完成したことになる。
【0036】
本発明の永久磁石型ECRイオン源は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。
永久磁石に形成する切り欠き部の断面形状は、四角形状に限定されず、他の形状、例えば、図5に示すように、その切り欠き部26aの断面形状が三角形状のものでも本発明に含まれるのは勿論のことである。
【0037】
【発明の効果】
本発明の永久磁石型ECRイオン源は、上述のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載したように、永久磁石型ECRイオン源において、永久磁石の側面に所定形状の切り欠き部を設けるように構成すると、ECRプラズマが発生するのを抑え、小型省電力、簡易型が可能な実用的永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0038】
(2)請求項2に記載したように、永久磁石の側面に設ける切り欠き部の断面形状が四角形状或いは三角形状である構成とすると、好適な形状の永久磁石を備えた永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0039】
(3)請求項3に記載したように、永久磁石の側面に設ける切り欠き部に高透磁率材料を挿着した構成とすると、逆転磁場の抑制に更に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の永久磁石型ECRイオン源の基本構成を示す側面図である。
【図2】本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す側面図である。
【図3】本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す正面図である。
【図4】本発明の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
【図5】本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の他の形状を示す側面図である。
【図6】一般的常伝導コイルによるECRイオン源の構成を示す断面図である。
【図7】永久磁石型ECRイオン源の構成を示す断面図である。
【図8】従来の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
【符号の説明】
10:永久磁石型ECRイオン
12:プラズマチェンバー
15:高透磁率材料
16:永久磁石
16a:切り欠き部
18:高周波電源
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン加速器の多価イオンソースとなるECR(Electron Cycrotron Resonance)イオン源に係り、特に、永久磁石リングを用いてミラー磁場を発生する永久磁石型ECRイオン源の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
ECRイオン源は、1960年代に、フランスのグルノーブル研究所のジェラー氏により発明された、電子サイクロトロン共鳴により高温電子を発生させて、中性元素を多価イオン化するイオン源である。
【0003】
ECRイオン源は、軸方向に2つのミラー磁場と半径方向に多極磁場を生成して、高温電子閉じ込めを行い、高周波電力を供給して、高強度の多価イオンを発生できる特徴がある。
現在、数多くの大型サイクロトロンのイオン源として利用され始めている。
【0004】
このECRイオン源の特徴は、供給する高周波電力の周波数に対応して、ECR磁場中において、供給される高周波電場とのサイクロトロン共鳴により加速される高温(高エネルギー)の電子が生成することである。
この高エネルギーの電子が、イオンや原子と衝突して、これらのイオンや原子中の電子を徐々に剥がして行き、多価イオンを生成する。
【0005】
次に、特許文献1に示すような、常伝導コイルによるECRイオン源の構成と基本動作について、図6を用いて説明する。
図6は、一般的常伝導コイルによるECRイオン源の構成を示す断面図である。
【0006】
図6に示すように、この型のECRイオン源100は、主要構成として、プラズマチェンバー102、イオン引き出し電極104、伝導型ソレノイドコイル106、導波管107、高周波電源108を備えている。
【0007】
伝導型ソレノイドコイル106は、プラズマチェンバー102内にミラー磁場を生成する。
電子が、軸方向のミラー磁場と、半径方向の6極磁場によって生成されたECR磁場面に囲まれたラクビーボール状のECRゾーン101の中に閉じ込められ、高周波電源108から、導波管107を経て供給されたマイクロ波で、サイクロトロン共鳴により加速される高温の電子が、そのラクビーボール状のECRゾーン101の中にある中性元素をイオン化し、或いは、イオンを更に多価のイオンにする。
【0008】
プラズマチェンバー102内のイオンは、イオン引き出し電極104により引き出され、イオン加速器等の他のデバイス(図示せず)のイオンソースに供される。
【0009】
常伝導コイルによるECRイオン源100の特徴は、電子及びイオンの閉じ込めが良いこと、及び、電子温度が高いことから、Xe+30やAr+7等の多価イオンを、高強度で生成することである。
【0010】
しかし、常伝導型ソレノイドコイルは100kW前後の電力と冷却システムとを高電圧ターミナルへ搭載する必要があるため、実用機としては、大型化と、運転コストが増大するという問題があった。
そこで、ミラー磁場を発生する伝導型ソレノイドコイルの代わりに、特許文献2に示すように、永久磁石を用いる装置が実用化された。
【0011】
この永久磁石型ECRイオン源について、図7を用いて説明する。
図7は、永久磁石型ECRイオン源の構成を示す断面図である。
【0012】
図7に示すように、この型のECRイオン源110は、主要構成として、プラズマチェンバー112、イオン引き出し電極114、リング状の永久磁石116、導波管117、高周波電源118を備えている。
ECR磁場を発生する伝導型ソレノイドコイルの代わりに、リング状の永久磁石116を用いるのが特徴である。
【0013】
【特許文献1】
特開平5−304111号公報
【特許文献2】
特開平6−333523号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の永久磁石型ECRイオン源では、多価イオンを生成するECRゾーンをつくるためのECR磁場に対して、ほぼ同じ磁場強度の逆転磁場も発生するという問題があった。
【0015】
この逆転磁場について、図8を用いて説明する。
図8は、従来の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
なお、磁場計算は「ポアソン」と呼ばれる磁場計算プログラムを用いている。
【0016】
図8の磁束の流れ図において、縦軸及び横軸は原点からの距離、同じく磁場強度の特性図において、縦軸は磁場強度を示し単位はガウス、横軸は原点からの距離で、単位はcmである。
また、同図では、永久磁石が左右非対称の場合で磁場計算を行っている。
【0017】
図8に示すように、プラズマチェンバー内にはECR磁場が形成されているが、原点からの距離12cmに最大となる、6000ガウス強の逆転磁場が発生している。
この逆転磁場により、導入マイクロ波が供給される途中の導波管中でプラズマが発生するために、この導入マイクロ波が減衰することや、ECRゾーンのプラズマが不安定となる。
【0018】
具体的には、ECRゾーンの外側に、13.6GHzのECR磁場である4850ガウスが存在する。
そのため入射した高周波電力が、その箇所で消費される。
このため永久磁石型ECRイオン源に使用する高周波電源を大きくし、かつこのロスの部分も含めて冷却する必要がある。
【0019】
この問題のために、従来の永久磁石型ECRイオン源では、大きな高周波電源と大規模な冷却システムが必要となり、そのため小型化、簡易化、低コスト化に悪影響をもたらしていた。
【0020】
本発明は、上記課題(問題点)を解決し、リング状の永久磁石によって生成される逆転磁場をECR磁場以下にし、ECRプラズマが発生するのを抑え、小型省電力、簡易型が可能な実用的ECRイオン源を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の永久磁石型ECRイオン源は、請求項1に記載のものでは、プラズマチェンバーと、このプラズマチェンバー周囲に設けられる永久磁石と、高周波電力を供給する高周波電源とを備え、前記永久磁石がプラズマチェンバー内に発生するECR磁場内の電子を前記高周波電源から供給される高周波電力により加速して、中性原子或いはイオンから順次電子を剥ぎ取り、多価のイオンを生成するようにした永久磁石型ECRイオン源において、前記永久磁石の側面に所定形状の切り欠き部を設けることにより、前記ECR磁場に対して発生する逆転磁場の強度を低減するように構成した。
【0022】
このように構成すると、ECRプラズマが発生するのを抑え、小型省電力、簡易型が可能な実用的永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0023】
請求項2に記載の永久磁石型ECRイオン源は、前記永久磁石の側面に設ける切り欠き部の断面形状が四角形状或いは三角形状である構成とした。
【0024】
このように構成すると、好適な形状の永久磁石を備えた永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0025】
請求項3に記載の永久磁石型ECRイオン源は、前記永久磁石の側面に設ける切り欠き部に高透磁率材料を挿着した構成とした。
【0026】
このように構成すると、逆転磁場の抑制に更に効果的である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の永久磁石型ECRイオン源の一実施の形態について、図1乃至図4を用いて説明する。
図1は、本発明の永久磁石型ECRイオン源の基本構成を示す側面図である。
図2は、本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す側面図である。
図3は、本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す正面図である。
図4は、本発明の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
なお、磁場計算は、従来のもの同様、「ポアソン」と呼ばれる磁場計算プログラムを用いている。
【0028】
先ず、本発明の永久磁石型ECRイオン源の基本構成について、図1を用いて説明する。
本発明の永久磁石型ECRイオン源10は、主要構成として、従来のもの同様に、プラズマチェンバー12、イオン引き出し電極14、プラズマチェンバー12の周囲に配される永久磁石16、導波管17、高周波電源18を備えている。
【0029】
永久磁石16は、プラズマチェンバー12内にECR磁場を生成し、ECR磁場面に囲まれたラクビーボール状のECRゾーン11の中に閉じ込められた電子が、高周波電源18から、導波管17を経て供給されたマイクロ波で、サイクロトロン共鳴により加速され、多価イオンを生成し、イオン引き出し電極14により引き出され、イオン加速器等の他のデバイスのイオンソースに供されるのは従来のものと同様である。
【0030】
一方、本願発明の永久磁石型ECRイオン源10は、プラズマチェンバー12の周囲に配される永久磁石16の側面に、図2及び図3に示すような断面が四角形状で、所定長さの切り欠き部16aを形成し、この切り欠き部16aに高透磁率材料15を挿入した点に特徴を有している。
【0031】
このような切り欠き部16aを設け、この切り欠き部16aに高透磁率材料15を挿入することにより、ECR磁場に対する逆転磁場の強度が低減していることを図4を用いて説明する。
図4に示すように、従来と同様に、プラズマチェンバー内にはECR磁場が形成されているが、原点からの距離12cmに最大となる逆転磁場の強度が、上記した従来例では6500ガウスであったものが、本発明では4200ガウス強に低減していることが理解される。
本発明の永久磁石型ECRイオン源10では、図4から明らかなように、ECR磁場の強度以下に、逆転磁場の磁場強度を低減することに成功している。
同図では、永久磁石が左右非対称の場合で、高透磁率材料15に鉄を用いた場合について磁場計算を行っている。
【0032】
また、同図に示すように、ECR磁場の正磁場を高めることが可能となった。
更に、正、逆転磁場領域をある程度分離することができ、そのため逆転磁場発生領域をプラズマチェンバー中に作らないようにすることができるため、正磁場をそれほど減じることがないことが示されている。
【0033】
なお、切り欠き部16aの形状、高透磁率材料15の挿入に関しては、2次や3次磁場シミュレーションプログラムを駆使して、プラズマチェンバー12内に逆転磁場が発生しないように、そして正磁場が減衰しないように、注意しながら決定する必要がある。
【0034】
以上のように、永久磁石16の側面に、切り欠き部16aを形成し、高透磁率材料15を挿入することにより、逆転磁場強度を低減することができたために、これまで、高周波電源は200から300kWを必要としているが、それが途中でロスすることがなく、100kW以下の高周波電源を用いればよくなり、低電力化が可能となった。
【0035】
また削減分の電力100から200kW分の冷却が必要がなくなるため、従来は、100kVから500kVの高圧ステーションに100から200kWの電力輸送とその冷却システムが必要であったが、数kWの電力で十分となった。その結果、本発明により、産業、医療への真の実用機が完成したことになる。
【0036】
本発明の永久磁石型ECRイオン源は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。
永久磁石に形成する切り欠き部の断面形状は、四角形状に限定されず、他の形状、例えば、図5に示すように、その切り欠き部26aの断面形状が三角形状のものでも本発明に含まれるのは勿論のことである。
【0037】
【発明の効果】
本発明の永久磁石型ECRイオン源は、上述のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載したように、永久磁石型ECRイオン源において、永久磁石の側面に所定形状の切り欠き部を設けるように構成すると、ECRプラズマが発生するのを抑え、小型省電力、簡易型が可能な実用的永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0038】
(2)請求項2に記載したように、永久磁石の側面に設ける切り欠き部の断面形状が四角形状或いは三角形状である構成とすると、好適な形状の永久磁石を備えた永久磁石型ECRイオン源とすることができる。
【0039】
(3)請求項3に記載したように、永久磁石の側面に設ける切り欠き部に高透磁率材料を挿着した構成とすると、逆転磁場の抑制に更に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の永久磁石型ECRイオン源の基本構成を示す側面図である。
【図2】本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す側面図である。
【図3】本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の形状を示す正面図である。
【図4】本発明の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
【図5】本発明の永久磁石型ECRイオン源に用いる永久磁石の他の形状を示す側面図である。
【図6】一般的常伝導コイルによるECRイオン源の構成を示す断面図である。
【図7】永久磁石型ECRイオン源の構成を示す断面図である。
【図8】従来の永久磁石型ECRイオン源において、リング状の永久磁石が作り出す磁束の流れを示す上半分縦断側面図、及び、それに対応する磁場の強度を示す特性図である。
【符号の説明】
10:永久磁石型ECRイオン
12:プラズマチェンバー
15:高透磁率材料
16:永久磁石
16a:切り欠き部
18:高周波電源
Claims (3)
- プラズマチェンバーと、このプラズマチェンバー周囲に設けられる永久磁石と、高周波電力を供給する高周波電源とを備え、前記永久磁石がプラズマチェンバー内に発生するECR磁場内の電子を前記高周波電源から供給される高周波電力により加速して、中性原子或いはイオンから順次電子を剥ぎ取り、多価のイオンを生成するようにした永久磁石型ECRイオン源において、
前記永久磁石の側面に所定形状の切り欠き部を設けることにより、前記ECR磁場に対して発生する逆転磁場の強度を低減するようにしたことを特徴とする永久磁石型ECRイオン源。 - 前記永久磁石の側面に設ける切り欠き部の断面形状が四角形状或いは三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石型ECRイオン源。
- 前記永久磁石の側面に設ける切り欠き部に高透磁率材料を挿着したことを特徴とする請求項1又は2に記載の永久磁石型ECRイオン源。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003070051A JP2004281200A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 永久磁石型ecrイオン源 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003070051A JP2004281200A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 永久磁石型ecrイオン源 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004281200A true JP2004281200A (ja) | 2004-10-07 |
Family
ID=33286903
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003070051A Pending JP2004281200A (ja) | 2003-03-14 | 2003-03-14 | 永久磁石型ecrイオン源 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004281200A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010225443A (ja) * | 2009-03-24 | 2010-10-07 | Canon Inc | イオン源 |
RU206590U1 (ru) * | 2021-05-20 | 2021-09-16 | федеральное государственное автономное образовательное учреждение высшего образования "Национальный исследовательский ядерный университет МИФИ" (НИЯУ МИФИ) | Свч источник ионов с эцр |
-
2003
- 2003-03-14 JP JP2003070051A patent/JP2004281200A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010225443A (ja) * | 2009-03-24 | 2010-10-07 | Canon Inc | イオン源 |
RU206590U1 (ru) * | 2021-05-20 | 2021-09-16 | федеральное государственное автономное образовательное учреждение высшего образования "Национальный исследовательский ядерный университет МИФИ" (НИЯУ МИФИ) | Свч источник ионов с эцр |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI467615B (zh) | 離子源與調整離子束均一性的方法 | |
MXPA05009982A (es) | Generador de empuje de nave espacial. | |
EP0476900B1 (en) | Microwave-powered plasma-generating apparatus and method | |
KR101065450B1 (ko) | 이온원 장치 및 그 장치를 위한 전자 에너지 최적화 방법 | |
US4631438A (en) | Multicharged ion source with several electron cyclotron resonance zones | |
JPH046060B2 (ja) | ||
US6922019B2 (en) | Microwave ion source | |
US6864486B2 (en) | Ion sources | |
KR101311467B1 (ko) | 전자 맴돌이 공명 이온원 장치 및 이의 인출 전류를 증가시키는 방법 | |
KR101618812B1 (ko) | 전자 사이클로트론 공명 이온원 장치용 자석의 배치방법 | |
JPH11339675A (ja) | イオン源 | |
JP2004281200A (ja) | 永久磁石型ecrイオン源 | |
EP1006557A2 (en) | Apparatus for generating and utilizing magnetically neutral line discharge type plasma | |
JPS6338585A (ja) | プラズマ装置 | |
JP3593301B2 (ja) | 電子サイクロトロン共鳴イオン源 | |
JP2010153096A (ja) | イオンガン及びイオンビームの引出し方法 | |
JP2006012575A (ja) | ジャイラック加速電子型ecrイオン源及び多価イオン生成方法 | |
JP2004281202A (ja) | Ecrイオン源 | |
JP5656769B2 (ja) | マイクロ波イオン源、及びイオン生成方法 | |
WO2006100217A1 (en) | Photon source comprising an electron cyclotron resonance multicharged ion plasma source | |
Naik et al. | Design of a “two-ion source” Charge Breeder using ECR ion source in two frequency mode | |
RU2095877C1 (ru) | Способ получения ионов и источник ионов для его осуществления | |
Pivarc | Design of the NANOGUN-10B ECR Ion Source | |
JPS63170832A (ja) | イオンビ−ム装置 | |
JPS617542A (ja) | マイクロ波イオン源 |